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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】チューブ式熱交換器及びボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/22 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
F22B37/22 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019052494
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153588
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-03-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 匡史
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍太
(72)【発明者】
【氏名】寺原 貴澄
(72)【発明者】
【氏名】天野 英輝
(72)【発明者】
【氏名】山根 史也
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】竹下 和志
【審判官】鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-337604(JP,A)
【文献】米国特許第4422499(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダ管と、
前記ヘッダ管に接続される複数本の熱交換管と、
前記ヘッダ管の内部に設けられ、前記ヘッダ管の内部空間を2以上のパス領域に区画する仕切り板と、
前記ヘッダ管の内壁面に固定され、前記仕切り板を保持するための複数の保持部材と、
を備え、
前記パス領域には、それぞれ前記複数本の熱交換管のうち、上流側熱交換管群、及び前記上流側熱交換管群より下流側の下流側熱交換管群が接続され、
前記仕切り板は、前記ヘッダ管の管軸方向視において前記ヘッダ管の内周面に沿う円盤状部材であり、
前記ヘッダ管は、
前記上流側熱交換群および前記下流側熱交換群を含む複数の前記熱交換管の接続位置と前記ヘッダ管の軸中心とを結ぶ線分に直交し、かつ、前記ヘッダ管の半径方向に沿った直線を挟んで前記接続位置側に位置する第1領域と、
前記直線を挟んで前記接続位置とは反対側に位置する第2領域と、
を含み、
前記複数の保持部材は、
前記ヘッダ管の周方向にて前記接続位置を挟んで前記接続位置の両側において、前記ヘッダ管のうち前記第1領域に固定される一対の第1保持部材と、
前記ヘッダ管のうち前記第2領域に固定される第2保持部材と、
を含み、
前記一対の第1保持部材および前記第2保持部材を含む前記複数の保持部材が、前記接続位置を避けた複数の周方向位置にて前記ヘッダ管の周方向に間隔を隔てて配置されている
チューブ式熱交換器。
【請求項2】
前記仕切り板は、前記ヘッダ管の径方向において前記ヘッダ管の前記内壁面との間に隙間が形成されるようにして設けられている
請求項1に記載のチューブ式熱交換器。
【請求項3】
前記仕切り板は、前記ヘッダ管の管軸方向において前記保持部材との間に隙間が形成されるようにして設けられている
請求項1又は2に記載のチューブ式熱交換器。
【請求項4】
前記保持部材は、前記ヘッダ管の管軸方向において前記仕切り板を挟んで両側に設けられている
請求項1~3の何れか一項に記載のチューブ式熱交換器。
【請求項5】
前記保持部材は、溶接により前記ヘッダ管の前記内壁面に固定されている
請求項1~4の何れか一項に記載のチューブ式熱交換器。
【請求項6】
前記保持部材は、前記ヘッダ管の前記内壁面にねじ止め又は加締められて取り付けられている
請求項1~4の何れか一項に記載のチューブ式熱交換器。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のチューブ式熱交換器と、
燃焼領域の下流側に設けられ、前記燃焼領域における燃焼で生じた排ガスを流通する煙道と、を備え、
前記煙道内に前記チューブ式熱交換器が配置されている
ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チューブ式熱交換器及びボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンカー等の船舶や、浮体式生産貯蔵積出設備(floating production,storage and offloading:FPSO)、又は浮体式貯蔵積出設備(floating storage and offloading unit:FSO)等の洋上プラントに搭載される舶用ボイラを含むボイラに適用されるチューブ式熱交換器が知られている。例えば特許文献1には、このようなチューブ式熱交換器の一態様である過熱器(super heater:SH)について記載されている。過熱器は、上面視において、複数の伝熱管(熱交換管)を燃焼ガスの流れに直交する方向に複数のパスに分割し、各パス内では燃焼ガスの流れに平行な方向に蒸気を移動させ、かつ、各パス間では燃焼ガスの流れに直交する方向に蒸気を移動させることで蒸気を過熱し、高温の蒸気を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6113632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、例えば油の採掘に伴って生ずる随伴ガスを環境中に放出することを抑制するためにボイラ燃料と混焼させるなど、ボイラに様々な運転態様が求められている。これに伴い、チューブ式熱交換器にも利便性の向上や信頼性の向上が望まれている。
【0005】
しかし、上記特許文献1のような過熱器においては、概して、各パス間を仕切る仕切り板が、ヘッダ管の内壁面に溶接などで直接的に固定されるため、ボイラシステムの運転中における熱膨張量の差に起因して、仕切り板とヘッダ管の内壁面との間に熱応力が生じて亀裂が生じる可能性がないとは言い切れず、信頼性及び利便性を向上する余地がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、チューブ式熱交換器及びボイラの信頼性及び利便性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも1つの実施形態に係るチューブ式熱交換器は、
ヘッダ管と、
前記ヘッダ管に接続される複数本の熱交換管と、
前記ヘッダ管の内部に設けられ、前記ヘッダ管の内部空間を2以上のパス領域に区画する仕切り板と、
前記ヘッダ管の内壁面に固定され、前記仕切り板を保持するための保持部材と、
を備えている。
【0008】
上記(1)の構成によれば、ヘッダ管の内部を2以上のパス領域に区画する仕切り板が保持部材によって保持される。つまり、仕切り板とヘッダ管の内壁面とが溶接等によって直接的に固定されることがないから、例えば溶接によって仕切り板をヘッダ管の内壁面に直接固定していた従来のチューブ式熱交換器と比較して、熱膨張によってヘッダ管と仕切り板との間に発生する熱応力を抑制することができる。よって、仕切り板とヘッダ管の内壁面との間で応力による腐食割れ、すなわち亀裂の発生を抑制することができるから、信頼性及び利便性を向上させたチューブ式熱交換器を提供することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記仕切り板は、前記ヘッダ管の径方向において前記ヘッダ管の前記内壁面との間に隙間が形成されるようにして設けられていてもよい。
【0010】
上記(2)の構成によれば、例えばチューブ式熱交換器の運用中における熱膨張に起因して、ヘッダ管の径方向に対して仕切り板が熱伸びを生じた場合であっても、ヘッダ管の内壁面と仕切り板との間の隙間により上記熱膨張を吸収することができる。従って、ヘッダ管の内壁面と仕切り板との間において、熱応力に起因した亀裂の発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
(3)いくつかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記仕切り板は、前記ヘッダ管の管軸方向において前記保持部材との間に隙間が形成されるようにして設けられていてもよい。
