(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 13/15 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
F24F13/15 A
(21)【出願番号】P 2021016666
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅也
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-147650(JP,U)
【文献】国際公開第2010/119672(WO,A1)
【文献】特開2018-031575(JP,A)
【文献】中国実用新案第210980094(CN,U)
【文献】特開2014-119137(JP,A)
【文献】特開2014-145499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0400342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が吹き出される吹出口および前記吹出口に空気を導く風路を有する筐体と、
前記風路において向きを変えることにより、前記吹出口から吹き出される空気を左右方向に偏向させる複数の風向板と、を備え、
前記複数の風向板は、前記風路の左右の端を形成する前記筐体の壁面に最も近い第1風向板と、第2風向板とを含み、
前記複数の風向板が空気を最も大きく前記壁面側へ偏向させる方向に向いた状態において、前記第1風向板は、前記第2風向板よりも、空気を偏向させる度合いが小さ
く、
空気調和機は、前記第1風向板および前記第2風向板が連動するように前記第1風向板の第1可動部と前記第2風向板の第2可動部とを連結する連結部材をさらに備え、
第1風向板は、前記第2風向板と連動するときに、前記第1可動部に前記連結部材を介して加わる力によって変形しない剛性を有するとともに、第1支点を軸として向きを変える第1可動部を有し、
第2風向板は、弾性変形する弾性変形部と、当該弾性変形部が変形し始める始点となる第2支点を軸として向きを変える第2可動部とを有し、
前記第1可動部において前記連結部材と連結される第1連結部と前記第1支点との間の第1距離が、前記第2可動部において前記連結部材と連結される第2連結部と前記第2支点との間の第2距離と等しいことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記第1風向板が最も大きく空気を偏向させる第1偏向角度は、前記第2風向板が最も大きく空気を偏向させる第2偏向角度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記第1風向板は、前記第2風向板よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記第1風向板を直接駆動する駆動部をさらに備え、
前記第1風向板は、前記第2風向板と連動するときに、前記第1可動部に前記連結部材を介して加わる力によって変形しない剛性を有していることを特徴とする請求項
1に記載の空気調和機。
【請求項5】
第2風向板は弾性変形することを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹き出す空気を偏向する風向板を備える空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機には、吹出口に吹き出される空気の左右方向の向きを変える風向板が、吹出口に至る風路において吹出口付近に設けられている。一般に、このような空気調和機では、複数の風向板が1つの駆動機構によって駆動される。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の風向板によって構成される風向板列の端部側に駆動力伝達部が配置されている空気調和機が開示されている。駆動力伝達部は、モータの駆動力によって回動するキャビティ部と、キャビティ部と一体に回動する駆動バーとを有している。駆動バーは、連結バーによって複数の風向板と連結されている。
【0004】
特許文献1の空気調和機では、駆動力伝達部が、風向板列の端部、即ち風路の左右の端を形成する筐体の壁面の近傍に配置されている。このため、壁面に最も近い風向板が壁面から離れて配置されることになる。壁面付近を通る空気は、その向きが当該風向板によって変えられることなく、そのまま真っ直ぐ吹き出される。真っ直ぐ吹き出された空気は、壁面に最も近い風向板によって壁面側に向きが変えられた空気と吹出口の付近で衝突することにより、空気の流れを乱してしまう。この結果、吹き出された一部の空気が所望の方向に送られなくなるため、空気調和の効率を低下させることになる。
