(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】高分子量化合物からなる有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
H10K 50/15 20230101AFI20241030BHJP
C08G 73/02 20060101ALI20241030BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20241030BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20241030BHJP
H10K 50/18 20230101ALI20241030BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20241030BHJP
【FI】
H10K50/15
C08G73/02
H10K50/11
H10K50/17
H10K50/18
H10K85/10
(21)【出願番号】P 2021551693
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2020038045
(87)【国際公開番号】W WO2021070878
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2019185719
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富樫 和法
(72)【発明者】
【氏名】篠田 美香
(72)【発明者】
【氏名】泉田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊二
(72)【発明者】
【氏名】平井 大貴
(72)【発明者】
【氏名】三枝 優太
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168667(WO,A1)
【文献】特開2010-062442(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031639(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0193611(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0048103(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0048098(KR,A)
【文献】特開2009-212510(JP,A)
【文献】特許第5587172(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/114882(WO,A1)
【文献】特開2019-050369(JP,A)
【文献】国際公開第2009/102027(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101331(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/009069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/15
C08G 73/02
H10K 50/11
H10K 50/17
H10K 50/18
H10K 85/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、前記電極間に少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記有機層が、少なくとも高分子量化合物α及びβを含む2種類以上の高分子量化合物からなり、前記高分子量化合物αは、下記一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位を含み、ポリスチレン換算で10,000以上1,000,000未満の重量平均分子量を有しており、前記高分子量化合物βは、下記一般式(4)で表されるトリアリールアミン構造単位、及び一般式(5)で表される連結構造単位からなる、一般式(6)で表される繰り返し単位を含み、ポリスチレン換算で10,000以上1,000,000未満の重量平均分子量を有している、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
式中、AR
1及びAR
2は、それぞれ独立に、2価のアリール基又は2価のヘテロアリール基を示し、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子
又は重水素原
子を示し、
X
及びY
は、それぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基であり、
Zは、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基又は炭素数5~10のシクロアルキルオキシ基、アリール基又はヘテロアリール基である。
【化2】
【化3】
【化4】
式中、R
3は、それぞれ独立に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、若しくはヨウ素原子、又は炭素数が40以下である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、チオアルキルオキシ基、アルケニル基、若しくはアリールオキシ基を示し、
R
4は、炭素数が40以下である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、チオアルキルオキシ基、又はシクロアルキルオキシ基を示し、
b及びcは、R
3の数であり、それぞれ独立に、以下の整数を示す。
b=0,1,2又は3
c=0,1,2,3又は4
Qは、水素原子、重水素原子、アミノ基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、
Lは、2価のフェニル基を示し、
nは、0~3の整数を示す。
【請求項2】
前記一般式(1)において、R
1及びR
2が、水素原子であり、X及びYが、それぞれ独立に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ナフチルフェニル基、トリフェニレニル基、ジベンゾフラニル基、又はジベンゾチエニル基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記高分子量化合物αが、下記一般式(2a)~(2x)で表される、芳香族炭化水素環を有する構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位を含む、請求項1
又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化5】
式中、R
3は、それぞれ独立に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、若しくはヨウ素原子、又は炭素数が40以下である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、チオアルキルオキシ基、アルケニル基、若しくはアリールオキシ基を示し、
R
4は、炭素数が40以下である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、チオアルキルオキシ基、又はシクロアルキルオキシ基を示し、
AR
3~AR
6は、それぞれ独立に、1価又は2価の、アリール基又はヘテロアリール基を示し、
a~dは、R
3の数であり、それぞれ独立に、以下の整数を示す。
a=0,1又は2
b=0,1,2又は3
c=0,1,2,3又は4
d=0,1,2,3,4又は5
【請求項4】
前記高分子量化合物αが、熱架橋性構造単位を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記熱架橋性構造単位が、下記一般式(3a)~(3z)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位である、請求項
4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化6】
式中、R
3、R
4及びa~cは、前記一般式(2a)~(2x)中の定義と同じである。
【請求項6】
前記一般式(6)において、R
3を有さないか、又はR
3が重水素原子であり、Qが水素原子又は重水素原子である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記高分子量化合物βが、熱架橋性構造単位を含む、請求項1又は請求項
6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記熱架橋性構造単位が、前記一般式(3a)~(3z)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位である、請求項
7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記有機層が正孔輸送層である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記有機層が電子阻止層である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記有機層が正孔注入層である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記有機層が発光層である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自己発光性素子であり、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であるため、活発な研究がなされてきた。
【0003】
有機EL素子は、有機化合物の薄膜(有機層)を、陽極と陰極に挟んだ構成を有している。薄膜の形成方法としては、真空蒸着法と塗布法に大別される。真空蒸着法は、主に低分子化合物を用い、真空中で基板上に薄膜を形成する手法であり、既に実用化されている技術である。一方、塗布法は、主に高分子化合物を用い、インクジェットや印刷など、溶液を用いて基板上に薄膜を形成する手法であり、材料の使用効率が高く、大面積化、高精細化に適し、今後の大面積有機ELディスプレイには不可欠の技術である。
【0004】
低分子材料を用いた真空蒸着法は、材料の使用効率が低く、大型化すればシャドーマスクのたわみが大きくなり、大型基板への均一な蒸着は困難となる。また製造コストも高くなるといった問題も抱えている。
【0005】
一方、高分子材料は、有機溶剤に溶解させたその溶液を塗布することにより、大型基板でも均一な膜を形成することが可能であり、これを利用してインクジェット法や印刷法に代表される塗布法を用いることができる。そのため、材料の使用効率を高めることが可能となり、素子作製にかかる製造コストを大幅に削減することができる。
【0006】
これまで、高分子材料を用いた有機EL素子が、種々検討されてきたが、発光効率や寿命などの素子特性は必ずしも十分でないという問題があった(例えば、特許文献1~特許文献5参照)。
【0007】
これまで高分子有機EL素子に用いられてきた代表的な正孔輸送材料としては、TFBと呼ばれるフルオレンポリマーが知られていた(特許文献6~特許文献7参照)。しかしながら、TFBは正孔輸送性及び電子阻止性がともに不十分であるため、電子の一部が発光層を通り抜けてしまい、発光効率の向上が期待できないという問題があった。また、隣接層との膜密着性が低いことから、素子の長寿命化も期待できないという問題があった。
【0008】
また、本発明者らはこれまで高分子有機EL素子に用いられる正孔輸送材料(特許文献8~特許文献9参照)を種々開発してきたが、素子寿命が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US20080274303
【文献】US8274074
【文献】US20100176377
【文献】US20100084965
【文献】国際公開WO2005/049546
【文献】US2001026878
【文献】国際公開WO2005/059951
【文献】US20190326515
【文献】US20190378989
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、高分子材料により形成された有機層(薄膜)を有しており、従来よりも長寿命な高分子有機EL素子を提供することにある。
【0011】
本発明者らは、2種類以上の高分子量化合物を溶解した溶液を用いて成膜された有機層を有する有機EL素子が、1種類の高分子量化合物を溶解した溶液を用いて成膜された有機層を有する有機EL素子と比較して長寿命であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、一対の電極と、前記電極間に少なくとも一つの有機層を有する有機EL素子において、前記有機層が、2種類以上の高分子量化合物からなることを特徴とする有機EL素子に関するものである。
【0013】
具体的には、前記有機層が、少なくとも高分子量化合物α及びβを含む2種類以上の高分子量化合物からなり、前記高分子量化合物αは、下記一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位を含み、ポリスチレン換算で10,000以上1,000,000未満の重量平均分子量を有する高分子量化合物であることを特徴とする。
【0014】
【0015】
