(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/48 20060101AFI20241030BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241030BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241030BHJP
【FI】
H01L23/48 S
H01L25/04 C
H01L23/48 G
(21)【出願番号】P 2021148893
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】川城 史義
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-198388(JP,A)
【文献】特開2014-179541(JP,A)
【文献】特開2001-156219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と該第1面とは反対側にある第2面とを有し、前記第1面内に第1電極を有する半導体チップと、
前記第1電極に対向し該第1電極よりも外形の大きい第1対向面を有する第1金属部材であって、前記第1対向面から前記第1電極へ突出し前記第1電極と電気的に接続する第1突起部を有する第1金属部材と、
前記半導体チップおよび前記第1金属部材を被覆する絶縁部材と、
前記第1金属部材と前記半導体チップとの間に設けられた第1導電部材とを備え、
前記第1導電部材は、前記第1突起部に対向し前記第1突起部に接する第1面と、前記第1面から突出する第2突起部とを含み、
前記第2突起部の側面は、前記第1突起部の側面に接する、半導体装置。
【請求項2】
前記第1金属部材と前記絶縁部材との間に設けられた第1被膜をさらに備える
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1金属部材と前記第1電極との間、並びに、前記第1導電部材と前記第1電極との間に設けられ、前記第1電極を被覆する第2導電部材をさらに備える
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1電極と対向する前記
第1突起部の
対向面の面積は、前記第1電極の面積よりも小さい、請求項1から
請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1金属部材は、前記絶縁部材から外部へ突出している第1接続端子を含む、請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1接続端子は、前記第1導電部材よりも融点が低い第5導電部材により被覆されている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1金属部材は、前記第1突起部から前記第1接続端子まで同一材料で一体形成されている、
請求項5または請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体チップの前記第1面内に設けられ前記第1電極とは電気的に分離された制御電極と、
前記制御電極に接続されたボンディングワイヤとをさらに備えている、請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のDC-DC(Direct Current-Direct Current)コンバータ等に用いられるパワー半導体装置は、DFN(Dual Flat Package)、SOP(Small Outline Package)等のパッケージで構成されていることがある。これらのパワー半導体装置のパッケージにおいて、オン抵抗(Ron)を低減させるために、電極とリードフレームとの接続には、金属ワイヤに代わってコネクタまたはクリップと呼ばれる金属部材が用いられる。
しかし、半導体チップのサイズが変更された場合に、コネクタ等の金属部材のサイズも変更する必要がある。サイズの異なる複数種類の金属部材を使い分けることは、半導体製造工程における生産性の悪化の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4260263号公報(米国特許第6774466号公報)
【文献】特開2009-206343号公報