【0012】
上記(3)の構成によれば、例えばチューブ式熱交換器の運用中における熱膨張に起因して、ヘッダ管の管軸方向に対して仕切り板が熱伸びを生じた場合であっても、保持部材と仕切り板との間の隙間により上記熱膨張を吸収することができるから、保持部材と仕切り板との間において、熱応力に起因した亀裂の発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
(4)いくつかの実施形態では、上記(1)~(3)の何れか一つの構成において、
前記保持部材は、前記ヘッダ管の管軸方向において前記仕切り板を挟んで両側に設けられていてもよい。
【0014】
上記(4)の構成によれば、保持部材により、ヘッダ管の管軸方向において仕切り板を挟んで両側から上記仕切り板を保持することができる。これにより、ヘッダ管の管軸方向における仕切り板の移動を安定的に規制することができるから、パス領域間の仕切り位置が運転中に変更されることがない。よって、チューブ式熱交換器の信頼性及び利便性の向上を図ることができる。
【0015】
(5)いくつかの実施形態では、上記(1)~(4)の何れか一つの構成において、
前記保持部材は、前記ヘッダ管の周方向に間隔を隔てて複数箇所に配置されていてもよい。
【0016】
上記(5)の構成によれば、例えばヘッダ管の内壁面と仕切り板とを、ヘッダ管の周方向の全周に亘って連続的に固定したり、或いは保持部材をヘッダ管の周方向の全周に亘って連続的に形成したりする場合と比較して、熱膨張によって保持部材に生じる寸法誤差を抑制することができる。
【0017】
(6)いくつかの実施形態では、上記(1)~(5)の何れか一つの構成において、
前記保持部材は、溶接により前記ヘッダ管の前記内壁面に固定されていてもよい。
【0018】
仕切り板を保持する保持部材自体は、仕切り板に比べて小さく形成することができるから、仮にチューブ式熱交換器の運用中に保持部材に熱伸びが生じても、仕切り板がヘッダ管の内壁面に直接的に固定されている場合に比べて熱膨張量を抑制することができる。つまり、上記(6)の構成によれば、仕切り板を保持する保持部材が、溶接によってヘッダ管の内壁面に固定されることにより、熱伸びに対する仕切り板の自由度を確保しつつ、ヘッダ管の内壁面に対して保持部材がずれたり脱落したりすることを防止して仕切り板を安定的に保持することができる。
【0019】
(7)いくつかの実施形態では、上記(1)~(6)の何れか一つの構成において、
前記保持部材は、前記ヘッダ管の前記内壁面にねじ止め又は加締められて取り付けられていてもよい。
【0020】
上記(7)の構成によれば、例えば定期的な点検時のような、チューブ式熱交換器の運転停止中には、ヘッダ管の内壁面に対して保持部材の位置をずらしたり取り外したりすることができる。よって、運転態様に応じてヘッダ管の管軸方向における仕切り板の位置をずらすことができるから、隣り合うパス領域間の仕切り位置を調整して各々のパス領域の容積を調整することができる。
【0021】
(8)いくつかの実施形態では、上記(1)~(7)の何れか一つの構成において、
前記パス領域には、それぞれ前記複数本の熱交換管のうち、上流側熱交換管群、及び前記上流側熱交換管群より下流側の下流側熱交換管群が接続されていてもよい。
【0022】
上記(8)の構成によれば、上流側熱交換管群からパス領域に流入した流体が、パス領域内を通過して下流側熱交換管群から流出する。例えば、上流側熱交換管群は、一又は複数本の熱交換管で構成することができ、下流側熱交換管群もまた、一又は複数本の熱交換管で構成することができる。つまり、各々の熱交換管群に含まれる熱交換管の本数を任意に設定することで、各熱交換管群の流路断面積を任意に調整することができる。
【0023】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係るボイラは、
上記(1)~(8)の何れか一つに記載のチューブ式熱交換器と、
燃焼領域の下流側に設けられ、前記燃焼領域における燃焼で生じた排ガスを流通する煙道と、を備え、
前記煙道内に前記チューブ式熱交換器が配置されている。
【0024】
