(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】歯間ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 9/08 20060101AFI20241030BHJP
A46B 15/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A46B9/08
A46B15/00 H
(21)【出願番号】P 2020202827
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 健彦
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0150809(US,A1)
【文献】実開昭63-095827(JP,U)
【文献】特開2003-310353(JP,A)
【文献】特開2004-129683(JP,A)
【文献】特開2010-029630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00 - 15/00
A61C 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植毛台と把持部とを含むブラシ本体を備えており、前記植毛台に植設された複数本のブリッスルによる毛束によって、歯間部のすき間を清掃することが可能な歯間ブラシであって、
ブラシ部となる前記複数本のブリッスルによる毛束は、前記植毛台に形成された、前記ブラシ本体の軸方向に沿った一方の軸
である長軸と、これと垂直な他方の軸
である短軸とを有する植毛穴に、融着植毛によって植設さており、
前記植毛穴は、長軸方向に沿った長さが2~7.5mm、長軸方向と垂直な短軸方向の幅が0.6~1.5mmとなっている、長軸方向に長い平面形状を有しており、
前記植毛穴は、
前記長軸方向の少なくとも一方の端部における内側面が、前記植毛穴の深部から前記植毛台の植毛面の開口部に向けて、前記植毛穴の中心側に傾斜して
おり、
これによって前記植毛穴に植設された前記複数本のブリッスルによる前記毛束は、前記長軸方向と垂直な側面方向から見て、基端部側から先端部側に向けて、前記長軸方向の幅を狭めるようになっていると共に、前記複数本のブリッスルは、前記毛束の先端部分において、前記毛束の基端部分よりも密集した状態となっている歯間ブラシ。
【請求項2】
前記植毛穴は、前記一方の軸方向の両側の端部における内側面が、前記植毛穴の深部から前記植毛台の表面の開口部に向けて、前記植毛穴の中心側に傾斜している
請求項1記載の歯間ブラシ。
【請求項3】
前記植毛穴の前記
長軸方向の端部における内側面の、前記植毛穴の中心側に傾斜している傾斜角度は、4~20度となっている
請求項1又は2記載の歯間ブラシ。
【請求項4】
前記毛束を形成する前記複数本のブリッスルは、同様の毛丈で前記植毛台に植設されている
請求項1~3のいずれか1項記載の歯間ブラシ。
【請求項5】
前記植毛穴が、前記植毛台に1箇所にのみ形成されている
請求項1~4のいずれか1項記載の歯間ブラシ。
【請求項6】
前記毛束を形成する前記複数本のブリッスルは、先端に向かって断面積を減少させたテーパー形状部分を備える複数本のテーパーブリッスルを含んでいる
請求項1~5のいずれか1項記載の歯間ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間ブラシに関し、特に、植毛台に植設された複数本のブリッスルによる毛束によって、歯間部のすき間を清掃することが可能な歯間ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯間部のすき間を清掃することが可能な歯間ブラシとして、一般に、一対の捻りワイヤーからなるワイヤー部と、ワイヤー部の捻りワイヤー間に挟持された、一定の長さを有する複数のフィラメントからなるブラシ部と、ワイヤー部を保持するホルダー部である把持部とからなるものが知られている。また、歯間ブラシのブラシ部として、細長い合成樹脂製の芯材の周囲に、放射方向に突出する複数のゴム製の突起が一体として設けられた、ソフト歯間ブラシも知られている。
【0003】
