(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241030BHJP
A61B 17/22 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A61M25/00 530
A61B17/22 510
A61M25/00 540
(21)【出願番号】P 2020209053
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】三木 智博
(72)【発明者】
【氏名】角田 宏佳
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-347040(JP,A)
【文献】特表2011-518618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0082051(US,A1)
【文献】特開2017-063825(JP,A)
【文献】米国特許第05047040(US,A)
【文献】米国特許第6503261(US,B1)
【文献】特表2004-514463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61B 17/22
A61B 17/3207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔内の狭窄物を切削して回収する医療デバイス
であって、
先端から基端にかけて連通する内腔を有する長尺な外側カテーテルと、
前記外側カテーテルの前記内腔に進退可能に収納される長尺な内側カテーテルと、を備え、
前記内側カテーテルは、本体部と、前記本体部の先端側に設けられた先端部と、前記本体部の一部および前記先端部に設けられて前記内側カテーテルの進出操作によって前記狭窄物を切削する凸状のブレードと、を有し、
前記ブレードは、前記先端部の外表面に形成される第1ブレードと、前記本体部の外表面における先端から基端側に向かって所定距離だけ設けられる第2ブレードと、を有し、
前記先端部の最大外径が、前記外側カテーテルの内径よりも大きい、医療デバイス。
【請求項2】
前記外側カテーテルの前記内腔の内面には、前記内側カテーテルの前記
第2ブレードの外面および長軸方向で隣り合う前記
第2ブレードの間に形成された溝部と当接可能
であり、前記内側カテーテルの引き込み操作時に、前記第2ブレードの前記外面及び前記溝部に付着した前記狭窄物を擦り落す突起部が設けられる、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記突起部は、長軸方向の基端から先端に向かって外径が漸増する断面略直角三角形状を有する、請求項2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記内側カテーテルの前記先端部は、基端が最大外径となって先端に向かって漸次縮径するテーパー形状を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記ブレードは、先端から基端に向かって周方向に延在する螺旋形状をなしている、請求項1~4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
血管内に形成された血栓、プラーク、石灰化病変などの狭窄物による狭窄部の治療方法として、バルーンカテーテルにより血管を拡張する方法や、網目状またはコイル状のステントを血管の支えとして血管内に留置する方法などが挙げられる。しかし、狭窄部の性状、大きさ、形状、形成部位などによっては、バルーンカテーテルやステントを使用した処置だけでは充分な治療効果を得られないこともある。
【0003】
このような場合、狭窄部の改善に寄与する治療方法として、狭窄物を直接回収する方法が知られている。狭窄物を直接回収するための技術として、下記特許文献1には、先端部から基端部にかけて連通する吸引ルーメンを有するカテーテル本体の基端部から陰圧を加えて狭窄物を体外に吸引除去する吸引カテーテルについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されるような従来の吸引カテーテルは、吸引動作のみで狭窄物を回収する器具であるため、狭窄物の形成箇所や性状によっては回収できないこともある。特に、末梢血管領域における狭窄部は、病変長が比較的長いため、効率的に狭窄物を回収することが難しい。
【0006】
