(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】縁石の施工方法、および、縁石
(51)【国際特許分類】
E01C 11/22 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
E01C11/22 B
(21)【出願番号】P 2021063268
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】奥山 勝
(72)【発明者】
【氏名】林 知三夫
(72)【発明者】
【氏名】柏本 昭信
(72)【発明者】
【氏名】酒井 伯文
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-003810(JP,A)
【文献】実開昭57-046603(JP,U)
【文献】特開2005-179949(JP,A)
【文献】特開平09-125309(JP,A)
【文献】特開2003-090005(JP,A)
【文献】特開平09-279513(JP,A)
【文献】実開平02-078613(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02088241(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁石の施工方法であって、
基礎からの高さが調整されている第1縁石の一方の端部に設けられた被係合部に、第2縁石が有する一方の端部に設けられた係合部を係合させることで、前記第2縁石の一方の端部を前記第1縁石の一方の端部に支持させる第1の工程と、
前記第1の工程の後、前記基礎に対する前記第2縁石の他方の端部の高さを調整する第2の工程と、
前記第1の工程より前に、前記基礎と前記第2縁石との間に下地を形成する第3の工程と、を備
え、
前記第2の工程では、前記下地の厚みを調整することで、前記基礎に対する前記第2縁石の他方の端部の高さを調整し、
前記第3の工程では、前記基礎と前記第2縁石との間の下地を、前記基礎と前記第1縁石との間の下地から分離して形成することで、前記基礎と前記第2縁石の底面との間に隙間を形成する、
縁石の施工方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の施工方法であって、
前記第1の工程では、前記第2縁石の他方の端部を下方側にして前記第2縁石を立てた状態から、前記第2縁石の上方側を前記第1縁石側に倒すことによって、前記第2縁石の係合部を前記第1縁石の被係合部に係合させる、
縁石の施工方法。
【請求項3】
下地を介して基礎の上に配置される縁石であって、
長尺状の本体部と、
前記本体部の一方の端部に設けられた被係合部であって、前記一方の端部側で隣接する他の縁石と係合する被係合部と、
前記本体部の他方の端部に設けられた係合部であって、前記他方の端部側で隣接する他の縁石と係合する係合部と、を備
え、
前記縁石の被係合部および係合部の少なくとも一方と前記他の縁石とを係合させたとき、前記基礎と前記本体部の底面との間に隙間を形成可能である、
縁石。
【請求項4】
請求項
3に記載の縁石であって、
前記被係合部および前記係合部の少なくとも一方は、前記縁石の底面を下側にした状態の前記縁石を上から見たときに、弧形状を有している、
縁石。
【請求項5】
請求項
3または請求項
4に記載の縁石であって、
前記縁石の被係合部および係合部の少なくとも一方と前記他の縁石とを係合させたとき、前記本体部の端部と前記他の縁石との間には、隙間が形成される、
縁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縁石の施工方法、および、縁石に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩道と車道との境界に設けられる縁石が知られている(例えば、特許文献1~7)。一般的に、縁石を施工するとき、基礎の上に敷き詰められたモルタルや砂などの下地の上に縁石を配置し、高さの基準に合わせつつ、上面が路面に平行となるように、縁石全体の高さを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-169551号公報
【文献】特開2001-182171号公報
【文献】特開平11-81522号公報
【文献】特開2016-142010号公報
【文献】特開2005-98025号公報
【文献】特開平10-121407号公報
【文献】特開平9-279513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような施工方法では、複数の縁石のそれぞれの高さを揃えるため、下地を平らに形成する必要がある。また、基礎や下地を精度よく形成しても、縁石の置き方などによっては下地が変形し、高さが変化するおそれがある。このため、縁石を下地の上に配置してから高さを調整する必要がある。しかしながら、縁石の一方の端部を持ち上げると、他方の端部が沈み込む場合があり、縁石の施工時間が長くなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、縁石の施工方法において、施工時間を短くする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、縁石の施工方法が提供される。この縁石の施工方法では、基礎からの高さが調整されている第1縁石の一方の端部に設けられた被係合部に、第2縁石が有する一方の端部に設けられた係合部を係合させることで、前記第2縁石の一方の端部を前記第1縁石の一方の端部に支持させる第1の工程と、前記第1の工程の後、前記基礎に対する前記第2縁石の他方の端部の高さを調整する第2の工程と、を備える。
【0008】
