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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】部分メイク変更提案装置
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/00 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
A45D44/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020120518
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017772
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】中岡 志保
(72)【発明者】
【氏名】平 あき津
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-000132(JP,A)
【文献】特開2013-008319(JP,A)
【文献】特開2016-055201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性の見た目から受け取られる概念的な印象、男性の見た目から受け取られる概念的な印象、又は男性の見た目から受け取られる概念的な印象と女性の見た目から受け取られる概念的な印象に共通する印象表現である性別印象の変化傾向と、髪又は肌に関わる物理的な状態を示す外観的な印象である見え方印象の変化傾向と、変更される髪色と該髪色が変更される部位とを含む髪色変更部位、又は変更される顔の肌色と該肌色が変更される部位とを含む肌色変更部位である部分メイク領域と、のそれぞれの関係のうち、少なくともいずれかについて統計的に得られた相関関係を示す相関情報を記憶する記憶部と、
変化させる前記性別印象、前記見え方印象又は前記部分メイク領域の少なくともいずれかが入力される入力部と、
前記記憶部に記憶された前記相関情報に基づき、前記入力部に入力された前記性別印象、前記見え方印象又は前記部分メイク領域の少なくともいずれかから入力されなかった前記性別印象、前記見え方印象又は前記部分メイク領域の少なくともいずれかを選定する演算部と、
該演算部によって選定された前記性別印象、前記見え方印象又は前記部分メイク領域の少なくともいずれかを出力する出力部と、を備えることを特徴とする部分メイク変更提案装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記部分メイク領域を前記出力部に出力する場合に、前記入力部に入力された前記性別印象又は前記見え方印象から、複数のパターンの前記部分メイク領域を選定し、選定された前記複数のパターンの前記部分メイク領域を前記出力部に出力して、利用者が前記部分メイク領域を選択できるようにする請求項に記載の部分メイク変更提案装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分メイク領域の選定法、人の印象の評価方法、見え方印象の特定方法、部分メイク領域の提案方法、部分メイク変更提案装置及び相関情報決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアカラー業界において、部分的に髪を染める製品が近年増加している。このような状況で、人(特に女性)が染毛後に目標とする印象を獲得するため、染毛後の印象を適切に表現するための情報(染める色・位置等)が求められている。
このような状況の中、非特許文献1~4に開示されているように、髪色と女性の印象・魅力の関係性に関する先行研究は多く行われている。
【0003】
また、メイクアップ業界においても、多種多様な化粧品が販売されており、メイクアップ後の印象を適切に表現するための情報(ファンデーション、口紅、アイシャドウ等の色・化粧位置等)が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】三浦久美子、齋藤美穂著、「色彩調和論から見た肌色と髪色の配色効果」日本色彩学会誌(2003) 27 SUPPLEMENT 86-87
【文献】石原久代、大澤香奈子著、「若年女性の肌色とヘアカラーのコーディネート要因について」名古屋女子大学紀要(2005) 51(家・自)1-10
【文献】三枝千尋、渡邊克巳著、「髪色と顔の「似合い」と魅力度:自己評価と他者評価」日本感性工学会論文誌(2014) 13 pp.253-258
【文献】中川登紀子著、「ヘアカラーの印象評価」日本色彩学会誌(2018) 42 SUPPLEMENT 210-212
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、美容室では既に、髪の見え方を変えて人の印象を変化させるため、美容師(コーディネーター)の主観に基づいて髪を部分的に染めること(メイクアップ)が提案されている。
同様に、肌色を部分的に変更する部位について、メイクの仕方を提案するメイクアップアーティスト(コーディネーター)についても、主観に基づいてメイクアップの提案が行われている。
【0006】
しかしながら、コーディネーターによるメイクアップの提案内容は、個々の主観に委ねられているところが大きく、顧客への提案内容に普遍性があるとは言い難い。
このような状況から、顧客が希望する人の印象に顧客を変えるため、コーディネーターには部分メイク領域(髪色変更部位又は肌色変更部位)を適切にアドバイスできるようになることが求められていた。
【0007】