【0005】
特許文献2には、上記の駆動バーを風向板に置き替えたような空気調和機が開示されている。このような空気調和機では、駆動バーを兼ねた風向板を上記の壁面に近づけて配置することができる。これにより、壁面付近を通る空気の向きを当該風向板によって変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-48791号公報
【文献】特開2020-98051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の空気調和機では、壁面に最も近い風向板が他の風向板と同じ大きさに形成されているため、当該風向板を壁面側に向けたときに、吹き出される冷気が吹出口付近の壁面に当たりやすくなる。このため、壁面において冷気と室内の空気との温度差によって結露が生じる。
【0008】
本発明の一態様は、吹出口付近の壁面に結露を生じさせにくくし、かつ吹出口付近での空気の乱れを少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る空気調和機は、空気が吹き出される吹出口および前記吹出口に空気を導く風路を有する筐体と、前記風路において向きを変えることにより、前記吹出口から吹き出される空気を左右方向に偏向させる複数の風向板と、を備え、前記複数の風向板は、前記風路の左右の端を形成する前記筐体の壁面に最も近い第1風向板と、第2風向板とを含み、前記複数の風向板が空気を最も大きく前記壁面側へ偏向させる方向に向いた状態において、前記第1風向板は、前記第2風向板よりも、空気を偏向させる度合いが小さく、空気調和機は、前記第1風向板および前記第2風向板が連動するように前記第1風向板の第1可動部と前記第2風向板の第2可動部とを連結する連結部材をさらに備え、第1風向板は、前記第2風向板と連動するときに、前記第1可動部に前記連結部材を介して加わる力によって変形しない剛性を有するとともに、第1支点を軸として向きを変える第1可動部を有し、第2風向板は、弾性変形する弾性変形部と、当該弾性変形部が変形し始める始点となる第2支点を軸として向きを変える第2可動部とを有し、前記第1可動部において前記連結部材と連結される第1連結部と前記第1支点との間の第1距離が、前記第2可動部において前記連結部材と連結される第2連結部と前記第2支点との間の第2距離と等しい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、吹出口付近の壁面に結露を生じさせにくくし、かつ吹出口付近での空気の乱れを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機の外観を示す正面図である。
【
図3】開閉パネルを除いた状態の上記空気調和機の外観を示す斜視図である。
【
図5】上記空気調和機に設けられる風向調整ユニットの外観を示す斜視図である。
【
図9】上記風向調整ユニットにおける第1風向板および支持ボックスを示す側面図である。
【
図10】上記風向調整ユニットにおける第2風向板および支持ボックスを示す側面図である。
【
図11】上記第1風向板および上記第2風向板が上記空気調和機の筐体における内壁面側に少し向きを変えたときに吹き出される空気の流れを示す図である。
【
図12】上記第1風向板および上記第2風向板が上記内壁面側に最も大きく向きを変えたときに吹き出される空気の流れを示す図である。
【
図13】中立位置にある上記第1風向板および上記第2風向板と上記内壁面との位置関係を示す部分拡大図である。
【
図14】上記内壁面側に最も大きく向いた上記第1風向板および上記第2風向板と上記内壁面との位置関係を示す部分拡大図である。
【
図15】本実施形態の変形例に係る空気調和機において、上記第1風向板および上記第2風向板が上記内壁面側に最も大きく向きを変えたときに吹き出される空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態〕
本発明の一実施形態について
図1~
図15に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0013】
本実施形態および他の実施形態では、室内機と室外機とを備えるセパレートタイプの空気調和機システムにおける壁掛け型の室内機について説明する。ただし、本発明の空気調和機が壁掛け型の室内機に限定されないことは勿論である。
