(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】電子キー
(51)【国際特許分類】
E05B 19/00 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
E05B19/00 J
(21)【出願番号】P 2021004795
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直倫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 公平
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-221767(JP,A)
【文献】特開2008-231798(JP,A)
【文献】特開2000-352232(JP,A)
【文献】特開2013-174051(JP,A)
【文献】特開2018-150696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 19/00
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を保持する本体ケースを表裏カバーにより覆って形成され、メカニカルキーを保持するキー収納空間と、メカニカルキーに係脱する係止摺動体とを内部に収容した電子キーであって、
前記本体ケースには、前記キー収納空間に隣接配置され、圧縮コイルスプリングにより付勢される係止摺動体を
底壁部の支承面上に支承し、該係止摺動体を前記キー収納空間内にガイドする摺動体ガイド凹部と、
前記圧縮コイルスプリングによる付勢力に抗して先端部がキー収納空間内に所定寸法突出する突出位置に係止摺動体を保持するストッパと、
係止摺動体のキー収納空間内への突出部の浮き上がり方向の移動を規制して摺動体ガイド凹部からの離脱を防止する規制部とが形成され、
前記規制部による係止摺動体の浮き上がり方向への規制範囲を該係止摺動体のキー収納空間への突出側先端部に限定して係止摺動体が支承面上で傾斜姿勢を取ることを可能にした電子キー。
【請求項2】
前記圧縮コイルスプリングは、前記係止摺動体に先端部が適宜長嵌合され、係止摺動体と圧縮コイルスプリングとの境界部での屈曲による分離が規制される請求項1記載の電子キー。
【請求項3】
前記本体ケースには、前記表裏いずれかのカバーと協働して前記キー収納空間を画成するキー支持凹部が形成され、
前記キー支持凹部のメカニカルキーの幅広面を支持する面が前記規制部として使用される請求項1または2記載の電子キー。
【請求項4】
表裏いずれかのカバーには、係止摺動体を摺動体ガイド凹部と協働して挟み付ける摺動体支持突部が設けられるとともに、
他方のカバーは、利用者による取り外し操作可能に本体ケースに連結され、
かつ本体ケースには、前記他方のカバーの取り外し状態で外部に露出し、電子部品に給電する交換可能なバッテリを装着するバッテリ装着開口が形成される請求項1、2または3記載の電子キー。
【請求項5】
本体ケースは、前記表裏カバーにより形成される外郭に開設されて前記キー収納空間へのメカニカルキーの挿入口となるキー挿入口の近傍位置に初期作動係止爪を備え、
該初期作動係止爪には、表裏いずれかのカバーが、前記キー収納空間に先端部のみ挿入したメカニカルキーへのキー操作回転により係止解除可能に弾発係止する請求項1から4のいずれかに記載の電子キー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子キーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子信号を出力して施錠対象を施解錠操作する電子キーとしては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この従来例において、電子キーは、バッテリにより駆動されて施錠操作信号を出力する制御回路を格納した本体部に表裏カバーを連結して形成される。
【0004】
