(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20241030BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G06F1/16 312L
H05K5/02 J
G06F1/16 312G
(21)【出願番号】P 2021007109
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福永 寿行
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-052624(JP,A)
【文献】特開平09-187721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
薬剤粒と塗料とを含み、前記筐体の外面に形成される塗膜と、を備え、
前記外面には、凸部の突端から前記塗膜の表面までの距離が前記薬剤粒の粒径以上に設定されるとともに、凹部の底部から凸部の突端までの高さが薬剤粒径以上となるように設定された凹凸が形成され、
前記塗料の比重は、前記薬剤粒の比重以上である、
電子機器。
【請求項2】
前記塗料は透明である、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記薬剤粒は透明である、
請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記薬剤粒は、抗ウィルスポリマーである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末、パーソナルコンピュータ等の電子機器は、ユーザが手で触れて操作する装置であることから、衛生的であることが好ましい。特許文献1では、殺菌効果と脱臭効果等を発揮することができる剤が提案されている。特許文献2では、枠体表面を抗菌剤が添加された塗料にて塗装した携帯情報処理装置が提案されている。特許文献3では、表面に光触媒または抗菌部材を含んだ抗菌剤を塗布した電子機器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-197235号公報
【文献】特開2001-022704号公報
【文献】特開平9-252185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗菌剤や抗ウィルスポリマー等の薬剤粒を混入させた塗料を電子機器の筐体に塗布する場合、当該薬剤粒がその効果を発揮するには塗膜の表面に薬剤粒が存在することが好ましい。しかしながら、薬剤粒を混入させた塗料を電子機器の筐体表面に塗布しても、塗料が固化するまでの間に塗料内部に薬剤粒が沈殿してしまうことが多い。そのため、薬剤粒を塗料に混入させても、薬剤粒による効果が低減してしまうことがあった。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、塗料に混入させた薬剤粒の効果が低減することを抑制することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような電子機器によって例示される。本電子機器は、筐体と、薬剤粒と塗料とを含み、筐体の外面に形成される塗膜と、を備える。筐体の外面には、凸部の突端から塗膜の表面までの距離が薬剤粒の粒径以上に設定されるとともに、凹部の底部から凸部の突端までの高さが薬剤粒径以上となるように設定された凹凸が形成される。塗料の比重は、薬剤粒の比重以上である。
【発明の効果】
【0007】
本電子機器は、塗料に混入させた薬剤粒の効果が低減することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るスマートフォンの外観を例示する図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るスマートフォンの塗膜を説明する第1の図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るスマートフォンの塗膜を説明する第2の図である。
【
図4】
図4は、塗料及び抗ウィルスポリマーを透明とした場合における光の反射を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第1比較例に係るスマートフォンの塗膜を説明する図である。
【
図6】
