(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】中空構造部材の作製方法
(51)【国際特許分類】
C04B 37/00 20060101AFI20241030BHJP
C04B 35/64 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C04B37/00 Z
C04B35/64
(21)【出願番号】P 2019132744
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】薮花 優棋
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】深草 祐一
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-2923(JP,A)
【文献】特開2014-216367(JP,A)
【文献】特開2003-77995(JP,A)
【文献】特開2014-233883(JP,A)
【文献】特開2015-163568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00-37/04
C04B 35/64
H05K 3/46
H05K 1/00-1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともセラミックス粉末及びバインダを含有してシート状に形成されてなるセラミックシートを複数枚用意し、前記複数枚のセラミックシートのうち少なくとも1枚のセラミックシートに貫通孔、切り欠き又は凹部を形成し、前記複数枚のセラミックシートを厚み方向に積層して中空構造を有するセラミックシート積層体を作製する工程と、
前記セラミックシート積層体を加熱して一体化し、
中空空間がセラミックスだけで囲まれる中空構造を有するセラミックス仮焼体又はセラミックス焼結体からなる中空構造体を作製する工程と、
前記中空構造体の厚み方向の少なくとも一方の面にセラミックス粉末を載せたうえで前記厚み方向に加圧しながら加熱することにより、前記中空構造体と前記セラミックス粉末に由来する部分とが一体化したセラミックス焼結体からなる、半導体製造装置用の中空構造部材を作製する工程とを含むことを特徴とする中空構造部材の作製方法。
【請求項2】
少なくともセラミックス粉末及びバインダを含有してシート状に形成されてなるセラミックシートを複数枚用意し、前記複数枚のセラミックシートのうち少なくとも1枚のセラミックシートに貫通孔、切り欠き又は凹部を形成し、前記複数枚のセラミックシートを厚み方向に積層して中空構造を有するセラミックシート積層体を作製する工程と、
前記セラミックシート積層体を加熱して一体化し、
中空空間がセラミックスだけで囲まれる中空構造を有するセラミックス仮焼体又はセラミックス焼結体からなる中空構造体を作製する工程と、
前記中空構造体の厚み方向の少なくとも一方の面にセラミックス粉末を成形してなるセラミックス成形体又は当該セラミックス成形体を加熱してなる脱脂体若しくはセラミックス仮焼体からなるセラミックス加熱体を重ね合せたうえで前記厚み方向に加圧しながら加熱することにより、前記中空構造体と前記セラミックス成形体又は前記セラミックス加熱体に由来する部分とが一体化したセラミックス焼結体からなる、半導体製造装置用の中空構造部材を作製する工程とを含むことを特徴とする中空構造部材の作製方法。
【請求項3】
前記セラミックシート積層体を常圧で加熱して一体化することにより前記中空構造体を作製することを特徴とする請求項1又は2に記載の中空構造部材の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造部材の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置において、表面に載置された基板を加熱するヒータ、サセプタなどは、セラミックス基材の内部に電極を内蔵すると共に、セラミックス基材を冷却するための冷却媒体が流れる中空構造の流路を備えた中空構造部材を備えている。
【0003】
特許文献1において、このような中空構造体の中空構造は、少なくとも1つのセラミックス焼結体の接合面に凹部を形成しておき、複数のセラミックス焼結体を拡散接合(固相接合)することにより前記凹部に由来するものとして形成していた。
【0004】