【文献】特開平11-026672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々なサイズの半導体チップの電極に接続可能な突起部を備える半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による半導体装置は、第1面と該第1面とは反対側にある第2面とを有し、第1面内に第1電極を有する半導体チップを備える。第1金属部材は、第1電極に対向し該第1電極よりも外形の大きい第1対向面を有し、第1対向面から第1電極へ突出し第1電極と電気的に接続する第1突起部を有する。絶縁部材は、半導体チップおよび第1金属部材を被覆する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】第1実施形態に係る半導体装置の構成例を示す断面図。
【
図1B】第1実施形態に係る半導体装置の構成例を示す平面図。
【
図2】第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
【
図3】
図2に続く、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
【
図4】
図3に続く、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
【
図5】
図4に続く、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
【
図6】
図5に続く、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
【
図7】
図6に続く、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
【
図8】
図7に続く、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図。
【
図9】第2実施形態に係る半導体装置の構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1Aは、半導体装置100の構成例を示す断面図である。
図1Bは、半導体装置100の構成例を示す平面図である。尚、樹脂層91の図示については省略している。
図1Aは、
図1BにおけるA-A線による半導体装置100の断面を示す。半導体装置100は、半導体チップ10と、下部めっき層20と、上部めっき層22と、下部焼結材30と、上部焼結材32と、リードフレーム40と、コネクタ50と、ソルダレジスト61、62と、密着性向上膜81と、外部めっき層82と、樹脂層91とを備えている。半導体装置100は、例えば、車載用のDC-DCコンバータ等に用いられ、比較的大きな電流をスイッチングするパワー半導体装置でよい。尚、本明細書では、リードフレーム40、半導体チップ10およびコネクタ50の積層方向をZ方向とし、Z方向に略直交する一方向をX方向とし、X方向およびZ方向に略直交する方向をY方向とする。
【0009】
半導体チップ10は、第1電極E1を有する第1面F1と、該第1面F1とは反対側であって、第2電極E2を有する第2面F2とを備える。第1電極E1は、上部めっき層22によって被覆されている。第2電極E2は、下部めっき層20によって被覆されている。半導体チップ10は、半導体素子として、第1電極E1と第2電極E2との間に大きな電流を流すことができる。半導体チップ10は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはHEMT(High Electron Mobility Transistor)等のパワー半導体素子でよい。また、半導体チップ10は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。半導体チップ10の基板には、例えば、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、または、窒化ガリウム(GaN)が用いられる。 尚、半導体装置100がIGBTまたはHEMT等のパワー半導体素子である場合、第1電極E1はエミッタ電極に対応し、第2電極はコレクタ電極に対応する。半導体装置100がMOSFETである場合、第1電極E1はソース電極に対応し、第2電極はドレイン電極に対応する。
【0010】
下部めっき層20は、第2面F2の下に設けられ、第2電極E2を被覆し、第2電極E2に電気的に接続される。下部めっき層20は、第4導電部材の例である。下部めっき層20には、例えば、銅、ニッケル、銀、金、または、パラジウム(Pd)のいずれかが用いられる。下部めっき層20が、例えば、銅で形成されている場合、下部めっき層20の厚みは、例えば、約5μmでよいが、ウェハ反り抑制のため、望ましくは上部めっき層22と同程度の厚みがよい。
【0011】
下部焼結材30は、下部めっき層20の下に設けられている。下部焼結材30は、第3導電部材の例である。下部焼結材30には、例えば、銅、銀、鉛、スズ銅化合物、スズ銀化合物、または、スズニッケル化合物のいずれかが用いられる。下部焼結材30は、供給当初においてペースト状またはシート状の材料であり、熱処理することによってリードフレーム40と第2電極E2との間で焼結される。
