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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】摩擦減少装置を有する下工具
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20241030BHJP
   B21D 37/12 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B21D5/02 F
B21D37/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020561922
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 AT2019060152
(87)【国際公開番号】W WO2019213681
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】A50379/2018
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】509296085
【氏名又は名称】トルンプ マシーネン オーストリア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】カール バーデグルーバー
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート ハーゼルベック
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ロイミューラー
(72)【発明者】
【氏名】カビール セシボビック
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-024421(JP,A)
【文献】国際公開第2017/067879(WO,A1)
【文献】特公昭49-036190(JP,B1)
【文献】特表2015-521955(JP,A)
【文献】実開昭54-154343(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B21D 37/12
B21D 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ機械(1)用下工具(3)であって、
-長手方向に延びるベースボディ(5)を有し、前記ベースボディがその下側(6)に、工具収容部(10)のガイド溝(9)内に収容するための工具シャフト(8)を、かつ横方向(13)に工具ショルダー(7)を有し、かつ
-下工具(3)が長手方向(12)に滑り移動する際に、下側(6)と工具収容部(10)の間の摩擦力(15)を減少させるために、ベースボディ(5)の下側(6)に少なくとも1つの摩擦減少装置(11)を有しており、
少なくとも1つの摩擦減少装置(11)が次のように、すなわち下工具(3)の重力(17)が工具収容部(10)に作用する一方、重力(17)の方向に付勢力(16)がもたらされることにより、その結果として工具収容部(10)への下工具(3)の垂直抗力(18)がもたらされ、該垂直抗力が重力(17)と比較して低くなるように、構成されている、
ものにおいて、
少なくとも1つの摩擦減少装置(11)が、下工具(3)のそのために設けられている収容室(20)内に次のように、すなわち摩擦減少装置(11)が隣接する下側(6)に対して少なくとも重力(17)の方向に移動可能に形成されるように、配置されている、ことを特徴とする曲げ機械用の下工具(3)
【請求項2】
摩擦減少装置(11)が、付勢力(16)の大きさを調節するために調節可能なばね部材(21)を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の下工具(3)。
【請求項3】
付勢力(16)が、下工具(3)の重力(17)の少なくとも20%である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の下工具(3)。
【請求項4】
下工具(3)の内部の摩擦減少装置(11)のライニング(27)の最小厚みを監視するために、備制御(22)と接続された、摩耗センサ(23)が設けられている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の下工具(3)。
【請求項5】
摩耗センサ(23)と接続されたワイヤレスの伝達装置(24)が、摩耗データを設備制御(22)へ伝達するために、下工具(3)及び/又は工具収容部(10)内に形成されている、ことを特徴とする請求項4に記載の下工具(3)。
【請求項6】
摩擦減少装置(11)を抜け落ちないように固定するための、具なしで操作可能に形成された、固定手段(25)が、下工具(3)と結合可能に形成されている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の下工具。
【請求項7】
少なくとも1つの摩擦減少装置(11)が、工具収容部(10)との摩擦面において、負荷方向(14)に、かつ/又は横方向(13)に、下工具(3)と整列して配置されている、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の下工具(3)。
【請求項8】
摩擦減少装置(11)が、少なくとも負荷方向(14)において、工具収容部表面(4)と接触するために、性的な、ライニング(27)を有している、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の下工具(3)。
【請求項9】
