(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ポッパー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/01 20060101AFI20241030BHJP
A01K 85/16 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A01K85/01 B
A01K85/16
(21)【出願番号】P 2023221119
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2024-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508292017
【氏名又は名称】有限会社マドネスジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】岩本 諭
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3058863(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0131036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00 - 85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に前面が凹球面のカップ状先端部を有するポッパーにおいて、少なくとも前記頭部が、硬質材料からなり、所定の浮力を有するルアー本体と、該ルアー本体の外側に形成された略筒状の軟質材料からなるジャケット体とで構成され、該ジャケット体の先端部に前面が凹球面のカップ状先端部が形成されている、ポッパー。
【請求項2】
ジャケット体のカップ状先端部の後面がルアー本体の先端面と当接して、該先端面がジャケット体のカップ状先端部の後面を受けるようになされている、請求項1のポッパー。
【請求項3】
頭部から尾部に至るルアー本体の全体が硬質材料からなり且つ所定の浮力を有し、該ルアー本体の頭部から尾部の外側にジャケット体が形成されている、請求項2記載のポッパー。
【請求項4】
ジャケット体がルアー本体に嵌め被せられている、請求項3記載のポッパー。
【請求項5】
ルアー本体が中空状である、請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載のポッパー。
【請求項6】
ルアー本体が複数の区画室で構成されている、請求項5記載のポッパー。
【請求項7】
ルアー本体が発泡材料で構成された、請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載のポッパー。
【請求項8】
ルアー本体の尾部に、該
尾部より大きい外径の略円板状錘部材がネジで着脱自在に取り付けられて、前記錘部材の頭部側端に段部が形成され、該段部にジャケット体の尾部側端が当接されて、ジャケット体の尾部側部分と前記錘部材が面一となされている、請求項3または請求項4記載のポッパー。
【請求項9】
ルアー本体が硬質の合成樹脂で構成され、ジャケット体が軟質の合成樹脂で構成されている、請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載のポッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣りで使用するルアー(疑似餌)の一種であるポッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポッパーは、先端に凹球面のカップ状部を有する水面に浮くトップウォーター系のルアーであって、前記カップ状部で水を噛むように受け、その際の音や泡・水しぶきによって魚の捕食行動を誘引するようになされているルアーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポッパーは一般に、先端部が水面に浮き、胴部が水中で垂直状態となる垂直浮きタイプと、ルアー全体が水面に平行に浮く水平浮きタイプと、ルアー全体が水面に対して傾いた状態で浮く斜め浮きタイプがあるが、いずれのタイプのポッパーにおいても以下のような課題がある。
【0005】
すなわち、ポッパーのカップ状部の中央底部に突設されたラインアイに、ロッドに取り付けたリールに巻かれたラインの先端を締結した状態で、当該ポッパーをキャストして該ポッパーを水面に着水させた状態でおいて、トゥイッチングやジャーキング等のロッドアクションを加えながら、ポッパーをリトリーブした場合に、ポッパーのカップ状部が水面で水をいかにうまく噛み込むかが重要となる。この点に関して、従来、カップ状部の形状を種々変更して対応しているが、ポッパーの構成材料が通常、硬質の合成樹脂製であったため、前述した水面における水の噛み込みには限界があった。
