(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】仮締切構造体
(51)【国際特許分類】
E02D 19/04 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
E02D19/04
(21)【出願番号】P 2021009851
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】秦 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】森田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 潤
(72)【発明者】
【氏名】山下 遼
(72)【発明者】
【氏名】田窪 宏朗
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 聡太
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-073357(JP,A)
【文献】特開2006-150202(JP,A)
【文献】特開2012-012820(JP,A)
【文献】特開昭57-180714(JP,A)
【文献】特開2007-051435(JP,A)
【文献】特開2013-108316(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0133983(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、
それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、
前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、
を備え、
前記縦シール部は、
水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、
前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、
を備え
、
前記2つの縦シール固定部は、前記2つのブロックの連結に利用されるボルトにより前記2つのブロックに対して固定されることを特徴とする仮締切構造体。
【請求項2】
水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、
それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、
前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、
を備え、
前記縦シール部は、
水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、
前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、
を備え、
前記縦シール中央部は、前記2つの縦シール固定部に連続するとともに前記2つの縦シール固定部から水平方向の前記連結部側へとそれぞれ延びる2つの縦シール要素を備え、
前記2つの縦シール要素はそれぞれ、縦シール固定部とは反対側の端部に自由端部を有し、
前記2つの縦シール要素の前記自由端部同士は、着脱自在かつ水密に固定され
、
前記仮締切構造体は、前記縦シール部と同じ構造を有し、前記連結部を前記2つのブロックの外側および内側のうち他方側から覆って水密にシールする他の縦シール部をさらに備え、
前記縦シール部および前記他の縦シール部において、前記2つの縦シール要素の前記自由端部同士の固定強度、および、前記2つの縦シール固定部の前記2つのブロックに対する固定強度は、前記2つのブロックの内側よりも外側の方が小さく、
前記仮締切本体は、
左右方向に並んで配置されるとともに前端部が前記対象構造物に接触する一対の腕部と、
左右方向に沿って延びるとともに前記一対の腕部の後端部に接続される腕接続部と、
を備え、
前記連結部は、前記腕接続部に位置することを特徴とする仮締切構造体。
【請求項3】
水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、
それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、
前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、
前記連結部を前記2つのブロックの外側および内側のうち他方側から覆って水密にシールする他の縦シール部
と、
を備え、
前記縦シール部は、
水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、
前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、
を備え、
前記他の縦シール部は、
水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記他方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる他の2つの縦シール固定部と、
前記他の2つの縦シール固定部の間にて前記他の2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記他方側から覆う、可撓性を有する他の縦シール中央部と、
を備え
、
前記仮締切本体は、
左右方向に並んで配置されるとともに前端部が前記対象構造物に接触する一対の腕部と、
左右方向に沿って延びるとともに前記一対の腕部の後端部に接続される腕接続部と、
を備え、
前記連結部は、前記腕接続部に位置することを特徴とする仮締切構造体。
【請求項4】
請求項
3に記載の仮締切構造体であって、
前記2つの縦シール固定部および前記他の2つの縦シール固定部の前記2つのブロックに対する固定強度は、前記2つのブロックの内側よりも外側の方が小さいことを特徴とする仮締切構造体。
【請求項5】
水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、
それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、
前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、
前記複数のブロックのうち一のブロックである下段ブロックの上側に積層される上段ブロックと、
前記下段ブロックと前記上段ブロックとの連結部である上下連結部を外側および内側のうち一方側から覆って水密にシールする横シール部と、
を備え、
前記縦シール部は、
水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、
前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、
を備え、
前記横シール部は、
前記上下連結部の上下両側にて、前記下段ブロックおよび前記上段ブロックの前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記上下連結部に沿って横方向に延びる2つの横シール固定部と、
前記2つの横シール固定部の間にて前記2つの横シール固定部に連続するとともに、横方向に沿って延びて前記上下連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する横シール中央部と、
を備えることを特徴とする仮締切構造体。
【請求項6】
水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、
それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、
前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、
前記2つのブロックの上側に積層されて水平方向に着脱自在に連結される他の2つのブロック
と、
を備え、
前記縦シール部は、
水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、
前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、
を備え、
前記他の2つのブロックの連結部である上連結部は、前記2つのブロックの前記連結部である下連結部と上下方向に並んでおり、
前記縦シール部は、前記下連結部および前記上連結部を前記一方側から覆って水密にシールし、
前記縦シール部と前記2つのブロックおよび前記他の2つのブロックとの間に形成される1つの密閉空間内に前記下連結部および前記上連結部がまとめて収容されることを特徴とする仮締切構造体。
【請求項7】
