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特許7579214ゴム組成物の製造方法、その方法で製造されたゴム組成物及びそれを用いて製造されたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ゴム組成物の製造方法、その方法で製造されたゴム組成物及びそれを用いて製造されたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20241030BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241030BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
C08L21/00
B60C1/00 A
C08L9/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021106457
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2022094898
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2021-06-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0175537
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515253049
【氏名又は名称】ハンファ トタルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】崔 準杰
(72)【発明者】
【氏名】李 度勳
(72)【発明者】
【氏名】鄭 成▲教▼
(72)【発明者】
【氏名】柳 淵植
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】藤原 浩子
【審判官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-297416(JP,A)
【文献】特許第6120949(JP,B2)
【文献】特開2008-255168(JP,A)
【文献】特開2020-29555(JP,A)
【文献】特開2016-98296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムにポリブテンが溶液状で分散された(PIB extended rubber)、ポリブテンが分散されたゴム組成物を製造する方法であって、
前記ゴムは、エマルジョンスチレンブタジエンゴム(ESBR)であり、
オイル内の芳香族系の含量が5~25重量%であり、ナフテンの含量が25~45重量%であり、パラフィン系の含量が35~65重量%である疎水性の伸展油とポリブテンを水に分散させて伸展油/ポリブテン乳化液(1)を製造するステップ;
前記伸展油/ポリブテン乳化液(1)をラテックス形状のESBRゴム組成物(2)に投入して溶液状で均一に分散させてESBRゴム/伸展油/ポリブテン組成物を製造するステップ;及び、
前記ESBRゴム/伸展油/ポリブテン組成物をラテックス状で塩析及び酸析を通じて固形化、乾燥及び成形工程を行うステップ;を含み、
前記ポリブテンが、炭素-炭素の二重結合の位置が主にポリブテンPIBの末端に位置し、数平均分子量が150~3,000g/molである高反応性ポリブテンとしたことを特徴とする、ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記ラテックス形状のESBRゴム組成物(2)は、単量体、水、乳化剤及び添加剤を含む組成物を乳化重合反応させた後に残留単量体を回収するステップ;を含んで製造されることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記高反応性ポリブテンは、数平均分子量が300~3,000g/molであり、前記ゴム含量に対して前記高反応性ポリブテンが1~10wt%で投入されることを特徴とする、請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ゴム組成物がタイヤトレッド用ゴム組成物、靴底用ゴム組成物、ベルト(belt)用ゴム組成物又はアスファルト添加剤用ゴム組成物で用いられることを特徴とする、請求項1~3のうち何れか一項に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のうち何れか一項