【0012】
リードフレーム40は、下部焼結材30の下に設けられている。リードフレーム40は、第2金属部材の例である。リードフレーム40には、例えば、銅等の導電性材料が用いられる。このように、下部めっき層20および下部焼結材30が第2電極E2とリードフレーム40との間に設けられ、第2電極E2とリードフレーム40とを電気的に接続する。
【0013】
上部めっき層22は、第1面F1上に設けられ、第1電極E1を被覆し、第1電極E1に電気的に接続される。上部めっき層22は、第2導電部材の例である。上部めっき層22には、例えば、銅、ニッケル、銀、金、または、パラジウムのいずれかを含むものが用いられる。上部めっき層22が、例えば、銅で形成されている場合、上部めっき層22の厚みは、例えば、約5μmでよい。しかし、半導体チップ10の基板の反りを抑制するために、上部めっき層22の厚みは、望ましくは下部めっき層20と同程度の厚み(例えば、約20μm)でよい。上部めっき層22と下部めっき層20とは、半導体チップ10の支持体としての機能も有する。このため、上部めっき層22と下部めっき層20とが同程度の厚みを持つことで、半導体装置100がバランスを保った構成をとなる。第1電極E1は、第1面F1上においてソルダレジスト61、62によって囲まれており、ソルダレジスト61、62で囲まれた領域内が上部めっき層22で被覆されている。従って、上部めっき層22は、X-Y平面において第1電極E1とほぼ同程度の面積S2を有する。
【0014】
上部焼結材32は、上部めっき層22上に設けられている。上部焼結材32は、第1導電部材の例である。上部焼結材32には、例えば、銅、銀、鉛、スズ銅化合物、スズ銀化合物、または、スズニッケル化合物のいずれかが用いられる。上部焼結材32は、供給当初においてペースト状またはシート状の材料であり、熱処理することによってコネクタ50と第1電極E1との間で焼結される。
【0015】
コネクタ50は、上部焼結材32上に設けられている。コネクタ50は、第1金属部材の例である。コネクタ50には、例えば、銅等の導電性材料が用いられる。このように、上部めっき層22および上部焼結材32は、コネクタ50と第1電極E1との間に設けられ、第1電極E1とコネクタ50とを電気的に接続する。
【0016】
樹脂層91は、半導体チップ10、コネクタ50、下部めっき層20、下部焼結材30、上部めっき層22、上部焼結材32、および、リードフレーム40を封止し、これらを樹脂層91の外部から保護する。樹脂層91は、絶縁部材の例である。樹脂層91には、例えば、樹脂が用いられる。
【0017】
密着性向上膜81は、コネクタ50と樹脂層91との間、および、リードフレーム40と樹脂層91との間に設けられる。密着性向上膜81は、樹脂層91とコネクタ50(例えば、銅)との間の密着性能を向上させ、コネクタ50と樹脂層91との間の剥離を抑制する。密着性向上膜81は、第1被膜の例である。コネクタ50が、例えば、銅で構成されている場合、密着性向上膜81は、例えば、アゾール系化合物であり、窒素、炭素、酸素、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、およびシリコンのうち2種類以上を成分として含む材料で構成される。密着性向上膜81の膜厚は、例えば、10nm~100nmである。
【0018】
外部めっき層82は、第1外部端子53、および、リードフレーム40の底面を被覆する。外部めっき層82は、第5導電部材の例である。例えば、スズ(Sn)が用いられる。外部めっき層82は、半導体装置100の基板等への実装を容易にする。なお、半導体装置100の実装時の熱処理おいて、上部焼結材32および下部焼結材30を溶融することなく外部めっき層82を溶融させるために、外部めっき層82の融点は、上部焼結材32および下部焼結材30よりも低いことが好ましい。
【0019】
次に、コネクタ50について、さらに詳細に説明する。
コネクタ50は、平坦部51と、突起部52と、第1外部端子53とを有する。平坦部51、突起部52、および、第1外部端子53は、いずれも同一材料で構成されており、一体形成されている。コネクタ50には、例えば、銅等の導電性材料が用いられる。
【0020】
平坦部51は、X-Y面に広がる平坦な部材であり、X-Y面において、第1電極E1よりも大きな外形を有する。平坦部51は、第1電極E1に対向する第1対向面F51を有し、第1対向面F51の面積は、該第1電極E1の表面の面積よりも大きい。X-Y面において第1対向面F51は面積S3を有し、第1電極E1の表面は面積S2を有するものとする。
【0021】