水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、
それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、
前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、
を備え、
前記縦シール部は、
水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、
前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、
を備え、
前記仮締切本体は、内部に密閉空間を有する浮体式構造物であることを特徴とする仮締切構造体。
【請求項8】
水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、
それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、
前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、
を備え、
前記縦シール部は、
水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、
前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、
を備え、
前記対象構造物はダムの堤体であることを特徴とする仮締切構造体。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の仮締切構造体であって、
前記縦シール中央部は、前記縦シール部に水圧が作用していない状態において、前記連結部から前記一方側に離間していることを特徴とする仮締切構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダムの堤体や橋脚等に対する工事の際に、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成するために、仮締切構造体が使用されている。仮締切構造体を工事現場に設置する際には、通常、陸上輸送可能な大きさの複数のブロックを工場にて製造し、当該複数のブロックを工事現場へと輸送する。その後、複数のブロックを工事現場にて溶接により接合し、仮締切構造体を組み立てる。この場合、工事現場における溶接作業に長時間を要する。
【0003】
そこで、特許文献1では、ダム堤体の貯水池側に設けられる仮締切構造体について、複数のブロックを高力ボルトによって連結することにより、溶接作業を減少させる組立方法が提案されている。高力ボルトによるブロック間の連結部は水密ではないため、当該組立方法では、ブロック間の連結部を外側ブロックによって貯水池側から覆った後、外側ブロックを内側のブロックに水密溶接することによって連結部からの漏水防止が図られている。
【0004】
一方、特許文献2では、橋脚の周囲を囲む筒状の仮締切構造体を、複数のブロックをボルトによって連結して組み立てる組立方法が提案されている。特許文献2では、ブロック間の連結部からの漏水を抑制する方法として、ブロック間に止水パッキンを挟み、ボルトおよびナットで締め付ける方法が開示されている。また、仮締切構造体の外側面を全周に亘って複数の防水シート(エステル帆布製のトラックシート)で覆い、防水シート間の継ぎ目を防水ファスナーで閉じることにより、止水パッキンを設けずに連結部からの漏水を抑制する方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-12820号公報
【文献】特開2020-118027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の組立方法では、外側ブロックを内側のブロックに水密溶接しているため、これらの複数のブロックを工事完了後に再分割して他の工事に転用することは容易ではない。
【0007】
特許文献2の止水パッキンを用いる組立方法では、仮締切構造体に加わる水圧が、ブロックの連結部におけるボルトおよびナットの締結力よりも大きい場合、連結部が目開きして止水パッキンを締め付ける力が低下し、止水パッキンとブロックとの隙間から漏水が生じるおそれがある。また、特許文献2の防水シートを用いる組立方法では、仮締切構造体の全周に亘って防水シートを設置する必要があるため、防水シートによる被覆作業に長時間を要するおそれがある。特に、大型の仮締切構造体の場合、防水シートによる被覆作業時間はさらに増大するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、仮締切構造体の組立時間を短くするとともに、ブロック間の連結部からの漏水を防止することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部とを備え、前記縦シール部は、水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部とを備える。前記2つの縦シール固定部は、前記2つのブロックの連結に利用されるボルトにより前記2つのブロックに対して固定される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、を備える。前記縦シール部は、水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、を備える。前記縦シール中央部は、前記2つの縦シール固定部に連続するとともに前記2つの縦シール固定部から水平方向の前記連結部側へとそれぞれ延びる2つの縦シール要素を備え、前記2つの縦シール要素はそれぞれ、縦シール固定部とは反対側の端部に自由端部を有し、前記2つの縦シール要素の前記自由端部同士は、着脱自在かつ水密に固定される。前記仮締切構造体は、前記縦シール部と同じ構造を有し、前記連結部を前記2つのブロックの外側および内側のうち他方側から覆って水密にシールする他の縦シール部をさらに備える。前記縦シール部および前記他の縦シール部において、前記2つの縦シール要素の前記自由端部同士の固定強度、および、前記2つの縦シール固定部の前記2つのブロックに対する固定強度は、前記2つのブロックの内側よりも外側の方が小さい。前記仮締切本体は、左右方向に並んで配置されるとともに前端部が前記対象構造物に接触する一対の腕部と、左右方向に沿って延びるとともに前記一対の腕部の後端部に接続される腕接続部と、を備える。前記連結部は、前記腕接続部に位置する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、前記連結部を前記2つのブロックの外側および内側のうち他方側から覆って水密にシールする他の縦シール部と、を備える。前記縦シール部は、水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、を備える。前記他の縦シール部は、水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記他方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる他の2つの縦シール固定部と、前記他の2つの縦シール固定部の間にて前記他の2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記他方側から覆う、可撓性を有する他の縦シール中央部とを備える。前記仮締切本体は、左右方向に並んで配置されるとともに前端部が前記対象構造物に接触する一対の腕部と、左右方向に沿って延びるとともに前記一対の腕部の後端部に接続される腕接続部と、を備える。前記連結部は、前記腕接続部に位置する。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の仮締切構造体であって、前記2つの縦シール固定部および前記他の2つの縦シール固定部の前記2つのブロックに対する固定強度は、前記2つのブロックの内側よりも外側の方が小さい。
【0017】
請求項5に記載の発明は、水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、前記複数のブロックのうち一のブロックである下段ブロックの上側に積層される上段ブロックと、前記下段ブロックと前記上段ブロックとの連結部である上下連結部を外側および内側のうち一方側から覆って水密にシールする横シール部と、を備える。前記縦シール部は、水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、を備える。前記横シール部は、前記上下連結部の上下両側にて、前記下段ブロックおよび前記上段ブロックの前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記上下連結部に沿って横方向に延びる2つの横シール固定部と、前記2つの横シール固定部の間にて前記2つの横シール固定部に連続するとともに、横方向に沿って延びて前記上下連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する横シール中央部とを備える。
