(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】注入フィルムを有する複合材のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/34 20060101AFI20241030BHJP
B29C 43/12 20060101ALI20241030BHJP
B29C 70/44 20060101ALI20241030BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20241030BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/12
B29C70/44
B29C70/06
B29K105:08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020140051
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-07-26
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エフ・スポルディング
(72)【発明者】
【氏名】ケルシー・エム・ヘイズ
(72)【発明者】
【氏名】デレク・ファン
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06311542(US,B1)
【文献】特開2004-276355(JP,A)
【文献】特開昭62-259819(JP,A)
【文献】特開2003-011231(JP,A)
【文献】特開2008-088276(JP,A)
【文献】特開2004-106347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/34
B29C 43/12
B29C 70/06
B29C 70/44
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の積層板表面(240)、第2の積層板表面(242)、および前記第1の積層板表面(240)と前記第2の積層板表面(242)との間に配置された複数の繊維トウ(204)を備える複合積層板(214)であって、
前記複数の繊維トウ(204)のそれぞれが、複数の繊維ストランド(218)および樹脂(206)を備え、
前記樹脂(206)が、前記複数の繊維トウ(204)のそれぞれの第1の部分(210)内に配置され、
前記複数の繊維トウ(204)のそれぞれが、前記複数の繊維トウ(204)のうちの互いに異なる繊維トウ(204)に近接して配置され、
前記樹脂(206)が、第1の温度範囲内で第1の粘度を有する、複合積層板(214)と、
前記複数の繊維トウ(204)の前記第1の積層板表面(240)に配置された注入フィルム(202)であって、
前記注入フィルム(202)が、前記第1の温度範囲内の前記樹脂(206)の前記第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、
前記注入フィルム(202)が前記第1の温度範囲内にある場合、前記注入フィルム(202)が、前記複合積層板(214)内に流れ込むように構成されている、注入フィルム(202)と
を備える複合構造(200)。
【請求項2】
前記複合積層板(214)が、前記複数の繊維トウ(204)間に配置されたボイド(212)をさらに有し、前記注入フィルム(202)が前記第1の温度範囲内にある場合、前記注入フィルム(202)が、前記ボイド(212)に流れ込むように構成されている、請求項1に記載の複合構造(200)。
【請求項3】
前記第1の部分(210)が、前記複数の繊維トウ(204)のそれぞれの外側部分である、請求項1または2に記載の複合構造(200)。
【請求項4】
前記複数の繊維トウ(204)が、前記樹脂(206)を含まない第2の部分(208)をそれぞれさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合構造(200)。
【請求項5】
前記第1の温度範囲よりも大きい第2の温度範囲にある場合、前記樹脂(206)が、前記第2の部分(208)内に移動するように構成されている、請求項
4に記載の複合構造(200)。
【請求項6】
前記第2の部分(208)が、前記複数の繊維トウ(204)の中央部分である、請求項
4又は5に記載の複合構造(200)。
【請求項7】
前記注入フィルム(202)が、第1の注入フィルム(202A)であり、前記複合構造(200)が、
前記第2の積層板表面(242)に配置された第2の注入フィルム(202B)であって、前記第2の注入フィルム(202B)が、前記第1の温度範囲内の前記樹脂(206)の前記第1の粘度よりも低い前記第2の粘度を有し、前記第2の注入フィルム(202B)が前記第1の温度範囲内にある場合、前記複合積層板(214)内に流れ込むように構成され、前記第2の積層板表面(242)が、前記第1の積層板表面(240)の反対側である、第2の注入フィルム(202B)
をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合構造(200)。
【請求項8】
前記複合積層板(214)が、第1の複数の繊維トウ(204)を含む第1の複合積層板(214A)であり、前記複合構造(200)が、
第2の複数の繊維トウ(204)を含む第2の複合積層板(214B)であって、前記注入フィルム(202)が、前記第1の複合積層板(214A)と前記第2の複合積層板(214B)との間に配置されている、第2の複合積層板(214B)
をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合構造(200)。
【請求項9】
前記複合構造(200)が、航空機(100)の一部に結合させられるように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合構造(200)。
【請求項10】
第1の複合積層板(214A)と、
第2の複合積層板(214B)であって、前記第1の複合積層板(214A)と前記第2の複合積層板(214B)とのそれぞれが、複数の繊維トウ(204)を含み、
