(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20241030BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/04 Z
(21)【出願番号】P 2020093778
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-04-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】星野 英昭
(72)【発明者】
【氏名】岡部 健次
(72)【発明者】
【氏名】今泉 こずえ
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-278556(JP,A)
【文献】特開2015-115518(JP,A)
【文献】特開2017-011172(JP,A)
【文献】特開2013-058539(JP,A)
【文献】特開2006-278557(JP,A)
【文献】特開2016-122836(JP,A)
【文献】特開2016-115935(JP,A)
【文献】特開平11-026295(JP,A)
【文献】特開2016-213332(JP,A)
【文献】特開2002-033236(JP,A)
【文献】特開2012-044148(JP,A)
【文献】特開2012-044149(JP,A)
【文献】特開2014-045081(JP,A)
【文献】特開平06-124807(JP,A)
【文献】特開2010-062386(JP,A)
【文献】特開2018-085443(JP,A)
【文献】特開平11-176691(JP,A)
【文献】特開平08-055726(JP,A)
【文献】特開2004-071962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面とを有する絶縁性の基体と、
前記基体内に配置されているコイル導体であって、前記上面と対向する第1コイル面と、前記下面と対向する第2コイル面とを有するコイル導体と、
前記基体内において前記下面と前記第2コイル面との中点よりも前記下面に近い位置に配置されている金属材料から構成される補強部と、
少なくとも前記基体の前記下面に接する第1下部を有しており前記コイル導体の一端と電気的に接続された第1外部電極と、
少なくとも前記基体の前記下面に接する第2下部を有しており前記コイル導体の他端と電気的に接続された第2外部電極と、
を備え、
前記基体の下面と前記第2コイル面との間隔は、前記基体の上面と前記第1コイル面との間隔よりも大き
く、
前記基体は、前記コイル導体を覆い前記基体の上面を含む第1領域と、前記補強部と前記基体の下面との間に配置されており前記第1領域よりも高いビッカース硬度を有する第2領域と、を有する、
コイル部品。
【請求項2】
前記第1外部電極及び前記第2外部電極は、前記第1下部の先端が前記第2外部電極の前記第2下部の先端と対向するように配置されており、
前記補強部は、上面視において前記第1下部の先端の少なくとも一部及び前記第2下部の先端の少なくとも一部と重なるように配置される、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1下部の先端及び前記第2下部の先端は一軸方向に沿って延びており、
前記補強部は、上面視において前記一軸方向において前記第1下部の先端及び前記第2下部の先端の50%以上と重なる、
請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記補強部は、前記一軸方向において前記基体から露出しないように前記基体内に配置される、
請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記補強部は、前記第1外部電極及び前記第2外部電極の少なくとも一方に接続されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記補強部は、非磁性の金属材料から構成される、
請求項1から5のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記補強部は、第1補強部材と、前記第1補強部材から離間した位置に配置される第2補強部材と、を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第1外部電極及び前記第2外部電極は、前記第1下部の先端が前記第2外部電極の前記第2下部の先端と対向するように配置されており、
前記第1補強部材は、前記第1下部の先端の少なくとも一部と重なり、
前記第2補強部材は、前記第2下部の先端の少なくとも一部と重なる、
請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第2補強部材は、前記第1補強部材よりも前記下面に近い位置に配置される、
請求項7又は8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第1補強部材は、前記第1外部電極に接続される、
請求項7から9のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第2補強部材は、前記第2外部電極に接続される、
請求項7から10のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第1外部電極の前記第1下部及び前記第2外部電極の前記第2下部は、前記第2領域に接している、
請求項
1から11のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記補強部は、前記第2領域の上面に接している、
請求項
1から12のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項14】
前記コイル導体は、前記基体の前記下面と垂直な方向に延びるコイル軸の周りに巻回される周回部を有する、
請求項1から
13のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項15】
前記コイル導体は、前記基体の前記下面と平行な方向に延びるコイル軸の周りに巻回される周回部を有する、
請求項1から
14のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項16】
請求項1から
15のいずれか1項に記載のコイル部品を備える回路基板。
【請求項17】
請求項
16に記載の回路基板を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
小型化されたコイル部品等の電子部品においては、その機械的強度の確保が課題となる。特許文献1には、基体中に金属材料から成る補強部を有するセラミック電子部品が記載されている。特許文献1においては、当該補強部によりセミラック電子部品の機械的強度の改善を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の補強部を有する電子部品においては、補強部が電子部品の電気的特性又は磁気的特性に与える影響が考慮されていない。コイル部品の基体中に金属材料から成る補強部が配置されると、コイル導体を流れる電流によって発生した磁束が補強部を通過することにより補強部において渦電流が生じ、その結果、渦電流損失が発生するという問題がある。
【0005】
本発明の目的の一つは、従来のコイル部品における問題を解決又は緩和することである。本発明のより具体的な目的の一つは、補強部を有するコイル部品において渦電流の発生を抑制することである。本発明のこれ以外の目的は、本明細書全体の記載を通じて明らかにされる。本明細書に開示される発明は、前記の課題に代えて又は前記の課題に加えて、本明細書全体の記載から把握される課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一又は複数の実施形態によるコイル部品は、下面を有する絶縁性の基体と、前記基体内に配置されており前記下面と対向するコイル面を有するコイル導体と、前記基体内において前記下面と前記コイル面との中点よりも前記下面に近い位置に配置されている金属材料から構成される補強部と、を備える。本発明の一又は複数の実施形態によるコイル部品は、少なくとも前記基体の前記下面に接する第1下部を有しており前記コイル導体の一端と電気的に接続された第1外部電極と、少なくとも前記基体の前記下面に接する第2下部を有しており前記コイル導体の他端と電気的に接続された第2外部電極と、を備えてもよい。