本発明は、特定された人の印象から部分メイク領域を客観的且つ普遍的に選定可能な部分メイク領域の選定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の部分メイク領域の選定方法は、人の複数の印象から変化させる前記人の印象を特定し、前記人の印象の変化傾向と、髪色又は顔の肌色についての部分的なメイクアップである部分メイク領域と、について統計的に得られた相関関係を示す相関情報を用い、前記部分メイク領域は、変更される髪色と該髪色が変更される部位とを含む髪色変更部位、又は変更される顔の肌色と該肌色が変更される部位とを含む肌色変更部位であり、特定された前記人の印象から前記部分メイク領域を選定することに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る部分メイク領域の選定方法によれば、人の印象の変化傾向と部分メイク領域との相関情報により、特定された人の印象から部分メイク領域を客観的且つ普遍的に選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る評価対象としての8パターンの異なるヘアカラースタイル画像を示す図である。
図2図1のヘアカラースタイル画像の髪色変更部位に対する女性印象(フェミニン印象及びモード印象)の平均評価値を示す図である。
図3図1のヘアカラースタイル画像の髪色変更部位に対する髪の見え方印象(「ハリのある」及び「やわらかな」)の平均評価値を示す図である。
図4図1のヘアカラースタイル画像の髪色変更部位に対する髪の見え方印象(「動きのある」及び「ウェットな」)の平均評価値を示す図である。
図5】髪色処理装置を示す模式図である。
図6】髪色処理装置の構成を示すブロック図である。
図7】髪色変更提案装置の構成を示すブロック図である。
図8】女性印象(フェミニン印象及びモード印象)に対する髪の見え方因子(「良質感」、「躍動感」、「やわらか感」及び「しっとり感」)の平均因子得点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態の例について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態の図面は、いずれも本発明の技術思想、構成及び動作を説明するためのものであり、その構成を具体的に限定するものではない。また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
<概要>
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る選定方法の概要を説明する。
図1は、評価対象としての8パターンの異なるヘアカラースタイル(S1、S2、S3、S4、C1、C2、C3、C4)を示す図、図2は、図1のヘアカラースタイル画像の髪色変更部位に対する女性印象(フェミニン印象及びモード印象)の平均評価値を示す図である。
なお、図2及び他の図において「平均評価値」と記載しているが、具体的には、一対比較実験における平均評価値である平均嗜好度のことである。この平均嗜好度とは、本実施形態においては、複数の被験者の感性による評価値(7段階評価の値)を平均した値である。
【0013】
本実施形態に係る部分メイク領域の選定方法は、人の複数の印象から変化させる人の印象(女性印象又は見え方印象)を特定し、人の印象の変化傾向と、髪色又は顔の肌色についての部分的なメイクアップである部分メイク領域と、について統計的に得られた相関関係を示す相関情報を用いる。部分メイク領域は、変更される髪色と髪色が変化される部位とを含む髪色変更部位、又は変更される肌色と肌色が変更される部位とを含む肌色変更部位であり、特定された人の印象から部分メイク領域を選定することを特徴とする。
【0014】
「人の印象」は、個人全体としての見た目から看者が受け取る雰囲気をいい、フェミニン、モード、華やか、スウィート、エレガント、クール、キュート、ゴージャス、上品、ヘルシー等の様々な印象がある。つまり、「人の印象」は、総合的で概念的であり、女性的、男性的又は男性と女性に共通する印象表現である性別印象を含む。女性的印象表現である女性印象等は、人の印象を構成する印象要素である。
さらに、「人の印象」は、個人を構成する髪、肌の見た目から受け取られる、髪の良質感、躍動感等や肌の美肌感及び陰影等の後述する「見え方印象」を印象要素として含むものとする。
【0015】
また、「変化させる人の印象」とは、元の顔(素顔)からメイクアップすることによって変化させる人の印象である。
そして、人の印象を変化させることは、例えば、異なる人の印象(例えばフェミニンからキュート等)に変えることの他、同じ人の印象(例えばフェミニン)の中で、その印象の度合いを変えることをも含む。
「人の印象の変化傾向」とは、具体的には、部分メイク領域を変更した後(メイクアップした後)における人の印象の変化について統計的に得られる傾向のことをいう。
【0016】
「部分メイク領域」は、「髪色変更部位」と「肌色変更部位」とを含む概念であり、変更される髪色と髪色が変更される部位(太さ、長さ、位置に関する領域)を含み、変更される肌色(色のパターンの違いを含む)と、肌色が変更される部位のことである。変更される髪色又は肌色としては、単色ではなく複数色であってもよい。
「相関情報」としては、例えば図1に示す部分メイク領域としての髪色変更部位を含む画像に結びつけるように、図2に示すようにグラフにより視覚的に示された情報の他、上記の平均評価値として数値で分類可能なテーブルを含む。また、相関情報は、アプリに入力されているもの、機械学習をする人工知能により処理されるものであってもよい。
【0017】
上記のように、人の印象は、女性的な印象表現である女性印象(フェミニン、モード、ゴージャス、キュート等)を含んで構成されており、人の印象の変化傾向は、女性印象の変化傾向を含んで構成されている。
【0018】