この構成によれば、第1の工程において、第2縁石が有する一方の端部に設けられた係合部を、基礎からの高さが調整されている第1縁石の一方の端部に設けられた被係合部に係合させることで、第2の縁石の一方の端部を第1縁石に支持させる。これにより、第2縁石の一方の端部は、第1縁石の高さと同一になる。さらに、第2の工程において、第2縁石の他方の端部の高さを調整することで、第2縁石の全体の高さが調整される。すなわち、第2縁石を施工するとき、第2縁石全体の高さを調整するためには、第2縁石の他方の端部の高さのみを調整すればよいことになる。これにより、縁石を設置する前の下地の平滑化が不要となり、縁石全体の高さ調整も他方の端部の高さ調整だけ行えばよいため、高さを調整するための時間を短縮することができる。したがって、縁石の施工時間を短くすることができる。
【0009】
(2)上記形態の縁石の施工方法において、前記第1の工程より前に、前記基礎と前記第2縁石との間に下地を形成する第3の工程を備え、前記第2の工程では、前記下地の厚みを調整することで、前記基礎に対する前記第2縁石の他方の端部の高さを調整してもよい。この構成によれば、第2工程において、基礎と第2縁石との間の下地の厚みを調整することで、基礎に対する第2縁石の他方の端部の高さを調整する。これにより、容易に第2縁石の他方の端部の高さを調整することができるため、縁石の施工時間をさらに短くすることができる。
【0010】
(3)上記形態の縁石の施工方法において、前記第3の工程では、前記基礎と前記第2縁石との間の下地を、前記基礎と前記第1縁石との間の下地から分離して形成してもよい。この構成によれば、第3の工程において、基礎と第2縁石との間の下地を、基礎と第1縁石との間の下地から分離して形成する。これにより、第2縁石の下側には空間が形成されるため、例えば、第2縁石の下面となる面を支えて第2縁石を移動させる場合、第2縁石の下面を支えたまま第2縁石を所望の位置に配置することができる。これにより、第2縁石の移動を容易に行うことができるため、縁石の施工時間をさらに短くすることができる。
【0011】
(4)上記形態の縁石の施工方法において、前記第1の工程では、前記第2縁石の他方の端部を下方側にして前記第2縁石を立てた状態から、前記第2縁石の上方側を前記第1縁石側に倒すことによって、前記第2縁石の係合部を前記第1縁石の被係合部に係合させてもよい。この構成によれば、第1の工程において、他方の端部を下方側にして立てられている第2縁石の上方側を第1縁石側に倒すことによって、第2縁石の係合部を第1縁石の被係合部に係合させる。これにより、第2縁石を移動させる労力を低減させることができる。したがって、縁石を施工するために必要な人員の数を減らすことができるため、縁石の施工コストを低減できる。
【0012】
(5)本発明の別の形態によれば、縁石が提供される。この縁石は、長尺状の本体部と、前記本体部の一方の端部に設けられた被係合部であって、前記一方の端部側で隣接する他の縁石と係合する被係合部と、前記本体部の他方の端部に設けられた係合部であって、前記他方の端部側で隣接する他の縁石と係合する係合部と、を備える。この構成によれば、縁石は、長尺状の本体部の一方の端部に被係合部が設けられており、他方の端部に係合部が設けられている。被係合部は、一方の端部側で隣接する他の縁石と係合することで、他の縁石を支持する。一方、係合部は、他方の端部側で隣接する他の縁石と係合することで、他の縁石によって支持される。すなわち、縁石は、一方の端部が他の縁石によって支持されるため、他方の端部のみを調整することで、縁石の高さを調整することができる。したがって、縁石を施工するときに、縁石の高さを調整する時間を短縮することができるため、縁石の施工時間を短くすることができる。
【0013】
(6)上記形態の縁石において、前記被係合部および前記係合部の少なくとも一方は、前記縁石の底面を下側にした状態の前記縁石を上から見たときに、弧形状を有していてもよい。この構成によれば、被係合部および係合部の少なくとも一方は、縁石の底面を下側にした状態の縁石を上から見たときに、弧形状を有している。これにより、被係合部および係合部の少なくとも一方と他の縁石とを係合させるとき、弧形状を利用して、縁石を他の縁石の中心軸に対して傾けた状態で連結することができる。これにより、縁石を直線状だけでなく曲線状にも配置することができる。
【0014】
(7)上記形態の縁石において、前記縁石の被係合部および係合部の少なくとも一方と前記他の縁石とを係合させたとき、前記本体部の端部と前記他の縁石との間には、隙間が形成されてもよい。この構成によれば、縁石の被係合部および係合部の少なくとも一方と他の縁石とを係合させたとき、縁石の本体部と他の縁石との間には、隙間が形成される。これにより、本体部の端部と他の縁石との間の隙間をモルタルなどで埋めることで、等間隔の目地を形成することができる。したがって、外観的に優れた縁石の連結構造体を形成することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、縁石を施工する装置、この装置の制御方法、縁石の製造方法、縁石の連結方法、複数の縁石を連結した連結構造体、この連結構造体の製造方法、道路の舗装方法、縁石の高さ調整方法、ブロックの施工方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の縁石の概略構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態の縁石の使用状態を説明する図である。
【
図7】縁石の施工方法の評価試験における縁石の配置状態を説明する図である。
【
図8】縁石の施工方法の評価試験の結果を説明する図である。
【
図9】第2実施形態の縁石の概略構成を示す模式図である。
【
図10】第2実施形態の縁石の特徴を説明する図である。
【
図11】第2実施形態の縁石の使用状態を説明する図である。
【
図12】縁石の施工方法を説明する第1の図である。
【
図13】縁石の施工方法を説明する第2の図である。
【
図14】縁石の施工方法を説明する第3の図である。
【
図15】第2実施形態の縁石の施工方法の評価試験の結果を説明する図である。
【
図16】第3実施形態の連結用縁石の概略構成を示す模式図である。
【
図17】連結用縁石の使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の縁石10の概略構成を示す模式図である。本実施形態の縁石10は、例えば、車道と歩道との境界線として路肩に設置されるものであり、複数の縁石10を連結することで連結構造体を形成する。縁石10は、長尺状の本体部11と、第1突出部12と、第2突出部13と、を備える。なお、
