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特許7579018オーディオシステム用のインピーダンス調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】オーディオシステム用のインピーダンス調整装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20241030BHJP
   H03F 1/02 20060101ALI20241030BHJP
   H03F 3/181 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H03F1/02
H03F3/181 210
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023113962
(22)【出願日】2023-07-11
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】302026885
【氏名又は名称】株式会社ビートソニック
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 大地
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 潤二
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-090159(JP,A)
【文献】特開2008-160661(JP,A)
【文献】特開2008-211316(JP,A)
【文献】特開2019-193265(JP,A)
【文献】特開2017-092649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H03F 1/02
H03F 3/181
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンプ部を備えた音声信号出力装置から第1信号線及び第2信号線を備えた信号伝送路を介して音声信号が伝送されるオーディオシステムに用いられ、
前記第1信号線と前記第2信号線の間のインピーダンスを調整する調整部と、
前記第1信号線及び前記第2信号線を介して入力される前記音声信号を伝送する伝送部と、
を有し、
前記調整部は、前記アンプ部が動作を開始した後の初期期間に前記第1信号線と前記第2信号線の間を所定の低インピーダンスとし、前記初期期間の経過後に前記第1信号線と前記第2信号線の間を前記低インピーダンスよりも高い高インピーダンスに変化させ、
前記伝送部は、前記初期期間の経過後に前記第1信号線と前記第2信号線の間が前記高インピーダンスとされた状態で前記音声信号を伝送し得る構成であり、
前記アンプ部が動作を開始してから終了タイミングまでの期間が前記初期期間であり、
前記初期期間の前記終了タイミングは、前記アンプ部の動作開始後のタイミングであり、前記音声信号出力装置が前記第1信号線と前記第2信号線の間のインピーダンスの影響を受ける評価時期よりも後のタイミングであり、
前記評価時期は、前記アンプ部の動作開始後の時期であり且つ当該評価時期に前記第1信号線と前記第2信号線の間が所定値以下のインピーダンスでない場合に前記アンプ部が適切に前記音声信号を出力せず、当該評価時期に前記第1信号線と前記第2信号線の間が前記所定値以下のインピーダンスであれば前記アンプ部が適切に前記音声信号を出力するとされる時期であり、
前記低インピーダンスは、前記所定値よりも小さい値であり、
前記調整部は、前記音声信号出力装置に対して電源が投入されていない電源オフ期間の間、前記第1信号線と前記第2信号線との間を前記低インピーダンスで維持し、前記音声信号出力装置に電源が投入された場合に、前記第1信号線と前記第2信号線との間を前記低インピーダンスで維持した後、前記初期期間の経過後に前記高インピーダンスに切り替える
オーディオシステム用のインピーダンス調整装置。
【請求項2】
前記音声信号出力装置は、前記アンプ部の動作が停止している期間には前記第1信号線及び前記第2信号線を第1電位状態とし、前記アンプ部の動作が開始することに応じて前記第1信号線及び前記第2信号線を第2電位状態に変化させ、
前記調整部は、前記第1信号線及び前記第2信号線が前記第2電位状態に変化してから所定時間後に前記第1信号線と前記第2信号線の間を前記高インピーダンスに変化させる
