(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
C12C 12/00 20060101AFI20241030BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20241030BHJP
【FI】
C12C12/00
A23L2/38 C
A23L2/38 J
(21)【出願番号】P 2020042203
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】滝井 慎也
(72)【発明者】
【氏名】単 小遠
(72)【発明者】
【氏名】早川 雄悟
(72)【発明者】
【氏名】和泉原 光
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-117205(JP,A)
【文献】特開2018-130049(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035123(WO,A1)
【文献】特公平07-046982(JP,B2)
【文献】特開平10-075770(JP,A)
【文献】特開2002-253197(JP,A)
【文献】特開2018-186774(JP,A)
【文献】特開2018-186775(JP,A)
【文献】特開2020-031586(JP,A)
【文献】特開2021-141836(JP,A)
【文献】特開2021-141837(JP,A)
【文献】Manfred Moll,BEERS & COOLERS,Intercept Ltd,1994年,p.294-295
【文献】尿酸,1985年,9(2),128-133
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C
C12G
A23L
CAplus/REGISTRY(STN)
CABA/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンチンの含有量が1.4ppm以下であり、カプロン酸エチルの含有量が100ppb以上であり、キサンチン含有量に対するカプロン酸エチル含有量の質量比(カプロン酸エチル/キサンチン)が0.070以上である、ビールテイスト飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールテイスト飲料には原料の麦芽に由来するプリン体が含まれている。近年痛風予防を目的とした健康志向の高まりから、プリン体含有量の低いビールテイスト飲料が望まれており、活性炭や白土を用いたプリン体吸着剤によりプリン体含有量の低いビールテイスト飲料を製造する試みがなされている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-169658号公報
【文献】特開2012-125205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の方法ではプリン体が低減されるものの、香気成分の保持については、更なる改善が求められる。
【0005】
本発明は、キサンチンが少なく且つビールらしい香味を有するビールテイスト飲料を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、キサンチン含有量に対するカプロン酸エチル含有量の質量比(カプロン酸エチル/キサンチン)が0.070以上である、ビールテイスト飲料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キサンチンが少なく且つビールらしい香味を有するビールテイスト飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のビールテイスト飲料は、キサンチン及びカプロン酸エチルを含む。
【0009】
本発明のビールテイスト飲料におけるキサンチンの含有量は、プリン体を低減する観点から、好ましくは1.4ppm以下であり、より好ましくは1.0ppm以下であり、さらに好ましくは0.9ppm以下である。また、下限値は特に限定されないが、0ppm以上、0.1ppm以上などとすることができ、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0010】
