(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
H01F17/00 C
(21)【出願番号】P 2020117074
(22)【出願日】2020-07-07
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】大島 由也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真一
(72)【発明者】
【氏名】唯木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岩井 和夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 多之
(72)【発明者】
【氏名】松橋 えみり
(72)【発明者】
【氏名】新堀 拓哉
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-193512(JP,A)
【文献】特開2017-191923(JP,A)
【文献】国際公開第2005/052962(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0172102(US,A1)
【文献】特開2014-138168(JP,A)
【文献】特開2012-227225(JP,A)
【文献】特開2009-085783(JP,A)
【文献】特開2013-140933(JP,A)
【文献】特開2000-243630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/28、37/00
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が第一方向において積層されてなり、前記第一方向に直交する第二方向で互いに対向している一対の端面を有している素体と、
前記素体内に配置されており、前記第二方向に沿うコイル軸をそれぞれ有している第一コイル及び第二コイルと、
前記一対の端面に配置されており、前記第一コイル及び前記第二コイルの両端と電気的に接続されている一対の外部電極と、
前記第一方向において積層され、前記第一コイル及び前記第二コイルと前記外部電極とを電気的に接続している複数の第五導体層と、を備え、
前記第一コイルは、第一導体層と、第二導体層と、前記第一方向に延在し、前記第一導体層と前記第二導体層とを接続している第一スルーホール導体と、を有し、
前記第二コイルは、第三導体層と、第四導体層と、前記第一方向に延在し、前記第三導体層と前記第四導体層とを接続している第二スルーホール導体と、を有し、
前記第一コイルの前記コイル軸は、前記第二コイルの内側に配置されており、
前記第一導体層及び前記第三導体層は、前記第一方向において互いに離間していると共に、前記第一方向から見て互いに交差しており、
各前記第五導体層の厚さは、前記第一導体層の厚さ、前記第二導体層の厚さ、前記第三導体層の厚さ、及び、前記第四導体層の厚さよりも薄
く、
前記複数の第五導体層は、前記第一方向において前記第一導体層と前記第二導体層との間に配置されていると共に、前記第一方向において前記第三導体層と前記第四導体層との間に配置されており、
前記第一コイルは、前記第一方向において前記第一導体層と前記第二導体層との間に配置され、前記第一コイルの一端をなす第六導体層を更に有しており、
前記複数の第五導体層は、前記第一方向において前記第六導体層と前記第二導体層との間に配置されている、
積層コイル部品。
【請求項2】
前記第二導体層及び前記第四導体層は、前記第一方向において互いに離間していると共に、前記第一方向から見て互いに交差している、
請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記第一導体層及び前記第四導体層は、前記第一方向において互いに同じ位置に配置されている、
請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記第二導体層及び前記第三導体層は、前記第一方向において互いに同じ位置に配置されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層された複数の絶縁体層を有する素体と、素体内に配置されたコイルと、素体の端面に配置された一対の外部電極と、を備える積層コイル部品が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の積層コイル部品では、コイルの軸方向が一対の外部電極の対向方向と一致しているので、コイルと外部電極との間に形成される浮遊容量を低減させることができる。これにより、積層コイル部品の自己共振周波数(SRF)が低くなることが抑制され、高周波特性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルに流す電流を増大させるためには、コイルの直流抵抗を低減する必要がある。特許文献1には、並列に配列された2つのコイルを備える構成が開示されている。しかしながら、この構成では各コイルの内径が小さいため、インダクタンスが小さくなる。