に記載の製造方法によって製造されたゴム組成物を含むことを特徴とする、タイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項5項に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造されたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物の製造方法、その製造方法で製造されたゴム組成物及びそれを用いて製造されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ESBRおよび天然ゴムを用いた製品としては、耐久性が優秀でなければならないタイヤ、靴底、ベルト(belt)、ホース(hose)、シート(sheet)、シーラント(sealant)に加え、接着力が優秀でなければならない接着剤など多様な製品がある。このような製品を最終的に完成するためには、原料となるゴムと共に補強材、添加剤をはじめとする加工助剤を配合機に直接投入してバルク状態で混合するか、マスターバッチの製造後に一緒に混合して最終ゴム複合材製品を製造することが一般的である。特許文献1(韓国公開特許第10-2020-0031529号公報)では、ESBRに炭化水素トラクション樹脂を分散させてゴム複合材の性能を改善した結果を紹介している。しかし、このとき、伸展された樹脂の種類は、30℃を超過するガラス転移温度(Tg)を有したクマロン-インデン-樹脂、石油系樹脂、テルペン重合体、αメチルスチレン樹脂及びこれらの混合物を含む。これらは、一般的に有機溶媒によく溶解されるので、溶液重合で製造したゴムであるソリューションスチレンブタジエンゴム(SSBR)、スチレン-ブタジエン-スチレンゴム(SBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンゴム(SEBS)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IR)、イソプレン-イソブチレンゴム(IIR)又はエチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)とポリオレフィンエラストマー(POE)などのようなゴムは、有機溶媒に樹脂を溶解して溶液相で伸展した後、溶媒を除去して固形化された製品を容易に製造することができる。
【0003】
しかし、ゴムの製造時に、溶媒として水を用いる製品であるESBRと自然から得られる天然ゴムラテックスに疎水性のオイルと機能性の付与のための樹脂を伸展して固形化されたESBR製品を製造するためには、スチレンとブタジエンなどの未反応単量体が除去されたSBRラテックス重合物に乳化剤を用いて伸展しようとするオイルと樹脂を水に分散させた場合にのみ、ESBRに均一な分散が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0031529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水を溶媒に用いる合成ゴムと天然ゴムの物性を改善し得るポリブテンが伸展された(Polybutene(PIB) extended)ゴム組成物の製造方法、その製造方法で製造されたゴム組成物及びそれを用いて製造されたタイヤに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的を達成するために、本発明は、ゴムにポリブテンが溶液状で分散された(PIB extended rubber)、ポリブテンが分散されたゴム組成物を製造する方法であって;前記ゴムは、エマルジョンスチレンブタジエンゴム(ESBR)であり、オイル内の芳香族系の含量が5~25重量%であり、ナフテンの含量が25~45重量%であり、パラフィン系の含量が35~65重量%である疎水性の伸展油とポリブテンを水に分散させて伸展油/ポリブテン乳化液(1)を製造するステップ;前記伸展油/ポリブテン乳化液(1)をラテックス形状のESBRゴム組成物(2)に投入して溶液状で均一に分散させてESBRゴム/伸展油/ポリブテン組成物を製造するステップ;及び、前記ESBRゴム/伸展油/ポリブテン組成物をラテックス状で塩析及び酸析を通じて固形化、乾燥及び成形工程を行うステップ;を含み、前記ポリブテンが、炭素-炭素の二重結合の位置が主にポリブテンPIBの末端に位置し、数平均分子量が150~3,000g/molである高反応性ポリブテンとしたゴム組成物の製造方法を提供する。
【0010】