裏カバーはバッテリ交換のために分離することが可能であり、さらに、電子キー内部にはバッテリ切れ等に備えてメカニカルキーが格納される。本体部には、挿入されたメカニカルキーを係止して電子キーからの脱離を防止するためのキー係止部材(係止摺動体)が装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来例において、裏カバーを固定しない状態において係止摺動体が露出状態となり、組立作業時に係止摺動体が不用意に脱落することがあり、組立作業性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたもので、組み立てに際して係止摺動体の不用意な脱落を防止して組立作業性を向上させることのできる電子キーの提供目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記目的は、
電子部品1を保持する本体ケース2を表裏カバー3、4により覆って形成され、メカニカルキー5を保持するキー収納空間6と、メカニカルキー5に係脱する係止摺動体7とを内部に収容した電子キーであって、
前記本体ケース2には、前記キー収納空間6に隣接配置され、圧縮コイルスプリング8により付勢される係止摺動体7を底壁部9の支承面10a上に支承し、該係止摺動体7を前記キー収納空間6内にガイドする摺動体ガイド凹部10と、
前記圧縮コイルスプリング8による付勢力に抗して先端部がキー収納空間6内に所定寸法突出する突出位置に係止摺動体7を保持するストッパ11と、
係止摺動体7のキー収納空間6内への突出部の浮き上がり方向の移動を規制して摺動体ガイド凹部10からの離脱を防止する規制部12とが形成され、
前記規制部12による係止摺動体7の浮き上がり方向への規制範囲を該係止摺動体7のキー収納空間6への突出側先端部に限定して係止摺動体7が支承面10a上で傾斜姿勢を取ることを可能にした電子キーを提供することにより達成される。
【0009】
電子キーは、本体ケース2を表裏カバー3、4によって覆って形成され、内部には、メカニカルキー5を収容するためのキー収納空間6と、キー収納空間6に収容されたメカニカルキー5に係止してメカニカルキー5の離脱を防ぐための係止摺動体7とが収容される。
【0010】
係止摺動体7はキー収納空間6に隣接して配置される摺動体ガイド凹部10の底壁部9上に支承されてキー収納空間6に向けてガイドされ、キー収納空間6に臨む一端に対する反対端に配置される圧縮コイルスプリング8の付勢力により先端がキー収納空間6内に突出する。
【0011】
キー収納空間6内への突出寸法を規制するために、本体ケース2にはストッパ11が設けられており、装着された係止摺動体7はストッパ11に圧接状態となる。
【0012】
規制部12は係止摺動体7のキー収納空間6内への突出部の浮き上がり方向への移動を移動を規制し、結果、係止摺動体7は、先端部を除く部分が摺動体ガイド凹部10の底壁部9に支承されるとともに、先端部、すなわち、キー収納空間6内への突出部が摺動体ガイド凹部10による被支承面に対する反対面方向に配置される規制部12により当該方向への移動が規制される。
【0013】
この結果、
図7(b)に示すように、圧縮コイルスプリング8による圧接力と、係止摺動体7に対する本体ケース2の支承面10a、および規制部12による移動範囲の規制により、一旦装着された係止摺動体7は、脱離を意図した外力を加えない限り、その状態を保持することとなり、接触、振動等による不用意な脱離が効果的に防止される。
【0014】
また、係止摺動体7の支承面10aによる被支承面に対する反対面への移動範囲の規制を係止摺動体7のキー収納空間6への突出側先端部に限ることにより、係止摺動体7の装着作業に際して、係止摺動体7は支承面10a上で傾斜姿勢を取ることが可能になるために、例えば、
図8(a)に示すように、傾斜姿勢で圧縮コイルスプリング8を撓ませた後、底壁部9上に支承される姿勢に倒伏させて規制部12を潜り抜けさせることにより、簡単に係止摺動体7の組付けを行うことができる。
【0015】
この場合、圧縮コイルスプリング8と係止摺動体7の端部とを一方が他方に嵌合するように相互に連結させ、かつ、嵌合深さを、圧縮コイルスプリング8を係止摺動体7に対して曲げる力を負荷させた状態で圧縮コイルスプリング8が係止摺動体7から離脱しない寸法に設定すると、係止摺動体7に摺動体ガイド凹部10の底壁部9から浮き上がる負荷が加えられた場合でも、容易に係止摺動体7が摺動体ガイド凹部10から脱落することがなくなる。
