(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】異物除去装置、リソグラフィ装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2020153174
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正康
(72)【発明者】
【氏名】木村 良一
(72)【発明者】
【氏名】塩村 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】細川 浩伸
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-075379(JP,A)
【文献】特開2009-147227(JP,A)
【文献】特開2006-032957(JP,A)
【文献】特開2011-176086(JP,A)
【文献】特開平09-219363(JP,A)
【文献】特開平05-114540(JP,A)
【文献】国際公開第2011/010460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物を除去する異物除去装置であって、
物体を保持して移動する保持部と、
前記保持部に近接して配置され内部を気体が流通する流路と、
前記流路の内部に設けられ、前記流路の内部における気流を形成する気流形成部と、を有し、
前記流路の周壁を構成する流路部材に、前記流路の外部と内部とを連通するスリットが形成されており、
前記気流形成部は、異物が前記スリットを介して前記流路の内部に引き込まれるような気流を形成し、
前記流路は、前記保持部を取り囲むように前記保持部の周囲に配置され、前記スリットは、前記流路部材の上面に形成されている、ことを特徴とする
異物除去装置。
【請求項2】
異物を除去する異物除去装置であって、
物体を保持して移動する保持部と、
前記保持部に近接して配置され内部を気体が流通する流路と、
前記流路の内部に設けられ、前記流路の内部における気流を形成する気流形成部と、を有し、
前記流路の周壁を構成する流路部材に、前記流路の外部と内部とを連通するスリットが形成されており、
前記気流形成部は、異物が前記スリットを介して前記流路の内部に引き込まれるような気流を形成し、
前記流路は、前記保持部によって保持された前記物体の上方に配置され、前記スリットは、前記流路部材の下面に形成されている、ことを特徴とする
異物除去装置。
【請求項3】
前記流路に接続され、前記気流に乗って運ばれた前記異物を受ける集積部を更に有することを特徴とする請求項1
または2に記載の異物除去装置。
【請求項4】
前記集積部に集められた前記異物を回収する回収部を更に有することを特徴とする請求項
3に記載の異物除去装置。
【請求項5】
前記異物除去装置は、チャンバの内部に収容されており、
前記回収部は、前記集積部に集められた前記異物を前記チャンバの外部に排出するための排気流路を含む、
ことを特徴とする請求項
4に記載の異物除去装置。
【請求項6】
前記回収部は、帯電することにより、前記集積部に集められた前記異物を捕捉する帯電部を有する、ことを特徴とする請求項
5に記載の異物除去装置。
【請求項7】
前記帯電部は、
帯電シートと、
前記帯電シートが巻回された第1スプールと、
第2スプールと、
を含み、前記第2スプールが前記第1スプールから繰り出された前記帯電シートを巻き取ることにより、前記帯電シートに付着した異物を回収する、
ことを特徴とする請求項
6に記載の異物除去装置。
【請求項8】
前記回収部は、前記集積部に集められた前記異物を粘着力によって捕捉する粘着部を有する、ことを特徴とする請求項
5に記載の異物除去装置。
【請求項9】
前記回収部は、前記気流を濾過して前記集積部から運ばれた前記異物を捕集するフィルタを含む、ことを特徴とする請求項
5に記載の異物除去装置。
【請求項10】
前記流路は、前記保持部と共に移動するように構成されている、ことを特徴とする請求項
4乃至
9のいずれか1項に記載の異物除去装置。
【請求項11】
前記集積部は、前記保持部が前記物体を交換するための位置に移動したときに前記回収部と接続される、ことを特徴とする請求項1
0に記載の異物除去装置。
【請求項12】
前記気流形成部は、圧縮空気を供給する供給部を含み、前記供給部が圧縮空気を供給することにより前記気流を形成する、ことを特徴とする請求項1乃至1
1のいずれか1項に記載の異物除去装置。
【請求項13】
前記気流形成部は、ファンを含み、前記ファンの上流側に負圧の噴流を形成することにより前記気流を形成する、ことを特徴とする請求項1乃至1
1のいずれか1項に記載の異物除去装置。
【請求項14】