【0014】
図1は、実施形態1に係る空気調和機1の外観を示す正面図である。
図2は、空気調和機1の外観を示す斜視図である。
図3は、開閉パネル3a,3bを除いた状態の空気調和機1の外観を示す斜視図である。
図4は、
図1のA-A線斜視断面図である。
【0015】
図1および
図2に示すように、室内機である空気調和機1は、外装体として筐体2を備えている。
【0016】
筐体2は、直方体に類似する形状を成している。具体的には、筐体2の前面は、筐体2の背面よりも上下方向の幅が狭く形成されている。このため、筐体2の上面は、略中央部から前面にかけて緩やかな下り傾斜となるように形成されている。また、筐体2の下面は、略中央部から前面にかけて緩やかな上り傾斜となるように形成されている。
【0017】
筐体2の上面には、外部からの空気が吸い込まれる吸込口2aが形成されている。吸込口2aには、格子が組み込まれている。また、吸込口2aには、図示しないフィルタが設けられている。フィルタは、空気とともに筐体2の内部に吸い込まれる塵埃などを捕集する。
【0018】
図3に示すように、筐体2の下面には、吸込口2aから吸い込まれて筐体2の内部を通過した空気が吹き出される吹出口2bが形成されている。吹出口2bは、細長い長方形の形状に形成されている。また、筐体2の外側壁2cの内側には、内壁面2d(壁面)が形成されている。また、筐体2の下面には、吹出口2bの前縁を形成する前縁部2eが設けられている。
【0019】
図2に示すように、筐体2には、吹出口2bを開閉する開閉パネル3a,3bが設けられている。開閉パネル3aは、吹出口2bの上端の位置において筐体2に回動可能に支持されている。開閉パネル3bは、吹出口2bの下端の位置において筐体2に回動可能に支持されている。開閉パネル3a,3bは、空気調和機1が空気調和動作を停止しているときに閉じる一方、空気調和機1が空気調和動作をしているときに開き、開度に応じて吹き出される空気を上下方向に偏向する上下方向風向板を兼ねる。
【0020】
図4に示すように、空気調和機1は、さらに、熱交換器4と、ファン5と、ケーシング6,7と、風向調整ユニット8とを備えている。
【0021】
熱交換器4は、第1熱交換部4aと、第2熱交換部4bとを有する。第1熱交換部4aは、吸込口2aの直下から筐体の前面付近にかけて傾斜するように配置されている。第2熱交換部4bは、吸込口2aの直下から筐体の背面付近にかけて傾斜するように配置されている。
【0022】
熱交換器4は、吸込口2aから吸い込まれる空気との間で熱交換する。具体的には、熱交換器4は、冷房運転時には冷媒を気化させる蒸発器として機能し、空気から熱を奪う。一方、熱交換器4は、暖房運転時には冷媒を液化させる凝縮器として機能し、空気に熱を与える。
【0023】
ファン5は、第1熱交換部4aおよび第2熱交換部4bのそれぞれの下面に対面する位置に配置されている。ファン5は、筐体2の長手方向に伸びる軸を中心に、後述するファンモータ(図示せず)の駆動力によって回転する。ファン5は、例えばクロスフローファンであるが、他のファンであってもよい。ファン5は、回転することにより、吸込口2aから室内の空気を吸い込んで吹出口2bから室内へ吹き出す気流を生じさせる。
【0024】
ケーシング6は、ファン5によって送出される空気を吹出口2bに導く板状の部材である。ケーシング6は、ファン5から空気が送出される筐体2の背面側に、ファン5と第2熱交換部4bとの間から、後述する風向調整ユニット8の上端位置に至る範囲に設けられている。ケーシング6は、筐体2の背面側に膨らむように湾曲する形状に形成されている。また、ケーシング6は、筐体2の両側壁の間の距離と略同じ幅を有するように形成されている。
【0025】
ケーシング7は、ファン5によって送出される空気を吹出口2bに導く板状の部材である。ケーシング7は、吹出口2bの上方における第1熱交換部4aの下端とファン5の近傍に配置されるように筐体2に固定されている。ケーシング7も、ケーシング6と同じく、筐体2の両側壁の間の距離と略同じ幅を有するように形成されている。
【0026】
ケーシング7は、対向部7aと、導風部7bとを有している。対向部7aは、ファン5と対向するようにファン5に近接して配置されている。また、対向部7aは、筐体2の前部側から後部側にかけて傾斜するように配置されている。導風部7bは、対向部7aの下端から筐体2の前縁部2eにおける下端に至る範囲に設けられている。
【0027】
ケーシング6,7は、筐体2に取り付けられ、筐体2を補強する機能を有することから、筐体2の一部を構成している。
【0028】