【0018】
請求項6に記載の発明は、水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、前記2つのブロックの上側に積層されて水平方向に着脱自在に連結される他の2つのブロックと、を備える。前記縦シール部は、水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、を備える。前記他の2つのブロックの連結部である上連結部は、前記2つのブロックの前記連結部である下連結部と上下方向に並んでおり、前記縦シール部は、前記下連結部および前記上連結部を前記一方側から覆って水密にシールし、前記縦シール部と前記2つのブロックおよび前記他の2つのブロックとの間に形成される1つの密閉空間内に前記下連結部および前記上連結部がまとめて収容される。
【0019】
請求項7に記載の発明は、水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、を備える。前記縦シール部は、水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、を備える。前記仮締切本体は、内部に密閉空間を有する浮体式構造物である。
【0020】
請求項8に記載の発明は、水面よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間を形成する仮締切構造体であって、それぞれが仮締切本体の一部であり、水平方向に着脱自在に連結される複数のブロックと、前記複数のブロックのうち水平方向に隣接する2つのブロックの連結部を、前記作業空間とは反対側である外側および前記作業空間側である内側のうち一方側から覆い、前記連結部を水密にシールする縦シール部と、を備える。前記縦シール部は、水平方向に隣接する前記2つのブロックそれぞれに対して前記一方側の側面に着脱自在に固定され、前記連結部に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部と、前記2つの縦シール固定部の間にて前記2つの縦シール固定部に連続するとともに、上下方向に沿って延びて前記連結部を前記一方側から覆う、可撓性を有する縦シール中央部と、を備える。前記対象構造物はダムの堤体である。
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の仮締切構造体であって、前記縦シール中央部は、前記縦シール部に水圧が作用していない状態において、前記連結部から前記一方側に離間している。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、仮締切構造体の組立時間を短くすることができるとともに、ブロック間の連結部からの漏水を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一の実施の形態に係る仮締切構造体の側面図である。
【
図4】縦シール部近傍を拡大して示す平面図である。
【
図6】ブロックの一方の端部近傍を示す斜視図である。
【
図7】積層されたブロックユニットの一部を拡大して示す正面図である。
【
図8】積層されたブロックユニットの一部を拡大して示す正面図である。
【
図9】縦シール部近傍を拡大して示す平面図である。
【
図10】縦シール部近傍を拡大して示す平面図である。
【
図12】縦シール部近傍を拡大して示す平面図である。
【
図13】縦シール部近傍を拡大して示す平面図である。
【
図14】縦シール部近傍を拡大して示す平面図である。
【
図15】積層されたブロックユニットの一部を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る仮締切構造体2を示す側面図である。
図2は、仮締切構造体2を示す平面図である。仮締切構造体2は、水面97よりも下方から上方へと延びる対象構造物近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間90を形成する。
【0024】
図1に示す例では、当該対象構造物は、ダム9の堤体91である。
図1中の右側は下流側であり、左側は上流側(すなわち、貯水池側)である。以下の説明では、ダム9の下流側および上流側をそれぞれ「前側」および「後側」とも呼ぶ。また、
図2中の左右方向を、単に「左右方向」とも呼ぶ。当該左右方向および前後方向はそれぞれ、互いに垂直な水平方向である。仮締切構造体2は、堤体91の上流側の面(以下、「上流面92」とも呼ぶ。)に設置され、ダム9の再開発工事等において使用される。上流面92は、堤体91において左右方向に沿って広がる設置対象面である。上流面92は、略平面状であってもよく、曲面状であってもよい。
【0025】
仮締切構造体2は、水面97(すなわち、ダム湖の湖面)上に浮遊可能な浮体式構造体である。仮締切構造体2では、内部の密閉空間に対する注排水を行うことにより、浮上量の調節が可能である。仮締切構造体2は、堤体91の上流面92に設けられ、底面には底蓋93が設けられ、上部には浮力による浮上を防止する浮上防止具94が設けられる。底蓋93および浮上防止具94は、堤体91の上流面92から後方(すなわち、上流側)へと突出する金属製の構造物である。底蓋93は、ダム9の水底98から上側に離間した位置に設けられる。
【0026】
図2に示す例では、仮締切構造体2の平面視における形状は、略コの字状である。仮締切構造体2は、左右方向に並んで配置される一対の腕部24と、一対の腕部24を接続する腕接続部25とを備える。一対の腕部24および腕接続部25はそれぞれ、上下方向に長い略直方体状である。一対の腕部24は、左右方向に互いに離間した状態で前後方向に延びる側壁部である。一対の腕部24の前端部は、堤体91の上流面92に接触している。上流面92は、下方に向かうに従って後方(すなわち、上流側)へと向かう傾斜面である。したがって、一対の腕部24の前端部も、下方に向かうに従って後方へと向かう傾斜面である。なお、上流面92は、上下方向に略平行な鉛直面であってもよい。
【0027】
腕接続部25は、堤体91の上流面92から後側に離間した位置にて、左右方向に沿って延びる後壁部である。
図2に示す例では、腕接続部25は、左右方向に略平行に延びる。腕接続部25は、堤体91の上流面92から後側に離間した位置にて、一対の腕部24の後端部に接続される。換言すれば、一対の腕部24の後端部同士は、腕接続部25を介して間接的に互いに接続される。仮締切構造体2は、腕接続部25の左右方向の中央を通るとともに前後方向に平行に広がる平面に対して略左右対称な形状を有する。
【0028】
図2に示す例では、仮締切構造体2の腕接続部25および一対の腕部24、並びに、堤体91の上流面92により囲まれる略矩形の空間が、作業空間90である。以下の説明では、仮締切構造体2の作業空間90側を「内側」とも呼び、仮締切構造体2の作業空間90とは反対側を「外側」とも呼ぶ。
【0029】
仮締切構造体2の前後方向の長さ、左右方向の幅、および、上下方向の高さはそれぞれ、例えば、3m~10m、5m~20m、5m~50mである。仮締切構造体2の重量は、例えば、5t~500tである。腕部24の左右方向の幅、および、腕接続部25の前後方向の幅は、例えば、0.5m~2mである。仮締切構造体2の大きさおよび重量は、様々に変更可能である。
【0030】
仮締切構造体2は、仮締切本体20と、縦シール部26とを備える。なお、
図1では、図の理解を容易にするために、縦シール部26の図示を省略している。仮締切本体20は、水平方向および上下方向に配列された複数のブロック21が、例えばボルトおよびナットにより、着脱自在に連結された構造を有する。縦シール部26は、複数のブロック21の各連結部27を覆って水密にシールする。仮締切本体20の一部である各ブロック21は、例えば、中空の略直方体状の大型部材である。複数のブロック21は、通常、工場等において製造され、工事現場であるダム9へと輸送された後、工事現場においてボルトにより連結される。なお、「ボルトによる連結」とは、ボルトを用いた連結を意味し、様々な構造が採用可能である。例えば、「ボルトによる連結」は、ボルトおよびナットによる連結であってもよく、ブロック21に設けられた雌ネジ部にボルトを螺合させることによる連結であってもよい。以下の説明においても同様である。
【0031】
また、以下の説明では、水平方向に配列されて互いに連結された複数のブロック21をまとめて「ブロックユニット23」とも呼ぶ。仮締切本体20は、上下方向に積層された複数のブロックユニット23を備える。