図1において、複数の縁石10を連結するときに並べられる方向をy軸方向とし、鉛直方向をz軸方向とする。縁石10が並べられる方向であるy軸方向と、鉛直方向のz軸方向とのそれぞれに直交する方向をx軸とする。
図1(a)は、縁石10のx軸に垂直な断面図である。
図1(b)は、
図1(a)の矢印Aの方向から見た縁石10の外観を示す図である。
図1(c)は、
図1(a)の矢印Bの方向から見た縁石10の外観を示す図である。したがって、
図1(a)は、
図1(b)および
図1(c)のC-C線断面図となる。
【0018】
本体部11は、略直方体形状を有している部位であって、
図1(a)に示すように、縁石10のy軸方向の長さの大部分を占める。本実施形態では、本体部11は、y軸に垂直な断面形状が、
図1(b)および
図1(c)に示すように、台形形状となるように形成されている。すなわち、本体部11のz軸方向のプラス側の上面11aの幅は、z軸方向のマイナス側の底面11bの幅に比べ短い(
図1(b)、(c)参照)。
【0019】
第1突出部12は、本体部11のy軸方向におけるプラス側の端部に設けられている。第1突出部12は、本体部11の側面11cからy軸のプラス方向に突出するように形成されている平板形状の部位であって、一対の主面12a、12bを有する。主面12aは、z軸方向のプラス側の平面である。主面12bは、本体部11の底面11bと同一の平面を形成している。
【0020】
第2突出部13は、本体部11のy軸方向におけるマイナス側の端部に設けられている。第2突出部13は、本体部11の側面11dからy軸のマイナス方向に突出するように形成されている平板形状の部位であって、一対の主面13a、13bを有する。主面13aは、本体部11の上面11aと同一の平面を形成している。主面13bは、z軸方向のマイナス側に形成される平面である。
【0021】
本実施形態では、縁石10のy軸方向の長さは、680mmであり、そのうち、本体部11の長さは、520mmであり、第1突出部12の長さと第2突出部13の長さは、それぞれ80mmである。第1突出部12の長さと第2突出部13の長さは、20mmから100mmの範囲内であって、40mmから80mmの範囲内が望ましい。なお、上述した縁石10や第1突出部12などの長さは一例であって、これらに限定されない。
【0022】
本実施形態では、縁石10のz軸方向の高さH11は、200mmであり、第1突出部12のz軸方向の高さH12は、160mmであり、第2突出部13のz軸方向の高さH13は、40mmである。第1突出部12のz軸方向の高さH12と、第2突出部13のz軸方向の高さH13の合計は、縁石10のz軸方向の高さH11となる。すなわち、第1突出部12の主面12aと、第2突出部13の主面13bとは、本体部11の底面11bから同じ高さにある。なお、上述した縁石10や第1突出部12などの高さは一例であって、これらに限定されない。第1突出部12の主面12aと、第2突出部13の主面13bとが本体部11の底面11bから同じ高さにあればよい。
【0023】
図2は、第1実施形態の縁石10の使用状態を説明する図である。
図2(a)には、設置されている縁石10について、複数の縁石10の連結方向に対して垂直な方向の断面形状を示す。
図2(b)には、複数の縁石10が連結されている連結構造体5の側面図を示している。なお、
図2(b)では、縁石10に隣接する2つの縁石10のそれぞれを区別するため、それぞれの部位を示す符号の前に「A」または「B」を付して説明する。
【0024】
本実施形態の縁石10は、コンクリート製の基礎6の上に敷かれている砂の下地7の上に配置される(
図2(a)参照)。基礎6は、原野土壌6aを掘削し、砕石を敷き詰めて転圧することで路盤6bを形成したのち、路盤6bの上に型枠を組んでコンクリートを流し込むことで形成される。下地7は、例えば、厚さL7が0.03mとなるように基礎6の上に形成される。
【0025】
連結構造体5は、1つの縁石10の両側のそれぞれに、連結される縁石A10と縁石B10が配置される(
図2(b)参照)。縁石A10と縁石B10とは、縁石10と同じ構成を備えている。縁石10の第1突出部12は、縁石A10の第2突出部A13と係合する。これにより、縁石10の第1突出部12は、縁石A10の第2突出部A13を支持する。縁石10の第2突出部13は、縁石B10の第1突出部B12と係合する。これにより、第2突出部13は、縁石B10の第1突出部B12に支持される。すなわち、縁石10は、第1突出部12によって縁石A10を支持しつつ、第2突出部13が縁石B10に支持される。本実施形態では、下地7は、縁石10、A10、B10のそれぞれの第1突出部と基礎6との間にのみ形成される。
【0026】
図3は、縁石10の施工方法を説明する第1の図である。次に、縁石10の施工方法について説明する。本実施形態の縁石10の施工方法では、最初に、基礎6の上に縁石90を設置する。具体的には、
図3に示すように、基礎6の上に形成された下地97の上に、切り欠き92が形成されている縁石90を配置する。縁石90では、下面91と基礎6との間の全面に、下地7が形成されており、連結構造体5の高さの基準となる。縁石90のy軸方向のプラス側には、切り欠き92が形成されている。切り欠き92は、縁石90のz軸方向のプラス側の角部に形成されており、z軸方向の深さが縁石10の第2突出部13のz軸方向の高さと同じになっている。切り欠き92を形成する底面92aと側面92bとのそれぞれは、平面であって、底面92aは、基礎6に対して平行となるように設置されている。
【0027】
縁石90を基礎6の上に設置したのち、複数の縁石10を縁石90に対して、y軸方向に並ぶように配置する。本実施形態では、縁石10は、第1突出部12が設けられている側の端部(以下、単に「第1突出部12側の端部」という)を下方側にして、第2突出部13が設けられている側の端部(以下、単に「第2突出部13側の端部」という)を上方側にして、立てた状態で配置される(