風向調整ユニット8は、第1風向板82および第2風向板83の向きにより、吹出口2bから吹き出される空気の左右方向の向きを調整する。風向調整ユニット8は、ケーシング6に対して着脱可能に取り付けられている。続いて、風向調整ユニット8について、詳細に説明する。
【0029】
図5は、風向調整ユニット8の外観を示す斜視図である。
図6は、風向調整ユニット8を示す平面図である。
図7は、風向調整ユニット8を示す側面図である。
図8は、
図7のB-B線矢視断面図である。
図9は、風向調整ユニット8における第1風向板82および支持ボックス81を示す側面図である。
図10は、風向調整ユニット8における第2風向板83および支持ボックス81を示す側面図である。
【0030】
図5および
図6に示すように、風向調整ユニット8は、支持ボックス81と、2つの第1風向板82と、複数の第2風向板83と、2本の連結バー84(連結部材)とを有している。
【0031】
支持ボックス81は、ケーシング6に着脱可能に組み込まれるように設けられている。支持ボックス81は、筐体2において対向する内壁面2d間の距離よりやや短い長さを有している。また、支持ボックス81は、ケーシング6の下端から吹出口2b付近までの幅を有する平坦な上面81aを有している。上面81aは、ケーシング6の表面とほぼ連続した面を形成している。
【0032】
ケーシング6,7、支持ボックス81の上面81a、および上述した内壁面2dは、吹出口2bに空気を導く風路を形成している。また、内壁面2dは、当該風路の左右の端を形成している。
【0033】
第1風向板82および第2風向板83は、上記の風路において向きを変えることにより、吹出口2bから吹き出される空気を左右方向に偏向させる部材である。第1風向板82および第2風向板83は、それぞれ樹脂によって形成されている。第1風向板82および第2風向板83は、上面81aにおいて、中央部から左右に分かれる左側ブロックと右側ブロックとにそれぞれ設けられている。
【0034】
第1風向板82は、支持ボックス81の上面81a上において支持ボックス81のそれぞれの端部に最も近い位置に、当該端部から所定の距離をおいて配置されている。支持ボックス81の端部は内壁面2dに近接するので、第1風向板82および第2風向板83のうち、第1風向板82は内壁面2dに最も近い位置に配置されていることになる。
【0035】
第2風向板83は、隣接する第2風向板83同士で所定の間隔をおいて配置されている。第1風向板82と、第1風向板82に隣接する第2風向板83との間には、隣接する第2風向板83間の間隔とほぼ同じ間隔が設けられている。支持ボックス81の上面81aにおける中央部には、第2風向板83が設けられていない領域がある。
【0036】
図7~
図9に示すように、第1風向板82は可動部82a(第1可動部)を有している。
【0037】
可動部82aは、支持ボックス81の上面81aに対して可動する部分であり、略均一の厚さを有する平板状に形成されている。可動部82aは、支持ボックス81の上面81aに対して僅かに垂直方向に伸びてさらに吹出口2b側に伸びるように形成されている。また、可動部82aは、第1風向板82が第2風向板83と連動するときに、連結バー84を介して加わる力によって変形しない剛性を有している。可動部82aの先端には、連結部82b(第1連結部)が設けられている。連結部82bは、その上端に、連結バー84の端部に係合する突起82cを有している。
【0038】
第1風向板82は、駆動機構85(駆動部)によって回動するように駆動される。駆動機構85は、回動円板85aと、モータ85bと、駆動軸85cとを有している。
【0039】
回動円板85aは、円板状の部材であり、支持ボックス81の上面81aに、上面81aの後端縁から所定の距離をおいた位置に回動可能に嵌め込まれている。回動円板85aは、その上端面に可動部82aの支持ボックス81側の端部が固定されている。また、回動円板85aは、その下端面の中心に、モータ85bのスピンドル(図示せず)と直結された駆動軸85cの先端が固定されている。これにより、回動円板85aは、モータ85bによって駆動される。モータ85bとしては、例えば、1パルスの駆動信号の入力によって所定角度回転するステッピングモータが用いられる。
【0040】
図7、
図8および
図10に示すように、第2風向板83は、支持部83aと、固定部83bと、可動部83c(第2可動部)と、弾性変形部83dとを有している。
【0041】
