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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
H04R17/00 330J
H04R17/00 330G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021037274
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137676
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】太田 佳生
(72)【発明者】
【氏名】住吉 三樹夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 菜々
(72)【発明者】
【氏名】本間 光尚
(72)【発明者】
【氏名】井尻 博之
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-058298(JP,A)
【文献】特開2004-045389(JP,A)
【文献】特開平06-122169(JP,A)
【文献】特開2004-104521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁及び側壁を有するケースと、
前記ケース内において前記底壁上に配置されている圧電素子と、
前記圧電素子と電気的に接続されている配線部材と、
前記圧電素子上に配置されている発泡部材と、
前記圧電素子と前記発泡部材との間に配置されている制振材と、を備え、
前記発泡部材は、前記圧電素子の厚さ方向で前記圧電素子と対向していると共に、複数の窪みが形成された底面と、前記側壁と対向している側面と、を有し、
前記制振材は、前記圧電素子と前記底面とを接合している第一部分と、前記側壁と前記側面との間に配置された第二部分と、を含んでいる
超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記制振材の厚さは、前記圧電素子の厚さの0.5倍以上1.5倍以下である、
請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記制振材は、前記底面から前記発泡部材の内部に滲み込んでいる、
請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記底壁は、前記圧電素子が配置されている配置領域と、前記配置領域を囲む周辺領域とを有し、
前記周辺領域と前記底面との間には、空洞が形成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記底壁は、前記圧電素子が配置されている配置領域と、前記配置領域を囲む周辺領域とを有し、
前記制振材は、前記周辺領域と前記底面との間に充填された第部分を含んでいる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記第二部分は、前記第三部分と接続されている
請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記配線部材は、フレキシブル基板である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記制振材は、樹脂で構成されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記発泡部材は、連続気泡を含んでいる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記配線部材は、前記圧電素子の厚さ方向の両側において前記制振材に覆われている、
請求項1~9のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記ケース内において、前記発泡部材の前記底面と対向している上面上に配置された充填材を更に備える、
請求項1~10のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、収容ケースと、収容ケース内に配置されている圧電振動素子と、圧電振動素子上に配置されているフェルト等の防音用充填材と、収容ケースを密封するシリコン樹脂等の封止用絶縁樹脂と、を備える超音波送受信器が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-260239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波トランスデューサには、超音波成分の残響の更なる低減が求められている。しかしながら、上述されたような超音波デバイスは、超音波成分の残響を十分に低減しがたい。