また、狭窄物の吸引回収時に、吸引した狭窄物が吸引ルーメンに詰まってしまうと、術者は、吸引カテーテルを挿抜して狭窄物を除去しなければならない。狭窄物のサイズが大きい場合は、特に吸引ルーメンの詰まりが起こり易く、カテーテルの挿抜回数が増えて、手技時間が長時間に及んでしまうこともある。
【0007】
さらに、従来の吸引カテーテルは、カテーテルの先端部が常時開口した状態であるため、吸引ルーメンに狭窄物を引き込めたとしても、挿抜操作中に開口部から狭窄物が脱落してしまうこともある。近年では、患者の負担軽減を考慮して穿刺部位を下腿ではなく手首部にすることが増えている。そのため、カテーテルから脱落した狭窄物は、穿刺部位が下腿の場合と比べて脳血管内や腸間膜動脈に侵入し易く、脳卒中や腸間膜動脈閉塞などの合併症のリスクが懸念される。
【0008】
本願発明者は、従来の吸引カテーテルにおける上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、術中の合併症のリスクを抑えつつ、病変部が末梢血管領域であっても効率的に狭窄物を回収することが可能な新規デバイスを開発するに至った。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、術中の合併症のリスクを抑えつつ、末梢血管領域においても狭窄物を効率よく回収することができる医療デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態に係る医療デバイスは、生体管腔内の狭窄物を切削して回収する医療デバイスであって、先端から基端にかけて連通する内腔を有する長尺な外側カテーテルと、前記外側カテーテルの前記内腔に進退可能に収納される長尺な内側カテーテルと、を備え、前記内側カテーテルは、本体部と、前記本体部の先端側に設けられた先端部と、前記本体部の一部および前記先端部に設けられて前記内側カテーテルの進出操作によって前記狭窄物を切削する凸状のブレードと、を有し、前記ブレードは、前記先端部の外表面に形成される第1ブレードと、前記本体部の外表面における先端から基端側に向かって所定距離だけ設けられる第2ブレードと、を有し、前記先端部の最大外径が、前記外側カテーテルの内径よりも大きい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、術中の合併症のリスクを抑えつつ、末梢血管領域においても狭窄物を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る医療デバイスの構成図である。
【
図2A】本実施形態に係る医療デバイスにおいて、内側カテーテルが初期位置にあるときの長軸方向に沿った概略断面図である。
【
図2B】本実施形態に係る医療デバイスにおいて、進出させた内側カテーテルを初期位置まで戻した状態の長軸方向に沿った概略断面図である。
【
図3】本実施形態に係る医療デバイスを先端側からみた概略構成図である。
【
図4A】本実施形態に係る医療デバイスにおいて、ブレード間に狭窄物が挟まった状態を示す概念図である。
【
図4B】
図4Aに示す内側カテーテルが外筒内に収納される過程で狭窄物が擦り落とされ吸引回収される様子を示す概念図である。
【
図5A】本実施形態に係る医療デバイスの使用例を示す図であって、ガイドワイヤを狭窄部近傍まで送達した状態を示す模式図である。
【
図5B】本実施形態に係る医療デバイスの使用例を示す図であって、ガイドワイヤに沿って本デバイスを狭窄部近傍まで送達した状態を示す模式図である。
【
図5C】本実施形態に係る医療デバイスの使用例を示す図であって、本デバイスによって狭窄物を切削している状態を示す模式図である。
【
図5D】本実施形態に係る医療デバイスの使用例を示す図であって、本デバイスに挟まった狭窄物を除去している状態を示す模式図である。
【
図5E】本実施形態に係る医療デバイスの使用例を示す図であって、本デバイスから除去された狭窄物を吸引回収している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0014】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0015】
本明細書では、生体組織内に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」とし、医療デバイス1を操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称する。また、本明細書では、「長軸方向」は、医療デバイス1の中心軸Cに沿う方向とし、「径方向」は医療デバイス1の長軸方向を基準軸とした軸直交断面(横断面)において外側カテーテル100(または内側カテーテル200)に対して離隔または接近する方向とし、「周方向」は医療デバイス1の長軸方向を基準軸とした回転方向とする。
