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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】積層容器の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/10 20060101AFI20241030BHJP
   B29C 51/16 20060101ALI20241030BHJP
   B65D 1/26 20060101ALN20241030BHJP
   B65D 25/36 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
B29C51/10
B29C51/16
B65D1/26 110
B65D25/36
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020106855
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001418
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】518201991
【氏名又は名称】株式会社KAZUM
(73)【特許権者】
【識別番号】520226182
【氏名又は名称】秋月 建記
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 一徳
(72)【発明者】
【氏名】秋月 建記
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-068636(JP,A)
【文献】特開平05-147170(JP,A)
【文献】国際公開第85/001269(WO,A1)
【文献】特開2004-067235(JP,A)
【文献】特開2019-209634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂コーティング層を有する紙製容器の内側に、当該樹脂コーティングとは異なる樹脂からなるとともに前記樹脂コーティング層よりも厚い樹脂層が前記樹脂コーティング層から剥離可能に形成された積層容器の製造装置において、
前記樹脂層となる樹脂製シートを加熱して軟化させるシート加熱部と、
前記シート加熱部により加熱された前記樹脂製シートの上に配置され、空気通過孔が形成された前記紙製容器を下に開放する姿勢で保持する凹部を有する上型と、
前記上型の前記凹部の内面に形成された吸引孔に接続される真空引き装置と、
前記シート加熱部により加熱された前記樹脂製シートの下に配置される下型と、
前記上型及び前記下型の少なくとも一方を互いに接離する方向に駆動する型駆動装置と、
型が閉じた状態となったときに前記下型内に圧縮空気を導入する圧縮空気導入装置とを備え、
前記樹脂コーティング層の樹脂を溶融させることなく、前記シート加熱部により加熱されて軟化した前記樹脂製シートを前記圧縮空気により前記樹脂コーティング層に密着させることにより前記樹脂コーティング層よりも厚い前記樹脂層を形成することを特徴とする積層容器の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積層容器の製造装置において、
前記下型は、前記上型の前記凹部に挿入されるプラグを有していることを特徴とする積層容器の製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の積層容器の製造装置において、
前記プラグを前記下型の上面から突出した成形位置と、前記下型に収容された収容位置とに切り替えるプラグ駆動装置を備え、
前記プラグ駆動装置は、前記プラグを、前記樹脂製シートの成形時に成形位置とする一方、成形後には収容位置とするように構成されていることを特徴とする積層容器の製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の積層容器の製造装置において、
前記樹脂製シートを送るシート送り部を備え、
前記シート加熱部は、前記上型から前記樹脂製シートの送り方向上流側に離れて配設されていることを特徴とする積層容器の製造装置。
【請求項5】
樹脂コーティング層を有する紙製容器の内側に、当該樹脂コーティング層とは異なる樹脂からなるとともに前記樹脂コーティング層よりも厚い樹脂層が前記樹脂コーティング層から剥離可能に形成された積層容器の製造方法において、
前記樹脂層となる樹脂製シートを加熱して軟化させるシート加熱工程と、
前記シート加熱工程で加熱された前記樹脂製シートの上に配置される上型の凹部に、空気通過孔が形成された前記紙製容器を下に開放する姿勢で保持する保持工程と、
前記シート加熱工程及び前記保持工程の後、前記上型と、当該上型の下方に配置される下型とを閉じ、前記上型の前記凹部の内面に負圧を作用させるとともに、前記下型内に圧縮空気を導入することにより、前記シート加熱工程で加熱された前記樹脂製シートを前記紙製容器の内面に密着させて成形する成形工程とを備え、
前記成形工程では、前記樹脂コーティング層の樹脂を溶融させることなく、前記シート加熱工程により加熱されて軟化した前記樹脂製シートを前記圧縮空気により前記樹脂コーティング層に密着させることにより前記樹脂コーティング層よりも厚い前記樹脂層を形成することを特徴とする積層容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製容器の内面に樹脂層が形成されて一体化された積層容器の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コップ状容器として、紙製容器の内側に樹脂層を形成して耐水性を高めた積層容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、紙製容器の内側に、延伸ブロー成形によって樹脂層を形成している。すなわち、熱可塑性樹脂からなるプリフォームを加熱するとともに、延伸ブロー型に紙製容器をセットし、この紙製容器内に配置したプリフォームを紙製容器内で延伸ブロー成形して紙製容器の内面に密着させることにより、樹脂層を紙製容器と一体化することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-208402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、紙製容器と樹脂層からなる積層容器の場合、外側が紙、内側が樹脂であり、互いに異なる材料で構成されているので、廃棄時に紙製容器から樹脂層を外して分別廃棄する必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1では紙製容器と樹脂層との密着強度を高めて強固に一体化することが目的となっているので、紙製容器と樹脂層との分別廃棄については考慮されていない。従って、ユーザ側で分別廃棄が容易に行えないことが考えられる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、紙製容器の内側に樹脂層を形成した積層容器において、使用時に紙製容器と樹脂層との分離が不意に起こらないようにしながら、廃棄時には分別廃棄が容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、加熱して十分に軟化した樹脂シートを真空及び圧空成形によって紙製容器の内面に密着させて成形するようにした。
