(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】物理的相互作用に基づく自律作業装置の制御
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241030BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G05D1/43
A47L9/28 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021187915
(22)【出願日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-17
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503113186
【氏名又は名称】ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランツィウス,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】アイネッケ,ニルス
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-181434(JP,A)
【文献】特開2019-136255(JP,A)
【文献】特開2005-211360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律作業装置であって、
前記自律作業装置と物理的エンティティとの物理的相互作用に基づき、センサ信号(7.1、7.2)を生成するように構成された少なくとも1つのセンサ(2、8)と、
作業タスクを実施するように構成された少なくとも1つのアクチュエータ(5、6)と、
前記アクチュエータ(5、6)を制御するための制御信号(9.1、9.2)を生成し、前記センサ信号(7.1、7.2)を評価し、前記評価されたセンサ信号(7.1、7.2)に基づき前記自律作業装置と人との物理的相互作用のパターンを特定し、前記物理的相互作用の前記特定されたパターンに基づき、前記制御信号(9.1、9.2)を生成するように構成されたコントローラ(3)と
を備え、
前記コントローラ(3)は、解釈された物理的相互作用に基づく
作業パラメータについてのデータを含む前記制御信号(9.1、9.2)を生成するように構成されており、
前記作業パラメータが、前記自律作業装置により前記作業タスクが実施される作業区域
を定義するデータと、前記作業区域における前記自律作業装置の走行軌道についてのデータを含み、
前記作業区域を定義するデータが、特定された前記物理的相互作用のパターンから解釈した、前記作業区域内において所定の期間にわたり前記自律作業装置の侵入を禁止する所定形状の禁止区域を定義する情報を含み、
前記走行軌道についての前記データが、前記走行軌道を修正すること、特定の位置へ前記自律作業装置を向けること、及び新規の走行軌道を示すこと、のうちの少なくとも1つについての情報を含んでいる自律作業装置。
【請求項2】
前記自律作業装置がプログラミングモードまたは学習モードとは異なる作業動作モードで動作している間に、前記少なくとも1つのセンサ(2、8)が、前記センサ信号(7.1、7.2)を生成するように構成されている、請求項1に記載の自律作業装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサ(2、8)が、少なくとも1つの方向における加速度を測定する前記センサ信号(7.1、7.2)を取得するように構成されているか、または
前記少なくとも1つのセンサが、慣性計測装置IMU(2)を含んでいるか、または
前記少なくとも1つのセンサが、自律作業装置の可動のまたは力感応式のカバーを含んでいるか、または
前記少なくとも1つのセンサが、自律作業装置に配置されたタッチ感応式の区域を含んでいるか、または
前記少なくとも1つのセンサが、ノックジェスチャを検出するように構成された聴覚センサ(8)を含んでいるか、または
前記少なくとも1つのセンサが、外部からアクセスできるように前記自律作業装置に配置された部材を含んでいる、請求項1または2に記載の自律作業装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの物理的相互作用が、
前記自律作業装置を一方向へ押すこと、
前記自律作業装置のハウジングに対する一方向へのタッチジェスチャ、
前記自律作業装置の前記ハウジングに対する少なくとも一方向へのタッチジェスチャ、
前記自律作業装置の前記ハウジングに対するノックパターン、
前記自律作業装置を持ち上げること、および
前記自律作業装置を揺すること
のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項1から3のいずれか一項に記載の自律作業装置。
【請求項5】
前記制御信号(9.1、9.2)
が更に前記自律作業装置の動作モードについてのデータ
を含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の自律作業装置。
【請求項6】
前記作業区域を定義する前記データが、前記作業区域を修正すること、
又は新規の作業区域を示すこと、についての情報を
更に含んでいる、請求項
1に記載の自律作業装置。
【請求項7】
前記作業パラメータは、前記自律作業装置の作業動作モードについての前記データを含み、
前記動作モードについての前記データが、作業モード、休止モード、待機モード、事前定義された特定の作業タスク、事前定義された特定の挙動、監視モード、ユーザの後を追う自律作業装置の追跡モード、位置および/または状況のデータをメモリに記憶するための記憶モード、ロック解除プロセス、プログラミングモード、および訓練モードのうちの少なくとも1つについての情報を含んでいる、請求項
1に記載の自律作業装置。
【請求項8】
前記コントローラ(3)が、前記評価されたセンサ信号に基づき、
前記作業パラメータについての前記データを選択または修正するように構成されている、請求項
1に記載の自律作業装置。
【請求項9】
前記コントローラ(3)が、第1のセンサ(2)によって生成された、前記評価されたセンサ信号(7.1)に基づき、前記自律作業装置と人との物理的相互作用が生じたと特定する場合には、前記コントローラ(3)は、第2のセンサ(8)を介して取得した、さらなる評価されたセンサ信号(7.2)に基づき、
前記作業パラメータの前記データを選択または修正するように構成されている、請求項
1に記載の自律作業装置。
【請求項10】
前記自律作業装置が、出力インターフェース(4)を備えており、
前記コントローラ(3)が、フィードバック信号を生成し、前記出力インターフェース
(4)を介して前記フィードバック信号を前記人に対して出力するように構成されており、前記フィードバック信号が、前記物理的相互作用に基づき生成された前記評価されたセンサ信号を通信する、請求項1から9のいずれか一項に記載の自律作業装置。
【請求項11】
前記アクチュエータが、
少なくとも1つの作業ツール(6)、特に、清掃ツール、吸引清掃ツール、アイロンがけツール、草刈りツール、およびメンテナンスツールのうちの少なくとも1つ、ならびに
前記自律作業装置の駆動装置(5)
のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項1から10のいずれか一項に記載の自律作業装置。
【請求項12】
前記コントローラ(3)は、前記物理的相互作用の前記特定されたパターンに含まれる物理的相互作用の第1のパターンを、第1の物理的相互作用に基づき生成された、前記評価されたセンサ信号(7.1、7.2)に基づいて報酬として特定し、前記物理的相互作用の前記特定されたパターンに含まれる物理的相互作用の第2のパターンを、第2の物理的相互作用に基づき生成された、前記評価されたセンサ信号(7.1、7.2)に基づいて罰として特定するように構成されており、
前記コントローラ(3)は、前記特定された第1のパターンおよび第2のパターンに基づき、訓練アルゴリズムを使用することにより、前記自律作業装置の将来の挙動を適応させるように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の自律作業装置。
【請求項13】
少なくとも1つのセンサ(2、8)、作業タスクを実施するための少なくとも1つのアクチュエータ(5、6)、およびコントローラ(3)を備えている自律作業装置(1)を制御するための方法であって、
前記自律作業装置(1)と物理的エンティティとの物理的相互作用に基づき、前記少なくとも1つのセンサ(2、8)によりセンサ信号(7.1、7.2)を生成するステップ(S1)と、
前記センサ信号(7.1、7.2)を前記コントローラ(3)によって評価するステップ(S2)と、
前記評価されたセンサ信号(7.1、7.2)に基づき、前記コントローラ(3)により制御信号(9.1、9.2)を生成するステップ(S4)と、
前記生成された制御信号(9.1、9.2)に基づき、前記アクチュエータ(5、6)により前記作業タスクを実施するステップ(S6)と、
前記評価されたセンサ信号(7.1、7.2)に基づく前記自律作業装置(1)と人との物理的相互作用のパターンが生じたかどうかを、前記コントローラ(3)によって特定するステップ(S3)と、
