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特許7579273超伝導装置用の入力/出力システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】超伝導装置用の入力/出力システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20241030BHJP
   H03K 19/195 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
G06N10/40
H03K19/195
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021565846
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 US2020037222
(87)【国際公開番号】W WO2020252157
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】62/860,098
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507209207
【氏名又は名称】ディー-ウェイブ システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブースビー,ケリー ティー.アール.
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194518(JP,A)
【文献】特表2018-524667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0145631(US,A1)
【文献】国際公開第2017/192733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
H03K 19/195
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイルを備える量子プロセッサであって、前記複数のタイルが第1のグリッド内に配置され、前記複数のタイルのうち第1のタイルが、
第1のキュービットと、
周波数多重化共振(FMR)読出し装置に通信可能なように結合された少なくとも1つのシフト・レジスタ段を含むシフト・レジスタと、
キュービット読出し装置と、
複数のデジタル・アナログ変換器(DAC)バッファ段と、
第2のグリッド内に配置された複数のシフト・レジスタ・ロード可能なDACと
を備える、量子プロセッサ。
【請求項2】
前記第1のキュービットが、前記キュービット読出し装置に通信可能なように結合される、請求項1に記載の量子プロセッサ。
【請求項3】
前記複数のDACバッファ段のうちの少なくとも1つが、前記複数のシフト・レジスタ・ロード可能なDACのうちの少なくとも1つに通信可能なように結合される、請求項1に記載の量子プロセッサ。
【請求項4】
前記第1のキュービットが超伝導磁束キュービットである、請求項1に記載の量子プロセッサ。
【請求項5】
マイクロ波伝送線路をさらに備え、前記マイクロ波伝送線路が、FMR読出し装置に通信可能なように結合される、請求項1に記載の量子プロセッサ。
【請求項6】
前記FMR読出し装置が超伝導共振器を備える、請求項1に記載の量子プロセッサ。
【請求項7】
前記第1のグリッド及び前記第2のグリッドが、超伝導集積回路上で互いに散在している、請求項1に記載の量子プロセッサ。
【請求項8】
前記FMR読出し装置、及び前記複数のシフト・レジスタ・ロード可能なDACが、同じ超伝導集積回路上に存在する、請求項1に記載の量子プロセッサ。
【請求項9】
少なくとも1つの伝送線路インダクタンスを含む伝送線路と、
超伝導共振器と、
前記超伝導共振器を前記伝送線路に通信可能なように結合する結合キャパシタンスと
をさらに備える、請求項1に記載の量子プロセッサ。
【請求項10】
前記FMR読出し装置が、超伝導バイア、バンプ接合、及びハンダ接合の少なくとも一つによって前記量子プロセッサの少なくとも1つの他の要素に通信可能なように結合される、請求項1に記載の量子プロセッサ。
【請求項11】
第1の超伝導集積回路であって、量子プロセッサを含み、前記量子プロセッサが複数の超伝導磁束キュービットを含む第1の超伝導集積回路と、
第2の超伝導集積回路であって、入力/出力システムを含み、前記入力/出力システムが、
周波数多重化共振読出し装置(FMRR)モジュールに通信可能なように結合された少なくとも1つのシフト・レジスタ段を含むシフト・レジスタ、
キュービット読出し装置、
複数のDACバッファ段、及び
グリッド内に配置された複数のシフト・レジスタ・ロード可能なデジタル・アナログ変換器(DAC)
を含む第2の超伝導集積回路と
を備える、量子コンピュータ。
【請求項12】
ハイブリッド・コンピューティング・システムをプログラムする方法であって、前記ハイブリッド・コンピューティング・システムが、量子プロセッサ及びデジタル・プロセッサを含み、前記量子プロセッサが複数のタイルを含み、前記複数のタイルが第1のグリッド内に配置され、
前記複数のタイルのうち第1のタイルが、
第1のキュービットと、
周波数多重化共振(FMR)読出し装置に通信可能なように結合された少なくとも1つのシフト・レジスタ段を含むシフト・レジスタと、
キュービット読出し装置と、
複数のデジタル・アナログ変換器(DAC)バッファ段と、
第2のグリッド内に配置された複数のシフト・レジスタ・ロード可能なDACと、
を備え、
前記方法が、
前記デジタル・プロセッサによって前記量子プロセッサをプログラムすることと、
前記デジタル・プロセッサによって前記量子プロセッサを読み出すことと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記デジタル・プロセッサによって前記量子プロセッサを前記プログラムすることが、前記複数のタイルのうち前記第1のタイルをプログラムすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のタイルのうち前記第1のタイルを前記プログラムすることが、前記複数のシフト・レジスタ・ロード可能なDACのうち少なくとも1つをプログラムすることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記デジタル・プロセッサによって前記量子プロセッサを前記プログラムすることがさらに、前記複数のタイルのうち第2のタイルをプログラムすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のタイルのうち前記第1のタイル及び前記第2のタイルを前記プログラムすることが、前記複数のタイルのうち前記第1のタイル及び前記第2のタイルを並列にプログラムすることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のタイルのうち前記第1のタイルをプログラムすることが、第1の持続時間を有し、前記複数のタイルのうち前記第2のタイルをプログラムすることが、第2の持続時間を有し、前記第1の持続時間が、前記第2の持続時間と少なくともほぼ同じである、請求項15又は16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記デジタル・プロセッサによって前記量子プロセッサを前記読み出すことが、前記複数のタイルのうち前記第1のタイルの前記第1のキュービットを、前記複数のタイルのうち前記第1のタイルの第2のキュービットと並列に読み出すことを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記デジタル・プロセッサによって前記量子プロセッサを前記読み出すことが、前記複数のタイルのうち前記第1のタイルの前記第1のキュービットを、前記複数のタイルのうち第2のタイルの第3のキュービットと並列に読み出すことを含む、請求項12乃至18のうち何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記デジタル・プロセッサによって前記量子プロセッサを前記読み出すことが、前記複数のタイルのうち前記第1のタイルの前記第1のキュービットを読み出すことと、前記複数のタイルのうち第2のタイルの第2のキュービットを読み出すこととを含み、前記複数のタイルのうち前記第1のタイルの前記第1のキュービットを読み出すのに要する第1の時間が、前記複数のタイルのうち前記第2のタイルの前記第2のキュービットを読み出すのに要する第2の時間と少なくともほぼ同じである、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
並列動作において、前記量子プロセッサの少なくとも第1の部分及び前記量子プロセッサの第2の部分を較正することを更に含み、前記量子プロセッサの前記第1の部分が、前記量子プロセッサの前記第2の部分に対して非局所的である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は一般に、超伝導量子コンピュータ及び超伝導の古典的コンピュータなどの超伝導装置用の入力及び/又は出力のシステム及び方法に関し、より詳細には、超伝導量子プロセッサにデータを入力するため、及び/又は超伝導量子プロセッサでのキュービットの状態を測定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
周波数多重化共振(FMR)読出し
量子計算及び天文学を含むが、それだけには限定されない様々な分野において、超伝導マイクロ波共振器が使用されてきた。たとえば、量子計算においては、キュービットの状態を検出するために超伝導共振器が使用されてきた。天文学においては、マイクロ波力学インダクタンス検出器(MKID)で超伝導マイクロ波共振器が使用されてきた。いずれの場合も、(検出器として、又は検出器において使用される)数多くの共振器を、共通の伝送線路に結合することができ、周波数領域多重化(用語集を参照)によって統合することができる。
【0003】
FMR技術を使用すると、複数のキュービットを読み出すために、様々な共振周波数の超伝導共振器を使用することができる。各共振器は、周波数領域多重化を使用することによって、共通のマイクロ波伝送線路を共有することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
簡単な概要
量子プロセッサを手短に説明すると、複数のタイルを備え、この複数のタイルが第1のグリッド内に配置され、この複数のタイルのうち第1のタイルが、第1のキュービットと、周波数多重化共振(FMR)読出し装置に通信可能なように結合された少なくとも1つのシフト・レジスタ段を含むシフト・レジスタと、キュービット読出し装置と、複数のデジタル・アナログ(DAC)バッファ段と、第2のグリッド内に配置された複数のシフト・レジスタ・ロード可能なデジタル・アナログ変換器(DAC)とを含むものでもよい。実装によっては、第1のキュービットは、キュービット読出し装置に通信可能なように結合される。実装によっては、複数のDACバッファ段のうちの少なくとも1つが、複数のシフト・レジスタ・ロード可能なDACのうちの少なくとも1つに通信可能なように結合される。
【0005】
実装によっては、第1のキュービットは超伝導キュービットである。実装によっては、超伝導キュービットは超伝導磁束キュービットである。
【0006】
実装によっては、量子プロセッサは、マイクロ波伝送線路をさらに備え、このマイクロ波伝送線路は、FMR読出し装置に通信可能なように結合される。
【0007】
実装によっては、このFMR読出し装置は、超伝導共振器を備える。
【0008】
実装によっては、第1のグリッド及び第2のグリッドが、超伝導集積回路上で互いに散在している。この状況での「散在している」という用語は、超伝導集積回路上で第1のグリッド及び第2のグリッド(並びに、各グリッド内のデバイス)を互いに物理的に混ぜ合わせ、織り交ぜ、組み合わせ、より合わせ、又は融合することを指す。
【0009】
実装によっては、FMR読出し装置、及び複数のシフト・レジスタ・ロード可能なデジタル・アナログ変換器(DAC)は、同じ超伝導集積回路上に存在する。
【0010】
実装によっては、量子プロセッサはさらに、少なくとも1つの伝送線路インダクタンスを含む伝送線路と、超伝導共振器と、この超伝導共振器を伝送線路に通信可能なように結合する結合キャパシタンスとを備える。
【0011】
実装によっては、FMR読出し装置は、超伝導バイアによって量子プロセッサの少なくとも1つの他の要素に通信可能なように結合される。実装によっては、FMR読出し装置は、バンプ接合及び/又はハンダ接合のうち少なくとも一方によって、量子プロセッサの少なくとも1つの他の要素に通信可能なように結合される。
【0012】
ハイブリッド・コンピューティング・システムを手短に説明すると、前述の様々な実装の量子プロセッサを含むものでもよく、少なくとも1つのデジタル・プロセッサと、この少なくとも1つのデジタル・プロセッサに通信可能なように結合された少なくとも1つの持続性のプロセッサ読取り可能な媒体であって、少なくとも1つのデジタル・プロセッサによって実行されると、この少なくとも1つのデジタル・プロセッサが量子プロセッサをプログラムできるようにするプロセッサ実行可能な命令又はデータのうち少なくとも1つを記憶する、少なくとも1つの持続性のプロセッサ読取り可能な媒体とをさらに含む。
【0013】
実装によっては、少なくとも1つのデジタル・プロセッサが、量子プロセッサをプログラムできるようにするために、プロセッサ実行可能な命令又はデータのうち少なくとも1つは、少なくとも1つのデジタル・プロセッサによって実行されるとき、少なくとも1つのデジタル・プロセッサが、複数のタイルのうち第1のタイルをプログラムできるようにする。実装によっては、少なくとも1つのデジタル・プロセッサが、複数のタイルのうち第1のタイルをプログラムできるようにするために、プロセッサ実行可能な命令又はデータのうち少なくとも1つは、少なくとも1つのデジタル・プロセッサによって実行されるとき、少なくとも1つのデジタル・プロセッサが、複数のシフト・レジスタ・ロード可能なDACのうちの少なくとも1つをプログラムできるようにする。
