(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】粘着剤層付き偏光フィルム、及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241030BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241030BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241030BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20241030BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241030BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20241030BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241030BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241030BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20241030BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241030BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20241030BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J7/38
C09J11/06
C09J133/00
C09J201/00
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
G09F9/30 365
H05B33/02
H05B33/14 A
H10K59/00
(21)【出願番号】P 2021134046
(22)【出願日】2021-08-19
(62)【分割の表示】P 2020113974の分割
【原出願日】2016-05-11
【審査請求日】2021-09-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2015254524
(32)【優先日】2015-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】形見 普史
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 寛教
(72)【発明者】
【氏名】保井 淳
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】関根 洋之
【審判官】橿本 英吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-232493(JP,A)
【文献】特開2014-115468(JP,A)
【文献】特開2006-184883(JP,A)
【文献】実開昭60-133402(JP,U)
【文献】特開2012-3269(JP,A)
【文献】特開2008-40277(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185318(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/030080(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/203792(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/188935(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/175462(WO,A1)
【文献】特開2015-200758号(JP,A)
【文献】国際公開第2012/035885(WO,A1)
【文献】特開2015-158538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置において画像表示部より視認側に用いられる粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと当該偏光フィルムの両面に粘着剤層を有し、
前記偏光フィルムは、偏光子と当該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し、
前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムと二色性物質とからなり、
前記偏光子の視認側の透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率が6%未満であり、
前記偏光子の視認側の透明保護フィルムが、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びシクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムであり、
前記偏光子の視認側の透明保護フィルム及び前記偏光子の画像表示部側の透明保護フィルムがともにトリアセチルセルロースフィルムとなることはなく、
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物により形成され、前記紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物は、アルキル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分と波長400nm未満に吸収帯を有する光重合開始剤(B)を含む組成物に紫外線を照射して、前記モノマー成分の部分重合物を形成し、前記モノマー成分の部分重合物に、紫外線吸収剤、並びに波長400nm以上に吸収帯を有する光重合開始剤(A)を添加して作製されており、
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層の厚さは50μm以上であり、
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が、前記紫外線吸収剤として、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤のうちの1種又は2種以上と、染料とを含み、
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が紫外線吸収機能を有することを特徴とする粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項2】
前記偏光子の視認側の透明保護フィルムの厚さが40μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項3】
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層の厚さが、前記偏光フィルムの画像表示部側の粘着剤層の厚さの2倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項4】
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が、波長380nmの透過率が9%以下であり、かつ、波長400nmの透過率が60%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項5】
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が、波長380nmの透過率が9%以下であり、かつ、波長420nmの透過率が75%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項6】
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層のb*値が3.0以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項7】
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有していることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項8】
液晶表示装置又は有機EL表示装置に用いることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の粘着剤層付き偏光フィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の粘着剤層付き偏光フィルムを画像表示部より視認側に用いたことを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に用いる粘着剤層付き偏光フィルムに関する。また、本発明は、前記粘着剤層付き偏光フィルムを用いた画像表示装置に関する。画像表示装置としては、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及び有機EL表示装置等は、その画像形成方式から、例えば、液晶表示装置では、液晶セルの両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光フィルムが貼着されている。また液晶パネル及び有機ELパネル等の表示パネルには偏光フィルムの他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。
【0003】
これらの画像表示装置に用いられる偏光フィルムは、一般に偏光子を2枚の保護フィルムで挟持する構成を有しており、保護フィルムとしてはトリアセチルセルロース(TAC)が広く用いられている。
【0004】
近年、画像表示装置の軽量化、薄膜化の流れに伴い、画像表示装置に使用される各部材について薄膜化が要求されており、偏光フィルムの保護フィルムについても薄膜化が要求されている。前記保護フィルムの厚さが薄くなると、画像表示装置に入射する紫外線を十分にカットできなくなり、偏光子のみならず、画像表示装置に用いられる液晶パネル、有機EL素子等をはじめとする各種光学部材の紫外線による劣化を早めるといった問題があった。
【0005】
このような問題を解消するために、例えば、画像表示装置における表面保護パネルと液晶モジュールの視認側との間に配設して、2つの部材を一体化させるための両面粘着シートであって、少なくとも1層の紫外線吸収層を有し、波長380nmの光線透過率が30%以下であり、かつ波長430nmよりも長波長側における可視光透過率が80%以上である画像表示装置用透明両面粘着シート(例えば、特許文献1参照)や、アクリル系ポリマー及びトリアジン系紫外線吸収剤を含有する粘着剤層を有する粘着シートが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、光学フィルムの片面又は両面に粘着剤層が設けられている粘着型光学フィルムにおいて、前記粘着剤層に紫外線吸収能を付与できることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-211305号公報
【文献】特開2013-75978号公報