前記自律作業装置(1)と人との前記物理的相互作用の前記パターンが生じたと特定されたことに応答して、前記評価されたセンサ信号(7.1、7.2)に基づき前記制御信号(9.1、9.2)を生成するステップ(S4)とを含み、
前記方法は、前記コントローラ(3)により、解釈された物理的相互作用に基づく
作業パラメータについてのデータを含む前記制御信号(9.1、9.2)を生成し、
前記作業パラメータが、前記自律作業装置により前記作業タスクが実施される作業区域
を定義するデータと、前記作業区域における前記自律作業装置の走行軌道についてのデータを含み、
前記作業区域を定義するデータが、特定された前記物理的相互作用のパターンから解釈した、前記作業区域内において所定の期間にわたり前記自律作業装置の侵入を禁止する所定形状の禁止区域を定義する情報を含み、
前記走行軌道についての前記データが、前記走行軌道を修正すること、特定の位置へ前記自律作業装置を向けること、及び新規の走行軌道を示すこと、のうちの少なくとも1つについての情報を含む、方法。
【請求項14】
プログラムであって、コンピュータまたはデジタル信号プロセッサ上で前記プログラムが実行されたときに、請求項13に記載のステップを実行するためのプログラムコード手段を有する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律作業装置の分野に属し、特に、人との物理的相互作用に基づく、清掃ロボットまたは自律芝刈り機などの自律作業装置の制御の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自律作業装置とは、産業オートメーションの用途を除き、人間または機器にとって有用なタスクを実施する自律的に動作する装置のことである。自律作業装置は、人間が存在しており自律作業装置に接触する可能性がある作業区域において、自らのタスクを実施する。自律作業装置は、サービスロボットと呼ばれることもある。
【0003】
自律作業装置は、一般的なサービスロボット工学の分野において普及してきている。自律作業装置、たとえば吸引清掃機ロボット、窓清掃ロボット、または自律芝刈り機は、通常、最初の導入段階において作業区域および作業パラメータを割り当てることによって構成され、導入段階が無事に終了した後に、割り当てられた作業区域において人からほぼ自律し、独立して作業する。
【0004】
しかし、自律作業装置および人が、作業区域内で互いに近くで動作するという状況が生じることがある。たとえば、自律芝刈り機は、庭の芝生区域でその芝刈りタスクを実施し、一方で同時に、庭師が、庭の特定の区域、たとえば花壇の手入れをしていることがある。庭師が花壇に集中している間に、自律芝刈り機が繰り返し何度も庭師の背中にぶつかることによって、庭師はイライラしたり、さらには邪魔された気分になったりする。さらに、自律芝刈り機が、作業区域をランダムに通ってその芝刈りタスクを実施し、自らの走行軌道に沿って移動するが、その間に芝生区域のうちの特定のスポットを放置していることを、庭師は認識する場合がある。しかし、庭師は、自律芝刈り機を再プログラミングするためのアプリにアクセスできないか、そのアプリを実行しているスマートフォンまたはタブレットコンピュータがすぐ手元にない場合がある。また庭師は、花壇の土で汚れた指で、または雨が降る中で、タブレットコンピュータを操作して、自律芝刈り機の作業区域または走行経路を再構成するのをためらう可能性もある。
【0005】
これらのことを考慮し、放置された芝生のスポットを芝刈りするため、または花壇周りの区域を作業区域から除外して、人間の庭師を継続的に妨害することを回避するために、自律芝刈り機の走行軌道を再構成するようにその自律芝刈り機と相互作用および通信するための手段を、改善する必要性が存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様による自律作業装置、第2の態様による自律作業装置を制御するための方法、および第3の態様による自律作業装置を制御するためのプログラムが、これらの問題に対処する。
【0007】
第1の態様による自律作業装置は、自律作業装置と物理的エンティティとの物理的相互作用に基づき、センサ信号を生成するように構成された少なくとも1つのセンサを備えている。自律作業装置はさらに、作業タスクを実施するように構成された少なくとも1つのアクチュエータと、アクチュエータを制御するための制御信号を生成するように構成されたコントローラとを備えている。コントローラは、センサ信号を評価し、評価されたセンサ信号に基づき自律作業装置と人との物理的相互作用のパターンを特定し、物理的相互作用の特定されたパターンに基づき、制御信号を生成するように構成されている。
【0008】
第2の態様による自律作業装置を制御するための方法は、少なくとも1つのセンサ、作業タスクを実施するための少なくとも1つのアクチュエータ、およびコントローラを備えている自律作業装置について言及する。この方法は、自律作業装置と物理的エンティティとの物理的相互作用に基づき、少なくとも1つのセンサによりセンサ信号を生成するステップを含んでいる。その後のステップにおいて、コントローラが、センサ信号を評価する。コントローラは、評価されたセンサ信号に基づき制御信号を生成する。アクチュエータが、生成された制御信号に基づき作業タスクを実施する。この方法は、自律作業装置と人との物理的相互作用のパターンが生じたかどうかを、評価されたセンサ信号に基づき特定するステップを含んでいる。自律作業装置と人との物理的相互作用のパターンが生じたとコントローラが特定した場合には、コントローラは、評価されたセンサ信号に基づき、制御信号を生成するステップを実施する。次いでアクチュエータが、生成された制御信号に基づき作業タスクを実施する。
【0009】
自律作業装置を制御するための、非一時的なコンピュータ読取り可能媒体は、コンピュータまたはデジタルシグナルプロセッサ上でプログラムが実行されたときに、第2の態様による方法のステップを実行するためのプログラムコードを有する第3の態様によるプログラムを記憶している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】自律作業装置の機能的構造を示す概要図である。
【
図2】実施形態による自律作業装置を制御するための方法を示す簡易フローチャートである。
【
図3】押しジェスチャを使用する実施形態による自律作業装置の制御を示す平面図である。
【
図4】実施形態による自律作業装置の動作状態を示す簡易状態グラフである。
【
図5】衝突事象、および物理的相互作用としての押しジェスチャのセンサ信号の例を示す図である。
【
図6】衝突事象および押しジェスチャを示すセンサ信号、ならびに軽い押しジェスチャを検出するための区別フィルタの例を示す図である。
【
図7】異なるノック時間パラメータを有するノックジェスチャのセンサ信号を表す2つの例を示す図である。
【
図8】実施形態による自律作業装置の第1の応用場面を示す図である。
【
図9】実施形態による自律作業装置の第2の応用場面を示す図である。
【
図10】実施形態による自律作業装置の第3の応用場面を示す図である。
【
図11】実施形態による自律作業装置の第4の応用場面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図では、同じ参照符号は、同じまたは対応した要素を指す。異なる図において同じ参照符号の要素を繰り返し議論することは、簡潔さを向上させるために適宜省かれる。
【0012】
第1の態様による自律作業装置は、作業関連の情報をユーザから自律作業装置に転送可能にする相互作用方法を実装することにより、自然なヒューマンマシンインターフェース(HMI)を適宜提供する。この情報の転送は、現在の多数の自律作業装置にすでに存在している限られた品質の低コストセンサを使用することによって、実装される。したがって、自律作業装置は、人が歩き回っているのと同じ作業区域内で動作することができ、その間に、人は、自律作業装置との物理的相互作用に基づく直感的なジェスチャを使用して、一方の自律作業装置と他方の人との間で共同作業の重要な側面をネゴシエートすることができる。このネゴシエーションは、人からの直接的かつ直感的な入力を自律作業装置が理解することによって可能になり、これにより人は、簡単なコマンドまたは案内を自律作業装置に提供することが可能になる。先行技術の自律作業装置は、そのようなコマンドおよび案内を無視し、たとえば低速で人にぶつかるか、または自律作業装置の外側に配置された操作ボタンに依存しており、この操作ボタンは、たとえば操作するのが困難なことがあり、多くの場合、自律作業装置を完全に待機モードまたは停止モードに切り替えてしまうことがある。先行技術の自律作業装置は、スマートフォンのアプリを使用する機能しか提供せず、このアプリは、結果的に人のスマートフォンまたはタブレットコンピュータにインストールされることが必要であり、開いて操作するのに時間がかかる。音声インターフェースは、直感的な動作に適したHMIを提供するが、騒々しい環境、たとえば屋外の場面において発声コマンドの認識品質の低さが難点であり、特に、低コストのロボット装置の限られた処理リソースが原因で、マイクロフォン特性の品質が低く、認識速度が劣っていることが難点である。
【0013】
物理的相互作用は、人によって実施される物理的なジェスチャであり、このジェスチャは、たとえば少なくとも片方の手もしくは足、または一本の指を用いた、人と自律作業装置との物理的な接触を含む。ジェスチャとは、人間(人)と自律作業装置との意図的な物理的接触のことを指し、特徴として、自律作業装置に情報を通知するという意図的な目標のために人間によって開始される。