支持部83aは、長方形状に形成されており、その両側面に当該側面の長手方向に延びる凸条(図示せず)を有している。これに対し、支持ボックス81の上面81aには、後端縁には、後端縁に垂直な方向に前端縁側へ伸びるように長方形状に形成された凹部81bを有している。凹部81bの互いに対向する両側面には、支持部83aの凸条に摺動可能に嵌まり合う凹条(図示せず)を有している。支持部83aは、凸条が凹部81bの凹条に嵌められた状態で上面81aの後端縁側から押し込まれることにより、凹部81bに嵌まり込む。支持部83aは、上記のような構造を有することにより、支持ボックス81に着脱可能に取り付けられる。
【0042】
固定部83bは、支持部83aに固定される部分である。固定部83bは、第1風向板82の可動部82aと同じく、略均一の厚さを有する平板状に形成されている。
【0043】
可動部83cは、支持ボックス81の上面81aに対して可動する部分であり、略均一の厚さを有する平板状に形成されている。可動部83cは、第1風向板82の先端よりさらに吹出口2bに近い位置まで伸びるように形成されている。また、可動部83cは、第2風向板83が第1風向板82と連動するときに、連結バー84を介して加わる力によって変形しない剛性を有している。可動部82aの下端縁のほぼ中央部には、連結部83eが設けられている。連結部83e(第2連結部)は、可動部83cに形成された切欠き83fと、切欠き3fに設けられた軸83gとを有している。
【0044】
弾性変形部83dは、固定部83bと可動部83cとの間に設けられており、固定部83bと可動部83cとを繋いでいる。弾性変形部83dは、固定部83bおよび可動部83cよりも薄肉に形成されることより弾性変形することが可能である。
【0045】
2本の連結バー84のうちの一本は、上述した左側ブロックに設けられる第1風向板82および第2風向板83を連結する。2本の連結バー84のうちの他の一本は、上述した右側ブロックに設けられる第1風向板82および第2風向板83を連結する。連結バー84の第1風向板82側の一端は、可動部82aにおける連結部82bの突起82cに係合する。連結バー84の複数の第2風向板83に対応した位置は、可動部83cにおける連結部83eの軸83gに緩やかに係合する。
【0046】
上記のように構成される空気調和機1における第1風向板82および第2風向板83による空気の偏向動作について説明する。
【0047】
図11は、第1風向板82および第2風向板83が内壁面2d側に少し向きを変えたときに吹き出される空気の流れを示す図である。
図12は、第1風向板82および第2風向板83が内壁面2d側に最も大きく向きを変えたときに吹き出される空気の流れを示す図である。
【0048】
図11に示すように、第1風向板82および第2風向板83が、吹き出される空気の向きを偏向しない中立状態から、内壁面2d側に少し向きを変えた状態では、第1風向板82は、第2風向板83よりも空気を偏向させる度合いが小さい。これにより、第1風向板82によって偏向した空気は、破線の矢印にて示すように、内壁面2dに触れることなく吹出口2bから吹き出される。
【0049】
図12に示すように、第1風向板82および第2風向板83が、内壁面2d側に最も大きく向きを変えた状態、即ち、空気を最も大きく内壁面2d側へ偏向させる方向に向いた状態でも、第1風向板82は、第2風向板83よりも空気を偏向させる度合いが小さい。この状態でも、第1風向板82によって偏向した空気は、破線の矢印にて示すように、内壁面2dに触れることなく吹出口2bから吹き出される。
【0050】
これにより、内壁面2dに結露を生じにくくするように、第1風向板82を内壁面2dに近づけて配置することができる。また、第1風向板82を内壁面2dに近づけて配置することにより、第1風向板82によって偏向した空気と、第2風向板83によって偏向した空気とが吹出口2b付近で衝突しにくくすることができる。これにより、吹き出される向きが異なる空気の衝突による吹出口2b付近での空気の乱れを少なくすことができる。
【0051】
また、第1風向板82は、第2風向板83よりも小さい。具体的には、第1風向板82および第2風向板83が中立状態にあるときの、空気の流れる方向の第1風向板82の大きさ(長さ)は、空気の流れる方向の第2風向板83の大きさ(長さ)よりも小さい。あるいは、第1風向板82の高さ方向の大きさは、第2風向板83の高さ方向の大きさよりも小さくてもよい。
【0052】
上記の構成によれば、第1風向板82が第2風向板83よりも小さいので、第1風向板82による空気の偏向角度を第2風向板83による空気の偏向角度より小さくすることができる。これにより、第2風向板83を第1風向板82として設ける場合よりも、第1風向板82によって偏向した空気が内壁面2dに触れないように第1風向板82を壁面に近づけて配置することができる。それゆえ、内壁面2dの付近でより多くの空気を第1風向板82によって偏向することができる。
