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特許7578952検知装置、検知方法、検知プログラム、および検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】検知装置、検知方法、検知プログラム、および検知システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20241030BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241030BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20241030BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20241030BHJP
   G06T 7/254 20170101ALI20241030BHJP
【FI】
G06N20/00 130
G06T7/00 350B
F23G5/50 G
F23G5/50 Q
F23G5/44 B
G06T7/254 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021070778
(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2022165456
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭太
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕司
【審査官】千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-119407(JP,A)
【文献】特開2016-35337(JP,A)
【文献】特開平10-288327(JP,A)
【文献】特開平10-78208(JP,A)
【文献】特公昭58-17242(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 20/00
G06T 7/00
F23G 5/50
F23G 5/44
G06T 7/254
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を収容するホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像から、複数の当該画像が撮影された期間における前記対象物の移動状態を示す移動データを生成する移動データ生成部と、
前記移動データ生成部が生成した前記移動データに基づいて、前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する検知部と、を備え
前記移動データ生成部は、前記画像に写る前記ホッパの傾斜面に設定された複数の所定の位置のそれぞれに写る画像要素について、当該画像要素が前記画像間で下降方向に移動した移動量を示す前記移動データを生成し、
前記検知部は、
(1)前記下降方向と垂直な方向に一列に配列した複数の前記位置のそれぞれについて、前記移動量が正常範囲内であるか否かを判定し、
(2)前記(1)の判定の結果から、前記一列において前記対象物が正常に移動しているか否かを判定し、
(3)前記(2)の判定結果に基づいて前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する、検知装置。
【請求項2】
前記下降方向と垂直な方向に配列した複数の前記位置からなる列は、前記下降方向に沿って複数配列されており、
前記検知部は、複数の前記列のそれぞれについて前記(1)および前記(2)の判定を行い、各列の判定結果に基づいて前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する、請求項に記載の検知装置。
【請求項3】
前記画像中の前記位置が設定されている領域である対象領域に前記対象物が写っているか否かを判定する判定部を備え、
前記移動データ生成部は、前記判定部が前記対象領域に前記対象物が写っていると判定した前記画像間における移動量を示す前記移動データを生成する、請求項1または2に記載の検知装置。
【請求項4】
1または複数の情報処理装置が実行するブリッジの検知方法であって、
対象物を収容するホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像から、複数の当該画像が撮影された期間における前記対象物の移動状態を示す移動データを生成する移動データ生成ステップと、
前記移動データ生成ステップで生成した前記移動データに基づいて、前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する検知ステップと、を含み、
前記移動データ生成ステップでは、前記画像に写る前記ホッパの傾斜面に設定された複数の所定の位置のそれぞれに写る画像要素について、当該画像要素が前記画像間で下降方向に移動した移動量を示す前記移動データを生成し、
前記検知ステップでは、
(1)前記下降方向と垂直な方向に一列に配列した複数の前記位置のそれぞれについて、前記移動量が正常範囲内であるか否かを判定し、
(2)前記(1)の判定の結果から、前記一列において前記対象物が正常に移動しているか否かを判定し、
(3)前記(2)の判定結果に基づいて前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する、検知方法。
【請求項5】
請求項に記載の検知装置としてコンピュータを機能させるための検知プログラムであって、前記移動データ生成部および前記検知部としてコンピュータを機能させるための検知プログラム。
【請求項6】
対象物を収容するホッパを上方から撮影する撮影装置と、
前記撮影装置が撮影した時系列の複数の画像から生成された、複数の当該画像が撮影された期間における前記対象物の移動状態を示す移動データに基づいて、前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する検知装置と、
