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特許7578946空気調和システム、およびビル空調システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】空気調和システム、およびビル空調システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20241030BHJP
   F24F 1/0328 20190101ALI20241030BHJP
   B01D 53/06 20060101ALI20241030BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20241030BHJP
   F24F 8/95 20210101ALI20241030BHJP
   F24F 8/15 20210101ALI20241030BHJP
   B01D 53/047 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
B01D53/04 230
F24F1/0328
B01D53/06 100
F24F7/003
F24F8/95
F24F8/15
B01D53/047
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020185989
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2021169079
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2020072231
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】布施 幸則
(72)【発明者】
【氏名】隅倉 光博
(72)【発明者】
【氏名】川口 正人
(72)【発明者】
【氏名】小島 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】藤井 克司
(72)【発明者】
【氏名】小池 佳代
(72)【発明者】
【氏名】和田 智之
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113254(JP,A)
【文献】特開2018-038940(JP,A)
【文献】特開2019-155301(JP,A)
【文献】特開2006-275487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/04-53/18,53/34-53/85,53/92,53/96
F24F1/0007,1/0059-1/008,1/02,1/032-1/0355,7/003,8/15,8/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着部と、空気供給部と、空気排出部と、再生流体供給部と、再生流体排出部と、回収部と、を有し、
前記空気供給部、前記空気排出部、前記再生流体供給部及び前記再生流体排出部は、前記吸着部に接続され、
前記回収部は、前記再生流体排出部に接続され、
前記吸着部は、二酸化炭素吸着能を有する吸着剤を有し、
前記空気供給部から、前記吸着部に二酸化炭素を含む外気を含む処理対象空気を供給して、前記吸着剤に前記処理対象空気を接触させることで、前記処理対象空気から二酸化炭素の一部又は全部を前記吸着剤に吸着させて処理済空気とし、前記処理済空気を前記空気排出部から排出し、
前記再生流体供給部から前記吸着部に再生用流体を供給して、前記の二酸化炭素が吸着した吸着剤に前記再生用流体を接触させることで、前記吸着剤に吸着している二酸化炭素を脱着し、脱着した前記二酸化炭素と前記再生用流体とを前記再生流体排出部から排出し、前記回収部に供給し、
前記吸着部は、前記吸着剤に前記処理対象空気を接触させることで前記処理対象空気から二酸化炭素の一部又は全部を前記吸着剤に吸着させる処理ゾーンと、前記の二酸化炭素が吸着した吸着剤に前記再生用流体を接触させることで前記吸着剤に吸着している二酸化炭素を脱着させる再生ゾーンと、に区画されており、
前記再生流体供給部は、前記処理ゾーン及び前記再生ゾーンに接続されている、空気調和システム。
【請求項2】
前記吸着部が、前記吸着剤が担持されたロータを備える、請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気調和システムを異なるフロアに複数備える、ビル空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システム、およびビル空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物環境衛生管理基準には、空気調和設備を設けている場合の居室においては、二酸化炭素の含有率を1000ppm(体積基準。以下、本明細書において同じ。)以下にすることが定められている。このように、空気調和設備を設けている建築物の室内においては、室内の空気から二酸化炭素を除去する技術が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、二酸化炭素を含む処理対象空気をアミン担持固体吸収剤に吸収させる処理ゾーンと、吸収剤が吸収した二酸化炭素を再生用空気に脱離させる再生ゾーンとに区画されたロータを備え、処理ゾーンに供給される処理対象空気と再生ゾーンに供給される再生用空気とのエンタルピー差が特定の範囲になるように構成された空調システムが提案されている。特許文献1の発明によれば、室内の空気中の二酸化炭素を除去し、空気質を高めることが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-75715号公報
