(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】無線通信端末、無線通信方法及び無線通信プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/02 20090101AFI20241030BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20241030BHJP
H04W 80/10 20090101ALI20241030BHJP
H04M 1/72 20210101ALI20241030BHJP
【FI】
H04W48/02
H04W88/06
H04W80/10
H04M1/72
(21)【出願番号】P 2020164956
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 将揮
(72)【発明者】
【氏名】永澤 和行
【審査官】▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/182016(WO,A1)
【文献】特表2019-519960(JP,A)
【文献】特開2020-077989(JP,A)
【文献】特開平08-182047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
H04M 1/72
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信制御及びデータ伝送を第1周波数の電波で第1基地局と行う第1無線通信処理と、前記第1周波数の電波よりも高速なデータ伝送が可能な第2周波数の電波で第2基地局とのデータ伝送を行うとともに通信制御を前記第1周波数の電波で
前記第1基地局と行う第2無線通信処理とを実行する無線通信部と、
前記無線通信部を介して他の無線通信端末との音声通話を実行する通話処理部と、
前記音声通話の状態が変化したことを検知すると、前記第1基地局との間におけるシグナリング処理の時間だけウェイト処理を行った後に前記通話処理部による通信状態を取得し、前記通信状態が前記音声通話
の実行中であることを
示す場合に、前記第2無線通信処理の実行を抑制する制御部と、を備える、
無線通信端末。
【請求項2】
前記第2無線通信処理の実行を抑制することは、前記第2基地局を探索するセルサーチを抑止することを含む、
請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記制御部は、前記音声通話の終了を検知すると、前記第2無線通信処理の実行を許可する、
請求項1または2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記音声通話は、Voice over Internet Protocol(VoIP)による通話を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信端末。
【請求項5】
無線通信端末が、
通信制御及びデータ伝送を第1周波数の電波で第1基地局と行う第1無線通信処理と、
前記第1周波数の電波よりも高速なデータ伝送が可能な第2周波数の電波で第2基地局とのデータ伝送を行うとともに通信制御を前記第1周波数の電波で
前記第1基地局と行う第2無線通信処理と、
他の無線通信端末との音声通話を実行する通話処理と、
前記音声通話の状態が変化したことを検知すると、前記第1基地局との間におけるシグナリング処理の時間だけウェイト処理を行った後に前記通話処理における通信状態を取得し、前記通信状態が前記音声通話
の実行中であることを
示す場合に、前記第2無線通信処理の実行を抑制する処理と、を実行する、
無線通信方法。
【請求項6】
無線通信端末に、
通信制御及びデータ伝送を第1周波数の電波で第1基地局と行う第1無線通信処理と、
前記第1周波数の電波よりも高速なデータ伝送が可能な第2周波数の電波で第2基地局とのデータ伝送を行うとともに通信制御を前記第1周波数の電波で
前記第1基地局と行う第2無線通信処理と、
他の無線通信端末との音声通話を実行する通話処理と、
前記音声通話の状態が変化したことを検知すると、前記第1基地局との間におけるシグナリング処理の時間だけウェイト処理を行った後に前記通話処理における通信状態を取得し、前記通信状態が前記音声通話
の実行中であることを
示す場合に、前記第2無線通信処理の実行を抑制する処理と、を実行させる、
無線通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末、無線通信方法及び無線通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より高速な通信環境を実現するため、第5世代移動通信システム(5G)の普及が進められている。未だ充分な環境が整ってはいない5Gを補完するため、従来利用されているLong Term Evolution(LTE)と5Gの双方の通信方式に対応する無線通信端末が提案されている。このような無線通信端末として、Non-Stand Alone(NSA)方式の無線通信端末を挙げることができる。