【0005】
本発明の一つの態様は、超音波成分の残響をより一層低減する超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの形態に係る超音波トランスデューサは、底壁を有するケースと、ケース内において底壁上に配置されている圧電素子と、圧電素子と電気的に接続されている配線部材と、圧電素子上に配置されている発泡部材と、圧電素子と発泡部材との間に配置されている制振材と、を備え、発泡部材は、圧電素子の厚さ方向で圧電素子と対向していると共に、複数の窪みが形成された底面を有し、制振材は、圧電素子と底面とを接合してる。
【0007】
上記一つの態様では、制振材が発泡部材の底面と圧電素子とを接合しているので、圧電素子の振動を制振材により抑制することができる。発泡部材の底面には複数の窪みが形成されいるので、制振材を複数の窪みに入り込ませることができる。これにより、制振材を底面の形状に追従させ、発泡部材と圧電素子とを強く接合することができる。この結果、超音波成分の残響をより一層低減することができる。
【0008】
上記一つの態様では、制振材の厚さは、圧電素子の厚さの0.5倍以上1.5倍以下であってもよい。この場合、超音波成分の残響が更に低減される。
【0009】
上記一つの態様では、制振材は、底面から発泡部材の内部に滲み込んでいてもよい。この場合、超音波成分の残響が確実に低減される。
【0010】
上記一つの態様では、底壁は、圧電素子が配置されている配置領域と、配置領域を囲む周辺領域とを有し、周辺領域と底面との間には、空洞が形成されていてもよい。この場合、圧電素子の振動が拘束され難い。よって、送受信感度が増大する。
【0011】
上記一つの態様では、底壁は、圧電素子が配置されている配置領域と、配置領域を囲む周辺領域とを有し、制振材は、周辺領域と底面との間に充填された第一部分を含んでいてもよい。この場合、第一部分によって超音波成分の残響が更に低減される。
【0012】
上記一つの態様では、ケースは、側壁を有し、発泡部材は、側壁と対向している側面を有し、制振材は、第一部分と接続され、側壁と側面との間に配置された第二部分を含んでいてもよい。この場合、第二部分により側壁を伝わる振動も抑制されるので、超音波成分の残響が更に低減される。
【0013】
上記一つの態様では、配線部材は、フレキシブル基板であってもよい。この場合、配線部材が薄いので、制振材の厚さを適切な範囲に設定し易い。
【0014】
上記一つの態様では、制振材は、樹脂で構成されていてもよい。この場合、超音波成分の残響が確実に低減される。
【0015】
上記一つの態様では、発泡部材は、連続気泡を含んでいてもよい。この場合、制振材が発泡部材の内部まで滲み込み易い。
【0016】
上記一つの態様では、配線部材は、圧電素子の厚さ方向の両側において制振材に覆われていてもよい。この場合、超音波成分の残響が更に低減される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一つの態様によれば、超音波成分の残響をより一層低減する超音波トランスデューサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る超音波トランスデューサを示す概略斜視図である。
図2図1に示す超音波トランスデューサの分解斜視図である。
図3】ケース、保持部材、及び、一対のピン端子を示す概略平面図である。
図4】圧電素子、配線部材、発泡部材、保持部材、及び、一対のピン端子を示す概略斜視図である。
図5】配線部材が取り付けられた圧電素子を示す概略斜視図である。
図6図1に示す超音波トランスデューサのVI-VI線断面図である。
図7図6の一部拡大図である。
図8図7の一部拡大図である。
図9】制振材の厚さと残響時間との関係を示すグラフである。
図10】変形例に係る超音波トランスデューサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1図8を参照して、実施形態に係る超音波トランスデューサ1の構成を説明する。
【0021】
超音波トランスデューサ1は、外部から入力された電気信号に応じて発振し、超音波信号を出力することができる。また、超音波トランスデューサ1は、外部から超音波信号を受信すると、その信号を電気信号として外部に送信することができる。