摩擦減少装置(11)が、スライド部材(26)として形成されており、工具収容部(10)に対するスライド部材(26)の摩擦係数(30)が、工具収容部(10)に対する下工具(3)の摩擦係数μ1よりも小さい摩擦係数(30)μ2を有している、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の下工具(3)。
【請求項10】
スライド部材(26)及び/又はスライド部材(26)のライニング(27)が、斜めにされた、かつ/又は面取りされたエッジを有している、ことを特徴とする請求項9に記載の下工具(3)。
【請求項11】
収容室(20)の内部に、長手方向(12)に工具収容部(10)の平面に対して斜めの2つのくさび平面(28)が形成されており、かつ摩擦減少装置(11)が、このくさび平面(28)に沿って移動可能なスライドくさび(29)として形成されており、かつ
くさび平面(28)に対するスライドくさび(29)の摩擦係数が、工具収容部(10)に対するスライドくさび(29)の摩擦係数μ2よりも小さい摩擦係数μ3を有している、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の下工具(3)。
【請求項12】
収容室(20)の内部に、長手方向(12)に工具収容部(10)の表面に対して斜めの2つのくさび平面(28)が形成されており、かつ摩擦減少装置(11)がローラ(35)として形成されており、
ローラ軸(34)がくさび平面(28)に沿って移動可能に形成されており、かつ収容室(20)が長手方向(12)にストッパによって限定されており、かつ
くさび平面(28)に対するローラ軸(34)の摩擦係数が、工具収容部(10)に対するローラ(35)の摩擦係数μ2よりも小さい摩擦係数μ4を有しており、かつ
工具収容部(10)に対するローラ(35)の摩擦係数μ2が、工具収容部(10)に対する下工具(3)の摩擦係数μ1よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の下工具(3)。
【請求項13】
下工具(3)の重力(17)が、摩擦減少装置(11)によって工具収容部(10)へ完全に伝達される、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の下工具(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ機械用の、特にダイ曲げ機械用の下工具に関するものであって、下工具の下側と工具収容部との間の摩擦力を減少させるために少なくとも1つの摩擦減少装置を有している。
【背景技術】
【0002】
最近の変形機械、特に曲げ機械においては、上工具及び/又は下工具の工具交換を実施することが、しばしば必要である。その場合に変形工具もしくは曲げ工具は、曲げ機械の工具収容部においてそれぞれの変形操作のために互いに対して最適に方向づけされ、かつ選択的に、曲げプロセスの間意図されない変位に対して締めつけ、もしくは挟持することができる。その場合にますます重要になるのは、単純な工具交換システムであって、それは特に下工具において操作しやすい交換を可能にする。下工具は、通常、長手方向に延びるベースボディを有しており、そのベースボディは下側に、それぞれの変形操作用に設計されたダイ型を有している。この種の下工具は、その下側に、通常、工具シャフトを有しており、その工具シャフトが工具収容部のガイド溝内に収容するために用いられる。しばしば、ベースボディの長手方向に対して法線方向となる横方向の側方に、工具ショルダーが形成されている。工具交換する際に、下工具の自重及び下工具が工具収容部に沿ってスライドする際に工具収容部に作用する重力によって、下工具表面及び/又は工具収容部表面に損傷がもたらされることがある。
【0003】
下工具表面及び/又は工具収容部の表面の損傷を回避するために、従来技術からはこれまでにいくつかの技術的解決が知られている。たとえばここで、特許文献1(国際公開第2014/007640号)が挙げられる。そこでは、下工具の下側に工具シャフトとして、堅固なローラ上で案内される別体のスライドキャリッジを形成することが、記述される。その場合にさらに、工具収容部の、負荷方向に高さ調節可能なガイド通路による工具収容部の形成が必要である。このようにして、圧縮空気システムの作動によって下工具を少し持ち上げることが可能であり、それによって工具収容部から工具ショルダーが持ち上げられて、下工具は工具収容部の堅固なローラ上でガイド溝によって滑り移動することができる。このコンセプトの具現化は、比較的高い技術的手間を必要とし、それが製造におけるコストの増大をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/007640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服し、かつ、ユーザーが比較的容易に、コスト的に好ましく、安全かつ迅速に工具交換を行うことができる、摩擦減少装置を備えた下工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項に記載の装置と方法によって解決される。
【0007】
本発明に係る装置は、曲げ機械用、特にダイ曲げ機械用の下工具に関するものであって、長手方向に延びるベースボディとその中に収容された、あるいはそれに形成された少なくとも1つの摩擦減少装置とを有している。ベースボディは、その下側に工具シャフトを有し、かつ横方向に工具ショルダーを有することができ、その工具ショルダーは工具シャフトに対して引っ込んで配置されている。少なくとも1つの摩擦減少装置は、下工具が長手方向に滑り移動する場合に下側と工具収容部との間の摩擦を減少させるために、ベースボディの下側に次のように、すなわち重力の方向に付勢力をもたらすことによって、工具収容部へかかる下工具の重力が、結果として生じる下工具の、重力に比較して小さい垂直抗力を工具収容部へもたらすように、形成されている。
