(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ポリアミド系樹脂発泡粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 9/16 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
C08J9/16 CFG
(21)【出願番号】P 2020025271
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-04-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 達也
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】柴田 昌弘
【審判官】天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-268737(JP,A)
【文献】国際公開第2011/132680(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/147582(WO,A1)
【文献】特許第6653049(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42, B29C 44/00-44/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折法により測定される結晶子サイズが8nmを超える、ポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
JIS K7122-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定されるDSC曲線の全融解熱量が40~140J/gである、請求項1に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10~300kg/m
3である、請求項1又は2に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
下記の条件1にて得られる第2回加熱のDSC曲線の融解ピークの頂点温度が185~285℃である、請求項1~3のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
条件1
JIS K7121-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、その温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定されるDSC曲線を第2回加熱のDSC曲線とする。
【請求項5】
X線回折法により測定されるポリアミド系樹脂発泡粒子の結晶子サイズが9nm以上である、請求項1~4のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
X線回折法により測定されるポリアミド系樹脂発泡粒子の結晶子サイズが10nm以上である、請求項1~5のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
ポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率が90%を超える、請求項1~6のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項8】
ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径が20~200μmである、請求項1~7のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項9】
ポリアミド系樹脂発泡粒子の表層膜厚が5~50μmである、請求項1~8のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【請求項10】
前記ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造に用いられるポリアミド系樹脂粒子が、ポリアミド系樹脂を含み、該ポリアミド系樹脂が、ポリアミド共重合体である、請求項1~9のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系樹脂発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系樹脂は、耐熱性が高く、また耐摩耗性、耐薬品性等にも優れた樹脂として知られている。このポリアミド系樹脂を発泡させた発泡成形体は、これらの優れた特性を保ちつつ、軽量化を図ることができることから、自動車部品その他の用途への展開が期待される。そのため、各種用途への実用化に向けてポリアミド系樹脂の発泡成形体に関する様々な検討がなされている。例えば、特許文献1には、耐熱性及び遮音性の改善を目的として、ポリアミド系樹脂予備発泡粒子を金型のキャビティ内に充填し、水蒸気を用いて多段階で昇温するプロセスを施すことによって得られる、結晶子サイズが10nm以上であり、結晶化度が10~50%であることを特徴とするポリアミド系樹脂発泡粒子成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、耐熱性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子成形体を提供することが開示されているが、特許文献1の発泡粒子は、型内成形可能な範囲が狭く、厚みが厚い場合など成形体の形状によっては型内成形性が不十分であった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、型内成形性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ポリアミド系樹脂発泡粒子の結晶子サイズを特定の値にすることで前記課題を解決できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の[1]~[8]を提供する。
[1]X線回折法により測定される結晶子サイズが8nmを超える、ポリアミド系樹脂発泡粒子。
[2]JIS K7122-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定されるDSC曲線の全融解熱量が40~140J/gである、上記[1]に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
[3]ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度が10~300kg/m3である、上記[1]又は[2]に記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
[4]下記の条件1にて得られる第2回加熱のDSC曲線の融解ピークの頂点温度が185~285℃である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
条件1
JIS K7121-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、その温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定されるDSC曲線を第2回加熱のDSC曲線とする。
[5]X線回折法により測定されるポリアミド系樹脂発泡粒子の結晶子サイズが10nm以上である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
[6]ポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率が90%を超える、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
[7]ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径が20~200μmである、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
[8]ポリアミド系樹脂発泡粒子の表層膜厚が5~50μmである、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリアミド系樹脂発泡粒子。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、型内成形性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、X線回折法により測定される結晶子サイズが8nmを超えるポリアミド系樹脂発泡粒子である。
【0009】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子]
<ポリアミド系樹脂発泡粒子の結晶子サイズ>
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、X線回折法により測定される結晶子サイズが8nmを超える。結晶子サイズが8nmを超えることによって、型内成形可能な圧力範囲が広く、型内成形性に優れるものとなる。X線回折法により測定した結晶子サイズは、8nmを超えるものであり、9nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、11nm以上が更に好ましく、12nm以上がより更に好ましい。また、上限には制限はないが、30nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。ポリアミド系樹脂発泡粒子の結晶子サイズが、前記の範囲であることによって、型内成形性に優れるものとなる理由は定かではないが、結晶子サイズが大きいことにより、発泡粒子の耐熱性が向上し、型内成形時の高温下においても、目的とする成形体の厚みが厚い場合など、様々な条件で安定して成形できるためと考えられる。結晶子サイズは、X線回折法により測定されるものであるが、具体的には、以下に示す方法によって測定される。ポリアミド系樹脂発泡粒子のX線回折(XRD)測定は、X線散乱装置による透過法により行う。X線回折測定により得られたX線回折プロフィールは、ピーク形状としてガウス関数を仮定し、結晶由来の回折ピークと非晶由来の回折ピークとにピーク分離する。ピーク分離により得られたピークのうち、最も狭いピーク幅を有するピークの半値全幅β(rad)を計算し、該半値全幅βを用いて下記式(2)に従って、発泡粒子の結晶子サイズDを算出する。