【0007】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記第1外部電極及び前記第2外部電極は、前記第1下部の先端が前記第2外部電極の前記第2下部の先端と対向するように配置されている。本発明の一又は複数の実施形態において、前記補強部は、上面視において前記第1下部の先端の少なくとも一部及び前記第2下部の先端の少なくとも一部と重なるように配置される。
【0008】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記第1下部の先端及び前記第2下部の先端は一軸方向に沿って延びており、前記補強部は、上面視において前記一軸方向において前記第1下部の先端及び前記第2下部の先端の50%以上と重なる。
【0009】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記補強部は、前記一軸方向において前記基体から露出しないように前記基体内に配置される。
【0010】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記補強部は、前記第1外部電極及び前記第2外部電極の少なくとも一方に接続されている。
【0011】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記補強部は、非磁性の金属材料から構成される。
【0012】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記補強部は、第1補強部材と、前記第1補強部材から離間した位置に配置される第2補強部材と、を有する。
【0013】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記第1外部電極及び前記第2外部電極は、前記第1下部の先端が前記第2外部電極の前記第2下部の先端と対向するように配置されている。本発明の一又は複数の実施形態において、前記第1補強部材は、前記第1下部の先端の少なくとも一部と重なり、前記第2補強部材は、前記第2下部の先端の少なくとも一部を覆う。
【0014】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記第2補強部材は、前記第1補強部材よりも前記下面に近い位置に配置される。
【0015】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記第1補強部材は、前記第1外部電極に接続される。
【0016】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記第2補強部材は、前記第2外部電極に接続される。
【0017】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記基体は、前記コイル導体を覆う第1領域と、前記補強部と前記下面との間に配置されており前記第1領域よりも高いビッカース硬度を有する第2領域と、を有する。
【0018】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記第1外部電極の前記第1下部及び前記第2外部電極の前記第2下部は、前記第2領域に接している。
【0019】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記補強部は、前記第2領域の上面に接している。
【0020】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記基体は、前記コイル導体を覆う第3領域と、少なくとも前記補強部と前記第1外部電極又は前記第2外部電極との間に配置されており前記第3領域よりも高い誘電率を有する第4領域と、を有する。
【0021】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記第4領域は、さらに前記補強部と前記コイル導体との間に配置されている。
【0022】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記コイル導体は、前記基体の前記下面と垂直な方向に延びるコイル軸の周りに巻回される周回部を有する。
【0023】
本発明の一又は複数の実施形態において、前記コイル導体は、前記基体の前記下面と平行な方向に延びるコイル軸の周りに巻回される周回部を有する。
【0024】
本発明の一又は複数の実施形態による回路基板は、上記のコイル部品の少なくとも一つを備える。
【0025】
本発明の一又は複数の実施形態による電子機器は、上記の回路基板を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、補強部を有するコイル部品において渦電流損失の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態によるコイル部品の斜視図である。
【
図2a】
図1のI-I線に沿ったコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【
図2b】
図1のコイル部品を上方から見た透過図である。
【
図3a】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【
図3b】
図3aのコイル部品を上方から見た透過図である。
【
図4a】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【
図4b】
図4aのコイル部品を上方から見た透過図である。
【
図5a】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【
図5b】
図5aのコイル部品を上方から見た透過図である。
【
図6a】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【
図6b】
図6aのコイル部品を上方から見た透過図である。
【
図7a】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【
図7b】
図7aのコイル部品を上方から見た透過図である。
【
図8a】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【
図8b】
図8aのコイル部品を上方から見た透過図である。
【
図9a】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【
図9b】
図9aのコイル部品を上方から見た透過図である。
【
図10a】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【
図11a】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【
図12a】本発明の別の実施形態によるコイル部品の断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0029】
まず、
図1から
図2bを参照して、本発明の一実施形態によるコイル部品1について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるコイル部品1の斜視図であり、
図2aは、
図1のI-I線に沿ったコイル部品1の断面を模式的に示す図であり、
図2bは、コイル部品1を上方から見た透過図である。
【0030】
コイル部品1は、例えば、インダクタ、トランス、フィルタ、リアクトル又はこれら以外の様々なコイル部品であってもよい。コイル部品1は、カップルドインダクタ、チョークコイル、又はこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品であってもよい。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものには限定されない。
