(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】窒素酸化物を還元するための触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 35/57 20240101AFI20241030BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20241030BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20241030BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20241030BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241030BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B01J35/57 L
F01N3/08 A
F01N3/08 B
F01N3/28 301G
F01N3/28 301P
F01N3/10 A
B01D53/94 222
B01J23/89 A
(21)【出願番号】P 2021542171
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020054232
(87)【国際公開番号】W WO2020169600
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リュディガー・ホイアー
(72)【発明者】
【氏名】エレナ・ミュラー
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522721(JP,A)
【文献】特表2017-524520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
F01N 3/08,3/28,3/10
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持体及びウォッシュコート層A、B、C及びDを含む窒素酸化物吸蔵触媒であって、
-ウォッシュコート層Aが、前記担持体上に配置され、(1)酸化セリウム、(2)アルカリ土類金属化合物、及び/又はアルカリ金属化合物、並びに(3)白金又は白金及びパラジウム(重量比で白金:パラジウムが>5:1)を含有し、
-ウォッシュコート層Bが、ウォッシュコート層A上に配置され、酸化セリウム、並びに白金又は白金及びパラジウム(重量比で白金:パラジウムが>5:1)も含有し、アルカリ金属化合物並びにカルシウム、ストロンチウム及びバリウムの化合物を含まず、
-ウォッシュコート層Cが、ウォッシュコート層B上に配置され、酸化セリウム担持パラジウム又はパラジウム及び白金(重量比で
パラジウム:
白金が>2:1)、並びにロジウムを含み、
-ウォッシュコート層Dが、ウォッシュコート層C上に配置され、白金又は白金及びパラジウムを含む、窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項2】
ウォッシュコート層Bがアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項3】
ウォッシュコート層Bが酸化マグネシウム(MgO)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項4】
ウォッシュコート層Bが、前記担持体の体積に対して3~20g/lの量の酸化マグネシウムを含むことを特徴とする、請求項3に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項5】
ウォッシュコート層Aが、前記担持体の体積に対して110~160g/lの量の酸化セリウムを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項6】
ウォッシュコート層Bが、前記担持体の体積に対して22~120g/lの量の酸化セリウムを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項7】
ウォッシュコート層Cが、前記担持体の体積に対して20~120g/lの量の酸化セリウムを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項8】
