(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】抗HLA-A2抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20241030BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241030BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20241030BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241030BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241030BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241030BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20241030BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241030BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241030BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20241030BHJP
C07K 16/34 20060101ALN20241030BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N15/13
C12N15/12
C12N5/10
A61K35/17
A61K39/395 U
A61P37/06
C07K19/00
C07K16/34
C07K14/725
(21)【出願番号】P 2023075383
(22)【出願日】2023-05-01
(62)【分割の表示】P 2020537266の分割
【原出願日】2018-09-19
【審査請求日】2023-05-31
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(73)【特許権者】
【識別番号】518280284
【氏名又は名称】シーディーアールディー ベンチャーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】レヴィングス,メーガン
(72)【発明者】
【氏名】オーバン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ドーソン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ラマルシュ,キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】ベルクヴィスト,ジャン ペーター
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/020922(WO,A1)
【文献】特許第7281774(JP,B2)
【文献】J. Clin. Invest.,2016年,Vol. 126, No. 4,p. 1413-1424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C07K 16/00 - 16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)BB7.2抗体(ATCC寄託番号HB-82)と比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つ以上から選択される1つ以上のHLA-Aサブタイプへの結合の低下を示す、ヒト化抗HLA-A2抗体またはその抗原結合断片を含む、細胞外ドメインと、
(ii)膜貫通ドメインと、
(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインと、
を含むキメラ抗原受容体(CAR
)をコードする核酸を含む、発現ベクターであって、
前記ヒト化抗HLA-A2抗体またはその抗原結合断片は、
(a)配列番号61のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号68のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);
(b)配列番号64のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号68のアミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号65のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号68のアミノ酸配列を含むVL;
(d)配列番号66のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号68のアミノ酸配列を含むVL;
(e)配列番号64のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号69のアミノ酸配列を含むVL;
(f)配列番号65のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号69のアミノ酸配列を含むVL;または
(g)配列番号63のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号70のアミノ酸配列を含むVL;
を含み、
前記CARは、前記CARがHLA-A2に特異的に結合するように免疫細胞において発現することが可能であり、
前記発現ベクターは、発現プラスミド、クローニングベクター、ミニサークル、ミニベクター、二重微小染色体、レトロウイルスベクターコンストラクト
、およびレンチウイルスベクターコンストラクトから選択される、
発現ベクター。
【請求項2】
前記ヒト化抗HLA-A2抗体またはその抗原結合断片が、配列番号73のアミノ酸配列を含むscFvである、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
前記CARが、
(i)ヒト化抗HLA-A2抗体またはその抗原結合断片を含む、細胞外ドメインであって、前記ヒト化抗HLA-A2抗体またはその抗原結合断片が、配列番号73、81、83、84、87、88、および91から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むscFvである、細胞外ドメイン;
(ii)CD8αのストーク領域を含むヒンジ領域;
(iii)CD28の膜貫通ドメイン;および
(iv)CD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメインと、CD28及び4-1BB(CD137)から成る群から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む共刺激ドメインと、を含む細胞内シグナル伝達ドメイン;
を含む、請求項1または2に記載の発現ベクター。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか一項に記載の
発現ベクターを含む、改変免疫細胞。
【請求項5】
自殺遺伝子系をさらに含む、請求項
4に記載の改変免疫細胞。
【請求項6】
制御性T細胞(Treg)である、請求項
4または
5に記載の改変免疫細胞。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の発現ベクター又は複数の請求項
4~6のいずれか一項に記載の改変免疫細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項8】
対象において免疫寛容を促進するのに使用するための、および/または対象において移植片対宿主病(GVHD)を予防又は治療するのに使用するための、請求項
7に記載の医薬組成物であって、前記免疫寛容は、移植された器官又は組織に対する寛容である、医薬組成物。
【請求項9】
体重1kgあたり1×10
4~1×10
9細胞の投与量
で対象に投与
するための、請求項
7または
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも10
4細胞の投与量
で対象に投与
するための、請求項
7~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
初回投与と1回以上の後続投与
で対象に投与
するための、請求項
7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
対象への移植片の移植と同時に
、対象への移植片の移植の前に、又
は対象への移植片の移植の後に、投与
するための、請求項
7~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
別の活性剤と組み合わせて対象に投与
するための、請求項
7~12のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記別の活性剤は免疫抑制剤である、医薬組成物。
【請求項14】
免疫抑制剤の投与の前に、免疫抑制剤の投与と同時に、または免疫抑制剤の投与の後に、対象に投与
するための、請求項
7~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記免疫抑制剤は、シクロスポリンなどのカルシニューリン阻害剤、タクロリムス、アザチオプリン、メトトレキサート、メトキサレン、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸ナトリウム、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リツキシマブ、シロリムス等のmTOR阻害剤、エベロリムス、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ベラタセプト、アレムツズマブ、ムロモナブCD3、抗胸腺細胞グロブリン、グルココルチコステロイド、又はプレドニゾンやプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、又はそれらの任意の組合せから成る群から選択される、請求項
13または
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
免疫抑制剤の量を減らすために対象に投与
するための、請求項
7~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項4~6のいずれか一項に記載の改変免疫細胞を作製する方法であって、請求項
1~3のいずれか一項に記載の発現ベクターを用いて免疫細胞を形質導入し、それにより前記改変免疫細胞を生成することを含む
、方法。
【請求項18】
(a)請求項
4~6のいずれか一項に記載の改変免疫細胞と、
(b)薬学的に許容される緩衝液と、
を含むキット。
【請求項19】
少なくとも1種の免疫抑制剤をさらに含む、請求項
18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2017年9月19日に出願された米国仮特許出願第62/560,574号と、2018年6月29日に出願された米国仮特許出願第62/692,386号の利益を主張し、該出願は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一部の態様において、HLA-A2結合分子、特にヒト化抗HLA-A2抗体に関する。本発明は更に、該抗体を含むキメラ抗原受容体(CAR)を含む、該抗体を含む組換え受容体に関する。本開示は更に、該受容体及び抗体を発現する遺伝子操作細胞と、細胞療法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
クラスI HLA抗原は、全ての有核細胞上で発現する多型のタンパク質であり、移植に関しては、免疫認識の重要な標的である。実際、HLAクラスI特異的T細胞及び/又は抗体の発生は、急性及び慢性の拒絶反応と同種移植片にとって主要な危険因子であり、予め形成された抗ドナーHLAクラスI抗体の存在により、超急性拒絶反応が生じるおそれがある(Konvalinka他、2015)。よって、HLAクラスIタンパク質に対する免疫応答を調節する方法を見つけることは、移植における大きなブレークスルーとなるであろう。
【0004】
古典的なHLAクラスI分子は多型であり、感染からの進化的圧力に応じて進化した多くの異なる対立遺伝子によってコードされている。古典的HLAクラスIタンパク質をコードする遺伝子座は3つあり、A、B及びC遺伝子座と呼ばれる。HLA-A遺伝子座のうち、HLA-A2対立遺伝子ファミリーは最大かつ最も多様なファミリーであり、少なくとも31の異なるHLA-A2対立遺伝子がヒトに存在することが知られている。興味深いことに、他の多くのHLA対立遺伝子ファミリーとは異なり、HLA-A2は全ての民族で頻繁に存在し、コーカサス人の50%、アフリカ系アメリカ人の35%に見られる(Ellis他、2000)。多くのHLA-A2対立遺伝子は、1~9個のアミノ酸しか違いがなく、多型の大部分はペプチド結合溝の周りに集中している(Hilton他、2013)。HLA-A2対立遺伝子は、A*0201又はA*0205の対立遺伝子間遺伝子変換イベントを介して派生した2つの主要なブランチにサブグループ化される(Ellis他、2000)。
【0005】
HLAタンパク質及び移植拒絶を引き起こす他の抗原に対する望ましくない免疫を調節する方法としての制御性T(Treg)細胞による養子免疫療法は、同種移植片拒絶反応と移植片対宿主病(GVHD)にとって有望な治療法である。同種異系造血幹細胞移植(HSCT)後の移植片対宿主病(GVHD)の予防におけるポリクローナルTreg細胞導入の使用が報告されている(Brunstein他、2011;Di Ianni他、2011;Trzonkowski他、2009)。また、1型糖尿病のc-ペプチドレベルの維持におけるTreg細胞導入の使用も報告されている(Bluestone他、2015;Marek-Trzonkowska他、2012)。特に、そのような細胞療法のためのポリクローナルTreg細胞の使用に関連して、一時的に全身免疫抑制のリスクがあるかもしれないことが報告されている(Brunstein他、2013)。
【0006】
動物研究のデータによれば、抗原特異的細胞を使用することにより、Treg細胞を用いた細胞療法の効力と特異性が著しく向上し得ることが示されている。例えば、自己免疫のモデルでは、抗原特異的Treg細胞は、疾患の軽減においてポリクローナルTreg細胞よりも優れている。膵臓リンパ節から単離された、又は膵島抗原によってパルスされたTreg細胞は、1型糖尿病の予防又は治癒においてポリクローナルTreg細胞よりも有意に優れており(Green他、2002;Masteller他、2005;Tang他、2004;Tarbell他、2007;Tarbell他、2004)、自己抗原特異的トランスジェニックT細胞受容体(TCR)を発現するTreg細胞は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のモデルにおいて中枢神経系の炎症を抑制する点について、ポリクローナルTreg細胞よりも優れている(Stephens他、2009)。同様に、同種抗原特異的Treg細胞(インビトロでの同種抗原刺激による増殖によって濃縮されるか、又はTCR導入遺伝子を発現するように遺伝子操作されている)は、器官及び組織の移植片の拒絶反応を防ぐ上でポリクローナルTreg細胞よりも効果的である(Golshayan他、2007;Joffre他、2008;Nishimura他、2004;Sanchez-Fueyo他、2006;Tsang他、2008)。同種抗原によって増殖したTreg細胞がGVHDを効果的に予防するというある程度の証拠があり(Trenado他、2006)、また、抗原特異的Treg細胞のインビボ誘導によってGVHDなしで造血同種移植片の受容が促進されるというある程度の証拠がある(Verginis他、2008)。ヒト化マウスモデルにより、同様の結果が示されている:同種抗原増殖されたヒトTreg細胞は、ポリクローナルTreg細胞よりも皮膚移植片拒絶反応の強力なサプレッサーである(Putnam他、2013;Sagoo他、2011)。
【0007】
トランスジェニックTCRを過剰発現させること、又は抗原特異的T細胞を濃縮するための抗原刺激増殖への代替アプローチは、キメラ抗原受容体(CAR)の使用である。細胞ベースの養子免疫療法では、患者から単離した免疫細胞を改変して、細胞がその後患者に戻された後に細胞が新しい治療機能を果たせるようにする合成タンパク質を発現させることができる。そのような合成タンパク質の例がCARである。現在使用されているCARの例は、細胞外認識ドメイン(例えば抗原結合ドメイン)と、膜貫通ドメインと、1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインとの融合である。抗原の会合により、CARの細胞内シグナル伝達部分は、免疫細胞で活性化関連の応答を開始することができる。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインに融合した細胞外単鎖抗体(scFv)抗原結合ドメインを発現するように、T細胞を遺伝子操作することができる(Gill及びJune、2015;June他、2015)。特に、モデル抗原に特異的なCARを発現するTreg細胞が報告されている(Blat他、2014;Elinav他、2009;Elinav他、2008;Fransson他、2012;Hombach他、2009;Boardman他、2016;MacDonald他、2016;Noyan他、2016)。
【発明の概要】
【0008】
本開示の態様は、抗HLA-A2抗体を含む。また、本開示の抗HLA-A2抗体のいずれかを含む細胞外ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)も提供される。また、本開示の抗HLA-A2抗体及びCARをコードする核酸と、それを含む発現ベクターと、該発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。本開示の態様は、ヒト化抗HLA-A2抗体も含む。また、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体のいずれかを含む細胞外ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)も提供される。また、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体及びCARをコードする核酸と、それを含む発現ベクターと、該発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。また、本開示のCAR及び/又は発現ベクターを含む免疫細胞、例えば免疫制御細胞、該免疫細胞を含む組成物及び医薬組成物、該免疫細胞を作製するための該免疫細胞及び/又は試薬を含む部品のキット(例えば本開示の抗HLA-A抗体若しくはCARをコードする核酸又はベクター)、並びに該免疫細胞を作製する方法も提供される。また、本開示の抗HLA-A2抗体、CAR、免疫細胞及び医薬組成物を使用する方法も提供される。例えば、主題の抗HLA-A2抗体、CAR、免疫細胞(例えば免疫制御細胞)及び医薬組成物には、例えば対象における免疫寛容の促進、対象における移植片対宿主病(GVHD)の予防又は治療、対象における器官若しくは組織移植拒絶反応の予防又は治療等において用途がある。
【0009】
一部の実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体が提供され、本抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)の抗原結合ドメインを構成することが可能であり、CARは、CARがHLA-A2に特異的に結合するように、ヒト細胞(例えば、ヒト免疫制御細胞等のヒト免疫細胞)において発現することが可能である。特定の態様において、該抗体は、HLA-A2への結合について、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗体と競合する。
【0010】
特定の態様において、ヒト化抗HLA-A2抗体が提供され、本抗体は、HLA-A2への結合について、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗体と競合する。
【0011】
特定の実施形態によれば、上記のヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。
【0012】
一部の実施形態では、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68及びそれらの任意の組合せのうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。例えば、一部の実施形態では、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30及びそれらの任意の組合せのうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。
【0013】
特定の態様において、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、SYHIQ(配列番号1)及びGYTFTSY(配列番号2)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0014】
特定の実施形態によれば、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、YPGDGS(配列番号4)及びWIYPGDGSTX10YX12X13KFX16G(配列番号10)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、X10はQ又はKであり、X12はN又はSであり、X13はE又はQであり、X16はK又はQである。該抗体は、例えば、WIYPGDGSTQYNEKFKG(配列番号3)及びYPGDGS(配列番号4)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでよい。また、例として、該抗体は、例えば、アミノ酸配列WIYPGDGSTKYSQKFQG(配列番号5)を含む重鎖可変領域を含んでよい。特定の態様において、本開示のヒト化抗体は、アミノ酸配列EGTYYAMDY(配列番号6)を含む重鎖可変領域を含む。
【0015】
一部の実施形態では、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号7)を含む軽鎖可変領域を含む。特定の態様において、本開示のヒト化抗体は、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態によれば、本開示のヒト化抗体は、アミノ酸配列FQGSHVPRT(配列番号9)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0016】
特定の態様において、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAS(配列番号11)及び
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号12)
から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。
【0017】
特定の実施形態によれば、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、フレームワーク領域2(VH FR2)を含む重鎖可変領域を含み、フレームワーク領域2は、
WVRQAPGQX9LEWMGX15(配列番号13)、
WVRQAPGQX9LEWMGX15WI(配列番号17)、
HIQWVRQAPGQX12LEWMGX18WI(配列番号21)、及び
HIQWVRQAPGQX12LEWMGX18(配列番号25)
から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、
配列番号13において、X9はR又はGであり、X15はI又は非存在であり、
配列番号17において、X9はR又はGであり、X15はI又は非存在であり、
配列番号21において、X12はR又はGであり、X18はI又は非存在であり、
配列番号25において、X12はR又はGであり、X18はI又は非存在である。
【0018】
一部の実施形態では、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、フレームワーク領域3(VH FR3)を含む重鎖可変領域を含み、フレームワーク領域3は、
X1VTX4TX6DTSX10STAYMX16LSX19LRSX23DX25AVYYCAR(配列番号29)、
TX2YX4X5KFX8GX10VTX13TX15DTSX19STAYMX25LSX28LRSX32DX34AVYYCAR(配列番号35)、
TQYNEKFKGX10VTX13TX15DTSX19STAYMX25LSX28LRSX32DX34AVYYCAR(配列番号36)、及び
TKYSQKFQGX10VTX13TX15DTSX19STAYMX25LSX28LRSX32DX34AVYYCAR(配列番号37)
から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、
配列番号29において、X1はR又は非存在であり、X4はI又はMであり、X6はR又はAであり、X10はA、T又はIであり、X16はE又はLであり、X19はS又はRであり、X23はE又はDであり、X25はT又はMであり、
配列番号35において、X2はQ又はKであり、X4はN又はSであり、X5はE又はQであり、X8はK又はQであり、X10はR又は非存在であり、X13はI又はMであり、X15はR又はAであり、X19はA、T又はIであり、X25はE又はLであり、X28はS又はRであり、X32はE又はDであり、X34はT又はMであり、
配列番号36において、X10はR又は非存在であり、X13はI又はMであり、X15はR又はAであり、X19はA、T又はIであり、X25はE又はLであり、X28はS又はRであり、X32はE又はDであり、X34はT又はMであり、
配列番号37において、X10はR又は非存在であり、X13はI又はMであり、X15はR又はAであり、X19はA、T又はIであり、X25はE又はLであり、X28はS又はRであり、X32はE又はDであり、X34はT又はMである。
【0019】
特定の態様において、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列WGQGTTVTVSS(配列番号44)を含むフレームワーク領域4(VH FR4)を含む重鎖可変領域を含む。特定の実施形態によれば、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号61~66から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0020】
特定の実施形態によれば、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列DX2VMTQX7PLSX11X12VTX15GQPASISX23(配列番号46)を含むフレームワーク領域1(VL FR1)を含む軽鎖可変領域を含み、X2はV又はIであり、X7はS又はTであり、X11はL又はSであり、X12はP又はSであり、X15はL又はPであり、X23はC又はFである。
【0021】
一部の実施形態では、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列WX2X3QX5PGQX9PX11X12LIY(配列番号51)を含むフレームワーク領域2(VL FR2)を含む軽鎖可変領域を含み、X2はF又はYであり、X3はQ又はLであり、X5はR又はKであり、X9はS又はPであり、X11はR又はQであり、X12はR又はLである。
【0022】
特定の態様において、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列GVPDRFSGSGX11GTDFTLKISRVEAEDVGVYYC(配列番号56)を含むフレームワーク領域3(VL FR3)を含む軽鎖可変領域を含み、X11はS又はAである。特定の実施形態によれば、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列FGGGTKVEIK(配列番号59)を含むフレームワーク領域4(VL FR4)を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号67~71から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、全抗体か、単鎖抗体か、二量体単鎖抗体か、Fvか、scFvか、Fabか、F(ab)’2か、脱フコシル化抗体か、二重特異性抗体か、ダイアボディか、トリアボディか、テトラボディか、ユニボディ、ドメイン抗体及びナノボディから成る群から選択される抗体断片か、又は、アフィボディ、アルファボディ、アルマジロリピートタンパク質ベースの足場、ノッティン、クニッツドメインペプチド、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマー、バーサボディ若しくはデュオカリンから成る群から選択される抗体ミメティックである。
【0023】
特定の実施形態によれば、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体はscFvである。例えば、本開示のヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号72~91から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むscFvであってよい。
【0024】
一部の実施形態では、上記のヒト化抗HLA-A2抗体が提供され、本抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)の抗原結合ドメインを構成することが可能であり、CARは、CARがHLA-A2に特異的に結合するように、免疫細胞(例えば制御性T細胞(Treg))において発現することが可能である。特定の態様において、上記のヒト化抗HLA-A2抗体が提供され、本抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)の抗原結合ドメインを構成することが可能であり、CARは、免疫細胞(例えば制御性T細胞(Treg))がHLA-A2によって活性化されるように、免疫細胞において発現することが可能である。
【0025】
特定の態様において、上記のヒト化抗HLA-A2抗体のいずれかをコードする核酸が提供される。該核酸を含む発現ベクター及び遺伝子治療ベクターも提供される。該発現ベクター又は遺伝子治療ベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0026】
本開示の態様は、キメラ抗原受容体(CAR)を更に含む。例えば、(i)上記のヒト化抗HLA-A2抗体のいずれかを含む細胞外ドメインと、(ii)膜貫通ドメインと、(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインとを含むCARが提供され、CARは、CARがHLA-A2に特異的に結合するように免疫細胞において発現することが可能である。該CARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68及びそれらの任意の組合せのうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低くてよい。例えば、一部の実施形態では、該CARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30及びそれらの任意の組合せのうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。本開示のCARは、免疫細胞がHLA-A2によって活性化されるように、免疫細胞(例えば制御性T細胞(Treg))において発現することが可能であってよい。本開示のCARは、ヒンジ領域を含んでよい。特定の態様において、ヒンジ領域は、CD8aのストーク領域を含む。
【0027】
本開示のCARは、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、T細胞受容体のアルファ鎖、T細胞受容体のベータ鎖、T細胞受容体のガンマ鎖、T細胞受容体のデルタ鎖、CD28、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154並びにそれらの任意の組合せから成る群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含んでよい。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通ドメインを含む。
【0028】
特定の実施形態によれば、本開示のCARは、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRアルファ、FcRイプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66d、並びにそれらの任意の組合せから成る群から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメインを含む。特定の態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインを更に含む。該共刺激ドメインは、OX40、CD27、CD28、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)(CD11a/CD18)、TNFR1(CD120a/TNFRSF1A)、TNFR2(CD120b/TNFRSF1B)、CTLA-4(CD152)、CD95、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、CD2、CD30、CD40、PD-1、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、ICAM-1、CD83と特異的に結合するリガンド、IL2ra(CD25)、IL6Ra(CD126)、IL-7Ra(CD127)、IL-13RA1、IL-13RA2、IL-33R(IL1RL1)、IL-10RA、IL-10RB、IL-4R、IL-5R(CSF2RB)、ARHR、BAFF受容体、IL-21R、TGFbR1、TGFbR2、TGFbR3、共通ガンマ鎖及びそれらの任意の組合せから成る群から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含んでよい。特定の実施形態によれば、該共刺激ドメインは、CD28及び4-1BBから選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む。例えば、共刺激ドメインは、CD28の機能的シグナル伝達ドメインを含んでよい。
【0029】
また、本開示のCARのいずれかを含む改変免疫細胞も提供される。一部の実施形態では、改変免疫細胞は制御性T細胞(Treg)である。
【0030】
本開示は、本開示のCARのいずれかをコードする核酸を提供する。該核酸を含む発現ベクターも提供され、該発現ベクターを含む免疫細胞(例えば制御性T細胞(Treg))も同様である。
【0031】
組成物(例えば医薬組成物)も提供される。特定の態様において、本開示の複数の改変免疫細胞又は免疫細胞を含む医薬組成物が提供される。部品のキットも提供される。一部の実施形態では、前記部品のキットは、第1の部品に本開示の免疫細胞を含み、第2の部品に、例えば免疫抑制剤等の別の治療薬を含む。一部の実施形態では、前記部品のキットは、本開示の細胞を作製するための1つ以上の試薬(例えば、本開示の抗HLA-A抗体若しくはCARをコードする核酸又は発現ベクター)を含む。本開示の改変免疫細胞を作製する方法も提供される。一部の実施形態では、該方法は、免疫細胞に本開示の発現ベクターを形質導入し、それにより改変免疫細胞を生成することを含む。
【0032】
本開示の抗体、CAR、免疫細胞、改変免疫細胞及び医薬組成物を使用する方法も提供される。特定の態様において、対象における免疫寛容を促進する方法が提供され、本方法は、本開示の医薬組成物、例えば本開示の改変免疫細胞又は免疫細胞を複数含む医薬組成物を、対象に投与することを含む。一部の実施形態では、免疫寛容は、移植された器官又は組織に対する寛容である。特定の実施形態によれば、対象における移植片対宿主病(GVHD)を予防又は治療する方法が提供され、本方法は、本開示の医薬組成物、例えば本開示の改変免疫細胞又は免疫細胞を複数含む医薬組成物を、対象に投与することを含む。特定の態様において、対象は造血幹細胞移植を受けているか、又は受けたことがある。対象における器官若しくは組織の移植拒絶反応を予防又は治療する方法も提供され、本方法は、本開示の医薬組成物、例えば本開示の改変免疫細胞又は免疫細胞を複数含む医薬組成物を、対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象は更に免疫抑制剤を投与されている。特定の実施形態によれば、対象における器官若しくは組織の移植拒絶反応又は移植片対宿主病(GVHD)を予防又は治療する方法が提供され、本方法は、本開示の免疫細胞と、免疫寛容を誘導するための少なくとも1つの免疫抑制剤との組合せを、対象に投与することを含む。本開示の抗体、CAR、免疫細胞、改変免疫細胞及び医薬組成物を使用する方法のいずれにおいても、対象はヒトであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ヒト化抗HLA-A2 CARの構築。レンチウイルスコンストラクトの概略図。上:切断型NGFR対照コンストラクト(CARなし);下:ヒト化抗HLA-A2 CARコンストラクト。“SP”:シグナルペプチド;“GS”:グリシン-セリンリンカー;“TM”:膜貫通領域;“hs”:ヒト化。
【
図2-1】ヒト化抗HLA-A2 CARの細胞表面発現と特異性。293T細胞に指定のコンストラクトを一時的にトランスフェクトし、48時間後、発現及び抗原特異性を、抗ΔNGFR mAb及びHLA-A2四量体によるフローサイトメトリー染色によって測定した。AとBは、それぞれHLA-A2に結合する能力を保持しているコンストラクト又は保持していないコンストラクトのドットプロットを示す。データは2つの独立した実験を代表する。
【
図3-1】ヒト化抗HLA-A2 CAR結合強度の比較。293T細胞に指定のヒト化抗HLA-A2 CARコンストラクトをトランスフェクトし、指定の希釈のHLA-A2四量体で染色した。A、B及びCは、軽鎖の使用に従ってグループ化されたコンストラクトによる、ゲーティングされたΔNGFR+細胞内のHLA-A2四量体結合の幾何平均蛍光強度を示すグラフを示す。
【
図4-1】Treg上のヒト化抗HLA-A2 CARの発現と特異性。CD4
+CD25
hiCD127
loTregを活性化し、1日後に指定のレンチウイルスを形質導入し、その後増殖させた。活性化の7日後、ΔNGFR発現細胞を磁気ビーズベースの分離によって選択した。ΔNGFR細胞(A、B、C及びD)の分離前後に、フローサイトメトリーによって形質導入効率及びHLA-A2結合を測定した。数字は、ΔNGFR
+四量体
+細胞の割合を表す。データは独立した実験を代表する。(E)A*02:01-四量体結合のパーセント又は平均蛍光強度の要約データ。
【
図5-1】HLA-A2 CARを介したTregの活性化。CD4
+CD25
hiCD127
loTregを活性化し、指定のレンチウイルスを形質導入し、その後増殖させた。7日後、Tregを100U/mL IL-2と共に一晩休ませた後、抗CD3/28ロードCD64-K562細胞(TCR)又はHLA-A2-K562細胞(CAR)の2:1(Tregs:K562細胞)の比率の共培養により、刺激あり又は刺激なしで放置した。24時間後、CD69、CD154、CTLA-4及びLAPの発現を、生きているCD4+細胞でのフローサイトメトリーによって測定した。2つの独立した実験からの(A&B)代表的なヒストグラムと(C&D)平均データを示す。(E)ΔNGFR対照/CAR Tregsを、HLA-A2発現K562細胞の2:1(Tregs:K562)の比率で共培養した。16時間後、CD69、CD71、CTLA-4及びLAPの発現をフローサイトメトリーで測定した。CD69及びCD71のベースライン(K562なし)発現に対する陽性率及び倍増。(F)CTLA-4及びLAPのベースライン(K562なし)発現に対する陽性率及び倍増。データは、少なくとも2つの独立した実験からの各コンストラクトについてn=2~4である。全てのコンストラクトをmA2-CAR Tregと比較する一元配置分散分析とHolm-Sidakのポストテスト。平均値±標準誤差。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図6-1】一般的なHLA-A及びHLA-Bの対立遺伝子変異体とヒト化抗HLA-A2 CARの交差反応性の測定。(A)FlowPRT細胞アッセイの実験設定とゲーティング戦略の概略図を示す。指定のヒト化CARを発現するΔNGFRTregを、Flow Panel Reactive Single Antigenビーズ及び固定可能な生死判別色素(fixable viability dye)とともに室温で30分間インキュベートした。次に、サンプルを洗浄し、固定し、フローサイトメトリーで分析した。(B)ΔNGFR Treg対照の結合と比較した、各m/hA2-CAR TregのHLA-A*02:01コーティングビーズへの結合。(C&D)FlowPRT細胞アッセイによって測定したHLA-A*02:01結合の平均と、(C)フローサイトメトリーによって評価したHLA-A*02:01-四量体MFI又は(D)陰性対照HLA-A*24:01 K562細胞に対する、HLA-A*02:01との共培養から16時間後のCD69+細胞の割合の増加のいずれかとの間の相関。E、F、G及びHのデータは、サイトメーターによって収集されたHLA陰性ビーズの数に対して正規化された、切断型NGFRのみを発現する対照Tregに対する結合率を示す。灰色の斜線部分(E、F&G)又は横点線(H)の上のデータポイントは、ビーズのみの対照の平均から2標準偏差よりも大きく、よって、統計的に有意であること(p<0.05)を表す。データは、3つの独立した実験の平均である。(I)選択されたHLA-A対立遺伝子を発現するように形質導入された指定のK562細胞とともに、ΔNGFR又はm/hA2-CAR Tregを共培養した。16時間後、CD69、CD71、LAP及びCTLA-4の発現を、生きているCD4+T生細胞上で測定した。少なくとも2つの独立した実験からのn=2~6。mA2-CARと比較した一元配置分散分析及びHolm-Sidakポストテストによって決定された統計的有意性。平均値±標準誤差、**p<0.01。
【
図7-1】ヒト化HLA-A2 CARを発現するTregは、HLA-A2
+樹状細胞によって刺激されるT細胞増殖を強力に抑制する。(A)実験設定の概略図。成熟したHLA-A2
+樹状細胞を用いて、Cell Proliferation Dye(CPD)-e450標識HLA-A2
negCD4+「レスポンダー」T細胞を刺激した。形質導入していない、又はΔNGFRをコードする対照レンチウイルスで形質導入したCPD-e660標識Treg、又はヒト化A2 CAR発現Treg。(B、C、D&E)指定の比率の細胞を6日間共培養し、その後、レスポンダーCPD-e450標識レスポンダーCD4
+T細胞の増殖量をフローサイトメトリーで測定した。Bは代表的なドットプロットを表し、C、D及びEは複数の細胞比のグラフデータを示す。C、D及びEは、少なくとも3つの独立した実験からのn=3~7の平均データを示す。ΔNGFR Treg対照に対して、Holm-Sidakポストテストと二元配置分散分析を使用して統計を行った。*p<0.05、平均値±標準誤差。
【
図8-1】ヒト化HLA-A2 CARを発現するTregは、異種移植片対宿主病を強力に抑制する。照射したNSGマウスに、PBS(n=3)、8×10
6個のHLA-A2
+PBMCのみ(n=5)、又は4×10
6個のH1k2 CAR発現Treg(n=6)を注射した。血中のヒト細胞の生着を、7日ごとに監視した。(A)生存曲線と、(B)実験開始時に対する体重変化の割合。(C)血中のヒトCD45を発現する単核細胞(生きているシングレット)の総数の割合。(D)全体のヒトCD45
+とCAR Treg(hCD45
+hCD4
+HLA-A2
-)の細胞生着を識別するゲーティング戦略。(E)血液μLあたりのPBMCとCAR Tregの生着の絶対数で示した、異種GVHDマウスモデルでの養子導入後のインビボ細胞生着。PBMCの数は、hCD45
+からDでゲーティングされた総CAR Treg数を引いたものとして計算した。
【
図9-1】m/hA2 CARの発現により、HLA-A2:01
+皮膚同種移植片への迅速かつ持続的なホーミングがTregに与えられる。Tregに、ルシフェラーゼをコードするレンチウイルスと、対照HER2-CAR、mA2-CAR又はhA2-CAR(H1k2)のいずれかと、を同時形質導入した。二重形質導入細胞をFACSで選別し、5日間増殖させた後、NSGトランスジェニックマウスとNSG-HLA-A*02:01トランスジェニックマウスの両方からの並置皮膚移植片を以前に移植したNSGマウスに注射した。(A)実験設定の概略図。Treg注射から(左)72時間後又は(右)21日後の(B)皮膚移植片の代表的なルシフェラーゼイメージング。ルシフェラーゼの発光量を、光子/秒/cm
2/ステラジアンの平均量を用いて定量化し、(C)Treg注射の72時間後又は(D)経時的に、HLA-A*02:01-NSG皮膚移植片とNSG皮膚移植片の比率としてプロットした。3つの独立した実験からの群あたりn=2~3、平均±標準誤差。ボンフェローニ補正を使用した反復測定分散分析。
【
図10-1】HLA-A2:01
+皮膚同種移植片への迅速かつ持続的なホーミングを伴うm/hA2 CAR Tregのフローサイトメトリートラッキング。
図9に示すように、ルシフェラーゼとHER2-CAR、mA2-CAR又はhA2-CARのいずれかのコンストラクトとを含むレンチウイルスをTregに同時形質導入し、増殖させ、移植NSGマウスに注射した。(A)フローサイトメトリープロットのプレゲーティングは、対照HER2-CARの脾臓からの細胞に基づいた。(B)指定コンストラクトのhCD4/hCD8フローサイトメトリープロファイル。(A)のように、プロットをFvD-hCD45
+上でプレゲーティングした。(C)1つの独立した実験からの群ごとの実験エンドポイントn=1での、脾臓及び流入領域リンパ節におけるm/hA2-CAR Tregの染色を示すフローサイトメトリープロット。*p<0.05。
【
図11-1】hA2-CAR-Tregsは、ヒト皮膚同種移植片拒絶反応を減少させる。NSGマウスにHLA-A*02:01
+ヒト皮膚を移植し、3週間後に以下のいずれかを注射した:PBS(n=3);HLA-A*02:01
negPBMC単独(n=4)又は2:1の比の自己H1k2 CAR Treg(n=6)。PBMC/hA2-CAR Tregsは、1つの実験で試験された2人の個別のドナー由来であった。(A)体重を毎週3回監視し、(B)血液(左)と脾臓(右)におけるヒトCD45
+細胞の割合を実験エンドポイントで測定した。(C)H&E染色により決定された移植皮膚切片の累積組織学的スコア。(D)移植された皮膚移植片を実験エンドポイントで免疫染色して、表皮内のインボルクリン発現量とKi-67
+細胞の割合を定量化した。(E)移植された皮膚切片内の指定遺伝子のmRNA発現を、qRT-PCRによって測定した。(F)移植された皮膚移植片を実験エンドポイントで免疫染色して、ヒトCD45
+細胞内のFOXP3
+細胞の割合を定量化した。(G)移植された皮膚移植片、腸、肺及び肝臓の切片を実験エンドポイントで免疫染色して、各組織におけるヒトCD45
+細胞内のFOXP3
+細胞の割合を示した。各データポイントは1匹のマウスを表す。箱ひげ図は平均値±範囲を示す。PBMCをH1k2と比較する両側マンホイットニー検定によって決定された統計的有意性。*p<0.05。
【
図12】ヒト皮膚移植モデルにおける血中のhA2 CAR Tregのフローサイトメトリートラッキング。
図11に示すように、NSGマウスにヒトHLA-A*02
+皮膚を移植し、細胞を注射した。(A)全体的なヒトCD45
+(PBMC)及びCAR Treg(hCD45
+hCD4
+NGFR
+)細胞の生着を識別するゲーティング戦略。(B)経時的な血液μLあたりのPBMCの絶対数及びCAR Treg生着。PBMCの数は、(A)でゲーティングされた、hCD45
+からCAR Treg総数を引いて計算した。
【
図13-1】人工抗原提示細胞を用いたhA2 CAR Tregの活性化。ΔNGFR対照/CAR Tregsを、刺激なしで、又は抗CD3及び抗CD28モノクローナル抗体と結合したCD64
-発現K562細胞の2:1(Treg:K562)比(TCR刺激)のいずれかで、16時間共培養した。(A)ゲーティング戦略の例。(B)CD69、CD71、CTLA-4及びLAPの発現をフローサイトメトリーによって測定した(左)。ベースライン(刺激なし)に対する各活性化マーカーの倍増を計算した(右)。データは、少なくとも2つの独立した実験からの各コンストラクトについてn=2-4である。平均値±標準誤差。全てのコンストラクトをmA2-CARのTregと比較する一元配置分散分析及びHolm-Sidakの多重比較テスト。*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0034】
I.一般的な技術
【0035】
本発明の実施は、別段の指定がない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来の技術を採用し、これらは当技術分野の技能の範囲内である。そのような技術は、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版(Sambrook他、1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait,(編),1984);「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney,(編),1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press,Inc.);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubel他、(編),1987及び定期更新);「PCR:The Polymerase Chain Reaction」,(Mullis他、(編),1994);「A Practical Guide to Molecular Cloning」(Perbal Bernard V.,1988);“Phage Display:A Laboratory Manual”(Barbas他、2001)等の文献で完全に説明されている。
【0036】
当然のことながら、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、それ自体、言うまでも変化し得る。また、当然ながら、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。
【0037】
別段の定義がない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語と科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は均等の任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することもできるが、好ましい方法及び材料をここで説明する。当業者であれば、本明細書に記載されるものと類似又は均等の多くの方法及び材料を認識し、それらは本発明の実施において用いることができる。実際、本発明は、記載される方法及び材料に決して限定されない。本発明の目的のために、以下の用語を以下に定義する。本明細書において言及される全ての刊行物は、該刊行物が引用されることに関連する方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。記載される定義が参照により本明細書に組み込まれる文書と矛盾する場合、以下に記載される定義が優先するものとする。
【0038】
II.定義
【0039】
用語「1つ(a)」及び「1つ(an)」は、冠詞の文法上の目的語の1つ又は2つ以上を指す。例として、「要素(an element)」とは、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0040】
量、時間的な期間等の測定可能な値に言及するときの用語「約」は、指定された値から±20%、又は場合によっては±10%、又は場合によっては±5%、又は場合によっては±1%、又は場合によっては±0.1%の変動を包含することを意味し、これは、開示された方法を実行するには、そのような変動が妥当であるからである。
【0041】
値の範囲が提供される場合、当然ながら、その範囲の上限と下限の間の各々の介在値(文脈上別段の明確な指示がない限り、下限の単位の10分の1まで)と、その記載された範囲内の任意の他の記載値又は介在値は、本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、そのより小さな範囲に独立して含まれてもよく、本発明にも包含され、記載された範囲における任意の具体的に除外される限定に従う。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、そのような含まれる限界の一方又は両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。
【0042】
本明細書で用いられる用語「HLA-A2」及び「A2」は、それぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座のHLA-A*02対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むヒト白血球抗原(HLA)タンパク質を指す。用語「HLA-A2」及び「A2」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験又は遺伝子型判定によってHLA-A*02抗原タイプに属するとして特定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*02抗原タイプの追加の名称は、「HLA-A2」、「HLA-A02」及び「HLA-A*2」を含む。2010年にHLAシステムの因子に関するWHO委員会(WHO Committee for Factors of the HLA System)によって開発されたHLA命名システムを含む、この対立遺伝子ファミリーによってコードされるHLAタンパク質を識別する異なる命名システムが開発されている。用語「HLA-A2」及び「A2」は、「HLA-A*02:01」、「HLA-A*02:02」、「HLA-A*02:03」、「HLA-A*02:04」、「HLA-A*02:05」、「HLA-A*02:06」、「HLA-A*02:07」、「HLA-A*02:08」、「HLA-A*02:09」、「HLA-A*02:10」及び「HLA-A*02:11」で始まる命名を含むが、これらに限定されない「HLA-A*02:」で始まるこの命名システムに従って命名された対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。「HLA-A*02:」に続く数字に加えて、対立遺伝子の命名は、大文字の「P」及び「G」を含むが、これらに限定されない大文字を含む場合もある(例えばHLA-A*02:01PやHLA-A*02:01:01G)。「HLA-A*02:」で始まり、その後に2、3又は4の追加の数字が続く対立遺伝子の命名は、完全な命名、又は命名の開始部分を構成する場合がある。対立遺伝子の命名は、イタリック体である場合がある。また、用語「HLA-A2」及び「A2」は、命名「HLA-A*02:01」、「HLA-A*02:02」、「HLA-A*02:03」、「HLA-A*02:04」、「HLA-A*02:05」、「HLA-A*02:06」、「HLA-A*02:07」、「HLA-A*02:08」、「HLA-A*02:09」、「HLA-A*02:10」及び「HLA-A*02:11」を含むが、これらに限定されないこの命名システムに従って、「HLA-A*02:」で始まる命名によって特定されるHLAタンパク質も指す。
【0043】
本明細書で用いられる「HLA-Aサブタイプ」は、HLA-A遺伝子の対立遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。
【0044】
本明細書で用いられる「HLA-A*03」という用語は、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座のHLA-A*03対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*03」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験又は遺伝子型判定によってHLA-A*03抗原タイプに属するとして特定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*03抗原タイプの追加の名称は、「HLA-A03」及び「HLA-A3」を含む。用語「HLA-A*03」は、「HLA-A*03:01」、「HLA-A*03:02」、「HLA-A*03:04」、「HLA-A*03:05」、「HLA-A*03:06」、「HLA-A*03:07」、「HLA-A*03:08」、「HLA-A*03:09」、「HLA-A*03:10」及び「HLA-A*03:12」で始まる命名を含むが、これらに限定されない「HLA-A*03:」で始まる、HLAシステムの因子に関するWHO委員会(WHO Committee for Factors of the HLA System)によって2010年に開発されたHLA命名システムに従って命名された対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。「HLA-A*03:」に続く数字に加えて、対立遺伝子の命名は、大文字の「P」及び「G」を含むが、これらに限定されない大文字を含む場合もある(例えばHLA-A*03:01PやHLA-A*03:01:01G)。「HLA-A*03:」で始まり、その後に2、3又は4の追加の数字が続く対立遺伝子の命名は、完全な命名、又は命名の開始部分を構成する場合がある。対立遺伝子の命名は、イタリック体である場合がある。また、用語「HLA-A*03」は、「HLA-A*03:01」、「HLA-A*03:02」、「HLA-A*03:04」、「HLA-A*03:05」、「HLA-A*03:06」、「HLA-A*03:07」、「HLA-A*03:08」、「HLA-A*03:09」、「HLA-A*03:10」及び「HLA-A*03:12」「P」及び「G」を含むが、これらに限定されないこの命名システムに従って「HLA-A*03:」で始まる命名によって特定されるHLAタンパク質も指す。
【0045】
本明細書で用いられる用語「HLA-A*25」、「HLA-A25」及び「A25」は、それぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座のHLA-A*25対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*25」、「HLA-A25」及び「A25」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験又は遺伝子型判定によってHLA-A*25抗原タイプに属するとして特定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*25抗原タイプの追加の名称は、「HLA-A25」を含む。用語「HLA-A*25」、「HLA-A25」及び「A25」は、「HLA-A*25:01」、「HLA-A*25:02」、「HLA-A*25:03」、「HLA-A*25:04」、「HLA-A*25:05」、「HLA-A*25:06」、「HLA-A*25:07」、「HLA-A*25:08」、「HLA-A*25:09」、「HLA-A*25:10」及び「HLA-A*25:11」を含むが、これらに限定されない「HLA-A*25:」で始まる、HLAシステムの因子に関するWHO委員会(WHO Committee for Factors of the HLA System)によって2010年に開発されたHLA命名システムに従って命名された対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。「HLA-A*25:」に続く数字に加えて、対立遺伝子の命名は、大文字の「P」及び「G」を含むが、これらに限定されない大文字を含む場合もある(例えばHLA-A*25:01PやHLA-A*25:01:01G)。「HLA-A*25:」で始まり、その後に2、3又は4の追加の数字が続く対立遺伝子の命名は、完全な命名、又は命名の開始部分を構成する場合がある。対立遺伝子の命名は、イタリック体である場合がある。また、用語「HLA-A*25」、「HLA-A25」及び「A25」は、命名「HLA-A*25:01」、「HLA-A*25:02」、「HLA-A*25:03」、「HLA-A*25:04」、「HLA-A*25:05」、「HLA-A*25:06」、「HLA-A*25:07」、「HLA-A*25:08」、「HLA-A*25:09」、「HLA-A*25:10」及び「HLA-A*25:11」を含むが、これらに限定されないこの命名システムに従って、「HLA-A*25:」で始まる命名によって特定されるHLAタンパク質も指す。
【0046】