前記物体の上に付着している異物および前記物体の周辺の空間を浮遊している異物を除去する、ことを特徴とする請求項1乃至1
3のいずれか1項に記載の異物除去装置。
【請求項15】
異物を除去する異物除去装置であって、
物体を保持して移動する保持部と、
前記保持部に近接して配置され内部を気体が流通する流路と、
前記流路の内部に設けられ、前記流路の内部における気流を形成する気流形成部と、を有し、
前記流路の周壁を構成する流路部材に、前記流路の外部と内部とを連通するスリットが形成されており、
前記気流形成部は、異物が前記スリットを介して前記流路の内部に引き込まれるような気流を形成し、
前記物体の上に付着している異物および前記物体の周辺の空間を浮遊している異物を除去する、
ことを特徴とする異物除去装置。
【請求項16】
前記物体は、リソグラフィ装置に用いられる基板または原版である、ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の異物除去装置。
【請求項17】
請求項16に記載の異物除去装置を備えることを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項18】
基板交換工程または原版交換工程と並行して前記異物除去装置を動作させる、ことを特徴とする請求項17に記載のリソグラフィ装置。
【請求項19】
請求項17または18に記載のリソグラフィ装置を用いて基板にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された前記基板を加工する工程と、
を有し、前記加工された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物除去装置、リソグラフィ装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置等のリソグラフィ装置において、基板保持部の近傍に異物(パーティクル)が蓄積していると、基板保持部の移動に伴ってパーティクルが基板上に飛散する可能性がある。パーティクルは露光不良の要因となりうるため除去される必要がある。
【0003】
特許文献1は、基板に付着した異物をテープに転着させて除去する方法を開示している。また、特許文献2は、粘着剤パターン部を配置して異物を吸着する方法を開示している。どちらの従来技術も、異物除去部を直接基板に接触させることにより異物を除去するものである。
【0004】
更に、定期メンテナンス項目として作業者が粘着シートや揮発性アルコール等を用いた直接接触方式にてパーティクルを除去する場合もある。作業者が直接パーティクルを除去するためには装置を停止することが必要になるため、生産性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-220495号公報
【文献】特開2004-327485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のように基板に付着したパーティクルを直接接触によって除去する場合には、パーティクル除去部が基板露光面に接触することによって、基板上のパターンを損傷させる可能性がある。また、露光光路中に浮遊するパーティクルを除去することは困難であるため、直接接触によって除去した後に基板が再汚染される可能性もある。
【0007】
本発明は、例えば、生産性と異物の除去性能との両立に有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、異物を除去する異物除去装置であって、物体を保持して移動する保持部と、前記保持部に近接して配置され内部を気体が流通する流路と、前記流路の内部に設けられ、前記流路の内部における気流を形成する気流形成部と、を有し、前記流路の周壁を構成する流路部材に、前記流路の外部と内部とを連通するスリットが形成されており、前記気流形成部は、異物が前記スリットを介して前記流路の内部に引き込まれるような気流を形成し、前記流路は、前記保持部を取り囲むように前記保持部の周囲に配置され、前記スリットは、前記流路部材の上面に形成されている、ことを特徴とする異物除去装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、生産性と異物の除去性能との両立に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】露光装置における異物除去装置の構成例を示す図。
【
図4】異物除去装置の動作タイミングの例を示す図。
【
図5】異物除去装置の動作タイミングの例を示す図。
【
図6】異物除去装置の動作タイミングの例を示す図。
【
図7】露光装置における異物除去装置の構成例を示す図。
【
図8】露光装置における異物除去装置の構成例を示す図。
【
