(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】異常検出装置、異常検出システム、及び、異常検出方法
(51)【国際特許分類】
G08B 21/02 20060101AFI20241030BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241030BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20241030BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B25/04 K
A61B5/11 200
A61B5/00 102C
(21)【出願番号】P 2021030151
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森 大樹
(72)【発明者】
【氏名】皆内 佳奈子
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-501707(JP,A)
【文献】特開平10-113343(JP,A)
【文献】特表2009-525107(JP,A)
【文献】特開2018-032337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
G08B 21/02,25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の状態の情報を計測するセンサの計測値の時系列データ
を変換した前記時系列データの期間毎の周波数成分分布であって異なる期間を対象とする前記時系列データの
前記周波数成分
分布に表れるピークパターンの比較に基づいて、前記対象者の異常を検出する検出部を備え
、
前記検出部は、前記ピークパターンの比較により特定される前記ピークパターンの一過性に基づいて、前記対象者の異常を検出する
ことを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検出装置において、さらに、
前記時系列データを、前記時系列データの期間毎の
前記周波数成分分布に変換する変換部を備え
る
ことを特徴とする異常検出装置。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2に記載の異常検出装置において、
前記検出部は
、前記ピークパターンの比較により特定される前記ピークパターンの継続性に基づいて、前記対象者の行動を検出する
ことを特徴とする異常検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の異常検出装置において、さらに、
前記対象者の状態の情報を計測する前記センサを備える
ことを特徴とする異常検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の異常検出装置において、さらに、
前記検出部による検出結果を分類した分類結果に応じた情報を前記対象者に報知する報知部を備える
ことを特徴とする異常検出装置。
【請求項6】
対象者の状態の情報を計測するセンサと、
異常検出装置と、を備え、
前記異常検出装置は、
前記センサの計測値の時系列データ
を変換した前記時系列データの期間毎の周波数成分分布であって異なる期間を対象とする前記時系列データの
前記周波数成分
分布に表れるピークパターンの比較に基づいて、前記対象者の異常を検出する検出部を備え
、
前記検出部は、前記ピークパターンの比較により特定される前記ピークパターンの一過性に基づいて、前記対象者の異常を検出する
ことを特徴とする異常検出システム。
【請求項7】
請求項6に記載の異常検出システムにおいて、さらに、
前記検出部による検出結果を分類した分類結果に応じた情報を前記対象者に報知する報知装置を備える
ことを特徴とする異常検出システム。
【請求項8】
対象者の状態の情報を計測するセンサの計測値の時系列データ
を変換した前記時系列データの期間毎の周波数成分分布であって異なる期間を対象とする前記時系列データの
前記周波数成分
分布に表れるピークパターンを比較し、
前記ピークパターンの比較により特定される前記ピークパターンの一過性に基づいて、前記対象者の異常を検出する
ことを特徴とする異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、異常検出装置、異常検出システム、及び、異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対象者の行動をモニタリングして異変又はその兆候を早期に検出することで、重大事故の発生を未然に回避する試みが盛んに研究されている。対象者の行動のモニタリングに関連する技術は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0003】
上述した研究においては、対象者に取り付けられたセンサの計測値から、歩く、走る、昇降するなどの対象者の日常的な行動を検出することに加え、対象者が意図せずに若しくは意図に反して行う動作(即ち、対象者の異常な動作。以降、単に対象者の異常という。)を検出することが重要である。
【0004】