請求項1に記載のオーディオシステム用のインピーダンス調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オーディオシステム用のインピーダンス調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるオーディオシステムは、ヘッドユニットに音源部やBTL増幅器が設けられている。このオーディオシステムでは、音源部で生成されたオーディオ信号をBTL増幅器によって増幅して出力し、その信号がスピーカに入力されることによりスピーカから音声が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-12370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なオーディオシステムとして図5のような構成が広く知られている。図5のオーディオシステムは、車載デッキや車載ナビゲーションシステムなどの音声信号出力装置からスピーカに対して音声信号を与え、その音声信号に応じた音声をスピーカから発するように構成される。このようなシステムでは、例えばインピーダンスが2Ω~8Ω程度のスピーカに対して音声信号を与えることを想定しているため、アンプ部からの音声出力は出力先が低インピーダンスであることを前提としてなされる。
【0005】
一方、オーディオシステムは、音声信号出力装置とは別で外部アンプを設けることが望まれる場合もあり、このような要求に応える構成としては、図6のように、音声信号出力装置とスピーカの間にアンプ機能を有する中間機器を設ける構成が考えられる。図6のオーディオシステムは、中間機器として変換装置とアンプ装置(外部アンプ装置)とを備えており、変換装置は、音声信号出力装置から出力された音声信号のレベルを落とすように変換を行い、変換後の信号をアンプ装置に与える。アンプ装置は、変換装置から与えられる変換後の音声信号を増幅してスピーカに出力する。なお、図6の例はあくまで一例であり、このような例以外でも、音声信号出力装置と外部アンプ装置を新たに組み合わせてオーディオシステムを構築する場面があり得る。一例としては、純正の外部アンプ装置が搭載された車両に対し、非純正の音声信号出力装置を新たに組み合わせてオーディオシステムを構築する場合などがあり得る。
【0006】
しかしながら、音声信号出力装置と外部アンプ装置を組み合わせてオーディオシステムを構築する場合、音声信号出力装置によっては、自身が備えるアンプ部からの出力先が高インピーダンス状態であると、アンプ部から音声信号が適切に出力されない機器もある。音声信号出力装置がこのような機器であると、新たな組み合わせでオーディオシステムを構築しても、アンプ部からの出力先が高インピーダンス状態であることを原因として音声信号出力装置から適切に音声信号が出力されず、スピーカから正常に音が出ない事態が生じる。
【0007】
本願の発明者は、このような問題を解消する方法として、アンプ部からの出力経路を常に低インピーダンスにする方法を想定した。図7の構成はその一例であり、図6の例に対して上記解決策を適用したものである。図7の構成では、アンプ部からの出力経路に低インピーダンスの部品(例えば抵抗値が低い抵抗素子)が常時接続されており、このような低インピーダンス部品の存在により、アンプ部の出力先が低インピーダンスであることを音声信号出力装置に認識させることができる。しかし、図7の構成は、アンプ部の動作中に抵抗値の低い抵抗素子が常に導通状態となってしまうため、消費電流の増大が避けられず、発熱が生じやすいという問題がある。
【0008】
本開示の目的の一つは、音声信号出力装置から出力される音声信号を伝達することができ且つ音声信号の出力先を低インピーダンス状態にすることができる装置を、消費電流を抑制し得る形で実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一つであるオーディオシステム用のインピーダンス調整装置は、
アンプ部を備えた音声信号出力装置から第1信号線及び第2信号線を備えた信号伝送路を介して音声信号が伝送されるオーディオシステムに用いられ、
前記第1信号線と前記第2信号線の間のインピーダンスを調整する調整部と、
前記第1信号線及び前記第2信号線を介して入力される前記音声信号を伝送する伝送部と、
を有し、
前記調整部は、前記アンプ部が動作を開始した後の初期期間に前記第1信号線と前記第2信号線の間を所定の低インピーダンスとし、前記初期期間の経過後に前記第1信号線と前記第2信号線の間を前記低インピーダンスよりも高い高インピーダンスに変化させ、
前記伝送部は、前記初期期間の経過後に前記第1信号線と前記第2信号線の間が前記高インピーダンスとされた状態で前記音声信号を伝送し得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る技術によれば、音声信号出力装置から出力される音声信号を伝達することができ且つ音声信号の出力先を低インピーダンス状態にすることができる装置を、消費電流を抑制し得る形で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係るインピーダンス調整装置が用いられるオーディオシステムを概念的に例示する説明図である。
