(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ポリオール組成物、混合システム及びポリウレタン発泡体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20241030BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20241030BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20241030BHJP
C08K 5/02 20060101ALI20241030BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20241030BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20241030BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/00 D
C08G18/08 038
C08L75/04
C08K5/02
C08K3/01
C08K5/521
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020213982
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】松木 信緒
(72)【発明者】
【氏名】牛見 建彦
(72)【発明者】
【氏名】柿本 悠
(72)【発明者】
【氏名】根間 紗織
(72)【発明者】
【氏名】下島 健
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/067139(WO,A1)
【文献】特開2020-186046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、触媒、ハイドロフルオロオレフィン、及び低沸点化合物を含有するポリオール組成物であって、
前記低沸点化合物が
窒素及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも1種であり、
35℃における内圧が0.3~1.0MPaとなるように容器に充填されたポリオール組成物。
【請求項2】
不揮発分が80~99質量%である請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記ハイドロフルオロオレフィンが、トランス‐1,3,3,3-テトラフルオロプロペン及びトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種である請求項1
又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
さらにリン酸エステルを含む請求項1~
3のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【請求項5】
さらにフィラーを含む請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリオール組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のポリオール組成物が充填されている第1の容器と、イソシアネート組成物が充填されている第2の容器を備え、前記第1の容器から吐出される前記ポリオール組成物と、前記第2の容器から吐出される前記イソシアネート組成物を混合する混合システムであって、第1の容器と第2の容器の内圧がそれぞれ0.3~1.0MPaの範囲である混合システム。
【請求項7】
請求項
6に記載の混合システムにおいて、ポリオール組成物とイソシアネート組成物を混合かつ発泡させてなるポリウレタン発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオール組成物、該ポリオール組成物を用いる混合システム、及び該混合システムにより得られるポリウレタン発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンフォームは、自動車、鉄道車輌、船舶などの乗り物、建築物などにおいて断熱材として使用されている。また、乗り物、建物等に生じた欠損部を埋める補修剤としても利用されている。最近では、これら断熱材および補修剤等に難燃性を付与するニーズが高まっている。
【0003】
ポリウレタンフォームとしては、別々の容器に充填されたポリオール液剤とイソシアネート液剤とを混合してフォームを形成する2液型ポリウレタンが広く使用されている。
2液型ポリウレタンは、各液を比較的簡単な構成で容器から吐出させ、混合させることが可能であるため、エアゾール容器で使用されることがある。2液型ポリウレタンがエアゾール容器で使用される場合、一方の容器にポリオール化合物と低沸点化合物が、他方の容器にポリイソシアネート化合物と低沸点化合物が充填される。各容器からは、低沸点化合物の蒸気圧により、ポリオール液剤及びポリイソシアネート液剤をそれぞれ吐出させ、それらを混合することで、ポリウレタンフォームを形成する。
【0004】
エアゾール容器に使用される低沸点化合物としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ジメチルエーテル(DME)、液化石油ガス(LPG)などが使用される。また、HFC,HCFCは、地球温暖化係数が高いことから、これらを代替する化合物が求められている。
例えば、特許文献1では、低沸点化合物を特定量含む、硬質ポリウレタンフォーム用2液型エアゾール組成物について記載されており、低沸点化合物として、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)などを使用することにより、地球温暖化に対して悪影響を与えないことが記載されている。
また、地球温暖化及びオゾン層破壊などの環境問題のないハイドロフルオロオレフィン(以下「HFO」と記載することがある。)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-169474号公報
【文献】特開2018-21199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2液型ポリウレタンのエアゾールでは、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を各容器から吐出する際、一定の範囲内の初期吐出量が必要である。初期吐出量が不十分であると、ポリオール液剤とイソシアネート液剤が十分に混合せずにポリウレタンフォームが適切に形成されず、難燃性などの各種性能が低下する。
ところで、上述のように、環境問題のないHFOは発泡剤として好適であるが、蒸気圧によって十分な圧力を担保することができず、初期吐出量が不足するという問題があった。
【0007】
また、近年、防災意識の高まりなどから、断熱材として使用されるポリウレタンフォームに高い難燃性能が求められることがあり、難燃効果の高い難燃剤の使用などが検討されている。しかし、難燃効果の高い難燃剤は、固形状のものが多く、例えばポリオールに配合するとポリオール液剤の流動性を低下させることになる。そのため、エアゾールにおいてポリオール液剤の初期吐出量がさらに不十分となり、ポリオール液剤がイソシアネート液剤と十分に混合しないなどの不具合が生じて、難燃性を十分に高められないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、発泡剤としてHFOを用いるポリオール組成物においても、良好な吐出性を示すポリオール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、HFOに加えて低沸点化合物を用いることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0010】