本明細書においてプリン体とは、プリン骨格を持つ化合物の総称を指す。アデニン、グアニン、キサンチン、ヒポキサンチンのプリン体塩基に加えて、アデノシン、グアノシン等のようなプリンヌクレオシド、アデニル酸、グアニル酸などのようなプリンヌクレオチドもプリン体に含まれる。本明細書において、プリン体の含有量は、過塩素酸による加水分解後に液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS/MS)で測定する(「酒類中のプリン体の微量分析のご案内」日本食品分析センターhttp://www.jfrl.or.jp/item/nutrition/post-31.html)。
【0011】
本発明のビールテイスト飲料におけるカプロン酸エチルの含有量は、香味の観点から、好ましくは100ppb以上であり、上限値は特に限定されないが、1500ppb以下、1000ppb以下、500ppb以下、300ppb以下などとすることができ、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。カプロン酸エチルの含有量は、狙いとする酒質に合わせて発酵させる微生物の種類、株を選択することによって、あるいは発酵などの醸造工程条件を設定するなどの方法で増やすことができる。本明細書において、カプロン酸エチルの含有量は、BCOJビール分析法(財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会(分析委員会)編集1996年4月1日発行)の「8.22 低沸点香気成分」の方法にしたがい、FID検出器付きガスクロマトグラフを用いて測定する。
【0012】
本発明のビールテイスト飲料における、キサンチン含有量に対するカプロン酸エチル含有量の質量比(カプロン酸エチル/キサンチン)は、香味の観点から0.070以上であり、好ましくは0.080以上であり、より好ましくは0.090以上であり、さらに好ましくは0.10以上であり、さらに好ましくは0.11以上である。また、上限値は特に限定されないが、15以下、10以下、1.0以下、0.50以下、0.30以下などとすることができ、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0013】
本明細書において「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつ炭酸飲料をいう。つまり、本明細書のビールテイスト飲料は、特に断わりがない場合、ビール風味の炭酸飲料を全て包含し、アルコールを含有するビールテイスト飲料及びノンアルコールビールテイスト飲料が挙げられる。このときのアルコールとはエタノールを指し、脂肪族アルコールは含まれない。アルコールを含有するビールテイスト飲料におけるエタノール含量としては、容量比で1%~10%が好ましいが、特に限定されるものではない。さらに、ビールテイスト飲料に含まれるアルコール分の由来としては、醗酵、非醗酵に限定されるものではない。また、ノンアルコールビールテイスト飲料とは、アルコール度数が1%未満のビールテイスト飲料であり、好ましくは、アルコールを実質的に含まない。ここで、アルコールを実質的に含まない態様の飲料は、検出できない程度の極微量のアルコールを含有する飲料を除くものではない。アルコール度数が四捨五入により0.0%となる飲料、中でも、アルコール度数が四捨五入により0.00%となる飲料は、ノンアルコールビールテイスト飲料に包含される。
【0014】
本明細書においてアルコール度数は、飲料中のアルコール分の含有量(v/v%)を意味し、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、飲料から濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。アルコール度が1.0%未満の低濃度の場合は、市販のアルコール測定装置や、ガスクロマトグラフィーを用いても良い。
【0015】
本発明のビールテイスト飲料の製造方法は特に限定されないが、ビールテイスト飲料の製造工程中に吸着剤を用いたプリン体除去工程を行い、当該プリン体除去工程を大気圧より高い圧力下において行う製造方法が例示される。
【0016】
本態様の製造方法に係るプリン体除去工程は、吸着剤を用いてプリン体を除去する工程である。本態様の製造方法に係るプリン体除去工程は、ビールテイスト飲料の製造工程における任意の工程において行うことができ、複数回行ってもよい。本態様の製造方法に係るプリン体除去工程は、中味液に吸着剤を添加し、大気圧より高い圧力下において分散手段により吸着剤を中味液中に分散させて行う。分散の態様として、添加した吸着剤の一部が沈降していても構わないが、添加した吸着剤のすべてが分散していることが好ましい。本明細書において、中味液とは、プリン体除去の対象となる液体を指す。中味液は、どの工程においてプリン体除去工程を行うかにより左右され、例えば、糖化液、麦汁、もろみ、ビールテイスト飲料、その他ビールテイスト飲料を構成する原料の懸濁液などの中味液が挙げられる。