【0003】
無線通信端末では、音声通話時におけるユーザーに対する電磁波の暴露量が電波法等の法令によって規定される。NSA方式のように複数の通信方式に対応する無線通信端末では、ユーザーに対する電磁波の暴露量が増加しやすい。そのため、送信電力を制御して電磁波の暴露量を抑制する技術(特許文献1,3)や、時分割で複数の通信方式を切り替えることで電磁波の暴露量を抑制する技術(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/230091号
【文献】特開2013-143575号公報
【文献】特開2018-191330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LTEや無線Local Area Network(LAN)、ブルートゥース(登録商標)の各通信方式に加え、さらに5Gの通信方式にも無線通信端末を対応させると、人体への電磁波の暴露量は増大することになる。各通信方式における送信電力を低下させることで人体への電磁波の暴露量を減少させることができるが、送信電力を低下させすぎてしまうとThe 3rd Generation Partnership Project(3GPP)における送信電力の規定を満たせなくなる虞がある。
【0006】
また、無線通信端末のハードウェア設計において人体への電磁波の暴露量が低下するように各デバイスを配置する対応も考えられる。しかしながら、小型化、高機能化が進められる無線通信端末においてはハードウェア設計の自由度が低下しており、デバイスの配置によって電磁波の暴露量を低下させることは困難となっている。
【0007】
開示の技術の1つの側面は、複数の通信方式に対応する無線通信装置において、音声通話時における人体への電磁波の暴露量を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術の1つの側面は、次のような無線通信端末によって例示される。本無線通信端末は、無線通信部と、通話処理部と、制御部とを備える。無線通信部は、通信制御及びデータ伝送を第1周波数の電波で第1基地局と行う第1無線通信処理と、前記第1周波数の電波よりも高速なデータ伝送が可能な第2周波数の電波で第2基地局とのデータ伝送を行うとともに通信制御を前記第1周波数の電波で第1基地局と行う第2無線通信処理とを実行する。通話処理部は、無線通信部を介して他の無線通信端末との音声通話を実行する。制御部は、音声通話を検知すると、第2無線通信処理の実行を抑制する。
【発明の効果】
【0009】
本無線通信端末は、複数の通信方式に対応する無線通信装置において、音声通話時における人体への電磁波の暴露量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るスマートフォンのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るスマートフォンと基地局との通信を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るスマートフォンの処理フローの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るスマートフォンと基地局との通信状態の遷移の一例を示す第1の図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るスマートフォンと基地局との通信状態の遷移の一例を示す第2の図である。
【
図7】
図7は、変形例におけるスマートフォンの処理フローの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例において、ENDC状態からENDC不許可状態に遷移する流れを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
本実施形態では、無線通信部と、通話処理部と、制御部とを備える無線通信端末について説明する。無線通信端末は、例えば、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、フィーチャーフォン等である。無線通信部は、第1周波数の電波で第1基地局との間でデータ伝送を行うときは、通信制御も第1周波数で第1基地局と行う第1無線通信処理を実行する。また、無線通信部は、第1周波数の電波よりも高速なデータ伝送が可能な第2周波数の電波で第2基地局との間でデータ伝送を行うときは、通信制御を第1周波数の電波で第1基地局と行う第2無線通信処理を実行する。制御部は、無線通信部を介した他の無線通信端末との音声通話が通話処理部によって実行されたことを検知すると、第2無線通信処理の実行を抑制する。
