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特許7579272高い屈折率及び高い加熱たわみ温度を有し、コーティング及び材料のための低い粘度を有する、架橋性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】高い屈折率及び高い加熱たわみ温度を有し、コーティング及び材料のための低い粘度を有する、架橋性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/10 20060101AFI20241030BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241030BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241030BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241030BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241030BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20241030BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241030BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20241030BHJP
【FI】
C08F20/10
C08F2/44 C
B33Y80/00
B33Y10/00
B33Y70/00
B29C64/124
B33Y30/00
B29C64/268
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021563338
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2020061344
(87)【国際公開番号】W WO2020216851
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】1904426
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・モニエ
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-040224(JP,A)
【文献】特開2007-277456(JP,A)
【文献】特開2001-200022(JP,A)
【文献】特開2005-272773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
B29C 64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種のビフェニルフルオレンジグリシジルエーテルテトラ(メタ)アクリレートオリゴマー、
b)ビフェニル、クミル、又はベンジルの構造を含むモノアルコールのモノ(メタ)アクリレートからの少なくとも1種の希釈剤、
c)任意選択で、ウレタン(メタ)アクリレート又はチオカーバメート(メタ)アクリレートから選択される少なくとも2の(メタ)アクリレート官能基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートオリゴマー、
d)任意選択で、1~6個の官能基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートエステルモノマー又はウレタン(メタ)アクリレートモノマーであって、b)とは異なるもの、
e)任意選択で、1~15個の官能基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートからの少なくとも1種のオリゴマー、
を含み、
前記成分a)は、以下の式(I)のビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルテトラメタクリレート:
【化1】
又はメタクリレートのメチル基が存在せず、全てのメタクリレート基がアクリレート基により置き換えられていることを除いて式(I)と同一のビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルテトラアクリレートであり、
前記成分b)は、
- クミルの構造を含むモノアルコールのモノ(メタ)アクリレートと、ビフェニル又はベンジルの構造を含むモノアルコールのモノ(メタ)アクリレートとの組み合せ、又は
- クミルの構造を含むモノアルコールのモノ(メタ)アクリレートと、ビフェニルの構造を含むモノアルコールのモノ(メタ)アクリレートと、ベンジルの構造を含むモノアルコールのモノ(メタ)アクリレートとの組み合せ
であることを特徴とする、架橋性組成物。
【請求項2】
前記モノマーd)は、C1~C18脂肪族アルコール若しくはC6~C18脂環式アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、又はC2~C18ポリオールの(2~6個の官能基の)多官能性(メタ)アクリル酸エステル、又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートエポキシ(メタ)アクリレート、アミノアクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートから選択され、任意選択で、前記モノマーd)は、少なくとも1種のアルコキシ構造単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリエステル(メタ)アクリレート又はポリエーテル(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートから選択される前記オリゴマーe)は、1~10個の(メタ)アクリレート官能基を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分b)は、以下の式(II)のビフェニルメタノールモノ(メタ)アクリレート又は式(III)若しくは(IV)の化合物:
【化2】
(式中、Rはメチル又はHである)
を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分a)の質量による含有量は、a)+b)の質量に対して、20%から80%まで変化することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
d)の質量による含有量は、a)+b)の質量に対して、0%から50%まで変化することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