上記(9)の構成によれば、上記(1)で述べたように、仕切り板とヘッダ管の内壁面とが溶接等によって直接的に固定されることがないから、例えば溶接によって仕切り板をヘッダ管の内壁面に固定していた従来の方式と比較して、熱膨張によってヘッダ管と仕切り板との間に発生する熱応力を抑制することができるチューブ式熱交換器が実現される。よって、仕切り板とヘッダ管の内壁面との間で応力による腐食割れ、すなわち亀裂の発生を抑制することができるから、信頼性及び利便性を向上させたチューブ式熱交換器を備えたボイラを提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、チューブ式熱交換器及びボイラの信頼性及び利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の一実施形態に係るボイラの構成例を示す概略図である。
図2】一実施形態に係るチューブ式熱交換器の構成例を示す概略図であり、ヘッダ管の軸方向からみた縦断面図である。
図3】一実施形態に係るチューブ式熱交換器の構成例を示す側断面図である。
図4】一実施形態に係るチューブ式熱交換器の構成例を示す概略図であり、ヘッダ管の上方からみた透視図である。
図5】一実施形態における保持部材の構成例を示す概略図である。
図6】他の実施形態における保持部材の構成例を示す概略図である。
図7】他の実施形態における保持部材の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0028】
以下の説明では、先ず、本開示の一実施形態に係るボイラの構成について説明し、次いで本開示の一実施形態に係るチューブ式熱交換器の構成について説明する。
図1は本開示の一実施形態に係るボイラの構成例を示す概略図である。
本開示の一実施形態に係るボイラ1は、陸上施設で用いられる陸用ボイラの他、例えばタンカー等の船舶や、浮体式生産貯蔵積出設備(floating production,storage and offloading:FPSO)、又は浮体式貯蔵積出設備(floating storage and offloading unit:FSO)等の洋上プラントに搭載される舶用ボイラであってもよい。
【0029】
なお、ボイラ1が舶用ボイラである場合、ボイラ1は、後述するチューブ式熱交換器20としての過熱器を備え、船舶を推進させる動力として用いられる蒸気を発生させる主ボイラであってもよい。一方、他の実施形態におけるボイラ1は、例えば、船舶の荷役作業の動力として用いられるカーゴオイルポンプ(不図示)の駆動源となる蒸気を発生させる補助ボイラであっても良いし、発電用等の他の用途に用いられるボイラであってもよい。
【0030】
図1に示すように、ボイラ1は、火炉2と、火炉2の炉壁部3に設けられ、燃焼用燃料及び燃焼用空気を火炉2内に噴射するバーナ装置4と、火炉2内に存在する燃焼領域100の下流側に設けられ、燃焼領域100での燃焼で生じた燃焼ガス乃至排ガスGを流通する煙道10と、燃焼領域100よりも下流に配置されたチューブ式熱交換器20と、を備えている。また、ボイラ1は、排ガス流路に配置された蒸発管群6と、蒸発管群6の下方に設けられた水ドラム7と、蒸発管群6の上方に設けられた蒸気ドラム8と、を備えている。
【0031】
火炉2は、燃焼用燃料と燃焼用空気とを反応させて燃焼させるための中空体であり、例えば、円筒形状や箱型等、種々の形態をとり得る。このような火炉2は、外部と内部とを区画する炉壁部3を含む。炉壁部3は、冷媒としての流体が通過可能な複数の炉壁管を含んで構成される。
火炉2の内部は、該火炉2の一端から噴射された燃焼用燃料、燃焼用空気、及び/又はVOCガスの燃焼火炎(火炎80)が形成される燃焼領域100、並びに燃焼によって生じた燃焼ガス乃至排ガスGの流路となっている。燃焼ガスの流れ方向の下流側には上述した蒸発管群6が配置され、さらに下流側である火炉2の上部には煙突に続く燃焼ガス出口9が設けられる。なお、蒸気ドラム8の上部には蒸気出口8Aが設けられている。
【0032】
バーナ装置4は、火炉2内に主燃料である燃焼用燃料(例えば気体燃料又は液体燃料を含む)と搬送用ガスとの混合気体、及び/又は燃焼用空気を噴射する。幾つかの実施形態では、例えば図1に示すように、バーナ装置4は、火炉2の天井部3Aに配置され、燃焼用燃料と燃焼用空気とを下方に向けて噴射することで火炎80を形成するように構成されていてもよい。
