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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】コンクリート床構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/12 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
E04F15/12 K
E04F15/12 C
E04F15/12 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021050157
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148464
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】515181409
【氏名又は名称】MUマテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】住岡 宏
(72)【発明者】
【氏名】蒔田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】戸田 靖彦
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-257062(JP,A)
【文献】特開2003-213199(JP,A)
【文献】特開2010-019012(JP,A)
【文献】特開2005-187683(JP,A)
【文献】特開2013-014668(JP,A)
【文献】特開2014-159601(JP,A)
【文献】特開2014-066078(JP,A)
【文献】特開2013-087211(JP,A)
【文献】特開平02-227482(JP,A)
【文献】特開2001-340806(JP,A)
【文献】特開2010-019009(JP,A)
【文献】特開平11-290771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
C04B 41/00-41/72
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/00
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床層と、前記コンクリート床層の上面に設けられた、セルフレベリング材を含むセルフレベリング材スラリーの硬化体からなるセルフレベリング材スラリー硬化体層とを備えるコンクリート床下地を用意する第1の工程と、
前記コンクリート床下地の前記セルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、樹脂成分と有機ケイ素化合物とを含む塗り床材用プライマーを塗布して、塗り床材用プライマー層を形成する第2の工程と、
前記塗り床材用プライマー層の上面に、塗り床材ベースコートを塗布して、塗り床材ベースコート層を形成する第3の工程と、
を備え、
前記セルフレベリング材スラリー硬化体層の硬化体表面のケット水分計での含水率のDモード値が870以下であり、
前記第2の工程において、前記塗り床材用プライマーに含まれる前記樹脂成分の塗布量をX(g/m)、及び、前記塗り床材用プライマーに含まれる前記有機ケイ素化合物の塗布量をY(g/m)としたとき、X及びYが、下記式(1)及び下記式(2)の条件を満たす、コンクリート床構造体の製造方法。
75≦X≦110 (1)
-0.5X+65≦Y≦-0.5X+75 (2)
【請求項2】
前記塗り床材用プライマーの可使時間が30分~3時間である、請求項1に記載のコンクリート床構造体の製造方法。
【請求項3】
前記塗り床材用プライマーに含まれる前記樹脂成分がエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の硬化剤である、請求項1又は2に記載のコンクリート床構造体の製造方法。
【請求項4】
前記有機ケイ素化合物がアルコキシシランである、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート床構造体の製造方法。
【請求項5】
前記塗り床材用プライマーが、ポルトランドセメントを含むフィラーをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート床構造体の製造方法。
【請求項6】
コンクリート床層と、
セルフレベリング材スラリー硬化体層と、
樹脂成分と有機ケイ素化合物とを含む塗り床材用プライマーを塗布して形成される塗り床材用プライマー層と、
塗り床材ベースコート層と、
をこの順に備え、
前記セルフレベリング材スラリー硬化体層の硬化体表面のケット水分計での含水率のDモード値が870以下であり、