e)の質量による含有量は、a)+b)の質量に対して、0%から50%まで変化することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
a)及びb)並びに任意選択でc)からe)に加えて、少なくとも1種の開始剤を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ペルオキシド又はヒドロペルオキシドから選択される開始剤を含み、熱経路により又は前記ペルオキシド若しくはヒドロペルオキシドの還元促進剤の存在下の低温度において架橋され得ることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の光開始剤である開始剤を含み、近UV/可視光照射を含むUV照射により、レーザーにより、又はLEDにより架橋され得ることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
開始剤を含まず、EB(電子ビーム)照射により架橋され得ることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
- ペルオキシド又はヒドロペルオキシドを、前記ペルオキシド又はヒドロペルオキシドの還元促進剤の存在下で開始剤として使用する、熱経路による架橋、
- 光開始剤を開始剤として使用する、UV照射、レーザー又はLEDによる架橋、及び
- 電子ビームによる照射による架橋、
から選択される少なくとも2つの架橋技術を組み合わせた二重経路により架橋され得ることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
5000mPa.s未満のISO 3219(1993)法に従った25℃での粘度を有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
架橋後、少なくとも70℃のISO 075(2004)法に従ったHDTを有することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
架橋後、少なくとも2500MPaのISO 527(1993)法に従った25℃でのヤング率を有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1.47のASTM D1218-12(2016)規格に従った架橋前のRI、及び少なくとも1.50の架橋後の屈折率RIを有することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも70℃のISO 075(2004)法に従ったHDT及び/若しくは少なくとも1.50の屈折率RIを有するコーティング又は材料の調製のための、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
前記材料は、3Dプリントされた物品又は3Dプリントされた物品とは異なる材料であることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
3Dプリントされた物品に関することを特徴とする、請求項17又は18に記載の使用。
【請求項20】
レイヤーバイレイヤー印刷プロセスにより又は連続的プロセスにより印刷された3Dプリントされた物品に関することを特徴とする、請求項17から19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
少なくとも1.50の屈折率RIを有する3Dプリントされた物品に関することを特徴とする、請求項17から20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
光学的用途に関することを特徴とする、請求項17から21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
少なくとも1つの請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物の架橋に由来することを特徴とする、架橋組成物。
【請求項24】
少なくとも1つの請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物の架橋に由来すること、又は少なくとも1つの請求項23に記載の架橋組成物を含むことを特徴とする、最終製品。
【請求項25】
コーティング、成形材料、又は3Dプリントされた物品であることを特徴とする、請求項24に記載の最終製品。
【請求項26】
3Dプリントされた物品である、請求項25に記載の最終製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用される際に低い粘度(これは、コーティングの調製又は3D材料の調製に適している)を有し、高い屈折率(RI)を有し、かつ高い加熱たわみ温度(HDT)を有し、特に、3Dプリントされた物体の製造に適した、より詳細には光学的用途に適した、架橋性、特に光架橋性組成物(配合物)に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的物体(optical object)用の架橋性配合物、及び特に光架橋性配合物は既に存在しているが、これらは特定の物理化学特性を必要とする3D印刷による光学的物体の製造には適していない。また、3D印刷用の光架橋性配合物も存在するが、これらは光学的用途に適していないか、又は光学的用途に必要な性能品質を満たしていない。したがって、三次元物体(物品)の調製のために3D印刷され得る、光学的用途のための新規の組成物の必要性がある。光学的物体の3D印刷のために必要な性能品質の中でも、本発明の架橋性組成物は少なくとも当該最先端分野で知られているものによっては達成されない以下の重要な基準を満たさなければならない:
- 5000mPa.s未満、好ましくは3000mPa.s未満、より好ましくは2500mPa.s未満の(25℃を基準温度とする)使用時の粘度、
- 少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80℃のISO 075(2004)法に従った架橋後の加熱たわみ温度(heat deflection temperature、HDT)
- 少なくとも1.47、好ましくは1.52超、より詳細には1.56超の規格ASTM D1218-12(2016)に従った架橋前の屈折率(RI)、及び少なくとも1.50、好ましくは1.55超、より詳細には少なくとも1.57の架橋後の屈折率(RI)。
【0003】
より詳細には、架橋配合物は、少なくとも2500MPa、好ましくは少なくとも3000MPaのISO 527(1993)法に従った25℃でのヤング率を有しなければならない。