【0008】
第1の発明は、樹脂コーティング層を有する紙製容器の内側に、当該樹脂コーティング層とは異なる樹脂からなる樹脂層が形成された積層容器の製造装置において、前記樹脂層となる樹脂製シートを加熱して軟化させるシート加熱部と、前記シート加熱部により加熱された前記樹脂製シートの上に配置され、空気通過孔が形成された前記紙製容器を下に開放する姿勢で保持する凹部を有する上型と、前記上型の前記凹部の内面に形成された吸引孔に接続される真空引き装置と、前記シート加熱部により加熱された前記樹脂製シートの下に配置される下型と、前記上型及び前記下型の少なくとも一方を互いに接離する方向に駆動する型駆動装置と、型が閉じた状態となったときに前記下型内に圧縮空気を導入する圧縮空気導入装置とを備えていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、上型と下型とを開いた状態にすることで、上型の凹部に、樹脂コーティング層を有する紙製容器を保持させることが可能になる。一方、上記樹脂コーティング層とは異なる樹脂からなる樹脂製シートはシート加熱部によって加熱されて十分に軟化し、紙製容器の下、即ち紙製容器の開放部分と対向するように配置される。この状態で上型と下型とを閉じ、真空引き装置によって吸引孔に負圧を作用させると、紙製容器には空気通過孔が形成されているので、紙製容器内が負圧になり、軟化している樹脂製シートが紙製容器の内面に密着して成形される。このとき、圧縮空気導入装置によって下型内に圧縮空気が導入されるので、樹脂製シートが圧縮空気によって紙製容器の内面に押し付けられる。つまり、樹脂製シートを真空及び圧空成形することで、紙製容器の内面に強い力で密着させて紙製容器の内側に樹脂層が形成される。樹脂製シートの成形時における紙製容器への密着力が強い分、使用時に樹脂層が紙製容器から外れ難くなる。一方、樹脂層と紙製容器の樹脂コーティング層とは異なる樹脂であるため、接着強度はそれほど高くなく、廃棄時には容易に分別することが可能になる。
【0010】
第2の発明は、前記下型は、前記上型の前記凹部に挿入されるプラグを有していることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、上型と下型とを閉じた状態でプラグを上型の凹部に挿入することができる。これにより、樹脂製シートを紙製容器内へ向けて積極的に押し上げて当該紙製容器の内面に密着させやすくなる。
【0012】
第3の発明は、前記プラグを前記下型の上面から突出した成形位置と、前記下型に収容された収容位置とに切り替えるプラグ駆動装置を備え、前記プラグ駆動装置は、前記プラグを、前記樹脂製シートの成形時に成形位置とする一方、成形後には収容位置とするように構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、樹脂製シートの成形時にのみプラグを突出させ、成形後には下型に収容できるので、成形後にプラグが邪魔にならないようにすることができる。
【0014】
第4の発明は、前記樹脂製シートを送るシート送り部を備え、前記シート加熱部は、前記上型から前記樹脂製シートの送り方向上流側に離れて配設されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、シート加熱部が上型から離れることになるので、上型の凹部に保持されている紙製容器の樹脂コーティング層がシート加熱部の熱によって溶融しないようにすることができる。これにより、紙製容器の樹脂コーティング層を構成している樹脂と、樹脂層を構成している樹脂とが混ざり合わなくなるので、紙製容器と樹脂層との接着強度が必要以上に高まることはなく、廃棄時の分別作業性を良好にすることができる。
【0016】
第5の発明は、樹脂コーティング層を有する紙製容器の内側に、当該樹脂コーティング層とは異なる樹脂からなる樹脂層が形成された積層容器の製造方法において、前記樹脂層となる樹脂製シートを加熱して軟化させるシート加熱工程と、前記樹脂製シートの上に配置された上型の凹部に、空気通過孔が形成された前記紙製容器を下に開放する姿勢で保持する保持工程と、前記シート加熱工程及び前記保持工程の後、前記上型と、当該上型の下方に配置される下型とを閉じ、前記上型の前記凹部の内面に負圧を作用させるとともに、前記下型内に圧縮空気を導入して前記樹脂製シートを前記紙製容器の内面に密着させて成形する成形工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂コーティング層を有する紙製容器の内側に、当該樹脂コーティング層とは異なる樹脂からなる樹脂製シートによって樹脂層を形成する場合に、加熱によって軟化した樹脂製シートを真空及び圧空成形によって紙製容器に一体化することができる。これにより、使用時に紙製容器と樹脂層との分離が不意に起こらないようにしながら、廃棄時には分別廃棄を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る積層容器の製造装置の側面図である。
図2A】積層容器の縦断面図である。
図2B】紙製容器の縦断面図である。
図3】複数の積層容器が連結された状態を示す斜視図である。
図4】型駆動装置、上金型及び下金型の側面図であり、型が閉じた状態を示す。
図5】型が開いた状態を示す図4相当図である。
図6】上金型及び下金型の断面図であり、型が開いた状態を示す。
図7】実施形態の変形例に係る図6相当図である。
図8】供給装置の部分断面図である。
図9】型が閉じた状態を示す図6相当図である。
図10】プラグが成形位置にある状態を示す図6相当図である。
図11】樹脂製シートを空気圧で紙製容器の内面に密着させた状態を示す図6相当図である。
図12】積層容器の成形後、型が開いた状態を示す図6相当図である。
図13】積層容器を容器載置部材に載置した状態を示す図6相当図である。
図14】積層容器が載置された容器載置部材を上位置に切り替えた状態を示す図6相当図である。