対象者の異常の典型的な例は、所謂ヒヤリハットとともに生じる対象者の動作であり、具体的には、例えば、つまずき、スリップ、転倒、接触、衝突、落下などが含まれる。なお、ここで、ヒヤリハットとは、一般に、重大な事故(アクシデント)には至らなかったものの、重大な事故を引き起こしかねない事例(インシデント)、又は、その事例の認知をいう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】品川 佳満 他、「加速度センサを用いた人間の歩行・転倒の検出」川崎医療福祉学会誌、1999年、vol.9 no.2 243-250
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1では、加速度センサを用いて対象者の歩行(日常的な行動)と転倒(異常動作)を検出する方法について検討され、その検討結果が記載されている。しかしながら、非特許文献1において結論付けられているように、加速度センサの計測結果のみから転倒などの対象者の異常を検出することは容易ではない。特に、対象者の日常的な行動と区別して対象者の異常を検出することは、従来技術においては難しく、新たな着想によるさらなる技術の向上が期待されている。
【0007】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、日常的な行動と区別して対象者の異常を検出する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る異常検出装置は、対象者の状態の情報を計測するセンサの計測値の時系列データを変換した前記時系列データの期間毎の周波数成分分布であって異なる期間を対象とする前記時系列データの前記周波数成分分布に表れるピークパターンの比較に基づいて、前記対象者の異常を検出する検出部を備え、前記検出部は、前記ピークパターンの比較により特定される前記ピークパターンの一過性に基づいて、前記対象者の異常を検出する。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、日常的な行動と区別して対象者の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るシステムの構成を例示した図である。
【
図2】一実施形態に計測装置のハードウェア構成を例示した図である。
【
図3】一実施形態に異常検出装置の機能的構成を例示した図である。
【
図4】一実施形態に係るシステムの構成要素間のやり取りを示すシーケンス図の一例である。
【
図5】一実施形態に係るシステムで行われる処理を示すフローチャートの一例である。
【
図6】一実施形態に係る計測装置で計測されたデータの一例である。
【
図7】一実施形態に係る計測装置で計測されたデータの周波数分布を示すデータの一例である。
【
図8】一実施形態に係る異常検出装置で行われる時間周波数解析について説明する図である。
【
図10】一実施形態に係るシステムで行われる処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図11】一実施形態に係るシステムの機能構成と装置構成の関係を示す図である。
【
図12】別の実施形態に係るシステムの機能構成と装置構成の関係を示す図である。
【
図13】更に別の実施形態に係るシステムの機能構成と装置構成の関係を示す図である。
【
図14】更に別の実施形態に係るシステムの機能構成と装置構成の関係を示す図である。
【
図15】更に別の実施形態に係るシステムの機能構成と装置構成の関係を示す図である。
【
図16】上述した実施形態に係る異常検出装置を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、一実施形態に係るシステムの構成を例示した図である。
図1に示すシステム100は、対象者1の異常を検出する異常検出システムの一例である。まず、
図1を参照しながら、システム100の構成について説明する。
【0012】
以下では、異常が大きな事故につながりやすい、例えば、工場や建築現場などで働く作業者が対象者1である場合を例に説明する。ただし、対象者1は、上記のような作業者に限らない。対象者1は、例えば、病院に入院中の入院患者、介護施設に入所中の要介護者などであってもよく、その他、見守りが必要な高齢者などであってもよい。即ち、システム100は、異常の早期発見と注意喚起が異常の深刻化や重大事故の発生などの防止に効果的な任意の者を対象として構築されてもよい。また、対象者1の異常が、どのような動作環境下で発生したかを解析することで、労働環境および生活環境などの環境改善に役立ててもよい。
【0013】
なお、本明細書において、対象者の異常とは、主に、対象者の異常な動作を意味し、例えば、つまずき、スリップ、転倒、接触、衝突、落下など、対象者が意図せずに若しくは意図に反して行う動作を意味する。ただし、対象者の異常は、例えば、発熱、冷や汗、動悸、息切れ、震えに代表される対象者の身体的変調を含んでもよい。即ち、対象者の異常は、広く対象者の異常な状態を含んでもよい。
【0014】
システム100は、対象者1に取り付けた計測装置10と、計測装置10で取得した情報を解析する異常検出装置40を含んでいる。システム100は、さらに、対象者1が所持する報知装置20を含んでもよい。
【0015】