【0016】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0017】
[構成]
まず、本実施形態に係る医療デバイス1の構成について説明する。医療デバイス1は、
図1に示すように、外側カテーテル100と、内側カテーテル200と、を有している。
【0018】
本実施形態に係る医療デバイス1は、例えば
図5A~
図5Eに示すように、血管Bなどの生体管腔の狭窄部Sに形成された血栓、プラーク、石灰化病変などの狭窄物S1を切削して回収する処置に用いることができる医療器具である。医療デバイス1は、外側カテーテル100に内側カテーテル200を装着した状態で患者の穿刺部位(肢体など)から生体管腔内に挿入され、先端部分を狭窄部Sまで送達させて使用される。
【0019】
〈外側カテーテル〉
図2Aおよび
図2Bに示すように、外側カテーテル100は、内側カテーテル200などの医療用長尺体を挿入可能な内腔111が形成された外径略一定の長尺なシャフト部110と、シャフト部110の基端部に配置されたハブ120と、内腔111の内壁に設けられた突起部130と、を有している。
【0020】
シャフト部110は、可撓性を有する外径略一定の管状部材で構成され、内側カテーテル200が収納可能な内腔111が形成されている。シャフト部110の先端には、シャフト部110の内腔111に連通する先端開口部111aが形成されている。
【0021】
シャフト部110は、例えば、医療分野において公知のカテーテルなどに使用される材料を適用することができる。シャフト部110の構成材料は、一例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などのフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂またはこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物などが挙げられる。
【0022】
外側カテーテル100のハブ120は、医療分野において公知のコネクタ(Yコネクタ)121を有している。コネクタ121は、造影剤やプライミング用の液体が流通可能なポート122と、ハブ120の内部に配置された弁体123と、弁体123の開閉を操作するためのオープナー124と、を有している。また、ハブ120の基端側には、医療用長尺体などをハブ120内に出し入れするための基端ポート(図示省略)が設けられている。
【0023】
また、ポート122は、切削された狭窄物S1を吸引して回収するための図示しない吸引装置と連結することができる。吸引装置は、例えば、負圧を発生させることが可能なシリンジ、公知の流体吸引ポンプなどで構成することができる。外側カテーテル100は、ポート122に接続された吸引装置の吸引動作によって内腔111が陰圧となるため、内側カテーテル200から擦り落とされた狭窄物S1を吸引することができる。
【0024】
ハブ120の構成材料は、特に限定されず、医療分野において公知のハブなどに使用される材料を適用することができる。ハブ120の構成材料は、一例として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレートなどの熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0025】
突起部130は、外側カテーテル100の内腔111の内面において、シャフト部110の先端から基端に向かって所定距離だけ設けられている。突起部130の形成範囲は、第2ブレード242の形成領域における長軸方向の長さに応じて適宜設定される。
【0026】
突起部130は、後述する第2ブレード242の第2溝部242aに入り込めるように、内腔111の外表面側の基端から中心軸Cに向かって徐々に先端が先細になる形状を有している。本実施形態では、突起部130は、長軸方向の先端から基端に向かって外径が漸増する断面略直角三角形状を有する環状体を長軸方向に複数列設した構成を有する。
【0027】
突起部130の頂部は、内側カテーテル200の本体部210に設けられた第2ブレード242の外面や第2溝部242aと接触するように径方向の高さが設定されている。これにより、内側カテーテル200を外側カテーテル100に引き込んだ際に、突起部130は、第2溝部242aと接触し、第2ブレード242に付着した狭窄物S1や第2溝部242aに挟まった狭窄物S1を擦り落とすことができる。
