(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ポンプ式吐出装置
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
B65D47/34 110
(21)【出願番号】P 2021028394
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 和也
(72)【発明者】
【氏名】渡部 早紀
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-207525(JP,A)
【文献】特開2001-179140(JP,A)
【文献】特開2012-246022(JP,A)
【文献】特開2011-148535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B05B 11/00-11/10
F04B 9/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトルの内部に連通した状態に前記ボトルの口部に取り付けられるシリンダと、
前記シリンダの内部に前記シリンダの軸線方向に往復動可能に嵌合するピストンと、
前記軸線方向に前記ピストンを貫通して形成された流路と、
前記流路の一方の開口端部に連通しているノズルと、
前記シリンダと前記ピストンとによって区画された内部のうち、前記流路の他方の開口端部が連通している一方の内部と、
前記ピストンが前記一方の内部の容積を増大する方向に移動することによって互いに密着して前記流路を閉じ、かつ、前記ピストンが前記一方の内部の容積を減少する方向に移動することによって互いに離隔して前記流路を開く弁体部と弁座部とを有する弁機構と、
前記弁座部に前記弁体部を押し付ける方向に前記ピストンを押圧する復帰機構とを備え、
前記弁体部は、テーパー状の外周面を有しており、
前記弁座部は、前記外周面に接触して前記流路を閉じる前記外周面の外形に応じたロート状の受け面を有しており、
前記ピストンが押されて前記弁座部から前記弁体部が離隔すると共に前記一方の内部の容積が減じられることにより、前記一方の内部に充填されていた内容物が前記流路を経て前記ノズルから吐出するポンプ式吐出装
置であって、
前記外周
面に、前記受け面側とは反対側に曲率中心を有する凸曲面部が前記流路の円周方向での全周に亘って連続して形
成されるとともに、
前記凸曲面部と前記受け面との接触部分が、前記流路の円周方向での全周に亘って連続した線状を成しており、更に
前記凸曲面部を含む前記弁体部は、前記受け面を含む前記弁座部を形成している合成樹脂材料より硬い他の合成樹脂材料によって構成されている
ことを特徴とするポンプ式吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ式吐出装
置であって、
前記弁体部は、ロックウェル硬さが60~70の高密度ポリエチレンによって構成され、かつ
前記弁座部は、ロックウェル硬さが85~110のポリプロピレンもしくはロックウェル硬さが80~120ポリオキシメチレンによって構成されている
ことを特徴とするポンプ式吐出装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載のポンプ式吐出装
置であって、
前記流路の内部に前記流路の中心軸線に沿って一端部が挿入されると共に、前記一方の内部に他端部が配置されていて前記シリンダに対して前記軸線方向に相対移動可能に保持された軸状部材を備え、
前記弁体部は、前記軸状部材の前記一端部に前記軸線方向で前記ボトルとは反対側に向けて外径を次第に増大させたテーパー状に形成されており、
前記弁座部は、前記流路の内部に前記軸線方向で前記ボトルとは反対側に向けて内径を次第に増大させたロート状に形成されており、
前記凸曲面部は前記外周面に形成されている
ことを特徴とするポンプ式吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズル体を押し込んでシリンダの内容積を減じることにより、シリンダから押し出した内容物をノズル体に形成されたノズルから吐出させるポンプ式吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置が取り付けられた容器の一例が特許文献1に記載されている。その装置は主として熱可塑性樹脂によって構成されており、シャンプーやハンドソープ、ボディーソープなどの液状の内容物を泡状にして吐出するポンプフォーマーである。その装置は、ボトルの口部に空気シリンダが取り付けられ、その空気シリンダの半径方向で内側に同心円上に液体シリンダが一体に構成されている。空気シリンダの内面に摺接する空気ピストンと液体シリンダの内面に摺接する液体ピストンとは同心円上に配置され、かつ、一体化されている。液体ピストンを貫通して流路が形成されており、その流路はノズルと、液体シリンダと液体ピストンとによって区画される液室とに連通している。また、流路に、ボトル側に液体ピストンが移動する場合にノズルと液室とを連通し、これとは反対側に液体ピストンが移動する場合に上述した連通を遮断する逆止弁が設けられている。その逆止弁は、軸線方向に延びる棒状弁体を有しており、その棒状弁体は上述した流路内に配置されている。その棒状弁体におけるボトルとは反対側の一端部に、ボトルとは反対側に向かって次第に外径が増大するテーパー状を成す弁体部が形成されており、その弁体部に密着するロート状の弁座部が液体シリンダのボトルとは反対側の一端部に形成されている。また、液体ピストンを元の位置に復帰移動させるスプリングが設けられている。液体ピストンはスプリングの弾性力によって弁座部と弁体部とを密着させて逆止弁を閉じるようにボトルとは反対側に押圧されている。棒状弁体の他端部は液体ピストンに対して相対移動可能に、液室内に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した装置を例えば高温の状態で長期間、保管すると、上記の装置は主として熱可塑性樹脂によって構成されるので、保管時の熱によって弁座部と弁体部とが軟化してしまうことがある。その場合、それらの弁座部と弁体部とがスプリングの弾性力によって互いに強く嵌まり合い、互いに離隔しにくい状態になる可能性がある。また、上述した装置が未使用の状態のときには、液室内に液状の内容物が未だ吸い上げられておらずに、空気が液室を満たしている。このような状態で、上述した装置の使用を開始してノズル体を押し下げると、空気ピストンおよび液体ピストンが押し下げられるので、ノズル体からは空気が吐出する。その場合、液室を開閉する上記の弁体部と弁座部とが強固に嵌合している上に、液室内の空気が圧縮性であるために、液体ピストン(弁座部)と共に棒状弁体(弁体部)が押し下げられ、弁体部と弁座部とが離隔しない。すなわち、液室が開かれない。ノズル体を更に深く押し下げたり、ノズル体の押し下げ(ポンピング)を繰り返すと、液室内の空気圧が繰り返し高くなるなどのことによって、弁体部と弁座部とが離隔して、液室にボトル内の内容物を吸い上げるようになる。このように、使用の開始当初は、上述したように、弁体部と弁座部とが嵌合していたり、あるいは充分には離隔しないことにより、液室に対する内容物の吸い上げ量が十分ではなく、ノズル体からの吐出量が設計上想定している本来の量になるまでには、ノズル体を複数回押し下げる(ポンピングする)必要があり、使用開始当初の利便性に劣る可能性があった。
