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特許7579131モータ制御装置、機電一体ユニット、昇圧コンバータシステム、電動車両システム、およびモータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】モータ制御装置、機電一体ユニット、昇圧コンバータシステム、電動車両システム、およびモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241030BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20241030BHJP
   H02P 21/22 20160101ALI20241030BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H02M7/48 F ZHV
H02P27/08
H02P21/22
B60L9/18 J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020209744
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096562
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 崇文
(72)【発明者】
【氏名】安島 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】伊多倉 京士朗
(72)【発明者】
【氏名】徳山 健
(72)【発明者】
【氏名】荒木 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】青柳 滋久
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140896(JP,A)
【文献】特開2019-187121(JP,A)
【文献】特開2013-141336(JP,A)
【文献】特開2015-208116(JP,A)
【文献】特開2020-099114(JP,A)
【文献】特開2011-024349(JP,A)
【文献】特開平02-261063(JP,A)
【文献】特開2019-187135(JP,A)
【文献】特開2005-045846(JP,A)
【文献】特開2015-195678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42 - 7/98
H02P 27/08
H02P 21/22
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力から交流電力への電力変換を行う電力変換器と接続され、前記交流電力を用いて駆動する交流モータの駆動を制御するモータ制御装置であって、
三相電圧指令を生成する電圧指令生成部と、
前記三相電圧指令をパルス幅変調し、前記電力変換器の動作を制御するためのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、
前記電圧指令生成部は、
前記直流電力と前記交流電力との電圧振幅比に応じた変調率が所定のしきい値未満の通常領域において、前記三相電圧指令のうち最大の相電圧指令と最小の相電圧指令との平均値に基づいて第1の零相電圧を生成し、前記第1の零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整して、当該三相電圧指令を調整後の前記三相電圧指令として出力し、
前記変調率が前記しきい値を超えた過変調領域において、前記三相電圧指令の3次高調波成分を前記交流電力の力率に応じた位相だけ遅らせて第2の零相電圧を生成し、前記第2の零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整して、当該三相電圧指令を調整後の前記三相電圧指令として出力し、
前記ゲート信号生成部は、前記電圧指令生成部による調整後の前記三相電圧指令をパルス幅変調して前記ゲート信号を生成するモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
前記しきい値は1.15であるモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
搬送波を生成する搬送波生成部と、
前記搬送波の周波数を調整する搬送波周波数調整部と、を備え、
前記ゲート信号生成部は、前記搬送波を用いて前記三相電圧指令をパルス幅変調することで前記ゲート信号を生成し、
前記搬送波周波数調整部は、前記直流電力を供給する直流電源と並列に前記電力変換器と接続されたキャパシタの電圧脈動の大きさが所定の上限値を超過したときに、前記搬送波の周波数を変更するモータ制御装置。
【請求項4】
直流電力から交流電力への電力変換を行う電力変換器と接続され、前記交流電力を用い
て駆動する交流モータの駆動を制御するモータ制御装置であって、
トルク指令に応じたd軸電流指令およびq軸電流指令を生成する電流指令生成部と、
前記d軸電流指令および前記q軸電流指令に基づいてd軸電圧指令およびq軸電圧指令を演算する電流制御部と、
前記d軸電圧指令および前記q軸電圧指令を三相電圧指令に変換する電圧指令生成部と、
前記三相電圧指令をパルス幅変調し、前記電力変換器の動作を制御するためのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、
前記電流指令生成部は、前記直流電力を供給する直流電源と並列に前記電力変換器と接続されたキャパシタの電圧脈動の大きさが所定の上限値を超過したときに、前記交流モータにおいてd軸電流が通電されるように、前記d軸電流指令および前記q軸電流指令を生成し、
前記電圧指令生成部は、前記直流電力と前記交流電力との電圧振幅比に応じた変調率が所定のしきい値を超えた過変調領域において、前記交流電力の力率に基づく零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整し、
前記ゲート信号生成部は、前記電圧指令生成部による調整後の前記三相電圧指令をパルス幅変調して前記ゲート信号を生成するモータ制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
前記モータ制御装置に接続された前記電力変換器と、
前記電力変換器により駆動される前記交流モータと、
前記交流モータの回転駆動力を伝達するギアと、を備え、
前記交流モータ、前記電力変換器および前記ギアが一体構造となった機電一体ユニット。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
前記モータ制御装置に接続された前記電力変換器と、
前記電力変換器により駆動される前記交流モータと、
前記直流電力の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、を備える昇圧コンバータシステム。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
前記モータ制御装置に接続された前記電力変換器と、
前記電力変換器により駆動される前記交流モータと、を備え、
前記交流モータの回転駆動力を用いて走行する電動車両システム。
【請求項8】
直流電力から交流電力への電力変換を行う電力変換器の動作を制御し、前記交流電力を用いて駆動する交流モータの駆動を制御する方法であって、
三相電圧指令を生成し、
前記直流電力と前記交流電力との電圧振幅比に応じた変調率が所定のしきい値未満の通常領域において、前記三相電圧指令のうち最大の相電圧指令と最小の相電圧指令との平均値に基づいて第1の零相電圧を生成し、
前記第1の零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整して、当該三相電圧指令を調整後の前記三相電圧指令として出力し、
前記変調率が前記しきい値を超えた過変調領域において、前記三相電圧指令の3次高調波成分を前記交流電力の力率に応じた位相だけ遅らせて第2の零相電圧を生成し、
前記第2の零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整して、当該三相電圧指令を調整後の前記三相電圧指令として出力し、
調整後の前記三相電圧指令をパルス幅変調して前記電力変換器の動作を制御するためのゲート信号を生成するモータ制御方法。
【請求項9】
請求項に記載のモータ制御方法において、
前記しきい値は1.15であるモータ制御方法。
【請求項10】
請求項に記載のモータ制御方法において、
搬送波を生成し、
前記搬送波を用いて調整後の前記三相電圧指令をパルス幅変調することで前記ゲート信号を生成し、
前記直流電力を供給する直流電源と並列に前記電力変換器と接続されたキャパシタの電圧脈動の大きさが所定の上限値を超過したときに、前記搬送波の周波数を変更するモータ制御方法。
【請求項11】
直流電力から交流電力への電力変換を行う電力変換器の動作を制御し、前記交流電力を用いて駆動する交流モータの駆動を制御する方法であって、
トルク指令に応じたd軸電流指令およびq軸電流指令を生成し、
前記d軸電流指令および前記q軸電流指令に基づいてd軸電圧指令およびq軸電圧指令を演算し、
前記d軸電圧指令および前記q軸電圧指令を三相電圧指令に変換し、
前記直流電力と前記交流電力との電圧振幅比に応じた変調率が所定のしきい値を超えた過変調領域において、前記交流電力の力率に基づく零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整し、
調整後の前記三相電圧指令をパルス幅変調して前記電力変換器の動作を制御するためのゲート信号を生成し、