図3参照)。ここでは、便宜的に、複数の縁石10のそれぞれを、縁石90から近い順に、縁石10a、10b、10c、10dとする。
【0028】
図4は、縁石10の施工方法を説明する第2の図である。
図4(a)は、
図3で示した縁石90に対して複数の縁石10を並べて配置した状態を示す模式図である。複数の縁石10を並べて配置した後、縁石90に最も近い縁石10aの縁石90側に下地7aを形成する。下地7aは、縁石10aを設置したときに、第1突出部12と基礎6との間に位置するように形成される。本実施形態では、第1突出部12と基礎6との間の下地7aは、縁石90の下地97から分離するように形成される。
【0029】
縁石10aの縁石90側に下地7aを形成したのち、縁石10aの第2突出部13側の端部を縁石90側に倒す(
図4(b)の白抜き矢印F1参照)。これにより、縁石10aの第2突出部13が縁石90に係合する。具体的には、第2突出部13の主面13aと、切り欠き92の底面92aとが接触する。これにより、縁石10aの第2突出部13側の端部は、縁石90によって支持される。したがって、縁石10aの第2突出部13側の端部の高さは、高さが調整されている縁石90によって調整される。さらに、縁石10aの主面13aは、基礎6に対して平行に設置されている縁石90の底面92aに接触するため、縁石10aの基礎6に対する平行度も調整される。
【0030】
図5は、縁石10の施工方法を説明する第3の図である。縁石10aと縁石90とを係合させたのち、縁石10aの第1突出部12側の端部の高さを調整する(
図5の白抜き矢印F2参照)。具体的には、第1突出部12と基礎6との間の下地7aの厚みを調整することで、縁石10の第1突出部12側の端部の高さを調整する。これにより、縁石10a全体の高さが調整されて、縁石10aの施工が完了する。
【0031】
図6は、縁石10の施工方法を説明する第4の図である。縁石10aの施工が完了した後、縁石10bの縁石10a側に、下地7aから分離した下地7bを形成する。下地7bを形成した後、縁石10aの場合と同様に、縁石10bの第2突出部13側の端部を縁石10a側に倒して、縁石10aの第1突出部12と縁石10bの第2突出部13とを係合させる。さらに、縁石10bの第1突出部12側の端部の高さを下地7bの厚みを調整することで調整する。これにより、縁石10b全体の高さと基礎6に対する平行度が調整されて、縁石10bの施工が完了する。
【0032】
縁石10bの施工が完了した後、縁石10c、10dのそれぞれも、下地7c、7dのそれぞれを用いて同様の方法によって施工し、縁石10の連結構造体5を形成する。本実施形態の連結構造体5では、1つの縁石10において、第2突出部13側の端部は、すでに施工が完了した隣接する縁石10によって支持されるため高さの調整が不要であり、第1突出部12側の端部は、下地7の厚みを調整することで高さを調整する。これにより、縁石10全体の高さの調整は、第1突出部12側の端部の高さ調整のみで行うことができる。
【0033】
本実施形態の縁石10の施工方法では、第1突出部12と基礎6との間の下地7a、7b、7c、7dのそれぞれは、隣の下地、例えば、下地7bの場合、下地7aと下地7cとから分離するように敷かれる。これにより、2つの下地7の間は、縁石10を施工するとき、縁石10を移動させる重機などの爪を挿入可能な隙間3とすることができる。
【0034】
次に、縁石の施工方法の評価試験について説明する。本評価試験では、本実施形態の縁石の施工方法も含めた複数の施工方法のそれぞれについて、縁石の施工に必要な人員の数と、縁石の施工が完了するまでの時間を評価した。具体的には、本実施形態の縁石10と、比較例の縁石のそれぞれについて、施工前の縁石の間配り位置と、下地と縁石との敷設手順と、を異ならせて、所定の長さの連結構造体を形成する。この連結構造体を形成する手順を踏まえて、必要な人員の数を把握するとともに、縁石の施工が完了するまでの時間を実測した。ここで、比較例の縁石とは、略直方体形状を有している縁石であって、具体的には、両面歩車道境界ブロックA型(JIS A 5371)に、上ぶた式U字形側溝ふた1種(JIS A 5372)を接合したものである。本評価試験では、評価試験の公平性を担保するため、縁石10の重量と、比較例の縁石の重量を同じとした。
【0035】
図7は、縁石10の施工方法の評価試験における縁石の配置状態を説明する図である。施工前の縁石の間配り位置は、
図7に示す2種類の間配り配置を用いた。
図7(a)に示す間配り配置は、高さの基準となる基準縁石Csに対して、基礎6の上に縁石Sを立てて配置する間配り配置(以下、「立たせ配置」という)であって、上述した本実施形態の縁石10の施工方法での間配り配置と同じ配置である。この立たせ配置では、縁石Sをその場で倒したのち、位置や高さを調整することで縁石Sの施工が完了する(
図7(a)の白抜き矢印F3参照)。
図7(b)に示す間配り配置は、基礎6の横に寝かせて並べる間配り配置(以下、「寝かせ配置」という)である。この寝かせ配置では、縁石Sは、重機などによって基礎6の上に持ち上げられてから基準縁石Csに揃うように基礎6の上に配置されたのち、位置や高さが調整されることで施工が完了する(
図7(b)の白抜き矢印F4参照)。
【0036】
図8は、縁石の施工方法の評価試験の結果を説明する図である。以下に、本評価試験で評価した、「縁石の種類」と、「間配り位置」と、「下地と縁石との敷設手順」と組み合わせを、
図8に示す「施工方法」ごとに示す。
「第1実施形態」
縁石の種類:縁石10 施工前の間配り配置:立たせ配置
下地と縁石との敷設手順:1つの縁石を施工するごとに下地を形成
「比較例1」
縁石の種類:比較例の縁石 施工前の間配り配置:立たせ配置
下地と縁石との敷設手順:1つの縁石を施工するごとに下地を形成
「比較例2」
縁石の種類:比較例の縁石 施工前の間配り配置:寝かせ配置
下地と縁石との敷設手順:1つの縁石を施工するごとに下地を形成
「比較例3」
縁石の種類:比較例の縁石 施工前の間配り配置:立たせ配置
下地と縁石との敷設手順:縁石を施工する前に全数の縁石のそれぞれの下地を形成
【0037】