【文献】特開2018-38940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二酸化炭素は、適切な方法で回収することにより、有価物の製造に利用することができる。しかしながら、特許文献1の技術では、除去した二酸化炭素を室外へ排出しており、二酸化炭素を回収することについては考慮されていない。
特許文献2には、二酸化炭素吸着材を有する空調装置を用いて二酸化炭素を吸着すること、及び吸着後に二酸化炭素を脱着させて回収することが記載されている。しかしながら、二酸化炭素を安定的に供給するための技術は開示されていない。
【0006】
そこで、本発明は、建築物における空気調和システムにおいて、建築物の室内排気からだけでなく、空気調和システムに供給される外気からも、二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を再利用できる空気調和システム、およびビル空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
]吸着部と、空気供給部と、空気排出部と、再生流体供給部と、再生流体排出部と、回収部と、を有し、
前記空気供給部、前記空気排出部、前記再生流体供給部及び前記再生流体排出部は、前記吸着部に接続され、
前記回収部は、前記再生流体排出部に接続され、
前記吸着部は、二酸化炭素吸着能を有する吸着剤を有し、
前記空気供給部から、前記吸着部に二酸化炭素を含む外気を含む処理対象空気を供給して、前記吸着剤に前記処理対象空気を接触させることで、前記処理対象空気から二酸化炭素の一部又は全部を前記吸着剤に吸着させて処理済空気とし、前記処理済空気を前記空気排出部から排出し、
前記再生流体供給部から前記吸着部に再生用流体を供給して、前記の二酸化炭素が吸着した吸着剤に前記再生用流体を接触させることで、前記吸着剤に吸着している二酸化炭素を脱着し、脱着した前記二酸化炭素と前記再生用流体とを前記再生流体排出部から排出し、前記回収部に供給し、
前記吸着部は、前記吸着剤に前記処理対象空気を接触させることで前記処理対象空気から二酸化炭素の一部又は全部を前記吸着剤に吸着させる処理ゾーンと、前記の二酸化炭素が吸着した吸着剤に前記再生用流体を接触させることで前記吸着剤に吸着している二酸化炭素を脱着させる再生ゾーンと、に区画されており、
前記再生流体供給部は、前記処理ゾーン及び前記再生ゾーンに接続されている、空気調和システム。
[2]前記吸着部が、前記吸着剤が担持されたロータを備える、[1]に記載の空気調和システム。
[3][1]または[2]に記載の空気調和システムを異なるフロアに複数備える、ビル空調システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の空気調和システム、およびビル空調システムによれば、建築物における空気調和システムにおいて、建築物の室内に供給される外気を含む空気から二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を再利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和システムを示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係るビル空調システムを示す概略図である。
図3】他の実施形態に係る吸着部を示す概略図である。
図4】他の実施形態に係る空気調和システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪空気調和システム≫
本発明の空気調和システムは、吸着剤を有する吸着部と、空気供給部と、空気排出部と、再生流体供給部と、再生流体排出部と、回収部と、を有する。
以下に、本発明の一実施形態に係る空気調和システムについて、図1に基づき詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の空気調和システム1は、吸着部10と、空気供給部20と、空気排出部30と、再生流体供給部40と、再生流体排出部50と、回収部60と、居室100と、を有する。空気供給部20と吸着部10とは、配管L1で接続されている。吸着部10と居室100とは、空気排出部30で接続されている。空気供給部20と居室100とは、配管26で接続されている。再生流体供給部40と吸着部10とは、配管45及び配管46で接続されている。吸着部10には、再生流体排出部50が接続されている。配管54は、回収部60と接続されている。配管54の分岐52には、再生流体排出部50が接続されている。居室100には、配管112が接続されている。配管112は、分岐120で配管114と接続されている。配管114は、空気供給部20と接続されている。