【0012】
本実施形態に係る無線通信端末では、音声通話が通話処理部によって実行されたことを検知すると、第2無線通信処理の実行を抑制する。第2無線通信処理が抑制されることで第2周波数の電波による通信が抑制されるため、ユーザーに対する電磁波の暴露量が低下される。ここで、音声通話は、Voice over Internet Protocol(VoIP)による通話を含んでもよい。このような処理により、小型化、高機能化の要求によりハードウェア設計の自由度が低下した状況であったり、送信電力を低下させることが困難な状況であったりしても、ユーザーに対する電磁波の暴露量を低下させることができる。
【0013】
また、本実施形態において第2無線通信処理の実行を抑制することは、第2基地局を探索するセルサーチを抑止することを含んでもよい。このような処理により、音声通話中に第2基地局との接続が行われることを抑制することができる。
【0014】
また、本実施形態において、制御部は、音声通話の終了を検知すると、第2無線通信処理の実行を許可してもよい。本実施形態に係る無線通信端末は、このような処理により、
音声通話終了後、ユーザーによる特別な操作を行わなくとも、第1周波数の電波よりも高速な第2周波数の電波による通信を開始することができる。
【0015】
以下、図面を参照して、実施形態に係る無線通信端末、無線通信方法及び無線通信プログラムについてさらに説明する。以下の説明では、上記無線通信端末をスマートフォンに適用した場合について説明する。
図1は、実施形態に係るスマートフォンのハードウェア構成の一例を示す図である。実施形態に係るスマートフォン1は、アプリケーションCentral Processing Unit(CPU)11、メモリ12、モデムCPU13、無線部14、アンテナ15、マイクロフォン16、ディスプレイ17、スピーカー18及び入力部19を備える。
【0016】
アプリケーションCPU11は、マイクロプロセッサユニット(MPU)、プロセッサとも呼ばれる。アプリケーションCPU11は、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一のアプリケーションCPU11がマルチコア構成を有していてもよい。また、アプリケーションCPU11が実行する処理のうち少なくとも一部は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路によって実行されてもよい。また、アプリケーションCPU11の少なくとも一部にアナログ回路が含まれてもよい。集積回路は、Large Scale Integrated circuit(LSI)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)を含む。PLDは、例えば、Field-Programmable Gate Array(FPGA)を含む。アプリケーションCPU11は、プロセッサと集積回路との組み合わせであってもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラユニット(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれる。スマートフォン1では、アプリケーションCPU11がメモリ12に記憶されたプログラムの実行を通じて周辺装置の制御を行う。これにより、スマートフォン1は、所定の目的に合致した処理を実行することができる。メモリ12は、アプリケーションCPU11が読み取り可能な記録媒体である。
【0017】
メモリ12は、アプリケーションCPU11から直接アクセスされる記憶部として例示される。メモリ12は、Random Access Memory(RAM)及びRead Only Memory(ROM)を含む。
【0018】
メモリ12には、オペレーティングシステム(Operating System、OS)、各種コンピュータプログラム、各種テーブル等が格納される。メモリ12は、例えば、Erasable Programmable ROM(EPROM)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)等である。
【0019】
モデムCPU13は、アプリケーションCPU11の指示にしたがって、無線部14の制御を行う。
【0020】
無線部14は、アンテナ15を介して基地局との電波の送受信を行う。無線部14は、第5世代移動通信システム(以下、5G)とLong Term Evolution(LTE)の双方で通信可能である。5Gでは、6GHzまでの周波数の電波(sub6:FR1)や24GHzから40GHzの周波数の電波(ミリ波:FR2)を用いて通信が行われる。無線部14は、sub6及びミリ波の双方に対応してもよいし、sub6及びミリ波のいずれか一方に対応してもよい。