図10】露光装置における異物除去装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
本発明は、例えば、物体の上に付着している異物(パーティクル)および物体の周辺の空間を浮遊している異物を除去する異物除去装置に関する。対象とする物体は、例えばリソグラフィ装置に用いられる基板、原版、光学素子等の、平面あるいは曲率の緩やかな物体でありうる。本発明は、このような物体の表面に付着したパーティクルにより性能の低下が発生する場合の対処に適用可能である。なお、リソグラフィ装置には、例えば、露光装置やインプリント装置がある。露光装置は、基板の上に供給されたフォトレジストを原版を介して露光することによって該フォトレジストに原版のパターンに対応する潜像を形成する。インプリント装置は、基板の上に供給された成形可能材料に型(原版)を接触させた状態で該成形可能材料を硬化させることによって基板の上にパターンを形成する。
【0013】
以下では、リソグラフィ装置の一例である露光装置に異物除去装置が適用された例に関して説明する。
【0014】
図1は、実施形態における露光装置1の構成を示す概略図である。露光装置1は、液晶表示デバイスや半導体デバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に採用され、パターンを基板に形成するリソグラフィ装置である。露光装置1は、ミラープロジェクションタイプ及びステップ・アンド・スキャン方式を採用する走査型露光装置(スキャナー)でありうる。露光装置1は、マスクMと基板Pとを走査(同期走査)しながら、マスクMに形成されているパターンを、投影光学系4を介して基板Pに転写する。
【0015】
露光装置1は、照明光学系2と、マスク保持部3(以下、マスクステージ3)と、投影光学系4と、基板保持部5(以下、基板ステージ5)と、制御部6とを有する。露光装置1は、露光チャンバ20に収容されている。また、ここでは、鉛直方向であるZ軸に垂直な平面内で、マスクM及び基板Pの走査方向をY軸とし、Y軸に直交する非走査方向をX軸とする。
【0016】
照明光学系2は、例えば、超高圧水銀ランプなどの光源からの光を用いて、マスクMを照明する。照明光学系2は、本実施形態では、マスクMに対してスリット状に整形された照明光を照射する。
【0017】
マスクMは、例えば、基板Pに転写すべきパターン(例えば、回路パターン)が形成されたガラス製の原版である。マスクステージ3は、マスクMを保持してX及びY方向に移動するステージである。
【0018】
投影光学系4は、マスクステージ3に保持されたマスクMと、チャック7を介して基板ステージ5によって保持された基板Pとを光学的に共役な関係に維持し、マスクMの照明領域に存在するパターンの像を基板Pに投影する。投影光学系4は、本実施形態では、第1平行平板8と、台形鏡9と、凹面鏡10と、凸面鏡11と、第2平行平板12とを含む。投影光学系4において、マスクMからの光は、第1平行平板8、台形鏡9、凸面鏡11、凹面鏡10、台形鏡9、第2平行平板12を順に経て、基板Pに到達する。基板上における投影光学系4からの光の投影領域(露光領域)は、所定の形状、例えば、円弧形状に設定されている。
【0019】
基板Pは、例えば、表面にレジスト層(感光剤)が形成されたガラス製のプレートである。基板ステージ5は、チャック7によって基板Pを真空吸着し、例えば、X、Y及びZ方向(更には、各軸周りの回転方向であるθx、θy及びθz方向)に移動するステージである。基板ステージ5の構成については、以下で詳細に説明する。
【0020】
制御部6は、CPUやメモリを含むコンピュータなどで構成され、メモリに格納されたプログラムに従って露光装置1の各部の制御及び演算処理などを行う。また、本実施形態では、制御部6が基板ステージ5を制御するが、基板ステージ5を制御する専用のステージ制御部を設けてもよい。この場合、ステージ制御部は、制御部6からの指令に基づいて、基板ステージ5を制御する。また、制御部6は、露光装置1の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよいし、露光装置1の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよい。
【0021】
本体構造体30は、マスクステージ3、投影光学系4、基板ステージ5等を支持する。
【0022】
露光チャンバ20には、ロボットハンド23が収容されたインターフェースチャンバ22と連通する開口部21が設けられており、開口部21を介して、露光装置1とロボットハンド23との間で基板Pの搬送(受け渡し)が行われる。本実施形態では、基板Pを保持したロボットハンド23が開口部21を介して露光チャンバ20に進入すると、基板ステージ5を、開口部21の近傍の所定の位置(基板交換位置)まで移動させる。そして、リフトバー31をロボットハンド23の近傍まで駆動(上昇)させて、ロボットハンド23から基板Pを受け取る。リフトバー31は、受け取った基板Pをチャック7に載置する。チャック7は、基板Pを真空吸着により固定する。