【0006】
また、ポッパーの本体内に該本体を貫通する通し穴を設け、該通し穴をその長さ中央部分に向かって絞った構造のポッパーも知られているが、該ポッパーは両側からリトリーブできるようにしたものであって、前述したポッパーの水の噛み込みに関する技術的課題を解決し得るものではなかった。
【0007】
本発明の目的は、水面における水の噛み込みを強力に行うことが可能なポッパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本発明は、頭部に前面が凹球面のカップ状先端部を有するポッパーにおいて、少なくとも前記頭部が、硬質材料からなり、所定の浮力を有するルアー本体と、該ルアー本体の外側に形成された略筒状の軟質材料からなるジャケット体とで構成され、該ジャケット体の先端部に前面が凹球面のカップ状先端部が形成されているポッパーである。
【0009】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1のポッパーについて、ジャケット体のカップ状先端部の後面がルアー本体の先端面と当接して、該先端面がジャケット体のカップ状先端部の後面を受けるようになされていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の本発明は、前記請求項2記載のポッパーについて、頭部から尾部に至るルアー本体の全体が硬質材料からなり且つ所定の浮力を有し、該ルアー本体の頭部から尾部の外側にジャケット体が形成されているものである。
【0011】
請求項4記載の本発明は、前記請求項3記載のポッパーについて、ジャケット体がルアー本体に嵌め被せられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載のポッパーについて、ルアー本体が中空状であることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の本発明は、前記請求項5記載のポッパーについて、ルアー本体が複数の区画室で構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の本発明は、請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載のポッパーについて、ルアー本体が発泡材料で構成されたものである。
【0015】
請求項8記載の本発明は、前記請求項3または請求項4記載のポッパーについて、ルアー本体の尾部に、該部より大きい外径の略円板状錘部材がネジで着脱自在に取り付けられて、前記錘部材の頭部側端に段部が形成され、該段部にジャケット体の尾部側端が当接されて、ジャケット体の尾部側部分と前記錘部材が面一となされているものである。
【0016】
請求項9記載の本発明は、前記請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載のポッパーについて、ルアー本体が硬質の合成樹脂で構成され、ジャケット体が軟質の合成樹脂で構成されているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るポッパーは、頭部に前面が凹球面のカップ状先端部を有するポッパーにおいて、少なくとも前記頭部が、硬質材料からなり、所定の浮力を有するルアー本体と、該ルアー本体の外側に形成された略筒状の軟質材料からなるジャケット体とで構成され、該ジャケット体の先端部に前面が凹球面のカップ状先端部が形成されている構造であるため、頭部は硬質材料からなるルアー本体によって、所定の浮力と十分な形態保持性が確保されると共に、外側の軟質材料からなるジャケット体の先端部に形成された前面が凹球面のカップ状先端部が、リールのリトリーブの際に水面の水を噛み込むように変形することから、従来よりも水面における波紋、水しぶき、泡等の発生がより顕著となり、その結果、水中の魚の捕食動作をより強く誘引し得るという格別の効果が得られる。
【0018】
また、ジャケット体のカップ状先端部の後面がルアー本体の先端面と当接して、該先端面がジャケット体のカップ状先端部の後面を受けるようになされている本発明のポッパーによれば、前述したジャケット体のカップ状先端部における水の噛み込みがより安定的に行われ得るという利点がある。
【0019】