【0014】
実装によっては、少なくとも1つのデジタル・プロセッサが、量子プロセッサをプログラムできるようにするために、プロセッサ実行可能な命令又はデータのうち少なくとも1つは、少なくとも1つのデジタル・プロセッサによって実行されるとき、少なくとも1つのデジタル・プロセッサがさらに、複数のタイルのうち第2のタイルをプログラムできるようにする。実装によっては、少なくとも1つのデジタル・プロセッサが、複数のタイルのうち第2のタイルをプログラムできるようにするために、プロセッサ実行可能な命令又はデータのうち少なくとも1つは、少なくとも1つのデジタル・プロセッサによって実行されるとき、少なくとも1つのデジタル・プロセッサが、複数のタイルのうち第1のタイル及び第2のタイルを並列にプログラムできるようにする。前述の様々な実装では、少なくとも1つのデジタル・プロセッサが、複数のタイルのうち第1のタイル及び第2のタイルを並列にプログラムできるようにすることにより、第1のタイルをプログラムするのに要する第1の時間が、複数のタイルのうち第2のタイルをプログラムするのに要する第2の時間と少なくともほぼ同じになるようにしてもよい。
【0015】
実装によっては、プロセッサ実行可能な命令又はデータのうち少なくとも1つは、少なくとも1つのデジタル・プロセッサによって実行されると、さらに、ハイブリッド・コンピューティング・システムが、複数のタイルのうち第1のタイルの第1のキュービットを、複数のタイルのうち第1のタイルの第2のキュービットと並列に読み出せるようにする。前述の様々な実装では、プロセッサ実行可能な命令又はデータのうち少なくとも1つは、少なくとも1つのデジタル・プロセッサによって実行されると、さらに、ハイブリッド・コンピューティング・システムが、複数のタイルのうち第1のタイルの第1のキュービットを、複数のタイルのうち第2のタイルの第3のキュービットと並列に読み出せるようにする。
【0016】
実装によっては、プロセッサ実行可能な命令又はデータのうち少なくとも1つは、少なくとも1つのデジタル・プロセッサによって実行されると、さらに、ハイブリッド・コンピューティング・システムが、複数のタイルのうち第1のタイルの第1のキュービット、及び複数のタイルのうち第2のタイルの第2のキュービットを読み出せるようにし、複数のタイルのうち第1のタイルの第1のキュービットを読み出すのに要する第1の時間は、複数のタイルのうち第2のタイルの第2のキュービットを読み出すのに要する第2の時間と少なくともほぼ同じである。
【0017】
前述の様々な実装では、プロセッサ実行可能な命令又はデータのうち少なくとも1つは、少なくとも1つのデジタル・プロセッサによって実行されると、さらに、少なくとも1つのデジタル・プロセッサが、並列動作において、量子プロセッサの少なくとも第1の部分及び量子プロセッサの第2の部分を較正できるようにし、量子プロセッサのこの第1の部分は、量子プロセッサの第2の部分に対して非局所的である。
【0018】
量子コンピュータを手短に説明すると、第1の超伝導集積回路であって、量子プロセッサを含み、この量子プロセッサが複数の超伝導磁束キュービットを含む第1の超伝導集積回路と、第2の超伝導集積回路であって、入力/出力システムを含み、この入力/出力システムが、周波数多重化共振読出し装置(FMRR)モジュールに通信可能なように結合された少なくとも1つのシフト・レジスタ段を含むシフト・レジスタ、キュービット読出し装置、複数のDACバッファ段、及びグリッド内に配置された複数のシフト・レジスタ・ロード可能なデジタル・アナログ変換器(DAC)を含む第2の超伝導集積回路とを備える。
【0019】
ハイブリッド・コンピューティング・システムをプログラムする方法であって、このハイブリッド・コンピューティング・システムが、量子プロセッサ及びデジタル・プロセッサを含み、この量子プロセッサが複数のタイルを含み、この複数のタイルが第1のグリッド内に配置され、複数のタイルのうち第1のタイルが第1のキュービットを含み、シフト・レジスタが、周波数多重化共振(FMR)読出し装置に通信可能なように結合された少なくとも1つのシフト・レジスタ段、キュービット読出し装置、複数のデジタル・アナログ変換器(DAC)バッファ段を含み、複数のシフト・レジスタ・ロード可能なDACが第2のグリッド内に配置される方法を手短に説明すると、デジタル・プロセッサによって量子プロセッサをプログラムすることと、デジタル・プロセッサによって量子プロセッサを読み出すこととを含み得る。
【0020】
実装によっては、デジタル・プロセッサによって量子プロセッサをプログラムすることは、複数のタイルのうち第1のタイルをプログラムすることを含む。実装によっては、複数のタイルのうち第1のタイルをプログラムすることは、複数のシフト・レジスタ・ロード可能なDACのうち少なくとも1つをプログラムすることを含む。
【0021】
実装によっては、デジタル・プロセッサによって量子プロセッサをプログラムすることはさらに、複数のタイルのうち第2のタイルをプログラムすることを含む。実装によっては、複数のタイルのうち第1及び第2のタイルをプログラムすることは、複数のタイルのうち第1及び第2のタイルを並列にプログラムすることを含む。前述の様々な実装では、複数のタイルのうち第1のタイルをプログラムすることは、第1の持続時間を有し、複数のタイルのうち第2のタイルをプログラムすることは、第2の持続時間を有し、第1の持続時間は、第2の持続時間と少なくともほぼ同じである。
【0022】
実装によっては、デジタル・プロセッサによって量子プロセッサを読み出すことは、複数のタイルのうち第1のタイルの第1のキュービットを、複数のタイルのうち第1のタイルの第2のキュービットと並列に読み出すことを含む。前述の様々な実装では、デジタル・プロセッサによって量子プロセッサを読み出すことは、複数のタイルのうち第1のタイルの第1のキュービットを、複数のタイルのうち第2のタイルの第3のキュービットと並列に読み出すことを含む。実装によっては、デジタル・プロセッサによって量子プロセッサを読み出すことは、複数のタイルのうち第1のタイルの第1のキュービットを読み出すことと、複数のタイルのうち第2のタイルの第2のキュービットを読み出すこととを含み、複数のタイルのうち第1のタイルの第1のキュービットを読み出すのに要する第1の時間は、複数のタイルのうち第2のタイルの第2のキュービットを読み出すのに要する第2の時間と少なくともほぼ同じである。
【0023】
前述の様々な実装では、この方法はさらに、並列動作において、量子プロセッサの少なくとも第1の部分及び量子プロセッサの第2の部分を較正することを含み、量子プロセッサのこの第1の部分は、量子プロセッサの第2の部分に対して非局所的である。
【0024】
各図面のいくつかの図の簡単な説明