【0023】
<第1実施形態>
図2(a)は、露光装置1の基板ステージ5に近傍に配置される異物除去装置の構成を示す図であり、左図は上から見た平面図、右図はB-B線に沿う断面図である。中央に基板Pが保持されている。基板Pを下から支持しているのはチャック7である。チャック7は、その下からチャックベース14によって支持され、チャックベース14はバーミラーベース13によって支持される。チャック7の周辺、つまり基板載置部の近傍には、バーミラーベースによって支持されたバーミラーBXやバーミラーBY、その他ケーブルや配管など(非図示)が配置されている。
【0024】
基板Pは、ロボットハンド23によって露光毎に交換されるため、露光装置内部にパーティクルptがあったとしても汚染されにくい。しかし、基板載置部の近傍は、常時、露光装置の内部空間にさらされているため、露光装置の内部にパーティクルが存在する場合は、基板載置部の近傍にパーティクルptが堆積する可能性がある。
【0025】
そこで、本実施形態では、バーミラーベース13上の基板載置部に近接して、内部を気体が流通する流路であるダクト15が配置される。ダクト15は、可能な限りチャック7に対して水平方向で可能な限り近接させることが望ましい。ここでは、ダクト15は、基板ステージ5を取り囲むように基板ステージ5の周囲に配置される。また、流路の周壁を構成する部材である流路部材(ダクト15の筐体)の上面には、ダクト15の外部と内部とを連通する1つ以上のスリット16が形成されている。スリット16は、例えば、スリットの長手方向とダクト15の長手方向とが直交するように形成される。
【0026】
図2(b)は、
図2(a)に示されたA-A線に沿う、ダクト15の断面図である。
図2(b)に示されるように、ダクト15の内部には、ダクト15の内部における気流を形成する1つ以上の気流形成部17が設けられている。気流形成部17は、圧縮空気を供給する供給部を含み、この供給部が圧縮空気を供給することによりダクト15内の気流を形成する。例えば、気流形成部17は、正圧の気体が流れる配管(不図示)と、配管の先端に噴出口の圧力を高めるノズルとを含みうる。ダクト15の排出口に向かう方向に気流形成部17によってダクト15内部空間に噴流mfが形成される。流速が高い噴流mfが形成されると、ベルヌーイの定理から内部圧力が低下する。ダクト15の筐体の外側の圧力よりも内部圧力が低下すると、スリット16を介してダクト15の外側から内側に向かう気流sfが形成される。これは真空エジェクタと同様の原理による。気流sfは、ダクト15外部の表面にある気体や、ダクト15の表面以外の気体から形成される。
【0027】
気流sfによって、ダクト15の表面やダクト15の周辺(すなわち基板Pの近傍)に存在するパーティクルptが、ダクト15の内部に引き込まれる。ダクト15の少なくとも一箇所(例えばダクト15の下流側端部)には、気流に乗って運ばれたパーティクルを受ける集積部18が接続されている。ダクト15の内部に引き込まれたパーティクルptは、噴流mfの流れに乗って集積部18に集められる。気流形成部17による噴流mfや気流sfがパーティクルptを基板Pの近傍から除去する装置を、異物除去装置PRS1と呼ぶ。
【0028】
図3に、露光装置1における異物除去装置PRS1の構成例を示す。
図3では、
図1に対して左右が反転した状態で構成要素が示されている。
図3には、異物除去装置PRS1が、基板ステージ側とマスクステージ側の両方に配置された例が示されている。もっとも、露光装置のレイアウトの制約により、どちらか一方だけが配置される構成もありうる。
【0029】
図3(a)によれば、異物除去装置PRS1によって集められたパーティクルptは、回収部19によって回収される。異物除去装置PRS1の動作は、露光装置1の動作中であっても止める必要はないため、スループットの点で有利である。
図4のフローチャートを参照して、露光装置1における異物除去装置PRS1の動作タイミングの一例を説明する。S1で、基板ステージ5によって基板が保持される。S2で、基板のアライメントが行われる。その後、S3で、露光が行われる。露光が終了すると、S4で、基板ステージ5は基板交換位置に移動される。S5で、基板ステージ5による基板の保持が解除される。その後、S6で、基板交換が実施され、それと並行してS7で、異物除去装置PRS1が動作してパーティクル除去が行われる。このように、基板交換工程と並行して異物除去装置PRS1が動作しうることは、パーティクル除去工程を別途追加的に実施していた従来例と比べて長くならない点で有利である。また、基板交換工程は露光工程に比べるとステージの位置精度が低くてもよいため、異物除去装置PRS1で発生する振動の影響を考慮する必要はない点で有利である。