前記直流電力を供給する直流電源と並列に前記電力変換器と接続されたキャパシタの電圧脈動の大きさが所定の上限値を超過したときに、前記交流モータにおいてd軸電流が通電されるように、前記d軸電流指令および前記q軸電流指令を生成するモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、機電一体ユニット、昇圧コンバータシステム、電動車両システム、およびモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車に用いられる駆動用のインバータには、電費向上や搭載空間の制約等の観点から、小型・軽量化が求められる。一般的なインバータの構成要素には、パワーモジュール、平滑化キャパシタ、電流センサ、これらを相互に接続するバスバー配線、ゲートドライブ基板、制御基板などが含まれる。
【0003】
インバータにおいて、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFETMetal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の半導体素子を用いて構成されるパワーモジュールは、U相,V相,W相の正極側(P側)と負極側(N側)にそれぞれ1つずつ、合計6つ備えられている。これらのパワーモジュールは、高圧バッテリ等の直流電源から供給される直流電圧を用いて、インバータと接続された三相モータに印加される三相交流のパルス電圧を生成する。平滑化キャパシタは、パワーモジュールが三相交流のパルス電圧を生成する際に生じる直流電源側の電圧リプル(キャパシタ電圧リプル)を抑制するために、直流電源と並列にパワーモジュールに接続される。
【0004】
キャパシタ電圧リプルは、平滑化キャパシタの静電容量とインバータのスイッチング周波数にそれぞれ依存して変化する。そのため、平滑化キャパシタの静電容量の大容量化、もしくはインバータのスイッチング周波数の高周波数化によって、キャパシタ電圧リプルを低減することができる。しかしながら、平滑化キャパシタの静電容量の大容量化は、平滑化キャパシタの体積(キャパシタ体積)を増加させ、インバータのスイッチング周波数の高周波数化は、スイッチング損失の増加となる。そのため、キャパシタ体積やスイッチング損失の増加を抑えつつ、キャパシタ電圧リプルを低減可能な技術が求められている。
【0005】
本願発明の関連技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、直列多重インバータで課題となる中性点電流を低減するために、三相の電圧指令を電気角60度周期の6つの期間にそれぞれ分け、各期間における零相電圧指令を所定の演算式により演算して、電圧指令に重畳させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2-261063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、零相電圧指令の演算に用いる数式が複雑であるため、計算コストが増大する。また、電圧指令を6つの期間に分けて零相電圧指令を正確に演算するためには、モータ回転位置を高精度に検出する必要がある。さらに、変調率(直流電圧と交流電圧の比)が1.15(=√(4/3))を超過する過変調領域では、通常時と同じ方法で零相電圧指令を電圧指令に重畳することができないため、インバータの出力電圧を所望の振幅や位相に制御することができない。したがって、キャパシタ体積やスイッチング損失の増加を抑えつつ、キャパシタ電圧リプルを低減するための手段として、特許文献1の技術を採用することは困難である。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、キャパシタ体積やスイッチング損失の増加を抑えつつ、キャパシタ電圧リプルを効果的に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるモータ制御装置の一態様は、直流電力から交流電力への電力変換を行う電力変換器と接続され、前記交流電力を用いて駆動する交流モータの駆動を制御するものであって、三相電圧指令を生成する電圧指令生成部と、前記三相電圧指令をパルス幅変調し、前記電力変換器の動作を制御するためのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、前記電圧指令生成部は、前記直流電力と前記交流電力との電圧振幅比に応じた変調率が所定のしきい値未満の通常領域において、前記三相電圧指令のうち最大の相電圧指令と最小の相電圧指令との平均値に基づいて第1の零相電圧を生成し、前記第1の零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整して、当該三相電圧指令を調整後の前記三相電圧指令として出力し、前記変調率が前記しきい値を超えた過変調領域において、前記三相電圧指令の3次高調波成分を前記交流電力の力率に応じた位相だけ遅らせて第2の零相電圧を生成し、前記第2の零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整して、当該三相電圧指令を調整後の前記三相電圧指令として出力し、前記ゲート信号生成部は、前記電圧指令生成部による調整後の前記三相電圧指令をパルス幅変調して前記ゲート信号を生成する。
本発明によるモータ制御装置の他の一態様は、直流電力から交流電力への電力変換を行う電力変換器と接続され、前記交流電力を用いて駆動する交流モータの駆動を制御するものであって、トルク指令に応じたd軸電流指令およびq軸電流指令を生成する電流指令生成部と、前記d軸電流指令および前記q軸電流指令に基づいてd軸電圧指令およびq軸電圧指令を演算する電流制御部と、前記d軸電圧指令および前記q軸電圧指令を三相電圧指令に変換する電圧指令生成部と、前記三相電圧指令をパルス幅変調し、前記電力変換器の動作を制御するためのゲート信号を生成するゲート信号生成部と、を備え、前記電流指令生成部は、前記直流電力を供給する直流電源と並列に前記電力変換器と接続されたキャパシタの電圧脈動の大きさが所定の上限値を超過したときに、前記交流モータにおいてd軸電流が通電されるように、前記d軸電流指令および前記q軸電流指令を生成し、前記電圧指令生成部は、前記直流電力と前記交流電力との電圧振幅比に応じた変調率が所定のしきい値を超えた過変調領域において、前記交流電力の力率に基づく零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整し、前記ゲート信号生成部は、前記電圧指令生成部による調整後の前記三相電圧指令をパルス幅変調して前記ゲート信号を生成する。
本発明による機電一体ユニットは、モータ制御装置と、前記モータ制御装置に接続された前記電力変換器と、前記電力変換器により駆動される前記交流モータと、前記交流モータの回転駆動力を伝達するギアと、を備え、前記交流モータ、前記電力変換器および前記ギアが一体構造となっている。
本発明による昇圧コンバータシステムは、モータ制御装置と、前記モータ制御装置に接続された前記電力変換器と、前記電力変換器により駆動される前記交流モータと、前記直流電力の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、を備える。
本発明による電動車両システムは、モータ制御装置と、前記モータ制御装置に接続された前記電力変換器と、前記電力変換器により駆動される前記交流モータと、を備え、前記交流モータの回転駆動力を用いて走行する。
本発明によるモータ制御方法の一態様は、直流電力から交流電力への電力変換を行う電力変換器の動作を制御し、前記交流電力を用いて駆動する交流モータの駆動を制御する方法であって、三相電圧指令を生成し、前記直流電力と前記交流電力との電圧振幅比に応じた変調率が所定のしきい値未満の通常領域において、前記三相電圧指令のうち最大の相電圧指令と最小の相電圧指令との平均値に基づいて第1の零相電圧を生成し、前記第1の零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整して、当該三相電圧指令を調整後の前記三相電圧指令として出力し、前記変調率が前記しきい値を超えた過変調領域において、前記三相電圧指令の3次高調波成分を前記交流電力の力率に応じた位相だけ遅らせて第2の零相電圧を生成し、前記第2の零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整して、当該三相電圧指令を調整後の前記三相電圧指令として出力し、調整後の前記三相電圧指令をパルス幅変調して前記電力変換器の動作を制御するためのゲート信号を生成する。
本発明によるモータ制御方法の他の一態様は、直流電力から交流電力への電力変換を行う電力変換器の動作を制御し、前記交流電力を用いて駆動する交流モータの駆動を制御する方法であって、トルク指令に応じたd軸電流指令およびq軸電流指令を生成し、前記d軸電流指令および前記q軸電流指令に基づいてd軸電圧指令およびq軸電圧指令を演算し、前記d軸電圧指令および前記q軸電圧指令を三相電圧指令に変換し、前記直流電力と前記交流電力との電圧振幅比に応じた変調率が所定のしきい値を超えた過変調領域において、前記交流電力の力率に基づく零相電圧を用いて前記三相電圧指令を調整し、調整後の前記三相電圧指令をパルス幅変調して前記電力変換器の動作を制御するためのゲート信号を生成し、前記直流電力を供給する直流電源と並列に前記電力変換器と接続されたキャパシタの電圧脈動の大きさが所定の上限値を超過したときに、前記交流モータにおいてd軸電流が通電されるように、前記d軸電流指令および前記q軸電流指令を生成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キャパシタ体積やスイッチング損失の増加を抑えつつ、キャパシタ電圧リプルを効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置を備えたモータ駆動システムの全体構成図。
図2】本発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置の機能構成を示すブロック図。
図3】従来の電圧指令の生成手法を採用した電圧指令生成部のブロック図。
図4】本発明の第1の実施形態に係る電圧指令生成部のブロック図。
図5】零相電圧の重畳前後での電圧指令の変化を示す図。