本実施形態において、居室100の内部が建築物の室内である。
図中の矢印は、空気等の流体の移動方向を表す。
【0013】
<吸着部>
吸着部10は、処理ゾーン11と、再生ゾーン12と、ロータ13と、回転軸14と、フィルター16とを有する。吸着部10は、処理ゾーン11と、再生ゾーン12とに区画されている。処理ゾーン11は、配管L1で空気供給部20と接続されている。処理ゾーン11の内部には、二酸化炭素吸着能を有する吸着剤が担持されたロータ13が、回転軸14に回転可能に支持されている。配管L1とロータ13との間には、フィルター16が設けられている。再生ゾーン12の内部には、配管45から延びた噴霧器47が設けられている。処理ゾーン11の内部には、配管46から延びた噴霧器48が設けられている。処理ゾーン11には、配管46が接続されている。処理ゾーン11には、空気排出部30が接続されている。再生ゾーン12には、配管45が接続されている。再生ゾーン12には、再生流体排出部50が接続されている。
【0014】
処理ゾーン11を形成する装置としては、例えば、エアハンドリングユニット(AHU)等の装置が挙げられる。
【0015】
再生ゾーン12を形成する装置としては、例えば、脱着用又は再生用のチャンバー等が挙げられる。
【0016】
ロータ13としては、例えば、ハニカムロータが挙げられる。ハニカムロータは、セラミック繊維紙やガラス繊維紙等の不燃性のシートをコルゲート(波付け)加工し、ロータ状に巻き付け加工した円筒形の部材である。
ロータ13には、吸着剤が担持されている。吸着剤は、特に限定されず、二酸化炭素吸着能を有していればよい。
吸着剤としては、例えば、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアミンを担持した固体吸収剤、アミン系の弱塩基性陰イオン交換樹脂等が挙げられる。高温かつ気体の再生用流体と接触させる場合には、吸着剤としては、ゼオライト、シリカゲル、活性炭が好ましく、ゼオライト、シリカゲルがより好ましい。
なお、本明細書において「高温」とは、常圧で二酸化炭素を吸着剤から脱着できる温度をいい、例えば、60℃以上の温度をいう。ここで、「常圧」とは、特別に減圧も加圧もしないときの圧力をいい、例えば、0.1MPaである。
【0017】
ロータ13は、処理ゾーン11と再生ゾーン12との境界に位置する回転軸14で支持されている。ロータ13は、回転軸14を中心として回転する。
回転軸14としては、例えば、金属製又は樹脂製の棒状部材が挙げられる。回転軸14には、モータ(不図示)が取付けられ、回転軸14は、モータを動力源として回転する。
【0018】
フィルター16としては、例えば、大気中の粉塵等を除去できる濾過器等が挙げられる。
【0019】
<空気供給部>
空気供給部20は、吸着部10に二酸化炭素を含有する処理対象空気を供給する。本実施形態の空気供給部20は、ブロア22と、配管23と、混合チャンバー24とを有する。ブロア22と混合チャンバー24とは、配管23で接続されている。配管23には、ダンパ25が設けられている。混合チャンバー24には、配管L1が接続され、吸着部10の処理ゾーン11と接続されている。
【0020】
ブロア22としては、例えば、羽根車の回転運動によって気体にエネルギーを与える送風機等が挙げられる。
配管23としては、例えば、金属製又は樹脂製のダクト等が挙げられる。配管L1としては、配管23と同様のダクト等が挙げられる。
混合チャンバー24としては、例えば、金属製又は樹脂製の容器等が挙げられる。
【0021】
<空気排出部>
空気排出部30は、処理対象空気から二酸化炭素の一部又は全部を吸着剤に吸着させた処理済空気を排出する。空気排出部30としては、例えば、金属製又は樹脂製のダクト等が挙げられる。空気排出部30には、ブロアや吸引ポンプ等が設けられていてもよい。
【0022】
<再生流体供給部>
再生流体供給部40は、吸着部10に再生用流体を供給する。本実施形態の再生流体供給部40は、ブロア42と、配管43と、加熱器44と、配管45と、配管46と、噴霧器47と、噴霧器48とを有する。ブロア42と加熱器44とは、配管43で接続されている。加熱器44と噴霧器47とは、配管45で接続されている。加熱器44と噴霧器48とは、配管46で接続されている。配管45の一部と噴霧器47とは、再生ゾーン12の内部に位置している。配管46の一部と噴霧器48とは、処理ゾーン11の内部に位置している。
【0023】
ブロア42としては、ブロア22と同様の送風機等が挙げられる。
配管43としては、例えば、金属製又は樹脂製のダクト等が挙げられる。配管45、配管43と同様のダクト等が挙げられる。配管45には、開閉弁が設けられていてもよい。配管46としては、配管43と同様のダクト等が挙げられる。配管46には、開閉弁が設けられていてもよい。
加熱器44としては、例えば、ボイラーや焼却炉等が挙げられる。
噴霧器47としては、例えば、再生用流体を再生ゾーン12の内部に分散させる器具、再生用流体をロータ13に吹き付ける器具等が挙げられる。噴霧器48としては、例えば、再生用流体を処理ゾーン11の内部に分散させる器具、再生用流体を加圧して噴き出す器具等が挙げられる。