【0017】
本態様の製造方法に係る吸着剤としては、白土、活性炭、合成樹脂などが挙げられ、2種以上を併用してもよい。キサンチン除去効率の観点から、好ましくは白土である。白土としては、モンモリロナイトを主要成分とする粘土である酸性白土や、酸性白土を酸処理した活性白土が挙げられ、好ましくは活性白土である。
【0018】
本態様の製造方法に係る中味液への吸着剤の添加量は、中味液のプリン体量に応じて調整すればよく特に限定されるものではないが、キサンチン除去効率の観点から、好ましくは1ppm以上であり、より好ましくは5ppm以上であり、更に好ましくは10ppm以上であり、また、コストや生産性の観点から、好ましくは20000ppm以下であり、より好ましくは15000ppm以下であり、更に好ましくは10000ppm以下であり、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0019】
本態様の製造方法に係るプリン体除去工程における圧力は、大気圧より高い圧力下であれば特に限定されるものではないが、大気圧に加えてさらに以下の加圧条件下で行うことが好ましい。当該加圧条件は、香気成分保持の観点から、好ましくは0.5kPa以上であり、より好ましくは1.0kPa以上であり、さらに好ましくは1.5kPa以上であり、また、発酵中の酵母への影響や次工程への液送のしやすさの観点から、好ましくは200kPa以下であり、より好ましくは150kPa以下であり、さらに好ましくは100kPa以下であり、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0020】
加圧手段としては、例えば、タンクの圧力弁をあらかじめ設定しておき発酵で生成する炭酸ガスを利用する方法、外部から炭酸ガスなどのガスを注入して加圧する方法などが挙げられる。
【0021】
本態様の製造方法に係る分散手段としては、攪拌、バブリング、工程内での循環接触などが挙げられる。例えば、撹拌機を備え付けた容器内で撹拌しながら対流を起こす方法や、炭酸ガスなどのガスを容器に注入して対流を起こす方法、また、工程内での循環接触とは、ループする配管を備えた容器中に中味液と吸着剤を加え、配管内を循環させることで分散状態を維持する方法を指し、例えば、貯酒タンクにループする配管を備え付け、吸着剤と一緒に貯酒を循環させる方法などが挙げられる。また、分散手段として、発酵により発生する対流を利用して分散させてもよい。好ましくはバブリングもしくは発酵による対流利用の態様である。
【0022】
本態様の製造方法に係る中味液における吸着剤の分散率は、キサンチン除去効率の観点から、好ましくは10%以上であり、より好ましくは15%以上であり、更に好ましくは20%以上であり、更に好ましくは30%以上であり、更に好ましくは40%以上であり、更に好ましくは50%以上であり、更に好ましくは60%以上であり、更に好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上であり、更に好ましくは90%以上であり、上限は特に限定されないが、例えば100%以下とすることができ、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。本明細書において中味液における吸着剤の分散率は、中味液の液面の高さの半分の位置における吸着剤の分散の程度を示すものであり、後述の実施例に記載の方法により測定して算出する。
【0023】
本態様の製造方法に係るプリン体除去工程における分散処理時間は、キサンチン除去効率の観点から、好ましくは15分以上であり、より好ましくは1時間以上であり、更に好ましくは3時間以上であり、また、生産性の観点から、好ましくは10時間以下であり、より好ましくは7時間以下であり、更に好ましくは5時間以下であり、これらいずれの組み合わせによる範囲としてもよい。
【0024】
本態様の製造方法においては、プリン体除去工程と同時か、あるいはそれ以前に、ヌクレオシダーゼ処理を行う酵素処理工程を行うこともできる。酵素処理工程は、ビールテイスト飲料の製造工程における任意の工程において行うことができるが、酵素処理で得られたプリン塩基を酵母に資化させる観点から、発酵終了前に行うことが好ましい。酵素処理条件は例えば、糖化工程にて酵素を添加し糖化温度条件下で処理しても良いし、発酵工程にて酵素を添加し発酵温度条件下で処理しても良い。また、これらの条件を組み合わせて処理しても良い。
【0025】