【0004】
EP2586802B1は、高屈折率を有するレンズに適したラジカル経路による照射下で架橋が可能であり、必須成分としてフェニルベンジル(メタ)アクリレート及び芳香族ウレタン(メタ)アクリレートを含む組成物を記載している。ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルテトラ(メタ)アクリレートの存在は、この文献によっては記載も示唆もされていない。
【0005】
EP2664635B1は、前述の文献と同様の用途の分野に関するものであり、高屈折率を有するレンズに適したラジカル経路による照射下で架橋が可能であり、必須成分としてベンジルフェニル(メタ)アクリレートのo-及びp-異性体の間の比率が制限されたフェニルベンジル(メタ)アクリレートを含み、さらに芳香族構造のエポキシ(メタ)アクリレートを含む組成物を記載している。ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルテトラ(メタ)アクリレートの存在は、この文献によっても、記載も示唆もされていない。
【0006】
EP2686903B1は、o-及びp-異性体の間の特定の比率を有するフェニルベンジル(メタ)アクリレート成分の存在と、その構造中にメチレンにより結合されたビフェニルを含む、第2の(メタ)アクリレート成分の存在と、を有する同様の用途のための類似した組成物が記載されており、前述の組成物はウレタン(メタ)アクリレートを含まない。ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルテトラ(メタ)アクリレートの存在は、この文献によっても、記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】EP2586802B1
【文献】EP2664635B1
【文献】EP2686903B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の第1の主題は、以下で定義される2つの必須成分a)及びb)、並びに任意選択で、以下で定義される他の成分c)、d)及びe)を含む、架橋性組成物(crosslinkable composition)に関する。
【0009】
また、架橋組成物(crosslinked composition)も、前述の組成物の架橋から生じる最終製品、又は前述の架橋組成物を含む最終製品として、本発明に含まれる。
【0010】
本発明の別の主題は、高いRI及び高いHDTを有するコーティング並びに材料の調製のための前述の組成物の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の第1の主題は、
a)少なくとも1種のビフェノールフルオレンジグリシジルエーテルテトラ(メタ)アクリレートオリゴマー、
b)ビフェニル、クミル、又はベンジルの構造を含むモノアルコールのモノ(メタ)アクリレートからの少なくとも1種の希釈剤、
c)任意選択で、ウレタン(メタ)アクリレート又はチオカーバメート(メタ)アクリレートから選択される少なくとも2種の(メタ)アクリレート官能基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートオリゴマー、
d)任意選択で、1~6個の官能基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートエステルモノマー又はウレタン(メタ)アクリレートモノマーであって、b)とは異なるもの、
e)任意選択で、1~15個の官能基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートからの少なくとも1種のオリゴマー、
を含む、架橋性組成物(本発明では配合物とも呼ばれる)に関する。
【0012】
任意選択の成分c)~e)に関して、これらは前記組成物中に、前述で定義した成分a)及びb)と組み合わされて単独で存在することも、あるいは成分c)~e)の一つ以上の他の成分と組み合わされて存在することもできる。
【0013】
各成分a)~e)の質量による含有量は、成分a)+b)の質量に対して定義され得る。この質量による含有量は、組成物の総質量に対する質量%に変換され得る。例えば、組成物a)+b)+c)においてa)+b)に対する成分c)の質量%がxに相当する場合、組成物a)+b)+c)の総質量に対する質量%Xは、以下の式に従って計算され得る:
X=100x/(100+x)
【0014】
組成物の総重量に関して、このように計算された、存在する成分a)及びb)、並びに任意選択でc)からe)の質量%の合計は、100%に等しくなければならない。
【0015】
例えば、a)+b)の質量に対して、a)の質量による含有量が60%であり、a)+b)の質量に対して、組成物a)+b)+c)中のc)の質量による含有量が30%であると定義される場合、a)+b)+c)の質量に対して、c)の質量%は、100.30/(100+30)=3000/130=23.08%となり、a)の%=60.100/100+30=46.15%となり、b)の%{a)+b)の100部分におけるa)の補数は、a)+b)に対して40%である}は40.100/130=30.77%となり、a)+b)+c)の%の合計=23.08+46.15+30.77=100%となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
成分a)としてのビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルテトラ(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸を用いて二段階で、又は(メタ)アクリル酸無水物を用いて一段階で、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(BFDG)のエステル化によって調製されることができ、最初にオキシラン環の開環によってエポキシド基を反応させ、第一の(メタ)アクリル酸エステル基及び第二級ヒドロキシル基が形成され、完全な(メタ)アクリル化(vs第二級OH)の後、BFDGテトラ(メタ)アクリレート化された成分がもたらされる。BADGE(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)テトラ(メタ)アクリレートの調製のためのBADGEの(メタ)アクリル酸無水物による(メタ)アクリル化の類似した詳細な条件は、既にUS6515166に記載されており、したがってBFDG誘導体に適用され得る。
【0017】
より詳細には、成分a)は、以下の式(I)のビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルテトラメタクリレート:
【化1】