【0024】
<再生流体排出部>
再生流体排出部50は、吸着剤から脱着した二酸化炭素と再生用流体とを排出する。再生流体排出部50としては、例えば、金属製又は樹脂製の配管等が挙げられる。再生流体排出部50には、ブロアや吸引ポンプ等が設けられていてもよい。
本実施形態の再生流体排出部50は、分岐52で配管54と接続されている。
【0025】
<回収部>
回収部60には、配管54の一端が接続されている。配管54の他端は、例えば、他の空気調和システム(不図示)の再生流体排出部50に接続されている。
回収部60には、吸着剤から脱着した二酸化炭素と再生用流体とが供給される。
回収部60としては、例えば、二酸化炭素と再生用流体との混合流体を貯留できるタンク等の容器が挙げられる。
【0026】
(居室)
居室100は、オフィス等の屋内で人が活動する空間である。居室100は、給気口101と、給気口102と、排気口110とを有する。給気口101及び給気口102には、空気排出部30が接続されている。排気口110には、配管112が接続されている。
居室100には、配管26が接続されている。配管26は、混合チャンバー24を介さずに配管23に接続されている。配管26には、ダンパ27が設けられている。
【0027】
配管112は、分岐120で配管114と接続されている。配管114は、混合チャンバー24と接続されている。
配管112における分岐120の下流には、ダンパ113が設けられている。配管114には、ダンパ115が設けられている。
配管112としては、金属製又は樹脂製のダクト等が挙げられる。配管114としては、配管112と同様のダクト等が挙げられる。
【0028】
≪二酸化炭素回収方法(空気調和方法)≫
本発明の二酸化炭素回収方法は、吸着工程と、脱着工程と、回収工程と、を有する。
本発明の二酸化炭素回収方法について、空気調和システム1を利用した空気調和方法を例にして説明する。
各工程について、以下に、図1に基づき詳細に説明する。
【0029】
<吸着工程>
吸着工程は、二酸化炭素を含有する処理対象空気を吸着剤に接触させることで、吸着剤に二酸化炭素の一部又は全部を吸着させる工程である。
【0030】
吸着工程では、まず、ダンパ25を開とし、ダンパ27を閉とする。ブロア22を運転して外気を吸引し、配管23を介して、外気を混合チャンバー24へと移送する。混合チャンバー24に移送された外気は、配管112に介して混合チャンバー24に移送された屋内排気(居室100から排気された空気)と混合されて、外気を含む処理対象空気となる(混合操作)。
本実施形態の処理対象空気は、二酸化炭素を含有する外気を含有すればよい。処理対象空気としては、例えば、外気、外気を含む空気等が挙げられる。外気を含む空気としては、建築物の外部から取り込む空気(外気)と屋内排気との混合気体が挙げられる。屋内排気としては、居室100から排出された空気が挙げられる。屋内排気には、人が活動することにより二酸化炭素濃度が高められた活動後空気、燃焼により生じた燃焼後空気等が含まれる。
本実施形態において、処理対象空気は、外気のみ、又は外気と居室100の屋内排気との混合気体である。
処理対象空気における二酸化炭素の濃度は、例えば、100~5000ppmが好ましく、200~4000ppmがより好ましく、300~3000ppmがさらに好ましく、400~2000ppmがさらに好ましく、500~1500ppmが特に好ましく、600~1000ppmが最も好ましい。処理対象空気における二酸化炭素の濃度が上記下限値以上であると、より多くの二酸化炭素を吸着剤に吸着でき、脱着工程でより多くの二酸化炭素を脱着できる。処理対象空気における二酸化炭素の濃度が上記上限値以下であると、吸着剤の吸着能を劣化させにくい。加えて、処理対象空気における二酸化炭素の濃度が上記上限値以下であると、より清浄な処理済空気を吸着部10から排出できる。
【0031】
次いで、混合チャンバー24から配管L1を介して、処理対象空気を吸着部10の処理ゾーン11に供給する(第一の供給操作)。
処理ゾーン11に供給された処理対象空気は、フィルター16で粉塵等の汚れが除去された後、ロータ13の吸着剤に接触する(第一の接触操作)。
吸着剤に接触した処理対象空気の二酸化炭素の一部又は全部は、吸着剤に吸着される(吸着操作)。その結果、二酸化炭素の濃度が減少した処理済空気が得られる。
【0032】
処理済空気は、空気排出部30を介して処理ゾーン11から排出される(第一の排出操作)。
処理済空気における二酸化炭素濃度は、処理対象空気における二酸化炭素の濃度よりも低い。処理済空気における二酸化炭素濃度は、例えば、1000ppm以下が好ましく、800ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましい。処理済空気における二酸化炭素濃度が上記上限値以下であると、建築物環境衛生管理基準を満たす二酸化炭素濃度にでき、より清浄な処理済空気を居室100に供給できる。処理済空気における二酸化炭素濃度の下限値は、特に限定されないが、実質的には10ppmであり、0ppmであってもよい。
【0033】