前記塗り床材用プライマーに含まれる前記樹脂成分の塗布量をX(g/m)、及び、前記塗り床材用プライマーに含まれる前記有機ケイ素化合物の塗布量をY(g/m)としたとき、X及びYが、下記式(1)及び下記式(2)の条件を満たす、コンクリート床構造体。
75≦X≦110 (1)
-0.5X+65≦Y≦-0.5X+75 (2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス及び事務所をはじめとして、工場、倉庫などの建築物では、一般的にコンクリート床面の仕上げに各種樹脂系塗り床材が用いられることが多く、これらの塗り床材をコンクリート床の仕上げ材として用いた場合、床面の耐磨耗性、耐薬品性等が向上する。
【0003】
これらの塗り床材を施工する場合の下地層施工法としては、例えば、コンクリート直押え工法、モルタル類又はセルフレベリング材等を用いる打ち継ぎ工法が知られている。特許文献1には、打ち継ぎ工法として、コンクリート床層と、セルフレベリング材を含むセルフレベリング材スラリー硬化体層とを備えるコンクリート床下地において、上面に塗り床材用プライマー層を設け、その上面に塗り床材ベースコートを施工して硬化させることを特徴とするコンクリート床構造体についての発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-190315号公報
【文献】特開2009-257062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的にコンクリート床に塗り床材を施工して仕上げる場合、コンクリート床下地の表面に塗り床材用プライマー層を設け、塗り床材ベースコート層を形成する。さらに特別な機能付与が求められる場合は、塗り床材トップコート層を形成する場合もある。
【0006】
通常、新設建築物のコンクリート床は、生コンクリートを打設・締固めを行ってある程度の平面性を持たせた後、コンクリート表面の水が引いた段階で左官鏝等を用いて表面を均し、粗い凹凸を均す作業を行って、コンクリートを養生して硬化させている。そのため、塗り床材を施工する段階の硬化したコンクリート床全体の表面には、多種多様な小さな凹凸又は微妙な傾斜が入り組んだ状態になり易く、それを防ぐためには高い施工技能又は表面を平滑にするための多大な労力が必要である。塗り床材ベースコートを施工して仕上げる場合、小さな凹凸又は微妙な傾斜は、そのまま反映されたものとなり、実際に供用する上で、また、美観上も好ましくない仕上りとなる。これらは塗り床材ベースコートの使用量を増やすことによって改善されるが、経済性が低下するという問題がある。一方で、塗り床材ベースコートの使用量を推奨される平均的な施工量とした場合、施工量が少ない凸部では塗り床材ベースコート層を適正量施工した場合と比較して性能的に不充分な事態が発生することが考えられる。
【0007】
これらのコンクリート床面の凹凸又は傾斜に由来する塗り床仕上げ表面への影響は、コンクリート床面にセルフレベリング材スラリーを施工した後に、塗り床材用プライマー層を設けることによって回避することができる。しかしながら、優れた水平レベルを有し、小さな凹凸が減少したセルフレベリング材スラリー硬化体層と、塗り床材用プライマー層の上面に設けられた塗り床材層との剥離抵抗性が不充分となる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、セルフレベリング材スラリー硬化体層に対する塗り床材層の剥離抵抗性に優れたコンクリート床構造体の製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが上記課題に対して鋭意試行錯誤を繰り返した結果、セルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、所定量の範囲の樹脂成分及び所定量の範囲の有機ケイ素化合物を含む塗り床材用プライマーを塗布して、塗り床材用プライマー層を形成することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の一側面は、コンクリート床構造体の製造方法(施工方法)に関する。当該コンクリート床構造体の製造方法(施工方法)は、コンクリート床層と、コンクリート床層の上面に設けられた、セルフレベリング材を含むセルフレベリング材スラリーの硬化体からなるセルフレベリング材スラリー硬化体層とを備えるコンクリート床下地を用意する第1の工程と、コンクリート床下地のセルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、樹脂成分と有機ケイ素化合物とを含む塗り床材用プライマーを塗布して、塗り床材用プライマー層を形成する第2の工程と、塗り床材用プライマー層の上面に、塗り床材ベースコートを塗布して、塗り床材ベースコート層を形成する第3の工程とを備える。第2の工程において、塗り床材用プライマーに含まれる樹脂成分の塗布量をX(g/m)、及び、塗り床材用プライマーに含まれる有機ケイ素化合物の塗布量をY(g/m)としたとき、X及びYは、下記式(1)及び下記式(2)の条件を満たす。