また、特許文献2においては、複数枚のセラミックシートのうち少なくとも1枚のセラミックシートに貫通孔、切り欠き又は凹部を形成し、これらセラミックシートを厚み方向に積層してなるセラミックシート積層体を焼成することにより、前記貫通孔、切り欠き又は凹部に由来する中空構造を有するセラミックス焼結体を形成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-71995号公報
【文献】特開2007-12795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、セラミックス焼結体は高硬度であるので、接合面の表面粗さが拡散接合を行うことができる程度に小さくなるように研磨することは困難であった。
【0007】
また、セラミックシート積層体を形成する際、セラミックシート積層体の厚みを厚くするには、多数のセラミックシートを積層する必要があり、所望の厚さのセラミックシート積層体の作製に長時間を要するなどの問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、厚みのある中空構造を有する中空構造部材の簡易な作製を図ることが可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の中空構造部材の作製方法は、少なくともセラミックス粉末及びバインダを含有してシート状に形成されてなるセラミックシートを複数枚用意し、前記複数枚のセラミックシートのうち少なくとも1枚のセラミックシートに貫通孔、切り欠き又は凹部を形成し、前記複数枚のセラミックシートを厚み方向に積層して中空構造を有するセラミックシート積層体を作製する工程と、前記セラミックシート積層体を加熱して一体化し、中空空間がセラミックスだけで囲まれる中空構造を有するセラミックス仮焼体又はセラミックス焼結体からなる中空構造体を作製する工程と、 前記中空構造体の厚み方向の少なくとも一方の面にセラミックス粉末を載せたうえで前記厚み方向に加圧しながら加熱することにより、前記中空構造体と前記セラミックス粉末に由来する部分とが一体化したセラミックス焼結体からなる、半導体製造装置用の中空構造部材を作製する工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の中空構造部材の作製方法によれば、中空構造体とセラミックス粉末に由来する部分とが一体化したセラミックス焼結体からなる中空構造部材が作製される。この中空構造部材は、中空構造体における中空構造を維持しながら、セラミックス粉末に由来する部分の分だけ中空構造体よりも厚さが増したものとなる。これにより、厚みのある中空構造を有する中空構造部材を簡易に作製を図ることが可能となる。
【0011】
本発明の第2の中空構造部材の作製方法は、少なくともセラミックス粉末及びバインダを含有してシート状に形成されてなるセラミックシートを複数枚用意し、前記複数枚のセラミックシートのうち少なくとも1枚のセラミックシートに貫通孔、切り欠き又は凹部を形成し、前記複数枚のセラミックシートを厚み方向に積層して中空構造を有するセラミックシート積層体を作製する工程と、前記セラミックシート積層体を加熱して一体化し、中空空間がセラミックスだけで囲まれる中空構造を有するセラミックス仮焼体又はセラミックス焼結体からなる中空構造体を作製する工程と、前記中空構造体の厚み方向の少なくとも一方の面にセラミックス粉末を成形してなるセラミックス成形体又は当該セラミックス成形体を加熱してなる脱脂体若しくはセラミックス仮焼体からなるセラミックス加熱体を重ね合せたうえで前記厚み方向に加圧しながら加熱することにより、前記中空構造体と前記セラミックス成形体又は前記セラミックス加熱体に由来する部分とが一体化したセラミックス焼結体からなる、半導体製造装置用の中空構造部材を作製する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の中空構造部材の作製方法によれば、中空構造体とセラミックス成形体又はセラミックス加熱体に由来する部分とが一体化したセラミックス焼結体からなる中空構造部材が作製される。この中空構造部材は、中空構造体における中空構造を維持しながら、セラミックス成形体又はセラミックス加熱体に由来する部分の分だけ中空構造体よりも厚さが増したものとなる。これにより、厚みのある中空構造を有する中空構造部材を簡易に作製を図ることが可能となる。
【0013】
なお、本発明において、中空構造体又は中空構造部材における中空構造とは、中空構造体又は中空構造部材の内部にて閉じ外部に連通しない空間を有する構造の他、中空構造体又は中空構造部材において周縁部にて開口して外部に連通する空間を有する構造も含めて意味する。