本明細書で用いられる用語「HLA-A*29」、「HLA-A29」及び「A29」は、それぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座のHLA-A*29対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*29」、「HLA-A29」及び「A29」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験又は遺伝子型判定によってHLA-A*29抗原タイプに属するとして特定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*29抗原タイプの追加の名称は、「HLA-A29」を含む。用語「HLA-A*29」、「HLA-A29」及び「A29」は、「HLA-A*29:01」、「HLA-A*29:02」、「HLA-A*29:03」、「HLA-A*29:04」、「HLA-A*29:05」、「HLA-A*29:06」、「HLA-A*29:07」、HLA-A*29:09」、「HLA-A*29:10」及び「HLA-A*29:11」を含むが、これらに限定されない「HLA-A*29:」で始まる、HLAシステムの因子に関するWHO委員会(WHO Committee for Factors of the HLA System)によって2010年に開発されたHLA命名システムに従って命名された対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。「HLA-A*29:」に続く数字に加えて、対立遺伝子の命名は、大文字の「P」及び「G」を含むが、これらに限定されない大文字を含む場合もある(例えばHLA-A*29:02PやHLA-A*29:02:01G)。「HLA-A*29:」で始まり、その後に2、3又は4の追加の数字が続く対立遺伝子の命名は、完全な命名、又は命名の開始部分を構成する場合がある。対立遺伝子の命名は、イタリック体である場合がある。また、用語「HLA-A*29」、「HLA-A29」及び「A29」は、命名「HLA-A*29:01」、「HLA-A*29:02」、「HLA-A*29:03」、「HLA-A*29:04」、「HLA-A*29:05」、「HLA-A*29:06」、「HLA-A*29:07」、「HLA-A*29:09」、「HLA-A*29:10」及び「HLA-A*29:11」を含むが、これらに限定されないこの命名システムに従って「HLA-A*29:」で始まる命名によって特定されるHLAタンパク質も指す。
【0047】
本明細書で用いられる用語「HLA-A*30」、「HLA-A30」及び「A30」は、それぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座のHLA-A*30対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*30」、「HLA-A30」及び「A30」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験又は遺伝子型判定によってHLA-A*30抗原タイプに属するとして特定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*30抗原タイプの追加の名称は、「HLA-A30」を含む。用語「HLA-A*30」、「HLA-A30」及び「A30」は、「HLA-A*30:01」、「HLA-A*30:02」、「HLA-A*30:03」、「HLA-A*30:04」、「HLA-A*30:06」、「HLA-A*30:07」、「HLA-A*30:08」、「HLA-A*30:」で始まる、HLAシステムの因子に関するWHO委員会(WHO Committee for Factors of the HLA System)によって2010年に開発されたHLA命名システムに従って命名された対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。「HLA-A*30:」に続く数字に加えて、対立遺伝子の命名は、大文字の「P」及び「G」を含むが、これらに限定されない大文字を含む場合もある(例えばHLA-A*30:01P、HLA-A*30:02P、HLA-A*30:04P、HLA-A*30:01:01G、HLA-A*30:02:01G又はHLA-A*30:04:01G)。「HLA-A*30:」で始まり、その後に2、3又は4の追加の数字が続く対立遺伝子の命名は、完全な命名、又は命名の開始部分を構成する場合がある。対立遺伝子の命名は、イタリック体である場合がある。また、用語「HLA-A*30」、「HLA-A30」及び「A30」は、命名「HLA-A*30:01」、「HLA-A*30:02」、「HLA-A*30:03」、「HLA-A*30:04」、「HLA-A*30:06」、「HLA-A*30:07」、「HLA-A*30:08」、「HLA-A*30:09」、「HLA-A*30:10」及び「HLA-A*30:11」を含むが、これらに限定されないこの命名システムに従って「HLA-A*30:」で始まる命名によって特定されるHLAタンパク質も指す。
【0048】
本明細書で用いられる用語「HLA-A*31」、「HLA-A31」及び「A31」は、それぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座のHLA-A*31対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*31」、「HLA-A31」及び「A31」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験又は遺伝子型判定によってHLA-A*31抗原タイプに属するとして特定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*31抗原タイプの追加の名称は、「HLA-A31」を含む。用語「HLA-A*31」、「HLA-A31」及び「A31」は、「HLA-A*31:01」、「HLA-A*31:02」、「HLA-A*31:03」、「HLA-A*31:04」、「HLA-A*31:05」、「HLA-A*31:06」、「HLA-A*31:07」、「HLA-A*31:08」、「HLA-A*31:09」、「HLA-A*31:10」及び「HLA-A*31:11」を含むが、これらに限定されない「HLA-A*31:」で始まる、HLAシステムの因子に関するWHO委員会(WHO Committee for Factors of the HLA System)によって2010年に開発されたHLA命名システムに従って命名された対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。「HLA-A*31:」に続く数字に加えて、対立遺伝子の命名は、大文字の「P」及び「G」を含むが、これらに限定されない大文字を含む場合もある(例えばHLA-A*31:01PやHLA-A*31:01:02G)。「HLA-A*31:」で始まり、その後に2、3又は4の追加の数字が続く対立遺伝子の命名は、完全な命名、又は命名の開始部分を構成する場合がある。対立遺伝子の命名は、イタリック体である場合がある。また、用語「HLA-A*31」、「HLA-A31」及び「A31」は、命名「HLA-A*31:01」、「HLA-A*31:02」、「HLA-A*31:03」、「HLA-A*31:04」、「HLA-A*31:05」、「HLA-A*31:06」、「HLA-A*31:07」、「HLA-A*31:08」、「HLA-A*31:09」、「HLA-A*31:10」及び「HLA-A*31:11」を含むが、これらに限定されないこの命名システムに従って「HLA-A*31:」で始まる命名によって特定されるHLAタンパク質も指す。
【0049】
本明細書で用いられる用語「HLA-A*33」、「HLA-A33」及び「A33」は、それぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座のHLA-A*33対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*33」、「HLA-A33」及び「A33」に含まれるHLAタンパク質は、血清学的試験又は遺伝子型判定によってHLA-A*33抗原タイプに属するとして特定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*33抗原タイプの追加の名称は、「HLA-A33」を含む。用語「HLA-A*33」、「HLA-A33」及び「A33」は、「HLA-A*33:01」、「HLA-A*33:03」、「HLA-A*33:04」、「HLA-A*33:05」、「HLA-A*33:06」、「HLA-A*33:07」、「HLA-A*33:08」、「HLA-A*33:09」、「HLA-A*33:10」及び「HLA-A*33:11」を含むが、これらに限定されない「HLA-A*33:」で始まる、HLAシステムの因子に関するWHO委員会(WHO Committee for Factors of the HLA System)によって2010年に開発されたHLA命名システムに従って命名された対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。「HLA-A*33:」に続く数字に加えて、対立遺伝子の命名は、大文字の「P」及び「G」を含むが、これらに限定されない大文字を含む場合もある(例えばHLA-A*33:01PやHLA-A*33:01:01G)。「HLA-A*33:」で始まり、その後に2、3又は4の追加の数字が続く対立遺伝子の命名は、完全な命名、又は命名の開始部分を構成する場合がある。対立遺伝子の命名は、イタリック体である場合がある。また、用語「HLA-A*33」、「HLA-A33」及び「A33」は、命名「HLA-A*33:01」、「HLA-A*33:03」、「HLA-A*33:04」、「HLA-A*33:05」、「HLA-A*33:06」、「HLA-A*33:07」、「HLA-A*33:08」、「HLA-A*33:09」、「HLA-A*33:10」及び「HLA-A*33:11」を含むが、これらに限定されないこの命名システムに従って「HLA-A*33:」で始まる命名によって特定されるHLAタンパク質も指す。
【0050】
本明細書で用いられる用語「HLA-A*36」、「HLA-A36」及び「A36」は、それぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座のHLA-A*36対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*36」、「HLA-A36」及び「A36」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験又は遺伝子型判定によってHLA-A*36抗原タイプに属するとして特定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*36抗原タイプの追加の名称は、「HLA-A36」を含む。用語「HLA-A*36」、「HLA-A36」及び「A36」は、「HLA-A*36:01」、「HLA-A*36:02」、「HLA-A*36:03」、「HLA-A*36:04」及び「HLA-A*36:05」を含むが、これらに限定されない「HLA-A*36:」で始まる、HLAシステムの因子に関するWHO委員会(WHO Committee for Factors of the HLA System)によって2010年に開発されたHLA命名システムに従って命名された対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。「HLA-A*36:」に続く数字に加えて、対立遺伝子の命名は、大文字の「P」及び「G」を含むが、これらに限定されない大文字を含む場合もある。「HLA-A*36:」で始まり、その後に2、3又は4個の追加の数字が続く対立遺伝子の命名は、完全な命名、又は命名の開始部分を構成する場合がある。対立遺伝子の命名は、イタリック体である場合がある。また、用語「HLA-A*36」、「HLA-A36」及び「A36」は、命名「HLA-A*36:01」、「HLA-A*36:02」、「HLA-A*36:03」、「HLA-A*36:04」、「HLA-A*36:05」及び「HLA-A*36:06」等を含むが、これらに限定されないこの命名システムに従って「HLA-A*36:」で始まる命名によって特定されるHLAタンパク質も指す。
【0051】
本明細書で用いられる用語「HLA-A*68」、「HLA-A68」及び「A68」は、それぞれ、HLA遺伝子複合体のHLA-A遺伝子座のHLA-A*68対立遺伝子ファミリーによってコードされる、細胞表面タンパク質を含むHLAタンパク質を指す。用語「HLA-A*68」、「HLA-A68」及び「A68」に包含されるHLAタンパク質は、血清学的試験又は遺伝子型判定によってHLA-A*68抗原タイプに属するとして特定されたHLAタンパク質を含む。HLA-A*68抗原タイプの追加の名称は、「HLA-A68」を含む。用語「HLA-A*68」、「HLA-A68」及び「A68」は、「HLA-A*68:01」、「HLA-A*68:02」、「HLA-A*68:03」、「HLA-A*68:04」、「HLA-A*68:05」、「HLA-A*68:06」、「HLA-A*68:07」、「HLA-A*68:08」、「HLA-A*68:09」及び「HLA-A*68:10」を含むが、これらに限定されない「HLA-A*68:」で始まる、HLAシステムの因子に関するWHO委員会(WHO Committee for Factors of the HLA System)によって2010年に開発されたHLA命名システムに従って命名された対立遺伝子によってコードされるHLAタンパク質を指す。「HLA-A*68:」に続く数字に加えて、対立遺伝子の命名は、大文字の「P」及び「G」を含むが、これらに限定されない大文字を含む場合もある(例えばHLA-A*68:01P、HLA-A*68:01:01G又はHLA-A*68:01:02G)。「HLA-A*68:」で始まり、その後に2、3又は4の追加の数字が続く対立遺伝子の命名は、完全な命名、又は命名の開始部分を構成する場合がある。対立遺伝子の命名は、イタリック体である場合がある。また、用語「HLA-A*68」、「HLA-A68」及び「A68」は、命名「HLA-A*68:01」、「HLA-A*68:02」、「HLA-A*68:03」、「HLA-A*68:04」、「HLA-A*68:05」、「HLA-A*68:06」、「HLA-A*68:07」、「HLA-A*68:08」、「HLA-A*68:09」及び「HLA-A*68:10」を含むが、これらに限定されないこの命名システムに従って「HLA-A*68:」で始まる命名によって特定されるHLAタンパク質も指す。
【0052】
本明細書では、特定のHLAタンパク質は、HLAシステムの因子に関するWHO委員会(WHO Committee for Factors of the HLA System)によって2010年に開発されたHLA命名システムに従うタンパク質の命名を用いて、具体的なHLAタンパク質に言及する場合がある。例えば、本明細書で用いられる用語「HLA-A*02:01」は、この命名システムに従って「HLA-A*02:01」と命名されたHLAタンパク質を指す。同様に、用語「HLA-A*03:01」、「HLA-A*25:01」、「HLA-A*29:02」、「HLA-A*30:01」、「HLA-A*31:01」、「HLA-A*33:01」、「HLA-A*36:01」、「HLA-A*68:01」は、それぞれ、「HLA-A*03:01」、「HLA-A*25:01」、「HLA-A*29:02」、「HLA-A*30:01」、「HLA-A*31:01」、「HLA-A*33:01」、「HLA-A*36:01」、「HLA-A*68:01」と命名されたHLAタンパク質を指す。
【0053】
本明細書で用いられる用語「抗HLA-A2抗体」は、HLA-A2に優先的又は特異的に結合する抗体を指す。
【0054】
本明細書で用いられる用語「BB7.2」は、ATCC寄託番号HB-82として識別されるマウスハイブリドーマを指す。BB7.2ハイブリドーマ細胞は、Parham、P.他とHilton他(Parham、P.他、1981;Hilton他、2013)によって特徴付けられた、IgG2bカッパアイソタイプのマウスモノクローナル抗体を分泌する。BB7.2によって分泌されるモノクローナル抗体の6つの相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列は、次のとおりである:
重鎖CDR1(HCDR1):SYHIQ(配列番号183);
重鎖CDR2(HCDR2):WIYPGDGSTQYNEKFKG(配列番号185);
重鎖CDR3(HCDR3):EGTYYAMDY(配列番号187);
軽鎖CDR1(LCDR1):RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号188);
軽鎖CDR2(LCDR2):KVSNRFS(配列番号189);
軽鎖CDR3(LCDR3):FQGSHVPRT(配列番号190)。
【0055】
本明細書で用いられる場合、「BB7.2抗体」は、BB7.2によって分泌されるモノクローナル抗体のVH(配列番号191)及びVL(配列番号192)を有する抗体である。BB7.2抗体は、BB7.2によって分泌されるモノクローナル抗体のVH及びVLを有するscFv等、BB7.2によって分泌されるモノクローナル抗体のVH及びVLを有する抗体全体又はその断片であってよい。
【0056】
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、任意のアイソタイプの抗体又は免疫グロブリン、抗原への特異的結合を保持する抗体の断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、ダイアボディ、単一ドメイン抗体(sdAb)、線形抗体、単鎖抗体分子、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない)、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、及び抗体の抗原結合部と非抗体タンパク質とを含む融合タンパク質を含む。
【0057】
抗体は、ポリクローナルであってもモノクローナルであってもよく、多鎖であっても単鎖であってもよく、又はインタクト免疫グロブリンであってもよく、天然源に由来しても組換え源に由来してもよい。抗体は、免疫グロブリン分子の四量体であってよい。基本的な4鎖抗体ユニットは、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖とから構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgGの場合、4鎖ユニットは一般に約150,000ダルトンである。各L鎖は1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に結合され、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて、1つ以上のジスルフィド結合によって互いに結合される。各H鎖及びL鎖には、一定の間隔で鎖内ジスルフィド架橋もある。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)をもち、α鎖及びγ鎖の各々については3つの定常ドメイン(CH)が続き、μアイソタイプ及びεアイソタイプについては4つのCHドメインが続く。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)をもち、もう一方の端に定常ドメイン(CL)が続く。VLはVHと整列し、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖の可変ドメインの間に界面を形成すると考えられている。VHとVLのペアリングにより、単一の抗原結合部位が形成される。異なるクラスの抗体の構造と特性については、例えばBasic and Clinical Immunology,第8版,Daniel P.Stites,Abba I.Terr及びTristram G.Parslow(編),Appleton&Lange,コネチカット州ノーウォーク、1994年、71頁及び第6章を参照されたい。脊椎動物種のL鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパとラムダと呼ばれる2つの明らかに別々の種類のいずれかに割り当てることができる。その重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラス又はアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つのクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMは、それぞれα、δ、ε、γ、μと呼ばれる重鎖を有する。γクラスとαクラスは、CH配列と機能における比較的小さな違いに基づいて、更にサブクラスに分類され、例えば、ヒトは、以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。
【0058】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」、「VH」又は「H」と呼ばれることがある。軽鎖の可変ドメインは、「VL」、「VL」又は「L」と呼ばれることがある。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含む。
【0059】
用語「可変」は、可変ドメインの特定のセグメントの配列が抗体間で大幅に異なるという事実を指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの110~130アミノ酸の範囲に均等に分布はしていない。代わりに、V領域は、15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチで構成され、それぞれ9~12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極端な可変性を有する短い領域によって区切られる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFRを有し、主にβシート構成を採用し、3つの超可変領域によって接続され、βシート構造を接続する(場合によってはβシート構造の一部を形成する)ループを形成する。各鎖の超可変領域は、FRによって近接して一緒に保持され、他の鎖の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat他、Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照)。
【0060】
「インタクト」抗体とは、抗原結合部位とCL及び少なくとも重鎖定常ドメインCH1、CH2及びCH3を含む抗体である。定常ドメインは、天然の配列定常ドメイン(例えばヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であってよい。一実施形態では、インタクト抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有することがある。
【0061】
用語「抗体断片」は、インタクト抗体又はその組換え変異体の少なくとも一部を指し、抗原等の標的に対する認識と抗体断片の特異的結合を付与するのに十分である、インタクト抗体の抗原結合ドメイン、例えば抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、scFv断片;ダイアボディ;単一ドメイン抗体(sdAb);線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata他、Protein Eng.8(10):1057-1062[1995]を参照);単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。一実施形態では、抗体断片は、インタクト抗体の抗原結合部位を含み、よって、抗原に結合する能力を保持する。抗HLA-A2抗体の断片の中には、CAR-改変免疫細胞のキメラ抗原受容体においてターゲティングアーム(HLA-A2に向けられる)として使用できる、抗HLA-A2抗体の一部(及び抗HLA-A2抗体の一部(例えばscFv)の組合せ)も含まれる。そのような断片は、必ずしもタンパク質分解断片ではなく、むしろ標的に対する親和性を付与することのできるポリペプチド配列の一部である。抗HLA-A2抗体断片の中には、単一ドメイン抗体(sdAb)が更に含まれる(例えばLi他(2017年);Jamnani他(2014)を参照)。そのような単一ドメイン抗体は、本発明のCAR改変免疫細胞におけるターゲティングアームとして用いることができる。
【0062】
抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映した命名である残りの「Fc」断片とが生成される。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)と1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)に加えて、L鎖全体から構成される。各Fab断片は、抗原結合に関して一価であり、つまり、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理により、2価の抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合Fab断片にほぼ対応し、依然として抗原を架橋することが可能である、単一の大きなF(ab’)2断片が生じる。Fab’断片は、抗体のヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端にいくつかの残基が追加されていることにより、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’の、本明細書での命名である。F(ab’)2抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして作成された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0063】
Fc断片は、ジスルフィドによって保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列によって決定され、この領域は、特定の種類の細胞上に見られるFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。
【0064】
「Fv」は、完全な抗原認識と抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接な非共有結合で結合している1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体から成る。単鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインを可動性ペプチドリンカーによって共有結合することができるので、軽鎖と重鎖は、2鎖Fv種の構造に類似した「二量体」構造で関連付けることができる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖とL鎖からそれぞれ3つのループ)が発生する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は、抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識し結合する能力を有する。
【0065】
「sFv」又は「scFv」とも略される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に接続されたVH抗体ドメイン及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを、VHドメインとVLドメインとの間に更に含むことがある。特記しない限り、本明細書で使用するscFvは、例えばポリペプチドのN末端及びC末端に関して、VL可変領域とVH可変領域をいずれかの順序で有してよく、scFvは、VL-リンカー-VHを含んでも、VH-リンカー-VLを含んでもよい。scFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、Rosenburg及びMoore編、Springer-Verlag、ニューヨーク、269-315頁(1994);Antibody Engineering、Borrebaeck編、オックスフォード大学出版局、ニューヨーク(1995)を参照されたい。一実施形態では、抗HLA-A2抗体由来scFvは、本明細書に開示されるCAR改変免疫細胞のターゲティングアームとして用いることができる。
【0066】
モノボディとしても知られる用語「アドネクチン」は、当技術分野において周知であり、抗原に対して高い親和性と特異性で結合するように設計されたタンパク質を指す。それらは、まとめて「抗体ミメティック」と呼ばれる分子のクラスに属する。
【0067】
用語「アルファボディ」は、細胞透過性アルファボディと呼ばれ、様々な抗原に結合するように遺伝子操作された小さな10kDaタンパク質から成る抗体ミメティックの一種を指す。アルファボディは、細胞内タンパク質の標的に到達し結合することができる。
【0068】
用語「アフィボディ」は、当技術分野において周知であり、ブドウ球菌プロテインAのIgG結合ドメインの1つに由来する58アミノ酸残基のタンパク質ドメインに基づく親和性タンパク質を指す。
【0069】
用語「アンチカリン」は、当技術分野において周知であり、結合特異性がリポカリンに由来する抗体ミメティック技術を指す。アンチカリンは、デュオカリンと呼ばれる二重ターゲティングタンパク質としてフォーマットすることもできる。
【0070】
用語「アルマジロリピートタンパク質ベースの足場」は、アルマジロリピートタンパク質に基づく人工ペプチド結合足場に対応する抗体ミメティックの一種を指す。アルマジロリピートタンパク質は、ペプチド又はタンパク質との相互作用を媒介する約42個のアミノ酸のタンデムアルマジロリピートで構成されるアルマジロドメインによって特徴付けられる。
【0071】
用語「アビマー」は、当技術分野において周知であり、抗体ミメティック技術を指す。用語「DARPin」(Designed Ankyrin Repeat Protein(設計されたアンキリンリピートタンパク質))は、当技術分野において周知であり、非抗体ポリペプチドの結合能力を活用するために開発された抗体ミメティックDRP(designed repeat protein(設計されたリピートタンパク質))技術を指す。
【0072】
用語「ダイアボディ」は、Vドメインの鎖間ではなく鎖内のペアリングが達成され、2価の断片、つまり2つの抗原結合部位を有する断片が得られるように、VHドメインとVLドメインの間に短いリンカー(約5~10残基)を有するscFv断片を構築することによって調製された小さな抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメイン及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する、2つの「クロスオーバー」scFv断片のヘテロダイマーである。ダイアボディは、例えば、EP0404097;WO93/11161;及びHolliger他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)においてより完全に記載されている。
【0073】
用語「エバシン」は、当技術分野において周知であり、ケモカイン結合タンパク質のクラスを指す。
【0074】
用語「フィノマー」は、当技術分野において周知であり、抗体ミメティックのクラスに属するタンパク質を指す。それらは、熱安定性が高く、免疫原性が低いので、魅力的な結合分子である。
【0075】
用語「ノッティン」(インヒビターシスチンノットとも呼ばれ得る)は、3つのジスルフィド架橋を含むタンパク質構造モチーフを含む抗体ミメティックを指す。
【0076】
用語「クニッツドメインペプチド」は、抗体ミメティックの一種を指し、プロテアーゼの機能を阻害するタンパク質の活性ドメインに基づく。
【0077】
用語「ナノボディ」は、当技術分野において周知であり、天然に存在する重鎖抗体の独特の構造的特性及び機能的特性を含む抗体由来の治療用タンパク質を指す。これらの重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)と2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含む。
【0078】
用語「ユニボディ」は、当技術分野において周知であり、IgG4抗体のヒンジ領域を欠く抗体断片を指す。ヒンジ領域の欠失により、従来のIgG4抗体のサイズの本質的に半分の分子が得られ、IgG4抗体の二価結合領域ではなく一価結合領域を有する。
【0079】
用語「バーサボディ」は、当技術分野において周知であり、別の抗体ミメティック技術を指す。それらは、15%超のシステインを有する3~5kDaの小さなタンパク質であり、高ジスルフィド密度の足場を形成し、典型的なタンパク質が有する疎水性コアに置き換わる。
【0080】
scFvの文脈において用いられる用語「可動性ポリペプチドリンカー」又は「リンカー」は、可変重鎖領域と可変軽鎖領域を結合するために、単独又は組合せで用いられるグリシン残基及び/又はセリン残基等のアミノ酸から成るペプチドリンカーを指す。一実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーはGly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Ser)nを含み、nは1以上の正の整数である。例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、n=9、及びn=10である。別の実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーはGly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)nを含み、nは1以上の正の整数である。例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、n=9及びn=10である。一実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーは、(Gly4Ser)4又は(Gly4Ser)3を含むが、これらに限定されない。別の実施形態では、リンカーは、(Gly2Ser)、(GlySer)又は(Gly3Ser)の複数の反復を含む。また、参照により本明細書に組み込まれるWO2012/138475に記載されているリンカーも、本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
用語「重鎖」は、天然に存在する立体構造において抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の大きい方を指し、通常、抗体が属するクラスを決定する。
【0082】
用語「軽鎖」は、天然に存在する立体構造において抗体分子に存在する2つの種類のポリペプチド鎖の小さい方を指す。カッパ(Κ)軽鎖及びラムダ(λ)軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0083】
用語「超可変領域」、「HVR」又は「HV」は、本明細書で用いられる場合、配列において超可変でありかつ/又は構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つの超可変領域、すなわちVHの3つ(H1、H2、H3)とVLの3つ(L1、L2、L3)を含む。多くの超可変領域の描写が使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列多様性に基づいており、最も一般的に用いられている(Kabat他、1991)。Chothiaは、代わりに構造的ループの場所に言及する(Chothia他、1987)。Kabatナンバリング法を用いて番号付けした場合のChothia CDR-H1ループの終わりは、ループの長さによってH32とH34の間で異なる(これは、KabatナンバリングスキームがH35AとH35Bに挿入を配置するからである。35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終了する。35Aしか存在しない場合、ループは33で終了する。35Aと35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの中間物であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」超可変領域は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づくものである。これらの超可変領域の各々の残基を以下に示す。これらの超可変領域の各々の残基を以下に示す。
【表1】
【0084】
用語「超可変領域」及び「相補性決定領域」と、それらのそれぞれの略語(HVR、HV、CDR)は、本明細書では互換的に用いられる。更に、以下の用語のペアも、本明細書では互換的に用いられる:
「VH CDR1」と「HCDR1」;
「VH CDR2」と「HCDR2」;
「VH CDR3」と「HCDR3」;
「VL CDR1」と「LCDR1」;
「VL CDR2」と「LCDR2」;及び
「VL CDR3」と「LCDR3」。
【0085】
超可変領域は、次のように「伸長した超可変領域」を有してよい:VLでは24-36又は24-34(L1)、46-56又は50-56(L2)及び89-97(L3)と、VHでは26-35B(HI)、50-65、47-65又は49-65(H2)及び93-102、94-102又は95-102(H3)可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat他(Kabat他、1991年)に従って番号付けされる。
【0086】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書において定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0087】
用語「Kabatのような可変ドメイン残基ナンバリング」又は「Kabatのようなアミノ酸位置ナンバリング」及びそれらの変形は、Kabat他(Kabat他、1991)における抗体のコンパイルの重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに用いられるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを用いると、実際の直鎖アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮又は挿入に対応する、より少ない又は追加のアミノ酸を含むことができる。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによれば残基52a)と、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(Kabatによれば、例えば残基82a、82b及び82c等)を含むことができる。残基のKabatナンバリングは、抗体の配列と「標準」Kabatナンバリングされた配列との相同性領域でのアラインメントにより、所定の抗体について決定することができる。
【0088】
可変ドメイン内の残基(軽鎖の残基1~107と重鎖の残基1~13)を指す場合、Kabatナンバリングシステムが一般に用いられる(例えばKabat他、1991)。免疫グロブリン重鎖の定常領域内の残基を指す場合には、「EUナンバリングシステム」又は「EUインデックス」が一般に用いられる(例えば、上記のKabat他で報告されたEUインデックス)。「KabatのようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。本明細書において別段の記載がない限り、抗体の可変ドメインにおける残基番号への言及は、Kabatナンバリングシステムによる残基ナンバリングを意味する。
【0089】
用語「特異的に結合する」は、リガンド(例えばヒト化抗HLA-A2抗体)が、試料に存在する同族の結合パートナー(例えばHLA-A2)タンパク質を認識して結合するが、リガンドは、試料内の他の分子を実質的に認識又は結合しないことを指す。非特異的結合は、10-7M未満の親和性での結合、例えば10-6M、10-5M、10-4M等の親和性での結合を指す。
【0090】
目的の抗原又はエピトープに「特異的に結合する」抗体は、非特異的な相互作用とは明らかに異なる十分な親和性で抗原又はエピトープに結合する抗体である。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較した分子の結合を決定することによって測定することができる。
【0091】
用語「組換え抗体」は、例えばバクテリオファージや酵母の発現系によって発現される抗体等、組換えDNA技術を用いて生成される抗体を指す。また、この用語は、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成され、該DNA分子が抗体タンパク質又は抗体を指定するアミノ酸配列を発現する抗体を意味すると解釈されるべきであり、ここでDNA又はアミノ酸配列は、当技術分野で利用可能であり周知である組換えDNA又はアミノ酸配列技術を用いて取得されている。
【0092】
本明細書において用いられる用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団(すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在する可能性のある自然発生の突然変異を除いて同一である)から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位を対象とする。更に、異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体の調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体に汚染されずに合成できるという利点がある。修飾語「モノクローナル」は、特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、Kohler他、Nature、256:495(1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ方法論によって調製することができ、又は、細菌、真核動物又は植物細胞における組換えDNA法を用いて作製することができる(例えば米国特許第4,816,567号を参照)。「モノクローナル抗体」は、例えばClackson他、Nature,352:624-628(1991)及びMarks他、J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0093】
用語「抗原」は、免疫応答を引き起こす分子を指す。この免疫応答は、抗体産生若しくは特異的免疫適格細胞の活性化のいずれか、又は両者を伴うことができる。当業者には当然のことながら、実質的に全てのタンパク質又はペプチドを含むあらゆる巨大分子が、抗原として機能し得る。更に、抗原は、組換えDNA又はゲノムDNAに由来し得る。当業者には当然のことながら、免疫応答を引き起こすタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分的ヌクレオチド配列を含むあらゆるDNAは、したがって、本明細書で用いられる用語としての「抗原」をコードする。更に、当業者には当然のことながら、抗原は必ずしも、遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はない。容易に分かるように、本発明は、複数の遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むが、これに限定されず、また、これらのヌクレオチド配列は、所望の免疫応答を引き起こすポリペプチドをコードするために様々な組合せで配置される。更に、当業者には当然のことながら、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要は全くない。容易に分かるように、抗原は、生体試料から生成又は合成することができ、又は生体試料に由来してよく、又はポリペプチド以外の巨大分子であってよい。そのような生体試料として、他の生体成分を有する組織試料、腫瘍試料、細胞又は流体等が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書で用いられる場合、用語「親和性」は、2つの薬剤の可逆的結合の平衡定数を指し、解離定数(Kd)として表される。親和性は、無関係なアミノ酸配列に対する抗体の親和性よりも、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、又は少なくとも1000倍、又はそれ以上大きくてよい。標的タンパク質に対する抗体の親和性は、例えば、約100ナノモル(nM)~約0.1nM、約100nM~約1ピコモル(pM)、又は約100nM~約1フェムトモル(fM)、又はそれ以上であってよい。本明細書で用いられる場合、用語「アビディティ」は、希釈後の解離に対する2つ以上の薬剤の複合体の耐性を指す。用語「免疫反応性」、「優先的に結合する」及び「特異的に結合する」は、抗体及びその断片に関して本明細書では互換的に用いられる。そのような用語が本明細書において用いられる場合、ヒト化抗HLA-A2抗体を含む本発明の抗HLA-A2抗体とその断片は、HLA-A2に特異的に結合する。
【0095】
用語「結合」は、例えば、塩橋や水橋等の相互作用を含む、共有結合、静電結合、疎水結合、並びにイオン結合及び/又は水素結合の相互作用による、2つの分子間の直接的な会合を指す。非特異的結合は、10-7M未満の親和性での結合、例えば10-6M、10-5M、10-4M等の親和性での結合を指す。
【0096】
本明細書で用いられる用語「反応性」は、分子と反応する(すなわち、結合する)抗体の能力を指す(例えば、分子に特異的に結合する)。第1の抗体が第2の抗体と比較して分子への結合の低下を示す場合、第1の抗体は第2の抗体よりも分子(例えばHLA分子)に対して「反応性が低い」。1つ以上の特定のHLA分子に対する第1及び第2の抗体の反応性を容易に比較するためのアプローチが知られている。アプローチの一例は、本明細書の実施例のセクションに提供されており、FlowPRA(登録商標) Single Antigenビーズ(One Lambda)を採用して、特定のHLA分子と反応(又は結合)する能力について抗体を調べた。そのようなフローサイトメトリーアプローチは、高スループットの抗体反応性分析に適している。
【0097】
本明細書で用いられる場合、用語「ヒンジ領域」は、隣接するポリペプチド領域に構造的な可動性と間隔を提供する可動性ポリペプチドコネクター領域(本明細書では「ヒンジ」又は「スペーサー」とも呼ばれる)を指し、天然又は合成のポリペプチドから成ることができる。ヒンジ領域は、CARを発現する免疫細胞の効力に影響を与える可能性がある(例えばWatanabe他(2016年)を参照)。免疫グロブリン(例えばIgG1)に由来する「ヒンジ領域」は、一般に、ヒトIgG1のGlu216からPro230まで伸びていると定義されている(Burton(1985)Molec.Immunol.,22:161-206).。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド(S-S)結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配置することにより、IgG1配列と整列させることができる。ヒンジ領域は、米国特許第5,677,425号に記載されている改変ヒンジ領域を含むが、これに限定されない自然発生又は非自然発生のものであってよい。ヒンジ領域は、CH1ドメインのものとは異なるクラス又はサブクラスの抗体に由来する完全なヒンジ領域を含むことができる。用語「ヒンジ領域」は、CD8及び他の受容体に由来する領域も含むことができ、これらの領域は、隣接領域に可動性及び間隔を提供する際に同様の機能を提供する。
【0098】
本明細書で用いられる場合、用語「免疫細胞」は、一般に、骨髄で産生される造血幹細胞(HSC)に由来する血液細胞(白血球)を含む。「免疫細胞」には、例えばリンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)及び骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)が含まれる。
【0099】
「T細胞」は、Tヘルパー細胞(CD4+細胞)、CD8+T細胞(例えば細胞傷害性CD8+T細胞、制御性CD8+T細胞)、制御性T細胞(Treg)、ガンマデルタT細胞及びダブルネガティブT細胞を含む、CD3を発現する全ての種類の免疫細胞を含む。
【0100】
「細胞傷害性細胞」は、細胞傷害性CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞及び好中球を含み、これらの細胞は細胞傷害性応答を媒介することが可能である。
【0101】
本明細書で用いられる場合、用語「制御性免疫細胞」は、免疫系の活性化を抑制し、それによって免疫系のホメオスタシスと自己抗原に対する寛容を維持するように、「制御」的に作用する免疫細胞を指す。「制御性免疫細胞」は、組織の修復又は再生の促進等、臨床状態の改善をもたらす非免疫細胞にも影響を与える場合がある。制御性免疫細胞には、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ及び制御性樹状細胞が含まれる。
【0102】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる「制御性Tリンパ球」、「制御性T細胞」、「T制御性細胞」、「Treg細胞」又は「Treg」は同義語であり、当技術分野で用いられるその標準的な定義を有するものと意図される。Treg細胞は、免疫系の活性化を抑制し、それによって免疫系のホメオスタシスと自己抗原に対する寛容を維持するように「制御」的に作用する、T細胞の特殊な亜集団である。Tregは、サプレッサーT細胞と呼ばれることもある。Treg細胞は、常にではないが、多くの場合、フォークヘッドファミリー転写因子Foxp3(フォークヘッドボックスp3)の発現によって特徴付けられる。また、CD4又はCD8表面タンパク質を発現することもある。通常、CD25も発現する。本明細書及び特許請求の範囲で用いられる場合、別段の指定がない限り、Tregには、胸腺で発生する「天然」のTregと、胸腺の外側(例えば組織若しくは2次リンパ器官、又は規定の培養条件下の実験室)で起こる分化過程を介して生じる誘導性/適応/末梢Tregと、組換えDNA技術を用いて(例えばFOXP3の発現操作によって)作製されたTregとが含まれる。自然発生のTreg細胞(CD4+CD25+Foxp3+)は、胸腺の他の全てのT細胞と同様に発生する。対照的に、誘導性/適応/末梢Treg細胞(CD4+CD25+Foxp3+Treg、Tr1細胞、Th3細胞その他を含む)は、胸腺の外側で発生する。Tregを誘導するひとつの方法は、Tエフェクター細胞をIL-10又はTGF-βに曝すことである。T細胞は、Foxp3遺伝子をT細胞の混合集団にトランスフェクション又は形質導入することによって、Treg細胞に変換することもできる。Foxp3を発現させられるT細胞はTreg表現型を採用し、そのような組換えTregも本明細書では「Treg」と定義される。
【0103】
本明細書で用いられる場合、用語「免疫エフェクター細胞」は、特定の免疫応答を開始することのできる形態にある、免疫系の細胞を指す。
【0104】
本明細書で用いられる場合、用語「免疫応答」は、T細胞媒介及び/又はB細胞媒介の免疫応答を含む。例示的な免疫応答には、T細胞応答、例えばサイトカイン産生や細胞の細胞傷害が含まれる。更に、免疫応答という用語は、T細胞の活性化、例えば抗体産生(体液性応答)と、サイトカイン応答性細胞(例えばマクロファージ)の活性化により、間接的に影響を受ける免疫応答を含む。免疫応答に関与する免疫細胞には、B細胞やT細胞(CD4+、CD8+、Th1細胞、及びTh2細胞)等のリンパ球;抗原提示細胞(例えば樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球、ランゲルハンス細胞等のプロフェッショナル抗原提示細胞、及びケラチノサイト、内皮細胞、アストロサイト、線維芽細胞、オリゴデンドロサイト等の非プロフェッショナル抗原提示細胞);ナチュラルキラー細胞;マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、及び顆粒球等の骨髄性細胞が含まれる。
【0105】
用語「拒絶反応」は、移植された器官又は組織がレシピエントの体に受け入れられない状態を指す。拒絶反応は、レシピエントの免疫系が移植された器官又は組織を攻撃することに起因する。拒絶反応は、移植後数日から数週間(急性)又は移植後数ヶ月から数年(慢性)に発生するおそれがある。
【0106】
本明細書で用いられる用語「移植片対宿主病」又は「GVHD」は、遺伝的に異なる人から移植組織を受け取った後の医学的合併症を指す。提供された組織(移植片)の免疫細胞は、レシピエント(宿主)を異物として認識する。そして、移植された免疫細胞は、宿主の体細胞を攻撃する。GVHDは、一般に幹細胞移植に関連する。ただし、該用語は、他の形態の組織移植片から生じるGVHDを含む。GVHDは、輸血後に発生することもある。
【0107】
本明細書で用いられる場合、用語「免疫学的寛容」又は「免疫寛容」は、未処置の対象と比較して、処置された対象の一部に対して実行される方法を指す:a)特異的な免疫学的応答(少なくとも一部は、抗原特異的エフェクターTリンパ球、Bリンパ球、抗体又はそれらの均等物によって媒介されると考えられる)のレベルの低下;b)特異的な免疫学的応答の開始若しくは進行の遅延;又はc)特異的な免疫学的応答の開始若しくは進行のリスクの低下。「特異的な」免疫学的寛容又は免疫寛容は、他の抗原と比較して特定の抗原に対して免疫学的寛容又は免疫寛容が優先的に引き起こされる場合に生じる。
【0108】
本明細書で用いられる場合、用語「移植後の免疫寛容(operational tolerance)」とは、感染症を含む他の負荷に応答できる免疫能力のある宿主において、免疫抑制薬による治療が全くない状態で、拒絶反応(急性又は慢性の拒絶反応を含む)の組織学的兆候がなく、安定した移植片機能が少なくとも1年間続いている臨床状態を指す。
【0109】
本明細書で用いられる場合、用語「免疫順応」は、器官又は組織の移植片に特異的な抗体がレシピエントに存在するにもかかわらず、器官又は組織の移植片が正常に機能する、移植レシピエントの状態を指す。
【0110】
本明細書で用いられる場合、用語「幹細胞」は、概して、多能性又は多分化能性の幹細胞を含む。「幹細胞」には、例えば胚性幹細胞(ES);間葉系幹細胞(MSC);人工多能性幹細胞(iPS);及び単分化能前駆細胞(committed progenitor cell)(造血幹細胞(HSC);骨髄由来細胞等)を含む。
【0111】
本明細書で用いられる場合、「治療」、「治療する」等の用語は、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患の部分的又は完全な治癒、及び/又は、疾患に起因する副作用の点で、治療的であってよい。本明細書において用いられる「治療」は、哺乳類、例えばヒトの疾患のあらゆる治療を包含し、疾患の緩和、すなわち疾患の退行及び/又は疾患の1つ以上の症状の軽減を引き起こすことを含む。
【0112】
本明細書で用いられる場合、「予防」、「予防する」、「予防すること」等の用語は、疾患若しくは病状の予防的又は保護的な治療を提供することを意味する。その効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防するという点で、予防的であってよい。本明細書において用いられる「予防」は、哺乳類、例えばヒトの疾患に対するあらゆる予防効果を包含し、以下を含む:(a)疾患の素因がある可能性があるがまだ疾患を有すると診断されていない対象において、疾患が発生するのを防ぐこと;及び(b)疾患の抑制、すなわちその発症の阻止。
【0113】
「患者」、「対象」、「個体」、「宿主」等の用語は、本明細書では互換的に用いられ、本明細書に記載される方法に従うことができる、インビトロ若しくはインサイチュのいずれの動物又はその細胞を指す。「患者」、「対象」、「個体」、「宿主」等の用語は、免疫応答を誘発することができる生物(例えば哺乳類)を含むことが意図されている。「患者」、「対象」、「個体」、「宿主」の例には、マウス類(例えばラット、マウス)、ウサギ類(例えばウサギ)、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)等と、それらのトランスジェニック種が含まれる。特定の非限定的な実施形態では、患者、対象、宿主又は個体は、ヒトである。
【0114】
用語「有効量」又は「治療有効量」は、本明細書では互換的に用いられ、研究者、獣医、医師、又は他の臨床医が求めている組織、系若しくは対象の生物学的応答又は医学的応答を誘発し得る治療薬の量、又は複数の治療薬の合計量を指す。用語「治療有効量」は、投与されたときに、治療される障害若しくは疾患の兆候又は症状の1つ以上の発症を予防する(又はある程度緩和する)のに十分な治療薬の量を含む。治療有効量は、治療薬、疾患及びその重症度、並びに治療対象の年齢、体重等に応じて異なる。
【0115】
本明細書において用いられる用語「活性化」は、検出可能な細胞応答を誘導するのに十分に刺激されたT細胞(例えば制御性T細胞)の状態を指す。活性化は、サイトカイン産生や抑制活性等の検出可能なエフェクター機能(複数可)にも関連付けることができる。「活性化された」制御性T細胞という用語は、とりわけ、免疫応答を抑制することが可能である制御性T細胞を指す。
【0116】
用語「キメラ抗原受容体」或いは「CAR」は、抗原結合ドメインを含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインとを含む組換えポリペプチドコンストラクトを指す。一実施形態では、CARは任意にヒンジを含む。用語「キメラ受容体」又は「キメラ抗原受容体」又は「CAR」は、特に、免疫細胞内にある場合、標的リガンドに対する特異性と細胞内シグナル生成を細胞に提供する、1つのポリペプチド又はポリペプチドのセット(通常、最も単純な実施形態では2つ)を指してよい。一部の実施形態では、ポリペプチドのセットは互いに近接している。一部の実施形態では、キメラ受容体は、ポリペプチドのセットを含むキメラ融合タンパク質である。一部の実施形態では、ポリペプチドのセットは、二量体化分子の存在により、ポリペプチドを互いにカップリングすることができる(例えばリガンド結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインにカップリングすることができる)二量体化スイッチを含む。一実施形態では、キメラ受容体は、キメラ受容体融合タンパク質のアミノ末端(N-ter)に、任意のリーダー配列を含む。一実施形態では、キメラ受容体は、細胞外リガンド結合ドメインのN末端にリーダー配列を更に含み、リーダー配列は、細胞性プロセシングとキメラ受容体の細胞膜への局在化の間に、リガンド結合ドメインから任意で切断される。
【0117】
用語「シグナル伝達ドメイン」は、セカンドメッセンジャーを生成するか、そのようなメッセンジャーに応答することによってエフェクターとして機能することにより、定められたシグナル伝達経路を介して細胞活性を調節するために、細胞内で情報を伝達することによって作用するタンパク質の機能部分を指す。
【0118】
用語「自己」は、同じ対象に由来する物質であって、後に該対象に再導入されるものを指す。
【0119】
用語「同種異系」は、物質が導入される対象と同じ種の異なる対象に由来するあらゆる物質を指す。1つ以上の座位の遺伝子が同一でないとき、2つ以上の対象は互いに同種異系であると言える。一部の態様では、同じ種の対象からの同種異系物質は、遺伝的に十分類似しない結果、抗原的に相互作用する可能性がある。用語「同種移植片」は、同じ種の異なる対象に由来する移植片を指す。
【0120】
用語「異種」は、異なる種の対象に由来するあらゆる物質を指す。用語「異種移植片」は、異なる種の対象に由来する移植片を指す。
【0121】
本明細書で用いられる場合、「説明資料」には、本発明の組成物及び方法の有用性を伝えるために用いることのできる、出版物、記録、図表又は任意の他の表現媒体が含まれる。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の核酸、ペプチド、細胞及び/若しくは組成物を含む容器に貼付されてよく、又は、核酸、ペプチド、細胞及び/若しくは組成物を含む容器と一緒に出荷されてもよい。或いは、説明資料と核酸、ペプチド、細胞及び/又は組成物が受領者によって共同で使用されることを意図して、説明資料は容器とは別に出荷されてよい。
【0122】
アミノ酸残基/位置の「修飾」とは、本明細書で用いられる場合、開始アミノ酸配列と比較した場合の1次アミノ酸配列の変化を指し、この変化は、前記アミノ酸残基/位置を含む配列変化から生じる。例えば、典型的な修飾には、該残基の(又は前記位置における)別のアミノ酸への置換(例えば保存的置換又は非保存的置換)、前記残基/位置に近接する1つ以上の(一般には5又は3より少ない)アミノ酸の挿入、前記残基/位置の欠損が含まれる。「アミノ酸置換」又はその変形は、所定の(開始)アミノ酸配列中に存在するアミノ酸残基の異なるアミノ酸残基への置換を指す。一般に、かつ好ましくは、修飾によって、開始(又は「野生型」)アミノ酸配列を含むポリペプチドと比較して、変異体ポリペプチドの少なくとも1つの物理生化学的活性に変化が生じる。例えば、抗体の場合、変化する物理生化学的活性は、標的分子に対する結合親和性、結合能力及び/又は結合効果であり得る。
【0123】
用語「保存的配列修飾」は、アミノ酸配列を含む抗体若しくは抗体断片の結合特性に有意に影響又は変化を与えないアミノ酸修飾を指す。そのような保存的修飾には、アミノ酸の置換、追加及び除去が含まれる。修飾は、部位特異的変異誘発やPCR介在変異誘発等、当技術分野で公知の標準的な技術により、本発明の抗体又は抗体断片に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。よって、本発明のCAR内の1つ以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、改変されたCARを、本明細書に記載の機能的アッセイを用いて試験することができる。
【0124】
用語「刺激」は、刺激性分子(例えばTCR/CD3複合体)とその同族リガンドの結合により誘発され、それにより、限定されないが、TCR/CD3複合体を介するシグナル伝達等のシグナル伝達事象を媒介する、一次応答を指す。刺激は、サイトカイン及び細胞表面タンパク質の上方制御又は下方制御等の、特定分子の発現の変化、及び/又は、細胞骨格構造の再構成等を媒介することができる。
【0125】
