(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】リコータおよび粉末積層造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/188 20170101AFI20241030BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20241030BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20241030BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241030BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241030BHJP
B29C 64/307 20170101ALI20241030BHJP
B22F 12/63 20210101ALI20241030BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20241030BHJP
【FI】
B29C64/188
B29C64/218
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/307
B22F12/63
B22F10/28
(21)【出願番号】P 2021072290
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】平松 靖也
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0039301(US,A1)
【文献】特開2019-142017(JP,A)
【文献】特表2017-508063(JP,A)
【文献】特表2018-526527(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151831(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/188
B29C 64/218
B29C 64/153
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された粉末を粉末床に敷き詰めるリコータであって、
前記粉末床の表面に対して平行な軸を中心として回転する主軸と、
前記主軸に直交し、且つ前記表面に平行な移動方向に前記主軸を移動させる移動機構と、
前記主軸の周囲において前記移動方向に対して予め設定された傾斜角度に沿って設けられた粉末誘導部と、を備え
、
前記主軸の周囲且つ前記粉末誘導部の内側に軸方向に沿って連接された複数の筒状の変換部をさらに備え、
前記粉末誘導部は、前記変換部の外周部に固定されている、
リコータ。
【請求項2】
前記粉末誘導部は、前記主軸の中心から予め設定された距離の円周に沿って先端部を有する、
請求項1に記載のリコータ。
【請求項3】
前記粉末誘導部は、前記主軸の周囲に螺旋状に形成されている、
請求項1または2に記載のリコータ。
【請求項4】
前記主軸は、複数の前記粉末誘導部を有し、複数の前記粉末誘導部は互いに平行に隣接して前記主軸の周囲に形成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のリコータ。
【請求項5】
前記主軸は、複数の前記粉末誘導部を有し、それぞれの前記粉末誘導部が有する前記傾斜角度が互いに異なる、
請求項1~3のいずれか一項に記載のリコータ。
【請求項6】
前記主軸は、軸方向に沿って、複数の領域が連接するように設定され、前記領域ごとに異なる形状の前記粉末誘導部を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載のリコータ。
【請求項7】
前記主軸は、軸方向の端部側に第1傾斜角度を有する第1粉末誘導部を有するとともに、前記端部側よりも中央側に、前記第1傾斜角度より小さい第2傾斜角度を有する第2粉末誘導部を有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載のリコータ。
【請求項8】
前記移動方向における前記主軸の前方に配置され、主面が前記移動方向の前方に面し、一端部が前記粉末床の前記表面に平行に接触する均し板をさらに備える、
請求項1~
7のいずれか一項に記載のリコータ。
【請求項9】
前記移動方向における前記主軸の後方において前記主軸に平行に配置された円柱状の部材であって、前記粉末床の前記表面に平行に接触する圧粉ローラをさらに備える、