式中、AR1及びAR2は、それぞれ独立に、2価のアリール基又は2価のヘテロアリール基を示し、
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、又は炭素数5~10のシクロアルキルオキシ基を示し、
X、Y及びZは、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数5~10のシクロアルキルオキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を示し、X、Y及びZの内の少なくとも1つがアリール基、又はヘテロアリール基である。
【0016】
前記高分子量化合物αにおいては、
(1)前記一般式(1)において、R1及びR2が、それぞれ独立に、水素原子又は重水素原子であり、X及びYが、それぞれ独立に、アリール基又はヘテロアリール基であること、
(2)前記一般式(1)において、R1及びR2が、水素原子であり、X及びYが、それぞれ独立に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ナフチルフェニル基、トリフェニレニル基、ジベンゾフラニル基、又はジベンゾチエニル基であること、
(3)下記一般式(2a)~(2x)で表される、芳香族炭化水素環を有する構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位を含むこと、
が好適である。
【0017】
【0018】
式中、R3は、それぞれ独立に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、若しくはヨウ素原子、又は炭素数が40以下(特に3~40)である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、チオアルキルオキシ基、アルケニル基、若しくはアリールオキシ基を示し、
R4は、炭素数が40以下(特に3~40)である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、チオアルキルオキシ基、又はシクロアルキルオキシ基を示し、
AR3~AR6は、それぞれ独立に、1価又は2価の、アリール基又はヘテロアリール基を示し、
a~dは、R3の数であり、それぞれ独立に、以下の整数を示す。
a=0,1又は2
b=0,1,2又は3
c=0,1,2,3又は4
d=0,1,2,3,4又は5
【0019】
また、前記高分子量化合物αにおいては、
(4)熱架橋性構造単位を含むこと、
(5)前記熱架橋性構造単位が、下記一般式(3a)~(3z)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位であること、
が好適である。
【0020】
【0021】
式中、R3、R4及びa~cは、前記一般式(2a)~(2x)中の定義と同じである。
【0022】
前記高分子量化合物βは、下記一般式(4)で表されるトリアリールアミン構造単位、及び一般式(5)で表される連結構造単位からなる、一般式(6)で表される繰り返し単位で構成され、ポリスチレン換算で10,000以上1,000,000未満の重量平均分子量を有している高分子量化合物であることを特徴とする。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
式中、R3、R4、b及びcは、前記一般式(2a)~(2x)中の定義と同じであり、
Qは、水素原子、重水素原子、アミノ基、アリール基、又はヘテロアリール基を示し、
Lは、2価のフェニル基を示し、
nは、0~3の整数を示す。
【0027】
前記高分子量化合物βにおいては、
(1)R3を有さないか、又はR3が重水素原子であり、Qが水素原子又は重水素原子であること、
(2)熱架橋性構造単位を含むこと、
(3)前記熱架橋性構造単位が、前記一般式(3a)~(3z)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位であること、
が好適である。
【0028】
本発明の有機EL素子においては、前記有機層が、正孔輸送層、電子阻止層、正孔注入層又は発光層であることが好適である。
【発明の効果】
【0029】
上述した高分子量化合物αは、前記一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位を含み、好適には、芳香族炭化水素環を有する構造単位、特に前記一般式(2a)~(2x)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位を含み、好適には、熱架橋性構造単位、特に前記一般式(3a)~(3z)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位を含み、好適には、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定したポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000以上1,000,000未満の範囲にある。
【0030】
前記高分子量化合物αは、
(1)正孔の注入特性が良い、
(2)正孔の移動度が大きい、
(3)電子阻止能力に優れる、
(4)薄膜状態が安定である、
(5)耐熱性に優れている、
という特性を有している。
【0031】
また、上述した高分子量化合物βは、前記一般式(6)で表される繰り返し単位を含み、好適には、熱架橋性構造単位、特に前記一般式(3a)~(3z)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位を含み、好適には、GPCで測定したポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000以上1,000,000未満の範囲にある。
【0032】
前記高分子量化合物βは、上述した(1)~(5)の特性に加え、ワイドギャップであるという特性を有している。
【0033】
このような高分子量化合物α及びβを含む、2種類以上の高分子量化合物を溶解した溶液を用いて成膜される有機層、例えば、正孔輸送層、電子阻止層、正孔注入層又は発光層を、一対の電極間に有する本発明の有機EL素子は、
(1)発光効率及び電力効率が高い、
(2)長寿命である、
という利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位1~9の化学構造
【
図2】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位10~18の化学構造
【
図3】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位19~26の化学構造
【
図4】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位27~32の化学構造
【
図5】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位33~38の化学構造
【
図6】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位39~47の化学構造
【
図7】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位48~56の化学構造
【
図8】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位57~68の化学構造
【
図9】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位69~79の化学構造
【
図10】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位80~88の化学構造
【
図11】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位89~99の化学構造
【
図12】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位100~108の化学構造
【
図13】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位109~117の化学構造
【
図14】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位118~126の化学構造
【
図15】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位127~135の化学構造
【
図16】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位136~144の化学構造
【
図17】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位145~156の化学構造
【
図18】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位における好適な構造単位157~165の化学構造
【
図19】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(5)で表される連結構造単位における好適な構造単位1~20の化学構造
【
図20】本発明で用いられる高分子量化合物が有する一般式(5)で表される連結構造単位における好適な構造単位21~32の化学構造
【
図21】本発明の有機EL素子における層構成の一例
【
図22】実施例1で合成された高分子量化合物Iの
1H-NMRチャート図
【
図23】実施例2で合成された高分子量化合物IIの
1H-NMRチャート図
【
図24】実施例3で合成された高分子量化合物IIIの
1H-NMRチャート図
【
図25】実施例4で合成された高分子量化合物IVの
1H-NMRチャート図
【
図26】実施例5で合成された高分子量化合物Vの
1H-NMRチャート図
【
図27】実施例6で合成された高分子量化合物VIの
1H-NMRチャート図
【
図28】実施例7で合成された高分子量化合物VIIの
1H-NMRチャート図
【
図29】実施例8で合成された高分子量化合物VIIIの
1H-NMRチャート図
【
図30】実施例9で合成された高分子量化合物IXの
1H-NMRチャート図
【
図31】実施例10で合成された高分子量化合物Xの
1H-NMRチャート図
【
図32】実施例11で合成された高分子量化合物XIの
1H-NMRチャート図
【発明を実施するための形態】
【0035】
1.高分子量化合物α
<置換トリアリールアミン構造単位>
本発明で用いられる高分子量化合物αが有する置換トリアリールアミン構造単位は、2価の基であり、下記の一般式(1)で表される。以下、下記一般式(1)で表される構造単位を「構造単位(1)」という。
【0036】
【0037】
前記一般式(1)において、AR1及びAR2は、それぞれ独立に、2価のアリール基又はヘテロアリール基である。
上記の2価のアリール基が有する芳香族環は、単環であってもよいし、縮合環であってもよい。このような芳香族環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、インデン環、ピレン環、ペリレン環、フルオラン環等を挙げることができる。また、これらの芳香族環は、置換基を有していてもよい。
【0038】
また、2価のヘテロアリール基が有する芳香族複素環も、単環であってもよいし、縮合環であってもよい。このような複素環の例としては、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、カルバゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフチリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、カルボリン環等を挙げることができる。また、これらの芳香族複素環も、置換基を有していてもよい。
【0039】
上記の芳香族環及び芳香族複素環が有していてもよい置換基としては、重水素原子、シアノ基、ニトロ基などに加え、以下の基を挙げることができる。
ハロゲン原子;例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等。
アルキル基;特に炭素数が1~8のもの、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、ネオへキシル基、n-ヘプチル基、イソへプチル基、ネオへプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ネオオクチル基等。
アルキルオキシ基;特に炭素数1~8のもの、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基等。
アルケニル基;例えば、ビニル基、アリル基等。
アリールオキシ基;例えば、フェニルオキシ基、トリルオキシ基等。
アリール基;例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基等。
ヘテロアリール基;例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基等。
アリールビニル基;例えば、スチリル基、ナフチルビニル基等。
アシル基;例えば、アセチル基、ベンゾイル基等。
【0040】
また、これらの置換基は、上記で例示した置換基をさらに有していてもよい。
これらの置換基は、それぞれ独立して存在していることが好ましいが、これらの置換基同士が、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0041】