【0053】
また、第1風向板82は、第2風向板83と連動するときに、可動部82aに連結バー84を介して加わる力によって変形しない剛性を有している。また、第1風向板82は、駆動機構85によって直接駆動される。
【0054】
これにより、駆動力伝達部材を介さずに第1風向板82を駆動することができる。それゆえ、第1風向板82を駆動する駆動機構85を第1風向板82の近傍に配置することができる。したがって、第1風向板82、第2風向板83、連結バー84およびと駆動機構85を含む機構群を容易に風向調整ユニット8として構成することができる。
【0055】
また、第2風向板83は、弾性変形部83dによって弾性変形する。具体的には、弾性変形部83dは湾曲するように変形する。これにより、第2風向板83は滑らかに空気の流れを変えることができる。
【0056】
続いて、第1風向板82および第2風向板83が向きを変えたときの偏向角度について説明する。
【0057】
図13は、中立位置にある第1風向板82および第2風向板83と内壁面2dとの位置関係を示す部分拡大図である。
図14は、内壁面2d側に最も大きく向いた第1風向板82および第2風向板83と内壁面2dとの位置関係を示す部分拡大図である。
【0058】
図13に示すように、中立状態にある第1風向板82において、向きを変える支点F1は、回動円板85aの中心である。中立状態にある第2風向板83において、向きを変える支点F2は、弾性変形部83dを変形し始める始点、即ち固定部83bと弾性変形部83dとの境界である。また、中立状態にある第1風向板82において、連結バー84と連結される連結点C1は連結部82bであり、中立状態にある第2風向板83において、連結バー84と連結される連結点C2は連結部83eである。
【0059】
図14に示すように、第1風向板82および第2風向板83が空気を最も大きく内壁面2d側へ偏向させる方向に向いた状態では、第1風向板82は支点F1を軸に向きを変え、第2風向板83は支点F2を軸に徐々に向きを変える。支点F2を軸に向きを変えるとは、可動部83cが、支点F2から始まる弾性変形部83dの弾性変形によって向きを変える場合を含む。第2風向板83については、弾性変形部83dが、支点F2から可動部83cとの境界に至る範囲で湾曲状に変形する。これにより、可動部83cは、固定部83bに対して向きを変える。
【0060】
図14に示す、第1風向板82における支点F1から連結点C1までの第1長さ(第1距離)を、第2風向板83における支点F2から連結点C2までの第2長さ(第2距離)よりも長くしておく。これにより、上記の状態での第1風向板82が最も大きく空気を偏向させる第1偏向角度は、第2風向板83が最も大きく空気を偏向させる第2偏向角度よりも小さくなる。
【0061】
これにより、第2風向板83を第1風向板82として設ける場合よりも、第1風向板82によって偏向した空気が内壁面2dに触れないように第1風向板82を内壁面2dに近づけて配置することができる。したがって、内壁面2dの付近でより多くの空気を第1風向板82によって偏向することができる。
【0062】
また、第1風向板82における第1長さが第2風向板83における第2長さよりも長いことにより、第1偏向角度を第2偏向角度よりも小さくすることができる。
【0063】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。
図15は、本実施形態の変形例に係る空気調和機1において、第1風向板82および第2風向板83が内壁面2d側に最も大きく向きを変えたときに吹き出される空気の流れを示す図である。
【0064】
なお、上記の例では、第1長さが第2長さよりも長いが、これに限らず、第1長さが第2長さを等しく(または略等しく)してもよい。
【0065】
この場合、第1偏向角度と第2偏向角度とが等しくなる。しかしながら、第1風向板82が支点F1を軸に回動するのに対し、第2風向板83は、支点F2から湾曲状に徐々に変形するため、実際の第2偏向角度は第2偏向角度より大きくなる。
【0066】
また、第1長さと第2長さとを等しくすることにより、連結バー84の駆動によって第1風向板82および第2風向板83に生じるトルクを等しくすることができる。これにより、連結バー84による第1風向板82および第2風向板83の駆動を抵抗なく行うことができる。したがって、第1風向板82および第2風向板83の駆動時に、第1風向板82および第2風向板83に生じるトルクが異なることによる発生する異音を大幅に低減することができる。