請求項1~
8のいずれか一項に記載のリコータ。
【請求項10】
前記移動方向における前記主軸の後方に配置され、前記粉末床の前記表面に平行に接触する圧粉面を有する圧粉板をさらに備える、
請求項1~
9のいずれか一項に記載のリコータ。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載のリコータと、
前記リコータが形成する前記粉末床を支持する粉末床支持部と、
を少なくとも備える粉末積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリコータおよび粉末積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末積層造形装置が普及している。また粉末積層造形装置の粉末床に粉末を敷き詰めるためのリコータに関する種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、層の表面の少なくとも一部を横切って掃引して所望の厚さの層を形成する逆転ローラを備えた、既に形成された物体断面に隣接する材料の層を形成する手段が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特表平10-513130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粉末床に粉末を敷き詰める場合、次のような課題がある。すなわち、粉末が有する粒子の大きさのばらつきや、粉末に含まれる不純物や水分によって粉末の流動性がばらつく。そのため、リコータに供給された粉末の密度に斑が生じる。そのため、上述の技術により粉末を敷き詰めると、粉末床に斑が生じる。粉末床に斑が生じている場合、粉末積層造形装置が製造する製造品の精度が低下する虞がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、粉末床に敷き詰める粉末の斑を抑制するリコータおよび粉末積層造形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかるリコータ10は、予め設定された量の粉末を供給し、粉末を粉末床に敷き詰める。リコータ10は、主軸133、移動機構11、粉末誘導部135を有する。主軸133は、粉末床の表面に対して平行な軸を中心として回転する。移動機構11は、主軸に直交し、且つ前記表面に平行な移動方向に前記主軸を移動させる。粉末誘導部135は、主軸の周囲において移動方向に対して予め設定された傾斜角度に沿って設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、粉末床に敷き詰める粉末の斑を抑制するリコータおよび粉末積層造形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態にかかる粉末積層造形装置の全体図である。
【
図2】実施の形態にかかるリコータの上面図である。
【
図3】実施の形態にかかるリコータの断面図である。
【
図4】実施の形態にかかる粉末誘導部の形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
<実施の形態>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態にかかる粉末積層造形装置の全体図である。
図1に示す粉末積層造形装置1は、いわゆる3Dプリンタの一種であって、3次元の設計データを基にして、薄くスライスされた2次元の層を1枚ずつ形成して積層することによって、所望の3次元形状を製造する。粉末積層造形装置1は主な構成として、リコータ10、本体ブロック20、粉末供給装置30およびレーザ発振装置40を有する。
【0012】
なお、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものとして、
図1は、右手系の直交座標系が付されている。また、
図2以降において、直交座標系が付されている場合、
図1のX軸、Y軸、およびZ軸方向と、これらの直交座標系のX軸、Y軸、およびZ軸方向はそれぞれ一致している。
【0013】
図1は、粉末積層造形装置1の側面図であって、説明の便宜上一部が断面として示されている。
図1に示す粉末積層造形装置1はリコータ10の移動ブロック13が一端部である右側(Y軸マイナス側)から他端部である左側(Y軸プラス側)に移動することにより粉末90を粉末床91に敷き詰める。すなわち粉末積層造形装置1において、移動ブロック13は