図1に示す例では、仮締切本体20は8段のブロックユニット23を備える。仮締切本体20を構成するブロックユニット23の段数は様々に変更されてよい。仮締切本体20におけるブロックユニット23の段数は、1段であってもよく、2段以上であってもよい。
【0032】
図2に例示するブロックユニット23は、上下方向の位置が略同じである7つのブロック21が、水平方向に着脱自在に連結されることにより形成される。他のブロックユニット23においても同様である。各ブロックユニット23の上下方向の高さ、および、重量はそれぞれ、例えば、0.5m~4m、および、2t~50tである。ブロックユニット23に含まれるブロック21の数は、2つ以上の範囲で様々に変更されてよい。また、ブロックユニット23の大きさおよび重量も、様々に変更可能である。
【0033】
各ブロック21の内部空間は、互いに独立して(すなわち、互いに連通することなく)液体を貯溜可能な略直方体状の密閉空間であり、以下、「貯溜部22」と呼ぶ。貯溜部22は、バラスト水を貯溜可能なバラストタンクの機能を有する。各ブロック21の貯溜部22にバラスト水を注水し、または、貯溜部22からバラスト水を排水することにより、仮締切構造体2の喫水や傾斜を調整することが可能である。
図2に示す例では、ブロックユニット23は、平面視において異なる位置に配置される複数(例えば、7つ)の貯溜部22を備える。なお、各ブロックユニット23における貯溜部22の数は、様々に変更されてよい。
【0034】
図2に示すように、縦シール部26は、水平方向に隣接する2つのブロック21の連結部27(すなわち、2つのブロック21の境界部)を、仮締切本体20の外側および内側のうち、少なくとも一方側から覆う。
図2に示す例では、腕接続部25の左右方向の中央部近傍に位置する2つの連結部27は、外側および内側の双方から縦シール部26により覆われている。また、当該2つの連結部27を除く他の連結部27は、外側のみから縦シール部26により覆われており、当該他の連結部27の内側には縦シール部26は設けられない。なお、各連結部27において、縦シール部26は、外側および内側の双方に設けられてもよく、外側および内側のいずれか一方のみに設けられてもよい。以下の説明では、縦シール部26は、連結部27の外側および内側、あるいは、連結部27の外側のみに設けられるものとして説明する。
【0035】
図3は、
図2中において腕接続部25の中央部近傍に位置する1つの連結部27近傍を拡大して示す平面図である。
図4は、
図3中の上側(すなわち、仮締切本体20の外側)に位置する縦シール部26近傍を拡大して示す平面図である。
図3および
図4では、縦シール部26については、縦シール部26の長手方向の中央部における断面を示す。後述する
図9ないし
図14においても同様である。
図5は、
図3中の上側に位置する縦シール部26を仮締切本体20の外側から見た正面図である。すなわち、
図5は、縦シール部26を上流側から下流側に向かって見た状態を示す。
図5に示すように、仮締切本体20の外側に位置する縦シール部26は、2つのブロック21の連結部27を、上下方向の略全長に亘って覆う。仮締切本体20の内側に位置する縦シール部26についても同様である。
【0036】
ブロック21は、中空の略直方体状のブロック本体210と、ブロック本体210の両端部から長手方向(すなわち、
図3ないし
図5中の左右方向)に略垂直に周囲に広がる略矩形枠状の2つのフランジ28と、を備える。連結部27は、隣接する2つのブロック21のフランジ28同士を、複数組のボルト71およびナット72によって着脱自在に連結することにより形成される。フランジ28は、仮締切構造体2の外側および内側において上下方向に沿って延びる。
図3ないし
図5に示す例では、各ブロック21のフランジ28はダブルフランジであるが、シングルフランジ等の他の形状を有していてもよい。
【0037】
次に、仮締切本体20の外側に位置する縦シール部26の詳細な構造について説明する。仮締切本体20の内側に位置する縦シール部26の構造は、仮締切本体20を挟んで向きが反対になっている点を除き、仮締切本体20の外側に位置する縦シール部26の構造と略同じである。
図3ないし
図5では、縦シール部26に水圧が作用していない状態を示す。後述する
図9ないし
図14においても同様である。
【0038】
図4に示すように、縦シール部26は、可撓性および水密性を有するシール材261を備える。シール材261は、上下方向および水平方向の長さに比べて厚さが小さいシート状または薄板状の1枚の部材である。シール材261は、連結部27を水平方向(すなわち、
図3ないし
図5中の左右方向)に跨いで配置される。シール材261は、例えば、樹脂製または金属製である。シール材261は、樹脂と金属とが積層された部材であってもよい。シール材261に使用可能な樹脂として、例えば、ゴム等が挙げられる。シール材261に使用可能な金属として、例えば、ステンレス鋼および普通鋼等が挙げられる。
図3に示す例では、シール材261はゴム等の樹脂により形成された弾性部材である。シール材261の材料は、水密性(すなわち、不透液性)を有するものであれば、様々に変更されてよい。
【0039】
シール材261の水平方向の両端部262は、連結部27の水平方向の両側(すなわち、2つのブロック21の配列方向における連結部27の両側)に配置される。シール材261の両端部262は、水平方向に隣接する当該2つのブロック21のそれぞれに対して、外側面211(すなわち、仮締切本体20の外側および内側のうち、縦シール部26が設けられる一方側の側面)に着脱自在に固定される。
【0040】
以下の説明では、シール材261の水平方向の両端部262を、「縦シール固定部262」とも呼ぶ。
図3ないし
図5に示すように、縦シール固定部262は、ブロック21の外側面211(すなわち、ブロック本体210の外側面)に沿って、当該外側面211に略平行に広がる部位である。
図4に示す例では、縦シール固定部262は、ブロック21の外側面211に直接的に接触する。また、縦シール固定部262は、正面視において、連結部27に沿って上下方向に略平行に延びる略矩形帯状である。なお、縦シール固定部262は、連結部27に沿って上下方向に延びるのであれば、必ずしも上下方向に平行に延びる必要はない。
【0041】
以下の説明では、シール材261の2つの縦シール固定部262の間の部位を、「縦シール中央部263」とも呼ぶ。縦シール中央部263は、2つの縦シール固定部262の水平方向の間に位置し、当該2つの縦シール固定部262と水平方向に連続する。縦シール中央部263は、正面視において、水平方向および上下方向に延びる略矩形帯状の部位である。縦シール中央部263は、2つのブロック21の連結部27に外側から対向し、連結部27を外側(すなわち、仮締切本体20の外側および内側のうち、縦シール部26が設けられる一方側)から覆う。
【0042】
図3および
図4に示す例では、縦シール中央部263は、2つのブロック21の連結部27から外側に離間している。縦シール中央部263は、2つのブロック21の外側面211から離れる方向に凸となるように弧状に湾曲している。縦シール中央部263の上下方向に垂直な断面形状は、例えば略半円周状である。上述のように、シール材261は可撓性を有しており、縦シール部26に水圧が作用する状態では、縦シール中央部263は水圧により
図3および
図4に示す形状から変形するが、縦シール部26の水密性は維持される。なお、水圧が作用していない状態における縦シール中央部263の上下方向に垂直な断面形状は、略半円周状には限定されず、略円弧状、略円周状、略コの字状、略V字状、略U字状、または、他の様々な形状であってもよい。縦シール中央部263の上端および下端は、例えば、縦シール中央部263の上端縁および下端縁からブロック21の外側面211に至る領域を覆う封止部(図示省略)により水密に封止される。当該封止部は、シール材261の一部であってもよく、シール材261とは別の部材であってもよい。
【0043】
図4に示す例では、各縦シール固定部262は、ボルト264およびナット265を用いてブロック21の外側面211に固定される。ボルト264は、ブロック21の外側面211に溶接等により固定され、外側面211から外方へと突出する。ボルト264およびナット265は、上述のブロック21連結用のボルト71およびナット72とは別の部材である。
図5に示すように、ブロック21の外側面211には、複数のボルト264が設けられる。ブロック21の外側面211におけるボルト264の固定位置は、上述の貯溜部22(
図2参照)と正面視において重ならないことが好ましい。これにより、ボルト264のブロック21への固定時に、誤って貯溜部22に孔を開けること等が防止される。
【0044】