[1]ポリオール、触媒、ハイドロフルオロオレフィン、及び低沸点化合物を含有するポリオール組成物であって、前記低沸点化合物がハイドロフルオロオレフィン以外の沸点10℃以下の低沸点化合物であり、35℃における内圧が0.3~1.0MPaとなるように容器に充填されたポリオール組成物。
[2]不揮発分が80~99質量%である上記[1]に記載のポリオール組成物。
[3]前記低沸点化合物が窒素及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも1種である上記[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
[4]前記ハイドロフルオロオレフィンが、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン及びトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種である上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[5]さらにリン酸エステルを含む上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[6]さらにフィラーを含む上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリオール組成物。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリオール組成物が充填されている第1の容器と、イソシアネート組成物が充填されている第2の容器を備え、前記第1の容器から吐出される前記ポリオール組成物と、前記第2の容器から吐出される前記イソシアネート組成物を混合する混合システムであって、第1の容器と第2の容器の内圧がそれぞれ0.3~1.0MPaの範囲である混合システム。
[8]上記[7]に記載の混合システムにおいて、ポリオール組成物とイソシアネート組成物を混合かつ発泡させてなるポリウレタン発泡体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発泡剤としてHFOを用いるポリオール組成物において、良好な吐出性を示すポリオール組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の混合システムの一態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ポリオール組成物]
本発明のポリオール組成物は、ポリオール、触媒、ハイドロフルオロオレフィン、及び低沸点化合物を含有する。
<ポリオール>
本発明に用いるポリオールとしては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及びポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0014】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、及びポリバレロラクトングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びノナンジオール等の水酸基含有化合物と、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0015】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、及びクレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、及びジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオール等が挙げられる。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、及びα-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、及びヒドロキシカルボン酸と前記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)、及びコハク酸等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0017】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、及びポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、及びメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオ-ルとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも1種の存在下に、アルキレンオキサイド(以下、「AO」ともいう)の少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。AOとしては、エチレンオキサイド(以下、「EO」ともいう)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、「PO」ともいう)、1,3-プロピレオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、及び1,4-ブチレンオキサイド等が挙げられる。AOとしては、PO、EO及び1,2-ブチレンオキサイドが好ましく、PO及びEOがより好ましい。AOを2種以上使用する場合(例えば、PO及びEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオ-ル等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクト-ス、メチルグルコシド及びその誘導体等の4~8価のアルコール、フロログルシノール、クレゾール、ピロガロール、カテコ-ル、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、及び1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセンなどの芳香族系ポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)、エチレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0019】
本発明に使用するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが好ましい。ポリオールは、ポリエステルポリオールからなるものでもよいが、ポリエーテルポリオールなどのポリエステルポリオール以外のポリオールと併用してもよい。また、水酸基を2個有するポリオールが好ましい。中でも、イソフタル酸(m-フタル酸)、テレフタル酸(p-フタル酸)等の芳香族環を有する多塩基酸と、ビスフェノールA、エチレングリコール、及び1,2-プロピレングリコール等の2価アルコールとを脱水縮合して得られるポリエステルポリオールがより好ましい。
難燃性を向上させる観点から、ポリオール100質量部のうち、ポリエステルポリオールを20質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることがさらに好ましく、100質量部とすることが特に好ましい。
【0020】