一実施例によると、前記ラテックス形状のESBRゴム組成物(2)は、単量体、水、乳化剤及び添加剤を含む組成物を乳化重合反応させた後に残留単量体を回収するステップ;を含んで製造することが好ましい。
【0011】
一実施例によると、前記ゴム組成物の製造用単量体は、スチレン、αメチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、メチルメタアクリル酸及びクロロプレンからなる群より選択された1種以上であることが好ましい。
【0012】
一実施例によると、前記ポリブテンは、数平均分子量が300~3,000g/molであり、前記ゴム含量に対して前記ポリブテンが1~10wt%で投入されることが好ましい。
【0013】
本発明の一実施例によると、本発明は、本発明によって製造されたゴム組成物がタイヤトレッド用ゴム組成物、靴底用ゴム組成物、ベルト(belt)用ゴム組成物又はアスファルト添加剤用ゴム組成物で用いられることが好ましい。
【0014】
本発明のまた他の目的を達成するために、本発明は、本発明によって製造されたゴム組成物を含むタイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【0015】
本発明のまた他の目的を達成するために、本発明によるタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
【0016】
本発明の一実施例によると、前記ポリブテンは、C系ポリマーとしてイソブチレンを主要単量体で用い、数平均分子量が300~3,000g/molであり、前記ゴム含量に対して0.1~27.3wt%で投入することが可能であり、できれば1~10wt%で投入することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって製造されたゴム組成物は、最終ゴム製品の物性を改善させ得る。また、本発明によって製造されたゴム組成物で製造されたタイヤは、グリップ性(濡れた路面での接地力)、低燃費特性、摩耗性能が改善される。また、本発明によるゴム組成物の製造方法は、既存の設備を用いると共にゴム製品の物性を画期的に改善することができるため、単価を顕著に下げることができ、環境にやさしい樹脂であるポリブテンを活用することで環境的にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明するが、これは本発明の説明のためのものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0019】
本発明は、ゴムにポリブテンが溶液状で分散された(PIB extended rubber)、ポリブテンが分散されたゴム組成物を製造する方法であって;疎水性の伸展油とポリブテンを水に分散させて伸展油/ポリブテン乳化液(1)を製造するステップ;前記伸展油/ポリブテン乳化液(1)をラテックス形状のゴム組成物(2)に投入して溶液状で均一に分散させてゴム/伸展油/ポリブテン組成物を製造するステップ;及び前記ゴム/伸展油/ポリブテン組成物をラテックス状で塩析及び酸析を通じて固形化、乾燥及び成形工程を行うステップ;を含むゴム組成物の製造方法を提供する。
【0020】
<伸展油/ポリブテンの溶液及び製品化>
本発明の長所は、既存の伸展油乳化液の製造工程で原料及び工程変化なしにポリブテンを添加して伸展油乳化液を製造する単純な工程の変化だけで、所望する優れた物性のゴムを提供し得るゴム組成物を製造することができるという点である。
【0021】
既存の疎水性伸展油を水に分散させて乳化液を製造する工程で、ポリブテンを伸展油とともに水に分散させて伸展油/ポリブテン乳化液を製造するステップに変更させる工程が必ず必要である。
【0022】
本発明によると、このような工程は、既存の設備を利用できるという長所があると共に、このような工程変化により得られるゴムの物性は、予想しなかった驚くべき効果を示す。
【0023】
また、本発明では、前記ポリブテン乳化液をラテックス形状のゴム組成物に添加して均一に混合された状態のゴム/伸展油/ポリブテン組成物を製造する中間段階を必ず経る必要がある。
【0024】
ここで、本明細書で前記「ラテックス形状のゴム組成物」は、ゴム粒子を含むミセルが水溶液状に分散している形態であって、乳化重合で製造した合成ゴム組成物として牛乳のような形状であり、天然ゴムラテックスを含む。
【0025】
前記ゴム/伸展油/ポリブテン組成物をラテックス状に塩析と酸析を通じて固形化した後に、乾燥、成形工程を経てポリブテンが均一に分散されたゴム組成物を製造することができる。このように製造されたゴム組成物を用いた場合にのみ、所望する最終物性のゴムを得ることができる。
