(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】セスキテルペンラクトン系化合物の視神経炎治療薬の製造における使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/365 20060101AFI20241030BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A61K31/365
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2023537447
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 CN2020112117
(87)【国際公開番号】W WO2022041123
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】523072555
【氏名又は名称】洛陽尚徳薬縁科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李洪恩
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼建苗
(72)【発明者】
【氏名】鮑世▲クィ▼
(72)【発明者】
【氏名】張雪梅
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111494366(CN,A)
【文献】HOFER M. et al.,Immunoinflammatory diseases of the central nervoussystem - the tale of two cytokines,British Journal of Pharmacology,2016年,vol 173, no 4,pp.716-728
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-33/44
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式で示されるセスキテルペンラクトン系化合物の視神経
脊髄炎治療
用の薬
剤の製造における使用:
【化1】
。
【請求項2】
前記薬剤は、液体剤形、気体剤形、固体剤形又は半固体剤形である、ことを特徴とする請求項1に記載
の使用。
【請求項3】
前記薬剤は注射剤である、ことを特徴とする請求項
1または2に記載
の使用。
【請求項4】
前記薬剤は経口剤である、ことを特徴とする請求項
1または2に記載
の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、自己免疫疾患の医薬分野に属し、具体的に、セスキテルペンラクトン系化合物の視神経炎治療薬の製造における使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica、NMO)は、視神経及び脊髄に及ぼす脱髄疾患である。当該疾患は、1872年に初めて報告され、最初は単発性に発症の中枢神経系の病変であると考えられていた。アジア諸国では、NMOに関する報告が多く、中国だけでも、現在30万以上のNMO患者がいる。神経眼科クリニックにおいて、典型的なNMO関連視神経炎(C-NMO-ON)の主な所見は、両眼が同時に又は相次いで発症し、視力が急速に低下し、眼痛を伴ったり、伴わなかったりし、視機能回復が悪く、一般的に両眼又は少なくとも片眼の重篤な視力障害が残っている。一方、再発性NMO関連視神経炎(R-NMO-ON)は、片眼発症であることが多く、再発しやすく、視機能障害が部分的に回復できるが、発症回数の増加につれて回復が次第に弱くなる。かなりの部分のNMOの脊髄損傷は視力低下後に発生され、数日間、数週間、数ヶ月間、更に数年間も隔てることができ、最終的に対麻痺、感覚及び括約筋機能障害につながり、重篤な患者では呼吸筋麻痺を引き起こすことが可能である。再発性NMOは、初期の臨床症状において再発性視神経炎と共通の特徴が多くあるため、後者と極めて誤診され易いことで、治療のタイミングを遅延させる一方、視神経炎の治療手段がNMOの病状を悪化させ、更に重篤な結果をもたらすことになる。
【0003】