75≦X≦110 (1)
-0.5X+65≦Y≦-0.5X+75 (2)
【0011】
このような製造方法によれば、セルフレベリング材スラリー硬化体層に対する塗り床材層の剥離抵抗性に優れたコンクリート構造体を製造することができる。このような効果が奏する理由を、本発明者らは以下のように考えている。セルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、所定量の範囲の樹脂成分及び所定量の範囲の有機ケイ素化合物を含む塗り床材用プライマーを塗布することによって、塗り床材用プライマーがセルフレベリング材スラリー硬化体へより深く浸透し、塗り床材用プライマーによって強化された層がセルフレベリング材スラリー硬化体の表面からより深く生じる。このような作用によって、セルフレベリング材スラリー硬化体層に対する塗り床材層の剥離抵抗性が向上すると推測される。
【0012】
塗り床材用プライマーの可使時間は、好ましくは30分~3時間である。
【0013】
塗り床材用プライマーに含まれる樹脂成分は、好ましくはエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の硬化剤である。
【0014】
有機ケイ素化合物は、好ましくはアルコキシシランである。
【0015】
本発明の他の一側面は、コンクリート床構造体に関する。当該コンクリート床構造体は、コンクリート床層と、セルフレベリング材スラリー硬化体層と、樹脂成分と有機ケイ素化合物とを含む塗り床材用プライマーを塗布して形成される塗り床材用プライマー層と、塗り床材ベースコート層とをこの順に備える。塗り床材用プライマーに含まれる樹脂成分の塗布量をX(g/m)、及び、塗り床材用プライマーに含まれる有機ケイ素化合物の塗布量をY(g/m)としたとき、X及びYは、下記式(1)及び下記式(2)の条件を満たす。
75≦X≦110 (1)
-0.5X+65≦Y≦-0.5X+75 (2)
【0016】
このようなコンクリート床構造体は、セルフレベリング材スラリー硬化体層に対する塗り床材層の剥離抵抗性に優れる。また、このようなコンクリート床構造体は、通常、多種多様の凹凸又は傾斜を有するコンクリート床層の上面に、セルフレベリング材スラリーを施工・硬化させて優れた水平レベルを有するセルフレベリング材スラリー硬化体層を形成した後に塗り床材ベースコート層を施工することになることから、塗り床材の仕上り面もまた優れた水平レベルを有し、良好な供用性及び美観が得られる傾向にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、セルフレベリング材スラリー硬化体層に対する塗り床材層の剥離抵抗性に優れたコンクリート床構造体の製造方法が提供される。また、本発明によれば、このような製造方法によって得られるコンクリート床構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、コンクリート床構造体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図であり、図1(a)、(b)、及び(c)は、各工程を示す工程図である。
図2図2は、塗り床材用プライマーに含まれる、樹脂成分の塗布量(g/m)と有機ケイ素化合物の塗布量(g/m)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
[コンクリート床構造体の製造方法]
図1は、コンクリート床構造体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図であり、図1(a)、(b)、及び(c)は、各工程を示す工程図である。本実施形態のコンクリート床構造体の製造方法は、コンクリート床層と、コンクリート床層の上面に設けられた、セルフレベリング材を含むセルフレベリング材スラリーの硬化体からなるセルフレベリング材スラリー硬化体層とを備えるコンクリート床下地を用意する第1の工程(図1(a)参照。)と、コンクリート床下地のセルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、樹脂成分と有機ケイ素化合物とを含む塗り床材用プライマーを塗布して、塗り床材用プライマー層を形成する第2の工程(図1(b)参照。)と、塗り床材用プライマー層の上面に、塗り床材ベースコートを塗布して、塗り床材ベースコート層を形成する第3の工程(図1(c)参照。)とを備える。本実施形態の製造方法によって得られるコンクリート床構造体は、建築物に使用されるが、特に、病院、駅(構内)等の公共施設、工場、倉庫などの高い耐久性が求められる非住宅の建築物用のコンクリート床構造体として好適に用いることができる。
【0021】
<第1の工程>
本工程では、コンクリート床層2と、コンクリート床層2の上面に設けられた、セルフレベリング材を含むセルフレベリング材スラリーの硬化体からなるセルフレベリング材スラリー硬化体層6とを備えるコンクリート床下地10を用意する(図1(a)参照)。
【0022】