図6】本発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置における各信号の関係を示す図。
図7】従来手法による零相電圧が重畳された三相電圧指令を出力した場合のシミュレーション結果を示す図。
図8】力率に応じた零相電圧が重畳された三相電圧指令を出力した場合のシミュレーション結果を示す図。
図9】本発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置を備えたモータ駆動システムの全体構成図。
図10】本発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置の機能構成を示すブロック図。
図11】本発明の第3の実施形態に係るモータ制御装置の機能構成を示すブロック図。
図12】本発明の第4の実施形態における機電一体ユニットの外観斜視図。
図13】本発明の第5の実施形態における昇圧コンバータシステムの構成図。
図14】本発明の第6の実施形態におけるハイブリッド車両システムの構成図。
図15】本発明の第7の実施形態における電気鉄道車両の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置を備えたモータ駆動システムの全体構成図である。図1において、本実施形態のモータ駆動システム100は、モータ制御装置1、モータ2、インバータ3、高圧バッテリ5、電流検出部7、回転位置検出器8を有している。
【0014】
モータ制御装置1には、回転位置検出器8からモータ2の回転位置θが入力される。また、電流検出部7から、モータ2に流れる三相の交流電流をそれぞれ表すIu、Iv、Iwが入力され、図示省略した上位制御装置よりトルク指令T*が入力される。モータ制御装置1は、これらの入力情報を基に、モータ2の駆動を制御するためのゲート信号を生成し、インバータ3に出力する。これにより、インバータ3の動作を制御し、モータ2の駆動を制御する。なお、モータ制御装置1の詳細については後で説明する。
【0015】
インバータ3は、インバータ回路31、PWM信号駆動回路32および平滑キャパシタ33を有する。PWM信号駆動回路32は、モータ制御装置1から入力されるゲート信号に基づいて、インバータ回路31が有する各スイッチング素子を制御するためのPWM信号を生成し、インバータ回路31に出力する。インバータ回路31は、U相、V相、W相の上アームおよび下アームにそれぞれ対応するスイッチング素子を有している。PWM信号駆動回路32から入力されたPWM信号に従ってこれらのスイッチング素子がそれぞれ制御されることで、高圧バッテリ5から供給される直流電力が交流電力に変換され、モータ2に出力される。平滑キャパシタ33は、高圧バッテリ5からインバータ回路31に供給される直流電力を平滑化する。
【0016】
高圧バッテリ5は、モータ駆動システム100の直流電圧源であり、インバータ3へ電源電圧Hvdcを出力する。高圧バッテリ5の電源電圧Hvdcは、インバータ3のインバータ回路31とPWM信号駆動回路32によって可変電圧、可変周波数のパルス状の三相交流電圧に変換され、線間電圧としてモータ2に印加される。これにより、高圧バッテリ5の直流電力を基に、インバータ3からモータ2へ交流電力が供給される。なお、高圧バッテリ5の電源電圧Hvdcは、その充電状態に応じて変動する。
【0017】
モータ2は、インバータ3から供給される交流電力により回転駆動される三相電動機であり、固定子(ステータ)および回転子(ロータ)を有する。本実施形態では、モータ2として永久磁石同期モータを用いる例を説明するが、例えば誘導モータやシンクロナスリラクタンスモータなど、他の方式のモータ2を用いても構わない。インバータ3から入力された交流電力が固定子に設けられた三相のコイルLu、Lv、Lwに印加されると、モータ2において三相交流電流Iu、Iv、Iwが導通し、各コイルに磁束が発生する。この各コイルの磁束と、回転子に配置された永久磁石の磁石磁束との間で吸引力・反発力が発生することで、回転子にトルクが発生し、モータ2が回転駆動される。
【0018】
モータ2には、回転子の回転位置θを検出するための回転位置センサ4が取り付けられている。回転位置検出器8は、回転位置センサ4の入力信号から回転位置θを演算する。回転位置検出器8による回転位置θの演算結果はモータ制御装置1に入力され、モータ制御装置1がモータ2の誘起電圧の位相に合わせてパルス状のゲート信号を生成することで行われる交流電力の位相制御において利用される。
【0019】
ここで、回転位置センサ4には、鉄心と巻線とから構成されるレゾルバがより好適であるが、GMRセンサなどの磁気抵抗素子や、ホール素子を用いたセンサであっても問題ない。回転子の磁極位置を測定することができれば、任意のセンサを回転位置センサ4として用いることができる。また、回転位置検出器8は、回転位置センサ4からの入力信号を用いず、モータ2に流れる三相交流電流Iu、Iv、Iwや、インバータ3からモータ2に印加される三相交流電圧Vu、Vv、Vwを用いて回転位置θを推定してもよい。
【0020】
インバータ3とモータ2の間の電流経路には、電流検出部7が配置されている。電流検出部7は、モータ2を通電する三相交流電流Iu、Iv、Iw(U相交流電流Iu、V相交流電流IvおよびW相交流電流Iw)を検出する。電流検出部7は、例えばホール電流センサ等を用いて構成される。電流検出部7による三相交流電流Iu、Iv、Iwの検出結果はモータ制御装置1に入力され、モータ制御装置1が行うゲート信号の生成に利用される。なお、図1では電流検出部7が3つの電流検出器により構成される例を示しているが、電流検出器を2つとし、残る1相の交流電流は、三相交流電流Iu、Iv、Iwの和が零であることから算出してもよい。また、高圧バッテリ5からインバータ3に流入するパルス状の直流電流を、平滑キャパシタ33とインバータ3の間に挿入されたシャント抵抗等により検出し、この直流電流とインバータ3からモータ2に印加される三相交流電圧Vu、Vv、Vwに基づいて三相交流電流Iu、Iv、Iwを求めてもよい。
【0021】
次に、モータ制御装置1の詳細について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0022】
図2に示されるように、モータ制御装置1は、電流指令生成部11、速度算出部12、三相/dq変換部13、電流制御部14、電圧指令生成部15、搬送波周波数決定部16、三角波生成部17、ゲート信号生成部18の各機能ブロックを有する。モータ制御装置1は、例えばマイクロコンピュータにより構成され、マイクロコンピュータにおいて所定のプログラムを実行することにより、これらの機能ブロックを実現することができる。あるいは、これらの機能ブロックの一部または全部をロジックICやFPGA等のハードウェア回路を用いて実現してもよい。
【0023】
電流指令生成部11は、入力されたトルク指令T*と電源電圧Hvdcに基づき、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を演算する。ここでは、例えば予め設定された電流指令マップや、d軸電流Id,q軸電流Iqとモータトルクの関係を表す数式等を用いて、トルク指令T*に応じたd軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*を求める。
【0024】
速度算出部12は、回転位置θの時間変化から、モータ2の回転速度(回転数)を表すモータ回転速度ωrを演算する。なお、モータ回転速度ωrは、角速度(rad/s)または回転数(rpm)のいずれで表される値であってもよい。また、これらの値を相互に変換して用いてもよい。
【0025】
三相/dq変換部13は、電流検出部7が検出した三相交流電流Iu、Iv、Iwに対して、回転位置検出器8が求めた回転位置θに基づくdq変換を行い、d軸電流値Idおよびq軸電流値Iqを演算する。
【0026】
電流制御部14は、電流指令生成部11から出力されるd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*と、三相/dq変換部13から出力されるd軸電流値Idおよびq軸電流値Iqとの偏差に基づき、これらの値がそれぞれ一致するように、トルク指令T*に応じたd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を演算する。ここでは、例えばPI制御等の制御方式により、d軸電流指令Id*とd軸電流値Idの偏差に応じたd軸電圧指令Vd*と、q軸電流指令Iq*とq軸電流値Iqの偏差に応じたq軸電圧指令Vq*とを求める。
【0027】
電圧指令生成部15は、電流指令生成部11から出力されるd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*と、電流制御部14が演算したd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*と、回転位置検出器8が求めた回転位置θと、電源電圧Hvdcとに基づいて、三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*(U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*およびW相電圧指令値Vw*)を演算し、出力する。なお、電圧指令生成部15による三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*の演算方法の詳細については後述する。
【0028】
搬送波周波数決定部16は、速度算出部12が求めた回転速度ωr、トルク指令T*および電源電圧Hvdcに基づき、ゲート信号の生成に用いられる搬送波の周波数を表す搬送波周波数fcを決定する。例えば、同期PWM制御における電圧波形の1周期に対する搬送波の数を表す同期PWM搬送波数Ncが所定の整数となるように、搬送波周波数fcを決定する。ここで、同期PWM搬送波数Ncは、例えば3の倍数のうちNc=3×(2×n-1)の条件式を満たす数として設定できる。この条件式において、nは任意の自然数を表しており、例えばn=1(Nc=3)、n=2(Nc=9)、n=3(Nc=15)などを選択可能である。