システム100を構成する各装置は、ネットワーク30を介して通信可能に接続されている。各装置間の通信は、図示しない他の装置を介在して行われてもよい。また、各装置間の通信は、アドホック通信モードで直接に行われてもよい。ここで、通信は、無線通信であってもよく、有線通信であってもよい。また、無線通信と有線通信の組み合わせであってもよい。
【0016】
システム100では、計測装置10で取得した情報に基づいて、異常検出装置40が対象者1の異常を検出する。異常検出装置40は、検出した異常をさらに解析していくつかのカテゴリに分類してもよい。また、異常検出装置40は、検出した異常を、位置情報など対象者1のその他の情報と関連付けて記録してもよい。また、異常検出装置40は、検出した異常を報知装置20へ通知し、報知装置20が対象者1に異常の分類に応じた情報を報知してもよい。
【0017】
図1では、計測装置10を装着した対象者として一人の対象者1のみが例示されているが、システム100には、複数の対象者1に装着された複数の計測装置10が含まれてもよく、異常検出装置40は、複数の計測装置10からの情報を処理してもよい。また、一人の対象者1に複数の計測装置10が装着されてもよい。
【0018】
図2は、一実施形態に計測装置のハードウェア構成を例示した図である。
図3は、一実施形態に異常検出装置の機能的構成を例示した図である。
図2及び
図3を参照しながら、システム100の構成についてさらに詳細に説明する。
【0019】
計測装置10は、
図2に示すように、対象者1の状態の情報を計測するセンサ11を含んでいる。計測装置10は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)であってもよく、センサ11として、加速度、角速度などを計測する慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)などを含んでもよい。センサ11は、さらに、傾斜角を計測する傾斜センサ、位置を計測するGPS(Global Positioning System)や屋内向け測位センサ、圧力を計測する圧力センサ、バイタルサインやその他の生体情報を計測する生体センサなどを含んでもよい。
【0020】
計測装置10は、センサ11に加えて、計測装置10の動作を制御するマイクロプロセッサ12と、センサ11で計測した計測値のデータなどを記憶するメモリ13と、外部装置(異常検出装置40、報知装置20など)と通信する通信回路14と、電力を供給するバッテリ15を備えている。
【0021】
計測装置10では、マイクロプロセッサ12の制御下で、センサ11が対象者1の状態の情報を計測して、メモリ13がセンサ11の計測値を記憶する。さらに、通信回路14がメモリ13に記憶されている計測値の時系列データを異常検出装置40へ送信する。
【0022】
計測装置10は、例えば、
図1に示すように、対象者1が身に着けているベルトなどに固定することで対象者1の腰の位置に取り付けられる。なお、計測装置10を体の中心に近い腰の位置に取り付けることで、腕及び足など体の部位の局所的な動きの影響を抑えて体全体の動きを計測することが可能となる。このため、慣性計測装置としての計測装置10の取り付け位置として好適である。
【0023】
ただし、計測装置10の取り付け位置は、上記の例に限らない。計測装置10は、例えば、ヘルメットに固定して頭の位置に取り付けられてもよい。また、計測装置10は、センサ11の種類に応じた適切な位置に取り付けられてもよい。
【0024】
さらに、計測装置10は、スマートウオッチやスマートグラスなどのウェアラブル機器に組み込まれてもよい。また、計測装置10は、対象者1によって保持されてもよく、例えば、対象者1が保持するスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末に組み込まれてもよい。また、計測装置10は、対象者1に埋め込まれてもよい。
【0025】
報知装置20は、対象者1に情報を報知する装置である。報知装置20が報知する情報は、対象者1に視覚的に提示されてもよく、聴覚的に提示されてもよく、触覚的に提示されてもよい。報知装置20は、例えば、ディスプレイを備えた表示デバイスであってもよく、情報を表示することで対象者1に情報を報知してもよい。報知装置20は、例えば、LEDなどを備える発光デバイスであってもよく、光の点灯、点滅などを行うことで対象者1に情報を報知してもよい。報知装置20は、例えば、スピーカを備えた音声出力デバイスであってもよく、音声や警告音などを出力することで対象者1に情報を報知してもよい。報知装置20は、例えば、バイブレータなどであってもよく、振動により対象者1に情報を報知してもよい。
【0026】
報知装置20では、異常検出装置40からの異常検出の通知を受信すると、例えば、通知に含まれる異常の分類に応じて異なる情報を対象者1に報知する。
【0027】
報知装置20は、必ずしも対象者1に固定される必要はなく、例えば、
図1に示すように、対象者1が手に持っていてもよい。また、対象者1は、報知装置20をポケットやカバンなどに入れて持ち歩いてもよい。その他、報知装置20は、計測装置10と同様に、ベルトなどに固定されてもよい。また、報知装置20は、対象者1が保持するスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末に組み込まれてもよく、対象者1が身に着けるウェアラブル機器に組み込まれてもよい。