「女性印象」とは、女性の見た目から受け取られる、女性自身の形、色、女性が着ている又は女性が所持しているアイテム(衣服、アクセサリー及びバッグ等)の形・色・素材から総合して表される概念的な印象要素であり、本実施形態では、フェミニン、モード、ゴージャス及びキュートがこれに当たる。
このように、女性印象の変化傾向と部分メイク領域との相関情報を用いるようにすることで、メイクアップを行う大多数の女性に対して、適切な部分メイク領域を提案することができる。
【0019】
人の印象は、髪又は肌に関わる見え方の印象である見え方印象を含み、人の印象の変化傾向は、見え方印象の変化傾向を含む。
「見え方印象」は、髪の見え方の印象である「ハリのある」、「動きのある」等の各印象、肌の見え方の印象である「やわらかな」、「血色のよい」等の各印象を含む。
さらに、「見え方印象」には、上記の髪の見え方の印象又は肌の見え方の印象を因子分析することによってグルーピングされた見え方因子としての良質感、躍動感、やわらか感、しっとり感等を含むものとする。
つまり、「見え方印象」は、総合的である人の印象を構成する印象要素であり、物理的な状態を示すことにより、女性印象又は男性印象と比較して、外観表現として、より明確に認識できる概念である。
【0020】
<人の印象の変化傾向と部分メイク領域との相関情報の算出について>
図2に加えて、図3及び図4を参照して、人の印象(女性印象)の変化傾向と部分メイク領域との相関情報方法について説明する。
図3は、図1のヘアカラースタイル画像の髪色変更部位に対する髪の見え方印象(「ハリのある」及び「やわらかな」)の平均評価値を示す図である。
図4は、図1のヘアカラースタイル画像の髪色変更部位に対する髪の見え方印象(「動きのある」及び「ウェットな」)の平均評価値を示す図である。
【0021】
本実施形態に係る相関情報決定方法は、人の印象(女性印象)の変化傾向と、髪色又は顔の肌色についての部分的なメイクアップである部分メイク領域と、について統計的に得られた相関関係を示す相関情報を定める方法である。
本実施形態に係る相関情報決定方法は、部分メイク領域にメイクした場合のモデル(例えば髪色変更画像に映り込んだモデル)を目視した複数の被験者がモデルから受ける人の印象に関する評価値を採取して統計データを形成し、統計データから、人の印象の変化傾向と部分メイク領域との相関情報を定めることを特徴とする。
特に複数の被験者は、人の印象に対する感覚を共有する集団であると好適である。
上記のようにすれば、統計データを用いることにより、相関情報に係る信頼性を高めることができる。
【0022】
髪色変更部位が示された髪色変更画像(感性評価刺激)として、ストレートヘアスタイル及びカールヘアスタイルの画像のそれぞれに、図1に示すような位置に髪色変更を施した8種(S1~S4、C1~C4)を用いた。
髪色変更の施し方としては、S1及びC1は頭頂から毛先まで細め、S2及びC2は頭頂から毛先まで太め、S3及びC3は耳下内側に太め、S4及びC4は毛先に太め、である。モデルはブルーベース肌の同一人物であり、施した髪色変更は暖色系のローズピンクであった。
【0023】
感性評価には一対比較法を用いた。上記8種の刺激の各対を被験者に呈示し、女性印象としてフェミニン及びモードを、髪の見え方として後述する表1の結果に基づき各因子(良質感、躍動感、やわらか感、しっとり感)それぞれに関して因子負荷量が最も大きい「ハリのある」、「動きのある」、「やわらかな」、「ウェットな」を7段階で評価させた。
刺激対は暗室内でLCD モニタ上に呈示された。呈示した刺激対と被験者の視距離は約60cm、刺激サイズは横幅10.7cm、縦幅13.4cm、刺激の中心間距離は11.9cmであった。刺激対の呈示順はランダムとした。被験者は、20代の女性10名であり、刺激対内の呈示位置を被験者5名ずつ逆とした。検定結果はp<0.05を有意とした。
なお、一対比較法は、モニタを使わず、刺激を印刷したカードを併置して行うものでもよい。
また、上記のヘアスタイル画像を用いた、比較方法は一実施例を示すものであり、本発明による因子分析の方法はこのような方法に限定されない。
【0024】
<結果>
一対比較評価結果の解析により得られた印象(フェミニン、モード)に対する平均評価値を図2に示す。図2より、髪色変更の施し方と印象の間には、以下の関係性が確認された。
・頭頂から毛先まで太めに髪色変更を施した場合(S2、C2)はモードな女性印象を与える。
・毛先に太めに髪色変更を施した場合(S4、C4)はフェミニンな女性印象を与える。
【0025】
図2の結果によれば、例えばコーディネーターは、現状の女性印象から変化させる女性印象としてフェミニン印象を特定したときには、図2に示す相関情報を用いて、平均評価値の高いヘアカラースタイルである、図1に示すS3、S4、C1及びC4を選定する。換言するとS3、S4、C1及びC4を選定することにより、髪色変更部位を選定する。
【0026】
具体的には、フェミニン印象を特定したときには、S3のようにストレートヘアで髪の内側にカラーリングが施されたスタイル、S4のようにストレートヘアで毛先にカラーリングが施されたスタイル、C1のようにカールヘアで、髪の頭頂から細くカラーリングが施されたスタイル、及びC4のようにカールヘアで、毛先に太くカラーリングが施されたスタイルを選定する。これらのうち、平均評価値が相対的に高い、毛先にカラーリングが施されたS4、C4のスタイルが特に推奨されることになる。
【0027】
また、コーディネーターは、現状の女性印象から変化させる女性印象としてモード印象を特定したときには、図2に示す相関情報を用いて、平均評価値の高いヘアカラースタイルであるS2及びC2を選定する。換言するとS2及びC2を選定することにより、髪色変更部位を選定する。
【0028】
