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  • 特許-配膳車を用いた給食方法 図1
  • 特許-配膳車を用いた給食方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】配膳車を用いた給食方法
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/02 20060101AFI20241030BHJP
   A47J 39/02 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A47B31/02 D
A47J39/02
A47B31/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021100060
(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公開番号】P2022191687
(43)【公開日】2022-12-28
【審査請求日】2024-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504288627
【氏名又は名称】株式会社井上製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-078831(JP,A)
【文献】特開2011-193921(JP,A)
【文献】特開2000-245541(JP,A)
【文献】特開2019-017493(JP,A)
【文献】特開2007-259965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/02
A47J 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配膳車を用いた給食方法であって、食材を厨房で調理するステップと、調理された食品を厨房で急速冷却するステップと、急速冷却した食品を厨房でチルド保存するステップと、厨房で、前記チルド状態の食品を使い捨て食器に盛り付けて該使い捨て食器自体をトレイ上に直接載置してトレイメイクを行うステップと、トレイメイク後のトレイを配膳車に収容するステップと、配膳車内で前記トレイ上の使い捨て食器に入った食品を冷蔵保存するステップと、配膳車内で、前記冷蔵保存を停止して使い捨て食器に入った食品を再加熱するステップと、前記再加熱後に配膳車を使って配膳を行うステップと、前記配膳車または下膳車を使って食後の使用済みの、トレイおよび該トレイ上の使い捨て食器を回収するステップと、前記回収後に、トレイ上の使い捨て食器を廃棄するステップとを有することを特徴とする、配膳車を用いた給食方法。
【請求項2】
急速冷却した食品を厨房でチルド保存するステップ後に、厨房で、前記チルド状態の食品を使い捨て食器に盛り付けるステップに換えて、前記チルド状態の食品を再加熱するステップと、厨房で、再加熱後の食品を使い捨て食器に盛り付けて該使い捨て食器自体をトレイ上に直接載置してトレイメイクを行うステップと、トレイメイク後のトレイを配膳車に収容するステップと、該配膳車を使って配膳を行うステップと、前記配膳車または下膳車を使って食後の使用済みの、トレイおよび該トレイ上の使い捨て食器を回収するステップと、前記回収後にトレイ上の使い捨て食器を廃棄するステップとを有することを特徴とする、請求項1記載の配膳車を用いた給食方法。
【請求項3】
トレイも使い捨てのものとして、該トレイもその回収後に食器と共に廃棄することを特徴とする、請求項1または請求項2記載の配膳車を用いた給食方法。
【請求項4】
配膳車内から使用済みの使い捨て食器および使用済みのトレイを取り出した後に、配膳車内に100℃以上の過熱蒸気を充満させて配膳車内を殺菌することを特徴とする、請求項1~請求項3のうちのいずれか一項記載の配膳車を用いた給食方法。
【請求項5】
廃棄する使い捨て食器、或いは更に廃棄する使い捨てトレイを焼却処分することを特徴とする、請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載の配膳車を用いた給食方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や介護施設等において、患者や入所者等に対して完全衛生的に給食を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や介護施設等において、患者や入所者等に対して集団給食を行う際には、食品を冷蔵等するための冷却機と食品を再加熱するための加熱装置を備えた適温配膳車が一般的に広く使用されている。
【0003】