【0005】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、未使用の状態で、高温での保管を経て最初に使用する場合に、弁機構が開きやすく、内容物を容易に吐出することのできる利便性に優れたポンプ式吐出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、ボトルの内部に連通した状態に前記ボトルの口部に取り付けられるシリンダと、前記シリンダの内部に前記シリンダの軸線方向に往復動可能に嵌合するピストンと、前記軸線方向に前記ピストンを貫通して形成された流路と、前記流路の一方の開口端部に連通しているノズルと、前記シリンダと前記ピストンとによって区画された内部のうち、前記流路の他方の開口端部が連通している一方の内部と、前記ピストンが前記一方の内部の容積を増大する方向に移動することによって互いに密着して前記流路を閉じ、かつ、前記ピストンが前記一方の内部の容積を減少する方向に移動することによって互いに離隔して前記流路を開く弁体部と弁座部とを有する弁機構と、前記弁座部に前記弁体部を押し付ける方向に前記ピストンを押圧する復帰機構とを備え、前記弁体部は、テーパー状の外周面を有しており、前記弁座部は、前記外周面に接触して前記流路を閉じる前記外周面の外形に応じたロート状の受け面を有しており、前記ピストンが押されて前記弁座部から前記弁体部が離隔すると共に前記一方の内部の容積が減じられることにより、前記一方の内部に充填されていた内容物が前記流路を経て前記ノズルから吐出するポンプ式吐出装置であって、前記外周面に、前記受け面側とは反対側に曲率中心を有する凸曲面部が前記流路の円周方向での全周に亘って連続して形成されるとともに、前記凸曲面部と前記受け面との接触部分が、前記流路の円周方向での全周に亘って連続した線状を成しており、更に前記凸曲面部を含む前記弁体部は、前記受け面を含む前記弁座部を形成している合成樹脂材料より硬い他の合成樹脂材料によって構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明では、前記弁体部は、ロックウェル硬さが60~70の高密度ポリエチレンによって構成され、かつ前記弁座部は、ロックウェル硬さが85~110のポリプロピレンもしくはロックウェル硬さが80~120ポリオキシメチレンによって構成されていてよい。
【0009】
この発明では、前記流路の内部に前記流路の中心軸線に沿って一端部が挿入されると共に、前記一方の内部に他端部が配置されていて前記シリンダに対して前記軸線方向に相対移動可能に保持された軸状部材を備え、前記弁体部は、前記軸状部材の前記一端部に前記軸線方向で前記ボトルとは反対側に向けて外径を次第に増大させたテーパー状に形成されており、前記弁座部は、前記流路の内部に前記軸線方向で前記ボトルとは反対側に向けて内径を次第に増大させたロート状に形成されており、前記凸曲面部は前記外周面に形成されていてよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明では、ピストンとシリンダとによって区画された内部のうち、一方の内部に流路を介してノズルが連通されている。その流路に、一方の内部の容積を減じるようにピストンが移動した場合に、流路を開き、一方の内部の容積を増大するようにピストンが移動した場合に、流路を閉じる弁機構が設けられている。その弁機構は弁体部と弁座部とを有している。弁体部はテーパー状の外周面を有しており、弁座部はその外周面に対向するロート状の受け面を有している。それらの外周面と受け面とは、復帰機構によって互いに密着する方向に力を受けて、弁座部と弁体部とによって流路を閉じるように構成されている。また、この発明では、弁体部の外周面と弁座部の受け面とのうちの少なくともいずれか一方に、他方側とは反対側に曲率中心を有する凸曲面部が流路の円周方向での全周に亘って連続して形成されている。その凸曲面部が、弁体部の外周面もしくは弁座部の受け面に接触することにより、閉弁状態となる。したがって、弁体部と弁座部とは、それらの外周面と受け面とが全面で互いに接触する場合と比較して、接触面積が小さくなっており、そのため、弁体部と弁座部との間の摩擦力やそれらの間の係合力が従来になく低減されている。したがって、この発明によれば、比較的小さい力で弁体部の外周面と弁座部の受け面との係合状態を解除することができる。具体的には、例えば、一方の内部に圧縮性の流体である空気が満たされており、一方の内部の容積を減じるようにピストンを押し込む力が空気の圧縮に消費されて減じられるとしても、空気を圧縮することによる一方の内部の内圧の増大によって弁体部と弁座部とを容易に離隔させることができる。つまり、僅かな内圧の増大によって弁体部と弁座部とを容易に離隔させることができる。したがって、この発明の実施形態に係るポンプ式吐出装置を高温の状態で長期間、保管することによって、弁座部と弁座部とが互いに強く嵌まり合い、しかも、一方の内部に空気が満たされていて弁機構を開くために、ピストンを繰り返し往復動するとしても、そのピストンの往復動の回数つまりポンピングの回数を可及的に少なくできる。それらの結果、この発明によれば、未使用のポンプ式吐出装置を高温の状態で、ある程度長期間に亘って保管した後に、最初に使用するときであっても、液状の内容物の吸い上げを迅速かつ充分に生じさせ、ノズルから必要量を吐出させるまでのポンピング回数を少なくして、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の実施形態に係るポンプ式吐出装置の一例を示す断面図である。
【
図2】この発明の実施形態における弁機構の一部を拡大して示す断面図である。
【
図3】この発明の実施形態におけるノズル体をボトル側に押し込んで弁体部と弁座部が離隔する過程を模式的に示す図であり、
図3の(A)は液体ピストンが上死点に位置している状態を示す図であり、
図3の(B)は液体ピストンをボトル側に押し込んで弁体部と弁座部とが離隔した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、この発明の実施形態に係るポンプ式吐出装置の一例を示す断面図である。
図1に示すポンプ式吐出装置は、いわゆるポンプフォーマー1であって、ボトル2の内部に充填された液状の内容物と、空気とを混合することによって泡を形成し、その泡を吐出するように構成されている。すなわち、
図1に示すポンプフォーマー1はボトル2の口部3に着脱可能に装着されるキャップ4を備えている。上記の口部3はボトル2の胴部の上端側に形成された円筒状の開口部であり、口部3の外周面に雄ねじが形成されている。その雄ねじに嵌まり合う雌ねじがキャップ4に形成されている。つまり、キャップ4に口部3をねじ込むようになっている。