一方、これらの従来の歯間ブラシでは、通常、SS、S、M、L等の記号で示される複数のサイズに分類されており、使用者は歯間部の大きさによって、これらのサイズのものを適宜選択して使い分けるようになっている。歯間部のすき間の大きさは、使用者によって相違することは勿論、同じ使用者の歯でも、例えば奥歯と前歯では歯間部のすき間の大きさが異なることから、これらの複数の種類の歯間ブラシから、使用者の歯間部のすき間の大きさに最適なものを選択することは困難であり、歯間部のすき間の大きさにブラシ部のサイズが適合しないと、歯間部の清掃に際して、充分な清掃ができなかったり、逆に歯や歯茎を傷めたりする場合がある。
【0004】
このため、歯間部のすき間の大小に関わらず、歯間部にフィラメント(ブリッスル)が入り込み易くすることで、歯石や食べ残しのカス等を、簡単な操作によって歯間部から排除できるようにする歯間ブラシが開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の歯間ブラシでは、合成樹脂製のフィラメントを平型状に配列してブラシ部を形成した歯間ブラシにおいて、そのブラシ部の先端部を配列方向に沿って斜形状に形成したものとなっており、ブラシ部の斜形状の先端部の鋭角な角部分を歯間部のすき間に入り込ませることによって、歯間部のすき間の大きさに応じて押し込み力を調整しながら、歯間部のすき間の大小に対応させて、効率良く歯間部を清掃することで、食べ残しのカス等を歯間部から排除できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の歯間ブラシは、斜形状に形成されたブラシ部の先端部の鋭角な角部分を、歯間部のすき間に入り込ませるものとなっており、先端部における角部分に配置された、ブラシ部を形成する複数のフィラメント(ブリッスル)の一部しか、歯間部のすき間に入り込ませることができないため、歯間部のすき間を充分に清掃できなくなる場合がある。このようなことから、ブラシ部の先端部における、より多くのブリッスルを歯間部のすき間に入り込ませて、さらに効果的に、歯間部のすき間の清掃を行うことを可能にする歯間ブラシの開発が望まれている。
【0007】
本発明は、ブラシ部の先端部における、より多くのブリッスルを歯間部のすき間に入り込ませて、さらに効果的に歯間部の清掃を行うことのできる歯間ブラシに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、植毛台と把持部とを含むブラシ本体を備えており、前記植毛台に植設された複数本のブリッスルによる毛束によって、歯間部のすき間を清掃することが可能な歯間ブラシであって、ブラシ部となる前記複数本のブリッスルによる毛束は、前記植毛台に形成された、前記ブラシ本体の軸方向に沿った一方の軸と、これと垂直な他方の軸とを有する植毛穴に、融着植毛によって植設さており、前記植毛穴は、一方の軸方向の少なくとも一方の端部における内側面が、前記植毛穴の深部から前記植毛台の植毛面の開口部に向けて、前記植毛穴の中心側に傾斜している歯間ブラシを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯間ブラシによれば、ブラシ部の先端部における、より多くのブリッスルを歯間部のすき間に入り込ませて、さらに効果的に歯間部の清掃を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい一実施形態に係る歯間ブラシの側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の好ましい一実施形態に係る歯間ブラシの要部拡大側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の好ましい一実施形態に係る歯間ブラシの要部略示斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の好ましい一実施形態に係る歯間ブラシの要部略示平面図、
図4(b)は、
図4(a)のA-Aに沿った略示断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の好ましい他の実施形態に係る歯間ブラシの要部略示平面図、
図5(b)は、