図15】容器載置部材に載置されている積層容器を吸着部により吸着して搬送する状態を示す図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る積層容器の製造装置1の側面図である。製造装置1は、図2A図2Bに示すような積層容器100を製造する装置である。この実施形態の説明では、製造装置1を説明する前に、積層容器100の構造について図2A及び図2Bに基づいて説明する。積層容器100は、紙製容器101と、樹脂層102とで構成されている。積層容器100は、例えばコップ等の液体が収容される容器であってもよいし、各種食品等が収容される容器であってもよく、その形状は特に限定されるものではない。積層容器100は、コップ以外にも椀、箱等であってもよい。
【0021】
積層容器100の大きさは特に限定されないが、例えば深さが5cm~15cm程度、径が5cm~10cm程度であってもよく、このような深さを有する積層容器100の樹脂層102は、樹脂層102の材料となる樹脂製シートS(図1に仮想線で示す)を絞り成形、深絞り成形することで得ることができる。樹脂製シートSは、従来から絞り成形に使用されているシートであればよく、例えばポリプロピレン等からなるシートや、複数種の樹脂が積層されたシート等を使用することができる。このような樹脂製シートSは、数十m以上の長さを有しており、コイル状に巻かれた状態で製造装置1に供給することができる。
【0022】
図2Bに示すように、紙製容器101は、上方に開放されたコップ状の容器であり、底壁部101aと、周壁部101bとを有している。底壁部101aには、空気通過孔101cが形成されている。空気通過孔101cは、1つであってもよいし、複数であってもよく、底壁部101aを上下方向に貫通している。空気通過項101cを介して紙製容器101の内部が外部と連通する。空気通過孔101cは、例えば細い針を底壁部101aに貫通させることによって形成された、いわゆるピンホールのような孔であってもよいし、底壁部101aの一部をパンチ等で打ち抜いて形成された孔であってもよい。針によって形成することで、空気通過孔101cが目立ち難くなるので好ましい。また、空気通過孔101cは、底壁部101aの周縁部のみに設けてもよいし、底壁部101aの中央部にのみ設けてもよいし、底壁部101aの全体に設けてもよい。底壁部101aの周縁部は、周壁部101bと結合する部分であり、下方へ折り曲げられている。
【0023】
周壁部101bは、上端に近づくほど拡径するように形成されている。周壁部101bの下端部は、底壁部101aと結合する部分であり、底壁部101aの周縁部を挟持するように上方へ折り曲げられている。底壁部101aの周縁部と周壁部101bの下端部とは接着してもよいし、圧着してもよい。尚、図示しないが、周壁部101bに空気通過孔を設けてもよい。
【0024】
図2Bに示すように、紙製容器101の内面には、樹脂コーティング層101dが設けられている。樹脂コーティング層101dは、底壁部101aの内面及び周壁部101bの内面の両方に設けることができるが、一方の内面にのみ設けられていてもよい。樹脂コーティング層101dを構成する樹脂は、例えばポリエチレン(PE)やポリ酢酸ビニル(PVCA)等を挙げることができる。樹脂コーティング層101dは、紙製容器101の内面に強固に固着されている。樹脂コーティング層101dの代わりに、接着性を有する成分を塗布してもよい。
【0025】
紙製容器101を構成している底壁部101a及び周壁部101bは別部材で構成されているので、これらの繋ぎ目から液体が漏れるおそれがある。このことを防止するために、図2Aに示すように樹脂層102が設けられている。樹脂層102は、樹脂コーティング層101dを有する紙製容器101の内側に形成された水不透過性の層であり、底壁部101a及び周壁部101bを覆うように一体に形成され、紙製容器101の底壁部101a側から上端部まで連続している。樹脂層102の厚みは、樹脂コーティング層101dの厚みよりも厚く設定されている。
【0026】
樹脂層102を設けることで、積層容器1に耐水性を持たせることができ、各種液体が外部に漏れなくなる。樹脂層102は、樹脂コーティング層101dを構成している樹脂とは異なる樹脂からなるものであり、例えばポリプロピレン(PP)を挙げることができる。樹脂コーティング層101dは、紙製容器101の内面に強固に固着されている反面、樹脂層102は、樹脂コーティング層101dに対して強固に固着されておらず、例えば、積層容器100の廃棄時に、樹脂層102を樹脂コーティング層101dから指で簡単に剥離させることができるようになっている。つまり、樹脂層102と樹脂コーティング層101dとの固着強度は、樹脂コーティング層101dと紙製容器101との固着強度よりも低く設定されている。これは、樹脂層102が樹脂コーティング層101dとは異なる樹脂からなるものであり、一方の他方に対する接着力が低く、かつ、後述するように樹脂層102の成形時に樹脂コーティング層101dを溶融させていないことによる。
【0027】
一方、樹脂層102と樹脂コーティング層101dとの固着強度は、積層容器100の通常の使用時においては剥離しないように設定されている。このような固着強度は、後述するように樹脂層102を真空及び圧空成形することによって得ることができる。
【0028】
樹脂層102と樹脂コーティング層101dとは互いに異なる樹脂で構成されていればよく、ポリエチレン、ポリプロピレン以外の樹脂で構成されていてもよい。樹脂層102の樹脂コーティング層101dに対する固着強度が、上述したように廃棄時には樹脂層102を簡単に剥離可能にしながら、通常の使用時には容易に剥離しないような強度となる樹脂の組み合わせであればよい。
【0029】
図3は、製造装置1で製造可能な積層容器200を示している。この図3に示す積層容器200は、4つの容器201が連結されて一体化されている。各容器201は、凹部201aとフランジ201bとを備えており、図2Aに示す積層容器100と同様に、紙製容器と、樹脂層とで構成されている。符号202は、容器201を分割するための線状弱化部を示している。線状弱化部202に曲げ力等を作用させると割れるようになっており、これにより、容器201を4つに分割できる。
【0030】
上記樹脂製シートSは、図1の左側から右側へ向かって送られるようになっている。図1の左側に、コイル状に巻かれた樹脂製シートSを仮想線で示している。図1の右側には、容器100の成形が終わった樹脂製シートSが巻き取られた状態(回収された状態)を仮想線で示している。この実施形態の説明では、製造装置1の方向を定義する際に、樹脂製シートSの送り方向を基準として上流側及び下流側と定義する。上流側は図1の左側になり、下流側が図1の右側になる。また、製造装置1を樹脂製シートSの送り方向上流側から見たとき、左側となる側を製造装置1の左といい、右側となる側を製造装置1の右というものとする。製造装置1の左右方向は製造装置1の幅方向である。
【0031】
(製造装置1の全体構成)