【文献】特許第4208187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、特許文献1~3に記載されているように、紫外線吸収機能を有する透明粘着剤を用いて画像表示装置に用いる各種部材を貼り合わせることが知られているが、この場合、厚みムラが生じたり、歩留まり悪化、作業性といった観点で課題があった。
【0008】
また、偏光フィルムの用途によっては、偏光フィルムに、より高い紫外線吸収機能が要求される場合がある。具体的には、長時間(具体的には300時間程度)紫外線に曝された場合や、幅広い波長領域を有する紫外線に曝された場合であっても、光学特性が変化しないことが要求されており、そのようなより高い紫外線吸収機能を満足する偏光フィルムが望まれていた。
【0009】
また、偏光フィルムの偏光子や保護フィルムの薄膜化により、得られる偏光フィルムにカールが生じるといった問題もあった。
【0010】
そこで、本発明は、歩留まり低下の課題を解決することができ、かつ、偏光フィルムが薄型の場合であっても、より高い紫外線カット機能を付与することができ、カール発生を抑制することができる粘着剤層付き偏光フィルムを提供すること目的とする。また、本発明は、前記粘着剤層付き偏光フィルムを用いた画像表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着剤層付き偏光フィルムを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、画像表示装置において画像表示部より視認側に用いられる粘着剤層付き偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと当該偏光フィルムの両面に粘着剤層を有し、
前記偏光フィルムは、偏光子と当該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し、
前記偏光子の視認側の透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率が6%未満であり、かつ
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が紫外線吸収機能を有することを特徴とする粘着剤層付き偏光フィルムに関する。
【0013】
前記偏光子の視認側の透明保護フィルムが、トリアセチルセルロースフィルム、アクリルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びシクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムであり、かつ厚さが40μm以下であることが好ましい。
【0014】
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層の厚さが、前記偏光フィルムの画像表示部側の粘着剤層の厚さの2倍以上であることが好ましい。
【0015】
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が、波長380nmの透過率が9%以下であり、かつ、波長400nmの透過率が60%以上であることが好ましい。
【0016】
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層のb*値が3.0以下であることが好ましい。
【0017】
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が、波長380nmの透過率が9%以下であり、かつ、波長420nmの透過率が75%以下であることが好ましい。
【0018】
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有していることが好ましい。
【0019】
本発明の粘着剤層付き偏光フィルムは、液晶表示装置又は有機EL表示装置に用いることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、本発明の粘着剤層付き偏光フィルムを画像表示部より視認側に用いたことを特徴とする画像表示装置に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の粘着剤層付き偏光フィルムは、紫外線吸収機能を有する粘着剤層が偏光フィルムの視認側に予め積層されている構成であるため、工程削除、歩留まり低下の課題を解決することができ、かつ、偏光フィルムが薄型の場合であっても、より高い紫外線カット機能を付与することができ、カール発生を抑制することができる。また、本発明の画像表示装置は、前記粘着剤層付き偏光フィルムを用いているため、画像表示装置に用いられる液晶パネル、有機EL素子等をはじめとする各種光学部材の紫外線による劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の粘着剤層付き偏光フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.粘着剤層付き偏光フィルム
本発明の粘着剤層付き偏光フィルムは、画像表示装置において画像表示部より視認側に用いられ、
前記粘着剤層付き偏光フィルムは、偏光フィルムと当該偏光フィルムの両面に粘着剤層を有し、
前記偏光フィルムは、偏光子と当該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し、
前記偏光子の視認側の透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率が6%未満であり、かつ
前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層が紫外線吸収機能を有することを特徴とする。
【0024】
図1に示すように、本発明の粘着剤層付き偏光フィルム1は、視認側粘着剤層2a/視認側透明保護フィルム3a/偏光子4/画像表示部側透明保護フィルム3b/画像表示部側粘着剤層2bを含む構成であればよく、さらに位相差フィルム等を含む構成であってもよい。具体的には、視認側粘着剤層2a/視認側透明保護フィルム3a/偏光子4/画像表示部側透明保護フィルム3b/画像表示部側粘着剤層2b/位相差フィルム(不図示)/画像表示部側粘着剤層(不図示)等の構成であってもよい。偏光フィルム5は、視認側透明保護フィルム3a/偏光子4/画像表示部側透明保護フィルム3bから構成される。各層について、以下に詳細に説明する。
【0025】
(1)視認側粘着剤層
本発明において、前記偏光フィルムの視認側の粘着剤層(視認側粘着剤層)が紫外線吸収機能を有することを特徴とする。前記視認側粘着剤層は、紫外線吸収機能を有すればよく、その組成は特に限定されない。
【0026】
前記視認側粘着剤層の形成には、適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。これら粘着剤の中でも、光学的透明性に優れ、適宜な密着性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性等に優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましく使用される。前記アクリル系粘着剤(組成物)は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有する。
【0027】
前記アクリル系粘着剤組成物は、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分の部分重合物及び/又は前記モノマー成分から得られる(メタ)アクリル系ポリマーと、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
【0028】
(1-1)モノマー成分の部分重合物、及び(メタ)アクリル系ポリマー
前記アクリル系粘着剤組成物は、アルキル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分の部分重合物及び/又は前記モノマー成分から得られる(メタ)アクリル系ポリマーを含む。
【0029】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~24のアルキル基をエステル末端に有するものを例示できる。アルキル(メタ)アクリレートは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、アルキル(メタ)アクリレートはアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0030】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、前記炭素数1~9の分岐を有するアルキル(メタ)アクリレートを好ましく例示することができる。当該アルキル(メタ)アクリレートは、粘着特性のバランスがとりやすい点で好ましい。具体的には、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明において、前記炭素数1~24のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましい。
【0032】
前記モノマー成分には、単官能性モノマー成分として、前記アルキル(メタ)アクリレート以外の共重合モノマーを含有することができる。共重合モノマーは、モノマー成分における前記アルキル(メタ)アクリレートの残部として用いることができる。
【0033】
共重合モノマーとしては、例えば、環状窒素含有モノマーを含むことができる。上記環状窒素含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ環状窒素構造を有するものを特に制限なく用いることができる。環状窒素構造は、環状構造内に窒素原子を有するものが好ましい。環状窒素含有モノマーとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、メチルビニルピロリドン等のラクタム系ビニルモノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等の窒素含有複素環を有するビニル系モノマー等が挙げられる。また、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環等の複素環を含有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。具体的には、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等が挙げられる。前記環状窒素含有モノマーの中でも、ラクタム系ビニルモノマーが好ましい。
【0034】
本発明において、環状窒素含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して、0.5~50重量%であるのが好ましく、0.5~40重量%がより好ましく、0.5~30重量%がさらに好ましい。
【0035】
本発明で用いるモノマー成分には、単官能性モノマー成分として、ヒドロキシル基含有モノマーを含むことができる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレートが挙げられる。その他、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて使用できる。これらの中でもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好適である。
【0036】