吸着工程における処理ゾーン11の内部の温度は、例えば、0~60℃が好ましく、0~40℃がより好ましく、5~35℃がさらに好ましく、10~30℃が特に好ましい。処理ゾーン11の内部の温度が上記下限値以上であると、快適な温度の処理済空気を居室100に供給できる。処理ゾーン11の内部の温度が上記上限値以下であると、吸着剤の吸着能をより高められる。
処理ゾーン11の内部の温度は、処理ゾーン11の内部に冷却装置等(不図示)を導入し、その冷却装置により調節できる。
吸着工程における処理ゾーン11の内部の圧力は、特に限定されないが、例えば、常圧である。
【0034】
処理ゾーン11から排出された処理済空気は、空気排出部30を介して給気口101、102へと移送され、居室100へと供給される(第二の供給操作)。
居室100では、例えば、人が活動することにより二酸化炭素濃度が高められ、活動後空気として排気口110から配管112を介して外部へと排出される(第二の排出操作)。
【0035】
ダンパ115を開、ダンパ113を閉とし、活動後空気を分岐120、配管114を介して、混合チャンバー24に供給する(第三の供給操作)。
第三の供給操作を有することにより、混合チャンバー24で屋内排気と外気とを混合できる。加えて、第三の供給操作を有することにより、活動後空気の二酸化炭素を吸着工程で吸着し、処理済空気として居室100に供給できる。このように、第三の供給操作を有することにより、より効率よく居室100の内部の空気を循環できる。
加えて、第三の供給操作を有することにより、空気供給部20からの外気の導入量を減らすことができ、外気負荷による空調負荷を低減することができる。
【0036】
例えば、居室100での二酸化炭素の発生量が多い場合には、ダンパ115を開、ダンパ113を閉、ダンパ25を閉、ダンパ27を開として、活動後空気のみを混合チャンバー24に供給してもよい。外気は居室100に直接送られ(外気供給工程)、吸着部10では、活動後空気中の二酸化炭素のみを吸着する(吸着工程)。
この場合、ブロア22が外部空気供給部として機能し、混合チャンバー24及び配管L1が内部空気供給部として機能する。かかる構成を採用することで、二酸化炭素濃度の高い屋内排気から効率的に二酸化炭素を回収できる。この空気調和システムにおいて、居室100は、例えば、燃焼型の暖房機、焼成装置等を備える部屋が挙げられる。
【0037】
また、あるいは、ダンパ113を開とし、ダンパ115を閉として、活動後空気を建築物外に排気してもよい。これにより、混合チャンバー24に屋内排気を供給せず、より多くの外気を吸着部10に供給できる。
【0038】
<脱着工程>
脱着工程は、二酸化炭素が吸着した吸着剤に、気体の再生用流体を接触させることで、吸着剤に吸着している二酸化炭素を脱着させる工程である。
【0039】
脱着工程では、まず、再生流体供給部40から再生ゾーン12に、再生用流体を供給する(第四の供給操作)。
この際、再生用流体の原料となる流体(以下、原料流体ともいう。)を、ブロア42を用いて配管43を介して加熱器44へと移送する。
本実施形態では、原料流体を加熱器44で加熱することで、気体の再生用流体とする。再生用流体としては、高温かつ気体の流体が好ましい。配管45を介して、再生用流体を噴霧器47から再生ゾーン12の内部に供給する。再生ゾーン12の内部に供給された再生用流体は、ロータ13の吸着剤に接触する(第二の接触操作)。
再生用流体が吸着剤に接触すると、温度差を利用した温度スイング吸着(TSA)の原理により、吸着剤に吸着している二酸化炭素が脱着する(脱着操作)。
脱着した二酸化炭素と、再生用流体とは、再生流体排出部50から排出される(第三の排出操作)。
第四の供給操作において、ロータ13の吸着剤に再生用流体を吹き付けることが好ましい。ロータ13の吸着剤に再生用流体を吹き付けることで、より多くの二酸化炭素を脱着できる。
【0040】
再生用流体は、吸着剤から二酸化炭素を脱着できればよい。再生用流体としては、水蒸気、ヘリウムガス、水素ガス、アルゴンガス、アンモニアガス等が挙げられる。再生用流体としては、無害で、かつ二酸化炭素との分離が容易なことから、水蒸気、ヘリウムガスが好ましく、水蒸気がより好ましい。
【0041】
加熱器44における再生用流体の温度は、常圧で二酸化炭素を吸着剤から脱着できる温度であればよい。加熱器44における再生用流体の温度は、例えば、60℃以上が好ましく、60~200℃がより好ましく、100~180℃がさらに好ましく、120~160℃が特に好ましい。加熱器44における再生用流体の温度が上記下限値以上であると、より多くの二酸化炭素を脱着できる。加熱器44における再生用流体の温度が上記上限値以下であると、吸着剤の劣化を抑制できる。加えて、加熱器44における再生用流体の温度が上記上限値以下であると、エネルギーを節約できる。
なお、再生用流体が水蒸気の場合、再生用流体の温度は、100℃以上である。再生用流体の温度が100℃未満の場合、水蒸気が液体の水となってしまい、吸着剤の再生が困難となる。
【0042】
再生用流体は、配管46を介して処理ゾーン11の内部に供給されてもよい(第五の供給操作)。再生用流体を処理ゾーン11の内部に供給することにより、処理済空気の温度を上昇でき、特に冬場の暖房におけるエネルギー負荷を低減できる。
再生用流体を処理ゾーン11の内部に供給する場合、再生用流体の温度は、処理ゾーン11の内部で二酸化炭素が脱着しない温度である。二酸化炭素が脱着しない温度の温度範囲としては、例えば、処理対象空気の温度超60℃未満が挙げられる。再生用流体の温度が上記下限値超であると、暖房におけるエネルギー負荷を低減できる。再生用流体の温度が上記上限値未満であると、処理ゾーン11の内部で二酸化炭素が脱着することを抑制できる。
なお、再生用流体が水蒸気(水)の場合、噴霧器48を介して、処理ゾーン11の内部に液体の水を噴霧してもよい。この場合、処理済空気を温めるとともに、処理済空気の湿度を調節できる。
【0043】
脱着工程における再生ゾーン12の内部の温度は、常圧で二酸化炭素を吸着剤から脱着できる温度であればよい。脱着工程における再生ゾーン12の内部の温度は、例えば、60℃以上が好ましく、60~200℃がより好ましく、100~180℃がさらに好ましく、120~160℃が特に好ましい。再生ゾーン12の内部の温度が上記下限値以上であると、より多くの二酸化炭素を脱着できる。再生ゾーン12の内部の温度が上記上限値以下であると、吸着剤の劣化を抑制できる。加えて、エネルギーを節約できる。
再生ゾーン12の内部の温度は、再生ゾーン12の内部に加熱装置等(不図示)を導入し、その加熱装置により調節できる。
【0044】
第三の排出操作における混合流体(二酸化炭素及び再生用流体)中の二酸化炭素の濃度は、例えば、1000ppm以上であってよく、1000~750000ppm、1000~500000ppm、1000~250000ppm、1000~100000ppm、が好ましく、1000~10000ppmがより好ましく、2000~10000ppmがさらに好ましく、2000~5000ppmが特に好ましい。混合流体中の二酸化炭素の濃度が上記下限値以上であると、より多くの二酸化炭素を再利用できる。混合流体中の二酸化炭素の濃度が上記上限値以下であると、混合流体の管理がより容易になる。
混合流体中の二酸化炭素の濃度は、再生用流体の種類、量、温度、再生ゾーン12の内部の温度、脱着工程における時間、及びこれらの組合せにより調節できる。
【0045】
<回収工程>
再生ゾーン12から排出された混合流体は、再生流体排出部50と配管54とを介して回収部60へと供給される(第六の供給操作)。この際、他の空気調和システムから排出され、配管54を通流した混合流体と合流させてもよい。
【0046】
回収部60に供給された混合流体は、貯留される(貯留操作)。再生用流体が水蒸気の場合、貯留された混合流体は、例えば、回収部60の内部の温度を60℃以下に冷却することで、気体の二酸化炭素と、液体の水とに容易に分離できる(分離操作)。再生用流体が水蒸気以外の場合は、例えば、二酸化炭素と再生用流体との分子量の違いを利用して両者を分離できる。
【0047】
分離された二酸化炭素は、ボンベ等に回収され(回収操作)、炭素源として再利用可能である(カーボンリサイクル)。
再生用流体は、再生流体供給部40に移送することにより、再利用可能である。再生用流体が水蒸気の場合、分離操作で分離された水を、再生流体供給部40における加熱器44の熱源として用いることも可能である。
【0048】
このように、回収工程では、二酸化炭素は混合流体として回収される。
回収工程では、再生流体排出部50又は配管54の流路内で二酸化炭素と再生用流体とを分離し、これを別々に回収してもよい。
【0049】
≪ビル空調システム≫
本発明のビル空調システムは、上述の空気調和システムを異なるフロアに複数備えたものである。ビル空調システムでは、1つのフロアに本発明の空気調和システムが1以上あればよい。
例えば、2以上のフロアに空気調和システムを備えることで、貯留できる混合流体の量を増やすことができ、二酸化炭素の回収量を増加できる。この場合、異なるフロアの空気調和システムから排出された混合流体をフロアごとに貯留してもよく、1カ所にまとめて貯留してもよい。貯留できる混合流体の量は、空気調和システムの数に応じて増加できる。
【0050】
本発明のビル空調システムの例を挙げて説明する。
図2のビル空調システム200は、複数の空気調和ユニット210と、再生流体排出部50と、配管54と、回収部60とを有する。
空気調和ユニット210は、ビル201の各地上フロアAに設けられている。配管54は、ビル201内の上下方向に延び、地上最上階から地下フロアBに至っている。配管54は、ブースター送風機212を介して、地下フロアBの回収部60に接続されている。各地上フロアAの空気調和ユニット210は、再生流体排出部50を介して、配管54に接続されている。
【0051】
空気調和ユニット210は、図1の空気調和システム1における再生流体排出部50、配管54、回収部60を除いた装置である。
【0052】
本実施形態のビル空調システム200において、各地上フロアAの空気調和ユニット210から排出された混合流体は、再生流体排出部50を通流して配管54に至る。配管54に至った混合流体は、配管54を流下し、ブースター送風機212によって回収部60に充填される。
こうして、各フロアで二酸化炭素を回収し、これを集合させることで、より多くの二酸化炭素を回収できる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の空気調和システムによれば、外気及び居室内の空気から二酸化炭素を除去できる。このため、二酸化炭素の濃度を低減した処理済空気を居室に供給できる。