縦シール固定部262には、複数のボルト264に対応する位置に複数の貫通孔が設けられており、当該複数の貫通孔に複数のボルト264が挿入される。また、正面視において縦シール固定部262と略同形状(すなわち、上下方向に延びる略矩形帯状)の押さえ板266が、縦シール固定部262の外側から縦シール固定部262に重ねられる。押さえ板266にも、複数のボルト264に対応する位置に複数の貫通孔が設けられており、当該複数の貫通孔に複数のボルト264が挿入される。そして、押さえ板266の外側からナット265がボルト264に螺合されて締め付けられることにより、縦シール固定部262がブロック21に固定される。縦シール固定部262は、ナット265および押さえ板266とブロック21の外側面211との間に挟まれることにより、ブロック21の外側面211に水密に密着する。押さえ板266は、例えば、金属製の薄板状の部材であり、縦シール固定部262の上下方向の略全長に亘って設けられる。
【0045】
なお、押さえ板266は、上下方向において複数に分割されていてもよい。また、縦シール固定部262とブロック21の外側面211との密着性が確保できるのであれば、押さえ板266は省略されてもよい。また、縦シール固定部262のブロック21への固定は、必ずしも、ボルト264およびナット265により行われる必要はない。例えば、ブロック21の外側面211に設けられた雌ネジ部に縦シール固定部262の貫通孔を合わせ、当該雌ネジ部にボルトを螺合させることにより、縦シール固定部262がブロック21に固定されてもよい。あるいは、ボルトを用いず、接着剤等により縦シール固定部262がブロック21に着脱自在に固定されてもよい。
【0046】
図6は、1つのブロック21の一方の端部近傍を示す斜視図である。
図6では、図示の都合上、フランジ28を実際よりも大きく描いている。
図6に示すように、フランジ28の上端部の側方には、ブロック本体210の外側面の上端から上方に延びる外当て板213が設けられている。また、フランジ28の下端部の側方にも、ブロック本体210の外側面から下方に延びる外当て板213が設けられている。各外当て板213は、ブロック21の両端部に設けられた2つのフランジ28の間において、フランジ28に略垂直な方向に延びる薄板状の部材である。外当て板213は、当該2つのフランジ28間の全長に亘って延びる。上側の外当て板213の上端は、フランジ28の上端と上下方向の略同じ位置または僅かにずらした位置に位置する。下側の外当て板213の下端は、フランジ28の下端と上下方向の略同じ位置または僅かにずらした位置に位置する。
【0047】
上述のブロック21の外側面211は、ブロック本体210の外側面、および、外当て板213の外側面を含む。また、ブロック21の外側面211は、フランジ28のうち、ブロック本体210の外側面よりも外側に向かって突出する部位も含む。後述するブロック21の内側面212についても同様である。フランジ28の上端部近傍および下端部近傍では、
図5に示すように、縦シール部26の縦シール固定部262が、外当て板213の外側面に上述のボルト264、ナット265および押さえ板266により着脱自在に固定される。
【0048】
図6に示すように、フランジ28の上端部の側方には、ブロック本体210の内側面の上端から上方に延びる内当て板214が設けられている。また、フランジ28の下端部の側方にも、ブロック本体210の内側面から下方に延びる内当て板214が設けられている。各内当て板214は、外当て板213と同様に、ブロック21の両端部に設けられた2つのフランジ28の間において、フランジ28に略垂直な方向に延びる薄板状の部材である。内当て板214は、当該2つのフランジ28間の全長に亘って延びる。上側の内当て板214の上端は、フランジ28の上端と上下方向の略同じ位置または僅かにずらした位置に位置する。下側の内当て板214の下端は、フランジ28の下端と上下方向の略同じ位置または僅かにずらした位置に位置する。
【0049】
上述のように、
図3に示す仮締切本体20の内側に位置する縦シール部26の構造は、仮締切本体20を挟んで向きが反対になっている点を除き、仮締切本体20の外側に位置する縦シール部26の構造と略同じである。すなわち、仮締切本体20の内側に位置する縦シール部26も、2つの縦シール固定部262と、縦シール中央部263とを備える。2つの縦シール固定部262は、2つのブロック21の配列方向における連結部27の両側にて、当該2つのブロック21の内側面212(すなわち、外側の縦シール部26が設けられる側面とは反対側の他方側の側面)に着脱自在に固定される。上述のように、ブロック21の内側面212は、ブロック本体210の内側面、内当て板214(
図6参照)の内側面、および、フランジ28のうちブロック本体210の内側面よりも内側に向かって突出する部位を含む。
【0050】
内側の縦シール部26の2つの縦シール固定部262は、上述のボルト264、ナット265および押さえ板266(
図4参照)により、ブロック21の内側面212(この場合、ブロック本体210の内側面、および、内当て板214の内側面)に固定される。縦シール中央部263は、2つの縦シール固定部262の間にて当該2つの縦シール固定部262に連続する。縦シール中央部263は、上下方向に沿って延びて、連結部27を内側から覆う。縦シール中央部263は、縦シール部26に水圧が作用していない状態において、連結部27から内側に離間している。
【0051】
図3に示すように、縦シール部26が、連結部27の外側および内側の双方に設けられる場合、万一、外側の縦シール部26から漏水が生じて内側の縦シール部26内に水が流入すると、内側の縦シール部26の各縦シール固定部262にはブロック21から離れる方向の力が作用する。一方、外側の縦シール部26の各縦シール固定部262は、水圧によりブロック21に対して押圧されている。したがって、外側の縦シール部26における縦シール固定部262のブロック21に対する固定強度は、内側の縦シール部26における縦シール固定部262のブロック21に対する固定強度よりも小さくすることができる。したがって、連結部27の外側の縦シール部26において、水密性を維持しつつ、当該連結部27の内側の縦シール部26に比べて構造を簡素化および/または小型化することができる。
【0052】
図7は、上下方向に積層された2段のブロックユニット23の一部を拡大して示す正面図である。以下の説明では、上下方向に配列される2つのブロック21において、上側に位置するブロック21、および、下側に位置するブロック21をそれぞれ、「上段ブロック」および「下段ブロック」とも呼ぶ。
【0053】
上段ブロック21と下段ブロック21とは、水平方向に隣接する2つのブロック21の連結と同様に、ボルトにより着脱自在に連結される。具体的には、例えば、上段ブロック21のブロック本体210の下端部から外側および内側に略水平に延びるフランジ(図示省略)と、下段ブロック21のブロック本体210の上端部から外側および内側に略水平に延びるフランジ(図示省略)とが、ボルトにより連結される。
【0054】
上段ブロック21と下段ブロック21とは、ボルト以外の様々な方法により連結されてもよい。例えば、上段ブロック21と下段ブロック21とは、ターンバックルおよびワイヤ等を用いて着脱自在に連結されてもよい。あるいは、上段ブロック21は、下段ブロック21上に単に積み重ねられ、上段ブロック21が自重により下段ブロック21に対して押圧されることにより、上段ブロック21と下段ブロック21とが連結されてもよい。
【0055】
上段ブロック21の下側の外当て板213の下端と、下段ブロック21の上側の外当て板213の上端との間には、シート状または薄板状の積層シール材231が挟まれている。積層シール材231は、ブロック21の2つのフランジ28間の略全長(すなわち、長手方向の略全長)に亘って設けられる。積層シール材231は、例えば、ゴム等の樹脂製の弾性部材である。積層シール材231は、上側のブロックユニット23の重量により押圧されて弾性変形し、上下のブロック21間を水密にシールしている。積層シール材231を上下のブロック21間に挟み込む力は、上述のようにブロックユニット23の重量であり、通常のボルトおよびナットによる締結力よりも大きいため、仮締切構造体2が水圧により多少変形したとしても、積層シール材231とブロック21との隙間からの漏水は生じない。
【0056】
図7に示す例では、上段のブロックユニット23の連結部27、および、下段のブロックユニット23の連結部27に、同構造の2つの縦シール部26が設けられる。上下方向に並ぶ当該2つの縦シール部26は、水密に接続される。なお、上段のブロックユニット23の連結部27と、下段のブロックユニット23の連結部27とは、必ずしも上下方向に並んで配置される必要はなく、水平方向にずれた位置に配置されてもよい。
【0057】
上記例では、各ブロックユニット23において水平方向に隣接する各2つのブロック21は、ボルト71により着脱自在に連結されるが、ボルト71以外の様々な方法により着脱自在に連結されてもよい。例えば、隣接する2つのブロック21は、ターンバックルおよびワイヤ等を用いて着脱自在に連結されてもよい。
【0058】