【0029】
三角波生成部17は、搬送波周波数決定部16が決定した搬送波周波数fcに基づき、三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*のそれぞれについて三角波信号(搬送波信号)Trを生成する。
【0030】
ゲート信号生成部18は、三角波生成部17から出力される三角波信号Trを用いて、電圧指令生成部15から出力される三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*をそれぞれパルス幅変調し、インバータ3の動作を制御するためのゲート信号を生成する。具体的には、電圧指令生成部15から出力される三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*と、三角波生成部17から出力される三角波信号Trとの比較結果に基づき、U相、V相、W相の各相に対してパルス状の電圧を生成する。そして、生成したパルス状の電圧に基づき、インバータ3の各相のスイッチング素子に対するパルス状のゲート信号を生成する。このとき、各相の上アームのゲート信号Gup、Gvp、Gwpをそれぞれ論理反転させ、下アームのゲート信号Gun、Gvn、Gwnを生成する。ゲート信号生成部18が生成したゲート信号は、モータ制御装置1からインバータ3のPWM信号駆動回路32に出力され、PWM信号駆動回路32によってPWM信号に変換される。これにより、インバータ回路31の各スイッチング素子がオン/オフ制御され、インバータ3の出力電圧が調整される。
【0031】
続いて、本実施形態の特徴である電圧指令生成部15の詳細について説明する。
【0032】
まず、電圧指令生成部15の説明をする前に、従来の電圧指令の生成手法について説明する。図3は、従来の電圧指令の生成手法を採用した電圧指令生成部15’のブロック図である。図3に示すように、電圧指令生成部15’は、dq/三相変換部151と零相電圧生成部152を有する。
【0033】
dq/三相変換部151は、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*と、回転位置θとに基づいて、零相電圧が重畳される前の三相電圧指令を生成する。具体的には、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*に対して、回転位置θに基づく三相変換を行うことにより、零相電圧重畳前の三相電圧指令として第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1を演算する。
【0034】
零相電圧生成部152は、dq/三相変換部151により生成された第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1に対して、零相電圧を生成する。零相電圧生成部152が生成する零相電圧とは、第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1に応じてインバータ3が交流電力を出力した場合に、この交流電力によってモータ2の中性点、すなわち三相コイルLu,Lv,Lwの接続点に生じる電圧の極性を反転したものに相当し、以下の式(1)によって求められる。
零相電圧=-(最大相電圧+最小相電圧)/2 ・・(1)
【0035】
上記式(1)において、最大相電圧とは、dq/三相変換部151から出力される第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1のうち、その振幅(絶対値)が最大のものを表す。また、最小相電圧とは、dq/三相変換部151から出力される第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1のうち、その振幅(絶対値)が最小のものを表す。すなわち、零相電圧生成部152は、式(1)により、第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1のうち最大の相電圧指令と最小の相電圧指令との平均値に基づいて、零相電圧を生成することができる。
【0036】
零相電圧生成部152により生成された零相電圧は、dq/三相変換部151で生成された第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1にそれぞれ重畳される。これにより、零相電圧重畳後の三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*が計算され、電圧指令生成部15’から出力される。
【0037】
従来の電圧指令の生成手法では、上記のようにして、第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1に零相電圧が重畳された三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*が電圧指令生成部15’によって生成される。これにより、平滑キャパシタ33において発生するキャパシタ電圧リプルを抑制するようにしている。
【0038】
続いて、本実施の形態における電圧指令生成部15について説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る電圧指令生成部15のブロック図である。図4に示すように、電圧指令生成部15は、dq/三相変換部151、零相電圧生成部152、力率演算部153、変調率演算部154、振幅/位相算出部155、振幅/位相補正部156、第2電圧指令算出部157、dq/三相変換部158、零相電圧補正部159、および切替手段160を有する。なお、dq/三相変換部151と零相電圧生成部152は、図3に示した従来例の電圧指令生成部15’が有するものとそれぞれ同一である。
【0039】
力率演算部153は、インバータ3から出力される交流電力の力率を演算する。ここでは、電圧指令生成部15において力率に応じた零相電圧を電圧指令に加算するために、以下の式(2)を用いて力率PFを演算する。
PF=cos{atan(-Id*/Iq*)-atan(-Vd*/Vq*)}
・・・(2)
【0040】
変調率演算部154は、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*と、高圧バッテリ5の電源電圧Hvdcとに基づき、以下の式(3)を用いて変調率Hを演算する。
H=2√(Vd*^2+Vq*^2)/Hvdc ・・・(3)
【0041】
振幅/位相算出部155は、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*から、以下の式(4)、式(5)により、第1の電圧振幅|V1*|と第1の電圧位相θ1*をそれぞれ算出する。
|V1*|=√(Vd*^2+Vq*^2) ・・・(4)
θ1*=atan(Vd*/-Vq*) ・・・(5)
【0042】
振幅/位相補正部156は、振幅/位相算出部155により算出された第1の電圧振幅|V1*|と第1の電圧位相θ1*をそれぞれ補正して、第2の電圧振幅|V2*|および第2の電圧位相θ2*を算出する。例えば、所定の条件に応じて設定された第1の電圧振幅|V1*|と第2の電圧振幅|V2*|の関係、および第1の電圧位相θ1*と第2の電圧位相θ2*の関係を、予め補正マップ情報として作成し、振幅/位相補正部156に記憶しておく。そして、振幅/位相算出部155から第1の電圧振幅|V1*|および第1の電圧位相θ1*を取得し、これらの値に基づいて予め記憶された補正マップ情報をマップ検索することで、第2の電圧振幅|V2*|と第2の電圧位相θ2*を算出することができる。
【0043】
なお、補正マップ情報における第1の電圧振幅|V1*|と第2の電圧振幅|V2*|の関係、および第1の電圧位相θ1*と第2の電圧位相θ2*の関係は、同期PWM制御における搬送波の位相の基準値である基準電圧位相θvbと、三角波生成部17から搬送波として出力される三角波信号Trとの位相差(搬送波位相差)Δθcarrに基づいて設定することが可能である。搬送波位相差Δθcarrとは、同期PWM制御における三角波信号Trの位相に相当するものであり、回転速度ωr、トルク指令T*、変調率Hに応じて決定される。そのため、例えば振幅/位相補正部156では、様々な搬送波位相差Δθcarrの値に対して作成された補正マップ情報を予め記憶しておく。そして、回転速度ωr、トルク指令T*、変調率Hを取得し、これらの値に基づいて決定される搬送波位相差Δθcarrの値に応じて補正マップ情報を選択して、第2の電圧振幅|V2*|および第2の電圧位相θ2*の算出を行うことができる。
【0044】
第2電圧指令算出部157は、振幅/位相補正部156により算出された第2の電圧振幅|V2*|および第2の電圧位相θ2*に基づいて、第2のd軸電圧指令Vd2*および第2のq軸電圧指令Vq2*を算出する。ここでは、以下の式(6)、式(7)により、第2のd軸電圧指令Vd2*と第2のq軸電圧指令Vq2*をそれぞれ算出する。
Vd2*=-|V2*|sinθ2* ・・・(6)
Vq2*=|V2*|cosθ2* ・・・(7)
【0045】
dq/三相変換部158は、第2電圧指令算出部157で算出された第2のd軸電圧指令Vd2*および第2のq軸電圧指令Vq2*と、回転位置θとに基づいて、零相電圧が重畳される前の三相電圧指令を生成する。ここでは、第2のd軸電圧指令Vd2*および第2のq軸電圧指令Vq2*に対して、dq/三相変換部151と同様に、回転位置θに基づく三相変換を行うことにより、零相電圧重畳前の三相電圧指令として第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2を演算する。
【0046】