【0013】
キャップ4は、
図1に示すように、口部3の外径より大きい外径の外円筒部5と、外円筒部5の内側に外円筒部5と同心円上に設けられた内円筒部6とを備えている。内円筒部6は口部3の内径より小さい外径であってかつ軸線方向における長さが外円筒部5より短く設定されている。それらの外円筒部5の上端部と内円筒部6の上端部とは半径方向に延びる上面部7によって連結されている。すなわち、外円筒部5と内円筒部6と上面部7とは一体に形成されている。また、外円筒部5の内周面に上述した雌ねじが形成されている。上面部7の中心部には、内円筒部6の内径より小さい内径の開口部が形成されている。その開口部の周縁部に、
図1の上方に延びる円筒状のガイドステム部8が立設されている。そのガイドステム部8にポンプフォーマー1をポンピングするノズル体9が軸線方向(
図1では上下方向)に摺動可能に嵌合している。
【0014】
ノズル体9は、いわゆるノズルヘッドとして押し下げ力が加えられる天面部10と、泡を吐出するノズル11と、当該ノズル11に連通する流路Pが形成されている円筒状の内筒部12と、内筒部12より大径であってかつ内筒部12と同心円上に形成された円筒状の外筒部13とを有している。ノズル体9の一部はノズル体9の軸心を中心とした半径方向で外側に延び出た筒状になっており、この部分がノズル11となっている。各筒部12,13は、軸線方向でノズル体9の天面部10から
図1での下方に延びており、軸線方向における内筒部12の長さは外筒部13より長く設定されている。また、内筒部12の外径はガイドステム部8の内径より僅かに小さく設定されており、したがって、ガイドステム部8の内部に挿入できるようになっている。また、外筒部13の内径はガイドステム部8の外径より僅かに大きく設定されており、その内側にガイドステム部8を挿入できるようになっている。つまり、半径方向で内筒部12と外筒部13との間にガイドステム部8を挿入することにより、ノズル体9はガイドステム部8と各筒部12,13とによって案内されて軸線方向に移動するようになっている。また、内筒部12の外周面とガイドステム部8の内周面との間、および、ガイドステム部8の外周面と外筒部13の内周面との間には、僅かな隙間が形成されており、それらの隙間がそれぞれ空気流路となっている。それらの空気流路を介して後述する空気シリンダ内に空気が導入されるようになっている。
【0015】
図1に示す例では、内筒部12の内周面に、均質な泡を形成するネットホルダ14が嵌合されている。具体的には、ネットホルダ14は筒状の部材であって、軸線方向での両端部に図示しないネットがそれぞれ取り付けられている。また、内筒部12の内径は、軸線方向で中央部分を挟んで天面部10とは反対側の部分で僅かに大きくなっており、この内径が大きくなっている部分に上記のネットホルダ14が嵌合されている。そして、後述するように、空気と混合されることによって泡立てられた内容物がネットホルダ14を通過することによって、きめ細かく均質な泡が形成されるようになっている。
【0016】
キャップ4の内部にシリンダ15が配置されている。シリンダ15は、
図1に示すように、内円筒部6の外周側に嵌合してキャップ4に一体化されており、内円筒部6に嵌合している嵌合部に対してその下側の部分の内径が僅かに小さくなっている。また、シリンダ15の上端部には、半径方向で外側に延びる鍔16が形成されている。鍔16の外径は口部3の先端部の外径(口部3の開口部の外径)程度もしくはそれより僅かに大きい程度の外径である。そして、口部3の先端部(開口端)と鍔16の下面(
図1で鍔16の下面)との間に、気密性および液密性を担保するためにシール材17が挟み込まれている。これら鍔16とシール材17とは、口部3にキャップ4をネジによって取り付けることにより、キャップ4における上面部7と口部3の先端部との間に挟み付けられて、口部3を封止するようになっている。
【0017】
シリンダ15の構成について具体的に説明すると、ここに示すシリンダ15には、空気をノズル体9に押し出す空気ポンプの空気シリンダ18と、内容物をノズル体9に押し出す液体ポンプの液体シリンダ19とが一体に形成されている。空気シリンダ18は、シリンダ15のうち、軸線方向で上述した嵌合部の下側に形成された大径の部分であって、空気シリンダ18の上端側の一部に、ボトル2の内部に空気を取り入れるための第1吸気孔20が空気シリンダ18の板厚方向に貫通して形成されている。液体シリンダ19は、空気シリンダ18より小径の筒状に形成されており、かつ、空気シリンダ18と同心円上に形成されている。また、
図1に示すように、液体シリンダ19の一部は半径方向で空気シリンダ18の内側に形成されている。つまり、液体シリンダ19と空気シリンダ18とは軸線方向に僅かにずれて形成されており、それらの少なくとも一部が半径方向に互いに重なっている。なお、ここに示す例では、液体シリンダ19は空気シリンダ18に連続して形成されている。それらのシリンダ18,19の境界部分は、
図1に示すように、空気シリンダ18の底部を
図1での上方に突出するように湾曲して形成した凸曲面状の部分であり、その境界部分に後述する液体ピストンの鍔が接触することによって、ノズル体9および各ピストンのそれ以上の移動(押し込み)が阻止される。この位置が各ピストンをボトル2側に押し込んだ場合におけるノズル体9および各ピストンのストロークエンドすなわち下死点である。なお、
図1に示す例は、ノズル体9が上死点にある状態を示している。
【0018】
上記の空気シリンダ18の内周面に気密状態を維持して軸線方向(
図1での上下方向)に摺動する空気ピストン21が嵌合されている。これらの空気シリンダ18と空気ピストン21とによって上述した空気ポンプが構成されている。その空気ピストン21は空気シリンダ18の内部を
図1での上下に区画するピストンヘッド22と、ピストンヘッド22と一体となっていて空気シリンダ18の内周面に接触する摺動部23とを有している。ピストンヘッド22によって区画された2つの内部のうち、
図1でピストンヘッド22の下側の内部が空気室24となっている。摺動部23は、
図1に示す例では、円筒状に形成されており、その円筒状部分の上下二箇所で空気シリンダ18の内周面に気密性を維持して摺動可能に接触するように構成されている。そして、摺動部23は軸線方向に往復動することによって上述した第1吸気孔20を開閉するようになっている。
【0019】
半径方向でピストンヘッド22における所定の半径位置には、ピストンヘッド22を板厚方向に貫通して形成され、空気室24の内部に空気を導入する第2吸気孔25が形成されている。また、半径方向でピストンヘッド22の第2吸気孔25より内側部分には、空気室24の内圧に応じて空気室24とボトル2の外部とを連通し、また、空気室24と後述する混合室とを連通する成形弁26が取り付けられている。
【0020】