【0033】
かかるボイラ1は、例えば火炉2の炉壁部3に設けられ、揮発性有機化合物(volatile organic compounds:VOC)と不活性ガスとを含む揮発性ガス(VOCガス)を火炉2内に供給する揮発性ガス供給部5をさらに備えていてもよい。揮発性ガス供給部5は、例えば不図示のVOCガスラインを通って搬送されたVOCと不活性ガスとを含む揮発性ガスを火炉2内に供給するように構成される。
【0034】
続いて、本開示の少なくとも一実施形態に係るチューブ式熱交換器20について詳しく説明する。図2は一実施形態に係るチューブ式熱交換器の構成例を示す概略図であり、ヘッダ管の軸方向からみた縦断面図である。図3は一実施形態に係るチューブ式熱交換器の構成例を示す側断面図である。図4は一実施形態に係るチューブ式熱交換器の構成例を示す概略図であり、ヘッダ管の上方からみた透視図である。
【0035】
まず、図1に非限定的に例示するように、本発明の少なくとも1つの実施形態に係るチューブ式熱交換器20は、火炉2内又は煙道10内であって、燃焼領域100で生じた燃焼ガス乃至排ガスGの流れにおいて、燃焼領域100よりも下流の排ガス流路に配置される。チューブ式熱交換器20は、上記排ガス流路内を流れる排ガスGとの熱交換によって、該排ガス流路内に配置された配管内を流れる水又は蒸気を加熱する熱交換器であり、例えば水を加熱するエコノマイザ(図示略)、上述した蒸発管群6を含む蒸発器、蒸発器により得られた蒸気をさらに加熱して過熱蒸気を生成する過熱器、又は煙道10内に配置された再熱器などであってもよい。
【0036】
かかるチューブ式熱交換器20は、例えば図2~4に非限定的に例示するように、ヘッダ管22と、ヘッダ管22に接続される複数本の熱交換管35と、ヘッダ管22の内部に設けられ、該ヘッダ管22の内部空間を2以上のパス領域50に区画する仕切り板40と、ヘッダ管22の内壁面24に固定され、仕切り板40を保持するための保持部材60と、を備えている。
【0037】
ヘッダ管22は、後述する熱交換管35が複数本接続された集合管であり、排ガス流路内を流れる排ガスGの流れと交差(又は直交)するように配置される。このヘッダ管22は、特に限定されないが、例えば直線状に形成された直管であってもよく、必要に応じて複数本設けられていてもよい。複数本のヘッダ管22を設ける場合、ヘッダ管22の内部を流れる流体が、一のヘッダ管22から他のヘッダ管22へと流通可能なように、互いの内部空間が後述する熱交換管35を介して連通するように構成される。一のヘッダ管22と他のヘッダ管22とは、例えば平行に配置されていてもよく、互いが隣り合って近くに配置されていてもよい。
【0038】
かかるヘッダ管22の内部空間は、管軸方向に交差(又は直交)するように配置された仕切り板40により、複数のパス領域50に区画されている。各々のパス領域50は、チューブ式熱交換器20内を流れる水又は蒸気などの流体が、該流体の流れの上流から下流にかけて、連続する(又は隣り合う)パス領域50間で段階的に温度が上昇するようにして、夫々異なる温度域の流体(水又は蒸気)が流通するようになっている。
【0039】
熱交換管35は、その一端が一のヘッダ管22に接続されるとともに、他端が他のヘッダ管22に接続されるようにして設けられている。例えば熱交換管35は、一端から流入した流体が折り返して逆向きに流れるようにして、一端と他端とが同一方向を向くように平行に配置されたU字状の配管であってもよい。本開示の一実施形態に係るチューブ式熱交換器20では、このような熱交換管35が複数本設けられている。すなわち、一のヘッダ管22における一のパス領域50と、他のヘッダ管22における一のパス領域50とは、両者の間に接続される一以上の熱交換管35を含む熱交換管群30によって連通している。各々の熱交換管群30は、夫々が同一温度域の流体を流通させるように並設された2以上の熱交換管35を含んでいてもよい。
【0040】
仕切り板40は、例えば板状の部材であってもよく、ヘッダ管22の管軸方向視において該ヘッダ管22の内周面(内壁面24)に沿う円盤状の部材であってもよい。
そして上述したように、本開示における仕切り板40は、保持部材60を介してヘッダ管22の内壁面24に支持されている。
