(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】鎌状赤血球症を処置するためのPDE9阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20241030BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241030BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241030BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20241030BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241030BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20241030BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/04
A61K9/20
A61P7/06
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2021510225
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 US2019048898
(87)【国際公開番号】W WO2020047311
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-26
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519003930
【氏名又は名称】カーデュリオン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Cardurion Pharmaceuticals, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】カラマイ,エドワード ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ドビンズ,デボラ リン ライトヘッド
(72)【発明者】
【氏名】デハート,マイケル ポール
(72)【発明者】
【氏名】マッカーサー,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】フー,シー イン
【審査官】池田 百合香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/009424(WO,A1)
【文献】特開2018-123119(JP,A)
【文献】訳編 日本医薬品添加剤協会,改訂 医薬品添加物ハンドブック,第1刷,2007年,p.700-705
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤形態の経口医薬組成物であって、該経口医薬組成物は、
50mgの化合物6-[(3S,4S)-4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロ リジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、
20重量%または30重量%の微結晶セルロース(MCC)、
1重量%のコロイド状二酸化ケイ素、及び
0.8重量%のステアリン酸マグネシウム
を
含む、経口医薬組成物。
【請求項2】
20重量%~40重量%の化合物1を含む、請求項1に記載の経口医薬組成物。
【請求項3】
1つ以上の固形担体をさらに含む、請求項1に記載の経口医薬組成物。
【請求項4】
前記1つ以上の固形担体がラクトースを含む、請求項3に記載の経口医薬組成物。
【請求項5】
化合物1が一水和物として存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の経口医薬組成物。
【請求項6】
化合物1が一水和物結晶形態として存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の経口医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年8月31日出願の米国仮出願第62/725,725号に基づく利益を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に引用される。
【0002】
本開示の分野
本開示は、環状グアニル酸一リン酸(cGMP)特異的ホスホジエステラーゼ9型阻害剤(以下、PDE9阻害剤と称する)を含む医薬組成物を製造かつ使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
鎌状赤血球症(SCD、鎌状赤血球貧血(SCA)とも呼ばれる)は、SCD患者の死亡の大半の原因となる血管閉塞過程をもたらす遺伝性疾患である。SCD疾患は異常な鎌状ヘモグロビン(HBSまたはHbSS)を産生するヘモグロビン(HBB)遺伝子の点突然変異に起因するものであり、鎌状ヘモグロビンは重合体化することで硬く粘着性のある鎌状赤血球を作り出す。鎌状赤血球は、慢性炎症、異常な細胞接着、酸化ストレス、最終的に血管閉塞過程を引き起こす内皮機能不全をもたらす。
【0004】
現時点でSCDの治療法は存在しない。処置の選択肢として、輸血、抗癌剤ヒドロキシ尿素による処置が挙げられる。輸血により循環内の正常な非鎌状赤血球の数が増え、貧血を矯正する。定期的な輸血療法は、小児の高リスク脳卒中の再発予防に役立つ場合がある。ヒドロキシ尿素(HU)はSCDの処置に承認されたものであり、痛みを伴う発作の頻発や入院回数を減らすことが示されている。残念ながら、HUの忍容性は低いことが多く、その広範な使用は、繁殖力や生殖に対して起こり得る影響に対する懸念、血液学的毒性による有効用量の達成と維持の困難、および毎月のモニタリングの必要性によって、広範な使用は制限されている(Heeney et al.,Pediatr Clin North Am.,2008,55(2):483)。実際、4人に1人、おそらくはそれよりも少ない成人患者だけがこの薬物により処置されていると推定される(Stettler et al.,JAMA,2015,313:1671)。加えて、このような課題が原因で多くの患者にHUは副有効用量で投与されている。ゆえに、あらゆる年代の患者に対してSCDの病的合併症を予防するために世界中で安全に採用可能な、新規かつ安全で効果的な処置が緊急に必要とされる。
【0005】
SCDを処置する必要性は依然として残っている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、鎌状赤血球症を処置するための化合物1、および/または、該化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を含む医薬組成物を製造かつ使用する方法を提供する。
【0007】
本明細書に記載の一態様では経口医薬組成物が開示され、該経口医薬組成物は、6-[(3S,4S)-4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体約100mg~約300mgと、アルファでん粉約4%~約6重量%および/または微結晶セルロース約15%~約50重量%から選択される充填剤と、コロイド状二酸化ケイ素約1%~約2.5重量%および/またはステアリン酸マグネシウム約0.5%~約1.5重量%から選択される加工助剤とを含んでおり、前記経口医薬組成物は、患者への投与に適した固形錠剤の形態である。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、USP破砕性試験とUSP崩壊試験により判定されるように、破砕性が重量損失約0.3%以下であり、崩壊時間約15分未満である。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、USP破砕性試験とUSP崩壊試験により判定されるように、破砕性が重量損失約0.3%以下であるか、または崩壊時間約15分未満のうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、約0.4重量%~約0.5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、前記ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、約0.5重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、硬度約10kPaおよび/または厚み約4.50~約4.80mmである。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体約100mg、200mg、または約300mgを含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体約300mgを含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物はアルファでん粉約5重量%を含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物はコロイド状二酸化ケイ素約2重量%を含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物はステアリン酸マグネシウム約1重量%を含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、アルファでん粉、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを5:2:1の重量比で含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、腸溶性被膜またはOpadry(登録商標)II白色フィルムコーティングから選択される被膜をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記被膜は全錠剤の約2.5重量%である。
【0008】
本明細書に記載の別の態様では、経口医薬組成物が開示され、該経口医薬組成物は、6-[(3S,4S)-4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体約100mg~約300mgと、アルファでん粉約5重量と、微結晶セルロース約20重量%と、コロイド状二酸化ケイ素約2重量%と、ステアリン酸マグネシウム約1重量%とを含んでおり、前記経口医薬組成物は、患者への投与に適した固形錠剤の形態である。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、USP破砕性試験とUSP崩壊試験により判定されるように、破砕性が重量損失約0.3%以下であり、および/または、崩壊時間約15分未満である。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物はヒドロキシプロピルセルロース(HPC)約0.5重量%をさらに含む。経口医薬組成物は、6-[(3S,4S)-4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体を含んでおり、固形錠剤の形態である。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は少なくとも1つの充填剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記充填剤は、微結晶セルロースまたはアルファでん粉である。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物はアルファでん粉約4重量%~約6重量%を含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、錠剤1つにつきアルファでん粉約15mg~約25mgを含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は少なくとも1つの加工助剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記加工助剤は、コロイド状二酸化ケイ素および/またはステアリン酸マグネシウムである。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、コロイド状二酸化ケイ素約1重量%~約2.5重量%および/またはステアリン酸マグネシウム約0.5重量%~約1.5重量%を含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、錠剤1つにつきコロイド状二酸化ケイ素約6mg~約8mgおよび/またはステアリン酸マグネシウム約2mg~約4mgを含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、微結晶セルロース、アルファでん粉、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、腸溶性被膜またはOpadry(登録商標)II白色フィルムコーティングから選択される被膜をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記被膜は前記錠剤の約2.5重量%である。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、錠剤1つにつき被膜約20mg~約40mgを含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、アルファでん粉、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを5:2:1の重量比で含む。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約30mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、または350mgの量で存在する。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、前記固形錠剤の約50重量%~約80重量%または約60重量%~約75重量%の量で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、前記固形錠剤の約65重量%、約68重量%、約70重量%、約72重量%、または約75重量%の量で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物には、一定の破砕性および/または崩壊時間がある。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、破砕性が重量損失約0.3%以下、および/または、崩壊時間約15分未満であり、破砕性と崩壊時間はUSP試験により判定される。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量%~約0.5重量%をさらに含む。