【0030】
ただし、
図5に示すように、異物除去装置PRS1の振動が他の露光工程に影響がないのであれば、異物除去装置PRS1は露光装置の稼働中、常時働いてもよい。露光装置稼働中、常時、異物除去装置PRS1が働いている場合は、基板ステージ5が駆動中もパーティクルを除去することになるため、パーティクルを除去する範囲が、基板ステージ5の基板P載置近傍のみならずステージ空間全体に広がる点で有利である。
【0031】
また、基板生産ラインの中で露光装置以外の例えば塗布装置が停止している場合、露光装置も露光処理は行われない状態となる。露光処理が行われない状態において、異物除去装置PRS1を作動させながら基板ステージ5を駆動させることで、基板ステージ空間全体のパーティクルptを除去することもできる。
【0032】
図6のフローチャートは、マスク側に設けられた異物除去装置PRS1の動作タイミング例を示している。S11で、マスクステージ3がマスク交換位置に移動される。S12で、マスクステージ3によるマスクの保持が解除される。その後、S13で、原版交換工程が実施され、それと並行してS14で、異物除去装置PRS1が動作してパーティクル除去が行われる。S15で、マスクステージ3によってマスクが保持される。S16で、基板のアライメントが行われる。その後、S17で、露光が行われる。
【0033】
このように、異物除去装置PRS1は、マスク交換シーケンス中に動作しうる。マスク交換も基板交換と同様に露光工程としては待機状態に当たるので、マスク交換と並行してパーティクル除去を行えば、異物除去装置の工程は従来の露光工程の妨げにはならない点で優位性がある。
【0034】
(実施例1-1)
実施例1-1における露光装置について説明する。
図2(a)および
図2(b)において、異物除去装置PRS1の基本構成の実施例を示す。ダクト15は、板金の折り曲げによって成形されうる。スリット16は、ダクト15に直接穴加工することで形成されうる。スリット16は、ダクト15に対して少なくとも1つ以上形成される。気流形成部17は、例えば、チューブとノズルで構成される。例えば、基板ステージ5の圧空配管制御部(非図示)からチューブで正圧の気流を引き込み、チューブ先端にノズルを取り付ける。ノズル噴出口は、ダクト15の排出口に向けて配置する。
【0035】
図2(a)に示す通り、例えば、チャック7の四方にダクト15が配置される。ダクト15は、少なくとも1本の板金ダクトで構成されうる。チャック7の四方に配置されたダクト15は一体的に構成されていてもよいし、各辺のダクトが独立した構成であってもよい。各辺のダクトを全て連結した構成の場合、
図2(b)に示されるように、ダクト15の最下流に集積部18が配置される。集積部18は、例えば基板ステージ5の下向きにパーティクルptを含んだ噴流mfや気流sfを送り出す構造を備える。実施形態において、ダクト15は、基板ステージ5と共に移動するように構成される。
【0036】
異物除去装置PRS1は、集積部18に集められたパーティクルを回収する回収部を含みうる。
図3(a)および
図3(b)は、異物除去装置PRS1を備えた露光装置の構成を示す図である。
図3(a)および
図3(b)では、
図1に対して左右が反転した状態で構成要素が示されている。
図4で示したように基板交換シーケンスと並行して異物除去装置PRS1が動作する場合、
図3(b)のように、基板ステージ5は、ロボットハンド23と基板Pを交換するための、開口部21に近い基板交換位置に移動して停止する。基板交換位置には、集積部18と接続可能な回収部としての排気ダクト19が配置されている。回収部としての排気ダクト19は、集積部18に集められたパーティクルを露光チャンバ20の外部に排出するための排気流路を含みうる。基板ステージ5が基板交換位置にない場合、排気ダクト19は、基板ステージ5と高さ方向において干渉しない位置にある。
【0037】
集積部18は、排気ダクト19と接続する接続部18aを備える。基板ステージ5が基板交換位置に移動したときに、この接続部18aを介して集積部18と排気ダクト19とが気体流通可能に接続される。
図3(b)には、基板ステージ5が基板交換位置に移動した後、集積部18と排気ダクト19とが接続された状態が示されている。
【0038】