前記検知装置がブリッジの発生を検知したときに、ブリッジの発生を報知する報知装置と、を含み、
前記移動データは、前記画像に写る前記ホッパの傾斜面に設定された複数の所定の位置のそれぞれに写る画像要素について、当該画像要素が前記画像間で下降方向に移動した移動量を示すデータであり、
前記検知装置は、
(1)前記下降方向と垂直な方向に一列に配列した複数の前記位置のそれぞれについて、前記移動量が正常範囲内であるか否かを判定し、
(2)前記(1)の判定の結果から、前記一列において前記対象物が正常に移動しているか否かを判定し、
(3)前記(2)の判定結果に基づいて前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する、検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホッパにおけるブリッジの発生を検知する検知装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なごみの焼却施設には、ホッパと呼ばれる漏斗状の装置が設けられている。ごみピットと呼ばれる貯留設備に貯留されたごみは、クレーン等により掴み上げられてホッパに投入され、ホッパから焼却炉に送り込まれて焼却される。このような焼却施設では、ホッパに投入されたごみが、ホッパ内で架橋状に詰まることがあり、この現象はブリッジと呼ばれている。
【0003】
ブリッジが発生すると、ブリッジの上部のごみは同じ位置に留まり続けるため、ホッパ内に蓄積されているごみの高さ(ごみレベル)は高い状態が維持される。一般に、ごみレベルの下降をトリガとしてホッパへのごみの投入は行われるから、ブリッジが生じるとホッパへの新たなごみの投入は行われなくなる。その一方で、ブリッジの下方のごみは、焼却炉に送り込まれて順次焼却されるため、ブリッジを放置すると焼却炉内のごみの量が減少し、さらに放置すると焼却炉内に燃やすごみがない状態となってしまう。
【0004】
焼却炉内のごみの量が減少したり、ごみが無くなったりすると、焼却炉内の温度が低下してバーナー等による加温が必要になったり、場合によっては焼却炉を停止させる必要が生じたりすることもある。このような事態を避けるための技術としては、例えば、下記の特許文献1が挙げられる。特許文献1には、周期的に計測したホッパレベルに基づいてブリッジを検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-238735号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ごみは様々な物体を含んでいるため形状が一定せず、また、一部のごみがホッパへの投入時に跳ね上がったり、ホッパの上部に引っかかったりすることもあるため、ホッパレベルを安定して正確に計測することは難しい。このため、ホッパレベルに基づいてブリッジを検出する場合、誤検知が頻発しない程度の検出閾値を設定せざるを得ず、これによりブリッジの発生から検出までの間に大きなタイムラグが生じることがあった。なお、このような問題は、ごみの焼却炉に設置されたホッパに限られず、ブリッジが発生し得る任意の用途のホッパに共通して生じる問題点である。
【0007】
本発明の一態様は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブリッジの発生を早期に検知することができる検知装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る検知装置は、対象物を収容するホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像から、複数の当該画像が撮影された期間における前記対象物の移動状態を示す移動データを生成する移動データ生成部と、前記移動データ生成部が生成した前記移動データに基づいて、前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する検知部と、を備える。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る検知方法は、1または複数の情報処理装置が実行するブリッジの検知方法であって、対象物を収容するホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像から、複数の当該画像が撮影された期間における前記対象物の移動状態を示す移動データを生成する移動データ生成ステップと、前記移動データ生成ステップで生成した前記移動データに基づいて、前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する検知ステップと、を含む。
【0010】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る検知装置は、対象物を収容するホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像から、複数の当該画像が撮影された期間における前記対象物の移動状態を示す移動データを生成する移動データ生成部と、対象物の移動状態と当該対象物が当該移動状態であるときのブリッジの発生の有無との関係を学習した学習済みモデルに前記移動データを入力して得られる出力値に基づいて、前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する検知部と、を備える。
【0011】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る検知システムは、対象物を収容するホッパを上方から撮影する撮影装置と、前記撮影装置が撮影した時系列の複数の画像から生成された、複数の当該画像が撮影された期間における前記対象物の移動状態を示す移動データに基づいて、前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する検知装置と、前記検知装置がブリッジの発生を検知したときに、ブリッジの発生を報知する報知装置と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、ブリッジの発生を早期に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係る検知装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係る検知システムの構成例を示す図である。