【0005】
本開示は、高周波特性を向上させると共に、インダクタンスを大きく保ちながら、コイルの直流抵抗を低減することができる積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る積層コイル部品は、複数の絶縁体層が第一方向において積層されてなり、第一方向に直交する第二方向で互いに対向している一対の端面を有している素体と、素体内に配置されており、第二方向に沿うコイル軸をそれぞれ有している第一コイル及び第二コイルと、一対の端面に配置されており、第一コイル及び第二コイルの両端と電気的に接続されている一対の外部電極と、を備え、第一コイルのコイル軸は、第二コイルの内側に配置されており、第一コイルは、第一導体層と、第二導体層と、第一方向に延在し、第一導体層と第二導体層とを接続している第一スルーホール導体と、を有し、第二コイルは、第三導体層と、第四導体層と、第一方向に延在し、第三導体層と第四導体層とを接続している第二スルーホール導体と、を有し、第一導体層及び第三導体層は、第一方向において互いに離間していると共に、第一方向から見て互いに交差している。
【0007】
この積層コイル部品では、第一コイル及び第二コイルのコイル軸は、一対の端面の対向方向である第二方向に沿っているので、第一コイル及び第二コイルと外部電極との間に形成される浮遊容量を低減させ、高周波特性を向上させることができる。また、第一コイルのコイル軸は、第二コイルの内側に配置されており、第一導体層及び第三導体層は、第一方向において互いに離間していると共に、第一方向から見て互いに交差している。このような構成により、第一コイル及び第二コイルは互いに交差しながら大きな螺旋を構成することができる。よって、インダクタンスを大きくすることができる。
【0008】
第二導体層及び第四導体層は、第一方向において互いに離間していると共に、第一方向から見て互いに交差していてもよい。この場合、第一コイル及び第二コイルは互いに交差しながら、巻き数を増やすことができる。
【0009】
第一導体層及び第四導体層は、第一方向において互いに同じ位置に配置されていてもよい。この場合、第一コイルの内径及び第二コイルの内径を更に大きくし易い。
【0010】
第二導体層及び第三導体層は、第一方向において互いに同じ位置に配置されていてもよい。この場合、第一コイルの内径及び第二コイルの内径を更に大きくし易い。
【0011】
上記積層コイル部品は、第一コイル及び第二コイルと外部電極とを電気的に接続している複数の第五導体層を更に備えていてもよい。この場合、第五導体層が一層の場合に比べて、電気抵抗を下げることができる。
【0012】
各第五導体層の厚さは、第一導体層の厚さ、第二導体層の厚さ、第三導体層の厚さ、及び、第四導体層の厚さよりも薄くてもよい。この場合、積層体基板を切断して素体を個片化する工程において、積層体基板を複数の第五導体層ごと容易に切断することができる。
【0013】
複数の第五導体層は、第一方向において第一導体層と第二導体層との間に配置されていると共に、第一方向において第三導体層と第四導体層との間に配置されていてもよい。この場合、第五導体層の層数を増やすことで、容易に第一コイル及び第二コイルの内径を拡大することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、高周波特性を向上させると共に、インダクタンスを大きく保ちながら、コイルの直流抵抗を低減することができる積層コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の積層コイル部品の内部構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の積層コイル部品の内部構成を示す側面図である。
【
図4】
図4は、第一コイル及び第二コイルを流れる電流について説明するための分解斜視図である。
【
図5】