【0022】
超音波トランスデューサ1は、図2に示すように、超音波を送受信できる構成を有し、具体的には、ケース10、圧電素子20、配線部材30、発泡部材40、保持部材50、一対のピン端子60A、60B、充填材70、及び、制振材80を備える。
【0023】
ケース10は、略円筒状の筒部14(側壁)と、筒部14の下端開口を塞ぐ底壁部12(底壁)とを含んで構成されたカップ状部材である。ケース10は、たとえば金属(一例としてアルミニウム合金)で構成されている。
【0024】
筒部14の内部には収容空間が画成されており、筒部14の延在方向に対して直交する断面における収容空間の形状は略楕円状(または角丸長方形状)である。すなわち、収容空間は一方向(図3における上下方向)に延びた断面形状を有する。図3に示すように、筒部14には、上側開口の縁に、3つの窪み部15A~15Cが設けられている。3つの窪み部15A~15Cは、上部開口を挟むように配置された、2つの窪み部15A、15Bと1つの窪み部15Cとで構成されている。3つの窪み部15A~15Cは、同じ深さを有するように設計されている。
【0025】
底壁部12は、略円板状の形状を有している。底壁部12は、振動領域Vを含んでいる。振動領域Vは、筒部14の下側開口を塞ぐ略楕円形板状の領域である。振動領域Vの厚さは均一となっている。振動領域Vは、図7に示すように、圧電素子20が配置されている配置領域V1と、配置領域V1の周辺領域V2と、を有している。配置領域V1は、圧電素子20の厚さ方向Dから見て、圧電素子20の全体と重なる領域である。厚さ方向Dから見て、配置領域V1の外縁は圧電素子20の外縁と一致している。周辺領域V2は、厚さ方向Dから見て、圧電素子20及び配置領域V1を囲む環状の領域である。
【0026】
圧電素子20は、ケース10内に収容されている。圧電素子20は、ケース10内において、底壁部12の底面11上に配置されている。圧電素子20は、配置領域V1に配置されている。圧電素子20は、図2に示すように、矩形板状の外形を有する。圧電素子20の厚さは、たとえば、0.1mm以上0.5mm以下である。
【0027】
圧電素子20は、図5に示すように、圧電体層21と一対の外部電極22、23とを備えて構成されている。外部電極22は、圧電体層21の上面において、振動領域Vの長軸方向に関する両端部以外の全域を覆っている。外部電極23は、圧電体層21の下面の全域を覆う下面部分と、外部電極22から離間して圧電体層21の上面の一端部を覆う上面部分と、下面部分と上面部分とを接続するように圧電体層21の一側面を覆う側面部分と、を含んでいる。外部電極22と外部電極23の上面部分とは、圧電体層21の上面において振動領域Vの長軸方向で互いに離間している。
【0028】
圧電体層21は、一層の圧電材料層を含む単層構造であってもよく、複数の圧電材料層と内部電極層とが交互に積層された多層構造であってもよい。圧電材料層は、たとえばPZT等の圧電セラミックス材料で構成することができる。圧電素子20は、たとえば、エポキシ系樹脂等の接着材を介してケース10の底壁部12に接着されている。圧電素子20は、ケース10の底壁部12に直接接合されていてもよい。
【0029】
配線部材30は、圧電素子20と電気的に接続されている。配線部材30は、圧電素子20と共にケース10内に収容されている。配線部材30は、図5に示すように、シート状又は帯状を呈しており、一方の端部30aが圧電素子20上に重ねられるようにして配置されている。配線部材30は、たとえば、フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)等のフレキシブル基板である。すなわち、配線部材30は、たとえば、ポリイミド樹脂等の樹脂からなる樹脂シートと、樹脂シートに設けられた複数の配線とを含んで構成されている。
【0030】
配線部材30の厚さは、たとえば、0.05mm以上0.2mm以下である。配線部材30は、複数の配線により、圧電素子20の各外部電極22、23と後述するピン端子60A、60Bとを電気的に接続する。配線部材30の複数の配線のうち、配線32は外部電極22及びピン端子60Aに接続されており、配線33は外部電極23及びピン端子60Bに接続されている。
【0031】