製造装置1は、シート送り部2と、シート加熱部3と、成形部4と、搬出部5と、吸着部6と、制御盤7とを備えている。シート送り部2により送られた樹脂製シートSがシート加熱部3により加熱される。加熱されて軟化した樹脂製シートSが成形部4に送られると、成形部4によって紙製容器101の内面に密着するように成形される。これにより得られた積層容器100は、後述するように、樹脂製シートSの送り動作によって搬出部5へ自動的に搬出される。搬出部5へ搬出された積層容器100は、吸着部6により吸着されて別の場所に搬送される。吸着部6により搬送された積層容器100は、所定場所に積み重ねられて集積される。
【0032】
製造装置1のシート送り部2よりも上流側には、コイル状に巻かれた樹脂製シートSを繰り出し可能に支持する上流側支持台8が設けられている。製造装置1の搬出部5よりも下流側には、積層容器100の成形が終わった樹脂製シートSを巻き取った状態で支持する下流側支持台9が設けられている。上流側支持台8及び下流側支持台9も製造装置1を構成する部材であるが、これらは省略してもよい。
【0033】
(シート送り部2の構成)
製造装置1は、例えば工場の床面200等に固定された基台10を備えている。シート送り部2は、製造装置1の上流側に配設されており、この実施形態では、上流側支持台8とシート加熱部3との間に位置している。基台10の上部にシート送り部2が固定されており、シート送り部2は上流側支持台8よりも高い所に配置される。従って、樹脂製シートSは、上流側支持台8から下流側へ向かってシート送り部2まで上へ延びるように該シート送り部2にセットされることになる。
【0034】
シート送り部2は、樹脂製シートSを下流側へ向けて送るための送り装置によって構成されている。例えば、水平軸回りに回転駆動されるローラ等を樹脂製シートSに押し付け、ローラの外周面と樹脂製シートSの表面との摩擦力を利用して送る送り装置等があるが、これに限られるものではなく、各種送り装置を使用することができる。シート送り部2は制御盤7に接続されており、この制御盤7によって制御され、樹脂製シートSの送り開始及び停止のタイミング制御や樹脂製シートSの送り速度の調整が行われる。図示しないが、樹脂製シートSの幅方向(製造装置1の左右方向)両端部を水平方向に案内する案内部材が製造装置1には設けられており、樹脂製シートSは、図4に仮想線で示すように、略水平方向に延びる姿勢で上流側から下流側へ送られるようになっている。
【0035】
尚、シート送り部2は、製造装置1の上流側に配設されていなくてもよく、例えば製造装置1のシートSの送り方向中間部や下流側に配設されていてもよい。
【0036】
(シート加熱部3の構成)
シート加熱部3は、シート送り部2の下流側に配設されている。具体的には、シート加熱部3は、シート送り部2と成形部4との間に位置しており、上金型40から樹脂製シートSの送り方向上流側に離れて配設されている。また、基台10の上部においてシート送り部2の下流側にシート加熱部3が固定されており、シート加熱部3は上流側支持台8よりも高い所に配置される。
【0037】
シート加熱部3は、ヒータ支持部材3aと、下側ヒータ3cと、ヒータ昇降装置3dとを備えている。ヒータ支持部材3aは、基台10の上部から上方へ突出するように構成されている。ヒータ支持部材3aの上部にヒータ昇降装置3dが設けられている。ヒータ昇降装置3dは、ワイヤ3eと、ワイヤ3eが巻き掛けられるプーリ3fと、プーリ3fを正逆回転させるモータ(図示せず)とを備えている。
【0038】
ワイヤ3eの一端部には、下側ヒータ3cが固定されている。下側ヒータ3cは、樹脂製シートSの下面に対向するように配置され、該樹脂製シートSを下方から加熱する電気式ヒータである。一方、ワイヤ3eの他端部はプーリ3fに巻き掛けられており、プーリ3fを回転させると、ワイヤ3eが送られ、ワイヤ3eが送られることで下側ヒータ3cを昇降させることができるようになっている。
【0039】
図1に実線で示すように、下側ヒータ3cを下降端位置にすることで、下側ヒータ3cが樹脂製シートSから離れて退避状態になる。プーリ3fを回転させ、図1に仮想線で示すように、下側ヒータ3cを上昇端位置にすることで、下側ヒータ3cが樹脂製シートSに接近した状態になる。この実施形態では、下側ヒータ3cを昇降させることによって樹脂製シートSに接近した状態と樹脂製シートSから退避した状態とに切り替えることができるので、製造装置1の幅方向にヒータを移動させる場合に比べて製造装置1の幅が広くなってしまうのを抑制することができる。
【0040】
シート加熱部3の下側ヒータ3cと、プーリ3fを回転させるためのモータとは、制御盤7に接続されており、この制御盤7によって制御される。例えば、樹脂製シートSが成形に適した温度となるように、下側ヒータ3cの出力を調整することや、加熱が不要な時に下側ヒータ3cを樹脂製シートSから退避した状態にし、加熱が必要な時に下側ヒータ3cを樹脂製シートSに接近した状態にすることができる。
【0041】
シート加熱部3による樹脂製シートSの加熱温度は、樹脂に応じて任意に設定することができる。この実施形態では、樹脂製シートSが十分に軟化するように加熱温度を設定しており、これにより、樹脂製シートSが加熱前に比べて下に大きく弛むように変形する。言い換えると、樹脂製シートSが大きく弛むように加熱温度を調整しておくのが好ましい。
【0042】
尚、シート加熱部3は、加熱効率を高めるために、遮蔽部材によって覆い、閉空間に配設することができる。
【0043】
(成形部4の構成)
成形部4は、シート加熱部3の下流側に設けられており、上金型(上型)40と、下金型(下型)41と、型駆動装置42とを備えている。上金型40は、樹脂製シートSの上に配置されている。図6に示すように、上金型40には、積層容器100の外側を構成している紙製容器101(図2Bに示す)を保持するための保持用凹部40aが下方に開放するように形成されている。この保持用凹部40aには、空気通過孔101cが形成された紙製容器101が下に開放する姿勢で保持される。尚、図6では、成形部4の一部のみ示している。
【0044】
保持用凹部40aの内面には、複数の吸引孔40cが形成されている。これら吸引孔40cには真空引き配管4aが接続されている。吸引孔40cは1つであってもよい。真空引き配管4aには、真空引き装置4c(図6にのみ示す)が接続されている。真空引き装置4cは、従来から周知の真空ポンプ等を備えた装置であり、制御盤7に接続され、この制御盤7によって制御される。真空引き装置4cを作動させることによって真空引き配管4aを介して吸引孔4cに負圧が作用するようになっている。吸引孔40cには、例えば積層容器100の成形中にのみ、または紙製容器101を保持してから脱型する前まで真空圧が作用し、積層容器100の脱型時には作用しないようにすることができ、これは制御盤7によって制御可能である。また、上金型40の下面には、上側カット刃40bが保持用凹部40aの下端開口を囲むように連続して形成されている。
【0045】