【0008】
本発明は、下工具及び/又は工具収容部の摩耗を減少させるために、下工具もしくは工具ショルダーを工具収容部から必ずしも完全に持ち上げる必要はない、という認識に基づいている。一般的に、本発明の文脈において、滑り移動力は、工具収容部において、あるいはその内部で下工具を長手方向に滑り移動させるために必要な力と称される。摩擦力の高さは、通常、滑り移動方向とは逆方向に作用する。工具を滑り移動させるためには、滑り移動力は摩擦力よりも大きくなければならない。摩擦力FRは、一般に知られたやり方で、負荷方向における下工具の垂直に向けられた重力FGとファクター、第1と第2の表面の間の摩擦係数μによって、FR=μ*Gとして近似することができる。この一般化から場合によって生じる偏差については、それぞれ種々の方向に作用する部分力をベクトル的に合成することができる。
【0009】
驚くべきことに、本発明に係る摩擦減少装置によって、工具収容部へかかる下工具の重力の見せかけの減少が行われることによって、下工具と工具収容部の間の摩擦力を減少させることが可能であることが、明らかにされた。そのために摩擦減少装置から付勢力が工具収容部へもたらされる。下工具の内部に摩擦減少装置を支持することによって、工具収容部へかかる下工具の重量の見せかけの減少がもたらされる。したがって結果として生じる、工具収容部へかかる下工具の垂直抗力は、下工具の本来の重量よりも小さい。というのは、摩擦減少装置を介して工具収容部へもたらされる付勢力の高さの支持が行われるからである。このようにして比較的簡単に、工具収容部及び/又は下工具及び/又は下工具挟持部の損傷を回避することが、可能である。これが、下工具のより長い使用インターバルもしくは工具収容部又は下工具の損傷なしの頻繁な工具交換を許す。それによって曲げ機械の保守インターバルも延長することができる。さらに、工具交換する際に長手方向に滑り移動する場合の摩擦力が減少され、それによってより迅速な装着速度が可能である。さらに、工具収容部内の下工具の固着を回避することができ、それが安全性の向上に寄与することができる。
【0010】
さらに、少なくとも1つの摩擦減少装置が、好ましくはそれぞれ、そのために設けられている下工具の収容室内に次のように、すなわち摩擦減少装置が隣接の、もしくは包囲する下側に対して少なくとも1つの方向に、好ましくは重力の方向に、移動可能に形成されるように、配置されていると、効果的であり得る。
【0011】
その場合に、各摩擦減少装置のために、下工具内に別体の収容室を設け、あるいは複数の摩擦減少装置を共通の収容室内に配置することが、可能である。その場合に収容室は、たとえば下工具内部のフライスポケットとして、摩擦減少装置、特にスライド部材、スライドくさび又はローラの完全な収容が可能であるように、形成することが可能である。下工具の長手方向における収容室の延びは、摩擦減少装置の仕様に応じて、収容室の内部で摩擦減少装置の少なくとも部分的な滑り移動又は移動が可能であるように、選択することができる。下工具の工具シャフト内、かつ/又は下工具の工具ショルダー内で収容室を位置決めすることによって、工具を挟持する場合に摩擦減少装置が障害輪郭を形成することを、回避することができる。したがって下工具への工具挟持の良好な力導入を保証することができる。さらに、たとえばロボットを用いる、自動化された交換システムの使用が容易になる。
【0012】
さらに、摩擦減少装置は、付勢力の高さを調節するために、調節可能なばね部材を有することができる。
【0013】
その場合に調節可能なばね部材は、たとえば板ばね、皿ばね、コイルばね又はばね弾性を有するプラスチックボディなどとして形成することができる。ばね部材の一方の側が下工具に支持され、かつスライド部材、スライドくさび及び/又はローラが下工具の重力の方向に、もしくは負荷方向に、あらかじめ定めることのできるばね力で付勢されると、好ましいことが明らかにされている。ある種の場合においては、ばね部材の可能な最大のばね力が下工具の重力よりも大きいと、好ましいことがあり得る。その場合に、存在する幾何学的条件に従ってばね部材の調節可能性を最適に設計することは、当業者の裁量にある。たとえば、ばね部材が板ばねとして形成されている場合に、ばね力は外部から調節可能な載置長さを介してきわめて容易に定めることができる。同様にして、たとえばコイルばねの調節可能性は、ばね力を調節するための回動装置によって変化される。付勢力の高さを調節する可能性は、当業者に、より迅速な装備速度を実現し、かつ下工具もしくは工具収容部の損傷を著しく減少させることを許す。他の利点は、複数の摩擦減少装置が異なる付勢力を有することができ、それによって下工具の幾何学的条件と重力の分配に合わせて配慮を行うことができることにある。
【0014】
さらに、付勢力は下工具の重力の少なくとも20%とすることができる。
【0015】
驚くべきことに下工具において、工具収容部へかかる下工具の重力を合計で少なくとも20%減少させることがすでに、表面損傷の著しい減少をもたらすことができることが、明らかにされている。工具重量及び/又は長手方向の延び及び/又は重心位置に従って、それぞれの摩擦減少装置へかかる重力を変化させることができる。その場合に摩擦減少装置を様々な付勢力で付勢し、それによってたとえば下工具の横方向及び/又は長手方向における偏心した重心が、工具収容部内の下工具の固着が回避されるように補償されると、効果的であり得る。下工具の重力の20から50%を付勢力として摩擦減少装置へ分配すると、特に効果的であることが明らかにされている。下工具の重力よりも大きい付勢力となるまで付勢力を高めることも考えられ、かつある種の適用においては好ましい場合がある。