上記の成形弁26は、ピストンヘッド22に形成された凹部に嵌め込まれる円筒状の軸部と、凹部から露出している軸部の端部から半径方向で外側に延びる環状の外側弁部と、凹部から露出している軸部の端部から半径方向で内側に延びる環状の内側弁部とを備えている。外側弁部は空気室24の内圧がボトル2の外部の圧力より増大した場合に第2吸気孔25を閉じ、空気室24の内圧がボトル2の外部の圧力より低減した場合に第2吸気孔25を開くように、空気室24の内側から第2吸気孔25を覆っている。つまり、この外側弁部によって空気室24に対して外気を導入したり遮断したりする空気吸入弁27が構成されている。内側弁部は前記内圧がボトル2の外部の圧力より高い場合に空気室24と混合室とを連通し、前記内圧がボトル2の外部の圧力より低下した場合に空気室24と混合室との連通状態を遮断するように、後述する液体ピストンの鍔に接触している。つまり、その内側弁部によって混合室に対して空気室24の空気を供給し、あるいは押し出す空気排出弁28が構成されている。
【0021】
また、半径方向でピストンヘッド22の中心部には、ボトル2とは反対側(
図1での上側)に延びている円筒部29が一体に形成されている。円筒部29の一方の端部(
図1での上端部)に、前述したノズル体9に形成されている内筒部12が嵌合すると共に、ネットホルダ14の下端部が嵌合している。
図1に示す例では、円筒部29の一方の端部の外周面に凸条部が形成されると共に、内筒部12の内周面に凸条部に嵌まり合う凹溝部が形成されている。これら凸条部と凹溝部との嵌め合いにより、円筒部29と内筒部12とが強固に連結されている。なお、円筒部29と内筒部12とは、ネジ嵌合やとまり嵌めなどの手段で連結してもよい。
【0022】
円筒部29の一方の端部の内径は、ネットホルダ14の下端部の外径より僅かに大きく形成されている。また、円筒部29の一方の端部のうち、上述した内径の大きい部分の下側の内周面に、半径方向で内側に突出した突起部30が一つ、もしくは複数、形成されている。その突起部30は、ノズル体9が押し込まれた場合に後述する軸状部材の一端部に接触して軸状部材を押し動かするものである。更に、突起部30は流路P内での内容物の流動を特には阻害しないために、その内径はネットホルダ14の内径程度の内径に設定されている。そして、
図1に示すように、ノズル体9が上死点位置にある場合に、後述する軸状部材の弁体部の上端部と当該上端部に接触する突起部30の側面との間にクリアランスCが設定されている。ネットホルダ14の下端部は上述した円筒部29の一方の端部のうち、内径の大きい部分と突起部30とによって形成された嵌合部に嵌まり合うようになっている。こうして空気ピストン21とノズル体9とは一体化され、それらの間の流路P内にネットホルダ14が保持されている。したがって、ノズル体9における天面部10をボトル2側に押圧してノズル体9を押し下げると、空気ピストン21はノズル体9と共にボトル2側に移動し、空気シリンダ18と空気ピストン21とによって区画された空気室24の容積が減少する。そして、空気室24の内部が加圧され、空気室24の内部の空気が空気室24から押し出される。また、突起部30は、空気ピストン21が上述したクリアランスCの分、ボトル2側に押し下げられた場合に、軸状部材の弁体部の上端部に接触してボトル2側に軸状部材を押し下げるようになっている。
【0023】
円筒部29の他方の端部(
図1での下端部)に、液体ポンプの液体ピストン31が嵌合されている。液体ピストン31は
図1に示すように、軸線方向に延びる筒状に形成されており、その一方の端部(
図1での上端部)が円筒部29の他方の端部に嵌合されている。具体的には、円筒部29の他方の端部に液体ピストン31の一方の端部が嵌まり合う軸線方向に窪んだ凹部が形成されている。その凹部の内径は液体ピストン31の一方の端部が嵌まり合う程度の内径に設定されている。また、それらの凹部と液体ピストン31の一方の端部との間には、図示しない空気流路が形成されている。軸線方向で円筒部29の他方の端部と液体ピストン31との嵌合部と、円筒部29の内部に嵌合されたネットホルダ14との間の空間が、空気と液状の内容物とが混合される混合室32となっている。上述した空気流路の一方の端部は上述した円筒部29内の流路Pに連通し、他方の端部は液体ピストン31と空気ピストン21とによって区画された空間に連通している。
【0024】
液体ピストン31の外周面には、半径方向で外側に突出する鍔33が形成されている。その鍔33は上述したように、空気ピストン21および液体ピストン31の下限位置を規定する。また、
図1に示すように、ノズル体9が上死点にある状態では、鍔33の上面に空気排出弁28が接触している。液体ピストン31の他方の端部は、液密状態を維持して軸線方向(
図1での上下方向)に摺動するように、液体シリンダ19の内周面に嵌合されている。したがって、液体シリンダ19と液体ピストン31とによって上述した液体ポンプが構成され、液体シリンダ19と液体ピストン31とによって形成される筒状の空間が液室34となっている。上述したように、ノズル体9における天面部10をボトル2側に押圧してノズル体9を押し下げると、液体ピストン31は空気ピストン21と共にボトル2側に移動し、上記の液室34の容積が減少する。そして、液室34の内部が加圧され、液室34の内部の液体が液室34から押し出されるようになっている。上述した液室34がこの発明の実施形態における一方の内部に相当している。
【0025】
また、液室34の内部には、ノズル体9および各ピストンをボトル2側に押し下げる力を解除した場合に、これらノズル体9および各ピストンを元の位置に復帰移動させる復帰機構と、ノズル体9のポンピングに応じて液室34をボトル2の内部に連通し、また、液室34を混合室32および流路Pに連通する弁機構とが配置されている。先ず、復帰機構について説明すると、復帰機構は、ここに示す実施形態では、コイルスプリング(以下、単にスプリングと記す。)35の弾性力によってノズル体9および各ピストン21,31を復帰移動させるように構成されている。前述した液体ピストン31の他方の端部にスプリング35の一端部を嵌合させるばね受け部が形成され、これと同様のばね受け部が液体シリンダ19の底部内周部に設けられている。スプリング35は、これらのばね受け部の間に圧縮した状態で配置されている。したがって液体ピストン31には、ボトル2側とは反対側(
図1の上側)に押し上げる弾性力が常時作用している。
【0026】
上述した弁機構について説明すると、その弁機構は液室34から内容物を押し出す場合に開となり、ボトル2の内部から液室34の内部に内容物を吸い上げて充填する場合に閉となる逆止弁である。
図2は弁機構の一部を拡大して示す断面図である。
図2に示すように、液体シリンダ19の中心軸線に沿って軸状部材36が配置されている。軸状部材36の一端部は、液体ピストン31の一方の端部から突出している。その軸状部材36の一端部に、弁体部37が一体に形成されている。この弁体部37は、ボトル2とは反対側の軸状部材36の一端部側に向けて外径が次第に増大するテーパー状を成している。