そして、該適温配膳車を使った給食方法は、通常、厨房で調理された食品を冷蔵庫で急速冷却した後に、チルド保存しておき、最終的には前記適温配膳車内で前記食品の再加熱を行った後に、前記適温配膳車を給食場所まで移動させて配膳を行っていた。
【0004】
このような適温配膳車を使うような集団給食における衛生管理は、厚生労働省が定めた「大量調理施設衛生管理マニュアル」に沿って実施することが定められているが、該マニュアルに規定されている衛生管理は、HACCP、(Hazard=危害、Analysis=分析、Critical=重要、Control=管理、Point=点)に基づいて行うというものであって、実質的には食材を調理してから各喫食者に対して給食するまでのワンウエイでのリスク回避が定められているだけであり、給食後の下膳や残菜の廃棄、更には、次回の給食に至る循環サイクル的な衛生管理が実践されるようなものとはなっていない。
【0005】
また、近年、SARS、MERS、COVID-19等のコロナウィルス感染症が世界的な問題となる中にあっては、更なる完全な衛生管理や感染防止対策の徹底が求められる状況となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-22327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
配膳車を使った従来の給食方法としては、例えばトレイの所定位置に載せられた一または複数の食器のそれぞれを、予め設定された温度及び時間で加熱する誘導加熱手段を備えた配膳車を準備し、味付けした食材や調味料を添えた食材を、前記食器に盛り付けて各一人前の配膳盆を作成して、前記食材の冷却保存後に、予め設定された時間で前記誘導加熱手段による前記食器内の食材の調理を行って、所定の配膳時刻に前記配膳車から前記配膳盆を取り出して各喫食者に配膳するようにした方法が知られている。
【0008】
前述した給食方法によれば、誘導加熱手段を使った出来立ての給食提供が可能であるが、衛生管理やウィルス感染防止の対策が全く考慮されていないものであった。
【0009】
本発明の目的は、給食の配膳から下膳、更には次回の新たな配膳にわたる循環サイクル的な完全衛生管理並びにウィルス感染防止が実現できる給食方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明は、配膳車を用いた給食方法であって、食材を厨房で調理するステップと、調理された食品を厨房で急速冷却するステップと、急速冷却した食品を厨房でチルド保存するステップと、厨房で、前記チルド状態の食品を使い捨て食器に盛り付けて該使い捨て食器自体をトレイ上に直接載置してトレイメイクを行うステップと、トレイメイク後のトレイを配膳車に収容するステップと、配膳車内で前記トレイ上の使い捨て食器に入った食品を冷蔵保存するステップと、配膳車内で、前記冷蔵保存を停止して使い捨て食器に入った食品を再加熱するステップと、前記再加熱後に配膳車を使って配膳を行うステップと、前記配膳車または下膳車を使って食後の使用済みの、トレイおよび該トレイ上の使い捨て食器を回収するステップと、前記回収後に、トレイ上の使い捨て食器を廃棄するステップとを有することを特徴とするものである。なお、本発明において、加熱手段は、特に限定されず、ヒータや過熱蒸気、誘導加熱等、種々のものが使用され得る。
【0011】
本発明において、使い捨て食器の材質は、特に限定されず、紙や合成樹脂等、例えば各種ポリプロピレンまたはポリプロピレンにタルクを配合したもの、各種ポリスチレン等々、種々のものが使用され得る。
【0012】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載の配膳車を用いた給食方法について、急速冷却した食品を厨房でチルド保存するステップ後に、厨房で、前記チルド状態の食品を使い捨て食器に盛り付けるステップに換えて、前記チルド状態の食品を再加熱するステップと、厨房で、再加熱後の食品を使い捨て食器に盛り付けて該使い捨て食器自体をトレイ上に直接載置してトレイメイクを行うステップと、トレイメイク後のトレイを配膳車に収容するステップと、該配膳車を使って配膳を行うステップと、前記配膳車または下膳車を使って食後の使用済みの、トレイおよび該トレイ上の使い捨て食器を回収するステップと、前記回収後にトレイ上の使い捨て食器を廃棄するステップとを有することを特徴とするものである。