【0016】
ある形態も効果的であって、それによれば、摩擦減少装置のスライド部材及び/又はスライドくさび及び/又はライニングの最小厚みを監視するための、好ましくは設備制御と接続された、摩耗センサを下工具の内部に配置することができる。
【0017】
その場合に摩耗センサは、光学的及び/又は機械的なセンサとすることができ、かつスライド部材、スライドくさび、ローラ及び/又はその選択的なライニングに対するできる限り直接的な視野接続もしくは接触接続をもたなければならない。摩耗センサは、たとえば適切なマーキングによってセンサにとって検出可能となる、提供されるライニング及び/又は厚みを検出することを、許す。このようにして下工具及び/又は工具収容部の可能な損傷は、スライド部材、スライドくさび、ローラ及び/又はライニングを早期に交換することによって回避することができる。これが、安全性を高め、かつ定められた作業インターバルもしくは保守インターバルを許す。その場合に摩耗センサの電流供給をたとえば下工具端子を介して実施すると、効果的であり得る。その場合に、この種の接触を介して設備制御へデータ伝送が行われることも、考えられる。
【0018】
展開によれば、摩耗データを設備制御へ伝達するための、摩耗センサと接続されたワイヤレスの伝達装置が、下工具及び/又は工具収容部内に形成されることが、可能である。
【0019】
それによって、下工具内部の摩耗センサのきわめて効率的な保護を保証することができ、かつ可能な接触箇所を可能な汚れ及び/又は損傷に対して保護することができる。
【0020】
さらに、摩擦減少装置を抜け落ちないように固定するための、好ましくは工具なしで操作可能に形成された固定手段が下工具と結合可能に形成されていると、効果的であり得る。
【0021】
固定手段として、ここでは、摩擦減少装置内にスライド部材又はスライドくさびを固定するために、たとえば比較的単純に形成されたねじを使用することができる。同様に、たとえば下側にローラ又はスライドくさびのための通過部を備えた開放可能なフラップのような、挟持部材又は係止部材が考えられる。固定手段は、負荷方向及び/又は長手方向にスライド部材、スライドくさび又はローラの少なくとも部分的な移動を許すように、形成することができる。したがって摩擦減少装置の機能は阻止されないが、工具交換する場合に摩擦減少装置は下工具内に抜け落ちないように効率的に確保される。
【0022】
さらに、少なくとも1つの摩擦減少装置が負荷方向に整合され、かつ/又は横方向両側において下工具に配置されることが、可能である。
【0023】
工具シャフトにおいて長手方向下側に沿って複数の摩擦減少装置を形成することは、下工具の最適な負荷分配もしくは重力の減少に利用することができる。重力もしくは付勢力を複数の載置点へ分配することによって、それぞれの摩擦減少装置における局所的な面プレスを阻止することができる。それによって摩擦減少装置の使用期間を延長することができ、かつスライド部材の過度な摩耗を防止することができる。それと同様に、長手方向及び特に横方向における下工具の重心位置に従って、少なくとも1つの摩擦減少装置を、たとえば工具ショルダー内に設けることができることに、利点がある。
【0024】
さらに、摩擦減少装置は、少なくとも負荷方向において工具収容部表面と接触するために、好ましくは弾性的な、ライニングを有することができる。
【0025】
この種のライニングの使用は、必要な剛性及び/又は、たとえば定められた摩擦係数μのような、摩擦特性を所望に調整することを、許す。同様に、ライニング及びそのライニング厚みの適切な選択は、付勢力の作用に関して弾性的な特性を最適化するために、用いることができる。ライニングは、たとえばばね弾性を有する材料、たとえばゴムとして、形成することができ、かつ場合によっては同時に上述したばね部材としての作用を展開することができる。これは、摩擦減少装置のスライド部材がローラとして形成されている場合に、特別な利点をもたらす。さらにこの種のライニングは、必要な場合もしくは最小厚に達した場合に、比較的簡単に交換することができ、それもコストと時間の著しい利点を伴う。特に、ライニングのために、合成の、好ましくはオイル及び/又は溶剤に耐えるプラスチック、たとえばPTFE、PEEKなどが考えられる。それによって下工具及び/又は工具収容部の損傷を減少させることができ、それにもかかわらずスライド部材又はスライドくさび又はライニングの高い耐性を得ることができる。
【0026】
特別な形態によれば、摩擦減少装置がスライド部材として形成されることが可能であって、その場合に工具収容部に対するスライド部材の摩擦係数は、工具収容部に対する下工具の摩擦係数μ1よりも小さい摩擦係数μ2を有している。
【0027】
この種のスライド部材を使用すること及び付勢力をもたらすことが、下工具の重力の大部分を、たとえばスライド部材の低摩擦表面を介して伝達することを、許す。それによって長手方向に滑り移動する場合に摩擦力を著しく減少させることができる。さらに、下工具及び/又は工具収容部の損傷が効率的に回避可能である。というのは、摩擦における摩耗が少なくとも部分的に、好ましくは完全に、スライド部材によって負担されるからである。その場合に条件μ1≧μ2が、特に効果的であることが明らかにされている。この種のスライド部材は、工具収容部の方向に平坦な載置面、又は湾曲した載置面も有することができる。スライド部材は、下側に工具収容部の方向にライニングを有することができ、あるいは一体的に形成することもできる。上述した例のライニングと同様に、スライド部材のためにも同様に適切なプラスチックを使用することができる。しかし、スライド部材が金属からなり、スライド面に、所望の摩擦特性、特に摩擦係数μ2をもたらすコーティングを設けることも、考えられる。スライド部材は収容室の内部で部分的に長手方向に沿って移動可能に形成することができ、かつ特別な形態においてはスライドくさびとして形成することもできる。