図3】ごみの有無の判定方法の例を示す図である。
図4】移動データの生成方法の例を示す図である。
図5】ブリッジの発生の検知方法を説明する図である。
図6】上記検知装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態2に係る検知装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
(システム構成)
本実施形態に係る検知システム100の構成を図2に基づいて説明する。図2は、検知システム100の構成例を示す図である。図2には、検知システム100をごみ焼却施設に設けられたホッパAのブリッジ検出に適用した例を示している。なお、検知システム100は、ホッパAに限られず、ブリッジが発生し得る任意の用途のホッパに適用することができる。ホッパAに収容される対象物はごみGであるが、検知システム100は、ごみG以外の任意の対象物を収容するホッパについてもブリッジを検出することができる。
【0015】
図2に示すごみ焼却施設には、ごみGを貯留するごみピットBと、ごみGを焼却する焼却炉Cが設けられている。ごみピットB内のごみGは、クレーンによりホッパAに投入される。ホッパAの上部には外側に拡がるように傾斜した傾斜面A1が形成されており、ごみGはこの傾斜面A1上を滑り落ちてホッパAの内部に入り、ここで一時的に収容される。そして、ホッパA内のごみGは、その下部の開口部A2から焼却炉Cに順次送り込まれて焼却される。なお、図2の例では、開口部A2付近は、ごみGが存在しない空洞になっている。これは、ホッパA内でごみが架橋状に詰まっていること、つまりブリッジが発生していることによる。ブリッジが発生していない正常な動作状態では開口部A2付近にもごみGが詰まっている。
【0016】
検知システム100は、上述のように、ホッパAにおけるブリッジの発生を検知するシステムであり、検知装置1と撮影装置2と報知装置3を含む。撮影装置2はホッパAの上方に配置されており、ホッパAを所定時間毎に上方から撮影する。また、検知装置1は、撮影装置2が撮影した各画像を取得し、それらの画像を用いてホッパAにおけるブリッジの発生を検知する。そして、報知装置3は、検知装置1がブリッジの発生を検知したときにブリッジの発生を検知システム100のユーザに報知する。
【0017】
なお、図2には、音声によりブリッジの発生を報知する例、つまり報知装置3が音声出力装置である例を示しているが、この例に限られない。報知方法は、報知対象者にブリッジが発生したことを認識させることができるようなものであればよく、報知装置3も報知方法に応じた装置を適用すればよい。例えば、報知装置3を警報ランプや表示装置等としてもよい。
【0018】
より詳細には、撮影装置2は、ホッパAについて時系列の複数の画像を撮影する。そして、検知装置1は、撮影装置2が撮影した時系列の複数の画像から生成された、複数の当該画像が撮影された期間におけるごみGの移動状態を示す移動データに基づいて、ホッパAにおけるブリッジの発生を検知する。
【0019】
ここで、本発明の発明者らは、各種ホッパを上方から撮影した画像を精査することにより、ブリッジが発生したときに撮影された画像には、ブリッジが発生していないときに撮影された画像とは異なる特徴が表れることを見出した。より詳細には、ブリッジの発生時と正常な動作時とでは、画像に写る対象物の移動状態に差異があることを見出した。
【0020】
検知装置1はこの知見に基づいてブリッジの発生を検知する。上述のように、ブリッジの発生時と正常な動作時とでは、画像に写るごみGの移動状態に差異がある。このため、時系列の複数の画像から生成された、複数の当該画像が撮影された期間におけるごみGの移動状態を示す移動データに基づいてブリッジの発生を検知することができる。なお、この検知方法の詳細は後述する。
【0021】
また、ブリッジの発生時に特有の移動状態はブリッジの発生直後の画像において観察されるため、前記の構成によれば、ブリッジの発生を早期に検知することができる。さらに、前記の構成によれば、ホッパレベルに基づいたブリッジ検出と比べて、安定して高精度な検知が可能になる。これは、不定型な対象物の高さをホッパレベル計で安定して正確に計測することが難しいのに対し、ホッパAを上方から撮影した画像にはブリッジの発生時に特有の移動状態が安定して観察されるためである。
【0022】
以上のように、検知システム100は、ごみGを収容するホッパAを上方から撮影する撮影装置2と、撮影装置2が撮影した時系列の複数の画像から生成された、複数の当該画像が撮影された期間におけるごみGの移動状態を示す移動データに基づいて、ホッパAにおけるブリッジの発生を検知する検知装置1と、検知装置1がブリッジの発生を検知したときに、ブリッジの発生を報知する報知装置3と、を含む。この構成によれば、ブリッジの発生を早期に検知し、報知することができる。
【0023】
なお、検知装置1の配置場所は特に限定されず、例えば、ごみ焼却施設に配置してもよいし、複数のごみ焼却施設の監視を行う監視センター等に配置してもよい。また、図2には、1つの検知装置1により、1つのホッパAのブリッジの発生の監視および検知を行う例を示しているが、1つの検知装置1により複数のホッパのブリッジの発生の監視および検知を行うことも可能である。この場合、例えば検知装置1をクラウドサーバとしてもよい。
【0024】
また、ブリッジの発生を検知したときに行う処理は上述の例に限られない。例えば、ごみ焼却施設にブリッジを解消するためのブリッジ除去装置が設けられている場合、検知装置1は、ブリッジの発生を検知したときにブリッジ除去装置を動作させて、ブリッジを自動で解消するようにしてもよい。ブリッジ除去装置は、ブリッジを解消できるような装置であればよく、例えばホッパに詰まったごみを押下する押下体を備えた装置等であってもよい。
【0025】
(検知装置の構成)