具体的には、モード印象を特定したときには、S2のようにストレートヘアで髪の頭頂から太くカラーリングが施されたスタイル、及びC2のようにカールヘアで髪の頭頂から太くカラーリングが施されたスタイルを選定する。
【0029】
このようにして、コーディネーターは、部分メイク領域(髪色変更部位)と人の印象(女性印象としてはフェミニン、モード等)の変化傾向との結びつきに係る相関情報(平均評価値の高低)により、変化させる人の印象から部分メイク領域を客観的に選定することができる。
【0030】
次に、一対比較評価結果の解析により得られた髪の見え方印象(ハリのある、動きのある、やわらかな、ウェットな)に対する平均評価値を図3及び図4に示す。図3及び図4により、髪色変更の施し方と印象の間には、以下の関係性が確認された。
・頭頂から毛先まで太めに髪色変更を施した場合(S2、C2)はハリのある、ウェットな、見え方印象を与える。
・毛先に太めに髪色変更を施した場合(S4、C4)は動きのある、やわらかな、見え方を与える。
【0031】
図3の結果によれば、コーディネーターは、現状の髪の印象から変化させる髪の印象として「ハリのある」髪の印象を特定したときは、図3に示す相関情報を用いて、平均評価値の高いヘアカラースタイルである、図1に示すS2、S3、S4及びC2の髪色変更部位を選定することになる。
【0032】
具体的には、「ハリのある」髪の印象を特定したときは、S2のようにストレートヘアで髪の頭頂から太くカラーリングが施されたスタイル、S3のようにストレートヘアで髪の内側にカラーリングが施されたスタイル、S4のようにストレートヘアで毛先に太くカラーリングが施されたスタイル及びC2のようにカールヘアで髪の頭頂から太くカラーリングが施されたスタイルを選定する。これらのうち、平均評価値が相対的に高い、頭頂から太くカラーリングを施すS2及びC2のスタイルが特に推奨されることになる。
【0033】
また、コーディネーターは、現状の髪の印象から変化させる髪の印象として「やわらかな」又は「動きのある」髪の印象を特定したときは、図3及び図4に示す相関情報を用いて、平均評価値の高いヘアカラースタイルである、図1に示すS4、C1、及びC4の髪色変更部位を選定することになる。
【0034】
具体的には、「やわらかな」又は「動きのある」髪の印象を特定したときは、S4のようにストレートヘアで毛先に太くカラーリングが施されたスタイル、C1のようにカールヘアで髪の頭頂から細くカラーリングが施されたスタイル、及びC4のようにカールヘアで、毛先に太くカラーリングが施されたスタイルを選定する。これらのうち、平均評価値が相対的に高い、毛先に太くカラーリングが施されたS4、C4のスタイルが特に推奨されることになる。
【0035】
図3の結果によれば、コーディネーターは、現状の髪の印象から変化させる髪の印象として「ウェットな」髪の印象を特定したときは、図4に示す相関情報を用いて、平均評価値の高いヘアカラースタイルである、図1に示すS2、S3、C2、及びC3の髪色変更部位を選定することになる。
【0036】
具体的には、「ウェットな」髪の印象を特定したときは、S2のようにストレートヘアで髪の頭頂から太くカラーリングが施されたスタイル、S3のようにストレートヘアで髪の内側にカラーリングが施されたスタイル、C2のようにカールヘアで髪の頭頂から太くカラーリングが施されたスタイル、及びC3のようにカールヘアで髪の内側にカラーリングが施されたスタイルを選定する。これらのうち、平均評価値が相対的に高い、頭頂から太くカラーリングを施すS2及びC2のスタイルが特に推奨されることになる。
【0037】
上記のようにすれば、コーディネーターは、見え方印象の変化に基づいて、部分メイク領域を顧客に適切にアドバイスすることができる。
【0038】
図2から図4の結果を比較することにより、以下のように女性印象を変化させるための髪色変更のさせ方を特定することができる。
・フェミニンな印象を与えるためには、動きのある髪の見え方が重要であり、毛先に太めに髪色変更を施せばよい。
・モードな印象を与えるためには、ハリのある髪の見え方が重要であり、頭頂から毛先まで太めに髪色変更を施せばよい。
【0039】
つまり、本実施形態においては、選定されうる部分メイク領域の少なくとも一つは、髪色を変更する部位が毛先のみであると好適であった。すなわち、毛先の部位の髪色のみを変更することで、上記のように、女性印象としてのフェミニン印象に変更すること、並びに髪に関わる見え方の印象である見え方印象「やわらかな」印象及び「動きのある」印象に変更することに、高い評価値が得られた。
【0040】
人の印象は、女性的な印象表現である女性印象と、髪又は肌に関わる見え方の印象である見え方印象と、を両方含んで構成されていてもよい。そして、人の印象の変化傾向は、女性印象の変化傾向と、見え方印象の変化傾向と、を含んで構成されていてもよい。
つまり、コーディネーターは、変更したい女性印象と髪又は肌の見え方の印象を顧客から聞きこんで、部分メイク領域の提案を広く行うようにしてもよい。
上記のようにすれば、女性印象の変化と髪又は肌に関わる見え方印象の変化とによって、部分メイク領域を多様に且つより好みに合うものを選定することができる。
【0041】
相関情報は、異なる髪型それぞれの部分メイク領域と人の印象の変化傾向との相関情報を含んでいてもよい。
本実施形態に係る「髪型」としては、ストレートヘアとカールヘアを挙げているがこのような形状に限定されない。例えば、髪型としては、ショートヘア、ミディアムヘア、ロングヘア、ハーフアップなどのアレンジヘアであってもよい。
上記のようにすれば、図2から図4に示す、異なる髪型(ストレートヘアとカールヘア)それぞれの部分メイク領域と人の印象(女性印象又は髪の見え方印象)の変化傾向との相関情報を用いることで、より詳細且つ適切に髪色変更部位を提案することができる。
【0042】