【0013】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1または請求項2記載の配膳車を用いた給食方法について、トレイも使い捨てのものとして、該トレイもその回収後に食器と共に廃棄することを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1~請求項3のうちのいずれか一項記載の配膳車を用いた給食方法について、配膳車内から使用済みの使い捨て食器および使用済みの トレイを取り出した後に、配膳車内に100℃以上の過熱蒸気を充満させて配膳車内を殺菌することを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載の配膳車を用いた給食方法について、廃棄する使い捨て食器、或いは更に廃棄する使い捨てトレイを焼却処分することを特徴とする。
【0016】
なお、前述した本発明に係る配膳車を用いた給食方法において、前記「厨房」には、給食提供の拠点となるセントラルキッチンや該セントラルキッチンから給食用食品が搬入されてくる給食提供場所のキッチンの両方が含まれる。
【0017】
また、前述した本発明に係る配膳車を用いた給食方法において、食材の調理はスチームコンベンションオーブンやフライヤー等の各種調理機器が適宜使用されて行われるものであり、また厨房でも食品の再加熱は、電子レンジやヒータ、或いはスチームコンベンションオーブン等の加熱機器が適宜使用される。
【0018】
更に、前述した本発明に係る配膳車を用いた給食方法において、調理された食品の急速冷却並びにチルド保存はブラストチラー等の冷凍冷蔵機器を適宜使用して行われる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、配膳車を用いた給食方法であって、食材を厨房で調理するステップと、調理された食品を厨房で急速冷却するステップと、急速冷却した食品を厨房でチルド保存するステップと、厨房で、前記チルド状態の食品を使い捨て食器に盛り付けて該使い捨て食器をトレイ上に載置してトレイメイクを行うステップと、トレイメイク後のトレイを配膳車に収容するステップと、配膳車内で前記トレイ上の使い捨て食器に入った食品を冷蔵保存するステップと、配膳車内で、前記冷蔵保存を停止して使い捨て食器に入った食品を再加熱するステップと、前記再加熱後に配膳車を使って配膳を行うステップと、前記配膳車または下膳車を使って食後の使用済みの、トレイおよび該トレイ上の使い捨て食器を回収するステップと、前記回収後にトレイ上の使い捨て食器を廃棄するステップとを有することを特徴とするものである。
【0020】
そして、前述した各ステップを有する本発明によれば、厨房で調理された食品は急速冷却されてチルド状態で保存され、該チルド状態のままで使い捨て食器への盛り付けが行われてトレイメイクされ、その後、トレイメイクされている使い捨て食器内の食品は、配膳車内で所定時間、冷却保存された後、再加熱されて配膳されるため、提供される食品に細菌やウィルス等が繁殖するおそれが全くなく、非常に衛生的であることは勿論、給食が提供される食器は使い捨て食器であるため、作業者は、一回の給食終了ごとに食器に直接触ることなく、該食器が載せられているトレイを傾けて喫食者が使用した食器をそのままダストボックスにすることが可能となる。そのため、従来のように、作業者が回収した使用済みの食器類を手で持って洗う必要がないため、作業者を含めた給食提供者側のウィルス感染等のリスクが回避されるという格別の効果が得られる。
【0021】
また、急速冷却した食品を厨房でチルド保存するステップ後に、厨房で、前記チルド状態の食品を使い捨て食器に盛り付けるステップに換えて、前記チルド状態の食品を再加熱するステップと、厨房で、再加熱後の食品を使い捨て食器に盛り付けてトレイメイクを行うステップと、トレイメイク後のトレイを配膳車に収容するステップと、該配膳車を使って配膳を行うステップと、前記配膳車または下膳車を使って食後の使用済みの、トレイおよび該トレイ上の使い捨て食器を回収するステップと、前記回収後にトレイ上の使い捨て食器を廃棄するステップとを有することを特徴とする本発明に係る給食方法においても前述した優れた効果が同様に得られる。
【0022】
更に、トレイも使い捨てのものとして、その回収後に食器と共に廃棄することを特徴とする本発明によれば、該トレイを食器と共にまとめて廃棄できるため、更なる衛生性が確保される。
【0023】
また、配膳車内から使い捨て食器およびトレイを取り出した後に、配膳車内に100℃以上の過熱蒸気を充満させて配膳車内を殺菌することを特徴とする本願発明によれば、次回の給食作業にあたって、配膳車内の衛生性が簡単且つ確実に得られるという実用的利点を有する。また、前記過熱蒸気による配膳車内の加湿状態において、作業者が布巾やスポンジ等の清掃用具を使って配膳車内を拭くことで更なる衛生性が確保される。
【0024】
この他、廃棄する使い捨て食器、或いは更に廃棄する使い捨てトレイを焼却処分することを特徴とする本発明によれば、食器やトレイの廃棄後における処分においても衛生性と処分容易性が確保されるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態1に係る給食方法の全体構成を示す概要図である。