本発明において、前記ヒドロキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して、接着力、凝集力を高める点から1重量%以上であるのが好ましく、2重量%以上であるがより好ましく、3重量%以上であるのがさらに好ましい。一方、前記ヒドロキシル基含有モノマーが多くなりすぎると、粘着剤層が固くなり、接着力が低下する場合があり、また、粘着剤の粘度が高くなりすぎたり、ゲル化したりする場合があることから、前記ヒドロキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して、30重量%以下であるのが好ましく、27重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましい。
【0037】
また、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、単官能性モノマーとして、その他の官能基含有モノマーを含有することができ、例えば、カルボキシル基含有モノマー、環状エーテル基を有するモノマーが挙げられる。
【0038】
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用できる。イタコン酸、マレイン酸はこれらの無水物を用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。なお、本発明の(メタ)アクリル系ポリマーの製造に用いるモノマー成分にはカルボキシル基含有モノマーを任意に用いることができ、一方では、カルボキシル基含有モノマーを用いなくともよい。
【0039】
環状エーテル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつエポキシ基又はオキセタン基等の環状エーテル基を有するものを特に制限なく用いることができる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。オキセタン基含有モノマーとしては、例えば、3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-メチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-エチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ブチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ヘキシル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて使用できる。
【0040】
本発明において、前記カルボキシル基含有モノマー、環状エーテル基を有するモノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して、30重量%以下であるのが好ましく、27重量%以下がより好ましく、25重量%以下がさらに好ましい。
【0041】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、共重合モノマーとしては、例えば、CH2=C(R1)COOR2(前記R1は水素又はメチル基、R2は炭素数1~3の置換されたアルキル基、環状のシクロアルキル基を表す。)で表されるアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0042】
ここで、R2としての、炭素数1~3の置換されたアルキル基の置換基としては、炭素数3~8個のアリール基又は炭素数3~8個のアリールオキシ基であることが好ましい。アリール基としては、限定はされないが、フェニル基が好ましい。
【0043】
このようなCH2=C(R1)COOR2で表されるモノマーの例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて使用できる。
【0044】
本発明において、前記CH2=C(R1)COOR2で表される(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して、50重量%以下で用いることができ、45重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましい。
【0045】
他の共重合モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2-メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー;アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、N-アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマー等も使用することができる。また、共重合モノマーとしては、テルペン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の環状構造を有するモノマーを用いることができる。
【0046】
さらに、ケイ素原子を含有するシラン系モノマー等が挙げられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4-ビニルブチルトリメトキシシラン、4-ビニルブチルトリエトキシシラン、8-ビニルオクチルトリメトキシシラン、8-ビニルオクチルトリエトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、前記例示の単官能性モノマーの他に、粘着剤の凝集力を調整するために、必要に応じて多官能性モノマーを含有することができる。
【0048】
多官能性モノマーは、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を少なくとも2つ有するモノマーであり、例えば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。多官能性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
多官能性モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、単官能性モノマーの合計100重量部に対して、3重量部以下で用いることが好ましく、2重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。また、下限値としては特に限定されないが、0重量部以上であることが好ましく、0.001重量部以上であることがより好ましい。多官能性モノマーの使用量が前記範囲内であることにより、接着力を向上することができる。
【0050】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、紫外線(UV)重合等の放射線重合、塊状重合、乳化重合等の各種ラジカル重合等の公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよい。
【0051】
また、本発明においては、前記モノマー成分の部分重合物も好適に用いることができる。
【0052】
前記(メタ)アクリル系ポリマーをラジカル重合により製造する場合には、前記モノマー成分に、ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等を適宜添加して、重合を行うことができる。前記ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜その使用量が調整される。
【0053】
例えば、溶液重合等においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素等の不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50~70℃程度で、5~30時間程度の反応条件で行われる。
【0054】
溶液重合等に用いられる、熱重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(VA-057、和光純薬工業(株)製)等のアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ等の過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、モノマー成分の全量100重量部に対して、1重量部以下程度であることが好ましく、0.005~1重量部程度であることがより好ましく、0.02~0.5重量部程度であることがさらに好ましい。
【0056】
なお、重合開始剤として、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを用いる場合、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.2重量部以下程度であることが好ましく、0.06~0.2重量部程度とするのがより好ましい。
【0057】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.3重量部程度以下である。
【0058】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン系乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0059】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基等のラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、例えば、アクアロンHS-10、HS-20、KH-10、BC-05、BC-10、BC-20(以上、いずれも第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE10N(ADEKA社製)等がある。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましい。
【0060】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーを放射線重合により製造する場合には、前記モノマー成分に、電子線、紫外線(UV)等の放射線を照射することにより重合して製造することができる。これらの中でも、紫外線重合が好ましい。以下、放射線重合の中で好ましい態様である紫外線重合について説明する。
【0061】
紫外線重合を行う際には、重合時間を短くすることができる利点等から、モノマー成分に光重合開始剤を含有させることが好ましい。従って、紫外線重合を行う場合、例えば、前記アルキル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分及び/又は前記モノマー成分の部分重合物、紫外線吸収剤、及び光重合開始剤を含む紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物を紫外線重合することにより形成されることが好ましい。前記紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物を紫外線重合することにより形成された粘着剤層は、150μm以上の厚手のものも形成が可能になり、幅広い厚みの粘着剤層を形成することができるため好ましい。
【0062】
前記光重合開始剤としては、波長400nm以上に吸収帯を有する光重合開始剤(A)を含むものであることが好ましい。粘着剤組成物に紫外線吸収剤を含む場合、紫外線重合を行うと、前記紫外線吸収剤により紫外線が吸収されてしまい十分に重合できないものであった。しかしながら、波長400nm以上に吸収帯を有する光重合開始剤(A)であれば、紫外線吸収剤を含むにもかかわらず十分に重合することができるため、好ましい。
【0063】