【0014】
自律作業装置の大きな利点は、物理的相互作用およびジェスチャを使用してコマンドを取得することである。物理的ジェスチャは、自律芝刈り機と相互作用する人により、頭を下げることなしに、場合によっては手を使うことさえなしに、提供されることが可能である。両手が塞がっていてもよいし、障害により人が手を両方とも使えなくてもよい。
【0015】
第1の態様による自律作業装置は、たとえば軽く押すジェスチャにより、自律作業装置の走行軌道を変更するための直感的なプロセスを実施可能にし、このプロセスは、自律作業装置が動作していることを前提として、自律作業装置の固有の機能について知識のない人、たとえば客人または庭師/作業者にとってさえ容易に達成できるものである。そのような軽く押すジェスチャは、覚えるのも容易であり、特徴的に背の低い自律作業装置に合わせてかがむ必要がなく、またはそのロボットを操作するのに両手を空けておく必要がない。物理的相互作用は、自律作業装置との物理的相互作用を実施するために、人の足を必要としてもよい。
【0016】
有利な実施形態による自律作業装置は、自律作業装置がプログラミングモードまたは学習モードとは異なるモードで動作している間に、センサ信号を生成するように構成された少なくとも1つのセンサを備えている。したがって自律作業装置は、その通常の作業タスクを実施中に、コマンドまたは案内を受信することができる。したがって、プログラミングモードまたは学習モードに入った後の、時間のかかる面倒な再プログラミングは必ずしも必要でない。自律作業装置に精通していない、または自律作業装置をプログラムする許可を得ていない、庭師助手または作業者などの人でも、作業区域内で自立作業装置と共同作業することができる。
【0017】
自律作業装置は、センサ信号を生成するように構成された少なくとも1つのセンサを含んでいてよく、このセンサは、少なくとも1つの空間方向における加速度を測定する。
【0018】
付加的または代替的に、少なくとも1つのセンサは、慣性計測装置(IMU)を含んでいる。加速度センサは、現在のほとんどの自律作業装置に存在しており、最大3軸の加速度を測定するIMUの形態が一般的である。さらに、IMUは、最大3軸を中心とした角速度を測定することができる。既存の自律作業装置に比べて、本発明を実装するために追加のハードウェアおよび対応するコストは必要ない。
【0019】
付加的または代替的に、少なくとも1つのセンサは、自律作業装置の可動または力感応式のカバーを含んでいる。
【0020】
付加的または代替的に、少なくとも1つのセンサは、自律作業装置に配置されたタッチ感応式の区域を含んでいる。
【0021】
自律作業装置のハウジングの少なくとも一部分に加えられた力を測定するセンサは、作業区域内で自律作業装置と物体とに関連する衝突事象を検出するために、多くの場合すでに存在している。既存の自律作業装置に比べて、本発明を実装するために追加のハードウェアおよび対応するコストは必要ない。
【0022】
付加的または代替的に、少なくとも1つのセンサは、ノックジェスチャを検出するように構成された聴覚センサ、特に1つまたは複数のマイクロフォンを含んでいる。
【0023】
機械が品質の限られた低コストのセンサしか備えていない場合でも、ノックパターンは、空間的パターン、時間的パターン、またはそれらの組合せのいずれであっても、複数の異なる情報を、機械による受信および復号が容易な方法で符号化できる可能性を提供する。
【0024】
付加的または代替的に、少なくとも1つのセンサは、外部からアクセスできるように自律作業装置に配置された部材を含んでいる。自律装置の上側ハウジングから突出した棒などの部材は、自律作業装置と物理的に相互作用するための、容易に認識でき操作が簡単なセンサを提供することができる。
【0025】
実施形態によれば、自律作業装置は、自律作業装置を一方向に向かって押すこと(軽く押すジェスチャ、なでるジェスチャ)を含め、少なくとも1つの物理的相互作用を有している。押すこと、軽く押すこと、またはなでることは、人から自律装置へ指向的情報を伝えるための物理的相互作用を含む直感的なジェスチャを表しており、同時にこれらのジェスチャは、好ましくは複数の加速度軸において加速度を測定するすでに存在しているセンサに加えて複雑なセンサセットを必要とすることなしに、自律装置において容易に検出および評価できる。
【0026】
付加的または代替的に、少なくとも1つの物理的相互作用は、ハウジングに対する、自律作業装置を一方向に向かって押すタッチジェスチャを含んでいる。ハウジングを感応区域にとして使用することにより、特にほこり、湿気、および両手が塞がった人を含む屋外環境において、堅牢で、人にとって容易にアクセス可能なHMIが提供される。
【0027】
付加的または代替的に、少なくとも1つの物理的相互作用は、自律作業装置のハウジングに対する、少なくとも一方向へのタッチジェスチャ(ペットジェスチャ)を含んでいる。
【0028】
付加的または代替的に、少なくとも1つの物理的相互作用は、自律作業装置のハウジングに対するノックパターンを含んでいる。ノックパターン、たとえば空間依存的および/または時間依存的なパターンは、複数の異なる情報を、有利な送信および復号の特徴とともに符号化することができる。
【0029】
付加的または代替的に、少なくとも1つの物理的相互作用は、自律作業装置の持ち上げを含んでいる。自律作業装置を全体的または部分的に持ち上げることは、特に簡単に、かつ高い信頼性で特定され、したがって自律作業装置の正常な動作中に生じる通常の加速と区別される。
【0030】
付加的または代替的に、少なくとも1つの物理的相互作用は、自律作業装置を揺することを含んでいる。
【0031】
好ましくは、自律作業装置は、解釈された物理的相互作用に基づく少なくとも1つの作業パラメータについてのデータを含む制御信号を生成するように構成されたコントローラを含んでいてよい。少なくとも1つの作業パラメータは、自律作業装置により作業タスクが実施される作業区域を定義するデータを含んでいてよい。
【0032】
付加的または代替的に、少なくとも1つの作業パラメータは、作業区域における自律作業装置の走行軌道についてのデータを含んでいてよい。
【0033】
付加的または代替的に、少なくとも1つの作業パラメータは、自律作業装置の動作モードについてのデータを含んでいてよい。
【0034】
したがって人は、自律作業装置を再プログラミングするための面倒なプログラミングモードに入る必要なしに、自律作業装置によって現在実施されている実際の作業タスクに関する特定の情報を、物理的相互作用を使用して提供することができる。
【0035】
有利な実施形態によれば、作業区域を定義するデータは、作業区域を修正すること、新規の作業区域を示すこと、および作業区域内の禁止区域を定義することのうちの少なくとも1つについての情報を含んでいる。
【0036】
自律作業装置の現在の作業区域を再定義することにより、人間と機械との間で起こりうる干渉を回避するための有利な機能が同じ区域で作業装置と共同作業している人に与えられ、人と自律作業装置との両方のタスク遂行能力が最適化される。
【0037】
走行軌道についてのデータは、走行軌道を修正(方向変更)すること、特定の位置へ自律装置を向けること、新規の走行軌道を示すこと、および現在の走行軌道から方向転換することのうちの少なくとも1つについての情報を含んでいてよい。したがって、人は、物理的相互作用を使用して、作業区域内の放置された区域、または特定の手入れを必要とする区域に作業装置を向けることができる。
【0038】
動作モードについてのデータは、作業モード、休止モード、待機モード、事前定義された特定の作業タスク、事前定義された特定の挙動、監視モード、ユーザの後を追う自律作業装置の追跡モード、位置および/または状況のデータをメモリに記憶するための記憶モード、ロック解除プロセス、プログラミングモード、および訓練モードのうちの少なくとも1つについての情報を含んでいてよい。この実施形態により、自律作業装置に関連する特定のHMIについての深い知識なしに、異なる動作モードを特に直感的に切り替えるための選択肢が、人に与えられる。
【0039】
コントローラは、評価されたセンサ信号に基づき、少なくとも1つの作業パラメータについてのデータを選択または修正するように構成されてよい。人と自律作業装置との簡単な物理的相互作用により、少なくとも1つの作業パラメータを修正または調整して、作業環境内での自律作業装置と人との共同作業を改善することができる。
【0040】
コントローラが、第1のセンサによって生成された、評価されたセンサ信号に基づき、自律作業装置と人との物理的相互作用が生じたと特定する場合、有利な実施形態の自律作業装置のコントローラは、第2のセンサを介して取得した、さらなる評価されたセンサ信号に基づき、少なくとも1つの作業パラメータを選択または修正するように構成されている。したがって、人は、第1のセンサによって検出された直感的な物理的相互作用を使用して、自律作業装置の第2のセンサを介してより多くの情報を自律作業装置に伝達するより複雑な通信を開始することができる。
【0041】