【0021】
図2は、実施形態に係るスマートフォンと基地局との通信を模式的に示す図である。な
お、
図2では、通信制御を行うコントロールプレーンを「C-plane」、ユーザーデータの送受信を行うユーザープレーンを「U-Plane」と記載している。
図2Aは、スマートフォン1とLTEに対応する基地局51との通信を模式的に示す。無線部14は、基地局51と通信を行うときは、ユーザープレーン及びコントロールプレーンの双方でLTEを用いる。
図2Bは、スマートフォン1と5Gに対応する基地局52との通信を模式的に示す。無線部14は、基地局52と通信を行うときは、ユーザープレーンでは基地局51とのLTEに加え、5Gを用いて基地局52と通信し、コントロールプレーンではLTEを用いて基地局51と通信する。無線部14は、基地局51と通信を行うときも基地局52と通信を行うときも、コントロールプレーンではLTEを用いて基地局51と接続する。すなわち、スマートフォン1は、NSA方式の無線通信端末であるということができる。なお、
図2では、基地局51及び基地局52が個別の基地局として記載されているが、基地局51及び基地局52は1台の基地局として形成されてもよい。基地局51は、「第1基地局」の一例である。基地局52は、「第2基地局」の一例である。
【0022】
図1に戻り、マイクロフォン16は、音の入力を受け付ける。スピーカー18は、スマートフォン1が再生する動画や音楽等の音を出力する。スピーカー18は、さらに、スマートフォン1を用いた通話相手からの音声を出力する。スマートフォン1は、マイクロフォン16とスピーカー18とによって、電話回線を用いた音声通話やVoIPによる音声通話を実現できる。
【0023】
ディスプレイ17は、例えば、文字や画像等を表示する表示装置である。ディスプレイ17は、例えば、Liquid Crystal Display(LCD)、Plasma Display Panel(PDP)、Electroluminescence(EL)パネル、有機ELパネル等である。
【0024】
入力部19は、スマートフォン1のユーザーからの操作を受け付ける。入力部19は、例えば、ハードウェアキーやタッチパネルである。タッチパネルは、ディスプレイ17に重畳して設けられ、ユーザーの指等によるタッチ操作を検出する。タッチパネルがタッチ操作を検出する方式には限定はない。タッチパネルがタッチ操作を検出する方式としては、例えば、静電容量方式や抵抗膜方式を挙げることができる。
【0025】
<スマートフォン1の処理ブロック>
図3は、実施形態に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。スマートフォン1は、Specific Absorption Rate(SAR)制御部101、呼制御部102、通話処理部103、音声データ制御部104、VoIP処理部105及び無線制御部106を備える。スマートフォン1は、メモリ12に記憶されたコンピュータプログラムをアプリケーションCPU11が実行することで、上記スマートフォン1の、SAR制御部101、呼制御部102、通話処理部103、音声データ制御部104、VoIP処理部105及び無線制御部106等の各部としての処理を実行する。
【0026】
SAR制御部101は、呼制御部102及び音声データ制御部104を監視する。SAR制御部101は、通話処理部103による音声通話またはVoIP処理部105によるVoIP呼が確立中または確立済みであることを検知すると、無線制御部106に対して5Gの停波を指示する。SAR制御部101は、5Gの無線接続を停波させることで、LTEによる通信と5Gによる通信とが同時に行われるE-UTRAN New Radio - Dual Connectivity(ENDC)状態に遷移することを抑制する。
【0027】
呼制御部102は、通話処理部103による音声呼及びVoIP処理部105によるデータ通信の状態を取得する。なお、本明細書では、電話回線を用いた音声通話の呼制御を
音声呼、VoIPを用いた通話の呼制御をVoIP呼と称する。呼制御部102は、通話処理部103による音声呼の状態及びVoIP処理部によるデータ通信の状態のいずれかの状態が変化すると、SAR制御部101にその旨を通知する。音声呼の状態としては、例えば、「アイドル」、「確立中(呼出中)」、「確立済み」の3つの状態を挙げることができる。
【0028】
呼制御部102は、例えば、スマートフォン1のOSがアンドロイド(登録商標)である場合には、「PhoneStateListener.LISTEN_CALL_STATE」の値を参照することで、音声呼の状態を取得できる。「PhoneStateListener.LISTEN_CALL_STATE」の値は、「CALL_STATE_IDLE」、「CALL_STATE_RINGING」、「CALL_STATE_OFFHOOK」の3通りの値をとり得る。「CALL_STATE_IDLE」は、例えば、「アイドル」を示す。「CALL_STATE_RINGING」は、例えば、「確立中(呼出中)」を示す。「CALL_STATE_OFFHOOK」は、例えば、「確立済み」を示す。