波長400nm以上に吸収帯を有する光重合開始剤(A)としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(Irgacure819、BASF製)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(LUCIRIN TPO、BASF製)等を挙げることができる。
【0064】
前記波長400nm以上に吸収帯を有する光重合開始剤(A)は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0065】
また、前記波長400nm以上に吸収帯を有する光重合開始剤(A)の添加量は、特に限定されるものではないが、後述する紫外線吸収剤の添加量よりも少ないことが好ましく、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分100重量部に対して、0.005~1重量部程度であることが好ましく、0.02~0.5重量部程度であることがより好ましい。光重合開始剤(A)の添加量が前記範囲であることで、紫外線重合を十分に進行することができるため好ましい。
【0066】
また、前記光重合開始剤には、波長400nm未満に吸収帯を有する光重合開始剤(B)を含有することができる。また、光重合開始剤(B)は、波長400nm以上に吸収帯を有さないことが好ましい。当該光重合開始剤(B)としては、紫外線によりラジカルを発生し、光重合を開始するものであって、波長400nm未満に吸収帯を有するものであれば特に制限されず、通常用いられる光重合開始剤をいずれも好適に用いることができる。例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。
【0067】
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、アニソールメチルエーテル等が挙げられる。
【0068】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチルジクロロアセトフェノン等が挙げられる。
【0069】
α-ケトール系光重合開始剤としては例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0070】
光活性オキシム系光重合開始剤としては例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)-オキシム等が挙げられる。
【0071】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン等が挙げられる。
【0072】
ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジル等が含まれる。
【0073】
ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。
【0074】
ケタール系光重合開始剤には、ベンジルジメチルケタール等が含まれる。
【0075】
チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
【0076】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤には、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が含まれる。
【0077】
前記波長400nm未満に吸収帯を有する光重合開始剤(B)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。前記波長400nm未満に吸収帯を有する光重合開始剤(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができるが、添加量としては、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分100重量部に対して、0.005~0.5重量部程度であることが好ましく、0.02~0.1重量部程度であることがより好ましい。
【0078】
本発明においては、前記モノマー成分を紫外線重合する場合は、前記モノマー成分に波長400nm未満に吸収帯を有する光重合開始剤(B)を先に添加して、紫外線を照射して一部重合したモノマー成分の部分重合物(プレポリマー組成物)に、前記波長400nm以上に吸収帯を有する光重合開始剤(A)及び紫外線吸収剤を添加して紫外線重合することが好ましい。紫外線照射をして一部重合したモノマー成分の部分重合物(プレポリマー組成物)に、前記波長400nm以上に吸収帯を有する光重合開始剤(A)を添加する際には、前記光重合開始剤をモノマーに溶解した後添加することが好ましい。
【0079】
(1-2)紫外線吸収剤
前記アクリル系粘着剤組成物に含まれる紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、1分子中にヒドロキシル基を2個以下有するトリアジン系紫外線吸収剤、及び、1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種の紫外線吸収剤であることが、アクリル系粘着剤組成物の形成に用いられるモノマーへの溶解性が良好であり、かつ、波長380nm付近での紫外線吸収能力が高いため好ましい。
【0080】
1分子中にヒドロキシル基を2個以下有するトリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(Tinosorb S、BASF製)、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(TINUVIN 460、BASF製)、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと[(C10-C16(主としてC12-C13)アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(TINUVIN400、BASF製)、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[3-(ドデシルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ]フェノール)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物(TINUVIN405、BASF製)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(TINUVIN1577、BASF製)、2-(4,6-ジフェニルー1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]-フェノール(ADK STAB LA46、ADEKA製)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(TINUVIN479、BASF社製)等を挙げることができる。
【0081】
また、1分子中にベンゾトリアゾール骨格を1個有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(TINUVIN 928、BASF製)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(TINUVIN PS、BASF製)、ベンゼンプロパン酸および3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ(C7-9側鎖および直鎖アルキル)のエステル化合物(TINUVIN384-2、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(TINUVIN900、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(TINUVIN928、BASF製)、メチル-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物(TINUVIN1130、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(TINUVIN P、BASF製)、2(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(TINUVIN234、BASF製)、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(TINUVIN326、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(TINUVIN328、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(TINUVIN329、BASF製)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(TINUVIN213、BASF製)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(TINUVIN571、BASF製)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3、4、5,6-テトラヒドロフタルイミドーメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(Sumisorb250、住友化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0082】
また、前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物)、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤(オキシベンゾフェノン系化合物)としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸(無水及び三水塩)、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,2´,4,4´-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2´-ジヒドロキシ-4,4-ジメトキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0083】
また前記サリチル酸エステル系紫外線吸収剤(サリチル酸エステル系化合物)としては、例えば、フェニル-2-アクリロイルオキシベンゾエ-ト、フェニル-2-アクロリイルオキシ-3-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-アクリロイルオキシ-4-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-アクリロイルオキシ-5-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-アクリロイルオキシ-3-メトキシベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシ-3-メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシ-4メチルベンゾエ-ト、フェニル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンゾエ-ト、フェニル2-ヒドロキシ-3-メトキシベンゾエ-ト、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(TINUVIN120、BASF製)等を挙げることができる。