ポリオールの水酸基価は、20~300mgKOH/gが好ましく、30~250mgKOH/gがより好ましく、50~220mgKOH/gが更に好ましい。ポリオールの水酸基価が前記上限値以下であるとポリオール組成物の粘度が下がりやすく、取り扱い性等の点で好ましい。一方、ポリオールの水酸基価が前記下限値以上であるとポリウレタン発泡体の架橋密度が上がることにより強度が高くなる。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定可能である。
【0021】
本発明のポリオール組成物中のポリオールの含有量は、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~75質量%、更に好ましくは25~70質量%である。ポリオールの含有量が前記下限値以上であるとポリオールとポリイソシアネートとを反応させやすくなる。一方、ポリオールの含有量が前記上限値以下であると、ポリオール組成物の粘度が高くなりすぎず、その取扱い性が高くなる。
【0022】
<触媒>
本発明のポリオール組成物は、触媒として、少なくとも三量化触媒を含有することが好ましく、樹脂化触媒及び三量化触媒の両方を含有することがより好ましい。
(樹脂化触媒)
樹脂化触媒は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応を促進させる触媒である。樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物などのアミン系触媒、金属系触媒などが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、イミダゾール環の1位の第2級アミンをアルキル基、アルケニル基などで置換した3級アミンが挙げられる。具体的には、N-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールなどが挙げられる。また、イミダゾール環中の第2級アミンをシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物なども挙げられる。
また、ピペラジン化合物として、N-メチル-N’N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジンなどの3級アミンが挙げられる。
アミン系触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物以外にも、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリプロピルアミン等の各種の3級アミンなどが挙げられる。
【0023】
金属系触媒としては、鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の金属塩が挙げられ、好ましくは鉛、錫、ビスマス、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル等の有機酸金属塩である。より好ましくはジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫バーサテート等の有機酸錫塩、ビスマストリオクテート、ビスマストリス(2-エチルへキサノエート)等の有機酸ビスマス塩などが挙げられ、中でも有機酸ビスマス塩が好ましい。
樹脂化触媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記した中では、イミダゾール化合物が好ましい。
【0024】
樹脂化触媒の含有量(2種以上含有する場合はその合計)は、ポリオール100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、3~25質量部がより好ましく、5~20質量部がさらに好ましい。樹脂化触媒の含有量が前記下限値以上であると、ウレタン結合が形成しやすくなり、反応が速やかに進行する。一方、前記上限値以下であると、反応速度が制御しやすくなる。
本発明のポリオール組成物には、樹脂化触媒として機能する樹脂化触媒成分以外の不純物(例えば、希釈剤など)を含む物質が樹脂化触媒と共に配合される場合がある。この場合、前記物質から不純物を除いた樹脂化触媒成分のみの質量が「樹脂化触媒の含有量」である。
【0025】
(三量化触媒)
本発明のポリオール組成物は三量化触媒を含有することが好ましい。三量化触媒は、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒を含むことでポリウレタン発泡体の難燃性が向上する。三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、トリエチルモノメチルアンモニウム塩、カルボン酸4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用できる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記の中では、カルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸4級アンモニウム塩からなる群から選択される1種又は2種以上のカルボン酸塩が好ましい。これらの中でもカルボン酸4級アンモニウム塩がより好ましい。これらのカルボン酸塩の三量化触媒は、三量化反応開始から反応が即座に進行し、未反応イソシアネートの量を少なく抑えることができる。その結果、ポリウレタン発泡体の難燃性を向上させることができる。
【0027】
三量化触媒の含有量(2種以上含有する場合はその合計)は、ポリオール100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。三量化触媒の含有量が前記下限値以上であると、ポリイソシアネートの三量化が起こりやすくなり、得られるポリウレタン発泡体の難燃性が向上する。一方、三量化触媒の含有量が前記上限値以下であると反応の制御が容易になる。
本発明のポリオール組成物には、三量化触媒として機能する三量化触媒成分以外の不純物を含む物質が三量化触媒と共に配合される場合がある。この場合、前記物質から不純物を除いた三量化触媒成分のみの質量が「三量化触媒の含有量」である。
【0028】
また、本発明のポリオール組成物における三量化触媒及び樹脂化触媒の合計含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、好ましくは1~40質量部であり、より好ましくは5~35質量部であり、さらに好ましくは10~30質量部である。本発明のポリオール組成物における両触媒の合計含有量がこれら下限値以上であると、ウレタン結合の形成と三量化が適切に進行して、ポリウレタン発泡体の難燃性が良好となりやい。また、本発明のポリオール組成物における両触媒の合計含有量がこれら上限値以下であると、ウレタン化及び三量化反応の制御が容易となる。
【0029】
本発明のポリオール組成物において、三量化触媒の含有量/樹脂化触媒の含有量の好ましい範囲は1/10~1/1であり、より好ましい範囲は1/5~1/1であり、更に好ましい範囲は1/3~1/1である。三量化触媒の含有量/樹脂化触媒の含有量が下限値以上であると、ウレタン結合の形成と三量化が適切に進行して、ポリウレタン発泡体の難燃性が良好となりやい。一方、三量化触媒の含有量/樹脂化触媒の含有量が上限値以下であると、樹脂化触媒及び三量化触媒の含有量を少なくすることができる。
【0030】
<発泡剤>
本発明のポリオール組成物は、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含む。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)は、発泡剤としての安定性が高く、かつ触媒活性が低下しにくくなり、さらに、環境負荷も低くすることができる。
ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、炭素数が3~6個程度であるフルオロアルケン等を挙げることができる。また、ハイドロフルオロオレフィンは塩素原子を有するハイドロクロロフルオロオレフィンであってもよく、したがって、炭素数が3~6個程度であるクロロフルオロアルケン等であってもよい。好ましいハイドロフルオロオレフィンは、炭素数3又は4個のフルオロアルケンであり、より好ましいハイドロフルオロオレフィンは炭素数3個のフルオロアルケンである。
【0031】
より具体的には、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(HFO-1336mzz)等が挙げられる。
これらのHFOのうち、特にトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))及びトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd(E))が好ましく、トランス‐1,3,3,3-テトラフルオロプロペン及びトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンが特に好ましい。
また、上記ハイドロフルオロオレフィンは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ポリオール組成物におけるHFOの含有量としては、ポリオール100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、10~90質量部であることがより好ましく、20~70質量部であることが更に好ましく、30~50質量部であることが特に好ましい。上記下限値以上であると、発泡が促進され、発泡性が良好となり、得られるポリウレタン発泡体の密度を低減することができる。一方、前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0033】
なお、本発明のポリオール組成物には、ハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤を含有してもよい。ハイドロフルオロオレフィン以外の発泡剤としては、例えば、水、有機系物理発泡剤、無機系物理発泡剤等が挙げられるが、有機系物理発泡剤、及び無機系物理発泡剤は、後述する低沸点化合物に該当するものが好ましく、本発明では、低沸点化合物として以下に説明する。
また、本発明のポリオール組成物は、イソシアネートインデックスを調整する観点、及び取扱い容易性の観点から、発泡剤として水を含有してもよい。
【0034】
<低沸点化合物>
本発明のポリオール組成物は、ハイドロフルオロオレフィン以外の低沸点化合物を含む。ここで低沸点化合物とは、沸点が10℃以下の化合物をいう。なお、本明細書において、沸点とは1気圧における沸点を意味する。また、低沸点化合物単体の沸点を意味し、例えば、低沸点化合物が他の化合物と共沸する場合において、その共沸する沸点を意味するものではない。本発明のポリオール組成物は、HFOに加えて、低沸点化合物を含有することで、吐出が安定して、吐出性が良好となる。
低沸点化合物の沸点が10℃を超える場合は、特にフィラーを含むポリオール組成物を吐出させにくくなる。ポリオール組成物をより吐出し易くする観点から、低沸点化合物の沸点は、0℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、-15℃以下であることがさらに好ましく、-20℃以下であることが特に好ましく、さらには-70℃以下、特には-180℃以下であることがよりさらに好ましい。
【0035】
本発明で使用する低沸点化合物としては、沸点が10℃以下であれば特に限定されず、例えば、炭素数2~5の炭化水素、ジメチルエーテル(DME、沸点:-24℃)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、空気(圧縮空気)、二酸化炭素(沸点:-78.5℃)、不活性ガス等が挙げられる。不活性ガスとしては、窒素(沸点:-195.8℃)、アルゴン(沸点:-185.8℃)、ヘリウム(沸点:-268.9℃)が挙げられる。
また、炭素数2~5の炭化水素の具体例としては、プロパン(沸点:-42℃)、イソブタン(沸点:-11.7℃)、ノルマルブタン(沸点:-0.5℃)等が挙げられる。また、ジメチルエーテルと、プロパン、イソブタン又はノルマルブタンとの混合物でもよく、プロパンとブタン類とを主成分とするLPG(液化石油ガス)などでもよい。
また、ハイドロフルオロカーボン(HFC)の具体例としては、トリフルオロメタン(HFC-23、沸点:約-82℃)、ジフルオロメタン(HFC-32、沸点:約-51.7℃)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a、沸点:約-26.2℃)等が挙げられる。
【0036】
これらの中では、空気、二酸化炭素、窒素などの不活性ガスを使用することが好ましい。空気、二酸化炭素、不活性ガスを使用することで、低沸点化合物が可燃物とならずにポリウレタン発泡体の難燃性を向上させやすくなる。また、取扱い性の観点から、低沸点化合物としては、二酸化炭素及び窒素から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、沸点がより低く、かつポリオール組成物を構成する他の化合物との相溶性が低いことから、特に窒素が好ましい。したがって、本発明においては、HFOと窒素の組み合わせが最も好ましい。
【0037】
低沸点化合物の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.02~5質量部がより好ましく、0.03~3質量部が更に好ましく、0.03~1質量部が特に好ましい。低沸点化合物の含有量が前記下限値以上であると、十分な初期吐出量が確保でき、良好なポリウレタン発泡体を形成することができる。一方、低沸点化合物の含有量が前記上限値以下であると過度な初期吐出量とならず、発泡密度が低くなり過ぎず、適切な物性が得られる。
【0038】
<リン酸エステル>
本発明のポリオール組成物はリン酸エステルを含有してもよい。本発明のポリオール組成物がリン酸エステルを含有することでポリウレタン発泡体の難燃性を向上させられる。
リン酸エステルは、常温(23℃)、常圧(1気圧)にて液体となる液状難燃剤であるとよい。液状難燃剤であるリン酸エステルを含有させることで、本発明のポリオール組成物の吐出流速、混合性などを殆ど低下させることなく、本発明のポリウレタン組成物の難燃性をより向上させやすくなる。
【0039】
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用することが好ましい。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェートなどのトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどの芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェートなどの酸性リン酸エステル等が挙げられる。なかでもハロゲン含有リン酸エステル、特にトリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどが好ましい。
【0040】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェートなどの芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、本発明のポリオール組成物とイソシアネート組成物との混合物の粘度を低下させてポリウレタン発泡体の製造を容易にする観点、及びポリウレタン発泡体の難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートがより好ましい。