突起部52は、平坦部51の第1対向面F51から第1電極E1に向かって突出しており、第1電極E1と電気的に接続する。突起部52は、第1電極E1に対向する第2対向面F52を有する。第2対向面F52は、X-Y面において面積S1を有するものとする。突起部52は、第2対向面F52において上部めっき層22と直接接触していてもよい。あるいは、突起部52と上部めっき層22との間には上部焼結材32が介在していてもよい。
【0022】
第1外部端子53は、平坦部51と一体であり、平坦部51に連続して樹脂層91の外部へ突出している。第1外部端子53は、平坦部51から-Z方向へ屈曲して、平坦部51の高さからリードフレーム40の高さまで延伸する。
【0023】
平坦部51、突起部52および第1外部端子53は、シームレスに連続して一体形成され、それらの間に接合部を有しない。これにより、半導体装置100の実装時に、第1外部端子53に応力が印加されても、第1外部端子53が平坦部51から切断されない。また、第1外部端子53の周囲には、樹脂層91が設けられていない。この場合、第1外部端子53が自由に撓むことができるので、第1外部端子53が応力を吸収しやすくなる。
【0024】
次に、突起部52の第2対向面F52の面積S1、第1電極E1の表面の面積S2および第1対向面F51の面積S3について説明する。突起部52の第2対向面F52は、第1電極E1または上部めっき層22に接続するために設けられている。従って、突起部52の第2対向面F52は、Z方向から見た平面視において、第1電極E1の範囲内にあり、面積S1は、面積S2以下である。
【0025】
また、第1対向面F51は、放熱性を向上させるために、半導体チップ10よりも大きいことが好ましい。従って、第1対向面F51の面積S3は、第1電極E1の表面の面積S2よりも大きい。即ち、面積S1~S3は、S1、S2、S3の順番で大きくなっている(S1≦S2<S3)。
【0026】
ここで、突起部52の第2対向面F52の面積S1が第1電極E1の面積S2より小さいと、コネクタ50と第1電極E1との間の接触抵抗が高くなることが懸念される。しかし、本実施形態では、突起部52以外の平坦部51と第1電極E1(または上部めっき層22)との間には、導電性の上部焼結材32が設けられている。これにより、第1電極E1とコネクタ50とは低抵抗で電気的に接続され得る。
【0027】
また、第1電極E1の面積S2は、突起部52の第2対向面F52の面積S1以上である限りにおいて任意でよい。パワー半導体装置では、第1電極E1の面積S2は半導体チップ10自体の大きさに依存する。従って、半導体チップ10の大きさは、第1電極E1の面積S2が突起部52の第2対向面F52の面積S1以上である限りにおいて任意である。即ち、コネクタ50は、面積S1以上の第1電極E1を有する様々な半導体チップに対して適用することができる。これにより、コネクタ50の汎用性を高め、半導体チップ10のサイズが変更された場合においても、同一のコネクタ50を採用することを可能にする。これは、半導体装置100の製造効率向上させ、コスト削減につながる。
【0028】
次に、半導体装置100の平面形状について説明する。
図1Bに示すように、第1面F1の上方(Z方向)から見た平面視において、半導体チップ10は、第1電極E1から電気的に分離されたゲート電極110をさらに備えている。ゲート電極110は、制御電極の例である。ゲート電極110に第2外部端子120を接続するために、コネクタ50の平坦部51は、Z方向から見た平面視において、略矩形の一角を切り欠いた形状を有する。必要に応じて、コネクタ50の突起部52も、平面視において、略矩形の一角を切り欠いた形状を有してもよい。これにより、コネクタ50に隣接して、第2外部端子120をゲート電極110上に配置することができる。第2外部端子120は、コネクタ50と電気的に分離されている。第2外部端子120は、例えば、金(Au)、銅、または、アルミニウム(Al)等の導電性材料を用いた金属端子でもよく、あるいは、同様の導電性材料を用いたボンディングワイヤでもよい。
【0029】
本実施形態によれば、コネクタ50の平坦部51が第2対向面F52に突起部52を有する。突起部52の第2対向面F52の面積S1は、平坦部51の第1対向面F51の面積S3よりも小さく、様々なサイズの半導体チップ10の第1電極E1に接続可能となっている。これにより、コネクタ50の汎用性が高く、様々なサイズの半導体チップ10に対して同一のコネクタ50を採用することができる。これは、半導体装置100の製造効率向上させ、コスト削減につながる。
【0030】
また、突起部52の第2対向面F52の面積S1が第1電極E1の面積S2よりも小さいが、突起部52以外の平坦部51と第1電極E1との間には、上部焼結材32が設けられている。これにより、第1電極E1とコネクタ50とは比較的低抵抗で電気的に接続され得る。上部焼結材32は、突起部52以外の第1対向面F51と第1電極E1の表面との間を補充し、突起部52の第2対向面F52の面積S1と第1電極E1の面積S2との差に起因する接触抵抗の上昇を抑制することができる。