前記複数の繊維トウ(204)のそれぞれが、複数の繊維ストランド(218)および樹脂(206)を備え、
前記樹脂(206)が、前記複数の繊維トウ(204)のそれぞれの第1の部分(210)内に配置され、
前記複数の繊維トウ(204)のそれぞれが、前記複数の繊維トウ(204)のうちの互いに異なる繊維トウ(204)に近接して配置され、
前記樹脂(206)が、第1の温度範囲内で第1の粘度を有する、第2の複合積層板(214B)と、
前記第1の複合積層板(214A)と前記第2の複合積層板(214B)との間に配置された注入フィルム(202)であって、
前記注入フィルム(202)が、前記第1の温度範囲内の前記樹脂(206)の前記第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、
前記注入フィルム(202)が前記第1の温度範囲内にある場合、前記注入フィルム(202)が、前記第1の複合積層板(214A)、前記第2の複合積層板(214B)、またはその両方に流れ込むように構成されている、注入フィルム(202)と
を備える複合構造(200)。
【請求項11】
真空バッグ(320)を複合構造(200)の周りに配置するステップ(406)であって、前記複合構造(200)が、
第1の積層板表面(240)、第2の積層板表面(242)、および前記第1の積層板表面(240)と前記第2の積層板表面(242)との間に配置された複数の繊維トウ(204)を備える複合積層板(214)であって、
前記複数の繊維トウ(204)のそれぞれが、複数の繊維ストランド(218)および樹脂(206)を備え、
前記樹脂(206)が、前記複数の繊維トウ(204)のそれぞれの第1の部分(210)内に配置され、
前記樹脂(206)が、第1の温度範囲内で第1の粘度を有する、複合積層板(214)と、
前記複数の繊維トウ(204)の前記第1の積層板表面(240)に配置された注入フィルム(202)であって、
前記注入フィルム(202)が、前記第1の温度範囲内の前記樹脂(206)の前記第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、
前記注入フィルム(202)が前記第1の温度範囲内にある場合、前記注入フィルム(202)が、前記複合積層板(214)内に流れ込むように構成されている、注入フィルム(202)と
を備えるステップ(406)と、
圧縮力を前記複合構造(200)にかけるために、前記真空バッグ(320)内の圧力を減少させるステップ(408)と、
前記注入フィルム(202)を前記複合積層板(214)内に流し込むために前記複合構造(200)を前記第1の温度範囲にまで加熱するステップ(410)と
を含む方法(400)。
【請求項12】
前記複合積層板(214)内のボイド(212)を前記注入フィルム(202)で塞ぐステップ(414)
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂(206)を前記繊維トウ(204)の第2の部分(208)内に移動させる(412)ために、前記複合構造(200)を第2の温度範囲にまで加熱するステップ
をさらに含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の部分(208)が、前記繊維トウ(204)の中央部分である、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記樹脂(206)を前記第2の部分(208)内に移動させるステップ(412)が、前記第2の部分(208)から空気を変位させる、請求項
13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記樹脂(206)を前記第2の部分(208)内に移動させるステップ(412)が、前記注入フィルム(202)を前記複合積層板(214)内にさらに流し込む、請求項
13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記複合積層板(214)を据えるステップ(402)
をさらに含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記注入フィルム(202A)を前記第1の積層板表面(240)に張り付けるステップ(404)と、
前記注入フィルム(202B)を前記第2の積層板表面(242)に張り付けるステップ(404)と
をさらに含む、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
圧力を減少させる前記ステップ(408)と、前記複合構造(200)を加熱するステップとは、オートクレーブ外で実施される、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記複合構造(200)を航空機(100)の一部に結合させるステップ
をさらに含む、請求項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来から、繊維強化プラスチック(FRP)複合構造は、オートクレーブを使用して硬化される。しかし、オートクレーブは、かさばり、高価で、コストがかかり、操作のためのリソースが集中する。したがって、硬化のためにオートクレーブを必要としない構造を開発することが望ましい。しかしながら、オートクレーブ外で硬化された複合構造には、通常、許容できないレベルの孔が含まれている。したがって、オートクレーブ外で硬化された構造には許容できないレベルの孔が生じるため、複合構造はオートクレーブ内で硬化され続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
注入フィルムを含む複合構造のための方法およびシステムについて説明する。複合構造の製造中に、注入フィルムが、当該複合構造の未硬化の複合積層板の上に配置される。複合積層板は、複数の繊維トウと樹脂とを含む可能性がある。複数の繊維トウは、複数の繊維ストランドをそれぞれ含む。樹脂は、第1の温度範囲内で第1の粘度を有する。注入フィルムは、複数の繊維トウの表面に配置され、第1の温度範囲内の樹脂の第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、注入フィルムが第1の温度範囲内にある場合、複合積層板に流れ込むように構成されている。したがって、複合構造の処理温度が上昇すると、注入フィルムが複合積層板に流れ込み、複合積層板内のボイドが塞がれる。したがって、注入フィルムは、複合積層板内のボイドの量を減少または消失させる。次に、複合構造は硬化および固化されワークピースになる。次に、得られた複合構造は、例えば航空機等のビークルに構造として組み込まれる。