【0028】
異常検出装置40は、対象者1の異常を検出する装置である。異常検出装置40は、特に限定しないが、例えば、サーバコンピュータ(タワー型サーバ、ラックマウント型サーバ、ブレード型サーバ)、パーソナルコンピュータ(デスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータ)であってもよい。また、異常検出装置40は、異常検出に十分な処理能力を有する限り、スマートフォン、携帯電話など、その他のコンピュータであってもよい。
【0029】
異常検出装置40は、
図3に示すように、制御部41と、通信部45と、記録部46を含んでいる。制御部41は、変換部42、検出部43、分類部44を含み、さらに、その他の機能部を備えてもよい。
【0030】
制御部41は、計測装置10から出力されたセンサ11の計測値の時系列データに対して時間周波数解析を行い、解析結果に基づいて対象者1の異常を検出する。変換部42は、センサ11の計測値の時系列データを、時系列データの期間毎の周波数成分分布に変換する。検出部43は、変換部42で生成された異なる期間を対象とする時系列データの周波数成分分布の比較に基づいて、対象者1の異常を検出する。分類部44は、検出部43の検出結果を分類する。通信部45は、制御部41の指示に従って計測装置10や報知装置20などの他の装置と通信する。記録部46は、検出部43で検出した対象者1の異常を記憶する。また、記録部46は、分類部44が検出結果を分類するときに参照する情報を記憶してもよい。
【0031】
以下、システム100で行われる異常検出処理について説明する。
【0032】
図4は、一実施形態に係るシステムの構成要素間のやり取りを示すシーケンス図の一例である。システム100で行われる異常検出処理は、例えば、
図4に示すように、計測装置10で行われる処理(計測処理)と、異常検出装置40で行われる処理(検出処理)と、報知装置20で行われる処理(報知処理)と、で構成されてもよい。
【0033】
まず、計測装置10が計測処理を開始する。計測処理では、計測装置10で計測された計測値の時系列データ(
図4の計測データ)が、計測装置10から異常検出装置40へ例えば定期的に送信される。異常検出装置40は、計測データを受信すると検出処理を開始する。検出処理では、計測データが解析される。対象者1の異常が検出されると、異常検出装置40から報知装置20へ異常検出が通知される。報知装置20は、異常検出の通知を受信すると報知処理を開始する。報知処理では、受信した通知に応じた情報が対象者1に報知される。
【0034】
図5は、一実施形態に係るシステムで行われる処理を示すフローチャートの一例である。
図6は、一実施形態に係る計測装置で計測されたデータの一例である。
図7は、一実施形態に係る計測装置で計測されたデータの周波数分布を示すデータの一例である。
図8は、一実施形態に係る異常検出装置で行われる時間周波数解析について説明する図である。
図9は、分類基準情報の一例を示す図である。
図5から
図9を参照しながら、システム100で行われる異常検出処理についてさらに詳細に説明する。
【0035】
システム100で行われる異常検出処理は、例えば、
図5に示すように、6つの処理(計測処理、変換処理、比較・検出処理、分類処理、記録処理、報知処理)を含んでもよい。
図5に示す異常検出処理は、例えば、計測装置10が起動することで、システム100によって開始されてもよい。
【0036】
異常検出処理が開始されると、計測装置10が計測処理を行う(ステップS1)。ステップS1では、センサ11が対象者1の状態の情報を計測する。センサ11が計測した対象者1の状態の情報は、例えば、一定の周期でサンプリングされ、メモリ13がサンプリングによって得られたデータを記憶する。
【0037】
図6に示すデータ1000は、センサ11が加速度センサである場合に、対象者1の歩行期間中、センサ11の計測値をサンプリングすることによって得られた、センサ11の計測値の時系列データの一例である。メモリ13が記憶した時系列データは、マイクロプロセッサ12の制御の下で、所定のタイミングで通信回路14を用いて計測装置10から異常検出装置40へ送信される。なお、計測処理は、例えば、計測装置10の起動後、計測装置10を停止するまで、繰り返し行われる。
【0038】
計測値の時系列データを受信すると、異常検出装置40は、計測値の時系列データに対して時間周波数解析を行い、対象者1の異常を検出する(ステップS2からステップS4)。即ち、異常検出装置40は、計測値の時系列データの対象期間によって時系列データに含まれる周波数成分がどのように変化するかを解析し、解析結果に基づいて対象者1の異常を検出する。
【0039】
異常検出装置40は、まず、計測値の時系列データを変換する(ステップS2)。ここでは、制御部41は、変換部42として動作する。制御部41は、計測値の時系列データに対して例えばフーリエ変換を実行し、時系列データに含まれる周波数成分を抽出したデータを生成する。
図7に示すデータ2000は、
図6に示すデータ1000をフーリエ変換することによって得られた周波数分布の一例である。
【0040】
より詳細には、ステップS2では、変換部42は、計測値の時系列データの対象期間を少しずつずらしながら、時系列データの変換を繰り返し実行する。変換部42は、例えば、一定の大きさの窓関数を用いて時系列データを切り出して、切り出されたデータに対してフーリエ変換を行ってもよい。