前記一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、又は炭素数5~10のシクロアルキルオキシ基を示す。
【0042】
前記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基の例としては、以下の基を例示することができる。
アルキル基(C1~C8);例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基等。
シクロアルキル基(C5~C10);例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等。
アルケニル基(C2~C6);例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基等。
アルキルオキシ基(C1~C6);例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等。
シクロアルキルオキシ基(C5~C10);例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基等。
【0043】
また、上記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、及びシクロアルキルオキシ基も、置換基を有していてもよい。これらの置換基は、AR1及びAR2で表される2価のアリール基又はヘテロアリール基が有する芳香族環及び芳香族複素環が有していてもよい置換基と同様の基であり、さらに置換基を有していてもよい点も、AR1及びAR2で表される2価のアリール基又はヘテロアリール基が有する芳香族環及び芳香族複素環が有していてよい置換基と同様である。
【0044】
上記のR1、R2、及び各種の置換基は、それぞれ独立で存在していることが望ましいが、これらの基同士が、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0045】
前記一般式(1)において、X、Y及びZは、それぞれ独立に、これらの内の少なくとも1つがアリール基又はヘテロアリール基であることを条件として、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数5~10のシクロアルキルオキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。
【0046】
前記X、Y及びZにおいて、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基の例としては、上記のR1及びR2について例示したものと同様の基を挙げることができる。また、アリール基、ヘテロアリール基の例としては、以下の基を例示することができる。
アリール基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基等。
ヘテロアリール基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基等。
【0047】
また、上記のアリール基やヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。これらの置換基も、AR1及びAR2で表される2価のアリール基又はヘテロアリール基が有する芳香族環及び芳香族複素環が有していてもよい置換基と同様の基であり、これらの置換基がさらに置換基を有していてもよい点も、AR1及びAR2で表される2価のアリール基又はヘテロアリール基が有する芳香族環及び芳香族複素環が有していてよい置換基と同様である。
【0048】
例えば、上記のアリール基及びヘテロアリール基は、置換基としてフェニル基を有していてもよく、このフェニル基は、さらに置換基としてフェニル基を有していてもよい。すなわち、アリール基がフェニル基である場合、このアリール基は、ビフェニリル基、ターフェニリル基であってもよい。
【0049】
さらに、上述したアリール基、ヘテロアリール基及び各種の置換基は、それぞれ独立で存在していることが望ましいが、これらの基同士が、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0050】
本発明において、前記AR1及びAR2は、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基、ジベンゾフラニレン基、ジベンゾチエニレン基、又は置換基を有するフルオレニレン基であることが好ましく、合成上、無置換のフェニレン基であることが最も好ましい。なお、フルオレニレン基が有する置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-へキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、及びフェニル基が好適である。
【0051】
本発明において、上記のR1及びR2は、水素原子又は重水素原子であることが好適であり、合成上、水素原子であることが最も好適である。
【0052】
本発明においては、X、Y及びZの内の2つ以上が、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基であることが好適であり、X及びYが置換基を有していてもよいアリール基であり、Zが水素原子であることがより好適である。Xは、置換基を有さないアリール基であることがさらに好適であり、フェニル基であることが最も好適である。Yは、置換基を有するアリール基であることがさらに好ましく、置換基としてアリール基を有するフェニル基であることが特に好ましく、ナフチルフェニル基であることが最も好適である。X、Y及びZがこのような基であることで、高分子量化合物αは、正孔注入性、正孔移動性及び電子阻止性等に優れるものとなる。
【0053】
本発明で用いられる高分子量化合物αの構成単位である、上述した構造単位(1)の好適な具体例を、
図1~
図18に、構造単位1~165として示すが、本発明で用いられる高分子量化合物αが有する構造単位(1)は、これらの構造単位に限定されるものではない。
【0054】
なお、
図1~
図18に示された化学式において、破線は、隣接する構造単位への結合手を示し、環から伸びている実線は、メチル基が置換していることを示している。
【0055】
<芳香族炭化水素環を有する構造単位>
本発明で用いられる高分子量化合物αは、上述した構造単位(1)以外の、芳香族炭化水素環を有する構造単位(以下、「構造単位(2)」という。)を有していてもよい。前記構造単位(2)としては、下記一般式(2a)~(2x)で表される構造単位を挙げることができる。
【0056】
【0057】
式中、R3は、それぞれ独立に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、若しくはヨウ素原子、又は炭素数が40以下(特に3~40)である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、チオアルキルオキシ基、アルケニル基、若しくはアリールオキシ基を示し、
R4は、炭素数が40以下(特に3~40)である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、チオアルキルオキシ基、又はシクロアルキルオキシ基を示し、
AR3~AR6は、それぞれ独立に、1価又は2価の、アリール基又はヘテロアリール基を示し、
a~dは、R3の数であり、それぞれ独立に、以下の整数を示す。
a=0,1又は2
b=0,1,2又は3
c=0,1,2,3又は4
d=0,1,2,3,4又は5
【0058】
前記アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基及びアルケニル基の例としては、R1及びR2において示した基と同様の基を例示することができる。前記アリールオキシ基の例としては、AR1及びAR2が有していてもよい置換基において示した基と同様の基を例示することができる。前記アリール基及びヘテロアリール基の例としては、AR1及びAR2において示した基と同様の基を例示することができる。
【0059】
前記チオアルキルオキシ基としては、チオメチルオキシ基、チオエチルオキシ基、チオn-プロピルオキシ基、チオイソプロピルオキシ基、チオn-ブチルオキシ基、チオtert-ブチルオキシ基、チオn-ペンチルオキシ基、チオn-ヘキシルオキシ基、チオn-ヘプチルオキシ基、チオn-オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0060】
本発明においては、前記高分子量化合物αが、溶解性及び薄膜の安定性の点から、構造単位(2)として、前記一般式(2a)~(2x)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位を有することが好適であり、前記一般式(2a)及び(2v)から選ばれる少なくとも1つの構造単位を有することがより好適である。前記一般式(2a)においては、bが0であり、R4が炭素数3~40アルキル基であることが好適であり、bが0であり、R4が炭素数4~10のアルキル基であることがより好適である。前記一般式(2v)においては、c及びdが0であることが好適である。
【0061】
<熱架橋性構造単位>
本発明で用いられる高分子量化合物αは、熱架橋性構造単位(以下、「構造単位(3)」という。)を有していてもよい。前記構造単位(3)としては、下記一般式(3a)~(3z)で表される構造単位を挙げることができる。
【0062】
【0063】
式中、R3、R4及びa~cは、前記一般式(2a)~(2x)中の定義と同じである。
【0064】
本発明においては、前記高分子量化合物αが、耐熱性の点から、構造単位(3)として、前記一般式(3a)~(3z)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1つの構造単位を含むことが好ましく、前記一般式(3e)、(3f)及び(3y)から選ばれる少なくとも1つの構造単位を有することがより好ましい。前記一般式(3e)及び(3f)においては、b及びcが0であることが好ましい。前記一般式(3y)においては、bが0であることが好ましい。
【0065】
本発明においては、前記高分子量化合物αを構成する全構造単位中、前記構造単位(1)を30~60モル%、前記構造単位(2)を40~70モル%、前記構造単位(3)を0~20モル%含むことが好ましい。各構造単位をこのような割合で含むことで、高分子量化合物αは、正孔注入性、正孔移動性及び電子阻止性等に優れるものとなる。
【0066】
2.高分子量化合物β
<トリアリールアミン構造単位及び連結構造単位>
本発明で用いられる高分子量化合物βが有するトリアリールアミン構造単位及び連結構造単位は、いずれも2価の基であり、それぞれ下記一般式(4)及び(5)で表される。以下、下記一般式(4)で表されるトリアリールアミン構造単位を「構造単位(4)」、下記一般式(5)で表される連結構造単位を「構造単位(5)」という。
【0067】
【0068】
【0069】
前記一般式(4)及び(5)において、R3は、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数が1~8のアルキル基若しくはアルキルオキシ基、炭素数5~10のシクロアルキル基若しくはシクロアルキルオキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、又はアリールオキシ基を示す。
【0070】
前記アルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、及びアリールオキシ基の例としては、以下の基を例示することができる。
アルキル基(炭素数が1~8);例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、ネオへキシル基、n-ヘプチル基、イソへプチル基、ネオへプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ネオオクチル基等。
アルキルオキシ基(炭素数が1~8);例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基等。
シクロアルキル基(炭素数が5~10);例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等。
シクロアルキルオキシ基(炭素数が5~10);例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基等。
アルケニル基(炭素数が2~6);例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基等。
アリールオキシ基;例えば、フェニルオキシ基、トリルオキシ基等。
【0071】
前記一般式(4)において、R4は、炭素数が1~8のアルキル基若しくはアルキルオキシ基、又は炭素数5~10のシクロアルキル基若しくはシクロアルキルオキシ基を示す。
【0072】
前記アルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基の例としては、R3において示した基と同様の基を例示することができる。
【0073】
前記一般式(4)及び(5)において、b及びcはR3の数であり、それぞれ独立に、、以下の整数を示す。
b=0,1,2又は3
c=0,1,2,3又は4
【0074】
前記一般式(5)において、Qは水素原子、重水素原子、アミノ基、1価のアリール基、又は1価のヘテロアリール基を示す。
【0075】
前記1価のアリール基、1価のヘテロアリール基の例としては、以下の基を例示することができる。
アリール基;例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基等。