本評価試験では、1個の基準縁石Csを基礎6の上に置いた状態から、4個の縁石Sを設置するまでにかかった時間を3回計測し、その平均値を比較した。その結果、比較例1~3のそれぞれでは、施工時間は、850秒前後となり、間配り配置や下地と縁石との敷設手順による大きな違いは確認できなかった。これは、間配りの方法や施工順序による影響が小さく、施工時間のほとんどが縁石の高さ調整や平行出しに費やされるためと考えられる。なお、比較例1の施工方法は、比較例2、3に比べて、間配り配置に必要な人員が1人でよいため、人件費の削減につながる。
【0038】
第1実施形態の施工方法では、施工時間が、約200秒となり、比較例1~3の24%まで低減できることが明らかとなった。これは、上述したように、1つの縁石10を施工するとき、第1突出部12側の端部の高さのみを調整すれば縁石10全体の高さが調整されることと、隣接する縁石10に係合させるとき平面どうしで係合するため基礎6に対する平行度も必然的に調整されることによる。これらによって、第1実施形態では、比較例1~3では必要である下地7の平滑化が不要となる。したがって、作業が大幅に簡略化されたため、施工時間が大幅に短縮されることが明らかとなった。
【0039】
以上説明した、本実施形態の縁石の施工方法によれば、縁石10が有する第2突出部13を、すでに施工されていて高さが調整されている他の縁石10の第1突出部12に係合させることで、縁石10の第2突出部13側の端部を他の縁石10に支持させる。これにより、縁石10の第2突出部13側の端部は、他の縁石10の高さと同一になる。さらに、縁石10の第1突出部12側の端部の高さを調整することで、縁石10の全体の高さが調整されることになる。すなわち、縁石10を施工するとき、縁石10の高さを調整するためには、縁石10の第1突出部12側の端部の高さのみを調整すればよいことになる。これにより、高さを調整するための時間を短縮することができる。したがって、縁石10の施工時間を短くすることができる。
【0040】
また、本実施形態の縁石の施工方法によれば、縁石10の第1突出部12の主面12aと、隣接する縁石10の第2突出部13の主面13aのそれぞれは、平面状に形成されている。これにより、縁石10どうしの係合によって、第1突出部12の主面12aと第2突出部13の主面13aとが接触することで、第2突出部13が係合する側の縁石10の平行度も調整される。したがって、縁石10を設置する前の下地7の平滑化が不要となり、縁石10の施工時間をさらに短くすることができる。
【0041】
また、本実施形態の縁石の施工方法によれば、すでに施工されている縁石10に係合させたのち、基礎6と縁石10との間の下地7の厚みを調整することで、基礎6に対する縁石10の第1突出部12側の端部の高さを調整する。これにより、容易に縁石10の第1突出部12側の端部の高さを調整することができるため、縁石10の施工時間をさらに短くすることができる。
【0042】
また、本実施形態の縁石の施工方法によれば、基礎6と縁石10との間の下地7を、基礎6と隣接する縁石10との間の下地7から分離して形成する。これにより、縁石10の下側には隙間3が形成されるため、例えば、縁石10の底面11bを支えて縁石10を倒すとき、縁石10の底面11bを支えたまま縁石10を他の縁石10に係合させることができる。これにより、縁石10の移動を容易に行うことができるため、縁石10の施工時間をさらに短くすることができる。
【0043】
また、本実施形態の縁石の施工方法によれば、例えば、縁石10の底面11bを支えたまま縁石10を倒すことができるため、側面を把持して倒す場合などに比べ、縁石10が落下する可能性を小さくすることができる。これにより、落下による縁石10の破損を抑制できるとともに、縁石10を施工する施工者の安全を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態の縁石の施工方法によれば、第1突出部12側の端部を下方側にして立てられている縁石10を、第2突出部13側の端部を隣接する縁石10側に倒すことによって、縁石10の第2突出部13を隣接する縁石10の第1突出部12に係合させる。これにより、縁石10を移動させる労力を低減させることができる(
図8参照)。したがって、縁石10を施工するために必要な人員の数を減らすことができるため、縁石10の施工コストを低減できる。
【0045】
また、本実施形態の縁石10によれば、縁石10は、長尺状の本体部11の一方の端部に第1突出部12が設けられており、他方の端部に第2突出部13が設けられている。第1突出部12は、隣接する縁石10と係合することで、隣接する縁石10を支持する。一方、第2突出部13は、隣接する別の縁石10と係合することで、この別の縁石10によって支持される。すなわち、縁石10は、第2突出部13側の端部が他の縁石10によって支持されるため、第1突出部12側の端部のみを調整することで、縁石10の高さを調整することができる。したがって、縁石10を施工するときに、縁石10の高さを調整する時間を短縮することができるため、縁石10の施工時間を短くすることができる。
【0046】
また、本実施形態の縁石10によれば、縁石10の第1突出部12の主面12aと、隣接する縁石10の第2突出部13の主面13aのそれぞれは、平面状に形成されている。これにより、第2突出部13が係合する側の縁石10の平行度は、第1突出部12に係合される側の縁石10の平行度によって調整される。したがって、縁石10を設置する前の下地7の平滑化が不要となり、縁石10の施工時間をさらに短くすることができる。
【0047】
また、本実施形態の縁石10によれば、略直方体形状の本体部が有する2つの角部に、第1突出部12と第2突出部13とを形成する切り欠きを有する比較的単純な形状を有している。これにより、従来の縁石を製造するための型に中子を入れることで、縁石10を製造することができる。したがって、縁石10の製造コストの増大を抑制することができる。
【0048】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態の縁石の概略構成を示す模式図である。第2実施形態の縁石は、第1実施形態の縁石(
図1)と比較すると、「被係合部」と「係合部」の位置が異なる。
【0049】