図5(a)のB-Bに沿った略示断面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の好ましい他の実施形態に係る歯間ブラシの要部略示平面図、
図6(b)は、
図6(a)のC-Cに沿った略示断面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の好ましい他の実施形態に係る歯間ブラシの要部略示平面図、
図7(b)は、
図7(a)のD-Dに沿った略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る歯間ブラシ10は、植毛台11と、把持部であるハンドル部12とからなるブラシ本体19の、植毛台11に形成された植毛穴14(
図2参照)に、ブリッスル16を束ねてなる毛束15を植設(植毛)することによって構成されている。本実施形態の歯間ブラシ10は、歯間部のすき間の大きさが、使用者によって相違していても、また例えば奥歯の歯間部と前歯の歯間部とで歯間部のすき間の大きさが異なっていても、ブラシ部13となる毛束15を形成する多くのブリッスル16の先端部を、歯間部のすき間に効果的に入り込ませて、歯間部の清掃をさらに効率良く行うことができるようにする機能を備えている。
【0012】
そして、本実施形態の歯間ブラシ10は、植毛台11と把持部12とを含むブラシ本体19を備えており、植毛台11に植設された複数本のブリッスル16による毛束15によって、歯間部のすき間を清掃することが可能な歯間用のブラシであって、
図2~
図4に示すように、ブラシ部13となる複数本のブリッスル16による毛束15は、植毛台11に形成された、ブラシ本体19の軸方向Xに沿った一方の軸と、これと垂直な横幅方向Yの他方の軸とを有する、好ましくは軸方向Xに長い断面形状を備える植毛穴14(
図4(a)参照)に、融着植毛によって植設されている。植毛穴14は、ブラシ本体19の軸方向Xに沿った一方の軸方向の少なくとも一方の端部(本実施形態では、好ましくは両側の端部)における内側面14a(
図4(a)、(b)参照)が、植毛穴14の深部から、植毛台11の表面である植毛面11aの開口部に向けて、植毛穴14の中心側に傾斜している。これによって、植毛穴14に植設された複数本のブリッスル16による毛束15は、好ましくはブラシ本体19の軸方向Xと垂直な側面方向Z(
図3参照)から見て、基端部分15b側から先端部分15a側に向けて、植毛穴14の一方の軸方向であるブラシ本体19の軸方向Xの幅を狭めるようになっている。またこれによって複数本のブリッスル16は、ブラシ部13となる毛束15の先端部分15aにおいて、毛束15の基端部分15bよりも密集した状態となっている(
図2参照)。
【0013】
本実施形態において、植毛穴14の一方の軸方向は、ブラシ本体19の軸方向Xに沿った長軸方向のことであり、他方の軸方向は、ブラシ本体19の軸方向Xと垂直な横幅方向Yに沿った短軸方向のことである。
【0014】
また、本実施形態の歯間ブラシ10では、ブラシ本体19は、例えばポリプロピレン、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合体等の合成樹脂を用いて形成することができる。ブラシ本体19の先端部分を構成する植毛台11は、軸方向Xに長い平面形状として、ブラシ本体19の軸方向Xに沿った長さが例えば4.2~10.5mm程度、ブラシ本体19の軸方向Xと垂直な横幅方向Yの幅が例えば2.5~4.5mm程度となっている、好ましくは平坦なトラック円形状の植毛面11aを備えている。植毛面11aには、毛束15が植設される植毛穴14が開口形成されている。
【0015】
植毛台11に形成された植毛穴14は、本実施形態では、好ましくはブラシ本体19の軸方向Xに長い断面形状として、ブラシ本体19の軸方向Xに沿った長軸と、これと垂直な短軸とを有する、例えば長軸方向の長さLが2 ~7.5mm程度、これと垂直な短軸方向の幅Bが0.6~1.5mm程度の大きさの、細長い縦長の長円形の断面形状を備えており(
図4(a)、(b)参照)、好ましくは植毛台11の横幅方向Yの中央部分に、長軸方向に延設して1箇所にのみ形成されている。植毛穴14には、例えば特開2003-310353号公報に記載の製造方法と同様の融着植毛によって、ブラシ部13となる毛束15が植設されている。
【0016】