【0003】
本開示による本発明の形態の例示的で非排他的な例が、以下の列挙された段落で説明される。これらおよび他の例が、図を参照して以下でさらに説明される。
【0004】
本開示は、様々な例を示す添付の図面と併せて以下の説明を参照することにより、最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】いくつかの例による、複合構造を備えたビークルを示す図である。
【
図1B】いくつかの例による複合積層板の様々な態様を示す図である。
【
図1C】いくつかの例による複合積層板の様々な態様を示す別の図である。
【
図1D】いくつかの例による複合積層板の様々な態様を示すさらに別の図である。
【
図1E】いくつかの例による複合積層板の様々な態様を示すさらに別の図である。
【
図2A】いくつかの例による、予備硬化された注入フィルム複合構造の断面図である。
【
図2B】いくつかの例による、別の予備硬化された注入フィルム複合構造の断面図である。
【
図2C】いくつかの例による、予備硬化された注入フィルム複合構造の例を示す図である。
【
図2D】いくつかの例による、予備硬化された注入フィルム複合構造の別の例を示す図である。
【
図2E】いくつかの例による、予備硬化された注入フィルム複合構造のさらに別の例を示す図である。
【
図3A】いくつかの例による、処理の様々な段階における
図2Aの注入フィルム複合構造の断面図である。
【
図3B】いくつかの例による、処理の様々な段階における
図2Aの注入フィルム複合構造の別の断面図である。
【
図4】いくつかの例による、複合構造を形成する方法に対応する工程のフローチャートである。
【
図5A】いくつかの例による、硬化された注入フィルム複合構造の断面図である。
【
図5B】いくつかの例による別の複合構造の断面図である。
【
図6A】いくつかの例による、航空機生産およびサービス方法論の例のフローチャートである。
【
図6B】いくつかの例による、ビークルの例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の説明では、提示された概念の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が述べられている。提示された概念は、これらの特定の詳細のいくつかまたはすべてがなくとも実践される場合がある。他の例では、説明された概念を不必要に不明瞭にすることを避けるために、周知の工程操作は詳細には説明されていない。特定の例を用いていくつかの概念を説明するが、これらの例は限定を意図するものではないことが理解されよう。
【0007】
序論
複合構造は、ビークル構造等の構造でますます利用されている。このような用途では、複合構造内のボイドが構造強度の低下につながり、したがって、複合構造の重量に対する強度の比の低下につながる。ビークルはますます重量の影響を受けるため、複合構造の重量に対する強度の比の低下は、望ましくないほど重いビークルにつながる。
【0008】
複合材のオートクレーブ外での硬化は当該複合材内のボイドおよび許容できないレベルの孔を発生させるため、複合構造はオートクレーブを用いて硬化され続けている。したがって、ビークル用の複合構造には、強度目標を達成するためにオートクレーブでの硬化が引き続き必要である。しかし、オートクレーブは、かさばり、高価で、コストがかかり、操作のためのリソースが集中する。従来の技術を用いてオートクレーブ外で複合構造を製造しようとすると、ボイドが大量に発生した部品が出来上がっていた。そのような部品は、多孔度がより高いため、より弱く、不良品発生率がより高い。不良品発生率がより高ければ、生産コストが増加する。
【0009】
複合構造を備えたビークルの例が
図1Aに示されている。
図1Aは、いくつかの例による複合構造を備えたビークルを示す。
図1Aは、固定翼航空機であるビークル100を示す。他の例では、本明細書に記載のシステムおよび技術は、他のタイプの航空機(例えば、ヘリコプター、宇宙船、ロケット、および他の航空機)、自動車、船舶、潜水艦等の他のタイプのビークル、および他のそのようなビークルまたは構造に使用される。
【0010】
ビークル100は、複数のビークル構造120を含む。様々な例において、ビークル構造120は、ビークル100における互いに異なる部分であり場合がある。例えば、
図1Aに示される航空機にとって、ビークル構造120は、当該航空機の胴体、翼(例えば、翼の固定部分またはフラップまたは他の可動部分)、航空機推進器(例えば、航空機推進器のナセルまたは入口)、尾翼、または別の構造である場合がある。様々な例におけるビークル構造120は、ガラス繊維、炭素繊維、ケブラー(登録商標)、および他のそのような複合材のうちの1つ以上等の、繊維強化複合材または複合積層板で作ることができる。
【0011】
複合積層板の例
図1B~
図1Eは、いくつかの例による複合積層板の様々な態様を示している。
図1Bは、複合積層板114が複数層の複合層130A~Hを含むことを示している。
図1Bの例に示されるように、複合層130A~Hは、互いに異なる方向に向けられた繊維トウを含む。そのような配向により、様々な方向で複合積層板114の強度が増す。
【0012】
図1Cは、繊維トウ104A、104B、および他の繊維トウを含む複合積層板の織物を示す。繊維トウ104Aおよび104Bは、互いに異なる方向に向けられている。繊維トウ104Aおよび104Bを互いに異なる方向に向けることにより、様々な方向における複合積層板の強度が増す。さらに、
図1Dは、繊維トウ104Aおよび104Bが一緒に織られていることを示している。また、
図1Eは、複数の織物層が一緒に積み重ねられて複合積層板114を形成することを示す。したがって、複合積層板114は、複数の織物層を含む。
【0013】
注入フィルム複合構造の例
図2Aおよび
図2Bは、予備硬化された注入フィルム複合構造200の例を示す。
図2Aは、いくつかの例による予備硬化された注入フィルム複合構造の断面図である。