ヘテロアリール基;例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基等。
【0076】
また、上記のアミノ基、1価のアリール基、及び1価のヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、重水素原子、シアノ基、ニトロ基などに加え、以下の基を挙げることができる。
ハロゲン原子;例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等。
アルキル基;特に炭素数が1~8のもの、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、ネオへキシル基、n-ヘプチル基、イソへプチル基、ネオへプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ネオオクチル基等。
アルキルオキシ基;特に炭素数1~8のもの、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基等。
アルケニル基;例えば、ビニル基、アリル基等。
アリールオキシ基;例えば、フェニルオキシ基、トリルオキシ基等。
アリール基;例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基等。
ヘテロアリール基;例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基等。
アリールビニル基;例えば、スチリル基、ナフチルビニル基等。
アシル基;例えば、アセチル基、ベンゾイル基等。
【0077】
また、これらの置換基は、上記で例示した置換基をさらに有していてもよい。
これらの置換基は、それぞれ独立して存在していることが好ましいが、これらの置換基同士が、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0078】
例えば、上記のアリール基やヘテロアリール基は、置換基としてフェニル基を有していてもよく、このフェニル基は、さらに置換基としてフェニル基を有していてもよい。すなわち、アリール基がフェニル基の場合、このアリール基は、ビフェニリル基、ターフェニリル基、トリフェニレニル基であってもよい。
【0079】
前記一般式(4)において、Lは2価のフェニル基を示し、nは0~3の整数を示す。
【0080】
また、上記のLは置換基を有していてもよい。この置換基は、上述のQで表されるアミノ基、1価のアリール基、及び1価のヘテロアリール基が有していてもよい置換基と同様の基であり、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。
【0081】
前記一般式(4)において、b及びcがいずれも0でない場合、R3は、重水素原子であることが好適であり、合成上、b及びcが0、すなわちR3を有さないことが最も好適である。また、前記一般式(5)において、bが0でない場合、R3は、重水素原子であることが好適であり、合成上、bが0、すなわちR3を有さないことが最も好適である。
【0082】
本発明で用いられる高分子量化合物βにおいては、上記のR4は、溶解性を高めるため、n-ヘキシル基、又はn-オクチル基であることが最も好適である。
【0083】
本発明において、上述した構造単位(5)の好適な具体例を、
図19と
図20に、連結構造単位1~32として示すが、本発明で用いられる高分子量化合物βが有する構造単位(5)は、これらの構造単位に限定されるものではない。
なお、
図19と
図20に示された化学式において、破線は、隣接する構造単位への結合手を示し、環から伸びている実線は、メチル基が置換していることを示している。
【0084】
本発明においては、前記高分子量化合物βが有する構造単位(5)が、
図19の連結構造単位1、すなわち、1,3-フェニレン基であることが合成上好ましい。
【0085】
本発明で用いられる高分子量化合物βは、構造単位(3)を有していてもよい。構造単位(3)については、前記高分子量化合物αにおいて述べたとおりである。高分子量化合物βにおいて好ましい構造単位は、高分子量化合物αにおいて好ましい構造単位と同じである。
【0086】
本発明においては、前記高分子量化合物βを構成する全構造単位中、前記構造単位(4)を30~60モル%、前記構造単位(5)を40~70モル%、前記構造単位(3)を0~20モル%含むことが好ましい。各構造単位をこのような割合で含むことで、高分子量化合物βは、正孔注入性、正孔移動性及び電子阻止性等に優れるものとなる。
【0087】
3.高分子量化合物の製造方法
<高分子量化合物α>
本発明で用いられる高分子量化合物αは、既に述べたように、正孔の注入特性、正孔の移動度、電子阻止能力、薄膜安定性、耐熱性等の特性が優れているものである。GPCで測定したポリスチレン換算での重量平均分子量は、好ましくは10,000以上1,000,000未満、より好ましくは10,000以上500,000未満、さらに好ましくは10,000以上200,000未満の範囲である。
【0088】
本発明で用いられる高分子量化合物αは、スズキ重合反応やHARTWIG-BUCHWALD重合反応により、それぞれC-C結合又はC-N結合を形成して各構造単位を連鎖することにより合成される。好ましくは、各構造単位を有する単位化合物を用意し、この単位化合物を適宜ホウ酸エステル化又はハロゲン化し、得られるホウ酸エステル化物とハロゲン化物とを適宜の触媒を使用して重縮合反応することにより、本発明で用いられる高分子量化合物αを合成することができる。
【0089】
例えば、一般式(1)の構造単位を導入するための化合物としては、下記一般式(1a)で表されるトリアリールアミン誘導体を使用することができる。
【0090】
【化12】
上記式中、Sは、水素原子、ハロゲン原子(特にBrが好ましい。)、又はホウ酸エステル基であり、AR
1、AR
2、X、Y、Z、R
1、及びR
2は、いずれも一般式(1)で示したものと同じである。
【0091】
すなわち、上記一般式(1a)において、Sが水素原子であるものが、一般式(1)の構造単位を導入するための単位化合物であり、Sがハロゲン原子であるものが、ポリマーを合成するために使用されるハロゲン化物であり、Sがホウ酸エステル基であるものが、ポリマーを合成するために使用されるホウ酸エステル化物である。
【0092】
例えば、一般式(1)で表される構造単位(構造単位A)を40モル%、一般式(2a)で表される構造単位(構造単位B)を50モル%、一般式(3e)で表される構造単位(構造単位C)を10モル%で含む3元共重合体は下記に示す一般式(7)で表される。
【0093】
【0094】
この場合、構造単位Aと構造単位Cを導入するための中間体としてハロゲン化体を使用し、これに対し、構造単位Bを導入するための中間体としてホウ酸エステル化体を使用するか、又は、構造単位Aと構造単位Cを導入するための中間体としてホウ酸エステル化体を使用し、これに対し、構造単位Bを導入するための中間体としてハロゲン化体を使用する。つまり、分子量が大きい高分子量化合物αを得るためには、ハロゲン化体とホウ酸エステル化体のモル比率は等しくなければならず、モル比率を調整することにより得られる高分子量化合物αの分子量を制御することができる。
【0095】
<高分子量化合物β>
本発明で用いられる高分子化合物βは、上述した高分子量化合物αが有する特性と同様の特性を有し、さらにワイドギャップであるという特性を有している。GPCで測定したポリスチレン換算での重量平均分子量は、好ましくは10,000以上1,000,000未満、より好ましくは10,000以上500,000未満、さらに好ましくは10,000以上200,000未満の範囲である。
【0096】
本発明で用いられる高分子化合物βは、上述した高分子量化合物αの合成と同様の方法で合成することができる。
【0097】
例えば、一般式(4)で表される構造単位(構造単位D)を40モル%、一般式(5)で表される構造単位(構造単位E)を50モル%、一般式(3e)で表される構造単位(構造単位C)を10モル%で含む3元共重合体は下記に示す一般式(8)で表される。
【0098】
【0099】
この場合、構造単位Dと構造単位Cを導入するための中間体としてホウ酸エステル化体を使用し、これに対し、構造単位Eを導入するための中間体としてハロゲン化体を使用するか、又は、構造単位Dと構造単位Cを導入するための中間体としてハロゲン化体を使用し、これに対し、構造単位Eを導入するための中間体としてホウ酸エステル化体を使用する。つまり、分子量が大きい高分子量化合物βを得るためには、ハロゲン化体とホウ酸エステル化体のモル比率は等しくなければならず、モル比率を調整することにより得られる高分子量化合物βの分子量を制御することができる。
【0100】
4.混合塗布液
上述した本発明で用いられる高分子量化合物α及びβは、これらをベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族系有機溶媒に溶解させて混合塗布液を調製し、この混合塗布液を所定の基材上にコーティングし、加熱乾燥することにより、正孔注入性、正孔輸送性、電子阻止性などの特性に優れた薄膜を形成することができる。このようにして形成された薄膜は耐熱性も良好であり、さらには他の層との密着性も良好である。前記混合塗布液は、高分子量化合物α及びβ以外の他の高分子量化合物を含んでいてもよい。
【0101】
高分子量化合物αとβの使用割合は、質量比で1:5~5:1であることが好ましく、1:3~3:1であることがより好ましい。使用割合がこの範囲外であると、2種類以上の高分子量化合物を使用することで、1種類の高分子量化合物を使用した場合と比較して長寿命の有機EL素子が得られるという効果が発揮されにくくなる。
【0102】
例えば、前記高分子量化合物α及びβは、有機EL素子の正孔注入層及び/又は正孔輸送層の構成材料として使用することができる。このような高分子量化合物α及びβを含む混合塗布液から形成された正孔注入層又は正孔輸送層は、従来の材料単体で形成されたものに比して、有機EL素子の耐久性が向上するという利点を実現できる。
【0103】
また、前記混合塗布液は、電子阻止層や発光層の形成にも好適に使用することができる。
【0104】
5.有機EL素子
上述した混合塗布液を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子は、例えば
図21に示す構造を有している。すなわち、透明基板1(ガラス基板、透明樹脂基板など、透明な材料からなる基板であればよい)の上に、透明陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6及び陰極7が設けられている構造を有している。
【0105】
本発明の有機EL素子は、上記の層構造に限定されるものではなく、発光層5と電子輸送層6との間に正孔阻止層を設けることができ、また、正孔輸送層4と発光層5との間に電子阻止層などを設けることができるし、さらには、陰極7と電子輸送層6との間に電子注入層を設けることもできる。さらに、いくつかの層を省略することもできる。例えば、透明基板1上に、透明陽極2、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6及び陰極7を設けたシンプルな層構造とすることもできる。また、これらの各層は、同一の機能を有する層を重ねた2層構造とすることも可能である。
【0106】
前記混合塗布液は、得られる薄膜の正孔注入性や正孔輸送性などの特性を活かして、上記の透明陽極2と陰極7との間に設けられる有機層、例えば、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、又は図示されていない電子阻止層の形成に好適に使用される。
【0107】
上記の有機EL素子において、透明陽極2は、それ自体公知の電極材料で形成することができ、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料を透明基板1上に蒸着することにより形成される。
【0108】
また、透明陽極2上に設けられている正孔注入層3は、前記混合塗布液を用いて形成することができる。具体的には、前記混合塗布液を、スピンコート、インクジェットなどにより透明陽極2上にコーティングすることにより、正孔注入層3を形成することができる。
【0109】
また、正孔注入層3は、従来公知の材料、例えば以下の材料を用いて形成することもできる。
銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物;スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体;単結合又はヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン、例えばトリフェニルアミン3量体及び4量体;ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物;塗布型の高分子材料、例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(スチレンスルフォネート)(PSS)等。
【0110】
このような材料を用いての層(薄膜)の形成は、蒸着法、並びにスピンコート及びインクジェットなどによるコーティング法により行うことができる。これらは、他の層についても同様であり、膜形成材料の種類に応じて、蒸着法又はコーティング法により成膜が行われる。
【0111】
正孔注入層3の上に設けられている正孔輸送層4も、正孔注入層3と同様、前記混合塗布液を用いてのスピンコートやインクジェットなどによるコーティング法によって形成することができる。
【0112】