また、コーディネーターは、特定された女性印象に基づいて選定された部分メイク領域(髪色変更部位)を顧客に提案するとともに、特定された見え方印象(ハリのある印象、やわらかな印象等)に基づいて選定された部分メイク領域(髪色変更部位)を顧客に提案してもよい。
このようにすれば、例えば選択された女性印象に基づく部分メイク領域が好みでなくても、見え方印象に基づく部分メイク領域を提案することができ、顧客の好みに適した提案が可能となる。
【0043】
また、逆に、部分メイクから相関情報を用いて人の印象(性別印象又は見え方印象)を評価するようにしてもよい。
具体的には、この評価方法は、まず、髪色又は顔の肌色についての部分的なメイクアップである部分メイク領域(髪色変更部位)を特定する。そして、性別印象(女性印象)の変化傾向と、部分メイク領域と、について統計的に得られた相関関係を示す相関情報(図1及び図2)を用いて、特定された部分メイク領域から人の印象(性別印象(女性印象))を評価することを特徴とする。
【0044】
また、部分メイク領域から髪・顔の見え方印象を評価する方法として、具体的には、髪・顔の見え方印象(ハリのある、やわらかな、動きのある、良質感のある又は躍動感のある等)の変化傾向と、部分メイク領域と、について統計的に得られた相関関係を示す相関情報(図3又は図4)を用いる。特定された部分メイク領域から人の印象(髪・顔の見え方印象)を評価する。
【0045】
人の印象(性別印象)の評価としては、例えば、モード割合60%且つフェミニン印象40%など、印象成分として女性印象の度合いを評価値で表わすことが考えられる。
このようにすれば、外観から把握される顧客の現状の部分メイク領域(髪色変更部位又は肌色変更部位)又は顧客の希望する部分メイク領域から、図1及び図2に示す相関情報を用いて、人の見た目の総合的な印象で、直感的に理解が困難な人の印象を評価することができる。
【0046】
同様に、部分メイク領域から、図3又は図4に示す相関情報を用いて行う、人の印象(見え方印象)の評価としては、例えば、髪のハリ40%且つ動き30%等、髪(又は顔)の見え方の度合いを評価値で表わすことが考えられる。
このようにすれば、外観から把握される顧客の現状の部分メイク領域(髪色変更部位又は肌色変更部位)又は顧客の希望する部分メイク領域から、図1及び図3又は図4に示す相関情報を用いて、概念的な外観表現である見え方印象を評価することができる。
【0047】
また、女性印象と部分メイク領域との相関情報と、髪又は肌に関わる見え方印象と部分メイク領域との相関情報と、を用いて、女性印象から見え方印象を特定するようにしてもよい。
より具体的には、女性的な印象表現である複数の女性印象から1又は複数の女性印象を特定し、女性印象の変化傾向と、髪色又は顔の肌色についての部分的なメイクアップである部分メイク領域と、について統計的に得られた相関関係を示す相関情報を第1相関情報とする。
さらに、髪又は肌に関わる見え方の印象である見え方印象の変化傾向と、部分メイク領域と、について統計的に得られた相関関係を示す相関情報を第2相関情報とする。
そして、見え方印象の特定方法は、第1相関情報と第2相関情報における部分メイク領域に係る共通性に基づき、特定された女性印象から見え方印象を特定する。
【0048】
共通性とは、具体的には、第1相関情報及び第2相関情報における部分メイク領域(例えば髪色変更部位)に対する平均評価値がどちらもプラスの値である(つまり、平均評価値が高い)という共通性である。
例えば、本実施形態においては、「モード」の女性印象においては、図2に示すように、S2及びC2の部分メイク領域(髪色変更部位)に関して高い平均評価値が得られており、この部分メイク領域と高い相関関係を有している(第1相関情報)。
「ハリのある」及び「ウェットな」髪の見え方印象においては、図3及び図4に示すように、S2及びC2の部分メイク領域(髪色変更部位)に関して高い平均評価値が得られており、この部分メイク領域と高い相関関係を有している(第2相関情報)。
【0049】
そして、「モード」の女性印象と「ハリのある」及び「ウェットな」髪の見え方印象とは、S2及びC2の部分メイク領域に関して高い平均評価値が得られるという点で共通する。
このため、「モード」の女性印象から「ハリのある」及び「ウェットな」髪の見え方印象が特定される。
【0050】
そして、「モード」という外観的にイメージすることが容易ではない女性印象を高めるために、「ハリのある」及び「ウェットな」髪の見え方印象を高めることが重要であることが結びつけられる。このように女性印象と髪の見え方印象の結びつきにより、コーディネーターは、特定の女性印象を高めたい顧客に対して、髪の見え方印象を絞って適切な部分メイクアップを提案できる。また、コーディネーターは、女性印象に関連する髪の見え方印象に基づいて、新たな部分メイクアップを発見しやすくなる。
【0051】
<髪色処理装置>
次に、選定した髪色変更部位を示す髪色処理装置X(部分メイク処理装置)を用いて、髪色変更部位を提案する方法について、図5及び図6を例示して説明する。
図5は、髪色処理装置Xを示す模式図、図6は、髪色処理装置Xの構成を示すブロック図である。
【0052】
本実施形態に係る提案方法は、上記の選定方法と、図5及び図6に示す部分メイク処理装置(髪色処理装置X)と、を用いて、部分メイク領域(髪色変更部位)を提案する方法である。
部分メイク処理装置(髪色処理装置X)は、部分メイク領域(髪色変更部位)を入力する入力部10と、人の画像12及び画像編集プログラムを記憶する記憶部(メモリ42)と、入力部10に入力された情報に基づき、メモリ42に記憶された画像編集プログラム(コンピュータプログラム18)を動作させて、メモリ42に記録された人の画像12における部分メイク領域(髪色変更部位)を変更する演算部(CPU41)と、CPU41により変更された部分メイク領域(髪色変更部位)を含む画像又は動画(複数の画像で構成される動画)を表示可能な表示部(出力部30)と、を備える。