図2Aは、本明細書で説明されるビークル構造120等の複合構造内で使用するための複合構造200を示す。様々な例において、複合構造200は、オートクレーブ外形成工程を経て形成される。そのようなある例では、複合構造200は、オートクレーブを含まない真空バッグ工程で形成される。
【0014】
複合構造200は、複合積層板214ならびに注入フィルム202Aおよび202Bを含む。複合積層板214は、第1の積層板表面240および第2の積層板表面242を有する。
図2Aの例では、第1の積層板表面240に配置された注入フィルム202Aと第2の積層板表面242に配置された注入フィルム202Bとが含まれるが、他の例の複合構造は、当該複合構造における様々な互いに異なる表面(前部、後部、底部、および側部における表面)に配置された注入フィルムを含む。
【0015】
複合積層板214は、複数の複合層236A~Cを含む。複合層236A~Cのそれぞれは、複数の繊維トウ(例えば、複合層236A用の繊維トウ204Aおよび204B、複合層236B用の繊維トウ204Cおよび204D、ならびに複合層236C用の繊維トウ204Eおよび204F)を含む。繊維トウ204A~Fのそれぞれは、本明細書に記載されるように、(例えば、単一の複合積層板を作製するために一緒に織られた)複数の複合繊維ストランドを含む。
【0016】
図示の例では、複合層236A~Cは、互いの上に積み重ねられており、したがって、繊維トウ204A~Fは、第1の積層板表面240と第2の積層板表面242との間に配置されている。繊維トウ204A~Fは、互いに隣接して配置されており、
図2Aに示されるように、各複合層の繊維トウが互いに巻き付けられる配置等の特定の配置で積み重なっている。他の例には、他の配置における複合層および/または繊維トウの配置が含まれる。
【0017】
ボイド212は、繊維トウ204A~Fの間および内部に配置されている。ボイド212は、特定の条件において注入フィルム202Aおよび202Bによって塞がれているボイドの例である。ボイド212は、ある例では、繊維トウ204A~F間の開放領域および/または複合構造200のハニカム構造または他の構成要素内の領域である。他の例では、複数の繊維トウが他の配置で配向されており、他の領域にボイドが含まれる。
【0018】
本明細書では、繊維トウ204Aは、繊維トウ204A~Fの形態を示すために例として使用される。繊維トウ204Aは、複数の繊維ストランド218および樹脂206を含む。ある例では、繊維ストランド218は、繊維強化複合繊維ストランド(例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ケブラー(登録商標)、または他のそのような複合材)である。繊維トウ204Aは、第1の部分210および第2の部分208を含む。
【0019】
図2Aに示される例では、複合構造200がまだ硬化されていない。樹脂206は、第1の部分210内に配置されるが、第2の部分208内には配置されていない。したがって、繊維トウ204Aは、予備含浸されたまたは部分的に予備含浸された複合材である。未硬化の場合、繊維トウ204Aは部分的に含浸され、第1の部分210内に含まれる繊維トウ204Aの部分は樹脂206で含浸されているが、第2の部分208内に含まれる繊維トウ204Aの部分は含浸されていない(例えば、乾燥しているか、または樹脂206に含浸されていない)。
【0020】
ある例では、樹脂206は、第1の温度範囲内で第1の粘度を有し、第2の温度範囲において第1の粘度よりも低い粘度を有する。ある例では、第2の温度範囲は、第1の温度範囲よりも大きい。硬化中、第2の温度範囲にある場合、繊維トウ204Aの含浸部分(例えば、第1の部分210内)の樹脂206は、繊維トウ204Aの非含浸部分(例えば、第2の部分208)および/または他の繊維トウの非含浸部分に移動するように構成されている。
【0021】
したがって、第2の部分208内の乾燥繊維ストランドにより、硬化または予備硬化(例えば、真空デバルク工程によって実施される予備硬化)中に閉じ込められたいかなる空気も抽出することができる排気経路が提供される。したがって、低粘度段階にある場合、樹脂206は、第2の部分208に流れ込み、乾燥繊維トウを充填して、トウ間のすべての間質ボイドを塞ぎ、孔のない複合積層板214を形成するように構成されている。
【0022】
しかしながら、実際には、そのような硬化複合積層板には、オートクレーブ外で硬化されると、(例えば、
図5Bに示され説明されているように)繊維トウの周りの領域にボイドが生じる。これらのボイドが生じるのは、真空バッグ工程から生じる1気圧の圧力が、例えば繊維トウ204Aの樹脂206を強制的に流動させ、乾燥した第2の部分208を十分に塞ぐのには不十分であるためである。
【0023】
このようなボイドを塞ぐために、
図2Aの例では、複合積層板214の第1の積層板表面240および第2の積層板表面242に注入フィルム202Aおよび202Bが配置されている。様々な例において、注入フィルム202Aおよび202Bは、樹脂206とは異なる別のエポキシ樹脂である。注入フィルム202Aおよび202Bの材料は、第1の温度範囲内の樹脂206の第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、かつ注入フィルム202Aおよび202Bが複合積層板214のボイド212に流れ込むことを可能にするように構成された流れプロファイルを有する。したがって、第1の温度範囲内で、注入フィルム202Aおよび202Bは、複合積層板214内に流れ込むように構成されている。
【0024】
図2Aの例では、注入フィルム202Aおよび202Bは、複合構造200のZ軸に沿って(例えば、上下に)動作するように構成されている。注入フィルム202Aおよび202BをZ軸に沿って動作するように配置することは、複合構造200の長さおよび幅が、注入フィルム202Aおよび202Bの有効性および性能を低下させないことを意味する。このような特性は、空気が繊維の全長に伝わらなければならず、したがって長さに非常に依存する、縁部での通気に依存した従来の工程の特性とは異なる。さらに、注入フィルム202Aおよび202Bによるボイド212の変位は長さに依存せず、縁部での通気に依存しないため、注入フィルム202Aおよび202Bは、複合積層板214の縁部にまで延伸していない繊維のボイド212にも流れ込む。縁部での通気を利用する従来の工程では、このような繊維においては空気を逃がすのが難しい。他の例には、代替的または追加的に、他の軸に沿って動作する注入フィルムが含まれる。