図2に示す例では、そのテーパー状の弁体部37の外周面37Aに、曲率中心が流路Pの中心軸線側にあり、流路Pの半径方向で外側に向けて突出した断面円弧状の凸曲面部37Bがその全周に亘って連続して形成されている。
【0027】
これに対して、液体ピストン31の一方の端部には、半径方向で内側に向けてつまり流路Pの中心軸線側に向けて突出する環状凸部が形成されている。その環状凸部は、軸線方向で弁体部37よりもボトル2側に位置しており、その最小内径は、弁体部37の外径より小さいことにより弁体部37の凸曲面部37Bに密着あるいは係合するように設定されている。具体的には、環状凸部の上面(弁体部37のテーパー面を向く面)は、内径が
図2での上側で次第に大きくなるように、弁体部37の外周面37Aの外形に倣ったロート状に形成されている。したがって、この環状凸部の上面38Aは、弁体部37の凸曲面部37Bに
図2での下側から接触して流路Pおよび液室34を液密状態に閉じるように構成されている。すなわち、環状凸部が弁座部38となっている。また、こうすることにより、凸曲面部37Bと上面38Aとの接触部分は円周方向の全周に亘って連続する一条の線状の接触面となっている。また、それらの接触面積は、弁体部37のテーパー状の外周面37Aと弁座部38の上面38Aとを互いに接触させる場合と比較して低減されている。こうして弁体部37と弁座部38とによって上述した弁機構39が形成されている。
【0028】
なお、弁体部37のテーパー状の外周面37Aがこの発明の実施形態における弁体部の外周面に相当し、凸曲面部37Bがこの発明の実施形態における弁体部の凸曲面部に相当している。また、弁座部38がこの発明の実施形態における弁座部に相当し、弁座部38のロート状の上面38Aがこの発明の実施形態における弁座部の受け面に相当している。したがって、上述した弁体部37と弁座部38とによって構成される弁機構39がこの発明の実施形態における弁機構に相当している。
【0029】
図1に戻って、ポンプフォーマー1について更に説明すると、軸状部材36の弁体部37とは反対側の他方の端部(
図1での下端部)は、
図1に示すように、下向きの矢じり形状もしくは断面三角形状になっている。当該他方の端部は液体シリンダ19の底部に設けられている筒状の係止体40の内部に挿入され、また、係止体40の内周面に接触し、かつ、その状態で係止体40の内周面を摺動するようになっている。より具体的には、軸状部材36の下端部の外径は、係止体40の内周面の内径より僅かに大きく設定されており、その外径を小さくするように弾性変形させられて係止体40の内部に挿入されている。つまり、軸状部材36の他方の端部では、その外周面を係止体40の内周面に接触させるように弾性力が生じており、軸状部材36を軸線方向に移動させる荷重が軸状部材36に特には作用していない状態では、その弾性力や係止体40の内周面と軸状部材36の他方の端部との間の摩擦力によって軸線方向への移動が阻止されている。つまり、軸状部材36の他方の端部が係止体40に対する係合部41となっている。
【0030】
係止体40の一端部(
図1での上端部)の内周部は、上記の矢じり形状あるいは断面三角形状に形成されており、軸状部材36の係合部41に生じている顎の部分に引っ掛かる鉤部42となっている。これにより、係止体40に対して軸状部材36が抜け止めされ、ノズル体9および各ピストン21,31のそれ以上の移動が阻止される。この位置が、各ピストン21,31が元の位置に復帰移動させられた場合におけるノズル体9および各ピストン21,31のストロークエンドすなわち上死点である。軸線方向で係止体40の下側の側面には、液状の内容物の流路となる開口溝43が円周方向に一定の間隔で複数形成されている。係止体40の内側は以下に説明するようにボトル2の内部に連通しているため、係止体40の内側から開口溝43を介してその外側の液室34に内容物が流動するようになっている。
【0031】
液体シリンダ19の底部には、ボトル2の内部から液室34の内部に内容物を吸い上げて充填する場合に開となり、液室34から内容物を押し出す場合に閉となる逆止弁が設けられている。上記の逆止弁は、ここに示す例では、ボール弁44によって構成されており、液体シリンダ19の底部に、内径が上側で次第に大きくなるロート状の弁座部45が形成されている。その弁座部45のテーパー面に対して軸線方向で弁座部45の上側から接触するようにボール46が配置されている。さらに、液体シリンダ19の底部には、ボトル2の内部に充填されている内容物を液室34の内部に導入するためのチューブ47が連結されている。そのチューブ47の先端部はボトル2の図示しない底部付近にまで延びている。
【0032】
ここで、上述したボトル2やポンプフォーマー1の各部材を構成する材料について説明する。ボトル2やポンプフォーマー1の各部材などは、一例として、合成樹脂材料を射出成形して製作することができる。その合成樹脂材料としては熱可塑性樹脂を挙げることができ、特にPE(ポリエチレン)やHDPE(高密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、POM(ポリオキシメチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(リニアポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、AS(アクリロニトリル・スチレン)などを挙げることができる。また、弁体部37の凸曲面部37Bと、弁座部38とのうちの一方は、他方と比較して硬い合成樹脂材料によって構成されることが好ましい。これは、流路Pを確実に閉じるために、弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38との密着性つまり流路Pの密封性を向上するためである。より好ましくは、弁体部37や凸曲面部37Bを構成する合成樹脂材料は、弁座部38を構成する合成樹脂材料よりも硬いことが好ましい。これは、スプリング35の弾性力によって弁座部38の上面38Aに凸曲面部37Bを押し付けて密着性を向上するためである。例えば、弁体部37および凸曲面部37BをPEやHDPE(HDPEのロックウェル硬さの一般値:60~70)によって形成し、弁座部38をPP(PPのロックウェル硬さの一般値:85~110)やPOM(POMのロックウェル硬さの一般値:80~120)などによって形成することが好ましい。
【0033】
次に、この発明に係るポンプフォーマー1の作用・効果について、その動作と共に説明する。
図3はこの発明の実施形態におけるノズル体9をボトル2側に押し込んで弁体部37と弁座部38とが離隔する過程を模式的に示す図であり、
図3の(A)は液体ピストン31が上死点に位置している状態を示す図であり、
図3の(B)は液体ピストン31をボトル2側に押し込んで弁体部37と弁座部38とが離隔した状態を示す図である。ノズル体9に対して、当該ノズル体9をボトル2側に押し込む力が特には作用していない場合には、
図1や
図3の(A)に示すように、ノズル体9は上死点に位置している。この状態では、各ピストン21,31はスプリング35の弾性力によって各シリンダ18,19内の上方(