集積部18の接続部18は、例えばシーリングやグロメット等によって集積部18と排気ダクト19との間の気体流通部の周囲を密封する構造を備えうる。ただし、圧力損失上の問題がなければ密封する構成でなくてもよい。集積部18と排気ダクト19の接続が完了すると、異物除去装置PRS1が作動して、基板ステージ5上の基板Pの近傍にあるパーティクルptが除去される。除去されたパーティクルptは、集積部18を通過して排気ダクト19を抜け、露光装置1の外部(露光チャンバ20の外部)へ排出される。
【0039】
他の実施形態において、回収部である排気ダクト19は、基板ステージ5の集積部18に常時接続されてもよい。集積部18に排気ダクト19を常時接続する場合は、排気ダクト19は、基板ステージ5に接続された不図示の電気ケーブルや配管と合わせて例えばケーブルベアといった屈曲可能な保護部材に通されうる。
【0040】
なお、上述の実施例では、基板ステージ上の基板の近傍のパーティクルptを除去する例を述べたが、マスクステージ3に設けられた異物除去装置PRS1についても上記と同様に構成することができる。
【0041】
(実施例1-2)
図7を参照して、実施例1-2における露光装置について説明する。上述の実施例1-1に係る露光装置(
図3)との違いは、回収部の構成である。実施例1-1の露光装置のように排気風によってパーティクル回収を行う場合、露光装置に接続される設備用力によっては、パーティクル回収に十分な排気風量を確保できない場合がありうる。そこで実施例1-2では、とりわけパーティクル回収に十分な排気風量を確保できない場合に有利な回収部として、帯電することにより集積部18に集められたパーティクルを捕捉する帯電部27が使用される。帯電部27は集積部18と接続される。
【0042】
帯電部27は、例えば、実施例1-1における排気ダクト19に相当する位置に配置され、集積部18との接続面以外は、例えば板金で構成された筐体によって空間的に分離される。帯電部27は、その筐体の内部に配置された帯電シート24を備える。帯電シート24に所定の電圧を印加することにより帯電シート24が帯電し、静電気力によってパーティクルを引き寄せることができる。
【0043】
例えば、基板ステージ5が基板交換位置に移動して基板交換工程が始まると同時に、異物除去装置PRS1が作動する。このとき帯電シート24に所定の電圧が印加される。集積部18に集められたパーティクルptは、噴流mfや気流sfに乗って帯電シート24に向かって移動する。移動したパーティクルptは、帯電シート24に引き寄せられ付着する。
【0044】
帯電部27は、更に、帯電シート24が巻回された第1スプール25と、第2スプール26とを備えうる。第2スプール26が第1スプール25から繰り出された帯電シート24を巻き取ることにより、帯電シート24に付着した異物を回収することができる。
【0045】
なお、帯電部27は、集積部18に常時接続させた状態で基板ステージ5に配置されてもよい。
【0046】
また、この実施例1-2では、回収部が、帯電することにより集積部18に集められたパーティクルを捕捉する帯電部27である例を示したが、帯電部27に代えて、集積部18に集められたパーティクルを粘着力によって捕捉する粘着部を用いてもよい。
【0047】
(実施例1-3)
図8を参照して、実施例1-3の露光装置について説明する。実施例1-3では、集積部18は回収部29と接続される。回収部28は、気流を濾過して集積部18から運ばれたパーティクルを捕集するフィルタ29を含みうる。回収部29は、実施例1-1および1-2と同様、基板交換位置でのみ集積部18と接続される構成でもよいし、常時接続されてもよい。
【0048】
<第2実施形態>
図9を参照して、第2実施形態における露光装置について説明する。
図9は、第2実施形態の露光装置における異物除去装置PRS2の構成を示す図であり、
図2(b)に対応する図である。
図9では、ダクト15の内部に、
図2(b)の気流形成部17に代えて、噴流mfを形成する気流形成部31が配置されている。気流形成部31によって噴流mfが形成されることにより、ダクト15の外部空間から内部空間に向かって噴流による巻き込みが起きて、スリット16を介してダクト15の外側から内側に向かう気流sfが形成される。気流sfは、ダクト15外部の表面にある気体や、ダクト15の表面以外の気体から形成される。
【0049】
(実施例2-1)
実施例2-1の露光装置について説明する。実施例2-1の露光装置における気流形成部31は、ファンを含みうる。ファンは、例えば、軸流ファンでありうる。あるいは、気流形成部31は、遠心ファンまたは軸流式圧縮機を含んでいてもよい。軸流ファンは、
図9に示すように、例えばダクト15の内部に1つ以上配置される。ダクト15内部に生じる気流の圧力損失の観点から、軸流ファンはダクト15の下流側に配置されるとよい。
【0050】