図1に基づいて検知装置1の構成を説明する。図1は、検知装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、検知装置1は、検知装置1の各部を統括して制御する制御部10と、検知装置1が使用する各種データを記憶する記憶部11を備えている。また、検知装置1は、検知装置1が他の装置と通信するための通信部12、検知装置1に対する各種データの入力を受け付ける入力部13、検知装置1が各種データを出力するための出力部14を備えている。
【0026】
また、制御部10には、データ取得部101、判定部102、移動データ生成部103、検知部104、および報知制御部105が含まれている。そして、記憶部11には、画像DB111が記憶されている。
【0027】
データ取得部101は、ホッパAを上方から撮影した時系列の複数の画像を取得する。上述のように、検知システム100では、撮影装置2がホッパAを上方から撮影した時系列の複数の画像を撮影するから、データ取得部101は、撮影装置2が撮影した画像を取得すればよい。なお、データ取得部101は、通信部12を介した通信により撮影装置2から画像を取得してもよいし、入力部13を介して入力された画像を取得してもよい。データ取得部101は、取得した画像を画像DB111に記録する。なお、撮影装置2は、動画像を撮影するものであってもよい。この場合、データ取得部101は、撮影装置2が撮影した動画像から時系列の複数の画像(例えば、所定時間おきのフレーム画像)を取得すればよい。
【0028】
判定部102は、データ取得部101が取得した画像における、ブリッジの発生の有無を検知するための解析の対象となる対象領域にごみが写っているか否かを判定する。対象領域におけるごみの判定方法の詳細は図3に基づいて後述する。
【0029】
移動データ生成部103は、データ取得部101が取得し、画像DB111に記録した時系列の複数の画像から、複数の当該画像が撮影された期間におけるごみの移動状態を示す移動データを生成する。移動データの生成方法の詳細は図4に基づいて後述する。
【0030】
検知部104は、移動データ生成部103が生成した移動データに基づいて、ホッパAにおけるブリッジの発生を検知する。ブリッジの発生の検知方法の詳細は図5に基づいて後述する。
【0031】
報知制御部105は、検知部104がブリッジの発生を検知したときに、ブリッジの発生を報知する。具体的には、報知制御部105は、検知部104がブリッジの発生を検知したときに、報知装置3にブリッジの発生を示す音声を出力させることによりブリッジの発生を報知する。なお、ブリッジの発生の報知方法は、報知対象者にブリッジが発生したことを認識させることができるようなものであればよく、特に限定されない。例えば、報知対象者の付近に検知装置1を配置している場合、報知制御部105が出力部14にブリッジが発生したことを示す情報を出力させるようにしてもよい。また、例えば、報知制御部105は、報知対象者の所持する端末装置にメッセージを送信する等の方法で報知を行ってもよい。
【0032】
以上のように、検知装置1は、ホッパAを上方から撮影した時系列の複数の画像から、複数の当該画像が撮影された期間におけるごみの移動状態を示す移動データを生成する移動データ生成部103と、移動データ生成部103が生成した移動データに基づいて、ホッパAにおけるブリッジの発生を検知する検知部104と、を備える。この構成によれば、ブリッジの発生を早期に検知することができる。
【0033】
また、詳細は後述するが、移動データは、異なるタイミングで撮影された2枚の画像があれば生成することができる。このため、機械学習等を行う必要がなく、ごみ焼却施設において検知装置1の運用をすぐに開始することができる。また、撮影装置2の設置場所や撮影角度が多少変更されても特に影響なく検知を行うことができる。さらに、ごみ焼却施設内に設置した撮影装置2のレンズには汚れが付着することも想定されるが、付着した汚れには動きがないため、そのような汚れが移動データの生成に与える影響も限定的である。つまり、検知装置1を含む検知システム100には、導入が容易であり、かつ安定した運用が可能であるという利点がある。
【0034】
(ごみの有無の判定について)
判定部102によるごみの有無の判定について図3に基づいて説明する。図3は、ごみの有無の判定方法の例を示す図である。図3に示す画像Dは、ホッパを上方から撮影した画像である。画像Dには、ホッパの傾斜面を滑り落ちていくごみが写っているが、傾斜面の全体にごみが写っていはいない。具体的には、ホッパの傾斜面のうち下流側の領域d2にはごみが写っているが、上流側の領域d1にはごみは写っていない。
【0035】
ここで、移動データ生成部103が、領域d1のようにごみが写っていない領域について移動データを生成したとすると、移動データが示す移動量がゼロまたはゼロに近い値となる可能性がある。そして、移動量がゼロまたはゼロに近い値となったときには、実際にはごみがなく、ブリッジが発生していないにもかかわらず、ブリッジが発生したと誤検知してしまう可能性がある。
【0036】
上記のような誤検知を回避するため、検知装置1は判定部102を備えている。判定部102は、画像中の対象領域にごみが写っているか否かを判定する。そして、移動データ生成部103は、判定部102が対象領域にごみが写っていると判定した画像間における移動量を示す移動データを生成する。これにより、対象領域に対象物が写っていない画像がブリッジの検知に用いられなくなるため、上述のような誤検知を防ぐことができる。なお、詳細は後述するが、対象領域はホッパの傾斜面上、より詳細には領域d2のように下流側の傾斜面上に設定することが好ましい。
【0037】
ごみが写っているか否かは撮影された画像を用いて判定してもよいし、撮影された画像に所定の画像処理を施すことによりごみの有無を判定しやすくした上で判定してもよい。上記画像処理としては、例えばCanny法が挙げられる。Canny法は、画像におけるエッジ検出のためのアルゴリズムである。図3に示す画像D1は、画像DからCanny法でエッジ検出することにより生成された画像である。一般的にごみの外観は、ホッパの表面形状と比べてはるかに複雑である。このため、図3の例では、ごみが写っていない領域d1と比べて、ごみが写る領域d2では多数のエッジが検出されている。
【0038】