図1や
図3の(A)での上方)に押し上げられている。弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38の上面38Aとは、スプリング35の弾性力によって互いに密着しており、液室34と、混合室32および流路Pとの連通は遮断されている。また、軸状部材36や凸曲面部37Bは、弁座部38の上面38Aを構成する合成樹脂材料よりも硬い合成樹脂材料によって構成されているので、凸曲面部37Bは押しつぶされることなく線に近い狭い幅で上面38Aに接触する。すなわち、凸曲面部37Bと上面38Aとは狭い面積で確実に密着し、かつ流路Pは確実に密封されている。
【0034】
軸状部材36の係合部41は係止体40の鉤部42に引っ掛かって係止体40に対して抜け止めされている。ボール弁44のボール46は液室34内の内容物によって、あるいは、ボール46の自重によって弁座部45に接触しており、液室34とボトル2の内部との連通は遮断されている。空気シリンダ18に形成されている第1吸気孔20は空気ピストン21の摺動部23によって閉じられている。そして、空気ピストン21が軸線方向に移動しないことにより、空気室24の容積は特には変化しないので、空気吸入弁27によって第2吸気孔25は覆った状態に維持され、また、空気排出弁28は液体ピストン31の鍔33に接触した状態に維持される。つまり、空気吸入弁27および空気排出弁28は共に閉じている。
【0035】
図1や
図3の(A)に示す状態からボトル2側にノズル体9を僅かに押し込むと、その押し込み力を受けて各ピストン21,31がボトル2側に僅かに移動する。また、その時点では、係止体40の内周面に軸状部材36の係合部41を押し付ける上記の弾性力や、係合部41と係止体40の内周面との間の摩擦力以外の力は軸状部材36に対して特には作用していない。そのため、ボトル2側にノズル体9を僅かに押し込んだ状態では、軸状部材36は係止体40に固定され、軸状部材36は各シリンダ18,19に対して停止した状態を維持する。つまり、軸状部材36は液体ピストン31に対して相対移動する。このように軸状部材36と液体ピストン31とが相対移動する状態は、突起部30と軸状部材36とが互いに接触するまで、上述したクリアランスCの分、液体ピストン31がボトル2側に移動するまで生じる。
【0036】
空気ピストン21は液体ピストン31と一体に構成されているので、液体ピストン31の押し込み量つまり軸線方向での移動量と同じ分、ボトル2側に移動する。そして、
図1に示す第1吸気孔20の下側に空気ピストン21の摺動部23が移動し、ピストンヘッド22の上側の空間が第1吸気孔20を介してボトル2の外部に連通する。また、上述した各ピストン21,31の移動に伴って液室34の内容積、および、空気室24の内容積が減少して液室34の内圧、および、空気室24の内圧が増大する。なお、ポンプフォーマー1が未使用であって、未使用のポンプフォーマー1を最初に使用する場合には、液室34の内部に内容物は充填されておらず、空気が満たされている。一方、既にポンプフォーマー1の使用を開始してノズル11から内容物を吐出したことがある場合には、液室34の内部には内容物が充填されている。
【0037】
ノズル体9をボトル2側に更に押し込むと、
図3の(B)に示すように、軸状部材36の弁体部37に突起部30が接触する。そして、弁体部37に突起部30が接触している状態で、ボトル2側にノズル体9を更に押し込むと、各ピストン21,31によって軸状部材36がボトル2側に移動する。つまり、各ピストン21,31と軸状部材36とが一体となって移動し、軸状部材36は各シリンダ18,19に対して相対移動する。軸状部材36の係合部41は係止体40の内周面に押し付けられた状態でボトル2側に摺動する。こうして、空気室24の内容積は更に減少してその内圧が更に増大する。空気室24の内圧によって、第2吸気孔25に空気吸入弁27が押し付けられる。一方、空気排出弁28は液体ピストン31の鍔33から離隔させられる。その結果、空気室24の内部の空気が空気排出弁28から流出し、また、円筒部29と液体ピストン31との嵌合部に形成された空気流路を流動して混合室32に押し出される。
【0038】
これと同様に、液室34の内容積は更に減少してその内圧が更に増大する。そして、液室34の内圧によって弁座部45にボール弁44のボール46が押し付けられ、液室34とボトル2の内部との連通は遮断された状態を維持する。また、この発明の実施形態では、上述したように、弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38の上面38Aとが線接触し、またはそれに近い状態(これらの接触状態を以下、まとめて線接触と記す)で接触していて、弁体部37のテーパー状の外周面37Aと弁座部38の上面38Aとを接触させる場合と比較して、弁体部37と弁座部38との接触面積が低減されている。すなわち、凸曲面部37Bと上面38Aとの間の摩擦力や係合力が低減されていて、液体ピストン31が弁体部37を引き下げる力が小さくなっている。そのため、液室34の内圧によって、弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38の上面38Aとの係合状態を従来になく容易に解除して凸曲面部37Bと上面38Aとを離隔させることができる。こうして、弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38の上面38Aとの間に隙間が形成されて液室34と混合室32とが連通し、液室34の内部の内容物(この場合は空気)は液室34から上記の隙間を介して混合室32に押し出される。
【0039】
液体ピストン31は、上述のようにして弁体部37に先行して押し下げられ、その後、弁体部37の上端部にノズル体9に形成されている突起部30が当接して弁体部37(軸状部材36)が押し下げられる。すなわち、液体ピストン31と軸状部材36とは共に、弁体部37と弁座部38とが離隔したいわゆる開弁状態を維持して押し下げられるので、液室34の容積が、内圧を増大させることなく、縮小する。ノズル体9の押し下げ力を解除すると,液体ピストン31がスプリング35の弾性力で押し上げられるので、その上端部に形成されている弁座部38が、軸状部材36の上端部に形成されている弁体部37に下側から接触する。すなわち、弁体部37と弁座部38とが接触しているいわゆる閉弁状態で液体ピストン31および軸状部材36が一体となって押し上げられるので、液室34の容積が増大する。その場合、液室34は、弁体部37と弁座部38とによって混合室32に対して封止されているから、容積の増大に伴う負圧によってボール弁44が開き、ボトル2内の液状の内容物をチューブ47を介して液室34に吸い上げる。
【0040】