【数1】
βは、結晶由来の回折ピークの半値全幅であり、bはX線の広がりの半値全幅であり、λは、X線の波長(nm)であり、θはピーク位置におけるブラッグ角(回折角2θの半分)である。
また、結晶子サイズが8nmを超えるポリアミド系樹脂発泡粒子の結晶子はα晶からなることが好ましい。ポリアミド系樹脂発泡粒子の結晶はα晶とγ晶からなるが、γ晶と比べてα晶は安定であり、機械物性や耐熱性が高くなる傾向にあることから、結晶子は主としてα晶を含むことが好ましく、α晶の結晶子サイズが8nmを超えることがより好ましい。結晶がα晶かγ晶かはX線回折プロフィールのピーク位置における回折角(2θ)から判別することができる。X線回折プロフィールのピーク位置における回折角(2θ)は、5~35度の範囲での広角X線回折測定において、α晶が、20度付近および24度付近に現れ、γ晶が21度付近に現れる。
【0010】
<ポリアミド系樹脂発泡粒子の融解特性>
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、以下に示すような融解特性を有することが好ましい。本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、JIS K7122-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定されるDSC曲線の全融解熱量が、40~140J/gであることが好ましく、45J/g以上であることがより好ましく、50J/g以上であることが更に好ましい。また、120J/g以下であることがより好ましく、100J/g以下であることが更に好ましい。ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片として最初の加熱で得られるDSC曲線であることから、前記DSC曲線を第1回加熱のDSC曲線とする。第1回加熱のDSC曲線の全融解熱量が大きい発泡粒子ほど結晶化が進んでいることを意味する。結晶化が進んでいる発泡粒子は、より耐熱性に優れたものとなる。第1回加熱のDSC曲線の全融解熱量が上記範囲であれば、より耐熱性に優れる発泡粒子となることから好ましい。
【0011】
全融解熱量は、以下のように求める。得られたDSC曲線において、DSC曲線上の150℃の点と、DSC曲線上の融解ピーク終了時の温度を示す点とを結ぶ直線を引く。この直線をベースラインとして、ベースラインと、ベースラインより吸熱側に存在するDSC曲線によって囲まれる部分の面積が、融解ピークの吸熱エネルギーに相当し、これから算出される熱量を全融解熱量とする。DSC曲線が複数の融解ピークを有する場合、全ての熱量を合計したものを全融解熱量とする。なお、DSC曲線上の融解ピーク終了時の温度を示す点とは、最も高温側の融解ピークの融解ピーク終了時の温度をいう。本明細書において、DSC曲線の測定には、温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上静置させた試験片を用いる。
【0012】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、下記の条件1にて得られる第2回加熱のDSC曲線の融解ピークの頂点温度が185~285℃であることが好ましい。ここで得られる第2回加熱のDSC曲線の融解ピークの頂点温度(以下、ポリアミド系樹脂発泡粒子の融点ともいう。また、Tm1で示す。)は、ポリアミド系樹脂が本来有する固有の結晶構造に由来するポリアミド系樹脂の融点に相当する。
条件1
JIS K7121-1987の熱流束示差走査熱量測定法に基づき、ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片とし、加熱速度10℃/分にて30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、その温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分にて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱する際に測定されるDSC曲線を第2回加熱のDSC曲線とする。
【0013】
前記第2回加熱のDSC曲線の融解ピークの頂点温度は、好ましくは185~285℃であり、より好ましくは188℃以上であり、更に好ましくは190℃以上である。一方、発泡時の温度コントロールが容易であるという観点から、上記2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度は、より好ましくは280℃以下であり、更に好ましくは260℃以下であり、より更に好ましくは230℃以下であり、より更に好ましくは225℃以下である。ポリアミド系樹脂発泡粒子の融点が上記範囲を満足すると、見掛け密度が低いポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすいとともに、耐熱性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすくなることから好ましい。
【0014】
<ポリアミド系樹脂発泡粒子のその他の特性>
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、前記融解特性以外にも、以下に示すような特性を有することが好ましい。
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、10~300kg/m3であることが好ましい。本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、好ましくは10kg/m3以上であり、より好ましくは30kg/m3以上であり、更に好ましくは50kg/m3以上であり、より更に好ましくは100kg/m3以上である。そして、ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、好ましくは300kg/m3以下であり、より好ましくは250kg/m3以下であり、更に好ましくは200kg/m3以下であり、より更に好ましくは150kg/m3以下である。発泡粒子の見掛け密度が上記範囲であれば、発泡粒子や発泡粒子からなる成形体が収縮しにくく、良好な発泡粒子成形体が得られ易くなる。なお、ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度は、以下の方法で測定される。
温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間以上放置した嵩体積が約500cm3の発泡粒子の質量W1を測定し、金網を使用して沈める。金網の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の容積V1[cm3]を測定し、発泡粒子の質量W1[g]を容積V1で割り算し(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度を求められる。
【0015】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%を超えるものである。発泡粒子の独立気泡率が上記範囲を満足すると、見掛け密度が低い発泡粒子が得られやすい。また、発泡粒子の成形性が良好であり、発泡粒子を型内成形して作製した発泡粒子成形体は、表面性、融着性に優れる。このように、結晶子サイズが大きく、独立気泡率が前記範囲の発泡粒子を用いることで、型内成形性に優れ、更に軽量である成形体を得ることができる。なお、独立気泡率は、発泡粒子中の全気泡の容積に対する独立気泡の容積の割合であり、ASTM-D2856-70に基づき空気比較式比重計を用いて求めることができる。
【0016】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、140μm以下であることがさらに好ましい。なお、ポリアミド系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、以下の方法で測定される。
まず、発泡粒子の中心部を通るように発泡粒子を約二分割し、切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影する。次いで、得られた断面写真において、発泡粒子切断面の中心付近から発泡粒子最表面まで45°ずつ角度を変更し、8方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントする。該直線の合計長さを、カウントされた気泡数で除して得られた値を発泡粒子の気泡径とする。この操作を10個以上の発泡粒子について同様に行い、各発泡粒子の気泡径の算術平均値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0017】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子の表層膜厚は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の表層膜厚は、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。ポリアミド系樹脂発泡粒子の表層膜厚が前記範囲であると、発泡粒子を加圧処理する際に気泡内に内圧を付与し、型内成形における表面性に優れる発泡粒子とすることができる。また、発泡粒子を型内成形する際に破泡しにくく、高倍率の発泡粒子成形体が得られやすい。更に型内成形時に発泡粒子間の融着性に優れ、成形スチーム圧を過度に高くせずに成形することが可能となる。本発明においては、特に発泡粒子の結晶子サイズが大きいため、発泡粒子の耐熱性に優れ、型内成形性に優れる発泡粒子を提供することができ、軽量かつ耐熱性に優れる成形体を得ることができる。
【0018】
ポリアミド系樹脂発泡粒子の表層膜厚は、以下のようにして測定することができる。上記発泡粒子の平均気泡径で得られた発泡粒子切断面の中心付近から発泡粒子最表面までの8方向の直線について、発泡粒子の最表面から発泡粒子の最外に位置する気泡までの長さ(表面膜厚み)を測定し、それらの値を算術平均することにより、発泡粒子の平均表面膜厚みを求める。
【0019】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、23℃における5%圧縮応力(23℃圧縮応力)に対するポリアミド系樹脂発泡粒子の融点(Tm1)よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)における5%圧縮応力(Tm1-20℃圧縮応力)の比[(Tm1-20℃圧縮応力)/(23℃圧縮応力)]が、0.1以上であることが好ましい。