【0029】
呼制御部102は、取得した「PhoneStateListener.LISTEN_CALL_STATE」の値により、音声呼の状態が変化したことを検知すると、SAR制御部101に対してその旨を通知する。呼制御部102は、通話呼の状態に変化がした場合、「PhoneStateListener.LISTEN_CALL_STATE」によりSAR制御部101に対して音声呼の状態を通知する。
【0030】
データ通信の状態としては、例えば、「送受信データ無し」、「送信データ有り」、「受信データ有り」、「送受信データ有り」、及び「データ接続有り、かつ、物理チャネル解放」の5つの状態を挙げることができる。
【0031】
呼制御部102は、例えば、スマートフォン1のOSがアンドロイドである場合には、「PhoneStateListener.LISTEN_DATA_ACTIVITY」の値を参照することで、データ通信の状態を取得できる。「PhoneStateListener.LISTEN_DATA_ACTIVITY」の値は、「DATA_ACTIVITY_NONE」、「DATA_ACTIVITY_OUT」、「DATA_ACTIVITY_IN」、「DATA_ACTIVITY_INOUT」、及び「DATA_ACTIVITY_DORMANT」の5通りの値をとり得る。「DATA_ACTIVITY_NONE」は、例えば、「送受信データ無し」を示す。「DATA_ACTIVITY_OUT」は、例えば、「送信データ有り」を示す。「DATA_ACTIVITY_IN」は、例えば、「受信データ有り」を示す。「DATA_ACTIVITY_INOUT」は、例えば、「送受信データ有り」を示す。「DATA_ACTIVITY_DORMANT」は、例えば、「データ接続有り、かつ、物理チャネル解放」を示す。
【0032】
呼制御部102は、取得した「PhoneStateListener.LISTEN_DATA_ACTIVITY」の値により、データ通信の状態が変化したことを検知すると、SAR制御部101に対してその旨を通知する。呼制御部102は、例えば、所定間隔で「PhoneStateListener.LISTEN_DATA_ACTIVITY」の値を取得し、取得した値が前回取得した値から変化した場合に、SAR制御部101に対して通知を行う。
【0033】
通話処理部103は、他のスマートフォンや携帯電話との音声通話を実行するアプリケーションプログラムである。通話処理部103は、呼制御部102からの制御にしたがって、音声通話の開始や終了を行う。
【0034】
VoIP処理部105は、他のスマートフォンや携帯電話とのVoIP通話を実行するアプリケーションプログラムである。VoIP処理部105は、呼制御部102からの制御にしたがって、VoIP通話の開始や終了を行う。
【0035】
音声データ制御部104は、音声呼またはVoIP呼の状態を取得する。音声呼またはVoIP呼の状態としては、例えば、「確立中、及び確立済みの音声呼、及びVoIP呼のいずれもが存在しない」、「着信呼呼出中」、「音声呼通話中」、「VoIP通話中」、「通話スクリーン中」の5つの状態を挙げることができる。ここで、「通話スクリーン中」としては、例えば、電話の着信をユーザの応答前に自動的に着信拒否する処理を挙げることができる。音声データ制御部104は、取得した音声呼またはVoIP呼の状態をSAR制御部101に通知する。
【0036】
音声データ制御部104は、例えば、スマートフォン1のOSがアンドロイドである場合には、アンドロイドが提供するApplication Programming Interface(API)「AudioManager.getMode()」の戻り値を取得し、取得した戻り値をSAR制御部101に通知すればよい。
【0037】
「AudioManager.getMode()」の戻り値は、「MODE_NORMAL」、「MODE_RINGTONE」、「MODE_IN_CALL」、「MODE_IN_COMMUNICATION」、「MODE_CALL_SCREENING」の5つの値をとり得る。「MODE_NORMAL」は、例えば、確立中、及び確立済みの音声呼、及びVoIP呼のいずれもが存在しない」ことを示す。「MODE_RINGTONE」は、例えば、「着信呼呼出中」を示す。「MODE_IN_CALL」は、例えば、「音声呼通話中」を示す。「MODE_IN_COMMUNICATION」は、例えば、「VoIP通話中」を示す。「MODE_CALL_SCREENING」は、例えば、「通話スクリーン中」を示す。
【0038】