ウォッシュコート層A中の前記アルカリ土類金属化合物が、マグネシウム、ストロンチウム、及び/又はバリウムの酸化物、炭酸塩、並びに/又は水酸化物であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項9】
ウォッシュコート層A中の前記アルカリ土類金属化合物又はアルカリ金属化合物が、アルカリ土類金属酸化物又はアルカリ金属酸化物として計算され、前記担持体の体積に対して10~50g/lの量で存在することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項10】
ウォッシュコート層Cが鉄化合物を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項11】
前記鉄化合物が酸化鉄であることを特徴とする、請求項10に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項12】
酸化鉄がウォッシュコート層C中に、ウォッシュコート層Cの重量に対して1~10重量%の量で存在し、Fe
2O
3として計算されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項13】
ウォッシュコート層Aがロジウムを含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載の窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項14】
リーンバーン機関で運転する自動車からの排気ガス中のNO
xを変換するための方法であって、前記排気ガスを、請求項1~13のいずれか一項に記載の窒素酸化物吸蔵触媒上へ誘導することを特徴とする、方法。
【請求項15】
排気ガスシステムであって、
a)担持体及びウォッシュコート層A、B、C及びDを含む窒素酸化物吸蔵触媒であって、
-ウォッシュコート層Aが、前記担持体上に配置され、(1)酸化セリウム、(2)アルカリ土類金属化合物、及び/又はアルカリ金属化合物、並びに(3)白金又は白金及びパラジウム(重量比で白金:パラジウムが>5:1)も含有し、
-ウォッシュコート層Bが、ウォッシュコート層A上に配置され、酸化セリウム、並びに白金又は白金及びパラジウム(重量比で白金:パラジウムが>5:1)も含有し、アルカリ金属化合物並びにカルシウム、ストロンチウム、及びバリウムの化合物を含まず、
-ウォッシュコート層Cが、ウォッシュコート層B上に配置され、酸化セリウム担持パラジウム又はパラジウム及び白金(重量比で
パラジウム:
白金が>2:1)、並びにロジウムを含み、
-ウォッシュコート層Dが、ウォッシュコート層C上に配置され、白金又は白金及びパラジウムを含む、窒素酸化物吸蔵触媒と、を含み、
かつ
b)SCR 触媒、を含む、排気ガスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーンバーン燃焼機関の排気ガス中に含有される窒素酸化物を還元するための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル機関などのリーンバーン燃焼機関で運転される自動車の排気ガスは、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)に加えて、シリンダーの燃焼室内における燃料の不完全燃焼に起因する成分もまた含有する。通常は主にガス形態で存在する残留炭化水素(HC)に加えて、これらは「ディーゼルすす」又は「すす粒子」とも称される粒子排出物を含む。これらは、主に炭素質粒子物質及び付着性液相からの複合アグロメレートであり、通常は主に長鎖炭化水素凝集物を含む。固体成分に付着する液相は「可溶性有機成分SOF」又は「揮発性有機成分VOF」とも呼ばれる。
【0003】
このような排気ガスを浄化するためには、特定の成分を、できる限り完全に無害な化合物へと変換しなければならず、これは、好適な触媒を使用することによってのみ実現可能である。
【0004】
窒素酸化物を取り除くためには、「リーンNOxトラップ」又はLNTという用語が一般的な、いわゆる窒素酸化物吸蔵触媒が周知である。これらの浄化作用は、機関のリーン運転段階において、吸蔵触媒の吸蔵材料によって窒素酸化物が主に硝酸塩の形態で吸蔵され、これらの酸化物は後続の機関のリッチ運転段階で再び分解され、このようにして放出された窒素酸化物は、吸蔵触媒内の還元性排気ガス成分によって、窒素、二酸化炭素、及び水に変換される、という事実に基づく。この運転原理は、例えばSAE文書SAE 950809に記載されている。