よって、判定部102は、ホッパを撮影した画像にCanny法を適用してエッジ検出し、対象領域で検出されたエッジの数が閾値以上の画像をごみが写っている画像と判定し、対象領域で検出されたエッジの数が閾値未満の画像をごみが写っていない画像と判定してもよい。
【0039】
無論、Canny法以外のエッジ検出手法を適用してもよい。また、エッジ検出以外の手法によりごみの有無を判定することもできる。例えば、判定部102は、画像を構成する各画素の輝度値およびRGB値の少なくとも何れかを解析することによりごみの有無を判定してもよい。また、例えば、判定部102は、ごみの有無を判別できるように学習させた学習済みモデル(例えばニューラルネットワークモデル)によりごみの有無を判定してもよい。
【0040】
(移動データの生成方法)
移動データ生成部103による移動データの生成方法について図4に基づいて説明する。図4は、移動データの生成方法の例を示す図である。より詳細には、図4には、時刻tにホッパの傾斜面上を撮影した画像E1と、時刻t+Δtにホッパの傾斜面上を撮影した画像E2との間におけるごみの移動状態を示す移動データFを、画像相関法により生成する例を示している。なお、図4において、y方向はごみが下降する方向、つまりホッパの傾斜面(図2の傾斜面A1参照)の上流側から下流側に向かう方向であり、x方向は上記傾斜面上におけるy方向に垂直な方向である。
【0041】
画像相関法は、時系列の2枚の画像について、各画像に写る各粒子の移動量を画像処理で演算して、算出した移動量をベクトルとして表す手法である。例えば、画像E1において、破線の枠囲みで示すごみは位置e1に写っているが、画像E2では位置e1よりも下方の位置e2に写っている。このごみの移動状態は、移動データFでは、位置e1から位置e2までの変位を示すベクトルf1として表される。また、他の位置についても同様にベクトルが算出される。
【0042】
このように、移動データFでは、画像E1およびE2における各位置におけるごみの移動状態が表される。具体的には、移動データFからは、画像E1およびE2における各位置におけるごみは、y方向(ホッパの傾斜面の下流側つまり下降方向)に向かって移動していることが分かる。なお、移動データFにおいて、y方向成分の値が閾値以上のベクトルについては実線の矢印で示し、閾値未満のベクトルについては破線の矢印で示している。これにより、ごみの移動が速い位置と遅い位置があることも分かる。
【0043】
以上のように、移動データ生成部103は、画像E1、E2に写る傾斜面に設定された複数の所定の位置のそれぞれに写る画像要素について、当該画像要素が画像E1、E2間で下降方向に移動した移動量を示す移動データを生成してもよい。
【0044】
ホッパの傾斜面においては、ごみは概ね同じ下降方向に向けて滑り落ちていくため、ホッパの傾斜面は、ごみがスムーズに下降しているか、下降が滞っているかの判定に好適な位置である。よって、前記の構成によれば、ごみがスムーズに下降しているか、下降が滞っているかを的確に示す移動データを生成することができる。そして、この移動データを用いてブリッジの発生を検知することにより、信頼性の高い検知を行うことができる。
【0045】
なお、移動データは、傾斜面以外が写る画像部分についてもまとめて生成してもよい。この場合、検知部104は、移動データ生成部103が生成した移動データのうち、傾斜面が写る部分に設定された対象領域内の移動データを用いてブリッジを検知すればよい。
【0046】
無論、ごみの移動方向が概ね同様の方向となる領域を対象領域とすればよいのであり、傾斜面以外の領域を対象領域としてもよい。例えば、ホッパの内表面のうち、傾斜面の下流側で該傾斜面と接続する内表面上の領域(通常は垂直方向に延在する)を対象領域としてもよく、傾斜面上とそれ以外の部分の両方を含む領域を対象領域としてもよい。
【0047】
また、移動データは、ごみの移動状態を示すデータであればよく、上述の例に限られない。例えば、ごみの移動速度を移動データとしてもよい。また、異なる時刻に撮影された2枚の画像の差分を示す差分画像を移動データとしてもよい。
【0048】
(ブリッジの発生の検知方法)
検知部104によるブリッジの発生の検知方法について図5に基づいて説明する。図5は、ブリッジの発生の検知方法を説明する図である。より詳細には、図5には、ホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像から生成した移動データHを用いてブリッジの発生を検知する例を示している。なお、移動データHは、上述した画像相関法を用いて生成されたものであり、ホッパを撮影した画像に設定された複数の所定の位置のそれぞれに写る画像要素の移動ベクトルを示すデータである。また、図5では、移動データHにおいて、ブリッジの発生の有無を検知するための解析の対象となる対象領域を枠囲みh1で示している。
【0049】
図5に示す画像Jは、ホッパを撮影した画像における対象領域を拡大したものである。また、この画像Jにおいては、移動ベクトルが算出された各位置をプロットしている。例えば、位置j1においては移動ベクトルが(-1,3)と算出されている。図示のように、移動ベクトルが算出される位置は、画像Jの全体に均一に設定されている。より詳細には、複数の位置がごみの下降方向と垂直な方向、すなわち図5のx方向に一列に配列されていると共に、その列がごみの下降方向、すなわち図5のy方向に沿って複数配列されている。
【0050】
ブリッジが発生しているか否かを判定する際、まず、検知部104は、x方向に一列に配列した複数の位置のそれぞれについて、ごみの移動量が正常範囲内であるか否かを判定する。
【0051】
例えば、移動ベクトルのy値、すなわちごみの下降方向への移動量をDとしたとき、Dの正常範囲をD≧m1と定めておいてもよい。m1は正常範囲の下限値である。なお、位置によっては移動量Dが負の値となることがある。これは、その位置において、ごみが下降方向とは逆向きに移動していることを示す。このような移動は通常生じないため、移動量Dが負の値となった位置については判定不能としてもよい。
【0052】
例えば、検知部104は、下記の条件式(1)~(3)により各位置を3段階で評価してもよい。
D≧m1 (1)
m1>D>0 (2)
D≦0 (3)