図8には、計測値の時系列データから異なる対象期間の時系列データ(データ1001、データ1002、データ1003、データ1004)を切り出して、それぞれに対してフーリエ変換を行い、対象期間毎に時系列データの周波数成分分布(データ2001、データ2002、データ2003、データ2004)を生成する例が示されている。
【0041】
周波数成分分布が生成されると、異常検出装置40は、生成された周波数成分分布を比較して対象者1の異常を検出する(ステップS3)。ここでは、制御部41は、検出部43として動作する。制御部41は、異なる期間を対象とする時系列データの周波数成分の比較に基づいて、対象者1の異常を検出する。制御部41は、例えば、異なる期間を対象とする時系列データの周波数成分分布に表れるピークパターンの比較に基づいて、対象者1の異常を検出してもよい。
【0042】
一般に、つまずき、スリップ、転倒、接触、衝突、落下などに代表される人の異常な動作は、瞬間的に生じる動作であり、この点において、歩く、走る、昇降などの人の日常的な行動とは異なっている。つまり、周波数成分分布の継続性の有無という面において、日常的な行動と異常な動作とは異なっている。
【0043】
制御部41は、この周波数成分分布の継続性の有無に注目して、対象者1の異常を検出してもよい。具体的には、制御部41は、例えば、異なる期間を対象とする時系列データの周波数成分のピークパターンを比較し、ピークパターンの比較により特定されるピークパターンの一過性に基づいて、対象者1の異常を、日常的な行動とは区別して検出してもよい。また、制御部41は、対象者1の異常に加えて、対象者1の日常的な行動を検出してもよく、例えば、ピークパターンの比較により特定されるピークパターンの継続性に基づいて、対象者1の行動を検出してもよい。
【0044】
日常的な行動は、行動の種類に応じてさまざまな周波数成分を含む。このため、日常的な行動には、比較的低い周波数成分(例えば、歩く)から比較的高い周波数成分(例えば、走る)まで広い範囲の周波数成分が含まれ得る。これに対して、異常な動作は、瞬間的に大きな加速度の変化を伴う動作であり、高い周波数成分が支配的である。つまり、異常な動作は、周波数成分分布に含まれるピークの周波数によっても、少なくとも一部の日常的な行動と区別可能である。
【0045】
制御部41は、このピークの周波数範囲に注目して、対象者1の異常をより精度良く検出してもよい。具体的には、制御部41は、例えば、異なる期間を対象とする時系列データの周波数成分のピークパターンを比較し、一時的に生じたピークの周波数に基づいて対象者1の異常を検出してもよい。この場合、制御部41は、ピークの周波数が高い場合に、対象者1の異常を検出するが、ピークの周波数が高いか否かの判断方法は、特に限定しない。予め決められた閾値によって判断されてもよく、また、歩行などの他のピークの周波数との比較により判断されてもよい。さらに、制御部41は、例えば、継続して生じているピークの周波数に基づいて対象者1の行動を検出してもよい。
【0046】
図8を参照しながら、歩行中につまずいた場合について説明する。
図8に示すように、歩行中の周波数成分分布に表れるピークパターンには、歩行を示す比較的低い周波数のピークのみが含まれる(データ2001、データ2002)。歩行速度などに応じてピークの高さや周波数はある程度変動するが、歩行中は常に比較的低い周波数にピークが生じている。このため、ピークの周波数と継続性から、制御部41は、対象者1が歩行中であることを検出することができる。次に、対象者1が歩行中につまずくと、つまずいたタイミングを含む期間の周波数成分分布に表れるピークパターンには、歩行を示すピークの他に、歩行より高い周波数を有するピークが含まれる(データ2003)。このピークは、次の期間の周波数成分分布に表れるピークパターンには含まれない(データ2004)。このため、ピークの周波数と一過性から、制御部41は、対象者1が歩行中につまずいたことを検出することができる。
【0047】
なお、ここでは、ピークが対象期間の2周期未満で消滅した場合にピークが一過性のものであると判断する例を示したが、ピークが一過性のものか否かは対象期間の長さによって適宜変更してもよい。例えば、対象期間の3周期未満で消滅したピークを一過性のピークと判断し、3周期以上にわたって連続して検出されたピークを継続的なピークと判断してもよい。
【0048】
ステップS3で対象者1の異常が検出されると、異常検出装置40は、検出された異常を分類する(ステップS4)。ここでは、制御部41は、分類部44として動作する。制御部41は、例えば、周波数成分分布に含まれる検出した異常を示すピークの特徴に基づいて検出した異常を分類してもよい。
【0049】
ピークの特徴に基づく異常の分類には、例えば、記録部46に記憶されている分類基準情報3000が用いられてもよい。分類基準情報3000には、例えば、
図9に示すように、異常の分類毎に、ピークが有する「継続性/一過性」、「周波数帯」、「その他」の特徴が含まれてもよい。「その他」には、例えば、ピークの強度や幅などの特徴が含まれてもよい。分類基準情報3000には、
図9に示すように、異常を分類するための情報に加えて、日常的な行動を分類するための情報が含まれてもよい。
【0050】