下金型41は、プラグ41bを有するとともに、上金型40の真下、即ち、樹脂製シートSの下に配置されている。下金型41には、プラグ41bを収容するプラグ収容凹部41aが下方に窪むように形成されている。プラグ収容凹部41aは上方に開放しており、このプラグ収容凹部41aの上端開口と、上金型40の保持用凹部40aの下端開口とは略一致するようになっている。
【0046】
プラグ収容凹部41aの内面には、複数の空気吐出孔41dが形成されている。空気吐出孔41dには、圧縮空気を導入するための導入配管4bが接続されている。空気吐出孔41dは1つであってもよい。導入配管4bには、圧縮空気導入装置4d(図6にのみ示す)が接続されている。圧縮空気導入装置4dは、従来から周知の空気圧縮ポンプ等を備えた装置であり、制御盤7に接続され、この制御盤7によって制御される。圧縮空気導入装置4dを作動させることによって導入配管4bを介して空気吐出孔41dに空気圧が作用するようになっている。空気吐出孔41dには、例えば樹脂層102の成形中にのみ空気圧が作用し、成形後、積層容器100の脱型時には作用しないようにすることができ、これは制御盤7によって制御可能である。
【0047】
尚、圧縮空気導入装置4dは、工場エア配管に接続された切替弁装置で構成されていてもよく、切替弁装置を制御盤7によって制御することにより、空気吐出孔41dに空気圧が作用した状態と作用しない状態とに切り替えることができる。
【0048】
この実施形態に係る製造装置1は、上金型40の真空圧と、下金型の圧縮空気とを利用して樹脂層102を成形することが可能な真空圧空成形機である。尚、成形品の条件によっては、上金型40の真空圧と、下金型の圧縮空気との一方のみを利用して成形するようにしてもよい。
【0049】
下金型41の上面には、下側カット刃41cがプラグ収容凹部41aの上端開口を囲むように連続して形成されている。例えば、図9に示すように上金型40と下金型41とが閉じた状態では、下側カット刃41cと上側カット刃40bとによって樹脂製シートSに対してせん断力を作用させ、このせん断力によって樹脂製シートSにおける積層容器100の周縁部となる部分を切断することができるようになっている。つまり、上金型40及び下金型41が互いに接近する方向に駆動されて型が閉じた状態となったときに、一方の金型のカット刃が他方の金型のカット刃と共に樹脂製シートSにおける容器100の周縁部となる部分を切断するように構成されている。
【0050】
尚、樹脂製シートSに対して切断可能なせん断力を作用させることができればよいので、下側カット刃41cと上側カット刃40bの一方のみを設けて、そのカット刃と、金型のエッジ部分とで容器100の周縁部を切断するようにしてもよい。カット刃の構造及び形状は特に限定されるものではない。
【0051】
下金型41の下方には、プラグ41bを上下方向に駆動するプラグ駆動装置43が設けられている。プラグ駆動装置43は、例えば流体圧シリンダや送りネジ装置等で構成することができ、制御盤7に接続され、この制御盤7によって制御される。プラグ駆動装置43の上部にプラグ41bの下部が固定されている。プラグ41bは円柱に近い形状とされている。プラグ41bの上面は、上方へ突出するように湾曲形成されている。プラグ41bの形状は図示した形状に限られるものではなく、積層容器100の形状等に応じて適宜変更することができる。
【0052】
プラグ駆動装置43は、プラグ41bを、下金型41の上面から突出して上金型40の保持用凹部40aに挿入される成形位置(図10に示す)と、下金型41のプラグ収容凹部41aに収容した収容位置(図6図7等に示す)とに切り替えるためのものである。プラグ駆動装置43は、プラグ41bを、樹脂製シートSの成形時(樹脂層102の成形時)には成形位置とする一方、例えば成形後のように樹脂製シートSを送るときには収容位置とするように構成されている。成形位置にあるプラグ41bの上面が樹脂製シートSに対して下方から押し当てられることにより、樹脂製シートSが上方へ伸ばされて上金型40の保持用凹部40aの内面、即ち紙製容器101の内面に接近するようになっている。樹脂製シートSを送るときにはプラグ41bが収容されるように、プラグ41bの動きを制御することができる。この実施形態の製造装置1は、樹脂製シートSに押し付けられるプラグ41bを備えているのでプラグアシスト型の製造装置である。
【0053】
型駆動装置42は、上金型40及び下金型41を互いに接離する方向に駆動するための装置であり、制御盤7に接続され、この制御盤7によって制御される。型駆動装置42は、上金型40を上下方向に駆動する上金型駆動装置44と、下金型41を上下方向に駆動する下金型駆動装置45とを含んでいる。そして、上金型駆動装置44により上金型40を上方へ移動させ、下金型駆動装置45により下金型41を下方へ移動させて型を開いた状態と、上金型駆動装置44により上金型40を下方へ移動させ、下金型駆動装置45により下金型41を上方へ移動させて型を閉じた状態とに切り替えるように構成されている。上金型駆動装置44と下金型駆動装置45とは、制御盤7によって制御され、同期するようになっている。
【0054】
すなわち、上金型駆動装置44は、例えば流体圧シリンダや送りネジ装置等、またはこれらの組み合わせで構成されており、基台10に対して支持部材等(図示せず)を介して動かないように固定されている。上金型駆動装置44の下部に、上金型40が連結されており、上金型駆動装置44が伸長動作を行うことによって上金型40が下降し(図9に示す)、一方、上金型駆動装置44が縮む動作を行うことによって上金型40が上昇する(図6に示す)。制御盤7からの信号によって上金型駆動装置44の動作開始タイミング及び動作量が決定される。
【0055】
図4及び図5に示すように、下金型駆動装置45は、電動モータ45aと、減速機45bと、駆動レバー45cと、駆動リンク45dと、第1従動レバー45eと、第2従動レバー45fと、コンロッド45hとを備えている。電動モータ45aは、制御盤7に接続され、この制御盤7によって制御される。電動モータ45aの出力は減速機45bに入力される。駆動レバー45cは減速機45bの出力軸(製造装置1の幅方向且つ水平方向に延びる軸)に固定されており、該出力軸の回転力によって水平軸回りに回動するようになっている。駆動レバー45cの先端部には、駆動リンク45dの一端部が水平軸回りに回転可能に連結されている。
【0056】
一方、第1従動レバー45eと、第2従動レバー45fとは相対的に回転しないように、軸45gを介して一体化されている。軸45gは、水平方向に延びるとともに、基台10に対して回転可能に支持されている。よって、第1従動レバー45eと第2従動レバー45fは、水平軸回りに一緒に回転することになる。第1従動レバー45eの先端部に、駆動リンク45dの他端部が水平軸回りに回転可能に連結されている。
【0057】
第2従動レバー45fの先端部には、コンロッド45hの一端部が水平軸回りに回転可能に連結されている。コンロッド45hの他端部は、下金型41とコンロッド45hとを連結するための連結部材41eに対して水平軸回りに回転可能に連結されている。下金型41と、プラグ41bと、プラグ駆動装置43とは、一体化されて一緒に昇降するようになっている。