用語「刺激性分子」は、T細胞シグナル伝達経路の少なくとも一部の側面について、刺激性の方法でTCR複合体の1次活性化を調節する1次細胞質シグナル伝達配列(複数可)を提供するT細胞によって発現される分子を指す。一態様において、1次シグナルは、例えば、ペプチドと結合したMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合によって開始され、増殖、活性化、分化を含むが、これらに限定されないT細胞応答の媒介につながる。刺激性で作用する1次細胞質シグナル伝達配列(「1次シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)として知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0126】
用語「抗原提示細胞」又は「APC」は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と複合した抗原を表面に表示し、T細胞等の特定のリンパ球が認識できるようにする、アクセサリー細胞など(例えばB細胞、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞など)の免疫系細胞を指す。T細胞は、そのT細胞受容体(TCR)を用いて、これらの複合体を認識することができる。抗原提示細胞は、MHCとともに提示するための抗原を処理することができる。本明細書で用いられる用語「抗原提示細胞」又は「APC」は、APCが抗原を提示している状態とAPCが抗原を提示していない状態とを含む。場合によっては、APCは抗原を処理し、T細胞に提示する。他の例では、T細胞は、抗原提示の非存在下でAPCを認識することができ、この場合、TCRがMHCタンパク質に直接結合する。例えば、移植の状況では、APCは、外来MHCタンパク質の発現を介してT細胞を直接刺激することがある。
【0127】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、本明細書において用いられる場合、CARの細胞内部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、CAR含有細胞、例えばCAR Treg細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成する。例えばCAR Treg細胞において、免疫エフェクター機能の例には、他の免疫細胞のエフェクター機能の抑制又は下方制御が含まれる。他の免疫細胞には、あらゆる種類の白血球、例えば(限定されないが)T細胞、B細胞、NK細胞が含まれる。更に、Tregの免疫エフェクター機能には、組織の修復又は再生の促進等、臨床状態の改善をもたらす非免疫細胞への作用が含まれる。
【0128】
用語「ゼータ」或いは「ゼータ鎖」、又は「CD3ゼータ」は、GenBank受入番号BAG36664.1として提供されるタンパク質、又は非ヒト種(例えばマウス、齧歯類、サル、類人猿等)由来の等価な残基として定義され、「ゼータ刺激性ドメイン」又は「CD3ゼータ刺激性ドメイン」は、T細胞活性化に必要な初期シグナルの機能的伝達に十分であるゼータ鎖の細胞質ドメインからのアミノ酸残基として定義される。一態様では、ゼータの細胞質ドメインは、GenBank受入番号BAG36664.1の残基52~164、又は、その機能的オルソログである非ヒト種(例えばマウス、齧歯類、サル、類人猿等)からの等価な残基を含む。
【0129】
「共刺激リガンド」という用語は、本明細書において用いられる場合、T細胞上で同族の共刺激分子に特異的に結合する抗原提示細胞(例えばAPC、樹状細胞、B細胞等)上の分子を含み、それにより、例えばTCR/CD3複合体とペプチドを搭載したMHC分子との結合によって提供される一次シグナルに加えて、増殖、活性化、分化等を含むが、これらに限定されないT細胞応答を媒介するシグナルを提供する。共刺激リガンドには、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンベータ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンドに結合するアゴニスト又は抗体受容体、B7-H3と特異的に結合するリガンド等が含まれる。共刺激リガンドはまた、とりわけ、限定されないが、MHCクラスI分子、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD27、CD28、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)(CD11a/CD18)、TNFR1(CD120a/TNFRSF1A)、TNFR2(CD120b/TNFRSF1B)、CTLA-4(CD152)、CD95、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、CD2、CD30、CD40、PD-1、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、ICAM-1、GITR、HVEM、SLAMF7、NKp80、CD160、IL2ra、IL6Ra、IL-7Ra、IL-13RA1/RA2、IL-33R(IL1RL1)、IL-10RA/RB、IL-4R、IL-5R(CSF2RB)、ARHR、BAFF受容体、IL-21R、TGFbR1/2/3、共通ガンマ鎖、CD83と特異的に結合するリガンド、及びそれらの任意の組合せ等の、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体を含むリガンドを包含する。
【0130】
用語「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、限定されないが、増殖等のT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫応答に必要となる、抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子は、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)及び活性化NK細胞受容体というタンパク質ファミリーで表すことができる。共刺激分子には、限定されないが、MHCクラスI分子、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD27、CD28、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)(CD11a/CD18)、TNFR1(CD120a/TNFRSF1A)、TNFR2(CD120b/TNFRSF1B)、CTLA-4(CD152)、CD95、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、CD2、CD30、CD40、PD-1、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、ICAM-1、GITR、HVEM、SLAMF7、NKp80、CD160、IL2ra、IL6Ra、IL-7Ra、IL-13RA1/RA2、IL-33R(IL1RL1)、IL-10RA/RB、IL-4R、IL-5R(CSF2RB)、ARHR、BAFF受容体、IL-21R、TGFbR1/2/3、共通ガンマ鎖、CD83と特異的に結合するリガンド、及びそれらの任意の組合せ等が含まれる。
【0131】
「共刺激細胞内シグナル伝達ドメイン」又は「共刺激ドメイン」は、共刺激分子の細胞内部分とすることができる。そのような分子の例には、MHCクラスI分子、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD27、CD28、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)(CD11a/CD18)、TNFR1(CD120a/TNFRSF1A)、TNFR2(CD120b/TNFRSF1B)、CTLA-4(CD152)、CD95、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、CD2、CD30、CD40、PD-1、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、ICAM-1、GITR、HVEM、SLAMF7、NKp80、CD160、IL2ra、IL6Ra、IL-7Ra、IL-13RA1/RA2、IL-33R(IL1RL1)、IL-10RA/RB、IL-4R、IL-5R(CSF2RB)、ARHR、BAFF受容体、IL-21R、TGFbR1/2/3、共通ガンマ鎖、CD83と特異的に結合するリガンド等が含まれる。
【0132】
本明細書で用いられる場合「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーション等の一次シグナルとの組合せで、T細胞の増殖及び/又は主要な分子の上方制御又は下方制御をもたらすシグナルを指す。
【0133】
細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来する分子の細胞内部分全体、又は天然の細胞内シグナル伝達ドメイン全体、又はその機能的断片を含むことができる。
【0134】
「疾患」とは、動物がホメオスタシスを維持できず、疾患が改善されないと動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。対照的に、動物の「障害」とは、動物がホメオスタシスを維持できるが、動物の健康状態が障害のない場合よりも良くない、健康状態である。治療せずに放置した場合、障害は必ずしも動物の健康状態を更に低下させるとは限らない。
【0135】
用語「コードする」は、生物学的プロセスにおいて、定められたヌクレオチド(例えば、rRNA、tRNA及びmRNA)配列又は定められたアミノ酸配列のいずれかを有する他のポリマー及び巨大分子の合成の鋳型として機能する、遺伝子、cDNA、又はmRNA等のポリヌクレオチド内の特異的ヌクレオチド配列の固有の特性及びそれらから生じる生物学的特性を指す。よって、遺伝子、cDNA又はRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳によって細胞又は他の生物系においてタンパク質が産生される場合、タンパク質をコードする。コード鎖(そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常、配列リストで提供される)と非コード鎖(遺伝子又はcDNAの転写の鋳型として用いられる)の両方は、タンパク質又はその遺伝子若しくはcDNAの他の産物をコードするものと呼ぶことができる。
【0136】
別段の指定がない限り、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列又は核酸配列には、相互の縮退バージョンであり同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列又は核酸配列が含まれる。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列又は核酸配列という語句はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド又は核酸配列が一部のバージョンでイントロン(複数可)を含むことができる程度まで、イントロンを含んでもよい。
【0137】
本明細書で用いられる場合、「移植片」とは、対象に導入される細胞、組織又は器官を指す。移植される物質の供給源は、(例えば、細胞がインビトロで培養された後の)培養細胞、別の対象からの細胞、又は同じ対象からの細胞であってよい。例示的な器官移植片は、腎臓、肝臓、心臓、肺及び膵臓である。例示的な組織移植片は膵島である。例示的な細胞移植片は、同種異系の造血幹細胞移植である。
【0138】
用語「外来」は、生物、細胞、組織又は系の外部から導入又は産生された物質を指す。
【0139】
用語「発現」は、プロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳を指す。
【0140】
用語「発現ベクター」は、発現されるべきヌクレオチド配列に操作可能に連結される発現調節配列を含む組換えポリヌクレオチドを有するベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用性エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって又はインビトロ発現系で供給され得る。発現ベクターは、コスミド、プラスミド(例えばむき出しか、又はリポソームに含まれる)、組換えポリヌクレオチドを組み込むウイルス(例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)を含む、当技術分野で公知の全てのものを含む。
【0141】
用語「レンチウイルス」は、レトロウイルス科ファミリーの属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染する能力がある点でレトロウイルスの中でも独特であり、相当量の遺伝情報を宿主細胞のDNAに送達することができるので、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法のひとつである。HIV、SIV及びFIVは、全てレンチウイルスの例である。
【0142】
用語「レンチウイルスベクター」は、特にMilone他,Mol.Ther.17(8):1453-1464(2009)に提供された自己不活性化レンチウイルスベクターを含む、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターを指す。臨床で使用され得るレンチウイルスベクターの他の例には、例えば、Oxford BioMedicaからのLENTIVECTOR(登録商標)遺伝子送達テクノロジー、LentigenからのLENTIMAX(商標)ベクター系が含まれるが、これらに限定されない。非臨床型のレンチウイルスベクターも利用可能であり、当業者には周知であろう。
【0143】
用語「相同」又は「同一性」は、2つのポリマー分子間、例えば2つのDNA分子や2つのRNA分子等の2つの核酸分子間、又は2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の同一性を指す。2つの分子の両方のサブユニット位置が同じモノマーサブユニットで占められている場合、例えば2つのDNA分子の各々の位置がアデニンで占められている場合、それらはその位置において相同又は同一である。2つの配列間の相同性は、一致する又は相同である位置の数の直接的な関数であり、例えば、2つの配列の位置の半分(例えば10サブユニット長のポリマーの5つの位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、位置の90%(例えば10分の9)が一致するか又は相同である場合、2つの配列は90%相同である。
【0144】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(抗体のFv、scFv、Fab、scFab、sdAb、Fab’、F(ab)2、又は他の抗原結合部分配列等)である。大部分について、ヒト化抗体及びその抗体断片は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置換された、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体又は抗体断片)である。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体/抗体断片は、レシピエント抗体にも移入されたCDR若しくはフレームワーク配列にも見られない残基を含んでよい。これらの修飾により、抗体又は抗体断片の性能を更に洗練させ最適化することができる。一般に、ヒト化抗体又はその抗体断片は、少なくとも1つ、典型的には2つ、の可変ドメインのうちほぼ全てを含み、ここで、CDR領域の全部又はほぼ全部は非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全部又はかなりの部分はヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。また、ヒト化抗体又は抗体断片は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含むことができる。さらなる詳細については、Jones他、Nature、321:522-525、1986;Reichmann他、Nature、332:323-329、1988;Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596,1992を参照されたい。
【0145】
「ヒト」免疫グロブリン、抗体又は抗体断片とは、分子全体がヒト起源であるか、又はヒト型の抗体若しくは免疫グロブリンと同一のアミノ酸配列から成る、抗体や抗体断片等の免疫グロブリンを指す。
【0146】
用語「単離」は、天然状態から変化又は除去されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸又はペプチドは「単離」されていないが、天然状態での共存物質から部分的若しくは完全に分離されている同じ核酸又はペプチドは「単離」されている。単離された核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができ、又は、例えば宿主細胞等の非天然環境で存在することができる。「単離された抗体」とは、その自然環境の成分から同定及び分離され、かつ/又は回収された抗体である。その自然環境の汚染成分は、抗体の治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性の溶質を含んでよい。
【0147】
本発明との関連において、一般に存在する核酸塩基について以下の略語が用いられる。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0148】
用語「操作可能に連結」は、制御性配列と異種核酸配列との、後者の発現を生じる機能的連結を指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係にある場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と操作可能に連結される。例えば、プロモーターがコーディング配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、プロモーターはコーディング配列に操作可能に連結される。操作可能に連結されたDNA配列は、互いに連続的であってよく、例えば、2つのタンパク質コード領域を連結する必要があるとき、同じリーディングフレーム内にある。
【0149】
免疫原性組成物の「非経口」投与という用語は、例えば、皮下(s.c.)、皮内、結節内、髄内、腹腔内、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)又は胸骨内の注射、腫瘍内、又は注入技術を含む。
【0150】
本明細書において互換的に用いられる用語「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかを指す。よって、この用語には、一本鎖、二本鎖若しくは多重鎖のDNA又はRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、又はプリン及びピリミジン塩基又は他の天然、化学的若しくは生化学的に修飾された、非天然若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれる。よって、具体的な限定がない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の方法で代謝される、天然ヌクレオチドの公知の類似体を含む核酸を包含する。別段の指示がない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に改変された変異体(例えば縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP及び相補的配列と、明示的に示された配列とを、暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって実現することができる(Batzer他、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka他、J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);及びRossolini他、Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。
【0151】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、互換的に用いられ、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含む必要があり、タンパク質又はペプチドの配列を含むことのできるアミノ酸の最大数に限定はない。ポリペプチドは、ペプチド結合により互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含むあらゆるペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で用いられる場合、該用語は、短鎖(例えば当技術分野において、通常、ペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも呼ばれる)と長鎖(当技術分野において、一般にタンパク質と呼ばれ、その種類は豊富である)の両方を指す。「ポリペプチド」は、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、又はそれらの組合せを含む。
【0152】
用語「プロモーター/制御配列」は、プロモーター/制御配列に操作可能に連結された遺伝子産物の発現に必要となる核酸配列を指す。一部の例では、この配列はコアプロモーター配列であることがあり、他の例では、この配列は、エンハンサー配列と、遺伝子産物の発現に必要となる他の制御エレメントも含むことがある。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものであってよい。
【0153】
用語「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコード又は特定するポリヌクレオチドと操作可能に連結されたとき、細胞の大部分又は全ての生理学的条件下において細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0154】
用語「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコード又は特定するポリヌクレオチドと操作可能に連結されたとき、実質的にプロモーターに対応するインデューサーが細胞内に存在する場合にのみ細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0155】
本明細書で用いられる場合、「一時的」とは、数時間、数日又は数週間にわたる非統合導入遺伝子の発現を指し、ゲノムに組み込まれた場合、又は宿主細胞内の安定したプラスミドレプリコン内に含まれている場合、発現期間は遺伝子の発現期間よりも短い。
【0156】
用語「実質的に精製された」細胞は、基本的に他の細胞型を含まない細胞を指す。また、実質的に精製された細胞は、天然に存在する状態では通常関連している他の細胞型から分離されている細胞も指す。一部の例では、実質的に精製された細胞の集団は、細胞の同種集団を指す。他の例では、この用語は、単に、天然状態では自然に関連している細胞から分離されている細胞を指す。一部の態様では、細胞はインビトロで培養される。他の態様では、細胞はインビトロで培養されない。
【0157】
用語「トランスフェクト」又は「形質転換」又は「形質導入」は、外来核酸が宿主細胞に移行又は導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞は、外来核酸によってトランスフェクト、形質転換又は形質導入された細胞である。細胞には、初代の対象細胞とその子孫が含まれる。
【0158】
本開示全体にわたって、本発明の様々な態様は範囲の形式で提示され得る。当然のことながら、範囲の形式の記載は、簡便さと簡潔さのためのものにすぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、その範囲内の全ての可能性のある部分範囲だけでなく個々の数値も具体的に開示していると解釈されるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲だけでなく、その範囲内の個々の数字、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3及び6も具体的に開示していると解釈されるべきである。別の例として、95~99%の同一性等の範囲は、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するものを含み、また、96~99%、96~98%、96~97%、97~99%、97~98%及び98~99%の同一性等の部分範囲を含む。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0159】
III.抗HLA-A2抗体
【0160】
一態様では、本発明は抗HLA-A2抗体を提供する。例示的な抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体及びそれらの抗原結合断片が含まれる。
【0161】
一実施形態では、本発明は、ヒト化抗HLA-A2抗体を提供する。本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、HLA-A2に特異的に結合する。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、HLA-A*02:01に特異的に結合する。当業者には当然のことながら、HLA-A2に結合する抗体の能力は、当技術分野で公知の技術の使用によって検出することができる。例えば、抗体のHLA-A2への結合は、本明細書に例示されるHLA-A2四量体の使用によって検出することができる。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、HLA-A2への結合について、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗体と競合する。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を有する抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、HLA-A2への結合についてBB7.2抗体と競合する。
【0162】
一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの3つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの4つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの5つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの6つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの7つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの各々から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの各々から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも1つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも2つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも3つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも4つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも5つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも6つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも7つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの少なくとも1つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの少なくとも2つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*29:02に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*30:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*31:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*33:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*36:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*68:01に対する反応性が低い。BB7.2抗体は、BB7.2ハイブリドーマ(ATCC寄託番号HB-82)から単離することができる。
【0163】
HLA-Aサブタイプに対するヒト化抗HLA-A2抗体の反応性を決定するための技術は、当業者には公知であろう。例えば、HLA-Aサブタイプに対するヒト化抗HLA-A2抗体の反応性は、単一抗原ビーズアッセイによって決定されてよい。そのような単一抗原ビーズアッセイは市販されている(例えばFlowPRA Single Antigen Antibody;ONE LAMBDA)。
【0164】
一実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、例えば試験Aの条件で測定した場合、BB7.2 scFvと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68及びそれらの任意の組合せのうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。例えば、一部の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、例えば試験Aの条件で測定した場合、BB7.2 scFvと比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30及びそれらの任意の組合せのうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。
【0165】
試験A:
【0166】
ヒト化抗HLA-A2抗体又はBB7.2抗体、例えばBB7.2 scFv(mA2 CAR)を含むCARを発現するT細胞0.25×106個を、FlowPRA単一抗原抗体ビーズパネル(FL1HD01、FL1HD02、FL1HD03、FL1HD04、FL1HD06及びFL1HD08、One Lambda)及び固定可能な生死判別色素(FVD、ThermoFisher、65-0865-14、eBioscience)とともに、室温で30分間インキュベートする。試料を洗浄し、0.5%ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーによって分析する。試料ごとに、200個の陰性対照ビーズを得る。ビーズ単体を陰性対照として使用した。分析のために、まず、固定可能な生死判別色素を用いて死細胞を除去する。次に、死細胞とダブレットを排除した後、単一抗原ビーズをゲーティングする。次に、HLAあたりのビーズ数を、それぞれのPE強度ピークによって決定する。各HLAピークにおける関心ビーズ数に200を掛け、試料内の陰性ビーズ数で割ることにより、データを正規化する。各HLAピークについて、対照試料のビーズ数からCAR-Tregのビーズ数を引いてから、非CAR発現対照のビーズ平均数を割り、100倍することによって、対照(非CAR発現細胞)と比較したCAR Tregの相対結合率を決定する。
【0167】
一実施形態では、本発明のヒト化抗HLA-A2抗体は、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、例えば試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体よりも統計的に劣る。
【0168】
一実施形態では、本発明のヒト化抗HLA-A2抗体は、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、例えば試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体よりも統計的に劣る。
【0169】
一実施形態では、「統計的に劣る」という用語は、本発明の抗HLA-A2抗体について測定された反応性(例えば試験Aの条件における相対的結合)が、特に2元配置分散分析、Dunnettポストテストで分析したときに、BB7.2抗体について測定された反応性よりも、最大で約0.05、好ましくは最大で約0.01、より好ましくは最大で約0.005、更に好ましくは最大で約0.001のp値で劣ることを意味する。
【0170】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、BB7.2抗体よりも劣る。一部の実施形態では、該抗HLA-A2抗体は、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する相対的結合が、試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体よりも劣る。特定の態様において、該抗HLA-A2抗体について測定された相対的結合は、BB7.2抗体について測定された相対的結合の、最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%以下である。
【0171】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、BB7.2抗体よりも劣る。一部の実施形態では、該抗HLA-A2抗体は、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する相対的結合が、試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体よりも劣る。特定の態様において、該抗HLA-A2抗体について測定された相対的結合は、BB7.2抗体について測定された相対的結合の、最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%以下である。
【0172】
更に、本明細書で提供される抗原結合活性を有するヒト化抗HLA-A2抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)の抗原結合ドメインを構成することが可能であり、該CARは、CARがHLA-A2に特異的に結合するようにヒト細胞において発現することが可能である。一実施形態では、CARは、HLA-A*02:01に特異的に結合する。当業者には当然のことながら、HLA-A2に結合するCARの能力は、当技術分野で公知の技術の使用によって検出することができる。例えば、CARのHLA-A2への結合は、本明細書に例示されるHLA-A2四量体の使用によって検出することができる。一実施形態では、ヒト細胞は免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞(Treg)である。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞はTregである。
【0173】
更に、本明細書で提供される抗原結合活性を有するヒト化抗HLA-A2抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)の抗原結合ドメインを構成することが可能であり、該CARは、CARがHLA-A2に特異的に結合するように、制御性T細胞(Treg)において発現することが可能である。一実施形態では、CARはHLA-A*02:01に特異的に結合する。一実施形態では、TregはヒトTregである。
【0174】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、CARの抗原結合ドメインを構成することが可能であり、該CARは、免疫細胞がHLA-A2によって活性化されるように免疫細胞において発現することが可能である。一実施形態では、免疫細胞は、HLA-A*02:01によって活性化される。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞(Treg)である。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞はTregである。一実施形態では、免疫細胞はヒト免疫細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞はヒト制御性免疫細胞である。一実施形態では、T細胞はヒトT細胞である。一実施形態では、TregはヒトTregである。
【0175】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、SYHIQ(配列番号1)及びGYTFTSY(配列番号2)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0176】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号1~2から選択される相補性決定領域1(VH CDR1)を有する重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号1によって定められるVH CDR1を有する重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号2によって定められるVH CDR1を有する重鎖可変領域を含む。
【0177】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、YPGDGS(配列番号4)及びWIYPGDGSTX10YX12X13KFX16G(配列番号10)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、配列番号10において、10位のアミノ酸(X10)はQ又はKであり、12位のアミノ酸(X12)はN又はSであり、13位のアミノ酸(X13)はE又はQであり、16位のアミノ酸(X16)はK又はQである。
【0178】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列WIYPGDGSTX10YX12X13KFX16G(配列番号10)を含む重鎖可変領域を含み、10位(X10)のアミノ酸はQ又はKであり、12位のアミノ酸(X12)はN又はSであり、13位のアミノ酸(X13)はE又はQであり、16位のアミノ酸(X16)はK又はQである。
【0179】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、YPGDGS(配列番号4)及びWIYPGDGSTX10YX12X13KFX16G(配列番号10)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む相補鎖決定領域2(VH CDR2)を含む重鎖可変領域を含み、配列番号10において、10位のアミノ酸(X10)はQ又はKであり、12位のアミノ酸(X12)はN又はSであり、13位のアミノ酸(X13)はE又はQであり、16位のアミノ酸(X16)はK又はQである。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列WIYPGDGSTX10YX12X13KFX16G(配列番号10)を含む相補性決定領域2(VH CDR2)を含む重鎖可変領域を含み、10位のアミノ酸(X10)はQ又はKであり、12位のアミノ酸(X12)はN又はSであり、13位のアミノ酸(X13)はE又はQであり、16位のアミノ酸(X16)はK又はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はQ又はKであり、12位のアミノ酸はSであり、13位のアミノ酸はQであり、16位のアミノ酸はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はKであり、12位のアミノ酸はN又はSであり、13位のアミノ酸はQであり、16位のアミノ酸はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はKであり、12位のアミノ酸はSであり、13位のアミノ酸はE又はQであり、16位のアミノ酸はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はKであり、12位のアミノ酸はSであり、13位のアミノ酸はQであり、16位のアミノ酸はK又はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はQ又はKであり、12位のアミノ酸はN又はSであり、13位のアミノ酸はQであり、16位のアミノ酸はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はQ又はKであり、12位のアミノ酸はSであり、13位のアミノ酸はE又はQであり、16位のアミノ酸はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はQ又はKであり、12位のアミノ酸はSであり、13位のアミノ酸はQであり、16位のアミノ酸はK又はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はKであり、12位のアミノ酸はN又はSであり、13位のアミノ酸はE又はQであり、16位のアミノ酸はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はKであり、12位のアミノ酸はN又はSであり、13位のアミノ酸はQであり、16位のアミノ酸はK又はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はKであり、12位のアミノ酸はSであり、13位のアミノ酸はE又はQであり、16位のアミノ酸はK又はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はQ又はKであり、12位のアミノ酸はN又はSであり、13位のアミノ酸はE又はQであり、16位のアミノ酸はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はQ又はKであり、12位のアミノ酸はN又はSであり、13位のアミノ酸はQであり、16位のアミノ酸はK又はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はQ又はKであり、12位のアミノ酸はSであり、13位のアミノ酸はE又はQであり、16位のアミノ酸はK又はQである。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2を含み、10位のアミノ酸はKであり、12位のアミノ酸はN又はSであり、13位のアミノ酸はE又はQであり、16位のアミノ酸はK又はQである。
【0180】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、WIYPGDGSTQYNEKFKG(配列番号3)、YPGDGS(配列番号4)及びWIYPGDGSTKYSQKFQG(配列番号5)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、WIYPGDGSTQYNEKFKG(配列番号3)及びYPGDGS(配列番号4)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、YPGDGS(配列番号4)及びWIYPGDGSTKYSQKFQG(配列番号5)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0181】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号3によって定められるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号4によって定められるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号5によって定められるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0182】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号3~5から選択される相補性決定領域2(VH CDR2)を有する重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号3~4から選択される相補性決定領域2(VH CDR2)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号4~5から選択される相補性決定領域2(VH CDR2)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号5によって定められる相補性決定領域2(VH CDR2)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号3によって定められるVH CDR2を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号4によって定められるVH CDR2を含む重鎖可変領域を含む。
【0183】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列EGTYYAMDY(配列番号6)を含む重鎖可変領域を含む。
【0184】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号6によって定められる相補性決定領域3(VH CDR3)を有する重鎖可変領域を含む。
【0185】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、以下のCDRのうちの少なくとも1つを含む重鎖可変領域を含む:
配列番号1によって定められるVH CDR1;又は、
配列番号10によって定められるVH CDR2であって、10位のアミノ酸(X10)はQ又はKであり、12位のアミノ酸(X12)はN又はSであり、13位のアミノ酸(X13)はE又はQであり、16位のアミノ酸(X16)はK又はQである、VH CDR2;又は、
配列番号6によって定められるVH CDR3。
【0186】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、以下のCDRのうちの少なくとも1つを含む重鎖可変領域を含む:
配列番号1によって定められるVH CDR1;又は、
配列番号3によって定められるVH CDR2;又は、
配列番号6によって定められるVH CDR3。
【0187】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、以下のCDRのうちの少なくとも1つを含む重鎖可変領域を含む:
配列番号1によって定められるVH CDR1;又は、
配列番号5によって定められるVH CDR2;又は、
配列番号6によって定められるVH CDR3。
【0188】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号1によって定められる1つのVH CDR1と、配列番号10によって定められる1つのVH CDR2であって、10位のアミノ酸(X10)はQ又はKであり、12位のアミノ酸(X12)はN又はSであり、13位のアミノ酸(X13)はE又はQであり、16位のアミノ酸(X16)はK又はQであるVH CDR2と、配列番号6によって定められる1つのVH CDR3とを含む重鎖可変領域を含む。
【0189】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号1によって定められる1つのVH CDR1と、配列番号3によって定められる1つのVH CDR2と、配列番号6によって定められる1つのVH CDR3とを含む重鎖可変領域を含む。
【0190】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号1によって定められる1つのVH CDR1と、配列番号5によって定められる1つのVH CDR2と、配列番号6によって定められる1つのVH CDR3とを含む重鎖可変領域を含む。
【0191】
本発明によれば、重鎖のCDR1、2又は3のいずれかは、対応する配列番号1、3、5、6及び10に記載のCDRの特定のセットと少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するものとして、特徴付けることができる。
【0192】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、以下のCDRのうちの少なくとも1つを含む重鎖可変領域を含む:
配列番号2によって定められるVH CDR1;又は、
配列番号4によって定められるVH CDR2;又は、
配列番号6によって定められるVH CDR3。
【0193】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号2によって定められる1つのVH CDR1と、配列番号4によって定められる1つのVH CDR2と、配列番号6によって定められる1つのVH CDR3とを含む重鎖可変領域を含む。
【0194】
本発明によれば、重鎖のCDR1、2又は3のいずれかは、対応する配列番号2、4及び6に記載のCDRの特定のセットと少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するものとして、特徴付けることができる。
【0195】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号7)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0196】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号7によって定められる相補性決定領域1(VL CDR1)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0197】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0198】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号8によって定められる相補性決定領域2(VL CDR2)を有する軽鎖可変領域を含む。
【0199】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列FQGSHVPRT(配列番号9)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0200】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号9によって定められる相補性決定領域3(VL CDR3)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0201】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、以下のCDRのうちの少なくとも1つを含む軽鎖可変領域を含む:
配列番号7によって定められるVL CDR1;又は、
配列番号8によって定められるVL CDR2;又は、
配列番号9によって定められるVL CDR3。
【0202】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号7によって定められる1つのVL CDR1と、配列番号8によって定められる1つのVL CDR2と、配列番号9によって定められる1つのVL CDR3とを含む軽鎖可変領域を含む。
【0203】
本発明によれば、軽鎖のCDR1、2又は3のいずれかは、対応する配列番号7、8及び9に記載のCDRの特定のセットと少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するものとして、特徴付けることができる。
【0204】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAS(配列番号11)及びQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号12)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。
【0205】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAS(配列番号11)を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号11に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。
【0206】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号12)を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号12に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。
【0207】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、
WVRQAPGQX9LEWMGX15(配列番号13)、
WVRQAPGQX9LEWMGX15WI(配列番号17)、
HIQWVRQAPGQX12LEWMGX18WI(配列番号21)、及び
HIQWVRQAPGQX12LEWMGX18(配列番号25)
から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む重鎖可変領域を含み、
配列番号13において、X9はR又はGであり、X15はI又は非存在であり、
配列番号17において、X9はR又はGであり、X15はI又は非存在であり、
配列番号21において、X12はR又はGであり、X18はI又は非存在であり、
配列番号25において、X12はR又はGであり、X18はI又は非存在である。
【0208】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列WVRQAPGQX9LEWMGX15(配列番号13)を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む重鎖可変領域を含み、9位のアミノ酸(X9)はR又はGであり、15位のアミノ酸(X15)はI又は非存在である。
【0209】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含み、9位のアミノ酸はR又はGであり、15位のアミノ酸は存在しない。
【0210】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号14、15又は16に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号14、15又は16に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。
【0211】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列HIQWVRQAPGQX12LEWMGX18(配列番号25)を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む重鎖可変領域を含み、12位のアミノ酸(X12)はR又はGであり、18位のアミノ酸(X18)はI又は非存在である。
【0212】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号25に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含み、12位のアミノ酸はR又はGであり、18位のアミノ酸は非存在である。
【0213】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号26、27又は28に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号26、27又は28に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。
【0214】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列WVRQAPGQX9LEWMGX15WI(配列番号17)を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む重鎖可変領域を含み、9位のアミノ酸(X9)はR又はGであり、15位のアミノ酸(X15)はI又は非存在である。
【0215】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号17に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含み、9位のアミノ酸はR又はGであり、15位のアミノ酸は存在しない。
【0216】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号18、19又は20に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号18、19又は20に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。
【0217】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列HIQWVRQAPGQX12LEWMGX18WI(配列番号21)を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む重鎖可変領域を含み、12位のアミノ酸(X12)はR又はGであり、18位のアミノ酸(X18)はI又は非存在である。
【0218】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号21に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含み、12位のアミノ酸はR又はGであり、18位のアミノ酸は存在しない。
【0219】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号22、23又は24に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号22、23又は24に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。
【0220】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、
X1VTX4TX6DTSX10STAYMX16LSX19LRSX23DX25AVYYCAR(配列番号29)、
TX2YX4X5KFX8GX10VTX13TX15DTSX19STAYMX25LSX28LRSX32DX34AVYYCAR(配列番号35)、
TQYNEKFKGX10VTX13TX15DTSX19STAYMX25LSX28LRSX32DX34AVYYCAR(配列番号36)、及び
TKYSQKFQGX10VTX13TX15DTSX19STAYMX25LSX28LRSX32DX34AVYYCAR(配列番号37)
から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む重鎖可変領域を含み、
配列番号29において、X1はR又は非存在であり、X4はI又はMであり、X6はR又はAであり、X10はA、T又はIであり、X16はE又はLであり、X19はS又はRであり、X23はE又はDであり、X25はT又はMであり、
配列番号35において、X2はQ又はKであり、X4はN又はSであり、X5はE又はQであり、X8はK又はQであり、X10はR又は非存在であり、X13はI又はMであり、X15はR又はAであり、X19はAであり、T又はIであり、X25はE又はLであり、X28はS又はRであり、X32はE又はDであり、X34はT又はMであり、
配列番号36において、X10はR又は非存在であり、X13はI又はMであり、X15はR又はAであり、X19はA、T又はIであり、X25はE又はLであり、X28はS又はRであり、X32はE又はDであり、X34はT又はMであり、
配列番号37において、X10はR又は非存在であり、X13はI又はMであり、X15はR又はAであり、X19はA、T又はIであり、X25はE又はLであり、X28はS又はRであり、X32はE又はDであり、X34はT又はMである。
【0221】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列X1VTX4TX6DTSX10STAYMX16LSX19LRSX23DX25AVYYCAR(配列番号29)を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む重鎖可変領域を含み、1位のアミノ酸(X1)はR又は非存在であり、4位のアミノ酸(X4)はI又はMであり、6位のアミノ酸(X6)はR又はAであり、10位のアミノ酸(X10)はA、T又はIであり、16位のアミノ酸(X16)はE又はLであり、19位のアミノ酸(X19)はS又はRであり、23位のアミノ酸(X23)はE又はDであり、25位のアミノ酸(X25)はT又はMである。