上記比[(Tm1-20℃圧縮応力)/(23℃圧縮応力)]は、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは、0.2以上である。また、上限は概ね1程度である。上記比[(Tm1-20℃圧縮応力)/(23℃圧縮応力)]が高い発泡粒子は、常温時の圧縮応力に対して高温時の圧縮応力の低下が小さく、高温時においても高い圧縮応力を維持しており、耐熱性に優れることを意味する。上記比[(Tm1-20℃圧縮応力)/(23℃圧縮応力)]の値が大きいポリアミド系樹脂発泡粒子は、複合成形用の充填材料などの用途に好適に用いることができる。なお、ポリアミド系樹脂発泡粒子の融点よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)とする理由は、発泡粒子の結晶が融解しない温度での圧縮物性を評価するためである。
【0020】
ポリアミド系樹脂発泡粒子の融点よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)における5%圧縮応力は、発泡粒子を熱分析装置(TMA;例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製「TMA7100」)を用いて圧縮モードで測定することで求めることができる。具体的には、発泡粒子1個を無作為に選び、発泡粒子の短径方向を圧縮プローブで10mNの荷重をかけて挟んだ後、ポリアミド系樹脂発泡粒子の融点よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)まで昇温する。その後、ポリアミド系樹脂発泡粒子の融点よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)で等温保持を行いながら1mm/minのスピードで押し込み、プローブの荷重をモニタする。発泡粒子の厚さが、圧縮前の発泡粒子の厚さの5%となった時点での応力を発泡粒子のTm1-20℃における5%圧縮応力とする。
23℃における5%圧縮応力は、同様に発泡粒子を熱分析装置(TMA;例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製「TMA7100」)を用いて圧縮モードで測定することで求めることができる。具体的には、発泡粒子1個を無作為に選び、発泡粒子の短径方向を圧縮プローブで10mNの荷重をかけて挟んだ後、23℃で1mm/minのスピードで押し込み、プローブの荷重をモニタする。発泡粒子の厚さが、圧縮前の発泡粒子の厚さの5%となった時点での応力を23℃における5%圧縮応力とする。
【0021】
<ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法>
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、X線回折法により測定される結晶子サイズが8nmを超えるものであれば、その製造方法には制限はないが、以下の方法によって製造することが好ましい。
【0022】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、通常の環境下における吸水量よりも多くの水分を含有する状態で、これを加熱し、結晶子サイズを大きくする工程を有する方法により製造された発泡粒子であることが好ましい。具体的には、水分を含有する状態で樹脂粒子を加熱することにより結晶子が成長した樹脂粒子とし、その樹脂粒子に発泡剤を含浸し、発泡させて結晶子が成長した発泡粒子とする方法、水分を含有する樹脂粒子に発泡剤を含浸し、これを加熱して発泡させて結晶子が成長した発泡粒子とする方法、発泡粒子に水を含有させ、加熱することにより結晶子が成長した発泡粒子とする方法などが挙げられる。
上記の中でも結晶子サイズを大きくし易いという観点から、本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、水分を含有するポリアミド系樹脂粒子に発泡剤を含有し、加熱することにより発泡させて得ることが好ましい。
ポリアミド系樹脂粒子またはポリアミド系樹脂発泡粒子に水分を含有させる方法としては、樹脂粒子または発泡粒子を水に浸漬する方法、樹脂粒子または発泡粒子を相対湿度90%以上などの高湿度の雰囲気下で静置する方法、樹脂粒子または発泡粒子にスプレー等で水を吹き付ける方法などが挙げられる。上記の中でも容易に水分を含有させられることから、水に浸漬することにより水分を含有させる方法が好ましい。
なお、ポリアミド系樹脂粒子またはポリアミド系樹脂発泡粒子を水中で加熱する場合には、水で満たされているため、上記水分率を満足するものとみなすことができる。樹脂粒子または発泡粒子中の水分率は、カールフィッシャー水分測定装置により求めることができ、具体的には以下の方法によって求めることができる。
ポリアミド系樹脂粒子またはポリアミド系樹脂発泡粒子の表面の水を乾いた布でふき取った後、ポリアミド系樹脂粒子またはポリアミド系樹脂発泡粒子を秤量し、次いで加熱水分気化装置を用いてポリアミド系樹脂粒子またはポリアミド系樹脂発泡粒子を加熱することにより、内部の水分を気化させ、カールフィッシャー水分測定装置を用いて、カールフィッシャー滴定(電量滴定法)により水分率を測定する。
水分を含有したポリアミド系樹脂粒子またはポリアミド系樹脂粒子の水分率は、好ましくは3%以上であり、より好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは7%以上である。
【0023】
ポリアミド系樹脂粒子またはポリアミド系樹脂発泡粒子を加熱する方法としては、水などの媒体中に樹脂粒子または発泡粒子を浸漬させ、媒体を加熱することにより樹脂粒子または発泡粒子を加熱する方法、熱風を送り込むことにより樹脂粒子または発泡粒子を加熱する方法などが挙げられる。上記の中でも均一に加熱させられることから水などの媒体中で加熱する方法が好ましい。
ポリアミド系樹脂粒子またはポリアミド系樹脂発泡粒子を加熱するときの加熱温度は、ポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm-90℃)以上であることが好ましく、Tm-80℃以上であることがより好ましく、Tm-70℃以上であることがさらに好ましい。一方、加熱温度は、ポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも20℃高い温度(Tm+20℃)以下であることが好ましく、Tm+10℃以下であることがより好ましく、ポリアミド系樹脂の融点以下であることがさらに好ましい。
【0024】
(ポリアミド系樹脂粒子)
ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造に用いられるポリアミド系樹脂粒子は、ポリアミド系樹脂を含む。該ポリアミド系樹脂は、1種単独でもよく、該ポリアミド系樹脂を2種以上含むポリアミド系樹脂の混合物であってもよい。
上記ポリアミド系樹脂粒子には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、他の熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーを含有させてもよい。他の熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、エチレン-プロピレン系ゴム、エチレン-1-ブテンゴム、プロピレン-1-ブテンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン系ゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴムなどのゴム、スチレン-ジエンブロック共重合体やスチレン-ジエンブロック共重合体の水添物等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂粒子中の他の熱可塑性樹脂の含有量は、耐熱性、耐摩耗性、及び耐薬品性に優れたポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、ポリアミド系樹脂100質量部に対して好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下であり、より更に好ましくは5質量部以下であり、より更に好ましくは、ポリアミド系樹脂粒子がポリアミド系樹脂のみからなるものである。
【0025】
ポリアミド系樹脂粒子には、ポリアミド系樹脂の他に、通常使用される気泡調整剤、帯電防止剤、導電性付与剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属不活性化剤、着色剤(顔料、染料等)、結晶核剤、及び充填材等の各種の添加剤を、必要に応じて適宜配合することができる。気泡調整剤としては、タルク、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、ミョウバン、及びカーボン等の無機系気泡調整剤、リン酸系化合物、アミン系化合物、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の有機系気泡調整剤が挙げられる。これらの各種添加剤の添加量は、成形体の使用目的により異なるが、ポリアミド系樹脂粒子を構成するポリマー成分100質量部に対して25質量部以下であることが好ましい。より好ましくは15質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下であり、より更に好ましくは5質量部以下である。
【0026】
ポリアミド系樹脂粒子の1個当たりの平均質量は、目的とするポリアミド系樹脂発泡粒子の大きさ、見掛け密度等に応じて適宜設定されるが、好ましくは0.5~15.0mgである。上記範囲内であれば、見掛け密度を高めることができる。かかる観点から、ポリアミド系樹脂粒子の質量の下限はより好ましくは1.0mgであり、更に好ましくは1.5mgである。一方、その上限はより好ましくは10.0mgであり、更に好ましくは7.0mgであり、より更に好ましくは5.0mgである。
【0027】
ポリアミド系樹脂粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法により得ることができる。例えば、ポリアミド系樹脂と、必要に応じて気泡調整剤、及び着色剤等の添加剤を押出機に投入し、混練して溶融混練物とし、押出機先端に付設されたダイの小孔からストランド状に溶融混練物を押し出し、押出されたストランドをペレタイザーで所定の質量となるように切断するストランドカット法、前記溶融混練物を気相中に押出した直後に切断するホットカット法、前記溶融混練物を水中に押出した直後に切断するアンダーウォーターカット法(UWC法)等により、ポリアミド系樹脂粒子を得ることができる。