各図面において、同一の参照番号は、同様の要素又は動作を識別する。図面中の各要素のサイズ及び相対位置は、必ずしも一定の縮尺で描かれてはいない。たとえば、様々な要素の形状及び角度は必ずしも一定の縮尺で描かれてはおらず、これらの要素によっては、任意に拡大及び配置して図面を分かりやすくなるようにしている。さらに、描かれた各要素の具体的な形状は、必ずしも具体的な要素の実際の形状についての情報を伝えるものではなく、もっぱら、各図面において認識しやすいように選択されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】超伝導プロセッサでのFMRRアレイの例示的な配置を示す概略図である。
図2】シフト・レジスタを備える超伝導プロセッサの例示的な実装を示す概略図である。
図3】超伝導回路用の読出しシステムの例示的な実施形態を示す概略図である。
図4】本明細書に記載のFMRR技術を組み込んでもよい、デジタル・コンピュータ及び量子コンピュータを備える例示的なハイブリッド・コンピューティング・システムの概略図である。
図5】ハイブリッド・コンピューティング・システム、たとえば図4のハイブリッド・コンピューティング・システムをプログラムする例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
用語集
キュービット:キュービット(本出願では量子ビットとも呼ぶ)は、量子情報の基本単位であり、2状態デバイスで物理的に実現することのできる古典的なバイナリ・ビットの量子バージョンである。キュービットは、2状態の量子機械システムである。キュービットはまた、情報が記憶される実際の物理装置を指す。たとえば、超伝導キュービットは、超伝導集積回路内に備えることのできる超伝導装置の一タイプである。超伝導キュービットは、たとえば、電荷ベース又は磁束ベースのキュービットの形をとることができる。
【0027】
超伝導装置:超伝導装置は、超伝導材料の特性、たとえば、超伝導材料の臨界温度特性を下回って冷却されるときの電気抵抗ゼロ及び磁束の放出を利用する電子装置である。
【0028】
超伝導回路:超伝導回路は、1つ又は複数の超伝導装置を含む回路である。
【0029】
超伝導マイクロ波共振器(本出願では超伝導微小共振器とも呼ぶ):超伝導マイクロ波共振器は、マイクロ波周波数で共振を示す超伝導回路である。絶縁基板上に超伝導薄膜を堆積し、標準のリソグラフィ・パターン形成技法を適用して共振器構造体を形成することによって、超伝導微小共振器を形成してもよい。超伝導微小共振器は、集中素子回路又は伝送線路共振器でもよい。微小共振器は、その簡潔さにより、又周波数領域多重化(以下でFMRRを参照のこと)を使用して、大きいアレイを読み出すことができるので、検出器用途にとって魅力的になり得る。
【0030】
マイクロ波伝送線路:マイクロ波伝送線路は、マイクロ波周波数の交流電流を搬送するように動作可能な1つ又は複数の導体を備えるケーブル又は他の構造体である。
【0031】
周波数領域多重化(FDM):FDMは、重複していない複数のサブバンドに通信帯域幅が分割され、各サブバンドが別々の信号を伝送するように使用される技法である。
【0032】
周波数多重化共振読出し(FMRR):FMRRは、周波数領域多重化モードで動作可能な超伝導共振器を含む読出し技術である。FMRR技術は、1つ又は複数の周波数多重化共振(FMR)読出しを含む。
【0033】
SQUID(超伝導量子干渉装置):SQUIDは、1つ又は複数のジョセフソン接合を含む超伝導ループを備える超伝導装置である。SQUIDは、非常に弱い磁界を測定できる磁力計として使用することができる。DC SQUIDは、並列に接続された2つのジョセフソン接合を有する。RF-SQUIDは、単一のジョセフソン接合を含む超伝導ループを有する。
【0034】
集中素子設計:集中素子設計では、空間的に分散された物理システムが、ある一定の仮定の下で分散システムの挙動を近似する離散エンティティのトポロジーとして説明される。たとえば、これは、電気システム及び電子システムにおいて有用である。
【0035】
シフト・レジスタ:シフト・レジスタは、データを記憶及び/又は転送するよう動作可能な順序論理回路である。
【0036】
量子磁束パラメトロン(QFP):QFPは、少なくとも1つの超伝導ジョセフソン接合と、発振が2進数字を表すようにすることのできる共振回路とを備える論理回路である。この設計は量子原理を利用しているが、QFPは、量子コンピューティング技術ではなく古典的なコンピューティング技術の一要素である。
【0037】
ハイブリッド・コンピュータ:ハイブリッド・コンピュータは、少なくとも1つのデジタル・プロセッサ、及び少なくとも1つのアナログ・プロセッサ(たとえば、量子プロセッサ)を備えるシステムである。
【0038】
ジョセフソン接合:ジョセフソン接合は、材料の臨界温度特性以下で超伝導が可能な材料の2つの電極、及び各電極を分離する薄い絶縁隔壁を備えるデバイスである。
【0039】
磁束デジタル・アナログ変換器(DAC):磁束DACは、デジタル信号の磁束量子表現を確立し、それをアナログ超伝導電流に変換し、また別の装置、たとえばプログラマブル装置の補助とすることのできる超伝導装置である。
【0040】
前文
以下の説明では、開示された様々な実装及び実施形態を完全に理解するため、いくつかの具体的な詳細が含まれる。しかし、こうした具体的な詳細のうち1つ若しくは複数の詳細なしに、又は他の方法、構成部品、材料などを用いて各実装又は各実施形態を実施してもよいことが、当業者には理解されよう。他の例では、超伝導回路又は超伝導共振器に関連するよく知られた構造体は、この方法の実装及び実施形態の説明が必要以上に曖昧になることを避けるため、詳細には図示又は説明されてこなかった。本明細書及び添付の特許請求の範囲の全体を通して、「1つの要素」及び「複数の要素」という用語は、超伝導回路及び超伝導共振器に関連するこのようなあらゆる構造体、システム、及び装置を包含するが、それだけには限定されないように使用される。
【0041】
文脈上別の意味に解釈すべき場合を除き、以下の明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」という用語は、「含んでいる(including)」と同義であり、包含的又は開放的である(すなわち、記載されていない追加の要素又は動作を排除するものではない)。
【0042】
本明細書全体を通して、「1つの実施形態」、「一実施形態」、「別の実施形態」、「1つの例」、「一例」、「別の例」、「一実装」、「別の実施形態」などへの言及は、その実施形態、例、又は実装に関連して説明される特定の参照対象の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態、例、又は実装に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所で目にする「1つの実施形態において」、「一実施形態において」、「別の実施形態」などの語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態、例、又は実装を指すものではない。さらに、具体的な特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態、例、又は実装において任意の適切な方式で組み合わせてもよい。