【0042】
リン酸エステルを含有する場合、ポリオール組成物におけるリン酸エステルの含有量は、ポリオール100質量部に対して、5~90質量部が好ましく、15~80質量部がより好ましく、25~70質量部が更に好ましい。リン酸エステルの含有量をこれら下限値以上とすることで、リン酸エステルを含有させる効果を発揮しやすくなる。また、上限値以下とすることで、リン酸エステルによって、ポリウレタン発泡体の発泡が阻害されたりすることもない。
【0043】
<フィラー>
本発明のポリオール組成物は、フィラーを含有することが好ましい。フィラーを含有させることで、ポリウレタン発泡体の難燃性などの各種性能を向上させやすくなる。フィラーは、難燃剤を含むことが好ましい。フィラーとして難燃剤を使用することで、ポリウレタン発泡体に高い難燃性能を付与できる。フィラーとして用いられる難燃剤は固形難燃剤である。本発明では、固形難燃剤を使用することで、より難燃性を効果的に高めることができる。なお、固形難燃剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、固体となる難燃剤である。本発明に使用する固形難燃剤としては、リン酸塩含有難燃剤、赤燐系難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、金属水酸化物、及び針状フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0044】
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、環中に窒素を含む複素環式化合物から選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩が挙げられる。
リン酸は、特に限定されないが、亜リン酸、次亜リン酸などのモノリン酸類でもよいし、ピロリン酸、ポリリン酸等であってもよい。
周期表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。
前記脂肪族アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、o-トリイジン、2,4,6-トリメチルアニリン、アニシジン、3-(トリフルオロメチル)アニリン等が挙げられる。環中に窒素を含む複素環式化合物としては、ピリジン、トリアジン、メラミン等が挙げられる。
【0045】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、亜リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム等のモノリン酸塩類、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。ここで、ポリリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
リン酸塩含有難燃剤は、上記したものから1種もしくは2種以上を使用することができる。本発明においては、第三リン酸アルミニウムが好ましい。
【0046】
赤燐系難燃剤は、赤リン単体からなるものでもよいが、赤リンに樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などを被膜したものでもよいし、赤リンと樹脂、金属水酸化物、金属酸化物などとを混合したものでもよい。赤リンを被膜し、または赤リンと混合する樹脂は、特に限定されないがフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、及びシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。被膜ないし混合する化合物としては、難燃性の観点から、金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物は、後述するものを適宜選択して使用するとよい。
【0047】
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有し、常温、常圧で固体となる化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭素化芳香環含有芳香族化合物等が挙げられる。
臭素化芳香環含有芳香族化合物としては、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー系有機臭素化合物が挙げられる。
【0048】
また、臭素化芳香環含有芳香族化合物は、臭素化合物ポリマーであってもよい。具体的には、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、このポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物などが挙げられる。さらには、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテルと臭素化ビスフェノールAと塩化シアヌールとの臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等が挙げられる。
また、ヘキサブロモシクロドデカンなどの臭素化芳香環含有芳香族化合物以外の化合物であってもよい。
これら臭素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、上記した中では、臭素化芳香環含有芳香族化合物が好ましく、中でも、ヘキサブロモベンゼンなどのモノマー系有機臭素化合物が好ましい。
【0049】
本発明で使用するホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に使用するホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛がより好ましい。
【0050】
アンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましいアンチモン含有難燃剤は三酸化アンチモンである。
【0051】
本発明に使用する金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に使用する好ましい金属水酸化物は水酸化アルミニウムである。
【0052】
針状フィラーとしては、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マグネシウム含有ウィスカー、珪素含有ウィスカー、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、エレスタダイト、ベーマイト、棒状ヒドロキシアパタイト、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、スラグ繊維、石膏繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、硼素繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
これらの針状フィラーは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0053】
本発明に使用する針状フィラーのアスペクト比(長さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。なお、当該アスペクト比は、走査型電子顕微鏡で針状フィラーを観察してその長さと幅を測定して求めることができる。
【0054】
(沈降防止剤)
本発明のポリオール組成物は、フィラーとして、沈降防止剤を含有してもよい。沈降防止剤を使用することにより、ポリオール組成物に分散された固形難燃剤等の沈殿を防止できる。また、沈降防止剤の使用により、固形難燃剤を均一に分散させやすくなる。沈降防止剤は、一般的に常温、常圧で固体となるものであり、通常、ポリオール組成物において固形分(不溶分)となる。