さらなる実施形態による自律作業装置は、出力インターフェースを備えている。コントローラは、フィードバック信号を生成し、このフィードバック信号を、出力インターフェースを介して人に対して出力するように構成されている。フィードバック信号は、物理的相互作用に基づき生成された、評価されたセンサ信号を人に通信する。したがって、自律作業装置は、人から物理的相互作用を介して伝達されたメッセージを認識することができ、物理的相互作用を訴える人によって提供されたこのメッセージまたは案内の、自律作業装置の解釈を提供することができる。人は、物理的相互作用を繰り返すか、適切に適応することにより、メッセージの誤解釈を適宜修正してよい。自律作業装置に対する情報の通信が成功する確率は、人と自律作業装置との間でそれほど直感的でないHMIに逆戻りすることなしに、フィードバック信号の可能性によって著しく増大する。
【0042】
好ましい実施形態による自律作業装置のアクチュエータは、少なくとも1つの作業ツールおよび/または駆動装置を含んでいる。自律作業装置の作業ツールは、特に特に、清掃ツール、吸引清掃ツール、アイロンがけツール、草刈りツール、メンテナンスツールとすることができる。
【0043】
さらなる有利な実施形態では、自律作業装置は、第1の物理的相互作用に基づき生成された、評価されたセンサ信号に基づく物理的相互作用の第1のパターンを報酬として特定し、第2の物理的相互作用に基づき生成された、評価されたセンサ信号に基づく物理的相互作用の第2のパターンを、罰として特定するように構成されたコントローラを含んでいる。次いでコントローラは、特定された第1のパターンおよび第2のパターンに基づき、特に訓練アルゴリズムを使用することにより、自律作業装置の将来の挙動を適応させることができる。
【0044】
自律作業装置を訓練するために物理的相互作用およびジェスチャを使用することは、ペットの訓練と同様に、一部のジェスチャを報酬ジェスチャ、別のジェスチャを罰ジェスチャとみなすことができるので、有利である。したがって、自律作業装置は、物理的相互作用を用いて自律作業装置と通信する人の好みに、その将来の挙動を適応させることを学習することができる。たとえば、自律作業装置は、一日または一週間のうちの特定の時間に庭の特定の部分に入ってはいけないことを認識することができる。そうするために、自律作業装置は、認識した物理的ジェスチャとともに場所および時間の情報を、後にそれらから学習できるように記憶してよい。たとえば、基地局において待機しているときに、自律作業装置は、記憶された情報および関連する物理的ジェスチャに基づき、計算負荷の大きい学習アルゴリズムを処理してよい。自律作業装置は、割り当てられた作業タスクを現在実施する義務はなく、そのバッテリを充電することだけが必要であり得るので、処理をこのように分配することは有利である。また、学習には様々なレベルがあってよい。学習の第1のレベルは、1回(または単発)の学習であってよく、たとえば自律作業装置を損傷するおそれのある池またはプールなどの水区域の近くに行かないように、自律作業装置に教示するためのものであってよい。別の学習レベルは、たとえば夜間動作を禁止するための永久的なルールの教示を含む。さらに別の学習レベルは、自律作業装置がその動作の根拠とするルールを、人の頭の中にある暗黙のルールに絶えず適応させる漸進的な強化学習に関する。
【0045】
図1は、自律作業装置の機能的構造の概要を示している。自律作業装置は、自律芝刈り機1とすることができるが、自律芝刈り機1に限定されない。代替的に、自律作業装置は、たとえば自律吸引清掃装置、自律床清掃装置、または自律窓清掃装置とすることができる。自律作業装置または自律作業ロボット(ロボット装置)は、作業環境において異なる作業タスクを実施してよい。通常、自律作業装置は、自律作業装置に割り当てられた作業区域において作業タスクを実行する。作業区域は、自律作業装置の環境において、仮想のまたは物理的な境界により、非作業区域から分離され、定義されていてよい。
【0046】
自律作業装置は、その作業タスクを、アクチュエータを使用して実施し、アクチュエータは、コントローラ3によって生成されてアクチュエータに出力される制御信号9.1、9.2を使用して、自律作業装置のコントローラ3によって制御される。
【0047】
コントローラ3(電子制御ユニット、略してECU)は、通常、少なくとも1つのプロセッサ、特にマイクロプロセッサ、または信号プロセッサを含んでおり、プログラムファイルなどのデータ、および自律作業装置の動作中に生成されたデータを、メモリ10に記憶してよい。メモリ10は、読取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュドライブ、およびディスクドライブなどの異なる種類のメモリを含んでいてよく、自律作業装置から離れて配置された遠隔記憶手段も含んでいてよい。
【0048】
遠隔記憶手段は、遠隔サーバへの通信信号11を使用して、通信リンク、好ましくは無線通信リンクを介してアクセス可能であってよい。遠隔記憶手段は、特にログデータファイルなどのデータを記憶してよい。
【0049】
自律作業装置は、ディスプレイまたはLEDなどの発光手段を介して視覚的に、またはスピーカを介して聴覚的に、自律作業装置の環境内の人に情報を出力するための出力インターフェース4を含んでいてよい。コントローラ3は、出力するための情報を生成し、出力インターフェース4による情報の出力を制御するための出力制御信号7を生成する。
【0050】
自律作業装置は、異なる種類のアクチュエータを備えていてよい。アクチュエータは、作業ツール6を含んでいてよく、この作業ツール6を、コントローラ3が第1の制御信号9.1で制御する。自律芝刈り機1の場合、作業ツール6は、芝刈り組立体を含んでいてよい。作業ツール6は、作業タスクを実行するアクチュエータ構成要素である。
【0051】
自律作業装置のアクチュエータは、駆動装置5を含んでおり、この駆動装置5を、コントローラ3が第2の制御信号9.2で制御する。駆動装置5は、1つまたは複数のモータ、通常は電気モータと、駆動列と、ホイールおよび/またはトラックと、移動中に自律作業装置の先頭方向を変更するための操縦組立体とを含んでいてよい。
【0052】
駆動装置5は、アクチュエータ構成要素であり、このアクチュエータ構成要素は、自律作業装置が作業区域を動き回り、作業区域全体にわたって作業タスクを実施できるようにする。
【0053】
コントローラ3は、走行タスクを実施し、特にセンサ信号7.1、7.2に基づき走行軌道(走行経路)に沿って自律作業装置を走行させるための第2の制御信号9.2を生成する。
図1に示してある自律作業装置は、2つのセンサを含んでおり、これら2つのセンサは、自律作業装置の環境の物理的パラメータの測定に基づき、センサ信号7.1、7.2を生成する。
【0054】
慣性計測装置2(IMU)は、3つの基本的な加速度センサを含んでいてよく、3つの独立した空間軸における自律作業装置の加速度を特定し、測定された加速度値を第1のセンサ信号7.1でコントローラ3に提供する。IMU2は、一般的なセンサであり、自律作業装置が作業区域を通ってその走行軌道に沿って走行できるようにするために、ほとんどの自律作業装置に装備されている。IMU2は、線形および/または回転方向の加速度センサとして使用されてよく、通常は1つまたは複数の加速度計およびジャイロスコープを含んでいる。
【0055】
さらに、センサは、聴覚センサ8(マイクロフォン)を含んでいてよく、この聴覚センサ8は、聴覚入力を第2のセンサ信号7.2でコントローラ3に提供する。センサは、1つまたは複数のカメラセンサ、全地球的航法衛星システム受信機(GNSS受信機)、作業区域内での物体との衝突を検出するための専用のバンプセンサ、レーダセンサ、または環境内で物理的物体を検出するための聴覚センサなどの他のセンサを含んでいてよい。センサは、センサ信号7.1、7.2を生成し、生成したセンサ信号7.1、7.2をコントローラ3に提供する。
【0056】
自律作業装置と物理的物体または人との物理的相互作用を検知するために、自律作業装置は、好ましくは、異なる目的のためにすでに自律作業装置に組み込まれている簡単で一般的なセンサを使用する。これにより複雑さ、したがってコストが低減され、自律作業装置のコントローラ3における付加的な信号処理のみが必要とされる。
【0057】
IMU2は加速度を測定し、自律作業装置にかかる、加速を生じさせる力についての情報を提供する。IMU2によって測定された強度および方向は、一方の衝突事象と他方の押しジェスチャなどの物理的相互作用とを区別するための入力として、センサ信号7.1を用いて適切な処理を実行しているコントローラ3によって使用されることが可能である。また、センサ信号7.1は、揺すりジェスチャまたは持ち上げジェスチャを識別するために使用される適切な入力を、コントローラ3に提供する。
【0058】
揺すりジェスチャは、人によって引き起こされる自律作業装置の揺れを含む。持ち上げジェスチャとは、人が自律作業装置をつかみ、それを地面から持ち上げることである。
【0059】
既知の自律芝刈り機1は、自律芝刈り機1の外側カバーと自律芝刈り機1の内側本体との間の相対的な動きを検出する別個の衝突センサ、たとえばバンプセンサまたはホールセンサを備えている。これは、衝突事象と押しジェスチャとの区別をより明確にするために使用されることが可能である。たとえば、外側カバーが磁気部材を備え、内側本体が、磁気部材に対して適切にホールセンサを配置している場合、ホールセンサによって提供されるセンサ信号は、衝突事象および押しジェスチャについての対応する情報を、加速度センサ、たとえばIMU2からのセンサ信号として提供してよい。
【0060】