零相電圧補正部159は、dq/三相変換部158により生成された第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2に対して、零相電圧V0を生成する。零相電圧補正部159が生成する零相電圧V0とは、第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2の3次高調波成分を、力率演算部153により算出される力率PFに応じた位相だけ遅らせたものに相当し、以下の式(8)によって求められる。
V0=A0sin(3θ-acos(PF)) ・・・(8)
【0047】
上記式(8)において、振幅A0は、零相電圧補正部159において予め設定された値を用いることが可能である。これは、例えば回路シミュレーションを用いて事前に導出しても良いし、モータ2やインバータ3の実機を用いて決めても良い。
【0048】
零相電圧補正部159で生成された零相電圧V0は、dq/三相変換部158で生成された第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2にそれぞれ重畳される。
【0049】
切替手段160は、変調率演算部154により演算された変調率Hに基づいて、三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を切り替える。ここでは、変調率Hを所定のしきい値と比較し、その比較結果に応じて三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*の切り替えを行う。具体的には、変調率Hがしきい値未満である場合には、dq/三相変換部151で生成された第1の三相電圧指令Vu*1、Vv*1、Vw*1に零相電圧生成部152で生成された零相電圧をそれぞれ重畳したものが、電圧指令生成部15による三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*として出力されるように、切替手段160の切替状態を制御する。一方、変調率Hがしきい値以上である場合には、dq/三相変換部158で生成された第2の三相電圧指令Vu*2、Vv*2、Vw*2に零相電圧補正部159で生成された零相電圧V0をそれぞれ重畳したものが、電圧指令生成部15による三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*として出力されるように、切替手段160の切替状態を制御する。このとき、しきい値の前後で切替ショックが発生しないように、三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*の変化にレートを持たせたり、ヒステリシスを設けたりしてもよい。
【0050】
本実施形態の電圧指令生成部15では、上記のような切替手段160の切替動作により、従来手法による零相電圧を用いて調整された三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*と、力率に基づく零相電圧V0を用いて調整された三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*とを、インバータ3から出力される交流電力の変調率Hの値に応じて、相互に切り替え可能としている。
【0051】
なお、切替手段160における変調率Hのしきい値には、例えば正弦波変調と過変調制御の切替点である変調率1.15(=√(4/3))など、任意の値を予め設定しておくことができる。一般的に、モータのトルクと回転数の関係を曲線で示したNT特性において、変調率が1.15より大きい領域は、高速回転・高トルク領域に相当する。切替手段160における変調率Hのしきい値を1.15に設定すると、この高速回転・高トルク領域において、力率に基づく零相電圧V0を用いて三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*の調整を行うことができるため、キャパシタ電圧リプルの低減効果が大きい。ただし、変調率Hのしきい値を1.15未満に設定することで、変調率が1.15より小さい領域において力率に応じた零相電圧を三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*に重畳し、キャパシタ電圧リプルを低減することも可能である。
【0052】
本実施形態の電圧指令生成部15では、以上説明したようにして、零相電圧が重畳された三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を生成し、ゲート信号生成部18へ出力する。ゲート信号生成部18では、この三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*をそれぞれパルス幅変調することで、上アームのゲート信号Gup,Gvp,Gwpおよび下アームのゲート信号Gun,Gvn,Gwnを生成する。これにより、各相のスイッチングタイミングに応じて高圧バッテリ5からインバータ3に流れる直流電流のリプルを低減することができるため、キャパシタ電圧リプルを低減できる。なお、直流電流のリプルは、各相のゲート信号Gup,Gvp,Gwpと三相電流Iu,Iv,Iwに応じて、以下の式(9)により定まる。
Idc=Gup*Iu+Gvp*Iv+Gwp*Iw ・・・(9)
【0053】
本実施形態のモータ制御装置1では、電圧指令生成部15を上記のような構成とすることで、変調率が1.15を超過した過変調時にも所望の電圧指令と電圧位相を得ることができる。そのため、モータ2においてトルクを安定して出力することができる。
【0054】
続いて、上記式(8)のように零相電圧V0を力率PFによって変化させることで直流電流のリプルを低減できる理由を、図5から図8を用いて以下に説明する。
【0055】
図5は、零相電圧の重畳前後での電圧指令の変化を示す図である。図5において、(a)は零相電圧重畳前の各相の電圧指令、すなわち第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2を示し、(b)は零相電圧補正部159により生成される零相電圧V0を示し、(c)は零相電圧重畳後のU相電圧指令Vu*を示している。
【0056】
電圧指令生成部15では、図5(a)に示す第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2のうち第2のU相電圧指令Vu*2に対して、例えば図5(b)に示すような零相電圧V0をそれぞれ足し合わせる。この零相電圧V0は、第2のU相電圧指令Vu*2より力率PF分だけ位相を遅らせた振幅A0の3次高調波成分に相当する。これにより、図5(c)に示すようなU相電圧指令Vu*が生成され、電圧指令生成部15から出力される。なお、図5(b)、(c)では第2のU相電圧指令Vu*2に重畳される零相電圧V0と、これにより生成されるU相電圧指令Vu*とを示しているが、第2のV相電圧指令Vv*2、第2のW相電圧指令Vw*2についても同様に、力率PF分だけ位相を遅らせた振幅A0の3次高調波成分である零相電圧V0がそれぞれ重畳され、V相電圧指令Vv*、W相電圧指令Vw*として出力される。
【0057】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置1における各信号の関係を示す図である。図6において、(a)は三角波キャリア(三角波信号Tr)と零相電圧V0の重畳による補正後のU相電圧指令Vu*との関係を示し、(b)は補正後のU相電圧指令Vu*とU相パルス指令(ゲート信号Gun)との関係を示し、(c)はU相パルス指令(ゲート信号Gun)とU相電流Iuとの関係を示している。
【0058】
電圧指令生成部15では、図6(a)に示すように、補正後のU相電圧指令Vu*と三角波キャリアとを比較して、図6(b)に示すU相パルス指令を生成する。このU相パルス指令に応じて、図6(c)に示す正弦波で近似されるU相電流Iuが流れる。ここで、図6(c)のU相パルス指令とU相電流Iuに着目すると、U相電流Iuのピーク付近において、U相パルス指令に多数のパルス波形が含まれていることが分かる。なお、図6(c)ではU相パルス指令とU相電流Iuの関係を示しているが、V相およびW相についても同様に、V相電流Iv、W相電流Iwのピーク付近において、V相パルス指令とW相パルス指令に多数のパルス波形がそれぞれ含まれる。
【0059】
本実施形態のモータ制御装置1では、以上説明したように、変調率が1.15以上の高速回転・高トルク領域において、三相電流Iu,Iv,Iwのピーク付近でパルスを集中的に刻むことができる。そのため、前述の式(9)により、直流電流Idcのリプル成分が低減され、それによってキャパシタ電圧リプルの低減を期待できる。
【0060】
図7は、過変調領域(変調率1.2)のときに、従来手法による零相電圧が重畳された第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1を三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*として出力した場合のシミュレーション結果を示す図である。図8は、過変調領域(変調率1.2)のときに、力率に応じた零相電圧V0が重畳された第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2を三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*として出力した場合のシミュレーション結果を示す図である。図7図8において、(a)はU相電圧指令Vu*と零相電圧を示し、(b)はU相電流IuとU相パルス指令(ゲート信号Gun)を示し、(c)は高圧バッテリ5からインバータ3に印加されるバッテリ電圧を示している。
【0061】
図7(b)と図8(b)を比較すると、図7(b)よりも図8(b)の方が、U相電流Iuのピーク付近においてU相パルス指令に多数のパルス波形が含まれていることが分かる。また、図7(c)と図8(c)を比較すると、図7(c)に対して図8(c)では、バッテリ電圧の変動幅(P-P電圧)が40%程度減少していることが分かる。したがって、本実施形態のモータ制御装置1を用いることで、ゲート信号生成部18からゲート信号として出力される各相のパルス指令において、過変調領域での三相電流Iu,Iv,Iwのピーク付近にパルスを集中させ、これによって直流電流リプルを減らしてキャパシタ電圧リプルを低減可能なことが確認できる。