上述したように、ノズル体9を初めて押し下げる場合、液室34には空気が入っていて、軸状部材36の押し下げに対抗する力が弱くなっているが、上述したこの発明に係るポンプフォーマー1では弁体部37と弁座部38との摩擦力あるいは係合力が小さくなっているので、ノズル体9を押し下げると直ちにこれら弁体部37と弁座部38とが離隔して開弁し、その状態で液室34の内容積が減じられる。そのため、液室34の内容積は、内圧を殆ど増大させることなく大きく増減するので、ノズル体9の初回のポンピングによって、多量の内容物を液室34に吸い上げ、空気と置換させることができる。その結果、液状の内容物で液室34を満たすまでに要するポンピング回数を少なくでき、使用開始時の利便性に優れたポンプフォーマー1とすることができる。
【0041】
こうして、液室34に液状の内容物が充分に吸い上げられた状態でノズル体9を押し下げる場合、すなわち通常の使用状態では、液室34から押し出された内容物は、弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38の上面38Aとの間の隙間、および、円筒部29と弁体部37との間の隙間が狭いことにより流速が増大された状態で混合室32に供給される。空気室24から押し出された空気は、上述した空気流路が狭いことにより流速が増大された状態で混合室32に供給される。したがって、混合室32では、空気と液状の内容物とが撹拌された状態となって泡が形成される。その泡は空気室24および液室34から押し出されてくる空気および内容物によって混合室32からネットホルダ14に向かって押し出される。そして、上述した泡はネットホルダ14を通過することによって、きめ細かく均質にされ、その状態で流路Pを流動してノズル11から外部に吐出される。
【0042】
各ピストン21,31がボトル2側に更に移動して空気シリンダ18と液体シリンダ19の境界部分に液体ピストン31の鍔33が接触すると、ノズル体9および各ピストン21,31のそれ以上の移動(押し込み)が阻止される。この位置がノズル体9および各ピストン21,31の下死点側のストロークエンドである。そして内容物が吐出されて空気室24および液室34の内部の圧力が下がり、外部の圧力と平衡になると、内容物の吐出が止まる。
【0043】
ノズル体9をボトル2側に押し込む力を解除すると、スプリング35の弾性力によってノズル体9および各ピストン21,31がボトル2の口部3側に復帰移動を開始する。また、スプリング35の弾性力によって各ピストン21,31が復帰移動を開始した時点では、軸状部材36に対しては、上記の弾性力や摩擦力以外の力は特には作用していない。そのため、軸状部材36は係止体40に保持されて固定された状態つまり、各シリンダ18,19に対しては停止した状態となっている。軸状部材36は液体ピストン31に対しては相対移動する。そのため、弁体部37に対して弁座部38が接近する。
【0044】
上述した復帰移動に伴って、液室34の内容積が増大し、その内部の圧力が大気圧よりも低い、負圧になる。弁体部37と弁座部38とが未だ接触していない状態では、それらの間に隙間が生じている。その隙間を介して、上述した負圧に起因する吸引力によってノズル11から液室34に到る流路P内に残留している泡状の内容物の少なくとも一部が液室34の内部に吸い戻される。このような、液室34の内部に流路P内の泡状の内容物を吸い戻す動作状態は、スプリング35の弾性力によってノズル体9および各ピストン21,31が復帰移動している場合であって、かつ、弁体部37と弁座部38とが接触して液室34と流路Pとの連通状態が遮断されるまで継続して生じる。また、上記の負圧によって弁座部45からボール46が離隔してボトル2の内部に充填されている液状の内容物がチューブ47を介して液室34の内部に吸い上げられる。
【0045】
また、スプリング35の弾性力によって空気ピストン21がボトル2の口部3側に復帰移動すると、それに伴って空気室24の内容積が増大するので、その内部の圧力が低下する。これにより、空気室24の内圧が大気圧よりも低い負圧になる。その負圧によって空気排出弁28は液体ピストン31の鍔33に押し付けられる。一方、空気吸入弁27は負圧によって空気室24側に変位して第2吸気孔25から離隔する。したがって、上記の負圧によってボトル2の外部の空気は、ガイドステム部8と外筒部13との間の空気流路、および、ガイドステム部8と内筒部12との間の空気流路などを介してピストンヘッド22の上側の空間に至り、その空間から第2吸気孔25を介して空気室24に吸引される。
【0046】
スプリング35の弾性力によってノズル体9および各ピストン21,31がボトル2の口部3側に更に復帰移動すると、具体的には、上述したクリアランスCと同じ長さ、ボトル2の口部3側に各ピストン21,31が押し上げられると、弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38の上面38Aとが互いに接触する。凸曲面部37Bは弁体部37の外周面の全周に亘って連続して形成されているので、凸曲面部37Bと上面38Aとの接触部分は円周方向の全周に亘って連続する一条の線状の接触面となっている。つまり、円周方向に隙間なく、弁体部37と弁座部38とを密着できるので、流路Pや液室34を確実に密封できる。また、軸状部材36や凸曲面部37Bは、弁座部38の上面38Aを構成する合成樹脂材料よりも硬い合成樹脂材料によって構成されているので、凸曲面部37Bと上面38Aとの密着性は向上されており、これによっても流路Pや液室34の密封性を向上できる。
【0047】
こうして液室34と流路Pとの連通が遮断されるため、上述した負圧によるノズル11側からの吸引は停止する。一方、ボール弁44を介した液室34とボトル2の内部との連通状態は遮断されない。そのため、前記負圧によってボトル2の内部に充填されている液状の内容物はチューブ47を介して液室34の内部に吸い上げられる。また、空気室24と外部との連通状態は遮断されないので、空気ピストン21の復帰移動に伴う内容積の増大が継続して生じ、その内容積の増大に伴う負圧によって空気室24の内部に空気が吸引される。
【0048】
そして更に、スプリング35の弾性力によって各ピストン21,31がボトル2の口部3側に復帰移動すると、ついには鉤部42に軸状部材36の係合部41が引っ掛かって、ノズル体9および各ピストン21,31の復帰移動が停止する。そして、液室34の内部の圧力と、ボトル2の内部の圧力とが平衡になると、ボトル2の内部に充填された内容物の吸い上げが止まる。同様に、空気室24の内部の圧力と、大気圧とが平衡になると、空気の吸引が止まる。また、摺動部23によって第1吸気孔20が塞がれる。これにより、ボトル2の内部と外部との連通が遮断され、ボトル2の内部への異物の侵入が防止もしくは抑制される。すなわち、ポンプフォーマー1は、
図1や
図3の(A)に示す状態となる。
【0049】