コンクリート床下地10は、図1(a)に示すように、例えば、凹凸又は傾斜を有するコンクリート床層2に、セルフレベリング材を含むセルフレベリング材スラリーを打設し、セルフレベリング材スラリーの硬化体からなるセルフレベリング材スラリー硬化体層6を形成することによって得ることができる。コンクリート床層2は、多種多様な小さな凹凸又は微妙な傾斜が入り組んだ状態になっているため、セルフレベリング材スラリー硬化体層6を形成することによって、施工性又は水平性を向上させることができる。
【0023】
コンクリート床層2は、一般的なコンクリート構造物(建造物、建築物)の床面を形成しているものである。コンクリート床層2は、建造物又は建築物のコンクリート床層であってよい。コンクリート床層2は、セメント、細骨材、粗骨材、流動化剤、水等を特定の割合で混合し床面を形成して硬化したものであり得る。コンクリート床層の圧縮強度(呼び強度)は、好ましくは20N/mm以上、より好ましくは30N/mm以上、さらに好ましくは35N/mm以上、特に好ましくは40N/mm以上である。
【0024】
セルフレベリング材スラリー硬化体層6を形成するためのセルフレベリング材は、構造物の床面の施工において塗り床材の下地材として使用されるセルフレベリング材であれば特に制限なく用いることができる。セルフレベリング材は、一実施形態において、水硬性成分と、細骨材、減水剤等の混和剤とを含むセルフレベリング材であってよい。水硬性成分は、速硬性、速乾性を有するものであることが好ましい。
【0025】
セルフレベリング材は、当該セルフレベリング材を含むセルフレベリング材スラリー及びその硬化体において、以下の条件(A)~条件(D)を全て満たすことが好ましい。このようなセルフレベリング材を用いることによって、より効率的に、かつより安定的にコンクリート床下地を施工することが可能となる。
【0026】
条件(A):JASS 15M-103に準拠して測定されるフロー値が190mm以上であり、好ましくは200mm以上、より好ましくは210mm以上である。
【0027】
条件(A)を満たすセルフレベリング材を用いることによって、作業性及び平滑性に優れた床面を形成することができる。
【0028】
条件(B):硬化体表面のショア硬度が10以上となる時間が6時間以内であり、好ましくは4時間以内、より好ましくは2時間以内である。
【0029】
条件(B)を満たすセルフレベリング材を用いることによって、速硬性に優れた床面を形成することができる。また、軽歩行可能までの時間が短いことから、早期に第2の工程に移行することができる。
【0030】
条件(C):硬化体表面のケット水分計での含水率のDモード値が870以下となる時間が72時間以内であり、好ましくは48時間以内、より好ましくは24時間以内である。
【0031】
条件(C)を満たすセルフレベリング材を用いることによって、速硬性に優れた床面を形成することができる。また、ケット水分計での含水率のDモード値が870以下となる時間が短いことから、早期に第2の工程に移行することができる。
【0032】
条件(D):JASS 15M-103に準拠して測定される材齢28日の圧縮強度が30N/mm以上であり、好ましくは35N/mm以上、より好ましくは40N/mm以上である。
【0033】
条件(D)を満たすセルフレベリング材を用いることによって、重機等の走行に使用される塗り床材の下地として、耐久性に優れたコンクリート床構造体を形成することができる。
【0034】
セルフレベリング材スラリー硬化体層6を形成するためのセルフレベリング材スラリーは、セルフレベリング材と水とを混合・混練することによって得ることができる。セルフレベリング材に対する水の質量比(水の質量/セルフレベリング材の質量)は、好ましくは18~26、より好ましくは20~24である。セルフレベリング材と水との混合・混練は、ハンドミキサーを用いることが好ましく、また、混合・混練時間は、3分以内であることが好ましい。
【0035】
セルフレベリング材スラリーは、施工場所の温度又は湿度の条件にもよるが、通常、打設(流し込み、施工)終了後30分~120分の間で硬化が始まり、硬化の進行に伴って表面硬度が上昇して、セルフレベリング材スラリーの硬化体が形成されて、セルフレベリング材スラリー硬化体層6となる。
【0036】
セルフレベリング材スラリー硬化体層6は、例えば、以下の方法によって形成することができる。まず、コンクリート床層2の上面に、セルフレベリング材スラリーを打設する(施工する、流し込む)。次いで、打設されたセルフレベリング材スラリーを、鏝又はトンボを用いてその表面を均一化する。その後、セルフレベリング材スラリーを養生させることによって、セルフレベリング材スラリーを硬化させ、セルフレベリング材スラリー硬化体層6を形成することができる。このような方法によってセルフレベリング材スラリー硬化体層6を形成した場合、表面が均一化されたまま硬化することから、平滑性に優れたセルフレベリング材スラリー硬化体層6を得ることができる。
【0037】