また、従来公知の正孔輸送材料を用いて正孔輸送層4を形成することもできる。このような正孔輸送材料として代表的なものは、次のとおりである。
ベンジジン誘導体、例えば、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)、N,N,N’,N’-テトラビフェニリルベンジジン;アミン系誘導体、例えば、1,1-ビス[4-(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);種々のトリフェニルアミン3量体及び4量体;正孔注入層用としても使用される塗布型高分子材料等。
【0113】
上述した正孔輸送層4の形成に使用する材料は、上記の高分子量化合物α及びβを含め、それぞれ単独で成膜してもよいが、2種以上混合して成膜することもできる。また、前記材料の1種又は複数種を用いて複数の層を形成し、これらの層が積層された多層膜を正孔輸送層とすることもできる。
【0114】
また、正孔注入層3と正孔輸送層4とを兼ねた層を形成することもでき、このような正孔注入・輸送層は、PEDOTなどの高分子材料を用いてコーティング法により形成することができる。
【0115】
正孔注入層3及び正孔輸送層4の形成には、これらの層に通常使用される材料に対して、トリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン又はラジアレン誘導体(例えば、WO2014/009310参照)などをPドーピングしたものを使用することができる。また、TPD基本骨格を有する高分子化合物などを用いることもできる。
【0116】
さらに、図示されていないが、正孔輸送層4と発光層5との間に設けることができる電子阻止層も、正孔輸送層4と同様、前記混合塗布液を用いてのスピンコートやインクジェットなどによるコーティング法によって形成することができる。
【0117】
また、電子阻止層は、電子阻止作用を有する公知の電子阻止性化合物、例えば、カルバゾール誘導体、及びトリフェニルシリル基を有し且つトリアリールアミン構造を有する化合物などを用いて形成することもできる。カルバゾール誘導体及びトリアリールアミン構造を有する化合物の具体例は、以下の通りである。
カルバゾール誘導体、例えば、4,4’,4’’-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(mCP)、2,2-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]アダマンタン(Ad-Cz);トリアリールアミン構造を有する化合物、例えば、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレン等。
【0118】
電子阻止層は、上記のような公知の電子阻止性材料を1種単独で、又は2種以上を用いて形成されるが、これらの電子阻止性材料の1種又は複数種を用いて複数の層を形成し、これらの層が積層された多層膜を電子阻止層とすることもできる。
【0119】
有機EL素子の発光層5は、Alq3をはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体の他、亜鉛やベリリウム、アルミニウムなどの各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などの発光材料を用いて形成することができる。
【0120】
また、発光層5をホスト材料とドーパント材料とで構成することもできる。
この場合のホスト材料として、上記の発光材料に加え、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを使用することができ、さらに、前述した高分子量化合物α及びβを単独で、又は混合して使用することもできる。
【0121】
ドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレン及びそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。
【0122】
このような発光層5も、各発光材料の1種又は2種以上を用いた単層構成とすることもできるし、複数の層を積層した多層構造とすることもできる。
【0123】
さらに、発光材料として燐光発光材料を使用して発光層5を形成することもできる。燐光発光材料としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。例えば、Ir(ppy)3などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、Btp2Ir(acac)などの赤色の燐光発光体などを用いることができ、これらの燐光発光材料は、正孔注入・輸送性のホスト材料や電子輸送性のホスト材料にドープして使用される。
【0124】
正孔注入・輸送性のホスト材料としては、4,4'-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(CBP)、TCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などを用いることができ、さらに、前述した高分子量化合物α及びβを用いることもできる。
【0125】
また、電子輸送性のホスト材料としては、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)や2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(TPBI)などを用いることができる。
【0126】
なお、燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0127】
また、発光材料としてPIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。(Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)参照)。
【0128】
前述した高分子量化合物α及びβに、ドーパントと呼ばれている蛍光発光体、燐光発光体、又は遅延蛍光を放射する材料を担持させて発光層5を形成することにより、駆動電圧が低下し、発光効率が改善された有機EL素子を実現できる。
【0129】
発光層5と電子輸送層6との間に設ける正孔阻止層(図では示されていない)は、それ自体公知の正孔阻止作用を有する化合物を用いて形成することができる。このような正孔阻止作用を有する公知化合物の例としては、以下のものを挙げることができる。
バソクプロイン(BCP)などのフェナントロリン誘導体;アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-フェニルフェノレート(以後、BAlqと略称する)などのキノリノール誘導体の金属錯体;各種希土類錯体;トリアゾール誘導体;トリアジン誘導体;オキサジアゾール誘導体。
【0130】
これらの材料は、以下に述べる電子輸送層6の形成にも使用することができ、さらには、正孔阻止層と電子輸送層6とを兼ねる層を形成する材料として使用することもできる。
【0131】
このような正孔阻止層も、単層又は多層の積層構造とすることができ、各層は、上述した正孔阻止作用を有する化合物の1種又は2種以上を用いて成膜される。
【0132】
電子輸送層6は、それ自体公知の電子輸送性の化合物、例えば、Alq3、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体のほか、各種金属錯体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体などを用いて形成される。
【0133】
この電子輸送層6も、単層又は多層の積層構造とすることができ、各層は、上述した電子輸送性化合物の1種又は2種以上を用いて成膜される。
【0134】
さらに、必要に応じて設けられる電子注入層(図では示されていない)も、それ自体公知のもの、例えば、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、リチウムキノリンなどの有機金属錯体などを用いて形成することができる。
【0135】
有機EL素子の陰極7としては、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金からなる電極材料が用いられる。
【0136】
本発明においては、前述した高分子量化合物α及びβを含む高分子量化合物を2種以上用いて、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、及び図示されていない電子阻止層の少なくともいずれかの層を形成することにより、発光効率及び電力効率が高く、実用駆動電圧が低く、極めて優れた耐久性を有する有機EL素子が得られる。特に、この有機EL素子では、高い発光効率を有しながら、駆動電圧が低下し、電流耐性が改善されて、最大発光輝度が向上している。
【実施例】
【0137】
以下、本発明を次の実験例により説明する。
なお、本発明で用いた、一般式(1)で表される構造単位を含む高分子量化合物を製造するための合成の詳細については、WO2018/168667を参照。また、一般式(6)で表される構造単位を含む高分子量化合物を製造するための合成の詳細については、WO2020/009069を参照。
以下の実験例で合成した高分子量化合物が有する各構造単位を下記のように表す。
構造単位A;一般式(1)で表される構造単位
構造単位B;一般式(2a)で表される構造単位
構造単位C;一般式(3e)で表される構造単位
構造単位D;一般式(4)で表される構造単位
構造単位E;一般式(5)で表される構造単位
構造単位F;一般式(3y)で表される構造単位
構造単位G;一般式(2v)で表される構造単位
【0138】
(実施例1)
<高分子量化合物Iの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
2,7-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9,9-ジ-n-オクチルフルオレン:6.5g
N,N-ビス(4-ブロモフェニル)-4-(2-ナフタレニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミン:5.5g
N,N-ビス(4-ブロモフェニル)-ビシクロ[4.2.0]オクタ-1,3,5-トリエン-3-アミン:0.87g
リン酸三カリウム:9.0g
トルエン:16ml
水:9ml
1,4-ジオキサン:48ml
【0139】
次いで、酢酸パラジウム(II)1.9mg、及びトリ-o-トリルホスフィン15.0mgを加えて加熱し、88℃で10時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を22mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン0.32gを加えて1時間撹拌した。トルエン100ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液100mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。
【0140】
次いで、室温まで冷却した後、飽和食塩水とトルエンを加え、分液操作を行うことによって有機層を採取した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン300mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン600ml中に滴下し、得られた沈殿物をろ取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子化合物Iを8.0g(収率92%)得た。
【0141】
高分子量化合物IのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):45,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):97,000
分散度(Mw/Mn):2.1
【0142】
また、高分子量化合物IについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図22に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0143】
【0144】
上記化学組成から理解されるように、この高分子量化合物Iは、構造単位Aを40モル%含み、構造単位Bを50モル%含み、さらに、構造単位Cを10モル%の量で含有していた。
【0145】
(実施例2)
<高分子量化合物IIの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
9,9-ジオクチル-N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン:5.0g
3-ジブロモベンゼン:1.8g
N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ビシクロ[4.2.0]オクタ-1,3,5-トリエン-3-アミン:0.8g
リン酸三カリウム:6.9g
トルエン:9ml
水:5ml
1,4-ジオキサン:27ml
【0146】