発泡部材40は、圧電素子20上に配置されている。発泡部材40は、ケース10内に収容されている。発泡部材40は、厚さ方向Dから見て、圧電素子20の全体と重なるように設けられている。発泡部材40は、その表面として底面42、上面43及び側面44を有している。底面42及び上面43は、厚さ方向Dで互いに対向している。底面42及び上面43は、たとえば、略楕円形状を有している。底面42は、厚さ方向Dで底壁部12及び圧電素子20と対向している。側面44は、厚さ方向Dと交差する方向で筒部14と対向している。発泡部材40と圧電素子20との間には、配線部材30の端部30a及び制振材80が介在している。
【0032】
発泡部材40は、たとえば、図7及び図8に示すように、気泡構造体からなる。発泡部材40は、気泡により振動を吸収する吸音体である。本実施形態では、発泡部材40は、独立気泡46及び連続気泡47を含む半独立半連続気泡構造体からなる。連続気泡47は、気泡同士が連続してなる。連続気泡47では、気泡同士が互いに接続されて、三次元的に連続している。連続気泡47は、図7及び図8に示す断面において連続しているだけでなく、当該断面に交差する方向にも連続している。発泡部材40は、たとえば、シリコンスポンジである。発泡部材40は、熱可塑性樹脂を主体とする発泡体であってもよい。熱可塑性樹脂は、たとえば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を含む。
【0033】
発泡部材40の表面(底面42、上面43及び側面44)には、気泡に起因する複数の窪み48が形成されている。窪み48は、発泡部材40の表面に露出した気泡により形成されている。発泡部材40の表面は、窪み48からなる凹部と、窪み48が設けられていない部分からなる凸部とが交互に連続する凹凸形状を呈している。
【0034】
発泡部材40の気泡は、発泡部材40が圧縮されることにより、圧縮方向に対して扁平である形状を有していてもよい。この場合、気泡の平均アスペクト比は、たとえば、1.2以上2.5以下であってもよい。平均アスペクト比は、たとえば、独立気泡46の圧縮方向における最大長さLaと、圧縮方向に直交する方向における最大長さLbとの比率(Lb/La)の平均値である。圧縮方向は、厚さ方向Dであってもよいし、厚さ方向Dと直交する方向であってもよい。
【0035】
平均アスペクト比は、たとえば、以下のようにして求められる。まず、圧縮されている発泡部材40の断面写真が取得される。断面写真は、発泡部材40を圧縮方向に沿う平面で切断したときの断面を撮影した写真である。取得した断面写真は、ソフトウェアにより画像処理される。この画像処理により、気泡の境界が判別される。断面写真に含まれる全ての独立気泡46(断面写真において独立気泡46に見える気泡)について、最大長さLa及び最大長さLbが求められ、比率(Lb/La)の平均値が平均アスペクト比として算出される。
【0036】
配線部材30は、図6及び図7に示すように、発泡部材40の表面に沿って這い回されている。具体的には、配線部材30は、発泡部材40の底面42側から側面44側を通って上面43側まで引き出されている。そのため、配線部材30の一方の端部30aは発泡部材40の底面42側に位置し、他方の端部30bは発泡部材40の上面43側に位置している。
【0037】
配線部材30の端部30bには、一対のピン端子(導電性端子)60A、60Bが接続されている。一対のピン端子60A、60Bは、図示しない外部基板と電気的に接続されており、一対のピン端子60A、60Bを介して外部基板と超音波トランスデューサ1との間で信号の送受信が行われる。一対のピン端子60A、60Bはいずれも、厚さ方向Dに沿って延在している。各ピン端子60A、60Bの下端部60aは、発泡部材40の上側において起立された配線部材30の端部30bと電気的に接続されている。より詳しくは、一方のピン端子60Aの下端部60aが配線部材30に設けられた配線32に接続されており、他方のピン端子60Bの下端部60aが配線33に接続されている。ピン端子60A、60Bの下端部60aと、配線部材30の配線32、33とは、たとえば、はんだ接合されている。
【0038】
保持部材50は、一対のピン端子60A、60Bをケース10に対して保持している。保持部材50は、発泡部材40の上側に位置しており、ケース10の底壁部12から離間している。保持部材50は、本体部52と、3本の脚部54A、54B、54Cとを備えて構成されている。保持部材50は、たとえば樹脂(一例として、PBT樹脂)によって構成されている。保持部材50は、PBT樹脂に限らず、PPS樹脂やABS樹脂等であってもよく、ガラス繊維を含有していてもよい。
【0039】