【0031】
また、第1対向面F51の面積S3は、第1電極E1の表面の面積S2よりも大きい。これにより、第1対向面F51の放熱性を向上させることができる。
【0032】
上部めっき層22、下部めっき層20、上部焼結材32、下部焼結材30、リードフレーム40、および、コネクタ50が銅で構成されている場合、密着性向上膜81が銅と樹脂層91との間の密着性を向上させる。このため、これらの構成と樹脂層91との剥離等が抑制され、半導体装置100の信頼性が向上する。
【0033】
また、コネクタ50の平坦部51の面積S3は、第1電極E1の面積2よりも大きく、さらには、半導体チップ10の第1面F1の面積よりも大きい。これにより、半導体装置100のうちコネクタ50の材料(例えば、銅)の比率が大きくなり、物性(線膨張係数、比熱、電気伝導率等)が、例えば、銅の物性に近づく。半導体装置100を実装する実装基板が、コネクタ50と同じ材料(例えば、銅)からなる配線を有する場合、実装基板は多層の配線(例えば、銅配線)からなり、銅の物性に近い。したがって、半導体装置100と実装基板との物性的な親和性が向上し、半導体装置100の長期実装の信頼性が向上する。
【0034】
また、リードフレーム40の上面とコネクタ50の対向面F50との間の距離は、例えば、60μm以上である。これにより、約600Vの印加電圧に対して、耐圧を保証することができる。
【0035】
次に、半導体装置100の製造方法について説明する。
【0036】
図2~
図8は、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を示す断面図である。まず、
図2に示すように、第1電極(第1面F1)E1と第2電極(第2面F2)E2とを有する半導体チップ10を準備する。半導体チップ10は、例えば、シリコン、炭化ケイ素、または、窒化ガリウムを含む半導体基板と、半導体基板上に形成された半導体素子とを含む。第1電極E1上には、上部めっき層22が形成されている。第2電極E2には、下部めっき層20が形成されている。
【0037】
次に、
図3に示すように、半導体チップ10の下部めっき層20の下に、下部焼結材30を形成する。下部焼結材30は、ペースト状の銅を下部めっき層20に塗布して形成してもよく、シート状の銅を下部めっき層20に貼付して形成してもよい。
【0038】
なお、下部焼結材30は、リードフレーム40上に塗布または貼付してもよい。リードフレーム40上に下部焼結材30を塗布または貼付し、半導体チップ10の下部めっき層20を下部焼結材30に接着してもよい。尚、リードフレーム40には、予め表面全体に密着性向上膜81を形成しておいてもよい。これにより、製造工程が短縮され得る。密着性向上膜81は、例えば、アゾール系化合物である。
【0039】
次に、
図4に示すように、下部焼結材30を介して半導体チップ10をリードフレーム40上に接着する。半導体チップ10とリードフレーム40との接着は、不活性雰囲気において、加圧および加熱して行ってもよく、加圧は省略し加熱して行ってもよい。加熱温度は、例えば、200℃~350℃でよい。これにより、下部焼結材30は焼結されて硬化し、リードフレーム40上に半導体チップ10を固定する。
【0040】
次に、
図4に示すように、ペースト状の上部焼結材32を上部めっき層22に塗布する。あるいは、シート状の上部焼結材32を上部めっき層22に貼付する。
【0041】
次に、
図5に示すように、上部焼結材32上に、コネクタ50を接着させる。この場合、突起部52は、第2対向面F52が上部めっき層22に対向するように接着される。これにより、コネクタ50と第1電極E1とが電気的に接続される。コネクタ50と上部焼結材32の接着は、不活性雰囲気において、加圧および加熱して行ってもよく、加圧を省略し加熱して行ってもよい。加熱する温度は、例えば、200℃~350℃である。これにより、上部焼結材32は、溶融して、突起部52以外の第1対向面F51と上部めっき層22表面との間を充填する。これにより、コネクタ50と第1電極E1とがさらに十分に電気的に接続される。なお、コネクタ50には、予め表面全体に密着性向上膜81を形成しておいてもよい。これにより、製造工程が短縮され得る。
【0042】
次に、
図6に示すように、リードフレーム40、コネクタ50、上部焼結材32、下部焼結材30、上部めっき層22、および、下部めっき層20の露出面に密着性向上膜81を形成する。本実施形態では、リードフレーム40、コネクタ50、上部焼結材32、下部焼結材30、上部めっき層22、および、下部めっき層20は、例えば、いずれも銅で形成されている。このため、それぞれの露出面に選択的に密着性向上膜81を形成することができる。なお、密着性向上膜81は、例えば、アゾール系化合物でよい。
【0043】
次に、