本態様の製造方法は、プリン体除去工程を有する以外は一般的なビールテイスト飲料の製造方法と同様である。以下に、ビールテイスト飲料の製造態様を例示する。ビールテイスト飲料の製造態様としては麦芽を原料として使用するものとしないものとがあり、以下のように製造することができる。
【0026】
麦芽を原料として使用して製造されるアルコールを含有するビールテイスト飲料は、まず、麦芽等の麦の他、必要に応じて他の穀物、でんぷん、糖類、苦味料、又は着色料などの原料及び水を含む混合物に、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせ、ろ過し、糖化液とする。必要に応じてホップや苦味料などを糖化液に加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク質などの固形分を取り除く。この糖化液の代替として、麦芽エキスに温水を加えたものにホップを加えて煮沸してもよい。ホップは煮沸開始から煮沸終了前のどの段階で混合してもよい。糖化工程、煮沸工程、固形分除去工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。醗酵・貯酒工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。得られた醗酵液を濾過し、得られた濾過液に炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のビールテイスト飲料を得る。なお、アルコール成分として、さらに、穀物に由来するスピリッツを添加してもよい。スピリッツとは、麦、米、そば、とうもろこし等の穀物を原料として、酵母を用いて発酵させた後、更に蒸留して得られる酒類を意味する。スピリッツの原材料である穀物としては麦が好ましい。前記各工程においてプリン体除去工程は充填までのどの工程で行ってもよいが、プリン体除去効率の観点から、発酵・貯酒もしくは濾過の工程において行うことが好ましい。
【0027】
麦芽を原料として使用せずに製造されるアルコールを含有するビールテイスト飲料は、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液とする。該液糖溶液は、煮沸する。原料としてホップを用いる場合、ホップは煮沸開始前ではなく、煮沸中に、該液糖溶液に混合してもよい。この糖化液の代替として、麦芽以外の原料を用いたエキスに温水を加えたものにホップを加えて煮沸してもよい。ホップは煮沸開始から煮沸終了前のどの段階で混合してもよい。醗酵・貯酒工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。得られた醗酵液を濾過し、得られた濾過液に炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のビールテイスト飲料を得る。なお、アルコール成分として、さらに、穀物に由来するスピリッツを添加してもよい。前記各工程においてプリン体除去工程は充填までのどの工程で行ってもよいが、プリン体除去効率の観点から、発酵・貯酒もしくは濾過の工程において行うことが好ましい。
【0028】
非醗酵かつアルコールを含有するビールテイスト飲料は、麦芽を使用する、しないに限らず、原料用アルコールなどを加えることにより最終製品のアルコール分を調整したものでもよい。原料用アルコールの添加は、糖化工程から充填工程までのどの工程で行ってもよい。なお、アルコール成分として、さらに、穀物に由来するスピリッツを添加してもよい。前記各工程においてプリン体除去工程は充填までのどの工程で行ってもよいが、プリン体除去効率の観点から、煮沸終了以降の工程において行うことが好ましい。
【0029】
麦芽を原料として使用して製造されるノンアルコールビールテイスト飲料は、まず、麦芽等の麦の他、必要に応じて他の穀物、でんぷん、糖類、苦味料、又は着色料などの原料及び水を含む混合物に、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせ、ろ過し、糖化液とする。必要に応じてホップや苦味料などを糖化液に加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパク質などの固形分を取り除く。この糖化液の代替として、麦芽エキスに温水を加えたものにホップを加えて煮沸してもよい。ホップは煮沸開始から煮沸終了前のどの段階で混合してもよい。糖化工程、煮沸工程、固形分除去工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。煮沸後、得られた麦汁を濾過し、得られた濾過液に炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のノンアルコールビールテイスト飲料を得る。前記各工程においてプリン体除去工程は充填までのどの工程で行ってもよいが、プリン体除去効率の観点から、煮沸終了以降の工程において行うことが好ましい。