【0016】
上述した係止摺動体7への負荷は、例えば、
図7(b)に示すように、係止摺動体7に操作用突部7aを設け、摺動体ガイド凹部10の底壁部9から外部に突出させるような場合に発生することがある。
【0017】
さらに、本体ケース2に表裏いずれかのカバーと協働してキー収納空間6を画成するキー支持凹部13を形成する場合には、該キー支持凹部13のメカニカルキー5の幅広面を支持する面を利用することが可能であり、このようにすると、格別規制部12を設定する必要がないために、構造が簡単になる。
【0018】
また、電子キーは、
表裏いずれかのカバーには、係止摺動体7を摺動体ガイド凹部10と協働して挟み付ける摺動体支持突部14が設けられるとともに、
他方のカバーは、利用者による取り外し操作可能に本体ケース2に連結され、
かつ本体ケース2には、前記他方のカバーの取り外し状態で外部に露出し、電子部品1に給電する交換可能なバッテリ15を装着するバッテリ装着開口16が形成されるように構成することができる。
【0019】
この場合、バッテリ交換のために一方のカバーを取り外した状態で、係止摺動体7の主要部は被支承面が摺動体ガイド凹部10の底壁部9により覆われ、さらに、その反対面は取り除かれないカバーの摺動体支持突部14により押さえられる。
【0020】
したがって、バッテリ交換時に利用者の操作によって係止摺動体7が脱落することを完全に防ぐことができる。
【0021】
さらに、
本体ケース2は、前記表裏カバー3、4により形成される外郭に開設されて前記キー収納空間6へのメカニカルキー5の挿入口となるキー挿入口17の近傍位置に初期作動係止爪18を備え、
該初期作動係止爪18には、表裏いずれかのカバーが、前記キー収納空間6に先端部のみ挿入したメカニカルキー5へのキー操作回転により係止解除可能に弾発係止する電子キーを構成した場合には、メカニカルキー5をカバー分離の道具として利用することができるために、使い勝手が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、組み立てに際して係止摺動体の不用意な脱落を防止することができるために、組立作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図2】
図1の断面図で、(a)は
図1(a)の2A-2A線断面図、(b)は
図1(b)の2B-2B線断面図である。
【
図4】本体ケースを示す図で、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は底面図である。
【
図5】本体ケースを示す図で、(a)は一部を切り欠いて示す背面図、(b)は(a)の5B-5B線断面図である。
【
図6】係止摺動体を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の6B方向矢視図、(c)は(a)の6C方向矢視図、(d)は(b)の6D方向矢視図である。
【
図7】ラッチの装着工程を示す図で、(a)は正面図、(b)は装着後の断面図である。
【
図8】ラッチの装着方法を示す図で、(a)は装着操作途中を示す斜視図、(b)は装着完了状態を示す斜視図である。
【
図9】メカニカルキーの格納状態を示す図で、(a)は正面図、(b)は係止を解除した状態の(a)の9B-9B線断面図である。
【
図10】裏カバーの取り外し操作を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の10B-10B線断面図、(c)は取り外しが完了した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1以下に示すように、電子キーは、本体ケース2の表裏両面を表裏カバー3、4により覆って形成される。表カバー3には施解錠操作を指示するための施錠ボタン19、および解錠ボタン20が配置され、裏カバー4には、後述する係止摺動体7の操作用突部7aがスライド操作可能に配置される。なお、本明細書において、施解錠ボタンが配置される側を「表側」、反対面を「裏側」とし、「上下」、「側方」は