例えば特開2003-310353号公報に記載の融着植毛では、植毛台11の植毛基部11bを貫通して形成された植毛穴14に、植毛基部11bの背面側から毛束15を挿通して、植毛穴14の植毛面11aから所定の毛丈で延設させた当該毛束15の先端側の部分を、植毛基部11bが分離可能に装着される公知の毛束保持治具(図示せず)の保持穴に保持させた状態とする。しかる後に、植毛面11aから延設させた毛束15の先端側とは反対の背面側の片端部を、レーザービーム等の非接触熱源で加熱して、溶融塊15c(
図4(b)参照)を形成する。さらに、溶融塊15cが形成された植毛基部11bの背面側に、金型内において熱可塑性樹脂を注入充填して溶融塊15cを被覆する被覆層11cを形成し、被覆層11cと植毛基部11bとが一体となった植毛台11とすることによって、毛束15が融着植毛により植毛台11の植毛穴14に植設された、本実施形態の歯間ブラシ10を得ることができる。また、毛束15の片端部を加熱して溶融塊15cを形成する熱加工工程は、接触熱源で加熱する方法等を用いることができる。
【0017】
また、本実施形態では、植毛穴14は、例えば植毛台11の植毛基部11bを貫通する部分において、軸方向Xに沿ったこれの長軸方向の少なくとも一方の端部における内側面14aとして、好ましくは両側の端部における内側面14a(
図4(a)、(b)参照)が、植毛穴14の深部から植毛台11の植毛面11aの開口部に向けて、植毛穴14の中心側に傾斜した状態となっている。
【0018】
ここで、植毛穴14の長軸方向の端部における内側面の、植毛穴の中心側に傾斜している傾斜角度θは、好ましくは植毛面11aと垂直な方向に対して、4~20度となっていることが好ましい。植毛穴14の長軸方向の端部における内側面の、植毛穴の中心側に傾斜している傾斜角度θが20度よりも大きいと、毛束15の先端部分においてブリッスル16が過剰に密集した状態となり、先端部分の毛束が(楕円状に)広がって、歯間部のすき間にブリッスル16を入り込ませることが難しくなるため、歯間部のすき間を充分に清掃できなくなる場合がある。また、製造時に植毛穴14に毛束15を背面側から挿通する際に、内側面の傾斜角度が大きいため、スムーズな毛束の植設に支障を来し易くなる。傾斜角度θが4度よりも小さいと、毛束15の先端部分において中心側に密集するブラシ部が形成され難くなり、複数のブリッスル16の一部しか、歯間部のすき間に入り込ませることができなくなるため、歯間部のすき間を充分に清掃することが困難になる。植毛穴14の長軸方向の端部における内側面の、植毛穴14の中心側に傾斜している傾斜角度θが4~20度となっていることにより、植毛穴14に植設された複数本のブリッスル16による毛束15は、長軸方向の幅を狭めるようにして先端部分が密集した状態となることで、より多くのブリッスル16を歯間部のすき間に入り込ませて、さらに効果的に歯間部の清掃を行うことができる。また、製造時に植毛穴14に毛束15を背面側から挿通し易くなり、スムーズに毛束15を植設することが可能になる。
【0019】
なお、植毛穴14の長軸方向の端部における内側面の、植毛穴の中心側に傾斜している傾斜角度θの大きさは、植毛穴14の長軸方向の両側の端部がともに傾斜している場合には、これらの傾斜角度を合算した合計の角度である。
【0020】
本実施形態では、植毛台11に植設される毛束15を形成する複数本のブリッスル16は、好ましくは合成樹脂からなる。ブリッスル16を形成する合成樹脂は、ブリッスルに用いられている公知の各種のものを、特に制限なく用いることができる。例えば、ナイロン(登録商標)、ナイロン6等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリオレフィン等を用いることができ、好ましくはポリブチレンテレフタレートを用いることができる。ブリッスル16は、その太さ(直径)が例えば100~250μmとなっており、好ましくは120~220μm、より好ましくは140~200μmとなっている。
【0021】