図7に示すように、半導体チップ10、コネクタ50、下部めっき層20、下部焼結材30、上部めっき層22、上部焼結材32、および、リードフレーム40を被覆するように樹脂層91を形成する。このとき、リードフレーム40、コネクタ50、上部焼結材32、下部焼結材30、上部めっき層22、および、下部めっき層20の表面は密着性向上膜81で被覆されている。このため、樹脂層91はこれらの各構成に十分に密着することができる。
【0044】
次に、
図8に示すように、第1外部端子53、および、リードフレーム40の表面を被覆している密着性向上膜81をリン酸溶液等で除去する。なお、リードフレーム40に関しては、樹脂層91に被覆されていない裏面部分の密着性向上膜81を除去する。
【0045】
次に、
図1Aに示すように、密着性向上膜81を除去することによって露出された第1外部端子53、および、リードフレーム40の表面を外部めっき層82で被覆する。なお、外部めっき層82、例えば、スズである。スズの融点は、銅およびアゾール系化合物よりも低い。このため、外部めっき層82を加熱形成した場合でも、密着性向上膜81、上部焼結材32、および、下部焼結材30は溶解しない。従って、樹脂層91内の構成は、維持され得る。
【0046】
上記の工程により、
図1Aに示す半導体装置100が得られる。
【0047】
以上のように、第1実施形態によれば、コネクタ50は突起部52を有する。これにより、半導体チップ10の面積が変化した場合でも共通のコネクタ50を用いて電気的な接続が可能となり、半導体装置100の製造効率を向上させることができる。なお、コネクタ50、リードフレーム40、下部めっき層20、下部焼結材30、上部めっき層22、および、上部焼結材32が、例えば、銅で形成されている場合、密着性向上膜81により被覆される。これにより、樹脂層91との密着性が向上し、コネクタ50やリードフレーム40等の樹脂層91内の構成と樹脂層91との間の剥離が抑制され得る。その結果、半導体装置100の信頼性が向上する。また、第1外部端子53は樹脂層91の外部に突出しており、所謂、ガルウイング形状を有する。このため、第1外部端子53は、基板実装による応力を吸収することでき、コネクタ50と樹脂層91との間の剥離が抑制され得る。その結果、さらに半導体装置100の信頼性が向上する。また、コネクタ50の平坦部51の面積S3を半導体チップ10の面積S2よりも大きくすることによって、半導体装置100内におけるコネクタ50の材料の比率が多くなる。これにより、コネクタ50と実装基板の配線とが同じ材料(例えば、銅)で構成されている場合に、半導体装置100と実装基板との物性的な親和性を向上させることができる。これにより、半導体装置100の長期実装の信頼性が向上する。
【0048】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る半導体装置100の構成例を示す断面図である。第2実施形態では、第1外部端子53が、平坦部51からZ方向に対して傾斜方向に屈曲しており、平坦部51の高さからリードフレーム40の高さまで延伸する。第1外部端子53の傾斜部分は、樹脂層91で被覆されており、コンタクト部分を含む一部分のみが樹脂層91から露出されている。樹脂層91で被覆された第1外部端子53と樹脂層91との間には、密着性向上膜81が設けられている。樹脂層91から露出された第1外部端子53の一部分は、外部めっき層82で被覆されている。
【0049】
下部めっき層21および上部めっき層23には、例えば、銅、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金、または、パラジウム(Pd)のいずれかが用いられればよい。下部焼結材31および上部焼結材33には、融点が300℃以上の材料が用いられる。下部焼結材31および上部焼結材33には、例えば、銀、鉛(Pb)、スズ銅化合物(CuSn)、スズ銀化合物(AgSn)、または、スズニッケル(SnNi)化合物が用いられる。
【0050】
第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様で良い。したがって、第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第2実施形態の製造方法は、第1実施形態の製造方法と同様である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
100 半導体装置、10 半導体チップ、20 下部めっき層、22 上部めっき層、30 下部焼結材、32 上部焼結材、40 リードフレーム、50 コネクタ、51 平坦部、52 突起部、53 第1外部端子、61 ソルダレジスト、81 密着性向上膜、81a 側面、91 樹脂層、110 ゲート電極、120 第2外部端子、F51 第1対向面、F52 第2対向面、S1~S3 面積