【0222】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号29に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、1位のアミノ酸はRであり、4位のアミノ酸はI又はMであり、6位のアミノ酸はRであり、10位のアミノ酸はA又はIであり、16位のアミノ酸はEであり、19位のアミノ酸はS又はRであり、23位のアミノ酸はE又はDであり、25位のアミノ酸はT又はMである。
【0223】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号29によって定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、1位のアミノ酸はRであり、4位のアミノ酸はI又はMであり、6位のアミノ酸はRであり、10位のアミノ酸はA又はIであり、16位のアミノ酸はEであり、19位のアミノ酸はS又はRであり、23位のアミノ酸はE又はDであり、25位のアミノ酸はTである。
【0224】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号29によって定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、1位のアミノ酸はRであり、4位のアミノ酸はIであり、6位のアミノ酸はRであり、10位のアミノ酸はAであり、16位のアミノ酸はEであり、19位のアミノ酸はSであり、23位のアミノ酸はEであり、25位のアミノ酸はT又はMである。
【0225】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号30、31、32、33又は34に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号30、31、32、33又は34に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む。
【0226】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列TX2YX4X5KFX8GX10VTX13TX15DTSX19STAYMX25LSX28LRSX32DX34AVYYCAR(配列番号35)を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む重鎖可変領域を含み、2位のアミノ酸(X2)はQ又はKであり、4位のアミノ酸(X4)はN又はSであり、5位のアミノ酸(X5)はE又はQであり、8位のアミノ酸(X8)はK又はQであり、10位のアミノ酸(X10)はR又は非存在であり、13位のアミノ酸(X13)はI又はMであり、15位のアミノ酸(X15)はR又はAであり、19位のアミノ酸(X19)はA、T又はIであり、25位のアミノ酸(X25)はE又はLであり、28位のアミノ酸(X28)はS又はRであり、32位のアミノ酸(X32)はE又はDであり、34位のアミノ酸(X34)はT又はMである。
【0227】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQ又はKであり、4位のアミノ酸はN又はSであり、5位のアミノ酸はE又はQであり、8位のアミノ酸はK又はQであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0228】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQ又はKであり、4位のアミノ酸はN又はSであり、5位のアミノ酸はE又はQであり、8位のアミノ酸はK又はQであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はTである。
【0229】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQ又はKであり、4位のアミノ酸はN又はSであり、5位のアミノ酸はE又はQであり、8位のアミノ酸はK又はQであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はIであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はAであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はSであり、32位のアミノ酸はEであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0230】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQ又はKであり、4位のアミノ酸はNであり、5位のアミノ酸はEであり、8位のアミノ酸はKであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0231】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQであり、4位のアミノ酸はN又はSであり、5位のアミノ酸はEであり、8位のアミノ酸はKであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0232】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQであり、4位のアミノ酸はNであり、5位のアミノ酸はE又はQであり、8位のアミノ酸はKであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0233】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQであり、4位のアミノ酸はNであり、5位のアミノ酸はEであり、8位のアミノ酸はK又はQであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0234】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQ又はKであり、4位のアミノ酸はN又はSであり、5位のアミノ酸はEであり、8位のアミノ酸はKであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0235】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQ又はKであり、4位のアミノ酸はNであり、5位のアミノ酸はE又はQであり、8位のアミノ酸はKであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0236】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQ又はKであり、4位のアミノ酸はNであり、5位のアミノ酸はEであり、8位のアミノ酸はK又はQであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0237】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQであり、4位のアミノ酸はN又はSであり、5位のアミノ酸はE又はQであり、8位のアミノ酸はKであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0238】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQであり、4位のアミノ酸はN又はSであり、5位のアミノ酸はEであり、8位のアミノ酸はK又はQであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0239】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQであり、4位のアミノ酸はNであり、5位のアミノ酸はE又はQであり、8位のアミノ酸はK又はQであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0240】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQ又はKであり、4位のアミノ酸はN又はSであり、5位のアミノ酸はE又はQであり、8位のアミノ酸はKであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0241】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQ又はKであり、4位のアミノ酸はN又はSであり、5位のアミノ酸はEであり、8位のアミノ酸はK又はQであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0242】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQ又はKであり、4位のアミノ酸はNであり、5位のアミノ酸はE又はQであり、8位のアミノ酸はK又はQであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0243】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号35に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、2位のアミノ酸はQであり、4位のアミノ酸はN又はSであり、5位のアミノ酸はE又はQであり、8位のアミノ酸はK又はQであり、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0244】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列TQYNEKFKGX10VTX13TX15DTSX19STAYMX25LSX28LRSX32DX34AVYYCAR(配列番号36)を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む重鎖可変領域を含み、10位のアミノ酸(X10)はR又は非存在であり、13位のアミノ酸(X13)はI又はMであり、15位のアミノ酸(X15)はR又はAであり、19位のアミノ酸(X19)はA、T又はIであり、25位のアミノ酸(X25)はE又はLであり、28位のアミノ酸(X28)はS又はRであり、32位のアミノ酸(X32)はE又はDであり、34位のアミノ酸(X34)はT又はMである。
【0245】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号36に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位はE又はDでありであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0246】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号36に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位はE又はDであり、34位のアミノ酸はTである。
【0247】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号36に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はIであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はAであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はSであり、32位のアミノ酸はEであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0248】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列TKYSQKFQGX10VTX13TX15DTSX19STAYMX25LSX28LRSX32DX34AVYYCAR(配列番号37)を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む重鎖可変領域を含み、10位のアミノ酸(X10)はR又は非存在であり、13位のアミノ酸(X13)はI又はMであり、15位のアミノ酸(X15)はR又はAであり、19位のアミノ酸(X19)はA、T又はIであり、25位のアミノ酸(X25)はE又はLであり、28位のアミノ酸(X28)はS又はRであり、32位のアミノ酸(X32)はE又はDであり、34位のアミノ酸(X34)はT又はMである。
【0249】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号37に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0250】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号37に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、10位のアミノ酸はRであり、13位のアミノ酸はI又はMであり、15位のアミノ酸はRであり、19位のアミノ酸はA又はIであり、25位のアミノ酸はEであり、28位のアミノ酸はS又はRであり、32位のアミノ酸はE又はDであり、34位のアミノ酸はTである。
【0251】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号37に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、10位のアミノ酸はR、13位のアミノ酸はI、15位のアミノ酸はR、19位のアミノ酸はA、25位のアミノ酸はE、28位のアミノ酸はS、32位のアミノ酸はE、34位のアミノ酸はT又はMである。
【0252】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号38、39、40、41、42又は43に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号38、39、40、41、42又は43に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む。
【0253】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列WGQGTTVTVSS(配列番号44)を含むフレームワーク領域4(VH FR4)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号44に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域4(VH FR4)を含む重鎖可変領域を含む。
【0254】
一実施形態では、重鎖可変領域は以下を含む:
配列番号1によって定められるVH CDR1;
配列番号10によって定められるVH CDR2であって、10位のアミノ酸(X10)はQ又はKであり、12位のアミノ酸(X12)はN又はSであり、13位のアミノ酸(X13)はE又はQであり、16位のアミノ酸(X16)はK又はQであるVH CDR2;
配列番号6によって定められるVH CDR3;
配列番号12によって定められるVH FR1;
配列番号13によって定められるVH FR2であって、9位のアミノ酸(X9)はR又はGであり、15位のアミノ酸(X15)はI又は非存在であるVH FR2;
配列番号29によって定められるVH FR3であって、1位のアミノ酸(X1)はR又は非存在であり、4位のアミノ酸(X4)はI又はMであり、6位のアミノ酸(X6)はR又はAであり、10位(X10)のアミノ酸はA、T又はIであり、16位のアミノ酸(X16)はE又はLであり、19位(X19)のアミノ酸はS又はRであり、23位のアミノ酸(X23)はE又はDであり、25位のアミノ酸(X25)はT又はMであるVH FR3;及び
配列番号44によって定められるVH FR4。
【0255】
一実施形態では、重鎖可変領域は以下を含む:
配列番号2によって定められるVH CDR1;
配列番号10によって定められるVH CDR2であって、10位のアミノ酸(X10)はQ又はKであり、12位のアミノ酸(X12)はN又はSであり、13位のアミノ酸(X13)はE又はQであり、16位のアミノ酸は(X16)K又はQであるVH CDR2;
配列番号6によって定められるVH CDR3;
配列番号11によって定められるVH FR1;
配列番号25によって定められるVH FR2であって、12位のアミノ酸(X12)はR又はGであり、18位のアミノ酸(X18)がI又は非存在であるVH FR2;
配列番号29によって定められるVH FR3であって、1位のアミノ酸(X1)はR又は非存在であり、4位のアミノ酸(X4)はI又はMであり、6位のアミノ酸(X6)はR又はAであり、10位のアミノ酸(X10)はA、T又はIであり、16位のアミノ酸(X16)はE又はLであり、19位のアミノ酸(X19)はS又はRであり、23位のアミノ酸(X23)はE又はDであり、25位のアミノ酸(X25)はT又はMであるVH FR3;及び
配列番号44によって定められるVH FR4。
【0256】
一実施形態では、重鎖可変領域は以下を含む:
配列番号2によって定められるVH CDR1;
配列番号4によって定められるVH CDR2;
配列番号6によって定められるVH CDR3;
配列番号11によって定められるVH FR1;
配列番号21によって定められるVH FR2であって、12位のアミノ酸(X12)はR又はGであり、18位のアミノ酸(X18)はI又は非存在であるVH FR2;
配列番号35によって定められるVH FR3であって、2位のアミノ酸(X2)はQ又はKであり、4位のアミノ酸(X4)はN又はSであり、5位のアミノ酸(X5)はE又はQであり、8位のアミノ酸(X8)はK又はQであり、10位のアミノ酸(X10)はR又は非存在であり、13位のアミノ酸(X13)はI又はMであり、15位のアミノ酸(X15)はR又はAであり、19位のアミノ酸(X19)はA、T又はIであり、25位のアミノ酸(X25)はE又はLであり、28位のアミノ酸(X28)はS又はRであり、32位のアミノ酸(X32)はE又はDであり、34位のアミノ酸(X34)はT又はMであるVH FR3;及び
配列番号44によって定められるVH FR4。
【0257】
一実施形態では、重鎖可変領域は以下を有する:
配列番号1によって定められるVH CDR1;
配列番号4によって定められるVH CDR2;
配列番号6によって定められるVH CDR3;
配列番号12によって定められるVH FR1;
配列番号17によって定められるVH FR2であって、9位のアミノ酸(X9)はR又はGであり、15位のアミノ酸(X15)はI又は非存在であるVH FR2;
配列番号35によって定められるVH FR3であって、2位のアミノ酸(X2)はQ又はKであり、4位のアミノ酸(X4)はN又はSであり、5位のアミノ酸(X5)はE又はQであり、8位のアミノ酸(X8)はK又はQであり、10位のアミノ酸(X10)はR又は非存在であり、13位のアミノ酸(X13)はI又はMであり、15位のアミノ酸(X15)はR又はAであり、19位のアミノ酸(X19)はA、T又はIであり、25位のアミノ酸(X25)はE又はLであり、28位のアミノ酸(X28)はS又はRであり、32位のアミノ酸(X32)はE又はDであり、34位のアミノ酸(X34)はT又はMであるVH FR3;及び
配列番号44によって定められるVH FR4。
【0258】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQX44LEWMGX50WIYPGDGSTX60YX62X63KFX66GX68VTX71TX73DTSX77STAYMX83LSX86LRSX90DX92AVYYCAREGTYYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号45)を含む重鎖可変領域を含み、44位のアミノ酸(X44)はR又はGであり、50位のアミノ酸(X50)はI又は非存在であり、60位のアミノ酸(X60)はQ又はKであり、62位のアミノ酸(X62)はN又はSであり、63位のアミノ酸(X63)はE又はQであり、66位のアミノ酸(X66)はK又はQであり、68位のアミノ酸(X68)はR又は非存在であり、71位のアミノ酸(X71)はI又はMであり、73位のアミノ酸(X73)はR又はAであり、77位のアミノ酸(X77)はA、T又はIであり、83位のアミノ酸(X83)はE又はLであり、86位のアミノ酸(X86)はS又はRであり、90位のアミノ酸(X90)はE又はDであり、92位のアミノ酸(X92)はT又はMである。
【0259】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQ又はKあり、62位のアミノ酸はN又はSであり、63位のアミノ酸はE又はQであり、66位のアミノ酸はK又はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0260】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQ又はKであり、62位のアミノ酸はN又はSであり、63位のアミノ酸はE又はQであり、66位のアミノ酸はK又はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はTである。
【0261】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はRであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQ又はKであり、62位のアミノ酸はN又はSであり、63位のアミノ酸はE又はQであり、66位のアミノ酸はK又はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はIであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はAであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はSであり、90位のアミノ酸はEであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0262】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQであり、62位のアミノ酸はNであり、63位のアミノ酸はEであり、66位のアミノ酸はKであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0263】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQであり、62位のアミノ酸はNであり、63位のアミノ酸はEであり、66位のアミノ酸はKであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はTである。
【0264】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はRであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQであり、62位のアミノ酸はNであり、63位のアミノ酸はEであり、66位のアミノ酸はKであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はIであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はAであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はSであり、90位のアミノ酸はEであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0265】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はKであり、62位のアミノ酸はSであり、63位のアミノ酸はQであり、66位のアミノ酸はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0266】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はKであり、62位のアミノ酸はSであり、63位のアミノ酸はQであり、66位のアミノ酸はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はTである。
【0267】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はRであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はKであり、62位のアミノ酸はSであり、63位のアミノ酸はQであり、66位のアミノ酸はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はIであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はAであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はSであり、90位のアミノ酸はEであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0268】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQ又はKであり、62位のアミノ酸はSであり、63位のアミノ酸はQであり、66位のアミノ酸はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0269】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はKであり、62位のアミノ酸はN又はSであり、63位のアミノ酸はQであり、66位のアミノ酸はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0270】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はKであり、62位のアミノ酸はSであり、63位のアミノ酸はE又はQであり、66位のアミノ酸はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0271】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQ又はKであり、62位のアミノ酸がN又はSであり、63位のアミノ酸はQであり、66位のアミノ酸はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0272】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQ又はKであり、62位のアミノ酸はSであり、63位のアミノ酸はE又はQであり、66位のアミノ酸はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0273】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQ又はKであり、62位のアミノ酸はSであり、63位のアミノ酸はQであり、66位のアミノ酸はK又はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0274】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はKであり、62位のアミノ酸がN又はSであり、63位のアミノ酸はE又はQであり、66位のアミノ酸はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0275】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はKであり、62位のアミノ酸がN又はSであり、63位のアミノ酸はQであり、66位のアミノ酸はK又はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0276】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はKであり、62位のアミノ酸はSであり、63位のアミノ酸はE又はQであり、66位のアミノ酸はK又はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0277】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQ又はKであり、62位のアミノ酸はN又はSであり、63位のアミノ酸はE又はQであり、66位のアミノ酸はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0278】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQ又はKであり、62位のアミノ酸はN又はSであり、63位のアミノ酸はQであり、66位のアミノ酸はK又はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0279】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はQ又はKであり、62位のアミノ酸はSであり、63位のアミノ酸はE又はQであり、66位のアミノ酸はK又はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0280】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号45に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、60位のアミノ酸はKであり、62位のアミノ酸はN又はSであり、63位のアミノ酸はE又はQであり、66位のアミノ酸はK又はQであり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0281】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号61、62、63、64、65又は66に定められるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号61、62、63、64、65又は66に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0282】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列DX2VMTQX7PLSX11X12VTX15GQPASISX23(配列番号46)を含むフレームワーク領域1(VL FR1)を含む軽鎖可変領域を含み、2位のアミノ酸(X2)はV又はIであり、7位のアミノ酸(X7)はS又はTであり、11位のアミノ酸(X11)はL又はSであり、12位のアミノ酸(X12)はP又はSであり、15位のアミノ酸(X15)はL又はPであり、23位のアミノ酸(X23)はC又はFである。
【0283】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号46に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VL FR1)を含み、2位のアミノ酸はV又はIであり、7位のアミノ酸はS又はTであり、11位のアミノ酸はL又はSであり、12位のアミノ酸はP又はSであり、15位のアミノ酸はL又はPであり、23位のアミノ酸はCである。
【0284】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号46に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VL FR1)を含み、2位のアミノ酸はIであり、7位のアミノ酸はTであり、11位のアミノ酸はL又はSであり、12位のアミノ酸はP又はSであり、15位のアミノ酸はL又はPであり、23位のアミノ酸はCである。
【0285】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号46に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VL FR1)を含み、2位のアミノ酸はV又はIであり、7位のアミノ酸はS又はTであり、11位のアミノ酸はLであり、12位のアミノ酸はP又はSであり、15位のアミノ酸はL又はPであり、23位のアミノ酸はCである。
【0286】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号46に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VL FR1)を含み、2位のアミノ酸はV又はIであり、7位のアミノ酸はS又はTであり、11位のアミノ酸はL又はSであり、12位のアミノ酸はPであり、15位のアミノ酸はLであり、23位のアミノ酸はCである。
【0287】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号47、48、49又は50に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VL FR1)を含む。一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号47、48、49又は50に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域4(VH FR4)を含む。
【0288】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列WX2X3QX5PGQX9PX11X12LIY(配列番号51)を含むフレームワーク領域2(VL FR2)を含む軽鎖可変領域を含み、2位のアミノ酸(X2)はF又はYであり、3位のアミノ酸(X3)はQ又はLであり、5位のアミノ酸(X5)はR又はKであり、9位のアミノ酸(X9)はS又はPであり、11位のアミノ酸(X11)はR又はQであり、12位のアミノ酸(X12)はR又はLである。
【0289】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号51に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VL FR2)を定められる、2位のアミノ酸はYであり、3位のアミノ酸はQ又はLであり、5位のアミノ酸はR又はKであり、9位のアミノ酸はS又はPであり、11位のアミノ酸はR又はQであり、12位のアミノ酸はLである。
【0290】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号51に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VL FR2)を含み、2位のアミノ酸はYであり、3位のアミノ酸はQ又はLであり、5位のアミノ酸はR又はKであり、9位のアミノ酸はSであり、11位のアミノ酸はR又はQであり、12位のアミノ酸はLである。
【0291】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号51に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VL FR2)を含み、2位のアミノ酸はYであり、3位のアミノ酸はQであり、5位のアミノ酸はRであり、9位のアミノ酸はS又はPであり、11位のアミノ酸はRであり、12位のアミノ酸はLである。
【0292】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号51に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VL FR2)を含み、2位のアミノ酸はF又はYであり、3位のアミノ酸はQ又はLであり、5位のアミノ酸はR又はKであり、9位のアミノ酸はSであり、11位のアミノ酸はR又はQであり、12位のアミノ酸はR又はLである。
【0293】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号51に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VL FR2)を含み、2位のアミノ酸はF又はYであり、3位のアミノ酸はQであり、5位のアミノ酸はRであり、9位のアミノ酸はS又はPであり、11位のアミノ酸はRであり、12位のアミノ酸はR又はLである。
【0294】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52、53、54又は55に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VL FR2)を含む。一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号52、53、54又は55に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VL FR2)を含む。
【0295】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列GVPDRFSGSGX11GTDFTLKISRVEAEDVGVYYC(配列番号56)を含むフレームワーク領域3(VL FR3)を含む軽鎖可変領域を含み、11位のアミノ酸(X11)はS又はAである。
【0296】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号57又は58に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VL FR3)を有する軽鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号57又は58に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VL FR3)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0297】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列FGGGTKVEIK(配列番号59)を含むフレームワーク領域4(VL FR4)を含む軽鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号59に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域4(VL FR4)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0298】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列DX2VMTQX7PLSX11X12VTX15GQPASISX23RSSQSIVHSNGNTYLEWX41X42QX44PGQX48PX50X51LIYKVSNRFSGVPDRFSGSGX72GTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPRTFGGGTKVEIK(配列番号60)を含む軽鎖可変領域を含み、2位のアミノ酸(X2)はV又はIであり、7位のアミノ酸(X7)はS又はTであり、11位のアミノ酸(X11)はL又はSであり、12位のアミノ酸(X12)はP又はSであり、15位のアミノ酸(X15)はL又はPであり、23位のアミノ酸(X23)はC又はFであり、41位のアミノ酸(X41)はF又はYであり、42位のアミノ酸(X42)はQ又はLであり、44位のアミノ酸(X44)はR又はKであり、48位のアミノ酸(X48)はS又はPであり、50位のアミノ酸(X50)はR又はQであり、51位のアミノ酸(X51)はR又はLであり、72位のアミノ酸(X72)はS又はAである。
【0299】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号60に定められるアミノ酸配列を含み、2位のアミノ酸はV又はIであり、7位のアミノ酸はS又はTであり、11位のアミノ酸はL又はSであり、12位のアミノ酸はP又はSであり、15位のアミノ酸はL又はPであり、23位のアミノ酸はCであり、41位のアミノ酸はYであり、42位のアミノ酸はQ又はLであり、44位のアミノ酸はR又はKであり、48位のアミノ酸はS又はPであり、50位のアミノ酸はR又はQであり、51位のアミノ酸はLであり、72位のアミノ酸はS又はAである。
【0300】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号60に定められるアミノ酸配列を含み、2位のアミノ酸はIであり、7位のアミノ酸はTであり、11位のアミノ酸はL又はSであり、12位のアミノ酸はP又はSであり、15位のアミノ酸はL又はPであり、23位のアミノ酸はCであり、41位のアミノ酸はYであり、42位はQ又はLであり、44位のアミノ酸はR又はKであり、48位のアミノ酸はS又はPであり、50位のアミノ酸はR又はQであり、51位のアミノ酸はLであり、72位のアミノ酸はS又はAである。
【0301】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号60に定められるアミノ酸配列を含み、2位のアミノ酸はV又はIであり、7位のアミノ酸はS又はTであり、11位のアミノ酸はLであり、12位のアミノ酸はP又はSであり、15位のアミノ酸はL又はPであり、23位のアミノ酸はCであり、41位のアミノ酸はYであり、42位の酸はQ又はLであり、44位のアミノ酸はR又はKであり、48位のアミノ酸はSであり、50位のアミノ酸はR又はQであり、51位のアミノ酸はLであり、72位のアミノ酸はSである。
【0302】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号60に定められるアミノ酸配列を含み、2位のアミノ酸はV又はIであり、7位のアミノ酸はS又はTであり、11位のアミノ酸はL又はSであり、12位のアミノ酸はPであり、15位のアミノ酸はLであり、23位のアミノ酸はCであり、41位のアミノ酸はYであり、42位はQであり、44位のアミノ酸はRであり、48位のアミノ酸はS又はPであり、50位のアミノ酸はRであり、51位のアミノ酸はLであり、72位のアミノ酸S又はAである。
【0303】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号60に定められるアミノ酸配列を含み、2位のアミノ酸はV又はIであり、7位のアミノ酸はS又はTであり、11位のアミノ酸はL又はSであり、12位のアミノ酸はP又はSであり、15位のアミノ酸はL又はPであり、23位のアミノ酸はCであり、41位のアミノ酸はF又はYであり、42位のアミノ酸はQ又はLであり、44位のアミノ酸はR又はKであり、48位のアミノ酸はS又はPであり、50位のアミノ酸はR又はQであり、51位はR又はLであり、72位のアミノ酸はS又はAである。
【0304】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号67、68、69、70又は71に定められるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号67、68、69、70又は71に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0305】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、scFv、scFab又はsdAbである。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、scFv又はscFabである。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体はsdAbである。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体はscFabである。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体はscFvである。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90又は91に定められるアミノ酸配列を含むscFvである。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90又は91に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むscFvである。
【0306】
一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、上記の配列番号に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、上記の配列番号に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むscFv又はscFabである。
【0307】
一態様では、本発明は、アミノ酸配列WIYPGDGSTKYSQKFQG(配列番号5)を含む重鎖可変領域を含む抗HLA抗体を提供する。
【0308】
一実施形態では、前記抗体は、アフィボディ、アルファボディ、アルマジロリピートタンパク質ベースの足場、ノッティン、クニッツドメインペプチド、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、ファイノマー、バーサボディ及びデュオカリンから成る群から選択される抗体ミメティックである。
【0309】
本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、HLA-A2に特異的に結合する。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、HLA-A*02:01に特異的に結合する。当業者には当然のことながら、HLA-A2に結合する抗体の能力は、当技術分野で公知の技術の使用によって検出することができる。例えば、抗体のHLA-A2への結合は、本明細書に例示されるHLA-A2四量体の使用によって検出することができる。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、HLA-A2への結合について、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗体と競合する。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、HLA-A2への結合についてBB7.2抗体と競合する。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。一実施形態では、抗HLA抗体は、配列番号5によって定められる相補性決定領域2(VH CDR2)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの3つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの4つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの5つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの6つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの7つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの各々から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの各々から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも1つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも2つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも3つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも4つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも5つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも6つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも7つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの少なくとも1つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの少なくとも2つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*29:02に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*30:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*31:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*33:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*36:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*68:01に対する反応性が低い。BB7.2抗体は、BB7.2ハイブリドーマ(ATCC寄託番号HB-82)から単離することができる。HLA-Aサブタイプに対する抗HLA-A2抗体の反応性を決定するための技術は、当業者には公知であろう。例えば、HLA-Aサブタイプに対する抗HLA-A2抗体の反応性は、単一抗原ビーズアッセイによって決定されてよい。そのような単一抗原ビーズアッセイは市販されている(例えばFlowPRA Single Antigen Antibody;ONE LAMBDA)。
【0310】
一実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、試験Aの条件で測定した場合、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68及びそれらの任意の組合せのうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。例えば、一部の実施形態では、本明細書で提供される抗HLA-A2抗体は、試験Aの条件で測定した場合、BB7.2抗体と比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30及びそれらの任意の組合せを含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。
【0311】
試験A:
【0312】
抗HLA-A2抗体又はBB7.2抗体(例えばBB7.2 scFv(mA2 CAR))を含むCARを発現するT細胞0.25×106個を、FlowPRA単一抗原抗体ビーズパネル(FL1HD01、FL1HD02、FL1HD03、FL1HD04、FL1HD06及びFL1HD08、One Lambda)及び固定可能な生死判別色素(FVD、ThermoFisher、65-0865-14、eBioscience)とともに、室温で30分間インキュベートする。試料を洗浄し、0.5%ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーによって分析する。試料ごとに、200個の陰性対照ビーズを得る。ビーズ単体を陰性対照として使用した。分析のために、まず、固定可能な生死判別色素を用いて死細胞を除去する。次に、死細胞とダブレットを排除した後、単一抗原ビーズをゲーティングする。次に、HLAあたりのビーズ数を、それぞれのPE強度ピークによって決定する。各HLAピークにおける関心ビーズ数に200を掛け、試料内の陰性ビーズ数で割ることにより、データを正規化する。各HLAピークについて、対照試料のビーズ数からCAR-Tregのビーズ数を引いてから、非CAR発現対照のビーズ平均数を割り、100倍することによって、対照(非CAR発現細胞)と比較したCAR Tregの相対結合率を決定する。
【0313】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、例えば試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体よりも統計的に劣る。
【0314】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、例えば試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体よりも統計的に劣る。
【0315】
一実施形態では、「統計的に劣る」という用語は、本発明の抗HLA-A2抗体について測定された反応性(例えば試験Aの条件における相対的結合)が、特に2元配置分散分析、Dunnettポストテストで分析したときに、BB7.2抗体について測定された反応性よりも、最大で約0.05、好ましくは最大で約0.01、より好ましくは最大で約0.005、更に好ましくは最大で約0.001のp値で劣ることを意味する。
【0316】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、BB7.2抗体よりも劣る。一部の実施形態では、該抗HLA-A2抗体は、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する相対的結合が、試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体よりも劣る。特定の態様において、該抗HLA-A2抗体について測定された相対的結合は、BB7.2抗体について測定された相対的結合の、最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%以下である。
【0317】
一実施形態では、本発明の抗HLA-A2抗体は、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、BB7.2抗体よりも劣る。一部の実施形態では、該抗HLA-A2抗体は、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する相対的結合が、試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体よりも劣る。特定の態様において、該抗HLA-A2抗体について測定された相対的結合は、BB7.2抗体について測定された相対的結合の、最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%以下である。
【0318】
更に、本明細書で提供される抗原結合活性を有する抗HLA-A2抗体は、CARの抗原結合ドメインを構成することが可能であり、該CARは、CARがHLA-A2に特異的に結合するようにヒト細胞において発現することが可能である。一実施形態では、CARは、HLA-A*02:01に特異的に結合する。当業者によって理解されるように、HLA-A2に結合するCARの能力は、当技術分野で公知の技術の使用によって検出することができる。例えば、CARのHLA-A2への結合は、本明細書に例示されるHLA-A2四量体の使用によって検出することができる。一実施形態では、ヒト細胞は免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞(Treg)である。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞はTregである。
【0319】
更に、本明細書で提供される抗原結合活性を有する抗HLA-A2抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)の抗原結合ドメインを構成することが可能であり、該CARは、CARがHLA-A2に特異的に結合するように、制御性T細胞(Treg)において発現することが可能である。一実施形態では、CARは、HLA-A*02:01に特異的に結合する。一実施形態では、TregはヒトTregである。
【0320】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、CARの抗原結合ドメインを構成することが可能であり、該CARは、免疫細胞がHLA-A2によって活性化されるように免疫細胞において発現することが可能である。一実施形態では、免疫細胞は、HLA-A*02:01によって活性化される。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞(Treg)である。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞はTregである。一実施形態では、免疫細胞はヒト免疫細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞はヒト制御性免疫細胞である。一実施形態では、T細胞はヒトT細胞である。一実施形態では、TregはヒトTregである。
【0321】
一実施形態では、該抗HLA-A2抗体は、SYHIQ(配列番号1)及びGYTFTSY(配列番号2)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0322】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号1~2から選択される相補性決定領域1(VH CDR1)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号1によって定められるVH CDR1を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号2によって定められるVH CDR1を有する重鎖可変領域を含む。
【0323】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列EGTYYAMDY(配列番号6)を含む重鎖可変領域を含む。
【0324】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号6によって定められる相補性決定領域3(VH CDR3)を含む重鎖可変領域を含む。
【0325】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号5によって定められる1つのVH CDR2と、以下のCDRのうちの少なくとも1つとを含む重鎖可変領域を含む:
配列番号1によって定められるVH CDR1;又は
配列番号6によって定められるVH CDR3。
【0326】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号1によって定められる1つのVH CDR1と、配列番号5によって定められる1つのVH CDR2と、配列番号6によって定められる1つのVH CDR3とを含む重鎖可変領域を含む。
【0327】
本発明によれば、重鎖のCDR1、2又は3のいずれかは、対応する配列番号1、5及び6に記載のCDRの特定のセットと少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するものとして、特徴付けることができる。
【0328】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号5によって定められる1つのVH CDR2と、以下のCDRのうちの少なくとも1つとを含む重鎖可変領域を含む:配列番号2によって定められるVH CDR1;又は配列番号6によって定められるVH CDR3。
【0329】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号2によって定められる1つのVH CDR1と、配列番号5によって定められる1つのVH CDR2と、配列番号6によって定められる1つのVH CDR3とを含む重鎖可変領域を含む。
【0330】
本発明によれば、重鎖のCDR1、2又は3のいずれかは、対応する配列番号2、5及び6に記載のCDRの特定のセットと少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するものとして、特徴付けることができる。
【0331】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号7)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0332】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号7によって定められる相補性決定領域1(VL CDR1)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0333】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号8)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0334】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号8によって定められる相補性決定領域2(VL CDR2)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0335】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列FQGSHVPRT(配列番号9)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0336】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号9によって定められる相補性決定領域3(VL CDR3)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0337】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、以下のCDRのうちの少なくとも1つを有する軽鎖可変領域を含む:
配列番号7によって定められるVL CDR1;又は、
配列番号8によって定められるVL CDR2;又は、
配列番号9によって定められるVL CDR3。