【0028】
突起部130は、先端が最大内径となり、基端の最頂部が最小内径となる断面略直角三角形状をなしている。そのため、突起部130は、例えば
図2Aに示すように、長軸方向に沿って隣接して配置すると、長軸方向で隣り合う一の突起部130の先端と、この突起部130の先端と隣り合う他の突起部130の基端との間に径方向の段差が生まれる。この段差は、突起部130で擦り落とされた狭窄物S1の外側カテーテル100の先端開口部111aへの移動を妨げる、いわゆる「かえし」として機能する。
【0029】
本実施形態に係る医療デバイス1は、外側カテーテル100の内腔111の長軸方向に沿って先端側から上記段差を複数設けた構成を有している。そのため、突起部130で擦り落とされた狭窄物S1は、この複数段の段差によって先端側への移動が妨げられる。よって、医療デバイス1によって一度回収した狭窄物S1は、外側カテーテル100の先端開口部111aから生体管腔内に放出されない。
【0030】
なお、本実施形態に係る医療デバイス1において、突起部130は、上記のような狭窄物S1の放出を防ぐ効果を得るため、
図2Aに示すように、長軸方向に沿った断面を略直角三角形状とした。しかし、突起部130の主たる目的は、第2ブレード242の第2溝部242aと接触して狭窄物S1を擦り落とすことにある。そのため、突起部130の断面形状は、かえしとして機能する段差が形成可能な略直角三角形には限定されず、少なくとも第2ブレード242の外面や第2溝部242aと当接して狭窄物S1を擦り落とすことが可能な形状であればよい。
【0031】
また、突起部130は、内腔111に対して長軸方向に沿って環状体を複数設けているが、1つでもよい。このような構成であっても、術者は、内側カテーテル200の引き込み操作を複数回繰り返すことで、第2ブレード242に付着した狭窄物S1や第2溝部242aに挟まった狭窄物S1を擦り落とすことができる。さらに、突起部130は、環状体に限定されず、内腔111の内面に周方向に沿って所定の間隔を空けて設けられた複数の突起で構成してもよい。
【0032】
突起部130は、第2ブレード242を損傷させずに第2ブレード242の外面に付着した狭窄物S1や第2溝部242aに挟まった狭窄物S1を擦り落とせるように、例えば医療分野において使用可能であって適度な硬度と可撓性を有する材料(シリコーンゴムなどの合成樹脂材料)で構成される。
【0033】
〈内側カテーテル〉
図2Aおよび
図2Bに示すように、内側カテーテル200は、長尺な管状部材である本体部210と、本体部210の先端側に設けられて一部が本体部210の外径よりも大きな外径を有する先端部220と、切削回収操作時などに術者の手指で把持される把持部230と、を有している。内側カテーテル200は、術者によって把持部230が操作されることで、外側カテーテル100の内腔111を長軸方向に進退移動することができる。
【0034】
また、内側カテーテル200は、
図2Aおよび
図2Bに示すように、先端部220が外側カテーテル100の外側に配置されることで、外側カテーテル100に対する長軸方向への移動が制限される。
【0035】
本体部210は、可撓性を有する外径略一定の管状部材で構成され、ガイドワイヤGなどの医療器具を挿入可能な内腔211が形成されている。本体部210の先端には、本体部210の内腔211に連通する先端開口部211aが形成されている。
【0036】
先端部220は、内腔221を有し、その基端が本体部210の外径および外側カテーテル100の内腔111の内径よりも径方向に拡径し、基端から先端に向かって漸次縮径するテーパー形状を有している。本実施形態では、先端部220は、長軸方向に沿った断面形状が略円錐台形状をなしており、内腔221が本体部210の内腔211と連通している。内側カテーテル200が外側カテーテル100に収納された状態において、先端部220は、外側カテーテル100の外方に位置する。
【0037】
内側カテーテル200の先端側には、狭窄物S1を切削するための凸状のブレード240が設けられている。
【0038】
ブレード240は、先端部220の外表面に設けられる第1ブレード241と、本体部210の先端から基端に向かって所定距離だけ本体部210の外表面に設けられる第2ブレード242と、で構成されている。本実施形態の医療デバイス1において、内側カテーテル200におけるブレード240が設けられた部分は、「切削回収部」として機能する。