【0026】
ここで、最終物性とは、ゴム製品の種類によって変わることができる。例えば、タイヤトレッドが最終ゴム製品である場合、優れた制動特性及び低燃費特性が要求されるため、耐久性、グリップ(grip)性、低い転がり抵抗性が重要である。
【0027】
したがって、本発明では、タイヤトレッドを製造しようとするとき、タイヤトレッド製造用ゴム組成物を製造する必要があり、前記タイヤトレッド用ゴム組成物を製造するとき、用いられるゴムにポリブテン(PIB)乳化液の製造後に未反応単量体が除去されたゴムラテックスの中間物と混合した後、塩析、酸析を通じた固形化後に、乾燥、成形工程を経て製造されたESBRゴム組成物を製造するステップを含まなければならない。タイヤトレッドを製造しようとするときに用いられ得るゴムは、合成ゴム又は天然ゴム、又は天然ゴムおよび合成ゴムの混合物を用いることができる。
【0028】
前記天然ゴムは、一般的な天然ゴム又は変性天然ゴムであってもよい。一般的な天然ゴムは、天然ゴムとして知られているものであれば、何れでも用いることができ、原産地などは限定されない。前記天然ゴムは、シス-1,4-ポリイソプレンを主体として含むが、要求特性に応じて、トランス-1,4-ポリイソプレンを含んでもよい。したがって、前記天然ゴムには、シス-1,4-ポリイソプレンを主体として含む天然ゴムの外に、例えば、南米産アカテツ科のゴムの一種であるバラタなど、トランス-1,4-イソプレンを主体として含む天然ゴムも含むことができる。
【0029】
前記変性天然ゴムは、前記一般的な天然ゴムを変性又は精製したものを意味する。例えば、前記変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどが挙げられる。
【0030】
上記で合成ゴムは、スチレンブタジエンゴム(ESBR、SSBR)、変性スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム(BR)、変性ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、水素化されたニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、変性ニトリルブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンゴム(SBS)、スチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴム、ハイパロンゴム、クロロプレンゴム、エチレンビニルアセテートゴム、アクリルゴム、ヒドリンゴム、ビニルベンジルクロライドスチレンブタジエンゴム、ブロモメチルスチレンブチルゴム、マレイン酸スチレンブタジエンゴム、カルボン酸スチレンブタジエンゴム、エポキシイソプレンゴム、マレイン酸エチレンプロピレンゴム、カルボン酸ニトリルブタジエンゴム、臭素化イソブチレン-co-p-メチルスチレン(brominated polyisobutyl isoprene-coparamethylstyrene、BIMS)及びこれらの組み合わせからなる群より選択される何れか一つであってもよい。
【0031】
前記ポリブテン(PIB)は、高反応性ポリブテン(HRPIB)として数平均分子量が150~3,000g/mol、好ましくは、300~3,000g/molであるポリブテンが用いられ得る。高反応性ポリブテン(PIB)は、炭素-炭素の二重結合の位置が主にポリブテン(PIB)の末端に位置するので、反応時に原料ゴムとの結合性が増加して既存のポリブテン(CPIB、α二重結合の含量が40%未満であるポリブテン)に比べて有利に作用するからである。このようにポリブテンも最終ゴム製品の所望する物性によって相違するように用いるこができる。
【0032】
本発明の一実施例によると、ポリブテンは、Cポリマーとして数平均分子量が300~3,000g/molであり、前記ゴム含量に対して0.1~27.3wt%で投入することが可能であり、できれば1~10wt%で投入することが好ましい。
【0033】
ポリマーがゴム含量に対して1wt%より少なく含まれると、最終ゴム製品の物性が大きく改善されず、10wt%より多く含まれると、ゴム本来の物性が現われないことがある。
【0034】
一例で、商業的に生産されているオイルが伸展されたゴムに含まれた伸展油の割合は、大部分37.5phrである。したがって、伸展油/ポリブテンを伸展するゴムに1wt%(ゴムに対して1.4phr)のポリブテンを含ませるためには、伸展油/ポリブテン乳化液に含まれた伸展油/ポリブテンの割合を173/7(TDAE 346g/ポリブテン14g)で製造するとゴムに1wt%のポリブテンを伸展することができる。このとき、製造された伸展油/ポリブテンの濃度は、水を追加して調節する。