条件式(1)の条件を満たす位置は、ごみがスムーズに下降している正常な移動状態であるといえる。一方、条件式(2)の条件を満たす位置は、ごみの移動量が小さく、ブリッジが発生しているときに特有の異常な移動状態に該当するといえる。よって、検知部104は、例えば、上記条件式(1)の条件を満たす位置については評価値を1(異常なしを示す値)とし、上記条件式(2)の条件を満たす位置については評価値を0(異常ありを示す値)としてもよい。また、検知部104は、上記条件式(3)の条件を満たす位置については、評価値を-1(判定不能を示す値)としてもよい。
【0053】
例えば、m1=1とした場合、図5の画像Jにおける位置j1は、移動ベクトルのy値が3であるから上記条件式(1)の条件を満たす。よって、この場合、位置j1の評価値は1となる。他の位置についても同様に評価値が算出される。
【0054】
次に、検知部104は、各位置についての移動量が正常範囲内であるか否かの判定の結果から、x方向に並んだ位置の列ごとに、ごみが正常に移動しているか否かを判定する。例えば、検知部104は、上述のようにして各位置について1、0、または-1の評価値を算出した場合、下記の条件式(4)~(6)により、各列を3段階で評価してもよい。なお、Sum(D)は、x方向に一列に並んだ位置の移動量の評価値の和である。
Sum(D)>0 (4)
Sum(D)=0 (5)
Sum(D)<0 (6)
条件式(4)の条件を満たす列は、全体としてごみがスムーズに下降している正常な移動状態であるといえる。一方、条件式(5)の条件を満たす列は、全体としてごみの移動量が小さく、ブリッジが発生しているときに特有の異常な移動状態に該当するといえる。このため、検知部104は、上記条件式(4)の条件を満たす列については評価値を1とし、上記条件式(5)の条件を満たす列については評価値を0としてもよい。また、検知部104は、上記条件式(6)の条件を満たす列については評価値を-1としてもよい。
【0055】
例えば、図5の画像Jにおける列K1には、位置j1を含めて合計5つの位置が含まれている。よって、列K1については、これら5つの位置のそれぞれについて算出された移動量の評価値の和であるSum(D)が算出され、算出されたSum(D)に基づいて条件式(4)~(6)により列K1の評価値が算出される。また、他の列についても同様に評価値が算出される。図5では、各列の評価値を欄Lに示している。この例では、全ての列の評価値が1、すなわち正常となっている。
【0056】
最後に、検知部104は、上述した各列の判定の結果に基づいて総合的な判定結果を生成し、その判定結果に基づいてブリッジの発生を検知する。例えば、上述のようにして算出した各列の評価値をJとし、全ての列の評価値の和をSum(J)とした場合、検知部104は、下記の条件式(7)~(9)により、総合判定結果を生成し、その総合判定結果に基づいてブリッジの発生を検知してもよい。なお、m2は予め定めた閾値である。
Sum(J)≧m2 (7)
Sum(J)<m2 (8)
-1∈J (9)
条件式(7)の条件を満たす場合、全体としてごみがスムーズに下降している正常な移動状態であるといえるから、検知部104は総合判定結果を1とし、ブリッジが発生していないと判定する。一方、条件式(8)の条件を満たす場合は、全体としてごみの移動量が小さく、ブリッジが発生しているときに特有の異常な移動状態に該当するといえるから、検知部104は総合判定結果を0とし、ブリッジが発生したと判定する。なお、条件式(9)の条件を満たす場合は、少なくとも1つの列で判定不能となった場合である。この場合、検知部104は、総合判定結果を-1とし、ブリッジの発生の有無は判定不能とすればよい。
【0057】
以上のように、検知部104は、(i)x方向に一列に配列した複数の位置のそれぞれについて、移動量が正常範囲内であるか否かを判定し、(ii)前記(i)の判定の結果から、前記一列においてごみが正常に移動しているか否かを判定し、(iii)前記(ii)の判定結果に基づいてブリッジの発生を検知してもよい。
【0058】
一般に、ごみは複数の物体から構成されたものである。このため、下降方向と垂直な方向に一列に並んだ位置にあるごみの構成要素は、概ねその列を維持したままホッパ上を滑り落ちていくため、下降方向と垂直な方向の列に沿ってブリッジの発生時に特有の移動状態を検出することは有効である。ただし、ホッパ上の位置に応じてごみの構成要素の移動量にばらつきが生じることがある。このため、例えば、全体としてはごみがスムーズに下降している場合であっても、一部の位置の移動量が正常範囲外となることも想定される。
【0059】
そこで、前記の構成によれば、一列に配列した各位置における移動量が正常範囲内であるか否かの判定結果に基づき、その一列においてごみが正常に移動しているか否かを判定する、という構成を採用している。これにより、x方向に並んだ各位置における移動量にばらつきが生じた場合であっても、ごみが正常に移動しているか否かを適切に判定し、その判定結果に基づいてブリッジの発生を精度よく検知することが可能になる。
【0060】
また、以上のように、検知部104は、複数の前記列のそれぞれについて前記(i)および前記(ii)の判定を行い、各列の判定結果に基づいて前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知してもよい。この構成によれば、各列におけるごみが正常に移動しているか否かの判定結果に基づいてブリッジの発生を検知するので、各列における判定結果にばらつきが生じた場合であっても、ブリッジの発生を精度よく検知することが可能になる。
【0061】
なお、上記の判定方法は一例にすぎず、移動データに基づくブリッジの発生検知方法としては様々な手法が適用できる。例えば、検知部104は、移動データから対象領域内の各位置における移動量を特定し、特定した移動量の和あるいは平均値を所定の閾値と比較して、閾値以上であれば正常、閾値未満であれば異常すなわちブリッジが発生したと判定してもよい。
【0062】
また、例えば、検知部104は、x方向に一列に並んだ各位置(例えば、図5の列K1に含まれる各位置)の移動データのみを用いてブリッジの発生を検知してもよい。この場合、例えば、検知部104は、上述の条件式(4)~(6)による評価結果から、ブリッジの発生を検知してもよい。
【0063】