また、本実施形態では、毛束15を形成する複数本のブリッスル16は、同様の毛丈となるように植毛台11に植設されていることが好ましい。これによって、歯間部のすき間の大きさが、使用者によって相違していても、ブラシ部となる毛束15を形成する多くのブリッスル16の先端部を、歯間部のすき間に効果的に入り込ませたり、奥歯の歯間部のすき間にも届きやすくしたりして、操作性を向上することが可能になる。毛束15を形成する複数本のブリッスル16は、植毛台11の表面である植毛面11aから、例えば4~14mm程度の毛丈となるように植毛台11に植設されていることが好ましい。
【0022】
さらに、本実施形態では、毛束15を形成する複数本のブリッスル16は、先端に向かって断面積を減少させたテーパー形状部分を備えるテーパーブリッスルを、複数本含んでいることが好ましい。これによって、毛束15が入り込み難い歯間部のすき間に対しても、詰まったものを効果的に除去できるようにすると共に、歯ぐきへの当たりの柔らかさと清掃性とを、より容易に両立させることが可能になる。
【0023】
ブリッスル16がテーパーブリッスルの場合には、テーパー形状部分は、ブリッスル16の先端部分を公知の研磨装置を用いて研磨することでテーパー状に先鋭加工したり、ブリッスル16の先端部分を公知の溶解溶媒中に所定の深さまで浸漬することで、テーパー状に先鋭加工したりすることによって、容易に設けることができる。テーパーブリッスル16におけるテーパー形状部分の長さは、3~10mmとなっていることが好ましく、4~8mmとなっていることがさらに好ましい。
【0024】
本実施形態では、例えば上述の特開2003-310353号公報に記載の融着植毛によって、複数本のブリッスル16による毛束15を植毛台11に植設する際に、植毛基部11bの背面側から毛束15を植毛穴14に挿通して、当該毛束15の植毛面11aから延設する部分を、毛束保持治具(図示せず)の保持穴に保持させた状態では、毛束15の長軸方向の好ましくは両側の端部分に位置するブリッスル16は、植毛穴14における長軸方向の端部の中心側に傾斜した内側面14aに沿って配置されることにより、先端側に向けて植毛穴14の中心側に傾斜したまま、毛束保持治具の保持穴に保持されることになる。このような状態で、溶融塊15cが形成された後に植毛基部11bの背面側を被覆層11cによって被覆し、金型から取り出すことで、植毛台11にブラシ部13となる複数本のブリッスル16による毛束15が植設された、本実施形態の歯間ブラシ10が形成されることになる。
【0025】
またこれによって、形成された本実施形態の歯間ブラシ10は、長軸方向の両側の端部分に位置するブリッスル16が、先端側に向けて中心側に傾斜した状態で植設されることにより、
図2及び
図3に示すように、植毛穴14に植設された複数本のブリッスル16による、ブラシ部13となる毛束15は、ブラシ本体19の軸方向Xと垂直な側面方向Zから見て、基端部分15b側から先端部分15a側に向けて、植毛穴14の長軸方向の幅を狭めるようにして、好ましくは台形状の側面形状を備えるように植設されることになる。またこれによって、複数本のブリッスル16は、ブラシ部13となる毛束15の先端部分15aにおいて、毛束15の基端部分15bよりも、密集した状態で植設されることになる。
【0026】
そして、上述の構成を備える本実施形態の歯間ブラシ10によれば、ブラシ部13の先端部における、より多くのブリッスル16を歯間部のすき間に入り込ませて、さらに効果的に歯間部の清掃を行うことが可能になる。
【0027】
すなわち、本実施形態の歯間ブラシ10によれば、ブラシ部13となる毛束15の複数本のブリッスル16は、一方の軸方向である長軸方向の少なくとも一方の端部内側面14aが深部から植毛面11aに向けて中心側に傾斜している植毛穴14に植設されていることで、毛束15によるブラシ部13は、ブラシ本体19側面方向Zから見て、基端部分15b側から先端部分15a側に向けて、植毛穴14の長軸方向の幅を狭めるようになっており、これによって複数本のブリッスル16は、ブラシ部13となる毛束15の先端部分15aにおいて、基端部分15bよりも密集した状態となっているので、複数本のブリッスル16が密集した状態のブラシ部13の先端部分15aによって、歯間部のすき間により多くのブリッスル16を入り込ませることが可能になって、さらに効果的に且つ効率良く、歯間部の清掃を行うことが可能になる。
【0028】
図5(a)、(b)は、本発明の好ましい他の実施形態に係る歯間ブラシ20の要部を示す略示平面図及び略示断面図である。なお、
図5(a)、(b)~