【0005】
吸蔵材料としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類金属の酸化物、炭酸塩、若しくは水酸化物、又はそれらの混合物が特に考慮される。これらの化合物は、そのアルカリ性という特性の結果として、排気ガスの酸性窒素酸化物と共に硝酸塩を形成し、そうすることで窒素酸化物を吸蔵することができる。吸蔵材料は、排気ガスとの大きな相互作用表面をもたらすために、好適な担体物質上に、可能な限り最も高度に分散した形態で堆積される。通例では、窒素酸化物吸蔵触媒は、触媒活性成分として、白金、パラジウム、及び/又はロジウムなどの貴金属もまた含有する。これらの触媒の課題は、一方ではリーン条件下において、NOをNO2に酸化し、またCO及びHCをCO2へと酸化し、他方では窒素酸化物吸蔵触媒が再生されるリッチ運転段階中、放出されるNO2を窒素へと還元することである。
【0006】
酸素の存在下で、排気ガスから窒素酸化物を除去するための更なる周知の方法は、好適な触媒上でのアンモニアによる選択的接触還元(SCR法)である。本方法では、排気ガスから除去されるべき窒素酸化物が、アンモニアを使用して窒素及び水に変換される。還元剤として使用されるアンモニアは、アンモニア前駆体化合物、例えば尿素、カルバミン酸アンモニウム、又はギ酸アンモニウムを排気ガス流中に送給し、その後の加水分解によって利用可能にすることができる。
【0007】
例えば、特定の金属交換ゼオライトをSCR触媒として使用することができ、利用分野によって、特に、鉄交換されたβゼオライト及び銅交換された小孔ゼオライト(例えば、斜方沸石)が使用される。また、いわゆる複合酸化物触媒もSCR触媒として使用される。これらは特に、酸化バナジウム、酸化タングステン、及び任意選択で更なる酸化物含有化合物であり、一般的に酸化物担体として二酸化チタンを含む。
【0008】
Euro 6d及び将来の排気ガス法を満たすためには、広い温度範囲にわたり高いCO及びNOx変換率を示す排気システムを使用しなければならない。このようなシステムは、窒素酸化物吸蔵触媒とSCR触媒との組み合わせであってもよく、特に、窒素酸化物吸蔵触媒は厳しい要件を満たす必要がある。したがって、特に排気温度が200℃を超えない都市走行では、効率的なNOx貯蔵及び変換が大きな課題となる。また窒素酸化物吸蔵触媒は、SCR触媒による効果的なNOx変換のために、十分なNO2を供給する必要がある。
【0009】
例えば、窒素酸化物吸蔵触媒は、触媒の異なる構成要素又は機能が空間的に分離されることで望ましくない相互作用が回避されると、最良の活性を示すことが既に示されている。
したがって、国際公開第2011/154913号は、触媒基材上に重ね合わされた3つの層からなる触媒を開示しており、最下層は窒素酸化物吸蔵材料を含有し、中間層は窒素酸化物を反応させるための材料を含有し、上層は炭化水素吸蔵材料を含有する。
【0010】
国際公開第2017/191099号は、3つの材料領域が担持体上に特定の様式で配置されている触媒を記載している。少なくとも2層からなる更なる窒素酸化物吸蔵触媒は、欧州特許出願公開第0885650(A2)号、国際公開第2009/158453(A1)号、同第2012/029050(A1)号、同第2014/108362(A1)号、同第2017/134065(A1)号、及び同第2017/144426(A1)号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特にNOx吸蔵、NO2形成、及び還元容量が更に改善され、また互いに更に適合された、更なる開発された窒素酸化物吸蔵触媒が将来的に必要とされ得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、担持体及びウォッシュコート層A、B、C及びDを含む窒素酸化物吸蔵触媒に関し、
-ウォッシュコート層Aは、担持体上に配置され、酸化セリウム、アルカリ土類金属化合物、及び/又はアルカリ金属化合物、並びに>5:1の重量比で白金又は白金及びパラジウムを含有し、
-ウォッシュコート層Bは、ウォッシュコート層A上に配置され、>5:1の重量比で酸化セリウム並びに白金又は白金及びパラジウムを含有し、アルカリ金属化合物並びにカルシウム、ストロンチウム、及びバリウムの化合物を含まず、