次いで、酢酸パラジウム(II)1.4mg、及びトリ-o-トリルホスフィン11.5mgを加えて加熱し、87℃で14時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を17mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン242mgを加えて1時間撹拌した。トルエン50ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液50mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン100mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン300ml中に滴下し、得られた沈殿物を濾取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物IIを3.5g(収率78%)得た。
【0147】
高分子量化合物IIのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):32,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):55,000
分散度(Mw/Mn):1.7
【0148】
また、高分子量化合物IIについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図23に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0149】
【0150】
上記化学組成から理解されるようにこの高分子量化合物IIは、構造単位Dを40モル%含み、構造単位Eを50モル%含み、さらに、構造単位Cを10モル%の量で含有していた。
【0151】
(実施例3)
<高分子量化合物IIIの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
4-(9,9-ジオクチル-9H-フルオレン-2-イル)-N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-ベンゼンアミン:5.0g
1,3-ジブロモベンゼン:1.7g
N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ビシクロ[4.2.0]オクタ-1,3,5-トリエン-3-アミン:0.7g
リン酸三カリウム:6.3g
トルエン:9ml
水:5ml
1,4-ジオキサン:27ml
【0152】
次いで、酢酸パラジウム(II)1.3mg、及びトリ-o-トリルホスフィン10.5mgを加えて加熱し、88℃で11時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を16mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン222mgを加えて1時間撹拌した。トルエン50ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液50mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン100mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン100ml中に滴下し、得られた沈殿物を濾取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物IIIを2.2g(収率48%)得た。
【0153】
高分子量化合物IIIのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):55,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):93,000
分散度(Mw/Mn):1.7
【0154】
また、高分子量化合物IIIについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図24に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0155】
【0156】
上記化学組成から理解されるようにこの高分子量化合物IIIは、構造単位Dを40モル%含み、構造単位Eを50モル%含み、さらに、構造単位Cを10モル%の量で含有していた。
【0157】
(実施例4)
<高分子量化合物IVの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
9,9-ジオクチル-N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン:3.4g
9-(3,5-ジブロモフェニル)-9H-カルバゾール:2.1g
N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ビシクロ[4.2.0]オクタ-1,3,5-トリエン-3-アミン:0.5g
リン酸三カリウム:4.7g
トルエン:7ml
水:4ml
1,4-ジオキサン:21ml
【0158】
次いで、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)を5mg加えて加熱し、90℃で19.5時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を12mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン165mgを加えて1時間撹拌した。トルエン50ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液50mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン80mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン240ml中に滴下し、得られた沈殿物を濾取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物IVを3.0g(収率80%)得た。
【0159】
高分子量化合物IVのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):35,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):69,000
分散度(Mw/Mn):2.0
【0160】
また、高分子量化合物IVについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図25に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0161】
【0162】
上記化学組成から理解されるようにこの高分子量化合物IVは、構造単位Dを40モル%含み、構造単位Eを50モル%含み、さらに構造単位Cを10モル%の量で含有していた。
【0163】
(実施例5)
<高分子量化合物Vの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
9,9-ジオクチル-N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン:5.0g
1,3-ジブロモベンゼン:1.8g
2,2´-(5-ビシクロ[4.2.0]オクタ-1,3,5-トリエン-3-イル-1,3-フェニレン)ビス[4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン]:0.7g
リン酸三カリウム:6.9g
トルエン:9ml
水:5ml
1,4-ジオキサン:27ml
【0164】
次いで、酢酸パラジウム(II)1.4mg、及びトリ-o-トリルホスフィン11.5mgを加えて加熱し、80℃で14時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を17mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン242mgを加えて1時間撹拌した。トルエン100ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液50mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン100mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン300ml中に滴下し、得られた沈殿物を濾取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物Vを3.2g(収率73%)得た。
【0165】
高分子量化合物VのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):44,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):71,000
分散度(Mw/Mn):1.6
【0166】
また、高分子量化合物VについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図26に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0167】
【0168】
上記化学組成から理解されるようにこの高分子量化合物Vは、構造単位Dを40モル%含み、構造単位Eを50モル%含み、さらに構造単位Fを10モル%の量で含有していた。
【0169】
(実施例6)
<高分子量化合物VIの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
9,9-ジオクチル-N,N-ビス[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン:5.0g
1,3-ジブロモベンゼン:1.8g
N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ビシクロ[4.2.0]オクタ-1,3,5-トリエン-3-アミン:0.8g
リン酸三カリウム:6.9g
トルエン:9ml
水:5ml
1,4-ジオキサン:27ml
【0170】
次いで、酢酸パラジウム(II)1.4mg、及びトリ-o-トリルホスフィン11.5mgを加えて加熱し、88℃で12時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を17mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン242mgを加えて1時間撹拌した。トルエン50ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液50mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン50mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン300ml中に滴下し、得られた沈殿物を濾取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物VIを2.2g(収率48%)得た。
【0171】
高分子量化合物VIのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):25,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):37,000
分散度(Mw/Mn):1.5
【0172】
また、高分子量化合物VIについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図27に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0173】
【0174】
上記化学組成から理解されるようにこの高分子量化合物VIは、構造単位Dを38モル%含み、構造単位Eを50モル%含み、さらに構造単位Cを12モル%の量で含有していた。
【0175】
(実施例7)
<高分子量化合物VIIの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
2,7-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9,9-ジ-n-オクチルフルオレン:6.9g
N,N-ビス(4-ブロモフェニル)-4-(2-ナフタレニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミン:6.5g
リン酸三カリウム:9.0g
トルエン:16ml
水:9ml
1,4-ジオキサン:48ml
【0176】
次いで、酢酸パラジウム(II)1.9mg、及びトリ-o-トリルホスフィン15.1mgを加えて加熱し、85℃で14時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を22mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン0.3gを加えて1時間撹拌した。トルエン100ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液100mlを加えて加熱し、還流下で1時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン200mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン400ml中に滴下し、得られた沈殿物をろ取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物VIIを8.7g(収率92%)得た。
【0177】
高分子量化合物VIIのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):38,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):84,000