【0041】
保持部材60は、ヘッダ管22の内壁面24に対向する一端の少なくとも一部においてヘッダ管22の内壁面24に固定されるとともに、上記一端以外の他の部分において仕切り板40に接することで仕切り板40を保持するように構成されている。すなわち、保持部材60は、仕切り板40とは固定されずに、ヘッダ管22の径方向D又は管軸方向Xにおける仕切り板40の移動を所定の範囲内に規制するようにして設けられている。
【0042】
このように、ヘッダ管22の内部を2以上のパス領域50に区画する仕切り板40が保持部材60によって保持される構成によれば、仕切り板40とヘッダ管22の内壁面24とが溶接等によって直接的に固定されることがないから、例えば溶接によって仕切り板40をヘッダ管22の内壁面24に直接固定していた従来のチューブ式熱交換器と比較して、熱膨張によってヘッダ管22と仕切り板40との間に発生する熱応力を抑制することができる。よって、仕切り板40とヘッダ管22の内壁面24との間で応力による腐食割れ、すなわち亀裂の発生を抑制することができるから、信頼性及び利便性を向上させたチューブ式熱交換器20を提供することができる。
なお、ヘッダ管22の肉厚が厚いほど熱膨張による応力腐食割れの可能性が高まることが知られており、肉厚が厚いチューブ式熱交換器20に上記構成を用いることで本願の利益を最大限に享受することができる。例えばヘッダ管22の肉厚が厚い高出力のボイラ1に本発明の一実施形態を適用することで、本開示の何れかの実施形態で示す利益を最大限に享受することができるのである。
【0043】
いくつかの実施形態では、上述した構成において、例えば図2に例示するように、保持部材60は、ヘッダ管22の周方向Rに間隔を隔てて複数箇所に配置されていてもよい。
ヘッダ管22の周方向Rにおける保持部材60の配置や数は特に限定されず、必要に応じて任意の数又は配置を採用し得る。
【0044】
このように、保持部材60をヘッダ管22の周方向Rに間隔を隔てて複数箇所に配置した構成によれば、例えばヘッダ管22の内壁面24と仕切り板40とを、ヘッダ管22の周方向Rの全周に亘って連続的に固定したり、或いは保持部材60をヘッダ管22の周方向Rの全周に亘って連続的に形成したりする場合と比較して、熱膨張によって保持部材60に生じる寸法誤差を抑制することができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、上述した何れかの構成において、例えば図2及び図3に例示するように、仕切り板40は、ヘッダ管22の径方向Dにおいてヘッダ管22の内壁面24との間に隙間71が形成されるようにして設けられていてもよい。すなわち、仕切り板40は、ヘッダ管22の内径よりも小さな直径を有していてもよい。例えば仕切り板40は、ボイラ1の稼働中における熱伸びにより熱膨張した際にも、ヘッダ管22の内壁面24に接することがないように、試運転等により予め設定された寸法未満の直径を有するように構成されていてもよい。
【0046】
このようにヘッダ管22の内壁面24と仕切り板40との間に隙間71を設けた構成によれば、例えばチューブ式熱交換器20の運用中における熱膨張に起因して、ヘッダ管22の径方向Dに対して仕切り板40が熱伸びを生じた場合であっても、ヘッダ管22の内壁面24と仕切り板40との間の隙間により上記熱膨張を吸収することができる。従って、ヘッダ管22の内壁面24と仕切り板40との間において、熱応力に起因した亀裂の発生を効果的に抑制することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、上述した何れかの構成において、例えば図3に例示するように、仕切り板40は、ヘッダ管22の管軸方向Xにおいて保持部材60との間に隙間72が形成されるようにして設けられていてもよい。
【0048】
このように、保持部材60と仕切り板40との間に隙間を設けた構成によれば、例えばチューブ式熱交換器20の運用中における熱膨張に起因して、ヘッダ管22の管軸方向Xに対して仕切り板40が熱伸びを生じた場合であっても、保持部材60と仕切り板40との間の隙間72により上記熱膨張を吸収することができるから、保持部材60と仕切り板40との間において、熱応力に起因した亀裂の発生を効果的に抑制することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、上述した何れか一つの構成において、例えば図3及び図4に例示するように、保持部材60は、ヘッダ管22の管軸方向Xにおいて仕切り板40を挟んで両側に設けられていてもよい。