以上に説明したように、仮締切構造体2は、水面97よりも下方から上方へと延びる対象構造物(上記例では、ダム9の堤体91)近傍に設置され、水中の作業箇所の周囲を囲んで作業空間90を形成する。仮締切構造体2は、複数のブロック21と、縦シール部26とを備える。複数のブロック21は、それぞれが仮締切本体20の一部である。複数のブロック21は、水平方向に着脱自在に連結される。縦シール部26は、複数のブロック21のうち水平方向に隣接する2つのブロック21の連結部27を、作業空間90とは反対側である外側および作業空間90側である内側のうち一方側から覆う。縦シール部26は、連結部27を水密にシールする。
【0059】
縦シール部26は、連結部27に沿って上下方向に延びる2つの縦シール固定部262と、可撓性を有する縦シール中央部263とを備える。2つの縦シール固定部262は、水平方向に隣接する当該2つのブロック21それぞれに対して上記一方側の側面(すなわち、外側面211および内側面212のうち一方)に着脱自在に固定される。縦シール中央部263は、2つの縦シール固定部262の間にて2つの縦シール固定部262に連続する。縦シール中央部263は、上下方向に沿って延びて連結部27を上記一方側から覆う。
【0060】
このように、複数のブロック21をボルト71によって連結することにより、溶接によって連結する場合に比べて、工事現場におけるブロック21の連結作業に要する時間を短くすることができる。その結果、工事現場における仮締切構造体2の組立時間を短くすることができ、工事に要するコストを低減することができる。また、ブロック21間の連結部27を縦シール部26によって水密にシールすることにより、連結部27からの漏水を防止することができる。
【0061】
さらに、縦シール部26では、可撓性を有する縦シール中央部263により連結部27を覆っているため、水圧等により2つのブロック21の相対位置が変化した場合(例えば、連結部27が目開きするような変位が生じた場合)であっても、当該相対位置の変化に縦シール中央部263が変形して追従することにより、連結部27の水密性を維持することができる。その結果、連結部27からの漏水を好適に防止することができる。
【0062】
また、縦シール部26では、縦シール固定部262がブロック21に着脱自在に固定されているため、工事完了後に、仮締切構造体2を複数のブロック21および縦シール部26に、容易にかつ再利用可能な状態で分解することができる。その結果、複数のブロック21および縦シール部26を、他の工事に容易に転用することができる。
【0063】
仮締切構造体2では、上述のように、縦シール部26により連結部27近傍の部位のみを覆っているため、仮締切構造体2の外側面211全体および/または内側面212全体を防水シート等により覆う場合に比べて、連結部27からの漏水防止を容易に実現することができる。また、連結部27からの漏水防止に係る作業時間を短縮することができる。
【0064】
上述のように、縦シール中央部263は、縦シール部26に水圧が作用していない状態において、連結部27から上記一方側に離間していることが好ましい。これにより、縦シール中央部263が連結部27に接触している場合に比べて、縦シール中央部263の変形の自由度が高くなる。したがって、水圧等による2つのブロック21の相対位置の変化に対して、縦シール中央部263の追従性が向上する。その結果、連結部27からの漏水をさらに好適に防止することができる。
【0065】
上述のように、仮締切構造体2は、連結部27を2つのブロックの外側および内側のうち他方側(例えば、上記一方側を外側とすると、他方側である内側)から覆って水密にシールする他の縦シール部26をさらに備えることが好ましい。当該他の縦シール部26は、連結部27に沿って上下方向に延びる他の2つの縦シール固定部262と、可撓性を有する他の縦シール中央部263とを備える。当該他の2つの縦シール固定部262は、水平方向に隣接する上述の2つのブロック21それぞれに対して、上記他方側の側面(例えば、内側面212)に着脱自在に固定される。上記他の縦シール中央部263は、当該他の2つの縦シール固定部262の間にて当該他の2つの縦シール固定部262に連続する。当該他の縦シール中央部263は、上下方向に沿って延びて連結部27を上記他方側から覆う。このように、連結部27を仮締切本体20の外側および内側の双方からシールすることにより、連結部27のシール性を向上することができる。その結果、仮締切構造体2の水密性を向上することができる。
【0066】
上述の2つの縦シール固定部262、および、他の2つの縦シール固定部262の2つのブロック21に対する固定強度は、当該2つのブロック21の内側よりも外側の方が小さいことが好ましい。これにより、外側の縦シール部26において、水密性を維持しつつ構造を簡素化および/または小型化することができる。
【0067】
上述の仮締切構造体2では、仮締切本体20は、一対の腕部24と、腕接続部25とを備える。一対の腕部24は、左右方向に並んで配置されるとともに前端部が対象構造物(上記例では、ダム9の堤体91)に接触する。腕接続部25は、左右方向に沿って延びるとともに一対の腕部24の後端部に接続される。上述のように、外側および内側の双方に縦シール部26が設けられる連結部27は、腕接続部25に位置することが好ましい。腕接続部25は、一方の端部が堤体91によって支持される腕部24に比べて、水圧による変形が大きくなる可能性が高い。したがって、腕接続部25に位置する連結部27のシール性を向上させることにより、仮締切構造体2の水密性をさらに向上することができる。
【0068】
仮締切構造体2では、腕接続部25に複数の連結部27が存在する場合、少なくとも、周囲の部位(すなわち、左右方向に隣接する部位)に比べて変形が大きくなる可能性が高い部位に位置する連結部27は、外側および内側の双方から縦シール部26によりシールされることが好ましい。例えば、複数の連結部27のうち、腕接続部25の左右方向(すなわち、長手方向)の中央部に近い連結部27は、外側および内側の双方から縦シール部26によりシールされることが好ましい。
【0069】
上述のように、仮締切構造体2は内部に密閉空間(上記例では、貯溜部22)を有する浮体式構造物であることが好ましい。これにより、仮締切構造体を設置するコンクリート製の台座を水底98に形成する台座式等に比べて、上記対象構造物近傍にて仮締切構造体2を支持するための支持構造物を簡素化および軽量化することができる。その結果、対象構造物に対する工事に要する時間およびコストを低減することができる。
【0070】
上述のように、対象構造物はダム9の堤体91であることが好ましい。仮締切構造体2は、工事現場における組立時間を短くすることができ、連結部27からの漏水を好適に防止することができるため、堤体91の工事において水深が大きい作業箇所を囲む大型の仮締切構造体2に特に適している。
【0071】
仮締切構造体2では、
図8に示すように、上段のブロックユニット23の連結部27と、下段のブロックユニット23の連結部27とが上下方向に並ぶ場合、上段の連結部27および下段の連結部27は、上下方向に延びる1つの縦シール部26により、まとめてシールされてもよい。この場合、上段の連結部27と下段の連結部27とは、当該1つの縦シール部26と上下2段のブロックユニット23との間に形成される1つの密閉空間に収容される。縦シール部26は、下段のブロックユニット23の連結部27に対向する部位から上段のブロックユニット23の連結部27に対向する部位まで延びる一繋がりの部材である。
【0072】
すなわち、
図8に示す例では、仮締切構造体2は、2つのブロック21の上側に積層されて水平方向に着脱自在に連結される他の2つのブロック21をさらに備える。当該他の2つのブロック21の連結部27である上連結部は、当該2つのブロック21の連結部27である下連結部と上下方向に並んでいる。縦シール部26は、下連結部および上連結部を上述の一方側(すなわち、外側および内側のうち一方)から覆って水密にシールする。下連結部および上連結部は、縦シール部26と上記2つのブロック21および上記他の2つのブロック21(すなわち、下段および上段のそれぞれ2つのブロック)との間に形成される1つの密閉空間内にまとめて収容される。これにより、複数のブロックユニット23が積層される構造を有する仮締切構造体2において、下段および上段の連結部27を好適にシールすることができる。また、複数の連結部27のシールに係る部品点数を削減し、仮締切構造体2の構造を簡素化することができる。
【0073】
仮締切構造体2では、縦シール部26の構造は上述の例には限定されず、様々に変更されてよい。
図9ないし
図14は、他の好ましい縦シール部の例を示す平面図である。
図9、
図10、
図12ないし
図14は、上述の
図4に対応する。
図11は、上述の
図3に対応する。
【0074】