【0084】
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤(シアノアクリレート系化合物)としては、例えば、アルキル-2-シアノアクリレート、シクロアルキル-2-シアノアクリレート、アルコキシアルキル-2-シアノアクリレート、アルケニル-2-シアノアクリレート、アルキニル-2-シアノアクリレート等を挙げることができる。
【0085】
また、紫外線吸収剤として、例えば、商品名「FDB-001」(山田化学工業(株)製)、商品名「SMP-122」(林原(株)製)、アゾメチン化合物(商品名:BONASORB UA-3911、オリエント化学工業(株)製)、インドール化学物(商品名:BONASORB UA-3701、オリエント化学工業(株)製)、Disperse Yellow54(商品名:KAYASET YELLOW AG、日本化薬(株)製)、キノフタロン化合物(商品名:MS YELLOW HD-137、山田化学工業(株)製)、Solvent Yellow93(PLASTYELLOW 8000、有本化学工業(株)製)、Solvent Yellow163(KP Plast Yellow MK、紀和化学工業(株)製)等の染料を用いることもできる。
【0086】
前記紫外線吸収剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分100重量部に対して、0.1~5重量部程度であることが好ましく、0.5~3重量部程度であることがより好ましい。紫外線吸収剤の添加量を前記範囲とすることで、粘着剤層の紫外線吸収機能を十分に発揮することでき、かつ、紫外線重合をする場合は、当該重合の妨げとはならないため、好ましい。
【0087】
(1-3)シランカップリング剤
さらに、本発明で用いるアクリル系粘着剤組成物にはシランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分100重量部に対して1重量部以下であるのが好ましく、0.01~1重量部がより好ましく、0.02~0.6重量部がさらに好ましい。
【0088】
前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0089】
(1-4)架橋剤
本発明で用いるアクリル系粘着剤組成物は、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、過酸化物等の架橋剤が含まれる。架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせることができる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。
【0090】
上記架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分100重量部に対し、5重量部以下であることが好ましく、0.01~5重量部であることがより好ましく、0.01~4重量部がさらに好ましく、0.02~3重量部が得に好ましい。
【0091】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤又は数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート等が挙げられる。
【0092】
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名:コロネートHL、日本ポリウレタン工業(株)製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:コロネートHX、日本ポリウレタン工業(株)製)等のイソシアネート付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名:D110N、三井化学(株)製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名:D160N、三井化学(株)製);ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0093】
(1-5)その他添加剤
本発明で用いるアクリル系粘着剤組成物には、前記成分の他に、用途に応じて、適宜な添加剤が含まれていてもよい。例えば、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂等からなる常温で固体、半固体、あるいは液状のもの);中空ガラスバルーン等の充填剤;可塑剤;老化防止剤;酸化防止剤等が挙げられる。
【0094】
(1-6)視認側粘着剤層の形成方法
本発明において、前記アクリル系粘着剤組成物は、基材上に塗布等する作業に適した粘度に調整するのが好ましい。アクリル系粘着剤組成物の粘度の調整は、例えば、増粘性添加剤等の各種ポリマーや多官能性モノマー等の添加や、アクリル系粘着剤組成物中のモノマー成分を部分重合させることにより行う。なお、当該部分重合は、増粘性添加剤等の各種ポリマーや多官能性モノマー等を添加する前に行っても良く、その後に行っても良い。上記アクリル系粘着剤組成物の粘度は添加剤の量等によって変わるため、アクリル系粘着剤組成物中のモノマー成分を部分重合させる場合の重合率は、一意に決めることはできないが、目安としては20%以下程度であることが好ましく、3~20%程度がより好ましく、5~15%程度がさらに好ましい。20%を超えると粘度が高くなりすぎるため、基材へ塗布が難しくなる。
【0095】
視認側粘着剤層は、前記アクリル系粘着剤組成物を基材の少なくとも片面に塗工し、当該アクリル系粘着剤組成物から形成される塗布膜を乾燥して形成するか、又は、紫外線等の活性エネルギー線を照射して形成することができる。
【0096】
前記基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、離型フィルム、透明樹脂フィルム基材等の各種基材や、後述する偏光フィルムも基材として好適に用いることができる。視認側粘着剤層を偏光フィルム以外の基材に形成した場合には、当該視認側粘着剤層は偏光フィルムに貼り合せて転写することができる。
【0097】
前記離型フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体等の適宜な薄葉体等を挙げることができるが、表面平滑性に優れる点から樹脂フィルムが好適に用いられる。
【0098】
その樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0099】
前記離型フィルムの厚さは、通常5~200μmであり、好ましくは5~100μm程度である。前記離型フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型及び防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理をすることもできる。特に、前記離型フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜行うことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0100】
前記透明樹脂フィルム基材としては、特に制限されないが、透明性を有する各種の樹脂フィルムが用いられる。当該樹脂フィルムは1層のフィルムにより形成されている。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂である。
【0101】
前記フィルム基材の厚さは、15~200μmであることが好ましく、25~188μmであることがより好ましい。
【0102】
上記アクリル系粘着剤組成物を上記基材上に塗布する方法は、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等公知適宜な方法を用いることができ、特に制限されない。
【0103】
視認側粘着剤層は、前記アクリル系粘着剤組成物から形成される塗布膜を乾燥して形成する場合、その乾燥条件(温度、時間)は、特に限定されるものではなく、粘着剤組成物の組成、濃度等により適宜設定することができるが、例えば、60~170℃程度、好ましくは60~150℃で、1~60分間、好ましくは2~30分間である。
【0104】
前記アクリル系粘着剤組成物が紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物であって、当該紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物から形成される塗布膜に紫外線を照射して形成する場合、照射する紫外線の照度は、5mW/cm2以上が好ましい。当該紫外線の照度が5mW/cm2未満であると、重合反応時間が長くなり、生産性に劣ることがある。なお、当該紫外線の照度は200mW/cm2以下が好ましい。当該紫外線の照度が200mW/cm2を超えると、光重合開始剤が急激に消費されるため、重合体の低分子量化が起こり、特に高温での保持力が低下することがある。また、紫外線の積算光量は、100mJ/cm2~5000mJ/cm2であることが好ましい。
【0105】
本発明に用いられる紫外線ランプは、特に限定されるものではないが、LEDランプが好ましい。LEDランプは他の紫外線ランプに比べて放出熱が低いランプであるため、粘着剤層の重合中の温度を抑えることができる。そのため、重合体の低分子量化を防ぐことができ、粘着剤層の凝集力の低下を防ぐとともに粘着シートとした場合の高温における保持力を高めることができる。また、複数の紫外線ランプを組み合わせることも可能である。また、紫外線を間欠的に照射し、紫外線を照射する明期と紫外線を照射しない暗期とを設けることもできる。
【0106】
本発明において、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物中のモノマー成分の最終的な重合率は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上が更に好ましい。
【0107】
本発明において、上記紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物に照射する紫外線のピーク波長は、200~500nmの範囲内にあることが好ましく、300~450nmの範囲内にあることがより好ましい。紫外線のピーク波長が500nmを超えると、光重合開始剤が分解せず、重合反応が開始しないことがある。また、紫外線のピーク波長が200nm未満であると、ポリマー鎖が切断され、接着特性が低下することがある。
【0108】
反応は空気中の酸素に阻害されるため、酸素を遮断するために、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物から形成される塗布膜上に離型フィルム等を形成したり、光重合反応を窒素雰囲気下で行ったりすることが好ましい。離型フィルムとしては、前述のものを挙げることができる。なお、離型フィルムを用いた場合、当該離型フィルムはそのまま粘着剤層付き偏光フィルムのセパレータとして用いることができる。
【0109】
また、本発明で用いる紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物が、光重合開始剤(B)を含有する場合は、アルキル(メタ)アクリレートを含有するモノマー成分と前記光重合開始剤(B)(「前添加重合開始剤」ということもある)を含む組成物に紫外線を照射して、前記モノマー成分の部分重合物を形成し、前記モノマー成分の部分重合物に、紫外線吸収剤、並びに波長400nm以上に吸収帯を有する光重合開始剤(A)(「後添加重合開始剤」ということもある)を添加して、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物を作製することが好ましい。部分重合物の重合率は、20%以下程度であることが好ましく、3~20%程度がより好ましく、5~15%程度がさらに好ましい。紫外線の照射条件は前述の通りである。