【0028】
〔ポリアミド系樹脂〕
本明細書中におけるポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアミド共重合体が挙げられ、ポリアミド共重合体が好ましい。
ポリアミドとしては、例えば、ポリ(カプロラクタム)としても知られるポリ(6-アミノヘキサン酸)(ポリカプロアミド、ナイロン6)、ポリ(ラウロラクタム)(ナイロン12)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリ(7-アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8-アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9-アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10-アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11-アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン610)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン1010)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン69)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(ナイロン46)、ポリ(テトラメチレンセバカミド)(ナイロン410)、ポリ(ペンタメチレンアジパミド)(ナイロン56)、及びポリ(ペンタメチレンセバカミド)(ナイロン510)等のホモポリマーが挙げられる。ポリアミド共重合体とは、2種以上の繰り返し単位を有し、それぞれの繰り返し単位の少なくとも一部にアミド結合を有するものを意味する。ポリアミド共重合体としては、例えば、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸(ナイロン6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン6/66/12)、及びカプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)等が挙げられる。ポリアミド系樹脂は、これらのポリアミド及びポリアミド共重合体を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。吸水性が高く結晶子サイズが大きなポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすいという観点から、以上のポリアミド系樹脂の中でも、ナイロン6、ナイロン66、及びナイロン6/66から選択される1種または2種以上を組み合わせたポリアミド系樹脂であることが好ましく、ナイロン6/66であることがより好ましい。
【0029】
ポリアミド共重合体は、ある一定量同じ繰り返し単位のアミドが続いた後に異なる種類のアミドがある一定量続くブロック共重合体であっても、異なる種類のアミドがそれぞれランダムに繰り返すランダム共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。ポリアミド共重合体がランダム共重合体であれば、ポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形する際に比較的低い成形スチーム圧で成形することが可能となる。
【0030】
ポリアミド系樹脂の融点(Tm)は、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは185℃以上であり、更に好ましくは188℃以上であり、より更に好ましくは190℃以上である。一方、ポリアミド系樹脂の融点(Tm)は、好ましくは280℃以下であり、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは230℃以下、より更に好ましくは225℃以下である。上記融点範囲を満足するポリアミド系樹脂であれば、見掛け密度が低いポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすいとともに、耐熱性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすくなることから好ましい。なお、ポリアミド系樹脂の融点とは、ポリアミド系樹脂を1種単独で用いた場合は、そのポリアミド系樹脂の融点を指す。ポリアミド系樹脂が、2種以上のポリアミド系樹脂の混合物からなる場合、又はポリアミド系樹脂と他の熱可塑性樹脂の混合物からなる場合には、予め押出機等で混練した混練物の融点を指す。
【0031】
ポリアミド系樹脂の融点(Tm)は、原料のポリアミド系樹脂を試験片とし、温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置した後、試験片をポリアミド系樹脂に変更した以外は、上記条件1と同様の条件により得られる2回目のDSC曲線の融解ピークのピーク頂点温度として求められる値である。なお、DSC曲線が複数の融解ピークを有する場合、最も大きな面積を有する融解ピークのピーク頂点温度を融解温度として採用する。
【0032】
本明細書中におけるポリアミド系樹脂は、曲げ弾性率が好ましくは1000MPa以上であり、より好ましくは1200MPa以上であり、更に好ましくは1500MPa以上である。ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率が上記範囲であれば、曲げ弾性率が高いことに由来して発泡後に常温に晒されても収縮しにくく、高倍率の発泡粒子が得られ易くなるため好ましい。また、曲げ弾性率が高いことにより型内成形性に優れるため好ましい。なお、ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率の上限は概ね3000MPa程度である。
【0033】
ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率は、試験片を温度23℃、相対湿度50%の状態で24時間静置した後、JIS K7171:2016に準拠して測定することにより求めることができる。
【0034】
本明細書中におけるポリアミド系樹脂は、密度が好ましくは1.05g/cm3以上であり、より好ましくは1.1g/cm3以上である。密度の測定は、ISO 1183-3に記載の方法に基づいて求めることができる。
【0035】
本発明で用いられるポリアミド系樹脂は、分子鎖末端の官能基が封鎖されている末端封鎖ポリアミド系樹脂であることが好ましい。これにより、ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造過程での加水分解をより確実に抑制することができ、型内成形に耐えうるポリアミド系樹脂発泡粒子が得られやすくなる。
更には、型内成形により得られるポリアミド系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に「発泡粒子成形体」や、「成形体」ともいう。)の耐久性が向上する。
上記分子鎖末端を封鎖するための末端封鎖剤としては、例えばカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等を用いることができる。
これらの中でも、カルボジイミド化合物が好ましい。具体的には、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド(例えば、ラインケミー社製「Stabaxol 1-LF」)等の芳香族モノカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製「Stabaxol P」、「Stabaxol P100」、「Stabaxol P400」等)、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド(例えば日清紡ケミカル(株)製「カルボジライトLA-1」)等が挙げられる。これらの末端封鎖剤は単独で使用してもよく、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、末端封鎖剤の配合量は、ポリアミド系樹脂100質量部に対して好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.3~3質量部である。
このように、本発明で用いられるポリアミド系樹脂は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びイソシアナート化合物等から選ばれる1種以上の末端封鎖剤にて末端封鎖されたポリアミド系樹脂であることが好ましく、カルボジイミド化合物にて末端封鎖されたポリアミド系樹脂であることがより好ましい。
【0036】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、前記のように水分を含有するポリアミド系樹脂粒子を加熱して発泡させて得る方法によることが好ましいが、以下の方法1及び方法2の方法によって製造することが好ましい。
【0037】
方法1は、密閉容器内でポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、分散液を得る工程と、
該分散液中の該ポリアミド系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程と、
該分散液を、該ポリアミド系樹脂の融点よりも低い温度で保持する工程と、
発泡させる直前の分散液の温度を該ポリアミド系樹脂の融点よりも低い温度とし、発泡剤を含むポリアミド系樹脂粒子を水と共に密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧下に放出して発泡させる工程、とを含む方法である。
方法2は、ポリアミド系樹脂粒子に水分を吸収させ、含水樹脂粒子を得る工程と、
密閉容器内で該含水樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程と、
発泡剤を含む含水樹脂粒子を加熱して発泡させる工程、とを含む方法である。
以下に各方法について説明する。
【0038】
(ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法(方法1))