【0043】
本明細書及び添付特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、複数の参照対象を含むことに留意されたい。したがって、たとえば、「超伝導共振器」を含む読出しシステムへの言及は、単一の超伝導共振器又は2つ以上の超伝導共振器を含む。「又は(or)」という用語は一般に、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、「及び/又は」を含む意味で利用されることにも留意されたい。
【0044】
本明細書において提示される表題は、もっぱら便宜上のものであり、各実施形態の範囲又はその意味を説明するものではない。
【0045】
技術の詳細な説明
量子プロセッサの従来の一実装では、キュービットが、1つ又は複数のタイルに配置され、この量子プロセッサ内のタイルが、グリッド、たとえばN×N個のタイルの正方形グリッド内に配置される。
【0046】
本出願では、タイルは、一連のキュービットを指す。一実装では、タイルは、水平に位置合せされたM個のキュービットと、垂直に位置合せされた同数のM個のキュービットとを含む。別の実施形態では、タイルは、少なくとも1つの部分的なキュービットを含む(すなわち、このタイルは、少なくとも1つのキュービットの一部分がタイルの境界の外側に存在する少なくとも1つのキュービット、又は少なくとも1つのキュービットが、もっぱらキュービットの部分的なインスタンス化である少なくとも1つのキュービットを含む)。キュービットの一部分は、キュービットのセグメントとすることができる。キュービットの部分的なインスタンス化は、キュービットの(すべてではなく)一部のセグメントのみを含むことができる。量子プロセッサ・トポロジのいくつかの例については、次の参考文献「SYSTEMS AND METHODS FOR QUANTUM PROCESSOR TOPOLOGY」と題する国際PCT特許公報第国際公開第2017214331A1号を参照のこと。
【0047】
本出願において、水平に位置合せされたキュービットは、垂直軸よりも水平軸に沿った寸法が長いキュービットであり、この垂直軸は水平軸に垂直である。水平軸は、たとえば、量子プロセッサを含む集積回路の片側に平行な軸として定義することができる。本出願において、垂直に位置合せされたキュービットは、水平軸よりも垂直軸に沿った寸法が大きいキュービットである。
【0048】
前述の量子プロセッサ(N×N個のタイル、及びタイル当たりM×M個のキュービットを有する)などの量子プロセッサの実装においては、この量子プロセッサ内のキュービットの読出しには、積NMに比例する読出し時間がかかる場合がある。
【0049】
量子プロセッサは、この量子プロセッサへの多数のプログラミング・ラインを使用してプログラムすることができる。本出願では、プログラミング・ラインは、アドレッシング・ライン及びパワー・ラインとも呼ばれる。アドレッシング・ライン及びパワー・ラインの説明については、たとえば、国際PCT特許出願第米国特許出願公開第2018/054306号(国際公報第国際公開第2019/070935A2号)の「QUANTUM FLUX PARAMETRON BASED STRUCTURES (E.G., MUXES, DEMUXES, SHIFT REGISTERS), ADDRESSING LINES AND RELATED METHODS」を参照のこと。
【0050】
量子プロセッサ用のプログラミング・システムは、いくつかのデジタル・アナログ変換器(DAC)を備えることができる。前述の量子プロセッサなどの量子プロセッサの従来の実装では、プログラミング・システムは、ほぼ、(NM)のDACを備えることができる。
【0051】
量子プロセッサのプログラミング・ラインの数(本出願においては、総ラインカウントとも呼ばれる)を、事実上可能な限り低く保持することが一般に望ましい。通常、少なくともほぼ
【数1】
のアドレス・ライン及びパワー・ラインが存在することができ、プログラミング時間は
【数2】
に比例することができる。
【0052】
前述の例示的な実装は、タイルの正方形グリッド、並びに各タイルにおける等しい数の水平キュービット及び垂直キュービットに関するが、本出願に記載されるシステム及び方法の他の実装は、a)タイルの非正方形グリッド、及びb)水平キュービット及び垂直キュービットの数が等しくないタイルのうち少なくとも1つを有することができる。
【0053】
量子プロセッサにおいてシフト・レジスタを実装する装置のシステムの例は、たとえば、双方とも「QUANTUM FLUX PARAMETRON BASED STRUCTURES (E.G. MUXES, DEMUXES, SHIFT REGISTERS), ADDRESSING LINES AND RELATED METHODS」と題する、米国特許出願第15/726,239号(米国特許出願公報第20180101786A1号としても公開されている)及び国際PCT出願公報第国際公開第2019/070935A2号によって提示される。
【0054】
量子プロセッサによっては、X信号及びY信号が、それぞれアドレス(ADDR)ライン及びトリガ(TRIG)ラインと表され、Z信号がパワー(PWR)ラインと表される、XYZ方式を使用してシフト・レジスタ制御DACをアドレス指定する。量子プロセッサのパーティション内のDAC段は、電気的に通信可能なように連続して結合することができる。パーティションを始動し、ADDRラインをアサートし、TRIGラインを何回も切り替えることで、選択されたDACに、対応する数のパルスを書き込むことができる。
【0055】
相対的に多数の論理装置(たとえば、キュービット)を有するスケーラブル・プロセッサの動作に有用な手法は、QFPを利用して、たとえば、シフト・レジスタ、マルチプレクサ、デマルチプレクサ、及び永久磁気メモリなどを実装することができる。こうした手法は、XY又はXYZアドレス指定方式を利用することができ、一連の装置にわたって「より合わされた」パターンで延在する制御ラインを利用することができる。実装によっては、DACは、力学インダクタンスを使用して、薄膜超伝導材料及び/又は一連のジョセフソン接合を使用してエネルギーを蓄積してもよく、単一ループ設計又は複数ループ設計を使用してもよく、蛇行構造を含んでもよい。DACは、他の装置と直流的及び/又は誘導的に通信可能なように結合することができる。
【0056】
本出願には、a)シフト・レジスタ制御DAC(すなわち、1つ又は複数のシフト・レジスタによって制御されるDAC)、及びb)キュービット読出し装置(たとえば、キュービット読出し量子磁束パラメトロン[QFP])に通信可能なように結合されたシフト・レジスタの構成を含む、システム及び方法が説明してある。
【0057】