図5は、第一コイル及び第二コイルを構成する導体層の位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、一実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
図1に示されるように、本実施形態に係る積層コイル部品1は、直方体形状を呈している素体2と、素体2の表面に配置されている一対の外部電極4,5と、を備えている。一対の外部電極4,5は、素体2の両端部にそれぞれ配置されており、互いに離間している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。積層コイル部品1は、たとえば、ビーズインダクタ又はパワーインダクタに適用できる。
【0018】
素体2は、その表面として、一対の端面2a,2bと、4つの側面2c,2d,2e,2fと、を有している。一対の端面2a,2bは、互いに対向している。一対の側面2c,2dは、互いに対向している。一対の側面2e,2fは、互いに対向している。各端面2a,2bは、各側面2c,2d,2e,2fと互いに隣り合っている。
【0019】
本実施形態では、一対の側面2c,2dが対向している方向(第一方向D1)が素体2の高さ方向である。一対の端面2a,2bが対向している方向(第二方向D2)が素体2の長さ方向である。一対の側面2e,2fが対向している方向(第三方向D3)が素体2の幅方向である。第一方向D1と第二方向D2と第三方向D3とは、互いに直交している。
【0020】
素体2の第二方向D2の長さは、素体2の第一方向D1の長さ及び素体2の第三方向D3の長さよりも長い。素体2の第一方向D1の長さと素体2の第三方向D3の長さとは、同等である。すなわち、本実施形態では、各端面2a,2bは正方形状を呈し、各側面2c,2d,2e,2fは、長方形状を呈している。たとえば、素体2の第二方向D2の長さは1.0mm、素体2の第一方向D1の長さは0.5mm、素体2の第三方向D3の長さは0.5mmである。たとえば、素体2の第二方向D2の長さは0.6mm、素体2の第一方向D1の長さは0.3mm、素体2の第三方向D3の長さは0.3mmであってもよい。
【0021】
同等とは、等しいことに加えて、予め設定した範囲での微差又は製造誤差等を含んだ値を同等としてもよい。たとえば、複数の値が、当該複数の値の平均値の±5%の範囲内に含まれているのであれば、当該複数の値は同等であると規定する。
【0022】
素体2の第一方向D1の長さと素体2の第三方向D3の長さとは、異なっていてもよい。たとえば、素体2の第二方向D2の長さは1.0mm、素体2の第一方向D1の長さは0.5mm、素体2の第三方向D3の長さは0.7mmであってもよい。たとえば、素体2の第二方向D2の長さは0.6mm、素体2の第一方向D1の長さは0.3mm、素体2の第三方向D3の長さは0.45mmであってもよい。素体2の第二方向D2の長さは、素体2の第一方向D1の長さ及び素体2の第三方向D3の長さと同等であってもよい。
【0023】
一対の端面2a,2bは、一対の側面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延びている。一対の端面2a,2bは、一対の側面2e,2fの間を連結するように第三方向D3にも延びている。一対の側面2c,2dは、一対の端面2a,2bの間を連結するように第二方向D2に延びている。一対の側面2c,2dは、一対の側面2e,2fの間を連結するように第三方向D3にも延びている。一対の側面2e,2fは、一対の側面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延びている。一対の側面2e,2fは、一対の端面2a,2bの間を連結するように第二方向D2にも延びている。
【0024】
素体2は、複数の絶縁体層10(
図3参照)が積層されることによって構成されている。すなわち、素体2は、第一方向D1において積層されている複数の絶縁体層10を有している。複数の絶縁体層10は、側面2cと側面2dとが対向している方向に積層されている。すなわち、複数の絶縁体層10の積層方向は、側面2cと側面2dとが対向している方向と一致している。以下、側面2cと側面2dとが対向している方向を「積層方向」ともいう。各絶縁体層10は、略矩形形状を呈している。実際の素体2では、各絶縁体層10は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0025】
各絶縁体層10は、フェライト材料(たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、又はNi-Cu系フェライト材料等)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。