聴覚センサ8は、自律作業装置の分野、特に自律芝刈り機1の分野ではまだ一般的ではない。入力手段として音声認識を使用する傾向が強まっているので、この状況は将来変わる可能性がある。音声コマンドは、言語固有であり、聴覚生データを解釈するにはより高い処理能力を必要とし、それほど直感的でない場合が多く、自律作業装置の環境、特に自律芝刈り機1に関する場合には、おそらく騒々しい環境において、通常の会話と区別される必要がある。聴覚センサ8は、ノックジェスチャおよびなでるジェスチャを、そのセンサ信号7.2から識別することができる。ノックジェスチャおよびなでるジェスチャは、明確な音パターンを生じさせ、この音パターンを、コントローラ3は、適切な処理を実行することにより、音声または一般的な環境の騒音から区別することができる。
【0061】
実施形態において、自律芝刈り機1は、特定のジェスチャを物理的相互作用として、堅牢にかつ低コストで検出するために、聴覚センサ8を配置してよく、たとえば自律芝刈り機1の外側カバーに組み込んでよい。
【0062】
代替的または付加的に、自律芝刈り機1は、たとえばその外側カバーまたは本体に、タッチ感応区域をセンサとして備えていてよい。タッチ感応区域は、タッチインターフェースの構成要素であってよく、無線電話およびタブレットコンピュータなどのスマートデバイスの関連インターフェースに慣れた人にとって、自然で直感的な通信手段である。タッチインターフェースは、そのユーザによって構成することさえ可能な複数のコマンドの入力を可能にする。静電容量式タッチ感応区域は、環境との通常の物理的相互作用によって、たとえば庭の環境において低く垂れ下がった小枝によって、意図せずジェスチャがトリガされることを低減することから、有利である。
【0063】
代替的または付加的に、コントローラ3は、物理的ジェスチャに基づく人との物理的相互作用を、少なくとも1つの付加的なセンサ入力、たとえば音認識、音声認識と組み合わせ、カメラセンサを使用して指示ジェスチャを視覚的に検出することにより、人間とロボットとの堅牢な相互作用を実装するように構成される。
【0064】
第1のジェスチャは、自律芝刈り機1のその走行軌道に沿った動きを、一時的に停止することができる。これは結果的に、動きに起因する騒音を抑制することにより騒音が低減され、その後に実施される音声認識の結果を改善することになる。
【0065】
代替的または付加的に、コントローラ3は、視覚的、聴覚的、および/または他のセンサ入力を提供するセンサ信号7.1、7.2を、物理的ジェスチャを検出してからしか処理しない。この手法は結果的に、コントローラ3の計算負荷を低減することになる。自律芝刈り機1の電力消費を低減することができ、これは、再充電可能なバッテリで動作する自律作業装置にとって特に有利である。さらに、誤検出のコマンド認識、たとえば騒音を音声コマンドとして誤解釈する可能性を回避することができる。
【0066】
図2は、実施形態による自律作業装置を制御するための方法の簡易フローチャートを示している。
【0067】
自律作業芝刈り機1を制御するための方法は、ステップS1を含んでおり、このステップS1では、少なくとも1つのセンサが、自律芝刈り機1と物理的エンティティとの物理的相互作用に基づき、センサ信号7.1を生成する。特に、自律芝刈り機1のIMU2は、ステップS1において、自律芝刈り機1の時間依存性の加速度測定値を含むセンサ信号7.1を生成してよい。
【0068】
センサは、生成したセンサ信号7.1をコントローラ3に提供する。
【0069】
ステップS2において、コントローラ3は、取得したセンサ信号7.1を評価する。ステップS3において、コントローラ3は、自律芝刈り機1と人との物理的相互作用が生じたかどうかを特定する。センサ信号7.1を評価することにより、コントローラ3が、人との物理的相互作用が検出されていないと特定した場合には、コントローラ3は、センサ信号7.1を生成するステップS1に戻る。
【0070】
ステップS3において、コントローラ3は、センサ信号7.1を評価する。センサ信号7.1を評価することは、センサ信号7.1を解釈することを含んでよい。センサ信号7.1を評価することは、所定の種類の物理的ジェスチャ、たとえば押しジェスチャを特定することを含んでよい。センサ信号7.1を評価および解釈することは、センサ信号7.1を評価し、評価に基づきセンサ信号7.1から方向ベクトルを計算することをさらに含んでよい。コントローラは、たとえば特定された押しジェスチャが自律芝刈り機を押す空間方向を示す方向ベクトルを、IMU2によって提供されたセンサ信号7.1から計算してよい。センサ信号7.1を解釈することは、物理的ジェスチャを、自律芝刈り機1の特定の制御動作に関連付けることを含んでよい。たとえば、特定された押しジェスチャは、自律芝刈り機1が割り当てられた自身のタスクを作業区域内で修正された走行軌道に沿って実施し続けるという動作に関連付けられてよい。修正された走行軌道は、計算された方向ベクトルによって示される方向に向いている。
【0071】
ステップS3において、コントローラ3が、取得したセンサ信号7.1に基づき、自律芝刈り機1と人との物理的相互作用が生じたと特定した場合には、コントローラはステップS4に進む。
【0072】
ステップS4において、コントローラ3は、評価されたセンサ信号7.1に基づき制御信号9.1、9.2を生成することにより進む。一例では、計算された方向ベクトルによって示された修正された走行軌道に沿って自律芝刈り機1が割り当てられた自身のタスクを作業区域内で実施し続けるという自律芝刈り機1の動作に関連付けられた押しジェスチャとして、コントローラ3は、センサ信号7.1を解釈した。次いで生成された制御信号9.2は、計算された方向ベクトルによって示された方向に向かって自律芝刈り機1のコースを変更するための、駆動装置5に対する制御データを含むことになる。作業ツール6に対して生成された制御信号9.1、9.2は、芝を刈るというこれまでと同じ作業タスクを、新規の走行軌道に沿って実施することを、自律芝刈り機1がこれまでと同じく継続することを通信するデータを含んでいてよい。
【0073】
生成された制御信号は、解釈されたセンサ信号7.1に基づき、したがって物理的相互作用により人Uによって通信された通りに、自律作業装置がその挙動を適応させることにつながる特定の動作を実施するための、アクチュエータに対する情報を含んでいる。
【0074】
コントローラ3は、生成した制御信号9.1、9.2を、ステップS5において、アクチュエータに対して出力する。この例では、コントローラ3は、計算された方向ベクトルによって示された修正済み走行軌道のための新規の操作角度を含む生成された制御信号9.2を、駆動装置5に対して出力する。
【0075】
アクチュエータは、生成された制御信号9.1、9.2に基づき、ステップS6において、作業タスクを実施する。この例において、駆動装置5は、制御信号9.1によって示された修正済みの方向に向けて自律芝刈り機を方向転換し、新規の走行軌道に沿って進む。
【0076】
図3は、押しジェスチャを用いた実施形態による、自律作業装置の制御の平面図を示している。
【0077】
図示してある例の自律作業装置は、自律芝刈り機1であり、この自律芝刈り機1は、計画された走行軌道12に沿って移動しながらその芝刈りタスクを実施する。自律芝刈り機が、計画された走行軌道12上の点13にあるとき、人Uは、自律芝刈り機1との物理的相互作用を、押しジェスチャの形態で実施する。人Uは、矢印「押す」によって示された方向に、自律芝刈り機1を押すことにより、押しジェスチャを実施する。
【0078】
コントローラ3は、押しジェスチャを示すものとしてセンサ信号7.1を解釈し、この押しジェスチャは、修正された走行軌道15を示し、それとともに、押しジェスチャは、修正された走行軌道15の目的とする方向を示す。コントローラは、センサ信号7.1を評価し、修正された走行軌道15の目的とする方向を示す方向ベクトル14を計算する。次いでコントローラ3は、制御信号9.2を生成し、生成した制御信号9.2を、自律芝刈り機1の駆動装置5に出力する。駆動装置5は、制御信号9.2に基づき、自律芝刈り機1のコースを変更する。自律芝刈り機1は、目的とする方向を示す方向ベクトル14の方向を指す修正された走行軌道15に沿ってコースが変更された後に、その芝刈りタスクの実施を進める。
【0079】
生成された制御信号9.1、9.2は、解釈されたセンサ信号に基づき、したがって物理的相互作用により人Uによって通信された通りに、自律作業装置がその挙動を適応させることにつながる特定の動作を実施するための、アクチュエータに対する情報を含んでいる。
【0080】
たとえば、自律作業装置は、物理的相互作用に基づき作業区域を適応させることができる。典型的な応用事例において、自律作業装置は、割り当てられた自身の作業区域としての特定の区域において動作し、この区域は、人間、動物、または物体によって一時的に、かつ独占的に使用されることを目的としており、これが自律作業装置によって妨げられる、たとえば裏庭でのガーデンパーティ、または床でのボードゲームの区域である。たとえば先に事前定義された作業区域、または自律作業装置の現在の位置を中心として特定の半径は、限られた期間にわたって、または新規のコマンドまで常に、作業区域としないか、再び作業区域とするということを、自律作業装置に通信するために、物理的ジェスチャが使用されてよい。
【0081】