図1の右側が初期位置であり、かかる初期位置から左側に移動することにより、製造品の材料となる粉末90を粉末床91に敷き詰める。移動ブロック13は、粉末積層造形装置1の他端部に移動して粉末90を粉末床91に敷き詰めると、図に示す初期位置に戻る。
【0014】
なお、粉末積層造形装置1は、上述のように粉末90を粉末床91に敷き詰めると、基本的な動作として、次の動作を行う。すなわちレーザ発振装置40は、製造品の形状に対応した所望の位置の粉末90を溶融する。次に本体ブロック20は、粉末床91を予め設定された距離、下方へ移動させる。さらに、粉末供給装置30は、所定量の粉末90をリコータ10に供給する。そしてリコータ10は供給された粉末90を再び粉末床91に敷き詰める。粉末積層造形装置1は上述の動作を繰り返して所望の3次元形状を製造する。なお、本実施の形態における粉末90は、レーザ光により溶融される金属や樹脂を主成分とする粉末である。
【0015】
以降の説明において、Y軸に平行な方向を「リコータ10の移動方向」と称する場合がある。また以降の説明において、Y軸プラス方向を前方と称し、Y軸マイナス方向を後方と称する場合がある。また以降の説明において、X軸プラス方向を右方向と称し、X軸マイナス方向を左方向と称し、Z軸プラス方向を上方向と称し、Z軸マイナス方向を下方向と称する場合がある。
【0016】
リコータ10は、粉末供給装置30および本体ブロック20と連動し、粉末供給装置30から供給された粉末を本体ブロック20の粉末床支持部21に敷き詰め、粉末床91を形成する。リコータ10は主な構成として、移動機構11および移動ブロック13を有する。
【0017】
移動機構11は、送り軸駆動モータ111、送り軸112および軸受け113を含む。送り軸駆動モータ111は、送り軸112を回転させるためのモータである。送り軸112は、粉末積層造形装置1の一端部と他端部とにリコータ10の移動方向に平行に支持されており、軸受け113に挿通する。送り軸112は、螺旋状のガイド溝を有し、ガイド溝には軸受け113が有する凸部が摺動可能に係合する。軸受け113は、移動ブロック13と連結するとともに、送り軸112に摺動可能に係合し、送り軸112が回転することにより一端部から他端部に亘り移動ブロック13が直動するように構成されている。
【0018】
上述の構成により、移動機構11は、送り軸駆動モータ111が送り軸112を回転させることにより、移動ブロック13を一端部から他端部に亘り移動させる。なお、移動機構11は図示しない副軸を有していてもよい。副軸は送り軸112と平行に配置されるとともに、移動ブロック13に摺動可能に係合し、移動ブロック13が移動する際の動きを安定させる。
【0019】
本体ブロック20は粉末積層造形装置1を静置面上に支持する筐体を含む。また本体ブロック20は上部においてリコータ10を支持する。本体ブロック20は主な構成として、粉末床支持部21および粉末受入部22を含む。
【0020】
粉末床支持部21は本体ブロック20の上面に設けられた矩形状の穴に上下動可能に係合する。粉末床支持部21は上面が平坦になっており、かかる上面において粉末床91を支持する。粉末受入部22は、粉末床支持部21と移動ブロック13との間に設けられた平坦面であり、粉末供給装置30から供給される粉末90を受け入れる。
【0021】
粉末供給装置30は、粉末90を貯留し、適宜、本体ブロック20の粉末受入部22に粉末90を供給する。粉末供給装置30は上下動可能に設置されており、粉末90を本体ブロック20に供給する際には下降し、粉末90の供給が終わると上昇して移動ブロック13の動作に干渉しないように構成されている。粉末供給装置30は粉末供給口31を含む。粉末供給口31は粉末供給装置30が貯留する粉末90を粉末受入部22に吐出する。
【0022】
レーザ発振装置40は粉末床支持部21の上方に設置され、粉末床支持部21の上面に形成される粉末床91に対して所望の位置にレーザ光41を照射する。レーザ発振装置40が粉末床91にレーザ光41を照射することにより、粉末床91に製造品92が形成される。
【0023】
以上、粉末積層造形装置1が有する主な構成について説明した。粉末積層造形装置1は、所望の3次元形状を製造するために、粉末床に材料粉末である粉末90を薄く敷き詰める。そして粉末積層造形装置1は薄く敷き詰めた粉末90にレーザ光41を照射して溶融し、溶融した材料を結合させて固めることによりスライス状の形状を形成する。粉末積層造形装置1は、このスライス状の形状の形成を繰り返して順次積層させることにより所望の3次元形状を製造する。
【0024】