図1から
図2bには、コイル部品1の例として、積層インダクタが示されている。図示されている積層インダクタは本発明が適用可能なコイル部品1の例であり、本発明は積層インダクタ以外の様々な種類のコイル部品に適用され得る。例えば、コイル部品1は、平面コイルを有するコイル部品又は巻線型のコイル部品であってもよい。
【0031】
図示の実施形態におけるコイル部品1は、絶縁性の基体10と、この基体10内に設けられたコイル導体25と、コイル導体25の一端と電気的に接続された外部電極21と、コイル導体25の他端と電気的に接続された外部電極22と、補強部30と、を備える。
【0032】
コイル部品1は、実装基板2aに実装される。このコイル部品1及び実装基板2aは、回路基板2の一部である。つまり、回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備える。実装基板2aには、2つのランド部3が設けられている。コイル部品1は、外部電極21、22のそれぞれと実装基板2aの対応するランド部3とを接合することで実装基板2aに実装されている。回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。
【0033】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向及び「厚さ」方向はそれぞれ、
図1の「L軸」方向、「W軸」方向及び「T軸」方向とする。
【0034】
基体10は、絶縁材料で構成され、概ね直方体形状を有する。後述するように、絶縁材料は、磁性材料でもよいし、非磁性材料でもよい。本発明の一の実施形態の基体10は、長さ寸法L1(L軸方向の寸法)が0.4mm~4.5mm、幅寸法W1(W軸方向の寸法)が0.2mm~3.2mm、厚さ寸法T1(T軸方向の寸法)が0.1mm~5.0mmとなるように形成されている。基体10の寸法は、本明細書で具体的に説明される寸法には限定されない。本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。
【0035】
基体10は、第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e及び第2の側面10fを有する。基体10は、これらの6つの面によってその外面が画定されている。第1の主面10aと第2の主面10bとはそれぞれ厚さ方向両端の面を成し、第1の端面10cと第2の端面10dとはそれぞれ長さ方向両端の面を成し、第1の側面10eと第2の側面10fとはそれぞれ幅方向両端の面を成している。第1の主面10aと第2の主面10bとは互いに平行であってもよい。第1の端面10cと第2の端面10dとは互いに平行であってもよい。第1の側面10eと第2の側面10fとは互いに平行であってもよい。
【0036】
図1に示されるように、第1の主面10aは基体10の上側にあるため、第1の主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10bを「下面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2の主面10bが基板2と対向するように配置されるので、第2の主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。コイル部品1の上下方向に言及する際には、
図1の上下方向を基準とすることがある。すなわち、コイル部品1の上下方向は、T軸に沿う方向においてT軸の正方向を「上」、T軸の負方向を「下」と定める。
【0037】
本発明の一又は複数の実施形態において、外部電極21及び外部電極22は、基体10の表面に設けられている。外部電極21は、基体10の第1の端面10cに沿って延びる板状のプレート部21aと、プレート部21aの上端から上面10aに沿って延びる上部21bと、プレート部21aの下端から下面10bに沿って延びる下部21cと、を有する。外部電極22は、基体10の第2の端面10dに沿って延びる板状のプレート部22aと、プレート部22aの上端から上面10aに沿って延びる上部22bと、プレート部22aの下端から下面10bに沿って延びる下部22cと、を有する。図示の実施形態では、外部電極21及び外部電極22はそれぞれ、第1の側面10e及び第2の側面10fにそれぞれ沿って延びる側部も有している。外部電極21と外部電極22とは、長さ方向において互いに離間して配置されている。外部電極21及び外部電極22は、外部電極21の下部21cの先端21c1と外部電極22の下部22cの先端22c1とがL軸方向において対向するように配置される。図示の実施形態において、先端21c1及び先端22c1は、W軸方向に沿って延びている。外部電極21及び外部電極22の形状及び配置は、図示された具体的な態様には限定されない。例えば、外部電極21は、プレート部21a、上部21b、及び側部のいずれか一つ又は全てを有していなくともよい。同様に、外部電極22は、プレート部22a、上部22b、及び側部のいずれか一つ又は全てを有していなくともよい。
【0038】
一又は複数の実施形態において、基体10は、絶縁性に優れた絶縁材料から形成される。基体10の絶縁材料として、各種の磁性材料又は非磁性材料を用いることができる。基体10用の磁性材料として、例えば、各種フェライト材料、軟磁性金属材料、軟磁性合金材料、又はこれら以外の公知の磁性材料を用いることができる。基体10用の非磁性材料として、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、又はこれら以外の公知の非磁性材料を用いることができる。基体10は、樹脂を含んでもよい。
【0039】
一又は複数の実施形態において、コイル導体25は、金属材料から形成され、基体10内に設けられている。コイル導体25用の金属材料として、例えば、Ag、Pd、Cu、Al、又はこれらの合金が用いられ得る。例えば、コイル導体25は、厚さ方向(T軸方向)に沿って延びるコイル軸Axの周りに螺旋状に巻回されている周回部25aと、周回部25aの両端をそれぞれ外部電極21、22に接続するために当該両端からそれぞれ引き出されている引出導体部25bとを有する。図示の実施形態において、コイル軸Axは、上面10a及び下面10bと交わるが、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fとは交わっていない。図示の実施形態において、周回部25aは、複数の導体パターンC11~C15を有している。導体パターンC11~C15は、コイル軸Axに直交する平面方向に沿って延びると共に、コイル軸Axの方向において互いに離間している。導体パターンC11~C15の各々は、不図示のビアを介して隣接する導体パターンと電気的に接続されている。このように、コイル導体25の周回部25aは、導体パターンC11~C15及びビアによって構成されている。
【0040】
一又は複数の実施形態において、コイル導体25は、第1コイル面25Aと第2コイル面25Bとを有している。第1コイル面25Aは、基体10の上面10aと対向しており、第2コイル面25Bは、基体10の下面10bと対向している。第1コイル面25Aを上面といい、第2コイル面25Bを下面ということもある。一又は複数の実施形態において、コイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの間隔T3は、コイル導体25の第1コイル面25Aと基体10の上面10aとの間隔T2より大きい。これにより、基体10内に、以下で説明する補強部30の設置スペースが確保される。
【0041】
一又は複数の実施形態において、補強部30は、基体10内においてコイル導体25と基体10の下面10bとの間に配置される。一又は複数の実施形態において、補強部30は、基体10の下面10bと平行に延びる板状の形状を有する。補強部30は、コイル導体25の第2コイル面25Bと対向する上面30Aを有している。図示の実施形態において、補強部30は、上面視(