-ウォッシュコート層Cは、ウォッシュコート層B上に配置され、>2:1の重量比で酸化セリウム担持パラジウム又はパラジウム及び白金、並びにロジウムを含み、
-ウォッシュコート層Dは、ウォッシュコート層C上に配置され、白金又は白金及びパラジウムを含む。
【0013】
本発明の一実施形態では、ウォッシュコート層Bは、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物を含まない。
【0014】
本発明の別の実施形態では、ウォッシュコート層Bは酸化マグネシウム(MgO)を含む。この場合、ウォッシュコート層Bは、担持体の体積に対して、好ましくは3~20g/lの量の酸化マグネシウムを含む。
【0015】
本発明による窒素酸化物吸蔵触媒の更なる実施形態では、ウォッシュコート層A及びBを組み合わせて、酸化セリウム、アルカリ土類金属化合物及び/又はアルカリ金属化合物、並びに>5:1の重量比で白金又は白金及びパラジウムを含む、単層を形成する。本ウォッシュコート層は、以下のABと称される。
【0016】
ウォッシュコート層A、B及びC中で使用される酸化セリウムは、市販の品質であってもよい、すなわち、90~100重量%の酸化セリウム含有量を有してもよい。好ましいのは、1150℃で6時間の焼成後であっても、少なくとも10m2/gの表面積を有する酸化セリウムである。これらの表面特性を有する酸化セリウムは周知であり、例えば、欧州特許出願公開第1527018(B1)号に記載されている。
【0017】
本発明の実施形態では、酸化セリウムは、担持体の体積に対して、110~160g/l、例えば、125~145g/lの量で、ウォッシュコート層Aに使用される。
ウォッシュコート層Bでは、酸化セリウムは、担持体の体積に対して、22~120g/l、例えば、40~100g/l又は45~65g/lの量で使用される。
【0018】
ウォッシュコート層A及びBを組み合わせて単一のウォッシュコート層ABを形成する本発明による窒素酸化物吸蔵触媒の実施形態では、酸化セリウムは、担持体の体積に対して、132~280g/l、例えば165~210g/lの量でウォッシュコート層ABに使用される。
【0019】
ウォッシュコート層Cでは、酸化セリウムの量は、担持体の体積に対して、特に20~120g/l、好ましくは40~70g/lである。
【0020】
ウォッシュコート層A中のアルカリ土類金属化合物としては、特に、マグネシウム、ストロンチウム、及び/又はバリウムの酸化物、炭酸塩、並びに/又は水酸化物、特に酸化マグネシウム、酸化バリウム、及び酸化ストロンチウムが好適である。
【0021】
ウォッシュコート層A中のアルカリ金属化合物としては、特に、リチウム、カリウム、及び/又はナトリウムの酸化物、炭酸塩、並びに/又は水酸化物である。
【0022】
本発明の実施形態では、アルカリ土類金属化合物又はアルカリ金属化合物は、担持体の体積に対して、アルカリ土類金属酸化物又はアルカリ金属酸化物として計算される10~50g/l、特に15~20g/lの量で、ウォッシュコート層A中に存在する。
【0023】
ウォッシュコート層A及びBを組み合わせて単一のウォッシュコート層ABを形成する本発明による窒素酸化物吸蔵触媒の実施形態では、これは、担持体の体積に対して、アルカリ土類金属酸化物又はアルカリ金属酸化物として計算される、好ましくは10~50g/l、特に15~20g/lの量で、アルカリ土類金属化合物又はアルカリ金属化合物を含有する。
【0024】
本発明の一実施形態では、ウォッシュコート層Cは鉄化合物を含む。鉄化合物は、好ましくは酸化鉄、特にFe2O3である。鉄は、特にウォッシュコート層Cの重量に対して1~10重量%、好ましくは2~7重量%の量でウォッシュコート層C中に存在し、Fe2O3として計算される。
【0025】
酸化鉄又は別の鉄化合物のいずれかであれ、鉄化合物は、貴金属白金、パラジウム及びロジウムのいずれかについて、又はウォッシュコート層Cの別の構成成分のいずれかについて、担体材料として使用されないことが好ましい。
【0026】
ウォッシュコート層Aは、白金又は白金及びパラジウムを含み、好ましくはロジウムを含まない。白金及びパラジウムを含有する場合、重量比Pt:Pdは、>5:1、好ましくは≧8:1、例えば8:1~20:1、例えば8:1、10:1、12:1、14:1、16:1、18:1又は20:1である。
【0027】