ステップS4では、分類基準情報3000の代わりに学習済みモデルを用いて分類が行われてもよい。例えば、ベクトルデータに変換したピークの特徴と異常及び行動との関係を予め学習した学習済みモデルを用いて、検出結果を分類してもよい。
【0051】
ステップS4では、検出した異常の分類に加えて、検出した行動の分類が行われてもよい。即ち、制御部41は、異常動作と日常的な行動を問わず、検出部43によって検出された検出結果を分類してもよい。さらに、制御部41は、ピークの特徴に加えてその他の情報を用いて、検出結果を分類してもよい。例えば、制御部41は、センサ11の情報(例えば、種類、設置された向き)を用いて検出結果を分類してもよく、別のセンサのデータを用いて検出結果を分類してもよい。
【0052】
ステップS4で異常が分類されると、異常検出装置40は、検出された異常を記録する(ステップS5)。ここでは、記録部46は、制御部41の制御の下で、ステップS3で検出された対象者1の異常をステップS4で分類されたカテゴリ(分類結果)の異常として記録する。記録部46は、異常のカテゴリとともに種々の情報を記録してもよい。記録部46は、例えば、異常が検出された対象期間の日時情報、対象期間における対象者1の位置情報、異常発生前後の対象者1の行動に関する情報などを、異常のカテゴリとともに記録してもよい。なお、異常検出装置40は、ステップS5では、検出された異常を記録するとともに、異常のカテゴリについての情報を含む異常検出通知を報知装置20へ送信する。
【0053】
異常検出装置40から通知を受信すると、報知装置20は、カテゴリに応じた情報を対象者1に報知する(ステップS6)。カテゴリに応じた情報は、例えば、対象者1に対してカテゴリに応じた内容の注意を促す警告である。
【0054】
以上のように、異常検出装置40は、
図4及び
図5に示す異常検出処理の全部または一部を行うことで、日常的な行動と区別して対象者1の異常を検出することができる。特に、異常検出装置40は、センサの計測値の時系列データの周波数成分を用いることで、時系列データ上では複雑なパターンとして表れる異常の特徴を比較的単純なパターン(例えば、周波数成分分布におけるピーク)に変換することができる。また、異常検出装置40は、時系列データに対して時間周波数解析を行うことで、異なる期間を対象とする時系列データの周波数成分を比較し、単純化したパターンの継続性の有無に基づいて異常動作を日常的な行動と区別して検出することができる。従って、異常検出装置40によれば、容易に且つ高い精度で日常的な行動と区別して対象者1の異常を検出することができる。
【0055】
また、システム100は、
図4及び
図5に示す異常検出処理を行うことで、異常検出装置40が検出した異常の分類に応じた情報を対象者1に報知することができる。従って、システム100によれば、検出した異常の分類に応じた情報を報知することで対象者1に注意を促すことができるため、重大事故の発生を未然に防ぐことができる。
【0056】
図10は、一実施形態に係るシステムで行われる処理の具体例を示すフローチャートである。以下、
図10を参照しながら、
図5に示す処理を、センサ11として少なくとも加速度センサと傾斜センサを含む計測装置10を含むシステム100に実装した実施例を示す。
【0057】
システム100では、まず、対象者1に取り付けられた計測装置10がセンサ11で加速度を計測する(ステップS101)。次に、異常検出装置40がセンサ11で計測した加速度の時系列データから対象期間のデータを切り出してフーリエ変換を行う(ステップS102)。その後、異常検出装置40は、フーリエ変換により得られた周波数成分分布に歩行以外を示すピークがあるか判定する(ステップS103)。歩行以外のピークの有無を判定する方法については、特に限定しないが、例えば、最も頻繁に生じる比較的低いピークを、歩行を示すピークと見做すことで行われてもよい。
【0058】
歩行以外のピークが存在しない場合には(ステップS103NO)、システム100は、
図10に示す処理を終了する。一方、歩行以外のピークが存在する場合には(ステップS103YES)、異常検出装置40は、その歩行以外のピークが継続して生じているかを判定する(ステップS104)。ステップS104では、例えば、先行する対象期間における周波数成分分布にもその歩行以外のピークが生じていたか否かに基づいてピークの継続性を評価してもよい。
【0059】
異常検出装置40は、ピークが継続していないと判定すると(ステップS104NO)、さらに、異常検出装置40は、傾斜センサの計測値(傾斜角)に基づいて、歩行以外のピークが検出された対象期間以降、対象者1が継続して傾斜した状態にあるか否かを判定する(ステップS105)。傾斜センサの計測値が継続して傾斜していることを示している場合には(ステップS105YES)、対象者1が転倒している状況が想定されるため、異常検出装置40は、対象者1の異常を転倒に分類して報知装置20ヘ通知し、報知装置20が転倒時用のアラームを発する(ステップS106)。一方、傾斜センサの計測値が継続して傾斜していることを示していない場合には(ステップS105NO)、対象者1がつまずいたことが想定されるため、異常検出装置40は、対象者1の異常をつまずきに分類して報知装置20ヘ通知し、報知装置20がつまづき時用の警告(例えば、“足元に気を付けてください”などのメッセージ)を発する(ステップS107)。