図2bの視点)で長さ方向の寸法がL2で幅方向の寸法がW2の長方形で画定される領域内に設けられている。L2はL1よりも小さく、W2はW1より小さいため、補強部30は、基体10から外部には露出しない。本発明の一又は複数の実施形態において、補強部30は、第1の端面10cから露出して外部電極21に接続されてもよい。本発明の一又は複数の実施形態において、補強部30は、第2の端面10dから露出して外部電極22に接続されてもよい。
【0042】
本発明の一又は複数の実施形態において、補強部30は、上面視(
図2bの視点)において、外部電極21の下部21cの先端21c1の少なくとも一部及び外部電極22の下部22cの先端22c1の少なくとも一部と重なるように構成及び配置される。コイル部品1を実装基板2aに実装する際には、基体の下面10bのうち外部電極21の先端21c1及び外部電極22の先端22c1から基体10に対して大きな応力が作用する。このため、基体10のうち外部電極21の先端21c1及び外部電極22の先端22c1に近い位置にクラックが発生しやすい。本発明の一又は複数の実施形態によれば、補強部30が、上面視において外部電極21の第1下部21cの先端21c1の少なくとも一部及び外部電極22の第2下部22cの先端22c1の少なくとも一部と重なっているので、基体10において応力が集中する部位を補強することができる。また、仮に基体10にクラックが発生しても、補強部30によりクラックの拡大を防ぐことができる。例えば、基体10のうち外部電極21の先端21c1及び外部電極22の先端22c1に近い位置にクラックが発生しても、補強部30によって、補強部30よりも上方のコイル導体25が配置されている領域にクラックが拡がることを防止できる。
【0043】
本発明の一又は複数の実施形態において、補強部30は、上面視したときにW軸方向において先端21c1の少なくとも50%以上と重なっている。本発明の一又は複数の実施形態において、補強部30は、上面視したときにW軸方向において先端22c1の少なくとも50%以上と重なっている。本発明の一又は複数の実施形態において、補強部30は、上面視したときにW軸方向において先端22c1の90%以下の部分と重なっている。これにより、補強部30は、W軸方向において、基体10から外部に露出しない。
【0044】
本発明の一又は複数の実施形態において、補強部30は、T軸方向において、コイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの中点よりも基体10の下面10bに近い位置に配置される。例えば、補強部30は、T軸方向において、その上面30Aがコイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの中点よりも基体10の下面10bに近い位置にあるように配置される。図示の実施形態において、コイル導体25の第2コイル面25Bと補強部30の上面30Aとの間隔T4は、コイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの間隔T3の1/2よりも大きい。補強部30は、基体10内において、コイル導体25から電気的に絶縁されている。
【0045】
本発明の一又は複数の実施形態において、補強部30は、金属材料から形成される。補強部30用の金属材料として、Cu、Ag、Niなどの金属、これらの金属の少なくとも一種を含む合金を用いることができる。補強部30用の材料として、Cu、Ag、又はこれら以外の非磁性(反磁性)の金属材料を用いることができる。補強部30の材料として非磁性の金属材料を用いることにより、コイル導体25から発生した磁束による補強部30における渦電流の発生を抑制することができる。また、補強部30の金属材料の割合は、補強部30全体の重量に対して90vol%以上である。
【0046】
続いて、一又は複数の実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。本発明の一又は複数の実施形態において、コイル部品1の基体10は、絶縁シートを積層するシート積層法により作製される。シート積層法によりコイル部品1を作製する場合には、まず絶縁シートを準備する。絶縁シートは、磁性材料又は非磁性材料から成る材料粒子と樹脂とを混練して得られたスラリーから、ドクターブレード式シート成形機等の各種シート成形機を用いて作成される。材料粒子は、磁性材料の粒子、非磁性材料の粒子、又はこれらの混合粒子であってもよい。磁性材料の粒子として、例えば、フェライト材料の粒子、軟磁性金属又は軟磁性合金の粒子、又はこれら以外の磁性材料の粒子が用いられ得る。非磁性材料の粒子として、ガラス粒子、セラミック粒子、アルミナ粒子、又はこれら以外の非磁性材料の粒子が用いられ得る。材料粒子の平均粒径は、0.1~30μmとされてもよい。材料粒子と混練される樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性に優れた樹脂が用いられ得る。
【0047】
絶縁シートは所定の形状に切断され、所定の位置に厚さ方向に貫通する貫通孔が形成される。次に、所定形状に切断された絶縁シートに、スクリーン印刷等の公知の手法で導体ペーストを塗布することにより、焼成後にそれぞれが導体パターンC11となる複数の未焼成導体パターンが形成される。別の絶縁シートにも同様にして導体ペーストを塗布することにより、それぞれ焼成後に導体パターンC12~C15となる複数の未焼成導体パターンが形成される。未焼成導体パターンの形成時に、導体ペーストが絶縁シートの貫通孔内に埋め込まれ、未焼成のビア(未焼成ビア)となる。導体パターンC11~C15の材料となる導体ペーストは、例えば、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金及び樹脂を混練することで得られる。また、さらに別の絶縁シートに、スクリーン印刷等により導体ペーストを塗布することにより、焼成後にそれぞれ補強部30となる複数の未焼成導体プレートが形成される。補強部30の材料となる導体ペーストは、例えば、Cu、Ag、Ni又はこれらの合金及び樹脂を混練することで得られる。
【0048】
以上のようにして、導体パターンC11~C15に対応する未焼成導体パターン、未焼成ビア、未焼成導体プレートが形成された絶縁シート、及び導体が形成されていない絶縁シートを積層することでマザー積層体が得られる。導体が形成されていない絶縁シートは、マザー積層体の上端及び下端に配置される。このマザー積層体の上端及び下端に配置された絶縁シートは、焼成後に、コイル導体25の第1コイル面25Aと上面10aとの間にある上部カバー層(参照符号省略)及びコイル導体25の第2コイル面25Aと下面10bとの間にある下部カバー層(参照符号省略)となる。また、導体ペーストが塗布されていない一又は複数の絶縁シートは、未焼成導体プレートが形成された絶縁シートと、導体パターンC11となる未焼成導体パターンが形成された絶縁シートとの間に配置されてもよい。この導体ペーストが塗布されていない一又は複数の絶縁シートにより、補強部30とコイル導体25との間隔を確保することができる。
【0049】
次に、ダイシング機やレーザ加工機などの切断機を用いてマザー積層体を個片化することでチップ積層体が得られる。
【0050】
次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体に加熱処理を施す。チップ積層体への加熱処理は、例えば400℃~900℃で20分間~120分間行われる。この加熱処理により、絶縁シート及び導体ペーストが焼成されて、コイル導体25及び補強部30を内部に含む基体10が得られる。
【0051】
次に、加熱処理されたチップ積層体(すなわち、基体10)の表面に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成する。以上の工程により、コイル部品1が得られる。
【0052】
上記の製造方法においては、その工程の一部を省略すること、明示的に説明されていない工程を追加すること、及び/又は工程の順序を入れ替えることが可能であり、このような省略、追加、順序の変更がなされた処理手順も本発明の趣旨を逸脱しない限り本発明の範囲に含まれる。
【0053】