【0055】
沈降防止剤としては、特に限定はないが、例えば、カーボンブラック、粉状シリカ、有機クレー等から選択される一種又は二種以上を使用することが好ましく、これらの中では粉状シリカがより好ましい。
沈降防止剤に使用するカーボンブラックは、ファーネス法、チャンネル法、サーマル法等の方法で製造されたものを使用することができる。カーボンブラックは、市販品を適宜選択して使用すればよい。
また、粉状シリカとしては、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、シリカゲルなどを使用できる。これらの中では、フュームドシリカが好ましい。ヒュームドシリカとしては、日本アエロジル社のアエロジル(登録商標)などを使用できる。
【0056】
沈降防止剤の含有量は、特に限定されないが、ポリオール100質量部に対して、例えば0.5~20質量部、好ましくは1~15質量部、より好ましくは3~10質量部、更に好ましくは4~8質量部である。沈降防止剤の含有量を上記範囲内とすることで、固形分を必要以上に増加させることなく、固形難燃剤の沈降を防止し、その分散性を良好にできる。
【0057】
フィラーとしては、上記固形難燃剤及び沈降防止剤以外の無機充填剤を使用してもよい。無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、シリカバルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、各種磁性粉、フライアッシュ、シリカアルミナ繊維、及びジルコニア繊維等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本発明のポリオール組成物がフィラーを含有する場合、その含有量は、ポリオール100質量部に対して、10~150質量部が好ましく、30~130質量部がより好ましく、50~120質量部が更に好ましく、60~100質量部がより更に好ましい。フィラーの含有量が前記下限値以上であると、該ポリオール組成物を用いて製造したポリウレタン発泡体に難燃性などの性能を十分に付与することができる。一方、フィラーの含有量が前記上限値以下であると、ポリオールの流動性を低下させることがなく、ポリオール組成物の初期吐出量が十分となり、イソシアネート組成物と十分に混合でき、難燃性などの各種性能を高めることが可能となる。
【0059】
(整泡剤)
本発明のポリオール組成物は、ポリオール組成物とイソシアネート組成物との混合物を発泡させやすくすることを目的として整泡剤を含有してもよい。
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの整泡剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本発明のポリオール組成物中の整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、1~8質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。整泡剤の含有量が前記下限値以上であると、ポリオール組成物とイソシアネート組成物との混合物を発泡させやすくするため、均質なポリウレタン発泡体を得ることが可能になる。また、整泡剤の含有量が前記上限値以下であると製造コストと得られる効果のバランスが最適になる。
【0061】
(その他成分)
また、本発明のポリオール組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等から選択される1種以上を含むことができる。
【0062】
<不揮発分>
本発明のポリオール組成物は、不揮発分が80~99質量%であることが好ましく、82~98質量%であることがより好ましい。上記下限値以上であると、ポリウレタン発泡体の乾燥速度が速く、また十分な強度が得られ、上記上限値以下であると生産性が高く、発泡性、吐出性も良好になりやすい。なお、不揮発分は実施例記載の方法により測定できる。
【0063】
本発明のポリオール組成物は、35℃での内圧が0.3~1.0MPaとなるように容器に充填される。内圧が0.3MPa未満であると、噴射圧が低く、十分な初期吐出量を得ることができず、良好なポリウレタン発泡体を得ることができない。一方、内圧が1.0MPaを超えると容器を耐圧性の高いものとすることが必要になる。また、初期吐出量が必要以上に多くなることがある。以上の観点から、35℃での内圧を0.4~0.9MPaの範囲とすることが好ましく、0.5~0.8MPaの範囲とすることがより好ましい。
前記低沸点化合物は、その蒸気圧が高いほど、容器内の内圧は高くなり、またポリオールとの相溶性が高いほど、容器内の内圧は低くなる。したがって、低沸点化合物の蒸気圧、含有量、低沸点化合物とポリオールの相溶性等によって、容器内の内圧を制御することができる。
【0064】
(ポリオール組成物の製造方法)
本発明のポリオール組成物の製造方法に特に制限はなく、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、低沸点化合物以外の各成分を公知の撹拌装置で撹拌、混合した後、空のエアゾール缶等の容器に充填する。ステムバルブで該エアゾール缶を密封し、ステムバルブから低沸点化合物を注入して、容器に充填されたポリオール組成物を製造する。
【0065】
[混合システム]
本発明の混合システムの概要について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の混合システムの概要を示す模式図である。本発明の混合システム10は、ポリオール組成物が充填されている第1の容器11と、イソシアネート組成物が充填されている第2の容器12と、第1の容器から吐出されたポリオール組成物と、第2の容器から吐出されたイソシアネート組成物を混合する静止型混合器(スタティックミキサー)13を備える。
第1の容器11及び第2の容器12の35℃における内圧は、いずれも0.3~1.0MPaの範囲である。内圧が0.3MPa未満であると、噴射圧が低く、十分な初期吐出量が得られない。一方、内圧が1.0MPaを超えると容器を耐圧性の高いものとすることが必要になる。以上の観点から、第1の容器及び第2の容器の内圧は、いずれも0.4~0.9MPaの範囲が好ましく、0.5~0.8MPaの範囲がより好ましい。
なお、第1の容器と第2の容器の内圧は同じであっても異なってもよい。
【0066】
第1及び第2の容器11、12は、エアゾール用のスプレー缶であることが好ましく、ステムバルブで密封されることが好ましい。ステムバルブを使用する場合には、例えば、低沸点化合物以外の組成物がスプレー缶に充填された後、ステムバルブで該容器が密封され、その後低沸点化合物がステムバルブから充填されるとよい。第1の容器11内部では、ポリオール組成物の一部が気化して気相を形成し、第2の容器12内部では、イソシアネート組成物の一部が気化して気相を形成してもよい。
第1及び第2の容器11、12から吐出されたポリオール組成物及びイソシアネート組成物は、発泡剤などにより発泡されながら混合され、イソシアネートとポリオールとが反応することで、ポリウレタン発泡体(ポリウレタン組成物)を形成する。
【0067】
また、混合システム10は、静止型混合器(スタティックミキサー、以下単に「混合器」ということがある。)13を備えている。静止型混合器13は、駆動部のない混合器であって、流体が管体内部を通過することで、流体が混合されるものである。静止型混合器は、例えば、
図1に示すように管体13Aの内部にミキサーエレメント13Bが配置されたものが挙げられる。ミキサーエレメント13Bとしては、螺旋状に形成されたもの、複数の邪魔板が形成されたものなどがある。