【0035】
前記ラテックス形状のゴム組成物は、単量体、水、乳化剤及び添加剤を含む組成物を乳化重合反応させた後に残留単量体を回収するステップ;を含んで製造されることが好ましい。
【0036】
本発明の一実施例によると、前記ゴム組成物製造用単量体は、スチレン、αメチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、メチルメタアクリル酸、クロロプレンからなる群より選択された1種以上であることが好ましい。
【0037】
本発明の一実施例によると、前記ゴム組成物がタイヤトレッド用ゴム組成物、産業ベルト用ゴム組成物などで用いられることが好ましい。
【0038】
本発明のまた他の目的を達成するために、本発明は、本発明によって製造されたESBRゴム組成物を含むタイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【0039】
本発明の一例によるタイヤトレッド用ゴム組成物は、上記した原料ゴム及び高反応性ポリブテン(HRPIB)以外にも補強充填剤であるシリカ及び/又はカーボンブラック、軟化剤であるプロセスオイル、加硫剤である硫黄、加硫促進剤であるCBSと1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、加硫活性剤である酸化亜鉛、ステアリン酸、分散性の向上のためのカップリング剤及び老化防止剤などタイヤトレッド用ゴム組成物に一般的に用いられるゴム配合剤を含むことができる。
【0040】
本発明において補強充填剤で用いられ得るシリカは、その種類には特に制限がないが、表面積が175±5m/g、水分含量が6.0±0.5重量%、二酸化ケイ素(SiO)含量が90重量%以上であることが好ましい。
【0041】
本発明で用いるカーボンブラックは、その種類に特に制限はないが、BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積が80~90m/gであり、DBP(Di-n-bibutyl Phthalate)吸着価が100~110g/100gであり、ヨウ素吸着価が90~120mg/g範囲であることが好ましい。前記カーボンブラックは、原料ゴム100重量部に対して40~100重量部を用いることが好ましいが、その使用量が40重量部未満であると、十分な補強効果を示さないので好ましくなく、100重量部を超過すると、発熱及び耐摩耗効果を示さないので好ましくない。
【0042】
伸展油は、軟化剤の役目をし、オイル内の芳香族系の含量が5~25重量%であり、ナフテンの含量が25~45重量%であり、パラフィン系の含量が35~65重量%であることが好ましい。その他、本発明で用いられる多様な添加剤に対しては、タイヤトレッド用ゴム組成物に用いられる一般的な成分であって、その詳細な内容は省略する。
【0043】
以上のようにして、本発明による前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、タイヤの諸般の基本物性に影響を与えないと共に自動車タイヤのトレッド部にグリップ、燃費、摩耗性能を向上させる一方、これを持続的に維持可能とする。
【0044】
本発明のまた他の目的を達成するために、本発明によるタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
【0045】
以下では、具体的な実施例と比較例を通じて本発明をより具体的に説明する。ただし、これは本発明をより理解しやすく説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例
【0046】
<製造例1:ESBRラテックスの製造>
5℃で機械式撹拌機が設置された10Lの圧力反応器に、イオン除去水3200mL、ロジン酸カリウム46g、脂肪酸カリウム74g、塩化カリウム7.0g、スチレン560g、ブタジエン1440g、EDTA 1.0g、ハイドロサルファイトナトリウム1.0g、硫酸鉄0.2g、ホルムアルデヒドスルホネートナトリウム0.6g、tert-ドデシルメルカプタン2.0g及びメタンハイドロパーオキサイド1.2gを投入し、8時間撹拌した。反応停止のためにジエチルヒドロキシアミン2.0gを投入した。その後、未反応ブタジエンは、撹拌しながら反応器の温度を20℃に昇温して除去し、未反応スチレンは、減圧蒸溜して除去し、重量平均分子量1,058,000g/mol、MWD4.2、スチレンの含量23.6%、Total solid content(TSC)25%であるスチレン-ブタジエンラテックスを製造した。