【0009】
本明細書に記載の別の態様では、被験体の鎌状赤血球症を処置する方法が開示され、該方法は上記経口医薬組成物のいずれかを投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は食物と一緒に服用される。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、1日1回、1日2回、または1日3回投与される。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は1日1回投与される。いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、少なくとも4週間、12週間、16週間、または24週間にわたり投与される。いくつかの実施形態では、前記方法はヒドロキシ尿素(HU)を投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、1日あたり、または、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体の投与1回あたり、前記被験体の体重1kgにつき約0.3mg~約6.0mg、または約0.3mg~約1.0mgを前記被験体に投与する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】化合物1がタウンズマウスの肺における骨髄性および好中球性炎症マーカーを減らす様子を示す。
【
図2】化合物1がインビトロで内皮細胞の内側を覆う微小流体チャンバへのSCD患者好中球の接着を減らす様子を示す。
【
図3】化合物1がSCD患者好中球におけるCD11a、CD11b、CD18各インテグリンの発現を低下させる様子を示す。
【
図4】化合物1の優れた有効性を示す、化合物1とヒドロキシ尿素とを比較する表を示す。
【
図5】化合物1(30mg/kg)を比較するタウンズSCDモデルに対する研究の結果を示す。
【
図6】化合物1(30mg/kg)を比較するタウンズSCDモデルに対する研究の結果を示す。
【
図8】人体に対する医薬品の影響を追跡するべく設計されたソフトウェアを実行するモバイルデバイスに使用するためのスクリーンショットの代表的サンプリングの非限定例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ホスホジエステラーゼ(PDE)は、環状ヌクレオチドを分解することで身体全体にわたる第2のメッセンジャーの細胞レベルを調節する酵素の系統群である。PDEは、臨床試験と市場それぞれに多くの化合物が導入されていることから魅力的と証明されている薬物標的を表す。PDEは、動態特性、基質選択性、発現、局在化パターン、活性化、調節因子、および阻害剤感受性に関して異なる11の系統群へと機能的に分離されている21個の遺伝子によりコードされている。PDEの機能は、環状ヌクレオチド一リン酸である環状アデノシン一リン酸(cAMP)および/またはグアノシン一リン酸(cGMP)の分解であり、これらの物質は、神経伝達や平滑筋収縮・弛緩の調節を含む多数の重要なプロセスに関与する重要な細胞内媒介物質である。
【0012】
PDE9はcGMP特異的であるとともに(Km cAMPはcGMPの1000倍超である)、このヌクレオチドに対するPDEのKmが最低であることからcGMP値の調節に重要なプレーヤーであると仮定されている。PDE9は低レベルで脳全体に発現され、基底cGMPを調節する可能性がある。
【0013】
末梢では、PDE9発現は前立腺、腸、腎臓、および造血細胞で最高であり、様々な非CNS適応症に可能な治療を実現させる。
【0014】
本開示では、PDE9阻害剤を含む医薬組成物は、鎌状赤血球症(SCD)の処置用に設計される。
【0015】
本開示の化合物
本開示の状況下で、PDE9の50%阻害値に達するのに必要な量が10マイクロモル以下、好ましくは9マイクロモル以下、8マイクロモル以下、7マイクロモル以下、6マイクロモル以下、5マイクロモル以下、4マイクロモル以下、3マイクロモル以下、より好ましくは2マイクロモル以下、1マイクロモル以下、特に500nM以下である場合、化合物はPDE9阻害剤と考慮される。好ましい実施形態では、PDE9のIC50値に達するのに必要なPDE9阻害剤の量は、400nM以下、例えば300nm以下、200nM以下、100nm以下、さらには80nm以下、50nm以下、例えば25nm以下である。
【0016】
本出願全体では、IC50およびIC50という表記は互換的に使用される。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示のPDE9阻害剤は、血液脳関門透過が少ないか、または全くない。例えば、脳内における本開示のPDE9阻害剤の濃度と血漿中濃度との比(脳/血漿比)は、約0.50、約0.40、約0.30、約0.20、約0.10、約0.05、約0.04、約0.03、約0.02、または約0.01未満であってもよい。いくつかの実施形態では、脳/血漿比は、PDE9阻害剤の投与後30分または120分で測定される。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記PDE9阻害剤は、WO2013/053690に開示される任意のイミダゾピラジノンPDE9阻害剤および/またはWO2013/110768に開示される任意のイミダゾトリアジノンPDE9阻害剤であってもよく、これら国際特許公報の内容はその全体を参照することで本明細書に引用される。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記PDE9阻害剤は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、共結晶、溶媒和物、あるいは多形体である。化合物1のラセミ体形態、および化合物1の無水形態は、WO2013/053690とWO2017/005786に記載されている。いくつかの実施形態では、前記PDE9阻害剤は、6-[(3S,4S)-4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン(化合物1)、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体である。いくつかの実施形態では、化合物1は以下の構造を有する。
【0020】
【0021】
6-[(3S,4S)-4-メチル-1-(ピリミジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オン、式C21H26N6O2、算出された分子量は約394g/molである。いくつかの実施形態では、化合物1は高光学純度をもつか、または実質的に高光学純度をもつ。
【0022】
医薬組成物
本開示はさらに、治療上有効量の任意のPDE9阻害剤と薬学的に許容可能な担体または希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、治療上有効量の化合物1、または薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体と、薬学的に可能な担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0023】
薬学的に許容可能な塩
本開示はさらに、PDE9阻害剤の塩、通常は薬学的に許容可能な塩を含む。このような塩として、薬学的に許容可能な酸付加塩が挙げられる。酸付加塩として、無機酸塩のほか有機酸塩が挙げられる。
【0024】
適切な無機酸の代表例として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸などが挙げられる。適切な有機酸の代表例として、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、桂皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、イタコン酸、乳酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、テオフィリン酢酸のほか、8-ハロテオフィリン、例えば8-ブロモテオフィリンなどが挙げられる。薬学的に許容可能な無機酸または有機酸付加塩のさらなる例として、Berge,S.M.et al.,J.Pharm.Sci.1977,66,2に列記される薬学的に許容可能な塩が挙げられ、この文献は参照により本明細書に引用される。
【0025】
さらに本開示の化合物は、不溶媒和形態のほか、水やエタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒を伴う溶媒和形態で存在してもよい。一般にこの溶媒和形態は、本開示の目的のための非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、溶媒和形態、不溶媒和形態、または結晶形態として化合物1を含む。いくつかの実施形態では、化合物1は不溶媒和形態として存在する。いくつかの実施形態では、化合物1は結晶形態として存在する。いくつかの実施形態では、化合物1は一水和物結晶形態として存在する。
【0027】
製剤
本開示の化合物は、単独で、または、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、あるいは賦形剤と組み合わせて、単回用量あるいは複数回用量で投与されてもよい。本開示にかかる医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体または希釈剤のほか、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,2013に開示されるものなど従来技法に従うその他既知のアジュバントや賦形剤とともに製剤化されてもよい。
【0028】
前記医薬組成物は、経口、直腸、経鼻、肺、局所(頬側、舌下を含む)、経皮、胸腔内、腹腔内、膣内、非経口(皮下、筋肉内、髄腔内、静脈内、皮内を含む)などの任意の適切な経路による投与のために特別に製剤化されてもよい。この経路は、処置される被験体の総体的な健康状態と年齢、処置される疾病の性質、有効成分に依存して決定されることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は被験体への経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、錠剤または丸剤として製剤化される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、被験体への経口投与に適した固形錠剤として製剤化される。
【0029】
経口投与用の医薬組成物として、カプセル剤、錠剤、糖衣錠、丸剤、トローチ剤、散剤、顆粒剤などの固形剤形が挙げられる。適切な場合に、前記医薬組成物は、腸溶性皮膜などの被膜とともに調製されてもよく、または、当該技術分野で周知の方法に従って持続放出または持効性放出などの有効成分の制御放出を提供するように製剤化されてもよい。経口投与用の液体剤形として、溶液、乳剤、懸濁液、シロップ、エリキシル剤が挙げられ、いずれもそのまま製造されるか、または使用前に再構成するために固形として製造される。
【0030】
非経口投与用の医薬組成物として、滅菌水性注射溶液、滅菌非水性注射溶液、分散液、懸濁液、乳剤のほか、使用前に滅菌注射溶液または分散液において再構成される滅菌粉末が挙げられる。他の適切な投与形態として、坐剤、噴霧剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、吸入剤、皮膚パッチ剤、埋込剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本開示はさらに医薬組成物を製造するプロセスを提供し、該プロセスは、治療上有効量の本開示の化合物と少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体または希釈剤とを混合する工程を含む。
【0032】
本開示の化合物は全体として、遊離物質、またはその薬学的に許容可能な塩として利用される。このような塩は、本開示の化合物の溶液または懸濁液を薬学的に許容可能な酸で処理することにより従来様式で調製される。適切な有機酸と無機酸の代表例は上述のものである。
【0033】
非経口投与のために、本開示の化合物を滅菌水溶液、プロピレングリコール水溶液、ビタミンE水溶液、またはゴマ油あるいはピーナッツ油に溶かした溶液が使用されてもよい。このような水溶液は必要に応じて適宜緩衝化する必要があり、この希釈液はまず、十分な生理食塩水またはグルコースと等張となる。前記水溶液は特に、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内の各投与に適している。本開示の化合物は、当業者に既知の標準技法を用いて既知の滅菌水性媒体へ容易に組み込むことができる。
【0034】
適切な医薬担体として、不活性固形希釈剤または充填剤、滅菌水溶液など、様々な有機溶媒が挙げられる。固形担体の例として、ラクトース、テラアルバ、スクロース、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、セルロースの低級アルキルエーテルが挙げられる。液体担体の例として、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレン、水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。同様に、担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリルなどの当該技術分野で既知の徐放性材料を、単独でまたはワックスと配合して含む場合がある。その後、本開示の化合物と薬学的に許容可能な担体とを組み合わせることで形成される医薬組成物は、本開示の投与経路に適した様々な剤形で容易に投与される。この製剤は、薬学分野で既知の方法により単位剤形の状態で都合よく提供されてもよい。
【0035】
経口投与に適した本開示の医薬組成物は、カプセル剤や錠剤などの個別単位として提供されてもよく、その各々に所定量の有効成分、そして随意に適切な賦形剤が含まれている。さらに、経口で利用可能な製剤は、粉末あるいは顆粒、水溶液あるいは非水溶液中の溶液あるいは懸濁液、または水中油型あるいは油中水型液体エマルジョンの形態であってもよい。
【0036】