【0028】
好ましい展開によれば、スライド部材及び/又はスライド部材のライニングは、斜めにカットされた、かつ/又は面取りされたエッジを有することができる。
【0029】
この措置は、下工具が滑り移動する場合の固着の危険を著しく減少させることができ、かつ下工具と工具収容部の保護に寄与することができる。
【0030】
特に、収容室の内部に長手方向に工具収容部の平面に対して斜めの2つのくさび平面が形成されており、かつ摩擦減少装置がくさび平面に沿って移動可能なスライドくさびとして形成されていると、効果的であり得る。その場合にくさび平面に対するスライドくさびの摩擦係数は、工具収容部に対するスライドくさびの摩擦係数μ2よりも小さい摩擦係数を有する。
【0031】
この種のスライドくさびの機能方法は、上述したスライド部材に実質的に相当する。付勢力は、スライド部材と同様にスライドくさびにもたらすことができ、それによって重力の著しい割合を少なくとも1つのスライドくさびによって工具収容部へ伝達することができる。摩擦条件もしくは摩擦係数を上述したように選択することによって、下工具が滑り移動する場合に、下工具がばね部材に加えて摩擦減少装置においてくさび平面上に支持されることを、利用することができる。下工具のくさび平面とスライドくさびとの間の摩擦係数μ3が小さいことによって、スライドくさびと工具収容部の間の摩擦係数μ2が適切に選択される場合に、この支持は、下工具と工具収容部の間の摩擦係数μ1に合わせて、工具収容部における下工具の接触領域の著しい「負荷除去」をもたらすことができる。条件μ1≧μ2>μ3は、特に好ましいことが明らかにされている。というのは、限界場合において下工具はくさび平面に沿って滑り移動する場合に上方へ案内されて、特に工具収容部に対する接触を失うことがあるからである。このようにして工具収容部に対する下工具の直接的な接触を避けることができる。下工具及び/又は工具収容部の損傷は、比較的好ましい、かつ簡単に交換可能なスライドくさびもしくはスライドくさびのライニングが摩耗を引き受けることによって、回避することができる。
【0032】
それに対して代替的に、収容室の内部に長手方向において工具収容部の表面に対して斜めの2つのくさび平面を形成することができ、かつ摩擦減少装置をローラとして形成することができる。その場合にローラ軸はくさび平面に沿って移動可能に形成されており、かつ収容室は長手方向においてストッパによって限定されており、かつくさび平面に対するローラ軸の摩擦係数は、工具収容部に対するローラの摩擦係数μ2よりも小さい摩擦係数μ4を有し、かつ工具収容部に対するローラの摩擦係数μ2は、工具収容部に対する下工具の摩擦係数μ1よりも大きい。
【0033】
載置部横断面が小さいことに基づいて下工具に対するローラの面プレスが局所的に高くなることが、工具収容部に対して摩擦減少装置がきわめて良好に接触することを許す。スライドくさび及び/又はスライド部材についての上述した考えと同様に、摩擦減少装置の付勢力によって、下工具の重力が少なくとも部分的にローラから工具収容部へ伝達されることが、考えられる。驚くべきことに、ローラのばね弾性を有するライニング(その割合はローラの半径の約10から約80%となることができる)は、ばね部材としての作用を展開することができることが、明らかにされている。したがってばね弾性をもって形成されたローラは、必要な付勢力をもたらすことができ、かつ静的に、したがって移動されない状態において重力によって収容室の中央に留まる。したがって下工具の意図されない滑り移動は、排除される。
【0034】
収容室は、長手方向において負荷方向に工具収容部から離れる方を向いて、ローラもしくはローラ軸の非作動位置が設けられるように、形成されている。長手方向において、収容室が充分に大きく寸法設計されており、長手方向に沿ってローラが変位することができると、効果的である。μ2≧μ1>μ4の関係を有する摩擦条件を選択することにより、静的な場合においてローラは常に非作動位置へ復帰することができる。ローラもしくはライニングの適切な材料選択及び/又は摩擦係数及び/又は弾性的特性によって、下工具が長手方向に滑り移動する場合にローラ上で下工具が滑り移動することができる。したがって下工具の重力は、ローラ軸を介して少なくとも部分的にローラへ伝達される。ローラは、比較的小さい転がり抵抗によって、長手方向における容易な滑り移動に寄与することができる。滑り移動距離が特に長い場合には、長手方向において収容室のストッパが同様にローラとして形成されており、それによってローラもしくはローラ軸の固着が阻止されると、効果的であり得る。長手方向において下側もしくは工具収容部表面に対してくさび平面を斜めもしくは傾けて配置することによって、場合によっては特に下工具の接触領域の完全な負荷除去をもたらすことができ、それによって工具収容部へ加わる下工具の、結果として生じる垂直抗力の削減が、いわば完全に行われる。このような場合は、下工具が長手方向に滑り移動する場合に斜めのくさび平面に沿ってローラ軸上に支持され、それによって限界場合において下工具の持ち上がりが達成される場合に、生じることがある。工具収容部上の長手方向の目標位置に達した場合に、くさび平面に対するローラ軸の小さい摩擦力又は低い摩擦係数μ4によって、摩擦減少装置がある種の自己センタリングを行うことができる。ばね弾性をもって形成されたローラもしくはライニングも、それに寄与し、それらは適切な復帰力をもたらす。ローラ軸は、たとえばフラップ又はレールとすることができる固定手段を用いて、抜け落ちないように下側から固定することができる。このようにして、きわめて効果的かつ簡単に、負荷方向及び/又は長手方向に移動可能なローラを、付勢力を調節し、かつ下工具及び/又は工具収容部の損傷を回避するために、使用することができる。
