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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】樹脂被覆部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/06 20190101AFI20241030BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20241030BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20241030BHJP
   E04F 13/12 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B15/082 B
B32B15/082 Z
B32B27/40
E04F13/12 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020191754
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080600
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井化学産資株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】武川 哲
(72)【発明者】
【氏名】中村 善彦
(72)【発明者】
【氏名】井合 雄一
(72)【発明者】
【氏名】井出 一直
(72)【発明者】
【氏名】清水 幹雄
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-169494(JP,A)
【文献】特開平04-212840(JP,A)
【文献】特開平01-009185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
E04F13/00-13/30、
C09J7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼構造物を構成するための樹脂被覆部材であって、
部材と、
前記部材の表面に被覆され、透明ポリウレア樹脂で形成される樹脂層と、
を備え、
前記部材と前記樹脂層との間に設けられ、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂より選択された一以上の剥離剤で形成される剥離層からなる剥離領域と、
前記部材と前記樹脂層との間に設けられ、前記剥離層を含まない非剥離領域と、
を有する、樹脂被覆部材。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂被覆部材であって、
前記剥離領域は、複数設けられており、お互いに離間している、樹脂被覆部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂被覆部材であって、
前記部材と前記樹脂層との間の外周部は、前記非剥離領域で形成されている、樹脂被覆部材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記剥離領域は、ドット状またはライン状に設けられている、樹脂被覆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラント、橋梁、水門等の構造物に使用されている鋼部材等の部材の表面に、樹脂シートを被覆して、部材の防食性や防水性等を高めることが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5059222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鋼部材等の部材に被覆された樹脂シート等の樹脂層が経年劣化等した場合には、劣化した樹脂層を部材から剥離した後に、再び、新たな樹脂層を被覆することが行われている。また、部材が塗装されている場合には、塗膜が経年劣化等したときに、樹脂層を剥離した後に、部材を再塗装し、新たな樹脂層を被覆することが行われている。
【0005】
ここで樹脂層を部材から剥離するときに、樹脂層と部材とが強固に密着していると、上述したような樹脂層の剥離作業に多大な時間を要する可能性がある。一方、樹脂層と部材との密着性が低い場合には、樹脂層が部材から剥がれ易くなり、樹脂層と部材との間の隙間から水等の腐食媒体が入り易くなる。このため防食性や防水性等が低下する可能性がある。
【0006】
そこで本開示の目的は、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる樹脂被覆部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る鋼構造物を構成するための樹脂被覆部材は、部材と、前記部材の表面に被覆され、透明ポリウレア樹脂で形成される樹脂層と、を備え、前記部材と前記樹脂層との間に設けられ、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂より選択された一以上の剥離剤で形成される剥離層からなる剥離領域と、前記部材と前記樹脂層との間に設けられ、前記剥離層を含まない非剥離領域と、を有する。
【0008】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記剥離領域は、複数設けられており、お互いに離間していてもよい。
【0009】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記部材と前記樹脂層との間の外周部は、前記非剥離領域で形成されていてもよい。