図7(a)、(b)に示す他の実施形態の歯間ブラシ20に関して、上記実施形態の歯間ブラシ10と異なる構成部分について主として説明し、同様の構成部分については同一の符号を付して説明を省略している。特に言及しない構成部分については、上記実施形態の歯間ブラシ10に関する説明が適宜適用される。
【0029】
図5(a)、(b)に示す他の実施形態の歯間ブラシ20では、ブラシ部23となる毛束25を形成する複数本のブリッスル26は、植毛台11の植毛面11aから同様の毛丈では植設されておらず、異なる毛丈で植設されていることにより、毛束25によるブラシ部23の先端部は、ブラシ本体19の軸方向Xの先端側から後端側に向けて、毛束25が徐々に低くなっていることにより、緩やかなR形状で湾曲しながら傾斜する、傾斜先端部となっている。
図5(a)、(b)に示す他の実施形態の歯間ブラシ20によっても、複数本のブリッスル26が、ブラシ部23となる毛束25の先端部分25aにおいて、基端部分25bよりも密集した状態となっているので、上記の実施形態の歯間ブラシ10と同様の作用効果が奏される。
【0030】
図6(a)、(b)もまた、本発明の好ましい他の実施形態に係る歯間ブラシ30の要部を示す略示平面図及び略示断面図である。
図6(a)、(b)に示す他の実施形態の歯間ブラシ30では、ブラシ部33となる毛束35が植設される植毛穴34は、これの一方の軸方向である長軸方向の片側の端部における内側面34aのみが、植毛穴34の深部から植毛台11の植毛面11aの開口部に向けて、植毛穴の中心側に傾斜している。
図6(a)、(b)に示す他の実施形態の歯間ブラシ30によっても、複数本のブリッスル36が、ブラシ部33となる毛束35の先端部分35aにおいて、基端部分35bよりも密集した状態となっているので、上記の実施形態の歯間ブラシ10と同様の作用効果が奏される。
【0031】
図7(a)、(b)もまた、本発明の好ましい他の実施形態に係る歯間ブラシ40の要部を示す略示平面図及び略示断面図である。
図7(a)、(b)に示す他の実施形態の歯間ブラシ40では、ブラシ本体19の軸方向Xに沿った一方の軸である長軸と、他方の軸である短軸とを有する、ブラシ部43となる毛束45が植設される植毛穴44が、複数箇所として、植毛台11の植毛面11aに開口して、植毛台11の横幅方向Yの中央部分において、長軸方向に連設して好ましくは2箇所に設けられている。各々の植毛穴44は、これらの長軸方向の片側の端部として、互い離れた側の端部における内側面44aが、植毛穴44の深部から植毛台11の植毛面11aの開口部に向けて、植毛穴44の中心側に傾斜している。
図7(a)、(b)に示す他の実施形態の歯間ブラシ40によっても、複数本のブリッスル46が、ブラシ部43となる毛束45の先端部分45aにおいて、基端部分45bよりも密集した状態となっているので、上記の実施形態の歯間ブラシ10と同様の作用効果が奏される。
【0032】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、植毛穴は、ブラシ本体の軸方向に沿った一方の軸である長軸と、これと垂直な他方の軸である短軸とを有する断面形状として、細長い縦長の長円形の断面形状を備えている必要は必ずしも無く、台形状や矩形状等、その他の種々の細長い断面形状を備えていても良い。その他に、従来の歯ブラシの植毛穴である略真円形状の植毛穴を縦一列に配列するような構成を備えていても良い。その場合、例えばブラシ本体の軸方向における両側の端部に配置されている植毛穴の内面が、開口部に向けて中心側に傾斜していることが好ましい。また、ブリッスルの横断面形状は円形に必ずしも限定されるものではなく、例えば、楕円形、長方形、多角形状、異形のねじれ形状等とすることもできる。
【符号の説明】
【0033】
10,20,30,40 歯間ブラシ
11 植毛台
11a 植毛面
11b 植毛基部
11c 被覆層
12 把持部(ハンドル部)
13,23,33,43 ブラシ部
14,24,34,44 植毛穴
14a,24a,34a,44a 傾斜する端部の内側面
15,25,35,45 毛束
15a,25a,35a,45a 先端部分
15b,25b,35b,45b 基端部分
15c 溶融塊
16,26,36,46 ブリッスル
19 ブラシ本体
X 軸方向
Y 横幅方向
Z 側面方向
θ 傾斜角度