図1(a)を基準とする。
【0025】
表裏カバー3、4の下端部には、電子キー内に収容されるメカニカルキー5の操作頭部5aを指で挟んで取り出すことができるように、キー取り出し凹部21が形成され、メカニカルキー5を挿入した状態で、メカニカルキー5の操作頭部5aは表裏カバー3、4のキー取り出し凹部21を補完し、全体として長円形状となる。
【0026】
図2、3に示すように、本体ケース2は表面側に向けて開放される基板収容部2aを備え、この基板収容部2aに発信回路等を実装した実装基板(電子部品1)が固定される。電子部品1は、交換可能なバッテリ15により駆動され、
図4、5に示すように、本体ケース2にはバッテリ装着開口16が開設されるとともに、実装基板1の裏面には、上記バッテリ装着開口16から挿入されるバッテリ15に接触する電源端子1aが配置される。
【0027】
図5(a)に示すように、本体ケース2の基板収容部2aの裏面壁には、バッテリ15の位置決めを行うためのバッテリ位置決め突部2bが設けられる。
【0028】
また、上記実装基板1の表面にはスイッチ1bが実装されており、この実装面を覆うようにラバー22が固定され、本体ケース2に連結される表カバー3とラバー22との間に施解錠ボタン19、20を一体成形したボタンプレート23が介装される(
図3参照)。
【0029】
さらに、
図4に示すように、上記本体ケース2には、表カバー係止爪2cと裏カバー係止爪2dとが形成されており、表カバー係止爪2cに表カバー側係止爪3aを係止させて表カバー3が、裏カバー係止爪2dに裏カバー側係止爪4bを係止させて裏カバー4が各々装着される(
図2参照)。
【0030】
後述するように、本例において上記バッテリ交換は裏カバー4を外して行われ、利用者による取り外し操作が容易なように、裏カバー4は取り外し操作が容易に行われる程度の連結強度で、表カバー3は、利用者による不用意な取り外しが行われない連結強度に設定される。
【0031】
図2(a)に示すように、表カバー3を装着した状態で上記ボタンプレート23は支点23aを中心にユーザにより押圧操作された側のボタンが撓んで対応するスイッチ1bに対する押動操作が行われる。
【0032】
また、裏カバー4の正面壁には、スポンジ材からなるパッキン24が貼り付けられ、本体ケース2の裏カバー係止爪2dと係止爪18との圧接状態を保持し、ガタツキが防止される。
【0033】
さらに、
図4に示すように、上記本体ケース2にはキー支持凹部13が形成される。キー支持凹部13はメカニカルキー5を支持するキー支持壁13aを有して裏面側に開放されており、上記裏カバー4を連結した状態で電子キーの内部には、キー支持凹部13と裏カバー4の表面側壁面によって、
図4(a)、(b)でハッチングを施して示すようにキー収納空間6が画成される。また、
図4(c)に示すように、キー収納空間6は、裏カバー4の下端に開設されたキー挿入口17から電子キー外部に開放される。
【0034】
図4、5に示すように、上記本体ケース2には、摺動体ガイド凹部10が形成される。摺動体ガイド凹部10は本体ケース2の基板収容部2aの下方で、キー支持凹部13の下端部の側方に形成され、底壁部9と、底壁部9の上下端から表面方向に立設されるガイド壁10bと、バネ受け壁10cとを有してトレイ形状に形成される。
【0035】
摺動体ガイド凹部10の底壁部9は上記キー支持凹部13の裏面側壁面より裏面方向に係止摺動体7の厚さ寸法程度下がっており、バネ受け壁10cに対する反対端がキー収納空間6に向けて開放されることから、摺動体ガイド凹部10の底壁部9上の空間はキー収納空間6に連通する。
【0036】
また、摺動体ガイド凹部10の底壁部9の表面側壁面は係止摺動体7の支承面10aとして使用され、摺動体ガイド凹部10の底壁部9の中央部には、係止摺動体7の操作用突部7aが挿通する操作開口10dが開設される。
【0037】
図5(a)に示すように、バネ受け壁10cには、後述する圧縮コイルスプリング8の直径よりやや大きな間隔で表裏方向に延びる2条のバネ受け突条10eが突設される。
【0038】