【0053】
そして本実施形態に係る提案方法は、上記の選定方法により選定された部分メイク領域(髪色変更部位)を入力部10に入力し、CPU41により変更された部分メイク領域(髪色変更部位)を含む画像12又は動画を表示して、部分メイク領域(髪色変更部位)を顧客に提案するというものである。
このように、部分メイク領域(髪色変更部位)を含む画像又は動画を示すことで、顧客に変更後の状態をイメージさせやすくすることができる。
なお、本実施形態における、部分メイク処理装置は、髪色の変更を行う髪色処理装置Xであるが、同様の構成を備える、肌色の変更を行う肌色処理装置としてもよい。
【0054】
具体的には、髪色処理装置Xは、いわゆるタブレット(情報処理装置)であり、例えば、バスで相互に接続される、図6に示すCPU(Central Processing Unit)41、入力部10、メモリ42、出力部30等を有する。
なお、髪色処理装置Xを形成する各ハードウェア要素の数はそれぞれ制限されず、情報処理装置もタブレットに限定されず、デスクトップコンピュータ、スマートフォン等であってもよい。
なお、髪色処理装置Xは、図6に図示されていないハードウェア要素を含んでもよく、そのハードウェア構成は制限されない。
【0055】
CPU41は、一般的なCPU以外に、特定用途向け集積回路(ASIC)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等で構成してもよい。
メモリ42は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
入出力I/F43は、例えばインストールされるコンピュータプログラム18をメモリ42に格納するために用いられるものである。
出力部30は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、CPU41等により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。
入力部10は、ユーザ操作の入力を受け付ける静電容量方式のタッチパネルであるが、キーボード、マウス等であってもよい。
【0056】
利用者(顧客又はコーディネーター)は、出力部30に表示された画像12に対して、上記の髪色選定方法(部分メイク領域選定方法)によって選定された髪色変更部位をタッチペン3でなぞるようにして、入力部10に髪色変更部位に係る情報を入力する。CPU41は、メモリ42に記録されたコンピュータプログラム18を動作させ、入力部10から入力された情報に基づいて、髪色を変更した画像を出力部(ディスプレイ)30に出力する。
【0057】
特に本実施形態に係る髪色処理装置Xの入力部10には、色の選択を入力する髪色選択パネル13、着色の状態の選択を受付ける着色選択パネル14、着色操作の選択を受付ける操作パネル15が設けられている。
これにより、イメージに合った髪色変更処理を好適に行えるようになっている。
【0058】
メモリ42に予め保存された図1に示すヘアカラースタイル画像に対して髪色を変更するようにしてもよい。また、このような画像に限定されず、メモリ42に予め保存されたイラストに対して髪色を変更するようにしてもよい。
さらには、髪色処理装置Xを用いて、カメラで撮影された利用者(顧客)自身の画像に対して、選定された髪色変更部位に係る画像処理を加えるものであってもよい。このようにすれば、顧客の髪色変化後のイメージを具体的に提示することができる。
【0059】
<髪色変更提案装置>
次に、髪色変更に加えて髪色変更部位の選定も行う髪色変更提案装置Yを用いて、髪色変更部位を提案する方法について、図7を例示して説明する。
図7は、髪色変更提案装置Yの構成を示すブロック図である。
【0060】
本実施形態に係る部分メイク変更提案装置(髪色変更提案装置Y)は、女性的、男性的又は男性と女性に共通する印象表現である性別印象の変化傾向と、髪又は肌に関わる見え方の印象である見え方印象の変化傾向と、変更される髪色と髪色が変更される部位とを含む髪色変更部位、又は変更される顔の肌色と肌色が変更される部位とを含む肌色変更部位である部分メイク領域(髪色変更部位)と、のそれぞれの関係のうち、少なくともいずれかについて統計的に得られた相関関係を示す相関情報を記憶する記憶部(メモリ42)と、変化させる性別印象、見え方印象又は部分メイク領域の少なくともいずれかが入力される入力部10と、メモリ42に記憶された相関情報に基づき、入力部10に入力された性別印象、見え方印象又は部分メイク領域の少なくともいずれかから入力されなかった性別印象、見え方印象又は部分メイク領域の少なくともいずれかを選定する演算部(CPU41)と、CPU41によって選定された性別印象、見え方印象又は部分メイク領域の少なくともいずれかを出力する出力部30と、を備えることを特徴とする。
【0061】
本実施形態に係る髪色変更提案装置Yは、いわゆるタブレットであり、例えば、バスで相互に接続される、図7に示すCPU41、入力部10、メモリ42、出力部30、通信ユニット44等を有する。
なお、髪色変更提案装置Yを形成する各ハードウェア要素の数はそれぞれ制限されず、情報処理装置もタブレットに限定されず、デスクトップコンピュータ、スマートフォン等であってもよい。
また、髪色変更提案装置Yは、図7に図示されないハードウェア要素を含んでもよく、そのハードウェア構成は制限されない。
【0062】
例えば、利用者(コーディネーター又は顧客)は、髪色変更提案装置Yの入力部10に、変化させる人の印象(女性印象(性別印象)又は見え方印象)を入力する。