シフト・レジスタは、1つ又は複数の周波数及び感度を調整可能な共振器(FASTR)検出器(本出願ではFASTRs又はFASTR装置とも呼ばれる)に通信可能なように結合することができる。たとえば、J.D.Whittakerらの「A FREQUENCY AND SENSITIVITY TUNABLE MICRORESONATOR ARRAY FOR HIGH-SPEED QUANTUM PROCESSOR READOUT」、Journal of Applied Physics 119,014506(2016)を参照のこと。
【0058】
本出願に記載されるシステム及び方法の一実装は、水平キュービットを読み出すための1つの軸と、垂直キュービットを読み出すための別の軸との2つの読出し軸を有する、シフト・レジスタ制御DACの規則的なグリッド(たとえば、長方形グリッド)を含む。
【0059】
FASTR検出器との間でデータを経路指定するためのシフト・レジスタは、少なくともツリー状で通信可能なように結合することができる。本出願において、「ツリー」は、任意のノードから他の任意のノードへの経路が存在し、各ノードのサイクルが存在しないような、1組のエッジによって接続された1組のノードを指す。本出願において、「少なくともツリー状」という用語は、各ノードのサイクルが存在しないという条件の緩和を指す。FASTR検出器は、ツリーのルートとすることができ、各シフト・レジスタ段は、要望通りに接続することができる。一実装では、このシステムは、FASTR検出器から所望のシフト・レジスタ段までデータを移動し、元に戻すことができる。
【0060】
本出願に記載のシステム及び方法の別の実装では、DACの3つの読出し軸及び六角形領域が存在する。
【0061】
さらに別の実装では、I/O領域がタイルの一部分のみを含む。さらに別の実装では、I/O領域は2つ以上のタイルを含む。さらに別の実装では、I/O領域は、1つ又は複数のタイルの、部分的又は完全な横列のみを含む。さらに別の実装では、I/O領域は、1つ又は複数のタイルの、部分的又は完全な縦列のみを含む。
【0062】
本出願に記載のシステム及び方法の一利点は、量子プロセッサのプログラミング時間及び/又は読出し時間の短縮である。一実装では、プログラミング時間はMに比例することができ、読出し時間はMに比例することができる。一実装では、タイルのN×N個のグリッドを含む量子プロセッサへのラインは、N個のマイクロ波ラインを含む。他の実装では、タイルのN×N個のグリッドを含む量子プロセッサへのラインは、N個を超えるマイクロ波ラインを含む。さらに他の実装では、タイルのN×N個のグリッドを含む量子プロセッサへのラインは、N個未満のマイクロ波ラインを含む。量子プロセッサへのラインはまた、数多くのシフト・レジスタ制御ラインを含んでもよい。
【0063】
一実装では、量子プロセッサの各キュービットは、1つの集積回路(本出願では、チップとも呼ばれる)上に配置され、FMR読出し装置は、別々のチップ上に配置される。FMR読出し用に別々のチップを使用する利点は、量子プロセッサのキュービットの、マイクロ波FMRRラインからの隔離を改善できることである。別の利点は、量子プロセッサのレイアウトに必要な面積を低減できることである。さらに別の利点は、低温環境においてFMR読出し装置を試験及び事前選択し、その後に、それらを量子プロセッサと統合することが可能であり、それによって統合後のシステムの信頼性を向上させることである。
【0064】
別の実装では、量子プロセッサは、入力及び出力用の周辺のFMRR及び/又は非破壊読出し装置(NDRO)モジュールを含む、従来の読出しシステムを備えてもよい。この実装では、FMR読出し装置と量子プロセッサの両方を、統合する前に独立して試験することができる。
【0065】
別の実施形態では、FMR読出し装置は、たとえば、キュービットのタイル状の配置を用いてその場で、量子プロセッサに組み込まれる。
【0066】
一実装では、FMR読出し装置は長方形グリッド内に配置され、このグリッドは、並列に配置されたマイクロ波ラインによって制御される。たとえば、図1の実装及び以下の説明を参照のこと。
【0067】
FMR読出し装置の長方形グリッドは、たとえば図2に示され、また図2を参照して以下に述べるように、統合された入力/出力ネットワークへ通信可能なように結合することができる。この構成では、各内部タイルへの入力/出力(I/O)を独立して実行することができる。各タイルへの制御I/Oと、このI/Oを制御するための各ラインは同一とすることができる。各タイルへの入力/出力を並列に実行して、入力及び/又は出力の動作をタイル状に並列化することができる。この状況では、2つ以上の動作(たとえば、2つ以上の入力/出力)を並列に実行することは、2つ以上の動作を同時に、又は少なくとも部分的に時間を重複して実行することを指す。入力動作は、装置をプログラムすることを含んでもよい。出力動作は、装置の読出しを含んでもよい。
【0068】
量子プロセッサのある1つの部分を別の部分から独立して較正することが望ましい場合がある。この状況での「較正」という用語は、量子プロセッサ及び/又は量子プロセッサ内の各デバイスの特徴を測定することを含む。量子プロセッサにおいて、各装置の局所環境(たとえば、キュービット)を制御できることは、較正にとって有益となる場合がある。通常、局所環境とは、装置とその関連するDAC、最も近い隣接装置とその関連するDAC、及びその次に近い隣接装置とその関連するDACを指す。
【0069】
較正するための1つの手法は、較正のプロセスを、互いに並列して実行することのできる1組の局所測定に分割することである。この手法は、断熱性量子コンピュータ及びゲートモデル量子コンピュータを含むが、それだけには限定されない様々なタイプの量子コンピュータに適用可能となる場合がある。
【0070】
並列に較正を実行するには、測定される装置の数に比例する時間を追加しない方式で、プロセッサをプログラムし、キュービットを読み出せることが有利となる場合がある(そうでなければ、それぞれの局所領域を1つずつ較正するのに勝る利点は、ほとんど又は全くない)。1つの手法は、局所性(たとえば、装置のN×M個の各ブロックが1組のプログラミング・ラインを共有する場合)の仕組みに一致する、並列プログラミング方式を使用する。この場合、互いに局所でない装置のプログラミングを並列化することが可能である。読出しは、非局所装置を並列に読み出すことのできる並列読出し方式によって実行することができる。プログラミングは、互いに局所ではない装置の近くのDACを使用する、並列プログラミング方式によって実行することができる。
【0071】
並列プログラミング・インターフェースが存在する場合、各装置の局所環境(たとえば、キュービット)の制御を並列化可能とすることができる。キュービットがアナログ・ラインを共有する場合、及び/又は別々のアナログ・ライン上の電流が並列に変更可能である場合、キュービットのアニーリングは並列化可能とすることができる。キュービットの状態を測定することは(本出願では、キュービットの読出しとも呼ばれる)、並列読出し技術(たとえば、FMR読出し技術)を使用して並列化可能とすることができる。本出願に記載のシステム及び方法は、FMR読出し技術を含む。
【0072】
この状況での「並列化可能」という用語は、動作を実行するコストが、使用される装置の数に比例して変化しない動作を指す。実装によっては、動作の一側面(たとえば、最も時間のかかる側面)は、他の側面が並列化可能でない場合でも並列化可能であることが有利となる場合がある。