【0110】
前述の通り、光重合開始剤(B)を含有する紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物から粘着剤層を形成する場合、前述のような2段階で重合することにより、モノマー成分の重合率を上げることができ、かつ、最終的に作製された粘着剤層の紫外線吸収機能を向上することができる。
【0111】
前記視認側粘着剤層の厚さは、紫外線吸収機能を確保する観点から、後述する偏光フィルムの画像表示部側の粘着剤層(画像表示部側粘着剤層)の厚さの2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることがさらに好ましい。具体的には、前記視認側粘着剤層の厚さは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。視認側粘着剤層の厚さの上限値は特に限定されないが、10mm以下であることが好ましい。粘着剤層の厚さが10mmを超えると紫外線の透過が困難になり、モノマー成分の重合に時間がかかり、生産性が劣る場合があるため、好ましくない。
【0112】
本発明の視認側粘着剤層のゲル分率は、特に限定されるものではないが、35%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましい。視認側粘着剤層のゲル分率が小さい場合には凝集力に劣り、大きすぎると接着力に劣る場合がある。
【0113】
前記視認側粘着剤層の透過b*値は、特に限定されないが、3.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましい。上記b*値とは、JIS Z8729に準拠したL*a*b*表色系におけるb*値(色度)を指し、例えば、分光光度計(製品名:U4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定することができる。
【0114】
前記視認側粘着剤層の波長380nmにおける透過率が、9%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましい。波長380nmにおける透過率が前記範囲であることにより、入射する紫外線をより高度に遮断することができるため、液晶パネル、有機EL素子、偏光子等をはじめとする光学部材の劣化を著しく抑制することができる。
【0115】
前記視認側粘着剤層の波長400nmにおける透過率が、60%以上であることが好ましく、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましい。波長400nmにおける透過率が前記範囲であることにより、入射する可視光を十分の透過することができ、画像表示装置において十分な視認性を確保できるため好ましい。
【0116】
また、本発明の粘着剤層付偏光フィルムを有機EL表示装置(OLED)に用いる場合、前記視認側粘着剤層の波長420nmにおける透過率が、75%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。波長420nmにおける透過率が前記範囲であることにより、OLEDの発光素子保護の観点から好ましい。
【0117】
前記視認側粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで離型フィルムで粘着剤層を保護してもよい。なお、前記離型フィルムは、そのまま粘着剤層付偏光フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0118】
(2)画像表示部側粘着剤層
偏光フィルムの画像表示部側表面の粘着剤層(画像表示部側粘着剤層)としては、特に限定されるものではなく、前記視認側粘着剤層で詳述したアクリル系粘着剤組成物と同様のものを用いてもよく、通常用いられる各種粘着剤層を用いることができる。
【0119】
画像表示部側表面の粘着剤層の形成には、適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。これら粘着剤の中でも、光学的透明性に優れ、適宜な密着性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性等に優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0120】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするアクリル系ポリマーをベースポリマーとする。アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、視認側粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤組成物に用いるものと同様のものを挙げることができる。また、共重合モノマーやその割合としても、前記アクリル系粘着剤組成物に用いるものと同様のものを挙げることができる。
【0121】
前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の手法により製造でき、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択できる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。反応温度は、通常50~80℃程度、反応時間は1~8時間とされる。また、前記製造法の中でも溶液重合法が好ましく、アクリル系ポリマーの溶媒としては、一般に酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は、通常20~80重量%程度とされる。
【0122】
また前記粘着剤は、架橋剤を含有する粘着剤組成物とすることができる。架橋剤としても前述のものを挙げることができるが、特に、イソシアネート系架橋剤が好ましい。アクリル系ポリマーと架橋剤の配合割合は特に限定されないが、通常、アクリル系ポリマー(固形分)100重量部に対して、架橋剤(固形分)0.001~20重量部程度であることが好ましく、0.01~15重量部程度がより好ましい。
【0123】
さらには、前記粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を、また本発明の目的を逸脱しない範囲で各種の添加剤を適宜に使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着剤層等としても良い。シランカップリング剤としては、前述のものを挙げることができる。
【0124】
画像表示部側粘着剤層は、前記粘着剤組成物を、偏光フィルム又は離型フィルム等の各種基材に塗布し、乾燥することにより形成される。粘着剤層を離型フィルム等の各種基材に形成した場合には、当該粘着剤層は偏光フィルムに貼り合せて転写することができる。前記粘着剤の塗布方法、前記各種基材は、前記アクリル系粘着剤組成物の塗布方法、各種基材と同様のものを挙げることができる。
【0125】
また、前記塗布工程では、形成される粘着剤層が所定の厚み(乾燥後厚み)になるようにその塗布量が制御される。画像表示部側粘着剤層の厚みは、特に限定されるものではないが、視認側粘着剤層の厚さの1/2以下であることが好ましく、1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることが好ましい。画像表示部側粘着剤層の厚さは、具体的には、1~100μm程度であることが好ましく、3~50μm程度がより好ましく、5~30μm程度がさらに好ましい。
【0126】
画像表示部側粘着剤層の形成にあたっては、塗布された粘着剤に対して乾燥が施される。乾燥温度、乾燥時間は特に限定されるものではなく、適宜設定されるが、例えば、80~200℃程度で、0.5~10分間であることが好ましい。
【0127】
前記画像表示部側粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで離型フィルムで粘着剤層を保護してもよい。なお、前記離型フィルムは、そのまま粘着剤層付偏光フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0128】
(3)偏光フィルム
本発明で用いる偏光フィルムは、偏光子と当該偏光子の両面に透明保護フィルムを有し、偏光子の視認側の透明保護フィルム(視認側透明保護フィルム)は波長380nmにおける透過率は6%未満であることを特徴とする。
【0129】
(3-1)視認側透明保護フィルム
本発明で用いる視認側透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率は、6%未満であり、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。本発明においては、波長380nmにおける透過率が6%未満である視認側透明保護フィルムと、前記視認側粘着剤層(紫外線吸収剤含有)とを組み合わせることによって、より高度な紫外線吸収能力を達成することができるものである。また、視認側透明保護フィルムの波長380nmにおける透過率の下限値は特に限定されるものではなく、小さければ小さいほど、紫外線吸収機能の観点から好ましい。
【0130】
視認側透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は、前記ポリマーのブレンド物等も前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。これらの中でも、視認側透明保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム、アクリルフィルム(アクリル系ポリマーを用いたフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びシクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも1種のフィルムであることが好ましく、トリアセチルセルロースフィルムがより好ましい。
【0131】
視認側透明保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。また、視認側透明保護フィルムの厚さの下限値は特に限定されないが、1μm以上であることが好ましい。視認側透明保護フィルムの厚さが前記範囲であることで、偏光フィルムの薄型化が十分に達成でき、かつ偏光子の保護機能を損なうことがないため好ましい。
【0132】
後述する偏光子と視認側保護フィルムとは、水系接着剤等を介して密着することが好ましい。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。上記の他、偏光子と視認側透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。電子線硬化型偏光フィルム用接着剤は、上記各種の視認側透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。また本発明で用いる接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。
【0133】