【0067】
図15に示すように、本変形例では、空気調和機1が、第1風向板82に代えて、第1風向板86を有し、連結バー84に代えて連結バー87を有し、駆動機構85に代えて駆動機構88を有している。
【0068】
第1風向板86は、第2風向板83と同じく弾性変形する。また、第1風向板86の空気が流れる方向の長さは、第2風向板83の空気が流れる方向の長さより短い。
【0069】
連結バー87は、内壁面2dを有する内壁を貫通して風路外まで伸びるように配置されている。連結バー87は、第1風向板86および第2風向板83を連結する。
【0070】
駆動機構88は、駆動源88aと、駆動バー88bとを有している。駆動源88aは、モータであり、駆動バー88bを回動するように駆動する。駆動バー88bは、先端に連結バー87が連結されており、回動することによって、連結バー87を左右方向に移動させる。
【0071】
上記のように形成される変形例では、連結バー87が内壁を貫通するので、風向調整ユニット8のように、駆動機構88を第1風向板86および第2風向板83とともにユニット化することができない。したがって、第1風向板86および第2風向板83を筐体2に対して着脱可能に設けることができない。
【0072】
しかしながら、このような構成では、第1風向板86が空気を最も大きく内壁面2d側へ偏向させる方向に向いた状態でも、上述した実施形態の構成と同じく、第1風向板86は、第2風向板83よりも空気を偏向させる度合いが小さい。
【0073】
これにより、内壁面2dに結露を生じにくくするように、第1風向板86を内壁面2dに近づけて配置することができる。また、第1風向板86を内壁面2dに近づけて配置することにより、吹き出される向きが異なる空気の衝突による吹出口付近での空気の乱れを少なくすことができる。また、第1風向板86が弾性変形するので、第1風向板86によって空気の流れを滑らかに変えることができる。
【0074】
なお、第1風向板82,86および第2風向板83の形態は、上述した構成に限定されない。例えば、第1風向板82,86および第2風向板83の下側に配置されるが、風路の上側に配置されてもよい。このような構成では、風路の構成を上側で第1風向板82,86および第2風向板83を支持する構造が必要となる。また、第1風向板82,86および第2風向板83は、空気の流れの上流側で支持され、下流側で駆動されるが、支持される位置と駆動される位置とが逆であってもよい。また、第1風向板82,86および第2風向板83は、開閉パネル3bに取り付けられていてもよい。このように、第1風向板82,86および第2風向板83が配置される位置および箇所は、上述した形態には限定されない。
【0075】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る空気調和機は、空気が吹き出される吹出口および前記吹出口に空気を導く風路を有する筐体と、前記風路において向きを変えることにより、前記吹出口から吹き出される空気を左右方向に偏向させる複数の風向板と、を備え、前記複数の風向板は、前記風路の左右の端を形成する前記筐体の壁面に最も近い第1風向板と、第2風向板とを含み、前記複数の風向板が空気を最も大きく前記壁面側へ偏向させる方向に向いた状態において、前記第1風向板は、前記第2風向板よりも、空気を偏向させる度合いが小さい。
【0076】
上記の構成によれば、第1風向板によって最も大きく壁面側へ空気を偏向させても、第2風向板によって最も大きく壁面側へ空気を偏向させる場合と比べて、偏向した空気が壁面に触れにくい。これにより、壁面に結露を生じにくくするように、第1風向板を壁面に近づけて配置することができる。また、第1風向板を壁面に近づけて配置することにより、第1風向板によって偏向した空気と、第2風向板によって偏向した空気とが吹出口付近で衝突しにくくすることができる。これにより、吹き出される向きが異なる空気の衝突による吹出口付近での空気の乱れを少なくすことができる。
【0077】
本発明の態様2に係る空気調和機は、上記態様1において、前記第1風向板が最も大きく空気を偏向させる第1偏向角度は、前記第2風向板が最も大きく空気を偏向させる第2偏向角度よりも小さくてもよい。
【0078】
上記の構成によれば、第1偏向角度が第2偏向角度よりも小さいので、第2風向板を第1風向板として設ける場合よりも、第1風向板によって偏向した空気が壁面に触れないように第1風向板を壁面に近づけて配置することができる。これにより、壁面の付近でより多くの空気を第1風向板によって偏向することができる。