また、上述の閾値m1を含めた、ブリッジの発生検知に用いる各種閾値は、固定値としてもよいし、変動値としてもよい。例えば、ホッパから焼却炉にごみを送り込む速度(給じん速度)が速い場合には、ホッパ上部におけるごみの移動速度も速くなる。このため、閾値m1を給じん速度に連動して変化させてもよい。具体的には、給じん速度が速いほど閾値m1を大きな値に設定してもよい。これにより、給じん速度が速いにもかかわらずホッパ上部におけるごみの移動が緩慢になっている場合に、ブリッジが発生したと検知することができる。
【0064】
(処理の流れ)
検知装置1が実行する処理の流れ(検知方法)について図6に基づいて説明する。図6は、検知装置1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、図6の処理は、例えば、撮影装置2が新たな画像を撮影する毎に行われる。
【0065】
S1では、データ取得部101が、ホッパを上方から撮影した時系列の画像を取得し、画像DB111に記録する。上述のように、これらの画像は撮影装置2(図2参照)が撮影するので、データ取得部101は撮影装置2が撮影した画像を取得すればよい。
【0066】
S2では、判定部102が、S1で取得された画像における対象領域にごみが写っているか否かを判定する。対象領域にごみが写っているか否かの判定方法は図3に基づいて説明したとおりであるからここでは説明を繰り返さない。S2でYESと判定された場合にはS3に進み、S2でNOと判定された場合には図6の処理は終了する。
【0067】
S3(移動データ生成ステップ)では、移動データ生成部103が、S1で取得された画像と、該画像より前に撮影された画像から、それら画像が撮影された期間におけるごみの移動状態を示す移動データを生成する。例えば、S1で時刻t+Δtに撮影された画像が取得された場合、移動データ生成部103は、画像DB111から時刻tに撮影された画像を読み出す。そして、移動データ生成部103は、時刻tから時刻t+Δtまでの期間におけるごみの移動状態を示す移動データを生成する。移動データの生成方法は図4に基づいて説明したとおりであるからここでは説明を繰り返さない。
【0068】
S4では、検知部104が、S3で生成された移動データを用いて、S1で取得された画像に設定された対象領域内の各位置について、移動量が正常範囲内であるか否かを判定する。続くS5では、検知部104は、S4の判定結果に基づいて、ごみの下降方向と垂直な方向(図5のx方向)に上記位置が配列した各列における移動状態が正常である否かを判定する。そして、S6では、検知部104は、S5における各列の判定結果に基づいて総合判定結果を生成する。なお、S4~6の判定方法は図5に基づいて説明したとおりであるから、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0069】
S7(検知ステップ)では、検知部104は、S6の総合判定結果に基づいてブリッジの発生を検知する。例えば、総合判定結果を、1(異常なし)、0(異常あり)、および-1(判定不能)の何れかの数値で表す場合、検知部104は、S6の総合判定結果が1であればブリッジは発生していない(S7でNO)と判定する。この場合、図6の処理は終了する。一方、S6の総合判定結果が0であれば、検知部104は、ブリッジは発生した(S7でYES)と判定する。つまり、この場合に検知部104はブリッジの発生を検知する。この後、処理はS8に進む。
【0070】
なお、判定不能の場合の処理は予め定めておけばよい。例えば、検知部104は、判定不能の場合に図6の処理を終了してもよいし、S8に進んで判定不能であったことをユーザに報知させてもよい。
【0071】
S8では、報知制御部105が、ブリッジの発生を報知する。具体的には、報知制御部105は、報知装置3にブリッジの発生を示す音声を出力させることによりブリッジの発生を報知する。なお、ごみ焼却施設にブリッジを解消するためのブリッジ除去装置が設けられている場合、S8では、報知制御部105は、報知を行うと共に、あるいは報知を行う代わりに、ブリッジ除去装置を動作させてブリッジを解消させてもよい。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る検知方法は、ごみを収容するホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像から、複数の当該画像が撮影された期間におけるごみの移動状態を示す移動データを生成する移動データ生成ステップ(S3)と、移動データ生成ステップで生成した前記移動データに基づいてブリッジの発生を検知する検知ステップ(S7)と、を含む。この検知方法によれば、ブリッジの発生を早期に検知することができる。
【0073】
なお、実施形態1の冒頭で述べた通り、検知システム100は、ごみ焼却施設のホッパに限られず、ブリッジが発生し得る任意の用途のホッパに適用することができ、ホッパに収容される対象物はごみに限られない。つまり、上述した実施形態に記載した「ごみ」は、任意の「対象物」に読み替えることができる。
【0074】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0075】
(検知装置の構成)
図7に基づいて本実施形態に係る検知装置1Aの構成を説明する。図7は、検知装置1Aの要部構成の一例を示すブロック図である。検知装置1Aは、図1に示した検知装置1と比べて、検知部104が検知部104Aに変わっている点、および記憶部11に学習済みモデル112が記憶されている点で相違している。
【0076】
検知部104Aは、対象物の移動状態と当該対象物が当該移動状態であるときのブリッジの発生の有無との関係を学習した学習済みモデル112に、移動データ生成部103が生成した移動データを入力して得られる出力値に基づいて、ホッパにおけるブリッジの発生を検知する。なお、上記移動データは実施形態1と同様に移動データ生成部103が生成する。また、上記対象物は、ごみであってもよいし、ごみ以外のものであってもよい。
【0077】