図2】同実施形態1の給食方法のステップを示すフローチャートである。
図3】実施形態2に係る給食方法の全体構成を示す概要図である。
図4】同実施形態2の給食方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
【0027】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る発明は、内部にカート14が収容されるカート収容型配膳車13を用いた給食方法であって、食材を厨房で調理するステップ(S0001)と、調理され、ホテルパン等の容器に入れられた食品を厨房でブラストチラー等の冷却機器11を用いて急速冷却するステップ(S0002)と、更に厨房で、前記冷却機器11を用いて急速冷却した食品をチルド保存するステップ(S0003)と、厨房で、前記チルド状態の食品を該食品が入れられたホテルパン等の容器から使い捨て食器TWに個別に盛り付けて該使い捨て食器TWをトレイT上に載置してトレイメイクを行うステップ(S0004)と、トレイメイク後のトレイTを配膳車13のカート14に収容するステップ(S0005)と、配膳車13内で前記トレイT上の使い捨て食器TWに入った食品を冷蔵保存するステップ(S0006)と、配膳車13内で、前記冷蔵保存を停止して使い捨て食器TWに入った食品を再加熱するステップ(S0007)と、前記再加熱後に配膳車13のカート14を使って配膳を行うステップ(S0008)と、前記配膳車13のカート14または下膳車(図示せず)を使って食後のトレイTおよび該トレイT上の使用済の使い捨て食器TWを回収するステップ(S0009)と、前記回収後にトレイT上の使い捨て食器TWをダストボックスDBに廃棄するステップ(S0010)とを有する。
【0028】
また、本実施形態において、前記トレイTも使い捨てのものとする場合もあり、この場合には、前記食器TWと共にトレイTもその回収後に前記ダストボックスDBに廃棄される。更に、廃棄される食器TW、或いは更にトレイTを焼却処分する場合もある。
更に、本実施形態では、配膳車13のカート14内から使用済みの使い捨て食器TWおよび使用済みのトレイTを取り出した後に、配膳車13内に100℃以上の過熱蒸気を充満させて配膳車13内を殺菌するステップ(S0011)を有する。また、このような過熱蒸気による殺菌によって、配膳車13内の加湿に伴う洗浄効果も得られる。更に、作業者が、前記過熱蒸気により加湿された配膳車内を布巾やスポンジで拭くことにより、更なる衛生性が確保され、また配膳車内への配膳臭の付着も防止され得る。
(実施形態2)
【0029】
図3および図4に示すように、本実施形態に係る配膳車13を用いた給食方法は、前記実施形態1において、厨房で、冷却機器11を用いて急速冷却した食品をチルド保存するステップ(S0003)後に、厨房で前記チルド状態の食品を使い捨て食器TWに盛り付けるステップ(S0004)に換えて、厨房で、前記チルド状態の食品を使い捨て食器TWに盛り付ける前に、スチームコンベンションオーブン等の加熱調理機器12を用いて前記食品の再加熱を行うステップ(S2004)と、厨房で、再加熱後の食品を使い捨て食器TWに盛り付けてトレイメイクを行うステップ(S2005)と、トレイメイク後のトレイTを配膳車13のカート14内に収容するステップ(S2006)と、該配膳車13のカート14を使って配膳を行うステップ(S2007)と、前記配膳車13のカート14または下膳車(図示せず)を使って食後の使用済みの、トレイTおよび該トレイT上の使用済み使い捨て食器TWを回収するステップ(S2008)と、前記回収後にトレイT上の使い捨て食器TWをダストボックスDBに廃棄するステップ(S2009)とを有する。
【0030】
また、このステップ(S2009)後に、前記実施形態1と同様、必要に応じて、使い捨て食器TWの焼却や配膳車13内の過熱蒸気殺菌を適宜行う場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る配膳車を用いた配膳方法によれば、食材の調理から下膳に至る給食方法において、完全な衛生性が確保され、細菌やウィルス感染のリスクが回避されるため、幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0032】
(S0001) 食材の調理ステップ
(S0002) 食品の急速冷却ステップ
(S0003) 食品のチルド保存ステップ
(S0004) トレイメイクステップ
(S0005) 食品の配膳車収容ステップ
(S0006) 食品の冷蔵保存ステップ
(S0007) 食品の再加熱ステップ
(S0008) 食品の配膳ステップ
(S0009) 使い捨て食器の回収ステップ
(S0010) 使い捨て食器の廃棄ステップ
図1
図2
図3
図4