【0026】
積層コイル部品1では、側面2c,2d,2e,2fのいずれかが実装面を構成し得る。実装面は、たとえば積層コイル部品1を図示しない他の電子機器(たとえば、回路基板、又は、電子部品等)に実装する際に、他の電子機器と対向する面として規定される。
【0027】
一対の外部電極4,5は、一対の端面2a,2bに配置されている。一対の外部電極4,5は、一対の端面2a,2bの対向方向(第二方向D2)に互いに離間している。一対の外部電極4,5は、第一コイルC1及び第二コイルC2の両端と電気的に接続されている。外部電極4は、素体2の端面2a側に配置されており、第一コイルC1の一端と電気的に接続されていると共に、第二コイルC2の一端と電気的に接続されている。外部電極5は、素体2の端面2b側に配置され、第一コイルC1の他端と電気的に接続されていると共に、第二コイルC2の他端と電気的に接続されている。
【0028】
外部電極4,5は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。外部電極4,5は、導電性金属粉末(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)及びガラスフリットを含む導電性ペーストの焼結体として構成される。外部電極4,5には、電気めっきが施されることにより、その表面にはめっき層が形成されている。電気めっきには、たとえばNi、Snなどが用いられる。
【0029】
外部電極4は、端面2a上に位置する電極部分4aと、側面2c上に位置する電極部分4bと、側面2d上に位置する電極部分4cと、側面2e上に位置する電極部分4dと、側面2f上に位置する電極部分4eと、の5つの電極部分を含んでいる。電極部分4aと電極部分4b、電極部分4c、電極部分4d及び電極部分4eとは、素体2の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。外部電極4は、少なくとも端面2aに配置されている。外部電極4は、端面2a、一対の側面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面にわたって形成されている。電極部分4a、電極部分4b、電極部分4c、電極部分4d及び電極部分4eは、一体的に形成されている。
【0030】
外部電極5は、端面2b上に位置する電極部分5aと、側面2c上に位置する電極部分5bと、側面2d上に位置する電極部分5cと、側面2e上に位置する電極部分5dと、側面2f上に位置する電極部分5eと、の5つの電極部分を含んでいる。電極部分5aと電極部分5b、電極部分5c、電極部分5d及び電極部分5eとは、素体2の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。外部電極5は、少なくとも端面2bに配置されている。外部電極5は、端面2b、一対の側面2c,2d、及び一対の側面2e,2fの五面にわたって形成されている。電極部分5a、電極部分5b、電極部分5c、電極部分5d及び電極部分5eは、一体的に形成されている。
【0031】
図2は、
図1の積層コイル部品の内部構成を示す斜視図である。
図2では、素体2及び外部電極4,5の図示が省略されている。
図3は、
図1の積層コイル部品の内部構成を示す側面図である。
図3では、端面2a側から見た積層コイル部品1の内部構成が示されている。
図3では、外部電極4,5の図示が省略されていると共に、素体2が二点鎖線で示されている。
【0032】
図2及び
図3に示されるように、積層コイル部品1は、第一コイルC1及び第二コイルC2を備えている。第一コイルC1及び第二コイルC2は、素体2内に配置されている。第一コイルC1は、第二方向D2に沿うコイル軸A1を有している。第二コイルC2は、第二方向D2に沿うコイル軸A2を有している。コイル軸A1は、第二コイルC2がなす螺旋の内側に配置されている。つまり、第一コイルC1がなす螺旋の内側の領域と、第二コイルC2がなす螺旋の内側の領域とは、互いに重なる部分を有していると言える。コイル軸A2は、第一コイルC1がなす螺旋の内側に配置されている。
【0033】
第一コイルC1は、導体層11~14と、スルーホール導体21~23とを有している。第二コイルC2は、導体層15~18と、スルーホール導体24~26とを有している。積層コイル部品1は、複数の導体層19及び複数の導体層20と、スルーホール導体27,28を更に備えている。導体層11~20及びスルーホール導体21~28は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。導体層11~20及びスルーホール導体21~28は、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0034】