セルフレベリング材スラリー硬化体層6の厚みは、好ましくは1~100mm、より好ましくは5~50mm、さらに好ましくは7~40mm、特に好ましくは10~30mmである。
【0038】
コンクリート床下地10は、コンクリート床層2とセルフレベリング材スラリー硬化体層6との間に、セルフレベリング材用プライマー層4をさらに備えていてもよい。
【0039】
コンクリート床層2におけるセルフレベリング材用プライマー層4は、例えば、セルフレベリング材用プライマーをコンクリート床層2に塗布し、セルフレベリング材用プライマーを乾燥させることによって形成することができる。セルフレベリング材用プライマー層4を形成する場合、コンクリート床層2のセルフレベリング材用プライマー層4が形成される面を予め清掃することが好ましい。
【0040】
セルフレベリング材用プライマーの主成分は、例えば、水系の樹脂エマルションであってよい。樹脂エマルションを構成する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル-ベオバ共重合樹脂等が挙げられる。これら樹脂(樹脂エマルション)は市販品を用いることができる。樹脂エマルションの樹脂は、好ましくはアクリル樹脂又はスチレン-アクリル共重合樹脂、より好ましくはスチレン-アクリル共重合樹脂である。樹脂エマルションを構成する樹脂の最低造膜温度(MFT)が0℃以上であることが好ましく、また、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることが好ましい。樹脂エマルションの固形分濃度は、樹脂エマルション全量を基準として、7~25質量%であることが好ましい。セルフレベリング材用プライマーとして、樹脂エマルションを用いる場合、樹脂エマルションの塗布量は30~100g/mであることが好ましい。
【0041】
セルフレベリング材用プライマー層4の厚みは、コンクリート床層2とセルフレベリング材スラリー硬化体層6とを強固に接着する観点から、好ましくは5~200μm、より好ましくは10~150μm、さらに好ましくは15~100μm、特に好ましくは20~75μmである。
【0042】
セルフレベリング材用プライマー層4の上面に、セルフレベリング材スラリー硬化体層6を形成する場合、セルフレベリング材用プライマーをコンクリート床層2に塗布してから1時間以上経過してから、セルフレベリング材スラリーを打設することが好ましい。
【0043】
<第2の工程>
本工程では、セルフレベリング材スラリー硬化体層6の上面6Aに、樹脂成分と有機ケイ素化合物とを含む塗り床材用プライマーを塗布し、必要に応じて、塗り床材用プライマーを乾燥させて、塗り床材用プライマー層12を形成する(図1(b)参照)。本工程は、第1の工程のセルフレベリング材スラリー硬化体層6を形成するためにセルフレベリング材スラリーを打設した後、24時間以上経過してから行うことが好ましい。
【0044】
塗り床材用プライマー層12は、塗り床材の下地との接着性向上、下地への吸い込み防止、及び塗り床材のピンホール防止のために用いられる層である。塗り床材用プライマー層12を形成するための塗り床材用プライマーは、樹脂成分と有機ケイ素化合物とを含む。塗り床材用プライマーは、樹脂成分及び有機ケイ素化合物が主成分であり得る。
【0045】
樹脂成分は、例えば、硬化性樹脂と、硬化性樹脂の硬化剤とから構成され得る。硬化性樹脂としては、例えば、溶剤型エポキシ樹脂、無溶剤型エポキシ樹脂、水性型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂などが挙げられる。硬化性樹脂は、好ましくはエポキシ樹脂である。硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化性樹脂の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であり得る。エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、変性アミン(ケチミン(ケトイミン))等のアミン類;イミダゾール類;酸無水物類などが挙げられる。樹脂成分は、好ましくはエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の硬化剤である。塗り床材用プライマーは、低粘度で含浸性に優れるものであることが好ましい。樹脂成分(例えば、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤)を含む塗り床材用プライマーは、市販品を用いることができる。
【0046】
塗り床材用プライマーが有機ケイ素化合物を含むことによって、塗り床材用プライマーがセルフレベリング材スラリー硬化体へより深く浸透し、塗り床材用プライマーによって強化された層がセルフレベリング材スラリー硬化体の表面からより深く生じる傾向にある。有機ケイ素化合物としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(アルコキシシラン)などが挙げられる。有機ケイ素化合物は、好ましくはテトラエトキシシランである。