【0079】
本発明の態様3に係る空気調和機は、上記態様1または2において、前記第1風向板が、前記第2風向板よりも小さくてもよい。
【0080】
上記の構成によれば、第1風向板が第2風向板よりも小さいので、第1風向板による空気の偏向角度を第2風向板による空気の偏向角度より小さくすることができる。これにより、第2風向板を第1風向板として設ける場合よりも、第1風向板によって偏向した空気が壁面に触れないように第1風向板を壁面に近づけて配置することができる。それゆえ、壁面の付近でより多くの空気を第1風向板によって偏向することができる。
【0081】
本発明の態様4に係る空気調和機は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記第1風向板および前記第2風向板が連動するように前記第1風向板の第1可動部と前記第2風向板の第2可動部とを連結する連結部材をさらに備え、前記第1風向板は、第1支点を軸として向きを変える第1可動部を有し、前記第2風向板は、第2支点を軸として向きを変える第2可動部を有し、前記第1可動部において前記連結部材と連結される第1連結部と前記第1支点の間の第1距離が、前記第2可動部において前記連結部材と連結される第2連結部と前記第2支点との間の第2距離よりも長くてもよい。
【0082】
上記の構成では、連結部材によって第1可動部および第2可動部が駆動されることによって、第1連結部および第2連結部の移動距離が等しくなる。また、第1距離が第2距離よりも長いので、第1偏向角度が第2偏向角度よりも小さくなる。
【0083】
本発明の態様5に係る空気調和機は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記第1風向板および前記第2風向板が連動するように前記第1風向板の第1可動部と前記第2風向板の第2可動部とを連結する連結部材をさらに備え、第1風向板は、前記第2風向板と連動するときに、前記第1可動部に前記連結部材を介して加わる力によって変形しない剛性を有するとともに、第1支点を軸として向きを変える第1可動部を有し、第2風向板は、弾性変形する弾性変形部と、当該弾性変形部が変形し始める始点となる第2支点を軸として向きを変える第2可動部とを有し、前記第1可動部において前記連結部材と連結される第1連結部と前記第1支点との間の第1距離が、前記第2可動部において前記連結部材と連結される第2連結部と前記第2支点との間の第2距離と等しくてもよい。
【0084】
上記の構成によれば、第1風向板は、第1支点を軸として向きを変える一方、第2風向板は、弾性変形部によって第2支点から徐々に変形する。これにより、第1距離と第2距離とが等しくても、第2偏向角度を第1偏向角度より大きくすることができる。また、第1距離と第2距離とが等しいことにより、連結部材の駆動によって第1風向板および第2風向板に生じるトルクを等しくすることができる。これにより、連結部材による第1風向板および第2風向板の駆動を抵抗なく行うことができる。したがって、第1風向板および第2風向板の駆動時に、第1風向板および第2風向板に生じるトルクが異なることによる発生する異音を大幅に低減することができる。
【0085】
本発明の態様6に係る空気調和機は、上記態様4または5において、前記第1風向板を直接駆動する駆動部をさらに備え、前記第1風向板は、前記第2風向板と連動するときに、前記第1可動部に前記連結部材を介して加わる力によって変形しない剛性を有していてもよい。
【0086】
上記の構成によれば、駆動力伝達部材を介さずに第1風向板を駆動部によって直接駆動することができる。これにより、第1風向板を駆動する駆動部を第1風向板の近傍に配置することができる。それゆえ、第1風向板および第2風向板と駆動部とを含む構成を容易にユニット化することができる。
【0087】
本発明の態様7に係る空気調和機は、上記態様1から4のいずれかにおいて、第2風向板は弾性変形してもよい。
【0088】
上記の構成によれば、第2風向板は滑らかに空気の流れを変えることができる。
【0089】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 空気調和機
2 筐体
2d 内壁面(壁面)
82,86 第1風向板
82a 可動部(第1可動部)
82b 連結部(第1連結部)
83 第2風向板
83c 可動部(第2可動部)
83d 弾性変形部
83e 連結部(第2連結部)
84 連結バー(連結部材)
85 駆動機構(駆動部)
C1 連結点(第1連結部)
C2 連結点(第2連結部)
F1 第1支点
F2 第2支点