【0039】
第1ブレード241は、先端部220の外表面における先端側から基端側にかけて設けられる。第2ブレード242は、本体部210の外表面における先端から基端側に向かって所定距離だけ設けられる。本体部210に対する第2ブレード242の形成領域は、狭窄物S1のサイズ(全長)に合わせて適宜設定することができる。
【0040】
第1ブレード241および第2ブレード242は、凸形状として共に断面山型をなし、先端が鋭利に成形されている。また、長軸方向に沿った断面視において、隣接するブレード240の間には、溝部240aが形成されている。先端部220に設けられた第1ブレード241において、隣接する第1ブレード241の間には、第1溝部241aが形成されている。また、本体部210に設けられた第2ブレード242において、隣接する第2ブレード242の間には、第2溝部242aが形成されている。
【0041】
ブレード240は、狭窄物S1の切削回収作業の作業効率性を考慮すると、本体部210および先端部220の周方向に延在する螺旋形状とするのが好ましい。ブレード形状を螺旋形状にすることで、内側カテーテル200を回転させながら先端側へと前進させた際に、ブレード240は、狭窄物S1の内部にスムーズに進入して狭窄物S1を切削することができる。また、螺旋形状としたブレード240とした場合、内側カテーテル200には、周方向に沿って溝部240aが形成されるため、切削中に狭窄物S1が溝部240aに挟まって回収効率を高めることができる。
【0042】
内側カテーテル200は、例えば、医療分野において公知のカテーテルなどに使用される材料を用いることができる。内側カテーテル200の構成材料は、一例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などのフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂またはこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物などが挙げられる。
【0043】
なお、先端部220やブレード240は、狭窄物S1の切削が可能なように、内側カテーテル200よりも硬質な材料で構成するのが好ましい。また、先端部220やブレード240は、内側カテーテル200と異種の材料(例えば人体への影響が少ない医療分野で使用可能な金属)で構成してもよい。
【0044】
図2Aまたは
図3には、本実施形態に係る医療デバイス1の寸法が示されている。
図2Aまたは
図3において、外側カテーテル100の外径は「X1」である。外側カテーテル100の内腔111の内径(突起部130を含めない内腔111の内径)は、「X2」である。外側カテーテル100の突起部130を含む最小内径(すなわち、外側カテーテル100において径方向に対向する突起部130の最頂部の間の距離)は、「X3」である。内側カテーテル200の外径(第2ブレード242を含めない本体部210の外径)は、「Y1」である。内側カテーテル200の第2ブレード242を含む最大外径は、「Y2」である。先端部220の最大外径は、「Y3」である。
【0045】
外側カテーテル100の外径X1は、内側カテーテル200の先端部220の最大外径Y3よりも大きく設定されている(X1>Y3)。そのため、本実施形態に係る医療デバイス1は、外側カテーテル100に内側カテーテル200を装着した状態において、最大外径が外側カテーテル100の外径となる。これにより、医療デバイス1を生体管腔内から抜去する際に、先端部220の基端側が生体管腔に引っ掛かることなく、スムーズに抜去することができる。
【0046】
また、先端部220の最大外径Y3は、外側カテーテル100の内腔111の内径X2よりも大きく設定されている(X2<Y3)。つまり、先端部220は、外側カテーテル100に収納されない。そのため、先端部220は、内側カテーテル200の引き込み操作の際に、先端部220の基端側の端面が外側カテーテル100の先端側の端面と当接して、外側カテーテル100の内腔111が閉塞される。よって、外側カテーテル内に回収された狭窄物S1は、先端部220が外側カテーテル100の蓋として機能するため、外側カテーテル100から放出されない。
【0047】
また、外側カテーテル100の突起部130を含む内腔111の最小内径X3は、内側カテーテル200の第2ブレード242を含む最大外径Y2よりも大きく設定されている(X3>Y2)。これにより、内側カテーテル200を引き込み操作した際に、第2ブレード242の第2溝部242aは、突起部130と接触することとなる。これにより、内側カテーテル200の第2ブレード242に付着した狭窄物S1や第2溝部242aに挟まった狭窄物S1は、突起部130によって擦り落される。