【0010】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記剥離領域は、ドット状またはライン状に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の樹脂被覆部材によれば、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第一実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す断面模式図である。
図2】本開示の第一実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す平面模式図である。
図3】本開示の第一実施形態において、図1に示す剥離領域よりも大きな円形状でドット状に形成された剥離領域を示す図である。
図4】本開示の第一実施形態において、円形状でドット状に不規則に形成された剥離領域を示す図である。
図5】本開示の第一実施形態において、四角形状でドット状に形成された剥離領域を示す図である。
図6】本開示の第一実施形態において、四角形状でライン状に形成された剥離領域を示す図である。
図7】本開示の第一実施形態において、樹脂被覆部材の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第一実施形態〕
以下に本開示の第一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、樹脂被覆部材10の構成を示す断面模式図である。図2は、樹脂被覆部材10の構成を示す平面模式図である。樹脂被覆部材10は、部材12と、部材12の表面に被覆されている樹脂層14と、を備えている。
【0014】
部材12は、鋼材等の金属材料で形成される金属部材や、コンクリート材料で形成されるコンクリート部材等で構成されている。部材12は、例えば、プラント、橋梁、水門等の構造物に使用されている構造部材等である。部材12は、例えば、平板部材等で構成されている。部材12は、防食性や防水性等を高めるために塗装されていてもよく、部材12の表面に塗膜が設けられていてもよい。
【0015】
樹脂層14は、部材12の表面に被覆されており、樹脂で形成されている。部材12の表面を樹脂層14で覆うことにより、部材12の表面を保護することができる。例えば、部材12の表面を樹脂層14で覆うことにより、部材12の防食性や防水性等を高めることができる。また、部材12の表面を樹脂層14で覆うことにより、部材12の表面の傷等の損傷を抑制することができる。樹脂層14の厚みは、例えば、100μmから3mmとすることが可能である。樹脂層14は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等で形成することが可能である。樹脂層14の樹脂には、例えば、ポリウレア樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等を用いることができる。
【0016】
樹脂層14は、高弾性樹脂で形成されているとよい。樹脂層14が高弾性樹脂で形成されている場合には、樹脂層14が高い弾性力を有している。これにより樹脂層14にマイクロクラック等が生じた場合でも追従するので、樹脂層14の破断を抑制することができる。このような高弾性樹脂には、例えば、ポリウレア樹脂を用いるとよい。
【0017】
樹脂層14は、透明樹脂で形成されているとよい。樹脂層14が透明になるので、外側から部材12の表面状態を点検、観察等することができる。このような透明樹脂には、例えば、透明ポリウレア樹脂を用いるとよい。
【0018】
樹脂被覆部材10は、部材12と樹脂層14との間に設けられる剥離領域16と、部材12と樹脂層14との間に設けられる非剥離領域18と、を有している。部材12と樹脂層14との間に剥離領域16と非剥離領域18とを設けることにより、樹脂層14の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。次に、剥離領域16と非剥離領域18とについて、詳細に説明する。
【0019】
剥離領域16は、部材12と樹脂層14との間に設けられ、剥離剤で形成される剥離層20から構成されている。剥離層20を設けることにより、樹脂層14と剥離層20との密着力及び部材12と剥離層20との密着力の少なくとも一方を、部材12と樹脂層14との密着力より小さくすることができる。剥離領域16では剥離層20を介在させることにより、部材12と樹脂層14との密着性が低下するので、部材12から樹脂層14を剥がすときに、樹脂層14を容易に剥がすことができる。
【0020】
剥離層20は、剥離剤で形成されている。剥離剤には、例えば、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、水溶性樹脂等を用いることができる。
【0021】
剥離領域16は、少なくとも1つ設けられていればよく、複数設けられているとよい。剥離領域16が複数設けられている場合には、剥離領域16同士をお互いに離間させて設けるとよい。樹脂被覆部材10の使用中に、複数の剥離領域16の1つで部材12と樹脂層14との間に剥離が生じた場合でも、剥離領域16同士が非連続であり接触していないので、剥離の連鎖が抑制される。これにより、例えば、剥離領域16の剥離箇所から水等の腐食媒体が部材12と樹脂層14との間の隙間に入り込んだ場合でも、腐食媒体は非剥離領域18で囲まれているので、腐食媒体の更なる拡散を抑制することができる。
【0022】