本体部52は、厚さ方向Dに沿って延在する部分であり、直方体状の外形形状を呈する。本体部52は、ケース10の上部開口付近に位置している。本体部52には、一対のピン端子60A、60Bが取り付けられている。具体的には、一対のピン端子60A、60Bは本体部52を貫き、下端部60aが本体部52から露出している。一対のピン端子60A、60Bは、互いに平行な姿勢で振動領域Vの長軸方向に並んでおり、所定距離だけ離間された状態で、本体部52に取り付けられている。
【0040】
3本の脚部54A、54B、54Cはいずれも、本体部52と一体的に設けられており、圧電素子20の厚さ方向Dに対して直交する方向に本体部52から延びている。3本の脚部54A、54B、54Cのうち、2本の脚部54A、54Bは、振動領域Vの短軸方向に沿って延びる長尺状を呈し、互いに平行である。各脚部54A、54Bの端部54aは、ケース10の窪み部15A、15Bに入り込んで、ケース10の筒部14により下方から支持されている。脚部54Cも、脚部54A、54Bと同様に振動領域Vの短軸方向に沿って延びているが、脚部54Cは、本体部52に関して、脚部54A、54Bとは反対側に延びている。脚部54Cは、脚部54A、54Bより短く設計されており、ケース10の窪み部15Cに全体的に入り込んで、ケース10の筒部14により下方から支持されている。
【0041】
図3に示すように、ケース10の窪み部15C及び保持部材50の脚部54Cは、振動領域Vの長軸方向に関する略中間に位置しており、脚部54A、54Bとは振動領域Vの長軸方向に関して略等距離だけずれて配置されている。そのため、ケース10によって脚部54A~54Cが支持される3点(すなわち、窪み部15A~15Cが設けられた3箇所)の位置関係は、脚部54Cが支持される点を頂点とする二等辺三角形の位置関係となっている。
【0042】
保持部材50のケース10への取り付けは、保持部材50の各脚部54A~54Cを窪み部15A~15C内に圧入することにより行われる。窪み部15A~15Cを、同じ深さになるように設計することで、脚部54A~54Cの高さ位置(たとえば底面11を基準にした高さ位置)が互いに同じになり、保持部材50の姿勢が安定する。保持部材50がケース10に取り付けられた状態で、ピン端子60A、60Bは厚さ方向Dに延在している。
【0043】
保持部材50をケース10に取り付ける前に、保持部材50にピン端子60A、60Bを取り付けることができる。ピン端子60A、60Bの保持部材50への取り付けは、たとえばインサート成形によって行われる。
【0044】
充填材70は、保持部材50がケース10へ取り付けられた後にケース10の収容空間に充填される。充填材70により収容空間内の隙間が埋められている。図1に示すように、保持部材50の本体部52の一部はケース10の上部開口よりも上側に位置しており充填材70から露出する。充填材70は、たとえば、樹脂で構成されている。充填材70は、たとえば、RTV(Room Temperature Vulcanizing)シリコーンゴム、ウレタンフォーム、又は、エポキシ樹脂で構成されている。
【0045】
制振材80は、圧電素子20と発泡部材40との間に配置されている。制振材80は、圧電素子20と発泡部材40の底面42とを接合している。制振材80は、たとえば、樹脂で構成されている。制振材80は、たとえば、RTVシリコーンゴム、ウレタンフォーム、又は、ゴム(NBR等)で構成されている。制振材80は、たとえば、充填材70と同じ材料で構成されている。制振材80は、図7に示すように、圧電素子20と底面42との間に充填された部分81と、周辺領域V2と底面42との間に充填された部分82(第一部分)と、筒部14と側面44との間に配置された部分83(第二部分)と、を含んでいる。
【0046】
部分81は、配線部材30の端部30aと圧電素子20との間にも配置されている。配線部材30では、配線32、33が圧電素子20との接合部を構成している。部分81は、配線部材30の端部30aにおける接合部以外の部分と、圧電素子20との間にも回り込んでいる。これにより、配線部材30の端部30aでは、接合部以外の部分が厚さ方向Dの両側において制振材80に覆われている。
【0047】
部分81~83は、互いに一体的に形成されている。具体的には、部分81と部分82とが互いに直接接続されている。部分82と部分83とが互いに直接接続されている。部分81の厚さ(平均厚さ)は、例えば、圧電素子20の厚さ(平均厚さ)と同等である。部分81の厚さは、圧電素子20の上面と、発泡部材40の底面42を含む仮想面との間の厚さ方向Dにおける長さである。底面42は、窪み48が設けられていない部分、すなわち、凹凸形状の凸部に相当する部分である。部分81の厚さは、例えば、圧電素子20の厚さの0.5倍以上1.5倍以下である。部分81の厚さは、たとえば、断面写真から求められる。