次に、
図2を参照して移動ブロック13の詳細について説明する。
図2は、実施の形態にかかるリコータの上面図である。
図2に示す移動ブロック13は、移動ブロック13の上面図である。移動ブロック13は主な構成として、フレーム130、均し板131、粉末誘導ブロック132、圧粉ローラ137、ローラ駆動モータ138および圧粉板139を有する。
図2に示す移動ブロック13は、Y軸プラス方向(すなわち粉末積層造形装置1の前方)に移動し、粉末供給装置30から供給された粉末90を粉末床91に搬送する状態を示している。
【0025】
フレーム130は、移動ブロック13の各構成を支持する構造体であって、均し板131、粉末誘導ブロック132、圧粉ローラ137、ローラ駆動モータ138および圧粉板139の左右端をそれぞれ支持する。またフレーム130は、
図1に示した軸受け113に連結し、軸受け113と連動するように構成されている。
【0026】
均し板131は、粉末供給装置30から供給された粉末90を粉末床91に移動させつつ粉末床91の表面を均す板状の部材である。均し板131は、移動方向における主軸133の前方に配置され、主面が移動方向の前方に面し、一端部が粉末床の表面に平行に接触するように構成されている。なお、均し板131は、
図2に示すように、左右端が前側に屈曲または湾曲していてもよい。これにより均し板131は左右端において粉末床91の外側の領域に移動しようとする粉末90の動きを抑制できる。
【0027】
粉末誘導ブロック132は、均し板131が均した後の粉末床91の表面における粉末90をさらに整える。粉末誘導ブロック132は主な構成として、主軸133、変換部134、粉末誘導部135および主軸駆動モータ136を有する。
【0028】
主軸133は、粉末床91の表面に対して平行且つ移動方向に対して直交する向き(すなわちX軸に平行な方向)に回転可能に支持されている。また主軸133の一端は主軸駆動モータ136に連結している。これにより主軸133は移動ブロック13が前方に移動する際に、回転しながら粉末床91に接触する。換言すると、移動機構11は、主軸133に直交し、且つ粉末床91の表面に平行な移動方向に主軸133を移動させる。
【0029】
変換部134は、主軸133の周囲且つ粉末誘導部135の内側に軸方向(X軸方向)に沿って連接された複数の筒状の部材である。変換部134は、内径部において主軸133に嵌合し、主軸133と連動して回転する。また変換部134は外径部において粉末誘導部135を保持する。
【0030】
粉末誘導部135は、主軸133ないし変換部134の周囲に固定された凸状の部材である。本実施の形態における粉末誘導ブロック132は、複数の粉末誘導部135を有する。粉末誘導部135は、移動方向に対して予め設定された傾斜角度に沿って変換部134の外周部に固定されている。
【0031】
圧粉ローラ137は、粉末誘導ブロック132が通過した後の粉末床91の表面をさらに整える。圧粉ローラ137は、主軸133の後方において、左右端をフレーム130に回転可能に支持された円柱状の部材である。圧粉ローラ137は、主軸133に平行に配置され、粉末床91の表面に平行に接触する。また圧粉ローラ137の一端はローラ駆動モータ138に連結している。ローラ駆動モータ138は、フレーム130に固定され、圧粉ローラ137を駆動する。これにより圧粉ローラ137は移動ブロック13が前方に移動する際に、回転しながら粉末床91に接触する。
【0032】
圧粉板139は、圧粉ローラ137が通過した後の粉末床91の表面をさらに整える。圧粉板139は、移動方向における主軸133の後方であって、より具体的には圧粉ローラ137の後方に配置される。圧粉板139は、粉末床91の表面に平行に接触する圧粉面を有する。
【0033】
図3を参照して、移動ブロック13についてさらに説明する。
図3は、実施の形態にかかるリコータの断面図である。
図3は、
図2に示した断面III-IIIにおける移動ブロック13を示している。また
図3は、
図2に示した状態よりも移動ブロック13が前方に移動し、粉末床91の表面を移動している状態を示している。
【0034】
図3において、均し板131は、粉末90を均しながら前方に移動している。均し板131は主面が移動ブロック13の移動方向に面し、下側の端部が粉末床91の表面に平行に接触している。
【0035】