図6は、第2比較例に係るスマートフォンの塗膜を説明する図である。
【
図7】
図7は、第1変形例に係るスマートフォンの外面を説明する図である。
【
図8】
図8は、第2変形例に係るスマートフォンの塗膜を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。実施形態に係る電子機器は、例えば、以下の構成を備える。本電子機器は、筐体と、薬剤粒と塗料とを含み、筐体の外面に形成される塗膜と、を備える。筐体の外面には、凸部の突端から塗膜の表面までの距離が薬剤粒の粒径以上に設定されるとともに、凹部の底部から凸部の突端までの高さが薬剤粒径以上となるように設定された凹凸が形成される。塗料の比重は、薬剤粒の比重以上である。
【0010】
塗料に混入させた薬剤粒がその効果を発揮するには、薬剤粒が塗膜の表面に浮き出させることが好ましい。本電子機器では、塗料の比重が薬剤粒の比重以上であることから、塗料に混入された薬剤粒は塗膜の表面に分布しやすい。塗膜の表面に分布する薬剤粒は、筐体の外面に形成された凹凸によって一か所に凝集することが阻害される。そのため、このような電子機器では、塗膜表面に散らばるように薬剤粒を分布させることができる。薬剤粒を塗膜表面に散らばるように分布させることで、本電子機器は、塗料に混入させた薬剤粒の効果が低減することを抑制することができる。
【0011】
以下、図面を参照して上記電子機器をスマートフォンに適用した実施形態についてさらに説明する。
図1は、実施形態に係るスマートフォンの外観を例示する図である。
図1は、一方から見た外観(前面側の外観とする)を例示する。スマートフォン100は、板状の筐体110を有する。筐体110の前面と背面との間の距離(厚み)は、前面または背面の外形寸法と比較して短い。
図1で紙面に向かって上側が筐体110の上側であり、紙面に向かって下側が筐体110の下側であるとする。
【0012】
筐体110の前面には、タッチスクリーン123が設けられる。タッチスクリーン123は、ディスプレイとディスプレイ全面に重畳して配置されたタッチパネルを含む。スマートフォン100は、タッチスクリーン123を備えることで、指等によるタッチ操作を実現することができる。タッチスクリーン123の上側中央の位置にスピーカー121が設けられる。タッチスクリーン123の下側中央の位置にマイクロフォン122が設けられる。
【0013】
筐体110の外面には、塗膜200が形成される。塗膜200は、筐体110の外面を下地として塗料が塗られることで形成される。
図2は、実施形態に係るスマートフォンの塗膜を説明する第1の図である。
図2では、塗料201の比重が抗ウィルスポリマー202の比重よりも大きい場合が例示される。塗膜200を形成する塗料201には、抗ウィルスポリマー202が混入される。抗ウィルスポリマー202は、球状に形成され、その粒径は約3μmである。塗料に対する抗ウィルスポリマー202の割合は、例えば、重量パーセント濃度で9.6%以上である。抗ウィルスポリマー202は、「薬剤粒」の一例である。
【0014】
塗料201は、例えば、樹脂系の塗料である。塗料201は、その比重が抗ウィルスポリマー202の比重以上であるものが採用される。塗料201としては、例えば、ウレタンアクリレートのUV塗料を採用することができる。
【0015】
有機合成により作られる抗ウィルスポリマー202と、ウレタンアクリレートより作られる塗料201の仕様は、例えば、以下の表1の通りである。
【表1】
【0016】
表1を参照すると、UV塗料の比重が1.15であり、抗ウィルスポリマー202の比重が1.05であることから、UV塗料の比重が抗ウィルスポリマー202の比重以上であることが理解できる。UV塗料の比重が抗ウィルスポリマー202の比重より大きいことにより、抗ウィルスポリマー202が塗膜表面203近傍に分布しやすくなる。
【0017】
筐体110の外面には、全面に渡って波状の凹凸が形成されている。凸部の突端111から塗膜200の塗膜表面203までの高さは、抗ウィルスポリマー202の粒径と略等しくなるように設定される。すなわち、抗ウィルスポリマー202の粒径が略3μmの場合には、突端111から塗膜表面203までの高さは、略3μmとなる。また、凹部の底部112から塗膜表面203までの高さは、筐体110に対する塗膜200の密着性を考慮して、略15μmに設定される。そのため、底部112から突端111までの高さは12μmとなる。なお、底部112から突端111までの高さは12μmに限定されるわけではない。底部112から突端111までの高さは、抗ウィルスポリマーの粒径以上に設定されればよい。また、隣り合った突端111間の距離(または隣り合った底部112間の距離)は、例えば、30μmに設定される。以下、本明細書において、隣り合った突端111間の距離(または隣り合った底部112間の距離)を凹凸ピッチとも称する。このように凹凸が配置されることで、塗膜表面203に分布する抗ウィルスポリマー202が一か所に凝集することが抑制される。