無線制御部106は、無線部14及びアンテナ15を制御して、基地局との無線接続の確立や、確立した無線接続を用いた無線通信を行う。無線制御部106は、例えば、セルサーチによって基地局51及び基地局52を検出した場合には、コントロールプレーンをLTEで基地局51と接続するとともに、ユーザープレーンをLTEで基地局51、5Gで基地局52と接続する。すなわち、無線制御部106は、基地局51及び基地局52を検出した場合、ENDC状態に遷移することになる。また、無線制御部106は、例えば、セルサーチによって基地局52を検出せずに基地局51を検出した場合には、コントロールプレーン及びユーザープレーンの双方をLTEで基地局51と接続する。すなわち、無線制御部106は、基地局52を検出せずに基地局51を検出した場合、ENDC状態には遷移しない。
【0039】
ここで、通話処理部103による音声通話やVoIP処理部105によるVoIP通話時におけるユーザーに対する電波の暴露量の上限は、例えば、電波法等の法令によって規定されている。暴露量は、例えば、総合照射比(TER)によって規定される。TERは以下の(式1)によって定められる。
【数1】
【0040】
(式1)において、SARは比吸収率を示し、SARLimitはSARの許容値を示す。また、PDは電力密度を示し、PDLimitは電力密度の許容値を示す。電波法等
の法令では、任意の6分間における1分当たりのTERを1未満とすることが規定されている。
【0041】
(式1)において「SAR/SARLimit」の項はLTE、Sub6、無線LAN及びブルートゥース(登録商標)に由来する暴露量を示す。「PD/PDLimit」の項は、5Gのミリ波に由来する暴露量を示す。すなわち、スマートフォン1がLTE以外の通信方式にも対応することで、TERは増加しやすくなる。そのため、スマートフォン1がLTE及び5Gの双方に対応すると、電波法等の法令で規定される条件を満たすようにTERを設定することは困難となる。
【0042】
そこで、スマートフォン1は、音声呼やVoIP呼を検出すると、ENDC状態を不許可とすることで、TERの増加を抑制する。SAR制御部101は、例えば、呼制御部102から音声呼及びデータ通信のいずれかの状態が変化したことの通知を受けると、音声呼及びVoIP呼が実行状況を音声データ制御部104から取得する。なお、この取得処理は、スマートフォン1と基地局との間における無線チャネル及び無線接続を制御するシグナリング処理の時間だけウェイト処理を行ってから実行することが好ましい。SAR制御部101は音声データ制御部104からの取得情報で音声呼及びVoIP呼の少なくとも一方が存在することを示す場合、ENDC状態を不許可と判定する。例えば、スマートフォン1のOSがアンドロイドである場合には、音声呼及びVoIP呼の少なくとも一方が検出される状態は、音声データ制御部104から取得する戻り値が「MODE_NORMAL」以外である場合であるということができる。
【0043】
SAR制御部101は、音声呼及びVoIP呼の少なくとも一方を検出すると、ENDC状態の不許可を無線制御部106に対して通知する。無線制御部106は、ENDC状態不許可の通知を受けると、基地局との間で5Gの通信を行っている場合には5Gによる電波の送受信を停止する。ENDC状態不許可の通知を受けた無線制御部106は、さらに、5Gにおけるセルサーチも抑止してもよい。無線制御部106は、SAR制御部101からENDC状態不許可を解除する通知を受けるまでの間、5Gによる電波の送受信停止を維持する。また、無線制御部106は、SAR制御部101からENDC状態不許可を解除する通知を受けるまでの間、5Gにおけるセルサーチの抑止を維持することが好ましい。
【0044】
SAR制御部101は、音声呼やVoIP呼を検出しなくなると、ENDC状態不許可の解除を無線制御部106に対して通知する。無線制御部106は、ENDC状態不許可解除の通知を受けると、5Gによるセルサーチの抑止を解除する。無線制御部106は、セルサーチの抑止を解除することで、ENDC状態への遷移が可能となる。スマートフォン1は、ENDC状態への遷移が可能となることで、5Gによる通信が可能となる。
【0045】
<実施形態に係るスマートフォン1の処理フロー>
図4は、実施形態に係るスマートフォンの処理フローの一例を示す図である。以下、
図4を参照して、スマートフォン1の処理フローの一例について説明する。
【0046】
T1では、呼制御部102は、音声呼及びVoIP呼の状態を取得する。呼制御部102は、取得した音声呼及びVoIP呼の状態が変化した場合には(T1でYES)、変化した旨をSAR制御部101に通知し、処理はT2に進められる。取得した音声呼及びVoIP呼の状態が変化しない場合には(T1でNO)、T1の処理が繰り返される。
【0047】