剥離領域16は、部材12と樹脂層14との間にドット状(点状)またはライン状(線状)等に設けることができる。剥離領域16の形状は、例えば、円形状や多角形状等とすることが可能である。剥離領域16は、全ての剥離領域16が同じ大きさで形成されていてもよいし、異なる大きさで形成されていてもよい。剥離領域16は、規則的に配列して設けられていてもよいし、不規則に設けられていてもよい。
【0023】
例えば、図1、2に示す樹脂被覆部材10では、剥離領域16は、円形状でドット状に形成されている。図3から図5は、他の剥離領域22、24、26、28の構成を示す平面模式図である。図3は、図1に示す剥離領域16よりも大きな円形状でドット状に形成された剥離領域22を示す図である。図4は、円形状でドット状に不規則に形成された剥離領域24を示す図である。図5は、四角形状でドット状に形成された剥離領域26を示す図である。図6は、四角形状でライン状に形成された剥離領域28を示す図である。なお、図1から図6に示す剥離領域16、22、24、26、28の構成は、あくまで例示であり、剥離領域の構成は、これらに限定されることはない。
【0024】
非剥離領域18は、部材12と樹脂層14との間に設けられ、剥離層20を含まないで構成されている。非剥離領域18は、剥離層20を含まないので、樹脂層14と部材12とが直接密着している。これにより非剥離領域18では、部材12と樹脂層14との密着性が高められる。このように非剥離領域18では、部材12と樹脂層14との密着性が高められているので、水等の腐食媒体が部材12と樹脂層14との間に入り込むことを抑制できる。
【0025】
部材12と樹脂層14との間の外周部は、非剥離領域18で形成することができる。部材12と樹脂層14との間の外周部の全周が、非剥離領域18で形成されているとよい。部材12と樹脂層14との間の外周部では、部材12と樹脂層14との密着性が高まるので、樹脂被覆部材10の外側からの水等の腐食媒体の侵入を抑制することができる。
【0026】
樹脂層14と剥離層20との密着力は、部材12と剥離層20との密着力よりも大きいとよい。樹脂被覆部材10から樹脂層14を剥がすときに、樹脂層14に剥離層20が付着するので、樹脂層14と剥離層20とを略同時に剥離することができる。これにより部材12の表面に剥離層20が残留することが抑制されるので、樹脂層14の剥離作業を効率よく行うことができる。例えば、部材12がステンレス鋼で形成され、樹脂層14がポリウレア樹脂で形成され、剥離層20がポリビニルアルコール樹脂で形成されている場合には、樹脂層14を剥がすときに樹脂層14と剥離層20とを略同時に剥離することができるので、部材12の表面への剥離層20の残留を抑制できる。
【0027】
次に、樹脂被覆部材10の製造方法について説明する。図7は、樹脂被覆部材10の製造方法を示すフローチャートである。樹脂被覆部材10の製造方法は、剥離層形成工程(S10)と、樹脂層形成工程(S12)と、を備えている。
【0028】
剥離層形成工程(S10)は、部材12の表面の一部のみに剥離剤で剥離層20を形成し、剥離層20からなる剥離領域16と、剥離層20を含まない非剥離領域18とを形成する工程である。まず、部材12の表面に剥離層20を形成する前に、部材12の表面を前処理するとよい。部材12が金属部材である場合には、酸洗処理、機械研磨、脱脂洗浄等をして前処理することができる。これらの前処理は、一般的な金属材料の前処理方法を適用可能である。
【0029】
次に、剥離層20の形成方法について説明する。剥離層20は、剥離剤をスプレー塗布、スタンピング等して形成することが可能である。剥離層20の形成には、シルクスクリーンのように剥離剤が透過する穴と、剥離剤が透過しない穴とが設けられたシート材や、メッシュ材等を用いてもよい。剥離剤には、上述したフッ素樹脂等の剥離剤を用いることができる。剥離剤には、一般的に市販されているものを使用可能である。
【0030】
樹脂層形成工程(S12)は、剥離層20を設けた部材12の表面に、樹脂を被覆して樹脂層14を形成する工程である。樹脂層14は、剥離層20を設けた部材12の表面に、未硬化樹脂を吹付けまたは塗布等した後に、加熱等により樹脂硬化して形成することができる。樹脂には、上述したポリウレア樹脂等を用いることができる。樹脂には、一般的に市販されているものを使用可能である。このようにして樹脂被覆部材10を製造することができる。
【0031】
以上、上記構成の樹脂被覆部材によれば、部材と、部材の表面に被覆され、樹脂で形成される樹脂層と、を備え、部材と樹脂層との間に設けられ、剥離剤で形成される剥離層からなる剥離領域と、部材と樹脂層との間に設けられ、剥離層を含まない非剥離領域と、を有している。これにより、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【0032】
例えば、部材の表面が塗装されている場合には、塗膜の経年劣化等により部材の表面を再塗装する場合がある。このような場合には、樹脂被覆部材の樹脂層を剥がしてから、部材の表面の劣化した塗膜を除去し、部材の表面に再塗装が行われる。通常、部材と樹脂層との密着力は高いので、樹脂被覆部材から樹脂層を剥がす際には、樹脂層が部材から剥がれにくく、多大な労力を要する。これに対して部材と樹脂層との間に剥離領域が設けられている場合には、樹脂層が部材から剥離し易くなるので、樹脂層を容易に剥がすことができる。また、非剥離領域では、部材と樹脂層との密着力が高いので、樹脂被覆部材の使用中に、防食性や防水性等を確保することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 樹脂被覆部材
12 部材
14 樹脂層
16 剥離領域
18 非剥離領域
20 剥離層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7