【0025】
注入フィルム202Aおよび202BはZ軸に沿って動作するように構成されているため、注入フィルム202Aおよび202Bにより、追加の考慮なしに縁部での通気が可能になる。すなわち、注入フィルム202Aおよび202Bを第1の積層板表面240および第2の積層板表面242に配置することにより、繊維トウ204Aにおける硬化中のガス抜きが可能になり、したがって、樹脂206が、特別な配慮なしに硬化中に繊維トウ内(例えば、繊維トウ204Aの第2の部分208内)の空気を変位させることが依然として可能になる。したがって、繊維トウ204Aの縁部での通気を促進するためには、複合積層板214の縁部のトリミングも、縁部ダムも、縁部通気装置も、および/またはさらなる予備硬化デバルク手順も必要ない。
【0026】
図2Aに示されるように、注入フィルム202Aおよび202Bを使用して複合構造200を形成することが、
図3Aおよび
図3Bにさらに詳細に記載される。
図3Aおよび
図3Bは、いくつかの例による、処理の様々な段階における
図2Aの注入フィルム複合構造の断面図である。
【0027】
図3Aに示されるように、複合構造200は、硬化中に真空バッグ320内に配置される。複合構造200の硬化中、温度が第1の温度範囲に上昇すると、注入フィルム202Aおよび202Bの粘度が低下し(例えば、室温での粘度よりも粘度が低くなり)、粘性または液体になる場合がある。複合構造200が真空バッグ320内に配置されている場合、真空バッグ320に作用する大気圧は、複合構造200を圧迫する真空バッグ320を介して低粘度(例えば、液化した)注入フィルム202Aおよび202B、したがって複合積層板214の上に配置された注入フィルム202Aおよび202Bに圧力をかける。温度が第1の温度範囲内にあること、および/または大気圧が真空バッグ320に作用していることに基づいて、注入フィルム202Aおよび202Bは、複合積層板214に浸透し始め、複合積層板214に流れ込み始める。ある状況では、注入フィルム202Aおよび202Bは、複合積層板214のボイド212に流れ込むか、またはボイド212を圧縮する。
【0028】
注入フィルム202Aおよび202Bは、複合積層板214に流れ込み続け、ある時点で、繊維トウ204A~Fの周りのボイド212を十分に塞ぐ。
図3Bは、複合構造200が第2の温度範囲にまで加熱される期間を示している。
図3Bに示す例の時点までに、複合構造200は第2の温度範囲にある。第2の温度範囲では、樹脂206の粘度が低下し(例えば、室温での粘度よりも粘度が低くなり)、粘性または液体になる場合がある。樹脂206は、繊維トウ204A~Fの以前から乾燥していた第2の部分208を充填し、第2の部分208内の空気を変位させる。樹脂206が第2の部分208に向かって移動すると、負圧が生じる。この負圧によりさらに、注入フィルム202Aおよび202Bはボイド212に引き込まれる。これには、注入フィルム202Aおよび202Bが、第2の部分208への樹脂206の移動によって生じたさらなるボイド、ならびに繊維トウ204A~Fの部分に引き込まれることが含まれる。したがって、存在したであろういかなるボイド212も、注入フィルム202Aおよび202Bで塞がれ、したがって、一貫して頑丈なエポキシ樹脂が複合構造200全体に存在する。
【0029】
したがって、
図3Bに示されるように、繊維トウ204A~Fは、
図3Bの均一な灰色の陰影によって示されるように、樹脂206で完全に満たされている。様々な繊維トウ204A~Fが、樹脂206を介して隣接する繊維トウに接続している。しかし、このような接続は均一ではなく、結果としてボイドが発生する。このようなボイドは注入フィルム202で塞がれ、ボイドのない、またはほとんどボイドのない複合構造200が作製される。
【0030】
1気圧の圧力は、注入フィルム202Aおよび202Bが複合積層板214のボイド212を塞ぐのに十分であるため、複合構造200は、オートクレーブ外形成に適している。
図2A、
図3A、および
図3Bに記載された複合構造200は、オートクレーブ外工程でボイドを塞ぐために注入フィルムを利用する複合構造の一例である。
図2Bは、いくつかの例による、別の予備硬化された注入フィルム複合構造の断面図である。
【0031】
図2Bは、複合構造200の別の例を示す。
図2Bの複合構造200は、複数の複合積層板214Aおよび214Bと、複数の注入フィルム202A、202B、および202Cとを含む。複合積層板214Aは繊維トウ204A~Fを含み、複合積層板214Bは繊維トウ204G~Lを含む。
図2Bの繊維トウ204A~Lは、
図2Aに記載されたものと同様である。
【0032】
複合積層板214Aおよび214Bはそれぞれ、第1の積層板表面および第2の積層板表面を有する。例えば、複合積層板214Bは、第1の積層板表面240および第2の積層板表面242を有する。注入フィルム202Aは、複合積層板214Aの上に配置され、注入フィルム202Bは、複合積層板214Aと214Bとの間に配置され、注入フィルム202Cは、複合積層板214Bの第2の積層板表面242に配置されている。したがって、
図2Bでは、注入フィルム202A、202B、および202Cの配置は、
図2Aの配置とは異なる。他の例は、例えば、複合積層板の上部および下部、および/またはその層間に配置された注入フィルムを含む、注入フィルムおよび複合積層板の他の配置を含むことが理解される。このような他の配置は、(例えば、複合積層板の様々な層への注入フィルムの効果的な流れを促進するために)複合積層板の層の厚さに応じて使用される。このような様々な配置は、複合積層板の厚さ、複合積層板の層の数、注入フィルムの粘度、および/または複合積層板への注入フィルムの流れに影響する他のそのような要因に応じて使用される。
【0033】