図2図2は、第1実施形態に係るインピーダンス調整装置の内部構成等を例示する回路図である。
図3図3は、図2のインピーダンス調整装置における調整部の内部構成等を例示する回路図である。
図4図4は、第1実施形態に係るインピーダンス調整装置が図1とは異なるオーディオシステムに用いられた例を示す説明図である。
図5図5は、従来のオーディオシステムの一例を簡略的に示す説明図である。
図6図6は、図5のオーディオシステムを改変して外部アンプを取り付けた例を簡略的に示す説明図である。
図7図7は、図6のオーディオシステムを改変して抵抗素子を取り付けた例を簡略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の〔1〕~〔4〕の各々は、本開示に含まれる特徴的技術の一例である。
【0013】
〔1〕アンプ部を備えた音声信号出力装置から第1信号線及び第2信号線を備えた信号伝送路を介して音声信号が伝送されるオーディオシステムに用いられ、
前記第1信号線と前記第2信号線の間のインピーダンスを調整する調整部と、
前記第1信号線及び前記第2信号線を介して入力される前記音声信号を伝送する伝送部と、
を有し、
前記調整部は、前記アンプ部が動作を開始した後の初期期間に前記第1信号線と前記第2信号線の間を所定の低インピーダンスとし、前記初期期間の経過後に前記第1信号線と前記第2信号線の間を前記低インピーダンスよりも高い高インピーダンスに変化させ、
前記伝送部は、前記初期期間の経過後に前記第1信号線と前記第2信号線の間が前記高インピーダンスとされた状態で前記音声信号を伝送し得る
オーディオシステム用のインピーダンス調整装置。
【0014】
上記〔1〕のインピーダンス調整装置は、音声信号出力装置から出力される音声信号を伝達することができ、且つ音声信号の出力先を上記初期期間において低インピーダンス状態にすることができる。そして、上記〔1〕のインピーダンス調整装置は、上記初期期間の経過後に音声信号の出力先を高インピーダンスに変化させることができるため、上記初期期間の経過後には消費電流を抑制することができる。
【0015】
上記〔1〕のインピーダンス調整装置は、例えば、以下のような事例において特に有効である。現在提供されている音声信号出力装置の中には、アンプ部からの出力先が高インピーダンス状態であると、アンプ部から音声信号が適切に出力されない機器がある。本願の発明者はこの種の音声信号出力装置を分析及び検証したところ、アンプ部の動作開始後の初期期間において出力先が低インピーダンスとされていれば、初期期間経過後に高インピーダンスに変更されても、音声信号が適切に出力されるものがあることを確認した。上記〔1〕のインピーダンス調整装置は、このような音声信号出力装置の出力先に用いられると有用である。つまり、上記〔1〕のインピーダンス調整装置は、音声信号の出力元がこのような音声信号出力装置である場合に、アンプ部の動作開始後の初期期間において第1信号線と第2信号線の間を低インピーダンスにすることができるため、アンプ部から正常に音声信号を出力させることができる。そして、上記初期期間の経過後には、第1信号線と第2信号線の間が高インピーダンスに変化するため消費電流が抑制され、その状態で伝送部によって音声信号を伝送することができる。
【0016】
〔2〕前記音声信号出力装置は、前記アンプ部の動作が停止している期間には前記第1信号線及び前記第2信号線を第1電位状態とし、前記アンプ部の動作が開始することに応じて前記第1信号線及び前記第2信号線を第2電位状態に変化させ、
前記調整部は、前記第1信号線及び前記第2信号線が前記第2電位状態に変化してから所定時間後に前記第1信号線と前記第2信号線の間を前記高インピーダンスに変化させる
〔1〕に記載のオーディオシステム用のインピーダンス調整装置。
【0017】
上記〔2〕のインピーダンス調整装置は、アンプ部の動作開始時点から所定時間後の正確なタイミングで第1信号線と第2信号線の間を高インピーダンスに変化させることができる。よって、第1信号線と第2信号線の間を低インピーダンスにする期間(初期期間)がアンプ部の動作開始時点から一定期間の間に正確に定まりやすい。
【0018】
〔3〕前記調整部は、前記音声信号出力装置に対して電源が投入されていない電源オフ期間の間、前記第1信号線と前記第2信号線の間を前記低インピーダンスで維持し、前記音声信号出力装置に電源が投入された場合に、前記第1信号線と前記第2信号線の間を前記低インピーダンスで維持した後、前記初期期間の経過後に前記高インピーダンスに切り替える