【0048】
内側カテーテル200の本体部210の外径Y1は、外側カテーテル100の内径X2よりも小さく設定されている(X2>Y1)。そのため、外側カテーテル100の内腔111と、内側カテーテル200の外表面との間に間隙が形成されている。狭窄物S1は、外側カテーテル100の内腔111を陰圧にすることで、この間隙を通って吸引回収される。
【0049】
次に、
図4を参照しながら、切削した狭窄物S1の回収時の挙動について説明する。
【0050】
内側カテーテル200は、
図4Aに示すように、先端部220で切削した狭窄物S1の一部が第1ブレード241の第1溝部241aおよび第2ブレード242の第2溝部242aに付着する。術者の引き込み操作により、内側カテーテル200の本体部210が外側カテーテル100の内腔111に引き込まれると、突起部130は、
図4Bに示すように、第2溝部242aに順次入り込む。これにより、内側カテーテル200に挟まった狭窄物S1は、突起部130によって第2溝部242aから擦り落とされる。擦り落された狭窄物S1は、外側カテーテル100の内腔111を通って外部に吸引搬送される。また、第1溝部241aに挟まった狭窄物S1は、医療デバイス1を体内から抜去することで回収することができる。
【0051】
このように、本実施形態に係る医療デバイス1は、切削した狭窄物S1を吸引回収するが、内側カテーテル200により切削された狭窄物S1だけでなく、切削時に第2ブレード242に付着した狭窄物S1や第2溝部242aに挟まった狭窄物S1についても回収することができる。仮に、外側カテーテル100が突起部130を有していない構成の場合、切削動作を繰り返し行う中で、第2ブレード242に付着した狭窄物S1や第2溝部242aに挟まった狭窄物S1は、生体管腔内で脱落してしまう可能性がある。しかし、本実施形態に係る医療デバイス1は、外側カテーテル100の内腔111に突起部130を備えているため、第2ブレード242に付着した狭窄物S1や第2溝部242aに挟まった狭窄物S1は、突起部130によって内腔111内で擦り落とされる。そのため、医療デバイス1では、切削回収時における狭窄物S1が生体管腔内で脱落することなく安全に狭窄物S1の切削回収作業を行うことができる。
【0052】
なお、内側カテーテル200の引き込み操作は、本体部210を周方向に回転させながら外側カテーテル100に引き込んでもよいし、本体部210を回転させずにそのまま長軸方向に沿って引き込んでもよいし、これら操作を組み合わせてもよい。いずれの操作であっても、第2ブレード242に付着した狭窄物S1や第2溝部242aに挟まった狭窄物S1は、突起部130によって擦り落とされる。
【0053】
[動作]
次に、
図5A~
図5Eを参照しながら本実施形態に係る医療デバイス1の使用例について説明する。なお、以下に説明する動作については、例示的な順序を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。以下の使用例は、生体管腔である血管B内の狭窄部Sに形成された狭窄物S1を切削して吸引回収する際の動作となる。
【0054】
まず、術者は、
図5Aに示すように、医療デバイス1を狭窄部Sまで送達させるため、ガイドワイヤGを目的位置まで挿入させる。
【0055】
次に、術者は、
図5Bに示すように、ガイドワイヤGに沿って医療デバイス1を狭窄部Sまで送達させる。続いて、術者は、
図5Cに示すように、ガイドワイヤGを抜去し、内側カテーテル200を進出操作する。内側カテーテル200は、外側カテーテル100から進出して血管B内の狭窄部Sに向かって移動する。
【0056】
次に、術者は、
図5Cに示すように、内側カテーテル200を回転させながら先端部220を狭窄部Sまで進出させ、先端部220で狭窄物S1を切削する。切削された狭窄物S1は、
図5Cに示すように、第1ブレード241の第1溝部241aや第2ブレード242の第2溝部242aに入り込む。
【0057】
次に、術者は、引き込み操作を行い、血管B内で進出させた内側カテーテル200を外側カテーテル100内に引き込む。引き込み操作の際、突起部130は、
図5Dに示すように、第2ブレード242の外面や第2溝部242aと当接し、第2ブレード242に付着した狭窄物S1や第2溝部242aに挟まった狭窄物S1を擦り落とす。
【0058】
そして、擦り落とされた狭窄物S1は、