均し板131の後方に配置された粉末誘導部135は、主軸133の中心から予め設定された距離の円周に沿った先端部を有する。粉末誘導部135の先端部は、粉末90に回転しながら接触して粉末床91を整える。なお、本実施の形態における主軸133は、移動方向に向かって転がる方向に回転しながら前方に移動している。なお、以降の説明において、かかる回転方向を順方向と称する。主軸133の周囲には、変換部134が固定されている。変換部134は筒状の部材であって、内径部が主軸133と嵌合し、外径部において粉末誘導部135を保持する。すなわち粉末誘導部135は、変換部134の外周部に固定されている。
【0036】
粉末誘導ブロック132の後方に配置された圧粉ローラ137は、粉末床91の表面をさらに整えながら移動している。本実施の形態における圧粉ローラ137は、移動方向とは反対方向に向かって転がる向きに回転しながら移動している。なお、以降の説明において、かかる回転方向を逆方向と称する。
【0037】
圧粉ローラ137の後方に配置された圧粉板139は、粉末床91の表面に平行に接触する圧粉面140を有する。圧粉面140の前後端部はそれぞれ誘い形状になっている。これにより、圧粉板139は粉末床91をさらに整える。
【0038】
次に、
図4を参照して粉末誘導ブロック132が有する粉末誘導部135の形状の例について説明する。
図4は、実施の形態にかかる粉末誘導部の形状の例を示す図である。
図4は、変換部134および粉末誘導部135の上面図である。
図4に示す変換部134は、左から右に向かって、第1変換部134A、第2変換部134B、第3変換部134C、第4変換部134D、第5変換部134Eおよび第6変換部134Fが連接している。
【0039】
第1変換部134A~第5変換部134Eは、それぞれ主軸133に着脱可能に固定されている。ただし第1変換部134A~第5変換部134Eは、それぞれ主軸133に固定された場合には、主軸133と一体となって動作する。変換部134が複数の領域ごとに構成されることにより、リコータ10は、変換部134および変換部134が保持する粉末誘導部135を容易に交換できる。そのため、本実施の形態におけるリコータ10は、設定の変更やメンテナンスが容易な構成となっている。
【0040】
第1変換部134A~第5変換部134Eは、それぞれ1または2以上の粉末誘導部135を有している。粉末誘導部135は、主軸133の周囲において、移動方向に対してそれぞれ予め設定された傾斜角度に沿って設けられる。
【0041】
第1変換部134Aは例えば、第1粉末誘導部135Aを有している。第1粉末誘導部135Aは移動方向との間に第1傾斜角度A11を成すように形成されている。また第1粉末誘導部135Aは、主軸133が順方向に回転した場合に、粉末床91と接触する部分が主軸133の外側から内側に移動する方向に形成されている。すなわち、第1粉末誘導部135Aは、粉末床91の表面を移動方向に移動しながら、第1変換部134Aの領域における粉末90を左右方向の外側から内側に移動させるように構成されている。
【0042】
第2変換部134Bは例えば、第2粉末誘導部135Bを有している。第2粉末誘導部135Bは移動方向との間に、上述の第1傾斜角度A11より小さい第2傾斜角度A12を成すように形成されている。また第2粉末誘導部135Bは、主軸133が順方向に回転した場合に、粉末床91と接触する部分が主軸133の内側から外側に移動する方向に形成されている。すなわち、第2粉末誘導部135Bは、粉末床91を移動方向に移動しながら、第2変換部134Bの領域における粉末90を左右方向の内側から外側に移動させるように構成されている。
【0043】
第3変換部134Cは例えば、2つの第3粉末誘導部135Cを有している。2つの第3粉末誘導部135Cは移動方向との間に、上述の第2傾斜角度A12より小さい第3傾斜角度A13を成すように互いに平行に形成されている。また第3粉末誘導部135Cは、主軸133が順方向に回転した場合に、粉末床91と接触する部分が主軸133の内側から外側に移動する方向に形成されている。すなわち、第3粉末誘導部135Cは、粉末床91を移動方向に移動しながら、第3変換部134Cの領域における粉末90を左右方向の内側から外側に移動させるように構成されている。
【0044】
上述の構成により、粉末誘導部135は、設置された領域において粉末床91の表面に沿って移動方向に移動しながら、接触する領域の粉末90を左右方向に移動させる。粉末誘導部135が移動させる粉末90の量は、移動ブロック13の移動速度、主軸133の回転速度および粉末誘導部135が移動方向と成す角度により設定される。すなわち、粉末誘導部135は、移動ブロック13の移動速度が比較的に遅い程、比較的に多くの粉末90を移動させる。また粉末誘導部135は、主軸133の回転速度が比較的に速い程、比較的に多くの粉末90を移動させる。