本発明の混合システム10では、第1及び第2の容器11、12のそれぞれの吐出口11A、12Aは、供給ライン11B,12Bを介して混合器13に接続される。吐出口11A、12Aには、ステムバルブなどのバルブが設けられてもよい。第1及び第2の容器11、12から吐出されたポリオール組成物及びイソシアネート組成物は、それぞれ供給ライン11B,12Bを介して、混合器13に供給され、これらは混合器13にて混合される。ここで、静止型混合器は注入口が二穴に分かれていることが好ましく、ポリオール組成物及びイソシアネート組成物は、二穴のそれぞれの注入口から、別々に混合器13に供給されることが好ましい。このことにより、ポリオール組成物とイソシアネート組成物が、混合器に注入される前に接触することを防止することができる。混合器13で混合されたポリオール組成物とイソシアネート組成物は、噴射器などにより、施工対象面に吹き付けられる。また、静止型混合器は、噴射器の機能を兼ね備えたものでもよく、その場合、
図1に示すように管体13A内部で混合されたポリオール組成物とイソシアネート組成物の混合物を管体の先端13Cから噴射するとよい。
【0068】
本発明のポリオール組成物及びイソシアネート組成物は、それぞれ沸点が10℃未満の低沸点化合物を含有する。ポリオール組成物については、前述の通りであり、該低沸点化合物によって、ポリオール組成物が充填される第1の容器の35℃における内圧は0.3~1.0MPaに制御される。なお、第1の容器の35℃における内圧の好適範囲についても、上述の通りである。
また、イソシアネート組成物が充填される第2の容器の35℃における内圧も、前記低沸点化合物により、0.3~1.0MPaに制御されることが好ましく、上述のように、0.4~0.9MPaの範囲とすることが好ましく、0.5~0.8MPaの範囲とすることがより好ましい。上記下限値以上であると、噴射圧が高く、十分な初期吐出量を得ることができる。一方、上記上限値以下であると、耐圧性の容器とする必要がなく、また初期吐出量が必要以上に多くなることもない。
低沸点化合物は、その蒸気圧が高いほど、容器内の内圧は高くなり、またイソシアネートとの相溶性が高いほど、容器内の内圧は低くなる。したがって、低沸点化合物の蒸気圧、含有量、低沸点化合物とイソシアネートの相溶性等によって、容器内の内圧を制御することができる。
また、ポリオール組成物及びイソシアネート組成物中の該低沸点化合物は、ポリオール組成物及びイソシアネート組成物を吐出させると共に、吐出時に気化することで、後述するポリウレタン組成物を発泡させる。すなわち発泡剤としての機能も有する。
【0069】
[イソシアネート組成物]
イソシアネート組成物は、ポリイソシアネート、HFO、及び低沸点化合物を含むことが好ましい。HFO及び低沸点化合物については、ポリオール組成物で用いたものと同様のものを用いることができる。
イソシアネート組成物に使用されるポリイソシアネートとしては、ポリウレタン発泡体の形成に使用される公知のポリイソシアネート化合物を使用できる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0070】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0071】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0072】
これらの中でも、使いやすさの観点、及び入手容易性の観点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートがより好ましい。ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0073】
イソシアネート組成物は、上述のように、HFO及び低沸点化合物を含有することが好ましい。HFOとしては、ポリオール組成物に用いられるものと同様の化合物を用いることができ、好適な化合物も同様である。なお、ポリイソシアネート組成物で使用するHFOは、ポリオール組成物に使用するHFOと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ポリイソシアネート組成物におけるHFOの含有量としては、ポリイソシアネート100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましく、2~20質量部であることがより好ましく、2.5~15質量部であることが更に好ましく、3~10質量部であることが特に好ましい。上記下限値以上であると、発泡が促進され、発泡性が良好となり、得られるポリウレタン発泡体の密度を低減することができる。一方、前記上限値以下であると発泡が過度に進行することを抑制することができる。
【0074】
低沸点化合物としては、上述した沸点が10℃以下の低沸点化合物を特に制限なく使用することができる。なお、ポリイソシアネート組成物で使用する低沸点化合物は、ポリオール組成物に使用する低沸点化合物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ポリイソシアネート組成物中に含まれる低沸点化合物の含有量は、ポリイソシアネート100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.02~1質量部がより好ましく、0.03~0.5質量部が更に好ましい。低沸点化合物の含有量が前記下限値以上であると、十分な初期吐出量が確保でき、良好なポリウレタン発泡体を形成することができる。一方、低沸点化合物の含有量が前記上限値以下であると発泡密度が低くなり過ぎず、適切な物性が得られる。
また、イソシアネート組成物には、ポリイソシアネート化合物に含有される公知の添加剤が適宜含有されてもよい。
【0075】
なお、ポリオール組成物とイソシアネート組成物は、互いに体積が実質的に同じであることが好ましい。具体的には、ポリオール組成物に対するイソシアネート組成物の体積比は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましく、0.95~1.05がさらに好ましい。
また、第1の容器と第2の容器は上述の通り、同様の方法で製造することができる。
【0076】
[ポリウレタン組成物]
本発明に係るポリウレタン組成物は、本発明のポリオール組成物とイソシアネート組成物とが静止型混合器等により混合された混合物から形成される。
【0077】
(イソシアネートインデックス)
本発明のポリウレタン組成物のイソシアネートインデックスに特に制限はないが、200以上が好ましい。ポリオール化合物に対するポリイソシアネート化合物の量が過剰であると、多量の三量化触媒が必要であるが、本発明では、三量化触媒と共に樹脂化触媒を特定の量で使用しているため、三量化触媒の使用量を少なくすることができる。イソシアネートインデックスが下限値以上であると、ポリオール化合物に対するポリイソシアネート化合物の量が過剰になりポリイソシアネート化合物の三量化体によるイソシアヌレート結合が生成し易くなる結果、ポリウレタン発泡体の難燃性が向上する。また、不燃性を付与することも可能になる。さらに、上記下限値以上とすると、イソシアヌレート結合を有するポリウレタン発泡体、すなわち難燃性と断熱性とを高い水準で兼ね備えるポリウレタン発泡体を製造しやすい。これら観点から、イソシアネートインデックスは、250以上が更に好ましく、300以上がより更に好ましく、350以上が特に好ましい。
また、イソシアネートインデックスは、1000以下が好ましく、800以下が更に好ましく、500以下が特に好ましい。イソシアネートインデックスが前記上限値以下であると、得られるポリウレタン発泡体の難燃性と製造コストとのバランスが良好になる。