コイル部品1の製造方法は、上述したものには限られない。コイル部品1は、シート積層法以外の積層法(例えば、印刷積層法)、薄膜プロセス、圧縮成型プロセス、又は前記以外の公知の手法により作製されてもよい。薄膜プロセスによりコイル部品1を製造する場合には、シート積層法における加熱温度と比べて低い温度で加熱が行われる。具体的には、薄膜プロセスにおいては、金属磁性粒子等の磁性材料及び/又はガラス等の非磁性材料と樹脂とを混練して得られる混合樹脂材料の樹脂を硬化させることで、基体10が作製される。
【0054】
続いて、
図3a及び
図3bを参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図3a及び
図3bに示されているコイル部品1は、補強部30に代えて補強部31を備えている点で
図2a及び
図2bに示されているコイル部品1と異なっている。
図3a及び
図3bに示されているコイル部品1において、
図2a及び
図2bに示されているコイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0055】
補強部31は、第1補強部材31aと、この第1補強部材31aから離間して配置されている第2補強部材31bと、を有する。第1補強部材31a及び第2補強部材31bは、L軸方向において互いから離間した位置に配置されている。第1補強部材31aと第2補強部材31bとの間には、基体10の一部が介在している。このため、第1補強部材31aと第2補強部材31bとは電気的に絶縁されている。
【0056】
本発明の一又は複数の実施形態において、第1補強部材31aは、上面視(
図3bの視点)において、外部電極21の下部21cの先端21c1の少なくとも一部を覆うように構成及び配置される。本発明の一又は複数の実施形態において、第2補強部材31bは、上面視において、外部電極22の下部22cの先端22c1の少なくとも一部と重なるように構成及び配置される。
【0057】
図示の実施形態において、第1補強部材31a及び第2補強部材31bはいずれも、T軸方向において、コイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの中点よりも基体10の下面10bに近い位置に配置される。本発明の一又は複数の実施形態において、補強部31は、その上面31Aがコイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの中点よりも基体10の下面10bに近い位置にあるように配置される。補強部31の上面31Aは、第1補強部材31aの上面及び第2補強部材31bの上面のうち、コイル導体25の第2コイル面25Bに近い方を意味してもよい。図示の実施形態において、第1補強部材31a及び第2補強部材31bは、T軸方向において同じ位置に配置されている。
【0058】
続いて、
図4a及び
図4bを参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図4a及び
図4bに示されているコイル部品1は、補強部30に代えて補強部32を備えている点で
図2a及び
図2bに示されているコイル部品1と異なっている。
図4a及び
図4bに示されているコイル部品1において、
図2a及び
図2bに示されているコイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0059】
補強部32は、第1補強部材32aと、この第1補強部材32aから離間して配置されている第2補強部材32bと、を有する。第1補強部材32a及び第2補強部材32bは、W軸方向において互いから離間した位置に配置されている。第1補強部材32aと第2補強部材32bとの間には、基体10の一部が介在している。このため、第1補強部材32aと第2補強部材32bとは電気的に絶縁されている。
【0060】
本発明の一又は複数の実施形態において、第1補強部材32aは、上面視(
図4bの視点)において、外部電極21の下部21cの先端21c1の少なくとも一部及び外部電極22の下部22cの先端22c1の少なくとも一部と重なるように構成及び配置される。本発明の一又は複数の実施形態において、第2補強部材32bは、上面視において、外部電極21の下部21cの先端21c1の少なくとも一部及び外部電極22の下部22cの先端22c1の少なくとも一部と重なるように構成及び配置される。本発明の一又は複数の実施形態において、第1補強部材32a及び第2補強部材32bの少なくとも一方は、第1の端面10cから露出して外部電極21に接続されてもよい。本発明の一又は複数の実施形態において、第1補強部材32a及び第2補強部材32bの少なくとも一方は、第2の端面10dから露出して外部電極22に接続されてもよい。
【0061】
図示の実施形態において、第1補強部材32a及び第2補強部材32bはいずれも、T軸方向において、コイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの中点よりも基体10の下面10bに近い位置に配置される。本発明の一又は複数の実施形態において、補強部32は、その上面32Aがコイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの中点よりも基体10の下面10bに近い位置にあるように配置される。
【0062】
続いて、
図5a及び
図5bを参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図5a及び
図5bに示されているコイル部品1は、補強部30に代えて補強部33を備えている点で
図2a及び
図2bに示されているコイル部品1と異なっている。
図5a及び
図5bに示されているコイル部品1において、
図2a及び
図2bに示されているコイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0063】
補強部33は、第1補強部材33aと、この第1補強部材33aから離間して配置されている第2補強部材33bと、を有する。第1補強部材33a及び第2補強部材33bは、T軸方向において互いから離間した位置に配置されている。第1補強部材33aは、第2補強部材33bよりも上方(T軸方向における正方向)に配置されている。第1補強部材33aと第2補強部材33bとの間には、基体10の一部が介在している。このため、第1補強部材33aと第2補強部材33bとは電気的に絶縁されている。
【0064】
本発明の一又は複数の実施形態において、第1補強部材33a及び第2補強部材33bはいずれも、上面視(
図5bの視点)において、外部電極21の下部21cの先端21c1の少なくとも一部及び外部電極22の下部22cの先端22c1の少なくとも一部を覆うように構成及び配置される。本発明の一又は複数の実施形態において、第1補強部材33a及び第2補強部材33bの少なくとも一方は、第1の端面10cから露出して外部電極21に接続されてもよい。本発明の一又は複数の実施形態において、第1補強部材33a及び第2補強部材33bの少なくとも一方は、第2の端面10dから露出して外部電極22に接続されてもよい。
【0065】
図示の実施形態において、第1補強部材33a及び第2補強部材33bはいずれも、T軸方向において、コイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの中点よりも基体10の下面10bに近い位置に配置される。本発明の一又は複数の実施形態において、補強部33は、その上面33Aがコイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの中点よりも基体10の下面10bに近い位置にあるように配置される。補強部33の上面33Aは、第1補強部材33a及び第2補強部材33bのうち相対的に上方に配置されている第1補強部材33aの上面を意味する。
【0066】
続いて、
図6a及び
図6bを参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図6a及び
図6bに示されているコイル部品1は、補強部31に代えて補強部34を備えている点で
図3a及び
図3bに示されているコイル部品1と異なっている。