上記摺動体ガイド凹部10には係止摺動体7が装着される。
図6に示すように、係止摺動体7は、スライダ片7bの裏面中央部に上述した操作用突部7aを突設して形成され、スライダ片7bの一端には先端にガイド辺25aとストッパ辺25bとを備えたキー係止部25が設けられる。
【0039】
また、キー係止部25に対する反対端には、スプリング嵌合孔7cが設けられ、
図7に示すように、圧縮コイルスプリング8が嵌合される。本例においてスプリング嵌合孔7cは、好適なばね定数を得るために必要なコイル外径を有する圧縮コイルスプリング8をスライダ片7bの厚さを増加させることなく収容することができるように、スライダ片7bの表面壁に開放された形状とされる。
【0040】
圧縮コイルスプリング8は、スプリング嵌合孔7cのスライダ片7bの表面方向への開放部7dから外部に飛び出さないように、コイル外径が開放部7dの幅寸法に比して大きく、かつ、スプリング嵌合孔7cに嵌合させた状態で、
図7(b)に示すように、圧縮コイルスプリング8の外周がスライダ片7bの表面から突出しない寸法に形成される。
【0041】
以上のように構成される係止摺動体7は、スライダ片7bの裏面、正確には、
図6(d)においてハッチングを施して示されるように、スライダ片7bの平面部に形成される被支承面を、
図7(a)においてハッチングで示す摺動体ガイド凹部10の底壁部9の表面に形成される支承面10a上に載せて装着される。
【0042】
係止摺動体7の装着は、
図8(a)に示すように、係止摺動体7に圧縮コイルスプリング8を嵌合させた状態で圧縮コイルスプリング8の一端をバネ受け壁10cに当接させて係止摺動体7の先端を浮き上がらせた状態に保持した後、圧縮コイルスプリング8を圧縮させながら先端を押し込むようにしてキー支持凹部13のキー支持壁13aを超えてキー収納空間6に対応する領域に潜り込ませることにより行われる。
【0043】
図8(a)の状態から係止摺動体7のキー係止部25を押さえ付けてキー収納空間6に対応する領域に潜り込ませる際に、
図7(b)に示す水平姿勢を超えてさらに押し込むことができるようにして(
図7(b)においてキー係止部25の先端が裏面側に下がった姿勢)、円滑な潜り込ませ操作を可能にするために、係止摺動体7のキー係止部25は、スライダ片7bの一般部に比して、裏面側が削られたやや薄肉状に形成される。
【0044】
以上のように装着された係止摺動体7は、
図7(b)に示すように、圧縮コイルスプリング8の付勢力によってキー収納空間6側に付勢され、操作用突部7aがストッパ11となる操作開口10dのキー収納空間6側の辺縁に当接してキー係止部25がキー収納空間6内に突出する突出位置に保持される。
【0045】
係止摺動体7が突出位置にある状態で、キー支持壁13aの摺動体ガイド凹部10に隣接する辺縁部は係止摺動体7の先端、すなわち、キー係止部25の表面方向(
図7(b)における上方)への移動を規制する規制部12として機能し、キー係止部25の浮き上がり方向への移動を規制する。
【0046】
この規制部12の作用とストッパ11への操作用突部7aの圧接による移動に対する抵抗力とにより、一旦組み付けられた係止摺動体7は脱離を意図した外力を加えない限り、その状態を保持することとなり、接触、振動等による不用意な脱離が効果的に防止される。
【0047】
以上のように係止摺動体7が組み込まれた本体ケース2には、表裏カバー3、4が連結され、さらに、メカニカルキー5が収納されて電子キーが形成される。
【0048】
図9(a)に示すように、バッテリ装着開口16は本体ケース2の裏面側に向けて開放されており、利用者によるバッテリ15の交換を可能にするために、本体ケース2の裏面側を覆う裏カバー4は利用者による分離操作が可能に形成される。裏カバー4には、係止摺動体7の操作用突部7aを操作するための操作用開口4aが開設される。
【0049】
また、上述したように、裏カバー4を装着することにより、裏カバー4の表面壁と本体ケース2のキー支持凹部13との間にはキー挿入口17を介して外部に開放されるキー収納空間6が形成され、このキー収納空間6内にメカニカルキー5が収容される。
【0050】