【0058】
電動モータ45aが回転すると、駆動レバー45cが回動し、駆動リンク45dが図1の左右方向に移動する。駆動リンク45dの移動力は第1従動レバー45eに伝達されて第1従動レバー45e及び第2従動レバー45fが水平軸回りに回動する。第2従動レバー45fが回動すると、コンロッド45hが上下方向に移動することになり、これにより、コンロッド45hが連結部材41eを介して連結された下金型41が昇降動作する。電動モータ45aの回転方向によって下金型41を上昇させたり、下降させることができる。制御盤7からの信号によって電動モータ45aの回転方向、回転速度、回転開始及び停止を制御することができるようになっており、これにより、下金型41の動作開始タイミング及び動作量が決定される。図4に示す状態は、下金型41が上昇端に位置した状態であり、図5に示す状態は、下金型41が下降端に位置した状態である。
【0059】
上述した下金型駆動装置45の構成は一例であり、上述した構成に限られるものではない。例えば流体圧シリンダ等で下金型駆動装置45を構成することもできる。
【0060】
圧縮空気導入装置4dは、上金型40及び下金型41が閉じた状態になったときに、下金型41内に圧縮空気を導入し、上金型40及び下金型41が開いているときには圧縮空気を導入しないように制御盤7によって制御される。また、同様に、真空引き装置4cは、上金型40及び下金型41が閉じた状態になったときに、真空引きし、上金型40及び下金型41が開いているときには真空引きしないように制御盤7によって制御される。
【0061】
また、型駆動装置42は、シート送り部2が樹脂製シートSを送るときに、下金型41を、樹脂製シートSの成形時に比べて下げるように構成されている。すなわち、図6に示すように、シート送り部2が樹脂製シートSを送るときには、下金型41の上面が樹脂製シートSの軌跡(仮想線で示す)よりも下に位置するように、下金型駆動装置45を作動させる。これにより、下金型41の上面と樹脂製シートSの下面との間に所定の隙間が形成される。尚、下金型41の上面と樹脂製シートSの下面との間には所定の隙間が形成されなくてもよく、この場合も下金型41の上面が下がっている分、樹脂製シートSの下面との干渉の程度を低くすることができる。その後、樹脂製シートSの送り動作が停止すると、図9図11に示すように樹脂製シートSの成形時には、下金型41の上面が樹脂製シートSの下面に接触するように、下金型駆動装置45を作動させる。
【0062】
シート送り部2による樹脂製シートSの送り動作が停止すると、型駆動装置42の下金型駆動装置45は、下金型41を、樹脂製シートSの送り時に比べて上昇させる(図9に示す)。このときの下金型41の上面は、樹脂製シートSの軌跡上、即ち樹脂製シートSの下面に接触する位置になるので、加熱されて弛んでいる樹脂製シートSを下方から支えることができる。
【0063】
尚、上金型40及び下金型41は、樹脂製シートSの送り方向に複数並べて設けてもよいし、製造装置1の左右方向に複数並べて設けてもよい。また、1つの上金型40に保持用凹部40aを複数形成してもよいし、1つの下金型41にプラグ収容凹部41aを複数形成してもよい。
【0064】
図6に示すように、成形部4は、型内吸着部49を有している。型内吸着部49は、紙製容器101を吸着する部分する部分である。型内吸着部49には、真空引き配管(図示せず)が接続されており、型内吸着部49の下端部には負圧が作用するようになっている。
【0065】
型内吸着部49は、図示しない駆動装置によって上下動し、図6に実線で示す位置が上昇位置であり、仮想線で示す位置が下降位置である。型内吸着部49を駆動装置によって下降位置にすることで、紙製容器101を吸着して型内吸着部49に保持できる。紙製容器101を保持した型内吸着部49を駆動装置によって上昇位置にすることで、図6に実線で示すように紙製容器101を上金型40内に収容し、保持できる。
【0066】
図7は、成形部4の変形例を示している。この変形例では、2つの上金型40及び下金型41が樹脂製シートSの送り方向に並んで設けられている。これにより、複数の積層容器100を同時に成形することが可能になる。上金型40及び下金型41は、3つ以上が樹脂製シートSの送り方向に並んで設けられていてもよい。
【0067】
(供給装置60の構成)
図1に示すように、製造装置1は、成形部4の上流側に紙製容器101を供給する供給装置60を備えている。上流側とは、樹脂製シートSの送り方向の上流側である。図8に拡大して示すように、製造装置1は、紙製容器101が収容された筒状の収容部61と、水平方向にスライドするスライダ62と、スライド部材62を駆動するスライダ駆動装置63とを備えている。
【0068】
図7に示す変形例の場合、収容部61には、紙製容器101を樹脂製シートSの送り方向に2列並べて収容することができる。紙製容器101は開放部分が下に位置する姿勢とされて上下に多数重ねて収容されている。収容部61には、紙製容器101を1列だけ収容してもよい。
【0069】
収容部61の下部には、最も下の紙製容器101のみ下方へ落下させる落下装置(図示せず)が設けられており、この落下装置によって落下した紙製容器101を仮想線で示す。スライダ62は、スライダ駆動装置63によって樹脂製シートSの送り方向に駆動される。スライダ62によって供給装置60の本体部分が紙製容器101と共に成形部4まで搬送され、その後、紙製容器101を樹脂製シートSの上に落下させて図8に実線で示すように配置できる。上述した供給装置60の構造は一例であり、他の構造の供給装置を用いてもよい。
【0070】
(搬出部5の構成)
図1に示すように、搬出部5は、成形部4の下流側に設けられており、支持台50と、容器載置部材51と、載置部材駆動装置52とを備えている。支持台50は、床面200に固定されている。支持台50の上面には、載置部材駆動装置52が固定されている。この載置部材駆動装置52には、容器載置部材51が固定されている。容器載置部材51は、上金型40及び下金型41よりも樹脂製シートSの送り方向下流側に設けられ、樹脂製シートSの下に配置される。容器載置部材51と、上金型40及び下金型41とは接近しており、容器載置部材51と、上金型40及び下金型41との間に積層容器100が落下しないようになっている。
【0071】
容器載置部材51には、製造された直後の積層容器100が、上金型40及び下金型41の間から樹脂製シートSとともに下流側へ送られた際に載置されるようになっている。容器載置部材51は、例えば水平方向に延びる板材等で構成することができる。容器載置部材51の下流側の端部は、下方へ屈曲ないし傾斜させることができる。これにより、容器載置部材51の上面に載置されている積層容器100が容器載置部材51の上面から下流側へ移動しやすくなる。