〔1〕又は〔2〕に記載のオーディオシステム用のインピーダンス調整装置。
【0019】
上記〔3〕のインピーダンス調整装置は、音声信号出力装置に対して電源が投入される前後において第1信号線と第2信号線の間を低インピーダンスで維持することができるため、音声信号出力装置に電源が投入される前後及びアンプ部の動作開始後においてインピーダンスを変化させる必要がなく、制御の複雑化を抑えることができる。
【0020】
〔4〕前記調整部は、前記音声信号出力装置に対して電源が投入されない電源オフ期間の間、前記第1信号線と前記第2信号線の間を前記低インピーダンスよりも高いインピーダンスとし、前記音声信号出力装置に電源が投入された場合に、前記第1信号線と前記第2信号線の間を前記低インピーダンスで維持した後、前記初期期間の経過後に前記高インピーダンスに切り替える
〔1〕又は〔2〕に記載のオーディオシステム用のインピーダンス調整装置。
【0021】
上記〔4〕のインピーダンス調整装置は、音声信号出力装置の電源オフ期間の間、第1信号線と第2信号線の間を高いインピーダンスで維持することができるため、上記電源オフ期間に何らかの理由で第1信号線と第2信号線の間に大きな電流が流れることを抑制することができる。一方で、音声信号出力装置に電源が投入された場合に第1信号線と第2信号線の間を低インピーダンスに変化させることができるため、上記初期期間に合わせるように適切な時期に低インピーダンス状態にすることができる。
【0022】
<第1実施形態>
以下の説明は、第1実施形態に関する。
1.オーディオシステム100の概要
図1には、第1実施形態に係るインピーダンス調整装置1が用いられるオーディオシステムの一例として、車載用オーディオシステム100が例示される。車載用オーディオシステム100は、単にオーディオシステム100とも称される。
【0023】
図1に示されるオーディオシステム100は、音声信号出力装置110と信号伝送路120と変換装置50とアンプ装置60をスピーカ70とを備える。音声信号出力装置110は、例えば車載用オーディオデッキや車載用ナビゲーションシステムなどの装置であり、音声信号を生成し出力し得る装置である。音声信号出力装置110は、音声信号を生成する音源部111と、音源部111で生成された音声信号を増幅するアンプ部112とを備える。音声信号出力装置110は、音源部111で生成された音声信号をアンプ部112によって増幅し、アンプ部112で増幅された増幅信号を信号伝送路120に出力する。以下の説明では、音源部111で生成された音声信号を第1音声信号と称し、アンプ部112から出力される増幅信号を第2音声信号と称する。つまり、第2音声信号は、第1音声信号を増幅した信号である。
【0024】
音源部111は、例えば、テレビ、ラジオ、DVDプレーヤなどの再生装置、ナビゲーション装置、その他の音声信号発生装置などを含んでおり、少なくともいずれかの機能に基づいて生成された音声信号を第1音声信号として発する。
【0025】
アンプ部112は、音源部111で生成された第1音声信号を増幅した第2音声信号を出力する。アンプ部112から出力される第2音声信号は、例えば公知のバランス方式の音声信号である。例えば、アンプ部112は、第1信号線121に正相の音声信号を出力し、第2信号線122に第1信号線121の音声信号を反転させた逆相の音声信号を出力する。第1信号線121及び第2信号線122に出力される両信号が第2音声信号である。代表例では、バランス方式の第2音声信号が第1信号線121及び第2信号線122によって伝送され、インピーダンス調整装置1に入力される。
【0026】
インピーダンス調整装置1は、第1信号線121及び第2信号線122によって伝送された第2音声信号を信号線71,72に伝送する機能と、第1信号線121と第2信号線122の間のインピーダンスを調整する機能とを有する。インピーダンス調整装置1の詳細は後述される。
【0027】
変換装置50は、インピーダンス調整装置1によって信号線71,72に伝送された音声信号を減衰させて低レベル信号に変換し、この低レベル信号をアンプ装置60に与える。変換装置50は、信号線71に接続される第1端子と信号線72に接続される第2端子とを有し、変換装置50内では第1端子と第2端子の間が高インピーダンスとされる。このような変換装置50を想定した場合、図1のようにインピーダンス調整装置1を接続せずに上記第1端子を第1信号線121に直接接続し、上記第2端子を第2信号線122に直接接続すると、第1信号線121と第2信号線122の間が常に高インピーダンスとなってしまう。図1の構成では、このような問題を回避するため、インピーダンス調整装置1を用いている。