物理的ジェスチャは、起動コマンドおよびロック解除コマンドを伝達してよい。自律作業装置は、盗難防止として秘匿PINを使用してよく、この秘匿PINは、自律作業装置と承認された人、たとえば自律作業装置の所有者との間で共有される秘匿事項としての、特定の物理的ジェスチャまたは一連の物理的ジェスチャ、たとえばノックパターンによって入れ替えられてよい。
【0082】
物理的ジェスチャは、自律作業装置を作業区域の方に向かわせることができる。自律作業装置は、自身の作業区域内でランダムな走行によって動作することが多く、その結果、長時間にわたって、小さい区域が手入れされないまま、たとえば清掃されないか、芝刈りされないまま残ることになり得る。そのような残りの区域は、ユーザにとって苛立ちを生じさせる場合がある。ユーザは、ここで物理的相互作用としての物理的ジェスチャを使用して、自律作業装置をそのような残りの区域の方向に向かわせることができる。そのような方向は、たとえば、押しジェスチャの力方向によって、付加的な指示ジェスチャによって、音声コマンドによって、またはある位置もしくは区域まで一時的に人の後について行くよう命令された自律作業装置によって、符号化されることが可能である。
【0083】
物理的ジェスチャは、自律作業装置に対して、停止位置に行くこと、または充電位置、たとえば基地局に行くこと、または異なる離れた作業区域に行くことを示してよい。
【0084】
物理的ジェスチャは、自律作業装置に対して、1時間などの所定の時間にわたって、休止すること、または一時的に動作を止めることを示してよい。
【0085】
物理的ジェスチャは、自律作業装置に対して、現在のその動作モードを変更することを示してよい。自律作業装置は、その挙動を、事前定義された挙動のセットのうちの1つに変更するよう命令されてよく、たとえば、境界のカットについては作業区域の周囲の境界をたどる芝刈りもしくは清掃に変更するよう、またはらせん状カットに切り替えるよう、または監視モードに入るように命令されてよい。
【0086】
物理的ジェスチャは、自律作業装置に対して、その作業タスクの実施、たとえばカット/芝刈りの動作を一時的に停止し、その代わりに相互作用的な遊び挙動を開始することを示してよい。
【0087】
物理的ジェスチャは、自律作業装置に対して、方向転換することを示してよい。自律作業装置は、現在のその走行軌道を継続しないよう命令される。押しジェスチャの場合、好ましくは自律作業装置が、押す力の方向から離れるように方向転換するよう、押しジェスチャを解釈してよい。特定の実装形態は、押しジェスチャに応答して、即座に方向転換する自律作業装置のメモリなしの直接的な動作を誘発する。
【0088】
代替的に、自律作業装置は、押しジェスチャを学習信号として解釈して、自動的に方向転換することにより将来の同様の状況を回避してよい。そのような状況は、自律作業装置のハウジングに対する押しジェスチャの現在の位置に基づいてもよいし、または別のセンサ信号入力、たとえば傾斜角度、または物体検出の視覚的入力に基づいてもよい。
【0089】
自律作業装置は、メモリ10の記憶機能を使用して何かを記憶するためのコマンドとして、押しジェスチャを解釈してよい。たとえば、自律作業装置の対応する挙動を後に訓練するために、コントローラ3は、センサ信号7.1、7.2によって取得した現在の位置またはパラメータを記憶して、特定の状況を定義してもよい。後の訓練は、自律作業装置の特定の挙動を教示または強化するために、人がスマートデバイスを使用し、記憶された1つまたは複数の特定の状況を参照することを含んでよい。
【0090】
自律作業装置は、人Uの後について作業区域内または作業区域外の新規の位置まで行くためのコマンドとして、押しジェスチャを解釈してよい。
【0091】
押しジェスチャは、自律作業装置に対して、現在のその走行軌道31を押しジェスチャの方向に変更するよう指向的コマンドを提供する自然で直感的な手段である。人Uは、押しジェスチャを手によって行ってもよいし、別の手足、たとえば何かを運んでいるときには自身の足を使用して、押しジェスチャを行ってもよい。ほとんどの従来の自律作業装置は、ソナーセンサまたはカメラなどの、衝突回避用の遠隔センサを使用していないので、押しジェスチャは、より頻繁に生じることがある自律作業装置による衝突事象から区別される必要がある。押しジェスチャは、3つの側面において衝突事象とは異なっている。第1に、衝突事象は、多くの場合、自律作業装置の強力な加速につながるが、軽い押しは、かなり弱く加速する。第2に、衝突事象は、通常、ピークのある加速を生じさせるが、軽い押しジェスチャは平滑なプロファイルを有しており、これについては
図5に関連して検討する。第3に、衝突事象は、特に現在の移動方向の反対方向への加速につながるが、押しジェスチャは、横方向に、したがって現在の移動方向から逸れる斜め方向に向けられる可能性がより高い。押しジェスチャの特定の変形形態は、自律作業装置により早く動くことを示すために、自律作業装置の本体の背後から、自律作業装置の前方を指す方向に押すことである。
【0092】
さらに、たまたま誤って解釈された(誤分類された)衝突事象が、自律作業装置の将来の動作に悪影響を及ぼさないように、押しジェスチャを使用することが好ましい。たとえば、「停止および方向転換」を意味する正面の押しジェスチャは、誤分類された、静止した物体との衝突事象にも有用であるが、「停止および次のコマンドを待機」はそれほど有用ではない。
【0093】
図4は、実施形態による自律作業装置の動作状態の簡易状態グラフを示している。
【0094】
図示してある動作状態は、作業動作モードの自律作業装置の動作状態である。特に、示してある動作状態は、自律作業装置の駆動装置5の状態を指している。
【0095】
作業動作モードの動作状態は、移動状態16において真っ直ぐな経路に沿って移動している自律作業装置の第1の状態を含んでいる。
【0096】
第2の状態は、ランダムな方向転換状態19である。ランダムな方向転換状態19では、自律作業装置は、現在のその先頭方向を、ランダムに選択された角度によって、新規の先頭方向に変更する。
【0097】
自律作業装置は、衝突検出事象17が検出された場合に、移動状態16からランダムな方向転換状態19に遷移してよい。自律作業装置を移動状態16からランダムな方向転換状態19に遷移させるさらなる遷移事象は、割り当てられたその作業区域の境界に自律作業装置が到達したとコントローラ3が特定した場合(境界検出事象18)に生じる。
【0098】
自律作業装置は、指向的方向転換状態21である第3の状態により、作業動作モードにおける移動状態16およびランダムな方向転換状態19を補う。コントローラ3が、押しジェスチャを物理的相互作用として特定した場合(押しジェスチャ検出事象20)に、自律作業装置は、移動状態16から指向的方向転換状態21に遷移する。指向的方向転換状態21では、コントローラ3は、特定された押しジェスチャの押し方向を示す指向的ベクトルを計算してよく、現在の走行軌道を、押しジェスチャの計算された方向ベクトルが指し示す空間方向に向かう新規の走行軌道に修正する。修正された方向で新規の走行軌道への方向転換を実施したら、コントローラ3は、自律作業装置の遷移を制御して、第1の状態、すなわち移動状態16にする。
【0099】
図4の検討した状態および状態遷移は、単なる例であり、自律作業装置の作業動作状態において、複数のさらなる状態および状態遷移が定義されてよいことが明らかである。
【0100】
図4は、先行技術に比べて自律作業装置の特徴が向上していることを示している。先行技術では、特定の訓練モードまたはプログラミングモードで、自律作業装置に教示することが必要である。訓練モードは、ときに「ティーチイン」と呼ばれる方法を使用してよい。自律作業装置向けの一般的に知られている「ティーチイン」プロセスは、訓練を受けているときの自律作業装置との物理的相互作用を使用する。しかし、ティーチインでは、自律作業装置を訓練モードに設定する必要がある。訓練モードでは、自律作業装置は走行軌道の全体を訓練してから、動作モードに切り替わり、作業タスクの実施を開始する。それとは対照的に、
図2の自律作業装置を制御するための方法は、現在の挙動を適応させるか、変更するために、作業タスクを実行中の作業動作モードの間に、自律作業装置を用いた直感的な相互作用機能を提供する。自律作業装置の挙動の変更は、一時的に限定されることが可能であり、たとえば自律作業装置に、現在のその先頭方向から方向転換し、次いでたとえば移動状態16において、標準的な動作を再開することを要求することができる。
【0101】
図5は、衝突事象および押しジェスチャのセンサ信号の基本的な例を提供する。図示してあるセンサ信号は加速度センサ信号であり、横座標に示す時間tにわたる、縦座標軸の加速度信号振幅で示してある。
【0102】
加速度センサ信号曲線22は、衝突事象について特徴的な信号ピークを示している。
【0103】
加速度センサ信号曲線23は、押しジェスチャについて特徴的な信号曲線を示している。
【0104】
加速度センサ信号曲線22と、加速度センサ信号曲線23とを比較すると、信号曲線が異なっていることから、継続的な加速度測定値を提供するセンサによって提供されるセンサ信号を評価することで一方の衝突事象と他方の押しジェスチャとを区別するように、コントローラ3を構成可能であることが明らかになる。加速度センサまたは力センサは、多くの自律作業装置のIMU2の一部を成している。
【0105】
図6は、衝突事象および押しジェスチャを表すセンサ信号、ならびに軽い押しジェスチャを検出するための区別フィルタの例を示している。
【0106】