方法1は、密閉容器内でポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、分散液を得る工程と、
該分散液中の該ポリアミド系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程と、
該分散液を、該ポリアミド系樹脂の融点よりも低い温度で保持する工程と、
発泡剤を含浸したポリアミド系樹脂粒子を発泡させる工程、とを含む方法である。
以下に各工程について説明する。
【0039】
〔分散液を得る工程〕
分散液を得る工程は、密閉容器内でポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、分散液を得る工程である。
ポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させる方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、撹拌機を使用して、水を撹拌しながら水にポリアミド系樹脂粒子を添加し、更に撹拌することによって、分散液を得ることができる。
また、必要に応じて分散液に、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、タルク、スメクタイト等の無機物質等の分散剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤等の分散助剤を添加することが好ましい。ポリアミド系樹脂粒子と分散剤との質量比(樹脂粒子/分散剤)は、好ましくは20~2000であり、より好ましくは30~1000である。また、分散剤と分散助剤との質量比(分散剤/分散助剤)は、好ましくは1~500であり、より好ましくは1~100である。
【0040】
〔発泡剤を含浸させる工程〕
発泡剤を含浸させる工程は、分散液中のポリアミド系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程である。本工程では発泡剤を含浸させるとともにポリアミド系樹脂粒子に水分を吸収させることもできる。ポリアミド系樹脂粒子への発泡剤の含浸方法は特に限定されるものではないが、オートクレーブ等の加圧可能な密閉容器内でポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させ、該ポリアミド系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることが好ましい。なお、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、ポリアミド系樹脂粒子への発泡剤の含浸は、加圧に加えて、加熱することが好ましい。
【0041】
加熱下で行われる含浸時の温度は、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、好ましくはポリアミド系樹脂粒子の融点(Tm(℃))以下、より好ましくは(Tm-20(℃))以下である。
【0042】
また、加圧下で行われる含浸時の圧力(以下、含浸圧力ともいう。)は、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、分散液が入った容器に発泡剤を添加することにより、密閉容器内の圧力が、1.5MPa(G)以上となるようにすることが好ましく、2.5MPa(G)以上となるようにすることがより好ましく、7.0MPa(G)以下となるようにすることが好ましく、5.0MPa(G)以下となるようにすることがより好ましい。
なお、「1.5MPa(G)」は、ゲージ圧で1.5MPaであることを意味する。
【0043】
ポリアミド系樹脂粒子を水中に分散させて分散液を得る工程から保持する工程の前までは、ポリアミド系樹脂粒子に水分を吸収させる役割も有する。
ポリアミド系樹脂粒子を十分に吸水させる観点から、昇温速度は、好ましくは10℃/分以下であり、より好ましくは7℃/分以下である。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の生産性の観点から、昇温速度は、好ましくは1℃/分以上であり、より好ましくは2℃/分以上である。
【0044】
(発泡剤)
発泡剤としては、物理発泡剤を用いることができる。物理発泡剤としては、有機系物理発泡剤として、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等が挙げられる。また、無機系物理発泡剤として、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等が挙げられる。
物理発泡剤の中でも、環境への影響が少ないとともに可燃性がなく安全性に優れるという観点から、無機系物理発泡剤が好ましく、二酸化炭素又は窒素がより好ましく、二酸化炭素が更に好ましい。
【0045】
〔保持する工程〕
保持する工程は、分散液を、該ポリアミド系樹脂の融点よりも低い温度で保持する工程である。保持する工程は、上記ポリアミド系樹脂粒子を水分が含有する状態で加熱する工程である。
保持する工程における分散液の保持温度は、結晶子サイズを大きくする観点から、好ましくはポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm-90℃)以上であり、より好ましくは80℃低い温度(Tm-80℃)以上であり、更に好ましくは70℃低い温度(Tm-70℃)以上であり、より更に好ましくは65℃低い温度(Tm-65℃)以上である。また、保持する工程における分散液の保持温度は、好ましくはポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも50℃低い温度(Tm-50℃)未満であり、より好ましくは55℃低い温度(Tm-55℃)以下であり、更に好ましくは57℃低い温度(Tm-57℃)以下であり、より更に好ましくは59℃低い温度(Tm-59℃)以下である。
分散液として用いる水によりポリアミド系樹脂粒子が可塑化され、特定範囲の温度で保持することで、結晶子サイズが所望の発泡粒子を製造することが可能になったためと考えられる。
【0046】
保持する工程における保持時間は、結晶子を特定の範囲により成長させやすくする観点から、好ましくは5分以上であり、より好ましくは10分以上であり、更に好ましくは20分以上である。そして、保持する工程における保持時間は、好ましくは60分以下であり、より好ましくは40分以下である。上記時間で保持することにより、結晶子サイズが大きいポリアミド系樹脂発泡粒子を得ることが可能となる。さらに、見掛け密度が低く、独立気泡率が高い発泡粒子を得やすい。保持する工程は、前記温度範囲内で多段階に設定することもでき、また、該温度範囲内で十分な時間を要してゆっくりと昇温させることも可能である。結晶子をより成長させやすくするという観点からは、前記温度範囲内で一段階(保持温度が一定)に設定し、上記時間保持することが好ましい。
【0047】
保持する工程は、ポリアミド系樹脂に十分に水分を吸収させる観点、及び発泡剤をポリアミド系樹脂に均一に含浸させる観点から、加圧下で行われることが好ましく、含浸圧力と同じ圧力を維持することが好ましい。分散液が入った容器内の圧力は、1.5MPa(G)以上となるようにすることが好ましく、2.5MPa(G)以上となるようにすることがより好ましい。また、分散液が入った容器内の圧力は、7.0MPa(G)以下となるようにすることが好ましく、5.0MPa(G)以下となるようにすることがより好ましい。
【0048】
〔発泡させる工程〕
発泡させる工程は、発泡剤を含浸したポリアミド系樹脂粒子を発泡させる工程である。
ポリアミド系樹脂粒子の発泡方法は特に限定されるものではないが、前記保持する工程に続いて、発泡剤が含浸したポリアミド系樹脂粒子を水とともに、密閉容器内の圧力より低い圧力雰囲気下(通常は大気圧下)に放出して発泡させる、発泡法が好ましい。
【0049】
発泡させる直前の分散液の温度Te(以下、発泡温度ともいう。)は、見掛け密度が低く、独立気泡率が高いポリアミド系樹脂発泡粒子を得る観点から、好ましくはポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも90℃低い温度(Tm-90℃)以上であり、より好ましくは80℃低い温度(Tm-80℃)以上であり、更に好ましくは70℃低い温度(Tm-70℃)以上であり、より更に好ましくは65℃低い温度(Tm-65℃)以上である。また、発泡温度は、好ましくはポリアミド系樹脂の融点(Tm)よりも50℃低い温度(Tm-50℃)未満であり、より好ましくは55℃低い温度(Tm-55℃)以下であり、更に好ましくは57℃低い温度(Tm-57℃)以下であり、より更に好ましくは59℃低い温度(Tm-59℃)以下である。
【0050】
発泡させる工程における放出直前の圧力(発泡圧力)は、好ましくは0.5MPa(G)以上、より好ましくは1.5MPa(G)以上、更に好ましくは2.5MPa(G)以上である。また、発泡圧力は、好ましくは10.0MPa(G)以下、より好ましくは7.0MPa(G)以下、更に好ましくは5MPa(G)以下である。
【0051】
また、発泡させる工程において、発泡剤が含浸したポリアミド系樹脂粒子を水とともに密閉容器内の圧力よりも低圧力下に放出する際、放出する雰囲気温度を高く保つことが好ましい。
すなわち、方法1の製造方法は、発泡させる工程として、発泡させる直前の分散液の温度を該ポリアミド系樹脂の融点よりも低い温度とし、発泡剤を含むポリアミド系樹脂粒子を水と共に密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧下に放出して発泡させる際に、雰囲気温度を高く保つことが好ましい。ここで雰囲気温度とは、密閉容器内から分散液を放出した際の放出直後に分散液が接触する雰囲気の温度をいう。雰囲気温度を高く保つ方法としては、スチームにより雰囲気温度を高くする方法が好ましいが、高温空気で雰囲気温度を高くする方法でもよい。放出する雰囲気温度を高く保つことにより、該樹脂粒子の結晶子の成長を促進することができ、得られるポリアミド系樹脂発泡粒子は、結晶子サイズがより大きな発泡粒子とすることができる。上記雰囲気温度は、80~120℃であることが好ましい。また、圧力は0.05~0.3MPa(G)であることが好ましい。
【0052】
(ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造方法(方法2))
方法2は、ポリアミド系樹脂粒子に水分を吸収させ、含水樹脂粒子を得る工程と、
密閉容器内で樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程と、
発泡剤を含む含水樹脂粒子を加熱して発泡させる工程、とを含む方法である。