ダクト15内部の軸流ファン上流側に負圧の噴流mfが形成される。噴流mfが形成されることにより、ダクト15の外部空間から内部空間に向かって噴流による巻き込みが起きて、スリット16を介してダクト15の外側から内側に向かう気流sfが形成される。気流sfは、ダクト15外部の表面にある気体や、ダクト15の表面以外の気体から形成される。
【0051】
気流sfによって基板Pの近傍に存在するパーティクルptは、ダクト15内部に引き込まれる。ダクト15内部に引き込まれたパーティクルptは、更に噴流mfの流れに乗ってダクト15の少なくとも一箇所に配置された集積部18に集められる。
【0052】
<第3実施形態>
図10および
図11を参照して、第3実施形態の露光装置について説明する。
図10は、第3実施形態における露光装置の構成を示す図であり、
図11は、
図10の露光装置に設けられた異物除去装置PRS3の構成を示す図である。第3実施形態における異物除去装置PRS3の構成自体は、第1実施形態における異物除去装置PRS1または第2実施形態における異物除去装置PRS2と同様である。すなわち、
図11に示すように、異物除去装置PRS3は、ダクト15と、気流形成部17と、スリット16と、集積部18と、回収部19とを有しうる。
【0053】
ただし、第3実施形態では、異物除去装置PRS3の配置が第1実施形態および第2実施形態と異なる。異物除去装置PRS3は、基板ステージ5よって保持された基板あるいはマスクステージ3によって保持されたマスクの上方に配置される。異物除去装置PRS3は、例えば、本体構造体30によって支持されうる。スリット16は、マスクMまたは基板Pと対面するようダクト15の筐体の下面に形成されている。
【0054】
ダクト15内部に配置された気流形成部17によって、ダクト15内部に正圧の噴流mfが形成される。噴流mfとダクト15の内壁の間で生じる噴流の巻き込み効果によって、スリット16を介してダクト15内部に向かう気流sfが形成される。この気流sfによって、スリット16からダクト15より下方にあるダクト15外部の空間にある気体がダクト15に引き込まれる。
【0055】
基板ステージ5の基板載置部の近傍を異物除去装置PRS3に近接させることにより、基板載置部の近傍のパーティクルptが除去される。噴流mfと気流sfは、ダクト15内部を通過して、集積部18に向かう。集積部18には、回収部19が接続されており、噴流mfや気流sfに乗ってきたパーティクルptは、回収部19によって装置外へと排出される。
【0056】
(実施例3-1)
図10および
図11を参照して、実施例3-1の露光装置について説明する。異物除去装置PRS3は、少なくとも基板ステージ5の上方にあり、基板ステージ5が駆動した場合および停止した場合のどちらにおいても基板ステージと干渉しない位置に配置される。異物除去装置PRS3は、例えば本体構造体30によって支持される。
【0057】
基板ステージ5の基板載置部の近傍を異物除去装置PRS3に近接させた後、異物除去装置PRS3が作動することで、噴流mfと気流sfによりパーティクルptが基板載置部の近傍から除去される。
【0058】
基板ステージ5の基板載置部の近傍から除去されたパーティクルptは、ダクト15を介して集積部18に集められ、回収部19から露光装置外へと排出される。
【0059】
マスク側に設けられた異物除去装置PRS3についても同様である。マスク側に設けられた異物除去装置PRS3の動作タイミングについては、本実施例においても、第1実施形態で説明した
図6のフローチャートを援用することができる。なお、基板側の異物除去装置PRS3を本体構造体30に設ける場合、投影光学系4を避けた位置配置する必要がある。しかし、異物除去装置PRS3と投影光学系4が共に開口部21に近い位置になることから、そのような配置の制約上、基板交換工程と並行して基板側のパーティクル除去工程を実施することは難しい可能性がある。
【0060】
これに対し、マスク側の異物除去装置PRS3にはそのような配置の制約はないため、原版交換工程と並行してマスク側のパーティクル除去工程を実施することが可能である。
【0061】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態における物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、上記のリソグラフィ装置(露光装置やインプリント装置など)を用いて基板に原版のパターンを形成する形成工程と、該形成工程でパターンが形成された基板を加工する加工工程とを含みうる。更に、かかる物品製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0062】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0063】
P:基板、15:ダクト、16:スリット、17:気流形成部、18:集積部