【0014】
本発明の第1又は第2の中空構造部材の作製方法において、前記セラミックシート積層体を常圧で加熱して一体化することにより前記中空構造体を作製することが好ましい。
【0015】
この場合、セラミックシート積層体における中空構造が、その形状が崩れることなく保持された状態で中空構造体、ひいては中空構造部材にて維持することを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る中空構造部材の作製方法を示すフローチャート。
【
図2A】セラミックシート積層体を示す模式断面図。
【
図2B】中空構造体及びセラミックス粉末の型内に配置した状態を示す模式断面図。
【
図3A】セラミックシート積層体の別態様を示す模式断面図。
【
図3B】セラミックシート積層体のさらに別態様を示す模式断面図。
【
図4A】本発明の第2の実施形態に係る中空構造部材の作製方法におけるセラミックシート積層体を示す模式断面図。
【
図4B】中空構造体及びセラミックス成形体又はセラミックス加熱体の型内に配置した状態を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る中空構造部材30の作製方法について図面を参照して説明する。なお、図面においては、中空構造部材30及び構成要素などを明確化するためにデフォルメされており、実際の比率を表すものではなく、上下などの方向も単なる例示である。
【0018】
本発明の第1の実施形態に係る中空構造部材30の作製方法は、
図1に示すように、セラミックシート積層体形成工程STEP1、中空構造体作製工程STEP2及び中空構造部材作製工程STEP3を備えている。
【0019】
グリーンシート積層体作製工程STEP1においては、
図2Aを参照して、シート積層法により中空構造を有するセラミックシート積層体10を作製する工程である。具体的には、少なくともセラミックス粉末及びバインダを含有してシート状に形成されてなるセラミックシート11,12を複数枚用意し、これらセラミックシート11,12のうち少なくとも1枚のセラミックシート12に厚さ方向に貫通孔12aを形成し、前記複数枚のセラミックシート11,12を厚み方向(
図2Aの上下方向)に積層して中空構造を有するセラミックシート積層体10を作製する工程である。なお、接着剤などの接合剤を介してセラミックシート11,12を積層してもよい。
【0020】
セラミックシート積層体10においては、貫通孔12aが形成されたセラミックシート12の厚さ方向の両側には、貫通孔12aが形成されていないセラミックシート11が少なくとも1枚ずつ配置されている。これにより、セラミックシート積層体10は、外部に連通しない中空空間Sを有する中空構造を有する。
【0021】
なお、
図3Aに示すように、セラミックシート11,12のうち少なくとも1枚のセラミックシート12に厚さ方向に貫通する切り欠き12bを形成し、セラミックシート積層体10において、切り欠き12bが形成されたセラミックシート12の厚さ方向の両側には、切り欠き12bや貫通孔12aが形成されていないセラミックシート11が少なくとも1枚ずつ配置されていてもよい。これによっても、セラミックシート積層体10は、その側面において外部に連通した中空空間Sを有する中空構造を形成する。
【0022】
さらに、
図3Bに示すように、セラミックシート11,12のうち少なくとも1枚のセラミックシート12に厚さ方向に貫通しない凹部12cを形成し、セラミックシート積層体10において、凹部12cが形成された側のセラミックシート12の面に面接触するように、セラミックシート11が少なくとも1枚配置されていてもよい。
【0023】
また、図示しないが、前記面接触するセラミックシート11において、凹部12cと対向する位置に、又は凹部12cの位置とは関係しない位置に凹部が形成されていてもよい。さらに、凹部12cは、セラミックシート12の側面において外部に開放されるものであっても、外部に開放されずに閉じたものであってもよい。
【0024】
以上に例示したものの他、セラミックシート積層体10は、任意の中空構造を有するものであればよく、例えば、内部において閉じた又は、何れかの面において外部と連通する、1又は複数の中空空間Sを有するものであってもよい。また、貫通孔12a,切り欠き12b及び凹部12cの内部に樹脂などから中子を入れてもよい。これにより、中空構造体作製工程STEP2において、中空空間Sの維持をさらに良好に図ることが可能となる。
【0025】