前記視認側透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0134】
(3-2)偏光子
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5~80μm程度である。
【0135】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0136】
また、本発明においては、厚さが10μm以下の薄型偏光子も用いることができる。薄型化の観点から言えば当該厚さは1~7μmであるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光フィルムとしての厚さも薄型化が図れる点が好ましい。
【0137】
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51-069644号公報や特開2000-338329号公報や、国際公開第2010/100917号パンフレット、国際公開第2010/100917号パンフレット、又は特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法により得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断等の不具合なく延伸することが可能となる。
【0138】
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、国際公開第2010/100917号パンフレット、国際公開第2010/100917号パンフレット、又は特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。
【0139】
(3-3)画像表示部側透明保護フィルム
画像表示側透明保護フィルムについては、従来から用いられているものを適宜用いることができる。具体的には、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる材料から形成される透明保護フィルムが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は、前記ポリマーのブレンド物等も前記透明保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0140】
画像表示部側保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄膜性等の点より1~500μm程度である。
【0141】
前記偏光子と画像表示部側透明保護フィルムも、通常、水系接着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、前述のものを挙げることができる。
【0142】
前記画像表示部側透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであっても良い。
【0143】
2.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、本発明の粘着剤層付き偏光フィルムを用いたことを特徴とする。
【0144】
画像表示装置の具体的な構成の一例としては、例えば、
図2~
図4に示すように、カバーガラス又はカバープラスチック6/視認側粘着剤層2a/視認側透明保護フィルム3a/偏光子4/画像表示部側透明保護フィルム3b/画像表示部側粘着剤層2b/液晶表示装置(LCD)又は有機EL表示装置(OLED)7(
図2);カバーガラス又はカバープラスチック6/粘着剤層8a/センサー層9/視認側粘着剤層2a/視認側透明保護フィルム3a/偏光子4/画像表示部側透明保護フィルム3b/画像表示部側粘着剤層2b/液晶表示装置(LCD)又は有機EL表示装置(OLED)7(
図3);カバーガラス又はカバープラスチック6/粘着剤層8a/センサー層9/粘着剤層8b/センサー層9/視認側粘着剤層2a/視認側透明保護フィルム3a/偏光子4/画像表示部側透明保護フィルム3b/画像表示部側粘着剤層2b/液晶表示装置(LCD)又は有機EL表示装置(OLED)7(
図4);のように、各層がこの順に積層された画像表示装置を挙げることができる。本発明の粘着剤層付き偏光フィルム1は、前述の構成中、「視認側粘着剤層2a/視認側透明保護フィルム3a/偏光子4/画像表示部側透明保護フィルム3b/画像表示部側粘着剤層2b」の部分をいい、これら以外にも位相差フィルム等を含んでいてもよい。また、位相差フィルムを含む場合、具体的には、前記画像表示部側粘着剤層2bと液晶表示装置(LCD)又は有機EL表示装置(OLED)7との間に粘着剤層を介して積層することができる。また、各層の積層において、適宜粘着剤層及び/又は接着剤層を用いることができる。
【0145】
画像表示装置としては、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等が挙げられるが、これらの中でも、前述の構成を有する液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置等が好ましい。
【実施例】
【0146】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部及び%はいずれも重量基準である。
【0147】
製造例1(アクリル系粘着剤組成物(a-1)の製造)
アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)78重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)18重量部、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)4重量部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、波長200~370nmに吸収帯を有する、BASF社製)0.035重量部、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:イルガキュア651、波長200~380nmに吸収帯を有する、BASF社製)0.035重量部を配合した後、粘度(計測条件:BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物(重合率:8%)を得た。次に、該プレポリマー組成物に、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.15重量部、シランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越化学工業(株)製)0.3重量部を添加して混合し、アクリル系粘着剤組成物(a-1)を得た。
【0148】
製造例2 (アクリル系粘着剤組成物(a-2)の製造)
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)72重量部、メタクリル酸アクリレート(MMA)1重量部、N-ビニルピロリドン(NVP)12重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)15重量部から構成されるモノマー混合物に、重合開始剤として、アゾビスブチルニトリル(AIBN)0.2重量部、及び酢酸エチル233重量部を投入した後、窒素雰囲気下、60℃で7時間反応させることで上記モノマー成分の一部が重合した部分重合物を得た。次に、該部分重合物に、シランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越化学工業(株)製)0.3重量部、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名:タケネートD110N、三井化学(株)製)0.21重量部を添加して、アクリル系粘着剤組成物(a-2)を得た。
【0149】
製造例3(画像表示部側粘着剤層(B-1)の製造)
温度計、攪拌機、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、ブチルアクリレート95重量部、アクリル酸5重量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、及び酢酸エチル233重量部を投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、60℃にフラスコを加熱し、7時間反応させて、重量平均分子量(Mw)110万のアクリル系ポリマーを得た。
上記アクリル系ポリマー溶液(固形分を100重量部とする)に、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)0.8重量部、シランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越化学工業(株)製)0.1重量部を加えて粘着剤組成物(溶液)を調製した。
厚さ38μmのセパレータ(表面が剥離処理されたポリエチレンテレフタレート系フィルム)上に、得られた粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚さが12μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥層させて溶媒を除去し、粘着剤層を得た。その後、50℃で48時間加熱して架橋処理を行った。以下、この粘着剤層を「画像表示部側粘着剤層(B-1)」と言う。
【0150】
製造例4(画像表示部側粘着剤層(B-2)の製造)
厚さ38μmのセパレータ(表面が離型処理されたポリエチレンテレフタレート系フィルム)上に、製造例3で得られた粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥層させて溶媒を除去し、粘着剤層を得た。その後、50℃で48時間加熱して架橋処理を行った。以下、この粘着剤層を「画像表示部側粘着剤層(B-2)」と言う。
【0151】
実施例1
(紫外線吸収機能付き粘着剤組成物の製造)
得られたアクリル系粘着剤組成物(a-1)に、ブチルアクリレートに固形分15%となるように溶解させた2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名:Tinosorb S、表1、2中の「紫外線吸収剤1」、BASFジャパン社製)1.4重量部と、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、波長200~450nmに吸収耐を有する、BASFジャパン社製)0.2重量部を添加し撹拌することにより紫外線吸収機能付き粘着剤組成物を得た。
【0152】
前記紫外線吸収機能付き粘着剤組成物を、離型フィルムの剥離処理されたフィルム上に、粘着剤層形成後の厚さが150μmとなるように塗布し、次いで、該粘着剤組成物層の表面に、離型フィルムを貼り合わせた。その後、照度:6.5mW/cm2、光量:1500mJ/cm2、ピーク波長:350nmの条件で紫外線照射を行い、粘着剤組成物層を光硬化させて、視認側粘着剤層(A-1)を形成した。
【0153】
(偏光フィルム(P-1)の製造)
ヨウ素が含浸された厚さ5μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の視認側に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて厚さ25μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムを貼り合せ、偏光子の画像表示部側表面に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて厚さ20μmのアクリルフィルムを積層し、偏光フィルム(P-1)とした。偏光フィルムの偏光度は99.995であった。