ずいぶん長い間、NMOが独立した疾患であるか多発性硬化症(Multiple Sclerosis、MS)のサブタイプであるかについては論争が続いており、近年の研究では、血清中のアクアポリン4(Aquaporin 4、AQP4)自己抗体(AQP4-Ab)は、NMO診断における非常に特異的な指標の1つであり、NMO診断においてより高い感受性(68%~91%)及び特異性(85%~99%)を有することが見出された。
【0004】
NMOの特異性は、その特別な発症機序により引き起こされる。更なる研究では、AQP4-Abは、中枢神経系(Central nervous system、CNS)中のアストロサイトのエンドフィートにおけるアクアポリン4(aquaporin 4、AQP4)と特異的に結合していることが示される。現在、アストロサイトに対するAQP4-Abの傷害作用は、補体依存性細胞毒性及び抗体依存性細胞毒性という2つの手段によって実現可能であることが知られている。Verkman研究グループの最新の報告によると、脳実質にAQP4-Abを注射することでNMO様の組織病変を引き起こすことができる。具体的な病理変化は、アストロサイトの損傷、オリゴデンドロサイトの減少、髄鞘の喪失及びニューロンのアポトーシスを含む。このような現象は、患者の体内で起こる病理変化と部分的に類似するため、NMOの発症中における細胞レベルでの発症機序の研究に使用することができる。現在、NMOの発症機序について比較的に一致した見解は、AQP4-Abが最初にアストロサイトの死亡を引き起こし、その後、脱髄病変を引き起こし、この過程において小膠細胞の異常な活性化に伴い、多くの炎症性因子を放出し、NMO疾患の炎症病原性微小環境を形成する。AQP4をめぐる研究及びAQP4-Abの発見により、ようやくNMOを多発性硬化症から分離することができた。
【0005】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
現在、NMOの治療は、主に急性期の治療及び寛解期の治療を含む。急性期の治療は、神経系機能障害をできる限り減少させると共に疾患の回復を促進することを目的とし、現在、主に、高用量のメチルプレドニゾロンパルス療法、血漿交換、免疫グロブリン及びシクロホスファミドの静脈内注射などを含み、寛解期の治療は、主に疾患の再発回数を減少させ、再発の重症度を軽減することを目的とし、主に、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミトキサントロン、メトトレキサート、リツキシマブなどを含む免疫阻害剤の適用である。しかし、従来の治療手段は、何れも全身の免疫系を広く阻害し、全身の自己免疫反応を軽減し、患者への全身性副作用がより大きく、重症感染を誘発するリスクがあり、且つ治療方法は、ホルモン耐性を誘発して治療を無効にすることが容易である。
【0006】
従って、NMOは、安全で効果的な薬物がひどく不足しており、臨床ニーズを満たすことができず、当該疾患を治療する新薬の研究開発は、非常に切迫したニーズである。
【0007】
〔課題を解決するための手段〕
技術的解決手段
本発明は、従来技術における上記問題を解決するために、研究により、セスキテルペンラクトン系化合物の視神経炎治療薬の製造における使用を発明した。
【0008】
本発明の別の好ましい形態として、上記視神経炎は視神経脊髄炎である。
【0009】
本発明の別の好ましい形態として、セスキテルペンラクトン系化合物と薬学的に許容される補助剤を薬剤として製造する。
【0010】
本発明の別の好ましい形態として、上記薬剤は、液体剤形、気体剤形、固体剤形又は半固体剤形である。
【0011】
本発明の別の好ましい形態として、上記薬剤は注射剤である。
【0012】
本発明の別の好ましい形態として、上記薬剤は経口剤である。
【0013】
本発明の別の好ましい形態として、上記経口剤はカプセル剤である。
【0014】
本発明の別の好ましい形態として、上記経口剤は丸剤である。
【0015】
本発明の別の好ましい形態として、上記セスキテルペンラクトン系化合物はミケリオリド誘導体である。
【0016】
〔発明の有益な効果〕
有益な効果
本発明は、セスキテルペンラクトン系化合物を初めて視神経炎治療薬の製造に使用し、製造された薬物は、特に視神経脊髄炎の治療において優れた治療効果を有する。
【0017】
〔図面の簡単な説明〕
図面の説明
[
図1]本発明の実施例に記載のACT001の構造式である。
【0018】
[