分散度(Mw/Mn):2.2
【0178】
また、高分子量化合物VIIについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図28に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0179】
【0180】
上記化学組成から理解されるようにこの高分子量化合物VIIは、構造単位Aを52モル%含み、構造単位Bを48モル%の量で含有していた。
【0181】
(実施例8)
<高分子量化合物VIIIの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-9,9-ジオクチル-9H-フルオレン-2-アミン:5.6g
1,3-ジブロモベンゼン:1.6g
リン酸三カリウム:7.7g
トルエン:9ml
水:5ml
1,4-ジオキサン:27ml
【0182】
次いで、酢酸パラジウム(II)1.6mg、及びトリ-o-トリルホスフィン12.9mgを加えて加熱し、85℃で11時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を19mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン271mgを加えて1時間撹拌した。トルエン50ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液50mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン100mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン300ml中に滴下し、得られた沈殿物を濾取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物VIIIを3.2g(収率70%)得た。
【0183】
高分子量化合物VIIIのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):56,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):89,000
分散度(Mw/Mn):1.6
【0184】
また、高分子量化合物VIIIについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図29に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0185】
【0186】
上記化学組成から理解されるように、この高分子化合物VIIIは、構造単位Dを50モル%含み、構造単位Eを50モル%の量で含有していた。
【0187】
(実施例9)
<高分子量化合物IXの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
9,9-ジオクチル-N,N-ビス[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン:6.6g
1,3-ジブロモベンゼン:1.9g
リン酸三カリウム:9.1g
トルエン:12ml
水:7ml
1,4-ジオキサン:36ml
【0188】
次いで、酢酸パラジウム(II)1.9mg、及びトリ-o-トリルホスフィン15.1mgを加えて加熱し、85℃で11.5時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を23mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン319mgを加えて1時間撹拌した。トルエン50ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液50mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン30mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン400ml中に滴下し、得られた沈殿物を濾取した。この操作をもう1回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物IXを1.6g(収率30%)得た。
【0189】
高分子量化合物IXのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):38,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):50,000
分散度(Mw/Mn):1.3
【0190】
また、高分子量化合物IXについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図30に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0191】
【0192】
上記化学組成から理解されるように、この高分子量化合物IXは、構造単位Dを50モル%含み、構造単位Eを50モル%の量で含有していた。
【0193】
(実施例10)
<高分子量化合物Xの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
2,7-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9,9-ジ-n-オクチルフルオレン:6.5g
N,N-ビス(4-ブロモフェニル)-4-(2-ナフタレニル)-[1,1’:2’,1’’-ターフェニル]-4’-アミン:5.5g
4,4’-ジブロモトリフェニルアミン:0.8g
リン酸三カリウム:9.0g
トルエン:16ml
水:9ml
1,4-ジオキサン:48ml
【0194】
次いで、酢酸パラジウム(II)2.0mg、及びトリ-o-トリルホスフィン15.1mgを加えて加熱し、80℃で12.5時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を22mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン0.3gを加えて1時間撹拌した。トルエン100ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液100mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン200mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン400ml中に滴下し、得られた沈殿物をろ取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物Xを7.8g(収率90%)得た。
【0195】
高分子量化合物XのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):44,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):89,000
分散度(Mw/Mn):2.0
【0196】
また、高分子量化合物XについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図31に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0197】
【0198】
上記化学組成から理解されるように、この高分子量化合物Xは、構造単位Aを40モル%含み、構造単位Bを50モル%含み、構造単位Gを10モル%の量で含有していた。
【0199】
(実施例11)
<高分子量化合物XIの合成>
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
9,9-ジオクチル-N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン:5.0g
1,3-ジブロモベンゼン:1.8g
N-フェニル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-N-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ベンゼンアミン:0.8g
リン酸三カリウム:6.9g
トルエン:9ml
水:5ml
1,4-ジオキサン:27ml
【0200】
次いで、酢酸パラジウム(II)1.4mg、及びトリ-o-トリルホスフィン11.5mgを加えて加熱し、86℃で11.5時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を17mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン242mgを加えて1時間撹拌した。トルエン50ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液50mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン100mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン300ml中に滴下し、得られた沈殿物を濾取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物XIを3.4g(収率75%)得た。
【0201】
高分子量化合物XIのGPCで測定した平均分子量、分散度は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):32,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):54,000
分散度(Mw/Mn):1.7
【0202】
また、高分子量化合物XIについてNMR測定を行った。
1H-NMR測定結果を
図32に示した。化学組成式は下記の通りであった。
【0203】
【0204】
上記化学組成から理解されるようにこの高分子量化合XIは、構造単位Dを40モル%含み、構造単位Eを50モル%含み、さらに、構造単位Gを10モル%の量で含有していた。
【0205】
(実施例12)
<有機EL素子の作製と評価;熱架橋性構造単位を有する高分子量化合物を使用>
図21に示す層構造の有機EL素子を、以下の手法により作製した。
【0206】
具体的には、膜厚50nmのITOを成膜したガラス基板1を有機溶媒で洗浄した後に、UV/オゾン処理にてITO表面を洗浄した。このガラス基板1に設けられている透明陽極2(ITO)を覆うように、PEDOT/PSS(HERAEUS製)をスピンコート法により50nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃約10分間乾燥して正孔注入層3を形成した。
【0207】
熱架橋性構造単位を有する高分子量化合物αである、実施例1で得られた高分子量化合物Iと、熱架橋性構造単位を有する高分子量化合物βである、実施例2で得られた高分子量化合物IIを、1:1の重量比で混合したものをトルエンに0.6重量%溶解して塗布液を調製した。上記のようにして正孔注入層3が形成されている基板を、乾燥窒素にて置換したグローブボックス内に移し、ホットプレート上で230℃で10分間乾燥した後に、正孔注入層3の上に、上記の塗布液を用いてスピンコートにより25nmの厚みの塗布層を形成し、さらに、ホットプレート上で220℃で30分間乾燥して正孔輸送層4を形成した。
【0208】
上記のようにして正孔輸送層4が形成されている基板を真空蒸着機内に取り付け、0.001Pa以下まで減圧した。正孔輸送層4の上に、下記構造式の青色発光材料(EMD-1)とホスト材料(EMH-1)との二元蒸着により、膜厚34nmの発光層5を形成した。なお、二元蒸着では、蒸着速度比を、EMD-1:EMH-1=4:96とした。
【0209】
【0210】
【0211】
電子輸送材料として、下記構造式の化合物(ETM-1)及び(ETM-2)を用意した。
【0212】
【0213】
【0214】
上記で形成された発光層5の上に、上記の電子輸送材料(ETM-1)及び(ETM-2)を用いての二元蒸着により、膜厚20nmの電子輸送層6を形成した。なお、二元蒸着では、蒸着速度比を、ETM-1:ETM-2=50:50とした。
【0215】
最後に、アルミニウムを膜厚100nmとなるように蒸着して陰極7を形成した。
このように、透明陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6及び陰極7が形成されているガラス基板を、乾燥窒素にて置換したグローブボックス内に移動し、UV硬化樹脂を用いて封止用の他のガラス基板を貼り合わせ、有機EL素子とした。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。また、作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性を測定した。上記の測定結果は、表1に示した。
【0216】
(実施例13)
高分子量化合物Iと高分子量化合物IIを、1:1の重量比に代えて2:3の重量比で混合した以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0217】
(実施例14)
高分子量化合物Iと高分子量化合物IIを、1:1の重量比に代えて3:2の重量比で混合した以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0218】
(実施例15)