又はメタクリレートのメチル基が存在しない(全てのメタクリレート基がアクリレート基により置換されている)ことを除いて式(I)と同一のビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルテトラアクリレートである。
【0018】
完全なメタクリル化とは、末端グリシジル基の完全なメタクリル化を意味し、前記グリシジルのオキシラン(エポキシ)基、及び前記オキシラン環の開環後に形成される第二級ヒドロキシル基の両方を意味する。
【0019】
成分b)に関しては、ビフェニル構造若しくはクミル構造若しくはベンジル構造を含むモノアルコールの(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物で(メタ)アクリル化することにより調製することができる。モノアルコールは、任意選択で、アルコキシル化、とりわけエトキシ化及び/又はプロポキシ化誘導体であってもよい。b)に従って定義されるモノ(メタ)アクリレートを得るために(メタ)アクリル化され得るモノアルコールの例として、ビフェニル-4-メタノール、ビフェニル-2-オール、エトキシ化ビフェニル-2-オール(1又は2エトキシ単位)、4-クミルフェノール、エトキシ化4-クミルフェノール(1又は2エトキシ単位)又はベンジルアルコールが挙げることができる。
【0020】
より詳細には、前記成分b)は、以下の式(II)のビフェニル-4-メタノールモノ(メタ)アクリレート
【化2】
(式中、Rはメチル又はH、好ましくはHである)である。
【0021】
これは、ビフェニル-4-メタノールの(メタ)アクリル化によって調製される。
【0022】
一実施形態によると、前記成分b)は、式(III)又は(IV)のエトキシ化ビフェニル-2-オールモノ(メタ)アクリレート
【化3】
(式中、Rはメチル又はH、好ましくはHである)に相当する。
【0023】
前記モノマーc)は、ウレタン(メタ)アクリレート又はチオカーバメート(メタ)アクリレートから選択される少なくとも2種の(メタ)アクリレート官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーである。前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリイソシアネートとヒドロキシル基を有するモノ(メタ)アクリレートオリゴマーとの、任意選択で鎖延長ジオールの存在下での反応生成物であってもよく、又はジオールオリゴマーとポリイソシアネートとの間の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの存在下での反応生成物であってもよい。前記延長ジオールは、C2~C8アルキレンジオール、ポリエーテルジオール、又はポリエステルジオールであってもよい。前記チオカーバメートオリゴマーは、ジオール延長剤(lengthener)をアルキレンジチオール又はポリチオエーテルジチオールを含むジチオール延長剤(R-(SH))に置き換えることにより、ウレタンオリゴマーと同様にして得られる。
【0024】
c)によるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリイソシアネート、C2~C4アルキルを有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びオリゴマーポリオール、特にオリゴマージオールから得ることができ、前記オリゴマーは、ポリエステルポリオール、特にジオール、ポリエーテルポリオール、特にジオール、若しくはアルコキシル化アルキレンポリオール、特にアルコキシル化アルキレンジオールから、又はポリカーボネートポリオール、特にジオール、より詳細には芳香族ポリカーボネートジオールから選択され得る。
【0025】
本発明による組成物において定義される前記モノマーd)は、1~6個の(メタ)アクリレート官能基を有し、好ましくはC1~C18脂肪族アルコール若しくはC6~C18脂環式アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルから、又はC2~C18ポリオールの(2~6個の官能基の)多官能性(メタ)アクリル酸エステル、特にC3~C18ポリオールの多官能性(メタ)アクリル酸エステルから、又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから、特にヒドロキシ(C2~C6アルキル)(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アミノアクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートから選択され、任意選択で、前記モノマーd)は、少なくとも1種のアルコキシ構造単位を含む。
【0026】
C1~C18脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステルの好適な例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ラウリル、又はステアリル(メタ)アクリレート等のC1~C18アルカノールのモノ(メタ)アクリレート、及び全てのこれらの異性体の(メタ)アクリレートを挙げることができ、アルカノールについていくつかの異生体が可能である場合、前記アルカノールはエトキシ及び/又はプロポキシから1~5個のアルコキシ単位でアルコキシル化され得る。C6~C18脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステルとして、シクロヘキサノールの(メタ)アクリレート及びC6環上で置換されているその誘導体、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソホロニル(メタ)アクリレート(isophoronyl (meth)acrylate)又はジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレートを挙げることができ、前記アルカノールの(メタ)アクリレートのように、前記(メタ)アクリレートは、(アルコキシル化シクロアルカノールから出発して)アルコキシル化され得る。
【0027】
本発明による組成物の成分d)として好適なC2~C18ポリオールの多官能性(メタ)アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)エーテルテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、又はジ(ペンタエリスリトール)エーテルヘキサ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0028】