【0047】
<製造例2:伸展油/ポリブテン乳化液の製造>
機械式撹拌機が設置された1Lガラス反応器に60℃の温度で陽イオンが除去された水46mlと25wt%の苛性ソーダ水(NaOH水溶液)3.1ml、蒸留トール油(distilled tall oil、DTO)7.1gを入れ、完全に鹸化(saponication)するまで撹拌する。DTOが水に完全に乳化されたことを確認した後、60℃に加熱された伸展油TDAE oil 360g、酸化防止剤K-13 4.2g、水180mlを追加した後、30分間激烈に撹拌して伸展油の乳化液を製造した。伸展油/ポリブテンが含まれた乳化液は、伸展油の投入段階で一定部分をポリブテンに代替して投入して製造する。伸展油/ポリブテンを伸展するゴムに伸展油/ポリブテン乳化液に含まれた伸展油/ポリブテンの割合を調節してゴムにポリブテンを伸展することができる。このとき、製造された伸展油/ポリブテンの濃度は、追加で水を追加して調節する。
【0048】
<製造例3:伸展油/ポリブテンが伸展されたESBRの製造>
60℃に維持されながら機械式撹拌機が設置された4L広口ガラス反応器に重合した後、製造例1で製造したスチレン-ブタジエンラテックス(ラテックス形状のゴム組成物)800gを投入した後、温度が60℃になるまで昇温する。昇温されたラテックスに、製造例2で製造した60℃の伸展油/ポリブテン乳化液を200g投入した後、10分間撹拌する。その後、60℃の塩化ナトリウム飽和水溶液を500ml投入して塩析した後、希硫酸をpHが4になるまで投入する酸析過程を段階的に行って水状で伸展油/ポリブテンが伸展されたESBRゴム粒子を製造する。ゴム粒子を分離した後に60℃の陽イオン除去水で3回洗浄した後、粒子を分離して100℃熱風乾燥器で乾燥、伸展油/ポリブテンが37.5phrが伸展されたESBRサンプルを製造した。
【0049】
<比較製造例1>
製造例2でTDAE oilのみで製造したこと以外は、製造例2と同一の方法で伸展油乳化液を製造した。
【0050】
<比較例1:TDAE oilのみ伸展されたESBR>
製造例1のESBRラテックスに比較製造例1のTDAE oilのみで製造した伸展油乳化液を用いて製造例3と同一の方法でESBRサンプルを製造した。
【0051】
<実施例1:PIBが1wt%含まれたオイル伸展されたESBR>
製造例1のESBRラテックスに製造例2の方法によって行い、ただし、伸展油(TDAE)346g/ポリブテン(HRPIB470)14gを投入して製造した伸展油/ポリブテン乳化液を用いて製造例3と同一の方法でESBRサンプルを製造した。
【0052】
*ポリブテン:(株)ハンファトータル HRPIB470
HRPIB470:high reactive PIB(Mn 1,300g/mol)
【0053】
<実施例2:PIBが3wt%含まれたオイル伸展されたESBR>
製造例1のESBRラテックスに製造例2の方法を適用した。ただし、伸展油(TDAE)320g/ポリブテン(HRPIB470)40gを投入して製造した伸展油/ポリブテン乳化液を用いて、製造例3と同一の方法でESBRサンプルを製造した。
【0054】
<実施例3:PIBが5wt%含まれたオイル伸展されたESBR>
製造例1のESBRラテックスに製造例2と同一の方法を適用した。ただし、伸展油(TDAE)294g/ポリブテン(HRPIB470)66gを投入して製造した伸展油/ポリブテン乳化液を用いて、製造例3と同一の方法でESBRサンプルを製造した。
【0055】
<実施例4:PIBが10wt%含まれたオイル伸展されたESBR>
製造例1のESBRラテックスに製造例2と同一の方法を適用した。ただし、伸展油(TDAE)228g/ポリブテン(HRPIB470)132gを投入して製造した伸展油/ポリブテン乳化液を用いて、製造例3と同一の方法でESBRサンプルを製造した。
【0056】
実施例及び比較例によって製造されたESBRサンプルの伸展油/ポリブテンの含量は、表1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
<配合評価:比較例1及び実施例1~4>
表2の組成でMoriyama社のMIX-LABO(Mixing capacity:0.5liter、Main motor:15HP)を用いて架橋前の複合材を製造した。
【0059】
【表2】
【0060】