以上のように、検知装置1Aは、対象物を収容するホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像から、複数の当該画像が撮影された期間における前記対象物の移動状態を示す移動データを生成する移動データ生成部103と、対象物の移動状態と当該対象物が当該移動状態であるときのブリッジの発生の有無との関係を学習した学習済みモデル112に前記移動データを入力して得られる出力値に基づいて、前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する検知部104Aと、を備える。
【0078】
前記の構成は、実施形態1の検知装置1と同様に、ブリッジの発生時と正常な動作時とでは、画像に写る対象物の移動量に差異があるという知見に基づくものである。上述のように、ブリッジの発生時と正常な動作時とでは、画像に写る対象物の移動状態に差異があるから、検知装置1Aが備える前記の構成によれば、ブリッジの発生を検知することができる。
【0079】
また、ブリッジの発生時に特有の移動状態はブリッジの発生直後の画像において観察されるため、検知装置1Aによれば、実施形態1の検知装置1と同様に、ブリッジの発生を早期に検知することができる。さらに、検知装置1Aによれば、実施形態1の検知装置1と同様に、ホッパレベルに基づいたブリッジ検出と比べて、安定して高精度な検知が可能になる。
【0080】
(学習済みモデルについて)
学習済みモデル112は、上述のように、対象物の移動状態と当該対象物が当該移動状態であるときのブリッジの発生の有無との関係を学習することにより生成されたものである。
【0081】
学習済みモデル112の生成に用いる教師データを生成する場合、まず、ブリッジ発生時においてホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像と、正常に動作しているホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像と、をそれぞれ収集する。
【0082】
次に、上記のようにして収集した画像から移動データを生成する。具体的には、複数の上記画像を時系列順にペアにし、各ペアについて移動データを生成する。この処理は、ブリッジ発生時に撮影された画像と、正常時に撮影された画像のそれぞれについて行う。これにより、ブリッジ発生時の移動データと、正常時の移動データがそれぞれ生成される。なお、移動データは、対象物の移動状態を示すものであればよい。例えば、実施形態1と同様に、画像相関法により移動データを生成してもよい。
【0083】
そして、ブリッジ発生時の移動データには、異常があることつまりブリッジが発生していることを示す正解データを対応付けて教師データとする。また、正常時の移動データには、正常であることつまりブリッジが発生していないことを示す正解データを対応付けて教師データとする。
【0084】
これらの教師データを用いて機械学習を行うことにより、入力された移動データを、正常時の移動データと異常時の移動データに分類する学習済みモデル112が生成される。なお、機械学習のアルゴリズムは、入力された移動データを正常時の移動データと異常時の移動データに分類することが可能な学習済みモデル112を生成できるものであればよい。例えば、画像の分類精度の高い畳み込みニューラルネットワーク等が好適であるが、この例に限られない。
【0085】
なお、学習済みモデル112の教師データとしては、移動データから抽出した特徴量を用いてもよい。このような特徴量も対象物の移動量を示すものであって、移動データの一種である。また、学習済みモデル112の教師データに移動データ以外のデータを含めてもよい。例えば、ホッパを上方から撮影した画像からCanny法で算出したエッジ数や、当該画像のRGB値等を教師データに含めてもよい。
【0086】
(処理の流れ)
検知装置1Aが実行する処理の流れは図6と同様である。ただし、図6のS4~S6の処理は、学習済みモデル112に移動データを入力して出力値を得る処理に置き換えられる。また、S7(検知ステップ)では、学習済みモデル112の出力値に基づいてブリッジの発生が検知される。
【0087】
つまり、本実施形態に係る検知方法は、対象物を収容するホッパを上方から撮影した時系列の複数の画像から、複数の当該画像が撮影された期間における前記対象物の移動状態を示す移動データを生成する移動データ生成ステップと、対象物の移動状態と当該対象物が当該移動状態であるときのブリッジの発生の有無との関係を学習した学習済みモデル112に前記移動データを入力して得られる出力値に基づいて、前記ホッパにおけるブリッジの発生を検知する検知ステップと、を含む。この検知方法によれば、ブリッジの発生を早期に検知することができる。
【0088】
〔変形例〕
上述の各実施形態で説明した各処理の実行主体は任意であり、上述の例に限られない。つまり、上述の各実施形態で説明した各処理を実行可能であれば、検知システム100を構成する装置は適宜変更することができる。
【0089】
例えば、図1の検知システム100では、検知装置1と報知装置3とをそれぞれ別の装置としているが、検知装置1が報知装置3を備えている構成としてもよい。また逆に、検知装置1の機能を複数の情報処理装置(コンピュータ)に分散させてもよい。例えば、移動データの生成をクラウド上の情報処理装置に行わせ、この移動データをごみ焼却施設に配置された情報処理装置に送信して、該情報処理装置にブリッジを検知させてもよい。
【0090】
〔ソフトウェアによる実現例〕
検知装置1および1A(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラム(検知プログラム)により実現することができる。
【0091】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0092】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0093】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0094】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
100 検知システム
1 検知装置
102 判定部
103 移動データ生成部
104 検知部
2 撮影装置
3 報知装置
1A 検知装置
104A 検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7