【0047】
塗り床材用プライマーに含まれる樹脂成分(硬化性樹脂及び硬化性樹脂の硬化剤)の塗布量をX(g/m)、及び、塗り床材用プライマーに含まれる有機ケイ素化合物の塗布量をY(g/m)としたとき、X及びYは、下記式(1)及び下記式(2)の条件を満たす。言い換えると、座標(X,Y)をグラフにプロットしたときに、座標(X,Y)が、下記式(1)及び下記式(2)の条件を満たす領域内にあるといえる。樹脂成分の塗布量及び有機ケイ素化合物の塗布量がこのような範囲にあると、セルフレベリング材スラリー硬化体層に対する塗り床材層の剥離抵抗性により一層優れる傾向にある。
【0048】
75≦X≦110 (1)
-0.5X+65≦Y≦-0.5X+75 (2)
【0049】
Xは、75以上であり、好ましくは80以上、より好ましくは85以上、さらに好ましくは90以上である。Xが75未満であると、塗り床材用プライマーとしての作用が充分でない傾向にある。Xは、110以下であり、好ましくは105以下、より好ましくは100以下である。Xが110を超えると、塗り床材用プライマーに含まれる樹脂成分量が過剰となり、セルフレベリング材スラリー硬化体層に対する塗り床材層の剥離抵抗性が低下する傾向にある。
【0050】
X及びYは、式(1)及び式(2)の条件に加えて、下記式(3)をさらに満たすことが好ましい。
【0051】
10≦Y≦37.5 (3)
【0052】
Yは、10以上であり、好ましくは15以上、より好ましくは20以上である。Yが10未満であると、塗り床材用プライマーの浸透性の改善効果が充分でない傾向にある。Yは、37.5以下であり、好ましくは35以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下である。Yが37.5を超えると、塗り床材用プライマーに含まれる樹脂成分が少なることから、塗り床材用プライマーとしての作用が充分でない傾向にある。
【0053】
塗り床材用プライマーは、樹脂成分及び有機ケイ素化合物に加えて、フィラーをさらに含んでいてもよい。塗り床材用プライマーがフィラーをさらに含むことによって、セルフレベリング材スラリー硬化体表層の微細な凹凸を充填し、この微細な凹凸が塗り床材表面に出ることを抑制する傾向にある。また、塗り床材のピンホールの防止効果がより有効になる傾向にある。フィラーは、ポルトランドセメントを主成分とするものであってよく、必要に応じて、シリカ、タルク等の無機粉体を含むものであってもよい。樹脂成分とフィラーとの質量比は、例えば、樹脂成分:フィラー=5:1~1:1の範囲であることが好ましい。
【0054】
塗り床材用プライマーの可使時間(20℃)は、作業性及び浸透性の観点から可使用時間が長い方が好ましい。より具体的には、塗り床材用プライマーの可使時間は、好ましくは30分~3時間、より好ましくは60分~3時間である。
【0055】
<第3の工程>
本工程では、塗り床材用プライマー層12の上面12Aに、塗り床材ベースコートを塗布し、必要に応じて、塗り床材ベースコートを乾燥させて、塗り床材ベースコート層14を形成する(図1(c)参照)。本工程は、第2の工程の塗り床材用プライマーを塗布した後、2時間以上経過してから行うことが好ましい。
【0056】
塗り床材ベースコート層14は、塗り床材の耐久性、機械的強度、弾性等の主な機能を付与するための層である。塗り床材ベースコート層14を形成するための塗り床材ベースコートの主成分は、例えば、樹脂系ベースコートであってよい。樹脂系ベースコートとしては、例えば、溶剤型エポキシ樹脂系、無溶剤型エポキシ樹脂系、水性型エポキシ樹脂系等のエポキシ樹脂系ベースコートなどが挙げられる。塗り床材ベースコートは、樹脂系ベースコートに加えて、有機系顔料、無機系顔料、タルク、炭酸カルシウム、粉末状シリカ等の充填材、細骨材などをさらに含んでいてもよい。
【0057】
塗り床材ベースコートの施工は、各塗り床材メーカーの施工要領書に準拠し、鏝、ローラー、又は刷毛を適宜選択して行うことができる。
【0058】
本実施形態のコンクリート床構造体の製造方法は、塗り床材ベースコート層14の上面に、塗り床材トップコートを塗布して、塗り床材トップコート層を形成する工程をさらに備えていてもよい。本工程は、第4の工程の塗り床材ベースコートを塗布した後、24時間以上経過してから行うことが好ましい。
【0059】
塗り床材トップコート層は、耐候性、耐汚染性、防滑性、つや消し仕上げ等の塗り床材ベースコート層14を保護するための、又は各種機能を付与するための層である。塗り床材トップコート層を形成するための塗り床材トップコートの主成分は、樹脂系トップコートであってよい。樹脂系トップコートとしては、例えば、溶剤型エポキシ樹脂系、無溶剤型エポキシ樹脂系、水性型エポキシ樹脂系等のエポキシ樹脂系トップコートなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上を適宜選択して、1層又は2層以上の塗り床材トップコート層を形成することができる。