図4は、第一コイル及び第二コイルを流れる電流について説明するための分解斜視図である。
図4では、導体層11~18、一対の導体層20、及び、スルーホール導体21~28が示されている。
図2~
図4に示されるように、導体層11,13,16,18は、同じ絶縁体層10上に配置されている。すなわち、導体層11,13,16,18は、第一方向D1において互いに同じ位置に配置されている。導体層12,17は、同じ絶縁体層10上に配置されている。すなわち、導体層12,17は、第一方向D1において互いに同じ位置に配置されている。導体層14,15及び複数の導体層19は、同じ絶縁体層10上に配置されている。すなわち、導体層14,15及び複数の導体層19は、第一方向D1において互いに同じ位置に配置されている。本実施形態では、導体層19の数は4つである。
【0035】
導体層12,17が配置された絶縁体層10、導体層14,15及び複数の導体層19が配置された絶縁体層10、及び、複数の導体層20が配置された絶縁体層10、導体層11,13,16,18が配置された絶縁体層10は、側面2d側から第一方向D1においてこの順に積層されている。本実施形態では、複数の導体層20が配置された絶縁体層10は、3層構造で第一方向D1において積層されている。1つの絶縁体層10に対し、8つの導体層20が配置されている。複数の導体層20が配置された絶縁体層10は、2層以下又は4層以上であってもよい。
【0036】
導体層19,20は、第一方向D1から見て矩形状を呈している。導体層20は、導体層11~19よりも薄い。導体層20の厚さ(第一方向D1における長さ)は、例えば、導体層11~19の厚さ(第一方向D1における長さ)の30%以上70%以下である。導体層20の厚さは、例えば、12μm以上20μm以下である。導体層11~19の厚さは、例えば、28μm以上40μm以下である。複数の導体層20が配置された絶縁体層10の厚さ(第一方向D1における長さ)は、導体層11~19が配置された絶縁体層10の厚さ(第一方向D1における長さ)よりも薄い。
【0037】
導体層11,13は、コイル軸A1に対し、第一方向D1の一方側(側面2c側)に配置されている。導体層12,14は、コイル軸A1に対し、第一方向D1の他方側(側面2d側)に配置されている。導体層16,18は、コイル軸A2に対し、第一方向D1の一方側(側面2c側)に配置されている。導体層15,17は、コイル軸A2に対し、第一方向D1の他方側(側面2d側)に配置されている。
【0038】
導体層11,13,16,18は、導体層12,14,15,17,19,20よりも第一方向D1における側面2c側に配置されている。導体層12,17は、導体層11,13~16,18~20よりも第一方向D1における側面2d側に配置されている。導体層14,15及び複数の導体層19は、第一方向D1において、導体層11,13,16,18と、導体層12,17との間に配置されている。複数の導体層20は、第一方向D1において、導体層11,13,16,18と、導体層14,15及び複数の導体層19との間に配置されている。
【0039】
図5は、側面2c側から見た導体層11~13,16~18の位置関係を示す平面図である。
図5では、素体2が二点鎖線で示されている。
図5に示されるように、第一方向D1から見て、導体層12及び導体層16は、互いに交差している。第一方向D1から見て、導体層13及び導体層17は、互いに交差している。
図2~
図4に示されるように、導体層12及び導体層16は、第一方向D1において互いに離間している。導体層13及び導体層17は、第一方向D1において互いに離間している。
【0040】
スルーホール導体21~28は、絶縁体層10を貫通し、第一方向D1に延在している。スルーホール導体21は、導体層11と導体層12とを接続している。スルーホール導体22は、導体層12と導体層13とを接続している。スルーホール導体23は、導体層13と導体層14とを接続している。スルーホール導体24は、導体層15と導体層16とを接続している。スルーホール導体25は、導体層16と導体層17とを接続している。スルーホール導体26は、導体層17と導体層18とを接続している。スルーホール導体27は、導体層11と導体層15とを接続している。スルーホール導体28は、導体層14と導体層18とを接続している。
【0041】