また、頭部から尾部に至るルアー本体の全体が硬質材料からなり且つ所定の浮力を有し、該ルアー本体の頭部から尾部の外側にジャケット体が形成された本発明のポッパーによれば、ルアー全体としは硬質材料からなるルアー本体によって、ハード系ルアーとしてのシャープな挙動が得られ、且つ軟質材料からなるジャケット体によって、前述したカップ状先端部による水の強力な噛み込みと共に、魚がヒットするジャケット体にソフトルアーとしての柔らかな感触が得られるため、ヒットした魚のルアー噛み時間が長くなることから、従来のポッパーに比べてフッキング率が大幅に向上し得るという優れた効果がある。
【0020】
更に、従来のハード系ポッパーでは、繰り返しの使用や魚のヒットによって、ポッパー表面が傷付いた場合でもルアー自体を新品に交換しない限り、傷付いたルアーをそのまま使用することを余儀なくされることから、釣果の低下が避けられなかったが、本発明のポッパーでは繰り返しの使用や魚のヒットによって傷付いたジャケット体だけを新たなものに交換することもできるため、従来のポッパーのような釣果の低下を有効に防止し得るという実用的利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係るポッパーの頭部を示す断面図である。
【
図2】実施形態のポッパーを構成するルアー本体であって、(a)は組立状態の側面図、(b)は錘部材を取り外した状態の側面図である。
【
図3】実施形態のポッパーを構成するジャケット体の側面図である。
【
図7】実施形態のポッパーにおけるジャケット体であって、(a)はジャケット体の正面図、(b)はジャケット体の底面図である。
【
図8】実施形態のポッパーの頭部におけるジャケット体のカップ状先端部が水を噛み込む前の状態を示す拡大断面図である。
【
図9】実施形態のポッパーの頭部におけるジャケット体のカップ状先端部が水を噛み込んだ状態を示す拡大断面図である。
【
図10】本発明のポッパーの他の実施形態を示す断面図である。
【
図11】本発明のポッパーの更に他の実施形態を示す頭部断面図である。
【
図12】本発明のポッパーの別の実施形態を示す頭部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態において、「前後」「上下」は
図6を基準とし、「前」とは
図6の左側方向を指し、ルアーの先端側頭部方向と一致する。また、「後」とは
図6の右側方向を指し、ルアーの後端側尾部方向と一致する。また、「上下」は
図6の上下方向を指し、「上」はルアーの背側方向、「下」は同腹側方向を意味するものとする。
【0024】
図1~
図7に示すように、本実施形態に係るポッパー21は、全体形状が所謂、略樽形であって、内部に区画室23を有する略中空状の硬質合成樹脂製のルアー本体22(
図2)と、該ルアー本体22の外側に装着された略筒状の軟質合成樹脂製のジャケット体24(
図3)とを備えたものである。ルアー本体22の具体的な材質としては、ABS樹脂やポリカーボネート樹脂等が挙げられ、ジャケット体24の具体的な材質としては、シリコンゴムやエラストマー等が挙げられる。
【0025】
前記ルアー本体22は、本実施形態では全体形状が略樽形であって、より詳細には、頭部22aから尾部22bにわたって、内部に区画壁29が所定間隔をあけて立設されて、各区画壁29間が前記区画室23となされている。
【0026】
なお、ルアー本体22は前記区画壁29を設けず、全体が一つの中空状となされる場合もある。
【0027】
また、ルアー本体22の尾部22bには、該部より大きい外径の略円板状錘部材25がこれと一体の中心ネジ20で着脱自在に取り付けられて、前記錘部材25の尾部側端に段部32が形成され、該段部32に前記ジャケット体24の尾部24b側端が当接されて、ジャケット体24の尾部24b側部分と前記錘部材25が面一となされている。
【0028】
なお、ルアー本体22の尾部22bには、前記錘部材25の中心ネジ20を螺合させるための雌ネジ22dが形成されている。
【0029】
更に、ルアー本体22の頭部22aにはライン(図示せず)を結び付けるためのラインアイ26が設けられ、ルアー本体22の尾部22bおよび腹部22cには、フック(図示せず)を取り付けるためのフックアイ27A・27Bがそれぞれ設けられている。
【0030】
ジャケット体24は、頭部24aが閉塞し、尾部24bが開口している形状であって、頭部24aにはその前面が凹球面42aのカップ状先端部42が設けられ、カップ状先端部42の後面42bがルアー本体22先端の前面22eと当接して、該前面22eがジャケット体24のカップ状先端部42の後面42bを受けるようになされている。
【0031】