CPU41は、メモリ42に格納された人の印象の変化傾向と、メイクアップされる髪色又は顔の肌色を含む部位である部分メイク領域と、の相関情報、及びコンピュータプログラム48を読みこむ。
このようにして、CPU41は、当該人の印象(女性印象(性別印象)又は見え方印象)を特定し、上記の相関情報を用いて、特定された人の印象から部分メイク領域(髪色及び髪色変更部位、又は肌色及び肌色変更部位)を選定して、出力部30によりイメージ画像を出力(表示)する。
【0063】
このような構成によれば、コーディネーターによらずとも髪色変更提案装置Yを利用する利用者が、変化させる人の印象を入力することで、当該印象に合致する部分メイク領域を示すイメージ画像を確認することができる。
【0064】
また、演算部(CPU41)は、部分メイク領域を出力部30に出力する場合に、入力部10に入力された性別印象又は見え方印象から、複数のパターンの部分メイク領域を選定し、選定された複数のパターンの部分メイク領域(を含む画像又は動画)を出力部30に出力(表示)して、利用者が部分メイク領域を選択できるようにしてもよい。
【0065】
具体的には、利用者が性別印象(例えば、フェミニン印象)又は見え方印象(例えば、ハリのある髪であるとか、やわらかな髪であるとか、良質感があるとか。)を入力部10にインプットしたときに、CPU41は、上記の相関情報を用いて、入力された性別印象又は見え方印象から複数の異なる部分メイク領域を含む画像(例えば髪色変更部位の異なる画像)を出力部30に表示する。利用者は、出力された複数の部分メイク領域を含む画像から1つを選択する。
このように、段階的に部分メイク領域を選択可能とすることで、複数のバリエーションを提示して、人の好みに合う部分メイクを絞り込むことが可能となる。
【0066】
また、例えば、利用者は、髪色変更提案装置Yの入力部10に、変化させる見え方印象(例えば、髪のやわらかな印象や、動きのある印象、又は躍動感若しくは良質感)を入力する。
CPU41は、メモリ42に格納された見え方印象の変化傾向と、性別印象と、の相関情報、及びコンピュータプログラム48を読みこむ。
このようにして、CPU41は、当該見え方印象を特定し、上記の相関情報を用いて、特定された見え方印象から性別印象を選定して、出力部30からテキスト情報(例えば、フェミニン系であるとか、フェミニン50%、モード20%であるとか。)を出力(表示)する。
【0067】
同様にして、利用者は、部分メイク領域を入力部10に入力して、相関情報を用いて、性別印象又は見え方印象(例えば、ハリのある髪であるとか、やわらかな髪であるとか、良質感があるとか。)のテキスト情報を出力部30から出力するようにしてもよく、性別印象を入力部10に入力して、相関情報を用いて、見え方印象のテキスト情報を出力部30から出力するようにしてもよい。
なお、コンピュータプログラム48は、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから入出力I/F43又は通信ユニット44を介してインストールされ、メモリ42に格納されるものであってもよい。
【0068】
<女性印象、及び髪の見え方印象の選定方法について>
次に、上記の女性印象、及び髪の見え方印象の選定方法について、上記の図面の他に、図8を参照して具体的に説明する。
図8は、女性印象(フェミニン印象及びモード印象)に対する髪の見え方因子(「良質感」、「躍動感」、「やわらか感」及び「しっとり感」)の平均因子得点を示す図である。
【0069】
発明者は、女性の印象と髪の見え方の関係を見出すために、一般にStyling Map(登録商標)として定められている4印象(アクアテイスト、ブライトテイスト、クリスタルテイスト、アーステイスト)を例として、それぞれの印象を変化させるために重要となる髪及び顔・肌の見え方について、以下の手順により検討した。
以下、上記4印象をStyling Map4印象と略記する。
【0070】
まず、Styling Map4印象の特徴を表わす形容語を収集するために、美容専門評価者(髪及び顔・肌状態の評価を日常的に行っている研究員)によるセッションを行った。参加した美容専門評価者は、20~30代の女性5名であった。セッションでは、美容専門評価者に対し、Styling Map4印象に当たるインテリア、ドレス、イメージモデルの写真を提示しながら髪の見え方を表わす形容語を多く挙げさせた。
セッションの最後により意味が近いと思われる語ごとのグループにまとめ、最終的に髪の見え方を表わす形容語を選定した。
【0071】
次に、選定した形容語を用いた以下のアンケートを20代女性(被験者)600人に対して施した。アンケートでは回答者に対し、人の注目を浴び、外見を意識して出かけるシーンを1つ想像させ、そのシーンでなりたい印象をStyling Map4印象から選ばせ、そのシーンで着たいドレスを選ばせた。
その後、被験者に選定した形容語を呈示し、先に選択した印象(上記のシーンでなりたい印象)にあてはまると思うかを7段階尺度(1:とてもあてはまる~7:全くあてはらない)で評価させた。形容語の呈示順序はランダム化した。また、実験参加者間で異なる順序になるようにした。回答を1点から7点の7段階の評点に変換したうえで、因子分析を行った。
【0072】
因子数はスクリー基準によって決定し、抽出法は重み付き最小二乗法、回転法はバリマックス回転を用いた。分析には、R3.6.1及びpsychパッケージを用いた。さらに、各因子の因子得点を回答者ごとに算出し、回答者が選んだ印象によって因子得点の平均値が異なるのかを確認した。
【0073】
<結果>
美容専門評価者によるセッションの結果、Styling Map4印象は、それぞれ、フェミニン(アクアテイスト)、キュート(ブライトテイスト)、モード(クリスタルテイスト)、ゴージャス(アーステイスト)という女性印象で表されると考えられた。