ウォッシュコート層Bもまた、白金又は白金及びパラジウムを含み、好ましくはロジウムを含まない。白金及びパラジウムを含有する場合、重量比Pt:Pdは、>5:1、好ましくは≧8:1、例えば8:1~20:1、例えば8:1、10:1、12:1、14:1、16:1、18:1又は20:1である。
【0028】
白金又は白金及びパラジウムの含有量、並びにその重量比は、ウォッシュコート層A及びウォッシュコート層Bにおいて互いに独立している。
【0029】
それぞれの場合において、担持体の体積に対して、ウォッシュコート層A及びBの典型的な白金充填量は0.7~1.5g/lの範囲であり、パラジウム充填量は0.035~0.3g/lの範囲である。
【0030】
ウォッシュコート層Cは、好ましくは2:1~8:1、好ましくは4:1~6:1の重量比で、好ましくはパラジウム又はパラジウム及び白金を含む。ウォッシュコート層C中の酸化セリウムの量に対するパラジウム又はパラジウム及び白金の質量濃度は、通常、0.2~1%、好ましくは0.4~0.6%である。
【0031】
加えて、ウォッシュコート層Cはまた、それぞれの場合において、担持体の体積に対して、好ましくは0.003~0.35g/l、特に0.18~0.26g/lの量でロジウムを含む。
【0032】
ウォッシュコート層Dは、白金又は白金及びパラジウムを含み、好ましくはロジウムを含まない。白金及びパラジウムを含有する場合、重量比Pt:Pdは、>5:1、好ましくは≧8:1、例えば8:1~18:1、例えば8:1、10:1、12:1、又は14:1である。
【0033】
ウォッシュコート層D中の白金及びパラジウムの量の、ウォッシュコート層A及びB中の白金及びパラジウムの量の合計に対する比は、通常、0.3~1.2、好ましくは0.35~0.5である。
【0034】
本発明の実施形態では、本発明による窒素酸化物吸蔵触媒中の貴金属、すなわち白金、パラジウム、及び所望によりロジウムの総量は、担持体の体積に対して2.12~7.1g/l(60~200g/ft3)である。
【0035】
貴金属白金又は白金及びパラジウムは、通常、ウォッシュコート層A、ウォッシュコート層B、及びウォッシュコート層D中の好適な担体材料上に存在する。そのようなものであるから、特に、30~250m2/g、好ましくは100~200m2/gのBET表面積(DIN66132に従って決定)を有する酸化物、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタンだけでなく、アルミニウム/シリコン混合酸化物及びセリウム/ジルコニウム混合酸化物などの混合酸化物もまた使用される。
【0036】
本発明の実施形態では、酸化アルミニウムは、白金又は白金及びパラジウムの貴金属の担体材料として使用され、特に、このような酸化アルミニウムは、1~6重量%、特に、4重量%の酸化ランタンによって安定化される。
【0037】
ウォッシュコート層Cでは、貴金属パラジウム及び白金は酸化セリウム上に担持され、一方、ロジウムは、好ましくは前述の通例の担体材料のうちの一つ、すなわち、特に酸化アルミニウム又は酸化ランタン安定化酸化アルミニウム上に存在する。
【0038】
貴金属白金又は白金及びパラジウム、並びにロジウムを担持するのは、前述の担体材料のうちの1つ以上のみであり、したがって、それぞれのウォッシュコート層の全ての成分と密着しないことが好ましい。特に、鉄は、パラジウム、白金、及びロジウムの担体として使用されないことが好ましい。
【0039】
本発明の実施形態において、担持体の総ウォッシュコート充填量は、担持体の体積に対して300~600g/lである。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明は、担持体及びウォッシュコート層A、B、C及びDを含む窒素酸化物吸蔵触媒に関し、
-ウォッシュコート層Aは、担持体上に配置され、
○担持体の体積に対して100~160g/lの量の酸化セリウムと、
○10:1の重量比の白金又は白金及びパラジウムと、
○酸化マグネシウム及び/又は酸化バリウムと、を含み、
-ウォッシュコート層Bは、ウォッシュコート層A上に配置され、
○アルカリ金属化合物を含まず、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムの化合物を含まず、
○10:1の重量比の白金又は白金及びパラジウムと、
○担持体の体積に対して45~65g/lの量の酸化セリウムと、を含み、
●ウォッシュコート層Cは、ウォッシュコート層B上に配置され、
○40~70g/lのl酸化セリウムを含み、
○パラジウム及び白金は、担持体の体積に対して0.16~0.72g/lの量で担持され、