この場合、保持部材60は、ヘッダ管22の管軸方向Xにおける仕切り板40の一方側と他方側とで、それぞれヘッダ管22の周方向Rの対応する位置に配置されていてもよい。或いは、保持部材60は、ヘッダ管22の管軸方向Xにおける仕切り板40の一方側と他方側とで、それぞれヘッダ管22の周方向Rにおいて異なる位置に配置されていてもよく、上記管軸方向Xにおける仕切り板40の一方側と他方側とで互い違いの(飛び飛びの)位置に交互に配置されていてもよい。さらに、保持部材60は、仕切り板40の外周の一部を、ヘッダ管22の管軸方向Xの一端側から他端側に渡ってコ字状に支持することで仕切り板40を保持するように構成されていてもよい。
【0050】
このように、保持部材60により、ヘッダ管22の管軸方向Xにおいて仕切り板40を両側から挟んで上記仕切り板40を保持する構成によれば、ヘッダ管22の管軸方向Xにおける仕切り板40の移動を安定的に規制することができるから、パス領域50間の仕切り位置が運転中に変更されることがない。よって、チューブ式熱交換器20の信頼性及び利便性の向上を図ることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、上述した何れか一つの構成において、例えば図4に例示するように、パス領域50には、それぞれ複数本の熱交換管35のうち、上流側熱交換管群31、及び該上流側熱交換管群31より下流側の下流側熱交換管群32が接続されていてもよい。
すなわち、パス領域50には、ヘッダ管22の内部を流れる水又は蒸気等の流体の流れにおいて、上流に位置する上流側熱交換管群31と、該流体の流れにおいて上流側熱交換管群31よりも下流に位置する下流側熱交換管群32とが接続されていてもよい。より詳細には、パス領域50には、上流側熱交換管群31における下流側の端部と、下流側熱交換管群32における上流側の端部とが接続され得る。
なお、図4では、説明の簡略化のため、ヘッダ管22の管軸方向Xにおいて、ある特定の位置に一本の熱交換管35のみが設けられているように描写しているが、これに限定するものではない。すなわち、幾つかの実施形態では、ヘッダ管22の管軸方向Xにおけるある特定の位置に、複数の熱交換管35が接続されていてもよい(例えば図2参照)。
【0052】
このように、パス領域50に上流側熱交換管群31及び下流側熱交換管群32を接続した構成によれば、上流側熱交換管群31からパス領域50に流入した流体が、パス領域50内を通過して下流側熱交換管群32から流出する。例えば、上流側熱交換管群31は、一又は複数本の熱交換管35で構成することができ、下流側熱交換管群32もまた、一又は複数本の熱交換管35で構成することができる。つまり、各々の熱交換管群30に含まれる熱交換管35の本数を任意に設定することで、各熱交換管群30の流路断面積を任意に調整することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、上述した何れか一つの構成において、例えば図5に例示するように、保持部材60は、溶接によりヘッダ管22の内壁面24に固定されていてもよい。図5には、このようにして保持部材60をヘッダ管22の内壁面24に固定する際の溶接痕62の一例を示す。かかる溶接痕62は、ヘッダ管22の管軸方向Xにおいて保持部材60の一端側と他端側との少なくとも一方に設けてもよいし、上記一端側と他端側との両方に設けてもよい。
【0054】
仕切り板40を保持する保持部材60自体は、仕切り板40に比べて小さく形成することができるから、仮にチューブ式熱交換器20の運用中に保持部材60に熱伸びが生じても、仕切り板40がヘッダ管22の内壁面24に直接的に固定されている場合に比べて熱膨張量を抑制することができる。つまり、上記のように、仕切り板40を保持する保持部材60を溶接によってヘッダ管22の内壁面24に固定した構成によれば、熱伸びに対する仕切り板40の自由度を確保しつつ、ヘッダ管22の内壁面24に対して保持部材60がずれたり脱落したりすることを防止して仕切り板40を安定的に保持することができる。