本実施形態の縁石20は、長尺状の本体部11と、第1突出部22と、第2突出部23と、を備える。なお、
図9において、複数の縁石20を連結するときに並べられる方向をy軸方向とし、鉛直方向をz軸方向とする。縁石20が並べられる方向であるy軸方向と、鉛直方向のz軸方向とのそれぞれに直交する方向をx軸とする。
図9(a)は、縁石20のx軸に垂直な断面図である。
図9(b)は、
図9(a)の矢印Dの方向から見た外観を示す図である。
図9(c)は、
図9(a)の矢印Eの方向から見た外観を示す図である。したがって、
図9(a)は、
図9(b)および
図9(c)のF-F線断面図となる。
【0050】
第1突出部22は、本体部11のy軸方向におけるプラス側の端部に設けられ、本体部11の側面11cからy軸のプラス方向に突出するように形成されている平板形状の部位である。第1突出部22が有する一対の主面22a、22bのうち、主面22aは、z軸方向のプラス側の平面である。主面22bは、本体部11の底面11bと同一の平面を形成している。
【0051】
第2突出部23は、本体部11のy軸方向におけるマイナス側の端部に設けられ、本体部11の側面11dからy軸のマイナス方向に突出するように形成されている平板形状の部位である。第2突出部23が有する、一対の主面23a、23bのうち、主面23aは、本体部11の上面11aと同一の平面を形成している。主面23bは、z軸方向のマイナス側に形成される平面である。
【0052】
z軸方向の高さH11が200mmの縁石20において、第1突出部22のz軸方向の高さH22は、40mmであり、第2突出部23のz軸方向の高さH23は、160mmとなっている。すなわち、第1突出部22の主面22aと、第2突出部23の主面23bとは、本体部11の底面11bから同じ高さにある。
【0053】
本実施形態では、第1突出部22は、y軸方向の長さが90mmとなっており、第2突出部23のy軸方向の長さより10mm長く形成されている。これにより、縁石20の第1突出部22が、縁石20に隣接する他の縁石20の第2突出部23に係合するとき、第1突出部22の先端が、他の縁石20の本体部11に接触することで、縁石20と他の縁石20との間に隙間が形成される。
【0054】
図10は、本実施形態の縁石20の特徴を説明する図である。
図10(a)は、連結されている2つの縁石20の連結部分を上から見た拡大図である。ここで、
図10に示す2つの縁石20のそれぞれを区別するために、それぞれの部位を示す符号の前に、例えば、縁石A20や、第2突出部B23のように、「A」または「B」を付して説明する。
図10(a)に示すように、縁石A20と縁石B20とが連結するとき、縁石A20の第1突出部A22と縁石B20の第2突出部B23とが係合する。第1突出部A22の長さL22が縁石B20の第2突出部B23の長さL23より長いため、第1突出部A22の先端面A22cが、縁石B20の本体部B11の側面B11dに接触する場合がある。この場合、縁石A20の本体部A11の側面A11cと、縁石B20の第2突出部B23の先端面B23cとの間には、隙間4が形成される。隙間4は、縁石20の連結構造体5の目地として、モルタルなどによって充填されるため、本実施形態の縁石20は、目地の間隔を均等に形成することができる。
【0055】
さらに、本実施形態の縁石20では、
図10に示すように、第1突出部22の先端面22cが円弧形状を有している。これにより、縁石A20と縁石B20とを係合させた状態で、第1突出部A22の先端面A22cを縁石B20の本体部B11の側面B11dにあてたままでも、縁石A20を、縁石B20の中心軸C0に対して傾けることができる(
図10(b)の白抜き矢印F5)。これにより、縁石B20に対する縁石A20の角度を調整することができるため、縁石20は、縁石20を曲がっていくように配置された曲線形状の連結構造体5を形成することができる。
【0056】
図11は、本実施形態の縁石20の使用状態を説明する図である。
図11は、縁石20の連結構造体5が、道路と歩道との境界に使用されている状態を示す図である。
図11に示すように、路盤98aとアスファルト98bとが積層されている車道98と、コンクリート製の歩道99との間に、縁石20の連結構造体5が配置されている。縁石20は、原野土壌6aの上に積層されている砕石からなる路盤6bと、コンクリート製の基礎6と、砂からなる下地7との積層体の上に配置されている。このとき、
図11に示すように、連結構造体5の下部、すなわち、下地7に近い部分は、車道98の路面Sf98や歩道99の路面Sf99よりも低い位置にあるため、隣接する縁石20どうしが係合する部分(
図11における点線22a、23bよりz軸のマイナス方向)は、外部から見えなくなる。
【0057】
図12は、縁石20の施工方法を説明する第1の図である。次に、縁石20の施工方法について説明する。本実施形態の縁石20の施工方法では、最初に、第1実施形態の施工方法と同様に、基礎6の上に高さの基準となる縁石90を設置する。
【0058】
縁石90を基礎6の上に設置したのち、複数の縁石20を、縁石90に対してy軸方向に並ぶように配置する。本実施形態では、縁石20は、基礎6の上とは異なる場所に、第1突出部22と第2突出部23とが下方側になるように、縁石20を寝かして配置する(
図12参照)。ここでは、便宜的に、複数の縁石20のそれぞれを、縁石90から近い順に、縁石20a、20b、20c、20dとする。
【0059】
図13は、縁石20の施工方法を説明する第2の図である。複数の縁石20を並べて
図12に示すように配置した後、基礎6の上に縁石90の下地97と分離した下地7aを形成する。下地7aを敷いたのち、縁石20aを重機などによって持ち上げて、基礎6の上に配置する(
図13(a)の白抜き矢印F6)。このとき、縁石20aの底面11bを重機の爪などによって把持することで、縁石20aを持ち上げてもよい。基礎6上において上方から下方に移動する縁石20aは、第2突出部23が縁石90の切り欠き92に係合する。これにより、縁石20aの第2突出部23が設けられている側の端部は、縁石90によって支持され、縁石20aの高さは、高さの基準となる縁石90によって自動的に調整される。さらに、縁石20aの主面23bは、縁石90の底面92aに接触するため、縁石20aの基礎6に対する平行度も調整される。