【0035】
摩擦減少装置のスライド部材をスライドくさびもしくはローラとして形成する場合に、くさび平面の角度の選択は、当業者にまかされる。くさび平面は、常に上昇するまっすぐな面の他に、スライド部材もしくはローラの自己センタリングを簡略化するために、ある種の円セグメントとして形成することもできる。
【0036】
さらに、下工具の重力は、摩擦減少装置によって完全に工具収容部へ伝達することができる。
【0037】
これは、下工具の重力よりも大きい付勢力によって、あるいは摩擦係数、くさび角度などの上述した選択によっても行うことができる。この措置によって、工具収容部における下工具の摩擦の完全な削減を達成することができる。それぞれの場合においてスライド部材及び/又はスライドくさびのより小さい滑り摩擦、もしくは摩擦減少装置の小さい転がり摩擦が、下工具及び/又は工具収容部の寿命を決定的に高めることができる。さらに、スライド部材、スライドくさび、ローラ及び/又はライニングは、比較的簡単かつコスト的に好ましく交換することができる。全体としてそれにもとづいて著しいコスト的利点をもたらすことができ、かつユーザーが適用する場合の安全性を向上させることができる。
【0038】
本発明をさらによく理解するために、以下の図を用いて本発明を詳細に説明する。
図は、それぞれ著しく簡略化された図式的な表示である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、曲げ機械の例を示している。
図2図2は、摩擦減少装置と工具収容部を有する下工具を分解して図式的に示している。
図3図3は、2つのボディが摩擦接触する際の一般的な力状況を図式的に示している。
図4図4は、スライド部材によって付勢をもたらすための摩擦減少装置の実施例を図式的に示している。
図5a図5aは、スライドくさびによって付勢をもたらすための摩擦減少装置の実施例を図式的に示している。
図5b図5bは、スライドくさびによって付勢をもたらすための摩擦減少装置の実施例を図式的に示している。
図6a図6aは、ローラによって付勢をもたらすための摩擦減少装置の実施例を図式的に示している。
図6b図6bは、ローラによって付勢をもたらすための摩擦減少装置の実施例を図式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
最初に記録しておくが、異なるように記載される実施形態において、同一の部分には同一の参照符号ないし同一の構成部分名称が設けられており、その場合に説明全体に含まれる開示は、同一の参照符号ないし同一の構成部分名称を有する同一の部分へ意味に従って移し替えることができる。また、説明内で選択される、たとえば上、下、側方などのような位置記載は、直接説明され、かつ示される図に関するものであって、この位置記載は位置が変化した場合には意味に従って新しい位置へ移し替えられる。
【0041】
図1には、設備制御22、上工具2及び下工具3を有する曲げ機械1が図式的に示されており、その下工具は工具収容部10に配置されている。図式的な表示は、さらに、実質的に垂直の負荷方向14と長手方向12を示しており、その長手方向に沿って下工具3が工具収容部10のガイド溝9内で滑り移動することができる。さらに、横方向13が長手方向12もしくは負荷方向14に対して直交していることが、明らかである。
【0042】
図2には、ベースボディ5と横方向13の側方に形成された工具ショルダー7とを有する下工具3が分解して図式的に示されている。ベースボディ5は、対応する工具収容部10のガイド溝9内に収容するための工具シャフト8を有している。図2には、少なくとも1つの摩擦減少装置11を配置するための可能な位置が見られる。図式的に示すように、長手方向12に複数の摩擦減少装置11を下工具3の下側6にそれぞれそのために設けられた収容室20内に形成することができる。さらに、摩擦減少装置11を下工具3の下側6の工具ショルダー7内に設けることが可能である。このように配置された摩擦減少装置11は、支持もしくはモーメント補償のために、下工具3の重心が偏心して、したがって工具収容部の垂直軸から変位して配置されている場合に、望ましくない工具固着を回避するために使用することができる。
【0043】
図3には、工具収容部10と接触している下工具に発生する力状況が図式的に示されている。通常、摩擦力15の見積もりは、重力17と、下工具3と工具収容部10の間の摩擦係数μ130との積から行うことができる。長手方向12における滑り力19は、摩擦力14よりも大きくなければならない。図3から明らかなように、通常場合において、下工具3の全重量が工具収容部10の領域へ重力17として荷重をかける。
【0044】
本発明に係る下工具3を、図2及び3と組み合わせて図4から図6のいくつかの図式的な表示を用いて説明する。下工具3が長手方向12に滑り移動する場合に、下側6と工具収容部10の間の摩擦力156を可能にするために、本発明によれば、摩擦減少装置11によって重力17の方向に付勢力16がもたらされる。図4に図式的に示すように、本発明によれば、下工具3の収容室20内に摩擦減少装置11が配置されている。工具収容部10へ作用する下工具3の重力17は、それぞれ摩擦減少装置11を用いて付勢力16をもたらすことによって、見かけ上は結果として生じる垂直抗力18に減少され、その場合に重力17の力導入は、少なくとも部分的に摩擦減少装置11を介して行われる。図4、5及び6に図式的に示すように、重力17の破線の矢印は、スライド部材、スライドくさび又はローラに作用する付勢力16によって、結果として生じる垂直抗力18まで減少させることができる。矢印長さは、個々の力の高さのグラフ表示と考えることができる。したがって重力17の大部分は摩擦減少装置11を介して工具収容部10へ伝達することができる。図4に示すスライド部材26は、力を導入する方向もしくは負荷方向14にスライド可能に形成されている。スライド部材26へ付勢力16をもたらすことは、ばね部材21によって行われ、そのばね部材はたとえばコイルばねとして示されている。たとえばねじとして形成された固定手段25が、負荷方向14及び/又は長手方向12におけるスライド部材26のあそびを許すが、下工具3を取り出す場合に摩擦減少装置11の抜け落ちを阻止する。