【0030】
麦芽を原料として使用しないノンアルコールビールテイスト飲料を製造する場合には、まず、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液とする。該液糖溶液は、煮沸する。原料としてホップを用いる場合、ホップは煮沸開始前ではなく、煮沸中に、該液糖溶液に混合してもよい。煮沸後の液糖溶液に対して、炭酸ガスを加える。その後、容器に充填し殺菌工程を経て目的のノンアルコールビールテイスト飲料を得る。前記各工程においてプリン体除去工程は充填までのどの工程で行ってもよいが、プリン体除去効率の観点から、煮沸終了以降の工程において行うことが好ましい。
【0031】
本態様の製造方法においては、酒感を付与する観点から、脂肪族アルコールを添加してもよい。脂肪族アルコールとしては、公知のものであれば特に制限されないが、炭素数4~5の脂肪族アルコールが好ましい。本態様の製造方法において、好ましい脂肪族アルコールとしては、炭素数4のものとして、2-メチル-1-プロパノール、1-ブタノール等が、炭素数5のものとして、3-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の組み合せで用いることができる。炭素数4~5の脂肪族アルコールの含有量は好ましくは0.0002~0.0007質量%であり、より好ましくは0.0003~0.0006質量%である。本明細書において、脂肪族アルコールの含有量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフ法を用いて測定することができる。
【0032】
(酸味料)
本態様の製造方法において使用される酸味料としては、クエン酸、乳酸、リン酸、及びリンゴ酸からなる群より選ばれる1種以上の酸を用いることが好ましい。また、本態様の製造方法においては、前記酸以外の酸として、コハク酸、酒石酸、フマル酸および氷酢酸等も用いることができる。これらは食品に添加することが認められているものであれば制限なく用いることができる。本態様の製造方法においては、まろやかな酸味を適切に付与する観点から乳酸と、やや刺激感のある酸味を適切に付与する観点からリン酸との組み合わせを用いることが好ましい。
【0033】
酸味料の含有量は、本態様の製造方法で得られるビールテイスト飲料中、クエン酸換算で、ビールテイスト感の付与の観点から、200ppm以上が好ましく、550ppm以上がより好ましく、700ppm以上がさらに好ましく、また、酸味の観点から、15000ppm以下が好ましく、5500ppm以下がより好ましく、2000ppm以下がさらに好ましい。従って、本態様において、酸味料の含有量は、クエン酸換算で、200ppm~15000ppm、好ましくは550ppm~5500ppm、より好ましくは700ppm~1500ppmなどの好適範囲が挙げられる。なお、本明細書において、クエン酸換算量とは、クエン酸の酸味度を基準として各酸味料の酸味度から換算される量のことであり、例えば、乳酸100ppmに相当するクエン酸換算量は120ppm、リン酸100ppmに相当するクエン酸換算量は200ppm、リンゴ酸100ppmに相当するクエン酸換算量は125ppmとして換算する。
【0034】
ビールテイスト飲料中の酸味料の含有量については、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により分析して算出されたものを指す。
【0035】
(ホップ)
本態様の製造方法においては、原料の一部にホップを用いることができる。香味がビールに類似する傾向にあることから、原料の一部にホップを用いることが望ましい。ホップを使用する際には、ビール等の製造に使用される通常のペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキスを、所望の香味に応じて適宜選択して使用することができる。また、イソ化ホップ、還元ホップなどのホップ加工品を用いてもよい。本態様の製造方法に使用されるホップには、これらのものが包含される。また、ホップの添加量は特に限定されないが、典型的には、飲料全量に対して0.0001~1質量%程度である。
【0036】
(その他の原料)