本実施形態の空気調和システムによれば、除去した二酸化炭素を回収できる。このため、回収した二酸化炭素を炭素源等のエネルギー源として利用できる。
本実施形態の空気調和システムによれば、処理済空気を循環して利用できるため、居室に供給する空気を外気に頼らなくてもよい。このため、空調負荷の4割を占めると言われる外気負荷を低減できる。
本実施形態の空気調和システムによれば、空調負荷を低減できるため、空調コストを削減でき、空調にかかるエネルギーを低減できる。このため、発電所における二酸化炭素の排出量の削減につながる。
本実施形態の空気調和システムによれば、外気の二酸化炭素を直接回収できるため、広く活用されれば、地球全体の二酸化炭素の削減につながる。加えて、外気の二酸化炭素を直接回収できるため、屋内排気のみから二酸化炭素を吸収していた従来技術に比べ、多量かつ安定的に二酸化炭素を回収できる。
本実施形態の空気調和システム、ビル空調システム又は二酸化炭素回収方法により吸着、回収された二酸化炭素は、工業的な利用に必要な量を安定的に供給できる。このため、回収された二酸化炭素は、人工光合成等の化学工学プロセスによる、一酸化炭素、メタン、メタノール及びギ酸等のC1化合物の合成の材料、エタン、エチレン及びエタノール等のC2化合物の合成の材料、又は、プロピレン、ブテン等のオレフィン系化合物の合成の材料として、好適である。
このように、本発明の技術は、地球環境に有益な技術である。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変更が可能である。
【0055】
上述の実施形態では、ロータを1つ有する吸着部を有するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図1の空気調和システム1は、吸着部10に代えて、図3の吸着部10aを有してもよい。
図3の吸着部10aは、2つのロータ13a、13bを有している。ロータ13a、13bは、回転軸14で同軸に支持されている。ロータ13aは、ロータ13bよりも、噴霧器48寄りに位置している。吸着部10は、処理ゾーン11内に、第一の熱交換器15aと第二の熱交換器15bとを有する。第一の熱交換器15aと第二の熱交換器15bとは、ロータ13aとロータ13bとの間に位置している。第一の熱交換器15aは、第二の熱交換器15bよりも、ロータ13a寄りに位置している。
第一の熱交換器15aとしては、例えば、電熱線等、処理ゾーン11内の空気の温度を高める熱交換器が挙げられる。
第二の熱交換器15bとしては、例えば、冷媒を通流させたプレート式熱交換器が挙げられる。
第一の熱交換器15a、第二の熱交換器15bを有することで、処理済空気の温度を任意に調節できる。
吸着剤への二酸化炭素の吸着能は、温度が低いほど高まる。このため、処理済空気の温度を高める場合(暖房時)には、第一の熱交換器15aの一次側のロータ13bで効率的に二酸化炭素を吸着できる。また、処理済空気の温度を低める場合(冷房時)には、第二の熱交換器15bの二次側のロータ13aで効率的に二酸化炭素を吸着できる。
【0056】
例えば、吸着部はロータを備えていなくてもよく、吸着剤が充填された吸着塔等で吸着と脱着を行ってもよい。この場合、吸着塔の内部の温度又は圧力を調節することで、二酸化炭素の吸脱着を行うことができる。
さらに、2つ以上の吸着塔を有し、任意の吸着塔で吸着工程を行い、他の任意の吸着塔で脱着工程を行えるようにしてもよい。
上述の実施形態では、居室100の給気口は2つであるが、給気口の数は1つでもよく、3つ以上でもよい。
上述の実施形態では、居室100の排気口は1つであるが、排気口の数は2つ以上でもよい。
上述の実施形態では、1つのフロアに1つの空気調和システムが設置されているが、空気調和システムの数は、1つのフロアに2つ以上であってもよい。
【0057】
上述の実施形態では、空気調和システム1は、再生流体供給部40と、再生流体排出部50と、を有する。しかし、空気調和システムは、再生流体供給部と、再生流体排出部と、を有していなくてもよい。
例えば、図4の空気調和システム3は、吸着部310と、空気供給部20と、空気排出部30と、圧力調整部70と、回収部60と、居室100と、を有する。吸着部310には、圧力調整部70が接続されている。配管54の分岐52には、圧力調整部70が接続されている。
空気調和システム3は、吸着部10に代えて吸着部310を有し、再生流体供給部40と再生流体排出部50とに代えて圧力調整部70を有すること以外は、空気調和システム1と同様である。
【0058】
吸着部310は、処理ゾーン311と、再生ゾーン312と、ロータ313と、回転軸314と、フィルター316とを有する。吸着部310は、処理ゾーン311と、再生ゾーン312とに区画されている。処理ゾーン311は、配管L1で空気供給部20と接続されている。処理ゾーン311の内部には、二酸化炭素吸着能を有する吸着剤が担持されたロータ313が、回転軸314に回転可能に支持されている。配管L1とロータ313との間には、フィルター316が設けられている。処理ゾーン311には、空気排出部30が接続されている。再生ゾーン312には、圧力調整部70が接続されている。
【0059】