【0338】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号7によって定められる1つのVL CDR1と、配列番号8によって定められる1つのVL CDR2と、配列番号9によって定められる1つのVL CDR3とを含む軽鎖可変領域を含む。
【0339】
本発明によれば、軽鎖のCDR1、2又は3のいずれかは、対応する配列番号7、8及び9に記載のCDRの特定のセットと少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するものとして特徴付けることができる。
【0340】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAS(配列番号11)及びQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号12)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。
【0341】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKAS(配列番号11)を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号11に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。
【0342】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号12)を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、ヒト化抗HLA-A2抗体は、配列番号12に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域1(VH FR1)を含む重鎖可変領域を含む。
【0343】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、WVRQAPGQX9LEWMGX15(配列番号13)及びHIQWVRQAPGQX12LEWMGX18(配列番号25)から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む重鎖可変領域を含み、配列番号13において、X9はR又はGであり、X15はI又は非存在であり、配列番号25において、X12はR又はGであり、X18はI又は非存在である。
【0344】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列WVRQAPGQX9LEWMGX15(配列番号13)を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む重鎖可変領域を含み、9位のアミノ酸(X9)はR又はGであり、15位のアミノ酸(X15)はI又は非存在である。
【0345】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号13に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含み、9位のアミノ酸はR又はGであり、15位のアミノ酸は非存在である。
【0346】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号14、15又は16に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号14、15又は16に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。
【0347】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列HIQWVRQAPGQX12LEWMGX18(配列番号25)を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む重鎖可変領域を含み、12位のアミノ酸(X12)はR又はGであり、18位のアミノ酸(X18)はI又は非存在である。
【0348】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号25に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含み、12位のアミノ酸はR又はGであり、18位のアミノ酸は非存在である。
【0349】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号26、27又は28に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号26、27又は28に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域2(VH FR2)を含む。
【0350】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列X1VTX4TX6DTSX10STAYMX16LSX19LRSX23DX25AVYYCAR(配列番号29)を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む重鎖可変領域を含み、1位のアミノ酸(X1)はR又は非存在であり、4位のアミノ酸(X4)はI又はMであり、6位のアミノ酸(X6)はR又はAであり、10位のアミノ酸(X10)はA、T又はIであり、16位のアミノ酸(X16)はE又はLであり、19位のアミノ酸(X19)はS又はRであり、23位のアミノ酸(X23)はE又はDであり、25位のアミノ酸(X25)はT又はMである。
【0351】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号29に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、1位のアミノ酸はRであり、4位のアミノ酸はI又はMであり、6位のアミノ酸はRであり、10位のアミノ酸はA又はIであり、16位のアミノ酸はEであり、19位のアミノ酸はS又はRであり、23位のアミノ酸はE又はDであり、25位のアミノ酸はT又はMである。
【0352】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号29によって定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、1位のアミノ酸はRであり、4位のアミノ酸はI又はMであり、6位のアミノ酸はRであり、10位のアミノ酸はA又はIであり、16位のアミノ酸はEであり、19位のアミノ酸はS又はRであり、23位のアミノ酸はE又はDであり、25位のアミノ酸はTである。
【0353】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号29によって定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含み、1位のアミノ酸はRであり、4位のアミノ酸はIであり、6位のアミノ酸はRであり、10位のアミノ酸はAであり、16位のアミノ酸はEであり、19位のアミノ酸はSであり、23位のアミノ酸はEであり、25位のアミノ酸はT又はMである。
【0354】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号30、31、32、33又は34に定められるアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む。一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号30、31、32、33又は34に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域3(VH FR3)を含む。
【0355】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列WGQGTTVTVSS(配列番号44)を含むフレームワーク領域4(VH FR4)を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号44に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むフレームワーク領域4(VH FR4)を含む重鎖可変領域を含む。
【0356】
一実施形態では、重鎖可変領域は以下を含む:
配列番号1によって定められるVH CDR1;
配列番号5によって定められるVH CDR2;
配列番号6によって定められるVH CDR3;
配列番号12によって定められるVH FR1;
配列番号13によって定められるVH FR2であって、9位のアミノ酸(X9)はR又はGであり、15位のアミノ酸(X15)はI又は非存在であるVH FR2;
配列番号29によって定められるVH FR3であって、1位のアミノ酸(X1)はR又は非存在であり、4位のアミノ酸(X4)はI又はMであり、6位のアミノ酸(X6)はR又はAであり、10位(X10)のアミノ酸はA、T又はIであり、16位のアミノ酸(X16)はE又はLであり、19位(X19)のアミノ酸はS又はRであり、23位のアミノ酸(X23)はE又はDであり、25位のアミノ酸(X25)はT又はMであるVH FR3;及び
配列番号44によって定められるVH FR4。
【0357】
一実施形態では、重鎖可変領域は以下を含む:
配列番号2によって定められるVH CDR1;
配列番号5によって定められるVH CDR2;
配列番号6によって定められるVH CDR3;
配列番号11によって定められるVH FR1;
配列番号25によって定められるVH FR2であって、12位のアミノ酸(X12)はR又はGであり、18位のアミノ酸(X18)がI又は非存在であるVH FR2;
配列番号29によって定められるVH FR3であって、1位のアミノ酸(X1)はR又は非存在であり、4位のアミノ酸(X4)はI又はMであり、6位のアミノ酸(X6)はR又はAであり、10位のアミノ酸(X10)はA、T又はIであり、16位のアミノ酸(X16)はE又はLであり、19位のアミノ酸(X19)はS又はRであり、23位のアミノ酸(X23)はE又はDであり、25位のアミノ酸(X25)はT又はMであるVH FR3;及び
配列番号44によって定められるVH FR4。
【0358】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、アミノ酸配列QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYHIQWVRQAPGQX44LEWMGX50WIYPGDGSTKYSQKFQGX68VTX71TX73DTSX77STAYMX83LSX86LRSX90DX92AVYYCAREGTYYAMDYWGQGTTVTVSS(配列番号92)を含む重鎖可変領域を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸はI又は非存在であり、68位のアミノ酸はR又は非存在であり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はR又はAであり、77位のアミノ酸はA、T又はIであり、83位のアミノ酸はE又はLであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0359】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号92に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0360】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号92に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はR又はGであり、50位のアミノ酸は非存在であり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はI又はMであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はA又はIであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はS又はRであり、90位のアミノ酸はE又はDであり、92位のアミノ酸はTである。
【0361】
一実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号92に定められるアミノ酸配列を含み、44位のアミノ酸はRであり、50位のアミノ酸は非存在であり、68位のアミノ酸はRであり、71位のアミノ酸はIであり、73位のアミノ酸はRであり、77位のアミノ酸はAであり、83位のアミノ酸はEであり、86位のアミノ酸はSであり、90位のアミノ酸はEであり、92位のアミノ酸はT又はMである。
【0362】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号66に定められるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号66に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0363】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、本明細書のどこかで定義される軽鎖可変領域を含む。例えば、一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、ヒト化抗HLA-A2抗体について本明細書のいずれかで定義される軽鎖可変領域を含んでよい。
【0364】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、scFv、scFab又はsdAbである。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、scFv又はscFabである。一実施形態では、抗HLA-A2抗体はsdAbである。一実施形態では、抗HLA-A2抗体はscFabである。一実施形態では、抗HLA-A2抗体はscFvである。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号91に定められるアミノ酸配列を含むscFvである。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、配列番号91に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むscFvである。
【0365】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、ヒト化抗HLA-A2抗体である。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、ヒト抗体である。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、非ヒト化抗体である。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、非ヒト抗体である。
【0366】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、上記の配列番号に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、上記の配列番号に対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むscFv又はscFabである。
【0367】
本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る組成物も提供される。
【0368】
本明細書で用いられる場合、組成物に関して「本質的に~から成る」とは、上記の本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体が、前記組成物内で生物学的活性を有する唯一の治療薬又は薬剤であることを意味する。
【0369】
別の実施形態では、本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0370】
一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、ヒト化抗HLA-A2抗体である。
【0371】
薬学的に許容される担体の例には、媒体、溶媒、コーティング、等張剤及び吸収遅延剤、添加物、安定剤、防腐剤、界面活性剤、酵素分解を阻害する物質、アルコール、pH調整剤、酸化防止剤;EDTAやグルタチオン等のキレート剤;アジュバント(例えば水酸化アルミニウム);防腐剤及び推進剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0372】
薬学的に許容される媒体の例には、水、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水又は他の生理学的緩衝生理食塩水、又はグリコール、グリセロール等の他の溶媒、及びオリーブ油又は注射可能な有機エステル等の油が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される媒体は、リポソーム又はミセルを含むこともできる。
【0373】
コーティング材料の例には、レシチンが含まれるが、これに限定されない。
【0374】
等張剤の例には、糖、塩化ナトリウム等が含まれるが、これらに限定されない。
【0375】
吸収を遅らせる薬剤の例には、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0376】
添加物の例には、マンニトール、デキストラン、炭水化物(例えばグルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン等);グリシン、ラクトース又はポリビニルピロリドン、又は抗酸化剤や不活性ガス、安定剤、組換えタンパク質(例えばヒト血清アルブミン)等のインビボ投与に適するその他の添加物が含まれるが、これらに限定されない。
【0377】
適切な安定剤の例には、スクロース、ゼラチン、ペプトン、NZ-アミンやNZ-アミンAS等の消化タンパク質抽出物が含まれるが、これらに限定されない。
【0378】
これらの組成物に使用することのできる薬学的に許容される担体には、更に、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、リン酸塩等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びウール脂肪が含まれるが、これらに限定されない。
【0379】
また、上記の本発明の少なくとも1つの抗HLA-A2抗体を含む、それから成る、又は本質的にそれからなる薬剤も提供される。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、ヒト化抗HLA-A2抗体である。
【0380】
IV.キメラ抗原受容体(CAR)
【0381】
一態様において、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。CARは、標的抗原に対する抗体ベースの特異性と免疫細胞受容体活性化細胞内ドメインを組み合わせたキメラタンパク質分子である。
【0382】
本発明のCARは、HLA-A2に特異的に結合する細胞外ドメインを含む。細胞外ドメインは、本発明の抗HLA-A2抗体を含む。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、ヒト化抗HLA-A2抗体である。本発明のCARは、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインとを更に含む。一実施形態では、本発明のCARは、CARがHLA-A2に特異的に結合するように、ヒト細胞において発現することが可能である。他の実施形態では、本発明のCARは、CALがHLA-A2に特異的に結合するように、免疫細胞において発現することが可能である。一実施形態では、CARは、HLA-A*02:01に特異的に結合する。当業者には当然のことながら、HLA-A2に結合する抗体の能力は、当技術分野で公知の技術の使用によって検出することができる。例えば、CARのHLA-A2への結合は、本明細書に例示されるHLA-A2四量体の使用によって検出することができる。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの3つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの4つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの5つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの6つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの7つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの各々から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの2つ以上から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの各々から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも1つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも2つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも3つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも4つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも5つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも6つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの少なくとも7つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの少なくとも1つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの少なくとも2つに対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*25:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*29:02に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*30:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*31:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*33:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*36:01に対する反応性が低い。一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*68:01に対する反応性が低い。一実施形態では、ヒト細胞は免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞(Treg)である。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞はTregである。
【0383】
HLA-Aサブタイプに対する本発明のCARの反応性を決定するための技術は、当業者には公知であろう。例えば、HLA-Aサブタイプに対する本発明のCARの反応性は、単一抗原ビーズアッセイによって決定されてよい。そのような単一抗原ビーズアッセイは市販されている(例えばFlowPRA Single Antigen Antibody;ONE LAMBDA)。
【0384】
一実施形態では、本発明のCARは、本明細書において上述された試験Aの条件で測定した場合、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68及びそれらの任意の組合せを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。
【0385】
一実施形態では、本発明のCARは、本明細書において上述された試験Aの条件で測定した場合、BB7.2抗体を含むCARと比較して、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30及びそれらの任意の組合せを含む群から選択されるHLA-Aサブタイプに対する反応性が低い。
【0386】
一実施形態では、本発明のCARは、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、例えば試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体を含むCARのものよりも統計的に劣る。
【0387】
一実施形態では、本発明のCARは、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、例えば試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体を含むCARのものよりも統計的に劣る。
【0388】
一実施形態では、「統計的に劣る」という用語は、本発明のCARについて測定された反応性(例えば試験Aの条件における相対的結合)が、特に2元配置分散分析、Dunnettポストテストで分析したときに、BB7.2抗体を含むCARについて測定された反応性よりも、最大で約0.05、好ましくは最大で約0.01、より好ましくは最大で約0.005、更に好ましくは最大で約0.001のp値で劣ることを意味する。
【0389】
一実施形態では、本発明のCARは、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、BB7.2抗体を含むCARよりも劣る。一部の実施形態では、該CARは、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する相対的結合が、試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体を有するCARよりも劣る。特定の態様において、該CARの相対的結合は、BB7.2抗体を含むCARについて測定された相対結合の、最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%以下である。
【0390】
一実施形態では、本発明のCARは、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する反応性が、BB7.2抗体を含むCARよりも劣る。一部の実施形態では、該CARは、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30を含む群から選択される少なくとも1つのHLA-Aサブタイプに対する相対的結合が、試験Aの条件で測定した場合に、BB7.2抗体を含むCARよりも劣る。特定の態様において、該CARについて測定された相対的結合は、BB7.2抗体を含むCARの結合の、最大で約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%以下である。
【0391】
一実施形態では、CARは、免疫細胞がHLA-A2によって活性化されるように免疫細胞において発現することが可能である。一実施形態では、免疫細胞は、HLA-A*02:01によって活性化される。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞(Treg)である。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞はTregである。一実施形態では、免疫細胞はヒト免疫細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞はヒト制御性免疫細胞である。一実施形態では、T細胞はヒトT細胞である。一実施形態では、TregはヒトTregである。
【0392】
一実施形態では、CARは、HLA-A2への結合について、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗体と競合する。一実施形態では、CARは、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。一実施形態では、CARは、HLA-A2への結合についてBB7.2抗体と競合する。一実施形態では、CARは、BB7.2抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。BB7.2抗体は、BB7.2ハイブリドーマ(ATCC寄託番号HB-82)から単離することができる。
【0393】
一実施形態では、本発明のCARは、抗HLA-A2抗体を含む細胞外ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインとを含む。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、ヒト化抗HLA-A2抗体である。
【0394】
一実施形態では、キメラ受容体は、タグ及び/又はリーダー配列を更に含む。
【0395】
一実施形態では、キメラ受容体は、例えば品質管理、濃縮、インビボ追跡等のためのタグ等のタグを更に含む。前記タグは、N末端、C末端及び/又は内部に局在化してよい。本発明のキメラ受容体において使用され得るタグの例は、当業者には周知である。例えば、限定されないが、本発明において用いられるタグは、ヘマグルチニンタグ、ポリアルギニンタグ、ポリヒスチジンタグ、Mycタグ、Strepタグ、S-Tag、HATタグ、3×Flagタグ、カルモジュリン結合ペプチドタグ、SBPタグ、キチン結合ドメインタグ、GSTタグ、マルトース結合タンパク質タグ、蛍光タンパク質タグ(例えばeGFP)、T7タグ、V5タグ及びXpressタグを含むか又はから成る群から選択されるタグであってよい。
【0396】
細胞外ドメインは、CARのターゲティングアームとも呼ばれる標的特異的結合エレメントである。細胞外ドメインは、特定の病状に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するように選択される。本発明のCARは、HLA-A2エピトープに特異的に結合する適切な細胞外ドメインを遺伝子操作することにより、HLA-A2を提示する細胞を標的とするように遺伝子操作される。本発明のCARの標的特異的結合エレメント又は抗原結合ドメインは、本明細書において抗HLA-A2結合ドメインと呼ばれることがある。一部の実施形態では、抗HLA-A2結合ドメインは、ヒト化抗HLA-A2結合ドメインであってよい。
【0397】
膜貫通ドメインは、CARの細胞外ドメイン及び細胞質ドメインに付着している。膜貫通ドメインは、CARの細胞外ドメインが標的に結合するときはいつでも、細胞質ドメインの細胞内シグナル伝達ドメイン(複数可)にシグナル伝達することが可能である。
【0398】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインは、CARが配置された免疫細胞(例えば制御性T細胞)の生理学的エフェクター機能のうちの少なくとも1つの活性化に関与する。用語「エフェクター機能」は、免疫細胞の特殊な機能を指す。例えば、制御性T細胞のエフェクター機能は、他の免疫細胞の誘導及び/若しくは増殖の抑制又は下方制御を含んでよい。更に、Tregのエフェクター機能は、組織の修復又は再生の促進等の、臨床状態の改善をもたらす非免疫細胞に対する効果を含んでよい。よって、用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター機能シグナルを伝達し、免疫細胞にその特殊な機能を実行するよう指示するタンパク質の部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を採用することができるが、多くの場合、鎖全体を用いる必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が用いられる限りでは、そのような切断部分は、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、インタクト鎖の代わりに用いられてよい。よって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分を含むことを意味する。
【0399】
一実施形態では、CARの抗原結合ドメインと膜貫通ドメインの間、又はCARの細胞内シグナル伝達ドメインと膜貫通ドメインの間に、スペーサードメイン(又はリンカー又はヒンジ)が組み込まれてよい。上記で定義したように、スペーサードメイン、リンカー及びヒンジは、膜貫通ドメインを、ポリペプチド鎖の抗原結合ドメイン又は細胞内シグナル伝達ドメインのいずれかに連結するように機能するオリゴペプチド又はポリペプチドである。スペーサードメインは、例えば、最大300個のアミノ酸、10~100個のアミノ酸、25~75個のアミノ酸、又は25~50個のアミノ酸、又はこれらの範囲内の任意の部分範囲又は個々の数値のアミノ酸を含んでよい。
【0400】
細胞外ドメイン
【0401】
細胞外ドメインは、本発明の抗HLA-A2抗体を含む。一実施形態では、細胞外ドメインは、本発明のヒト化抗HLA-A2抗体を含む。
【0402】
一実施形態では、細胞外ドメインは、scFv、scFab又はsdAbである本発明の抗HLA-A2抗体を含む。一実施形態では、細胞外ドメインは、scFv又はscFabである本発明の抗HLA-A2抗体を含む。一実施形態では、細胞外ドメインは、sdAbである本発明の抗HLA-A2抗体を含む。一実施形態では、細胞外ドメインは、scFvである本発明の抗HLA-A2抗体を含む。一実施形態では、細胞外ドメインは、scFabである本発明の抗HLA-A2抗体を含む。一実施形態では、細胞外ドメインは、本発明の任意のヒト化抗HLA-A2抗体を含み、ヒト化抗HLA-A2抗体は、scFv、scFab又はsdAbである。一実施形態では、細胞外ドメインは、本発明の任意のヒト化抗HLA-A2抗体を含み、ヒト化抗HLA-A2抗体は、scFv又はscFabである。一実施形態では、細胞外ドメインは、sdAbである本発明のヒト化抗HLA-A2抗体を含む。一実施形態では、細胞外ドメインは、scFvである本発明のヒト化抗HLA-A2抗体を含む。一実施形態では、細胞外ドメインは、scFabである本発明のヒト化抗HLA-A2抗体を含む。
【0403】
一部の実施形態では、細胞外ドメインはヒンジを含んでよく、膜貫通ドメインは、ヒンジを介してCARの細胞外領域、例えばCARの抗原結合ドメインに付着する。一実施形態では、ヒンジはヒトタンパク質に由来してよい。例えば、一実施形態では、ヒンジは、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジ、例えばIgG4ヒンジ、又はCD8αヒンジであってよい。一部の例では、本発明のCARの細胞外ドメインは、CD8αヒンジを含んでよい。一実施形態では、ヒンジ領域は、CD8αのストーク領域を含む。一実施形態では、CD8ヒンジは、米国特許第9,102,760号の配列番号15の核酸配列によってコードされてよい。一実施形態では、CD8ヒンジは、米国特許第9,102,760号の配列番号21のアミノ酸配列を含んでよい。別の実施形態では、CD8ヒンジは、米国特許第9,102,760号の配列番号21のアミノ酸配列を含んでよい。一実施形態では、ヒンジ又はスペーサーは、表3の配列番号115又は219のアミノ酸配列を含んでよい。一実施形態では、ヒンジ又はスペーサーは、表4の配列番号159又は220の核酸配列によってコードされてよい。
【0404】
膜貫通ドメイン
【0405】
膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来してよい。一実施形態では、膜貫通ドメインは、天然源、例えば膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来してよい。
【0406】
一実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、CARのドメインの1つと自然に関連する膜貫通ドメインに由来してよい。他の実施形態では、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへの該ドメインの結合を回避するように、アミノ酸置換によって選択又は修飾することができる。
【0407】
一実施形態では、膜貫通ドメインは、膜貫通領域に隣接する1つ以上の追加のアミノ酸、例えば、膜貫通が由来するタンパク質の細胞外領域に関連する1つ以上のアミノ酸(例えば細胞外領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸)及び/又は膜貫通タンパク質が由来するタンパク質の細胞質領域に関連する1つ以上の追加のアミノ酸(例えば細胞質領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸)を含んでよい。
【0408】
一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、T細胞受容体のアルファ鎖、T細胞受容体のベータ鎖、T細胞受容体のガンマ鎖、T細胞受容体のデルタ鎖、CD28、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CDl la、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFl)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Ra、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、PD1、ITGAX、CDl1c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CDIOO(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、及び/又はNKG2C及びCD154、並びにそれらの任意の組合せから成る群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含んでよい。一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通ドメインを含んでよい。一実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、表4の配列番号160の核酸配列によってコードされる。一実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、表3の配列番号116のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、表3の配列番号116のアミノ酸配列を含む。
【0409】
一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通ドメインを含んでよい。一実施形態では、CD8膜貫通ドメインは、米国特許第9,102,760号の配列番号16の核酸配列によってコードされる。一実施形態では、CD8膜貫通ドメインは、米国特許第9,102,760号の配列番号22のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、CD8膜貫通ドメインは、米国特許第9,102,760号の配列番号22のアミノ酸配列を含む。
【0410】
一実施形態では、CD8膜貫通ドメインは、表4の配列番号224の核酸配列によってコードされる。一実施形態では、CD8膜貫通ドメインは、表3の配列番号223のアミノ酸配列を含む。
【0411】
他の実施形態では、膜貫通ドメインは合成であってよく、その場合、ロイシン及びバリンを含む疎水性優勢の残基を含んでよい。一実施形態では、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットは、合成膜貫通ドメインの各末端に見ることができる。
【0412】
一実施形態では、短いオリゴペプチドリンカー又はポリペプチドリンカーは、CARの膜貫通ドメインと細胞質ドメインの間に結合を形成してよい。一実施形態では、リンカーは、長さが1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸を含んでよい。一実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンダブレットを含んでよい。
【0413】
細胞質ドメイン
【0414】
一実施形態では、本発明のCARにおいて用いられる細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体(TCR)、及び抗原受容体の結合後にシグナル伝達を開始するために協調して作用する共受容体の細胞質配列だけでなくと、これらの配列の派生物又は変形、及び同じ機能的能力を有する任意の合成配列を含んでよい。
【0415】
一次細胞質シグナル伝達配列は、TCR複合体の一次活性化を刺激的又は抑制的に制御する。刺激的に作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ又はITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含んでよい。本発明において特に有用な一次細胞質シグナル伝達配列を含むITAMの例には、CD3ゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66dに由来するものが含まれる。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、改変されたITAMドメイン、例えば天然のITAMドメインと比較して活性が変化した(例えば増加又は減少した)変異ITAMドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、改変されたITAM含有の一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化されかつ/又は切断されたITAM含有の一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のITAMモチーフを含む。
【0416】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、FcRガンマ(例えばFCγRI、RCγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIIA又はFcγRIIIB)、FcRアルファ(例えばFcαRI)、FcRイプシロン(例えばFcεRI又はFcεRII)、CD5、CD22、CD79a、CD79b、DAP10、DAP12及びCD66d、並びにそれらの任意の組合せから成る群から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの一次シグナル伝達ドメインを含むか、又はそれから成る。
【0417】
TCRのみを通して生成されたシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分である場合があり、二次又は共刺激シグナルも必要になる場合があることが知られている。よって、ある実施形態では、T細胞活性化は、2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを通して抗原依存性の一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)と、二次又は共刺激シグナルを提供するために抗原非依存的に作用するもの(二次細胞質シグナル伝達配列)とによって媒介され得る。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインを更に含んでよい。
【0418】
一実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、それ自体でCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含むことができ、又は、本発明のCARとの関連において有用である他の所望の細胞内シグナル伝達ドメイン(複数可)と組み合せることができる。例えば、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ鎖部分と共刺激シグナル伝達ドメインとを含むことができる。共刺激シグナル伝達ドメインとは、共刺激分子の細胞内ドメインを含む、CARの一部を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要となる、抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。そのような分子の例には、OX40、CD27、CD28、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)(CD11a/CD18)、TNFR1(CD120a/TNFRSF1A)、TNFR2(CD120b/TNFRSF1B)、CTLA-4(CD152)、CD95、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、CD2、CD30、CD40、PD-1、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、ICAM-1、CD83と特異的に結合するリガンド、IL2ra(CD25)、IL6Ra(CD126)、IL-7Ra(CD127)、IL-13RA1、IL-13RA2、IL-33R(IL1RL1)、IL-10RA、IL-10RB、IL-4R、IL-5R(CSF2RB)、ARHR、BAFF受容体、IL-21R、TGFbR1、TGFbR2、TGFbR3、共通ガンマ鎖、MHCクラスI分子、BTLA及びTollリガンド受容体、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160(BY55)、CD19、CD19a、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CitgbD18、ITGB7、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKG2D等が含まれる。
【0419】
本発明のCARの細胞質部分内の細胞内シグナル伝達配列は、ランダムな順序又は特定の順序で互いに連結されてよい。任意に、例えば、長さが1~10個のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸)の短いオリゴペプチドリンカー又はポリペプチドリンカーは、細胞内シグナル伝達配列間に結合を形成してよい。一実施形態では、グリシン-セリンダブレットを適切なリンカーとして使用することができる。一実施形態では、単一のアミノ酸、例えばアラニンやグリシンを、適切なリンカーとして用いることができる。
【0420】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つ以上、例えば2、3、4、5又はそれ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含むように設計される。一実施形態では、2つ以上、例えば2、3、4、5又はそれ以上の共刺激シグナル伝達ドメインは、リンカー分子、例えば本明細書に記載のリンカー分子によって分離される。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、リンカー分子はグリシン残基である。一部の実施形態では、リンカーはアラニン残基である。
【0421】
一実施形態では、細胞質ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン及びCD28のシグナル伝達ドメインを含んでよい。別の実施形態では、細胞質ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン及び4-1BBのシグナル伝達ドメインを含んでよい。更に別の実施形態では、細胞質ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン並びにCD28及び4-1BBのシグナル伝達ドメインを含んでよい。
【0422】
一実施形態では、細胞質ドメインは、CD28のシグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータのシグナル伝達ドメインを含んでよく、CD28のシグナル伝達ドメインは、表4の配列番号161に定められる核酸配列によってコードされ、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインは、表4の配列番号162に定められる核酸配列によってコードされる。
【0423】
一実施形態では、細胞質ドメインは、CD28のシグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータのシグナル伝達ドメインを含んでよく、CD28のシグナル伝達ドメインは、表3の配列番号117のアミノ酸配列を含み、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインは、表3の配列番号118のアミノ酸配列を含む。
【0424】
一実施形態では、細胞質ドメインは、CD28のシグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータのシグナル伝達ドメインを含んでよく、CD28のシグナル伝達ドメインは、表3の配列番号117に定められるアミノ酸配列を含み、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインは、表3の配列番号118に定められるアミノ酸配列を含む。
【0425】
一実施形態では、細胞質ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータのシグナル伝達ドメインを含んでよく、4-1BBのシグナル伝達ドメインは、米国特許第9,102,760号の配列番号17に定められる核酸配列によってコードされ、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインは、表4の配列番号162に定められる核酸配列によってコードされる。
【0426】
一実施形態では、細胞質ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータのシグナル伝達ドメインを含んでよく、4-1BBのシグナル伝達ドメインは、米国特許第9,102,760号の配列番号23のアミノ酸配列を含み、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインは、表3の配列番号118のアミノ酸配列を含む。
【0427】
一実施形態では、細胞質ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメイン及びCD3ゼータのシグナル伝達ドメインを含んでよく、4-1BBのシグナル伝達ドメインは、米国特許第9,102,760号の配列番号23に定められるアミノ酸配列を含み、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインは、表3の配列番号118に定められるアミノ酸配列を含む。
【0428】
一実施形態では、CARは、配列番号119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138又は213に定められるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、CARは、配列番号119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138又は213に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0429】
V.核酸とベクター
【0430】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の抗HLA-A2抗体をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、本発明のヒト化抗HLA-A2抗体をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90又は91に定められるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111又は112に定められるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90又は91に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111又は112に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157又は158に定められる核酸配列を含む核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157又は158に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含む核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157又は158に定められる核酸配列を含む核酸によってコードされるタンパク質を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157又は158に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含む核酸によってコードされるタンパク質を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号61、62、63、64、65、66、67、68、69、70又は71に定められるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号61、62、63、64、65、66、67、68、69、70又は71に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸を提供する。
【0431】
一部の実施形態では、本発明は、本発明のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を提供する。本発明のCARをコードする核酸配列は、本明細書のどこかに記載されている細胞外ドメインを含むCARをコードしてよい。
【0432】
細胞外ドメインは、本発明の抗HLA-A2抗体を含んでよい。細胞外ドメインは、本発明のヒト化抗HLA-A2抗体を含んでよい。一実施形態では、細胞外ドメインは、リーダー配列を更に含んでよい。一実施形態では、リーダー配列は、配列番号113に定められるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、細胞外ドメインはヒンジ領域を含み、抗HLA-A2結合ドメインは、ヒンジ領域によって膜貫通ドメインに連結される。一実施形態では、ヒンジ領域は、CD8αのストーク領域を含む。
【0433】
本発明の核酸配列は、本明細書のどこかに記載されている膜貫通ドメインを含むCARをコードしてよい。例えば、一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、T細胞受容体のアルファ鎖、T細胞受容体のベータ鎖、T細胞受容体のガンマ鎖、T細胞受容体のデルタ鎖、CD28、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7R a、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、PD1、ITGAX、CDl1c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CDIOO(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/CAG、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D及び/又はNKG2CとCD154、並びにそれらの任意の組合せから成る群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む。一実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通ドメインを含む。
【0434】
本発明の核酸配列は、本明細書のどこかに記載されている細胞質ドメインを含むCARをコードしてよい。更に、細胞質ドメインは、本明細書のどこかに記載されている細胞内シグナル伝達ドメインを含んでよい。例えば、一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ゼータ、FcRガンマ(例えばFCγRI、RCγRIIA、FcγRIIB1、FcγRIIB2、FcγRIIIA又はFcγRIIIB)、FcRアルファ(例えばFcαRI)、FcRイプシロン(例えばFcεRI又はFcεRII)、CD5、CD22、CD79a、CD79b、DAP10、DAP12及びCD66d、並びにそれらの任意の組合せから成る群から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインを更に含む。本発明の核酸配列によってコードされるCARの共刺激ドメインは、本明細書のどこかに記載されている共刺激ドメインであってよい。例えば、一実施形態では、共刺激ドメインは、OX40、CD27、CD28、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)(CD11a/CD18)、TNFR1(CD120a/TNFRSF1A)、TNFR2(CD120b/TNFRSF1B)、CTLA-4(CD152)、CD95、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、CD2、CD30、CD40、PD-1、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、ICAM-1、CD83と特異的に結合するリガンド、IL2ra(CD25)、IL6Ra(CD126)、IL-7Ra(CD127)、IL-13RA1、IL-13RA2、IL-33R(IL1RL1)、IL-10RA、IL-10RB、IL-4R、IL-5R(CSF2RB)、ARHR、BAFF受容体、IL-21R、TGFbR1、TGFbR2、TGFbR3、共通ガンマ鎖、MHCクラスI分子、BTLA及びTollリガンド受容体、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160(BY55)、CD19、CD19a、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CitgbD18、ITGB7、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKG2D並びにそれらの任意の組合せから成る群から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、共刺激ドメインは、CD28、4-1BB及びそれらの組合せから成る群から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、共刺激ドメインは、CD28の機能的シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、共刺激ドメインは、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインを含む配列は、同じフレームにおいて単一のポリペプチド鎖として発現する。
【0435】
本発明の核酸配列は、単離された核酸配列であってよい。
【0436】
一実施形態では、核酸は、メッセンジャーRNA転写物として提供される。一実施形態では、核酸はDNAコンストラクトとして提供される。
【0437】
一実施形態では、CARをコードする配列を含む組換えDNAコンストラクトが提供され、CARは、(i)抗HLA-A2抗体を含む細胞外ドメインと、(ii)膜貫通ドメインと、(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインとを含み、コードされるCARは、CARがHLA-A2に特異的に結合できるように、ヒト細胞において発現することが可能である。一実施形態では、CARは、HLA-A*02:01に特異的に結合することができる。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、ヒト化抗HLA-A2抗体である。一実施形態では、ヒト細胞は免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞(Treg)である。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞はTregである。
【0438】
一実施形態では、CARをコードする配列を含む組換えDNAコンストラクトが提供され、CARは、(i)抗HLA-A2抗体を含む細胞外ドメインと、(ii)膜貫通ドメインと、(iii)細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメインとを含み、コードされるCARは、CARがHLA-A2に特異的に結合できるように、制御性T細胞(Treg)において発現することが可能である。一実施形態では、CARは、HLA-A*02:01に特異的に結合することが可能である。一実施形態では、CARのHLA-A2への結合は、本明細書に例示されるHLA-A2四量体の使用によって検出することができる。一実施形態では、抗HLA-A2抗体は、ヒト化抗HLA-A2抗体である。一実施形態では、TregはヒトTregである。
【0439】