【0060】
塗り床材トップコートの施工は、各塗り床材メーカーの施工要領書に準拠し、鏝、ローラー、又は刷毛を適宜選択して行うことができる。
【0061】
このようにして、セルフレベリング材スラリー硬化体層に対する塗り床材層の剥離抵抗性に優れたコンクリート床構造体20を得ることができる。
【0062】
[コンクリート床構造体]
一実施形態のコンクリート床構造体は、図1(c)に示すとおりものである。コンクリート床構造体20は、コンクリート床層2と、セルフレベリング材スラリー硬化体層6と、樹脂成分と有機ケイ素化合物とを含む塗り床材用プライマーを塗布して形成される塗り床材用プライマー層12と、塗り床材ベースコート層14とをこの順に備える。塗り床材用プライマーに含まれる樹脂成分の塗布量をX(g/m)、及び、塗り床材用プライマーに含まれる有機ケイ素化合物の塗布量をY(g/m)としたとき、X及びYは、下記式(1)及び下記式(2)の条件を満たす。このようなコンクリート床構造体は、セルフレベリング材スラリー硬化体層に対する塗り床材層の剥離抵抗性に優れる。
【0063】
75≦X≦110 (1)
-0.5X+65≦Y≦-0.5X+75 (2)
【実施例
【0064】
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
[使用材料]
(A)セルフレベリング材
・セルフレベリング材A-1:超速硬型セメント系セルフレベリング材(市販品)
(B)セルフレベリング材用プライマー
・セルフレベリング材用プライマーB-1:スチレン-アクリル共重合樹脂エマルション(市販品)に水を加えて固形分濃度を15質量%に調整した分散液
(C)フィラー
・フィラーC-1:ポルトランドセメント約75質量%含有組成物(市販品)
(D)塗り床材用プライマー
エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤(ケチミン)、及び有機ケイ素化合物(テトラエトキシシラン)の原液(市販品、1液型、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂の硬化剤、及び有機ケイ素化合物の総量を100質量%としたときの、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の硬化剤(ケチミン)の含有量:92.5質量%、有機ケイ素化合物(テトラエトキシシラン)の含有量:7.5質量%)、及び、有機ケイ素化合物(テトラエトキシシラン)の添加液(市販品、有機ケイ素化合物の含有量:100質量%)を準備した。これらを原液のまま又は所定の比で混合し、さらにフィラーC-1を加えることによって、塗り床材用プライマーD-1~D-5を調製した。フィラーC-1は、原液に対して外割りで50質量%となるように添加した。塗り床材用プライマーD-1~D-5は、それぞれ150分(20℃)であった。
・塗り床材用プライマーD-1:原液(100質量%)
・塗り床材用プライマーD-2:原液(92.0質量%)と添加液(8.0質量%)との混合液
・塗り床材用プライマーD-3:原液(85.0質量%)と添加液(15.0質量%)との混合液
・塗り床材用プライマーD-4:原液(77.5質量%)と添加液(22.5質量%)との混合液
・塗り床材用プライマーD-5:原液(73.5質量%)と添加液(26.5質量%)との混合液
(E)塗り床材ベースコート
・塗り床材ベースコートE-1:エポキシ系樹脂ベースコート(市販品、2液型)
【0066】
[セルフレベリング材スラリーの調製方法]
セルフレベリング材スラリーは、1.5kgの上記のセルフレベリング材A-1に水390gを加え、ケミスターラーを用いて3分間混練することによって調製した。なお、調製は、温度20℃、湿度65%RHに設定した恒温恒湿室内で行った。
【0067】
[セルフレベリング材の物性試験]
(1)フロー値
フロー値は、社団法人日本建築学会JASS 15M-103「セルフレベリング材の品質基準」に準拠した方法で測定した。測定は、温度20℃の恒温室内で行った。セルフレベリング材A-1は、225mmであった。
(2)硬化体表面のショア硬度
ショア硬度は、上記で得られたセルフレベリング材スラリーを用いて測定した。セルフレベリング材スラリーを130×190mmの樹脂製の型枠に厚み10mmで流し込み、試験体を得た。試験体において、目視にてスラリー表面の光沢が完全に無くなるまでの時間(水引き時間)を確認した。水引き時間を基準として、スプリング式硬度計タイプD型にて各時間での硬化体表面のショア硬度を測定し、ショア硬度が10以上となる時間を求
めた。セルフレベリング材A-1のショア硬度が10以上となる時間は、1.5時間であった。
(3)硬化体表面の含水率(硬化体表面のケット水分計での含水率のDモード値)