○担持体の体積に対して0.18~0.26g/lの量のロジウムと、
○担持体の体積に対して2~7g/lの量のFe2O3と、を含み、
●ウォッシュコート層Dは、ウォッシュコート層C上に配置され、
○10:1.の重量比の白金又は白金及びパラジウムを含む。
【0041】
触媒活性ウォッシュコート層A、B、C及びDは、通例のディップコーティング法(dip coating methods)又はポンプ及び吸引コーティング法(pump and suck coating methods)によって、担持体上に塗布され、引き続き熱により後処理(適用可能な場合にフォーミングガス又は水素を使用する、焼成及び還元)を行う。これらの方法は、従来技術から十分に周知である。
【0042】
必要なコーティング懸濁液は、当業者に周知の方法に従って得ることができる。したがって、酸化セリウム、アルカリ土類金属化合物及び/又はアルカリ金属化合物、好適な担体材料上に担持された貴金属、及び鉄化合物などの個々のウォッシュコート層の成分は、好適なミル、特にボールミル中で、d50=3~5μmの粒径で、対応する量で懸濁液化される。
【0043】
本発明による窒素酸化物吸蔵触媒は、ディーゼル機関などのリーンバーン機関で運転する自動車からの排気ガス中のNOxの変換にとって著しく好適である。これらの触媒は、高温においてNOxの変換率に悪影響を及ぼすことなく、およそ200~450℃の温度において良好なNOx変換率を達成する。したがって、本発明による窒素酸化物吸蔵触媒は、Euro 6の用途にとって好適である。
【0044】
したがって、本発明はまた、ディーゼル機関などのリーンバーン機関で運転する自動車からの排気ガス中のNOxを変換する方法にも関し、本方法は、排気ガスを、本発明による窒素酸化物吸蔵触媒上へ誘導することを特徴とする。
【0045】
窒素酸化物吸蔵触媒に関する、本発明による方法の実施形態は、上の記載に対応する。
【0046】
したがって、本発明は、
a)担持体及びウォッシュコート層A、B、C及びDを含む窒素酸化物吸蔵触媒であって、
-ウォッシュコート層Aが、担持体上に配置され、酸化セリウム、アルカリ土類金属化合物、及び/又はアルカリ金属化合物、並びに>5:1の重量比で白金又は白金及びパラジウムを含有し、
-ウォッシュコート層Bが、ウォッシュコート層A上に配置され、>5:1の重量比で酸化セリウム並びに白金又は白金及びパラジウムを含有し、アルカリ金属化合物並びにカルシウム、ストロンチウム、及びバリウムの化合物を含まず、
-ウォッシュコート層Cが、ウォッシュコート層B上に配置され、>2:1の重量比で酸化セリウム担持パラジウム又はパラジウム及び白金、並びにロジウムを含み、
-ウォッシュコート層Dが、ウォッシュコート層C上に配置され、白金又は白金及びパラジウムを含む、窒素酸化物吸蔵触媒と、
b)SCR触媒と、を含む排気ガスシステムに更に関する。
【0047】
本発明による排気ガスシステムでは、SCR触媒は、原則として、窒素酸化物とアンモニアとのSCR反応において活性な全ての触媒から、特に、自動車の排気ガス触媒反応分野において当業者には従来のものであることが知られている触媒から、選択することができる。上記触媒としては、ゼオライト、特に遷移金属交換ゼオライト、例えば銅、鉄、又は銅及び鉄と交換されたゼオライトをベースとする触媒と共に、混合酸化物型の触媒が挙げられる。
【0048】
本発明の実施形態では、8個の四面体原子の最大環サイズを伴う小細孔ゼオライト、及び遷移金属、例えば、銅、鉄、又は銅及び鉄であるSCR触媒が使用される。このようなSCR触媒は、例えば、国際公開第2008/106519(A1)号、同第2008/118434(A1)号、及び同第2008/132452(A2)号に記載されている。
【0049】
更に、大細孔及び中細孔のゼオライトも使用することができ、BEA構造型のものは特に考慮され得る。したがって、鉄-BEA及び銅-BEAが対象である。
【0050】
特に好ましいゼオライトは、BEA、AEI,、CHA、KFI、ERI、LEV、MER又はDDRの構造型に属し、特に好ましくは、銅、鉄、又は銅及び鉄と交換されている。
【0051】
本発明の文脈内で、用語「ゼオライト」とは、モレキュラーシーブも含み、これは時に「ゼオライト様」化合物とも呼ばれる。モレキュラーシーブが前述の構造型のうちの1つに属する場合、それらは好ましい。例としては、用語「SAPO」で知られているシリカアルミニウムホスフェートゼオライト、及び用語「AlPO」で知られているアルミニウムホスフェートゼオライトが挙げられる。