【0073】
図1は、超伝導プロセッサの一部分100の例示的な実装を示す概略図である。
【0074】
一部分100は、一連のFMR読出し装置102-1、102-2、102-3、及び102-4(本出願では、まとめてFMR読出し装置102と呼ぶ)、FMR読出し装置104-1、104-2、104-3、及び104-4(本出願では、まとめてFMR読出し装置104と呼ぶ)、FMR読出し装置106-1、106-2、106-3、及び106-4(本出願では、まとめてFMR読出し装置106と呼ぶ)、並びにFMR読出し装置108-1、108-2、108-3、及び108-4(本出願では、まとめてFMR読出し装置108と呼ぶ)を備える。FMR読出し装置102は、入力ライン110に通信可能なように結合される。FMR読出し装置104は、入力ライン112に通信可能なように結合される。FMR読出し装置106は、入力ライン114に通信可能なように結合される。FMR読出し装置108は、入力ライン116に通信可能なように結合される。
【0075】
一実装では、入力ライン110、112、114、及び116は、別々の入力ラインである。別の実装では、入力ライン110、112、114、及び116の一部又はすべてが、互いに通信可能なように結合され、たとえば互いに有線接続される。
【0076】
FMR読出し装置102は、それぞれ118-1、118-2、118-3、及び118-4において、超伝導プロセッサ(図1には図示せず)の他の要素に通信可能なように結合される。FMR読出し装置104は、それぞれ120-1、120-2、120-3、及び120-4において、超伝導プロセッサの他の要素に通信可能なように結合される。FMR読出し装置106は、それぞれ122-1、122-2、122-3、及び122-4において、超伝導プロセッサの他の要素に通信可能なように結合される。FMR読出し装置108は、それぞれ124-1、124-2、124-3、及び124-4において、超伝導プロセッサの他の要素に通信可能なように結合される。
【0077】
一実装では、FMR読出し装置は、超伝導プロセッサの他の要素と、通信可能なようにその場で結合される。別の実装では、FMR読出し装置は、超伝導バイアによって、超伝導プロセッサの他の要素と通信可能なように結合される。本出願において、バイア(垂直相互接続アクセス)は、1つ又は複数の隣接した層の平面を通過する物理多層電子回路(たとえば、集積回路)での、各層間の電気接続部である。さらに別の実装では、FMR読出し装置は、バンプ接合、ハンダ接合、又は別の適切な電気通信結合を使用して、別々のチップ上の超伝導プロセッサの他の要素に通信可能なように結合される。
【0078】
図2は、超伝導プロセッサの一部分200の例示的な別の実装を示す概略図である。超伝導プロセッサの一部分200は、複数のシフト・レジスタを備える。
【0079】
超伝導プロセッサの一部分200は、FMRRモジュール(たとえば、図1のFMRRモジュール104-1)と通信可能なように結合可能なシフト・レジスタ202を備える。実装によっては、シフト・レジスタ202は、単一のシフト・レジスタ段である。実装によっては、シフト・レジスタ202は、2つ以上のシフト・レジスタ段を含む。超伝導プロセッサの一部分200は、たとえば、複数のシフト・レジスタ段によって、FMRRモジュールに通信可能なように結合可能とすることができる。
【0080】
超伝導プロセッサの一部分200は、シフト・レジスタ202と、3フェーズ内部ストリート206及び208とを通信可能なように結合するティー段204を含む。本出願において、ストリートとは、データ経路、すなわち、超伝導プロセッサを通り、データが移動できる経路である。ストリートに沿って移動するデータは、入力データ及び/又は出力データとすることができる。一実装では、ティー段204は、シフト・レジスタ202によって、FMRRモジュール(たとえば、図1のFMRRモジュール104-1)に通信可能なように結合される。別の実装では、ティー段204は、シフト・レジスタ202によって、FMRRモジュールに通信可能なように結合され、ここで、シフト・レジスタ202は複数のシフト・レジスタ段を含む。
【0081】
ストリートは、図2に示す3つのフェーズよりも少ないフェーズを有することができる。ストリートは、図2に示す3つのフェーズよりも多いフェーズを有することができる。実装によっては、ストリートは4つのフェーズを有する。
【0082】
超伝導プロセッサの一部分200は、キュービット読出し装置210-1及び210-2を備える。キュービット読出し装置210-1及び210-2は、キュービット読出し装置の横列の構成要素である。キュービット読出し装置210-1及び210-2を含む、キュービット読出し装置の横列でのキュービット読出し装置は、本出願においてまとめてキュービット読出し装置210と呼ばれる。キュービット読出し装置210の各キュービット読出し装置は、2つ以上の段を含むことができる。例示を明確にするために、キュービット読出し装置210の各キュービット読出し装置の、1つの段のみが図2に示してある。
【0083】
超伝導プロセッサの一部分200は、キュービット読出し装置212-1及び212-2を備える。キュービット読出し装置212-1及び212-2は、キュービット読出し装置の縦列の構成要素であり、キュービット読出し装置の縦列の各キュービットは、本出願においてまとめてキュービット読出し装置212と呼ばれる。超伝導プロセッサの一部分200は、キュービット読出し装置212に通信可能なように結合された、3フェーズ内部ストリート214を含む。
【0084】
超伝導プロセッサの一部分200は、DACバッファ段216を備える。実装によっては、DACバッファ段216は、キュービット読出し段、たとえばキュービット読出し装置212とフェーズを共有する。
【0085】
超伝導プロセッサの一部分200は、シフト・レジスタ・ロード可能なDAC218-1及び218-2を備える。シフト・レジスタ・ロード可能なDAC218-1及び218-2は、シフト・レジスタ・ロード可能なDACのグリッドの構成要素である。シフト・レジスタ・ロード可能なDACのグリッドでのシフト・レジスタ・ロード可能なDACは、本出願においてまとめてシフト・レジスタ・ロード可能なDAC218と呼ばれる。実装によっては、DACはQFP-DACを含む。
【0086】
超伝導プロセッサの一部分200は、以下のように3つの内部ストリート206、208、及び214を含む。すなわち、a)垂直に位置合せされたキュービット用のキュービット読出し装置210に通信可能なように結合された水平内部ストリート206、b)水平に位置合せされたキュービット用のキュービット読出し装置212に通信可能なように結合された垂直内部ストリート214、及びc)シフト・レジスタ・ロード可能なDACバッファ段216に通信可能なように結合された垂直内部ストリート208である。本出願において、「シフト・レジスタ・ロード可能なDACバッファ段」という用語は、シフト・レジスタからロードすることのできるDACバッファ段を指す。シフト・レジスタ・ロード可能なDACバッファ段216は、シフト・レジスタ・ロード可能なDAC218に通信可能なように結合される。