【0028】
アンプ装置60は、公知の増幅器として構成される。代表例では、アンプ装置60は、変換装置50によって生成されたバランス方式の音声信号(上記低レベル信号)を公知の構成で増幅し、増幅されたバランス方式の音声信号を出力する。スピーカ70は、公知のスピーカである。スピーカ70は、アンプ装置60から出力された音声信号によって音を発する。
【0029】
音声信号出力装置110は、音声信号出力装置110が搭載された車両において所定操作がなされた場合に電源が投入され、図示されていない車載電源から電力が供給される。上記所定操作がなされた場合に車載電源から音声信号出力装置110に供給される電力は、音源部111やアンプ部112で音声信号を生成するために必須となる電力である。車載電源から音声信号出力装置110に対して上記電力が供給されていない間は、音声信号出力装置110は電源オフの状態であり、上記電力が供給された場合に電源オンの状態となる。車載電源から音声信号出力装置110に対して上記電力が供給されない期間が電源オフ期間であり、車載電源から音声信号出力装置110に対して上記電力が供給される期間が電源オン期間である。
【0030】
具体的には、車両において上記所定操作がなされた場合に、車載電源からの電力の供給に応じて音声信号出力装置110が起動し、音声信号出力装置110の起動と同時又は音声信号出力装置110の起動から所定の短時間経過後にアンプ部112の動作が開始する。アンプ部112の動作停止中には、第1信号線121及び第2信号線122は所定の低電位(例えば0V)とされる。例えば、車載電源から音声信号出力装置110に対して上記電力が供給されていないときには、第1信号線121及び第2信号線122は上記低電位(例えば0V)とされる。アンプ部112の動作が停止している期間の第1信号線121及び第2信号線122の電位の状態が第1電位状態であり、代表例では、第1信号線121及び第2信号線122の電位がいずれも0V程度の低電位である状態が第1電位状態である。
【0031】
アンプ部112は、音声信号出力装置110の起動に応じて動作を開始すると、第1信号線121及び第2信号線122の電位を上記低電位よりも大きい基準電位(例えば6V)に上昇させる。アンプ部112の動作が開始した直後に切り替わった第1信号線121及び第2信号線122の電位の状態が第2電位状態である。代表例では、第1信号線121及び第2信号線122の電位がいずれも基準電位(例えば6V)程度の状態が第2電位状態である。アンプ部112は、自身の動作開始に応じて第1信号線121及び第2信号線122の電位を基準電位とした後、音源部111から与えられる音声信号に応じて、上記基準電位を基準とする増幅信号を生成し、信号伝送路120に出力する。具体的には、アンプ部112は、第1信号線121に対して上記基準電位を基準とする正相の音声信号(電圧信号)を出力し、第2信号線122に対して上記基準電位を基準とする逆相の音声信号(電圧信号)を出力する。
【0032】
2.インピーダンス調整装置1の詳細
図1のようにインピーダンス調整装置1は、音声信号出力装置110からの音声信号が伝送される第1信号線121及び第2信号線122に電気的に接続される。図2のようにインピーダンス調整装置1は伝送部40及び調整部10を備える。
【0033】
伝送部40は、第1信号線121及び第2信号線122を介して入力される第2音声信号を伝送する。伝送部40は、第1伝送部41及び第2伝送部42を備える。第1伝送部41は、電圧信号を伝送し得る金属線を有し、一端が第1信号線121に短絡した構成で第1信号線121に電気的に接続され、他端が信号線71に短絡した構成で信号線71に電気的に接続される。第1伝送部41は、第1信号線121によって伝送された正相の音声信号を信号線71に伝送する。第2伝送部42は、電圧信号を伝送し得る金属線を有し、一端が第2信号線122に短絡した構成で第2信号線122に電気的に接続され、他端が信号線72に短絡した構成で信号線72に電気的に接続される。第2伝送部42は、第2信号線122によって伝送された逆相の音声信号を信号線72に伝送する。
【0034】
調整部10は、第1信号線121と第2信号線122の間のインピーダンスを調整する機能を有する。調整部10は、遅延部20と切替部30とスイッチ46と抵抗48とを備える。調整部10は、スイッチ46をオン状態にすることで抵抗48を介して第1信号線121と第2信号線122の間を導通させる低インピーダンス状態と、スイッチ46をオフ状態にすることで抵抗48の経路を導通させない高インピーダンス状態とに切り替える機能を有する。
【0035】