よって、以下ではStyling Map4印象をフェミニン、キュート、モード、ゴージャスと表記する。
【0074】
また、選定した形容語は、以下の通りであった。
髪の見え方に関する形容語として、しっとりした、やわらかな、光沢感のある、立体感のある、アクセント効果のある、スタイリング感のある、まとまりのある、指通りのよい、ハリのある、なめらかな、軽やかな、動きのある、ふんわりした、ウェットな、素髪のような、の15語を選定した。
顔・肌の見え方に関する形容語として、明るい、つややかな、やわらかな、目鼻立ちのはっきりした、血色のよい、うるおいのある、弾力のある、健康的な、顔が引き締まった、の9語を選定した。
【0075】
髪の見え方15語、顔・肌の見え方に関する9語それぞれに関し、アンケート結果に対して因子分析を行った結果、表1及び表2に示す通り、髪の見え方に関して4つの見え方因子(良質感、躍動感、やわらか感、しっとり感)、顔・肌の見え方に関して2つの見え方因子(美肌感、陰影感)が抽出された。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
アンケートにおいてフェミニン、モードをなりたい印象として選んだ回答者を例に、因子分析で抽出された髪の見え方印象に関する4因子の因子得点を算出した結果を図8に示す。因子得点算出の対象とする回答者としては、フェミニン、モードという印象と上記美容専門評価者のセッションで使用したドレスのイメージとが合致している回答者それぞれ109人、55人を選定した。図8において、フェミニンでは躍動感としっとり感の得点が高く、モードでは良質感とやわらか感の得点(平均因子得点)が高いことが確認された。
【0079】
このようにして、図1に示すヘアカラースタイル画像によらずに、フェミニン等の女性イメージと髪の見え方印象(又は肌の見え方印象)との相関情報(図8)を求めることができる。
つまり、図8に示す相関情報を用いることで、女性印象から見え方印象(良質感、躍動感等)を選定することができる。
【0080】
より具体的には、この選定方法は、女性的な印象表現である複数の女性印象から1又は複数の女性印象(フェミニン又はモード等)を特定し、女性印象の変化傾向と、髪又は肌に関わる見え方の印象である見え方印象の変化傾向と、について統計的に得られた相関関係を示す相関情報(図8に図示。)を用いて、特定された女性印象から見え方印象(良質感、躍動感等)を選定する。
【0081】
このようにして求められた相関情報は、ヘアカラースタイル画像によらず見え方印象との相関情報であるため、特定のヘアカラースタイル画像のモデルや髪色変更部位に捉れない点で好適である。また、被験者は、女性印象とアイテム(ドレス)が一致するもので構成された被験者集団であるため、上記の相関情報について信頼性の高い情報が得られた。
【0082】
一方で、図2図3及び図4で示された、平均評価値の高低が共通するフェミニン等の女性イメージと髪の見え方印象との相関情報では、ヘアカラースタイル画像を参照している点で、具体的なイメージを共有できている点で好適であるともいえる。
つまり、相関情報を導き出すための統計データを増やすことで、相関情報に関してより正確性を高めることができる。
【0083】
上記実施形態においては、人の印象としてメイクアップする機会の多い女性印象とし、顧客を女性であるものとして説明したが、男性印象として、顧客を男性であるものとしてもよい。この場合においても、本実施形態と同様に統計データによって定まる相関情報を用いて、部分メイク領域を決定すればよい。
【0084】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)人の印象と複数の髪又は肌の見え方因子(見え方印象)との関連性について複数の被験者が採点した得点に対して因子分析を行って得られた因子得点に基づき、前記人の印象を変化させるための前記見え方因子を特定して行う相関情報決定方法であって、前記得点を採点する前記複数の被験者は、前記人の印象と、前記人の印象に合うものとして選択したアイテム(ドレス)の印象とが合致するもので構成されている相関情報決定方法。
なお、人が選択するアイテムとして、衣服の他に、アクセサリーやバッグ等がある。
上記構成によれば、人の印象とアイテムが一致することにより、人の印象に対する認識の正確さ(信頼度)を高めることができる。
(2)女性印象と複数の髪又は肌の見え方因子(見え方印象)との関連性について複数の被験者が採点した得点に対して因子分析を行って得られた因子得点に基づき、前記女性印象を変化させるための見え方因子を特定して行う相関情報決定方法であって、前記複数の被験者は、外見を意識して出かけるシーンを前記複数の被験者に想像させた状態で、前記得点を採点する相関情報決定方法。
上記構成によれば、女性印象に対応する見え方因子を、因子分析を行うことで特定することができ、特に外見を意識して出かけるシーンを想像させることで、女性印象と見え方因子との対応関係の精度を高めることができる。
(3)女性的な印象表現である複数の女性印象から1又は複数の女性印象を特定し、前記女性印象の変化傾向と、髪又は肌に関わる見え方の印象である見え方印象の変化傾向と、について統計的に得られた相関関係を示す相関情報を用いて、特定された前記女性印象から前記見え方印象を選定することを特徴とする選定方法。
【符号の説明】
【0085】
X 髪色処理装置
Y 髪色変更提案装置
3 タッチペン
10 入力部
12 画像
13 髪色選択パネル
14 着色選択パネル
15 操作パネル
18 コンピュータプログラム
30 出力部
41 CPU(演算部)
42 メモリ(記憶部)
43 入出力I/F
44 通信ユニット
48 コンピュータプログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8