【0055】
続いて、図6及び図7は、それぞれ本開示の他の実施形態における保持部材の構成例を示す概略図である。
いくつかの実施形態では、上述した何れか一つの構成において、例えば図6に例示するように、保持部材60は、ヘッダ管22の内壁面24にねじ止め取り付けられていてもよい。この場合、例えばヘッダ管22の側断面においてL字状を呈するように構成された保持部材60をボルト64によってヘッダ管22の内壁面24に固定してもよいし、仕切り板40を保持可能な大きさに形成されたねじ自体を保持部材60として採用してもよい。
また、いくつかの実施形態では、上述した何れか一つの構成において、例えば図7に例示するように、保持部材60は、ヘッダ管22の内壁面24に加締められて取り付けられていてもよい。
【0056】
このように、ヘッダ管22の内壁面24に保持部材60をねじ止めして又は加締めて取り付けた構成によれば、例えば定期的な点検時のような、チューブ式熱交換器20の運転停止中には、ヘッダ管22の内壁面24に対して保持部材60の位置をずらしたり取り外したりすることができる。よって、運転態様に応じてヘッダ管22の管軸方向Xにおける仕切り板40の位置をずらすことができるから、隣り合うパス領域50間の仕切り位置を調整して各々のパス領域50の容積を調整することができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、上述した何れか一つの実施形態において、仕切り板40は、一のパス領域50から流出して他のパス領域50に流入するまでの間における、熱交換管35内での流体の吸熱量が均一化されるようにしてヘッダ管22の内部空間を区画するように設けられていてもよい。
【0058】
流体が流れる際、流路断面積が小さい場合は流速が速くなり、流路断面積が大きい場合は流速が遅くなる。よって、一のパス領域50に連通する熱交換管35の本数を適切に調整することで、一のパス領域50から次のパス領域50までの間に熱交換管35内を流通する流体の滞在時間を調整することができる。つまり、上記構成によれば、一のパス領域50に連通する熱交換管35の本数を適切に調整することで、一のパス領域50から次のパス領域50までの間における熱交換管35内での流体の吸熱量を均一化することができる。
【0059】
また、以上述べたような構成のチューブ式熱交換器20を備えたボイラ1によれば、チューブ式熱交換器20における仕切り板40とヘッダ管22の内壁面24とが溶接等によって直接的に固定されることがないから、例えば溶接によって仕切り板40をヘッダ管22の内壁面24に固定していた従来の方式と比較して、熱膨張によってヘッダ管22と仕切り板40との間に発生する熱応力を抑制することができる。よって、仕切り板40とヘッダ管22の内壁面24との間で応力による腐食割れ、すなわち亀裂の発生を抑制することができるから、信頼性及び利便性を向上させたチューブ式熱交換器20を備えたボイラ1を提供することができる。
【0060】
以上のように、本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、チューブ式熱交換器20及びボイラ1の信頼性及び利便性の向上を図ることができる。
【0061】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0062】
1 ボイラ
2 火炉
3 炉壁部
4 バーナ装置
5 揮発性ガス供給部
6 蒸発管群
7 水ドラム
8 蒸気ドラム
8A 蒸気出口
9 燃焼ガス出口
10 煙道
20 チューブ式熱交換器(エコノマイザ/蒸発器/過熱器/再熱器)
22 ヘッダ管
24 内壁面
30 熱交換管群
31 上流側熱交換管群
32 下流側熱交換管群
35 熱交換管
40 仕切り板
50 パス領域
60 保持部材
62 溶接痕
64 ボルト
71 隙間(径方向)
72 隙間(管軸方向)
80 火炎
100 燃焼領域
G 排ガス
D ヘッダ管の径方向
R ヘッダ管の周方向
X ヘッダ管の管軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7