以下に各工程について説明する。なお、含水樹脂粒子を得る工程と樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程との順番は、特に限定されるものではなく、含水樹脂粒子を得る工程の後に樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程を行ってもよく、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程の後に含水樹脂粒子を得る工程を行ってもよく、含水樹脂粒子を得る工程と樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程とを同時に行ってもよい。
【0053】
〔含水樹脂粒子を得る工程〕
含水樹脂粒子を得る工程は、ポリアミド系樹脂粒子に水分を吸収させる工程である。
ポリアミド系樹脂粒子に水分を吸収させる方法としては、ポリアミド系樹脂粒子を水に浸漬させる方法が挙げられる。
浸漬条件は、ポリアミド系樹脂粒子に水分を充分に吸収されれば特に限定されるものではないが、例えば、容器内にポリアミド系樹脂粒子とポリアミド系樹脂粒子が完全に浸漬する量の水を入れ、以下の温度と時間で行うことが好ましい。
浸漬時の温度は、水をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。
浸漬させる時間は、好ましくは20分以上であり、より好ましくは40分以上である。製造時間を短くする観点から、浸漬させる時間の上限は、概ね24時間程度である。なお、含水樹脂粒子を得る工程は、加圧下で行ってもよい。
【0054】
〔発泡剤を含浸させる工程〕
発泡剤を含浸させる工程は、ポリアミド系樹脂粒子への発泡剤の含浸方法は特に限定されるものではないが、たとえば、オートクレーブ等の加圧可能な密閉容器内にポリアミド系樹脂粒子を入れ、該ポリアミド系樹脂粒子に発泡剤を含浸させることが好ましい。なお、含水樹脂粒子を得る工程の容器(容器1)から発泡剤を含浸する工程の容器(容器2)に含水樹脂粒子を移す場合には、容器1から含水した樹脂粒子を取り出し、樹脂粒子表面の水分を除去せずに容器2に投入すればよい。
【0055】
含浸時の温度は、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、好ましくは0℃以上、更に好ましくは5℃以上である。含水樹脂粒子同士の互着を抑制する観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。
【0056】
また、加圧下で行われる含浸時の圧力(含浸圧力)は、発泡剤をポリアミド系樹脂粒子に短時間で十分に含浸させる観点から、粒子が入った圧力容器に発泡剤を添加することにより、圧力容器内の圧力が、1.5MPa(G)以上となるようにすることが好ましく、2.5MPa(G)以上となるようにすることがより好ましく、7.0MPa(G)以下となるようにすることが好ましく、5.0MPa(G)以下となるようにすることがより好ましい。
【0057】
発泡剤を含浸させる工程の合計時間は、好ましくは30分以上であり、より好ましくは60分以上である。一方、ポリアミド系樹脂発泡粒子の生産性の観点からは、上記時間が好ましくは300分以下であり、より好ましくは240分以下である。
【0058】
発泡剤を付与した後、圧力を徐々に大気圧まで下げることにより発泡剤を含む含水樹脂粒子とすることができる。
【0059】
〔発泡させる工程〕
発泡剤を含浸させる工程は、発泡剤を含む含水樹脂粒子を加熱して、発泡剤を含浸したポリアミド系樹脂粒子を発泡させる工程である。発泡させる工程は、上記ポリアミド系樹脂粒子を水分が含有する状態で加熱する工程である。
ポリアミド系樹脂粒子の発泡方法は特に限定されるものではないが、たとえば、スチーム、高温空気、オイル等の熱媒体で、発泡剤を含浸した含水ポリアミド系樹脂粒子を加熱して、発泡させることが好ましい。
【0060】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体]
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形することにより、ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体(発泡成形体)を得ることができる。すなわち、ここで得られた発泡成形体は、本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子を型内成形してなる。
型内成形法は、従来公知の方法を採用することできるが、スチームによる加熱を用いることが好ましい。スチームにより、ポリアミド系樹脂発泡粒子中のポリアミド系樹脂が、吸水により可塑化する為、成形スチーム圧を低くすることが可能となる。なお、得られた成形体を乾燥させれば、ポリアミド系樹脂本来の物性に戻り、高い耐熱性を有する成形体となる。
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、結晶子が大きく成長しているため、型内成形性に優れ、良好な発泡粒子成形体とすることができる。また、発泡粒子の耐熱性にも優れることから、軽量で耐熱性に優れる成形体を得ることもできる。型内成形性に優れるとは、具体的には、成形体を得るために型内成形する際の表面性に優れ、融着性及び回復性にも優れ、成形可能な圧力範囲が広いことを意味する。また、本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子は、型内成形性に優れるため厚物であっても良好な成形体を得ることができる。厚物の成形体とは、たとえば30mm以上が好ましく、40mm以上がより好ましく、50mm以上がさらに好ましい。
【0061】
本発明のポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の成形体密度は、好ましくは20kg/m3以上であり、より好ましくは40kg/m3以上であり、更に好ましくは50kg/m3以上である。そして、成形体密度は、好ましくは300kg/m3以下であり、より好ましくは250kg/m3以下であり、更に好ましくは200kg/m3以下であり、より更に好ましくは150kg/m3以下である。
成形体密度が上記範囲であれば、軽量性と成形体強度のバランスに優れる。
なお、成形体密度は、以下の方法で測定される。
まず、温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した発泡粒子成形体を適当な大きさの直方体状のサンプル(成形スキンは取り除く)に切り分ける。そして、各サンプルの外形寸法から各サンプルの見掛け体積を求め、これらの合計をサンプルの見掛け体積Hとする。なお、各サンプルの合計重量Wを前記見掛け体積Hで割算することにより、成形体密度[kg/m3]が求められる。
【0062】
本明細書のポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の独立気泡率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。発泡粒子成形体の独立気泡率が上記範囲を満足すると、見掛け密度が低い発泡粒子が得られやすい。なお、発泡粒子成形体の独立気泡率は、発泡粒子成形体を構成している発泡粒子に含まれる気泡の体積(独立気泡の体積と連続気泡の体積の合計)に対する、独立気泡の体積の比を意味し、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、空気比較式比重計等を用いて求めることができる。
このように、結晶子サイズが大きいポリアミド系樹脂発泡粒子を用いることで、見掛け密度が低く、独立気泡率が高い成形体が得られる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0064】
各製造例におけるポリアミド系樹脂及びポリアミド系樹脂粒子の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0065】
[ポリアミド系樹脂及びポリアミド系樹脂粒子の物性測定]
〔融点(Tm)〕
JIS K7121-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定法により、ポリアミド系樹脂粒子の融点を測定した。窒素流入量30mL/分の条件下で、10℃/分の加熱速度で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱(1回目の昇温)してから、次いでその温度にて10分間保った後、10℃/分の冷却速度で30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分で融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して得られる2回目のDSC曲線の融解ピークのピーク頂点温度として求めた。なお、測定装置として、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用した。なお、DSC曲線の測定には、温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上静置させたポリアミド系樹脂粒子を用いた。
【0066】
〔密度〕
ISO 1183-3に記載の方法に基づいて求められたカタログ値である。
【0067】
〔曲げ弾性率〕
ポリアミド系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に準拠して測定することにより求めた。曲げ弾性率は、厚み4mm、幅10mm、長さ80mmの樹脂試験片を作製し、試験片を室温23℃、相対湿度50%の状態で72時間静置した後、支点間距離64mm、圧子の半径15.0mm、支持台の半径25.0mm、試験速度2mm/min、室温23℃、相対湿度50%の条件で、オートグラフAGS-10kNG(島津製作所製)試験機により測定し、算出された値(5点)の平均値を採用した。
なお、アミド系エラストマー(アルケマ社製、製品名「PEBAX5533」、融点159℃、密度1.01g/cm3)の曲げ弾性率を上記方法に基づき測定したところ、150MPaであった。
【0068】
[ポリアミド系樹脂粒子の製造]
製造例1
押出機に、ポリアミド系樹脂(5033B、詳細は表1に示す。)を供給し、気泡調整剤として「タルカンパウダーPK-S」(林化成株式会社製)をポリアミド系樹脂100質量部に対して0.8000質量部添加し、末端封鎖剤として、芳香族ポリカルボジイミド(Stabaxol P、ラインケミー社製)をポリアミド系樹脂100質量部に対して1質量部となるように供給し、溶融混練した。その溶融混練物は、押出機先端に取り付けた口金の細孔から断面円形状のストランド状に押出し、押出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーで質量が平均2mgとなるように切断し、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。