T2では、SAR制御部101は、基地局51や基地局52との間における無線チャネル及び無線接続を制御するシグナリング処理の時間だけウェイトしてから、音声呼及びVoIP呼が実行されているか否かの判定情報を音声データ制御部104から取得する。
【0048】
T3では、SAR制御部101は、確立中、または確立済みの音声呼、またはVoIP呼が実行されているか否かを判定する。音声呼及びVoIP呼の少なくとも一方が実行されている場合(T3でYES)、処理はT4に進められる。音声呼及びVoIP呼のいずれもが実行されていない場合(T3でNO)、処理はT5に進められる。
【0049】
T4では、SAR制御部101は、ENCD状態の不許可を無線制御部106に通知する。無線制御部106は、5Gによる電波の送受信を停止する。
【0050】
T5では、SAR制御部101は、ENDC状態の不許可解除を無線制御部106に通知する。無線制御部106は、コントロールプレーンではLTEによって基地局51と接続し、ユーザープレーンではLTEを基地局51、5Gを基地局52と接続する。
【0051】
<実施形態に係るスマートフォン1の通信状態の遷移>
図5及び
図6は、実施形態に係るスマートフォンと基地局との通信状態の遷移の一例を示す図である。
図5は、ENDC状態からENDC不許可状態に遷移する流れを例示する。
図6は、ENDC不許可状態からENDC状態に遷移する流れを例示する。まず、
図5を参照して、ENDC状態からENDC不許可状態に遷移する流れについて説明する。
【0052】
C1では、スマートフォン1は、コントロールプレーンではLTEを用いて基地局51と接続し、ユーザープレーンではLTEを基地局51、5Gを基地局52と接続する。すなわち、スマートフォン1は、ENDC状態となっている。
【0053】
C2では、スマートフォン1は、音声呼及びVoIP呼の少なくとも一方を検出したことで、ENDC状態の不許可を決定する。C3では、スマートフォン1は、5Gによる電波の送受信を停止する。
【0054】
C4では、スマートフォン1は、基地局52との通信を切断したことを基地局51に対して通知する。スマートフォン1は、例えば、「scgFailureInformationNR」を基地局51に送信することで通知を行うことができる。C5では、ユーザープレーン及びコントロールプレーンの双方をLTEを用いて基地局51と接続する。
【0055】
続いて、
図6を参照して、ENDC不許可状態からENDC状態に遷移する流れについて説明する。D1では、スマートフォン1は、ユーザープレーン及びコントロールプレーンの双方をLTEを用いて基地局51と接続する。
【0056】
D2では、スマートフォン1は、音声呼及びVoIP呼のいずれもが実行されていないことを検出したことにより、ENDC状態不許可の解除を決定する。
【0057】
D3では、スマートフォン1は、5Gの基地局52を検出するセルサーチを実行する。D4では、スマートフォン1は、D3のセルサーチの結果を基地局51に通知する。セルサーチの結果は、例えば、基地局52との通信品質を含む。D4の通知は、例えば、「Measurement Report」によって行われる。D5では、基地局51は、基地局52の追加(基地局52のセル追加)をスマートフォン1に対して通知する。D5の通知は、例えば、「rrcConnectionReconfiguration」によって行われる。
【0058】
D6では、スマートフォン1は、D5によって追加された基地局52との通信を開始する。すなわち、スマートフォン1は、コントロールプレーンではLTEを用いて基地局51と通信するとともに、ユーザープレーンではLTE基地局51、5Gを基地局52と通
信するENDC状態に遷移する。
【0059】
<実施形態の作用効果>
実施形態に係るスマートフォン1は、音声呼及びVoIP呼の少なくとも一方を検出すると、5Gを用いた通信を停止する。このような処理により、スマートフォン1は、音声通話時におけるTERの増加を抑制することができる。
【0060】
実施形態に係るスマートフォン1は、アプリケーションCPU11によるソフトウェア処理によってTERの増加を抑制する。そのため、スマートフォン1は、小型化、薄型化及び高機能化が要求されることで筐体内における部材の再配置等が困難な状況であっても、TERの増加を抑制することができる。
【0061】
<変形例>
実施形態では、音声呼及びVoIP呼の少なくとも一方を検出すると、5Gを用いた通信を停止する。変形例では、さらに、音声呼及びVoIP呼の少なくとも一方を検出すると、5Gを用いた通信を停止するとともに、5Gにおけるセルサーチを停止する処理について説明する。実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、図面を参照して、変形例におけるスマートフォン1の処理について説明する。
【0062】
<変形例におけるスマートフォン1の処理フロー>