ショア硬度の測定と同様の試験体にて、ショア硬度の発現開始を確認した。ショア硬度の発現開始時点を基準として、コンクリート床施工技術研究協議会「コンクリート下地の諸品質の測定方法、グレード」に準拠し、各時間での硬化体表面の含水率を水分計(株式会社ケット科学研究所製、「ケット水分計」という場合がある。)を用いて測定を行った。測定は、測定モードをDモードとし、20℃の恒温室内で行った。硬化体表面の含水率として、硬化体表面のケット水分計での含水率のDモード値が870以下となる時間を求めた。セルフレベリング材A-1の硬化体表面のケット水分計によるDモード値が870以下となる時間は、6時間であった。
(4)圧縮強度
社団法人日本建築学会JASS 15M-103「セルフレベリング材の品質基準」に準拠して、圧縮強度(N/mm2)を測定した。養生は温度20℃の恒温室内で行ない、材齢は28日とした。セルフレベリング材A-1の材齢28日の圧縮強度は、42N/mmであった。
【0068】
[コンクリート床構造体の作製]
(実施例1)
<コンクリート床下地の用意>
コンクリート床下地としての、長さ300mm×幅300mm×厚み60mmのコンクリート舗道板(コンクリート床層)の上面に、10mm厚のセルフレベリング材スラリー硬化体層を設けた、コンクリート床下地を用意した。なお、セルフレベリング材スラリー硬化体層は、上記コンクリート舗道板(コンクリート床層)上に、5.5gのセルフレベリング材用プライマーB-1を均一に塗布して1日乾燥させてセルフレベリング材用プライマー層を形成した。次いで、セルフレベリング材用プライマー層の上面に、上述のセルフレベリング材スラリーを10mm厚になるように流し込み、6日間養生させることによって、セルフレベリング材スラリー硬化体層を形成した。
【0069】
<塗り床材用プライマー層の形成>
上記セルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、塗り床材用プライマーD-1を表1に示す塗布量で塗布し、3時間乾燥させることによって、塗り床材用プライマー層を形成した。
【0070】
<塗り床材ベースコート層の形成>
塗り床材用プライマーを塗布してから1日後に、塗り床材用プライマー層の上面に、厚さ0.8mmとなるように所定量の塗り床材ベースコートE-1を塗布した。塗布は2度に分けて行い、1度目は上記塗り床材用プライマー層を形成した直後に、2度目は1度目塗布16時間後に塗布した。2度目の塗布後7日間乾燥させることによって、塗り床材ベースコート層を形成することによって、実施例1のコンクリート床構造体を得た。
【0071】
[剥離抵抗性試験]
得られたコンクリート床構造体において、塗り床材ベースコート層からセルフレベリング材スラリー硬化体層の表層部まで電動カッターで切り込みを入れた。その切り込みからセルフレベリング材スラリー硬化体層と塗り床材ベースコート層との界面に対して、逆三角形状のカワスキを、ハンマーで叩きながら数ミリ程度入れ、手で力を加えて塗り床材ベースコート層をピーリング試験的に剥離させ、その際の抵抗性を触手により評価した。評価は、下記の1~5の5段階とし、最も剥がれ易い場合を1点とし、剥がれ難くなるに従って高い点数となるようにした。結果を表1に示す。
(評価点)
5点:非常に剥がれ難い
4点:剥がれ難い
3点:やや剥がれ難い
2点:剥がれ易い
1点:非常に剥がれ易い
【0072】
(実施例2~5及び比較例1~8)
塗り床材用プライマーを表1に示す種類の塗り床材用プライマーに変更し、表1に示す塗布量で塗布した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2~5及び比較例1~8のコンクリート床構造体を得た。これらのコンクリート床構造体について、実施例1のコンクリート床構造体と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
図2は、塗り床材用プライマーに含まれる、樹脂成分の塗布量(g/m)と有機ケイ素化合物の塗布量(g/m)との関係を示すグラフであり、樹脂成分の塗布量X(g/m)を横軸として、有機ケイ素化合物の塗布量Y(g/m)を縦軸としてプロットしたグラフである。図1中、4つの直線は、X=75、X=110、Y=-0.5X+65、及びY=-0.5X+75である。図1中の黒丸のプロットは、実施例1~5に対応するものであり、剥離抵抗性試験が4点以上であった。一方、図1中の白丸のプロットは、比較例1~8に対応するものであり、剥離抵抗性試験が3点以下であった。これらの結果から、X及びYが式(1)及び式(2)の条件を満たす(座標(X,Y)が、式(1)及び式(2)の条件を満たす領域内にある)ことによって、剥離抵抗性に優れることが判明した。以上より、本発明の製造方法によって得られるコンクリート床構造体が、セルフレベリング材スラリー硬化体層に対する塗り床材層の剥離抵抗性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0075】
2…コンクリート床層、4…セルフレベリング材用プライマー層、6…セルフレベリング材スラリー硬化体層、10…コンクリート床下地、12…塗り床材用プライマー層、14…塗り床材ベースコート層、20…コンクリート床構造体。
図1
図2