【0052】
これらは、特に、銅、鉄、又は銅及び鉄と交換されている場合にも好ましい。
【0053】
好ましいゼオライトはまた、2~100、特に5~50のSAR(シリカ対アルミナ比)値を有するものである。
【0054】
ゼオライト又はモレキュラーシーブは、遷移金属を、特に金属酸化物として、すなわち、例えばFe2O3又はCuOとして計算して1~10重量%、特に2~5重量%の量で含有する。
【0055】
本発明の好ましい実施形態は、SCR触媒として、銅、鉄、又は銅及び鉄と交換されたベータ型(BEA)、チャバザイト型(CHA)、又はレビン型(LEV)のゼオライト又はモレキュラーシーブを含有する。対応するゼオライト又はモレキュラーシーブは、例えば、ZSM-5、ベータ、SSZ-13、SSZ-62、Nu-3、ZK-20、LZ-132、SAPO-34、SAPO-35、AlPO-34及びAlPO-35の名称で知られており、例えば、米国特許第6,709,644号及び同第8,617,474号を参照のこと。
【0056】
本発明による排気ガスシステムの一実施形態では、還元剤のための注入装置を、本発明による触媒とSCR触媒との間に置く。
【0057】
注入装置は、当業者が自由に選択することができ、好適な装置は、文献から取得することができる(例えば、T.Mayer,Feststoff-SCR-System auf Basis von Ammoniumcarbamat,dissertation,TU Kaiserslautern,2005を参照のこと)。アンモニアは、それ自体として又はアンモニアが周囲条件下で形成される化合物の形態で、注入装置を介して、排気ガス流に注入することができる。好適な化合物の例は、尿素又はギ酸アンモニウムの水溶液、及び固体カルバミン酸アンモニウムである。通例、還元剤又はその前駆体は、注入装置に接続される付随容器内で利用可能に保持される。
【0058】
SCR触媒は、好ましくは、担持体上のコーティングの形態であり、これは例えば、フロースルー基材又はウォールフローフィルタであることができ、例えば、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、又はコージェライトからなることができる。
【0059】
あるいは、担持体自体は、上述のSCR触媒及びマトリックス成分からなり得る、すなわち、押出成形形態である。
【0060】
本発明はまた、ディーゼル機関などのリーンバーン機関で運転される自動車からの排気ガスを浄化するための方法にも関し、本方法は、排気ガスが本発明による排気ガスシステムを通過することを特徴とする。
【0061】
本発明を、以下の実施例及び図面においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】触媒RK1、RK2、K1及びK2の触媒前の温度の関数としての70% NOx変換におけるNOx吸蔵能力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
比較実施例1
a)水性懸濁液を、ウォッシュコート層Aのために調製した。そこで、テトラエチルアンモニウム水酸化物又は硝酸塩として、担体の体積に対して0.7g/lの白金及び0.07g/lのパラジウムを、34g/lの酸化アルミニウムの水性懸濁液に添加した。次に、酸化セリウム量に対して17%のBaOでコーティングされた19.5g/lの酸化セリウム、及び45.5g/lの酸化セリウムを懸濁液に添加した。3g/lの酸化アルミニウムをアルミナゾルとして添加した。次に、フローモノリスを浸漬し、乾燥させ、550℃で2時間焼成することにより、102.5g/lの固形分を塗布した。
【0064】
b)コーティング懸濁液Bを調製するために、0.7g/lの白金をテトラエチルアンモニウム水酸化物として調製し、懸濁液の固形分の量に対して、40g/lの酸化アルミニウムを混合した。次に、148g/lの酸化セリウム、0.07g/lのパラジウムを硝酸パラジウム(Pd nitrate)として、及び10g/lの酸化マグネシウムを酢酸マグネシウム(Mg acetate)として添加した。酸化鉄成分をプレフィックス粉末として使用した。この目的のために、酸化アルミニウムに硝酸鉄溶液を含浸させ、続いて550℃で焼成することにより、25重量%の酸化鉄を伴う酸化アルミニウムを調製した。20g/lの本材料をコーティング懸濁液中で使用した。加えて、8g/lの酸化アルミニウム及び硝酸ロジウム(Rh nitrate)として0.18g/lのロジウムを懸濁液に添加した。ウォッシュコート層Bとして227g/lをウォッシュコート層Aに塗布した。次に、層を乾燥させ、550℃で2時間焼成した。