さらなる例において、単一の複合構造は、互いに異なる粘度特性を有する互いに異なる樹脂でできた複数の注入フィルムを含む。さらに、複数の注入フィルムを有するある例では、複合構造の様々な注入フィルムは、様々な厚さのものである。このようなある例では、このような厚さは、樹脂の1つ以上の粘度特性(例えば、注入フィルムの厚さは、任意の複合積層板の完全な浸透を促進するために樹脂の粘度に合わせられる)、注入フィルムの樹脂が流れる必要がある層の数(例えば、樹脂が流れる必要がある材料の体積)、および/または注入フィルムが硬化後に複合構造の外表面にどれだけ残存できるかという許容性に依存する。さらに、ある例では、注入フィルムは、部分全体に、またはこの部分内の完全な層としてというよりもむしろ、多孔性が問題となることがわかっている複合構造の特定の場所にのみ配置される。したがって、様々な例において、互いに異なる寸法、樹脂特性、厚さの注入フィルムが、様々な場所に配置される。
【0034】
他の構成の複合構造もまた考えられる。
図2C、
図2D、および
図2Eは、いくつかの例による、予備硬化された注入フィルム複合構造の様々な例を示す。
図2C、
図2D、および
図2Eは、複合構造200の様々な例の分解側面図である。
図2C、
図2D、および
図2Eに示されるように、複合構造200は、複数の複合層236A~Hを含み、1つ以上の複合層236A~Hは、互いに異なる方向に織られた繊維トウを含む。複合構造の他の例には、いかなる数量および/またはレイアウトの複合積層板が含まれる。
【0035】
図2C、
図2D、および
図2Eに示されるように、注入フィルムは、複合構造200の様々な例の様々な部分に配置されている。したがって、
図2Cでは、注入フィルム202Aおよび202Bは、複合積層板の外側に配置されている。したがって、注入フィルム202Aおよび202Bは、様々な複合層236A~Hを挟んでいる。
図2Dでは、複合構造200は、単一の注入フィルム202A層を有する。
図2Eでは、注入フィルム202Aおよび202Cは、複合積層板に、したがって、複合層236A~Hの外側に配置されており、一方、注入フィルム202Bは、複合層236Dと複合層236Eとの間に配置されている。したがって、本明細書で説明される複合構造200は、複数の複合層および/または注入フィルムを含む。
【0036】
注入フィルムを用いて複合構造を形成する方法の例
図4は、いくつかの例による、複合構造を形成する方法に対応する工程のフローチャートである。
図4の方法400の様々な動作は、本明細書に記載のシステムおよび装置を使用して実行される。
【0037】
ステップ402では、複合積層板214が据えられる。ある例では、複合積層板214は、複数の繊維トウ204を含み、複合積層板214を据えることは、複数の繊維トウ204を据えること、および/または配置することを含む。ある例では、繊維トウ204は、予備含浸されたまたは部分的に予備含浸された繊維トウであるが、他の例では、手で据えられた繊維トウである場合がある。
【0038】
ステップ404では、初期の予備硬化版の複合構造200を形成するために、注入フィルム202が複合積層板214に貼り付けられる。注入フィルム202は、複合積層板214の1つ以上の表面に配置される。様々な例において、注入フィルム202は、樹脂フィルムを積層板に貼り付けるのに適した様々な技術によって貼り付けられる。
【0039】
ステップ406では、複合構造200が真空バッグ320内に配置される。次に、複合構造200は、ある例ではオートクレーブ外で行われるステップ408~414の硬化工程を経る。
【0040】
本明細書に記載されるように、ステップ408において、複合構造200の周りに真空環境を作るために真空が真空バッグ320内に作られ、(例えば、加熱された真空バッグまたは真空バッグ320に接触しているかもしくは真空バッグ320の周りに配置された他の熱源により)複合構造200が加熱される。真空生成および加熱を行うステップ408は、ステップ410~414を包含する。したがって、真空バッグ320の周りの環境からの大気圧により、真空バッグ320、したがって複合構造200(例えば、注入フィルム202)に圧力がかかる。
【0041】
ある例では、複合構造200はまず、第2の温度範囲(例えば、華氏300~400度の温度範囲)よりも低い、本明細書に記載の第1の温度範囲(例えば、華氏200~300度の温度範囲)にまで加熱される。第1の温度では、注入フィルム202は、ステップ410において複合積層板214に移動する。ステップ412において、第1の温度範囲にある場合、ある例では、樹脂206が繊維トウの第2の部分208に向かって移動し始めるが、他の例では、樹脂206は、複合構造200が第2の温度範囲にまで加熱された場合に第2の部分208に向かって移動するのみである。
【0042】
ステップ414では、真空バッグ320からの正圧により注入フィルム202が複合積層板214に移動するため、かつ/または樹脂206が第2の部分208に向かって移動するため(したがって、注入フィルム202を複合積層板214内に引き込む負圧が生じる)、注入フィルム202は、複合積層板214のボイド212に流れ込む。したがって、注入フィルム202は、塞がれなければ複合積層板214の強度を低下させたであろうボイドを塞ぐ。
【0043】
複合構造200をボイド212が注入フィルム202によって塞がれた状態で形成した後、複合構造200をステップ416で完成させる。複合構造200の完成作業には、様々な例において、複合構造200の最終硬化、後処理(例えば、トリミング)、または仕上げ(例えば、コーティング)が含まれる。
【0044】
複合構造内のボイドの頻度の例
図5Aは、いくつかの例による、硬化された注入フィルム複合構造の断面図である。複合構造200は、本明細書に記載の技術によって形成され、硬化される。複合構造200は、ボイド330を含むが、ボイド330以外にはボイドはない。
【0045】
図5Bは、いくつかの例による別の複合構造の断面図である。
図5Bの複合構造500は、注入フィルムなしで形成されている。
図5Bに示されるように、複合構造500は、複数のボイド530A~Nを含む。複合構造500内のボイドの数は、複合構造200内のボイドの数よりもかなり多い。さらに、いくつかのそのようなボイドは、複合構造200のボイド330よりもサイズが大きい。
【0046】
図5Aおよび5Bの例は、実際のテスト結果に基づく抽象的表現である。実際のテスト結果には、注入フィルムのない複合構造が、硬化時にかなりの量のボイドを有することが示されている。実際の結果では、注入フィルムのある複合構造の多孔度は0.36%であり、一方、注入フィルムのない複合構造の多孔度は2.72%であった。両複合構造はオートクレーブ外工程で形成されたが、