本態様の製造方法においては、任意に、その他の原料を用いてもよい。例えば、甘味料(高甘味度甘味料を含む)、苦味料、香料、酵母エキス、カラメル色素などの着色料、大豆サポニンやキラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーンや大豆などの植物タンパク質およびペプチド含有物、乳清などの動物タンパク質、食物繊維やアミノ酸などの調味料、アスコルビン酸等の酸化防止剤を、本態様の効果を妨げない範囲で必要に応じて用いることができる。
【0037】
本態様の製造方法で得られるビールテイスト飲料のpHは、飲料の風味を良好にする観点から、好ましくは3.0~5.0であり、より好ましくは3.0~4.5であり、更に好ましくは3.0~4.0である。
【0038】
(容器詰飲料)
本態様の製造方法で得られるビールテイスト飲料は、容器詰めとすることができる。容器の形態は何ら制限されず、ビン、缶、樽、またはペットボトル等の密封容器に充填して、容器入り飲料とすることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、プリン体除去工程において特に加圧した旨の記載がないものについては、常圧(101.3kPa)にて行った。
【0040】
調製例:麦汁の調製
麦芽とホップ、水、糖類、食物繊維を混合して麦汁を得た。各試験区において、以下の通り発酵と吸着剤の接触を行った後、吸着剤濃度の測定を行った。その後濾過によってビールテイスト飲料を得た後、ビールテイスト飲料中のキサンチンおよびカプロン酸エチルの分析を行った。
【0041】
参考例1
調製例で得られた麦汁に酵母を加えて7日間発酵させた。その後遠心によって酵母を取り除いた後、濾過を行い、ビールテイスト飲料を得た。
【0042】
比較例1
調製例で得られた麦汁に酵母を加えて7日間発酵させた。その後遠心によって酵母を取り除いた後、活性炭を3000ppmとなるように加え、活性炭が均一となるように軽く撹拌を行った。その後、3時間静置して活性炭と接触させた。3時間の接触後、一部サンプルを採取し分散率測定用のサンプルとした。その後濾過を行い、活性炭を除いてビールテイスト飲料を得た。
【0043】
比較例2
活性炭に代えて活性白土を用いた以外は比較例1と同様にしてビールテイスト飲料を得た。
【0044】
実施例1
調製例で得られた麦汁に酵母を加えて7日間発酵させた。その後遠心によって酵母を取り除いた後、活性白土を3000ppmとなるように加えた。その後、大気圧に加えてさらに1.5kPa加圧し、加圧条件のもと、炭酸ガスを容器下部から吹き込み3時間分散させながら接触させた。3時間の接触後、一部サンプルを採取し分散率測定用のサンプルとした。その後濾過を行い、白土を除いてビールテイスト飲料を得た。
【0045】
<分散率の測定>
実施例1、比較例1、2で得られた分散率測定用のサンプルは660nmでの透過度測定に供した。
<白土の分散率の測定>
あらかじめ既知濃度の白土を懸濁したサンプルを用いて、透過度と白土濃度との検量線を作成した。実施例1では分散処理の終了直前に、比較例2では3時間の静置後に液面の高さの半分の位置からサンプリングを行いサンプルとした。透過度測定の際には測定の直前にサンプルを均一に撹拌した。得られた透過度の結果を検量線に当てはめてサンプル中の白土濃度とした。得られた白土濃度と添加した白土濃度から、以下の式に基づいて分散率を算出した。
白土の分散率(%)=100×サンプル中の白土濃度/添加した白土濃度
<活性炭の分散率の測定>
粒状の活性炭をハンマーで粉末状に砕き、それを用いてあらかじめ既知濃度の活性炭を懸濁したサンプルを用いて、透過度と活性炭濃度との検量線を作成した。比較例1では3時間の静置の終了直前に液面の高さの半分の位置からサンプリングを行った。サンプリングした液は遠心した後に上清を取り除き、残った活性炭をハンマーで粉末状に砕いた。それらをもとの上清に戻し入れたものをサンプルとした。透過度測定の際には測定の直前にサンプルを均一に撹拌した。得られた透過度を検量線に当てはめてサンプル中の活性炭濃度とした。得られた活性炭濃度と添加した活性炭濃度から、以下の式に基づいて分散率を算出した。
活性炭の分散率(%)=100×サンプル中の活性炭濃度/添加した活性炭濃度
【0046】
【0047】
表1より、プリン体除去工程を加圧・分散して行った実施例1では、加圧・分散していない比較例1、2に比べてキサンチンが少ないにも関わらず、カプロン酸エチル量が多くビールらしい香味を有するビールテイスト飲料が得られた。また、より高い加圧条件下(常圧+100kPa)で活性白土を分散接触させた場合も同様の効果を確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、キサンチンが少なく且つビールらしい香味を有するビールテイスト飲料を提供することができる。