図6a及び
図6bに示されているコイル部品1において、
図3a及び
図3bに示されているコイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0067】
補強部34は、第1補強部材34aと、この第1補強部材34aから離間して配置されている第2補強部材34bと、を有する。本発明の一又は複数の実施形態において、第1補強部材34aは、外部電極21と接続されている。本発明の一又は複数の実施形態において、第2補強部材34bは、外部電極22と接続されている。図示の実施形態においては、第1補強部材34a及び第2補強部材34bがいずれも外部電極と接続されているが、第1補強部材34a及び第2補強部材34bの一方のみが外部電極と接続されていてもよい。すなわち、第1補強部材34aが外部電極21と接続される一方で、第2補強部材34bは外部電極22と接続されていなくともよい。また、第2補強部材34bが外部電極22と接続される一方で、第1補強部材34aは外部電極21と接続されていなくともよい。
【0068】
続いて、
図7a及び
図7bを参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図7a及び
図7bに示されているコイル部品1は、基体10が比較的低硬度の第1領域10Aと比較的高硬度の第2領域10Bとに区画される点で、
図3a及び
図3bに示されているコイル部品1と異なっている。
図7a及び
図7bに示されているコイル部品1において、
図3a及び
図3bに示されているコイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0069】
本発明の一又は複数の実施形態において、第2領域10Bは、第1領域10Aよりも高いビッカース硬度を有する。第2領域10Bのビッカース硬度を第1領域10Aのビッカース硬度よりも高くするため、第1領域10A及び第2領域10Bを例えばシリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)を含む非磁性材料から構成し、第2領域10BにおけるAl2O3に対するSiO2の含有比率を第1領域10AにおけるAl2O3に対するSiO2の含有比率よりも高くする。
【0070】
本発明の一又は複数の実施形態において、第2領域10Bは、第1領域10Aよりも高い機械的強度を有する。第2領域10Bの機械的強度を第1領域10Aの機械的強度よりも高くするため、第2領域10Bを例えば平均粒径の小さな金属磁性粒子から構成し、第1領域10Aを例えば平均粒径の大きな金属磁性粒子から構成する。機械的強度は、例えば、曲げ強度を意味する。
【0071】
本発明の一又は複数の実施形態において、第1領域10Aは、コイル導体25及び補強部31を覆う。本発明の一又は複数の実施形態において、第2領域10Bは、補強部31と基体10の下面10bとの間に配置される。図示の実施形態においては、第2領域10Bは、基体10の下端の領域である。つまり、第2領域10Bの下面によって、基体10の下面10bが画定されている。図示の実施形態において、第1領域10Aは、第2領域10Bに接している。図示の実施形態において、第1領域10Aは、第2領域10Bの上方に設けられている。基体10は、第1領域10A及び第2領域10B以外の領域を含んでいてもよい。
【0072】
本発明の一又は複数の実施形態において、第1領域10Aは、非磁性材料から構成されてもよい。第1領域10Aが非磁性材料から構成される場合、その比誘電率は8以下であってもよい。第1領域10Aは、磁性材料から構成されてもよい。第1領域10Aが磁性材料から構成される場合、その比透磁率は40以上であってもよい。
【0073】
本発明の一又は複数の実施形態において、第1領域10Aが非磁性材料から構成される場合、第2領域10Bも非磁性材料から構成される。一又は複数の実施形態において、第2領域10Bの比誘電率は、第1領域10Aの比誘電率よりも高い。言い換えると、第1領域10Aの比誘電率は、第2領域10Bの比誘電率よりも低い。これにより、コイル導体25の寄生容量を低減させることができる。本発明の一又は複数の実施形態において、第1領域10Aが磁性材料から構成される場合、第2領域10Bは、磁性材料又は非磁性材料から構成される。一又は複数の実施形態において、第2領域10Bの比透磁率は、第1領域10Aの比透磁率より低い。言い換えると、第1領域10Aの比透磁率は、第2領域10Bの比透磁率よりも高い。これにより、コイル部品1のインダクタンスを高くすることができ、渦電流損失を抑制することができる。
【0074】
上記のとおり、コイル部品1を実装基板2aに実装する際には、基体の下面10bのうち外部電極21の先端21c1及び外部電極22の先端22c1から基体10に対して大きな応力が作用する。図示の実施形態において、外部電極21及び外部電極22は、第1領域10Aではなく第2領域10Bに接している。これにより、コイル部品1の実装時に外部電極22から基体10に応力が作用した場合に、基体10の下面10bのうち外部電極21及び外部電極22と接触する位置に凹みが発生することを抑制でき、その結果、基体10へのクラックの発生を抑制することができる。
【0075】
図8a及び
図8bに示されるコイル部品1も、上記のシート積層法により作製され得る。上述した
図2a及び
図2bのコイル部品1の製造方法とは、第1領域10Aとなる絶縁シート及び第2領域10Bとなる絶縁シートが互いに異なる材料から作製される点で異なる。
【0076】
続いて、
図8a及び
図8bを参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図8a及び
図8bに示されているコイル部品1は、第2領域10Bが補強部31の下面に接するように配置されている点で
図7a及び
図7bに示されているコイル部品1と異なっている。
図8a及び
図8bに示されているコイル部品1において、
図3a及び
図3bに示されているコイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0077】
図8aに示されている実施形態において、第2領域10Bは、補強部31の下面から基体10の下面10bまで延在する。図示の実施形態において、補強部31は、第1領域10Aと第2領域10Bとの境界に配置されている。図示の実施形態において。補強部31は、第1領域10A及び第2領域10Bの両方に接するように配置されている。
図8a及び
図8bに示されているコイル部品1の作製時には、第1領域10Aとなる絶縁シート及び第2領域10Bとなる絶縁シートが積層されたチップ積層体が加熱される。第1領域10Aとなる絶縁シートと第2領域10Bとなる絶縁シートとは互いに異なる材料から構成されているため、異なる熱収縮率で収縮する。他方、金属材料から成る補強部31は、高温となってもほとんど収縮しない。このため、補強部31によって第1領域10Aと第2領域10Bとの境界付近で、第1領域10Aとなる絶縁シート及び第2領域10Bとなる絶縁シートの両方の収縮を抑制することができる。これにより、コイル部品1の製造工程において、第1領域10Aと第2領域10Bとの間でのデラミネーションを防止又は抑制できる。
【0078】
続いて、
図9a及び
図9bを参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図9a及び
図9bに示されているコイル部品1は、基体10が、比較的低い比誘電率を有する第3領域10Cと、比較的高い比誘電率を有する第2領域10Dとに区画される点で
図2a及び
図2bに示されているコイル部品1と異なっている。
図9a及び
図9bに示されているコイル部品1において、
図2a及び
図2bに示されているコイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0079】
本発明の一又は複数の実施形態において、第3領域10Aは、コイル導体25を覆うように構成される。本発明の一又は複数の実施形態において、第4領域10Dは、補強部30を覆うように構成される。補強部30の周囲にある第4領域10Dは、第3領域10Cに比べてコイル部品1の電気的特性に与える影響が小さいので、第3領域10Cの比誘電率よりも高い比誘電率を有していてもよい。補強部30の周囲にある第4領域10Dは、第3領域10Cに比べてコイル部品1の電気的特性に与える影響が小さいので、第3領域10Cの比透磁率よりも低い比透磁率を有していてもよい。