【0078】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネート化合物の当量数÷(ポリオール化合物の当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネート化合物の当量数=ポリイソシアネート化合物の使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオール化合物の当量数=OHV×ポリオール化合物の使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオール化合物の水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0079】
(ポリウレタン組成物の製造方法)
本発明のポリウレタン組成物の製造方法に特に制限はないが、本発明のポリオール組成物とイソシアネート組成物を静止型混合器により混合し、コーキングガン、スプレー等の吐出器から吐出されて形成される。
コーキングガンによる本発明のポリウレタン組成物の形成方法は、例えば、以下のように行われる。本発明のポリオール組成物とイソシアネート組成物のそれぞれを充填したカートリッジ容器から吐出させた2つの組成物をスタティックミキサー等の静止型混合器で混合し、混合物をコーキングガンから吹き付けて発泡させる。
スプレーによる本発明のポリウレタン組成物の形成方法は、例えば、以下のように行われる。本発明のポリオール組成物とイソシアネート組成物のそれぞれを充填したスプレー用耐圧容器から吐出させた2つの組成物をスタティックミキサー等の静止型混合器で混合し、混合物を静止型混合器の先端から噴射して発泡させる。
【0080】
(ポリウレタン組成物の用途)
本発明では、ポリウレタン組成物は、様々な用途で使用可能であるが、断熱材として使用することが好ましい。また、ポリウレタン組成物は、ポリウレタン発泡体を構成することが好ましい。ポリウレタン発泡体を構成することで多数の気泡を有するので、それにより断熱効果が発揮される。
ポリウレタン組成物は、特に、乗り物又は建築物の断熱材として使用されることがより好ましい。乗り物としては、鉄道車輌、自動車、船舶、航空機などが挙げられる。本発明のポリウレタン組成物は、上記したポリオール組成物を使用することで、高い難燃性を有する。そのため、防災、安全性の観点から、乗り物又は建築物の用途に好適に使用できる。
また、本発明の混合システムは、小型装置としての使用にも適しており、補修用途にも好適に用いられる。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0082】
実施例及び比較例で用いた各成分を下記に示し、各成分の含有量(質量部)を表1に示す。
1)ポリオール化合物:フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
2)三量化触媒:カルボン酸4級アンモニウム塩(濃度45~55質量%、エチレングリコールによる希釈物)(エボニック ジャパン社製、製品名:DABCO TMR-7)
3)樹脂化触媒:イミダゾール誘導体(濃度65~75質量%、花王社製、製品名:KL No.390)
4)液状難燃剤(リン酸エステル):トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学工業社製、製品名:TMCPP)
5)固体難燃剤(フィラー)
・赤燐:燐化学工業社製、製品名:ノーバエクセル140
・ホウ酸亜鉛:早川商事社製、製品名:FIREBREAK ZB
・臭素系難燃剤:エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、アルベマール社製、製品名:SAYTEX(登録商標)8010
6)沈降防止剤:フュームドシリカ(日本アエロジル社製、製品名:アエロジルR976S)
7)HFO:HFO-1234ze(トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン):ハネウエル社製、製品名:ソルスティス(登録商標)GBA、沸点:-19℃
8)低沸点化合物
・窒素、沸点:-195.8℃
9)ポリイソシアネート:ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、バイエル社製、製品名:DESMODUR(登録商標)44LV20
【0083】
実施例1~6及び比較例1~2
低沸点化合物以外の成分を表1に示す配合量で混合し、該混合物を空のエアゾール缶に注いだ。次いで、ステムバルブで該エアゾール缶を密封した。ステムバルブから低沸点化合物を表1に示す質量となるように注入し、第1の容器とした。
次に、ポリイソシアネート及びHFOを表1に示す質量となるように他の空のエアゾール缶に注ぎ、ステムバルブで該エアゾール缶を密封した。ステムバルブから低沸点化合物を表1に示す質量となるように注入し、第2の容器とした。
第1の容器及び第2の容器の初期吐出量、吐出割合、内圧、及び不揮発分について、以下に記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0084】
(1)初期吐出量
各実施例及び比較例で調製した第1の容器(エアゾール缶)及び第2の容器(エアゾール缶)の質量を測定した。次いで、エアゾール缶のステムバルブを2缶同時に押して、ポリオール組成物及びイソシアネート組成物を10秒間吐出し、該エアゾール缶の質量を測定した。吐出前後のエアゾール缶の質量変化を下記評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:60g以上、90g未満
〇:30g以上、60g未満、又は90g以上、120g未満
×:30g未満、120g以上
【0085】
(2)吐出割合
各実施例及び比較例で調製した第1の容器(エアゾール缶)及び第2の容器(エアゾール缶)の質量を測定した。次いで、エアゾール缶のステムバルブを2缶同時に押して、ポリオール組成物及びイソシアネート組成物を5秒間吐出し、該エアゾール缶の質量を測定した。この操作を繰り返し、5秒間の吐出量が10g未満となったところで、吐出試験を終了し、吐出した各組成物の吐出量の合計量を算出した。当該合計量を、初期の内容量で割った値を吐出割合と定義した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
◎:60%以上、100%以下
〇:30%以上、60%未満
×:0%以上、30%未満
【0086】
(3)内圧の測定方法
各実施例、比較例でポリオール組成物、及びポリイソシアネート組成物を充填した各容器を、35℃の恒温水槽に90分浸漬させた後、容器を上下に振ることで内容物を均一化し、容器のステムバルブにブルドン管圧力計を接続させて、各容器の内圧を測定した。
(4)不揮発分
エアゾール缶から吐出した液剤を1000mlビーカーに入れて、40℃のホットプレート上で、12時間400rpmで撹拌させて、揮発成分を除去した。吐出前のエアゾール缶重量をW0、吐出後のエアゾール缶重量をW1、揮発後の吐出物の重量をW2とし、{W2/(W0-W1)}×100により不揮発分(質量%)を算出した。
【0087】
【表1】
※ポリオール組成物、及びイソシアネート組成物の各値は質量部であり、内圧の各値の単位はMPaである。
【0088】
実施例は良好な初期吐出量を示し、吐出割合も良好であった。一方、発泡剤としてHFOを用いなかった比較例1では、ポリオール組成物の初期吐出量が不足し、かつ吐出割合も不良となった。また、ポリオール組成物及びイソシアネート組成物に低沸点化合物を用いなかった比較例2では、第1の容器及び第2の容器ともに内圧が0.3MPa未満となり、ポリオール組成物及びイソシアネート組成物の初期吐出量が不足し、かつ吐出割合も不良となった。
【符号の説明】
【0089】
10 混合システム
11 第1の容器
12 第2の容器
11A、12A 吐出口
11B,12B 供給ライン
13 静止型混合器
13A 管体
13B ミキサーエレメント
13C 先端