図5Aの例は、より簡単な、したがって、いかなる縁部ダム、縁部トリミング、または予備硬化真空ドウェルも必要としないよりコスト効率がよいオートクレーブ外工程で形成された。
図5Bの例は、繊維トウからの空気の抽出を助けるためのそのような縁部ダム、縁部トリミング、および予備硬化真空ドウェルを含む工程で製造された。
【0047】
注入フィルムのある複合構造の多孔性が低いことにより、オートクレーブ外形成を利用することが可能になり、高価なオートクレーブを用いないため、コストがかなり削減される。さらに、オートクレーブはかなりの圧力を複合構造にかけるため、ハニカムの破砕を避けるためにコア破砕防止構造が必要である。コア破砕防止構造を必要としないオートクレーブ外工程でかかる圧力が小さい(1気圧)ほど、コストがより削減される。
【0048】
ビークルの例
上で開示されたシステム、装置、および方法は、飛行機および航空宇宙産業を参照して説明されたが、本明細書に開示された例は、自動車、鉄道、および他の機械等の他の状況ならびにビークルの状況にも適用可能であることが理解されよう。したがって、本開示の例は、そのような他の状況に適用可能な、
図6Aに示されるような飛行機製造およびサービス方法600ならびに
図6Bに示されるようなビークル100の状況において説明される。
【0049】
図6Aは、いくつかの例による、ビークル生産およびサービス方法論の例のフローチャートである。いくつかの例では、製造前に、方法600は、ビークル100(例えば、
図1Aに示されるような航空機)の仕様及び設計604と、材料調達606とを含む。生産中、ビークル100の構成要素及び部分組立品の製造608およびシステム統合610が行われる。その後、ビークル100は、就航中614にされるために、認証及び搬送612を経る。顧客による就航中、ビークル100には、定期的な整備及び保守点検616(例えば、修正、再構成、改修等)が予定される。
【0050】
ある例では、方法600の工程のそれぞれは、システム集成者、第三者、および/または操作者(例えば、顧客)によって実施または実行される。この説明のために、システム集成者には、いかなる数の飛行機製造業者および主要システムの下請け業者も含まれる。第三者には、いかなる数の販売会社、下請け業者、および供給業者も含まれる。操作者は、航空会社、リース会社、軍事組織、サービス組織等である可能性がある。
【0051】
図6Bは、いくつかの例による、ビークルの例のブロック図である。
図6Bに示されるように、方法600によって生産されるビークル100(例えば、航空機)は、複数のシステム620および内部622と共に機体618を含む。システム620の例には、推進システム624、電気システム626、油圧システム628、および環境システム630のうちの1つ以上が含まれる。様々な例において、他のシステムもビークル100内に含まれる。航空宇宙の例が示されているが、本明細書に開示される実施形態の原理は、自動車産業等の他の産業に適用可能である。
【0052】
さらなる例
さらに、本開示は、以下の条項による例を含む。
【0053】
条項1.第1の積層板表面240、第2の積層板表面242、および第1の積層板表面240と第2の積層板表面242との間に配置された複数の繊維トウ204を備える複合積層板214であって、
複数の繊維トウ204のそれぞれが、複数の繊維ストランド218および樹脂206を備え、
樹脂206が、複数の繊維トウ204のそれぞれの第1の部分210内に配置され、
複数の繊維トウ204のそれぞれが、複数の繊維トウ204のうちの互いに異なる繊維トウ204に近接して配置され、
樹脂206が、第1の温度範囲内で第1の粘度を有する、複合積層板214と、
複数の繊維トウ204の第1の積層板表面240に配置された注入フィルム202であって、
注入フィルム202が、第1の温度範囲内の樹脂206の第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、
注入フィルム202が第1の温度範囲内にある場合、注入フィルム202が、複合積層板214内に流れ込むように構成されている、注入フィルム202と
を備える複合構造200。
【0054】
条項2.複合積層板214が、複数の繊維トウ204間に配置されたボイド212をさらに有し、注入フィルム202が第1の温度範囲内にある場合、注入フィルム202が、ボイド212に流れ込むように構成されている、条項1に記載の複合構造200。
【0055】
条項3.第1の部分210が、複数の繊維トウ204のそれぞれの外側部分である、条項1または2のいずれか一項に記載の複合構造200。
【0056】
条項4.複数の繊維トウ204が、樹脂206を含まない第2の部分208をそれぞれさらに含む、条項3に記載の複合構造200。
【0057】
条項5.第1の温度範囲よりも大きい第2の温度範囲にある場合、樹脂206が、第2の部分208内に移動するように構成されている、請求項4に記載の複合構造200。
【0058】
条項6.第2の部分208が、複数の繊維トウ204の中央部分である、条項4に記載の複合構造200。
【0059】
条項7.注入フィルム202が、第1の注入フィルム202Aであり、複合構造200が、
第2の積層板表面242に配置された第2の注入フィルム202Bであって、第2の注入フィルム202Bが、第1の温度範囲内の樹脂206の第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、第2の注入フィルム202Bが第1の温度範囲内にある場合、複合積層板214内に流れ込むように構成され、第2の積層板表面242が、第1の積層板表面240の反対側である、第2の注入フィルム202B
をさらに備える、条項1~6のいずれか一項に記載の複合構造200。
【0060】
条項8.複合積層板214が、第1の複数の繊維トウ204を含む第1の複合積層板214Aであり、複合構造200が、
第2の複数の繊維トウ204を含む第2の複合積層板214Bであって、注入フィルム202が、第1の複合積層板214Aと第2の複合積層板214Bとの間に配置されている、第2の複合積層板214B