【0069】
製造例2
ポリアミド系樹脂を、5033Bから、1030B(詳細は表1に示す。)に変更した以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド系樹脂粒子を得た。
【0070】
製造例3
ポリアミド系樹脂を、5033Bから、E2046(詳細は表1に示す。)に変更し、末端封鎖剤をStabaxol Pから、芳香族ポリカルボジイミド(Stabaxol P100、ラインケミー社製)に変更した以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド系樹脂粒子を得た。
【0071】
製造例4
末端封鎖剤(Stabaxol P)を用いなかった以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド系樹脂粒子を得た。
【0072】
【0073】
各実施例及び比較例におけるポリアミド系樹脂発泡粒子の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0074】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の物性測定]
水分率以外のポリアミド系樹脂発泡粒子の各種物性は、以下の状態調節を行った後に測定した。まず、得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を24時間温度60℃の環境下に置き、その後、室温(23℃)まで徐冷した。次に、温度23℃、相対湿度50%、1atmの環境下で24時間静置することにより状態調節した。
【0075】
〔水分率〕
発泡直後のポリアミド系樹脂発泡粒子を無作為に選択し、発泡粒子の表面の水分を乾いた布でふき取った後、発泡粒子約0.2gを秤量し、次いで加熱水分気化装置を用いて該発泡粒子を160℃まで加熱することにより、該発泡粒子の内部の水分を気化させ、カールフィッシャー水分測定装置(AQ-2200A、平沼産業株式会社製)を用いて、カールフィッシャー滴定(電量滴定法)により、水分率を測定した。
【0076】
〔結晶子サイズ〕
ポリアミド系樹脂発泡粒子の結晶子サイズは以下の方法により求めた。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子のX線回折(XRD)測定を、X線散乱装置「SmartLab SE」(リガク社製)を用いた反射法により、行った。検出器には半導体1次元検出器D/teX Ultra 250を用いた。試料には、無作為に選択した発泡粒子を重ならない範囲で可能な限り密に、24mm径の試料ホルダーに充填した試験片を用いた。空セル散乱補正も実施した。こうして得られた一次元X線回折プロフィールを、ソフトウェア(商品名:SmartLab Studio II)を用いて、ピーク形状としてガウス関数を仮定して、結晶由来の回折ピークと非晶由来の回折ピークとにピーク分離を行った。ピーク分離により得られたピークのうち、最も狭いピーク幅を有するピークの半値全幅β(rad)を計算し、該半値全幅βを用いて下記式(2)に従って、発泡粒子の結晶子サイズDを算出した。上記測定を10つの試験片について行い、それらの算術平均値を発泡粒子の結晶子サイズとした。
【0077】
【0078】
〔第1回加熱のDSC曲線の全融解熱量〕
測定には、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用した。
ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片として、JIS K7122-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定によって加熱速度10℃/分で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、第1回加熱のDSC曲線を得た。
得られたDSC曲線において、DSC曲線上の150℃の点と、DSC曲線上の融解ピーク終了時の温度を示す点とを結ぶ直線を引き、この直線をベースラインとして、ベースラインと、ベースラインより吸熱側に存在するDSC曲線によって囲まれる部分の面積から算出される熱量を第1回加熱のDSC曲線の全融解熱量とした。
【0079】
〔第2回加熱のDSC曲線の融解ピークの頂点温度〕
測定には、高感度型示差走査熱量計「EXSTAR DSC7020」(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用した。
ポリアミド系樹脂発泡粒子を試験片として、JIS K7121-1987に基づき、熱流束示差走査熱量測定によって加熱速度10℃/分で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、その温度にて10分間保った。
その後、冷却速度10℃/分にて30℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/分で30℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱し、第2回加熱のDSC曲線を得た。
得られたDSC曲線において、DSC曲線上に現れた最大の融解ピーク(吸熱ピーク)の頂点(ピークトップ)温度を第2回加熱のDSC曲線の融解ピークの頂点温度とした。
【0080】
〔ポリアミド系樹脂発泡粒子の見掛け密度〕
温度23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに、嵩体積が約500cm3の発泡粒子の質量W1を測定し、金網を使用して沈めた。金網の体積を考慮して、水位上昇分より読みとられる発泡粒子の容積V1[cm3]を測定し、発泡粒子の質量W1[g]を容積V1で割り算し(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の見掛け密度を求めた。
【0081】
〔平均気泡径〕
まず、発泡粒子の中心部を通るように発泡粒子を約二分割し、切断面を走査型電子顕微鏡にて写真を撮影した。次いで、得られた断面写真において、発泡粒子切断面の中心付近から発泡粒子表面まで45°ずつ角度を変更し、8方向に等間隔に直線を引き、その直線と交わる気泡の数を全てカウントした。該直線の合計長さを、カウントされた気泡数で除して得られた値を発泡粒子の気泡径とした。この操作を30個の発泡粒子について同様に行い、各発泡粒子の気泡径の算術平均値を発泡粒子の平均気泡径とした。
【0082】
〔表層膜厚〕
上記平均気泡径の8方向の直線の線分上において、発泡粒子の最表面から発泡粒子の最外に位置する気泡までの長さ(最表面層の厚み)を測定し、それらの値を算術平均することにより、各発泡粒子の最表面層の平均厚みを求めた。そして、30個の発泡粒子の値を算術平均することにより発泡粒子の平均表層膜厚を求めた。
【0083】
〔ポリアミド系樹脂発泡粒子の独立気泡率〕
ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子の真の体積(発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値Vxを測定した。この真の体積Vxの測定には、東芝・ベックマン(株)製の空気比較式比重計「930」を用いた。次いで、下記の式(1)により独立気泡率を算出し、5回の測定結果の算術平均値を求めた。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積(cm3)
Va:発泡粒子の見掛けの体積(cm3)
W:発泡粒子測定用サンプルの質量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm3)
【0084】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の評価]
〔耐熱性評価(ポリアミド系樹脂発泡粒子の23℃における5%圧縮応力に対する融点よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)における5%圧縮応力の比)〕
発泡粒子を熱分析装置(TMA;株式会社日立ハイテクサイエンス製「TMA7100」)にて圧縮モード(圧縮プローブの先端の直径3.5mm)で測定した。具体的には、発泡粒子1個を無作為に選び、発泡粒子の短径方向を圧縮プローブで10mNの荷重をかけて挟んだ後、所定の温度とした。その後、当該温度で等温保持を行いながら1mm/minのスピードで押し込み、プローブの荷重をモニタし、発泡粒子の厚さが、圧縮前の発泡粒子の厚さの5%となった時点での応力を記録した。上記操作を3回行い、それらの算術平均値を5%圧縮応力とした。
前記所定の温度は、表2に記載の通り、ポリアミド系樹脂発泡粒子に用いられるポリアミド系樹脂発泡粒子の融点よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)と、23℃である。
更に、前記測定により得られた測定値を用いて、ポリアミド系樹脂発泡粒子の23℃における5%圧縮応力に対する融点よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)における5%圧縮応力の比[(Tm1-20℃圧縮応力)/(23℃圧縮応力)]を算出した。上記操作を3個の発泡粒子について行い、それらの算術平均値をポリアミド系樹脂発泡粒子の23℃における5%圧縮応力に対する融点よりも20℃低い温度(Tm1-20℃)における5%圧縮応力の比[(Tm1-20℃圧縮応力)/(23℃圧縮応力)]とした。
前記比の値が大きいほど、耐熱性に優れる。このような耐熱性に優れるポリアミド系樹脂発泡粒子は、未硬化状態の熱硬化性樹脂と混合または積層するなどして複合し、熱硬化性樹脂を硬化させることにより、複合体を製造するなどの耐熱性が要求される用途に好適に使用される。
【0085】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の製造]
実施例1