【0060】
異常検出装置40は、ピークが継続していると判定すると(ステップS104YES)、そのピークの幅が閾値未満か否かを判定する(ステップS108)。ピークの幅が閾値未満でない場合には(ステップS108NO)、ピークは対象者1の行動に起因するものと想定されるため、異常検出装置40は、さらに、加速度の軸が水平方向か垂直方向を判定する(ステップS109)。ここでは、例えば、ピークが検出された対象期間の3軸加速度センサの計測値に基づいて加速度の軸を判定してもよい。異常検出装置40は、加速度の軸が水平方向であると判定すると、そのピークは駆け足によるものであると考えられるため、異常検出装置40は、対象者1の行動を駆け足(走る)に分類して報知装置20ヘ通知し、報知装置20が駆け足時用の警告(例えば、“危険ですので走らないでください”などのメッセージ)を発する(ステップS110)。一方、異常検出装置40は、加速度の軸が垂直方向であると判定すると、そのピークは昇降動作によるものであると考えられるため、異常検出装置40は、対象者1の行動を昇降に分類して報知装置20ヘ通知し、報知装置20が昇降時用の警告(例えば、“階段に気を付けてください”などのメッセージ)を発する(ステップS111)。また、ステップS108でピークの幅が閾値未満である場合には(ステップS108YES)、ピークは機械的振動に起因するものと想定されるため、異常検出装置40は、対象者1の周囲に機械的振動を発生する重機等が存在することが想定されることを報知装置20ヘ通知し、報知装置20が周囲警戒用の警告(例えば、“周囲をよく見て行動してください”などのメッセージ)を発する(ステップS112)。
【0061】
以上のように、システム100によれば、加速度センサと傾斜センサを含む計測装置10からの情報に基づいて、対象者1の異常と日常的な行動を区別して検出することができる。また、周囲に警戒が必要な対象者1の状態についても検出することができる。
【0062】
図11は、上述した実施形態に係るシステムの機能構成と装置構成の関係を示す図である。上述したシステム100は、上述した異常検出処理を行う機能構成のうち、センサ部を計測装置(計測装置10)が担い、報知部を報知装置(報知装置20)が担い、その他の機能部(変換部、検出部、分類部、記録部)を異常検出装置(異常検出装置40)が担う構成を採用しているが、機能構成と装置構成の関係は、この例に限らず、例えば、
図12から
図15に示す関係が採用されてもよい。なお、
図11に示す構成は、対象者1側に必要な機能部以外はサーバ側に集約した構成であるため、複数の対象者1に同様の機能を効率良く提供することができるという点で望ましい。
【0063】
図12は、別の実施形態に係るシステムの機能構成と装置構成の関係を示す図である。
図12に示すシステム200は、センサ部と報知部が同一の装置(計測報知装置)によって実現されている点でシステム100とは異なっている。その他の点は、同様である。
図12に示す構成は、対象者側に必要な装置の数を最小限にできるという点で望ましい。
【0064】
図13は、更に別の実施形態に係るシステムの機能構成と装置構成の関係を示す図である。
図13に示すシステム300は、計測装置が変換部を兼ねる点でシステム100とは異なっている。その他の点は、同様である。計測装置の性能によっては
図13に示す構成が採用されてもよい。
【0065】
図14は、更に別の実施形態に係るシステムの機能構成と装置構成の関係を示す図である。
図14に示すシステム400では、報知部以外の機能部を異常検出装置が担う。この構成では、異常検出装置が対象者側に設けられるため、例えば、インターネット上に異常検出装置を配置した場合と比較して通信遅延や通信障害などの影響を受けにくいという点で望ましい。また、報知部のみを別の装置(報知装置)が担うことで、既存の端末(例えば、対象者1が所持するスマートフォンなど)を有効活用することができる。
【0066】
図15は、更に別の実施形態に係るシステムの機能構成と装置構成の関係を示す図である。
図15に示すシステム500では、すべての機能部を異常検出装置が担う。この構成では、
図12に示すシステム200と同様に、対象者側に必要な装置の数を最小限に抑えながら、通信遅延や通信障害の影響を回避することができるという点で望ましい。
【0067】
図16は、上述した実施形態に係る異常検出装置を実現するためのコンピュータ50のハードウェア構成を例示した図である。
図16に示すハードウェア構成は、例えば、プロセッサ51、メモリ52、記憶装置53、読取装置54、通信インタフェース56、及び入出力インタフェース57を備える。なお、プロセッサ51、メモリ52、記憶装置53、読取装置54、通信インタフェース56、及び入出力インタフェース57は、例えば、バス58を介して互いに接続されている。
【0068】
プロセッサ51は、例えば、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサやマルチコアであってもよい。プロセッサ51は、メモリ52を利用して例えば上述の動作フローの手順の全部又は一部を記述したプログラムを実行することにより、上述した制御部41の一部または全部の機能を提供するプロセッサ51は、記憶装置53に格納されているプログラムを読み出して実行することで、例えば、変換部42、検出部43、分類部44として動作する。