成分d)として好適なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーとして、2~6個、より詳細には2個の開始時のOH官能基を有するポリオールのモノヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。ジオールの場合、これらはモノヒドロキシ(メタ)アクリル酸モノエステルである。2個よりも多い(3~6個の)官能基を有するポリオールの場合、前記モノヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステルは、ヒドロキシ官能基に加えて、1つのヒドロキシ官能基に対して2~5個の(メタ)アクリレート官能基を含み得る。好ましくは、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、C2~C6アルキレンジオールのモノヒドロキシ(メタ)アクリル酸モノエステルであり、より好ましくは、これらはヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート又はヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。
【0029】
本発明による組成物中のモノマーd)として好適であり得る1~6個の官能基を有する(メタ)アクリル酸モノマーの別の特定のカテゴリーは、エポキシ(メタ)アクリレートのカテゴリーである。これらがアルコキシル化されていない場合、これらのモノマーは、対象とするエポキシ(メタ)アクリレートモノマーのエポキシ化前駆体化合物の(メタ)アクリル酸によるエステル化によって調製されることが可能であり、前記エポキシ化前駆体は対象とするエポキシ(メタ)アクリレートモノマーの(メタ)アクリレートの官能基と同一であるエポキシ(オキシラン)基の官能基を有する。オキシラン環の開環を伴うこのような(メタ)アクリル化は、反応した各オキシラン基に対して(メタ)アクリル酸エステル基及び第二級OH基をもたらす。アルコキシル化エポキシ(メタ)アクリレートの場合、アルコキシル化はエポキシ化化合物上で直接行われ、エポキシ化化合物の末端オキシランとアルコキシル化剤として用いられるアルキレンオキシド(エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド)の間のエーテル架橋を形成し、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のジエポキシ化エポキシ化前駆体(diepoxidized epoxidized precursor)についてビスフェノールAジグリシジルエーテルのアルコキシル化ジオールをもたらし、これは(メタ)アクリル酸とのエステル化によって(メタ)アクリル化することができ、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアルコキシル化誘導体の場合、(例えば1~10のエトキシ及び/又はプロポキシ単位を有する)ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアルコキシル化ジ(メタ)アクリレートが得られる。
【0030】
前述で定義した本発明による組成物中の成分d)として好適な他のモノマーとして、1~5個の範囲の官能基を有するアミノアクリレートのカテゴリーがある。これらのモノマーは、アミノアクリレート=NH-CH2-CH2基を含み、これはアミンの=NH基を2~6個の範囲の官能基を有する多官能アクリレートモノマーに付加することによるマイケル反応から得られ、アミン=NH基はアクリレート基に対して不足しているため、前記アミン基で飽和されていない出発多官能性アクリレートの分子あたり少なくとも1つのアクリレート基が存在する。使用されるアミンは、好ましくはモノアミンであり、特に第二級アミンであり、第三級アミン基を含むことができる(マイケル付加によって非反応性である)。
【0031】
本発明による組成物中のモノマーd)として好適であるモノマーの別のカテゴリーは、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーのカテゴリーである。これらは、脂肪族、脂環式、若しくは芳香族モノイソシアネート又はポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応から生じるモノマーであり、好ましくは、前記アルキルはC2~C6アルキルである。本発明による組成物の特定の選択肢によると、前記モノマーd)は、好ましくはエトキシ、プロポキシ、若しくはブトキシから、又はこれらの混合物から選択される、一つ又は複数のアルコキシ単位を含む。
【0032】
ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートである、前記オリゴマーe)に関しては、1~15個又は1~10個の範囲の(メタ)アクリレート官能基を有し得る。前記オリゴマーは、600超、好ましくは少なくとも800、より好ましくは少なくとも1000の数平均分子量Mnを有する。Mnは、THF中のポリスチレン当量としてGPCによって決定される。
【0033】
e)によるポリエステル(メタ)アクリレートは、ポリオールとポリ酸との重縮合により生じたポリエステルポリオールの部分的または完全な(メタ)アクリル化((メタ)アクリル化後の最終的な(メタ)アクリレート官能性を可能にする対応するOH官能性を有する)から得られ、エステル化の水は除去される。特に、ポリエステルジオールは二酸(diacid)の重縮合から生じる。また、ポリエステルジオールは、環状ラクトン、例えばカプロラクトンの重縮合からも生じ得る。それらは、二酸及びジオール前駆体化合物の構造による、脂肪族、脂環式、若しくは芳香族構造又は混合した構造のものであり得る。
【0034】
e)によるポリエーテル(メタ)アクリレートは、(対象とする最終的な(メタ)アクリレート官能性を可能にする好適なOH官能性を有する)ポリエーテルポリオールの(メタ)アクリル化から生じる。この(メタ)アクリル化で使用され得るポリエーテルポリオールオリゴマーは、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンランダム若しくはブロックコポリマー、又はポリオキシテトラメチレン(ポリテトラヒドロフラン又はポリTHF)であり得る。
【0035】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、モノ又はポリエポキシ化オリゴマーと(メタ)アクリル酸の反応により得られる。例として、BADGE(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)ジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0036】