【0048】
制振材80は、圧電素子20が配置領域V1に配置された後に圧電素子20上に塗布される。制振材80は、発泡部材40の底面42により押圧され、押し広げられることにより、部分81~83が一体的に形成される。樹脂の塗布量及び押圧力は、制振材80の所望の厚さ及び形状に応じて適宜設定される。本実施形態では、筒部14と側面44との間には、底面42側から制振材80(部分83)が入り込んでいると共に、上面43側から充填材70が入り込んでいる。本実施形態では、制振材80(部分83)と充填材70とが互いに接続されているが、互いに離間していてもよい。
【0049】
充填材70及び制振材80は、図7及び図8に示すように、発泡部材40の内部に滲み込んでいる。充填材70及び制振材80は、発泡部材40の表面の凹凸形状に追従した形状を有している。充填材70は、上面43から発泡部材40の内部に滲み込んでいる。充填材70は、上面43の窪み48内に入り込んでいる。充填材70は、窪み48の全体に隙間なく充填されていてもよいし、窪み48に部分的に充填されていてもよい。制振材80は、底面42から発泡部材40の内部に滲み込んでいる。制振材80は、底面42の窪み48内に入り込んでいる。制振材80は、窪み48の全体に隙間なく充填されていてもよいし、窪み48に部分的に充填されていてもよい。
【0050】
圧電素子20は、ピン端子60A、60Bから入力された信号に応じて振動する。圧電素子20が振動した際、板厚方向に超音波周期の機械的振動が生じると共に、板厚方向及び板厚方向に直交する方向に超音波振動が生じる。圧電素子20の超音波振動に伴い、ケース10の底壁部12の振動領域Vも超音波振動して、底壁部12側からケース外部に超音波が出力される。
【0051】
以下、超音波トランスデューサ1の製造方法の一例について説明する。
【0052】
圧電素子20に配線部材30を取り付ける。配線部材30は、たとえば、はんだ接合により圧電素子20に取り付けられる。続いて、ケース10の形状に応じて配線部材30を折り曲げる。続いて、ケース10の底面11の配置領域V1に接着剤を塗布する。接着剤は、たとえば、熱硬化性樹脂である。続いて、配線部材30付きの圧電素子20を配置領域V1に配置し、接着剤をなじませる。続いて、加熱により接着剤を硬化させ、圧電素子20を配置領域V1に固定する。
【0053】
続いて、圧電素子20上に制振材80となる樹脂を塗布する。続いて、圧電素子20上に発泡部材40を配置し、発泡部材40を圧電素子20に向けて加圧する。制振材80となる樹脂は、発泡部材40の底面42により押し広げられながら、底面42の凹凸形状に追従するように底面42の窪み48内に入り込む。このとき、配線部材30の端部30a以外の部分をケース10の筒部14の内面に沿わせた状態としておく。続いて、たとえば、インサート成形により保持部材50に一対のピン端子60A、60Bを取り付ける。続いて、発泡部材40の上面43上において、一対のピン端子60A、60Bの下端部60aを、たとえば、はんだ接合により配線部材30の配線32、33に接続する。
【0054】
続いて、保持部材50をケース10に取り付ける。具体的には、保持部材50の脚部54A、54B、54Cをケース10の窪み部15A、15B、15Cに圧入する。これにより、保持部材50と共に一対のピン端子60A、60Bがケース10に取り付けられる。続いて、充填材70となる樹脂をケース10に充填した後、室温で所定時間以上放置する。これにより、樹脂が硬化し、充填材70及び制振材80となる。以上により、超音波トランスデューサ1が得られる。
【0055】
以下、実施形態に係る超音波トランスデューサ1の効果について説明する。
【0056】
超音波トランスデューサ1では、制振材80が発泡部材40の底面42と圧電素子20とを接合しているので、圧電素子20の振動を制振材80により抑制することができる。圧電素子20の振動は、発泡部材40により吸収されることで、更に抑制される。底面42には複数の窪み48が形成されているので、制振材80を複数の窪み48に入り込ませることができる。これにより、制振材80を底面42の形状に追従させ、発泡部材40と圧電素子20とを強く接合することができる。この結果、超音波成分の残響をより一層低減することができる。なお、制振材80を発泡部材40と接合させない場合、超音波成分の残響が低減されないことが本発明者らの実験により確認された。
【0057】