【0060】
縁石20aと縁石90とを係合させたのち、縁石20aの第1突出部22が設けられている側の端部(以下、単に「第1突出部22側の端部」という)の高さを、下地7aの厚みを調整することで調整する(
図13(b)の白抜き矢印F7参照)。これにより、縁石20a全体の高さが調整されて、縁石20aの施工が完了する。
【0061】
図14は、縁石20の施工方法を説明する第3の図である。縁石20aの施工が完了した後、基礎6の上に、下地7aから分離した下地7bを形成し、縁石20bを持ち上げて、縁石20aの第1突出部22と縁石20bの第2突出部23とを係合させる。さらに、縁石20bの第1突出部22側の端部の高さを下地7bの厚みを調整することで調整する。これにより、縁石20b全体の高さが調整されて、縁石20bの施工が完了する。
【0062】
縁石20bの施工が完了した後、縁石20c、20dのそれぞれも、下地7c、7dのそれぞれを用いて同様の方法によって施工し、縁石20の連結構造体5を形成する。本実施形態の連結構造体5では、第1実施形態と同様に、1つの縁石20において、第1突出部22側の端部の高さ調整のみで、縁石20全体の高さを調整することができる。
【0063】
本実施形態の縁石20の施工方法では、下地7a、7b、7c、7dのそれぞれは、隣の下地とから分離するように形成されるため、縁石20の底面11bと基礎6との間には隙間3が形成される。これにより、縁石20を持ち上げる重機などの爪が縁石20の底面11bを支持した状態でも、縁石20を隣接する縁石20に係合させつつ、下地7の上に配置することができる。
【0064】
図15は、第2実施形態の縁石20の施工方法の評価試験の結果を説明する図である。本実施形態の評価試験は、第1実施形態の評価試験と同じ項目(縁石の施工に必要な人員の数、縁石の施工が完了するまでの時間)について、第2実施形態の縁石の施工方法を評価した。
図15に示す「第2実施形態」での「縁石の種類」と、「間配り位置」と、「下地と縁石との敷設手順」と組み合わせは、以下のとおりである。なお、
図15には、第1実施形態で示した評価試験の結果(
図8)も併せて示す。
「第2実施形態」
縁石の種類:縁石20 施工前の間配り配置:寝かせ配置
下地と縁石との敷設手順:1つの縁石を施工するごとに下地を形成
【0065】
第2実施形態では、施工時間は約300秒となり、比較例1~3の35%まで低減できることが明らかとなった。これは、第1実施形態の場合と同様に、1つの縁石20を施工するとき、第1突出部22側の端部の高さのみの調整で縁石20全体の高さが調整されることと、隣接する縁石20に平面どうしで係合されるため基礎6に対する平行度も調整されることによる。これらによって、第2実施形態でも、下地7の平滑化が不要となるため、作業が大幅に簡略化されて、施工時間が大幅に短縮されることが明らかとなった。
【0066】
図15より、第2実施形態では、第1実施形態に比べ、施工時間が増加することが明らかとなった。これは、第1実施形態では、縁石10を倒すだけで設置できる一方、第2実施形態では、縁石20を持ち上げて設置する必要があるためである。さらに、縁石20を持ち上げるためには、2人作業が必要なため、必要人数も増加する。
【0067】
以上説明した、本実施形態の縁石20の施工方法によれば、縁石20が有する第2突出部23を、すでに高さが調整されている他の縁石20の第1突出部22に係合させることで、縁石20の第2突出部23側の端部を他の縁石20に支持させる。さらに、縁石20の第1突出部22側の端部の高さを調整することで、縁石20の全体の高さが調整されることになる。これにより、高さを調整するための時間を短縮することができる。したがって、縁石10の施工時間を短くすることができる。
【0068】
また、本実施形態の縁石20によれば、第1突出部22は、凸形状を有しており、上から見たときに、先端面(A22c)が弧形状を有している。これにより、第1突出部22と他の縁石20とを係合させるとき、第1突出部22の弧形状を利用して、縁石20を他の縁石20の中心軸C0に対して傾けた状態で連結することができる。これにより、縁石20を曲線状にも配置することができるため、曲線状の連結構造体5を形成することができる。
【0069】
また、本実施形態の縁石20によれば、縁石20の第1突出部22の長さが隣接する縁石20の第2突出部23の長さより長いため、縁石20の第1突出部22と他の縁石20の第2突出部23とを係合させたとき、縁石20と隣接する縁石20との間には、隙間4が形成される(
図10(a)参照)。これにより、縁石20と隣接する縁石20との間の隙間4をモルタルなどで埋めることで、等間隔の目地を形成することができる。したがって、外観的に優れた連結構造体5を形成することができる。
【0070】
<第3実施形態>
図16は、第3実施形態の連結用縁石30、40の概略構成を示す模式図である。第3実施形態の縁石は、第1実施形態の縁石(
図1)と比較すると、「被係合部」と「係合部」の位置が異なる。なお、
図16において、複数の縁石20を連結するときに並べられる方向をy軸方向とし、鉛直方向をz軸方向とする。y軸方向とz軸方向とのそれぞれに直交する方向をx軸とする。
【0071】
図16(a)に示す連結用縁石30は、本体部11と、第1突出部32と、第2突出部33と、を備える。第1突出部32は、本体部11のy軸方向におけるプラス側の端部に設けられる平板形状の部位である。第1突出部32が有する一対の主面32a、32bのうち、主面32aは、z軸方向のプラス側の平面であり、主面32bは、本体部11の底面11bと同一の平面を形成している。
【0072】
第2突出部33は、本体部11のy軸方向におけるマイナス側の端部に設けられる平板形状の部位である。第2突出部33が有する一対の主面33a、33bのうち、主面33aは、本体部11の上面11aと同一の平面を形成し、主面33bは、z軸方向のマイナス側に形成される平面である。本実施形態では、z軸方向の高さH11が200mmの縁石20において、第1突出部32のz軸方向の高さH32と第2突出部33のz軸方向の高さH33とのそれぞれは、40mmとなっている。