一実施形態では、コードされるCARは、免疫細胞がHLA-A2によって活性化されるように、免疫細胞において発現することが可能である。一実施形態では、免疫細胞は、HLA-A*02:01によって活性化される。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞(Treg)である。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞はTregである。一実施形態では、免疫細胞はヒト免疫細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞はヒト制御性免疫細胞である。一実施形態では、T細胞はヒトT細胞である。一実施形態では、TregはヒトTregである。
【0440】
一実施形態では、コードされるCARは、HLA-A2への結合について、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗体と競合する。一実施形態では、コードされたCARは、配列番号183のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号185のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、配列番号187のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、配列番号188のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号189のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、及び配列番号190のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。一実施形態では、コードされたCARは、HLA-A2への結合についてBB7.2抗体と競合する。一実施形態では、コードされるCARは、BB7.2抗体と同じHLA-A2エピトープに結合する。
【0441】
一部の実施形態では、本発明は、配列番号119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138又は213に定められるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138又は213に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182又は214に定められる核酸配列を含む核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182又は214に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含む核酸を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182又は214に定められる核酸配列を含む核酸によってコードされるタンパク質を提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182又は214に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含む核酸によってコードされるタンパク質を提供する。
【0442】
所望の分子をコードする核酸配列は、例えば遺伝子を発現する細胞からライブラリをスクリーニングすること、又はそれを含むことが知られているベクターから遺伝子を誘導すること、又は標準技術を用いて、それを含む細胞及び組織から直接分離すること等により、当技術分野において公知の組換え法を用いて取得することができる。或いは、目的の核酸は、クローニングではなく、合成的に産生することができる。
【0443】
本発明は更に、抗HLA-A2抗体をコードする核酸分子又はCARをコードする核酸分子を含むベクターを提供する。一実施形態では、本発明は、ヒト化抗HLA-A2抗体をコードする核酸分子を含むベクターを提供する。一実施形態では、本発明は、該核酸分子が挿入されているベクターを提供する。
【0444】
一実施形態では、本発明は、本明細書のどこかに記載されている核酸配列を含むベクターを提供する。
【0445】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の抗HLA-A2抗体のいずれかをコードする核酸を含むベクターを提供する。他の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のヒト化抗HLA-A2抗体のいずれかをコードする核酸を含むベクターを提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157又は158に定められる核酸配列を含む核酸を含むベクターを提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157又は158に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含む核酸を含むベクターを提供する。特定の態様において、該ベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0446】
一実施形態では、本発明は、本発明のCARをコードする核酸を含むベクターを提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182又は214に定められる核酸配列を含むベクターを提供する。一部の実施形態では、本発明は、配列番号163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182又は214に対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する核酸配列を含む核酸を含むベクターを提供する。
【0447】
一実施形態では、本発明のベクターは、細胞に形質導入されてよい。一実施形態では、本発明のベクターは、非ウイルスベクター法によりヒト細胞に形質導入されるか、又は遺伝子操作されてよい。一実施形態では、本発明のベクターを免疫細胞に形質導入することができる。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞(Treg)である。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞はTregであってよい。一実施形態では、ベクターは、哺乳類免疫細胞においてCARを発現することができる。一実施形態では、哺乳類免疫細胞はヒト免疫細胞である。一実施形態では、ベクターは、哺乳類制御性免疫細胞においてCARを発現することができる。一実施形態では、哺乳類制御性免疫細胞は、ヒト制御性免疫細胞である。一実施形態では、ベクターは、哺乳類T細胞においてCARを発現することができる。一実施形態では、哺乳類T細胞は、哺乳類制御性T細胞である。一実施形態では、哺乳類T細胞はヒトT細胞である。一実施形態では、哺乳類T細胞はヒト制御性T細胞である。
【0448】
一実施形態では、ベクターは、例えば、1つ以上のプラスミド(例えば発現プラスミド、クローニングベクター、ミニサークル、ミニベクター、二重微小染色体)、レトロウイルスベクターコンストラクト及びレンチウイルスベクターコンストラクトを含むが、これらに限定されないクローニングベクター又は発現ベクターである。
【0449】
本発明は、細胞に直接形質導入できるCARを発現するレトロウイルスベクターコンストラクト及びレンチウイルスベクターコンストラクトを含む。レンチウイルス等のレトロウイルス由来のベクターは、導入遺伝子の長期にわたる安定した組込みと娘細胞でのその増殖を可能にするので、長期的な遺伝子導入を実現するのに適したツールである。レンチウイルスベクターには、肝細胞等の非増殖細胞を形質導入できるという点で、マウス白血病ウイルス等の腫瘍レトロウイルスに由来するベクターよりも優れた利点がある。また、免疫原性が低いというさらなる利点もある。
【0450】
要約すると、CARをコードする天然又は合成の核酸の発現は、典型的には、CARポリペプチド又はその一部をコードする核酸をプロモーターに操作可能に連結し、該コンストラクトを発現ベクターに組み込むことによって達成される。ベクターは、真核生物の複製と統合に適切であり得る。典型的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現の調節に有用な転写及び翻訳のターミネーター、開始配列及びプロモーターを含む。
【0451】
上記の方法に加えて、以下の方法が用いられてもよい。
【0452】
本発明の発現コンストラクトは、標準的な遺伝子送達プロトコルを用いて、核酸免疫化と遺伝子治療に用いられてもよい。遺伝子送達の方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第5,399,346号、第5,580,859号、第5,589,466号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。別の実施形態では、本発明は、遺伝子治療ベクターを提供する。別の実施形態では、CRISPR-Cas9又はTALENベースの技術等のゲノム編集技術を用いて、本発明のCARをコードする核酸をレシピエント免疫細胞のゲノムに導入することができる(Delhove,J.M.K.M.,他、2017;Eyquem,J.他、2017)。
【0453】
核酸は多くの種類のベクターにクローニングすることができる。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドを含むが、これらに限定されないベクターにクローニングすることができる。特に興味深いベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター及び配列決定ベクターが含まれる。
【0454】
更に、発現ベクターは、ウイルスベクターの形で細胞に提供されてよい。ウイルスベクター技術は当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook他(2001年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)や他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス及びレンチウイルス等が含まれるが、これらに限定されない(例えば米国特許第5,350,674号及び第5,585,362号を参照されたい)。概して、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能する複製起点と、プロモーター配列と、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位と、1つ以上の選択マーカーとを含む(例えばWO01/96584;WO01/29058;及び米国特許第6,326,193号)。
【0455】
哺乳類細胞へのトランスフェクションのために、多くのウイルスベースの系が開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムに便利なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当技術分野において公知の技術を用いて、ベクターに挿入し、レトロウイルス粒子にパッケージ化することができる。次いで、組換えウイルスを単離し、インビボ又はエクスビボのいずれかにおいて対象の細胞に送達することができる。当技術分野では、多くのレトロウイルス系が公知である。一部の実施形態では、アデノウイルスベクターが用いられる。当技術分野では、多くのアデノウイルスベクターが公知である。一実施形態では、レンチウイルスベクターが用いられる。
【0456】
追加の転写活性エレメント、例えばプロモーターやエンハンサーは、転写開始の頻度を調節することができる。典型的には、コアプロモーターに関して、これらは開始部位の30-110bp上流の領域に位置するが、最近では、多くのプロモーターが開始部位の下流にも機能エレメントを含むことと、エンハンサー要素は一般に開始部位の500~2000bp上流に位置することが示されている。プロモーターエレメント間の間隔は高頻度に変更可能であるので、エレメントが互いに反転又は移動してもプロモーター機能は保存される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、活性が低下し始める前に、プロモーターエレメント間の間隔を50bpに広げることができる。プロモーターに応じて、個々のエレメントが協調的に又は独立して機能して、転写を活性化することができるようである。
【0457】
適切なプロモーターの一例は、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに操作可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することが可能である、強力な構成的プロモーター配列である。適切なプロモーターの別の例は、伸長成長因子-1α(EF-1α)である。適切なプロモーターの別の例は、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターである。しかしながら、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタインバールウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターだけでなく、限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーター等のヒト遺伝子プロモーターを含むが、これらに限定されない他の構成的プロモーター配列も用いることができる。更に、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターも本発明の一部として意図される。誘導性プロモーターの使用は、そのような発現が望まれるときに操作可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにし、又は発現が望まれないときに発現をオフにすることが可能である分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例には、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーター等が含まれるが、これらに限定されない。
【0458】
CARポリペプチド又はその部分の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターは、選択マーカー遺伝子又はレポーター遺伝子のいずれか、又はその両方を含んで、ウイルスベクターを介してトランスフェクション又は感染させようとする細胞集団からの発現細胞の同定及び選択を容易にすることができる。他の態様では、選択マーカーは、DNAの別々の断片上で運ばれ、同時トランスフェクション手順において用いることができる。選択マーカーとレポーター遺伝子の両方に、宿主細胞における発現を可能にする適切な制御配列が隣接してもよい。有用な選択マーカーには、例えば、ネオ等の抗生物質耐性遺伝子が含まれる。
【0459】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされる可能性のある細胞を特定し、制御配列の機能を評価するために用いられる。概して、レポーター遺伝子は、レシピエント生物若しくは組織に存在しないか、又は発現されない遺伝子であり、いくつかの容易に検出可能な特性、例えば酵素活性によってその発現が明示されるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の適切な時間にアッセイされる。適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼ又は緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を含んでよい(例えばUi-Tei他、2000 FEBS Letters 479:79-82)。適切な発現系は周知であり、公知の技術を用いて調製するか、商業的に入手してもよい。概して、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小の5’隣接領域を有するコンストラクトが、プロモーターとして同定される。そのようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結することができ、プロモーター駆動転写を調節する能力について薬剤を評価するために用いてもよい。
【0460】
遺伝子を細胞に導入し発現させる方法は、当技術分野において公知である。発現ベクターとの関連において、ベクターは、当技術分野の任意の方法により、宿主細胞、例えば哺乳類、細菌、酵母又は昆虫の細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的又は生物学的な手段によって、宿主細胞にトランスフェクトすることができる。
【0461】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等が含まれる。ベクター及び/又は外来核酸を含む細胞を産生する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Sambrook他、2001年を参照)。例えば、ポリヌクレオチドは、リン酸カルシウムトランスフェクションによって宿主細胞に導入してよい。或いは、エレクトロポレーションにより、宿主細胞にRNA等のポリヌクレオチドをトランスフェクトしてよい(例えばWO2007/065957を参照)。
【0462】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学的手段には、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ等のコロイド分散系と、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベース系が含まれる。インビトロ及びインビボにおいて送達媒体として用いるための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば人工膜小胞)である。標的ナノ粒子又は他の適切なサブミクロンサイズの送達系によるポリヌクレオチドの送達等の、最先端の核酸の標的送達の他の方法が利用可能である。
【0463】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用が、核酸の宿主細胞への導入(インビトロ、エクスビボ又はインビボ)のために企図される。別の態様では、核酸は脂質と会合してもよい。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部に封入され、リポソームの脂質二重層内に散在し、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に結合している連結分子を介してリポソームに付着し、リポソームに閉じ込められ、リポソームと錯体を形成し、脂質を含む溶液中に分散し、脂質と混合され、脂質と組み合され、脂質中の懸濁液として含有され、ミセルとともに含まれ若しくはミセルと錯体を形成し、又は他の方法で脂質と結合してよい。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中の特定の構造に限定されない。例えば、ミセルとしての、又は「崩壊した」構造を有する二重層構造で存在し得る。また、単純に溶液中に散在し、サイズや形状が均一ではない凝集体を形成する可能性もある。脂質は、天然に存在する又は合成の脂質であり得る脂肪物質である。例えば、脂質は、細胞質に自然に発生する脂肪滴と、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒド等の長鎖脂肪族炭化水素とその誘導体を含む化合物のクラスとを含む。
【0464】
使用に適する脂質は、商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma(ミズーリ州セントルイス)から入手可能であり、リン酸ジセチル「“DCP))は、K&K Laboratories(ニューヨーク州プレインビュー)から入手可能であり、コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringから入手可能であり、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(アラバマ州バーミンガム)から入手可能である。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中の脂質の貯蔵液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムはメタノールよりも蒸発しやすいので、唯一の溶媒として用いられる。「リポソーム」は、封入された脂質二重層又は凝集体の生成によって形成された、様々な単層及び多層の脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜と内部水性媒体を有する小胞構造を有するものとして特徴付けることができる。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。リン脂質が過剰な水溶液に懸濁されると、自然に形成される。脂質成分は、閉じた構造が形成される前に自己再配列を受け、脂質二重層の間に水と溶解した溶質を閉じ込める(Ghosh他、1991)。しかしながら、通常の小胞構造とは異なる溶液構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造をとってもよいし、脂質分子の不均一な凝集体として存在するだけであってもよい。リポフェクトアミン-核酸複合体も企図される。
【0465】
外来核酸を宿主細胞に導入するために用いられる方法に関係なく、宿主細胞内の組換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを実施してよい。そのようなアッセイには、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ(サザンブロット及びノーザンブロット、RT-PCR及びPCR等)や、「生化学的」アッセイ(例えば免疫学的手段(ELISA及びウエスタンブロット)によるか、又は本発明の範囲に含まれる薬剤を特定するための本明細書に記載のアッセイによって特定のペプチドの有無を検出すること)が含まれる。
【0466】
VI.CAR改変免疫細胞
【0467】
本発明のCARをコードする核酸は、免疫細胞に導入して、本発明のCARを発現するCAR改変免疫細胞を作製することができ、改変免疫細胞は本明細書に開示されるように使用される。また、CAR改変免疫細胞は、本明細書では「CAR遺伝子操作免疫細胞」と呼ばれることもある。一実施形態では、本明細書のどこかに記載されているCARを含む改変免疫細胞が提供される。別の実施形態では、本明細書のどこかに記載されている発現ベクターを含む免疫細胞が提供される。免疫細胞は、細胞療法での使用に適した任意の免疫細胞であってよい。一実施形態では、免疫細胞はヒト免疫細胞であってよい。
【0468】
一実施形態では、免疫細胞は、リンパ球、骨髄由来細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、リンパ球は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。一実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、γδT細胞、ダブルネガティブ(DN)T細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、CD4+T細胞は、ヘルパーT細胞、制御性T細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞である。一実施形態では、Tregは、胸腺由来Treg、又は適応Treg若しくは誘導Tregである。一実施形態では、Tregは、CD4+FOXP3+制御性T細胞又はCD4+FOXP3-制御性T細胞(TR1細胞)である。一実施形態では、TregはCD4+FOXP3+制御性T細胞である。一実施形態では、TregはCD4+FOXP3-制御性T細胞(TR1細胞)である。一実施形態では、CD8+T細胞は、細胞傷害性CD8+T細胞又はCD8+制御性T細胞である。一実施形態では、CD8+T細胞はCD8+制御性T細胞である。一実施形態では、CD8+制御性T細胞は、CD8+CD28-制御性T細胞、CD8+CD103+制御性T細胞、CD8+FoxP3+制御性T細胞、CD8+CD122+制御性T細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、CD8+制御性T細胞は、INFγ+IL10+IL34+CD8+CD45RClow制御性T細胞である。一実施形態では、γδT細胞は制御性γδT細胞である。一実施形態では、DN T細胞は制御性DN T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はB細胞である。一実施形態では、B細胞は制御性B細胞である。一実施形態では、制御性B細胞は、CD19+CD24hiCD38hiB細胞である。一実施形態では、NK細胞は制御性NK細胞である。一実施形態では、骨髄由来細胞は、好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞又はそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、マクロファージは制御性マクロファージである。一実施形態では、樹状細胞は制御性樹状細胞である。
【0469】
一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。免疫細胞は、細胞療法での使用に適した任意の制御性免疫細胞であってよい(例えばWood,K.J.他、2012;Papp,G.他、2017を参照)。一実施形態では、制御性免疫細胞は、ヒト制御性免疫細胞であってよい。一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、制御性免疫細胞はCD8+制御性T細胞である(例えばGuillonneau,C.他、2010年を参照)。一実施形態では、CD8+制御性T細胞は、CD8+CD28-制御性T細胞、CD8+CD103+制御性T細胞、CD8+FoxP3+制御性T細胞、CD8+CD122+制御性T細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、CD8+制御性T細胞は、INFγ+IL10+IL34+CD8+CD45RClow制御性T細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は制御性γδT細胞である(例えばWesch,D.,他、2014を参照)。一実施形態では、免疫細胞は制御性DN T細胞である(例えばJuvet,S.C.,他、2012を参照)。一実施形態では、制御性免疫細胞は制御性B細胞である(例えばChong,A.S.,他、2017を参照)。一実施形態では、制御性B細胞はCD19+CD24hiCD38hiB細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は制御性NK細胞である(例えばFu,B.他、2013;Crome,S.Q.,他、2013;Crome,S.Q.,他、2017を参照)。一実施形態では、制御性免疫細胞は制御性マクロファージである(例えばHutchinson,J.A.,他、2017を参照)。一実施形態では、制御性免疫細胞は制御性樹状細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は制御性T細胞である。一実施形態では、Tregは、胸腺由来のTreg又は適応Treg若しくは誘導Tregである。一実施形態では、Tregは、CD4+FOXP3+制御性T細胞又はCD4+FOXP3-制御性T細胞(TR1細胞)である。一実施形態では、TregはCD4+FOXP3+制御性T細胞である。一実施形態では、TregはCD4+FOXP3-制御性T細胞(TR1細胞)である。
【0470】
一実施形態では、制御性免疫細胞は以下の表現型を有する:CD4+CD25+、例えばCD4+CD25+CD127-等、例えばCD4+CD25+CD127-CD45RA+等。更なる実施形態では、制御性免疫細胞は、以下の表現型を有する:FoxP3+CD4+CD25+、例えばFoxP3+CD4+CD25+CD127等、例えばFoxP3+CD4+CD25+CD127-CD45RA+等。
【0471】
一実施形態では、免疫制御性細胞は、以下の表現型のうちの少なくとも1つを呈する:CD4+CD25+、FoxP3+、CD127lo/-、CTLA-4+、CD39+、Helios+、CD62L+/hi、VLA4+、LFA1+、CD49bint、ITGb7int、PSGL-1+、ICOS+、GITR+、PD-1int、Perflo/-、CCR7+。一実施形態では、免疫制御性細胞は、グランザイムA及び/又はグランザイムBを発現しない。
【0472】
一実施形態では、分子の発現レベルの決定は、フローサイトメトリー、免疫蛍光又は画像分析、例えばハイコンテント分析によって実施される。好ましくは、分子の発現レベルの決定は、フローサイトメトリーによって実施される。一実施形態では、フローサイトメトリー分析を実施する前に、細胞を固定及び透過処理し、それにより細胞内タンパク質の検出を可能にする。
【0473】
一実施形態では、細胞集団における分子の発現レベルの決定は、分子を発現する細胞集団の細胞の割合(すなわち分子について「+」である細胞)を決定することを含む。好ましくは、分子を発現する細胞の前記割合は、FACSにより測定される。
【0474】
用語「発現する(又は+)」及び「発現しない(又は-)」は、当技術分野において周知であり、目的の細胞マーカーの発現レベルを指し、「+」に対応する細胞マーカーの発現レベルは高いか中程度であり、「+/-」とも呼ばれ、「-」に対応する細胞マーカーの発現レベルはヌルである。
【0475】
用語「低い(low)」又は「低(lo)」又は「低/なし(lo/-)は、当技術分野において周知であり、全体として分析されている細胞集団におけるその細胞マーカーの発現レベルと比較すると、細胞マーカーの発現レベルは低いという点での目的の細胞マーカーの発現レベルを指す。より具体的には、「低い(lo)」という用語は、1つ以上の他の異なる細胞集団よりも低いレベルで細胞マーカーを発現する細胞の異なる集団を指す。
【0476】
用語「高い(high)」又は「高(hi)」又は「明るい(bright)」は、当技術分野において周知であり、全体として分析されている細胞集団におけるその細胞マーカーの発現レベルと比較すると、細胞マーカーの発現レベルは高いという点での目的の細胞マーカーの発現レベルを指す。
【0477】
一般に、染色強度の上位2、3、4又は5%の細胞は「高」と指定され、集団の上位半分に属する細胞は「+」として分類される。蛍光強度が50%未満になる細胞は「低」細胞と指定され、5%未満は「-」細胞と指定される。
【0478】
目的の細胞マーカーの発現レベルは、このマーカーに特異的な蛍光標識抗体によって染色された細胞集団の細胞の蛍光強度中央値(MFI)を、無関係の特異性を有するが同じアイソタイプと同じ蛍光プローブを有し、かつ同じ種に由来する蛍光標識抗体(アイソタイプ対照と呼ばれる)によって染色された同じ細胞集団の細胞の蛍光強度(FI)と比較することによって決定される。このマーカーに特異的な蛍光標識抗体で染色され、アイソタイプ対照で染色された細胞と比べて同等のMFI又は低いMFIを示す集団の細胞は、このマーカーを発現しておらず、(-)又は陰性と指定される。このマーカーに特異的な蛍光標識抗体で染色され、アイソタイプ対照で染色された細胞よりも優れたMFI値を示す集団の細胞は、このマーカーを発現しており、(+)又は陽性と指定される。
【0479】
一実施形態では、本発明の免疫細胞は、その細胞表面に、本発明のCARと、HLA-A2以外の別のリガンドに結合する別の受容体(本明細書では「第2の受容体」と呼ぶ)とを発現する。本発明によれば、この第2の受容体は、前述のように、細胞外リガンド結合ドメインと、必要に応じてヒンジと、必要に応じて膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。
【0480】
一実施形態では、第2の受容体は内在性である(例えば内在性TCR等)。別の実施形態では、第2の受容体は外来性であり、その発現は、それをコードする核酸の形質転換又は形質導入により、本発明の免疫細胞において誘導される。前記外来性受容体は、外来性のTCR又はキメラ抗原受容体であってよい。したがって、一実施形態では、本発明の免疫細胞は2つのキメラ抗原受容体を発現し、1つ目はHLA-A2を認識し、2つ目は別々のリガンドを認識する。
【0481】
別の実施形態では、本発明の免疫細胞は、その細胞表面に、本発明のCARと、HLA-A2の別のエピトープに結合する別の受容体(本明細書では「第2の受容体」と呼ぶ)を発現する。本発明によれば、この第2の受容体は、前述のように、細胞外リガンド結合ドメインと、必要に応じてヒンジと、必要に応じて膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。
【0482】
別の実施形態では、本発明の免疫細胞は2つのCARを発現し、1つ目はHLA-A2の第1のエピトープを認識し、2つ目はHLA-A2上の別々のエピトープを認識する。
【0483】
一実施形態では、本発明のCARは第1の細胞内シグナル伝達ドメインを含み、第2の受容体は別々の第2の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。第1の実施形態では、本発明のCARは、T細胞一次シグナル伝達ドメイン(例えばCD3ゼータ等)を含み、第2の受容体は共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば4-1BB、CD28、又は4-1BBとCD28の共刺激シグナル伝達ドメインの組合せ等)を含む。第2の実施形態では、本発明のCARは共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば4-1BB、CD28、又は4-1BBとCD28の共刺激シグナル伝達ドメインの組合せ等)を含み、第2の受容体はT細胞一次シグナル伝達ドメイン(例えばCD3ゼータ等)を含む。
【0484】
したがって、これらの実施形態によれば、本発明の免疫細胞の完全な活性化には、本発明のCARのHLA-A2への結合と、第2受容体のそれが向けられているリガンドへの結合の両方が必要である。
【0485】
一実施形態では、第2の受容体によって認識されるリガンドは、病気の組織若しくは器官、又は自己免疫応答の部位に発現又は存在する。
【0486】
第2の受容体によって認識され得るリガンドの例には、一般的なヒトの食事からの食物抗原、自己抗原、吸入アレルゲン、摂取アレルゲン又は接触アレルゲン等が含まれるが、これらに限定されない。
【0487】
「一般的なヒトの食事からの食物抗原」という用語は、以下の非限定的な列挙の食物抗原等、ヒトにとって一般的な食物に由来する免疫原性ペプチドを指す:リポカリン等のウシ抗原の、Ca結合S100、α-ラクトアルブミン、ベータ-ラクトグロブリン等のラクトグロブリン、ウシ血清アルブミン、カゼイン。食物抗原は、パルブアルブミン等のタイセイヨウサケ抗原;例えばオボムコイド、オボアルブミン、Ag22、コンアルブミン、リゾチーム又はニワトリ血清アルブミン等のニワトリ抗原;ピーナッツ抗原;トロポミオシン等のエビ抗原;アグルチニン又はグリアジン等のコムギ抗原;セロリプロフィリン等のセロリ抗原;ニンジンプロフィリン等のニンジン抗原;ソーマチン、リンゴ脂質転移タンパク質、又はリンゴプロフィリン等のリンゴ抗原;ナシプロフィリン又はイソフラボン還元酵素等のナシ抗原;エンドキチナーゼ等のアボカド抗原;アプリコット脂質転移タンパク質等のアプリコット抗原;モモ脂質転移タンパク質又はモモプロフィリン等のモモ抗原;HPS、大豆プロフィリン又は(SAM22)PR-I0 prot等の大豆抗原;それらの断片、変異体及び混合物であってもよい。
【0488】
一実施形態では、前記自己抗原は、多発性硬化症関連抗原、関節関連抗原、眼関連抗原、ヒトHSP抗原、皮膚関連抗原、又は移植片拒絶反応若しくはGVHDに関与する抗原である。
【0489】
用語「多発性硬化症関連抗原」は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、オリゴデンドロサイトミエリンオリゴタンパク質(OMGP)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP/Claudinl 1)、熱ショックタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP)、NOGO A、糖タンパク質Po、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、2’3’-サイクリックヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼ(CNPase)、それらの断片、変異体及び混合物を指す。
【0490】
用語「関節関連抗原」は、シトルリン置換型の環状及び直鎖状のフィラグリンペプチド、II型コラーゲンペプチド、ヒトの軟骨糖タンパク質39(HCgp39)ペプチド、HSP、異種核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)A2ペプチド、hnRNP B1、hnRNP D、Ro60/52、HSP60、HSP65、HSP70及びHSP90、BiP、ケラチン、ビメンチン、フィブリノゲン、I型、III型、IV型及びV型コラーゲンペプチド、アネキシンV、グルコース6リン酸イソメラーゼ(GPI)、アセチルカルパスタチン、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)、アルドラーゼ、トポイソメラーゼI、snRNP、PARP、Scl-70、Scl-100、アニオン性のカルジオリピン及びホスファチジルセリン、中性に荷電したホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルコリンを含むリン脂質抗原、マトリックスメタロプロテアーゼ、フィブリリン、アグリカン、それらの断片、変異体及び混合物を指す。
【0491】
用語「眼関連抗原」は、II型コラーゲン、網膜アレスチン、S-アレスチン、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP1)、ベータ-クリスタリンB1、網膜タンパク質、脈絡膜タンパク質、並びにそれらの断片、変異体及び混合物を指す。
【0492】
用語「ヒトHSP抗原」は、ヒトHSP60、HSP70、HSP90、それらの断片、変異体及び混合物を指す。
【0493】
皮膚関連抗原の例には、ケラチノサイト抗原、真皮又は表皮に存在する抗原、メラニン細胞抗原(例えばメラニン又はチロシナーゼ等)、デスモグレイン(デスモグレイン1又は3、Dsg1/3と呼ばれることもある)、BP180、BP230、プレクチン、インテグリン(例えばインテグリンα4β6)、コラーゲン(例えばVII型コラーゲン)、ラミニン(例えばラミニン332又はラミニンγ1)、プラキン(例えばエンボプラキン、ペリプラキン又はデスモプラキン)、ケラチン(例えばKRT5、KRT8、KRT15、KRT17及びKRT31)、ケラチンフィラメント関連タンパク質、フィラグリン、コルネオデスモシン及びエラスチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0494】
一実施形態では、リガンドは、移植片拒絶反応又はGVHDに関与する抗原である。そのような抗原の例には、移植組織又は宿主に特異的なMHC、β2-ミクログロブリン、ABO系の抗原、アカゲザル系の抗原(特にC、c、E et e及びD系の抗原)及びイソヘマグルチニンが含まれるが、これらに限定されない。移植片拒絶反応又はGVHDに関与する可能性のある抗原の他の例として、HLA-DR(特に移植後最初の6ヶ月間)、HLA-B(特に移植後最初の2年間)、マイナー組織適合抗原(miHA、例えばHLA-E、HLA-F及びHLA-G)、MHCクラスIに対応するHLA(B及びC)、MHCクラスIIに対応するHLA(DP、DM、DOA、DOB、DQ及びDR)及びMHCクラスIIIに対応するHLA(例えば補体系の成分)が含まれるが、これらに限定されない。
【0495】
自己抗原の他の例には、限定されないが、アクアポリン水チャネル(例えばアクアポリン4水チャネル(AQP4)等)、Hu、Ma2、コラプシン応答メディエータータンパク質5(CRMP5)、及びアンフィフィシン、電位開口型カリウムチャネル(VGKC)、N-メチル-d-アスパラギン酸受容体(NMDAR)、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸(AMPAR)、甲状腺ペルオキシダーゼ、サイログロブリン、抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NR1サブユニット)、Rh血液型抗原、I抗原、デスモグレイン1又は3(Dsg1/3)、BP180、BP230、アセチルコリンニコチン性シナプス後受容体、甲状腺刺激ホルモン受容体、血小板インテグリン、GpIIb:IIIa、コラーゲン(例えばコラーゲンα-3(IV)鎖等)、リウマチ因子、カルパスタチン、シトルリン化タンパク質、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)ペプチド、α-β-クリスタリン、DNA、ヒストン、リボソーム、RNP、組織トランスグルタミナーゼ(TG2)、内因子、65kDa抗原、ホスファチジルセリン、リボソームリンタンパク質、抗好中球細胞質抗体、Scl-70、U1-RNP、ANA、SSA、抗SSB、抗核抗体(ANA)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)、Jo-1、抗ミトコンドリア抗体、gp210、p62、sp100、抗リン脂質抗体、U1-70kd snRNP、GQ1bガングリオシド、GM1、アシアロGM1、GD1b、抗平滑筋抗体(ASMA)、抗肝臓腎臓ミクロソーム-1抗体(ALKM-1)、抗肝臓サイトゾル抗体-1(ALC-1)、IgA抗筋内膜抗体、好中球顆粒タンパク質、連鎖球菌細胞壁抗原、胃壁細胞の内因子、インスリン(IAA)、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAA又はGAD)及びタンパク質チロシンホスファターゼ(例えばIA2又はICA512等)、PLA2R1及びTHSD7A1が含まれる。
【0496】
一実施形態では、前記リガンドは、オボアルブミン、MOG、II型コラーゲン、それらの断片、変異体及び混合物を含む群から選択される。
【0497】
一実施形態では、前記リガンドは、オボアルブミン、その断片、変異体及び混合物である。
【0498】
別の実施形態では、前記リガンドは、MOG、その断片、変異体及び混合物である。
【0499】
別の実施形態では、前記リガンドは、II型コラーゲン、その断片、変異体及び混合物である。
【0500】
別の実施形態では、前記リガンドは、IL23R、その断片、変異体及び混合物である。
【0501】
一実施形態では、本発明のCARは、HLA-A2とは異なるリガンドを認識する細胞外リガンド結合ドメインを更に含む。一実施形態では、前記リガンド結合ドメインは、抗体又はその抗原結合断片である。
【0502】
一実施形態では、本発明のCARのリガンド結合ドメインは、HLA-A2上の複数の異なるエピトープを認識する多機能抗体である。一実施形態では、本発明のCARのリガンド結合ドメインは、HLA-A2上の2つの別々のエピトープを認識する二機能性抗体である。
【0503】
一実施形態では、本発明のCARは、HLA-A2結合ドメインとHLA-A2とは異なるリガンドを認識する別のリガンド結合ドメインとを含む細胞外リガンド結合ドメインを含む。一実施形態では、前記リガンド結合ドメインは、HLA-A2と別のリガンドとの両方を認識する二機能性抗体である。
【0504】
本発明のCARによって認識され得るHLA-A2とは異なるリガンドの例は、上記に列挙されている。
【0505】
一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞は、所望のCARを含むレンチウイルスベクターを細胞に導入することによって生成してよい。一実施形態では、CARを発現するように改変された免疫細胞を作製する方法が提供され、本方法は、本明細書のどこかに記載されているベクターを用いて免疫細胞に形質導入し、それによって前記改変免疫細胞を生成することを含む。
【0506】
一実施形態では、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、RNAの導入を通して改変される。一実施形態では、インビトロ転写RNA CARは、一時的トランスフェクションの形態として細胞に導入することができる。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成鋳型を用いたインビトロ転写によって産生されてよい。任意の供給源からの目的DNAは、適切なプライマーとRNAポリメラーゼを用いて、インビトロmRNA合成用の鋳型にPCRによって直接変換することができる。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列、又は他の適切なDNA供給源であってよい。インビトロ転写のための望ましい鋳型は、本発明のCARである。
【0507】
一実施形態では、PCRに用いられるDNAはオープンリーディングフレームを含む。該DNAは、生物のゲノムからの自然発生DNA配列に由来してよい。一実施形態では、該DNAは、目的遺伝子の全長又は遺伝子の一部である。該遺伝子は、5’及び/若しくは3’非翻訳領域(UTR)の一部又は全部を含むことができる。該遺伝子は、エクソンとイントロンを含むことができる。一実施形態では、PCRに用いられるDNAはヒト遺伝子である。別の実施形態では、PCRに用いられるDNAは、5’及び3’UTRを含むヒト遺伝子である。或いは、該DNAは、天然に存在する生物では通常発現されない人工DNA配列であってよい。例示的な人工DNA配列は、融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを形成するように一緒に連結された、遺伝子の部分を含むものである。一緒に連結されるDNAの部分は、単一の生物又は2種以上の生物に由来してよい。
【0508】
PCRを用いて、トランスフェクションに用いられるmRNAのインビトロ転写用の鋳型を生成することができる。PCRを実施する方法は、当技術分野において周知である。PCRに用いられるプライマーは、PCRの鋳型として用いられるDNAの領域と実質的に相補的な領域を有するように設計される。本明細書において用いられる場合、「実質的に相補的」とは、プライマー配列の大部分又は全部の塩基が相補的であるか、又は1つ以上の塩基が非相補的若しくは不適合であるヌクレオチドの配列を指す。実質的に相補的な配列は、PCRに用いられるアニーリング条件下で、意図するDNA標的とアニーリング又はハイブリダイズすることが可能である。プライマーは、DNA鋳型のいずれの部分にも実質的に相補的であるように設計することができる。例えば、プライマーは、5’及び3’UTRを含む、細胞において通常転写される遺伝子の部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計することができる。プライマーは、目的の特定のドメインをコードする遺伝子の一部を増幅するように設計することもできる。一実施形態では、プライマーは、5’及び3’UTRの全部又は一部を含む、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRに有用なプライマーは、当技術分野において周知の合成方法によって生成される。
【0509】
「フォワードプライマー」は、増幅されるDNA配列の上流にあるDNA鋳型上のヌクレオチドに実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含むプライマーである。「上流」は、本明細書では、コード鎖に対して増幅されるDNA配列の5’位を指すために用いられる。「リバースプライマー」は、増幅されるDNA配列の下流にある二本鎖DNA鋳型に実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含むプライマーである。「下流」は、本明細書では、コード鎖に対して増幅されるDNA配列の3’位を指すために用いられる。PCRに有用な任意のDNAポリメラーゼは、本明細書に開示される方法において用いることができる。試薬及びポリメラーゼは、多くの供給源から市販されている。
【0510】
安定性及び/又は翻訳効率を促進する能力を備えた化学構造も用いられてよい。RNAは、好ましくは5’及び3’UTRを有する。一実施形態では、5’UTRの長さは、0~3000ヌクレオチドである。コード領域に追加される5’及び3’UTR配列の長さは、UTRの異なる領域にアニールするPCRのプライマーを設計することを含むが、これに限定されない異なる方法によって変更することができる。このアプローチを用いて、当業者であれば、トランスフェクション後に、転写されたRNAの最適な翻訳効率を達成するために必要となる5’及び3’UTRの長さを修正することができる。5’及び3’UTRは、目的の遺伝子の天然に存在する内在性5’及び3’UTRであってよい。或いは、目的の遺伝子に対して内在性ではないUTR配列は、UTR配列をフォワードプライマー及びリバースプライマーに組み込むことによって、又は鋳型の他の修飾によって、追加することができる。目的の遺伝子に対して内在性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性及び/又は翻訳効率の修正に有用であり得る。例えば、3’UTR配列のAUリッチエレメントがmRNAの安定性を低下させることが知られている。したがって、3’UTRは、当技術分野において周知であるUTRの特性に基づいて、転写されたRNAの安定性を高めるように選択又は設計することができる。
【0511】
一実施形態では、5’UTRは、内在性遺伝子のコザック配列を含むことができる。或いは、目的の遺伝子に対して内在性ではない5’UTRが上記のようにPCRによって追加される場合、5’UTR配列を追加することによってコンセンサスコザック配列を再設計することができる。コザック配列は、一部のRNA転写産物の翻訳効率を高めることができるが、効率的な翻訳を可能にするために全てのRNAに必要なわけではないようである。多くのmRNAのためのコザック配列の要件は、当技術分野において公知である。他の実施形態では、5’UTRは、RNAゲノムが細胞内で安定しているRNAウイルスに由来してよい。他の実施形態では、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨害するために、3’又は5’UTRにおいて様々なヌクレオチド類似体を用いることができる。
【0512】
遺伝子クローニングを必要とせずにDNA鋳型からRNAを合成できるようにするには、転写のプロモーターを、転写される配列の上流のDNA鋳型に付着させる必要がある。RNAポリメラーゼのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5’末端に付加されると、RNAポリメラーゼプロモーターは、転写されるオープンリーディングフレームの上流のPCR産物に組み込まれる。好ましい一実施形態では、プロモーターは、本明細書の他の場所に記載されているT7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターには、T3及びSP6 RNAポリメラーゼプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。T7、T3及びSP6プロモーターのコンセンサスヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。
【0513】
好ましい実施形態では、mRNAは、細胞内でリボソーム結合、翻訳の開始及びmRNAの安定性を決定する5’末端上のキャップと3’ポリ(A)テールの両方を有する。環状DNA鋳型、例えばプラスミドDNA上では、RNAポリメラーゼは、真核細胞での発現には適さない長い鎖状体産物を産生する。3’UTRの末端での線形プラスミドDNAの転写は、転写後にポリアデニル化された場合でも、真核生物のトランスフェクションに効果のない通常サイズのmRNAをもたらす。
【0514】
線形DNA鋳型上で、ファージT7 RNAポリメラーゼは、転写産物の3’末端を鋳型の最後の塩基を超えて伸長させることができる(Schenborn及びMierendorf,Nuc Acids Res.,13:6223-36(1985);Nacheva及びBerzal-Herranz,Eur.J.Biochem.,270:1485-65(2003)
【0515】
polyA/TストレッチをDNA鋳型に組み込む従来の方法は、分子クローニングである。しかしながら、プラスミドDNAに組み込まれたpolyA/T配列により、プラスミドの不安定性が生じるおそれがあり、これは、細菌細胞から得られたプラスミドDNA鋳型に、欠失やその他の異常が高度に混入する場合が多くなる理由となる。これにより、クローニング手順は面倒で時間がかかるだけでなく、多くの場合、信頼性が低くなる。これが、ポリA/T 3’ストレッチを有するDNA鋳型の構築をクローニングなしで可能にする方法が非常に望ましい理由である。
【0516】
転写DNA鋳型のポリA/Tセグメントは、PCR中に100Tテール(サイズは50~5000個のTであり得る)等のポリTテールを含むリバースプライマーを用いることにより、又はPCR後に、DNAライゲーション又はインビトロ組換えを含むが、これらに限定されない任意の他の方法により、産生することができる。ポリ(A)テールはまた、RNAに安定性をもたらし、その分解を低減する。一般に、ポリ(A)テールの長さは、転写されたRNAの安定性と正に相関する。一実施形態では、ポリ(A)テールは、100~5000個のアデノシンである。
【0517】
RNAのポリ(A)テールは、大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)等のポリ(A)ポリメラーゼを用いて、インビトロ転写後に更に伸長することができる。一実施形態では、ポリ(A)テールの長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドに増大させることにより、RNAの翻訳効率が約2倍増大する。更に、異なる化学基を3’末端に付着させることにより、mRNAの安定性を向上させることができる。そのような付着は、改変された/人工のヌクレオチド、アプタマー及び他の化合物を含むことができる。例えば、ポリ(A)ポリメラーゼを用いて、ATPアナログをポリ(A)テールに組み込むことができる。ATPアナログは、RNAの安定性を更に高めることができる。
【0518】
RNAの5’キャップは、RNA分子の安定性ももたらす。好ましい実施形態では、本明細書に開示される方法によって産生されるRNAは、5’キャップを含む。5’キャップは、当技術分野において公知であり、かつ本明細書に記載の技術を用いて提供される(Cougot他、Trends in Biochem.Sci.,29:436-444(2001);Stepinski他、RNA,7:1468-95(2001);Elango他、Biochim.Biophys.Res.Commun.,330:958-966(2005)).
【0519】
本明細書に開示される方法によって産生されるRNAは、配列内リボソーム進入部位(IRES)配列を含むこともできる。IRES配列は、mRNAへのキャップ非依存性リボソーム結合を開始し、翻訳の開始を促進する、ウイルス、染色体又は人工的に設計された配列であってよい。糖、ペプチド、脂質、タンパク質、抗酸化剤、及び界面活性剤等の、細胞の透過性と生存率を高める因子を含むことができる、細胞のエレクトロポレーションに適した溶質を含めることができる。
【0520】
RNAは、いくつかの異なる方法、例えば、エレクトロポレーション(Amaxa Nucleofector-II(Amaxa Biosystems、ケルン、ドイツ))、(ECM 830(BTX)(Harvard Instruments、マサチューセッツ州ボストン)又はGene Pulser II(BioRad、コロラド州デンバー)、Multiporator(Eppendort、ハンブルク、ドイツ)、リポフェクションを用いたカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、ポリマーカプセル化、ペプチド媒介トランスフェクション、又は「遺伝子銃」等の微粒子銃粒子送達システム(例えば、Nishikawa他、Hum Gene Ther.、12(8):861-70(2001)を参照)を含むが、これらに限定されない市販の方法のいずれかを用いて標的細胞に導入することができる。
【0521】
一実施形態では、CAR配列は、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターを用いて細胞に送達される。CARを発現するレトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターは、キャリアとして形質導入細胞を用いるか、封入ベクター、結合ベクター若しくはネイキッドベクターの無細胞局所又は全身送達を用いて、異なる種類の真核細胞並びに組織及び生物全体に送達することができる。用いられる方法は、安定した発現が必要とされるか又は十分である任意の目的に用いることができる。
【0522】
別の実施形態では、CAR配列は、インビトロ転写されたmRNAを用いて細胞に送達される。インビトロ転写mRNA CARは、キャリアとして形質導入細胞を用いるか、封入mRNA、結合mRNA若しくはネイキッドmRNAの無細胞局所又は全身送達を用いて、異なる種類の真核細胞並びに組織及び生物全体に送達することができる。用いられる方法は、一時的な発現が必要とされるか又は十分である任意の目的に用いることができる。
【0523】
別の実施形態では、トランスポゾンを介して所望のCARを細胞内で発現させることができる。
【0524】
一実施形態では、本発明の免疫細胞はT細胞である。本発明のT細胞の増殖及び遺伝子改変の前に、T細胞の供給源が対象から取得される。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む多くの供給源から取得することができる。本発明の特定の実施形態では、当技術分野において利用可能な任意の数のT細胞株が用いられてよい。本発明の特定の実施形態では、T細胞は、Ficoll(商標)分離又はSepax分離システム等の、当業者に知られている任意の数の技術を用いて、対象から収集された血液の単位から取得することができる。好ましい一実施形態では、個体の循環血液からの細胞は、アフェレーシスによって得られる。典型的には、アフェレーシス製品は、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含むリンパ球を含む。一実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、その後の処理ステップに適切な緩衝液又は培地に細胞を入れてよい。本発明の一実施形態では、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。代替の実施形態では、洗浄溶液はカルシウムを欠き、また、マグネシウムを欠いてもよいし、又は全てではないにしても多くの二価カチオンを欠いてよい。洗浄後、細胞は、例えば、Ca2+フリー、Mg2+フリーのPBS、PlasmaLyte A、又は緩衝液を含む若しくは含まない他の生理食塩水等の、様々な生体適合性緩衝液に再懸濁されてよい。或いは、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培地に直接再懸濁してもよい。
【0525】
T細胞の供給源、活性化及び増殖
【0526】
一実施形態では、免疫細胞はT細胞であってよい。本発明のT細胞の増殖及び遺伝的改変の前に、T細胞又はT細胞作製の元となる前駆細胞の供給源が対象から取得される。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、胚中心、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓、腫瘍、及び移植された器官/組織を含めて、T細胞が存在する任意の供給源から取得することができる。本発明の特定の実施形態では、T細胞は、Ficoll(商標)分離等の、当業者に知られている任意の数の技術を用いて、対象から収集された血液の単位から取得することができる。一実施形態では、対象の循環血液からの細胞は、アフェレーシスによって得られる。典型的には、アフェレーシス製品は、T細胞、Treg、単球、顆粒球、B細胞、その他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含むリンパ球を含む。一実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、その後の処理ステップに適切な緩衝液又は培地に細胞を入れてよい。本発明の一実施形態では、細胞は、洗浄溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS))で洗浄してよい。当業者であれば容易に理解できるように、洗浄ステップは、半自動化された「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサー、Baxter CytoMate、又はHaemonetics Cell Saver 5)をメーカーの指示に従って使用する等、当業者に公知の方法によって達成してよい。洗浄後、細胞は、例えば、Ca2+フリー、Mg2+フリーのPBS、PlasmaLyte A、又は緩衝液を含む若しくは含まない他の生理食塩水等の、様々な生体適合性緩衝液に再懸濁されてよい。或いは、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培地に直接再懸濁してもよい。
【0527】
別の実施形態では、T細胞は、例えばPERCOLL(商標)勾配による遠心分離により、又は向流遠心溶出法により、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって、末梢血リンパ球から単離される。CD3+、CD25+、CD127neg、HLA-DR+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+及び/又はCD45RO+T細胞等のT細胞の特定の亜集団は、陽性又は陰性選択技術によって更に分離することができる。当業者であれば理解できるように、本発明との関連において複数ラウンドの選択も用いることができる。ある実施形態では、選択手順を実行し、活性化及び増殖プロセスにおいて「非選択」細胞を用いることが望ましい場合がある。「非選択」細胞を更なる選択ラウンドに供することもできる。