固形担体が経口投与に使用される場合、前記調製物は、錠剤化されるか、粉末あるいはペレット形態にあるハードゼラチンカプセルに入れられるか、またはトローチあるいはロゼンジの形態であってもよい。固形担体の量は大きく変動するが、その範囲は投与単位あたり約25mg~約1gである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、投与単位あたり約10mg~約150mgである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、約10mg~約20mg、10mg~約30mg、約10mg~約40mg、約10mg~約50mg、約10mg~約60mg、約10mg~約70mg、約10mg~約80mg、約10mg~約90mg、約10mg~約100mg、約10mg~約125mg、約10mg~約150mg、約20mg~約30mg、約20mg~約40mg、約20mg~約50mg、約20mg~約60mg、約20mg~約70mg、約20mg~約80mg、約20mg~約90mg、約20mg~約100mg、約20mg~約125mg、約20mg~約150mg、約30mg~約40mg、約30mg~約50mg、約30mg~約60mg、約30mg~約70mg、約30mg~約80mg、約30mg~約90mg、約30mg~約100mg、約30mg~約125mg、約30mg~約150mg、約40mg~約50mg、約40mg~約60mg、約40mg~約70mg、約40mg~約80mg、約40mg~約90mg、約40mg~約100mg、約40mg~約125mg、約40mg~約150mg、約50mg~約60mg、約50mg~約70mg、約50mg~約80mg、約50mg~約90mg、約50mg~約100mg、約50mg~約125mg、約50mg~約150mg、約60mg~約70mg、約60mg~約80mg、約60mg~約90mg、約60mg~約100mg、約60mg~約125mg、約60mg~約150mg、約70mg~約80mg、約70mg~約90mg、約70mg~約100mg、約70mg~約125mg、約70mg~約150mg、約80mg~約90mg、約80mg~約100mg、約80mg~約125mg、約80mg~約150mg、約90mg~約100mg、約90mg~約125mg、約90mg~約150mg、約100mg~約125mg、約100mg~約150mg、または約125mg~約150mgである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約125mg、または約150mgである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、少なくとも約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、または約125mgである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、投与単位あたり多くとも約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約125mg、または約150mgである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、投与単位あたり約150mg~約1,000mgである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、約150mg~約175mg、約150mg~約200mg、約150mg~約300mg、約150mg~約400mg、約150mg~約500mg、約150mg~約600mg、約150mg~約700mg、約150mg~約800mg、約150mg~約900mg、約150mg~約1,000mg、約175mg~約200mg、約175mg~約300mg、約175mg~約400mg、約175mg~約500mg、約175mg~約600mg、約175mg~約700mg、約175mg~約800mg、約175mg~約900mg、約175mg~約1,000mg、約200mg約300mg、約200mg~約400mg、約200mg~約500mg、約200mg~約600mg、約200mg~約700mg、約200mg~約800mg、約200mg~約900mg、約200mg~約1,000mg、約300mg~約400mg、約300mg~約500mg、約300mg~約600mg、約300mg~約700mg、約300mg~約800mg、約300mg~約900mg、約300mg~約1,000mg、約400mg~約500mg、約400mg~約600mg、約400mg~約700mg、約400mg~約800mg、約400mg~約900mg、約400mg~約1,000mg、約500mg~約600mg、約500mg~約700mg、約500mg~約800mg、約500mg~約900mg、約500mg~約1,000mg、約600mg~約700mg、約600mg~約800mg、約600mg~約900mg、約600mg~約1,000mg、約700mg~約800mg、約700mg~約900mg、約700mg~約1,000mg、約800mg~約900mg、約800mg~約1,000mg、または約900mg~約1,000mgである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、約150mg、約175mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または約1,000mgである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、少なくとも約150mg、約175mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、または約900mgである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、投与単位あたり多くとも約175mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または約1,000mgである。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記固形担体は、投与単位あたり約10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または約1gである。液体担体が使用される場合、前記調製物は、シロップ、乳剤、ソフトゼラチンカプセル、または水性あるいは非水性液体懸濁液あるいは溶液などの滅菌注射液の形態でもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記固形担体は、投与単位あたり約1g~約2gである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、約1g~約1.1g、約1g~約1.2g、約1g~約1.3g、約1g~約1.4g、約1g~約1.5g、約1g~約1.6g、約1g~約1.7g、約1g~約1.8g、約1g~約1.9g、約1g~約2g、約1.1g~約1.2g、約1.1g~約1.3g、約1.1g~約1.4g、約1.1g~約1.5g、約1.1g~約1.6g、約1.1g~約1.7g、約1.1g~約1.8g、約1.1g~約1.9g、約1.1g~約2g、約1.2g~約1.3g、約1.2g~約1.4g、約1.2g~約1.5g、約1.2g~約1.6g、約1.2g~約1.7g、約1.2g~約1.8g、約1.2g~約1.9g、約1.2g~約2g、約1.3g~約1.4g、約1.3g~約1.5g、約1.3g~約1.6g、約1.3g~約1.7g、約1.3g~約1.8g、約1.3g~約1.9g、約1.3g~約2g、約1.4g~約1.5g、約1.4g~約1.6g、約1.4g~約1.7g、約1.4g~約1.8g、約1.4g~約1.9g、約1.4g~約2g、約1.5g~約1.6g、約1.5g~約1.7g、約1.5g~約1.8g、約1.5g~約1.9g、約1.5g~約2g、約1.6g~約1.7g、約1.6g~約1.8g、約1.6g~約1.9g、約1.6g~約2g、約1.7g~約1.8g、約1.7g~約1.9g、約1.7g~約2g、約1.8g~約1.9g、約1.8g~約2g、または約1.9g~約2gである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、約1g、約1.1g、約1.2g、約1.3g、約1.4g、約1.4g、約1.4g、約1.4g、約1.4g、約1.2g、約1.2g、約1.9g、または約2gである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、少なくとも約1g、約1.1g、約1.2g、約1.3g、約1.4g、約1.4g、約1.4g、約1.4g、約1.4g、約1.2g、約1.2g、または約1.9gである。いくつかの実施形態では、前記固形担体は、投与単位あたり多くとも約1.1g、約1.2g、約1.3g、約1.4g、約1.4g、約1.4g、約1.4g、約1.4g、約1.2g、約1.2g、約1.9g、または約2gである。
【0039】
本開示の医薬組成物は、当該技術分野における従来の方法により調製されてもよい。例えば、錠剤は、有効成分を通常のアジュバントおよび/または希釈剤と混合し、続いて従来の錠剤調製機でこの混合物を圧縮することによって調製されてもよい。アジュバントまたは希釈剤の例として、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タルカム、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ラクトース、ガムなどが挙げられる。着色料、香料、保存料など、このような目的のために通常使用される他のアジュバントまたは添加物は、有効成分との適合性がある場合に使用されてもよい。
【0040】
前記医薬組成物は、PDE9阻害剤である化合物1を含む。前記医薬組成物は、少なくとも10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、または90重量%の本開示のPDE9阻害剤を含む。前記医薬組成物は、少なくとも約1重量%~約90重量%の本開示のPDE9阻害剤を含む。前記医薬組成物は、少なくとも約1%~約10%、約1%~約20%、約1%~約30%、約1%~約40%、約1%~約50%、約1%~約60%、約1%~約70%、約1%~約80%、約1%~約90%、約10%~約20%、約10%~約30%、約10%~約40%、約10%~約50%、約10%~約60%、約10%~約70%、約10%~約80%、約10%~約90%、約20%~約30%、約20%~約40%、約20%~約50%、約20%~約60%、約20%~約70%、約20%~約80%、約20%~約90%、約30%~約40%、約30%~約50%、約30%~約60%、約30%~約70%、約30%~約80%、約30%~約90%、約40%~約50%、約40%~約60%、約40%~約70%、約40%~約80%、約40%~約90%、約50%~約60%、約50%~約70%、約50%~約80%、約50%~約90%、約60%~約70%、約60%~約80%、約60%~約90%、約70%~約80%、約70%~約90%、または約80%~約90%である。前記医薬組成物は、少なくとも約1%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%を含む。前記医薬組成物は、少なくとも約1%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、または約80%を含む。前記医薬組成物は、多くとも約1重量%、約10重量%、約20重量%、約30重量%、約40重量%、約50重量%、約60重量%、約70重量%、約80重量%、または約90重量%の本開示のPDE9阻害剤を含む。前記医薬組成物は、少なくとも約90重量%~約99.9重量%の本開示のPDE9阻害剤を含む。前記医薬組成物は、少なくとも約90%~約91%、約90%~約92%、約90%~約93%、約90%~約94%、約90%~約95%、約90%~約96%、約90%~約97%、約90%~約98%、約90%~約99%、約90%~約99.9%、約91%~約92%、約91%~約93%、約91%~約94%、約91%~約95%、約91%~約96%、約91%~約97%、約91%~約98%、約91%~約99%、約91%~約99.9%、約92%~約93%、約92%~約94%、約92%~約95%、約92%~約96%、約92%~約97%、約92%~約98%、約92%~約99%、約92%~約99.9%、約93%~約94%、約93%~約95%、約93%~約96%、約93%~約97%、約93%~約98%、約93%~約99%、約93%~約99.9%、約94%~約95%、約94%~約96%、約94%~約97%、約94%~約98%、約94%~約99%、約94%~約99.9%、約95%~約96%、約95%~約97%、約95%~約98%、約95%~約99%、約95%~約99.9%、約96%~約97%、約96%~約98%、約96%~約99%、約96%~約99.9%、約97%~約98%、約98%~約約99%、約98%~約99.9%、または約99%~約99.9%である。前記医薬組成物は、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99.9%を含む。前記医薬組成物は、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%を含む。前記医薬組成物は、多くとも約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%、約99重量%、または約99.9重量%の本開示のPDE9阻害剤を含む。前記医薬組成物は、少なくとも90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、または99重量%の本開示のPDE9阻害剤を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、経口投与用の医薬組成物として製剤化される。例えば、固形錠剤形態で製剤化されてもよい。前記経口投与用の組成物は、少なくとも1つの充填剤および/または加工助剤を含む。前記加工助剤は、滑剤または潤滑剤でもよい。前記経口投与用の組成物はさらに被膜を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記経口投与用の組成物は、充填剤として微結晶セルロースおよび/またはアルファでん粉を含む。いくつかの実施形態では、前記経口投与用の医薬組成物は、加工助剤としてコロイドシリコン酸化および/またはステアリン酸マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、前記経口投与用の組成物は、Opadry(登録商標)II白色フィルムコーティングを含む。Opadry(登録商標)IIは、急速で活動的な放出のための即時崩壊を可能にするポリマー、可塑剤、および顔料を含む、高生産性、水溶性、pH非依存性の完全な乾燥粉末フィルムコーティング系である。