本発明による組成物は、a)+b)の質量に対して、20%から80%まで、好ましくは35%から65%まで変化し得る、成分a)の質量による含有量を有する。
【0037】
前記成分c)の質量による含有量に関しては、a)+b)の質量に対して、0%から50%まで、好ましくは5%から35%まで変化し得る。
【0038】
成分d)の質量による含有量に関しては、a)+b)の質量に対して、0%から50%まで、好ましくは5%から35%まで変化し得る。
【0039】
前記成分e)の質量による含有量に関しては、a)+b)の質量に対して、0%から50%まで、又は0%から40%まで、好ましくは5%から30%、又は10%から30%まで変化し得る。
【0040】
組成物の質量に対する成分a)の質量パーセントは、1%から50%、又は2%から40%、又は5%から30%、又は10%から20%の範囲であってもよい。
【0041】
組成物の質量に対する成分b)の質量パーセントは、1%から50%、又は2%から40%、又は5%から30%、又は10%から20%の範囲であってもよい。
【0042】
組成物の質量に対する、成分a)+b)の総質量パーセントは、5%から90%、又は10%から80%、又は15%から70%、又は20%から60%の範囲であってもよい。
【0043】
組成物の質量に対する成分c)の質量パーセントは、0%から50%、又は1%から40%、又は5%から30%、又は10%から20%の範囲であってもよい。
【0044】
組成物の質量に対する成分d)の質量パーセントは、0%から50%、又は1%から40%、又は5%から30%、又は10%から20%の範囲であってもよい。
【0045】
組成物の質量に対する成分e)の質量パーセントは、0%から50%、又は1%から40%、又は5%から30%、又は10%から20%の範囲であってもよい。
【0046】
特定の選択肢によると、本発明による組成物は、a)及びb)、並びに任意選択でc)からe)に加えて、少なくとも一種の開始剤を含み得る。
【0047】
前記開始剤は、ペルオキシド又はヒドロペルオキシドから選択することができ、この場合、本発明の前記組成物は、熱経路により又は前記ペルオキシド若しくはヒドロペルオキシドの還元促進剤の存在下の低温度において架橋され得る。低温(特に周囲温度:15~25℃)でその分解を促進する前記ペルオキシド又はヒドロペルオキシドの還元促進剤として、第三級アミンを使用することができる。
【0048】
代替的な選択肢において、本発明の組成物は、少なくとも一種の光開始剤である開始剤を含むことができ、この場合、本発明による前記組成物は、近UV/可視光照射を含むUV照射により、好ましくはUV/可視光ランプ又は近UV/可視光ランプにより、レーザーにより、又はLEDにより、好ましくは近UV/可視光ランプにより、架橋され得る。近UV/可視光照射に対応する波長の範囲は355~415nmであり、UV/可視光に対応する波長の範囲は400~800nmである。
【0049】
別の代替的な選択肢によると、本発明による組成物は、開始剤を含まず、この場合、EB照射によって(すなわち電子ビームによって)のみ架橋され得る。
【0050】
別の代替的な選択肢によると、本発明の組成物は、二重経路により架橋され得、これは他の代替経路として前述で定義された少なくとも2つの架橋技術を組み合わせることを意味する。2つの架橋技術は、以下から選択されてもよい:
- ペルオキシド又はヒドロペルオキシドを、前記ペルオキシド又はヒドロペルオキシドの還元促進剤の存在下で開始剤として使用する、熱経路による架橋、
- 光開始剤を開始剤として使用する、(近UV/可視光照射、好ましくはUV/可視光ランプ又は近UV/可視光ランプを含む)UV照射、又はレーザー若しくはLED照射による架橋、及び
- (電子ビームによる)EB照射による架橋。
【0051】
この代替的な定義下での二重経路の例として、ペルオキシド/ヒドロペルオキシドの存在に基づく経路と、少なくとも一種の光開始剤が存在する経路との組み合わせを挙げることができる。この場合において、組成物は、同時に又は連続的な段階で、熱経路により又はペルオキシド/ヒドロペルオキシドの存在下の低温度において、及び光開始剤が追加的に存在するUV照射下の経路により、架橋され得る。例えば、光開始剤の存在下でのUV経路による急速な架橋の後に、ペルオキシド/ヒドロペルオキシドと前記光開始剤の存在の結果としての熱経路による追加的な架橋を続けることができ、したがって、架橋、特にUV架橋の温度よりも高い温度での架橋を終える(round off)/完了することが可能となる。これは、完全に架橋された組成物のガラス転移温度がUV架橋温度よりも高い場合に特に有利であり得る。
【0052】
好適なペルオキシドの例として、特に、ジアルキル、ジアリール及びアリール/アルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、過炭酸塩、ペルエステル(perester)、過酸及びアシルペルオキシドを挙げることができる。
【0053】
ペルオキシド又はヒドロペルオキシドの分解(還元)促進剤の例として、特に、第三級アミン及び/又は遷移金属塩、例えば鉄、コバルト、マンガン若しくはバナジウムカルボキシレートを含む一つ又は複数の還元剤を挙げることができる。
【0054】
好適な光開始剤の例として、特に、以下のものの誘導体:ベンゾイン、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンジル、ベンジルケタール、アントラキノン、アシルホスフィンオキシド、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、α-アミノケトン、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、キノキサリン誘導体及びトリアジン化合物を挙げることができる。
【0055】