【0154】
(粘着剤層付き偏光フィルムの製造)
前記偏光フィルム(P-1)の視認側(すなわち、厚さ25μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムの表面)に、視認側粘着剤層(A-1)を積層した。前記偏光フィルム(P-1)の画像表示部側表面(すなわち、厚さ20μmのアクリルフィルムの表面)に、画像表示部側粘着剤層(B-1)を積層し、さらに、位相差フィルム(厚み:56μm、材料:ポリカーボネート)と画像表示部側粘着剤層(B-2)を積層し、粘着剤層付き偏光フィルムを形成した。得られた粘着剤層付き偏光フィルムは、視認側粘着剤層(A-1)/偏光フィルム(P-1)/画像表示部側粘着剤層(B-1)/位相差フィルム/画像表示部側粘着剤層(B-2)の構成を有していた。
【0155】
実施例2~3
アクリル系粘着剤組成物の種類、紫外線吸収剤1の添加量、及び視認側粘着剤層形成後の厚さを表1に記載のようにした以外は、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光フィルムを形成した。
【0156】
実施例4
視認側の粘着剤層を、視認側粘着剤層(A-1)から下記で得られた視認側粘着剤層(A-2)に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤付き偏光フィルムを形成した。
【0157】
(視認側粘着剤層(A-2)の製造)
製造例2で得られたアクリル系粘着剤組成物(a-2)に、酢酸エチルに固形分15%になるように溶解させた2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名:Tinosorb S、BASFジャパン社製)1.4重量部を添加し撹拌することにより紫外線吸収機能付き粘着剤組成物を得た。
【0158】
前記紫外線吸収機能付き粘着剤組成物を、離型フィルムの剥離処理されたフィルム上に、粘着剤層形成後の厚さが150μmとなるように塗布し、60℃で2分、120℃で2分乾燥させた後、剥離処理されたフィルムを貼り合わせることで視認側粘着剤層(A-2)を形成した。
【0159】
実施例5~6
視認側粘着剤層形成後の厚さ、画像表示部側粘着剤層を表1に記載のようにした以外は、実施例4と同様にして粘着剤層付き偏光フィルムを形成した。
【0160】
実施例7
(視認側粘着剤層(A-3)の製造)
製造例1で得られたアクリル系粘着剤組成物(a-1)に、ブチルアクリレートに固形分15%となるように溶解させた2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン
(商品名:Tinosorb S、BASFジャパン社製)0.7重量部、Solvent Yellow163(KP Plast Yellow MK、表2中の「紫外線吸収剤2」、紀和化学工業(株)製)0.2重量部、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、波長200~450nmに吸収耐を有する、BASFジャパン社製)0.2重量部を添加し撹拌することにより紫外線吸収機能付き粘着剤組成物を得た。
【0161】
前記紫外線吸収機能付き粘着剤組成物を、離型フィルムの剥離処理されたフィルム上に、粘着剤層形成後の厚さが150μmとなるように塗布し、次いで、該粘着剤組成物層の表面に、離型フィルムを貼り合わせた。その後、照度:6.5mW/cm2、光量:3000mJ/cm2、ピーク波長:350nmの条件で紫外線照射を行い、粘着剤組成物層を光硬化させて、視認側粘着剤層(A-3)を形成した。
【0162】
視認側の粘着剤層を、視認側粘着剤層(A-1)から上記で得られた視認側粘着剤層(A-3)に変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤付き偏光フィルムを形成した。
【0163】
比較例1
視認側粘着剤層(A-1)、位相差フィルム、及び画像表示部側粘着剤層(B-2)を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光フィルムを形成した。
【0164】
比較例2
視認側粘着剤層(A-1)を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして粘着剤層付き偏光フィルムを形成した。
【0165】
比較例3、4
視認側粘着剤層(A-1)、(A-2)に、紫外線吸収剤を添加しなかったこと以外は実施例1、4と同様の方法で粘着剤付き偏光フィルムを形成した。
【0166】
比較例5
(偏光フィルム(P-2)の製造)
ヨウ素が含浸された厚さ12μmの延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の視認側に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼り合せ、偏光子の画像表示部側表面に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて厚さ20μmのアクリルフィルムを積層し、偏光フィルム(P-2)とした。偏光フィルムの偏光度は99.995であった。
【0167】
実施例2において、偏光フィルム(P-1)を前記偏光フィルム(P-2)に変更した以外は、実施例2と同様にして粘着剤付き偏光フィルムを形成した。
【0168】
得られた粘着剤層、粘着剤層付き偏光フィルムについて、以下の評価を行った。
【0169】
<重合率>
実施例及び比較例で得られた視認側粘着剤層の離型フィルムを剥離して、重さを測ったアルミシャーレに視認側粘着剤層のみをのせた。(アルミシャーレ+視認側粘着剤層)の重さを測定し、乾燥前の粘着剤層の重さを求めた。130℃、2時間乾燥後、常温で約20分冷却した後に、再び(アルミシャーレ+粘着剤)の重さを測定し、乾燥後の視認側粘着剤層の重さを求めた。以下の計算式により重合率を求めた。
【数1】
【0170】
<ゲル分率>
実施例及び比較例で得られた視認側粘着剤層から約0.1g採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名:NTF1122、日東電工(株)製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し(Zg)、該重量を浸漬前重量とした。なお、該浸漬前重量は、視認側粘着剤層(上記で採取した粘着剤層)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸との合計重量も測定した(Yg)。次に、視認側粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50mL容器に入れ、23℃にて7日間静置した。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し(Xg)、該重量を浸漬後重量とした。下記の式からゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=(X-Y)/(Z-Y)×100
【0171】
<視認側粘着剤層の透過率、b*値の測定>
実施例及び比較例で得られた視認側粘着剤層の離型フィルムを剥離して、視認側粘着剤層を測定用治具に取り付け、分光光度計(製品名:U4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)で測定した。透過率は、波長380nm、400nm、420nmにおける透過率を測定した(但し、波長420nmについては、実施例2、7のみで測定した)。
【0172】
<残存応力>
実施例及び比較例で得られた視認側粘着剤層から、幅30mm、長さ50mmを切り出し、筒状にして試験片を作製した。これをチャック間20mmで設置し、該試験片を引張速度200mm/分で、60mm(300%)引っ張った(引張後のチャック間は80mm)。60mm引っ張った位置で、300秒間固定(保持)し、300秒後の応力値(N)を測定した。以下の式により、残存応力を求めた。
300秒後残存応力=300秒後の応力値(N)/(4×試験片の厚さ/10)
【0173】
<光学信頼性>
実施例1で用いた偏光フィルム(P-1)のCOPフィルムに対して実施例1~7及び比較例3~5で得られた視認側粘着剤層を貼り合わせた。さらに、視認側粘着剤層を貼り合わせた偏光フィルムの逆側(アクリルフィルム側)に15μmの粘着剤付き56μmの位相差フィルム(日東電工(株)製)を貼り合わせた。そのサンプルの両面をガラス(商品名:S200200、厚さ:1.3mm、サイズ:45mm×50mm、松浪硝子工業(株)製)で貼り合わせをし、オートクレーブ処理(気圧:0.5MPa、温度:50℃)を15分間実施した。その後、以下の各種信頼性条件下に投入し、分光透過率測定器(製品名:DOT-3、(株)村上色彩技術研究所製)で透過率を測定した。初期からの透過率変化量を求めた。以下の評価基準により評価した。
(各種信頼性条件)
(条件1)85℃×500h
(条件2)60℃、95%×500h
(条件3)ヒートショック(HS)(-40℃~85℃)×300サイクル
(条件4)UV照射下×100h、照度:500W/cm2(300~700nm)、環境温度:60~65℃、環境湿度:50%
(条件5)Xenon照射下×300h、照度:2.40W/cm2(420nm)、環境温度:50℃、環境湿度:30%
(評価基準)
○:透過率変化量が2.0%以下である。
△:透過率変化量が2.0%を超え、3.0%以下である。
×:透過率変化量が3.0%を超える。
【0174】
<糊汚れ、寸法精度、端部外観>
実施例、比較例で得られた粘着剤層付き偏光フィルムを、スーパーカッターにて、25mm×30mmのサイズに切断した。その後、端面加工機(メガロテクニカ(株)製)により、切断片の側面の四面を0.05mm切削し、サンプルとした。糊汚れについてはサンプルの側面を目視で確認し、糊汚れの有無を確認した。寸法精度、端部外観については光学顕微鏡で観測し、以下の評価基準で評価した。
(寸法精度)
○:±0.3mm以内
×:±0.3mmを超える
(端部外観)
○:手で触った際に端部のベトツキが無い場合
×:手で触った際に端部のベトツキがある場合
【0175】
<カール測定>
50mm×40mmに切断したサンプルを平坦な机の上にサンプルを置き、スキマゲージによりカールを測定した。
(カール)
○:±1.0mm以内
△:±1.0mmより大きく、±2.0mm以内
×:±2.0mmより大きい
【0176】
【0177】
【0178】
表1中、P-1は、偏光フィルム(P-1)を、P-2は、偏光フィルム(P-2)を、a-1は、製造例1で得られたアクリル系粘着剤組成物(a-1)を、a-2は、製造例2で得られたアクリル系粘着剤組成物(a-2)を、紫外線吸収剤1は、2,4-ビス-[{4-(4-エチルヘキシルオキシ)-4-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名:Tinosorb S、BASFジャパン社製)を、紫外線吸収剤2は、Solvent Yellow163(KP Plast Yellow MK、紀和化学工業(株)製)を、B-1は、製造例3で得られた画像表示部側粘着剤層(B-1)を、B-2は、製造例4で得られた画像表示部側粘着剤層(B-2)を、示す。
【符号の説明】
【0179】
1 粘着剤層付き偏光フィルム
2a 視認側粘着剤層
2b 画像表示部側粘着剤層
3a 視認側透明保護フィルム
3b 画像表示部側透明保護フィルム
4 偏光子
5 偏光フィルム
6 カバーガラス又はカバープラスチック
7 液晶表示装置(LCD)又は有機EL表示装置(OLED)
8a、8b 粘着剤層
9 センサー層