図2]本発明の実施例に記載のACT001のBV-2細胞に対する細胞毒性実験の結果図である。
【0019】
[
図3]本発明の実施例に記載のACT001の、BV-2がLPSにより活性化された後のTNF-αの放出に対する阻害を示す図である。
【0020】
[
図4]本発明の実施例に記載のACT001の、BV-2がLPSにより活性された後のIL-6の放出に対する阻害を示す図である。
【0021】
[
図5]本発明の実施例に記載のACT001の、BV-2がLPSにより活性化された後のNOの放出に対する阻害を示す図である。
【0022】
[
図6]本発明の実施例に記載のACT001の、LewisラットNMOの疾患症状モデルを緩和するスコア図である。
【0023】
〔発明を実施するための形態〕
本発明の最適な実施形態
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、この部分の説明は例示的かつ解釈的なものに過ぎず、本発明の請求範囲に何らかの制限を加えるものではない。また、当業者は、本明細書の説明に基づき、本明細書における実施例中及び異なる実施例中の特徴を相応に組み合わせることができる。
【0024】
実施例1
【0025】
本実施例に研究された、視神経脊髄炎の治療薬を製造するためのセスキテルペンラクトン系化合物は、構造式が
図1に示す通りで、ACT001とも呼ばれ、ACT001の化学名として、(3R,3aS,9R,9aS,9bS)-3-((ジメチルアミノ)メチル)-9-ヒドロキシ-6,9-ジメチル-3,3a,4,5,7,8,9,9a-オクタヒドロアズレノ[4,5-b]フラン-2(9bH)-オンフマル酸塩であり、ミケリオリド誘導体の一つである。構造式は
図1に示す通りである。本実施例は、ACT001を利用してAQP4自己免疫抗体が陽性の視神経脊髄炎患者に対して治療及び研究を行った。
【0026】
薬理薬効実験は、以下の通りである。
【0027】
1、まず、活性成分に対してインビトロ試験を行い、インビトロ試験の結果によると、ACT001は、インビトロでBV-2細胞の増殖を阻害することができ、そのIC50値が23.6 μMである。また、10 μMでは、LPSにより活性化された小膠細胞の炎症性因子(TNF-α、IL-6、NO)の放出を顕著に低下させ、小膠細胞の炎症反応を低減することができる。
【0028】
同時に、NMOの動物モデルを構築するに先立ち、まず、Lewisラットに脊髄髄腔内カテーテル手術を行い、当該手術は、PE10カテーテルの長さ(7 cm)を制御することにより、出口をラットの脊髄の第1腰椎の位置に設置することができる。脊髄髄腔内カテーテル手術後のLewisラット。手術後の2日目に、ラットの行動は正常なラットと同じであり、モデル構築に成功したラットを3群に分け、カテーテル挿入に成功したラットのカテーテルにNMO患者の血清及び補体系を10 μLずつ注射し、4日ごとに1回補充した。投与計画として、モデル対照群の6匹の動物には、生理食塩水を15日間連続して毎日胃内投与し、ホルモン群の8匹の動物には、注射用メチルプレドニゾロンコハク溶液を用量30 mg/kgで15日間連続して毎日胃内投与し、ACT001群の6匹の動物には、ACT001溶液を用量60 mg/kgで15日間連続して毎日胃内投与した。動物の状態を毎日観察し、動物の症状に基づいて行動学的スコアを記録した。その結果、ACT001群の動物は、耐性が良好であり、生理食塩水対照群と比べ、疾患の症状が顕著に緩和され、ACT001群はホルモン治療群と比べ、緩和効果が類似し、総合スコアがほぼ同じである。
【0029】
その後、ACT001を視神経脊髄炎の治療に使用してみた。ACT001は、小膠細胞の炎症反応を効果的に阻害することができ、NO、TNF-α、IL-6を含む炎症性因子の放出を顕著に低減することができる。まず、インビトロMTT法、CCK8法により小膠細胞BV2の増殖活性に対するACT001の影響を評価し、その結果、ACT001は、インビトロでBV2細胞の増殖を阻害する作用を有することが示され、具体的な表現としては、表1、
図2に示すように、BV2細胞に対するACT001のIC
50値が23.6±2.34 μMである。
【0030】
【0031】
2、ACT001のBV2細胞へのインビトロ活性阻害作用