さらに、中空空間は、セラミックシート積層体10の厚さ方向の面において外部と連通していてもよい。ただし、中空構造体作製工程STEP2においてセラミックス粉末21が載せられる側の面に中空空間Sが開口している場合、この中空空間内に樹脂製などの中子を挿入してセラミックス粉末21が流入することを防止することが好ましい。
【0026】
セラミックシート11,12は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化イットリウム(Y2O3)、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)などのセラミックス粉末に焼結助剤、有機バインダなどのバインダや可塑剤を添加したものを溶剤を用いて混合して、ドクターブレード法などの公知の方法を用いて薄板状に形成したものであり、セラミックグリーンシートなどとも呼称される。
【0027】
セラミックシート11,12の厚さは0.1mm以上2.0mm以下、好ましくは0.3mm以上0.7mm以下である。複数枚のセラミックシート11,12において、厚さなどは相違していてもよい。また、セラミックシート積層体10を構成するセラミックシート11,12の枚数又は合計厚さは特に限定されない、ただし、中空構造体作製工程STEP2において、セラミックシート積層体10を加熱する際に、セラミックシート11,12の間に剥がれなどが生じないと共に、その全体が同様に加熱されて一体化する程度に、セラミックシート積層体10の厚さは、20mm以下が好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
【0028】
さらに、セラミックス積層体10に、中空構造部材30において内部電極などとして機能するものを形成するために金属又は金属を含む材料を埋設してもよい。例えば、セラミックシート11,12の上に導電体ペーストを印刷などによって塗布し、その上にセラミックシート11,12を積み重ねてもよい。また、セラミックシート11,12に貫通孔又は凹部を形成して、これらの中にメッシュ金属や箔状金属などを配置、又は導電体ペーストを印刷などによって充填してもよい。
【0029】
中空構造体作製工程STEP2は、
図2Bを参照して、セラミックシート積層体10を加熱して一体化し、中空構造を有する中空構造体20を作製する工程である。
【0030】
具体的には、セラミックシート積層体10を900℃以上でセラミックシート11,12に含まれるセラミックスの粒子がネッキングを開始し、かつ粒子の体積拡散による焼結が進む焼結温度未満の温度で加熱を行うことにより、セラミックス仮焼体からなり中空構造を有する中空構造体20を作製する。あるいは、セラミックシート積層体10を900℃以上でセラミックシート11,12に含まれるセラミックスの粒子の体積拡散による焼結が進む焼結温度以上の温度で加熱を行うことにより、セラミックス焼結体からなり中空構造を有する中空構造体20を作製する。
【0031】
中空構造体作製工程STEP2においては、常圧、セラミックシート積層体10の積層方向に多少、例えば錘を載せた程度に加圧した状態で加熱することが好ましい。これにより、セラミックシート積層体10における中空構造が、その形状が崩れることなく保持された状態で中空構造体20にて維持される。
【0032】
中空構造部材作製工程STEP3は、
図2B及び
図2Cを参照して、中空構造体20の厚み方向の少なくとも一方の面にセラミックス粉末21を載せたうえで厚み方向に加圧しながら加熱することにより、中空構造体20とセラミックス粉末21に由来する部分とが一体化したセラミックス焼結体からなる中空構造部材30を作製する工程である。
【0033】
セラミックス粉末21は、セラミックシート11,12の原料としたセラミックス粉末に焼結助剤、有機バインダなどのバインダや可塑剤などの添加剤を適宜添加して混合して、成形原料を作製し、この成形材料を用いて加圧成形して粉末としたものである。混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。
【0034】
なお、セラミックス粉末21に、中空構造部材30において内部電極などとして機能するものを形成するために金属又は金属を含む材料を埋設してもよい。例えば、セラミックス粉末21内にメッシュ金属や箔状金属などを埋設してもよい。
【0035】