【0045】
またこのとき、粉末誘導部135は、移動方向との成す角度に応じて、粉末90を移動させる左右方向の相対的な距離が設定されている。より具体的には、粉末誘導部135は、移動方向との成す角度が比較的に大きい程、粉末90を左右方向に移動させる距離が比較的に長い。
【0046】
上述の例の場合において、移動方向との成す角度が最も大きい第1傾斜角度A11を有する第1粉末誘導部135Aは、第2粉末誘導部135Bおよび第3粉末誘導部135Cよりも粉末90を左右方向に移動させる距離が長い。第1傾斜角度A11より小さく第3傾斜角度A13より大きい第2傾斜角度A12を有する第2粉末誘導部135Bは、第1粉末誘導部135Aよりも粉末90を左右方向に移動させる距離が短く、第3粉末誘導部135Cよりも粉末90を左右方向に移動させる距離が長い。移動方向との成す角度が相対的に最も小さい第3傾斜角度A13を有する第3粉末誘導部135Cは、第1粉末誘導部135Aおよび第2粉末誘導部135Bよりも粉末90を左右方向に移動させる距離が短い。
【0047】
また本実施の形態における主軸133は、軸方向の端部側に第1傾斜第1傾斜角度A11を有する第1粉末誘導部135Aを有するとともに、端部側よりも中央側に、第1傾斜第1傾斜角度A11より小さい第2傾斜第2傾斜角度A12を有する第2粉末誘導部135Bを有する。このような構成により、リコータ10は、粉末床91の左右端における粉末90を左右方向の中央側に比較的に長い距離を移動させ、且つ、粉末床91における左右方向の中央部における粉末90を左右端側に比較的に短い距離を移動させる。リコータ10は、粉末供給装置30から供給された粉末90が均し板131により均された後に生じる斑を上述のような構成により動的に整えることができる。
【0048】
以上、粉末誘導ブロック132における粉末誘導部135の構成の例について説明した。上述のように、粉末誘導部135は、主軸133の周囲において、移動方向に対して予め設定された傾斜角度に沿って設けられる。ただし、粉末誘導部135は、様々な態様を採用することができる。例えば粉末誘導部135は、上述の例おける第3粉末誘導部135Cのように、複数の粉末誘導部135は互いに平行に隣接して主軸133の周囲に形成されているものであってもよい。また粉末誘導部135は、第4粉末誘導部135Dとして例示するように、主軸133の周囲に螺旋状に形成されていてもよい。
【0049】
また粉末誘導ブロック132は、例えば主軸133と変換部134とが一体として構成されていてもよい。その場合、主軸133は、複数の粉末誘導部135を有する。それぞれの粉末誘導部135が有する傾斜角度は、同じであってもよいし互いに異なっていてもよい。主軸133は、軸方向に沿って、複数の領域が連接するように設定され、領域ごとに異なる形状の粉末誘導部135を有するものであってもよい。
【0050】
以上、実施の形態について説明したが、実施の形態にかかるリコータ10は、上述の構成に限られない。例えばリコータ10は、圧粉ローラ137または圧粉板139を要しない場合には上述の構成から外してもよい。粉末誘導ブロック132の回転方向は上述のように順方向であってもよいし、逆方向に設定されてもよい。粉末積層造形装置1を構成する粉末供給装置30は、上述の構成に限られず、例えば本体ブロック20の内部に含まれ、本体ブロック20の上面に所定量の粉末90を押し上げる構成であってもよい。また本体ブロック20は、リコータ10が粉末床91に粉末90を敷き詰めた後、初期位置に戻る際に下方へ移動して移動ブロック13と離間できる機構を有していても良い。またリコータ10は、移動ブロック13が粉末床91に粉末90を敷き詰めた後、初期位置に戻る際に一旦上昇して本体ブロック20の上面と離間できる機構を有していても良い。
【0051】
以上、実施の形態によれば、粉末床に敷き詰める粉末の斑を抑制するリコータおよび粉末積層造形装置を提供することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 粉末積層造形装置
10 リコータ
11 移動機構
13 移動ブロック
20 本体ブロック
21 粉末床支持部
22 粉末受入部
30 粉末供給装置
31 粉末供給口
40 レーザ発振装置
41 レーザ光
90 粉末
91 粉末床
92 製造品
111 送り軸駆動モータ
112 送り軸
113 軸受け
130 フレーム
131 均し板
132 粉末誘導ブロック
133 主軸
134 変換部
135 粉末誘導部
136 主軸駆動モータ
137 圧粉ローラ
138 ローラ駆動モータ
139 圧粉板
140 圧粉面