図3の例では、遅延部20は、抵抗22,26及びコンデンサ24を備える。切替部30は、リレー部34及びFET32を備える。抵抗22の一端が第2伝送部42に短絡した構成で第2伝送部42に電気的に接続される。抵抗22の他端はFET32のゲートに短絡した構成でFET32に電気的に接続される。抵抗22の他端及び上記ゲートにはコンデンサ24の一方の電極及び抵抗26の一端が電気的に接続され、コンデンサ24の他方の電極及び抵抗26の他端はグラウンドに電気的に接続される。
【0036】
遅延部20は、アンプ部112が動作しておらず、第2信号線122及び第2伝送部42の電位が0V程度のローレベルである場合には、FET32のゲート電位をローレベルで維持し、FET32をオフ状態で維持する。アンプ部112が動作停止状態から動作状態に切り替わり、第2信号線122及び第2伝送部42の電位が上記ローレベルから基準電位(例えば6V)程度のハイレベルに切り替わると、コンデンサ24が充電され、第2信号線122及び第2伝送部42の電位が上記ローレベルから上記ハイレベルに切り替わってから一定時間後にFET32のゲート電位が閾値電位以上になる。上記閾値電位は、FET32がオン状態に切り替わる電位である。つまり、アンプ部112が動作を開始してから上記一定時間後にFET32がオン状態となる。なお、アンプ部112の動作停止中及びアンプ部112が動作を開始してから上記一定時間に達するまではFET32のゲート電位は閾値電位未満であるためFET32はオフ状態で維持される。
【0037】
切替部30は、FET32がオフ状態のときにリレー部34に電流が流れない構成であり、FET32がオン状態のときには電源V1からリレー部34及びFET32に電流が流れる構成である。リレー部34は、自身が通電状態のときにスイッチ46(図2)をオフ状態とし、自身が非通電状態のときにスイッチ46(図2)をオン状態にする装置である。
【0038】
このように構成された調整部10は、アンプ部112の動作停止中、即ち、第2信号線122及び第2伝送部42の電位が上述のローレベルであるときには、FET32がオフ状態で維持され、スイッチ46がオン状態で維持されるため、第1信号線121と第2信号線122の間は、低インピーダンスとなる。そして、アンプ部112が動作を開始してから一定時間後にFET32がオン状態に切り替わることでスイッチ46がオフ状態に切り替わり、その後はアンプ部112が動作を停止するまではスイッチ46がオフ状態で維持される。スイッチ46がオフ状態で維持される間は、第1信号線121と第2信号線122の間のインピーダンスは、上記低インピーダンスよりも大きい所定の高インピーダンスとなる。
【0039】
上述された代表例では、アンプ部112が動作を開始してからFET32がオン状態に切り替わるまでの期間が「初期期間」である。つまり、調整部10は、少なくともアンプ部112が動作を開始した後の初期期間に、第1信号線121と第2信号線122の間を上記低インピーダンスとするように動作する。そして、調整部10は、上記初期期間の経過後、具体的には、第1信号線121及び第2信号線122が上述の第2電位状態に変化してから所定時間後に、第1信号線121と第2信号線122の間を上記低インピーダンスよりも高い所定の高インピーダンスに変化させるように動作する。そして、伝送部40は、上記初期期間の経過後に、第1信号線121と第2信号線122の間が上記高インピーダンスとされた状態で音声信号を伝送し得る。
【0040】
上記初期期間の終了タイミングは、音声信号出力装置110が第1信号線121と第2信号線122の間のインピーダンスの影響を受ける評価時期よりも後のタイミングであることが望ましい。評価時期は、当該評価時期に第1信号線121と第2信号線122の間が所定値以下のインピーダンスでない場合にアンプ部112が適切に音声信号を出力せず、当該評価時期に第1信号線121と第2信号線122の間が所定値以下のインピーダンスであればアンプ部112が適切に音声信号を出力するとされる時期である。初期期間に維持される上述の「低インピーダンス」は、上記所定値よりも小さい値である。評価時期は、アンプ部112の動作開始直後の所定時期である。上記初期期間の終了タイミングは、アンプ部112の動作開始後、音源部111が生成した第1音声信号を増幅した第2音声信号の出力が開始される前のタイミングであることが望ましい。
【0041】
3.効果の例
インピーダンス調整装置1は、音声信号出力装置110から出力される音声信号を伝達することができ、且つ音声信号の出力先を上記初期期間において低インピーダンス状態にすることができる。そして、インピーダンス調整装置1は、上記初期期間の経過後に音声信号の出力先を高インピーダンスに変化させることができるため、上記初期期間の経過後には消費電流を抑制することができる。
【0042】