いくつかの実施形態では、前記経口投与用の組成物は精製水を含んでおり、精製水は加工中に取り除かれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記錠剤は、錠剤の総重量の約5重量%~約20重量%の被膜を含む。いくつかの実施形態では、前記錠剤は、約0.5%~約10%の被膜を含む。いくつかの実施形態では、前記錠剤は、約0.5%~約1%、約0.5%~約2%、約0.5%~約3%、約0.5%~約4%、約0.5%~約5%、約0.5%~約6%、約0.5%~約7%、約0.5%~約8%、約0.5%~約9%、約0.5%~10%、約1%~約2%、約1%~約3%、約1%~約4%、約1%~約5%、約1%~約6%、約1%~約7%、約1%~約8%、約1%~約9%、約1%~10%、約2%~約3%、約2%~約4%、約2%~約5%、約2%~約6%、約2%~約7%、約2%~約8%、約2%~約9%、約2%~10%、約3%~約4%、約3%~約5%、約3%~約6%、約3%~約7%、約3%~約8%、約3%~約9%、約3%~10%、約4%~約5%、約4%~約6%、約4%~約7%、約4%~約8%、約4%~約9%、約4%~10%、約5%~約6%、約5%~約7%、約5%~約8%、約5%~約9%、約5%~10%、約6%~約7%、約6%~約8%、約6%~約9%、約6%~10%、約7%~約8%、約7%~約9%、約7%~10%、約8%~約9%、約8%~10%、または約9%~10%の被膜を含む。いくつかの実施形態では、前記錠剤は、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%の被膜を含む。いくつかの実施形態では、前記錠剤は、少なくとも約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、または約9%の被膜を含む。いくつかの実施形態では、前記錠剤は、多くとも約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%の被膜を含む。いくつかの実施形態では、前記錠剤は、錠剤の総重量の約0.5重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、または約20重量%の被膜を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は腸溶性被膜をさらに含む。腸溶性被膜は、胃の環境における溶解または崩壊を妨げる経口薬に適用されるポリマーバリアである。錠剤、微小錠剤(mini-tablets)、ペレット、および顆粒(通常はカプセルシェルに充填される)は、最も一般的な腸溶性被覆剤形である。大半の腸溶性被膜は、胃の中に見られる強酸性pHで安定するが、それより高いpH(アルカリ性pH)では急速に分解する表面を呈することで機能する。例えば、腸溶性被膜は胃酸(pH~3)では分解しないが、小腸のアルカリ性環境(pH7~9)環境で分解する。薬物が胃の中で分解するのを防ぐことにより、腸溶性被膜は、薬物自体の刺激効果から胃粘膜を保護することができる。薬物が腸の中性環境またはアルカリ性環境に到達すると、その有効成分が溶解し、血流に吸収されるようになる。腸溶性被膜に使用される材料として、脂肪酸、ワックス、シェラック、プラスチック、植物繊維が挙げられるが、これらに限定されるものではない。従来から使用される材料はフィルム樹脂溶液である。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は充填剤を含む。いくつかの実施形態では、前記充填剤はアルファでん粉である。実施態様では、前記医薬組成物は、医薬組成物の全重量の約4重量%~約6重量%のアルファでん粉を含む。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、医薬組成物の全重量の約4重量%、約5重量%、または約6重量%のアルファでん粉を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記充填剤は微結晶セルロースである。いくつかの実施態様では、前記医薬組成物は、医薬組成物の全重量の約15重量%~約50重量%の微結晶セルロースを含む。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、医薬組成物の全重量の約50重量%、約40重量%、約30重量%、約20重量%、または約15重量%の微結晶セルロースを含む。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、約20重量%の微結晶セルロースを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は加工助剤を含む。いくつかの実施形態では、前記加工助剤はコロイド状二酸化ケイ素である。実施態様では、前記医薬組成物は、医薬組成物の全重量の約1重量%~約2.5重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、医薬組成物の全重量の約1重量%、約1.5重量%、約2重量%、または約2.5重量%のコロイド状二酸化ケイ素を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記加工助剤はステアリン酸マグネシウムである。実施態様では、前記医薬組成物は、医薬組成物の全重量の約0.5重量%~約1.5重量%のステアリン酸マグネシウムを含む。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、医薬組成物の全重量の約0.5重量%、約0.8重量%、約1.0重量%、約1.2重量%、または約1.5重量%のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、アルファでん粉、コロイド状二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを5:2:1の重量比で含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を含む医薬組成物は、調節室温(20~25℃)で保存される。
【0050】
いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を含む医薬組成物は、光から保護される。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物には、一定の破砕性および/または崩壊時間がある。本明細書に開示される破砕性は、圧縮後に錠剤が細粉され、砕かれ、または粉砕される傾向である。破砕性試験は、錠剤の耐久性を試験するための施設技術である。この試験は、バッフルを備えた回転ホイールを用いて固定時間にわたり錠剤試料を繰り返し落とす工程を含む。破砕性は、錠剤破砕性に関するUSP(United States Pharmacopeia)標準試験により求められる。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物の破砕性は、錠剤の重量損失約0.5%以下である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物の破砕性は、錠剤の重量損失約0.4%以下である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物の破砕性は、錠剤の重量損失約0.3%以下である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物の破砕性は、錠剤の重量損失約0.25%以下である。
【0052】
崩壊試験は、ペレット形態の薬物が溶液内でどのように崩壊するかを試験するために使用される。このような試験は、品質管理のために粉末状にされた化合物のインビトロでの粉砕と相互に関連付けることができる。崩壊は、試験中のユニットの残渣が装置のスクリーンに残っていない状態、または、残渣が残っている場合には、錠剤、カプセルシェル、または任意の溶融脂肪物質などの錠剤構成成分の崩壊部分の断片からなる状態と定義される。この試験は、既知の吸収に関する課題、または既知の溶解度が低い製品に対して実施されることが最も多い。さらには、腸溶性被膜製品などの持続放出または遅延放出製品に対しても実施される。溶解試験は、カプセル剤または錠剤に対して実施することができる。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物の溶解時間は15分以内である。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースをさらに含む。ヒドロキシプロピルセルロースは、水溶解性と有機溶解性の両方を持つセルロース誘導体である。ヒドロキシプロピルセルロースは医薬賦形剤として使用されることが多い。ヒドロキシプロピルセルロースは、錠剤結合剤、粘稠化剤、増粘剤、被覆剤、成膜剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、約1重量%~約6重量%のヒドロキシプロピルセルロース錠剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、約4重量%~約5重量%のヒドロキシプロピルセルロース錠剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、約4重量%の錠剤として存在する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、約5重量%の錠剤として存在する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、約6重量%の錠剤として存在する。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記経口医薬組成物には、一定の錠剤硬度および/または錠剤厚みがある。錠剤硬度試験は、錠剤の破砕点と構造的完全性を求めて、使用前の保管、輸送、包装、および取り扱いの条件下でどのように変化するのかを調べるために製薬業界で使用されている施設技術である。錠剤の破砕点はその形状に左右される。いくつかの実施形態では、前記錠剤の硬度は約10kPaである。いくつかの実施形態では、前記錠剤の厚みは約4.5~5.0mmである。いくつかの実施形態では、前記錠剤の厚みは約4.65~4.85mmである。
【0055】
他のいくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を含む組成物は、小児用途に適しており、小児鎌状赤血球貧血患者により服用される場合がある。
【0056】
いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を含む医薬組成物は、食物とともに服用される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は食後に服用される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は食物なしで服用される。
【0057】
投薬
いくつかの実施形態では、経口投与量は、1日あたり体重1kgにつき約0.001~約100mgである。いくつかの実施形態では、経口投与量は、1日あたり体重1kgにつき約0.01~約50mgである。いくつかの実施形態では、経口投与量は、1日あたり体重1kgにつき約0.05~約10mgである。経口投与量は通常、1回以上の用量、一般的には1日当たり1~3回の用量で投与される。いくつかの実施形態では、前記用量は、1日1回、2回、または3回投与される。正確な用量は、投与の頻度と様式、処置される被験体の性別、年齢、体重、総体的な健康状態、処置される疾病や合併症の性質と重症度、その他当業者に明白な因子に基づいて決められる。
【0058】
いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、被験体の体重1kgにつき6.0mg/kg未満または約4.0mg未満の用量で前記被験体に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、被験体の体重1kgにつき約0.1mg/kg~約6.0mgの用量で投与される。例えば、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、被験体の体重1kgにつき約0.3~約3.0mg、または約0.3~約1.0mgの用量で投与される。患者は鎌状赤血球症を患っている場合がある。前記患者は成人(18歳以上)または小児(18歳未満)でもよい。いくつかの実施形態では、前記患者は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を、被験体の体重1kgにつき約0.3mg、約0.2mg、約0.1mg、または約0.05mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、前記患者は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を、被験体の体重1kgにつき約1mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、前記患者は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を、被験体の体重1kgにつき約3mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、前記患者は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を、被験体の体重1kgにつき約6mgの用量で投与される。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記患者は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を、被験体の体重1kgにつき約0.1mgの用量で投与される。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記患者は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を、被験体の体重1kgにつき約0.3mgの用量で投与される。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記患者は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を、被験体の体重1kgにつき約0.5mgの用量で投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記患者は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を、被験体の体重1kgにつき約1mgの用量で投与される。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記患者は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を、被験体の体重1kgにつき約5mgの用量で投与される。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記患者は、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を、被験体の体重1kgにつき約10mgの用量で投与される。