図9に例示する縦シール部26aでは、2つの縦シール固定部262aは、2つのブロック21の連結に利用されるボルト71により、2つのブロック21に対して固定される。このように、ブロック21の連結と、縦シール部26aの固定とを、同一のボルト71によって行うことにより、連結部27のシールに係る部品点数を削減し、仮締切構造体2の構造を簡素化することができる。また、縦シール部26aのブロック21への取り付けを、ブロック21の連結と同時に行うことができるため、仮締切構造体2の組立工程を簡素化することができる。さらに、上述のように仮締切構造体2が浮体式である場合、縦シール部26aを取り付けるためのボルトと貯溜部22(
図2参照)との位置関係を考慮する(すなわち、貯溜部22に孔を開けないようにボルトの位置を決定する)必要が無いため、仮締切構造体2の設計を容易とすることができる。
【0075】
図9に示す例では、縦シール固定部262aは、フランジ28のうちブロック本体210の外側面よりも外側に向かって突出する部位(すなわち、ブロック21の外側面211の一部)に、着脱自在に固定される。縦シール固定部262aは、フランジ28と、上下方向に沿って延びる略矩形帯状の押さえ板266aとの間に挟まれる。押さえ板266aは、例えば、金属製の略平板状の部材である。縦シール中央部263aおよび2つの縦シール固定部262aは、例えば、ゴム等の樹脂により形成された弾性部材である。縦シール中央部263aの上下方向に垂直な断面形状は、水圧が作用していない状態において略円周状である。縦シール部26aは、連結部27から離間した状態で、連結部27に外側または内側から対向する。なお、水圧が作用していない状態における縦シール中央部263aの上下方向に垂直な断面形状は、略円周状には限定されず、略円弧状、略半円周状、略コの字状、略V字状、略U字状、または、他の様々な形状であってもよい。後述する縦シール中央部263b~263cにおいても同様に、水圧が作用していない状態における上下方向に垂直な断面形状は、略円弧状、略半円周状、略円周状、略コの字状、略V字状、略U字状、または、他の様々な形状であってよい。
【0076】
図10に例示する縦シール部26bでは、縦シール中央部263bは、2つの縦シール固定部262bに連続する2つの縦シール要素267bを備える。具体的には、2つの縦シール要素267bのうち
図10中の右側の縦シール要素267bは、2つの縦シール固定部262bのうち右側の縦シール固定部262bに連続し、左側の縦シール要素267bは、左側の縦シール固定部262bに連続する。2つの縦シール要素267bは、2つの縦シール固定部262bから水平方向(すなわち、2つのブロック21の配列方向)に連結部27側へとそれぞれ延びる。2つの縦シール要素267bはそれぞれ、縦シール固定部262bとは反対側の端部に自由端部671bを有する。2つの縦シール要素267bの自由端部671b(すなわち、縦シール固定部262bとは反対側の端部)同士は、着脱自在かつ水密に固定される。
【0077】
これにより、縦シール部26bのブロック21への取り付けの際に、2つの縦シール固定部262bをそれぞれ含む2つの部材を個別に扱うことができる。その結果、縦シール部26bのブロック21への取り付けを容易とすることができる。また、縦シール部26bを構成する当該2つの部材を、自由端部671b同士を固定していない状態で工場等においてブロック21に予め固定しておくことにより、工事現場における仮締切構造体2の組立時間を短くすることもできる。
【0078】
図10に示す例では、2つの縦シール要素267bは、上述のシール材261(
図4参照)が左右方向の中央部において2つに分割された部材に相当する。各縦シール要素267bおよび各縦シール固定部262bは、例えば、ゴム等の樹脂により形成された弾性部材である。2つの縦シール要素267bの自由端部671bは、上下方向に沿って延びる略矩形帯状の部位である。2つの縦シール要素267bの自由端部671bは、上下方向に沿って配列された複数組のボルト672bおよびナット673bにより固定される。2つの自由端部671bは、上下方向に沿って延びる略矩形帯状の2枚の押さえ板674bによって挟まれる。押さえ板674bは、例えば、金属製の略平板状の部材である。縦シール中央部263bの上下方向に垂直な断面形状は、水圧が作用していない状態において略半円周状である。縦シール部26bは、連結部27から離間した状態で、連結部27に外側または内側から対向する。縦シール固定部262bは、
図4に示す縦シール固定部262と同様に、ボルト264bおよびナット265bを用いてブロック21の外側面211に固定される。
【0079】
図11に示すように、縦シール部26bが、連結部27の外側および内側の双方に設けられる場合、万一、外側の縦シール部26bから漏水が生じて内側の縦シール部26b内に水が流入すると、内側の縦シール部26bにおける2つの縦シール要素267bの自由端部671bには、互いに離れる方向の力が作用し、各縦シール固定部262bにはブロック21から離れる方向の力が作用する。一方、外側の縦シール部26bにおける2つの縦シール要素267bの自由端部671bは、水圧により互いに対して押圧されており、各縦シール固定部262bは水圧によりブロック21に対して押圧されている。したがって、外側の縦シール部26bにおける自由端部671b同士の固定強度は、内側の縦シール部26bにおける自由端部671bの固定強度よりも小さくすることができる。また、外側の縦シール部26bにおける縦シール固定部262bのブロック21に対する固定強度は、内側の縦シール部26bにおける縦シール固定部262bのブロック21に対する固定強度よりも小さくすることができる。
【0080】
すなわち、
図11に例示する仮締切構造体2は、2つのブロック21の外側および内側のうち一方側から連結部27を覆って水密にシールする縦シール部26bと、2つのブロック21の外側および内側のうち他方側から連結部27を覆って水密にシールする他の縦シール部26bを備える。当該縦シール部26bおよび当該他の縦シール部26bにおいて、2つの縦シール要素267bの自由端部671b同士の固定強度は、2つのブロック21の内側よりも外側の方が小さい。これにより、外側の縦シール部26bにおいて、水密性を維持しつつ構造を簡素化および/または小型化することができる。また、当該縦シール部26bおよび当該他の縦シール部26bにおいて、2つの縦シール固定部262bの2つのブロック21に対する固定強度は、2つのブロック21の内側よりも外側の方が小さい。これにより、外側の縦シール部26bにおいて、水密性を維持しつつ構造をさらに簡素化および/または小型化することができる。
【0081】
図12に例示する縦シール部26cは、縦シール部26b(
図10参照)における樹脂製の縦シール固定部262bおよび縦シール要素267bに代えて、ステンレス鋼等の金属製の縦シール固定部262cおよび縦シール要素267cが設けられる。縦シール固定部262cは、ボルト264cおよびナット265cを用いてブロック21の外側面211に固定される。縦シール固定部262cのブロック21側の面には、上下方向に延びる略矩形帯状のシール材268cが設けられる。シール材268cは、ゴム等の樹脂製の弾性部材であり、ブロック21の外側面211に直接的に接触する。2つの縦シール要素267cの自由端部671cは、上下方向に延びる略矩形帯状のシール材269cを間に挟んで、上下方向に沿って配列された複数組のボルト672cおよびナット673cにより互いに固定される。シール材269cは、ゴム等の樹脂製の弾性部材である。縦シール中央部263cの上下方向に垂直な断面形状は、水圧が作用していない状態において略半円周状である。縦シール部26cは、連結部27から離間した状態で、連結部27に外側または内側から対向する。
【0082】
このように、
図12に例示する縦シール部26cでは、縦シール中央部263cは、2つの縦シール固定部262cに連続する2つの縦シール要素267cを備える。2つの縦シール要素267cは、2つの縦シール固定部262cから上記配列方向(すなわち、2つのブロック21の配列方向)の連結部27側へとそれぞれ延びる。各縦シール要素267cは、縦シール固定部262cとは反対側の端部に自由端部671cを有する。2つの縦シール要素267cの自由端部671c(すなわち、縦シール固定部262cとは反対側の端部)同士は、着脱自在かつ水密に固定される。
【0083】
これにより、縦シール部26cのブロック21への取り付けの際に、2つの縦シール固定部262cをそれぞれ含む2つの部材を個別に扱うことができる。その結果、縦シール部26cのブロック21への取り付けを容易とすることができる。また、縦シール部26cを構成する当該2つの部材を、自由端部671c同士を固定していない状態で工場等においてブロック21に予め固定しておくことにより、工事現場における仮締切構造体2の組立時間を短くすることもできる。
【0084】
図12に示す縦シール部26cも、