【0528】
陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、陰性選択された細胞に固有の表面マーカーに対して作られた抗体の組合せを用いて達成することができる。1つの方法は、陰性選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに対して作られたモノクローナル抗体のカクテルを用いる陰性磁気免疫付着又はフローサイトメトリーによる細胞の選別及び/又は選択である。例えば、陰性選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR及びCD8に対する抗体を含む。ある実施形態では、典型的にはCD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+及びFoxP3+を発現する制御性T細胞を濃縮するか、又は陽性選択することが望ましい場合がある。
【0529】
陽性又は陰性選択による所望の細胞集団の分離では、細胞と表面(例えばビーズ等の粒子)の濃度を変えることができる。ある実施形態では、細胞とビーズの最大の接触を確保するために、ビーズと細胞が一緒に混合される体積を著しく減少させる(すなわち、細胞の濃度を高める)ことが望ましい場合がある。例えば、一実施形態では、1mlあたり20億細胞の濃度が用いられる。一実施形態では、1mlあたり10億細胞の濃度が用いられる。更なる実施形態では、1mlあたり1億個を超える細胞が用いられる。更なる実施形態では、1mlあたり1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万又は5000万個の細胞濃度が用いられる。更に別の実施形態では、1mlあたり7500万、8000万、8500万、9000万、9500万又は1億個の細胞濃度が用いられる。更なる実施形態では、1mlあたり1億2500万又は1億5000万細胞の濃度を用いることができる。高濃度を使用すると、細胞収量、細胞活性化及び細胞増殖が増加する可能性がある。更に、高濃度の細胞の使用により、目的の標的抗原を弱く発現する可能性のある細胞、又は多くの腫瘍細胞が存在する試料(すなわち白血病血液、腫瘍組織等)からの、より効率的な細胞の捕捉が可能となる。そのような細胞集団には治療的価値がある場合があり、入手することが望ましいであろう。
【0530】
関連する実施形態では、より低い濃度の細胞を用いることが望ましい場合がある。T細胞と表面(例えばビーズ等の粒子)の混合物を大幅に希釈することにより、粒子と細胞との間の相互作用が最小限に抑えられる。これにより、粒子に結合する所望の抗原を大量に発現する細胞が選択される。例えば、CD4+T細胞は、CD28をより高いレベルで発現し、希釈濃度のCD8+T細胞よりも効率的に捕捉される。一実施形態では、使用される細胞の濃度は1mlあたり5×106個である。他の実施形態では、使用される濃度は、1mlあたり約1×105個~1mlあたり1×106個、及びその間の任意の整数値であってよい。
【0531】
他の実施形態では、細胞は、2~10℃又は室温のいずれかで、様々な速度で様々な長さの時間、ローテータ上でインキュベートされてよい。
【0532】
刺激のためのT細胞は、洗浄ステップ後に凍結することもできる。理論に拘束されるものではないが、凍結及びその後の解凍ステップにより、細胞集団内の顆粒球とある程度の単球を除去することによって、より均一な産物が提供される。血漿及び血小板を除去する洗浄ステップの後、細胞を凍結溶液に懸濁してよい。多くの凍結溶液及びパラメーターが当技術分野において公知であり、この文脈において有用であるが、1つの方法は、20%DMSO及び8%ヒト血清アルブミンを含むPBS、又は10%デキストラン40及び5%デキストロースを含む培地、20%ヒト血清アルブミン及び7.5%DMSO、又は31.25%Plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40及び5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン、及び7.5%DMSO、又は例えばHespanおよびPlasmaLyte Aを含むその他の適切な細胞凍結培地を用いることを伴い、その後、細胞は毎分1℃の速さで-80℃まで凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相に貯蔵される。-20℃又は液体窒素での制御されていない早急な凍結と同様に、制御された凍結の他の方法を用いてよい。
【0533】
ある実施形態では、本明細書に記載されるように凍結保存細胞を解凍及び洗浄し、室温で1時間静置してから、本発明の方法を用いて活性化する。
【0534】
また、本発明との関連において、本明細書に記載の増殖細胞が必要になる前の時点での、対象からの血液試料又はアフェレーシス生成物の収集も企図される。したがって、増殖される細胞の供給源は、必要な任意の時点で収集することができ、T細胞等の所望の細胞は、恩恵を受ける多くの疾患又は状態のT細胞療法(本明細書に記載のもの等)における後の使用のために、単離及び凍結することができる。ある実施形態では、血液試料又はアフェレーシスは、疾患を発症するリスクがあるが疾患をまだ発症していない対象から採取され、目的の細胞が単離され、後の使用のために凍結される。ある実施形態では、T細胞を増殖させ、凍結し、後で使用してよい。ある実施形態では、試料は、本明細書に記載の特定の疾患の診断の直後、しかし治療の前に、対象から収集される。更なる実施形態では、細胞は、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法、放射線、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸及びFK506等の免疫抑制剤、抗体、又はキャンパス(CAMPATH)、抗CD3抗体、サイトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228などの他の免疫除去剤等の薬剤、並びに照射)による治療を含むがこれらに限定されない、関連する任意の数の治療モダリティの前に、対象からの血液試料又はアフェレーシスから単離される。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリン(シクロスポリン及びFK506)を阻害するか、増殖因子誘導シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼ(ラパマイシン)を阻害する(Liu他、Cell 66:807-815,1991;Henderson他、Immun 73:316-321,1991;Bierer他、Curr.Opin.Immun 5:763-773,1993)。更なる実施形態では、細胞は患者から単離され、骨髄又は幹細胞移植、化学療法薬剤(フルダラビン、外照射療法(XRT)、シクロスファミド等)、又は抗体(OKT3若しくはキャンパス等)のいずれかを用いたT細胞除去療法と併せて(例えば前、同時又は後に)後の使用のために凍結される。別の実施形態では、細胞は、CD20と反応する薬剤(例えばリツキサン)等のB細胞除去療法に先立って単離され、また、B細胞除去療法に続く治療のために後で使用するために凍結することができる。
【0535】
本発明の更なる実施形態では、T細胞は治療直後の患者から取得される。これに関して、特定の免疫抑制治療、特に免疫系を損傷する薬物による治療の後、患者が通常治療から回復する期間の治療直後に、得られるT細胞の質が最適であるか、又はエクスビボで増殖する能力が改善し得ることが観察されている。同様に、本明細書に記載の方法を使用したエクスビボ操作後、これらの細胞は、生着の強化及びインビボ増殖に好ましい状態にあり得る。よって、この回復期の間に免疫細胞を収集することは、本発明との関連において企図される。更に、ある実施形態では、動員(例えばGM-CSFによる動員)及び条件付けレジメンを用いて、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生及び/又は増殖が、特に治療後の定められた時間帯に好まれる、対象の状態を作り出すことができる。
【0536】
望ましいCARを発現するためのT細胞の遺伝子修飾の前か後かにかかわらず、T細胞は、一般に、例えば米国特許第6,352,694号、同第6,534,055号、同第6,905,680号、同第6,692,964号、同第5,858,358号、同第6,887,466号、同第6,905,681号、同第7,144,575号、同第7,067,318号、同第7,172,869号、同第7,232,566号、同第7,175,843号、同第5,883,223号、同第6,905,874号、同第6,797,514号、同第6,867,041号及び米国特許出願公開第20060121005号に記載されている方法を用いて、活性化及び増殖させることができる。
【0537】
一般に、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤と、T細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドとが付着した表面との接触によって増殖する。特に、T細胞集団は、抗CD3抗体、又はその抗原結合断片、又は表面に固定化された抗CD2抗体との接触により、又はカルシウムイオノフォアと組み合せたプロテインキナーゼC活性化因子(例えばブリオスタチン)との接触等により、本明細書に記載のように刺激されてよい。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが用いられる。例えば、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、T細胞の集団を抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触させることができる。CD4+T細胞の増殖を刺激するために、抗CD3抗体と抗CD28抗体。抗CD28抗体の例には、9.3、B-T3が含まれ、当技術分野において一般に知られている他の方法のように、XR-CD28 (Diaclone,ブザンソン、フランス)を用いることができる(Berg他、Transplant Proc.30(8):3975-3977,1998;Haanen他、J.Exp.Med.190(9):13191328,1999;Garland他、J.Immunol Meth.227(1-2):53-63,1999)
【0538】
ある実施形態では、T細胞の一次刺激シグナル及び共刺激シグナルは、異なるプロトコルによって提供されてよい。例えば、各シグナルを提供する薬剤は、溶液中に存在してもよいし、表面にカップリングしていてもよい。表面にカップリングする場合、薬剤は同じ表面にカップリングするか(すなわち「シス」構造)、又は別々の表面にカップリングしてもよい(すなわち「トランス」構造)。或いは、一方の薬剤は表面にカップリングし、他方の薬剤は溶液中に存在してもよい。一実施形態では、共刺激シグナルを提供する薬剤は細胞表面に結合し、一次活性化シグナルを提供する薬剤は溶液中にあるか、又は表面にカップリングしている。ある実施形態では、両方の薬剤が溶液中に存在することができる。別の実施形態では、薬剤は可溶型であってもよく、その後、Fc受容体を発現する細胞又は抗体又は薬剤に結合する他の結合剤等の表面に架橋されてよい。これに関して、例えば、本発明におけるT細胞の活性化及び増殖に用いることが企図された人工抗原提示細胞(aAPC)に関する米国特許出願公開第20040101519号及び同第20060034810号を参照されたい。
【0539】
一実施形態では、2つの薬剤は、同じビーズ(すなわち「シス」)又は別々のビーズ(すなわち「トランス」)のいずれかで、ビーズ上に固定されている。例として、一次活性化シグナルを提供する薬剤は、抗CD3抗体又はその抗原結合断片であり、共刺激シグナルを提供する薬剤は、抗CD28抗体又はその抗原結合断片であり、両方の薬剤は、同等の分子量で同じビーズに共固定化される。一実施形態では、CD4+T細胞の増殖及びT細胞増殖のために、ビーズに結合した各抗体の1:1比が用いられる。本発明のある態様では、1:1の比率を用いて観察される増殖と比較してT細胞増殖の増加が観察されるように、ビーズに結合した抗CD3:CD28抗体の比率が用いられる。特定の一実施形態では、1:1の比を用いて観察される増殖と比較して、約1~約3倍の増加が観察される。一実施形態では、ビーズに結合したCD3:CD28抗体の比率は、100:1~1:100及びその間の全ての整数値の範囲である。本発明の一態様では、抗CD3抗体よりも多くの抗CD28抗体が粒子に結合し、すなわち、CD3:CD28の比率は1未満である。本発明のある実施形態では、ビーズに結合した抗CD28抗体対抗CD3抗体の比率は2:1よりも大きい。特定の一実施形態では、ビーズに結合した抗体の1:100のCD3:CD28比が用いられる。別の実施形態では、ビーズに結合した抗体の1:75のCD3:CD28比が用いられる。更なる実施形態では、ビーズに結合した抗体の1:50のCD3:CD28比が用いられる。別の実施形態では、ビーズに結合した抗体の1:30のCD3:CD28比が用いられる。好ましい一実施形態では、ビーズに結合した抗体の1:10のCD3:CD28比が用いられる。別の実施形態では、ビーズに結合した抗体の1:3のCD3:CD28比が用いられる。更に別の実施形態では、ビーズに結合した抗体の3:1のCD3:CD28比が用いられる。
【0540】
1:500~500:1の粒子対細胞の比、及びその間の任意の整数値を用いて、T細胞又は他の標的細胞を刺激してよい。当業者であれば容易に理解できるように、細胞に対する粒子の比率は、標的細胞に対する粒子サイズに依存してよい。例えば、小さなサイズのビーズは少数の細胞しか結合することできなかったが、より大きなサイズのビーズは多くの細胞を結合することができた。ある実施形態では、細胞対粒子の比率は1:100~100:1及びその間の任意の整数値の範囲であり、更なる実施形態では、比率は1:9~9:1を含み、その間の任意の整数値も、T細胞を刺激するのに用いることができる。T細胞刺激をもたらす抗CD3及び抗CD28カップリング粒子対T細胞の比率は、上記のように変化することができる。例えば、そのような値は、T細胞あたり1:100、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1及び1:1の粒子を含んでよい。一実施形態では、1:1以下の粒子対細胞の比率が用いられる。特定の一実施形態では、粒子:細胞の比率は1:5であってよい。更なる実施形態では、粒子対細胞の比率は、刺激の日に応じて変更することができる。例えば、一実施形態では、粒子対細胞の比率は、初日は1:1~10:1であり、その後、追加の粒子が最大10日間、毎日又は隔日で細胞に追加され、最終比率は1:1~1:10(追加日の細胞数に基づく)である。特定の一実施形態では、粒子対細胞の比率は、刺激の最初の日に1:1であり、刺激の3日目及び5日目に1:5に調整される。別の実施形態では、粒子は、毎日又は隔日で追加され、刺激の最初の日に1:1の最終比率まで、及び刺激の3日目及び5日目に1:5の最終比率まで追加される。別の実施形態では、粒子対細胞の比率は、刺激の最初の日に2:1であり、刺激の3日目及び5日目に1:10に調整される。別の実施形態では、粒子は、毎日又は隔日で、刺激の最初の日に1:1の最終比率まで、及び刺激の3日目及び5日目に1:10の最終比率まで追加される。当業者には当然のことながら、様々な他の比率が本発明での使用に適し得る。特に、比率は、粒子サイズと細胞のサイズ及び種類に応じて変化する。
【0541】
本発明の更なる実施形態では、T細胞(例えばTreg細胞)等の細胞を薬剤コートビーズと組み合せ、ビーズと細胞をその後分離してから、細胞を培養する。代替の実施形態では、培養の前に、薬剤コーティングビーズと細胞は分離されず、一緒に培養される。更なる実施形態では、ビーズと細胞は、磁力等の力の適用によって最初に濃縮され、それによって細胞表面マーカーのライゲーションが増大することにより、細胞刺激が誘発される。
【0542】
例として、抗CD3及び抗CD28が付着した常磁性ビーズ(3×28ビーズ)をT細胞に接触させることにより、細胞表面タンパク質を連結してよい。一実施形態では、細胞(例えば104~109個のT細胞)とビーズ(例えば1:1の比率のDYNABEAD(登録商標)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ)が、緩衝液、好ましくはPBS(カルシウムやマグネシウム等の二価カチオンなし)中で組み合わされる。繰り返しになるが、当業者であれば容易に理解できるように、任意の細胞濃度を用いてよい。
【0543】
例えば、試料において標的細胞が非常に稀であり、試料の0.01%のみを構成する場合もあり、又は、試料全体(すなわち100%)が目的の標的細胞を含む場合もある。したがって、任意の細胞数は本発明の文脈内にある。ある実施形態では、細胞と粒子の最大の接触を確実にするために、粒子と細胞が一緒に混合される体積を著しく減少させる(すなわち、細胞の濃度を高める)ことが望ましい場合がある。例えば、一実施形態では、1mlあたり約20億細胞の濃度が用いられる。別の実施形態では、1mlあたり1億個を超える細胞が用いられる。更なる実施形態では、1mlあたり1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万又は5000万個の細胞濃度が用いられる。更に別の実施形態では、1mlあたり7500万、8000万、8500万、9000万、9500万又は1億個の細胞濃度が用いられる。更なる実施形態では、1mlあたり1億2500万又は1億5000万個の細胞の濃度を用いることができる。高濃度を使用すると、細胞収量、細胞活性化及び細胞増殖を増加させることができる。更に、高濃度の細胞の使用により、目的の標的抗原を弱く発現する可能性のある細胞のより効率的な捕捉が可能となる。そのような細胞集団には治療的価値がある場合があり、特定の実施形態では入手することが望ましいであろう。
【0544】
本発明の一実施形態では、混合物は、数時間(約3時間)から約14日間、又はその間の任意の時間ごとの整数値で培養されてよい。別の実施形態では、混合物は21日間培養されてよい。本発明の一実施形態では、ビーズとT細胞は、約8日間一緒に培養される。別の実施形態では、ビーズとT細胞は、2~3日間一緒に培養される。T細胞の培養時間が60日以上になるように、数サイクルの刺激が望ましい場合もある。T細胞培養に適した条件には、血清(例えばウシ胎児又はヒトの血清)を含む、増殖及び生存に必要な因子を含み得る適切な培地(例えば最小必須培地又はRPMI培地1640又はX-vivo 15(Lonza))、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ及びTNF-α、又は当業者に知られている細胞の増殖のための任意の他の添加物が含まれる。細胞の増殖のための他の添加物には、界面活性剤、プラスマネート、及びN-アセチルシステインや2-メルカプトエタノール等の還元剤が含まれるが、これらに限定されない。培地には、RPMI 1640、Immunocult(StemCell)、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15及びX-Vivo 20、オプティマイザーが含まれ、追加のアミノ酸、ピルビン酸ナトリウム及びビタミンを有し、無血清であるか又は適切な量の血清(若しくは血漿)若しくは定義されたホルモンのセット、及び/又はT細胞の成長と増殖に十分な量のサイトカイン(複数可)を補充することができる。抗生物質、例えば、ペニシリンやストレプトマイシンは、実験培養液にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養液には含まれない。標的細胞は、増殖を支持するのに必要な条件下、例えば適切な温度(例えば37℃)及び大気(例えば空気と5%CO2)で維持される。
【0545】
様々な刺激時間に曝されたT細胞は、異なる特性を示す場合がある。例えば、典型的な血液又はアフェレーシス末梢血単核細胞生成物には、細胞傷害性又はサプレッサーT細胞集団(TC、CD8+)よりも大きいヘルパーT細胞集団(TH、CD4+)を有する。CD3受容体及びCD28受容体を刺激することによるT細胞のエクスビボでの増殖により、約8~9日目より前は主にTH細胞から成るT細胞の集団が産生され、約8~9日目より後は、T細胞の集団はますますより大きなTC細胞の集団を含む。
【0546】
更に、CD4マーカー及びCD8マーカーに加えて、他の表現型マーカーは大きく変化するが、大部分は細胞増殖プロセスの過程で再現可能である。よって、そのような再現性は、活性化T細胞産物を特定の目的用に仕立てる能力を可能にする。
【0547】
一実施形態では、FACSAria II(BD Biosciences)を用いて生きているCD4+CD127loCD25hiTregを選別する前に、RosetteSep(Stemcell)を介してHLA-A2-ドナーからCD4+T細胞を単離し、CD25+細胞(Miltenyi)を濃縮することにより、制御性T細胞を得てよい。選別されたTregは、1000U/mlのIL-2中のL細胞とαCD3mAb(OKT3;200ng/mL)で刺激してよい。
【0548】
本発明の一実施形態では、例えば参照により本明細書に組み込まれるWO2007110785に記載されているように制御性T細胞を得るために、T細胞をラパマイシン存在下で培養してよい。制御性T細胞を生成する別の方法は、参照により本明細書に組み込まれるUS2016024470に記載されており、T細胞は、例えばTCR/CD3抗体等のT細胞受容体(TCR)/CD3活性化因子、TCR共刺激活性化因子(例えばCD28、CD137(4-1 BB)、GITR、B7-1/2、CD5、ICOS、OX40、CD40又はCD137抗体など)及びラパマイシンとともに培養される。
【0549】
本発明の一実施形態では、CARの発現により遺伝的に改変されたT細胞は、ROR-C、Foxo1、T-bet又はGata 3、c-Maf、AhR等の少なくとも1つの細胞内因子の発現によって遺伝的に改変されていてもよい。一実施形態では、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、Foxo1を発現する。
【0550】
一実施形態では、本発明の遺伝子改変細胞は、例えば、同種異系のT細胞又はTreg細胞等の同種異系免疫細胞であってよい。例えば、同種異系免疫細胞は、機能的ヒト白血球抗原(HLA)、例えばHLAクラスI及び/若しくはHLAクラスIIの発現を欠くか、又は機能的T細胞受容体(TCR)の発現を欠く免疫細胞であってよい。
【0551】
一実施形態では、機能性TCRを欠くT細胞を、その表面上に機能性TCRを発現しないように遺伝子操作するか、機能性TCRを含む1つ以上のサブユニットを発現しないように遺伝子操作するか、又は、その表面上にはほとんど機能的なTCRを産生しないように遺伝子操作することができる。或いは、T細胞は、例えばTCRの1つ以上のサブユニットの変異型又は切断型の発現により、実質的に障害性のTCRを発現することができる。「実質的に障害性のTCR」という用語は、このTCRが宿主において有害な免疫反応を誘発しないことを意味する。
【0552】
別の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変細胞を、その表面に機能的HLAを発現しないように遺伝子操作することができる。例えば、本明細書に記載の免疫細胞を、細胞表面発現HLA、例えばHLAクラス1及び/又はHLAクラスII、又は非古典的HLA分子が下方制御されるように遺伝子操作することができる。
【0553】
別の実施形態では、T細胞は、機能的TCR並びにHLAクラスI及び/又はHLAクラスII等の機能的HLAを欠いてよい。
【0554】
機能的TCRの発現及び/HLAの発現を欠く改変免疫細胞(例えば改変T細胞又は改変Treg細胞等)は、TCR及び/若しくはHLAの1つ以上のサブユニットのノックアウト又はノックダウンを含む任意の適切な手段によって取得することができる。例えば、免疫細胞は、siRNA、shRNA、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ(mn、ホーミングエンドヌクレアーゼとしても知られている)又はmegaTAL(TALエフェクターとmn切断ドメインを組み合わせたもの)のノックダウンを含むことができる(Osborn他,“Evaluation of TCR Gene Editing Achieved by TALENs,CRISPR/Cas9,and megaTAL Nucleases” Mol Ther.2016 3月;24(3):570-81))。
【0555】
一実施形態では、TCR発現及び/又はHLA発現は、T細胞のTCR及び/若しくはHLAをコードする核酸を標的とするsiRNA又はshRNAを用いて阻害することができる。T細胞でのsiRNAとshRNAの発現は、例えば、レンチウイルス発現系等の従来の発現系を用いて実現することができる。HLAクラスI及び/又はHLAクラスII遺伝子の発現を下方制御する例示的なsiRNA並びにshRNAは、例えばUS2007/0036773に記載されている。TCRの成分の発現を下方制御する例示的なshRNAは、例えばUS2012/0321667に記載されている。
【0556】
本明細書で用いられる場合、「CRISPR」又は「CRISPRからTCR及び/又はHLA」又は「TCR及び/又はHLAを阻害するためのCRISPR」とは、クラスター化された規則的な間隔の短いパリンドローム反復のセット、又はそのような一連の反復を含むシステムを指す。本明細書で用いられる場合、「Cas」は、CRISPR関連タンパク質を指す。「CRISPR/Cas」系とは、TCR及び/若しくはHLA遺伝子をサイレンシング又は変異させるために用いることのできるCRISPR及びCasに由来する系を指す。
【0557】
天然に存在するCRISPR/Cas系は、配列決定された真正細菌ゲノムの約40%と配列決定された古細菌の90%に見られる。Grissa他(2007)BMC Bioinformatics 8:172。この系は、原核生物の免疫系の一種であり、プラスミドやファージ等の外来遺伝子エレメントに対する耐性を付与し、後天性免疫の一形態を提供する。Barrangou他(2007)Science 315:1709-1712;Marragini他(2008)Science 322:1843-1845。CRISPR/Cas系は、マウスや霊長類等の真核生物における遺伝子編集(特定の遺伝子のサイレンシング、強化又は変更)に用いられるように改変されている。Wiedenheft他(2012)Nature 482:331-8。これは、特別に設計されたCRISPRと1つ以上の適切なCasを含むプラスミドを真核細胞に導入することで実現される。CRISPR遺伝子座と呼ばれることもあるCRISPR配列には、反復とスペーサーが交互に含まれる。天然に存在するCRISPRでは、スペーサーは通常、プラスミドやファージ配列等、細菌にとって外来の配列を含む。TCR及び/又はHLA CRISPR/Cas系では、スペーサーは、TCR又はHLA遺伝子配列に由来する。CRISPR遺伝子座からのRNAは構成的に発現され、Casタンパク質によってプロセシングされて小さなRNAとなる。これらは、反復配列に隣接するスペーサーを含む。RNAは、他のCasタンパク質を導いて、RNA又はDNAレベルで外来遺伝要素を沈黙させる。Horvath他(2010)Science 327:167-170;Makarova他(2006)Biology Direct 1:7。よって、スペーサーは、siRNAと同様にRNA分子の鋳型として機能する。Pennisi(2013)Science 341:833-836。よって、CRISPR/Cas系は、TCR及び/又はHLA遺伝子の編集(塩基対の追加又は除去)に用いることができるか、又はTCR及び/若しくはHLAの発現を低下させる早期停止の導入に用いることができる。CRISPR/Cas系は、或いは、RNA干渉のように用いることもでき、HLA遺伝子を可逆的にオフにする。哺乳類細胞では、例えば、RNAがCasタンパク質をTCR及び/又はHLAプロモーターに導き、RNAポリメラーゼを立体的にブロックすることができる。
【0558】
当技術分野で公知の技術、例えばUS20140068797及びCong(2013年)Science 339:819-823に記載されているもの等を用いて、TCR及び/又はHLAを阻害する人工CRISPR/Cas系を生成することができる。TCR及び/又はHLAを阻害する、当技術分野で公知の他の人工CRISPR/Cas系、例えばTsai(2014)Nature Biotechnol.,32:6 569-576,米国特許第8,871,445号;同第8,865,406号;同第8,795,965号;同第8,771,945号;及び同第8,697,359号に記載されているものを生成してもよい。
【0559】
「TALEN」又は「TCR及び/又はHLAに対するTALEN」又は「TCR及び/又はHLAを阻害するためのTALEN」は、TCR及び/又はHLAの編集に用いることのできる人工ヌクレアーゼである、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼを指す。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって人工的に産生される。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、TCR及び/又はHLA遺伝子の一部を含む、任意の所望のDNA配列に結合するように遺伝子操作することができる。遺伝子操作されたTALEをDNA切断ドメインと組み合せることにより、TCR及び/又はHLA配列を含む、任意の所望のDNA配列に特異的な制限酵素を産生することができる。次に、これらを細胞に導入し、ゲノム編集に使用することができる。Boch(2011)Nature Biotech.29:135-6;及びBoch他(2009)Science 326:1509-12;Moscou他(2009)Science 326:3501。
【0560】
TALEは、キサントモナス菌によって分泌されるタンパク質である。DNA結合ドメインには、12番目と13番目のアミノ酸を除き、高度に保存された33~34個のアミノ酸配列が繰り返し含まれている。これらの2つの位置は非常に可変性が高く、特定のヌクレオチド認識と強い相関関係を示す。よって、それらは、所望のDNA配列に結合するように遺伝子操作することができる。TALENを産生するには、TALEタンパク質を、野生型又は変異型Foklエンドヌクレアーゼであるヌクレアーゼ(N)に融合する。TALENにおける使用のために、Foklにはいくつかの変異が加えられた。これらは、例えば、切断の特異性又は活性を改善する。Cermak他(2011)Nucl.Acids Res.39:e82;Miller他(2011)Nature Biotech.29:143-8;Hockemeyer他(2011)Nature Biotech.29:731-734;Wood他(2011)Science 333:307;Doyon他(2010)Nature Methods 8:74-79;Szczepek他(2007)Nature Biotech.25:786-793;及びGuo他(2010)/.Mol.Biol.200:96。Foklドメインは二量体として機能し、適切な配向と間隔を有する標的ゲノムの部位に固有のDNA結合ドメインを有する2つのコンストラクトを必要とする。TALE DNA結合ドメインとFokl切断ドメインとの間のアミノ酸残基の数と、2つの個々のTALEN結合部位間の塩基の数は、両方とも高レベルの活性を達成するための重要なパラメーターであるようである。Miller他(2011)Nature Biotech.29:143-8。TCR及び/又はHLA TALENを細胞内で使用して、二本鎖切断(DSB)を産生することができる。修復機構が非相同末端結合を介して破損を不適切に修復した場合、破損部位に変異を導入することができる。例えば、不適切な修復は、フレームシフトの突然変異を引き起こす場合がある。或いは、外来DNAをTALENとともに細胞に導入することができる。外来DNAの配列及び染色体配列に応じて、このプロセスを用いて、TCR及び/又はHLA遺伝子の欠陥を修正するか、そのような欠陥をwt TCR及び/又はHLA遺伝子に導入して、TCR及び/又はHLAの発現を減少させることができる。TCR及び/又はHLAの配列に特異的なTALENは、モジュールコンポーネントを用いる様々なスキームを含む、当技術分野で公知の任意の方法を用いて構築することができる。Zhang他(2011)Nature Biotech.29:149-53;Geibler他(2011)PLoS ONE 6:el9509。
【0561】
「ZFN」又は「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」又は「TCR及び/又はHLAに対するZFN」又は「TCR及び/又はHLAを阻害するためのZFN」は、TCR及び/又はHLA遺伝子の編集に用いることのできる人工ヌクレアーゼである、ジンクフィンガーヌクレアーゼを指す。TALENと同様に、ZFNは、DNA結合ドメインに融合したFok1ヌクレアーゼドメイン(又はその誘導体)を含む。ZFNの場合、DNA結合ドメインは1つ以上のジンクフィンガーを含む。Carroll他(2011)Genetics Society of America 188:773-782;及びKim他(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1156-1160。ジンクフィンガーは、1つ以上の亜鉛イオンによって安定化された小さなタンパク質構造モチーフである。ジンクフィンガーは、例えばCys2His2を含むことができ、約3bpの配列を認識することができる。公知の特異性を有する様々なジンクフィンガーを組み合せて、約6、9、12、15又は18bpの配列を認識するマルチフィンガーポリペプチドを産生することができる。ファージディスプレイ、イーストワンハイブリッド系、バクテリアワンハイブリッド系及びツーハイブリッド系及び哺乳類細胞を含む、特定の配列を認識するジンクフィンガー(及びその組合せ)を生成するために、様々な選択及びモジュールアセンブリ技術が利用可能である。
【0562】
TALENのように、ZFNはDNAを切断するために二量化する必要がある。よって、非パリンドロームDNA部位を標的とするためには1組のZFNが必要である。2つの個々のZFNは、適切に間隔を空けたヌクレアーゼを用いて、DNAの反対側の鎖に結合しなければならない。Bitinaite他(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:10570-5。また、TALENのように、ZFNはDNAに二本鎖切断を引き起こす場合があり、不適切に修復された場合、フレームシフト変異を引き起こし、細胞内のTCR及び/又はHLAの発現と量の減少をもたらす。ZFNは、TCR及び/又はHLA遺伝子を変異させるための相同組換えにも用いることができる。TCR及び/又はHLAの配列に特異的なZFNは、当技術分野で公知の任意の方法を用いて構築することができる。例えば、Provasi(2011)Nature Med.18:807-815;Torikai(2013)Blood 122:1341-1349;Cathomen他(2008)Mol.Ther.16:1200-7;Quo他(2010)/.Mol.Biol.400:96;US2011/0158957;及びUS2012/0060230を参照。
【0563】
「メガヌクレアーゼ」又は「TCR及び/又はHLAに対するメガヌクレアーゼ」又は「TCR及び/又はHLAを阻害するためのメガヌクレアーゼ」は、TCR及び/又はHLA遺伝子の編集に用いることのできる、大きな(>14塩基対)認識部位を有する単量体エンドヌクレアーゼを指す。メガヌクレアーゼ(mn)は、細菌のホーミングエンドヌクレアーゼに由来し固有の標的部位用に遺伝子操作された生来のヌクレアーゼ活性を有する単量体タンパク質である。ホーミングエンドヌクレアーゼは、DNA切断酵素であり、宿主ゲノムの個々の遺伝子座で二本鎖切断を生成し、それによって部位特異的な遺伝子変換イベントを駆動することができる。(Stoddard,Structure.2011 1月12;19(1):7-15).ホーミングエンドヌクレアーゼはサイズが小さいにもかかわらず、長いDNA配列(典型的には20~30塩基対)を認識する。ホーミングエンドヌクレアーゼは非常に広く普及しており、微生物やファージやウイルスに見られる。LAGLIDADG及びHis-Cysボックス酵素(これらの酵素の中で最も配列特異的である)は、DNA標的部位の主要な溝にドッキングする逆平行βシートに依存する(Flick他、1998年;Jurica他、1998)。そこで、複数の連続した塩基対に不均一に分布する配列特異的及び非特異的な接触のコレクションを確立する(Chevalier他、2003;Scalley-Kim他、2007)。
【0564】
LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ(LHE)ファミリーは、遺伝子標的化用途に用いられる遺伝子操作された酵素の主な供給源である。LHEファミリーは、主に古細菌内にコードされており、藻類及び真菌の葉緑体ゲノム及びミトコンドリアゲノムにコードされている(Chevalier他、2005;Dalgaard他、1997;Sethuraman他、2009)。タンパク質鎖ごとに単一の保存されたLAGLIDADGモチーフ(配列番号85)を有するメガヌクレアーゼは、パリンドローム及びほぼパリンドロームのDNA標的配列を切断するホモダイマータンパク質を形成するが、タンパク質鎖ごとに2つのそのようなモチーフを含むものは、完全に非対称のDNA配列を標的化することのできるより大きな擬似対称モノマーを形成する。
【0565】
メガヌクレアーゼは、TCR及び/又はHLAを標的とするように遺伝子操作することができ、よって、DNAに二本鎖切断が生じ、これは、不適切に修復された場合にフレームシフト変異を引き起こし、細胞内のTCR及び/又はHLAの発現と量の減少につながる。
【0566】
「MegaTAL」又は「TCR及び/又はHLAに対するmegaTAL」又は「TCR及び/又はHLAを阻害するためのmegaTAL」とは、TCR及び/又はHLA遺伝子の編集に用いることのできる人工ヌクレアーゼを指す。MegaTALは、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼファミリーに由来するメガヌクレアーゼのN末端にミニマルTAL(転写アクチベーター様)エフェクタードメインを融合することによって得られるハイブリッド単量体ヌクレアーゼである(Nucleic Acids Res.2014 2月;42(4):2591-601;Takeuchi他、Methods Mol Biol.2015;1239:105-32.doi:10.1007/978-1-4939-1862-1_6)。
【0567】
よって、MegaTALは、TALエフェクターDNA結合ドメインによってもたらされる追加の親和性と特異性を備えた部位特異的メガヌクレアーゼ切断ヘッドから成る。MegaTALは、TCR及び/又はHLAを標的とするように遺伝子操作することができ、よって、DNAに二本鎖切断が生じ、これは、不適切に修復された場合にフレームシフト変異を引き起こし、細胞内のHLAの発現と量の減少につながる。I-OnuIメガヌクレアーゼ(mn)の変異体を用いて、T細胞受容体アルファ(TCRα)遺伝子をノックアウトするTCRα-megaTALを設計した。TCRαmnを、TCRαmn結合部位の上流のDNA配列に結合するように設計された10.5反復TALEアレイに融合した。TCRαを標的とするmegaTALは、ヒト初代T細胞において検出可能なオフターゲット切断を伴わずに、非常に高い遺伝子破壊を達成することが分かった。(Boissel他、Nucleic Acids Res.2014 2月;42(4):2591-601)。
【0568】
特定の理論に拘束されるものではないが、一部の実施形態では、治療用T細胞は、T細胞の短縮されたテロメアにより、患者において短期間の持続性しかない。したがって、テロメラーゼ遺伝子のトランスフェクションにより、T細胞のテロメアを延長し、患者におけるT細胞の持続性を改善することができる。Carl June、「Adoptive T cell therapy for cancer in the clinic」、Journal of Clinical Investigation、117:1466-1476(2007)を参照されたい。よって、実施形態では、本発明の遺伝子改変免疫細胞は、テロメラーゼサブユニット、例えばテロメラーゼの触媒サブユニット、例えばTERT、例えばhTERTを異所的に発現する。一部の態様では、本開示は、テロメラーゼサブユニット、例えばテロメラーゼの触媒サブユニット、例えばTERT、例えばhTERTをコードする核酸と免疫細胞を接触させることを含む、CAR発現免疫細胞を産生する方法を提供する。細胞は、CARをコードするコンストラクトと接触する前、同時又は後に、核酸と接触させられてよい。
【0569】
VII.治療用途
【0570】
本発明は、特定の免疫応答又は炎症応答の部位に免疫細胞を動員し、その部位で免疫エフェクター細胞の免疫学的活性を抑制するために免疫細胞を活性化する手段として、HLA-A2抗原を標的とするCARを発現するように改変された免疫細胞を提供する。免疫細胞のCAR媒介動員及び活性化により、そのような免疫抑制活性が有益である多くの免疫学的疾患若しくは障害を予防又は治療する方法が提供される。
【0571】
一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。免疫細胞は、細胞療法での使用に適した任意の制御性免疫細胞であってよい(例えばWood,K.J.他、2012;Papp,G.他、2017を参照)。一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、免疫細胞はヒト免疫細胞である。別の実施形態では、制御性免疫細胞はヒト制御性免疫細胞である。一実施形態では、ヒト制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。
【0572】
一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞であってよい。別の実施形態では、制御性T細胞はヒト制御性T細胞であってよい。制御性T細胞の活性化は抗原依存的であるが、これらの細胞の抑制作用は、抗原、TCR及びMHCに非依存的である。したがって、制御性T細胞におけるCARの発現により、これらの細胞とその活性化は適切な標的組織に向けて再指令されるので、それらは抗原特異的に活性化される。しかしながら、それらの抑制効果は、疾患関連抗原の更なる認識を必要とせずに生じる。したがって、免疫エフェクター細胞が位置し、望ましくない効果を媒介している場所のすぐ近くに制御性T細胞が存在する限り、再指令された制御性T細胞を、その位置で抑制効果を提供するように誘発又は活性化することができる。
【0573】
一実施形態では、標的HLA-A2抗原は、免疫エフェクター細胞によって媒介される望ましくない免疫応答若しくは炎症応答の部位又は標的組織に存在するか、又はそこで発現してよい。
【0574】
一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞を、器官若しくは組織の移植片に関連する1つ以上の疾患、障害、症状又は状態(例えば、器官若しくは組織の拒絶反応/機能不全、GVHD、及び/又はそれに関連する状態)の予防又は治療に用いてよい。移植片拒絶反応は、免疫応答を介した、レシピエントの免疫細胞によるドナーの移植組織の破壊を伴う。免疫応答もGVHDに関与している。しかしながら、この場合、レシピエントの組織は、移植片を介してレシピエントに移されたドナーの免疫細胞によって破壊される。したがって、CARを介した免疫細胞の再指令及び活性化により、移植レシピエントにおける免疫エフェクター細胞による不適合の細胞及び/若しくは組織の拒絶反応を抑制するか、又はGVHDの場合に移植免疫担当細胞の病原作用を抑制する方法が提供される。一実施形態では、不適合の細胞及び/又は組織は、HLA-A2不適合の細胞及び/又は組織を含む。
【0575】
よって、本発明の別の実施形態は、対象において器官又は組織の移植片に関連する1つ以上の疾患、障害、症状又は状態(例えば、器官若しくは組織の拒絶反応/機能不全、GVHD、及び/又はそれらに関連する状態)を治療する方法であり、前記方法は、本明細書に記載のCAR遺伝子操作免疫細胞又は組成物を対象に投与することを含む。
【0576】
一実施形態では、本方法は細胞療法である。一実施形態では、細胞療法は自己由来である。一実施形態では、細胞療法は異種間である。一実施形態では、細胞療法は同種異系間である。一実施形態では、本方法は遺伝子治療法である。
【0577】
よって、本発明の別の実施形態は、対象において器官若しくは組織の移植片に関連する1つ以上の疾患、障害、症状又は状態(例えば、器官若しくは組織の拒絶反応/機能不全、GVHD、及び/又はそれらに関連する状態)を治療する際に用いられる、本明細書に記載のCAR遺伝子操作免疫細胞又は組成物である。
【0578】
本発明のCAR改変免疫細胞は、対象における免疫寛容、移植後の免疫寛容及び/又は免疫順応を促進するために用いることができる。本発明のCAR改変免疫細胞は、器官又は組織の移植後の対象において免疫寛容、移植後の免疫寛容及び/又は免疫順応を促進するために用いることができる。一実施形態では、対象における免疫寛容、移植後の免疫寛容及び/又は免疫順応を促進する方法が提供され、本方法は、本明細書のどこかに記載されているCAR改変免疫細胞を対象に投与することを含む。別の実施形態では、対象における免疫寛容、移植後の免疫寛容及び/又は免疫順応を促進する方法が提供され、本方法は、本明細書のどこかに記載されている医薬組成物を対象に投与することを含む。一実施形態では、使用は、対象における移植された器官又は組織に対する免疫寛容、移植後の免疫寛容及び/又は免疫順応を促進するためであってよい。一実施形態では、CAR改変免疫細胞は、器官又は組織の移植と同時に、その前に、又はその後に投与される。一実施形態では、CAR改変免疫細胞は、器官又は組織の移植と同時に投与される。別の実施形態において、CAR改変免疫細胞は、器官又は組織の移植の前に投与される。一実施形態では、CAR改変免疫細胞は、器官又は組織の移植の後に投与される。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はCD4+制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はヒト免疫細胞である。別の実施形態では、制御性免疫細胞はヒト制御性免疫細胞である。一実施形態では、ヒト制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。別の実施形態では、免疫細胞はヒト制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はヒトCD4+制御性T細胞である。
【0579】
本発明のCAR改変免疫細胞は、移植された器官又は組織の拒絶反応を予防又は治療するために用いることができる。一実施形態では、本発明のCAR改変免疫(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)細胞は、移植された器官又は組織の超急性拒絶反応を予防又は治療するために用いてよい。一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)は、移植された器官又は組織の抗体媒介拒絶反応を予防又は治療するために用いてよい。一実施形態では、本方法は、本発明のCAR改変免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)を、移植された器官又は組織に曝露された対象に投与することを含む。一実施形態では、移植された器官又は組織は、対象に意図的に導入された、骨髄移植片、器官移植片、輸血又はその他の外来の組織若しくは細胞を包含してよい。一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)は、移植後の移植片拒絶反応を阻害するための治療法として用いてよい。一実施形態では、移植片拒絶反応は、同種移植片拒絶反応であってよい。一実施形態では、移植片拒絶反応は、異種移植片拒絶反応であってよい。一実施形態では、対象における器官又は組織の移植拒絶反応を予防又は治療する方法が提供され、本方法は、本明細書のどこかに記載されているCAR改変免疫細胞を対象に投与することを含む。一実施形態では、対象における器官又は組織の移植拒絶反応を予防又は治療する方法が提供され、本方法は、本明細書のどこかに記載されている医薬組成物を対象に投与することを含む。よって、本発明の別の実施形態は、対象における器官若しくは組織の移植拒絶反応の防止又は治療に用いるための、本発明のCAR操作免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)、又は前記免疫細胞を含む医薬組成物である。一実施形態では、本発明は、対象における移植片生存期間を延長する方法を提供し、本方法は、本明細書のどこかに記載されているCAR改変免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)を対象に投与することを含む。一実施形態では、本発明は、対象における移植片生存期間を延長する方法を提供し、本方法は、本明細書のどこかに記載されている医薬組成物を対象に投与することを含む。一実施形態では、本方法は、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、20年、30年、40年、50年、60年、70年、80年、90年、100年又は対象の寿命の移植片生存期間を提供する。一実施形態では、対象は免疫抑制剤療法を受けていない。一実施形態では、本発明の免疫細胞又は組成物の投与により、対象が受ける免疫抑制剤療法の量を減らすことができる。一実施形態では、移植片は同種移植片であってよい。一実施形態では、移植片は、レシピエントへの移植片の移植と同時に、その前に、又はその後に、本発明のCAR改変免疫細胞に曝露されてよい。一実施形態では、器官又は組織の移植片は、心臓、心臓弁、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、皮膚、血管、骨髄、幹細胞、骨又は膵島細胞であってよい。しかしながら、本発明は特定の種類の移植に限定されない。一実施形態では、レシピエントに対する移植片の免疫原性を低減することによって、移植片拒絶反応を軽減又予防するために、レシピエントへの移植の前の器官又は組織の移植片を本発明のCAR改変免疫細胞を用いて処理することにより、ドナー移植片を「プレコンディショニング」又は「前処理」することができる。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つ又は2つから選択される1つ又は2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つから選択される1つのHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つ又は2つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの2つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプについて陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つ又は2つから選択される1つ又は2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つから選択される1つのHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つ又は2つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの2つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*29のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*30のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*31のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*33のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*36のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*68のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの1つ又は2つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの1つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの2つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの1つ又は2つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの1つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの2つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*29:02に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*30:01について陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*31:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*33:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*36:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*68:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片はHLA-A2陽性である。
【0580】
一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はCD4+制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はヒト免疫細胞である。別の実施形態では、制御性免疫細胞はヒト制御性免疫細胞である。一実施形態では、ヒト制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。別の実施形態では、免疫細胞はヒト制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はヒトCD4+制御性T細胞である。
【0581】
本発明のCAR改変免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)は、移植片対宿主病(GVHD)を予防又は治療するために用いてよい。一実施形態では、本方法は、本発明のCAR改変免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)を、移植された器官又は組織に曝露された対象に投与することを含む。一実施形態では、移植された器官又は組織は、対象に意図的に導入された、骨髄移植片、器官移植片、輸血又はその他の外来の組織若しくは細胞を包含してよい。例えば、GVHDは、心臓、心臓弁、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、皮膚、血管、骨髄、幹細胞、骨又は膵島細胞の移植後に発生するおそれがある。しかしながら、本発明は特定のタイプの移植に限定されない。一実施形態では、GVHDは、造血幹細胞移植の後に発生し得る。一実施形態では、対象における移植片対宿主病(GVHD)を予防又は治療する方法が提供され、本方法は、本明細書のどこかに記載されているCAR改変免疫細胞を対象に投与することを含む。一実施形態では、対象における移植片対宿主病(GVHD)を予防又は治療する方法が提供され、本方法は、本明細書のどこかに記載されている医薬組成物を対象に投与することを含む。一実施形態では、本発明は、レシピエントへの移植片の移植と同時に、その前に、又はその後に、ドナー移植片、例えば生体適合性格子又はドナー組織、器官若しくは細胞を、本発明のCAR改変免疫細胞に接触させる方法を提供する。一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞を用いて、レシピエントに対するドナー移植片による有害反応を改善、阻害又は低減し、それによりGVHDを予防又は治療してよい。一実施形態では、本発明は、対象におけるGVHDの発症を予防又は遅延させる方法を提供し、本方法は、本明細書のどこかに記載されているCAR改変免疫細胞を対象に投与することを含む。一実施形態では、本発明は、対象におけるGVHDの発症を予防又は遅延させる方法を提供し、本方法は、本明細書のどこかに記載されている医薬組成物を対象に投与することを含む。一実施形態では、GVHDの発症は、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、20年、30年、40年、50年、60年、70年、80年、90年、100年又は対象の寿命にわたって遅延させられる。一実施形態では、対象は免疫抑制剤療法を受けていない。一実施形態では、対象は免疫抑制療法を受けている。一実施形態では、本発明の免疫細胞は、前記免疫抑制療法の治療有効量を低減する目的で対象に投与される。一実施形態では、GVHDは、急性GVHD又は慢性GVHDであってよい。一実施形態では、レシピエントに対する移植片の免疫原性を低減することによって、GVHD軽減又予防するために、レシピエントへの移植の前の移植片を本発明のCAR改変免疫細胞(例えば遺伝子CAR操作Treg細胞)を用いて処理することにより、ドナー移植片を「プレコンディショニング」又は「前処理」してよい。一実施形態では、移植片に関連し得るT細胞を活性化するために、移植の前に、移植片をレシピエントからの細胞又は組織と接触させてよい。レシピエントからの細胞又は組織による移植片の処置の後、細胞又は組織は移植片から除去されてよい。次いで、処置された移植片を本発明のCAR改変免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)と更に接触させて、レシピエントからの細胞又は組織の処置によって活性化された免疫エフェクター細胞の活性を低下、阻害又は排除してよい。この本発明のCAR改変免疫細胞による移植片の処置に続いて、レシピエントへの移植の前に、CAR改変免疫細胞を移植片から除去してよい。しかしながら、一部のCAR改変免疫細胞は、移植片に接着する可能性があるので、移植片と共にレシピエントに導入されてよい。この状況では、レシピエントに導入されたCAR改変免疫細胞が、移植片に関連する細胞によって引き起こされるレシピエントに対する免疫応答を抑制する可能性がある。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つ又は2つから選択される1つ又は2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つから選択される1つのHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つ又は2つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの1つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30、HLA-A*31、HLA-A*33、HLA-A*36、HLA-A*68のうちの2つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つ又は2つから選択される1つ又は2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つから選択される1つのHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの1つ又は2つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30の1つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25、HLA-A*29、HLA-A*30のうちの2つから選択される2つの異なるHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*29のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*30のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*31のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*33のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*36のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*68のHLA-Aサブタイプに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの1つ又は2つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの1つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03:01、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02、HLA-A*30:01、HLA-A*31:01、HLA-A*33:01、HLA-A*36:01及びHLA-A*68:01のうちの2つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの1つ又は2つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの1つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25:01、HLA-A*29:02及びHLA-A*30:01のうちの2つに対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*25:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*29:02に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*30:01について陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*03:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*31:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*33:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*36:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片宿主又はレシピエントは、HLA-A2陰性であり、HLA-A*68:01に対して陽性である。一実施形態では、移植片はHLA-A2陽性である。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はCD4+制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はヒト免疫細胞である。別の実施形態では、制御性免疫細胞はヒト制御性免疫細胞である。一実施形態では、ヒト制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。別の実施形態では、免疫細胞