【0065】
いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約20mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、または約600mg/日のフラット用量(flat dose)で患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約50mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、または約350mg/日の用量で患者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約50mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約100mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約150mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約200mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約250mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約300mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約350mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、約400mgの用量で投与される。
【0066】
前記医薬組成物のいくつかの実施形態では、化合物1は、1日あたり、または投与1回あたり最大用量で投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり、または投与1回あたり1gの化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体の合計併用用量が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり、または投与1回あたり600mgの化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体の合計併用用量が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり、または投与1回あたり500mgの化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体の合計併用用量が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり、または投与1回あたり400mgの化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体の合計併用用量が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり、または投与1回あたり300mgの化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体の合計併用用量が投与される。いくつかの実施形態では、1日あたり、または投与1回あたり200mgの化合物1、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいは多形体の合計併用用量が投与される。いくつかの実施形態では、化合物1、または薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は患者に投与され、ここで化合物1、または薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は1日1回投与される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は1日1回投与される。
【0067】
いくつかの実施形態では、化合物1、または薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は患者に投与され、ここで化合物1、または薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、食物とともに1日1回投与される。食物は有害事象プロファイルを劇的に低下させる場合があることが分かっている。悪心、嘔吐、頭痛などの副作用の発生率と重症度は、化合物1、または薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体を食物とともに服用した場合に低下する場合がある。
【0068】
いくつかの実施形態では、化合物1、または薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は患者に投与され、ここで化合物1、または薬学的に許容可能な塩、あるいは多形体は、少なくとも7日間、10日間、2週間、3週間、4週間、1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、1年間、1.5年間、または2年間にわたり1日1回投与される。いくつかの実施形態では、前記患者は3か月間処置される。いくつかの実施形態では、前記患者は6か月間処置される。いくつかの実施形態では、前記患者は1年間処置される。いくつかの実施形態では、前記患者は1.5年間処置される。いくつかの実施形態では、前記患者は、2年間、3年間、4年間、5年間、5年以上、または生存期間にわたって処置される。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、当業者に既知の方法により単位剤形で提供される。例示目的のために、経口投与用の一般的な単位剤形は、約0.01~約1000mg、約0.05~約500mg、または約0.5mg~約200mgを含有する場合がある。
【0070】
併用療法
一実施形態では、本開示の化合物を含む医薬組成物は、ヒドロキシ尿素(HU)などの追加の活性薬剤と併用される。本開示の化合物と追加の活性薬剤は、同時に、連続的に、または任意の順序で投与されてもよい。本開示の化合物と追加の活性薬剤は、異なる用量で、異なる投薬頻度で、または異なる経路を介して、いずれか適切な方で投与されてもよい。
【0071】
本明細書では、「同時に投与される」という用語は特に制限されるものではなく、本開示の化合物と追加の活性薬剤が、例えば混合物としてほぼ同時に、または直ちに連続する順序で投与されることを意味する。
【0072】
本明細書では、「連続的に投与される」という用語は特に制限されるものではなく、本開示の化合物と追加の活性薬剤が同時に投与されるのではなく、投与間に特定の時間間隔を設けて交互に、または一組で投与されることを意味する。前記時間間隔は、本開示の化合物と追加の活性薬剤それぞれの投与間で同じまたは異なっていてもよく、例えば2分~96時間、1~7日あるいは1週間、2週間、3週間の範囲から選択することができる。通常、投与間の時間間隔は、2分~72時間、30分~24時間、1~12時間など、数分~数時間であってもよい。さらなる例として、24~96時間、12~36時間、8~24時間、6~12時間の時間間隔が挙げられる。
【0073】
本開示の化合物と追加の活性薬剤とのモル比は特に制限されるものではない。例えば、本開示の化合物と1つの追加の活性薬剤が組成物中で組み合わされると、これらのモル比は1:500~500:1、1:100~100:1、1:50~50:1、1:20~20:1、1:5~5:1、または1:1の範囲であってもよい。本開示の化合物と2つ以上の他の活性薬剤とが組成物中で組み合わされるときも、同様のモル比が適用される。本開示の化合物は、組成物の約1%~10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~60%、約60%~70%、約70%~80%、約80%~90%、または約90%~99%の所定のモル重量パーセンテージを含んでもよい。
【0074】
本開示の化合物の使用方法
PDE9は、好中球、網状赤血球、赤白血球細胞を含むヒト造血系に特異的に発現される。さらに、SCD患者における網状赤血球と好中球におけるPDE9発現は、健常者と比較して顕著かつ有意に上昇している(Almeida et al.,Br J Haematol.2008 Sep;142(5),836).加えて、薬理学的PDE9阻害によりSCD好中球の異常な接着特性が改善されるため、PDE9と細胞接着との関連性が実証される(Miguel et al.,Inflamm Res.2011 Jul;60(7),633)。PDE9阻害が細胞接着を減らす機構は、cGMPの増加と内皮接着分子発現の減少により媒介されると示されている。重要なことに、SCDの動物モデルでは、PDE9阻害剤により媒介される細胞接着減少には、細胞生存増加という機能的効果があった。HUと比べて少ない細胞接着を実証することに加えて、PDE9阻害の結果、胎児非鎌状ヘモグロビン(HbF)産生が増加し、これにより赤血球(Rbc)内の異常ヘモグロビン(HbS)の細胞濃度が減少して、異常ヘモグロビンとそれに関連する後遺症の重合が少なくなる。SCDの処置におけるHbF増加の重要性は、Cooperative Study of Sickle Cell Diseaseのような大規模試験の結果のほか、米国外の様々な患者コホートに対する試験により裏付けられており、データより、HbFがこの疾患の最も重要な修飾物質にある(Alsultan et al.,Am J Hematol.2013,88(6),531)ほか、HbFの修飾物質が他の血液学的パラメータを改善する(Akinsheye、Blood,2011,118(1):19)ことが認められる。最終的にAlmeidaたちは、SCDマウスモデルに対するHUとPDE9阻害との併用による処置が、HUのcGMP上昇効果の付加的で有益な増幅をもたらすことを実証した(Almeida et al.,Blood.2012 Oct;120(14),2879)。結論として、PDE9阻害は胎児ヘモグロビンの産生の発現を調節するほか、細胞接着を減らすことができ、ともにSCDの処置の重要な機構である。
【0075】
本開示のPDE9阻害剤とヒドロキシ尿素(HU)は、異なる機構を介して作用する。HUは一酸化窒素(NO)値を上昇させ、これにより可溶性グアニリルシクラーゼ(sgc)を活性化させてcgmpを生成する。本開示のPDE9阻害剤は、PDE9酵素活性を阻害することによりcGMPの分解を遮断し、これによりcGMP値を上昇させる。赤血球系統では、cGMPはプロテインキナーゼG(PKG)に結合し、胎児ガンマグロビンの統合、そして最終的にHbFの産生に対しシグナルを伝達する。PDE9発現が高い造血細胞では、PDE9活性の直接阻害によりcGMP値が上昇し、これにより白血球接着の減少が促される。
【0076】
本開示の一態様は、本開示のPDE9阻害剤、および本開示のPDE9阻害剤を含む医薬組成物を使用する方法を提供する。
【0077】
本開示のPDE9阻害剤は、鎌状赤血球病などの疾患、および/または、貧血、鎌状ヘモグロビンC疾患(SC)、血管閉塞性発作、疼痛発作(鎌状赤血球発作)、脾臓隔離発作、急性胸部症候群、不良性発作、溶血性発作、長期疼痛、細菌感染、脳卒中などの鎌状赤血球症に関連する症状を処置するために使用することができる。
【0078】
一実施形態では、本開示のPDE9阻害剤は、被験体のヘモグロビン値を上昇させるために使用される。
【0079】
別の態様では、本開示のPDE9阻害剤は、被験体の細胞または血漿中のcGMP値を上昇させるために使用され、前記被験体は鎌状赤血球症を患っている。前記細胞は、赤血球および/または白血球でもよいがこれらに限定されるものではない。前記cGMP値は、少なくとも50%、少なくとも100%、または少なくとも150%上昇する場合がある。いくつかの実施形態では、前記cGMP値は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、または25倍上昇する場合がある。
【0080】
別の実施形態では、本開示のPDE9阻害剤は、被験体の胎児ヘモグロビン(HbF)陽性赤血球数を増加させるために使用され、前記被験体は鎌状赤血球症を患っている。前記HbF陽性赤血球数は、少なくとも50%、少なくとも100%、または少なくとも150%増加する。いくつかの実施形態では、前記HbF陽性赤血球数は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、または25倍増加する。
【0081】
別の実施形態では、本開示のPDE9阻害剤は、被験体の鎌状赤血球率(%鎌状RBC)、うっ滞率(%うっ滞)、総ビリルビン、または総白血球数を減らすために使用され、前記被験体は鎌状赤血球症を患っている。前記%鎌状RBC、%うっ滞、総ビリルビン、総白血球数、または脾臓重量は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%減少する。
【0082】
cGMP値は、酵素免疫測定法などの当該技術分野における任意の適切な方法で測定されてもよい。
【0083】
本明細書で使用されるHbF陽性細胞は、Hbfを伴う赤血球を意味する。HbF陽性細胞は、電気泳動法および/または比色法などの当技術分野における任意の適切な方法により、血液試料から測定されてもよい。
【0084】
本明細書では、鎌状赤血球(Sickle red blood cells,sickled red blood cells)は、三日月状または鎌状の赤血球を意味する。鎌状赤血球の割合は、当技術分野における任意の適切な方法で血液試料から測定可能である。
【0085】
本明細書では、うっ滞または微小血管うっ滞は、血管を通る血流またはリンパ流の深刻な減速または完全な停止である。%うっ滞は、流れる細静脈の数で割り100倍した、静止した(流れのない)細静脈の数である。%うっ滞は、当該技術分野における任意の適切な方法で測定可能である。
【0086】
本明細書では、総ビリルビンは、非抱合ビリルビンと抱合ビリルビンの両方を意味する。総ビリルビン値は、当技術分野における任意の適切な方法により血液試料から測定可能である。
【0087】
本明細書では、総白血球数(Total leucocyte count or total white blood cell count)は、体内の白血球の数を測定する血液検査である。総白血球数は、当技術分野における任意の適切な方法により血液試料から測定可能である。
【0088】