配合は、2段階で進行した。第1混練りでは、0.5L配合器の体積基準75%で充填し、ローターの回転数を70rpm条件でゴム組成物、充填剤(シリカ)、酸化亜鉛(ZnO)、ステアリン酸(stearic acid)、シランカップリング剤(Si-69)を入れて1次ゴム組成物を得る。
【0061】
第2混練りでは、配合物を室温まで冷却し、90℃以下で硫黄(sulfur)とDPG(Diphenyl Guanidine)、CBS(N-cyclohexyl-2-benzothiazole sulfonamide)、酸化防止剤(6-PPD)を添加し、50rpm条件で2分間混練りした。
【0062】
配合されたゴム複合材の架橋のために、Rubber Process Analyzer(RPA)で160℃、40分、変形率1%の条件で加硫特性を測定して得られたT90の時間に、90秒を加えた時間の間それぞれのゴム複合材を160℃の高温プレスで架橋してタイヤトレッド用ゴム複合材の試験片を製造した。
【0063】
その他添加剤として、SBR、BR及びPIBを含むゴム組成物100重量部に対して、酸化亜鉛(ZnO)3重量部、ステアリン酸(St-A)2重量部、シリカ(VN3、エボニック社)50重量部、シリカカップリング剤(SI-69)4重量部を添加して1次配合物(SMB、silica master batch)を製造し、1次配合物に対してポリブテンの含量によって硫黄1.5~2.0重量部、加硫促進剤であるジフェニルグアニジン(DPG)1.8重量部、シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)1.8重量部、酸化防止剤(6PPD)0.2重量部をさらに添加して2次配合物(FMB、final master batch)を製造した。
【0064】
<実験例>
前記比較例と実施例によって製造された各ゴム複合材の試験片をASTM関連規定によって次のように物性を測定し、その結果を次の表3に示した。
【0065】
(1)配合粘度(Mooney viscosity、MV):
ムーニー粘度計(MV2000、アルファテクノロジー社)を用い、100℃で大きいローターより予熱1分からローター始動後4分後の値を測定判読してムーニー粘度を測定した。
【0066】
(2)架橋密度:配合されたゴム複合材の架橋のために、Rubber Process Analyzer(RPA)で160℃40分、変形率1%の条件で、架橋特性を測定する間トーク値の最大値から最小値の値を抜いたもので測定した。
【0067】
(3)硬度:硬度試験は、JIS K6253(2001年)に準拠して実施してスプリング硬度HA(ショア-A硬度)を測定した。
【0068】
(4)モジュラス:モジュラスの測定は、試験片をダンベル型に切ってインストロン社で製作した引張試験機で実施した。100%及び200%のモジュラスは、試験片を100%及び200%にそれぞれ伸長させた場合に試験片に作用するストレスを称する。
【0069】
(5)引張強度:引張強度は、加硫ゴムシートを穿ちJIS K6251(2001年)に記載されている3号型ダンベル試験片を製造した。この試験片を用いて同JIS K6251に規定する方法によって、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、100%モジュラス(M100)、200%モジュラス(M200)、引張破断点の応力TB及び引張破断点の伸度EBを測定した。
【0070】
(6)伸率:引張強度の測定時に破断点までの変形率(%)で測定した。
【0071】
(7)粘弾性:粘弾性は、Dynamic mechanical analysis(DMA)を用いて測定し、0℃Tanδは、濡れた路面でのタイヤの制動性能の代用数値で利用され、その数値が高いほど優れた性能を示す。60℃Tanδは、タイヤ転がり抵抗値の代用数値で用いられ、その数値が低いほど転がり抵抗に優れて燃費効率が上昇することを示す。
【0072】
(8)摩耗:摩耗は、DIN摩耗試験機を用いて5N荷重を与えながらASTM D5963法によって摩耗されて減る重量を測定し、相対指数で表示してその数値が大きいほど摩耗性能に優れていることを示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表3のように、PIBを伸展したESBRゴムは、PIBを含まないものに比べて耐久性、グリップ(grip)性、低い転がり抵抗性が改善されて優れた制動特性、低燃費特性及び摩耗性能が向上する結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、ゴム組成物の製造方法、その製造方法で製造されたゴム組成物及びそれを用いて製造されたタイヤに利用できる。