制振材80の部分81の厚さは、圧電素子20の厚さの0.5倍以上1.5倍以下である。これにより、超音波成分の残響が更に低減される。図9に示すように、制振材80の部分81の厚さが0.3mm付近で最も残響時間が短くなることが本発明者らの実験により確認された。この実験で用いられた圧電素子20の厚さは、0.2mmである。
【0058】
制振材80は、底面42から発泡部材40の内部に滲み込んでいる。つまり、制振材80が底面42の複数の窪み48に入り込んでいる。これにより、超音波成分の残響が確実に低減される。
【0059】
底壁部12は、圧電素子20が配置されている配置領域V1と、配置領域V1を囲む周辺領域V2とを有する。制振材80は、周辺領域V2と底面42との間に充填された部分82を含んでいる。部分82によれば、超音波成分の残響が更に低減される。
【0060】
制振材80は、部分82と接続され、ケース10の筒部14と発泡部材40の側面44との間に配置された部分83を含んでいる。部分83によれば、筒部14を伝わる圧電素子20の振動も抑制されるので、超音波成分の残響が更に低減される。
【0061】
配線部材30は、フレキシブル基板である。配線部材30の端部30aは、圧電素子20と発泡部材40との間に介在している。配線部材30が厚い場合、圧電素子20と発泡部材40との間の距離が大きくなるので、この距離にあわせて、制振材80の厚さを厚くする必要がある。よって、制振材80の厚さを、超音波成分の残響を抑制する上で適切な範囲に設定し難い。本実施形態では、配線部材30が薄いので、制振材80の厚さを適切な範囲に設定し易い。
【0062】
制振材80は、樹脂で構成されている。このため、超音波成分の残響が確実に低減される。
【0063】
発泡部材40は、連続気泡を含んでいる。このため、制振材80が発泡部材40のより内部まで滲み込み易い。
【0064】
配線部材30は、圧電素子20の厚さ方向Dの両側において制振材80に覆われている。これにより、超音波成分の残響が更に低減される。
【0065】
超音波トランスデューサ1では、ピン端子60A、60Bを保持する保持部材50がケース10によって直接的に保持されている。保持部材50によれば、ケース10に対するピン端子60A、60Bの相対位置ズレを抑制することができる。特に、保持部材50は、ケース10の窪み部15A~15Cに圧入されているため、保持部材50はケース10に対して強固に固定されている。そのため、保持部材50はケース10に対して相対位置ズレし難い。その結果、ケース10に対するピン端子60A、60Bの相対位置ズレがより効果的に抑制されている。なお、保持部材50は、圧入以外に、接着によってケース10に保持されてもよい。
【0066】
以上、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、配線部材30は、フレキシブル基板に限らず、リードフレーム又はリード線であってもよい。また、圧電素子20は、矩形板状に限らず、たとえば円形板状や楕円形板状であってもよい。
【0067】
上述した実施形態では、保持部材50が3点でケース10に支持された態様を示し、3点支持によれば、ケース10に対するピン端子60A、60Bの相対位置ズレが効果的に抑制される。ただし、保持部材50は、1点、2点または4点以上でケース10に支持された態様であってもよい。また、超音波トランスデューサ1は、保持部材50を備えなくてもよい。
【0068】
図10に示すように、変形例に係る超音波トランスデューサ1Aでは、周辺領域V2と底面42との間に空洞Cが形成されている。また、制振材80が部分81を含み、部分82,83を含まない。制振材80のこのような形状は、制振材80となる樹脂の塗布量及び押圧力を適宜設定することにより実現される。超音波トランスデューサ1Aにおいても、発泡部材40の底面42と圧電素子20とが制振材80により接合されているので、超音波成分の残響をより一層低減することができる。超音波トランスデューサ1Aでは、圧電素子20の周りに空洞Cが形成されているので、圧電素子20の振動が制振材80により拘束され難い。これにより、送受信感度が増大する。
【符号の説明】
【0069】
1…超音波トランスデューサ、10…ケース、12…底壁部(底壁)、14…筒部(側壁)、20…圧電素子、30…配線部材、40…発泡部材、42…底面、44…側面、46…独立気泡、47…連続気泡、48…窪み、50…保持部材、60A、60B…ピン端子、80…制振材、82…部分(第一部分)、83…部分(第二部分)、C…空洞、D…厚さ方向、V1…配置領域、V2…周辺領域。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10