【0018】
図3は、実施形態に係るスマートフォンの塗膜を説明する第2の図である。
図3では、塗料201の比重と抗ウィルスポリマー202の比重とが略等しい場合が例示される。塗料201の比重と抗ウィルスポリマー202の比重とが略等しいことから、抗ウィルスポリマー202は、塗膜表面203近辺に分布されるものがある一方で、塗膜200内に沈殿するものもある。しかしながら、筐体110の外面に波状に配置された凹凸によって抗ウィルスポリマー202が塗膜表面203に分布しやすくなっている。
【0019】
ここで、塗料201及び抗ウィルスポリマー202は、透明であってもよい。
図4は、塗料及び抗ウィルスポリマーを透明とした場合における光の反射を模式的に示す図である。
図4では、光の進行方向が矢印で例示される。筐体110の外面には、上記の通り凹凸が形成される。また、塗膜200の塗膜表面203には抗ウィルスポリマー202が分布している。そのため、塗料201が透明である場合、スマートフォン100に照射された光は、筐体110の外面に形成された凹凸や抗ウィルスポリマー202によって、乱反射される。そのため、抗ウィルスポリマー202が塗膜表面203に存在していても、抗ウィルスポリマー202が目立ちにくくなり、スマートフォン100の美観を損なうことが抑制される。抗ウィルスポリマー202も透明であると、抗ウィルスポリマー202がより一層目立たなくなるため、スマートフォン100の美観上より好ましくなる。なお、塗料201及び抗ウィルスポリマー202を透明にする場合、可視光を透過可能であれば塗料及び抗ウィルスポリマー202が有色であってもよい。すなわち、塗料201及び抗ウィルスポリマー202は、無色透明であってよいし、半透明であってもよい。
【0020】
<比較例>
以下、図面を参照して比較例について説明する。実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図5は、第1比較例に係るスマートフォンの塗膜を説明する図である。第1比較例では、筐体910は、その外面に凹凸が形成されない
。また、塗料901の比重は、抗ウィルスポリマー202の比重よりも小さい。そのため、抗ウィルスポリマー202は、塗膜900内に沈殿してしまい、塗膜表面903に存在する抗ウィルスポリマー202は少なくなる。
【0021】
図6は、第2比較例に係るスマートフォンの塗膜を説明する図である。第2比較例は、筐体110の外面に実施形態と同様の凹凸が形成されている点で、第1比較例とはことなる。第2比較例では、一部の抗ウィルスポリマー202が突端111によって塗膜表面903に押し上げられる。しかしながら、抗ウィルスポリマー202の比重が塗料901の比重よりも大きいため、抗ウィルスポリマー202の大部分は、底部112近傍に沈殿する。
【0022】
<実施形態の作用効果>
本実施形態に係るスマートフォン100では、筐体110の外面に波状の凹凸が形成される。このような凹凸により、抗ウィルスポリマー202が一か所に凝集することが抑制される。また、塗料201の比重が抗ウィルスポリマー202の比重以上となることで、抗ウィルスポリマー202が塗料201内に沈殿してしまうことが抑制される。そのため、本実施形態によれば、凝集を抑制しつつ抗ウィルスポリマー202を塗膜表面203に分布させることができるため、抗ウィルス効果を高めることができる。
【0023】
<第1変形例>
実施形態では、筐体110の外面に一定の凹凸ピッチで凹凸が形成された。第1変形例では、凹凸ピッチ及び形状が不揃いな凹凸が形成される構成について図面を参照して説明する。なお、実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