【0062】
なお、以上説明した本実施形態のモータ制御装置1は、負のd軸電流の印加によりバッテリなどの直流電圧と交流電圧の比(電圧利用率)を変えることで行われる交流電圧の低減や、DC-DCコンバータによる直流電圧の変更などと組み合わせることもできる。これにより、意図的に変調率1.15以上の過変調制御領域として本発明の実施の形態を活用できるため、より大きな効果を得ることができる。このとき、上記で説明した電圧利用率を変化させるための各種手法は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。また、キャリア周波数を向上させてキャパシタ電圧リプルを低減させることと併用すると、より一層大きな効果を得ることができる。
【0063】
本実施形態のモータ制御装置1によれば、変調率1.15以上の過変調制御領域におけるキャパシタ電圧リプルを低減できるため、電気自動車やハイブリッド自動車などの環境対応車において必要なキャパシタ容量を削減できる。これにより、キャパシタ体積を減少させ、インバータや機電一体ユニットを小型化できる。また、キャパシタ容量を従来と同等とした場合は、インバータのスイッチング周波数を低減することで、インバータのスイッチング損失を低減できる。
【0064】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0065】
(1)モータ制御装置1は、直流電力から交流電力への電力変換を行うインバータ3と接続され、その交流電力を用いて駆動するモータ2の駆動を制御するものであって、三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を生成する電圧指令生成部15と、三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*をパルス幅変調し、インバータ3の動作を制御するためのゲート信号を生成するゲート信号生成部18とを備える。電圧指令生成部15は、直流電力と交流電力との電圧振幅比に応じた変調率Hが所定のしきい値を超えた過変調領域において、交流電力の力率PFに基づく零相電圧V0を用いて三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を調整する。ゲート信号生成部18は、電圧指令生成部15による調整後の三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*をパルス幅変調してゲート信号を生成する。このようにしたので、ゲート信号生成部18により生成されるゲート信号において、過変調領域で三相電流Iu,Iv,Iwのピーク付近にパルスを集中させ、これによって直流電流リプルを低減することができる。その結果、キャパシタ体積やスイッチング損失の増加を抑えつつ、キャパシタ電圧リプルを効果的に低減することができる。
【0066】
(2)電圧指令生成部15は、零相電圧生成部152と零相電圧補正部159において、dq/三相変換部151により生成される零相電圧重畳前の第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1に基づく零相電圧と、力率PFに基づく零相電圧V0と、をそれぞれ生成可能である。変調率Hがしきい値未満の通常領域において、電圧指令生成部15は、切替手段160が行う切替制御により、零相電圧生成部152により生成される零相電圧を用いて調整された第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1を、調整後の三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*として出力する。一方、変調率Hがしきい値以上の過変調領域において、電圧指令生成部15は、切替手段160が行う切替制御により、零相電圧補正部159により生成される零相電圧V0を用いて調整された第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2を、調整後の三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*として出力する。このようにしたので、通常領域と過変調領域のそれぞれにおいて、直流電流リプルを効果的に低減させることができる。
【0067】
(3)電圧指令生成部15は、零相電圧生成部152において、第1の三相電圧指令Vu*1,Vv*1,Vw*1のうち最大の相電圧指令と最小の相電圧指令との平均値に基づいて零相電圧を生成する。一方、零相電圧補正部159において、第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2の3次高調波成分を力率PFに応じた位相だけ遅らせて零相電圧V0を生成する。このようにしたので、通常領域と過変調領域のそれぞれにおいて、三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*の調整を行うのに適切な零相電圧を生成することができる。
【0068】
(4)過変調領域であるか否かの判定に用いる変調率Hのしきい値には、例えば1.15を設定可能である。このようにすれば、モータ2の高速回転・高トルク領域に相当する過変調領域を確実に判定することができる。
【0069】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態では、平滑キャパシタ33の電圧をキャパシタ電圧Vcとして検出し、このキャパシタ電圧Vcの脈動の大きさが所定の上限値を超過したときに、搬送波である三角波信号Trの周波数を変更する場合の例を説明する。
【0070】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置を備えたモータ駆動システムの全体構成図である。図9に示す本実施形態のモータ駆動システム100Aは、第1の実施形態で説明した図1のモータ駆動システム100と比べて、インバータ3Aにおいて平滑キャパシタ33と並列に電圧検出部34が設けられている点と、この電圧検出部34によって検出されるキャパシタ電圧Vcがモータ制御装置1Aに入力される点とが異なっている。それ以外の点は第1の実施形態と同様であるため、以下では説明を省略する。
【0071】
電圧検出部34は、平滑キャパシタ33の電圧を所定の検出周期ごとに検出し、キャパシタ電圧Vcとしてモータ制御装置1Aに出力する。本実施形態のモータ駆動システム100Aでは、平滑キャパシタ33においてキャパシタ電圧リプルが生じると、電圧検出部34によりキャパシタ電圧Vcの変動として検出される。
【0072】
図10は、本発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置1Aの機能構成を示すブロック図である。図10に示すモータ制御装置1Aは、第1の実施形態で説明した図2のモータ制御装置1と比較して、搬送波周波数決定部16の代わりに搬送波周波数調整部16Aを有する点が相違している。なお、これ以外の点は第1の実施形態と同じであるため、以下ではその説明を省略する。
【0073】
搬送波周波数調整部16Aは、第1の実施形態における搬送波周波数決定部16と同様に、速度算出部12が求めた回転速度ωr、トルク指令T*および電源電圧Hvdcに基づき、ゲート信号の生成に用いられる搬送波の周波数を表す搬送波周波数fcを決定する。その際、搬送波周波数調整部16Aでは、図9の電圧検出部34により検出されたキャパシタ電圧Vcに基づいて、キャパシタ電圧リプルが所定の上限値を超過したか否かを判定し、キャパシタ電圧リプルが上限値を超過していると判定した場合は搬送波周波数fcを変更する。このとき、キャパシタ電圧リプルが上限値未満である場合よりも上限値を超過した場合の方が、搬送波周波数fcが高周波化されるように、搬送波周波数fcを変更することが好ましい。例えば、前述の同期PWM搬送波数Ncの値を大きくすることで、搬送波周波数fcを高周波化する。これ以外にも、キャパシタ電圧リプルが上限値を超過したときに搬送波周波数fcを高周波化できれば、任意の手法を用いて搬送波周波数fcを変更することが可能である。
【0074】
三角波生成部17は、搬送波周波数調整部16Aが決定した搬送波周波数fcに基づいて、三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*のそれぞれに対する三角波信号(搬送波信号)Trを生成する。上記のように、搬送波周波数調整部16Aによって搬送波周波数fcが高周波化されると、それに応じて、三角波生成部17により生成される三角波信号Trも高周波化される。
【0075】
三角波信号Trが高周波化されると、ゲート信号生成部18がパルス幅変調により生成するゲート信号において、三相電流Iu,Iv,Iwのピーク付近により多くのパルス波形を発生させることができる。そのため、第1の実施形態で説明した電圧指令生成部15の処理、すなわち、力率に応じた零相電圧V0を第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2に重畳したものを三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*として出力する技術と組み合わせることで、過変調領域での直流電流リプルをより一層減らして、キャパシタ電圧リプルを低減させることが可能となる。
【0076】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、モータ制御装置1Aは、搬送波である三角波信号Trを生成する三角波生成部17と、三角波信号Trの周波数を表す搬送波周波数fcを調整する搬送波周波数調整部16Aとを備える。ゲート信号生成部18は、三角波信号Trを用いて三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*をパルス幅変調することでゲート信号を生成する。搬送波周波数調整部16Aは、直流電力を供給する高圧バッテリ5と並列にインバータ3Aと接続された平滑キャパシタ33の電圧脈動の大きさが所定の上限値を超過したときに、搬送波周波数fcを変更する。このようにしたので、過変調領域でのキャパシタ電圧リプルをより一層低減させることができる。