【0065】
c)ウォッシュコート懸濁液C中の固形分の重量に対して1.8g/lの白金を、硝酸パラジウムとして0.18g/lのパラジウムと、硝酸パラジウムとして70g/lの酸化アルミニウムと混合することによって、ウォッシュコート層Cを調製した。本懸濁液72g/lをウォッシュコート層Bに塗布し、乾燥させ、次に550℃で2時間焼成した。
このようにして得た触媒を以下ではRK1と称する。
【0066】
比較実施例2
【0067】
ウォッシュコート層Bにおいて、ウォッシュコート分散体Bへ添加する前の酸化セリウムに対して、50g/lの酸化セリウムを0.5%重量%のパラジウムでコーティングし、それにより、層Bが98g/lの酸化セリウム及び50g/lのパラジウムコーティングされた酸化セリウムを含むという点で異なる、比較実施例1を繰り返した。
このようにして得た触媒を以下ではRK2と称する。
【0068】
[実施例1]
a)本発明による触媒を調製するために、ウォッシュコート層Aを比較例1及び2と同様にコーティングした。
【0069】
b)コーティング懸濁液Bを調製するために、0.7g/lの白金をテトラエチルアンモニウム水酸化物として調製し、懸濁液の固形分の量に対して、40g/lの酸化アルミニウムを混合した。次に、100g/lの酸化セリウム、0.07g/lのパラジウムを硝酸パラジウムとして、及び10g/lの酸化マグネシウムを酢酸マグネシウムとして添加した。3g/lの酸化アルミニウムをアルミナゾルとして添加した。ウォッシュコート層Bとして154g/lをウォッシュコート層Aに塗布した。次に、層を乾燥させ、550℃で2時間焼成した。
【0070】
c)ウォッシュコート層Cを調製するために、水性懸濁液中の硝酸パラジウムとして0.25g/lのパラジウムを、50g/lの酸化セリウムに吸着させた。本懸濁液に、プレフィックス粉末として酸化鉄成分を添加した。この目的のために、酸化アルミニウムに硝酸鉄溶液を含浸させ、続いて550℃で焼成することにより、25重量%の酸化鉄を伴う酸化アルミニウムを調製した。20g/lの本材料をコーティング懸濁液中で使用した。加えて、5g/lの酸化アルミニウム及び硝酸ロジウムとして0.18g/lのロジウムを懸濁液に添加した。ウォッシュコート層Cとして75g/lをウォッシュコート層Bに塗布した。次に、層を乾燥させ、550℃で2時間焼成した。
【0071】
d)ウォッシュコート層Dは、比較実施例1及び比較実施例2におけるウォッシュコート層Cに対応した。
このようにして得た触媒を以下ではK1と称する。
【0072】
[実施例2]
ウォッシュコート層Bが0.65g/lの白金を含有し、ウォッシュコート層Cが0.05g/lの白金を更に含有していたという点で異なる、実施例2を繰り返した。
このようにして得た触媒を以下ではK2と称する。
【0073】
試験:
触媒RK1、RK2、K1及びK2の触媒活性を試験するために、サンプルを、最初に、酸素10%、水10%、及び残りの窒素雰囲気中、800℃で16時間、加熱前処理にさらした。
【0074】
次に、それらを650℃に加熱し、7.5/分の温度低下で表1のガス組成物に曝露させ、その間、リーン(酸化)ガス雰囲気を触媒サンプル上で150秒間誘導し、リッチ(還元)ガス雰囲気を触媒サンプル上で30秒間誘導した。触媒下流のガス流中のNOx濃度を、FTIRによって測定した。
【0075】
【0076】
NOx変換活性を決定するために、NOx変換率が70%の値に達した場合に、各リーン相について、触媒体積当たりのNOxの吸蔵質量をmgで決定した。
【0077】
NOx変換率を、以下の式を使用して計算する。
NOx変換率[%]=100x(c(NOxin)-c(NOxout))/c(NOxout)
【0078】
NOxの吸蔵質量は、リーン相の開始から70%のNOx変換が達成される時点まで、触媒上流のガス中のNOx質量と触媒の下流のガス中のNOx質量との間の差から計算される。
【0079】
図1は、参照触媒RK1及びRK2並びに本発明による触媒K1及びK2の温度の関数としての70%のNOx変換における、NOxの吸蔵値を示す。175~250℃の範囲では、本発明による触媒の4層設計により、より高いNOxの吸蔵量が達成される。触媒K2におけるパラジウム及び白金の使用は、NOxの吸蔵量の更なる増加をもたらす。