本開示の別の態様では、少なくとも1つの他の活性薬剤と併用して本開示のPDE9阻害剤を使用する方法が提供される。これらの薬剤は同時、または連続的に投与されてもよい。これらの薬剤は、同時投与用の混合物として提供されるか、または、それぞれ連続投与用の別個の容器に入れられてもよい。
【0089】
本明細書では、「同時投与」という用語は特に制限されるものではなく、本開示のPDE9阻害剤と少なくとも1つの他の活性薬剤が、例えば混合物としてほぼ同時に、または直ちに連続する順序で投与されることを意味する。
【0090】
本明細書では、「連続投与」という用語は特に制限されるものではなく、本開示のPDE9阻害剤と少なくとも1つの他の活性薬剤が同時に投与されるのではなく、投与間に特定の時間間隔を設けて交互に、または一組で投与されることを意味する。前記時間間隔は、本開示のPDE9阻害剤と少なくとも1つの他の活性薬剤それぞれの投与間で同じまたは異なっていてもよく、例えば2分~96時間、1~7日あるいは1週間、2週間、3週間の範囲から選択することができる。通常、投与間の時間間隔は、2分~72時間、30分~24時間、1~12時間など、数分~数時間であってもよい。さらなる例として、24~96時間、12~36時間、8~24時間、6~12時間の時間間隔が挙げられる。
【0091】
本開示のPDE9阻害剤と少なくとも1つの他の活性薬剤とのモル比は特に制限されるものではない。例えば、本開示のPED9阻害剤と1つの他の活性薬剤が組成物中で組み合わされると、これらのモル比は1:500~500:1、1:100~100:1、1:50~50:1、1:20~20:1、1:5~5:1、または1:1の範囲であってもよい。本開示のPED9阻害剤と2つ以上の他の活性薬剤とが組成物中で組み合わされるときも、同様のモル比が適用される。本開示のPED9阻害剤は、組成物の約1%~10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~40%、約40%~50%、約50%~60%、約60%~70%、約70%~80%、約80%~90%、または約90%~99%の所定のモル重量パーセンテージを含んでもよい。
【0092】
他の活性薬剤は、本開示とは異なるPED9阻害剤またはHUであってもよい。他の活性薬剤はさらに、ペニシリンなどの抗菌薬、ジクロフェナクやナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、オピオイドなどの疼痛緩和薬物、または葉酸であってもよい。
【0093】
本開示のまた別の態様では、輸血、骨髄移植、遺伝子治療などではあるがこれらに限定されるものではない少なくとも1つの他の治療と併用して、本開示のPDE9阻害剤を使用する方法が提供される。
【0094】
キットとデバイス
本開示は、本開示の方法を利便的かつ/または効果的に実施するための様々なキットとデバイスを提供する。一般的にキットは、ユーザーによる被験体を対象とする複数の処置および/または複数の実験の実行を可能にするのに十分な量および/または数の構成要素を含む。
【0095】
一実施形態では、本開示は鎌状赤血球症を処置するためのキットを提供し、該キットは、本開示のPDE9阻害剤化合物、または、本開示のPDE9阻害剤化合物と、場合によりHUなどの他の活性薬剤、ペニシリンなどの抗生物質剤、ジクロフェナクやナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、オピオイドなどの疼痛緩和薬、葉酸などとの併用薬を含む。
【0096】
前記キットは、製剤組成物を形成するための包装と指示書、および/または送達剤(delivery agent)をさらに備えてもよい。送達剤は、生理食塩水、緩衝溶液、または本明細書に開示される任意の送達剤を含む場合がある。各成分の量は、再現性のある一貫した高濃度食塩水または単純なバッファー製剤を可能にするように変更することができる。これら成分はさらに、一定期間にわたる、および/または様々な条件下で緩衝溶液中のPDE9阻害剤化合物の安定性を増加させるために変更することもできる。
【0097】
本開示は、本開示のPDE9阻害剤化合物を組み込むことができるデバイスを提供する。これらデバイスは、鎌状赤血球症のヒト患者などの被験体に直ちに送達するために利用可能な安定した医薬製剤を含有している。
【0098】
これらデバイスの非限定的な例として、ポンプ、カテーテル、針、経皮パッチ、加圧嗅部送達デバイス、イオン導入デバイス、多層微小流体デバイスが挙げられる。これらのデバイスは、単回投与、複数回投与、または分割投与のレジメンに従い本開示のPDE9阻害剤化合物を送達するために利用されてもよい。前記デバイスは、生体組織全体、皮内、皮下、または筋肉内に本開示のPDE9阻害剤化合物を送達するために利用されてもよい。PDE9阻害剤化合物を送達するのに適したデバイスのさらなる例として、国際公報WO2014036555に開示された膀胱内薬物送達用の医療デバイス、米国出願公報第20080108697号に開示されたI型ガラス製のガラスボトル、米国出願公報第20140308336号に開示された分解性ポリマーと活性薬剤で製造されたフィルムを含む薬物溶出デバイス、米国特許第5716988号に開示された注入マイクロポンプを有する注入デバイスまたは活性薬剤の薬学的に安定した調製物を含有する容器、国際公報WO2015023557に開示されるリザーバーと該リザーバーに流体連通するチャネリング部材とを備えた埋め込み可能デバイス、米国出願公報第20090220612に開示される1つ以上の層を持つ中空繊維ベースの生体適合性薬物送達デバイス、国際公報WO2013170069に開示される固体または半固体の薬物を含有するリザーバーを規定する筐体を有する細長い可撓性デバイスを備えた薬物送達用の埋め込み可能デバイス、米国特許第7326421号に開示される生体吸収性インプラントデバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら文献の各々の内容はその全体を参照することで本明細書に引用される。
【0099】
定義
本明細書では、冠詞「a」と「an」は、特に反対の指示が明確にない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解する必要がある。
【0100】
本明細書では、語句「および/または」は、結合された複数の要素、すなわち、場合によっては結合的に存在し、かつ他の場合には別々に存在する複数の要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解する必要がある。他の要素は随意に、特に反対の指示が明確にない限り、具体的に特定された要素との関連性の有無にかかわらず、「および/または」節により具体的に特定される要素とは別に存在する場合がある。ゆえに非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などのオープンエンド言語と共に使用される場合、一実施形態ではBを含まないA(随意にB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態ではAを含まないB(随意にA以外の要素を含む)を指し、また別の実施形態ではAとBの両方(随意に他の要素を含む)を指す場合がある。
【0101】
本明細書では、「または」は、上記に定義されるように「および/または」と同じ意味を持つことを理解する必要がある。例えば、列記した項目を分けるとき、「または」や「および/または」は包括的と解釈されることになり、すなわち、少なくとも1つだけでなく、要素の数あるいは列記のうち1つより多く、そして場合により列記していない追加の項目も含むことになる。「~のうち1つのみ」、「~のうち正確に1つ」、特許請求の範囲での使用時における「~から成る」などの、反対の指示が明確に存在する用語のみが、要素の数または列記のうち正確に1つの要素を含むことを指す。
【0102】
一般に、本明細書では「または」という用語は、「いずれか」、「~のうち1つ」、「~のうち1つのみ」、「~のうち正確に1つ」、特許請求の範囲での使用時における「~から成る」などの排他的な用語が先行するとき、排他的な代替物(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)としてのみ解釈されることになり、特許法の分野で使用される通常の意味を持つことになる。
【0103】
本明細書では、語句「少なくとも1つの」は、1つ以上の要素の列記に関して、列記した要素のうち1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解されるが、必ずしも、列記した要素内に具体的に列記されるあらゆる要素のうち少なくとも1つを含み、かつ列記した要素における要素の任意の組み合わせを除外する必要はない。本定義によってさらに、要素は随意に、具体的に特定される要素の関連性の有無にかかわらず、語句「少なくとも1つの」が指す要素の列記内に具体的に特定される要素とは別に存在することが可能となる。
【0104】
ゆえに非限定的な例として、「AとBのうち少なくとも1つ」(または同様に、「AまたはBのうち少なくとも1つ」、あるいは「Aおよび/またはBのうち少なくとも1つ」)は、一実施形態では1より多くを、すなわちAを含むがBを含まないこと(随意にB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態では1より多くを、すなわちBを含むがAを含まないこと(随意にA以外の要素を含む)を指し、また別の実施形態では1より多く、すなわちAを含むか、1より多く、すなわちBを含むことの少なくとも1つ(随意に他の要素を含む)などを指す場合がある。
【0105】
本明細書では、「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「持つこと(carrying)」、「有すること(having)」、「含有すること(containing)」、「関与すること(involving)」、「保持すること(holding)」などの移行句はすべて、オープンエンド、すなわち、~を含むがこれらに限定されるものではないことを意味すると理解されたい。
【0106】
移行句「~からなる(consisting of)」と「~から実質的になる(consisting essentially of)」のみが、それぞれ米国特許審査基準に明記されるような、閉鎖または半閉鎖移行句である。
【0107】
本明細書では、「被験体」または「患者」は、疾患または障害、例えば腫瘍形成や癌に敏感な場合がある哺乳動物など、任意の哺乳動物(例えばヒト)を指す。例として、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはマウス、ラット、ハムスター、モルモットなどのげっ歯類が挙げられる。様々な実施形態では、被験体は、処置、観察、または実験の対象であったか、または対象となる予定の被験体を指す。例えば被験体は、癌の診断あるいはその他の方法により癌を患っていると分かった被験体、被験体に把握された癌に基づく処置、観察、または実験を選択される被験体を指す場合がある。
【0108】
本明細書では、「処置」または「処置すること」は、疾患あるいは障害、またはそれらの少なくとも1つの徴候あるいは症状の改善を指す。「処置」または「処置すること」は、例えば少なくとも1つの徴候あるいは症状の安定化により求められるような疾患あるいは障害の進行の減少、または、少なくとも1つの徴候あるいは症状の進行速度の低下により求められるような進行速度の低下を指す場合がある。別の実施形態では、「処置」または「処置すること」は、疾患または障害の発症を遅らせることを指す。
【0109】
本明細書では、「予防」または「予防すること」は、所与の疾患あるいは障害の兆候あるいは症状を獲得または抱えるリスクの低下、すなわち予防的処置を指す。
【0110】
本明細書では、「治療上有効量」という語句は、所望の治療効果を生じさせるのに有効な、化合物、材料、または本開示の化合物を含む組成物の量を意味する。したがって、治療上有効な量により、疾患あるいは障害が処置または予防され、前記障害の少なくとも1つの徴候あるいは症状が改善する。様々な実施形態では、前記疾患または障害は癌である。
【0111】
ダッシュ(-)は、2つの文字または記号間にない場合、置換基の結合点を示すために使用される。例えば、-CONH2は炭素原子(C)を介して結合されている。
【0112】
「随意の」または「随意に」は、続いて記載される事象または状況が生じる場合もあれば生じない場合もあること、かつ、その記載には前記事象または状況が生じる例と生じない例とが含まれることを意味する。例えば、「随意に置換されたアリール」は、本明細書に定義されるような「アリール」と「置換アリール」の両方を包含する。1つ以上の置換基を含有する任意の基に関して、このような基は、立体的に非実用的であり、合成的に実現不可能であり、および/あるいは本質的に不安定である任意の置換または置換パターンを導入するように意図されていないことが、当業者に理解されるであろう。
【0113】
本明細書中のすべての数値範囲は、列挙した数値範囲内にある全数値、および全数値の範囲を含む。非限定的な例として、(C1-C6)アルキルは、C1、C2、C3、C4、C5、C6、(C1-C2)、(C1-C3)、(C1-C4)、(C1-C5)、(C2-C3)、(C2-C4)、(C2-C5)、(C2-C6)、(C3-C4)、(C3-C5)、(C3-C6)、(C4-C5)、(C4-C6)、(C5-C6)の各アルキルのうちいずれか1つを含む。
【0114】
さらに、本開示の広範囲を示す数値範囲とパラメータは上述したような近似値であるが、実施例の章に記載する数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、このような数値は本質的に、測定装置および/または測定技法から生じる誤差を包含することを理解されたい。
【0115】
略語と用語のリスト
1H-NMR:プロトン核磁気共鳴分光法
ADME:吸収、分布、代謝、排泄
AE:有害事象
AUC0-24:投与後0時間~24時間の濃度時間曲線下面積
BBB:血液脳関門
Cmax:最大血漿濃度
cGMP:環状グアノシン一リン酸
DMSO:ジメチルスルホキシド
DSFC:背側皮膚透明窓
F細胞:胎児ヘモグロビンを有する血液細胞
FIH:ファースト・イン・ヒューマン
FTIR:フーリエ変換赤外分光法
GC:ガスクロマトグラフィー
HBB:ヘモグロビンサブユニットβ
HbF:胎児ヘモグロビン
HBG:ガンマ-グロビン遺伝子
HbS:鎌状ヘモグロビン
hERG:ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(human ether-a-go-go related gene)
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
HU:ヒドロキシ尿素
IC:阻止濃度
IC50:半数最小阻止濃度
ICAM-1:細胞間接着分子-1
ICH:医薬品規制調和国際会議
ICP-MS:誘導結合プラズマ質量分光法
IV:静脈内