中空構造部材作製工程STEP3は、ホットプレス法を用いて加熱及び加圧を行えばよい。この場合、中空構造体20を型内に載置し、その上方の型内にセラミックス粉末を充填した後、一軸加圧を行いながら、セラミックシート11,12及びセラミックス粉末21に含まれるセラミックスの粒子の体積拡散による焼結が進む焼結温度以上の温度で加熱を行う。また、型内の下部にセラミックス粉末21を所定の厚さだけ敷きしめ、その上に中空構造体20を載置し、さらにその上方の型内にセラミックス粉末を充填した後、一軸加圧を行いながら、セラミックシート11,12及びセラミックス粉末21に含まれるセラミックスの粒子の体積拡散による焼結が進む焼結温度以上の温度で加熱を行う。
【0036】
これらにより、中空構造体20とセラミックス粉末21に由来する部分とが一体焼結化したセラミックス焼結体からなる中空構造部材30が作製される。この中空構造部材30は、中空構造体20における中空空間Sを維持しながら、セラミックス粉末21に由来する部分の分だけ中空構造体20よりも厚さが増したものとなる。
【0037】
以下、本発明の第2の実施形態に係る中空構造部材30の作製方法は、前述した第1の実施形態に係る中空構造部材30の作製方法とは、中空構造部材作製工程STEP3が異なる。
【0038】
本発明の第2の実施形態において、中空構造部材作製工程STEP3は、
図4B及び
図4Cを参照して、中空構造体20の厚み方向の少なくとも一方の面に上述したセラミックス粉末21を成形してなるセラミックス成形体22又は当該セラミックス成形体22を加熱したセラミックス加熱体23を重ね合せたうえで厚み方向に加圧しながら加熱することにより、中空構造体20とセラミックス成形体22又はセラミックス加熱体23に由来する部分とが一体化したセラミックス焼結体からなる中空構造部材30を作製する工程である。
【0039】
セラミックス成形体22は、セラミックシート粉末21を型などを用いて所定の形状に形成したものである。なお、セラミックス粉末21に、中空構造部材30において内部電極などとして機能するものを形成するために金属又は金属を含む材料を埋設しておき、セラミックス成形体22にこれらを内蔵させてもよい。
【0040】
セラミックス加熱体23はセラミックス成形体22を加熱して作製したものである。具体的には、セラミックス成形体22を大気または窒素ガス雰囲気下で500℃以上900℃未満の温度で加熱して脱脂処理を行うことにより、脱脂体からなるセラミックス加熱体23を作製する。あるいは、セラミックス成形体22を900℃以上でセラミックス粉末21に含まれるセラミックスの粒子がネッキングを開始し、かつ粒子の体積拡散による焼結が進む焼結温度未満の温度で加熱を行うことにより、セラミックス仮焼体からなるセラミックス加熱体23を作製する。
【0041】
中空構造部材作製工程STEP3は、ホットプレス法を用いて加熱及び加圧を行えばよい。この場合、中空構造体20を型内に載置し、その上方の型内にセラミックス成形体22又はセラミックス加熱体23を載置した後、一軸加圧を行いながら、セラミックス粉末31に含まれるセラミックスの粒子の体積拡散による焼結が進む焼結温度以上の温度で加熱を行う。また、型内の下部にセラミックス成形体22又はセラミックス加熱体23を載置し、その上に中空構造体20を載置し、さらにその上方の型内に別のセラミックス成形体22又はセラミックス加熱体23を載置した後、一軸加圧を行いながら、セラミックスの粒子の体積拡散による焼結が進む焼結温度以上の温度で加熱を行う。
【0042】
これらにより、中空構造体20とセラミックス成形体22又はセラミックス加熱体23に由来する部分とが一体焼結化したセラミックス焼結体からなる中空構造部材30が作製される。この中空構造部材30は、中空構造体20における中空空間Sを維持しながら、セラミックス成形体22又はセラミックス加熱体23に由来する部分の分だけ中空構造体20よりも厚さが増したものとなる。
【実施例】
【0043】
以下、
図5~
図7を参照して、実施例1~4として、直径80mm、厚み15mm、中空空間Sの断面が1辺5mmの正方形である中空構造部材40,50を作製し、実施例5として、直径330mm、厚み15mm、中空空間Sの断面が1辺5mmの正方形である中空構造部材60を作製した。
【0044】
(実施例1)
セラミックシート積層体形成工程STEP1として、
図2Aを参照して、窒化アルミニウム(AlN)を主原料とする厚さ0.65mmの複数のセラミックシート11,12を積層してセラミックシート積層体10を作製した。ここで用いる、複数のグリーンシート11,12としては、電極42(