処理ゾーン311を形成する装置は、処理ゾーン11を形成する装置と同様である。
再生ゾーン312を形成する装置は、再生ゾーン12を形成する装置と同様である。
ロータ313は、ロータ13と同様である。
回転軸314は、回転軸14と同様である。
フィルター316は、フィルター16と同様である。
【0060】
圧力調整部70は、吸着部310の再生ゾーン312の内部の圧力を調整する。圧力調整部70は、圧力調整装置72と配管74とを有する。
圧力調整装置72としては、例えば、真空ポンプ、圧縮ポンプ(コンプレッサー)等が挙げられる。
配管74としては、例えば、金属製又は樹脂製の配管等が挙げられる。
本実施形態の配管74は、分岐52で配管54と接続されている。
【0061】
本実施形態の空気調和システム3は、再生流体供給部と再生流体排出部とを有しない。このため、空気調和システムの構成をより簡易にできる。
また、本実施形態の空気調和システム3は、再生用流体を使用しないため、再生用流体にかかるコストを低減できる。
【0062】
本実施形態の脱着工程は、吸着部の圧力を調整することで、圧力差を利用して、吸着剤に吸着している二酸化炭素を脱着させる工程である。
脱着工程では、まず、圧力調整装置72を稼働する。圧力調整装置72を稼働することで、吸着部310の再生ゾーン312の内部の圧力を調整する。本実施形態では、再生ゾーン312の内部の圧力を減圧する。再生ゾーン312の内部の圧力を減圧すると、圧力スイング吸着(PSA)の原理により、吸着剤に吸着している二酸化炭素が脱着する(脱着操作)。
【0063】
脱着工程における再生ゾーン312の内部の圧力は、常圧よりも低いことが好ましい。脱着工程における再生ゾーン312の内部の圧力は、例えば、100kPa以下が好ましく、100Pa以下がより好ましく、0.1Pa以下がさらに好ましい。脱着工程における再生ゾーン312の内部の圧力が上記上限値以下であると、より容易に、より多くの二酸化炭素を脱着できる。
脱着工程における再生ゾーン312の内部の圧力の下限値は、低いほど好ましく、理論上は絶対真空(0Pa)であるが、実質的には、超高真空(10-5Pa以下)である。
なお、脱着工程における再生ゾーン312の内部の圧力を100kPa以下に低下させて二酸化炭素を脱着させる原理を、真空スイング吸着(VSA)ともいう。
【0064】
再生ゾーン312では、二酸化炭素の分圧を低下させることで、吸着剤に吸着している二酸化炭素を脱着させてもよい。
この場合、二酸化炭素の分圧は、例えば、40Pa以下が好ましく、20Pa以下がより好ましく、10Pa以下がさらに好ましい。二酸化炭素の分圧が上記上限値以下であると、より容易に、より多くの二酸化炭素を脱着できる。二酸化炭素の分圧の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.1Paが挙げられる。
二酸化炭素の分圧は、再生ゾーン312の内部の二酸化炭素の濃度を測定することにより求められる。
二酸化炭素の分圧を低下させる方法としては、再生ゾーン312の内部の圧力を減圧する方法の他、再生ゾーン312に二酸化炭素以外の気体を供給する方法が挙げられる。二酸化炭素以外の気体としては、上述した再生用流体の他、外気や室内から排出される空気等が挙げられる。
【0065】
脱着工程で脱着した二酸化炭素は、吸着部310の再生ゾーン312から排出され、配管74、分岐52、配管54を介して、回収部60へと流入する。
【0066】
本実施形態の二酸化炭素回収方法(空気調和方法)では、再生用流体を使用しない。
このため、二酸化炭素のみを回収することが可能となり、二酸化炭素と再生用流体との分離操作を必要としない。
このため、本実施形態の二酸化炭素回収方法は、より効率よく二酸化炭素を回収できる。
【0067】
本実施形態のビル空調システムは、空気調和システム1に代えて空気調和システム3を空気調和ユニットとして用いること以外は、ビル空調システム200と同様である。
【0068】
本発明は、上述の実施形態には限定されない。
例えば、空気調和システムは、再生流体供給部と再生流体排出部と圧力調整部とを併用してもよい。再生流体供給部と再生流体排出部と圧力調整部とを併用することで、二酸化炭素の脱着をより効率的に行える。
例えば、ビル空調システムは、空気調和システム1と空気調和システム3とを併用してもよい。空気調和システム1と空気調和システム3とを併用することで、二酸化炭素の脱着をより効率的に行える。
【符号の説明】
【0069】
1,3…空気調和システム、10,10a,310…吸着部、11,311…処理ゾーン、12,312…再生ゾーン、13,13a,13b,313…ロータ、14,314…回転軸、15a…第一の熱交換器、15b…第二の熱交換器、16,316…フィルター、20…空気供給部、22,42…ブロア、23,43,45,46,54,74,112,114,L1…配管、24…混合チャンバー、30…空気排出部、40…再生流体供給部、44…加熱器、47,48…噴霧器、50…再生流体排出部、52,120…分岐、60…回収部、70…圧力調整部、72…圧力調整装置、100…居室、101,102…給気口、110…排気口、200…ビル空調システム、201…ビル、210…空気調和ユニット、212…ブースター送風機
図1
図2
図3
図4