【0080】
第4領域10Dの配置は、図示のものには限定されない。例えば、第4領域10Dは、補強部30と外部電極21又は外部電極22との間に設けられ、補強部30とコイル導体25との間には設けられなくともよい。
【0081】
基体10のうち第4領域10D以外の領域の全部が第3領域10Cであってもよい。基体10は、第3領域10C及び第4領域10D以外の領域を含んでいてもよい。
【0082】
本発明の一又は複数の実施形態において、第4領域10Dは、第3領域10Cよりも高い比誘電率を有する。第4領域10Dの比誘電率を第3領域10Cの比誘電率よりも高くするため、第3領域10B及び第4領域10Dを例えばシリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)を含む非磁性材料から構成し、第4領域10DにおけるAl2O3に対するSiO2の含有比率を第1領域10AにおけるAl2O3に対するSiO2の含有比率よりも高くする。
【0083】
本発明の一又は複数の実施形態において、第4領域10Dは、第3領域10Cよりも高い機械的強度を有する。第4領域10Dの機械的強度を第3領域10Cの機械的強度よりも高くするため、第4領域10Dを例えば平均粒径の小さな金属磁性粒子から構成し、第3領域10Cを例えば平均粒径の大きな金属磁性粒子から構成する。機械的強度は、例えば、曲げ強度を意味する。
【0084】
続いて、
図10a及び
図10bを参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図10a及び
図10bに示されているコイル部品1は、コイル導体25に代えてコイル導体25を備える点で
図6a及び
図6bに示されているコイル部品1と異なっている。
図10a及び
図10bに示されているコイル部品1において、
図6a及び
図6bに示されているコイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0085】
コイル部品1は、いわゆる横置き型のコイル部品である。つまり、
図10a及び
図10bに示されているように、コイル導体25は、基体10の下面10bと平行に延びるコイル軸Axの周りに巻回されている。コイル導体25は、基体10の上面10aと対向する上面25C及び基体10の下面10bと対向する下面25Dとを有している。コイル軸Axは、基体10の上面10aと下面10bとの中点よりも上方(T軸方向の正方向側)に配置されていてもよい。コイル導体25の下面25Dと基体10の下面10bとの間の間隔は、コイル導体25の上面25Aと基体10の上面10aとの間の間隔より大きくともよい。これにより、基体10内に補強部34の設置スペースが確保される。
【0086】
本発明の一又は複数の実施形態において、補強部34は、T軸方向において、コイル導体25の下面25Dと基体10の下面10bとの中点よりも基体10の下面10bに近い位置に配置される。例えば、補強部34は、その上面34Aがコイル導体25の下面25Dと基体10の下面10bとの中点よりも基体10の下面10bに近い位置にあるように配置される。図示の実施形態において、コイル導体25の下面25Dと補強部34の上面34Aとの間隔T12は、コイル導体25の第2コイル面25Bと基体10の下面10bとの間隔T11の1/2よりも大きい。補強部34は、基体10内において、コイル導体25から電気的に絶縁されている。
【0087】
図10a及び
図10bに示されているコイル部品1もシート積層法及びそれ以外の公知のプロセスにより製造され得る。
図10a及び
図10bに示されているコイル部品1は、絶縁シートをW軸方向に積層することで作製される。
図10a及び
図10bに示されているコイル部品1の製造方法は、
図2a及び
図2bに示されているコイル部品1の製造方法と絶縁シートの積層方向以外は実質的に同じとすることができる。
【0088】
続いて、
図11a及び
図11bを参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図11a及び
図11bに示されているコイル部品1は、補強部34に代えて補強部35を備える点で
図10a及び
図10bに示されているコイル部品1と異なっている。
図11a及び
図11bに示されているコイル部品1において、
図10a及び
図10bに示されているコイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0089】
補強部35は、複数の第1補強部材35a及び複数の第2補強部材35bを有する。複数の第1補強部材35a及び複数の第2補強部材35bの各々は、基体10内において、コイル導体25と基体10の下面10bとの間に配置される。一又は複数の実施形態において、複数の第1補強部材35a及び複数の第2補強部材35bの各々は、基体10の下面10bと平行に延びる細い板状の形状を有する。複数の第1補強部材35aの各々は、他の第1補強部材35aから電気的に絶縁されており、複数の第2補強部材35bの各々は、他の第2補強部材35bから電気的に絶縁されている。また、複数の第1補強部材35aの各々は、第2補強部材35bの各々から電気的に絶縁されている。図示の実施形態において、複数の第1補強部材35aの各々は、外部電極21に接続されており、複数の第2補強部材35bの各々は、外部電極22に接続されている。
【0090】
図11a及び
図11bに示されているコイル部品1もシート積層法及びそれ以外の公知のプロセスにより製造され得る。この製造工程において、絶縁シートには、焼成後に第1補強部材35a及び第2補強部材35bとなる導体パターンが、例えばスクリーン印刷等の公知の手法により形成される。第1補強部材35a及び第2補強部材35bとなる導体パターンは、コイル導体25の一部となる導体パターンと同じ絶縁シートに形成されてもよいし、異なる絶縁シートに形成されてもよい。
【0091】
続いて、
図12a及び
図12bを参照して本発明の別の実施形態によるコイル部品1について説明する。
図12a及び
図12bに示されているコイル部品1は、基体10が比較的低硬度の第1領域10Aと、比較的高硬度の第2領域10Bとに区画される点で
図11a及び
図11bに示されているコイル部品1と異なっている。
図12a及び
図12bに示されているコイル部品1において、
図11a及び
図11bに示されているコイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0092】
本発明の一又は複数の実施形態において、第2領域10Bは、補強部35と基体10の第1の側面10e及び第2の側面10fのそれぞれとの間に配置される。図示の実施形態においては、第2領域10Bは、基体10のW軸方向の両端に配置されている。つまり、第2領域10Bによって、基体10の第1の側面10e及び第2の側面10fが画定されている。
【0093】
本発明の一又は複数の実施形態において、第2領域10Bは、第1領域10Aよりも高いビッカース硬度を有する。第2領域10Bのビッカース硬度を第1領域10Aのビッカース硬度よりも高くするため、第2領域10Bを例えば第1領域10A及び第2領域10Bを例えばシリカ(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)を含む非磁性材料から構成し、第2領域10BにおけるAl2O3に対するSiO2の含有比率を第1領域10AにおけるAl2O3に対するSiO2の含有比率よりも高くする。
【0094】
第2領域10Bにより、コイル部品1の実装基板2への実装時に基体10に応力が作用した場合に、基体10の変形を抑制することができる。これにより、基体10におけるクラックの発生をさらに抑制することができる。
【0095】
図12a~
図12bに示されているコイル部品1も
図2a及び
図2bに示されているコイル部品1と同様に積層プロセス及びそれ以外の公知のプロセスにより製造され得る。
【0096】