【0072】
載置部材駆動装置52は、容器載置部材51を上下方向に移動させて下位置と上位置とに切り替えるための装置であり、例えば流体圧シリンダや送りネジ装置等で構成することができる。載置部材駆動装置52は、制御盤7に接続され、この制御盤7によって制御される。載置部材駆動装置52は、容器載置部材51を、積層容器100が載置される前に下位置(図12図13及び図15に示す)にしておき、積層容器100が載置された後に上位置(図14に示す)に切り替えるように構成されている。
【0073】
容器載置部材51が下位置にあるときには、容器載置部材51の上面が樹脂製シートSの軌跡よりも下に位置することになる。これにより、積層容器100が上金型40及び下金型41の間から樹脂製シートSとともに下流側へ送られた際に容器載置部材51に引っ掛かるようになることはなく、容器載置部材51に確実に載置される。
【0074】
容器載置部材51が上位置にあるときには、容器載置部材51の上面が樹脂製シートSの軌跡と略同じか、樹脂製シートSの軌跡よりも上に位置することになる。これにより、積層容器100の上端部が吸着部6に接近することになり、容器100が吸着部6によって吸着されやすくなる。
【0075】
(吸着部6の構成)
吸着部6は、容器載置部材51に載置されている積層容器100の上端部から上方に離れて配置され、積層容器100を吸着して搬送するための装置である。吸着部6には、真空引き配管6aが接続されており、吸着部6の下端部には負圧が作用するようになっている。また、吸着部6は、例えば搬送装置(図示せず)に固定されるアーム6bを有しており、このアーム6bが搬送装置に固定された状態で搬送装置によって積層容器100を任意の場所に搬送することができるようになっている。搬送装置は、例えばロボット等であってもよい。
【0076】
(制御盤7の構成)
制御盤7は、シート送り部2、シート加熱部3、成形部4、搬出部5及び吸着部6を制御する制御装置であり、例えば、従来から周知のマイクロコンピュータやシーケンサ等で構成することができる。制御盤7には、シート送り部2、シート加熱部3、成形部4、搬出部5及び吸着部6の動作タイミングや動作速度、動作順等をプログラムとして記憶させることができるようになっている。制御盤7は、記憶されているプログラムに従い、シート送り部2、シート加熱部3、成形部4、搬出部5及び吸着部6を後述するように動作させる。
【0077】
(製造方法)
次に、上記のように構成された製造装置1を使用して積層容器100を製造する方法について説明する。以下に説明する方法は、制御盤7に記憶されているプログラムによって実現することができるが、作業者がそれぞれ行うようにしてもよい。
【0078】
まず、樹脂製シートSをシート送り部2にセットする。これは作業者が行う。そして、作業者が制御盤7を操作すると、シート送り部2が樹脂製シートSを所定位置まで送る。また、シート加熱部3の下側ヒータ3cをONにして通電を開始して予熱が完了した後、下側ヒータ3cを上昇端位置にする。これにより、下側ヒータ3cが樹脂製シートSに接近して、樹脂製シートSを成形に適した所定温度となるまで加熱する。樹脂製シートSは、下側ヒータ3cにより加熱されることで軟化して弛む。これがシート加熱工程である。
【0079】
また、成形部4は、図6に示すように型駆動装置42によって型が開いた状態としておく。このとき、上金型駆動装置44によって上金型40を上方へ移動させるとともに、下金型駆動装置45によって下金型41を下方へ移動させて、樹脂製シートSの上面及び下面に上金型40及び下金型41が当たらないようにする。これにより、樹脂製シートSを送る際に樹脂製シートSと上金型40及び下金型41とが干渉しないようにすることができる。これが退避工程である。
【0080】
また、図8に示すように、供給装置60が紙製容器101を樹脂製シートSの上に供給する。樹脂製シートSが送られることで、図6に示すように、紙製容器101が上金型40の真下まで搬送される。型内吸着部49を下降位置にして紙製容器101を吸着した後、型内吸着部49を上昇位置にし、上昇位置にある上金型40の保持用凹部40aに、紙製容器101を下に開放する姿勢で保持させる。紙製容器101は、作業者が手作業で保持用凹部40aに挿入して保持させてもよい。これが保持工程である。
【0081】
シート加熱工程と保持工程とは並行してもよいし、一方を先に行ってもよい。下側ヒータ3cは、保持用凹部40aに保持された紙製容器101から上流側へ離れているとともに下方へも離れているので、下側ヒータ3cの熱によって紙製容器101の樹脂コーティング層101dが溶融することはない。
【0082】
シート送り部2による樹脂製シートSの送りを停止させた後、図9に示すように、上金型駆動装置44によって上金型40を下方へ移動させるとともに、下金型駆動装置45によって下金型41を上方へ移動させて型を閉じた状態にする。これが型閉じ工程である。下側カット刃41cと上側カット刃40bとによって樹脂製シートSに対してせん断力を作用させ、このせん断力によって樹脂製シートSにおける樹脂層102の周縁部となる部分が完全に切断されるので、型閉じ工程と切断工程とが同時に行われる。このとき、樹脂層102の周縁部となる部分は、上金型40の保持用凹部40aの周縁部と、下金型41のプラグ収容凹部41aの周縁部とによって厚み方向に挟持しておくことができる。樹脂製シートSを切断するタイミングは、上金型40と下金型41とが開くまでであればよく、樹脂層102の成形が完了するまでは切断せずに、樹脂層102の成形が完了した後に、上金型40を下に移動させるか、下金型41を上に移動させることによって樹脂製シートSに対してせん断力を作用させて切断するようにしてもよい。
【0083】
その後、図10に示すように、プラグ駆動装置43によりプラグ41bを上昇させて下金型41の上面から突出した成形位置とする。これにより、プラグ41bの上面によって樹脂製シートSが上方へ伸ばされて紙製容器101の内面に接近する。
【0084】
このとき、真空引き配管4aを介して上金型40の保持用凹部40a内に負圧が作用している。図2Aに示すように紙製容器101には空気通過孔101cが形成されているので、空気通過孔101cを介して紙製容器101内が負圧になり、軟化している樹脂製シートSが紙製容器101の内面に密着して成形される。樹脂コーティング層101dは溶融していないので、固化した状態の樹脂コーティング層101dに軟化した樹脂製シートSが密着することになる。このとき、圧縮空気導入装置4dによって下金型41内に圧縮空気が導入されるので、樹脂製シートSが圧縮空気によって紙製容器101の内面に押し付けられる。つまり、樹脂製シートSを真空及び圧空成形することで、紙製容器101の内面に強い力で密着させて紙製容器101の内側に樹脂層102が形成される。樹脂製シートSの成形時における紙製容器101への密着力が強い分、通常の使用時には樹脂層102が紙製容器101、即ち樹脂コーティング層101dから外れ難くなる。一方、樹脂層102と紙製容器101の樹脂コーティング層101dとは異なる樹脂であるため、互いの接着強度はそれほど高くなく、積層容器100の廃棄時には容易に分別することが可能になる。これが成形工程である。以上のようにして積層容器100の製造が完了する。以後の工程は必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