高分子量化合物IIに代えて実施例3で得られた高分子量化合物IIIを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0219】
(実施例16)
高分子量化合物IIに代えて実施例3で得られた高分子量化合物IIIを用い、高分子量化合物Iと高分子量化合物IIIを、2:3の重量比で混合した以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0220】
(実施例17)
高分子量化合物IIに代えて実施例3で得られた高分子量化合物IIIを用い、高分子量化合物Iと高分子量化合物IIIを、3:2の重量比で混合した以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0221】
(実施例18)
高分子量化合物IIに代えて実施例4で得られた高分子量化合物IVを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0222】
(実施例19)
高分子量化合物IIに代えて実施例4で得られた高分子量化合物IVを用い、高分子量化合物Iと高分子量化合物IVを、2:3の重量比で混合した以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0223】
(実施例20)
高分子量化合物IIに代えて実施例4で得られた高分子量化合物IVを用い、高分子量化合物Iと高分子量化合物IVを、3:2の重量比で混合した以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0224】
(実施例21)
高分子量化合物IIに代えて実施例5で得られた高分子量化合物Vを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0225】
(実施例22)
高分子量化合物IIに代えて実施例5で得られた高分子量化合物Vを用い、高分子量化合物Iと高分子量化合物Vを、3:2の重量比で混合した以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0226】
(実施例23)
高分子量化合物IIに代えて実施例6で得られた高分子量化合物VIを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0227】
(実施例24)
高分子量化合物IIに代えて実施例6で得られた高分子量化合物VIを用い、高分子量化合物Iと高分子量化合物VIを、2:3の重量比で混合した以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0228】
(実施例25)
高分子量化合物IIに代えて実施例6で得られた高分子量化合物VIを用い、高分子量化合物Iと高分子量化合物VIを、3:2の重量比で混合した以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0229】
[比較例1]
高分子量化合物Iと高分子量化合物IIの混合物に代えて、下記のTFB(正孔輸送性ポリマー)を用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。
【0230】
【0231】
TFB(正孔輸送性ポリマー)は、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(4-sec-ブチルフェニル))ジフェニルアミン](American Dye Source社製、Hole Transport Polymer ADS259BE)である。この比較例1の有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1と表2に示した。
【0232】
[比較例2]
高分子量化合物Iと高分子量化合物IIの混合物に代えて、高分子量化合物Iのみを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0233】
[比較例3]
高分子量化合物Iと高分子量化合物IIの混合物に代えて、高分子量化合物IIのみを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0234】
[比較例4]
高分子量化合物Iと高分子量化合物IIの混合物に代えて、高分子量化合物IIIのみを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0235】
[比較例5]
高分子量化合物Iと高分子量化合物IIの混合物に代えて、高分子量化合物IVのみを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0236】
[比較例6]
高分子量化合物Iと高分子量化合物IIの混合物に代えて、高分子量化合物Vのみを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0237】
[比較例7]
高分子量化合物Iと高分子量化合物IIの混合物に代えて、高分子量化合物VIのみを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0238】
なお、各種特性の評価において、素子寿命は、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を700cd/m2として定電流駆動を行った時、発光輝度が490cd/m2(初期輝度を100%とした時の70%に相当:70%減衰)に減衰するまでの時間として測定した。
【0239】
【0240】
表1に示すように、素子寿命(70%減衰)において、高分子量化合物同士の混合を行っていない比較例1、比較例2、比較例3の有機EL素子の14時間、72時間、22時間に対して、高分子量化合物Iと高分子量化合物IIの混合層を有する実施例12、実施例13、実施例14の有機EL素子ではそれぞれ124時間、122時間、137時間といずれも長寿命であった。
【0241】
また、表1に示すように、素子寿命(70%減衰)において、高分子量化合物同士の混合を行っていない比較例1、比較例2、比較例4の有機EL素子の14時間、72時間、65時間に対して、高分子量化合物Iと高分子量化合物IIIの混合層を有する実施例15、実施例16、実施例17の有機EL素子ではそれぞれ258時間、278時間、249時間といずれも長寿命であった。
【0242】
さらに、表1に示すように、素子寿命(70%減衰)において、高分子量化合物同士の混合を行っていない比較例1、比較例2、比較例5の有機EL素子の14時間、72時間、10時間に対して、高分子量化合物Iと高分子量化合物IVの混合層を有する実施例18、実施例19、実施例20の有機EL素子ではそれぞれ169時間、232時間、159時間といずれも長寿命であった。
【0243】
また、表1に示すように、素子寿命(70%減衰)において、高分子量化合物同士の混合を行っていない比較例1、比較例2、比較例6の有機EL素子の14時間、72時間、34時間に対して、高分子量化合物Iと高分子量化合物Vの混合層を有する実施例21、実施例22の有機EL素子ではそれぞれ290時間、329時間といずれも長寿命であった。
【0244】
さらに、表1に示すように、素子寿命(70%減衰)において、高分子量化合物同士の混合を行っていない比較例1、比較例2、比較例7の有機EL素子の14時間、72時間、0.9時間に対して、高分子量化合物Iと高分子量化合物VIの混合層を有する実施例23、実施例24、実施例25の有機EL素子ではそれぞれ209時間、94時間、159時間といずれも長寿命であった。
【0245】
(実施例26)
<有機EL素子の作製と評価;熱架橋性構造単位を有さない高分子量化合物を使用>
図21に示す層構造の有機EL素子の作製において、熱架橋性構造単位を有する高分子量化合物に代えて、熱架橋性構造単位を有さない高分子量化合物を正孔輸送層4として用いた以外は、実施例12と全く同様にして素子の作製を行った。
【0246】
具体的には、熱架橋性構造単位を有さない高分子量化合物αである、実施例7で得られた高分子量化合物VIIと、熱架橋性構造単位を有さない高分子量化合物βである、実施例8で得られた高分子量化合物VIIIを、1:1の重量比で混合したものを用いた以外は、実施例12と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例12と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0247】
(実施例27)
高分子量化合物VIIと高分子量化合物VIIIを、1:1の重量比に代えて2:3の重量比で混合した以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0248】
(実施例28)
高分子量化合物VIIと高分子量化合物VIIIを、1:1の重量比に代えて3:2の重量比で混合した以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0249】
(実施例29)
高分子量化合物VIIIに代えて実施例9で得られた高分子量化合物IXを用いた以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0250】
(実施例30)
高分子量化合物VIIIに代えて実施例9で得られた高分子量化合物IXを用い、高分子量化合物VIIと高分子量化合物IXを、3:2の重量比で混合した以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0251】
(実施例31)
高分子量化合物VIIに代えて実施例10で得られた高分子量化合物Xを、高分子量化合物VIIIに代えて実施例11で得られた高分子量化合物XIを用い、高分子量化合物Xと高分子量化合物XIを、2:3の重量比で混合した以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0252】
(実施例32)
高分子量化合物VIIに代えて実施例10で得られた高分子量化合物Xを、高分子量化合物VIIIに代えて実施例11で得られた高分子量化合物XIを用い、高分子量化合物Xと高分子量化合物XIを、3:2の重量比で混合した以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0253】
[比較例8]
高分子量化合物VIIと高分子量化合物VIIIの混合物に代えて、高分子量化合物VIIのみを用いた以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0254】
[比較例9]
高分子量化合物VIIと高分子量化合物VIIIの混合物に代えて、高分子量化合物VIIIのみを用いた以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0255】
[比較例10]
高分子量化合物VIIと高分子量化合物VIIIの混合物に代えて、高分子量化合物IXのみを用いた以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0256】
[比較例11]
高分子量化合物VIIと高分子量化合物VIIIの混合物に代えて、高分子量化合物Xのみを用いた以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0257】
[比較例12]
高分子量化合物VIIと高分子量化合物VIIIの混合物に代えて、高分子量化合物XIのみを用いた以外は、実施例26と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例26と同様に各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0258】
なお、各種特性の評価において、素子寿命は、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を700cd/m2として定電流駆動を行った時、発光輝度が490cd/m2(初期輝度を100%とした時の70%に相当:70%減衰)に減衰するまでの時間として測定した。
【0259】
【0260】
表2に示すように、素子寿命(70%減衰)において、高分子量化合物同士の混合を行っていない比較例1、比較例8、比較例9の有機EL素子の14時間、1264時間、1064時間に対して、高分子量化合物VIIと高分子量化合物VIIIの混合層を有する実施例26、実施例27、実施例28の有機EL素子ではそれぞれ1646時間、1889時間、1442時間といずれも長寿命であった。
【0261】
また、表2に示すように、素子寿命(70%減衰)において、高分子量化合物同士の混合を行っていない比較例1、比較例8、比較例10の有機EL素子の14時間、1264時間、17時間に対して、高分子量化合物VIIと高分子量化合物IXの混合層を有する実施例29、実施例30の有機EL素子ではそれぞれ1310時間、1194時間と長寿命又は同等程度の寿命であった。
【0262】
さらに、表2に示すように、素子寿命(70%減衰)において、高分子量化合物同士の混合を行っていない比較例1、比較例11、比較例12の有機EL素子の14時間、616時間、78時間に対して、高分子量化合物Xと高分子量化合物XIの混合層を有する実施例31、実施例32の有機EL素子ではそれぞれ663時間、801時間といずれも長寿命であった。
【0263】
このように、2種以上の高分子量化合物からなる混合層を有する本発明の有機EL素子は、従来の有機EL素子と比較して、低電圧・高効率を維持しつつ、長寿命を実現できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0264】
本発明の有機EL素子は、駆動電圧が低く、高効率・長寿命であるため、例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。