【0069】
メモリ52は、例えば、半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んでいてよい。記憶装置53は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、または外部記憶装置である。
【0070】
読取装置54は、例えば、プロセッサ51の指示に従って着脱可能記憶媒体55にアクセスする。着脱可能記憶媒体55は、例えば、半導体デバイス、磁気的作用により情報が入出力される媒体、光学的作用により情報が入出力される媒体などにより実現される。なお、半導体デバイスは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリである。また、磁気的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、磁気ディスクである。光学的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray Disc等(Blu-rayは登録商標)である。
【0071】
上述の記録部46は、例えば、メモリ52、記憶装置53、および着脱可能記憶媒体55を含んでよい。通信インタフェース56は、例えば、プロセッサ51の指示に従って、他の装置と通信する。例えば、コンピュータ50は、通信インタフェース56を介してセンサ11から計測値を収集してよい。通信インタフェース56は、上述の通信部45の一例である。
【0072】
入出力インタフェース57は、例えば、入力装置および出力装置との間のインタフェースである。入力装置は、例えば、ユーザからの指示を受け付けるキーボード、マウス、タッチパネルなどのデバイスである。出力装置は、例えばディスプレイなどの表示装置、およびスピーカなどの音声装置である。
【0073】
実施形態に係る各プログラムは、例えば、下記の形態でコンピュータ50に提供される。
(1)記憶装置53に予めインストールされている。
(2)着脱可能記憶媒体55により提供される。
(3)プログラムサーバなどのサーバから提供される。
【0074】
なお、
図16を参照して述べた異常検出装置を実現するためのコンピュータ50のハードウェア構成は例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の構成の一部が、削除されてもよく、また、新たな構成が追加されてもよい。また、別の実施形態では、例えば、上述の制御部41の一部または全部の機能がFPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System-on-a-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、およびPLD(Programmable Logic Device)などによるハードウェアとして実装されてもよい。
【0075】
以上において、いくつかの実施形態が説明される。しかしながら、実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の各種変形形態および代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、各種実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の実施形態が実施され得ることが理解されよう。更には、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加して種々の実施形態が実施され得ることが当業者には理解されよう。
【0076】
例えば、上述した実施形態では、対象者1の異常を対象者1自身に報知する例を示したが、報知対象は対象者1に限らない。対象者1が事故に遭遇した場合などには、対象者1自身よりもむしろ対象者1の周囲の人に対象者1の異常を報知してもよい。また、対象者1が工事件場などで作業している場合であれば、現場の監督者などに報知してもよい。また、システムの管理者に報知してもよく、予め決めた任意の人に通知し対象者1の異常を報知してもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、対象者1側に設けられた計測装置10で取得した計測データをネットワーク経由で異常検出装置40へ送信する例を示したが、データのやり取りはネットワーク通信を用いた方法に限らない。例えば、メモリカードなどの記録媒体をやり取りすることで、計測装置10で取得した計測データを異常検出装置40へ入力してもよい。
【0078】
また、上述した実施形態では、対象者1の異常を検出すると、その異常に応じた情報を報知する例を示したが、検出した異常は必ずしも報知しなくてもよい。異常の情報を収集してヒヤリハットデータベースを構築することで、注意を払うべき情報を、対象者1を含む関係者全体で共有してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 対象者
10 計測装置
11 センサ
20 報知装置
40 異常検出装置
41 制御部
42 変換部
43 比較部
44 分類部
45 通信部
46 記録部
50 コンピュータ
51 プロセッサ
100、200、300、400、500 システム