図7は、第1変形例に係るスマートフォンの外面を説明する図である。第1変形例では、外面に形成される凹凸の凹凸ピッチが一定ではない。また、第1変形例では、凹凸の形状も一定ではない。さらに、突端111と塗膜表面203までの高さや底部112から塗膜表面203までの高さも一定ではない。しかしながら、第1変形例において、突端111と塗膜表面203までの高さは、抗ウィルスポリマー202の粒径以上の範囲内で設定される。このような範囲で突端111と塗膜表面203までの高さが設定されることで、抗ウィルスポリマー202が塗膜表面203に存在しても、塗膜表面203が凸凹になることが抑制される。
【0025】
また、第1変形例において、底部112から塗膜表面203までの高さは、15μm以上の範囲内で設定される。このような範囲で底部112から塗膜表面203までの高さが設定されることで、筐体110に対する塗膜200の密着性を高めることができる。また、凹凸ピッチは、30μm以上の範囲で設定される。このような範囲で凹凸ピッチが設定されることで、抗ウィルスポリマー202の塗料201内への沈殿を抑制しつつ、塗膜表面203近傍における抗ウィルスポリマー202の凝集を抑制することができる。
【0026】
<第2変形例>
実施形態では、筐体110の外面に一層の塗膜200が形成された。第2変形例では、2層の塗膜が形成される構成について説明する。以下、図面を参照して第2変形例について説明する。なお、実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0027】
図8は、第2変形例に係るスマートフォンの塗膜を説明する図である。第2変形例では、塗膜200と筐体110の外面との間に塗膜200aが形成される。すなわち、第2変形例では、筐体110の外面に対して、塗膜200と塗膜200aの2層の塗膜が形成さ
れる。塗膜200aを形成する塗料201aと塗膜200を形成する塗料201とは、同じ塗料であってもよいし、互いに異なる塗料であってもよい。
【0028】
第2変形例では、筐体110の外面に形成される凹凸の間隔を実施形態から変更している。具体的には、実施形態において30μmに設定された凹凸ピッチは、第1変形例では60μmに設定される。すなわち、第2変形例では、筐体110の外面に形成される凹凸が実施形態よりも緩やかに形成される。なお、実施形態及び第2変形例のいずれにおいても、隣り合った突端111間の距離(または隣り合った底部112間の距離)は、30μm以上であれば、距離が離れていてもよい。また凹凸の形状は一般的に加工表面粗さといわれる形状でも良い。
【0029】
また、第2変形例において、底部112から塗膜200aの塗膜表面203aまでの高さ(塗膜200aの厚さ)及び塗膜表面203aから塗膜表面203までの高さ(塗膜200の厚さ)は、いずれも15μmに設定される。
【0030】
第2変形例のように、塗膜が2層の場合であっても、塗料201の比重が抗ウィルスポリマー202の比重以上であれば、塗膜表面203により多くの抗ウィルスポリマー202を配置させることができる。そのため、筐体110の塗装を2層以上としても、抗ウィルスポリマー202による抗ウィルス効果を高めることができる。
【0031】
<その他の変形>
筐体110の外面に形成される凹凸は、筐体110の外面全体にわたって形成されてもよいし、筐体110の外面における一部の領域に形成されてもよい。特に抗ウィルスポリマー202の効果を特に発揮させたい領域に凹凸を形成し、他の領域には凹凸を設けないこととしてもよい。
【0032】
本実施形態では、薬剤粒の一例として抗ウィルスポリマー202を挙げたが、薬剤粒が抗ウィルスポリマー202に限定されるわけではない。薬剤粒としては、例えば、顆粒状の抗菌剤や芳香剤等を挙げることができる。
【0033】
本実施形態では、電子機器の一例としてスマートフォン100を挙げたが、本実施形態を適用可能な電子機器がスマートフォン100に限定されるわけではない。電子機器としては、例えば、パーソナルコンピュータ、サーバ装置、携帯電話、ウェアラブルコンピュータ等の情報処理装置を挙げることができる。また、電子機器としては、キーボード、マウス、トラックボール、スタイラスペン、スピーカー、イヤフォン、ディスプレイ等の入出力機器を挙げることができる。
【0034】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0035】
100:スマートフォン
110、910:筐体
111:突端
112:底部
121:スピーカー
122:マイクロフォン
123:タッチスクリーン
200、200a、900:塗膜
201、201a、901:塗料
202:抗ウィルスポリマー
203、203a、903:塗膜表面