BV2細胞を消化し、カウントし、24ウェルプレートに1ウェルあたり1 mL、20000個の細胞で接種し、5%のCO2、37℃のインキュベーターで一晩培養した。全てのウェルに1 μg/mLのLPSを加えて1 h作用した後に異なる濃度のACT001を加え、それぞれ(1)control群、(2)ACT001-2.5 μM群、(3)ACT001-5 μM群、(4)ACT001-10 μM群、(5)ACT001-20 μM群である5つの実験群を設置し、8 h作用し、薬物の作用終了後、上清を収集し、12000 rpmで20 min遠心分離し、試薬キットの取扱説明書における手順に従ってELISAを行った。
【0032】
図2は、BV2細胞の増殖活性に対するACT001の影響を示す図であり、
図2から分かるように、対照群と比べ、ACT001群は、何れもBV-2細胞におけるIL-6の発現を低減させることができ、且つACT001の作用用量の増加につれて、それに対する阻害作用が強くなり、用量依存性を有し、ACT001の10 μM及び20 μM用量群は、対照群と比べてp値が何れも0.001よりも小さく、即ち、極めて顕著に低下し、3回の繰り返しでは傾向が一致している。
【0033】
3、IL-6の発現に対するACT001の影響
【0034】
BV2細胞を消化し、カウントし、24ウェルプレートに1ウェルあたり1 mL、40000個の細胞で接種し、5%のCO2、37℃のインキュベーターで一晩培養した。全てのウェルに1 μg/mLのLPSを加えて1 h作用した後に異なる濃度のACT001を加え、それぞれ(1)control群、(2)ACT001-2.5 μM群、(3)ACT001-5 μM群、(4)ACT001-10 μM群、(5)ACT001-20 μM群である5つの実験群を設置し、24 h作用し、薬物の作用終了後、上清を収集し、12000 rpmで20 min遠心分離し、試薬キットの取扱説明書における手順に従ってELISAを行った。
【0035】
図3は、IL-6の発現に対するACT001の影響(* P<0.05、** P<0.01、*** P<0.001)であり、
図3から分かるように、対照群と比べ、ACT001群は、何れもBV-2細胞におけるTNF-αの発現を低減させることができ、且つACT001の作用用量の増加につれて、それに対する阻害作用が強くなり、用量依存性を有し、ACT001用量群は、対照群と比べてp値が何れも0.001よりも小さく、即ち、極めて顕著に低下し、3回の繰り返しでは傾向が一致している。
【0036】
4、TNF-αの発現に対するACT001の影響
【0037】
BV2細胞を消化し、カウントし、24ウェルプレートに1ウェルあたり1 mL、40000個の細胞で接種し、5%のCO2、37℃のインキュベーターで一晩培養した。全てのウェルに1 μg/mLのLPSを加えて1 h作用した後に異なる濃度のACT001を加え、それぞれ(1)control群、(2)ACT001-2.5 μM群、(3)ACT001-5 μM群、(4)ACT001-10 μM群、(5)ACT001-20 μM群である5つの実験群を設置し、24 h作用し、薬物の作用終了後、上清を収集し、12000 rpmで20 min遠心分離し、試薬キットの取扱説明書における手順に従ってELISAを行った。
【0038】
図4は、TNF-αの発現に対するACT001の影響(* P<0.05、** P<0.01、*** P<0.001)であり、
図4から分かるように、対照群と比べ、ACT001の2.5 μM、5 μM、10 μM用量群は、何れもBV-2細胞におけるNOの発現を低減させることができ、且つACT001の作用用量の増加につれて、それに対する阻害作用が強くなり、用量依存性を有し、そのうち、ACT001の10 μM用量群は、対照群と比べて極めて顕著に低下している。
【0039】
5、
図5は、NOの発現に対するACT001の影響を示す図(* P<0.05、** P<0.01、*** P<0.001)であり、
図5から分かるように、ACT001は、5 μMの濃度であれば小膠細胞NOの病理的放出を顕著に低減させることができる。
【0040】
6、ACT001のNMO患者のインビトロ試験及び動物モデルに対する作用
【0041】
脊髄髄腔内カテーテル手術に成功したラットのカテーテルにNMO患者の血清及び補体系を10 μLずつ注射し、4日ごとに1回補充し、NMOの動物モデルを構築した。モデル動物を生理食塩水群、ホルモン(注射用メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム)群及びACT001群という3群にランダムに分け、投与計画は以下の通りである:
【0042】
【表2】
即ち、B群の用量は、ACT001と薬学的に許容される補助剤を薬剤として製造した後に人体に投与したACT001の投与量である約5 mg/kgに相当し、C群の用量は、ACT001と薬学的に許容される補助剤を薬剤として製造した後に人体に投与したACT001の投与量である約10 mg/kgに相当する。
【0043】
動物の症状に基づいて行動学的スコアを行った。
【0044】
スコア基準は以下の通りである。
【0045】
0点:臨床症状がない。
【0046】
1点:尾部の張力が低下し、又は歩行が軽度にぎこちない。
【0047】
2点:尾部の張力がなく、又は歩行が中程度に異常であり、両側後肢が無力で、受動的に寝返りされた後に回復することができる。
【0048】
3点:両側後肢が麻痺する。受動的に寝返りされた後に回復できないが、刺激を与えると動かすことができる。
【0049】
4点:両側後肢が麻痺する。前肢が麻痺し、又は筋力が低下し、且つ尿便失禁がある。
【0050】
5点:瀕死状態又は死亡である。
【0051】
症状が両方の基準間にあるものは、±0.5で計算する。
【0052】
実験結果によると、投与期間に、ACT001群の動物は、耐性が良好であり、生理食塩水対照群と比べ、疾患の症状が顕著に緩和され、ACT001群はホルモン治療群と比べ、緩和効果が類似し、行動学的スコアがほぼ同じである。実験結果は、表2及び
図6に示す通りである。
【0053】
表2 各群の動物の行動学的スコア
【0054】
【表3】
注:生理食塩水と比べ、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001
【0055】
図6は、動物モデルの行動学的スコアである。表2及び
図6から分かるように、ACT001は、NMOの動物モデルの行動学的スコアを顕著に低減させ、NMOの疾患モデルの症状を改善することができ、且つ作用効果がホルモンに劣らない。
【0056】
【0057】
上記結果から分かるように、NMOの治療において、ACT001は、顕著な優位性を有する。ACT001のインビトロ活性試験を行うことにより、BV-2小膠細胞に対するACT001のIC50値は、23.6 μMと測定され、且つNO、TNF-α、IL-6を含む炎症性因子の放出を顕著に低減させて、LPSの刺激により誘発された小膠細胞の炎症反応を阻害することができる。
【0058】
視神経脊髄炎の動物モデルにおいて、実験した結果、ACT001は、視神経脊髄炎の動物モデルの臨床症状を顕著に緩和することができ、15日間の連続投与では、生理食塩水群の行動学的スコアは3.17±0.26であり、ACT001群の行動学的スコアは2.00±0.32であり、ホルモン群の行動学的スコアである2.31±0.26と比べ、ACT001は、それとほぼ同じであることが分かる。ACT001は、ホルモンに代えて臨床的にNMO疾患の全く新しい治療方法になれることが示されている。
【0059】
最初にはACT001を選択したが、ACT001の他に、上記実験に従ったところ、ミケリオリドの誘導体及びその塩も、視神経脊髄炎を治療できる作用を有する。
【0060】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明の実施形態は上記の実施例によって制限されず、本発明の趣旨と原理を逸脱せずに行われた他の何れの変更、修飾、置き換え、組み合わせ、簡素化も、等価な置換形態であるべきで、全て本発明の請求範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】本発明の実施例に記載のACT001の構造式である。
【
図2】本発明の実施例に記載のACT001のBV-2細胞に対する細胞毒性実験の結果図である。
【
図3】本発明の実施例に記載のACT001の、BV-2がLPSにより活性化された後のTNF-αの放出に対する阻害を示す図である。
【
図4】本発明の実施例に記載のACT001の、BV-2がLPSにより活性された後のIL-6の放出に対する阻害を示す図である。
【
図5】本発明の実施例に記載のACT001の、BV-2がLPSにより活性化された後のNOの放出に対する阻害を示す図である。
【
図6】本発明の実施例に記載のACT001の、LewisラットNMOの疾患症状モデルを緩和するスコア図である。