詳細には、好適なラジカル光開始剤の例として、特に、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-ベンジルアントラキノン、2-(t-ブチル)アントラキノン、1,2-ベンゾ-9,10-アントラキノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン、ミヒラーケトン(Michler’s ketones)、2,2-ジアルコキシベンゾフェノン及び1-ヒドロキシフェニルケトン等のアセトフェノン、ベンゾフェノン、4、4′-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジエチルオキシアセトフェノン、ジエチルオキシアセトフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、1,5-アセトナフチレン、エチルp-ジメチルアミノベンゾエート、ベンジルケトン、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、2、2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、オリゴマーα-ヒドロキシケトン、ベンゾイルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート、アントラキノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4-ベンゾイルビフェニル、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4′モルフォリノブチロフェノン、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、ジベンゾスベレノン、4,4′-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、4′-エトキシアセトフェノン、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェロセン、3′-ヒドロキシアセトフェノン、4′-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート、2-メチル-4′-(メチルチオ)-2-モルフォリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4′-フェノキシアセトフェノン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、9,10-ジエトキシ-及び9,10-ジブトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、チオキサンテン-9-オン又は上述の開始剤の任意の組み合わせを挙げることができる。好ましくは、本発明による組成物は、5000mPa.s未満、好ましくは3000mPa.s未満、より好ましくは2500mPa.s未満のISO 3219(1993)法に従った25℃での粘度を有する。より詳細には、架橋後、少なくとも70℃、好ましくは80℃超のISO 075(2004)法に従ったHDTを有する。特に、架橋後、少なくとも2500MPa、好ましくは少なくとも3000MPaのISO 527(1993)法に従った25℃でのヤング率を有する。
【0056】
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1.47、好ましくは1.52超、より詳細には1.56超のASTM D1218-12(2016)規格に従った架橋前のRI、及び少なくとも1.50、好ましくは1.55超、より詳細には少なくとも1.57の架橋後のRIを有する。
【0057】
本発明の第二の主題は、少なくとも70℃、好ましくは80℃超のISO 075(2004)法に従ったHDT及び/若しくは少なくとも1.50、好ましくは1.55超、より詳細には1.57超のRIを有するコーティング又は材料の調製のための、本発明による組成物の使用に関する。
【0058】
より詳細には、前記使用は、3Dプリントされた物品又は3Dプリントされた物品とは異なる材料のいずれかである材料に関する。この場合において、用語「3Dプリントされた物品とは異なる材料」は、(定義上、プリントされていない)射出/成形プロセスのための材料を意味する。これは、本発明による架橋性組成物は、特に対象とされている3D印刷とは別に、他の方法による、例えば、成形(moulding)等による3D物体(物品)の調製にも適しているからである。
【0059】
好適な選択肢によると、前記使用は3Dプリントされた物品に関する。これらの3Dプリントされた物品は、様々なプロセス、特にレイヤーバイレイヤー印刷プロセスにより又は連続的プロセスにより印刷され得る。
【0060】
「レイヤーバイレイヤー」3D印刷プロセスは、以下の工程を含む:
a)本発明による架橋性組成物の第1の層を表面に堆積する工程;
b)第一の架橋層を得るために、前記第1の層を、少なくとも部分的に架橋する工程;
c)前記第1の架橋層上に、本発明による架橋性組成物の第2の層を堆積する工程;
d)第1の架橋層に接着している第2の架橋層を得るために、前記第2の層を少なくとも部分的に架橋する工程;
e)最終的な3D(又は三次元)物品を得るために工程c)及びd)を必要な回数繰り返す工程。
【0061】
使用され得る架橋経路は、前述で既に記載したものであり、化学線照射下(UV、UV/可視光、近UV/可視光又は電子ビームEBの下)での架橋のための技術が特に優先される。
【0062】
本発明の架橋性組成物は、CLIP(連続液界面(又は連続液中間層)製造(又は印刷))法又はプロセスとしても知られる、連続的プロセスによる三次元(3D)物体(物品)の製造のためのプロセスにおいても使用され得る。このタイプのプロセスは、WO2014/126830、WO2014/126834、WO2014/126837、及びTumbleston他による“Continuous Liquid Interface Production of 3D Objects”、Science、347巻、6228号、1349~1352頁(3月20日、2015年)に記載されている。
【0063】
CLIPプロセスは、化学線照射、例えばUV照射によってフィルム又は画像の連続的シーケンスを投影することにより進行し、この画像は、例えば、液状形態に維持された架橋性(硬化性)組成物浴の下に位置された、前記化学線に対して透明で酸素(阻害剤)透過性の窓を通して、デジタルイメージングユニットによって、生成され得る。(成長する)物品の下の液界面は、窓の上に形成されたデッドゾーンにより維持される。硬化した固形物品は、デッドゾーン上の架橋性組成物浴から連続的に出され、これは、硬化され、成長する物品に組み込まれる架橋性組成物の量を補うために、追加の量の架橋性組成物を浴の中に導入することにより再生され得る。
【0064】
例えば、本発明の架橋性組成物を用いた三次元物品をプリントするためのプロセスは、以下の工程を含み得る:
a)基板(又は印刷プラテン)及び構築面(construction surface)を有する光学的に透明な要素を提供し、基板及び構築面が、それらの間に構築領域を規定する工程;
b)本発明による架橋性組成物で前記構築領域を満たす工程;
c)前記構築領域に化学線を連続的に又は断続的に照射して、架橋性組成物から出発して架橋組成物を形成する工程;
d)前記基板を、連続的に又は断続的に構築面から遠ざけ、架橋組成物で三次元(3D)物品を形成する工程。
【0065】