MAD:反復投与漸増
MTD:最大耐用量
NO:一酸化窒素
NOAEL:最大無有害量
PD:薬力学的
PDE9:ホスホジエステル-9
PEG:ポリエチレングリコール
PIC:カプセル中の粉末
PK:薬物動態
PKG:プロテインキナーゼG
RBC:赤血球
RH:相対湿度
SCD:鎌状赤血球症
SD:標準偏差
SEM:平均標準誤差
sGC:可溶性グアニリルシクラーゼ
t1/2:半減期
TK:毒物動態
Tmax:最大濃度の時間
VOC:血管閉塞性発作
WBC:白血球
w/w%:重量/重量パーセント
【実施例】
【0116】
以下の実施例は本開示を例示すること目的とするがこれを限定するものではないことを理解されたい。上記説明と実施例の他の様々な例と修正は、本開示の趣旨と範囲から逸脱することなく本開示を読むことで当業者に明白となるものであり、このような例または修正はすべて、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。本明細書で言及される刊行物と特許はすべて、その全体を参照することで本明細書に引用される。
【0117】
実施例1.化合物1の合成と製剤化
化合物1は、WO2013/053690に開示される6-[4-メチル-1-(ピリジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オンの鏡像異性体である。化合物1は、WO2013/053690に開示される方法に従い6-[4-メチル-1-(ピリジン-2-イルメチル)ピロリジン-3-イル]-3-テトラヒドロピラン-4-イル-7H-イミダゾ[1,5-a]ピラジン-8-オンからのキラル選択的精製により調製されてもよく、前記公報の内容はその全体を参照することで本明細書に引用される。化合物1はさらに、WO2017/005786に開示される方法を用いて調製されてもよく、前記公報の内容はその全体を参照することで本明細書に引用される。
【0118】
【0119】
進行中の臨床開発に使用されるべき化合物1の薬物製品は、即時放出錠剤である。様々な錠剤強度とプラセボの外観の均一性を確保するための被膜を使用してもよい。
【0120】
賦形剤または加工助剤を含まない不透明な白色ゼラチンカプセル(Powder in Capsule、PIC)に直接詰めた化合物1原薬を用いて、早期臨床試験を実施した。経口投与用医薬品の賦形剤配合錠剤を開発し、これにより製造プロセスのスケールアップと含有量の均一性確保が可能になった。これら錠剤を、純度、効力、溶解、総好気性微生物数、そして総酵母数と生菌数に関する規定の制限について試験した。さらに、特定の微生物に対する試験を行った。
【0121】
各錠剤は、化合物1原薬(APIの一水和物)20mg、50mg、100mg、あるいは200mg、またはプラセボを含んでいる。代表的な錠剤組成を以下の表1に示す。
【0122】
【0123】
コア錠剤の目標重量400mg、被覆錠剤の目標重量440mgとなるように、すべての錠剤を構成した。これを達成するために、化合物1と微結晶セルロースの量を適宜調整した。他の賦形剤すべての量を一定のままにした。
【0124】
製造プロセスとプロセス制御の説明
被覆錠剤の製造は、配合、錠剤圧縮、および被覆に関する一般的な手順に従う。
【0125】
原薬のローラー圧縮:
まず、さらなる配合と処理に適した従来よりも均一な中間体を達成するために、化合物1原薬をローラー圧縮により処理した。規定量のAPIを200~300PSI、ローラー速度4.0RPMでローラー圧縮機に通した。ローラー圧縮した材料を20メッシュスクリーンに通し、均一な粒径を得た。圧縮してスクリーニングしたAPIは、錠剤製造に使用するまで二重裏打ちポリエチレンバッグに保管した。
【0126】
ローラー圧縮された原薬と賦形剤との配合:
規定量のローラー圧縮APIを、16qt.V-shell Blenderを使用して規定の賦形剤(被覆液を除く)と混合した。規定の期間内にブレンダーが300回転以上回転するような方法で、配合を実施した。配合物の均一性を検証するために、V-Shell Blender内の複数の場所から試料を採取した。
【0127】
さらに処理を行うまで、二重裏打ちポリエチレンバッグ内の適切なHDPE容器内に配合した材料を保管した。
【0128】
錠剤化:
11mmの上下平面錠剤パンチ(upper and lower plain-faced tablet punche)による重力供給錠剤プレスによって錠剤を製造した。以下に定義されるように、錠剤の重量、硬度、厚み、破砕性、および崩壊性に関する所定の仕様を満たすように錠剤プレスを調整した。すべてのコア錠剤を金属探知器によりスクリーニングし、フィルムコーティング前に除塵する。
【0129】
フィルムコーティング:
精製水の中で規定量のOpadry II Whiteを混合し、懸濁液を45分以上混合することにより、均一な被覆混合物を調製した。錠剤をパンコーティング装置に装填し、43℃に予熱してから被覆操作を開始した。次いで予熱した錠剤を、15インチのコーティングパンの中、10~15RPMで回転させながら被覆した。被覆懸濁液の噴霧速度を10g/分に調節し、入口空気温度を40~60℃に維持した。
【0130】
規定の間隔で錠剤をサンプリングし、計量して、所望の目標重量増加(10%)が達成されたかどうかを判定した。被覆完了後、被覆錠剤を30℃以下に冷却した。
【0131】
バルク包装:
放出試験のために被覆錠剤をサンプリングし、続いて二重裏打ちポリエチレンバッグで二重に裏打ちされたHDPE容器に移した。
【0132】
臨床包装:
錠剤に臨床試験用の包装を施した。この包装には、特定を確実にするためにバッチ番号を付けた各容器のインクジェット標識が含まれる。33個の錠剤を手で数えながら各60cc丸底白色HDPEボトルに詰めた。別の者が数を確認してから、各ボトルを充填した。充填後、各ボトルを33mm白色ポリプロピレン・チャイルドレジスタント・キャップにより手で封をし、誘導シールを施した(induction seal)。
【0133】
実施例2.錠剤300mgの開発
錠剤300mgの開発活動では、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL-SFP)の添加と微結晶セルロース(Avicel PH200)のパーセントレベルの上昇により、破砕性試験中に錠剤の硬度上昇と損失量減少という許容可能な結果を得たことが認められる。しかし、HPCを添加すると、平均崩壊時間が1分未満から約37分に延びてしまった。複数のHPC-SSL-SPFパーセントレベルを錠剤300mgの製剤化において評価した。評価対象の製剤を以下の表2に示す。
【0134】
【0135】
許容可能な結果をもたらした製剤を突き止めるため、様々なパーセントレベルのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL-SFP)の複数の製剤を評価した。フィルムコーティング錠剤300mgの開発に利用される製剤を以下の表3に示す。
【0136】
【0137】
配合/造粒:
開発に用いる賦形剤を、2,380個の錠剤のバッチサイズについて記録した。化合物1原薬をローラー圧縮した。化合物1とすべての賦形剤を、以下の順序で20メッシュのハンドスクリーンによりスクリーニングした:1)化合物1原薬、2)アルファでん粉(Starch 1500)、3)コロイド二酸化ケイ素(Cab-O-Sil)、4)微結晶セルロース(Avicel PH200)。
【0138】
目標重量の達成後、硬度プロファイル(錠剤硬度対崩壊時間)を確立し、サンプルを採取した。各サンプルを使用して、重量、硬度、厚み、崩壊性、破砕性を含む錠剤の物理特性を試験した。
【0139】
プロセス内ガイドライン:
錠剤の厚みの範囲:4.65~4.85mm。
【0140】
錠剤の硬度目標:10kP。
【0141】
破砕性(USP Friability):0.3%以下、キャッピングなし。
【0142】
崩壊性(USPごと):全錠剤が15分以内に完全に崩壊する。
【0143】
被覆:
開発バッチから得た錠剤を、目標条件下で被覆し、パンコーティングに耐えることのできるコア錠剤を評価した。錠剤をコーティングパンに投入する前に、パンにOpadry II,85F18422,Whiteを噴霧し、乾燥させた。被膜の剥離がないことを確認するために、操作者は噴霧プロセスと乾燥プロセスをモニタリングした。これにより、すり傷などのコーティングパンにより生じる血管が錠剤に生じるのを防ぐ、被膜の薄層が形成された。Opadry II,85F18422,Whiteにより錠剤を被覆すると重量が4.8%増加した。
【0144】
結果と考察:
開発活動の目標は、最適なパーセントレベルのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL-SFP)を含む化合物1の錠剤の製剤を開発し、これにより許容可能な結果をもたらすことであった。この製剤を利用して、許容可能な硬度、厚み、破砕性、および崩壊結果を伴う錠剤を製造した。各製剤の錠剤を硬度、厚み、破砕性、および崩壊性を試験した。目標結果は、(1)厚み:4.50~4.80mm、(2)破砕性:損失0.3%以下失、(3)崩壊:15分以下、および(4)硬度10kpaである。破砕性、崩壊性、および硬度をUSP配合基準(米国薬局方と国民医薬品集が、容認された試験標準である)に対して試験した。
【0145】
0.5%HPCでの破砕性(Feasibility)バッチ:
最初に評価した製剤には0.5%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL-SFP)が含まれており、この製剤を以下の表4に示す。
【0146】
【0147】
錠剤は、目標充填重量420.0mg、厚み範囲4.50mm~4.80mmで調製する必要があった。
【0148】
崩壊時間を検査するために、6個の錠剤が完全に崩壊するまで連続して複数の錠剤を水に沈め、この結果を以下の表5に示す。
【0149】
【0150】
この目標は、全錠剤を15分以内に完全に崩壊させることであった。表5のデータによると、全錠剤が15分未満で完全に崩壊しため、目標時間が達成された。目標充填重量420.0mgを用いて残りの錠剤配合物を圧縮した。
【0151】
さらに、破砕性に関する物理試験を実施した。破砕性試験では、圧縮後に錠剤が細粉され、砕かれ、または粉砕される傾向のある錠剤を調べる。バッチの合格基準は、パーセント損失0.3%以下であった。破砕性試験中に集めたデータを以下の表6に示す。
【0152】
【0153】
0.5%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL-SFP)のパーセントレベルを得たことで、バッチレコードに提供される合格基準が満たされた。
【0154】
1.5%HPCでの破砕性バッチ
1.5%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL-SFP)を含む製剤を用いた錠剤を圧縮し、これらの錠剤に関する物理特性を試験して、許容可能な結果が得られるかどうかも確認した。製剤を以下の表7に示す。
【0155】
【0156】
3個の錠剤が完全に崩壊するまで連続的に複数の錠剤を水に沈めた。その結果を表8に示す。
【0157】
【0158】
崩壊時間はすべて15分の合格基準を超過しており、崩壊結果の失敗が認められる。ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL-SPF)レベルの上昇により、崩壊時間は上昇する。破砕後の損失が0.3%未満であることに留意されたい。
【0159】
物理試験の完了後、錠剤にフィルムコーティングを施して重量を約4.8%w/w増加させた。各製剤に対して実施した物理試験の結果を比較した後、化合物1の錠剤300mg(0.5%HPC)により錠剤に対する許容可能な結果が得られたと判定した。
【0160】
実施例3.化合物1は白血球の接着と活性化を低下させる
多形性単核細胞(PMN)、具体的に好中球は、鎌状赤血球症(SCD)の病因に重要な役割を果たすものであり、活性化された好中球の方が血小板と血管内皮との接着性を増すことが示されている。近年、内皮細胞に結合する白血球を標的とする様々な薬物が、患者への臨床研究において進められている。化合物1は、患者由来細胞とSCDマウスモデルにおける胎児ヘモグロビンの発現を増加させ、SCDマウスモデルにおける血管閉塞を減らすことができる。この実施例では、SCD患者由来の好中球の接着特性を低下させるとともにマウスSCDモデルにおけるsE-セレクチン(sE-Sel)とPMN活性化マーカーを減少させる、化合物1の能力を試験した。
【0161】
内皮E-セレクチン(E-Sel)は白血球のローリング動作を遅らせる。この動作の後、活性化された白血球の固定接着と遊出が生じる。se-Selの血漿値はE-Selの細胞外ドメインの酵素切断により生じるものであり、SCD患者において上昇する。この上昇は白血球との相互作用により媒介される場合がある。タウンズマウスモデルにおける血漿sE-Sel値は、対照マウスの値(57mg/ml)よりも144%高い(139mg/ml)。この値は化合物1で処置したタウンズマウスで大幅に低下し、中でも血漿sE-Sel値は対照マウス(92mg/ml)よりも61%しか高くなかった。
【0162】
化合物1は、SCDモデルではPMNの循環値を低下させたが、健康な動物を対象とする長期試験では低下させなかったことが分かった。このことは、疾患特異的細胞活性化の化合物1により媒介される減少に付随するものと考えられ、この減少には、肺における骨髄由来ミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルの67%低下と好中球由来アルギナーゼレベルの26%低下が含まれる(
図1)。血流を模倣する先述のインビトロ接着アッセイでは、活性化内皮細胞HMEC-1がマイクロチャネルの内面を覆う。このアッセイを使用すると、SS(鎌状細胞の最もよくみられる形態)患者から採取した灌流全血試料から、好中球が凝集して内皮単分子層に結合することが認められる。このことがマイクロチャネル内の緑色蛍光パッチのリアルタイムモニタリングによって定量化されたのは、好中球が灌流工程前に特定のAlexa Fluor(登録商標)488抱合抗体によって標識されるためである。未処置患者の好中球より、活性化HMEC-1への相当量の接着を認めた。灌流工程前に血液試料に添加されると、化合物1は、大幅にかつ用量依存的に接着を減少させた。阻害効果は早ければインキュベーションの15分で始まり、最も強力な接着阻害は30μmの化合物1による30分間のインキュベーションで観察された。これらの条件下で、接着性は平均54%(p=0.03)減少した(
図2)。機械論的には、いかなる理論にも縛られることは望まれないが、化合物1が好中球の固定接着工程を標的とする場合があるのは、CD11a[23%減少(p=0.002)]、CD11b[39%減少(ns)]、CD18[47%減少(p=0.03)]を含む主要好中球インテグリンの発現レベルを低下させるためである(
図3)。
【0163】
これらのデータを合わせると、循環中の細胞数から独立して好中球の異常接着を標的とすることでSCDのPBMC媒介性症状を減少させることにおける、化合物1の役割が認められる。