インピーダンス調整装置1は、例えば、以下のような事例において特に有効である。現在提供されている音声信号出力装置の中には、アンプ部からの出力先が高インピーダンス状態であると、アンプ部から音声信号が適切に出力されない機器がある。本願の発明者はこの種の音声信号出力装置を分析及び検証したところ、アンプ部の動作開始後の初期期間において出力先が低インピーダンスとされていれば、初期期間経過後に高インピーダンスに変更されても、音声信号が適切に出力されるものがあることを確認した。インピーダンス調整装置1は、このような音声信号出力装置の出力先に用いられると有用である。つまり、インピーダンス調整装置1は、音声信号の出力元がこのような音声信号出力装置である場合に、アンプ部112の動作開始後の初期期間において第1信号線121と第2信号線122の間を低インピーダンスにすることができるため、アンプ部112から正常に音声信号を出力させることができる。そして、上記初期期間の経過後には、第1信号線121と第2信号線122の間が高インピーダンスに変化するため、上記初期期間の経過後には消費電流が抑制され、その状態で伝送部40によって音声信号を伝送することができる。
【0043】
インピーダンス調整装置1は、アンプ部112の動作開始時点から所定時間後の正確なタイミングで第1信号線121と第2信号線122の間を高インピーダンスに変化させることができる。よって、第1信号線121と第2信号線122の間を低インピーダンスにする期間(初期期間)がアンプ部112の動作開始時点から一定期間の間に正確に定まりやすい。
【0044】
上述の代表例では、調整部10は、音声信号出力装置110に対して電源が投入されていない上述の電源オフ期間の間、第1信号線121と第2信号線122の間を低インピーダンスで維持する。そして、音声信号出力装置110に電源が投入された場合には、第1信号線121と第2信号線122の間を上記低インピーダンスで維持した後、上記初期期間の経過後に高インピーダンスに切り替えるようになっている。具体的には、調整部10は、上記初期期間の経過後にスイッチ46をオフ状態に切り替えた後、アンプ部112が動作している間はスイッチ46をオフ状態で維持することで、第1信号線121と第2信号線122の間を高インピーダンスで維持する。そして、調整部10は、アンプ部112が動作状態から動作停止状態に切り替わると、第2信号線122及び第2伝送部42の電位が上述の低電位(例えば0V)に低下することに応じてスイッチ46をオン状態に切り替え、その後は、再び上記初期期間が経過するまでスイッチ46をオン状態にすることで、第1信号線121と第2信号線122の間を低インピーダンスで維持する。このように、インピーダンス調整装置1は、音声信号出力装置110に対して電源が投入される前後において第1信号線121と第2信号線122の間を継続的に低インピーダンスで維持することができるため、音声信号出力装置110に電源が投入される前後及びアンプ部112の動作開始後においてインピーダンスを変化させる必要がなく、制御の複雑化を抑えることができる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明された実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。さらに、上述された実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0046】
上述された実施形態では、調整部10が音声信号出力装置110に対して電源が投入される前後において第1信号線121と第2信号線122の間を継続的に低インピーダンスで維持するが、この例に限定されない。例えば、調整部10は、音声信号出力装置110に対して電源が投入されない電源オフ期間の間、第1信号線121と第2信号線122の間を上記低インピーダンスよりも高いインピーダンスとし、音声信号出力装置110に電源が投入された場合に、第1信号線121と第2信号線122の間を低インピーダンスで維持した後、上記初期期間の経過後に上記高インピーダンスに切り替えてもよい。具体的には、調整部10が上述の所定操作(例えばアクセサリスイッチのオン操作)や音声信号出力装置110に対する電力供給を監視することで音声信号出力装置110に電源が投入されたか否かを判定し、上記初期期間の経過後にスイッチ46をオフ状態に切り替えてから次に音声信号出力装置110が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わるまではスイッチ46をオフ状態で維持すればよい。そして、音声信号出力装置110が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから次の初期期間が経過するまではスイッチ46をオン状態で維持すればよい。この例では、上記初期期間の経過時点から次に音声信号出力装置110が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わるまでは、第1信号線121と第2信号線122の間が上述の高インピーダンスで維持される。そして、音声信号出力装置110が電源オフ状態から電源オン状態に切り替わってから次の初期期間が経過するまでは、第1信号線121と第2信号線122の間が上述の低インピーダンスで維持される。