上記の実施形態の構成要素を適宜組み合わせることで実現される態様も、矛盾を生じさせない限り、本発明の実施形態となる。例えば、
図8a及び
図8bに示されている補強部31に代えて、補強部30、32~35のいずれかを用いることができる。この場合、コイル部品1は、第1領域10Aの下面及び第2領域10Bの上面の両方に接するように配置された補強部30、32、33、34、又は35を備えることができる。また、別の例として、
図9a及び
図9bに示されている補強部30に代えて、補強部31~35のいずれかを用いることができる。また、さらに別の例として、
図10a及び
図10bに示されている補強部34に代えて、補強部30~33、25のいずれかを用いることができる。
【0097】
次に、上記の実施形態による作用効果について説明する。本発明の一又は複数の実施形態によれば、金属材料から成る補強部30~35が基体10の下面10bとコイル導体25の第2コイル面25Bとの中点よりも下方に配置されているため、補強部30~35を通過する磁束を低減することができる。これにより補強部30~35における渦電流の発生を抑制することができる。従来、金属材料から構成される補強部は、主にコンデンサにおいて用いられている。コンデンサにおいては、対向する内部電極の外側に補強部を設ければ、当該補強部がコンデンサの特性(例えば、容量)に影響を与えることはないため、補強部は、内部電極の近傍に配置される。例えば、特開2012-044148号公報に開示されているセミラック電子部品(コンデンサ又はインダクタ)においては、金属材料から構成される補強層が、内部電極の下面と基体の下面との中点よりも内部電極に近い位置に設けられている。本発明の一又は複数の実施形態においては、従来の補強部(補強層)の配置とは異なり、基体10の下面10bとコイル導体25の第2コイル面25Bとの中点よりも下方に補強部が配置される。これにより、補強部を有するコイル部品において渦電流の発生を抑制することができる。よって、本発明の一又は複数の実施形態によれば、機械的強度に優れるとともに渦電流損失が抑制されたコイル部品が提供される。
【0098】
車載の電子機器に用いられる電子部品は、車載以外の電子機器(例えば、スマートフォン)に用いられる電子機器と比べて、耐振動性や耐衝撃性を高めるために、より厚い実装基板に実装される。実装基板の厚さが厚くなると、実装基板が撓んだ際に電子部品により大きな歪みが生じ、これにより電子部品の基体にクラックが生じやすくなる。このため、車載用のコイル部品においては、機械的強度の改善が求められる。また、車載用のコイル部品においても、一般のコイル部品と同様に渦電流損失の抑制が求められる。本発明の一又は複数の実施形態によれば、機械的強度に優れるとともに渦電流損失が抑制された車載用途に適したコイル部品を得ることができる。
【0099】
コイル部品1を実装基板2aに実装する際には、基体の下面10bのうち外部電極21の先端21c1及び外部電極22の先端22c1から基体10に対して大きな応力が作用する。このため、基体10のうち外部電極21の先端21c1及び外部電極22の先端22c1に近い位置にクラックが発生しやすい。本発明の一又は複数の実施形態によれば、補強部30~35が、上面視において外部電極21の第1下部21cの先端21c1の少なくとも一部及び外部電極22の第2下部22cの先端22c1の少なくとも一部と重なっているので、基体10において応力が集中する部位を補強することができる。また、仮に基体10にクラックが発生しても、補強部30~35によりクラックの拡大を防ぐことができる。例えば、基体10のうち外部電極21の先端21c1及び外部電極22の先端22c1に近い位置にクラックが発生しても、補強部30~35によって、補強部30~35よりも上方のコイル導体25が配置されている領域にクラックが拡がることを防止できる。
【0100】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、補強部30~35が外部電極21及び外部電極22の少なくとも一方に接続されていてもよい。補強部30~35と外部電極21及び外部電極22とは、補強部30~35によって外部電極21と外部電極22との間でショートが発生しないように接続される。補強部30~35が外部電極21に接続されている場合には、コイル部品1の実装時に外部電極21から基体10に作用する応力を補強部30~35に直接作用させることができるので、当該応力を、補強部30~35のうち外部電極21に接続されている部位と外部電極21の先端21c1に対応する部位とに分散して作用させることができる。同様に、補強部30~35が外部電極22に接続されている場合には、コイル部品1の実装時に外部電極22から基体10に作用する応力を補強部30~35に直接作用させることができるので、当該応力を、補強部30~35のうち外部電極22に接続されている部位と外部電極22の先端22c1に対応する部位とに分散して作用させることができる。このようにして、コイル部品の実装時に基体10に作用する応力を分散することで、基体10におけるクラックの発生をより抑制することができる。
【0101】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、補強部30~35が非磁性の金属材料から構成されるので、補強部30~35における渦電流の発生をより抑制することができる。
【0102】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、補強部31が第1補強部材31aと第2補強部材31bを有しており、この第1補強部材31aと第2補強部材31bとは絶縁性の基体10の一部により隔てられているので、補強部31と同程度の体積を有する補強部が単一の部材である場合と比べて渦電流の発生をさらに抑制することができる。補強部材32~34を備える実施形態においても同様の効果が奏される。
【0103】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、基体10が下面10bと補強部30~35との間に高硬度の第2領域10Bを有している。この第2領域10Bにより、コイル部品1の実装時に外部電極22から基体10に応力が作用した場合に、基体10の変形を抑制することができる。これにより、基体10におけるクラックの発生をさらに抑制することができる。
【0104】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、外部電極21及び外部電極22が基体10のうちビッカース硬度が高い第2領域10Bに接しているので、コイル部品1の実装時に外部電極22から基体10に応力が作用した場合に、基体10の下面10bのうち外部電極21及び外部電極22と接触する位置に凹みが発生することを抑制できる。基体10の下面10b(又はその他の表面)に凹みが生じると、その凹みに応力が集中するため、当該凹みの位置からクラックが生じやすくなる。本発明の一又は複数の実施形態によれば、外部電極21及び外部電極22が基体10のうち高硬度の第2領域10Bに接しているので、コイル部品1の実装時に基体10の下面10bへの凹みの発生を抑制することができ、その結果、基体10へのクラックの発生を抑制することができる。
【0105】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、補強部30~35は、第1領域10Aと第2領域10Bの両方に接している。コイル部品1の製造工程において絶縁シートを加熱すると、絶縁シートに収縮応力が作用する。金属材料から成る補強部30~35は、高温となってもほとんど収縮しないため、補強部30~35によって第1領域10A及び第2領域10Bの両方の収縮を抑制することができる。これにより、基体10が高温になるときに第1領域10Aと第2領域10Bとの間での熱収縮率の違いに起因するデラミネーションを防止又は抑制できる。
【0106】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0107】
1 コイル部品
2 回路基板
10 基体
10A 第1領域
10B 第2領域
10C 第3領域
10D 第4領域
21、22 外部電極
25 コイル導体
30~35 補強部