図11に示す2つの縦シール部26bと同様、2つのブロック21の外側および内側の双方に設けられ、連結部27を外側および内側の双方から水密にシールしてもよい。この場合、縦シール部26bと同様に、外側の縦シール部26cにおける2つの縦シール要素267cの自由端部671c同士の固定強度を、内側の縦シール部26cにおける2つの縦シール要素267cの自由端部671c同士の固定強度よりも小さくすることができる。したがって、外側の縦シール部26cにおいて、水密性を維持しつつ構造を簡素化および/または小型化することができる。また、外側の縦シール部26cにおける各縦シール固定部262cのブロック21に対する固定強度も、内側の縦シール部26cにおける各縦シール固定部262cのブロック21に対する固定強度よりも小さくすることができる。したがって、外側の縦シール部26cにおいて、水密性を維持しつつ構造をさらに簡素化および/または小型化することができる。
【0085】
図13に例示する縦シール部26dでは、略平坦な(すなわち、ほとんど湾曲していない)1枚の略平板状のシール材261dにより連結部27が覆われて水密にシールされる。シール材261dは、上下方向に延びる略矩形帯状の部材であり、ゴム等の樹脂製の弾性部材により形成される。縦シール部26dでは、2つの縦シール固定部262dの間の縦シール中央部263dが、連結部27に沿って屈曲しつつ連結部27のフランジ28の外端部およびボルト71に接触している。なお、縦シール部26dは、
図14に示すように、連結部27のフランジ28の外端部に接触する部位を有し、当該部位からブロック本体210の外側面に向かって斜めに延び、ボルト71には接触していなくてもよい。
図13および
図14に示す縦シール部26dでは、シール材261dが弾性変形して伸張可能であるため、水圧等により2つのブロック21の相対位置が変化した場合(例えば、連結部27が目開きするような変位が生じた場合)であっても、当該相対位置の変化に縦シール中央部263dが伸張して追従することにより、連結部27の水密性を維持することができる。その結果、連結部27からの漏水を好適に防止することができる。
【0086】
図15に例示する仮締切構造体2eでは、
図8に示す仮締切構造体2と同様に、複数段のブロックユニット23に跨がって上下方向に延びる縦シール部26が設けられる。さらに、仮締切構造体2eでは、下段ブロック21と上段ブロック21との連結部である上下連結部27eを外側から覆って水密にシールする横シール部29eが設けられる。横シール部29eは、
図4に示す縦シール部26の向きをブロック21の外側面211に沿って90°回転させた点を除き、形状、構造、材質、および、ブロック21への固定方法等について縦シール部26と略同様である。
【0087】
なお、仮締切構造体2eでは、横シール部29eの形状、構造、材質、および、ブロック21への固定方法等は、
図9ないし
図14に示す縦シール部26a~26dと略同様とされてもよい。また、仮締切構造体2eに設けられる横シール部29eと縦シール部とでは、形状、構造、材質、および、ブロック21への固定方法等は同じであってもよく、異なっていてもよい。横シール部29eは、上下連結部27eの外側および内側の双方に設けられてもよく、外側および内側のいずれか一方のみに設けられてもよい。
【0088】
このように、仮締切構造体2eは、仮締切本体20の一部である上記複数のブロック21のうち一のブロック21である下段ブロック21と、下段ブロック21の上側に積層される上段ブロック21と、下段ブロック21と上段ブロック21との連結部である上下連結部27eを外側および内側のうち一方側から覆って水密にシールする横シール部29eと、を備える。横シール部29eは、上下連結部27eに沿って横方向(すなわち、水平方向)に延びる2つの横シール固定部292eと、可撓性を有する横シール中央部293eとを備える。2つの横シール固定部292eは、上下連結部27eの上下両側にて、下段ブロック21および上段ブロック21の上記一方側の側面に着脱自在に固定される。横シール中央部293eは、2つの横シール固定部292eの間にて2つの横シール固定部292eに連続する。横シール中央部293eは、横方向に沿って延びて上下連結部27eを上記一方側から覆う。
【0089】
これにより、水圧等により下段ブロック21と上段ブロック21との相対位置が変化した場合(例えば、上下連結部27eが目開きするような変位が生じた場合)であっても、当該相対位置の変化に横シール中央部293eが追従することにより、上下連結部27eの水密性を維持することができる。その結果、上下連結部27eからの漏水を好適に防止することができる。なお、水圧が作用していない状態における横シール中央部293eの水平方向に垂直な断面形状は、縦シール中央部263と同様に略半円周状であってもよく、略円弧状、略半円周状、略コの字状、略V字状、略U字状、または、他の様々な形状であってもよい。
【0090】
上述の仮締切構造体2,2eでは、様々な変更が可能である。
【0091】
例えば、
図3に示すように、外側の縦シール部26における縦シール固定部262のブロック21に対する固定強度は、内側の縦シール部26における縦シール固定部262のブロック21に対する固定強度よりも大きくてもよく、同じであってもよい。縦シール部26a~26dについても同様である。
【0092】
また、
図11に示すように、縦シール部26bが2つのブロック21の外側および内側に設けられる場合、外側の縦シール部26bにおける2つの縦シール要素267bの自由端部671b同士の固定強度は、内側の縦シール部26bにおける2つの縦シール要素267bの自由端部671b同士の固定強度よりも大きくてもよく、同じであってもよい。縦シール部26cについても同様である。
【0093】
上記例では、仮締切構造体2の全ての連結部27は、仮締切構造体2の外側および内側のうち少なくとも一方側から縦シール部26,26a~26dのいずれかにより覆われるが、これには限定されない。例えば、仮締切構造体2の一部の連結部27のみに縦シール部26,26a~26dのいずれかが設けられ、残りの連結部27には縦シール部26,26a~26dは設けられなくてもよい。すなわち、仮締切構造体2では、水圧荷重等の影響を考慮して、必要な連結部27に縦シール部26,26a~26dのいずれかを設ければよい。例えば、水圧による変形が比較的生じやすい連結部27は縦シール部26,26a~26dのいずれかにより覆われ、水圧による変形がほとんど生じない連結部27には縦シール部26,26a~26dは設けられなくてもよい。この場合、縦シール部26,26a~26dが設けられない連結部27では、2つのブロック21の間に止水パッキン等が挟まれてもよい。仮締切構造体2eにおいても同様である。
【0094】
仮締切構造体2は、必ずしも積層構造を有する必要はなく、1段のブロックユニット23で構成される単層構造であってもよい。
【0095】
仮締切構造体2,2eの平面視における形状は、略コの字状には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、仮締切構造体2,2eの平面視における形状は、略半円状、略円筒状、略四角筒状等であってもよい。
【0096】
仮締切構造体2,2eは、浮力よりも重量の方が大きい状態で、堤体91の上流面92に設置されてもよい。この場合、例えば、上流面92等において仮締切構造体2,2eの上端部よりも上方に位置する浮上防止具94に重量を支える機能を持たせてもよい。あるいは、仮締切構造体2,2eの下端部に架台を設け、当該架台により仮締切構造体2,2eの重量を支持してもよく、この場合、浮上防止具94を省略してもよい。
【0097】
仮締切構造体2,2eは、必ずしも浮体式仮締切構造体である必要はなく、様々な種類の仮締切構造体であってよい。例えば、仮締切構造体2,2eは、水底98に形成された台座上に載置される台座式仮締切構造体であってもよい。
【0098】
仮締切構造体2,2eにより囲まれる作業箇所は、必ずしも堤体91の上流面92に位置する必要はなく、例えば、上流面92近傍に位置していてもよい。また、仮締切構造体2が設置される対象構造物は、必ずしもダム9の堤体91には限定されず、水面よりも下方から上方へと延びる様々な構造物(例えば、水面を貫通する橋脚、または、海洋浮体構造物のストラット等)であってよい。
【0099】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0100】
2,2e 仮締切構造体
9 ダム
20 仮締切本体
21 ブロック
22 貯溜部
24 腕部
25 腕接続部
26,26a~26d 縦シール部
27 連結部
27e 上下連結部
29e 横シール部
90 作業空間
91 堤体
97 水面
211 (ブロックの)外側面
212 (ブロックの)内側面
262,262a~262d 縦シール固定部
263,263a~263d 縦シール中央部
267b,267c 縦シール要素
292e 横シール固定部
293e 横シール中央部
671b,671c 自由端部