自律芝刈り機1などの先行技術の自律作業装置は、センサ、たとえばホールセンサ、専用のバンプセンサにより提供されるセンサ信号により、または駆動モータ電流を監視することにより、物理的物体との衝突を検出することができる。ほとんどの自律芝刈り機1は、内蔵式のIMU2を備えている。一方の、自律芝刈り機1と環境内の物理的物体との間の受動的な衝突事象と、他方の、物理的相互作用の形で人によって実行される能動的な押しジェスチャとを区別するために、IMU2は使用されてもよい。
【0107】
衝突事象は、特徴的には非常に突発的事象であり、IMU2の一部を成す、加速力測定値を提供するgセンサによって出力されたセンサ信号曲線24において短いピークを生じさせる。衝突事象とは対照的に、軽い押しジェスチャは、gセンサによって出力されたセンサ信号曲線24において平らな信号上昇、および長い平坦域を生じさせる。
【0108】
図6は、時間tにわたってgセンサによって提供されたセンサ信号曲線24を示している。センサ信号曲線24は、雑音成分を呈しており、この雑音成分は、期間25における唯一の信号成分である。期間26において、センサ信号曲線24は、センサ信号曲線24の短いピークによって特徴付けられた特徴的な衝突事象を示しており、特徴的には、センサ信号曲線24の急峻な上昇および同様に急峻な下降がある。期間27において、センサ信号曲線24は、特徴的な押しジェスチャ事象を示しており、期間26におけるセンサ信号曲線24に比べると、センサ信号曲線24の平らなピーク、特徴的な緩やかな上昇、および同様に緩やかな下降がある。衝突事象を示す期間26におけるセンサ信号曲線24の第1の最大値は、押しジェスチャ事象を示す期間27におけるセンサ信号曲線24の第2の最大値より大きい。
【0109】
したがって、人による軽い押しに対応する押しジェスチャと、物理的物体との突発的な衝突に対応する衝突事象とを、たとえば信号処理を使用することにより、特にセンサ信号曲線24と1つまたは複数の閾値とを比較することにより、センサ信号の力曲線24から区別することができる。
【0110】
IMU2は、3つの空間軸においてgセンサを使用することができる。コントローラ3の実施形態は、信号処理を実装しており、この信号処理は、3つの次元すべてにおける3軸gセンサの読取り値を合計することを含んでいる。代替的に、各軸の読取り値は、コントローラ3において別々に処理されてもよい。
【0111】
コントローラ3は、センサ信号を、好ましくは合計されたセンサ信号を、第1の閾値28と比較する。第1の閾値28は、センサ信号の雑音成分をフィルタリングするために使用される。センサ信号が第1の閾値65を上回っている場合には、コントローラ3は、まだ明らかでない種類の事象が生じたと特定する。
【0112】
図6のセンサ信号曲線24は、期間26において、および期間27において再び第1の閾値28を超えている。したがって、コントローラ3は、示してあるセンサ信号曲線24に基づき、期間26、および期間27においても、明らかでない事象が生じたと特定する。
【0113】
コントローラ3はさらに、センサ信号を第2の閾値29と比較する。第2の閾値29により、軽い事象と突発的事象とを、センサ信号に基づき区別することができる。センサ信号が第2の閾値29を上回っている場合には、コントローラ3は、突発的事象が生じたと特定する。突発的事象を確実に検出するために、センサ信号は、第2の閾値29をいくらかの最短時間にわたって、たとえば500msの最短時間にわたって上回る必要がある。
【0114】
さらに有利な実施形態では、自律芝刈り機1は、衝突事象を検出するため、および衝突事象と押しジェスチャとを区別するための、付加的なセンサによって生成および出力される付加的なセンサ信号を使用する。付加的なセンサは、自律芝刈り機1の駆動装置の電気モータの駆動モータ電流を監視するホールセンサおよび電流センサのうちの少なくとも1つを含んでよい。コントローラ3は、信号処理においてこれらの付加的なセンサ信号を使用して、衝突事象のより安定した検出、および衝突事象と押しジェスチャとの区別を達成することができる。
【0115】
コントローラ3が突発的事象を検出すると、コントローラ3は、検出された突発的事象を衝突事象として処理する。この場合、コントローラ3は、自律芝刈り機1によって実装された標準的な衝突挙動に応じて、自律芝刈り機1を制御することになる。標準的な衝突挙動は、自律芝刈り機1のランダムな方向転換を含んでよい。
【0116】
コントローラ3が軽い押し事象を検出した場合には、コントローラ3は、軽い押し事象を、特定された押しジェスチャとして処理する。コントローラ3は、IMU2の3軸からのセンサ信号の読取り値を合計することにより、押しジェスチャの方向、特に方向ベクトルの計算へ進む。コントローラ3は、特定された押しジェスチャを、計算された方向ベクトルによって定義された空間方向へ駆動するための、物理的相互作用を介して人によって提供された指示として解釈してよい。次いでコントローラ3は、計算された方向ベクトルによって示された方向に自律芝刈り機1を方向転換させるために、適切な制御信号9.2を生成し、この制御信号9.2をアクチュエータ、この場合には駆動装置5に出力する。次いで自律芝刈り機1は、その作業タスクを実施し、かつ計算された方向ベクトルによって示された方向へ向かうその走行軌道を開始する標準的な移動パターンを継続することができる。
【0117】
さらに、所定の時間窓内に所定回数の押しジェスチャ事象が検出された場合には、自律芝刈り機1が作業中の人間を邪魔している可能性があるというように、コントローラ3がこの一連の押しジェスチャ事象を解釈できる処理を、コントローラ3は実装してよい。次いでコントローラ3は、検出された一連の押しジェスチャ事象に応答して、自律芝刈り機1を、基地局に戻るよう、かつそこで一定の期間にわたって休止モードで休止するようトリガすることによって、進んでよい。
【0118】
押しジェスチャ事象の所定回数、所定の時間窓の長さ、基地局における一定の待機時間は、構成可能であってよい。例示的な値は、5分の時間窓内で、所定回数3回の押しジェスチャ事象、および休止時間1時間を含む。
【0119】
図7は、異なるノック時間パターンを有するノックジェスチャのセンサ信号を表す2つの例を示している。
【0120】
ノックジェスチャは、1つまたは複数のマイクロフォン8によって生成および提供されるセンサ信号7.2を使用することにより、コントローラ3によって検出されてよい。それぞれの特定のノックパターンは、特定のセンサ信号曲線30、31によって特徴付けられる。
【0121】
センサ信号曲線30は、第1のノック時間パターンを示している。第1のノック時間パターンは、第1の期間によって分離された2つのグループのノックを含んでおり、それぞれのグループは、第1の期間よりも短い第2の期間によって分離された2つの単発のノックを含んでいる。
【0122】
センサ信号曲線31は、第2のノック時間パターンを示している。第2のノック時間パターンは、ノックのグループから第1の期間によって分離された第1のノックを含んでおり、ノックのグループは、第2の期間によって互いに分離された3つの単発のノックを含んでおり、第2の期間は第1の期間よりも短い。
【0123】
センサ信号曲線30、31は、時間パターンを使用して、自律芝刈り機1に通信される情報を符号化する。
【0124】
代替的または付加的に、空間的ノックパターンが使用されてもよい。空間的ノックパターンは、たとえば自律芝刈り機1のハウジングに配置された複数のタッチ感応表面によって提供されるセンサ信号成分から成るセンサ信号を使用することにより、コントローラ3が空間的に異なるノックパターンを区別できるようにするセンサの配置および/または種類を必要とする。
【0125】
異なるノックパターンは、事前定義されたコマンドのセットから、コマンドを通信可能にするので、ノックジェスチャは非常に融通の利くジェスチャである。コマンドのセットは、対応するノックパターンに関連付けられて事前定義され、メモリ10に記憶されてよい。代替的または付加的に、コマンドのセットは、自律芝刈り機1のユーザによってカスタマイズされてもよい。
【0126】
特定のノックパターンを有するノックジェスチャは、自律芝刈り機1をロック解除するためのPINの代わりとして使用されてよい。
【0127】
好ましくは、自律芝刈り機1は、特定されたノックパターンにより検出されたノックジェスチャに応答して、ユーザにフィードバックを提供する。コントローラ3は、特定されたノックパターンにより検出されたノックジェスチャに基づき、フィードバック信号7を生成し、出力インターフェース4に出力してよい。出力インターフェース4は、特定されたノックパターンにより検出されたノックジェスチャの情報をユーザに対して出力する。出力インターフェース4は、視覚的または聴覚的に出力を提供してよく、これにより自律芝刈り機1が何を検出し、検出されたノックジェスチャを自律芝刈り機1がどのように解釈したかを、ユーザは理解できるようになる。たとえば自律芝刈り機1がノックジェスチャを誤解釈した場合、またはユーザが別のコマンドを意図する場合に、ユーザは、自身のノックジェスチャを適宜適応させることができる。
【0128】
代替的または付加的に、コントローラ3およびセンサは入力手段を実装し、この入力手段は、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)のための出力デバイスを実装するコントローラ3および出力インターフェース4と組み合わされて、自律芝刈り機1の制御オプションを表すメニュー項目を視覚的または聴覚的に表示するメニュー構造を、人Uに提示する。この特定の実施形態において、人Uは、この入力手段を使用して、提示された制御オプションのうちの1つを選択することができる。