【0045】
選択的な可能性として、図4にはさらに、ライニング27を有するスライド部材26が見られる。さらに、ライニング27とスライド部材26の面取りされたエッジを設けることができる。さらに図4から明らかなように、下工具3の内部に摩耗センサ23が、スライド部材26及び/又は選択的なライニング27の少なくとも1つの側を検出することができるように、配置されている。スライド部材26及び/又はライニング27が最小厚に達した場合に、好ましくはワイヤレスの伝達装置24を用いて、信号を設備制御22へ送信することができる。
【0046】
さらによく理解するために、本発明に係る原理が摩擦力15、FRの以下の計算例を用いて、例としての値により簡単に説明され、かつ意味に従って図1から図6を参照してすべての実施例について理解させる:
-下工具3の重力17=FG=200N;
-2つの摩擦減少装置11による付勢力16=FV:50N+50N=100N;
-結果として生じる垂直抗力18=FN=FG-FV=100N;
-下工具と工具収容部の間の摩擦係数μ130=0.5;
-摩擦減少装置と工具収容部の間の摩擦係数μ231=0.2
【0047】
通常、摩擦力15はFR=μ*G=0.5*200N=100Nに相当し、それによって下工具3を滑り移動させるためには、100Nよりも大きい滑り力19が必要である。重力17FG=200Nを本発明に係る摩擦減少装置11によって付勢力16FV=100Nの分だけ、結果として生じる垂直抗力18に減少させることは、FN=FG-FV=200N-100N=100Nによって行われると、単純に仮定すると、システム全体の発生する摩擦力15及びそれに伴って必要な滑り力19を減少させることができる。全摩擦力FR-Sumは、下工具の部分摩擦力FR1とスライド部材の部分摩擦力FR2を組み合わせることによって見積もられる。したがって以下の式が成立する:
【数1】
【0048】
これは具体的な例において、それぞれ50Nの付勢力をもたらす(これは下工具3の重力17の25%に相当する)2つの摩擦減少装置11の使用が、30%の必要な摩擦力15の減少を発生させることを、意味する。この例は、単に、本発明に係る下工具3、特に本発明に基づいて形成されて配置された摩擦減少装置11のアプローチと利点を示すものである。当業者にとっては、スライド部材26のこの簡単な例を用いて、計算と設計のために必要な機能的推論を同様にスライドくさび29もしくはローラ35へ移し替えることが可能であって、したがってここでは詳細な説明は省かれる。
【0049】
図5には他の、場合によっては自立した、スライドくさび29の形式の摩擦減少装置を有する下工具の実施形態が示されている。図5aにおいてスライドくさび29は非作動位置にあって、下工具3は工具収容部10上に位置している。上述した機能原理の説明と同様に、ばね部材21によって付勢力16がスライドくさび29を介して工具収容部10へもたらされる。それによって、結果として生じる垂直抗力18が下工具3の重力17に対して減少される。スライドくさび29は、収容室20の内部で長手方向12及び負荷方向14に移動可能に形成されている。スライドくさびは、くさび平面28において下工具に対して摩擦係数μ332を有している。工具収容部10に対するライニング27とスライドくさび29の間の摩擦係数は、μ231として示されている。下工具3と工具収容部10の間の摩擦係数は、μ130として示されている。図4の記述及び機能方法と同様に、摩耗センサ23及びワイヤレスの伝達装置24が図式的に示されており、かつここでは上述した詳述を参照するよう指示して、詳しく説明はしない。
【0050】
図5bには、長手方向12における下工具の滑り移動が示唆されている。重力17の力導入は、スライドくさび29の一方の側におけるくさび平面28において、かつばね部材21を介して工具収容部10の方向に行われる。図5bから明らかなように、結果として生じる垂直抗力18は、重力17の比較的小さい割合となる場合がある。極端な場合においては、全重量17が摩擦減少装置11を介して工具収容部10へ伝達されることが可能である。この種の場合は、摩擦係数μ332が、摩擦係数μ231とμ130よりもずっと小さい場合に起こり得る。それによって、長手方向12に滑り移動する場合に、下工具3がスライドくさび29のくさび平面28上で滑り移動することにより下工具3が持ち上がることがあり得る。その場合にスライドくさび29は、図示される形状のくさび平面38と対応する斜めになった上側を有している。このようにして下工具3及び/又は工具収容部10の損傷が回避される。
【0051】