はヒト制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はヒトCD4+制御性T細胞である。
【0582】
一実施形態では、本発明は、免疫細胞集団を増殖させる方法を提供し、免疫細胞はキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変されており、本方法は、本明細書のどこかに記載されている免疫細胞を対象に投与することを含み、投与される改変免疫細胞は、対象において子孫免疫細胞集団を産生する。一実施形態では、免疫細胞は制御性免疫細胞である。一実施形態では、制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。一実施形態では、免疫細胞は制御性T細胞であってよい。一実施形態では、免疫細胞はCD4+制御性T細胞であってよい。一実施形態では、免疫細胞はヒト免疫細胞である。別の実施形態では、制御性免疫細胞はヒト制御性免疫細胞である。一実施形態では、ヒト制御性免疫細胞は、制御性T細胞、CD4+制御性T細胞、CD8+制御性T細胞、制御性γδT細胞、制御性DN T細胞、制御性B細胞、制御性NK細胞、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞及びそれらの任意の組合せから成る群から選択される。別の実施形態では、免疫細胞はヒト制御性T細胞である。一実施形態では、免疫細胞はヒトCD4+制御性T細胞である。一実施形態では、本発明のCAR改変Treg細胞は、インビボで複製することが可能であり、これが、標的細胞の免疫応答の持続的抑制と免疫寛容をもたらし得る長期持続につながる。一実施形態では、対象において制御性T細胞の持続的な集団を生成する方法が提供され、制御性T細胞はキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変されており、本方法は、本明細書のどこかに記載されている制御性T細胞を対象に投与することを含み、改変制御性T細胞の持続的な集団は、対象において、投与後少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、30日、40日、50日、60日、70日、80日、90日、100日、200日、300日、400日、500日、600日、700日、800日、900日又は1000日間持続する。一実施形態では、CAR-Treg細胞は、標的細胞の免疫応答を抑制するために、インビボで自己再生及び再活性化されることが可能であってよい。一実施形態では、CAR-Treg細胞は、標的細胞の免疫応答を抑制するために再活性化することができる記憶CARD-Treg細胞であってよい。
【0583】
免疫細胞は任意の供給源から取得されてよい。例えば、一実施形態では、免疫細胞は、本発明のCAR改変免疫細胞の生成のために、組織ドナー、移植片レシピエント又は他の関係のない供給源(全く異なる対象又は種)から取得されてよい。したがって、本発明のCAR改変免疫細胞は、移植レシピエント又は他の関係のない供給源に対して自己、同種異系又は異種であってよい。一実施形態では、本発明のCAR-Treg細胞は、移植片レシピエントに対して自己由来、同種異系又は異種であってよい。一実施形態では、本発明のCAR-Treg細胞は、移植レシピエントに対して自己由来であってよい。
【0584】
一実施形態では、対象は哺乳類であってよい。一実施形態では、対象はヒトであってよい。
【0585】
一実施形態では、本発明に従って活性化T細胞を対象に投与し、続いて再び採血(又はアフェレーシスを実施)し、そこからT細胞を活性化し、これらの活性化され増殖したT細胞を対象に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週間ごとに複数回実施することができる。ある実施形態では、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化することができる。ある実施形態では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc又は100ccの採血から活性化される。理論に拘束されるものではないが、この複数の採血/複数の再注入プロトコルを用いることは、T細胞の特定の集団を選択するのに役立つ場合がある。
【0586】
本発明のCAR改変免疫細胞は、単独で、又は希釈剤及び/若しくは他の成分(IL-2若しくは他のサイトカイン若しくは細胞集団等)と組み合せた医薬組成物としてのいずれかで投与されてよい。一実施形態では、医薬組成物は、本明細書のどこかに記載されている複数の改変免疫細胞を含んでよい。一実施形態では、本発明の医薬組成物は、本明細書のどこかに記載されているCAR改変免疫細胞又は細胞集団を、1つ以上の薬学的若しくは生理学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と組み合せて含んでよい。このような組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等の緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール等の炭水化物;タンパク質;ポリペプチド又はグリシン等のアミノ酸;抗酸化剤;EDTAやグルタチオン等のキレート剤;アジュバント(例えば水酸化アルミニウム);及び防腐剤を含んでよい。本発明の医薬組成物は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸血、留置又は移植を含む任意の適切な方法で対象に投与されてよい。本明細書のどこかに記載されている医薬組成物は、非経口投与によって対象に投与されてよい。本明細書のどこかに記載されている医薬組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、胸骨内、静脈内(i.v.)注射により、注入技術により、又は腹腔内によって対象に投与されてよい。一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞組成物は、皮内又は皮下注射によって対象に投与されてよい。別の実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞組成物は、i.v.注射によって投与されてよい。一実施形態では、CAR改変免疫細胞の組成物は、リンパ節、感染部位、炎症部位、又は組織若しくは器官の駆出部位に直接注射されてよい。
【0587】
本発明の医薬組成物は、予防又は治療される疾患に適切な方法で投与されてよい。投与の量と頻度は、対象の状態、対象の疾患の種類と重症度等の要因によって決定されるものであるが、適切な投与量は臨床試験によって決定されてよい。
【0588】
「有効量」又は「治療量」が示される場合、投与される本発明の組成物の量は、対象の年齢、体重、抗体力価及び状態における個人差を考慮して決定されてよい。本明細書のどこかに記載されているCAR改変免疫細胞を含む医薬組成物は、体重1kgあたり1×104~1×109細胞の投与量で投与することができると、一般に述べることができる。一実施形態では、CAR改変免疫細胞は、それらの範囲内の全ての整数値を含めて、体重1kgあたり1×105~100×105細胞の投与量で投与されてよい。CAR改変免疫細胞組成物は、これらの用量で複数回投与されてよい。CAR改変免疫細胞は、免疫療法で一般に知られている注入技術を用いることによって投与することができる(例えばRosenberg他、1988を参照)。特定の対象に対する最適な投与量及び治療レジメンは、疾患の兆候について対象を監視し、それに応じて治療を調整することにより、容易に決定することができる。
【0589】
一実施形態では、本発明の少なくとも1つのCAR遺伝子操作免疫細胞は、それを必要とする対象に、別の活性剤と組み合わせて投与される。一実施形態によれば、少なくとも1つの免疫細胞集団は、別の活性薬剤の投与の前、同時、又は後に投与される。
【0590】
一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞は、抗ウイルス療法等の薬剤による治療、化学療法、放射線、免疫抑制剤、抗体、免疫除去剤、サイトカイン、及び放射線を含むが、これらに限定されない任意の数の関連する治療法と組み合わせて(例えば、前に、同時に、又は後に)、対象に投与されてよい。一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞は、免疫抑制剤と組み合せて投与されてよい。当技術分野で公知の任意の免疫抑制剤が用いられてよい。例えば、免疫抑制剤は、シクロスポリン等のカルシニューリン阻害剤、タクロリムス、アザチオプリン、メトトレキサート、メトキサレン、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸ナトリウム、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リツキシマブ、シロリムス等のmTOR阻害剤、エベロリムス、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ベラタセプト、アレムツズマブ、ムロモナブCD3、抗胸腺細胞グロブリン、グルココルチコステロイド、又はプレドニゾンやプレドニゾロン等の副腎皮質ステロイド、又はそれらの任意の組合せであってよい。本発明のCAR改変免疫細胞は、免疫抑制剤の前、後又は同時に、対象に投与することができる。例えば、本発明のCAR改変免疫細胞は、免疫抑制剤が対象に投与された後に投与されるか、又は、本発明のCAR改変免疫細胞は、免疫抑制剤が対象に投与される前に投与されてよい。或いは又は更に、本発明のCAR改変免疫細胞は、免疫抑制剤が対象に投与されるのと同時に投与されてよい。本発明のCAR改変免疫細胞及び/又は免疫抑制剤は、移植後に対象に投与されてよい。或いは又は更に、本発明のCAR改変免疫細胞及び/又は免疫抑制剤は、移植の前に対象に投与されてよい。本発明のCAR改変免疫細胞及び/又は免疫抑制剤は、移植手術中に対象に投与されてよい。一実施形態では、免疫抑制療法が開始された時点で、CAR改変免疫細胞を対象に投与する本発明の方法が実施される。一部の実施形態では、本方法は、例えば、移植片レシピエントを経時的に監視するために、また該当する場合は異なる免疫抑制療法レジメンにおいて、複数回実施される。一部の実施形態では、移植片レシピエントが移植片に寛容性があると予測される場合、免疫抑制療法は低減される。一部の実施形態では、移植片レシピエントが移植片に寛容性があると予測される場合、免疫抑制療法は処方されず、例えば、免疫抑制療法は中止される。
【0591】
対象における器官若しくは組織の移植拒絶反応を予防又は治療する方法も提供され、本方法は、対象に(i)少なくとも1つの免疫抑制剤と、(ii)本発明のCAR遺伝子操作免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)又は前記免疫細胞を含む医薬組成物とを投与することを含む。
【0592】
よって、本発明の別の実施形態は、対象における器官若しくは組織の移植拒絶反応の予防又は治療に用いるための、本発明のCAR遺伝子操作免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)又は前記免疫細胞を含む医薬組成物と、少なくとも1つの免疫抑制剤との組合せである。
【0593】
対象における移植片生存期間を延長する方法も提供され、本方法は、少なくとも1つの免疫抑制剤と、本発明のCAR遺伝子操作免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)又はそれを含む医薬組成物とを、対象に投与することを含む。
【0594】
一実施形態では、少なくとも1つの免疫抑制剤と本発明のCAR遺伝子操作免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)との組み合せは、移植片対宿主病(GVHD)を予防又は治療するために用いられる。一実施形態では、GVHDは、造血幹細胞移植の後に発生し得る。
【0595】
よって、本発明の別の実施形態は、対象における移植片対宿主病(GVHD)を予防又は治療する方法であり、本方法は、少なくとも1つの免疫抑制剤と、本明細書に記載のCAR遺伝子操作免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)又は医薬組成物とを、対象に投与することを含む。
【0596】
一実施形態では、本発明は、レシピエントへの移植片の移植と同時に、その前に、又はその後に、ドナー移植片、例えば生体適合性格子又はドナー組織、器官若しくは細胞を、少なくとも1つの免疫抑制剤及び本発明のCAR遺伝子操作免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)と接触させる方法を提供する。
【0597】
一実施形態では、少なくとも1つの免疫抑制剤と本発明のCAR遺伝子操作免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)との組合せを用いて、レシピエントに対するドナー移植片による有害反応を改善、阻害又は低減し、それによりGVHDを予防又は治療してよい。
【0598】
よって、本発明の別の実施形態は、対象におけるGVHDの発症を予防又は遅延させる方法であり、本方法は、少なくとも1つの免疫抑制剤と、本明細書に記載のCAR遺伝子操作免疫細胞(例えばCAR遺伝子操作Treg細胞)又は医薬組成物とを、対象に投与することを含む。
【0599】
一実施形態では、本発明のCAR遺伝子操作免疫細胞及び少なくとも1つの免疫抑制剤は、同時に又は連続して投与される。
【0600】
一実施形態では、本発明のCAR遺伝子操作免疫細胞と、必要に応じて少なくとも1つの他の活性薬剤、例えば免疫抑制剤は、移植と併せて(例えば移植の前に、同時に又は後に)投与される。
【0601】
本発明のCAR改変免疫細胞は、移植片の器官又は組織拒絶反応の診断後に投与されてよく、その後、器官又は組織の拒絶反応の症状が鎮まるまで、本発明のCAR改変免疫細胞と免疫抑制剤の両方の投与が続く。更なる実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞組成物は、骨髄移植と併せて(例えば前に、同時に又は後に)対象に投与されてよい。別の実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞は、CD20と反応する薬剤、例えばリツキシマブ等のB細胞除去療法後に投与されてよい。例えば、一実施形態では、対象は、高用量化学療法とそれに続く末梢血幹細胞移植による標準治療を受けてよい。ある実施形態では、移植後、対象は、本発明の増殖させたCAR改変免疫細胞の注入を受けてよい。追加の実施形態では、増殖させたCAR改変免疫細胞は、手術の前又は後に投与されてよい。
【0602】
一実施形態では、対象(例えばヒト)は、本発明の少なくとも1つの免疫細胞又は集団の初回投与と1回以上の後続投与を受け、1回以上の後続投与は、前回の投与から15日未満、例えば14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3又は2日後に投与される。一実施形態では、本発明の免疫細胞の治療上有効量が対象に投与されるか、又は投与される予定である。一実施形態では、対象に投与される本発明の少なくとも1つの免疫細胞集団の免疫細胞の量は、少なくとも102、103、104、105、106、107、108又は109細胞である。一実施形態では、対象に投与される本発明の免疫細胞の量は、約102~約109細胞、約103~約108細胞、約104~約107細胞、又は約105~約106細胞の範囲である。別の実施形態では、対象に投与される本発明の免疫細胞の量は、約106~約109、約106~107、約106~108、約107~109、約107~108、約108~109の範囲である。別の実施形態では、対象に投与される本発明の免疫細胞の量は、約106、約107、約108又は約109である。一実施形態では、対象に投与される本発明の少なくとも1つの免疫細胞集団の免疫細胞の量は、体重1kgあたり少なくとも102、103、104、105、106、107、108又は109細胞である。一実施形態では、対象に投与される本発明の免疫細胞の量は、体重1kgあたり約104~109細胞又は体重1kgあたり105~108細胞の範囲であり、これらの範囲内の全ての整数値を含む。一実施形態では、本発明の少なくとも1つの免疫細胞又は集団の2回以上の投与は、例えば、1週間ごとに対象(例えばヒト)に投与され、例えば本発明の遺伝子改変免疫細胞又は集団は、1週間ごとに2、3又は4回投与される。
【0603】
一部の実施形態では、インビボでのCAR改変免疫細胞の選択的破壊を可能にするために、本発明のCAR改変免疫細胞に自殺遺伝子を組み込むことが望ましい場合がある。一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞は、自殺遺伝子系を更に含んでよい。一実施形態では、本発明のCAR改変免疫細胞は、自殺遺伝子系をコードする核酸を更に含んでよい。本明細書に記載される「自殺遺伝子治療」、「自殺遺伝子」及び「自殺遺伝子系」は、アポトーシスを通して細胞を選択的に破壊する方法を指す。そのような方法は、アポトーシスによって細胞を自殺させる自殺遺伝子を採用する。自殺遺伝子は、単独で、又は他の化合物の存在下で、細胞死を引き起こす産物をコードする。自殺遺伝子は、細胞療法での使用に適した任意の自殺遺伝子系に由来してよい(例えばJones他、2014;Wang他、2017;Zhang他、2017;Casucci他、2011;Gargett他、2014;Khaleghi、2012;Philip他、2014を参照)。
【0604】
一実施形態では、自殺遺伝子系は、非毒性薬物(すなわち自殺遺伝子プロドラッグ)が自殺遺伝子改変細胞において毒性化合物に変換される遺伝子指向酵素プロドラッグ療法(GDEPT)を伴ってよい。例えば、一実施形態では、自殺遺伝子系は、ヘルペスシンプレックスウイルス由来のチミジンキナーゼ遺伝子をプロドラッグガンシクロビルと組み合せて用いる、ヘルペスシンプレックスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)/ガンシクロビル(GCV)自殺遺伝子系であってよい。他の実施形態では、自殺遺伝子系は、シトシンデアミナーゼ/5-フルオロシトシン自殺遺伝子系であってよい。CAR改変免疫細胞が自殺遺伝子系を含む本明細書において提供される方法の一部の代替では、本方法は、対象に自殺遺伝子プロドラッグを投与することを更に含む。
【0605】
他の実施形態では、自殺遺伝子系は、カスパーゼ等のアポトーシス遺伝子がアポトーシスを誘導することによって細胞を破壊する二量体化誘導メカニズムを伴ってよい。自殺遺伝子系を誘導する二量体化には、化学的二量体化誘導物質(CID)の投与後の改変免疫細胞の条件付き二量体化とアポトーシスを可能にするアポトーシス経路の成分とリンクした薬物結合ドメインで構成されるキメラタンパク質が関与し得る。例えば、一実施形態では、自殺遺伝子系は、カスパーゼベースの自殺遺伝子系であってよい。誘導性カスパーゼ自殺遺伝子系の非限定的な例には、カスパーゼがCID、FK506又はその類似体によって活性化される誘導性カスパーゼ-9自殺遺伝子系(iCasp9)及びカスパーゼ-8自殺遺伝子系(iCasp8)が含まれ得る。CAR改変免疫細胞が自殺遺伝子系を含む本明細書において提供される方法の一部の代替では、本方法は、化学的二量体化誘導物質を対象に投与することを更に含む。
【0606】
他の実施形態では、自殺遺伝子系は、治療用モノクローナル抗体によって媒介されてよい。治療用mAbを介した自殺遺伝子系は、改変免疫細胞に治療用mAbに対する感受性をもたせる細胞表面でのタンパク質の発現を伴う。改変免疫細胞は、特定の治療用mAbの投与後に選択的に破壊されてよい。治療用mAb媒介自殺遺伝子系の非限定的な例には、治療用mAbが抗CD20 mAbであるCD20自殺遺伝子系及びRQR8自殺遺伝子系が含まれ得る。一部の実施形態では、抗CD20 mAbはリツキシマブであってよい。CAR改変免疫細胞が自殺遺伝子系を含む本明細書において提供される方法の一部の代替では、本方法は、治療用モノクローナル抗体を対象に投与することを更に含む。
【0607】
VIII.製造品及びキット
【0608】
別の実施形態では、本発明は、移植拒絶反応若しくはGVHDの予防及び/又は治療に有用な材料を含む製造品を提供する。該製造品は、容器と、容器上若しくは容器に関連付けられたラベル又は添付文書とを含む。適切な容器には、例えば瓶、バイアル、シリンジ等が含まれる。容器は、ガラスやプラスチック等の様々な材料から形成されてよい。容器は、移植拒絶反応又はGVHD等の免疫学的状態を予防及び/又は治療するのに有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを備えてよい(例えば、容器は、静脈内溶液バッグや、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明のCAR改変免疫細胞である。一実施形態では、CAR改変免疫細胞はCAR改変Tregである。一実施形態では、CAR改変Tregは、CAR改変ヒトTregである。ラベル又は添付文書は、組成物が移植拒絶反応若しくはGVHDの予防又は治療に使用されることを示す。製造品、ラベル又は添付文書は、CAR改変免疫細胞組成物を患者に投与するための説明資料を更に含んでよい。更に、製造品は、静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液等の薬学的に許容される緩衝液を含む第2の容器を更に含んでよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的な及びユーザーの観点から望ましい他の材料を更に含んでよい。
【0609】
様々な目的(例えば移植拒絶反応若しくはGVHDの予防又は治療)に役立つキットも提供される。CAR改変免疫細胞を含むキットを提供することができる。製造品と同様に、キットは、容器と、容器上若しくは容器に関連付けられたラベル又は添付文書とを含む。容器は、本発明の少なくとも1つのCAR改変免疫細胞を含む組成物を保持する。例えば、希釈剤及び緩衝液を含む追加の容器が含まれてよい。ラベル又は添付文書は、組成物の説明と使用目的の指示を提供してよい。一実施形態では、CAR改変免疫細胞はCAR改変Tregである。一実施形態では、CAR改変TregはCAR改変ヒトTregである。
【0610】
よって、本発明は更に、第1の部品に本発明の免疫細胞又は免疫細胞集団を含み、第2の部品に、限定されないが、抗ウイルス療法、化学療法、放射線、免疫抑制剤、抗体、免疫除去剤、サイトカイン及び照射を含む別の活性薬剤を含む、部品のキットに関する。一部の実施形態では、本発明の部品のキットは、第1の部品に本発明の免疫細胞又は免疫細胞集団を含み、第2の部品に1つ以上の免疫抑制剤を含む。本発明のキットに存在し得る免疫抑制剤の例には、シクロスポリン等のカルシニューリン阻害剤、タクロリムス、アザチオプリン、メトトレキサート、メトキサレン、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸ナトリウム、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、リツキシマブ、シロリムス等のmTOR阻害剤、エベロリムス、バシリキシマブ、ダクリズマブ、ベラタセプト、アレムツズマブ、ムロモナブCD3、抗胸腺細胞グロブリン、グルココルチコステロイド、又はプレドニゾンやプレドニゾロン等の副腎皮質ステロイド、又はそれらの任意の組合せが含まれる。
【0611】
【0612】
【0613】
【0614】
【0615】
【0616】
【0617】
【0618】
実施例
【0619】
方法
【0620】
ヒト化HLA-A*02特異的scFvの生成。ヒト化遺伝子を、ホモ・サピエンスの設定を用いて、Invitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスのコドンオプティマイザーを用いてコドン最適化した。キメラ抗原受容体の5’領域にコザック配列を含み、36 NTがpcDNA3プラスミドと重複するように、Integrated DNA Technologies(アイオワ州コーラルビル)にgBlocks(登録商標)遺伝子断片を注文した。キメラ抗原受容体のCD8ヒンジ及び細胞内シグナル伝達ドメインとインフレームでのプラスミドへのギブソンアセンブリを促進するために、3’末端は、BamHI部位と、CD8ヒンジ配列との重複部分とを含む。
【0621】
hA2-CARの生成。scFv変異体を、記載されているように、ヒトCD8αからのストーク領域、ヒトCD28の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメイン、並びにヒトCD3ζに融合した(Sadelain他、2013年)。得られたcDNAを、マーカーとして切断型神経成長因子(TrkA)受容体(ΔNGFR)の細胞表面発現をコードするレンチウイルスベクターにクローニングした(
図1)。表面発現は、一時的にトランスフェクトされたHEK 293T細胞(jetPRIME(登録商標)、Polyplus Transfection)を用いたフローサイトメトリーによって決定した。ウイルス粒子は、記載されているように産生した(Allan他、2008)。
【0622】
HLA発現K562細胞株の生成。CD64を発現するK562細胞(K562.64)は、ペンシルベニア大学(米国フィラデルフィア)のJames Rileyから寄贈された。HLA-A*02:01とA*24:02のcDNAは、プライマー配列s:5’-TTTTCTAGACGCGTGCCACCATGGCCGTCATGGCGCC-3’(フォワード)(配列番号197)及び5’-AAGTCGACGCTAGCTCACACTTTACAAGCTGTGAGAGACA-3’(リバース)(配列番号198)を用いて、HLA-A遺伝子座上のA*02:01又はA*24:02に対してホモ接合型であるドナーの末梢血単核細胞のmRNAからそれぞれ分離した。得られた配列を、IPD及びIMGT/HLAデータベース(Robinson他、2015)から予想される配列に合わせてサンガーシーケンスによって確認し、レンチウイルス発現ベクターを用いて、それぞれK562細胞に形質導入した。A25-及びA68-K562細胞を生成するために、A*25:01、A*68:01のHLA配列を、IPD及びIMGT/HLAデータベース(Robinson他、2015)から抽出し、ThermoFisher Invitrogen GeneArt Gene Synthesisサービスからのコドンオプティマイザーツールを用いてコドン最適化し(ホモ・サピエンスに設定)、次にレンチウイルス発現ベクターにクローニングし、K562細胞に形質導入した。次に、得られたK562細胞株を、抗HLA-ABC(ThermoFisher、12-9983-41)を用いてFACSAria II(BD Biosciences)でソートして、形質導入されたHLA及び抗HLA-A2(BB7.2)(ThermoFisher、17-9876-42)の同等の表面発現を保証し、純度を保証した。
【0623】
Tregの選別、形質導入及び増殖。CD4+T細胞を、RosetteSep(Stemcell)を介してHLA-A2-ドナーから単離し、CD25+細胞(Miltenyi)について濃縮してから、MoFlo(登録商標) Astrios(Beckman Coulter)又はFACSAria II(BD Biosciences)をそれぞれ用いて、生きているCD4+CD25hiCD127loTreg(インビトロ実験及びルシフェラーゼ実験用)又はCD4+CD127loCD25hiCD45RA+Treg(異種GvHD実験及び皮膚移植片実験用)を選別した。選別したTregを、IL-2(Proleukin)1000U/mlを有するimmunocult-XF T細胞増殖培地(STEMCELL Technologies)中のL細胞及びαCD3mAb(OKT3;100ng/mL)で刺激した。1日後、10個のウイルス粒子:1個の細胞の感染多重度で、レンチウイルスを細胞に形質導入した。7日目に、ΔNGFR+細胞を磁気選択(Miltenyi)によって精製し、アッセイで使用するか、又は上記のL細胞によって再刺激し、インビボ実験のために5日間増殖させた。HLA-A2を介した刺激の効果を検証するために、Tregを制限IL-2(100U/mL)で24時間培養した後、再計数し、照射した抗CD3/抗CD28搭載K562.64細胞、又はHLA-A*02:01、A*24:02、A*25:01若しくはA*68:01を発現するK562.64細胞と、1:2(K562:T細胞)の比率で24時間共培養した。
【0624】
フローサイトメトリー。表現型分析のために、細胞を固定可能な生死判別色素(FVD、65-0865-14、ThermoFisher;423102、Biolegend)で染色し、表面マーカーについては、固定及び透過化の前に、eBioscience FOXP3/Transcription Factor Staining Buffer Set(ThermoFisher)で染色し、細胞内タンパク質を染色した。Cytoflex(Beckman-Coulter)で試料を読み取り、FlowJoソフトウエアバージョン9.9.4及び10.3(Tree Star)を用いて結果を分析した。
【0625】
表面染色は、ΔNGFR(130-091-885,Miltenyi)、CD3(564465,BD Biosciences)、CD4(317410,Biolegend)、CD25(130-091-024,Miltenyi)、LAP(25-9829-42,ThermoFisher)、CD69(310946,Biolegend)、CD154(555702,BD Biosciences)、CD71(BD Biosciences,563768)及びCD127(48-1278-42,ThermoFisher)について実施した。四量体染色は、ストレプトアビジン-アロフィコシアニン(PJ27S、Prozyme)を用いて四量体にしたHLA-A*02:01単量体を用いて実施した。CTLA-4(369606、Biolegend)について、細胞内染色を実施した。
【0626】
インビボ実験では、50uLの血液を毎週及びエンドポイントで収集した。赤血球溶解には塩化アンモニウムを用いた。細胞を抗マウスCD16/32(ThermoFisher、14-0161-82)を有するPBSに再懸濁し、固定可能な生死判別色素(FVD;ThermoFisher、65-0865-14)、抗マウスCD45(ThermoFisher、25-0451-82)及び抗ヒトCD45(BD Biosciences、560777)、CD4(Biolegend、300554、317434)、CD8(ThermoFisher、48-0087-42)、抗ヒトCD271(NGFR; BD Biosciences、557196)HLA-A2(BD Biosciences、551285)を用いて、細胞外マーカーを染色した。FOXP3(ThermoFisher、12-4777-42)の細胞内染色は、eBioscience FOXP3/Transcription Factor Staining Buffer Set(ThermoFisher、00-5523-00)を用いて実施した。10,000個のカウントビーズを全ての試料に添加した(ThermoFisher、01-1234-42)。異種GvHD、ルシフェラーゼ及び皮膚移植片実験のゲーティング戦略を、それぞれ
図8D、
図10A及び
図12Aに示す。
【0627】
HLA対立遺伝子の交差反応性アッセイ。0.25×106個のCAR Treg(上記のように調製したもの、培養7日後)を、個々のFlowPRA Single Antigen Antibodyビーズパネル(FL1HD01、FL1HD02、FL1HD03、FL1HD04、FL1HD06及びFL1HD08、One Lambda)及び固定可能な生死判別色素(FVD、65-0865-14、ThermoFisher)とともに室温で30分間インキュベートしてから、洗浄し、0.5%ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメトリーで分析した。試料ごとに200個の陰性対照ビーズを得た。分析のために、まず、固定可能な生死判別色素を用いて死細胞を除去した。次に、死細胞とダブレットを排除した後、単一ビーズをゲーティングした。次に、各HLA抗原のビーズの数を、それぞれのPE強度によって決定した。データは、試料の陰性ビーズの数をTreg-NGFR試料の陰性ビーズの数で割り、Treg-NGFR検体の陰性ビーズの数を掛けることによって正規化した。相対結合率は、1つの特定のHLAに対するNGFR検体におけるビーズ数から、そのHLAに対する検体における正規化したビーズ数を引いたものを、NGFR検体におけるビーズ数で割り、100を掛けたものである。
【0628】
混合リンパ球反応の抑制。HLA-A2+健康ドナーから得たPBMCからの付着細胞は、記載されているように単球由来の樹状細胞に分化した(Dijke他、2015)。混合リンパ球反応のために、HLA-A2-PBMCレスポンダー細胞を細胞増殖解析用色素eF450(65-0842-85、ThermoFisher)で標識し、5×104個のHLA-A2単球由来樹状細胞と、細胞増殖解析用色素e670 (65-0840-90,ThermoFisher)で標識したΔNGFR発現Treg又はhA2-CAR発現Tregの割合を高めたものとともにプレートに蒔いた。6日後、HLA-A2-CD4+レスポンダーT細胞の分裂をフローサイトメトリーで測定した。抑制率は、所与の細胞の組合せの増殖指数と、陽性対照(HLA-A2+単球由来樹状細胞とHLA-A2-CD4+レスポンダーT細胞のみ)に対する比率とに基づいて、記載されているように(McMurchy及びLevings、2012)計算した。まず、抑制率を、抑制率=100-100×(増殖指数(試料))/(増殖指数(DC+レスポンダー対照))として計算することにより、データを正規化し、次に、それぞれ独立した実験ごとに、式:正規化された抑制率=100×(抑制率(試料))/(抑制率(DC+レスポンダー対照)に従って0~100%からの結果値を正規化した)。
【0629】
インビボでの異種移植片対宿主病の抑制。8~12週齢の雌NSGマウス(ジャクソン研究所、自社飼育)に、全身照射(150 cGy、RS-2000 Pro Biological System)を実施し、1日後、4×106個のhA2-CAR Tregの尾静脈への静脈内注射の有無にかかわらず、8×106個のHLA-A2 PBMCを注射した。生理食塩水を注射したマウスを対照とした。hA2-CAR Tregは、4匹の異なる健康なドナーから生成した。GVHDは、体重、毛皮の質感、姿勢、活動レベル及び皮膚の完全性に基づき、記載されているように(Cooke他、1996;Hill他、1997)、カテゴリごとに0~2ポイントで採点した。GVHD採点は、盲検化された2人の調査員が実施した。伏在静脈からの末梢血を遠心分離し、その後、赤血球を溶解し、白血球をフローサイトメトリーで測定した。
【0630】
研究の承認。ヒトPBMCについては、ブリティッシュコロンビア大学臨床研究倫理委員会及びカナダ血液サービスによって承認されたプロトコルに従って、健康なボランティアが書面によるインフォームドコンセントを行った。形成外科から廃棄されたヒトの皮膚の試料を、ブリティッシュコロンビア大学臨床研究倫理委員会が承認したプロトコルに従って、Harvard Skin Resource Centre、Skin Works又はCambie Surgery Clinicから入手した。動物プロトコルは、UBC Animal Care Committeeによって承認された。
【0631】
皮膚移植。A2-CAR Tregホーミングと皮膚拒絶反応を阻害する能力を評価するために、8~12週齢の雌NSGマウス(ジャクソン研究所、自社飼育)に、トランスジェニックHLA-A2+NSGマウス(ジャクソン研究所、自社飼育)とからの皮膚とNSG皮膚(HLA-A2陰性)を移植した。マウス皮膚移植片について、8mmの生検パンチを利用して皮膚を円形片に切り取り、PBSを入れた新しいプレートに皮膚を置き、移植するまで(約1~4時間)低温(4~8℃)で保存した。ヒト皮膚のHLA-A2発現は、フローサイトメトリーとqPCRによって評価した。検体から脂肪をトリミングすることにより、分層外植片を作製した。外植片を滅菌PBSですすぎ、RPMIで保存した。良質な皮膚外植片を1cm2の小片に切り取り、PBSを入れた新しいプレートに置き、移植するまで(約1~4時間)低温(4~8℃)で保存した。マウスとヒト皮膚移植片の両方について、事前に剃毛したマウスに麻酔をかけ、背部皮膚を肩の近くで切断し、同様のサイズのマウス皮膚を除去した後、移植片を露出部に置き、ステリストリップ(3M、Nexcare)で安定させた。移植片をワセリンガーゼで覆い、2cm幅のCoFlex包帯(3M、Nexcare)で包んで、細胞注射の14日前まで移植片を固定した。
【0632】
組織構造
【0633】
ヒト皮膚移植片と周囲のマウス皮膚を細胞注射の27日後に採取し、10%ホルマリン(組織対ホルマリンの1:10v/v比)で4℃にて一晩固定し、パラフィン包埋前に70%エタノールで保存した。パラフィン切片(厚さ5μm)とH&E染色は、BC Children’s Hospital Research Institute Histology Services(カナダ、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)が準備した。免疫染色のために、一連のキシレン洗浄(×3)、段階的アルコール溶液(2×100%エタノール、1×95%エタノール及び1×70%エタノール)及び1×PBSを用いて、切片を脱パラフィンし、再水和した。10mMクエン酸ナトリウム緩衝液(0.5%Tween-20、pH6.0)で、93~95℃に達するマイクロ波(5分、高出力、その後20分、低出力)を用いて、スライド上で熱誘導エピトープ回収(HIER)を実施した。HIERの後、水道水、脱イオン水及びPBSを流してスライドを洗浄した。非特異的抗体染色を制限するために、切片をDAKO(登録商標)Protein Block,Serum-Free(Dako、バーリントン、カナダ、X0909)とともにインキュベートした。次に、切片を以下の一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした:FOXP3(Invitrogen、clone PCH101、14-4776-82)、CD45(eBioscience、clone H130、17-0459)、Ki67(eBioscience、clone 20Raji、17-5699)、インボルクリン(Abcam、ab53112)。翌日、切片をPBSで数回穏やかにすすぎ、以下の二次抗体を用いて1時間RTで染色した:ロバ抗ラット488(Life Tech、A11006)、ヤギ抗マウスAPC(Invitrogen、1834696)、ロバ抗ウサギ488(Life Tech、A21206)。最後に、切片を4’、6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で対比染色して細胞核を特定し、VECTASHIELD(登録商標)Mounting Medium with DAPI(Vector Laboratories、カリフォルニア州バーリンゲーム、米国、H-1200)を用いてマウントした。全ての抗体をAntibody Diluent(Dako、バーリントン、カナダ、S3022)に希釈した。画像は、QImaging Retiga ExiカメラとOlympus DP71カラーカメラを備えたOlympus BX61 Fluorescence及びBright Field Automated Upright Microscopeを用いてキャプチャした。蛍光画像の定量分析は、FijiとOlympus viewer Pluginを用いて実行した(Schneider他、2012年;Eliceiri他、2012)。
【0634】
H&E染色スライドは、盲検化された臨床病理学者が、それぞれ0~3-4の8段階の因子によって定義される採点システムを使用して評価した:ラーナー悪性度(0、1-局所又はびまん性の液胞変性、2-角化異常、3-基底層又は表層の裂け目、4-表皮の明らかな喪失)、海綿状変化(0、1-基底層のみ、2-途中まで、3-全層)、壊死ケラチノサイト(0、1-低頻度(1/hpf)、2-時々(2~3/hpf))、3-多い(>4/hpf))、壊死ケラチノサイトの位置(0、1-基底のみ、2-上半分まで、3-全層)、衛星病変(0、1-1のみ、2-2~3/hpf、3->4/hpf)、エキソサイトーシス(0、1-局所、2-<50%生検、3->50%生検)、付属器合併症(0、1-いずれかの付属器の軽度の合併症、2-<50%の付属器の顕著な合併症、3->50%の付属器の顕著な合併症)及び真皮のリンパ組織の増生(0、1-わずか、2-豊富、3-帯状)(Massi他、1999年;Fischer他、2015、Kanitakis他、2008)。
【0635】
qPCR。製造元の指示(RNeasy Plus Mini Kit;Qiagen)に従ってヒト皮膚試料からRNAを採取し、相補的DNA(cDNA)に変換した。SYPCR-green(Biorad)とIL17、IL6、IL1B、DEFB4、IFNg、TNFa、18SリボソームRNAのプライマーを用いて、qPCRを実行した(表8)。融解曲線とSYBR緑色発光データを収集した。相対濃度は標準曲線を用いて計算し、18SリボソームRNAの増幅産物に対して値を正規化した。各試料のLog2(RQ)値を、ダブルデルタCt(ΔΔCt)メソッド(Schmittgen他、2008)を用いて取得した。各試料のΔCt値は、平均化されたCt(目的の遺伝子)-Ct(ハウスキーピング遺伝子)を計算することによって得た。ΔΔCtを得るために、対照試料のΔCtを処理試料のΔCtから引いた。次に、倍数遺伝子発現を2-(ΔΔCt)によって計算した。
【0636】
【0637】
ルシフェラーゼ。インビボでのHLA-A2発現マウス皮膚移植片へのTregホーミングを評価するために、上記のように選別されたTreg(CD4+CD25hiCD127lo)をL細胞によって刺激した。翌日、MOI10でHER2-CAR、mA2-CAR又はH1k2 hA2-CARレンチウイルスを細胞に形質導入し、8時間後に、MOI5でルシフェラーゼ-GFP-レンチウイルスを形質導入した。カブトムシルシフェラーゼ-GFP-融合タンパク質をコードするレンチウイルスのプラスミド(pELNS.CBG-T2A-GFP(CBR))を、以前に記載されているように(Barrett他、2014)用いた。培養の7日後、CAR及びルシフェラーゼを発現する二重形質導入GFP+ΔNGFR+Tregを選別してから、上記のようにL細胞によって再刺激した。培養12日目に、1~3×106個のルシフェラーゼ-CAR Treg及び6×106個のヒト同種異系HLA-A2- PBMCを、皮膚移植NSGマウスに静脈内注射した。生物発光イメージングのために、イソフルランによる麻酔の直前に、D-ルシフェリンカリウム塩(150mg/kg、Gold Bio)を腹腔内注射し、Ami-X(Spectral Instruments Imaging)で15~20分以内に画像を取得した。データをAmiViewソフトウェア(Spectral Instruments Imaging、バージョン1.7.06)で分析し、発光シグナルを、HLA-A2-皮膚移植片に対するHLA-A2+の光子/秒/cm2/ステラジアンの比率として定量化した。実験のエンドポイントにおいて、皮膚流入領域腋窩リンパ節と脾臓を採取し、70μmのセルストレーナー(BD Falcon)に置き、切片化し、1ccシリンジのプランジャーを用いて濾過した。次に、細胞をフローサイトメトリー用に染色した。
【0638】
統計分析。全ての統計はPrism 7.0bを用いて行われた。
図9については、IBM*SPSS Statisticsバージョン24.0. 0.0を用いた。
【0639】
結果
【0640】
ヒト化HLA-A2特異的CARの構築
【0641】
マウスBB7.2 mAbからの重鎖及び軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を、米国国立生物工学情報センター(NCBI)から入手可能なIgBLASTツールを用いて、国際的なImMunoGeneTics information system(登録商標)(IMGT(登録商標))データベースから得られたヒト免疫グロブリン配列とアライメントした。V-gene画定システムを、Kabat定義CDR(Kabat他、1991)を取得するためにKabat配列に設定した。更に、Chothia定義(Chothia他、1987)が特定した。
【0642】
多数の異なるヒト生殖系列遺伝子を、CDR移植のフレームワーク配列として検証した。マウス配列と最も同等であるヒト生殖系列配列を特定することに加えて、可能な限り構造を維持するために、CDRの長さも考慮された。ヒトCDR(Kabatナンバリング)を、BB7.2抗体からのマウス対応CDRを置換した。また、重鎖の追加のCDRアミノ酸を、CothiaとKabatのナンバリングを組み合せることによって置換した。最終的に、6つの異なるヒト化重鎖と5つの異なるヒト化軽鎖が生成され、ヒト化重鎖と軽鎖を組み合せることにより、合計20の異なるキメラ抗原受容体を生成した。
【0643】
ヒト化HLA-A2特異的CARの発現と抗原特異性
【0644】
抗原特異性を検証するために、様々なhA2-CARコンストラクトを293T細胞に一時的にトランスフェクトし、HLA-A*02:01四量体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。11個のhA2-CARコンストラクトが発現し、A*02:01四量体に結合した(
図2)。
【0645】
次に、様々なhA2-CARコンストラクトの結合強度を比較した。一次的にトランスフェクトした293T細胞を、A*02:01四量体の漸増希釈液で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。
図3(A、B及びC)に示すように、11個のhA2-CARコンストラクトがA*02:01四量体に、四量体濃度依存的に高度に結合する。
【0646】
hA2-CAR媒介刺激はTregを活性化する
【0647】
TregにおけるA2-CARの機能を検証するために、CD4
+CD25
hiCD127
lo細胞を末梢血から選別した。
図4(A、B及びC)に示すように、更に6~7日間、Tregを刺激、形質導入及び培養した。培養7~8日目の終わりに、細胞をNGFR
+細胞として精製し、hA2-CAR変異体の細胞表面発現をフローサイトメトリーによって検証した。
図4に示すように、hA2-CARコンストラクトによって形質導入されたTregは、ΔNGFR対照コンストラクトによって形質導入されたTregと比較して、HLA-A2四量体による陽性染色を示し、これは、hA2-CARを発現するTregに対する抗原特異性の保存を示している。(H1k3)の高力価レンチウイルスの生産に技術的な問題が発生したので、この実験ではTregにおいてこのCARを検証しなかった。CAR細胞表面の発現と特異性は、A*02:01四量体を用いて染色することによって検証し、その結果、H2k2、H4k4及びH5k4がTregにおいて二峰性の発現パターンを示し、A2-四量体
+細胞の平均蛍光強度(MFI)が低いことが明らかとなった(
図4D及び
図4E)。
【0648】
次に、切断型NGFR形質導入マーカー(NGFR Treg)のみを発現するTregと比較して、hA2-CARを介した刺激がTreg(hA2-CAR Treg)を活性化するかどうかを調べた。NGFR及びhA2-CARのTregを刺激せずに放置し、又はHLA-A*02:01を発現するK562細胞とともにCARを介して刺激し、又は事前に抗CD3/抗CD28抗体を搭載した高親和性Fc受容体であるCD64を発現するK562細胞とともにTCRを介して刺激した。NGFR TregとhA2-CAR Tregの比較により、複数の時点でほとんどのhA2-CAR TregにおいてCAR刺激によるCD69及びCD71の発現がはるかに高いことが示された。対照的に、TCRを介して刺激された場合、NGFRとhA2-CARの両方のTregはCD69を上方制御することができ、CAR DNAの形質導入後もTCRを介してシグナルを送る能力を保持していることが示された(
図13に図示)。また、TregのhA2-CARを介した刺激は、Treg機能に関連するタンパク質の大幅な上方制御を引き起こし、hA2-CARを介した刺激が、予想されるCTLA-4及びLAPの高発現を保存することが実証された(
図5A-F)。
【0649】
他のクラスI HLA対立遺伝子上のhA2-CARコンストラクトの交差反応性
【0650】
少数の祖先対立遺伝子から時間とともに進化してきた、HLAの多くの異なる対立遺伝子が存在する。その結果、わずか数個のアミノ酸が異なり得る対立遺伝子ファミリーが存在し、単一の抗HLA抗体が進化関連ファミリー内の複数の対立遺伝子を認識する場合がある。マウスモノクローナル抗体(BB7.2)は、追加のHLA-A対立遺伝子と交差反応することが知られている(Hilton&Parham、2013年)。具体的には、固相アッセイで検証した場合、BB7.2抗体は、HLA-A2の5つのサブタイプ(*02:01、*02:02、*02:03、*02:05、*02:06)を認識し、HLA-A*69:01と交差反応することが判明し、高濃度で検証した場合、HLA-A*23:01、A*24:02、A*24:03、A*68:01及びA*68:02と交差反応することが判明した(Hilton&Parham、2013)。移植との関連において、同種の細胞、組織及び/又は器官への特異的ターゲティングを確実にするためには、alloAg特異性の知識が必要である。T細胞のアロ反応性を測定する従来の方法は、ハプロタイプPBMCの大規模なバンクを用いた機能的MLRを伴うので、不正確で非定量的である。本発明のヒト化抗HLA-A2抗体の交差反応性を評価し、BB7.2抗体と比較するために、血清中の抗HLA抗体を測定するために設計されたONE Lambda固相アッセイを、目的のヒト化CARに結合するHLAコーティングビーズを測定するように適合させた。BB7.2 CARは、MacDonald、K.G.(2016)の記載に従って生成した。指定のヒト化CARを発現するNGFR
+TregをFlow Panel Reactive Single Antigenビーズとともにインキュベートし、単一のクラスのビーズへの結合を、前方/側方散乱プロットのビーズゲートにおけるシグナルの損失として定量化した(詳細については方法を参照)。データを、試料中の陰性対照ビーズの数に対して正規化し、hCAR発現Tregへの相対的結合の量は、NGFR検体中の陰性ビーズの数にNGFR検体中の陰性ビーズの数を掛けたものによる、NGFR対照Tregによる結合の量に関連して計算した。方法論を検証するために、FlowPRT細胞アッセイ(
図6B)で決定した各m/hA2-CARコンストラクトのHLA-A*02:01への相対結合を、四量体結合のMFI(
図6C)と比較した。この分析により、A*02:01結合を検出する2つの方法間に強い直接的な相関関係があることが明らかとなった。FlowPRT細胞アッセイによって決定されるA*02:01結合の量が、A*02:01への曝露の生物学的効果と相関するかどうかを、更に検証した。実際、A*02:01発現APCへの曝露後のCD69上方制御によって判断されるように、FlowPRT細胞アッセイによって定量化されたA*02:01結合の量とTreg活性化の刺激との間に、直接的な相関関係があることが分かった(
図6D)。これらのデータは、異なるHLA対立遺伝子に結合するalloAg特異的CARの能力を測定するFlowPRT細胞法の有用性を実証している。
【0651】
図6及び表9に示すように、全てのhA2-CARコンストラクトはHLA-A*02:01に有意に結合し、四量体結合アッセイを裏付けた。単一抗原FlowPRAアッセイにおいてBB7.2抗体の結合を検証したとき、A*69:01への高い結合を確認したが、A*23:01又はA*24:02への交差反応性を確認することはできなかった(
図6)。様々なHLA-A対立遺伝子に結合するm/hA2-CAR Tregの相対的能力を検証すると、mA2-CAR-TregsがHLA-A*03:01、A*25:01、A*29:02、A*30:01、A*31:01、A*33:01、A*36:01、A*68:01及びA*69:01に有意に結合したことが分かった(
図6、表9)。対照的に、hA2-CAR Tregの全ての変異体は、mA2-CAR Tregと比較して、意外にも交差反応性の低下を示した(
図6、表9)。予想どおり、全てのCARコンストラクトは、わずか6アミノ酸だけ異なるA*02:01の変異体であるHLA-A*69:01に結合した。CARコンストラクトのいずれも、HLA-Bへの有意な結合を示さなかった(
図6)。
【0652】
CAR-Treg Agの結合度と生物活性の関係は不明である。HLA交差反応性の生物学的意義を定義するために、HLA-A*24:02、A*25:01又はA*68:01を発現するAPCを生成した。全ての細胞に同程度のHLA-A発現レベルがあった(データ示さず)。CD69、CD71、LAP、CTLA-4(
図6I)又はCD40L(データ示さず)の発現亢進によって判断されるように、HLA-A*02:01発現細胞との共培養のみが、m/hCAR-Tregの有意な活性化をもたらすことが分かった。これらのデータは、TregのCARを介した効果的な活性化には、高い親和性及び/又はアビディティの相互作用が必要であることを示唆している。したがって、一部のhA2-CARはFlowPRTアッセイにおいてA*25:01とA*68:01の結合を示すが、結合の強度は細胞の活性化には不十分である。
【0653】
表9.m/hA2-CARとHLA-A/Bタンパク質との結合相互作用は、統計的に有意であることが判明した(2元配置分散分析、Dunnettポストテスト)。
【表10】
【0654】
同種抗原に対するCARの特異性を体系的に検証する新しい方法を開発し、定義された対立遺伝子特異性を有するコンストラクトを包括的に識別する新しいプラットフォームを作成した。驚くべきことに、mA2-CARと比較して、CARのヒト化により、いくつかのHLA-A対立遺伝子変異体に対する交差反応性が低下することが分かった。
【0655】
hA2-CAR Tregは、インビトロでのHLA-A2特異的抑制を媒介する
【0656】
Tregにおける抗原特異的抑制活性を刺激するhA2-CARの能力を検証するために、
図7Aに示す実験計画に従って混合リンパ球反応(MLR)を用いた。具体的には、HLA-A*02:01陰性T細胞の増殖を、Treg無しで、又はTreg(非形質導入型か、又は対照NGFRレンチウイルス若しくはH1k2 hA2-CARをコードするレンチウイルスによる形質導入型のいずれか)の割合を増大させながら、成熟HLA-A*02:01陽性樹状細胞との共培養によって刺激した。
図7B-Eに示すように、hA2-CARを発現するTregは、NGFR対照レンチウイルスコンストラクトによって形質導入された対照Tregと比較して、CD4
+T細胞の同種抗原刺激による増殖を有意に抑制することができた。
【0657】
hA2-CAR Tregは、インビボでの異種GVHDのHLA-A2特異的抑制を媒介する
【0658】
インビボにおけるhA2-CAR Tregの機能的能力を検証するために、免疫不全NSGマウスに移植されたヒトPBMCが異種GVHDを引き起こすマウスモデルを用いた。HLA-A2ドナーからの8×10
6個のPBMCを、H1k2 hA2-CARを発現するTregの有無にかかわらず、照射されたNSGマウスに注射した。検証したPBMCとhA2-CARのTregの比率は1:2であった(すなわち、8×10
6個のPBMC対4×10
6個のTreg)。方法に記載したように、臨床スコアによりマウスを7週間監視した。
図7のインビトロデータと一致して、hA2 CAR発現Tregを投与されたマウスは、hA2 CARTregを投与されなかったマウスと比較して、生存率が改善し、体重減少が軽減され、xenoGVHDの発症が遅れた(灰色の実線)(
図8A、
図8B及び
図8C)。Tregの生物学的効果は観察されたが、注射後14日から測定された循環m/hA2-CAR Tregは検出されなかった(
図8D及び
図8E)。
【0659】
hA2-CAR TregはインビボにおいてHLA-A2+皮膚移植片に輸送される
【0660】
CAR指向の特異性がTreg輸送にどのように影響したかを検証するために、NSG又はNSG-A*02:01トランスジェニックマウスからNSGマウスへの並行皮膚移植を実施した(
図9A)。移植片回収後、m/hA2-CAR Tregの非存在下若しくは存在下で、又は非特異的ポリクローナルTreg対照としてHER2-CAR Tregとともに、PBMCを注射した(MacDonald他、2016年)。CARに加えて、ルシフェラーゼ-GFP融合タンパク質をコードするレンチウイルスと同時にTregを形質導入した。D-ルシフェリン注射後、Treg注射後21日まで、生物発光イメージングを実施した(Barrett他、2014年)。ポリクローナルHER2-CAR Tregは、同種移植片への輸送の指向パターンを示したが、A2陽性移植片及びA2陰性移植片の間に均等に分布していた。遺伝子操作されていない免疫不全マウスではヒトT細胞は典型的には肺に輸送されるので、これらのポリクローナルTregは、術後の皮膚から発せられる炎症シグナルに応答して移動している可能性がある(Nervi他、2007)。A2陰性皮膚とA2陽性皮膚に等しく輸送されたポリクローナルHER2-CAR Tregとは対照的に、両方のm/hA2-CAR Tregは、A2発現皮膚に迅速に輸送された。更に、m/hA2-CAR Tregは、非特異的HER2-CAR Tregよりも長く持続した。HER2-CAR Tregは21日目には検出できなかったが、強いm/hA2-CAR Tregシグナルが残っていた(
図9B)。A2陽性移植片対A2陰性移植片の発光比の定量化により、A2発現移植片へのH1k2とmA2-CAR Treg両方の有意なAg駆動輸送が明らかとなった(
図9C及び9D)。
【0661】
移植片に局在するm/hA2-CAR Tregに加えて、21日目に、局所流入領域リンパ節の位置と一致する隣接シグナルに注目した。屠殺後、移植片流入領域リンパ節を収集し、フローサイトメトリー分析により、かなりの割合のhCD4
+FOXP3
+ΔNGFR
+A2四量体
+CAR Tregが明らかとなった。対照的に、脾臓では、これらの細胞はほとんど検出されなかった(
図10B及び
図10C)。移植片からリンパ節へのこの2段階の移動プロセスは、耐性誘導に必要であることが以前に報告されている(Zhang他、2009)。重要なことに、リンパ節ホーミングCAR Tregは、FOXP3とCARの発現を維持し、その安定した表現型を示した。
【0662】
hA2-CAR Tregは、ヒト皮膚同種移植片の拒絶反応を防ぐ
【0663】
実質臓器移植モデルにおけるhA2-CAR Tregの免疫制御能を評価するために、NSGマウスにヒトHLA-A2
pos皮膚移植片を移植した皮膚移植のヒト化モデルを使用した。6週間後、マウスに、自己H1k2 hA2-CAR Tregの有無にかかわらず、HLA-A2
negPBMCを注射した。細胞注射の4週間後、マウスを屠殺し、病理及び炎症性サイトカイン発現の評価のために皮膚移植片を収集した。全てのマウスは安定した体重を維持し、異種GvHDの欠如を示し(
図11A)、血液及び脾臓において同様のレベルのヒト白血球の生着を示した(
図11B)。H&E切片を、25ポイントスケールを用いて評価し、PBMCと比較して、H1k2 hA2-CAR Tregを投与したマウスの累積病理学的拒絶反応スコアの有意な減少が明らかとなった(
図11C)。免疫染色により、PBMCのみを投与したマウスと比較して、PBMC及びH1k2 hA2-CAR Tregを投与したマウスでは、Ki67
+ケラチノサイトが有意に減少し、インボルクリンの破壊が減少したことが明らかとなった(
図11D)。また、qPCRの定量化により、H1k2 hA2-CAR Treg処理マウスの移植片内の炎症性サイトカインの全体的な減少が示された(
図11E)。
【0664】
異種GVHDモデルに関して、PBMCは血中で検出可能であったが、CAR Tregは検出されなかった(
図12)。しかしながら、免疫染色により、PBMCのみを投与したマウスと比較して、PBMC及びH1k2 hA2-CAR Tregを投与したマウスは、移植片内のFOXP3
+細胞の割合が有意に高いことが明らかとなった(
図11F)。FOXP3
+細胞の存在は、腸、肝臓又は肺では検出されなかったので、移植された皮膚移植片に特有であった(
図11G)。これらのデータは、A2トランスジェニックNSG皮膚を用いたモデルについて、H1k2 hA2-CAR TregsがヒトA2
+皮膚同種移植片に特異的に輸送され、そこで無制限に持続することを示す。
【0665】
本願には、電子形式の配列リストがテキストファイル「CDRD-003WO_SEQ LISTING_ST25」(2018年9月18日作成、サイズ320KB)として含まれる。テキストファイルの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0666】
【0667】
前述の発明を、明確さと理解のためにある程度詳細に説明してきたが、当業者には、本開示を読むことにより、本発明の真の範囲から逸脱することなく形式及び詳細の様々な変更がなされ得ることが明らかであろう。例えば、上記の全ての技術と装置は、様々な組合せで使用することができる。本願において引用される全ての出版物、特許、特許出願及び/又は他の文書は、個々の出版物、特許、特許出願及び/又は他の文書があらゆる目的のために参照によって組み込まれることが個別に示されているのと同程度に、あらゆる目的のためにその全体が参照によって組み込まれる。
【配列表】