各スルーホール導体21~28は、第一方向D1に沿って配列された複数の導体部分を含んでいる。第一方向D1において隣り合う導体部分同士は、導体層19又は導体層20を介して互いに接続されている。つまり、導体層19,20は、スルーホール導体21~28において第一方向D1で隣り合う導体部分同士を電気的に接続する機能を有している。
各導体層19,20は、第一方向D1から見て、スルーホール導体21~28のいずれかと重なっている。各スルーホール導体21,22,25,26は、1つの導体層19及び3つの導体層20によって5つの導体部分が接続されて構成されている。スルーホール導体23,24,27,28は、3つの導体層20によって4つの導体部分が接続されて構成されている。
【0042】
第一方向D1から見てスルーホール導体27と重なっている各導体層20は、端面2aに露出し、電極部分4aと接続されている端部を有すると共に、第一コイルC1の一端をなす導体層11及び第二コイルC2の一端をなす導体層15とスルーホール導体27を介して接続されている。すなわち、第一方向D1から見てスルーホール導体27と重なっている複数の導体層20は、第一コイルC1及び第二コイルC2と外部電極4(
図1参照)とを電気的に接続している。
【0043】
第一方向D1から見てスルーホール導体28と重なっている各導体層20は、端面2bに露出し、電極部分5aと接続されている端部を有すると共に、第一コイルC1の他端をなす導体層14及び第二コイルC2の他端をなす導体層18とスルーホール導体28を介して接続されている。すなわち、第一方向D1から見てスルーホール導体28と重なっている複数の導体層20は、第一コイルC1及び第二コイルC2と外部電極5(
図1参照)とを電気的に接続している。
【0044】
このように第一方向D1から見てスルーホール導体27,28と重なっている導体層20は、スルーホール導体27,28において第一方向D1で隣り合う導体部分同士を電気的に接続する機能に加え、第一コイルC1及び第二コイルC2と一対の外部電極4,5とを電気的に接続する機能を有している。本実施形態では、第一方向D1から見てスルーホール導体27,28と重なっている導体層20は、端面2a,2bに引き出されるため、スルーホール導体21~26と重なっている他の導体層20よりも第二方向D2における長さが長いが、同等であってもよい。
【0045】
図4を用いて、第一コイルC1及び第二コイルC2を流れる電流について説明する。
図4では、電流が外部電極4(
図1参照)から第一コイルC1及び第二コイルC2を通って外部電極5(
図1参照)に流れる場合が示されている。
図4に示されるように、電流は外部電極4から、端部が電極部分4aと接続されている各導体層20に流れ込んだ後に分岐し、スルーホール導体27を通じて、第一コイルC1の一端をなす導体層11、及び、第二コイルC2の一端をなす導体層15のそれぞれに流れ込む。スルーホール導体27を通じて第一コイルC1に向かう電流は一点鎖線の矢印で示されている。スルーホール導体27を通じて第二コイルC2に向かう電流は破線の矢印で示されている。
【0046】
導体層11に流れ込んだ電流(一点鎖線で示された矢印)は、スルーホール導体21を通じて、導体層12に流れ込み、続いて、スルーホール導体22を通じて、導体層13に流れ込み、続いて、スルーホール導体23を通じて、導体層14に流れ込み、続いて、スルーホール導体28を通じて、端部が電極部分5aと接続されている各導体層20に流れ込む。
【0047】
導体層15に流れ込んだ電流(破線で示された矢印)は、スルーホール導体24を通じて、導体層16に流れ込み、続いて、スルーホール導体25を通じて、導体層17に流れ込み、続いて、スルーホール導体26を通じて、導体層14に流れ込み、続いて、スルーホール導体28を通じて、端部が電極部分5aと接続されている各導体層20に流れ込む。
【0048】
第一コイルC1を流れた電流、及び、第二コイルC2を流れた電流は、スルーホール導体28を流れた後、端部が電極部分5aと接続されている各導体層20で合流し、外部電極5に流れ込む。電流は外部電極5から第一コイルC1及び第二コイルC2を通って外部電極4に流れてもよい。この場合は、
図4に示される矢印の向きが全て逆向きになる。
【0049】
以上説明したように、積層コイル部品1では、第一コイルC1のコイル軸A1及び第二コイルC2のコイル軸A2は、一対の端面2a,2bの対向方向である第二方向D2と一致している。このため、外部電極4,5と第一コイルC1との間に形成される浮遊容量、及び、外部電極4,5と第二コイルC2との間に形成される浮遊容量をそれぞれ低減させることができる。これにより、積層コイル部品1の自己共振周波数(SRF)が低くなることが抑制され、高周波特性が向上する。