図6には他の、場合によっては自立した、ローラ35の形状の摩擦減少装置11を有する下工具3の実施形態が示されている。ここでも、先行する図1から図5と等しい部分には、等しい参照符号が使用される。不必要な繰り返しを避けるために、先行する図1から図5の詳細な説明が参照するよう指示され、もしくは参照される。図6aには、摩擦減少装置11もしくは下工具3の非作動位置が図式的に示されている。図示されるローラ35は、径方向にライニング27を有している。その場合にローラ35は、収容室20の内部で長手方向12及び負荷方向14に移動可能に支承されている。収容室20は負荷方向14とは逆に上方へ向かって拡幅されており、ローラ35はローラ軸34を中心に自由に移動することができる。ローラ軸34は、横方向13においてそれぞれくさび平面28と接触する。その場合にローラ35のライニング27は、ばね弾性をもって形成されている。しかしローラボディをばね弾性を有するように形成することも考えられ、それによってラインイング27を省くことができる。図示されるライニング27を有するローラ35の場合において、ライニング及び/又はローラボディはばね部材21として作用することができる。このようにして上述した実施例と同様に付勢力16がもたらされ、それによって下工具3の重力17が、結果として生じる垂直抗力18に減少される。ローラ軸34と下工具3の間において、摩擦係数μ433と下工具3に生じる重力17の成分とによって局所的に摩擦力15が定められる。図6aに示すように、静的な場合において、ローラ35は自己センタリング効果によってくさび平面28の間の収容室20の頂点に配置されている。収容室20は、長手方向12においてストッパによって制限されている。ストッパは、図6aと図6bから明らかなように、少なくとも1つの付加的なストッパローラによって形成することができ、それによって長手滑り移動が比較的大きい場合にローラ35の固着を回避することができる。
【0052】
上述した実施例と同様に、図6には摩耗センサ23と伝達装置24が図式的に示唆されている。ここで、図4図5の詳述を参照するよう指示して、機能方法の繰り返しは回避する。
【0053】
図6bには、長手滑り移動の間の摩擦減少装置11の状況が図式的に示されている。下工具3が長手滑り移動する場合に、くさび平面28に沿ったローラ軸34の滑り移動がもたらされ、それによって結果として生じる垂直抗力18に対する付勢力16の割合が増加する。限界場合においては、工具収容部10に対する接触領域内で下工具3の持ち上げが行われることが、可能である。この場合において下工具3は、完全にローラ軸34の上方にあって、ローラ35は工具収容部10に支持される。長手滑り移動する際の小さい転がり抵抗が、結果として滑り移動力の減少及び工具収容部10に作用する下工具3の重力17の効果的な減少をもたらす。工具収容部10上の長手方向12の目標位置に達した場合に、摩擦係数μ130及び/又はμ231に対して摩擦係数μ433がきわめて小さいことによって、ローラは自動的にくさび平面28の間の非作動位置をとる。これは、ばね弾性を有するように形成されたローラ35もしくはばね弾性を有するライニング27によって可能となる。固定手段25の取り付けは図示されておらず、その固定手段はたとえばローラ軸34を固定するためのフラップによって下側6から下工具3に固定することができる。
【0054】
図4から図6のすべての実施例は、下工具3が工具収容部10へもたらす重力17を、少なくとも1つの摩擦減少装置11によって重力17の方向に付勢力16をもたらすことによって、結果として生じる垂直抗力に減少させる、という本発明のアイデアに基づいている。しかしある種の場合においては、付勢力16の高さが下工具3の重力17よりも高く選択されると、好ましい場合が有り得る。このようにして摩擦減少装置11を介して重力17を工具収容部10へ完全に伝達することができる。これは、一方では、ばね部材21による付勢力16の調節を介して可能であり(特に図4を参照)、あるいは代替的に、図5と6に示唆されるように、下工具3が長手滑り移動する間、下工具3をくさび平面28上に支持することよって行うこともできる。
【0055】
実施例は、可能な実施変形例を示しており、その場合にここに記録しておくが、本発明は具体的に示された実施変形例に限定されるものではなく、むしろ個々の実施変形例を互いに様々に組み合わせることも可能であり、これらの変形可能性はこの発明による技術的に取り扱うための教示に基づいて、この技術分野で活動する当業者の裁量の範囲内にある。
【0056】
保護領域は、請求項によって定められる。しかし明細書と図面は、請求項を解釈するために利用されるべきである。図示され、かつ説明された様々な実施例からなる個別特徴及び特徴の組合せは、それ自体自立した進歩的解決を表すことができる。自立した進歩的解決の基礎となる課題は、明細書から読み取ることができる。
【0057】
具体的な説明内の値領域についてのすべての記載は、その任意の部分領域とすべての部分領域を共に含むものであって、たとえば記載1から10は、下限の1と上限の10から始まるすべての部分領域、すなわち下限の1またはそれ以上で始まり、上限の10またはそれ以下で終了する、たとえば1から1.7、または3.2から8.1、あるいは5.5から10のすべての部分領域、を一緒に含んでいるものとする。
【0058】
最後に形式的に指摘しておくが、構造をよりよく理解するために部材は部分的に縮尺どおりではなく、かつ/又は拡大及び/又は縮小して示されている。
【符号の説明】
【0059】
1 曲げ機械
2 上工具
3 下工具
4 工具収容部表面
5 ベースボディ
6 下側
7 工具ショルダー
8 工具シャフト
9 ガイド溝
10 工具収容部
11 摩擦減少装置
12 長手方向
13 横方向
14 負荷方向
15 摩擦力
16 付勢力
17 重力
18 結果として生じる垂直抗力
19 滑り移動力
20 収容室
21 ばね部材
22 設備制御
23 摩耗センサ
24 伝達装置
25 固定手段
26 スライド部材
27 ライニング
28 くさび平面
29 スライドくさび
30 摩擦係数μ-1
31 摩擦係数μ-2
32 摩擦係数μ-3
33 摩擦係数μ-4
34 ローラ軸
35 ローラ
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b