図5参照)となるタングステンペーストを表面に印刷したセラミックシート11と、打ち抜き加工により直径5mmの貫通孔12aを形成したセラミックシート12と何も加工されていないセラミックシート11とが含まれている。これら複数のグリーンシート11,12を所望の順番で積層することでセラミックシート積層体10を作製した。
【0045】
次に、中空構造体作製工程STEP2として、セラミックシート積層体10を、粒子の体積拡散による焼結が進む温度として1800℃で還元雰囲気で常圧焼成し、焼成後に加工を行うことにより、直径80mm、厚み10mmのセラミックス焼結体からなる中空構造体20を作製した。
【0046】
次に、中空構造部材作製工程STEP3として、中空構造体20をカーボン型に設置した後、カーボン型内に窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス粉末21を充填し、2MPaの圧力を加えながら1850℃に加熱する一軸ホットプレス焼成を行った。これにより、
図5に示すように、中空構造体20に由来する部分41と中空構造体20の厚み方向の一方の面側のセラミックス粉末21に由来する部分43とが一体化した中空構造部材40が作製された。この中空構造部材40の中空構造体20に由来する部分41には電極42が内蔵されている。
【0047】
(実施例2)
図4Bを参照して、カーボン型内に窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス粉末21を充填する代わりに脱脂体からなるセラミックス加熱体23を中空構造体20に重ねて配置したことを除いて、実施例1と同様の方法により中空構造部材40を作製した。
【0048】
(実施例3)
電極42となるタングステンペーストを表面に印刷したセラミックシート11を用いず、中空構造体20とセラミックス加熱体23との間にモリブデン(Mo)からなり線径0.1mm、メッシュサイズ50の平織メッシュからなる電極を載置したことを除いて、実施例2と同様の方法により中空構造部材を作製した。そして、この中空構造部材は、図示しないが、中空構造体20に由来する部分とセラミックス加熱体23に由来する部分との間に電極が介在された構造となっている。
【0049】
(実施例4)
実施例1と同様の方法により中空構造部材20を作製した後、この中空構造体20を表裏反転させた状態でカーボン型に設置した。次に、カーボン型内の中空構造体20の他方の面側に窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス粉末21を充填し、2MPaの圧力を加えながら1850℃に加熱する一軸ホットプレス焼成を行った。
【0050】
その結果、
図6に示すように、中空構造体20に由来する部分51と中空構造体20の厚み方向の両面側のセラミックス粉末21に由来する部分53,54とが一体化した中空構造部材50を作製した。実施例4によれば、より厚みの厚い中空構造部材50を容易に作製できることが確かめられた。
【0051】
(実施例5)
実施例5の中空構造部材60は、
図7に示すように、セラミックス粉末21に由来する部分62の内部に電極63が埋設され、その直径が330mmであることを除いて実施例1の中空構造部材40と同様である。
【0052】
実施例5は、実施例1と同様の方法で電極64が内蔵された中空構造体20を作製し、これをカーボン型に設置した後、カーボン型内に窒化アルミニウムを主成分とするセラッミクス粉末21(
図2B参照)を充填し、その上にモリブデンからなり線径0.1mm、メッシュサイズ50の平織メッシュからなる電極63を載置し、さらにその電極63の上に窒化アルミニウムを主成分とするセラッミクス粉末21を充填したのち2MPaの圧力を加えながら1850℃に加熱する一軸ホットプレス焼成を行った。
【0053】
その結果、
図7に示すように、中空構造体20に由来する部分61と中空構造体20の厚み方向の一方の面側のセラミックス粉末21に由来する部分62とにそれぞれ電極63,64が埋設された中空構造部材60が作製された。実施例5の中空構造部材60によれば、埋設された一の電極をヒータ電極、他の電極を静電吸着用電極や高周波発生用電極として機能させることができる。
【符号の説明】
【0054】
10…セラミックシート積層体、 11,12…セラミックシート、 12a…貫通孔、 12b…切り欠き、 12c…凹部、 20…中空構造体、 21…セラミックス粉末、 22…セラミックス成形体、 23…セラミック加熱体、 30,40,50,60…中空構造部材、 41,51,61…中空構造体に由来する部分、 42,52,63,64…電極、 43,53,54,62…セラミックス粉末に由来する部分、S…中空空間。