またジャケット体24は頭部24aから尾部24bにかけて、その外面に生きた魚に似せた種々の塗装やプリント(いずれも図示せず)が施されるものであり、またジャケット体24の頭部24aには、魚の眼に似せた義眼模様30が描成されている。
【0032】
また、
図6および
図7に示すように、ジャケット体24の頭部24aにおける前記カップ状先端部42の中心には、前述したルアー本体22のラインアイ26を挿通させるためのラインアイ挿通孔28Aが形成され、ジャケット体24の腹部24cの中央寄り部分および尾部寄り部分には、前記ルアー本体22のフックアイ27A・27Bを挿通させるためのフックアイ挿通孔28Bが形成されている。
【0033】
次に、
図8および
図9に示すように、本実施形態に係るポッパー21のカップ状先端部42が水面の水を噛み込む要領について説明すると、先ず
図8に示すように、ルアー本体22の頭部22aに突設されたラインアイ26に、予めリール(図示せず)に巻かれたラインLの先端を締結して、当該ポッパー21をキャストして水面WL上に当該ポッパー21を浮かせた状態において、リール(図示せず)を回してラインLを巻き取ると共に、ロッド(図示せず)にトゥイッチング等のアクションを加えた場合、ラインLおよび当該ポッパー21が矢印F1方向に引っ張られると共に、水面WLの水Wが当該ポッパー21のジャケット体24のカップ状先端部42内に進入する。
【0034】
次に、
図9に示すように、当該ポッパー21のジャケット体24におけるカップ状先端部42内の全体に水Wが進入することで、その進入圧がカップ状先端部42の中心部分CPに集中することから、その進入圧によって、軟質材料からなるカップ状先端部42の外周部分OPがカップ状先端部42内に進入した水Wを抱き込むように内方へ変形する結果、カップ状先端部42が水Wを強く噛み込むこととなる。その結果、水面WL上に大きな水しぶきや泡が立って、魚の捕食動作をより強く誘引することとなる。
【0035】
なお、前記カップ状先端部42の外周部分OPは、水面において使用した際に、水の抵抗を少なくするために、先が尖った先鋭とするのが好ましい(
図8,
図9)。
【0036】
以上述べてきたポッパー21は、その全体が硬質材料からなるルアー本体22と、その外側に形成された軟質材料からなるジャケット体24で構成されており、該ジャケット体24を予めルアー本体22の全体形状に対応する形態に成形しておき、該ジャケット体24をルアー本体22の外側から嵌め被せることで当該ポッパー21を構成することができる。
【0037】
また、本実施形態では、ルアー本体22の内部を複数の区画室23からなる中空状とすることでルアー本体22に所定の浮力を付与する構造としたが、本発明はこれに限定されず、
図10示すように、ルアー本体22自体を発泡材料22Aで構成することで所定の浮力を得る場合もある。
【0038】
この他、前述した通り、本実施形態では、当該ポッパー21の全体が硬質材料からなるルアー本体22と軟質材料からなるジャケット体24で構成されるものとしたが、本発明はこれに限定されず、少なくともポッパー21の頭部を硬質材料からなるルアー本体とし、その外側部分だけを軟質材料からなるジャケット体とする場合もある。
【0039】
更に、本発明では、前述した実施形態に係るポッパー21のカップ状先端部42の変形例として、
図11に示すように、凹球面42aの面積が上部側よりも下部側が広がった形状とする場合もある。更に、
図12に示すように、カップ状先端部42の外周部分OPが外方へ広がったフレアー状とする場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るポッパーによれば、その頭部における軟質材料からなるカップ状先端部によって、水面の水が強く噛み込まれて、水面での水しぶきや泡の発生がより多くなって、魚へのアピール力が強いことから、従来のポッパーに比べて釣果の向上が確実であるため、釣り具の分野において幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0041】
21 ポッパー
22 ルアー本体
22a ルアー本体の頭部
22b ルアー本体の尾部
24 ジャケット体
42 カップ状先端部
【要約】
【課題】 ポッパーにおいて、そのカップ状先端部の水面における水の噛み込みを強力に行うことができるようにする。
【解決手段】 少なくとも前記頭部22aが、硬質材料からなり、所定の浮力を有するルアー本体22と、該ルアー本体22の外側に形成された略筒状の軟質材料からなるジャケット体24とで構成され、該ジャケット体24の先端部に前面が凹球面のカップ状先端部42が形成され、該カップ状先端部42によって、水面WLにおける水Wの噛み込みが強力に実行されるようになされている。
【選択図】
図1