製造例1で得られたポリアミド系樹脂粒子1kgと、分散液として水3リットルとを、撹拌機を備えた5リットルのオートクレーブ内に仕込み、更に、ポリアミド系樹脂粒子100質量部に対して、分散剤としてカオリン0.3質量部と、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.004質量部とを分散液に添加した。オートクレーブ内の内容物を撹拌しながら室温(23℃)から昇温し、136℃(含浸温度)に到達するまでの間に、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が4.0MPa(G)(含浸圧力)となるまで圧入した。このとき、室温(23℃)から含浸温度に到達するまでの昇温時間は40分であった。次に、30分間、136℃(保持温度)、4MPa(G)(保持圧力)を保持した。
その後、発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子を分散液とともに大気圧(0.1MPa)下に放出した。発泡温度(発泡させる直前の分散液の温度Te)は136℃である。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
得られたポリアミド系樹脂発泡粒子の物性を表2に示す。なお、実施例1における発泡直後のポリアミド系樹脂発泡粒子の水分率を測定したところ18%であった。ポリアミド系樹脂発泡粒子の水分率は、ポリアミド系樹脂の飽和吸水率よりも高い値を示している。これは、ポリアミド系樹脂発泡粒子が過飽和吸水状態であることによりポリアミド系樹脂の飽和吸水率よりも高い値を示したものと考えられる。また、オートクレーブ内におけるポリアミド系樹脂発泡粒子の水分率は、測定することが困難であるが、少なくとも発泡直後のポリアミド系樹脂発泡粒子よりも高い水分率であると考えられる。
【0086】
実施例2
製造例2で得られたポリアミド系樹脂粒子を用いた点、含浸温度、保持温度および発泡温度を158℃とした点以外は、実施例1と同様の方法によりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
【0087】
実施例3
製造例3で得られたポリアミド系樹脂粒子を用いた点、含浸温度、保持温度および発泡温度を175.5℃とした点以外は、実施例1と同様の方法によりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
【0088】
実施例4
製造例4で得られたポリアミド系樹脂粒子を用いた点以外は、実施例1と同様の方法によりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
【0089】
実施例5
本実施例においては、オートクレーブ内から発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子を大気圧に放出する際のバルブの出口に圧力0.1MPa(G)のスチームを供給しながら大気圧に放出した以外は、実施例1と同様にして製造した。なお、ポリアミド系樹脂粒子と水を含む分散液とスチームが接触する部分の分散液の雰囲気温度は100℃であった。
【0090】
実施例6
製造例1で得られたポリアミド系樹脂粒子3kgを水6リットルに完全に浸漬させて1時間静置した。
次に、水中から取り出した当該樹脂粒子をオートクレーブ内に仕込み、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が4MPa(G)(含浸圧力)となるまで圧入した。次に、3時間の間、10℃(含浸温度)、4MPa(G)を維持した。
その後、発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子をオートクレーブから取り出し、表2に示す温度(発泡温度)に加熱したオイル媒体で満たさせた発泡容器に移し、発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子を浸漬することにより、発泡させた。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子の表面をノルマルヘキサンで洗浄してオイルを取り除いた後、ポリアミド系樹脂発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
得られたポリアミド系樹脂発泡粒子の物性を表2に示す。なお、発泡直前のポリアミド系樹脂粒子の水分率を測定したところ6.2%であった。
【0091】
実施例7
本実施例においては、保持温度を139℃、発泡温度を135℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法によりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
【0092】
比較例1
製造例1で得られたポリアミド系樹脂粒子3kgをオートクレーブ内に仕込み、該オートクレーブ内に発泡剤として二酸化炭素を、オートクレーブ内の圧力が4MPa(G)(含浸圧力)となるまで圧入した。次に、3時間の間、10℃(含浸温度)、4MPa(G)を維持した。
その後、発泡剤が含浸されたポリアミド系樹脂粒子を発泡装置に移し、表2に示す温度(発泡温度)の空気を20秒間吹き込み、ポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を60℃のオーブン内にて24時間養生し、その後徐冷することによりポリアミド系樹脂発泡粒子を得た。
得られたポリアミド系樹脂発泡粒子の物性を表2に示す。なお、発泡直前のポリアミド系樹脂粒子の水分率を測定したところ3.0%であった。
【0093】
[ポリアミド系樹脂発泡粒子の成形性評価及びポリアミド系樹脂発泡粒子成形体]
各実施例及び比較例におけるポリアミド系樹脂発泡粒子の成形性の評価を以下の方法で行い、得られた成形体の各種物性は、以下の方法により測定した。
【0094】
〔ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の製造〕
まず、実施例1~7及び比較例1で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子を縦300mm×横300mm×厚さ50mmの平板成形型に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行った後、表2に示す成形スチーム圧より0.04MPa(G)低い圧力で一方加熱を行い、さらに表2に示す成形スチーム圧より0.02MPa(G)低い圧力で逆方向から一方加熱を行った後、表2に示す成形スチーム圧で、両面から本加熱を行った。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.02MPa(ゲージ圧)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体は80℃のオーブンにて12時間養生し、その後、室温まで徐冷した。このようにして、ポリアミド発泡粒子成形体を得た。各成形スチーム圧における成形体について、前記発泡粒子の成形性を評価し、成形体の物性についても測定した。その結果を表2に示す。
【0095】
〔ポリアミド系樹脂発泡粒子の成形性評価〕
上記製造方法で得られたポリアミド系樹脂発泡粒子成形体について、回復性、表面性、融着性を測定し、ポリアミド系樹脂発泡粒子の成形性を評価した。評価方法を下記に示す。
(発泡粒子成形体の回復性)
型内成形で用いた平板形状の金型の寸法に対応する発泡粒子成形体における端部(端より10mm内側)と中心部(縦方向、横方向とも2等分する部分)の厚みを計測した。次いで、発泡粒子成形体の厚み比(成形体中心部の厚み/成形体端部の厚み×100(%))を算出し、以下のように評価した。厚み比が大きいほど、回復性に優れ、成形性が良好である。
〇:厚み比が95%以上である。
×:厚み比が95%未満である。
【0096】
(発泡粒子成形体の表面性)
発泡粒子成形体の表面性を次のようにして評価した。成形体表面の発泡粒子間隙が埋まっているほど、発泡粒子の表面性に優れ、成形性が良好である。
〇:成形体表面の発泡粒子間隙が埋まっている。
×:成形体表面の発泡粒子間隙が埋まっていない。
【0097】
(発泡粒子成形体の融着性)
成形体の融着率は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合に基づいて求めた。具体的には、まず、発泡粒子成形体から試験片(縦100mm×横100mm×厚み:成形体の厚み)を切り出し、カッターナイフで各試験片の厚み方向に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から試験片を破断させた。次に、発泡粒子成形体の破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(b)と(n)の比(破断面の材料破壊、b/n)を百分率で表した。破断面の材料破壊の値が大きいほど、発泡粒子の融着性に優れ、成形性が良好である。
【0098】
〔ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の物性測定〕
以下に示すポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の各種物性は、室温まで徐冷したポリアミド系樹脂発泡粒子成形体を温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置した後に測定した。
(成形体密度)
発泡粒子成形体からスキン面を除くサンプル(縦100mm×横100mm×厚み30mm)に切り出した。そして、サンプルの外形寸法からサンプルの見掛け体積を求め、サンプルの見掛け体積Hとする。サンプルの合計重量Wを前記見掛け体積Hで割算する(W/H)ことにより、成形体密度[kg/m3]を求めた。
【0099】
(ポリアミド系樹脂発泡粒子成形体の独立気泡率)
発泡粒子成形体からスキン面を除くサンプル(縦30mm×横30mm×厚み30mm)を切り出し、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じて、発泡粒子成形体の真の体積(発泡粒子成形体を構成する樹脂の容積と、発泡粒子成形体内の独立気泡部分の気泡全容積との和)の値Vxを測定した。この真の体積Vxの測定には、東芝・ベックマン(株)製の空気比較式比重計「930」を用いた。次いで、下記の式(3)により独立気泡率を算出し、5回の測定結果の算術平均値を求めた。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(3)
Vx:上記方法で測定される発泡粒子成形体の真の体積(cm3)
Va:発泡粒子成形体の見掛けの体積(cm3)
W:発泡粒子成形体測定用サンプルの質量(g)
ρ:発泡粒子成形体を構成する樹脂の密度(g/cm3)
【0100】
【0101】
表2に示した結果より、実施例のポリアミド系樹脂発泡粒子は、型内成形性に優れることがわかる。また、実施例のポリアミド系樹脂発泡粒子は、耐熱性にも優れるものであった。