【0073】
図16(b)に示す連結用縁石40は、本体部11と、第1突出部42と、第2突出部43と、を備える。第1突出部42は、本体部11のy軸方向におけるプラス側の端部に設けられる平板形状の部位である。第1突出部42が有する一対の主面42a、42bのうち、主面42aは、z軸方向のプラス側の平面であり、主面42bは、本体部11の底面11bと同一の平面を形成している。
【0074】
第2突出部43は、本体部11のy軸方向におけるマイナス側の端部に設けられる平板形状の部位である。第2突出部43が有する一対の主面43a、43bのうち、主面43aは、本体部11の上面11aと同一の平面を形成し、主面43bは、z軸方向のマイナス側に形成される平面である。本実施形態では、z軸方向の高さH11が200mmの縁石20において、第1突出部42のz軸方向の高さH42と第2突出部43のz軸方向の高さH43とのそれぞれは、160mmとなっている。
【0075】
図17は、連結用縁石30、40の使用方法を説明する図である。
図17に示す連結構造体5は、第1実施形態の縁石10と、第2実施形態の縁石20と、2種類の連結用縁石30、40とを備えている。連結用縁石30は、第1突出部32と縁石20の第2突出部23とが係合し、第2突出部33と縁石10の第1突出部12とが係合している。連結用縁石40は、第1突出部42と縁石10の第2突出部13とが係合し、第2突出部43と縁石20の第1突出部22とが係合している。このように、連結用縁石30、40は、連結構造体5において、z軸方向のプラス側で係合する縁石10と、z軸方向のマイナス側で係合する縁石20とを連結することができる。
【0076】
上述したように、軸方向のプラス側で係合する縁石10は、z軸方向のマイナス側で係合する縁石20に比べ、縁石の施工時間が短い(
図15参照)。一方、縁石20は、第1突出部22の先端面22cを円弧形状とすることで、曲線形状の連結構造体5を形成できる。そこで、連結構造体5を直線形状とする部分は、縁石10を用いて形成し、曲線形状とする部分は、縁石20を用いて形成する。このとき、連結用縁石30、40を用いて、直線形状を形成する縁石10と曲線形状を形成する縁石20とを連結する。
【0077】
以上説明した、本実施形態の連結構造体5の施工方法によれば、連結構造体5を直線形状とする部分は、施工時間が比較的短い縁石10を用いて形成し、曲線形状とする部分は、連結部分が路面の下に隠れる縁石20を用いて形成することができる。このとき、連結用縁石30、40を用いて縁石10と縁石20とを連結することで、施工時間を短縮しつつ、直線形状にも曲線形状にもなる連結構造体5を形成することができる。
【0078】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0079】
[変形例1]
上述の実施形態では、縁石10、20全体の高さを調整するとき、下地7の厚みを調整することで、縁石10、20の第1突出部12、22側の端部の高さを調整するとした。しかしながら、縁石10、20の第1突出部12、22側の端部を調整する方法はこれに限定されない。下地がない場合などには、縁石10、20の第1突出部12、22側の端部と基礎6との間に部材を挟み込むことで、第1突出部12、22側の端部の高さを調整してもよい。
【0080】
[変形例2]
上述の実施形態では、下地7は、縁石10、20の第1突出部12、22と基礎6との間にのみ形成されるとした。下地7は、第1突出部12、22からy軸方向のマイナス側に形成されていてもよい。縁石の下面における下地との接触割合は、80%以下であればよく、50%以下であればなおよく、30%以下であればなお望ましい。すなわち、縁石の「係合部」の下方に隙間があることで、「係合部」の高さと平行度の調整を可能とすることができる。また、下地7が縁石10、20の第1突出部12、22と基礎6とに間にのみ形成されると、2つの下地7の間に、縁石10、20を持ちあげるための道具を挿入可能な隙間3ができる。これにより、縁石10、20を動かしやすくなるだけでなく、落下による縁石10、20の破損や縁石を施工する施工者の安全を確保することができる。
【0081】
[変形例3]
第2実施形態の縁石20は、第1突出部22を上から見たとき、円弧形状を有しているとした。縁石20では、第2突出部23と、第2突出部23の先端面23cに対向する、隣接する縁石20の本体部11の側面11c(例えば、
図10での縁石A20の本体部A11の側面A11c)とのそれぞれが、上から見たとき、互いに嵌り合う円弧形状を有していてもよい。また、第1実施形態の縁石10において、第1突出部12、第2突出部13、および、本体部11の側面11c、11dは、本体部11の底面11bを下側にした状態で上から見たとき、円弧形状を有していてもよい。また、これらの形状は、円弧形状に限定されず、緩やかに曲がる弧形状であってもよい。
【0082】
[変形例4]
第1実施形態では、第1突出部12の長さと第2突出部13の長さは、それぞれ80mmとなっており、同じ長さであるとした。しかしながら、第1突出部12の長さと第2突出部13の長さの関係はこれに限定されない。第1突出部12の長さを、第2突出部13の長さより5mmから10mmの範囲で長くしてもよい。第1突出部12の長さを第2突出部13の長さより長くすることで、第2実施形態のように、隣接する縁石10の間に目地用の隙間が形成されるため、外観的に優れた連結構造体5を形成することができる。
【0083】
[変形例5]
上述した実施形態で示した縁石の各部の大きさは一例であり、これらに限定されるものではない。
【0084】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0085】
4…隙間
6…基礎
7,7a、7b、7c、7d…下地
10,10a,10b,10c,10d,20,20a,20b,20c,20d,A10,A20,B10,B20…縁石
11,A11,B11…本体部
12,22,A22,B12…第1突出部
12a,22a…主面
13,23,A23,B23…第2突出部
13a,23a…主面
22c,A22c…先端面