【0085】
次いで、図12に示すように、上金型駆動装置44によって上金型40を上方へ移動させるとともに、下金型駆動装置45によって下金型41を下方へ移動させて型を開いた状態にする。この間に積層容器100が次第に冷却されていき、樹脂層102が硬化する。型を開くとき、図示しないが、従来から周知のように上金型40に設けた脱型ピン等により、積層容器100を下方へ押して上金型40から離型することができる。上金型40から離型した積層容器100は、積層容器100の自重により、積層容器100の下端部(積層容器100の使用時には上端部となる)が下金型41の上面に載置された状態になり、下金型41によって積層容器100が下方から支持されて積層容器100の落下を抑制することができる。下金型41は、上述したように、下金型41の上面が樹脂製シートSよりも下に位置するように、下金型駆動装置45によって下降しているので、積層容器100の下端部は樹脂製シートSの下面よりも下に位置することになる。
【0086】
また、図12に示すように、樹脂製シートSには、積層容器100から切断された跡に穴S1が形成されることになる。積層容器100の下端部が樹脂製シートSの下面よりも下に位置しているので、穴S1の高さは、積層容器100の下端部よりも上、即ち積層容器100の周壁部(側面部)に対応する高さとなる。従って、その後、シート送り部2により樹脂製シートSを送ると、積層容器100の周壁部が樹脂製シートSの穴S1の周縁部に引っ掛かった状態になって係合するので、積層容器100が樹脂製シートSと一緒に下流側へ送られることになる。これにより、積層容器100を取り出す専用の部材や装置を設けることなく、樹脂製シートSを利用して当該容器100を上金型40と下金型41との間から容易に取り出すことが可能になる。以上のように、型が開いた時の下金型41の高さを設定しているので、積層容器100の周壁部と樹脂製シートSの穴S1の周縁部とを確実に係合させることができる。
【0087】
シート送り部2の動作によって上金型40と下金型41との間から取り出された積層容器100は、図13に示すように容器載置部材51の上面に載置される。このとき、容器載置部材51は下位置とされており、積層容器100の上端部(積層容器100の使用時には下端部となる)と、吸着部6の下端部とは所定距離離れている。この所定距離は、積層容器100の重量や吸着部6が発揮する吸着力等によって設定することができる距離であり、積層容器100が吸着部6に吸着されない距離以上離しておくのが好ましい。具体的には、積層容器100の重量が重ければ、軽い場合に比べて短くすることができ、また、吸着部6が発揮する吸着力が大きければ、小さい場合に比べて長くすることができる。
【0088】
容器載置部材51の上面に積層容器100を載置した後、図14に示すように、載置部材駆動装置52は、容器載置部材51を上位置に切り替える。これにより、積層容器100の上端部と、吸着部6の下端部との距離が所定距離未満になるので、積層容器100が吸着部6に吸着される。上位置にしたときの積層容器100の上端部と吸着部6の下端部との距離は、積層容器100の上端部が確実に吸着されるように設定する。
【0089】
その後、図15に示すように、載置部材駆動装置52は、吸着部6を動かすことなく、容器載置部材51を下位置に切り替える。積層容器100の上端部が吸着部6に吸着されているので積層容器100は容器載置部材51の上面から離れた状態になる。そして、搬送装置によって積層容器100を任意の場所に搬送して集積する。積層容器100は下に開口した状態で成形されるので、上下反転させることなく、そのままの状態で積み重ねてストックすることができる。
【0090】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る製造装置1によれば、加熱して軟化させた樹脂製シートSを真空及び圧空成形することで、紙製容器101の内面に強い力で密着させて紙製容器101の内側に樹脂層102を一体成形することができる。樹脂製シートSの成形時における紙製容器101への密着力が強い分、使用時に樹脂層102が紙製容器101から外れ難くなる。一方、樹脂層102と紙製容器101の樹脂コーティング層101dとは異なる樹脂であるため、接着強度はそれほど高くなく、廃棄時には容易に分別することが可能になる。したがって、使用時に紙製容器101と樹脂層102との分離が不意に起こらないようにしながら、廃棄時には紙製容器101と樹脂層102との分別廃棄を容易に行うことができる。
【0091】
尚、上記実施形態では、紙製容器101の内側に樹脂コーティング層101dが設けられているが、この樹脂コーティング層101dを省略して樹脂層102を、紙製容器101の紙に固着させてもよい。この場合も樹脂層102を紙とは材質が異なっているので、分別廃棄が容易になる。一方、樹脂層102を真空及び圧空成形して紙に密着させることができるので、通常の使用時に樹脂層102が紙から剥離するのを抑制できる。
【0092】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0093】
上記実施形態では、上側カット刃40bと下側カット刃41cとによって樹脂製シートSにおける樹脂層102の周縁部となる部分を切断しているが、これに限らず、上側カット刃40b及び下側カット刃41cを省略し、本製造装置1での製造工程を終えた後に、別途、トリミングマシン等を利用して樹脂製シートSから切り離してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上説明したように、本発明は、例えば紙製容器の内面に樹脂層が形成されて一体化された積層容器を製造する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 製造装置
2 シート送り部
3 シート加熱部
6 吸着部
40 上金型(上型)
40a 保持用凹部
40b 上側カット刃
41 下金型(下型)
41a プラグ収容凹部
41b プラグ
41c 下側カット刃
42 型駆動装置
44 上金型駆動装置
45 下金型駆動装置
51 容器載置部材
52 載置部材駆動装置
100 積層容器
101 紙製容器
101c 空気通過孔
101d 樹脂コーティング層
102 樹脂層
S 樹脂製シート
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15