【0077】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態では、第2の実施形態と同様に、平滑キャパシタ33の電圧をキャパシタ電圧Vcとして検出し、このキャパシタ電圧Vcの脈動の大きさが所定の上限値を超過したときに、モータ2に対してd軸電流を通電する場合の例を説明する。なお、本実施形態におけるモータ駆動システムの構成は、モータ制御装置1A以外は第2の実施形態と同一である。したがって、以下では第2の実施形態で説明したモータ駆動システム100Aの構成を用いて、本実施形態の説明を行う。
【0078】
図11は、本発明の第3の実施形態に係るモータ制御装置1Bの機能構成を示すブロック図である。図11に示すモータ制御装置1Bは、第2の実施形態で説明した図10のモータ制御装置1Aと比較して、電流指令生成部11の代わりに電流指令生成部11Bを有する点と、搬送波周波数調整部16Aの代わりに搬送波周波数決定部16を有する点とが相違している。なお、これ以外の点は第2の実施形態と同じであるため、以下ではその説明を省略する。
【0079】
電流指令生成部11Bは、第1の実施形態における電流指令生成部11と同様に、トルク指令T*と電源電圧Hvdcに基づき、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を演算する。その際、電流指令生成部11Bでは、図9の電圧検出部34により検出されたキャパシタ電圧Vcに基づいて、キャパシタ電圧リプルが所定の上限値を超過したか否かを判定し、キャパシタ電圧リプルが上限値を超過していると判定した場合は、d軸電流(弱め界磁電流)Idの通電により、モータ2の出力トルクを変化させずにインバータ3から出力される交流電圧を変化させるようにする。このとき、モータ2の出力トルクに対する電圧絶対値|V|(=√(Vd^2+Vq^2))が所定の電圧範囲となるように、d軸電流指令Id*、q軸電流指令Iq*を設定することが好ましい。
【0080】
具体的には、電流指令生成部11Bは、トルク指令T*に対応するd軸電流指令Id*とq軸電流指令Iq*の組み合わせを、例えば下記の式(10)に従って決定する。その際に、これらの電流指令に応じた電圧絶対値|V|が所定の範囲内となるように、d軸電流指令Id*とq軸電流指令Iq*の組み合わせを決定する。これにより、本実施形態で使用する電流動作点を導出する。
T=p*Ke*Iq+p*(Ld-Lq)*Id*Iq ・・・(10)
【0081】
ここで、Id、Iqはdq軸電流、Ld、Lqはdq軸インダクタンス、pは極対数、Keは誘起電圧定数である。
【0082】
以上説明したように、本実施形態のモータ制御装置1Bでは、電流指令生成部11Bにおいて、d軸電流(弱め界磁電流)Idの通電に起因してd軸干渉電圧ω*Ld*Idが増加し、これに応じてq軸電圧Vqが低減することで、電圧絶対値|V|が所定の範囲内となるようにすることができる。そのため、モータ2の出力トルクを変化させずにインバータ3Aから出力される交流電圧を変化させ、電圧絶対値|V|が所定範囲内となるように調整して、意図的に変調率1.15以上の過変調制御領域とすることができる。そのため、第1の実施形態で説明した電圧指令生成部15の処理、すなわち、力率に応じた零相電圧V0を第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2に重畳したものを三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*として出力する技術を積極的に活用して、キャパシタ電圧リプルを低減させることが可能となる。
【0083】
なお、モータ制御装置1Bにおける搬送波周波数決定部16の動作は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0084】
以上説明した本発明の第3の実施形態によれば、モータ制御装置1Bは、トルク指令に応じたd軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を生成する電流指令生成部11Bと、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*に基づいてd軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を演算する電流制御部14とを備える。電圧指令生成部15は、d軸電圧指令Vd*およびq軸電圧指令Vq*を三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*に変換することで三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*を生成する。電流指令生成部11Bは、直流電力である電源電圧Hvdcを供給する高圧バッテリ5と並列にインバータ3Aと接続された平滑キャパシタ33の電圧脈動の大きさが所定の上限値を超過したときに、モータ2においてd軸電流が通電されるように、d軸電流指令Id*およびq軸電流指令Iq*を生成する。このようにしたので、過変調領域での制御を積極的に活用してキャパシタ電圧リプルをより一層低減させることができる。
【0085】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について図面を用いて説明する。
【0086】
図12は、第4の実施形態における機電一体ユニット71の外観斜視図である。
【0087】
機電一体ユニット71は、第1~第3の実施形態で説明したモータ駆動システム100,100A(モータ制御装置1,1A,1B、モータ2およびインバータ3,3A)を含んで構成される。モータ2とインバータ3,3Aはバスバー712を介して結合部713で接続される。モータ2の出力がギア711を介し、図示省略したディファレンシャルギアへと伝達され、車軸へと伝達される。なお、図12ではモータ制御装置1,1A,1Bの図示を省略しているが、モータ制御装置1,1A,1Bは任意の位置に配置することができる。
【0088】
この機電一体ユニット71の特徴は、モータ2とインバータ3,3Aとギア711とが一体となった構造である。機電一体ユニット71は小型化が要求されており、そのため、インバータ3,3Aの主要部品の中で多くの体積を占める平滑キャパシタ33の小型化が要求されている。第1~第3の実施形態で説明したモータ制御装置1,1A,1Bを用いてインバータ3,3Aの駆動を制御することで、キャパシタ電圧リプルを低減できる。そのため、平滑キャパシタ33を小型化することができ、小型な機電一体ユニットを実現できる。
【0089】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について図面を用いて説明する。
【0090】
図13は、第5の実施形態における昇圧コンバータシステム73の構成図である。
【0091】
図13に示すように、昇圧コンバータシステム73は、第1の実施形態で説明したモータ制御装置1、モータ2、インバータ3、高圧バッテリ5、電流検出部7および回転位置検出器8を含み、昇圧コンバータ74によって高圧バッテリ5の直流電圧を所望の電圧に昇圧してインバータ3に供給する。なお、モータ制御装置1の代わりに、第2、第3の実施形態で説明したモータ制御装置1A,1Bを用いてもよい。
【0092】
昇圧コンバータ74は、スイッチング素子743,744を直列に接続し、直列に接続されたスイッチング素子743,744の中間接続点にリアクトル742を介して高圧バッテリ5が接続される。また、高圧バッテリ5と並列にコンデンサ741が接続される。各スイッチング素子743,744はダイオード接続されている。
【0093】
昇圧コンバータ74はモータ制御装置1によって指令が与えられ、昇圧コンバータシステム73の最も効率が良い直流電圧まで昇圧される。スイッチング素子743,744がそれぞれスイッチング動作することで、高圧バッテリ5から供給される直流電圧を、昇圧コンバータシステム73の最も効率が良い直流電圧まで昇圧する。これにより、高圧バッテリ5の直流電力から昇圧した直流電力を生成し、インバータ3に供給する。インバータ3は、モータ制御装置1から出力されるゲート信号に基づいて動作し、昇圧コンバータ74によって昇圧された直流電力から交流電力への電力変換を行う。
【0094】
本実施形態では,昇圧コンバータ74で直流電圧を昇圧する際に、直流電圧と交流電圧の比で決まる変調率が1.15を超過すると,キャパシタ電圧リプルが増大する。そのため,一般的には変調率1.15を超過する場合を見越して、平滑キャパシタ33のキャパシタ容量を確保することが多い。しかし、本実施形態では、第1の実施形態で説明したモータ制御装置1を用いてインバータ3の駆動を制御することで、変調率が1.15を超過した場合でもキャパシタ電圧リプルを低減できる。そのため、平滑キャパシタ33を小型化することができる。
【0095】
本実施形態によれば、キャパシタ電圧リプルを低減できるため、平滑キャパシタ33の静電容量を低減して昇圧コンバータシステムを小型化できる。なお、本実施形態では昇圧コンバータ74を用いて直流電圧を変化させることを紹介したが、発電機を使用した直流電圧生成によっても同じような効果を得ることが可能である。
【0096】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について図面を用いて説明する。
【0097】
図14は、本発明の第6の実施形態におけるハイブリッド車両システムの構成図である。ハイブリッド車両システムは、図14に示すように、モータ2をモータ/ジェネレータとして適用したパワートレインを有し、モータ2の回転駆動力を用いて走行する。なお、ハイブリッド車両システムに限らず、電動車両システムであってもよい。モータ2、インバータ3、高圧バッテリ5などは、第1の実施形態におけるモータ駆動システム100と同様のものである。