メカニカルキー5は、電子部品1による施解錠操作に支障がある際に図示しない非常用錠装置のシリンダ錠を操作するために用意されるもので、
図9に示すように、解錠コードが形成されるブレード部5bの一端に操作頭部5aを有しており、ブレード部5bと操作頭部5aとの境界部に被係止部26が形成される。
【0051】
被係止部26は、
図9(a)に示すように、ガイド辺26aとストッパ辺26bとを備え、メカニカルキー5をキー挿入口17から挿入すると、ガイド辺26aが係止摺動体7のガイド辺25aに当接する。この後、さらにメカニカルキー5を挿入すると、係止摺動体7は摺動体ガイド凹部10方向に移動し、その後、係止摺動体7は圧縮コイルスプリング8の復元力により原位置に復帰し、ストッパ辺25b、26b同士が係止して、以後、メカニカルキー5の離脱が規制される。
【0052】
図2(b)、および
図9(a)に示すように、係止摺動体7は原位置に復帰するまえにメカニカルキー5に衝接し、以後、メカニカルキー5に付勢力を作用させることによって、メカニカルキー5をキー支持凹部13の立ち上がり壁13bに押し付け、メカニカルキー5のキー収納空間6内でのがたつきが防止される。
【0053】
メカニカルキー5の取り出しは、
図9(b)に示すように、操作用開口4aから露出する操作用突部7aをスライド操作して行われる。操作用突部7aをスライド操作すると係止摺動体7のキー係止部25のメカニカルキー5の被係止部26への係止が解除され、その後、メカニカルキー5の操作頭部5aを摘んで電子キーから引き抜くことができる。
【0054】
さらに、バッテリ交換操作時の裏カバー4の分離操作も取り外したメカニカルキー5を使用して行うことができる。分離操作を容易にするために、
図10に示すように、本体ケース2の裏カバー係止爪2dの一つはキー収納空間6のキー挿入口17近傍に配置されて初期作動係止爪18とされ、さらに、本体ケース2のキー支持凹部13のキー支持壁13aはキー挿入口17近傍まで延長されてキー支持部27が形成される。
【0055】
したがって、
図10に示すように、メカニカルキー5のブレード部5bの先端をキー収納空間6に差し込んだ状態でメカニカルキー5を
図10(b)において矢印で示すように施解錠操作時に行われるキー操作回転を与えると、まず、ブレード部5bの幅広面と幅狭面とにより形成される稜線がキー支持凹部13のキー支持壁13aに当接し(当接部を
図10(a)において太線で、
図10(b)において白丸で示す。)。この後、さらにメカニカルキー5を回転させると、ブレード部5bのキー支持壁13aとの当接部は
図10において左側に移動しながら、ブレード部5bの当接稜線に対向する稜線が裏カバー4を押し上げ、直近に位置し、初期作動係止爪18に係止された裏カバー側係止部4bの係止が解除される。
【0056】
一旦、上記裏カバー側形成部4bの係止が解除されると、係止解除により発生した裏カバー4の剥離箇所を広げるようにすることにより、裏カバー4を本体ケース2から取り外すことができる。
【0057】
メカニカルキー5へのキー操作回転に際し、ブレード部のキー支持壁13aとの接触稜線部は、キー支持壁13a、さらにこれを延長したキー支持部27に支持されており、表カバー3に力が加えられることがない。この結果、バッテリ交換操作時に表カバー3に剥離力が負荷されて表カバー3が取り外されることがない。
【0058】
また、裏カバー4を取り外した状態であっても、
図10(c)に示すように、係止摺動体7のスライダ片7bは裏面が本体ケース2の摺動体ガイド凹部10の底壁部9に覆われて外部に露出することがなく、さらに、スライダ片7bの表面は表カバー3に突設された摺動体支持突部14に支えられているため、振動等による場合はもちろん、例えば利用者による操作用突部7aを押し込むような操作があっても係止摺動体7が脱落することがない。
【符号の説明】
【0059】
1 電子部品
2 本体ケース
3 表カバー
4 裏カバー
5 メカニカルキー
6 キー収納空間
7 係止摺動体
8 圧縮コイルスプリング
9 底壁部
10 摺動体ガイド凹部
11 ストッパ
12 規制部
13 キー支持凹部
14 摺動体支持突部
15 バッテリ
16 バッテリ装着開口
17 キー挿入口
18 初期作動係止爪