をさらに備える、条項1~7のいずれか一項に記載の複合構造200。
【0061】
条項9.複合構造200が、航空機100の一部に結合させられるように構成されている、条項1~8のいずれか一項に記載の複合構造200。
【0062】
条項10.第1の複合積層板214Aと、
第2の複合積層板214Bであって、第1の複合積層板214Aと第2の複合積層板214Bとのそれぞれが、複数の繊維トウ204を含み、
複数の繊維トウ204のそれぞれが、複数の繊維ストランド218および樹脂206を備え、
樹脂206が、複数の繊維トウ204のそれぞれの第1の部分210内に配置され、
複数の繊維トウ204のそれぞれが、複数の繊維トウ204のうちの互いに異なる繊維トウ204に近接して配置され、
樹脂206が、第1の温度範囲内で第1の粘度を有する、第2の複合積層板214Bと、
第1の複合積層板214Aと第2の複合積層板214Bとの間に配置された注入フィルム202であって、
注入フィルム202が、第1の温度範囲内の樹脂206の第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、
注入フィルム202が第1の温度範囲内にある場合、注入フィルム202が、第1の複合積層板214A、第2の複合積層板214B、またはその両方に流れ込むように構成されている、注入フィルム202と
を備える複合構造200。
【0063】
条項11.真空バッグ320を複合構造200の周りに配置するステップ406であって、
複合構造200が、
第1の積層板表面240、第2の積層板表面242、および第1の積層板表面240と第2の積層板表面242との間に配置された複数の繊維トウ204を備える複合積層板214であって、
複数の繊維トウ204のそれぞれが、複数の繊維ストランド218および樹脂206を備え、
樹脂206が、複数の繊維トウ204のそれぞれの第1の部分210内に配置され、
樹脂206が、第1の温度範囲内で第1の粘度を有する、複合積層板214と、
複数の繊維トウ204の第1の積層板表面240に配置された注入フィルム202であって、
注入フィルム202が、第1の温度範囲内の樹脂206の第1の粘度よりも低い第2の粘度を有し、
注入フィルム202が第1の温度範囲内にある場合、注入フィルム202が、複合積層板214内に流れ込むように構成されている、注入フィルム202と
を備えるステップ406と、
圧縮力を複合構造200にかけるために、真空バッグ320内の圧力を減少させるステップ408と、
注入フィルム202を複合積層板214内に流し込むために複合構造200を第1の温度範囲にまで加熱するステップ410と
を含む方法400。
【0064】
条項12.複合積層板214内のボイド212を注入フィルム202で塞ぐステップ414
をさらに含む、条項11に記載の方法。
【0065】
条項13.樹脂206を繊維トウ204の第2の部分208内に移動させる412ために、複合構造200を第2の温度範囲にまで加熱するステップ
をさらに含む、条項11または12のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
条項14.第2の部分208が、複数の繊維トウ204の中央部分である、条項13に記載の方法。
【0067】
条項15.樹脂206を第2の部分208内に移動させるステップ412が、第2の部分208から空気を変位させる、条項13に記載の方法。
【0068】
条項16.樹脂206を第2の部分208内に移動させるステップ412が、注入フィルム202を複合積層板214内にさらに流し込む、条項13に記載の方法。
【0069】
条項17.複合積層板214を据えるステップ402
をさらに含む、条項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【0070】
条項18.注入フィルム202Aを第1の積層板表面240に張り付けるステップ404
をさらに含む、条項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
条項19.注入フィルム202Bを第2の積層板表面242に張り付けるステップ404をさらに含む、条項18に記載の方法。
【0072】
条項20.複合構造200を航空機100の一部に結合させるステップ
をさらに含む、条項11~19のいずれか一項に記載の方法。
【0073】
結論
前述の概念は、理解を明確にするためにある程度詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲内で特定の変更および修正を施してもよいことは明らかであろう。工程、システム、および装置を実現する多くの代替方法があることに留意されたい。したがって、本例は、例示的なものであって限定的なものではないと見なされるべきである。
【符号の説明】
【0074】
100 ビークル、航空機
104A 繊維トウ
104B 繊維トウ
114 複合積層板
120 ビークル構造
130A 複合層
130B 複合層
130C 複合層
130D 複合層
130E 複合層
130F 複合層
130G 複合層
130H 複合層
200 複合構造、注入フィルム複合構造
202 注入フィルム
202A 注入フィルム
202B 注入フィルム
202C 注入フィルム
204 繊維トウ
204A 繊維トウ
204B 繊維トウ
204C 繊維トウ
204D 繊維トウ
204E 繊維トウ
204F 繊維トウ
204G 繊維トウ
204H 繊維トウ
204I 繊維トウ
204J 繊維トウ
204K 繊維トウ
204L 繊維トウ
208 部分
210 部分
212 ボイド
214 複合積層材
214A 複合積層板
214B 複合積層板
218 繊維ストランド
236A 複合層
236B 複合層
236C 複合層
236D 複合層
236E 複合層
236F 複合層
236G 複合層
236H 複合層
240 積層板表面
242 積層板表面
320 真空バッグ
330 ボイド
500 複合構造
530A ボイド
600 サービス方法
604 仕様及び設計
606 材料調達
608 構成要素及び部分組立品の製造
610 システム統合
612 認証及び搬送
614 就航中
616 整備及び保守点検
618 機体
620 システム
622 内部
624 推進システム
626 電気システム
628 油圧システム
630 環境システム