【0164】
実施例4.鎌状赤血球貧血(SCA)の成人患者における化合物1に対する第2a相無作為化二重盲検プラセボ対照試験
目的:
主要目的は、ホモ接合鎌状赤血球貧血(HbSS)または鎌状β0サラセミアと定められる鎌状赤血球貧血(SCA)を患うがヒドロキシ尿素(HU)を投与されていない成人患者と、HUの安定用量を投与されるSCA成人患者における化合物1の安全性と忍容性を評価することである。
【0165】
副次的目的は、臨床的に関連するPK相互作用が認められるかどうかを突き止めるために、HUの安定用量を投与される/投与されていないSCA成人患者における化合物1の薬物動態(PK)プロファイルを特徴付けること、そして化合物1の投与前後のSCA成人患者におけるHUのPKプロファイルを特徴付けることである。
【0166】
探索目的は、安定したHUを投与される/投与されていないSCA成人患者における化合物1の薬力学的(PD)効果を評価すること、そして安定したHUを投与される/投与されていないSCA成人患者におけるSCA関連臨床転帰測定に対する化合物1の起こり得る有効性を評価することである。
【0167】
方法論:
この試験は無作為化二重盲検プラセボ対照試験であり、これにより、SCA患者の2集団、HUを投与されない集団(集団A)とケア標準に従いHUの安定用量を投与される集団(集団B)とに16~24週間かけて1日1回投与される、ホスホジエステラーゼ9(PDE9)阻害剤である化合物1の安全性、忍容性、PK、探索的PD、臨床転帰が評価される。最大で約36人の患者を集団Aに、18人の患者を集団Bに登録する。
【0168】
集団Aでは、最大4週間のスクリーニング期間の後、集団Aの適格患者(すなわち、HUを投与されていない患者)に、化合物1またはプラセボを計24週間かけて投与する。1日目、最初の12週間にわたり毎日、30mgあるいは50mgの化合物1、100mgの化合物1、またはプラセボをそれぞれ服用する群に患者を1:1:1で無作為化し、次の12週間(13~24週目)で各患者の用量は倍増(すなわち、50mgから100mg、100mgから200mgに倍増、またはプラセボを倍増)されてもよい(プラセボと化合物1の全用量レベルは見た目上同じであるため、用量漸増は試験薬物の盲検には影響しない)。試験全体において、利用可能な臨床データはすべて約2週間ごとに検討され、各患者個別の臨床安全性データの検討に基づいて承認された場合にのみ、85日目に個々の患者単位で用量が漸増される。
【0169】
集団Bでは、最大4週間のスクリーニング期間の後、集団Bの適格患者(すなわち、安定したHUを投与される患者)はリードイン期間に入り、化合物1を含まない状態での患者に対するHU処方量のPKプロファイルを特徴付けるために(すなわち、患者のベースラインHU PKプロファイルを特徴付けるために)採血される。(少なくとも48時間の間隔を空けて10時間かけて採血された血液試料から)2つの完全なベースラインHU PKプロファイルが求められる。
【0170】
少なくとも4週間の安全性データが集団Aの6人の患者から検討され、集団Bに対する投与の開始が安全かつ適切であると判断されてから、集団Bに対する化合物1の投与を開始した。集団Bに対する投与開始の承認を得て、ベースラインHU PKの採血が完了すると、1日目に、16週間かけて30mgあるいは50mgの化合物1またはプラセボを服用する群に患者を2:1に無作為化する。最初の4週間(1~4週目)、無作為化処置の割り付けに従い患者に試験薬を投与する。次の12週間(5~16週目)、各患者の用量を倍増(例えば、50mgから100mgの倍増、またはプラセボの倍増)させてもよい。集団Aと同様に、各患者個別の臨床的安全性データの検討に基づいて承認された場合にのみ、29日目に用量が漸増される。
【0171】
研究デザインの理論的根拠:
これは患者集団(SCA患者)を対象とする最初の試験であり、そのため、SCA成人患者に対する用量の範囲にわたる化合物1の安全性、忍容性、PKのほか、起こり得るPD効果、臨床的有効性を調べるようにデザインされている。化合物1は承認された場合に、単剤として、またはHUとともに投与される可能性を考慮すると、化合物1の効果は、HUまたは他の治療を受けていないHbFレベルが中等度のSCA患者(集団A)のほか、HUの安定用量を現在投与されている患者(集団B)において評価される。
【0172】
利用可能な非臨床データと健康なボランティアの臨床データより、化合物1は安全であるとともに、30、50、100、200mg1日1回の投与では忍容性が良好であること、そして、少なくとも100mgの用量を少なくとも24週間投与したときに、起こり得る臨床上有益なPD効果が観察される可能性があることが裏付けられる。それゆえ、集団Aは、患者のPD用量応答のほか、用量100mgでの忍容性が良好であった鎌状赤血球患者の用量200mgの忍容性を調べるようにデザインされる。
【0173】
集団Bの結果はHUと同時に投与したときの化合物1に関する情報を得ることを目的としており、その両方が、細胞内cGMPを増加させる代替的な生化学経路を介してHbFレベルを増加させる。化合物1とHUとの併用投与を裏付ける臨床データが存在しないため、集団Bの患者は、集団Aに使用した低用量(30mgまたは50mg)の化合物1の投与を開始し、用量50mgが4週間にわたり安全で認容されている場合にのみ、用量100mgに漸増する。加えて、利用可能な非臨床データではHUと化合物1との併用投与は化合物1の曝露を増加させることが裏付けられないが、集団Bに対する投与は、4週間の安全性データが、集団Aにおいて30mgまたは50mg(集団Bの開始用量)、100mg(開始用量の2倍)、さらにプラセボをそれぞれ投与される2人の患者から利用可能になってから開始する。
【0174】
診断、主な包含基準:
包含基準:
各患者は、本試験に登録される次の基準をすべて満たす必要がある:1. 18歳以上50歳以下の男女。2. SCA(HbSSまたは鎌状β0サラセミア)の診断が確認される。まだ患者の記録が文書化されていない場合、SCAの診断は電気泳動、HPLC、および/またはジェノタイピングにより確認する必要があることに注意されたい。3. HUの使用歴。集団Aの患者は、スクリーニング前90日以内にHUを投与されず、次の6か月以内にHUを服用する予定はない。集団Bの患者は、少なくとも6か月間にわたりHUを投与され、スクリーニング前に少なくとも60日間にわたり用量が安定しており、次の6か月以内に用量レベル、用量レジメンを変更し、またはHUを中止する予定はない。4. 女性患者では、妊娠していないこと、妊娠の可能性が少ないことが条件である。男性患者では、パートナーを妊娠させる可能性は少ないことが条件である。
【0175】
除外基準:
以下の基準のいずれかを満たす患者を試験から除外する:1. スクリーニング時の総Hb値が11.0g/dL未満または6g/dL超の患者。2.網状赤血球数が100×109/L未満の患者。3. 過去1年以内に急性胸部症候群(ACS)や持続勃起症を含む血管閉塞性発作(VOC)による入院(少なくとも24時間)が3回を超える患者。4. 無腐性壊死(AVN)を除く何らかの理由で外来患者向けの長期オピオイド治療(毎日10mg以上に相当する経口モルヒネ)を投与されている。長期治療は8週間以上にわたりオピオイドを毎日連続して使用することと定義されることに留意されたい。5. 1日目の60日目以内、または長期輸血療法レジメン時に輸血用や献血用などの血液製剤を受けている患者。6. ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎(HCV)抗体(患者がHCVの治癒/クリアランスをもたらす薬物療法を完遂していない限り)、およびB型肝炎表面抗原(HBsAg)に対して陽性である患者。7. 妊娠の可能性のある女性患者において、1日目の血清のヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)試験(スクリーニング)または尿中hCG試験の結果が陽性である患者。8. クレアチニン、年齢、性別、民族性を用いたMDRD(Modification of Diet in Renal Disease)試験の方程式により、推定糸球体濾過率(eGFR)50mL/分未満と算出される患者。9. アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が正常上限(ULN)の3倍超の患者。10. ボディマス指数(BMI)17.5未満または35kg/m2超、総体重50kg未満の患者。11. 試験薬の初回投与前7日以内にPDE5抑制剤(シデナフィル、タダラフィル、バルデナフィルが挙げられるがこれらに限定されない)の使用歴がある、または試験中の任意の時点で使用する予定がある患者。12. 過去1年以内に試験責任医師により、薬物あるいはアルコール乱用の履歴があり、アルコール(飲酒検知器)検査(スクリーニング時あるいは-1日目)が陽性と判断される患者。13. 少なくとも5年間にわたり完全寛解していない癌を患っている患者。試験責任医師の見解において、疾病が適切に診断され、臨床的に寛解状態にあると判断され、かつ患者の試験参加が安全上の懸念を表す場合に、皮膚の扁平上皮癌あるいは基底細胞癌、局所化子宮頸癌、または局所化前立腺癌の患者を適格とみなす。14. 試験責任医師により、何らかの薬物、あるいは使用される試験薬の何らかの成分に対して臨床的に有意なアレルギー反応または過敏症の既往歴があると判断されている患者。15. ECG時、試験責任医師により、QT間隔Fridericiaの補正式(QTcF)が男性で450ms超、女性で470ms超と判断されるか、または臨床的に有意な異常の存在が認められる患者。16. 1日目の4週間以内に大手術、または2週間以内に小手術を受けている患者。17. 1日目の2週間以内にインフルエンザ様症候群などの呼吸器感染症が認められるか、または1日目の4週間以内に弱毒生ウイルスによるワクチン接種を受けている患者。18. 1日目の前30日以内に治験薬または治験デバイスを用いる試験に参加している患者。19. シメチジン、シクロスポリン、エリスロマイシン、オメプラゾール、リファンピン、リトナビル、およびセントジョンズワートが挙げられるがこれらに限定されない、シトクロムP450酵素(CYP)を強力に阻害または誘導すると知られている薬物または物質を、1日目の前30日目以内に使用したか、または試験中に使用予定がある患者。物質が認可されたものかどうかに関し疑問がある場合は、製品ラベル(該当する場合)を確認し、試験委託者に相談されたい。20. 1日目の前24時間以内にグレープフルーツ、グレープフルーツジュース、またはグレープフルーツ製品を消費している、または試験中にグレープフルーツ製品を消費する予定がある患者。21. アルフェンタニル、アバナフィル、ブデソニド、ブスピロン、コニバプタン、ダリフェナシン、ダルナビル、ダサチニブ、ドロネダロン、エバスチン、エレトリプタン、エプレレノン、エベロリムス、フェロジピン、イブルチニブ、インジナビル、ロミタピド、ルラシドン、マラビロック、ミダゾラム、ナロキセゴール、ニソルジピン、クエチアピン、サキナビル、シロリムス、タクロリムス、チカグレロール、ティプラナビル、トルバプタン、トリアゾラムが挙げられるがこれらに限定されない任意のCYP3A感受性基質(オピオイドを除く)を、1日目の前30日以内に使用している、または試験中に使用する予定がある患者。22. シクロスポリン、ロバスタチン、プロプラノロール、キニジン、シンバスタチンが挙げられるがこれらに限定されないP糖タンパク質(P-gp)の重要な基質または阻害剤と知られている薬物または物質を、1日目の前30日以内に使用している、または試験中に使用する予定がある患者。物質が認可されたものかどうかに関し疑問がある場合は、製品ラベル(該当する場合)を確認し、試験委託者に相談されたい。23. 試験責任医師の見解において、患者の安全性に影響し得るか、治療経過あるいはフォローアップの完了を妨げ得るか、あるいは試験結果に影響し得る、その他医学的状態、身体所見、あるいは臨床検査値異常の履歴があるか、または進行中の患者。
【0176】
治験薬、投与量、投与方法:
化合物1は50mg、100mg、または200mgの白色錠剤として供給され、食物とともに経口投与される。様々な用量の化合物1は、錠剤形態の場合は視覚的に同一である。
【0177】
基準療法、投与量、投与方法:
プラセボは化合物1のないマトリクスを含有する錠剤からなり、見た目は化合物1の錠剤と同一である。プラセボは食物とともに経口投与される。
【0178】
処置期間:
試験の合計期間は集団Aでは約32週間であり、その内、最大4週間はスクリーニング期間、24週間は処置期間、残る4週間は試験薬の最終投与後のフォローアップ期間である。
【0179】
集団Bの合計試験期間は約32週間であり、その内、最大4週間はスクリーニング期間、8週間はリードイン期間、16週間は処置期間、残る4週間は試験薬の最終投与後のフォローアップ期間である。
【0180】
エンドポイント:
集団AとBのエンドポイントは、特に注記されない限り同じである。
【0181】
主要エンドポイントは、有害事象(AE)と重篤な有害事象(SAE)の発生率と重症度;12リード心電図(ECG)パラメータ、臨床検査試験(化学、血液学、凝固、尿)、バイタルサインのベースラインからの変化;身体検査所見により、化合物1の安全性と忍容性を測定することである。
【0182】
二次エンドポイントは、SCA成人患者への経口投与後の化合物1の血漿PKプロファイル(集団AとB)と、SCA成人患者への化合物1の経口投与前後のHUの血漿PKプロファイル(集団Bのみ)である。
【0183】
探索エンドポイントは、(追加の探索バイオマーカーも試験する場合があるが)総ヘモグロビン(Hb)レベル;HbF値(%);F細胞の%;赤血球溶血指数(非抱合ビリルビン、網状赤血球数、ラクターゼデヒドロゲナーゼ[LDH]、およびハプトグロビンレベル);可溶性Eセレクチン(sE-Sel)、可溶性P-セレクチン(sP-Sel)、および可溶性細胞間接着分子1(sICAM-1);高感度C反応性タンパク質(hs-CRP)により、化合物1のPDを測定することである。化合物1の臨床アウトカムは、疼痛関連の尺度(疼痛の頻度、重症度、持続時間;職場/学校や日常生活での活動に対する疼痛/疲労の影響;鎮痛薬の必要性/使用;入院や治療を必要とする輸血などのイベントを含む専門医療やヘルスケアを必要とするSCA関連イベント)により測定され、SCAの物理的、社会的、感情的な影響は、Adult Sickle Cell Quality-of-Life Measurement Information System(ASCQ-Me)により測定される。
【0184】
加えて、電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および/またはDNAシーケンシング(必要に応じて)による診断確認のほか、治療応答に影響を及ぼす可能性のある遺伝子(αグロビンやBCL11Aが挙げられるがこれらに限定されない)の可能なファーマコゲノム解析のために、別の血液試料を採取する。