図5Eに示すように、外側カテーテル100の内腔111を通って基端側へと吸引され、外部に排出される。
【0059】
なお、狭窄物S1の切削回収作業は、内側カテーテル200の進出操作および引き込み操作を、
図5B~
図5Dに示す一連の流れで複数回繰り返し行うことで、狭窄部Sから狭窄物S1を除去することができる。
【0060】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態に係る医療デバイス1は、先端から基端にかけて連通する内腔111を有する長尺な外側カテーテル100と、外側カテーテル100の内腔111に進退可能に収納される長尺な内側カテーテル200と、を備え、生体管腔内の狭窄物S1を切削して回収することを目的とするデバイスである。医療デバイス1において、内側カテーテル200は、本体部210と、本体部210の先端側に設けられた先端部220と、本体部210の一部および先端部220に設けられて内側カテーテル200の進出操作によって狭窄物S1を切削する凸状のブレード240と、を有し、先端部220の最大外径が、外側カテーテル100の内径(内腔111の直径に相当)よりも大きい。
【0061】
このような構成により、内側カテーテル200の引き込み操作の際に、先端部220の基端側の端面は、外側カテーテル100の先端側の端面と当接して外側カテーテル100の先端開口部111aを閉塞する。そのため、医療デバイス1は、一度回収した狭窄物S1が外側カテーテル100から放出されず、狭窄物S1の生体管腔内への再放出による合併症のリスクが低減される。
【0062】
また、本実施形態に係る医療デバイス1において、外側カテーテル100の内腔111の内面には、内側カテーテル200のブレード240の外面および長軸方向で隣り合うブレード240の間に形成された溝部240aと当接可能な突起部130が設けられ、外側カテーテル100の突起部130を含む最小内径X3は、内側カテーテル200の第2ブレード242を含む最大外径Y2よりも大きくするのが好ましい。
【0063】
このような構成により、内側カテーテル200を引き込み操作した際に、第2ブレード242の第2溝部242aは、突起部130と接触することとなる。よって、内側カテーテル200の第2ブレード242に付着した狭窄物S1や第2溝部242aに挟まった狭窄物S1は、突起部130によって外側カテーテル100の内腔111内で擦り落されるため、確実に吸引回収される。
【0064】
また、本実施形態に係る医療デバイス1の突起部130は、長軸方向の基端から先端に向かって外径が漸増する断面略直角三角形状を有する構成とするのが好ましい。
【0065】
このような構成により、突起部130は、
図2Aに示すように、長軸方向に沿って隣接して配置すると、長軸方向で隣り合う一の突起部130の先端と、この突起部130の先端と隣り合う他の突起部130の基端との間に径方向の段差が生まれる。この段差は、突起部130で擦り落とされた狭窄物S1の外側カテーテル100の先端開口部111aへの移動を妨げる「かえし」として機能する。そのため、突起部130で擦り落とされた狭窄物S1は、この段差によった先端側への移動が妨げられ、外側カテーテル100の先端開口部111aから血管Bなどの生体管腔内への放出が防止される。
【0066】
また、本実施形態に係る医療デバイス1において、内側カテーテル200の先端部220は、基端が最大外径となって先端に向かって漸次縮径するテーパー形状を有する構成とするのが好ましい。
【0067】
このような構成により、狭窄物S1を切削する際に、先端部220は、狭窄物S1の内部に進出し易くなり、切削回収作業を効率的に行うことができる。
【0068】
また、本実施形態に係る医療デバイス1は、ブレード240は、先端から基端に向かって周方向に延在する螺旋形状とするのが好ましい。
【0069】
このような構成により、内側カテーテル200を回転させながら先端側へと前進させた際に、先端部220は、狭窄物S1の内部に容易に進入して効率的に狭窄物S1を切削することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 医療デバイス、
100 外側カテーテル、
110 シャフト部(111 内腔)、
120 ハブ、
130 突起部、
200 内側カテーテル、
210 本体部(211 内腔)、
220 先端部(221 内腔)、
230 把持部、
240 ブレード(240a 溝部)
241 第1ブレード(241a 第1溝部)、
242 第2ブレード(242a 第2溝部)、
B 血管(生体管腔)
S 狭窄部
S1 狭窄物。