【0050】
第一コイルC1及び第二コイルC2は、一対の外部電極4,5間において電気的に並列に接続されている。よって、積層コイル部品1の直流抵抗を低減することができる。
【0051】
第一コイルC1のコイル軸A1は、第二コイルC2の内側に配置されている。加えて、導体層12及び導体層16は、第一方向D1において互いに離間していると共に、第一方向D1から見て互いに交差している。このような構成により、第一コイルC1及び第二コイルC2は互いに交差しながら大きな螺旋を構成することができる。よって、第一コイルC1及び第二コイルC2の内径を大きくすることができる。この結果、インダクタンスを大きくすることができる。
【0052】
第一コイルC1及び第二コイルC2の螺旋を交差させることにより、螺旋を交差させない場合に比べて、第一コイルC1及び第二コイルC2の巻き数を維持したまま、第一コイルC1及び第二コイルC2の第二方向D2における長さを短くすることができる。よって、第一コイルC1及び第二コイルC2の磁路が長くなることによる特性の劣化を抑制できる。また、積層コイル部品1の小型化を図ることができる。
【0053】
導体層13及び導体層17は、第一方向D1において互いに離間していると共に、第一方向D1から見て互いに交差している。これにより、第一コイルC1及び第二コイルC2は、互いに交差しながら、巻き数を増やすことができる。
【0054】
導体層12及び導体層17は、第一方向D1において互いに同じ位置に配置されている。このため、第一コイルC1の内径及び第二コイルC2の内径を更に大きくし易い。また、導体層13及び導体層16は、第一方向D1において互いに同じ位置に配置されている。このため、第一コイルC1及び第二コイルC2の内径を更に大きくし易い。
【0055】
第一コイルC1及び第二コイルC2と一対の外部電極4,5とは、複数の導体層20によって電気的に接続されている。複数の導体層20の電気抵抗は、複数の導体層20の断面積の和に反比例する。したがって、導体層20の層数が多いほど、複数の導体層20の電気抵抗が低下する。このため、導体層20が一層の場合に比べて、電気抵抗を下げることができる。
【0056】
各導体層20の厚さは、導体層11~19の厚さよりも薄い。このため、積層体基板を切断して素体2を個片化する工程において、積層体基板を複数の導体層20ごと容易に切断することができる。よって、導体層20の端部が端面2a,2bに露出された状態を容易に形成することができる。
【0057】
複数の導体層20は、第一方向D1において導体層12と導体層13との間に配置されていると共に、第一方向D1において導体層16と導体層17との間に配置されている。このため、導体層20の層数を増やすことで、容易に第一コイルC1及び第二コイルC2の内径を第一方向D1に拡大することができる。これにより、インダクタンスを大きくすることができる。
【0058】
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0059】
導体層11,13,16,18は、第一方向D1において互いに同じ位置に配置されているが、第一方向D1において互いに異なる位置に配置されていてもよい。また、導体層12,17と、導体層14,15とは、第一方向D1において互いに異なる位置に配置されているが、第一方向D1において互いに同じ位置に配置されていてもよい。
【0060】
第一コイルC1は、導体層12、スルーホール導体22、導体層13、及びスルーホール導体23からなるループが複数回繰り返される構成であってもよい。すなわち、第一コイルC1は、第二方向D2において導体層11と導体層14との間に、導体層12、スルーホール導体22、導体層13、及びスルーホール導体23からなるループを複数有していてもよい。これにより、第一コイルC1の巻き数を増やすことができる。
【0061】
第二コイルC2は、導体層16、スルーホール導体25、導体層17、及びスルーホール導体26からなるループが複数回繰り返される構成であってもよい。すなわち、第二コイルC2では、第二方向D2において導体層15と導体層18との間に、導体層16、スルーホール導体25、導体層17、及びスルーホール導体26からなるループを複数有していてもよい。これにより、第二コイルC2の巻き数を増やすことができる。
【符号の説明】
【0062】
1…積層コイル部品、2…素体、2a,2b…端面、2c,2d,2e,2f…側面、4,5…外部電極、11~20…導体層、21~28…スルーホール導体、A1,A2…コイル軸、C1…第一コイル、C2…第二コイル。