図7は、変形例におけるスマートフォンの処理フローの一例を示す図である。
図4と同一の処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、
図7を参照して、変形例におけるスマートフォン1の処理フローの一例について説明する。
【0063】
T41では、SAR制御部101は、ENDC状態か否かの判定を行う。ENDC状態である場合(T41でYES)、処理はT42に進められる。ENDC状態ではない場合(T41でNO)、処理はT43に進められる。
【0064】
T42では、SAR制御部101は、ENCD状態の不許可を無線制御部106に通知する。無線制御部106は、5Gによる電波の送受信を停止する。
【0065】
T43では、無線制御部106は、5Gにおけるセルサーチを抑止する。すなわち、T43以降では、無線制御部106は、基地局52を検出するセルサーチを実行しない。
【0066】
T51では、SAR制御部101は、ENDC状態の不許可解除を無線制御部106に通知する。無線制御部106は、5Gにおけるセルサーチを開始する。すなわち、T51以降では、無線制御部106は、基地局52を検出するセルサーチを実行する。無線制御部106は、基地局51及び基地局52を検出すると、コントロールプレーンではLTEによって基地局51と接続し、ユーザープレーンではLTEを基地局51、5Gを基地局52と接続する。
【0067】
<変形例におけるスマートフォン1の通信状態の遷移>
図8は、変形例において、ENDC状態からENDC不許可状態に遷移する流れを例示する。
図5と同一の処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図8を参照して、ENDC状態からENDC不許可状態に遷移する流れについて説明する。
【0068】
C51では、無線制御部106は、5Gにおけるセルサーチを抑止する。すなわち、C51以降では、無線制御部106は、基地局52を検出するセルサーチを実行しない。そのため、C52における無線制御部106による基地局51に対するセルサーチの結果報告は停止される。
【0069】
なお、ENDC不許可状態からENDC状態に遷移する流れは、変形例においても
図6と同様であるため、その説明を省略する。
【0070】
変形例におけるスマートフォン1は、5Gを用いた通信を停止する際に、5Gの基地局52に対するセルサーチも停止する。そのため、変形例におけるスマートフォン1は、音声呼またはVoIP呼の実行中に5Gの通信が開始されることを抑制することができる。
【0071】
<その他の変形>
以上説明した実施形態では、アンドロイドのAPIを用いて各処理の説明を行ったが、アンドロイド以外のOSであっても当該OSが提供するAPI等を用いることで、同様の処理が可能である。すなわち、本実施形態や変形例は、OSがアンドロイドである場合に限定されない。
【0072】
以上説明した実施形態では、一例としてENDCに適用される場合について説明したが、本実施形態が開示する技術の適用対象がENDCに限定されるわけではない。本実施形態が開示する技術は、例えば、New Radio E-UTRAN - Dual Connectivity(NEDC)やMulti-RAT Dual Connectivity(MRDC)にも適用可能である。
【0073】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【0074】
<<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>>
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させる情報処理プログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0075】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、Compact Disc-Recordable(CD-R)、Compact Disc-ReWriterable(CD-RW)、Digital Versatile Disc(DVD)、ブルーレイディスク(BD)、Digital Audio Tape(DAT)、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【符号の説明】
【0076】
1・・・スマートフォン
11・・・アプリケーションCPU
12・・・メモリ
13・・・モデムCPU
14・・・無線部
15・・・アンテナ
16・・・マイクロフォン
17・・・ディスプレイ
18・・・スピーカー
19・・・入力部
101・・・SAR制御部
102・・・呼制御部
103・・・通話処理部
104・・・音声データ制御部
105・・・VoIP処理部
106・・・無線制御部
51,52・・・基地局