【0129】
図8は、自律作業装置、特に実施形態による自律芝刈り機1の第1の応用場面を示している。
【0130】
自律芝刈り機1は、作業区域32の走行軌道33に沿って移動中に、自身の芝刈りタスクを実施する。走行軌道33は、一連の直線経路区分33iから成り、i=1、2、3・・・である。
【0131】
走行軌道33に沿った直線経路区分を移動している自律芝刈り機1が作業区域32の境界32.1に到達するたびに、自律芝刈り機1は、方向転換を実施し、作業区域32内の新規の直線経路区分33.iに沿って進む。境界32.1に到達したときに実行される方向転換中に、自律芝刈り機1によって実施される移動方向の変更は、ランダムに選択される。
【0132】
しかし、
図8の上側部分に示してあるように、これは結果的に、草のある小区画34が長時間刈り取られないままになる可能性がある。
【0133】
図8の下側部分は、人Uが、自律芝刈り機1との物理的相互作用として実施された押しジェスチャを使用して、自律芝刈り機1の走行軌道33を、草のある小区画34に向けることが可能であることを示している。特に、人Uは、走行軌道33上の現在位置35において、現在位置35から草のある小区画34を指す方向に自律芝刈り機1を押すことにより、押しジェスチャを実施してよい。
図2および
図3について検討したとき説明したように、コントローラ3は、人との物理的相互作用が生じていると特定し、この物理的相互作用が押しジェスチャであると特定し、特定された押しジェスチャの方向ベクトル14を計算する。自律芝刈り機1を草のある小区画34に直接案内する新規の経路区分33.iに沿い続けることにより、修正された走行軌道33上を進むよう自律芝刈り機1の駆動装置5を制御するために、コントローラ3は適切な制御信号9.2を生成することによって進む。したがって、特定のプログラミングモードに入る必要なしに、人Uは、簡単な押しジェスチャで、草のある小区画34が可能な限り早く芝刈りされることを確保することができる。
【0134】
図9は、自律作業装置、特に実施形態による自律芝刈り機1の第2の応用場面を示している。
【0135】
自律芝刈り機1は、作業区域32’の走行軌道33に沿って移動中に、自身の芝刈りタスクを実施する。走行軌道33は、一連の直線経路区分33iから成り、i=1、2、3・・・である。
図9に示してある作業区域32’は、
図8に示してある作業区域32に比べて異なった形状を有している。
図9において、境界32.1は、第1の部分的区域32Aと第2の部分的区域32Bとから成る作業区域を定義しており、これらの部分的区域は、小さい矩形の廊下の形態の第3の部分的区域32Cによって相互接続されている。
【0136】
図9の上側部分は、第2の部分的区域32Bでスタートした自律芝刈り機1が、その芝刈りタスクを実施しながら進行する間に、第2の区域32Bの走行軌道33に沿ってしか移動しないことを示している。したがって、自律芝刈り機1は、第1の部分的区域32Aおよび第3の部分的区域32Cを放置することになる。
【0137】
図9の下側部分は、人Uが、自律芝刈り機1との物理的相互作用として実施された押しジェスチャを使用して、自律芝刈り機1の走行軌道33を、第2の部分的区域32Bの現在位置35’において第3の部分的区域32Cに向かわせる様子を示している。特に、人Uは、走行軌道33上の現在位置35’において、現在位置35’から第3の部分的区域32Cを指す方向に、自律芝刈り機1を押すことにより、押しジェスチャを実施する。
図2および
図3について検討したとき説明したように、コントローラ3は、人との物理的相互作用が生じていると特定し、この物理的相互作用が押しジェスチャであると特定し、特定された押しジェスチャの方向ベクトル14を計算する。自律芝刈り機1を第3の部分的区域32Cに向け、第3の部分的32Cを通って第1の部分的区域32Aに直接案内する新規の経路区分33.iに沿い続けることにより、修正された走行軌道33上を進むよう自律芝刈り機1の駆動装置5を制御するために、コントローラ3は、適切な制御信号9.2を生成することにより進む。したがって、放置された第3の部分的区域32Cおよび第1の部分的区域32Aも芝刈りされることを、人Uは、簡単な押しジェスチャを使用することによって達成する。
【0138】
図10は、実施形態による自律作業装置、特に自律芝刈り機1の第3の応用場面を示している。
【0139】
自律芝刈り機1は、作業区域32の走行軌道33に沿って移動中に、自身の芝刈りタスクを実施する。走行軌道33は、一連の直線経路区分33iから成り、i=1、2、3・・・である。人Uが、作業区域32内で同時に作業している。
【0140】
図10の上側部分は、自律芝刈り機1がその芝刈りタスクを実施しながらその走行軌道33を進んでいる間に、繰り返し人Uにぶつかり、それにより4回の衝突事象101が生じていることを示している。これらの衝突事象は、人Uにとって煩わしく、または人Uを危険にさらすことさえある。
【0141】
図10の下側部分は、人Uが、自律芝刈り機1との物理的相互作用として実施された押しジェスチャを使用して、自律芝刈り機1の走行軌道33を、現在位置35’’において基地局100に向かわせて、障害物のない作業区域32が要求されていることを信号通知する様子を示している。特に、人Uは、走行軌道33上の現在位置35’’において、現在位置35’’から基地局100の位置を指す方向に自律芝刈り機1を押すことにより、押しジェスチャを実施してよい。
図2および
図3について検討したとき説明したように、コントローラ3は、人との物理的相互作用が生じていると特定し、この物理的相互作用が押しジェスチャであると特定し、特定された押しジェスチャの方向ベクトル14を計算し、現在位置35’’からの方向ベクトル14が基地局100の方を指していると特定する。コントローラ3は、この特定の押しジェスチャを、障害物のない作業区域32が人Uによって要求されているという信号通知として解釈してよい。自律芝刈り機1を基地局100の位置に向かって直接導く新規の経路区分33.iに沿い続けることにより、修正された走行軌道33を方向変更するよう自律芝刈り機1の駆動装置5を制御するために、コントローラ3は、適切な制御信号9.2を生成することによって進む。付加的または代替的に、自律芝刈り機1および基地局100は、自律芝刈り機1を基地局100に向けて操縦するために、自律芝刈り機1と基地局100との間に確立された通信リンク102を使用してよい。自律芝刈り機1は、所定の期間にわたり休止モードで基地局100に留まってよい。
【0142】
代替的に、コントローラ3は、基地局に向けた特定された押しジェスチャを、所定の形状の禁止区域を定義すること、および現在位置35’’を中心として所定の範囲を拡大することと解釈してもよい。次いで、自律芝刈り機1は、適宜コントローラ3から制御信号を発することにより、駆動装置5を制御して、所定の期間にわたり禁止区域への侵入を回避してよい。
【0143】
したがって、人Uと自律芝刈り機1とが作業区域32内で互いに干渉しないことを、人Uは、簡単な押しジェスチャを使用することによって達成する。
【0144】
図11は、自律吸引清掃装置36である自律作業装置の第4の応用場面を示している。自律吸引清掃装置36は、部屋に対応した作業区域32内で、その清掃タスクを実施する。自律吸引清掃装置36は、作業区域32の走行軌道33に沿って移動中に、自身の清掃タスクを実施する。走行軌道33は、一連の直線経路区分33iから成り、i=1、2、3・・・である。清掃タスクの実施は、本質的には自律吸引清掃装置36によって実施され、これは
図8に関して検討したように、自律芝刈り機1がその芝刈りタスクを実施することに対応している。
【0145】
図11の上側部分に示してあるように、これは結果的に、小区画37が長時間清掃されないままになる可能性がある。小区画37は、
図8の草のある小区画34に対応している。
【0146】
図11の下側部分は、人Uが、自律吸引清掃装置36との物理的相互作用として実施された押しジェスチャを使用して、自律吸引清掃装置36の走行軌道33を、小区画37に向かわせることが可能であることを示しており、これは、
図8に関して検討した方法に完全に対応している。特に、人Uは、走行軌道33上の現在位置35’’’において、現在位置35’’’から小区画37を指す方向に、自律吸引清掃装置36を押すことにより、押しジェスチャを実施してよい。コントローラ3は、人との物理的相互作用が生じたと特定し、物理的相互作用が押しジェスチャであると特定し、特定された押しジェスチャの方向ベクトル14を計算する。自律吸引清掃装置36を小区画37に案内する新規の経路区分33.iに沿い続けることにより、修正された走行軌道33上を進むよう自律吸引清掃装置36の駆動装置5を制御するために、コントローラ3は、適切な制御信号9.2を生成することによって進む。
【0147】
図を使用して検討した自律芝刈り機1の実施形態は、特許請求される本発明を実装する自律作業装置の特定の一例である。他の種類の自律作業装置およびサービスロボット、たとえば自律吸引清掃装置36、他の種類の床清掃ロボット、および窓清掃ロボットに、すべての態様および技法を同様に適用することができる。自律作業装置のこれらの例は、制限された作業区域33内で割り当てられたそれらの作業タスクを実施し、通常はそれらのバッテリを再充電するための基地局100を有している。