【0098】
図14に示すハイブリッド車両システムにおいて、車体800のフロント部には、前輪車軸801が回転可能に軸支されており、前輪車軸801の両端には、前輪802、803が設けられている。車体800のリア部には、後輪車軸804が回転可能に軸支されており、後輪車軸804の両端には後輪805、806が設けられている。
【0099】
前輪車軸801の中央部には、動力分配機構であるディファレンシャルギア811が設けられており、エンジン810から変速機812を介して伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸801に分配するようになっている。
【0100】
エンジン810のクランクシャフトに設けられたプーリーとモータ2の回転軸に設けられたプーリーとがベルトを介して機械的に連結されている。これにより、モータ2の回転駆動力がエンジン810に、エンジン810の回転駆動力がモータ2にそれぞれ伝達できるようになっている。モータ2は、モータ制御装置1の制御に応じてインバータ3から出力された三相交流電力がステータのコイルに供給されることによって、ロータが回転し、三相交流電力に応じた回転駆動力を発生する。
【0101】
すなわち、モータ2は、モータ制御装置1の制御に応じてインバータ3によって制御されて電動機として動作する一方、エンジン810の回転駆動力を受けてロータが回転することによって、ステータのステータコイルに起電力が誘起され、三相交流電力を発生する発電機として動作する。
【0102】
インバータ3は、高電圧(42Vあるいは300V)系電源である高圧バッテリ5から供給された直流電力を三相交流電力に変換する電力変換装置であり、運転指令値とロータの磁極位置に従って、モータ2のステータコイルに流れる三相交流電流を制御する。
【0103】
モータ2によって発電された三相交流電力は、インバータ3によって直流電力に変換されて高圧バッテリ5を充電する。高圧バッテリ5にはDC-DCコンバータ824を介して低圧バッテリ823に電気的に接続されている。低圧バッテリ823は、自動車の低電圧(14V)系電源を構成するものであり、エンジン810を初期始動(コールド始動)させるスタータ825、ラジオ、ライトなどの電源に用いられている。
【0104】
車両が信号待ちなどの停車時(アイドルストップモード)にあるとき、エンジン810を停止させ、再発車時にエンジン810を再始動(ホット始動)させる時には、インバータ3でモータ2を駆動し、エンジン810を再始動させる。尚、アイドルストップモードにおいて、高圧バッテリ5の充電量が不足している場合や、エンジン810が十分に温まっていない場合などにおいては、エンジン810を停止せず駆動を継続する。また、アイドルストップモード中においては、エアコンのコンプレッサなど、エンジン810を駆動源としている補機類の駆動源を確保する必要がある。この場合、モータ2を駆動させて補機類を駆動する。
【0105】
加速モード時や高負荷運転モードにある時にも、モータ2を駆動させてエンジン810の駆動をアシストする。逆に、高圧バッテリ5の充電が必要な充電モードにある時には、エンジン810によってモータ2を発電させて高圧バッテリ5を充電する。すなわち、車両の制動時や減速時などに回生を行う。
【0106】
本実施形態によれば、第1の実施形態で説明したモータ駆動システム100を用いて、図14のハイブリッド車両システムが実現される。このハイブリッド車両システムにおいて、モータ制御装置1は、第1の実施形態で説明したような方法でモータ2の駆動を制御するためのゲート信号を生成し、インバータ3に出力する。すなわち、変調率1.15以上の過変調領域において、力率に応じた零相電圧V0を第2の三相電圧指令Vu*2,Vv*2,Vw*2に重畳したものを三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*として出力し、この三相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を用いてゲート信号を生成する。なお、モータ制御装置1の代わりに、第2、第3の実施形態で説明したモータ制御装置1A,1Bを用いてもよい。
【0107】
本実施形態によれば、キャパシタリプルを低減できるため、電気自動車やハイブリッド自動車などの環境対応車で使用されるモータ駆動システム100において平滑キャパシタ33の静電容量を低減し、モータ駆動システム100を小型化できる。そのため、車両において客室空間の拡大や補機空間の確保を実現できる。また、平滑キャパシタ33を従来と同等の体積とした場合は、インバータ3のスイッチング周波数を低周波化することで、インバータのスイッチング損失を低減できる。これにより、電費性能が向上し、航続距離を延長できる。
【0108】
[第7の実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態について図面を用いて説明する。
【0109】
図15は、本発明の第7の実施形態における電気鉄道車両の構成図である。図15に示すように、電気鉄道車両400は、両端に車輪420がそれぞれ取り付けられた2つの車軸430を有しており、これらの車軸430が台車440に軸支されている。各車軸430には、ギア410を介してモータ2およびインバータ3が接続されている。各モータ2は、モータ制御装置1の制御に応じてインバータ3から出力された三相交流電力がステータのコイルに供給されることによって、ロータが回転し、三相交流電力に応じた回転駆動力を発生して車軸430に伝達する。これにより、車輪420が駆動されて電気鉄道車両400が走行する。なお本実施形態では、1つのモータ制御装置1に対してモータ2とインバータ3が2つずつ接続されている例を示しているが、モータ制御装置1、モータ2およびインバータ3の数の組み合わせはこれに限らない。例えば、台車440にモータ2やインバータ3を1つまたは3つ以上搭載してもよいし、複数のモータ2を別々のモータ制御装置1でそれぞれ制御してもよい。
【0110】
電気鉄道車両400に備えられるインバータ3は、省メンテナンスの観点から自然空冷もしくは強制風冷方式が多く採用されている。その場合、インバータ3のスイッチング周波数は、一般的に数百Hzから2kHz程度に制約されている。
【0111】
電気鉄道車両400では、架線の電圧変動を抑制するために、インバータ3における平滑キャパシタ33のキャパシタ容量が約10mFと車載用途と比較して大きく、それに起因して、平滑キャパシタ33はインバータ3内で多くの体積を占めている。また、上述のようにインバータ3のスイッチング周波数も、インバータ3が空冷方式であることから、500Hz~2kHz程度と車載用途と比較して小さい。そのため、電気鉄道車両400に搭載されるインバータ3では、スイッチング周波数の向上によるキャパシタ容量の低減は難しい。一方、本実施形態の電気鉄道車両400では、第1の実施形態で説明したモータ制御装置1を用いてインバータ3の駆動を制御することで、変調率が1.15を超過した場合でもキャパシタ電圧リプルを低減できる。なお、モータ制御装置1の代わりに、第2、第3の実施形態で説明したモータ制御装置1A,1Bを用いてもよい。
【0112】
本実施形態によれば、キャパシタ電圧リプルを低減できるため、平滑キャパシタ33を小型化することができ、小型・軽量な電気鉄道車両を提供できる。
【0113】
なお、以上説明した各実施形態において、モータ制御装置1,1A,1B内の各構成(図2図4図10図11など)は、ハードウェアによる構成によらず、CPUとプログラムによって各構成の機能を実現するようにしてもよい。モータ制御装置1,1A,1B内の各構成をCPUとプログラムによって実現する場合、ハードウェアの個数が減るため低コスト化できるという利点がある。また、このプログラムは、予めモータ制御装置の記憶媒体に格納して提供することができる。あるいは、独立した記憶媒体にプログラムを格納して提供したり、ネットワーク回線によりプログラムをモータ制御装置の記憶媒体に記録して格納することもできる。データ信号(搬送波)などの種々の形態のコンピュータ読み込み可能なコンピュータプログラム製品として供給してもよい。
【0114】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の複数の実施形態を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1,1A,1B…モータ制御装置、2…モータ、3,3A…インバータ、4…回転位置センサ、5…高圧バッテリ、7…電流検出部、8…回転位置検出器、11,11B…電流指令生成部、12…速度算出部、13…三相/dq変換部、14…電流制御部、15…電圧指令生成部、16…搬送波周波数決定部、16A…搬送波周波数調整部、17…三角波生成部、18…ゲート信号生成部、31…インバータ回路、32…PWM信号駆動回路、33…平滑キャパシタ、34…電圧検出部、71…機電一体ユニット、73…昇圧コンバータシステム、74…昇圧コンバータ、100,100A…モータ駆動システム、151…dq/三相変換部、152…零相電圧生成部、153…力率演算部、154…変調率演算部、155…振幅/位相算出部、156…振幅/位相補正部、157…第2電圧指令算出部、158…dq/三相変換部、159…零相電圧補正部、160…切替手段、400…電気鉄道車両、410…ギア、420…車輪、430…車軸、440…台車、711…ギア、712…バスバー、713…結合部、741…コンデンサ、742…リアクトル、743,744…スイッチング素子、800…車体、801…前輪車軸、802…前輪、803…前輪、804…後輪車軸、805…後輪、806…後輪、810…エンジン、811…ディファレンシャルギア、812…変速機、823…低圧バッテリ、824…DC-DCコンバータ、825…スタータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15