このインピーダンス調整装置は、音声信号出力装置110の電源オフ期間の間、第1信号線121と第2信号線122の間を高いインピーダンスで維持することができるため、上記電源オフ期間に何らかの理由で第1信号線121と第2信号線122の間に大きな電流が流れることを抑制することができる。一方、音声信号出力装置110に電源が投入された場合には、第1信号線121と第2信号線122の間を低インピーダンスに変化させることができるため、上記初期期間に合わせるように適切な時期に低インピーダンス状態にすることができる。
【0047】
上述された実施形態では、遅延部20の一例として、図3のような回路が用いられるが、この構成に限定されない。遅延部20は、例えば、信号伝送路120のいずれかの信号線が基準電位に変化してから一定時間をカウントし、一定時間後に所定信号を出力するようなタイマ回路であってもよい。この場合、切替部30は、タイマ回路が上記所定信号を出力してから所定の終了タイミング(例えば、アンプ部112が動作を停止するタイミング)までスイッチ46をオフ状態とし、少なくとも上記一定時間の間はスイッチ46をオン状態にするように動作すればよい。
【0048】
上述された実施形態では、インピーダンス調整装置1は、アンプ部112が起動してから一定時間後に第1信号線121と第2信号線122の間を高インピーダンスに切り替える構成であるが、この構成に限定されない。インピーダンス調整装置1は、音声信号出力装置110への電源投入から一定時間後に第1信号線121と第2信号線122の間を高インピーダンスに切り替える構成であってもよく、アクセサリスイッチがオフ状態からオン状態に切り替わってから一定時間後に第1信号線121と第2信号線122の間を高インピーダンスに切り替える構成であってもよい。
【0049】
上述された実施形態は、図1のようなオーディオシステム100に適用される例であったが、図4のようなオーディオシステム200に適用されてもよい。図4のオーディオシステム200は、図1の変換装置50及びアンプ装置60に代えて、変換装置50のような音声変換機能及びデジタルシグナルプロセッサー(DSP)の機能を有するアンプ装置250が用いられている。アンプ装置250内では、信号線71に接続される第1端子と信号線72に接続される第2端子の間のインピーダンスが上述の低インピーダンスよりも高いインピーダンスになっている。この例でも、インピーダンス調整装置1は、第1実施形態と同様に動作することができる。
【0050】
上述された実施形態では、アンプ部112から信号伝送路120に対してバランス方式で音声信号が出力されるが、アンプ部112から信号伝送路に対してアンバランス方式で音声信号が出力されるオーディオシステムにインピーダンス調整装置を適用してもよい。この場合、遅延部20が正相の信号線に接続されればよい。
【0051】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 :インピーダンス調整装置
10 :調整部
40 :伝送部
41 :第1伝送部
42 :第2伝送部
100 :オーディオシステム
110 :音声信号出力装置
112 :アンプ部
120 :信号伝送路
121 :第1信号線
122 :第2信号線
【要約】
【課題】音声信号出力装置から出力される音声信号を伝達することができ且つ音声信号出力装置の出力先を低インピーダンス状態にすることができる装置を、消費電流を抑制し得る形で実現する。
【解決手段】インピーダンス調整装置1は、第1信号線121と第2信号線122の間のインピーダンスを調整する調整部10と、第1信号線121及び第2信号線122を介して入力される音声信号を伝送する伝送部40とを備える。調整部10は、アンプ部112が動作を開始した後の初期期間に第1信号線121と第2信号線122の間を低インピーダンスとし、初期期間の経過後に第1信号線121と第2信号線122の間を上記低インピーダンスよりも高い高インピーダンスに変化させる。伝送部40は、初期期間の経過後に第1信号線121と第2信号線122の間が高インピーダンスとされた状態で音声信号を伝送し得る。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7