より詳細には、連続的印刷プロセス(CLIPタイプ)は、以下の段階を含み得る:(a)基板(又は印刷プラテン)及び定置構築窓(stationary construction window)を提供し、構築窓は半透過性要素を含み、前記半透過性要素は構築面及び構築面から離れた供給面を含み、前記構築面及び前記基板(又は印刷プラテン)でそれらの間に構築領域を規定し、供給面を液体中で重合防止剤と接触させる工程、(b)続いて同時に及び/又は連続して、本発明による架橋性組成物で構築領域を満たし、前記組成物を印刷プラテンと接触させる工程、(c)構築窓を介して構築領域に照射し、固体重合領域と構築窓の間に形成された硬化性組成物から構成される液状フィルムの層を残しながら構築領域において固体重合領域を生成し、該液状フィルムの重合は重合防止剤により阻害される工程、及び(d)重合領域が貼り付けられた印刷プラテンを定置窓の構築面から遠ざけて、重合領域と定置構築窓の間に構築領域を作成する工程。一般的に、プロセスは、工程(e)、(b)から(d)の工程を繰り返し及び/又は継続し、続いて互いに付着した重合領域の継続的な又は繰り返された堆積が対象とする三次元物品を形成するまで、先に重合された領域に接着した重合領域を生成する工程を含む。
【0066】
本発明による架橋性(硬化性)組成物の使用により得られる、特に、光学的用途のためのプリントされた3D物品は、少なくとも1.50、好ましくは1.55超、より詳細には少なくとも1.57の屈折率RIを有する。
【0067】
より詳細には、対象とする光学的用途は、プラスチックレンズ、特に眼鏡ガラス用のレンズ、デジタルカメラ用のレンズ、若しくは光学プリズム用のレンズ、又は光学オーバーコーティング、硬質光学コーティング、若しくは反射防止フィルムの中からの光学コーティング、又はLED若しくはソーラー(太陽光発電)セルのコーティング用の光学コーティング、又は光ファイバー、ホログラム、プリズム及びLED材料用のレンズ用である。
【0068】
本発明に含まれる別の主題は、前述で定義した少なくとも一つの本発明による組成物の架橋に由来する、架橋組成物にも関する。
【0069】
最後に、本発明は、本発明により定義された少なくとも一つの組成物の架橋に由来する、又は前述で定義した少なくとも一つの架橋組成物を含む、最終製品も対象としている。
【0070】
前記最終製品は、特にコーティング、成形材料、例えば複合材料、又は3Dプリントされた物品である。
【0071】
より詳細には、前期最終製品は3Dプリントされた物品であり、好ましくは、プラスチックレンズ、特に眼鏡ガラス用のレンズ、デジタルカメラ用のレンズ、若しくは光学プリズム用のレンズ、又は光学オーバーコーティング、硬質光学コーティング、若しくは反射防止フィルムの中からの光学コーティング、又はLED若しくはソーラー(太陽光発電)セルのコーティング用の光学コーティング、又は光ファイバー、ホログラム、プリズム及びLED材料用のレンズから選択される。
【0072】
以下の実施例は、本発明及びその性能品質を説明する目的で与えられるものであって、いかなる方法によっても本発明の範囲を制限するものでは無く、後者は特許請求の範囲によって定義される。
【実施例
【0073】
1)配合物
ビフェニルフルオレンジグリシジルエーテルテトラメタクリレートを含む、実施例1~6の配合物を、以下に記載する化合物を用いて、表1に示される割合で調製した(配合物の質量に対する質量%):
化合物A:ビフェニルフルオレンジグリシジルエーテルテトラメタクリレート
ビフェニルフルオレンジグリシジルエーテルテトラメタクリレートは、ビスフェノールAジグリシジルエーテルからビスフェノールAジグリシジルエーテルテトラメタクリレートを調製するためのUS6515166に記載されたものと同様の条件に従って調製し、これらの条件はここでビフェニルフルオレンジグリシジルエーテルに適用され、ビフェニルフルオレンジグリシジルエーテルテトラメタクリレートを与える。
化合物B:KPXグリーンケミカル社からのH008、ビフェニル-4-メタノールアクリレート
化合物C:KPXグリーンケミカル社からのA011、エトキシ化ビフェニル-2-オールアクリレート(1 EO)
化合物D:KPXグリーンケミカル社からのA003M、ベンジルメタクリレート
化合物E:サートマー(Sartiner)社からのCD590、4-クミルフェノールアクリレート
化合物F:エボニック(Evonik)社からのHPMA、ヒドロキシプロピルメタクリレート
化合物G:サートマー社からのSR340、2-フェノキシエチルメタクリレート
【0074】
【表1】
【0075】
2)架橋前の液状配合物の特性
液状配合物を特徴付けるために、粘度及び屈折率の測定を以下の条件の下で行う:
- ブルックフィールド粘度:ブルックフィールドDVII+PRO粘度計で25℃においてISO 3219(1993)規格に従って粘度を測定した。
- 屈折率:BELLINGHAM+STANLEY RFM 960-T屈折率計で25℃においてASTM D1218-12(2016)規格に従って屈折率を測定する。
【0076】
結果は、以下の表2において示される。
【0077】
【表2】
【0078】
3)架橋後の物理化学的特性
サンプル
サンプルはシリコーン型から開始して調製される。バー(DMA、HDT)の寸法は、mmで、80*10*4であり、引張試験用の5Aタイプの試験片は4mmの厚みを有する。光開始剤系は、全ての処方に対して2%の、TPO-L(エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート)であり、架橋は100%UVベンチLEDランプの下で行われ、続いて80℃で12時間の後硬化(post-cure)を行う。
【0079】
分析条件
50%の相対湿度(RH)下で、23℃において試験を行った。
【0080】
- DMA分析:
長方形ねじれ(rectangular torsion)において、-50℃から200℃までの3℃/分でのスイープ、及び0.05%の公称ひずみ、1Hzの振動数を有する、RDAIII機器(レオメトリックス)で、DMA分析を行う。転移温度Tαは、タンデルタピークの頂点での温度として決定される。
【0081】
- HDT:
ISO 075(2004)規格に従って、HDT機器(EDIT)でHDT(加熱たわみ温度)試験を行う。方法Aを用いる(1.8MPa);試験片(厚さ4mm)を基板の上に平らに配置する(支持物間の距離=64mm)。加熱速度は120℃/時間である。
【0082】
- 引張試験:
ISO 527(1993)規格に従って、500Nセルを有するMTS引張試験装置で引張試験を行う。使用する試験片は5Aタイプのものである。引張速度は1mm/分であり、その後7%の伸びから10mm/分となる。応力、破断伸び、及びヤング率が決定される。
【0083】
結果
実施例1~6の配合物の固体サンプルにおいて行われた機械的試験及び熱機械的試験の結果を以下の表3に与える。
【0084】
【表3】