このように、この発明の実施形態に係るポンプフォーマー1では、弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38の上面38Aとが円周方向の全周に亘って連続して線接触していて、その接触面積が従来になく低減されている。そのため、液室34の内部に空気が充填されていて、ノズル体9を押し込む力によって空気が圧縮されてしまい、つまり、ノズル体9をボトル2側に押し込む力が空気の圧縮に消費されてしまい、ノズル体9をボトル2側に押し込む力が弁体部37と弁座部38とを離隔させるように作用しにくくなる場合であっても、液室34の内圧の増大によって弁体部37と弁座部38とを容易に離隔させることができる。したがって、例えば、未使用のポンプフォーマー1を高温の状態で、ある程度長期間に亘って保管することによって、弁体部37と弁座部38とが軟化し、またスプリング35の弾性力によって弁体部37と弁座部38とがスプリング35の弾性力によって互いに嵌合しているとしても、それらの係合状態を比較的容易に解くことができる。すなわち、弁機構39を開いて内容物を吐出するために、ノズル体9を繰り返し押し込む回数を低減できる。その結果、高温の状態である程度長期間に亘って保管した未使用のポンプフォーマー1を最初に使用するときに、内容物を吐出しにくくなる不具合を防止もしくは抑制することができる。ひいてはポンプフォーマー1の信頼性や商品性を向上できる。また、この発明の実施形態では、上述したように、新たな部品を追加することがないため、部品点数の増大やそれに伴うコストや組み付け工数などが増大することがない。したがって、装置の全体として簡易な構成で、内容物を吐出しやすくできる。
【0050】
つぎに、この発明の効果を確認するために行った実施例と比較例とを示す。
【0051】
(実施例)
図1に示す構成のポンプフォーマー1を作成した。また、液状の内容物として水を充填した
図1に示す構成のボトル2を用意し、そのボトル2の口部3に、上記構成のポンプフォーマー1を取り付けた。そして、ポンプフォーマー1の保管箇所の温度および保管期間をそれぞれ変更した各試験条件において、設計上想定した量の内容物を吐出するまでに要したノズル体9の押し込み回数つまりポンピングの回数をカウントした。具体的には、常温すなわち25℃±2℃の範囲内で1週間、2週間、4週間に亘ってポンプフォーマー1を保管した場合におけるポンピングの回数をカウントした。また、高温条件として、60℃で1週間、2週間、4週間に亘ってポンプフォーマー1を保管した場合におけるポンピングの回数をカウントした。試験条件ごとに、10個のポンプフォーマー1を使用し、各ポンプフォーマー1のポンピングの回数の算術平均、および、内容物の吐出のしやすさ、つまり商品としての合否の判定結果を下記の表1にまとめて記載してある。商品としての合否の判定は、ポンピングの回数が所定回数以下であるか否かによって行った。すなわち、ポンピングの回数が4回以下である場合に、内容物を吐出しやすく、商品として合格であるとした。表1において、商品として合格したポンプフォーマー1に「○」を付してある。また、ポンピングの回数が5~9回の場合には、合格に次ぐ次点品と評価し、表1には「△」を付してある。さらに、ポンピングの回数が10回以上であれば、商品として不合格であるとした。表1において、商品として不合格のポンプフォーマー1に「×」を付してある。なお、合格の判定の基準となるポンピング回数は、上述した例では「4回」としたが、利用者が内容物を吐出しやすいと評価する回数は、例えば内容物の種類や品質、1回毎に使用する内容物の量などによって異なる場合があるので、合否の判定の基準とするポンピング回数は実験やモニタリングの結果などによって適宜の回数に設定することができる。
【0052】
(比較例)
弁体部37のテーパー状の外周面37Aに凸曲面部37Bを形成しない以外は、すなわち、弁体部37のテーパー状の外周面37Aと弁座部38の上面38Aとを互いに面接触すように構成した以外は、上述した実施例と同様に構成した。比較例の各ポンプフォーマー1のポンピングの回数の算術平均、および、商品としての合否の判定結果を下記の表1にまとめて記載してある。
【0053】
【0054】
実施例では、各試験条件において、ポンピングの回数は4回であり、全てのポンプフォーマー1が商品として合格となった。これは、実施例のポンプフォーマー1では、高温かつ長期間に亘って保管することによって弁体部37と弁座部38とが軟化して互いに嵌合した場合であっても、弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38の上面38Aとが線接触していることによって、それらの間の摩擦力つまり係合力が従来になく低減されていて、弁体部37(軸状部材36)を引き下げる力が小さく、液室34に空気が充満しているとしても、弁体部37(軸状部材36)が空気圧に支えられて液体ピストン31(弁座部38)によって引き下げられないためであると推察される。すなわち、液室34での内圧の僅かな増大で弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38の上面38Aとの係合状態を解除して、弁体部37と弁座部38を離隔させていわゆる開弁することができる。
【0055】
これに対して比較例では、ポンピングの回数は、保管期間が1週間の場合で5回となり、2週間の場合で7回となり、4週間の場合では10回以上となり、全ての試験条件で商品として不合格となった。これは、実施例と比較して弁体部37と弁座部38との接触面積が大きく、つまり上記の係合力が大きいため、弁体部37(軸状部材36)と弁座部38(液体ピストン31)とが一体となって押し下げられてしまい、液室34への液状の内容物の吸い上げが促進されにくいためであると推察される。
【0056】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されないのであって、弁体部37に凸曲面部37Bを形成し、その凸曲面部37Bを弁座部38の上面38Aに接触させることに替えて、弁座部38の上面38Aに弁体部37側に突出する凸曲面部を形成し、その凸曲面部を弁体部37のテーパー状の外周面に接触させてもよい。あるいは、弁体部37のテーパー状の外周面に凸曲面部37Bを形成することに加えて、弁座部38の上面38Aに凸曲面部を形成し、それらの凸曲面部同士を互いに接触するように構成してもよい。要は、弁体部37と弁座部38との接触面積を減じるように構成されていればよい。また、弁体部37の凸曲面部37Bと弁座部38の上面38Aとの接触点あるいは接触面の形状は、上述したように、円周方向に連続する線状であってもよく、あるいは、軸状部材36の軸線方向に惰行した曲線状であってもよい。さらに、弁体部37の凸曲面部37Bは弁体部37に複数形成されていてもよい。要は、弁体部37と弁座部38とはそれらの接触面積を低減した状態で、かつ、互いに密着して流路Pを遮断できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0057】
1…ポンプフォーマー(ポンプ式吐出装置)
2…ボトル
3…口部
11…ノズル
19…液体シリンダ
30…突起部
31…液体ピストン
34…液室(シリンダとピストンとによって区画された内部のうち、一方の内部)
35…スプリング(復帰機構)
36…軸状部材
37…弁体部(軸状部材の一端部)
37B…凸曲面部
38…弁座部
38A…上面
39…弁機構
P…流路