【0087】
図2の例示的な実装では、内部ストリート206及び208は、3フェーズ内部ストリートであり、すなわち、以下のA-B-C-A-B-C-A-B-C....のように各段の3つのインターリーブされたファミリが存在する。実装によっては、ある1つのファミリ(たとえば、A段)に属する各段は、第1のグローバル・アニーリング・ラインによって制御され、別のファミリ(たとえば、B段)に属する各段は、第2のグローバル・アニーリング・ラインによって制御され、さらに別のファミリ(たとえば、C段)に属する各段は、第3のグローバル・アニーリング・ラインによって制御される。実際には、グローバル・アニーリング・ラインに加えて、1つ又は複数のグローバルDCバイアス・ラインが存在してもよい。
【0088】
グローバル・アニーリング・ラインの目的は、本出願においては「抑制する」及び「ラッチする」と呼ばれる2つの動作をサポートすることである。この抑制動作は、それぞれのシフト・レジスタ段での電流をゼロ(又は、ほぼゼロ、すなわち定められた閾値未満)に設定及び保持することができる。ラッチ動作は、それぞれのシフト・レジスタ段をアニールすることができる。シフト・レジスタ段が双安定のQFPである一実装では、各QFPは、それぞれのシフト・レジスタ段が受け取る局所バイアスの値に応じて、ラッチ動作の終了時に、+1又は-1いずれかの正規化された電流を有することができる。たとえば、シフト・レジスタを介してデータを移送するには、抑制動作とラッチ動作を同時に実行してもよい。
【0089】
例示的な状況では、このシステムは、Aシフト・レジスタ段でのデータを含み、それぞれのA段は、+1又は-1いずれかの磁束状態を有する。たとえば、A段は、以下のように表される一連のデータ(+1、+1、-1)を含んでもよい。
A(+1)-B-C-A(+1)-B-C-A(-1)-B-C
【0090】
B段及びC段が抑制され、その状態がゼロに設定される場合、このシーケンスは以下のようになる。
A(+1)-B(0)-C(0)-A(+1)-B(0)-C(0)-A(-1)-B(0)-C(0)
【0091】
A段がラッチされ、C段が抑制されたまま、B段がアニールされる場合、その環境において最も重要な信号は、隣接するA段から来る場合がある。以下のように、アニールの最後に、B段は、隣接するA段の内容とは逆の内容を含む。
A(+1)-B(-1)-C(0)-A(+1)-B(-1)-C(0)-A(-1)-B(+1)-C(0)
【0092】
A段を抑制し、B段をラッチした状態に保持し、C段をアニールすることによって、以下のように、BからCに状態をコピーすることができる。
A(0)-B(-1)-C(+1)-A(0)-B(-1)-C(+1)-A(0)-B(+1)-C(-1)
【0093】
プロセスのこの時点で、C段は、A段からのデータの元のシーケンス、すなわち(+1、+1、-1)を含む。
【0094】
前述の例示的な状況が示すように、適切な一連の抑制動作及び/又はラッチ動作によって、データは、シフト・レジスタに沿っていずれかの方向に移動することができる。
【0095】
実装によっては、内部ストリート206、208、及び214は、各段のインターリーブされた4つ以上のファミリを含む。
【0096】
他の構成を使用することができ、たとえば、実装によっては、1つ又は複数の「クロスオーバ」段を含むものがある。クロスオーバ段は、フェーズ・パターンが割り込まれることのある構成での場所を指す。
【0097】
たとえば、クロスオーバ段は「ティー」とすることができる。ティーを使用して、以下のように、コーナーの周りでデータの向きを変えることができる。


C-P-Q-R-A-B-C





【0098】
シフト・レジスタ(A、B、C)は、シフト・レジスタ(P、Q、R)と同時に動作させることができる。シフト・レジスタA及びPは、同じ第1の信号によって駆動することができ、B及びQは、同じ第2の信号によって駆動することができ、C及びRは同じ第3の信号によって駆動することができ、その間、全体を通してXを抑制する。このようにして、上側の(A、B、C)から、(P、Q、R)を介してコーナーで向きを変えて、前図の右側の(A、B、C)まで、データをシフトすることができる。
【0099】
続いて、Pを抑制しながらシフト・レジスタ(A、B、C)を(X、Y、Z)と同時に動作させることができ、したがって、上側の(A、B、C)から、(X、Y、Z)を介して、前図の下側の(A、B、C)まで下方に、データをシフトすることができる。
【0100】
前述のいずれの場合にも、「制御されている」データ経路、すなわち、データがそれに沿ってシフトされているデータ経路、及び「制御されていない」データ経路、すなわち、シフト・レジスタの内容がそれに沿って制御されていないデータ経路がある。制御されていないデータ経路でのシフト・レジスタは、それらが少なくとも1つの抑制された段(たとえば、第1の場合ではX、第2の場合ではP)によって制御された経路から分離される場合には、無視することができる。
【0101】
図2に示す例示的な実装では、12個の水平キュービット読出し装置、12個の垂直キュービット読出し装置、及びDACの12×12個のグリッドが存在する。他の実装では、プロセッサは、DACの非正方形グリッドを有してもよい。他の実装では、グリッドの次元は、キュービット読出し装置の数と同じではない。例示的な実装は、12個の水平キュービット読出し装置、12個の垂直キュービット読出し装置、及びDACの28×14個のグリッドを有する。他の実装では、他の適切なタイル次元が使用される。例示的な実装では、シフト・レジスタ・ロード可能なDACは、6つの段を有する。
【0102】
本出願において、変数mを使用して、キュービット読出し装置の数の最大数、DACグリッドの幅、及びDACグリッドの高さを表す。システム(たとえば、図1の超伝導プロセッサの一部分100又は図2の超伝導プロセッサの一部分200を含むシステム)をプログラムするには、まず、ある状態を垂直ストリートにロードすることができる。3フェーズ・ストリートの場合、データ・ラインの1/3を、一度にバッファ段に転送することができる。
【0103】
各ロード動作は、およそmステップをとることができ、すなわち、各ロード動作は、0(m)ステップをとることができ、ここで、mは、合計読出しサイズ、DACグリッド幅、及びDACグリッド高さのうち最大のものである。ロード動作を0(m)回繰り返して、DAC段をロードすることができ、タイルをプログラムするのに要する時間は0(m)とすることができる。同じ制御構造を有する複数のタイルを並列にプログラムすることができ、したがって、こうしたタイルの合計プログラミング時間も0(m)とすることができる。
【0104】
一実装では、少なくともタイルのサブセットは、同じ制御構造を有する。実装によっては、この制御構造を並列に動作させることができる。この場合、タイルのサブセットは、単一のタイルと少なくともほぼ同じプログラミング時間を有する。同様に、プロセッサの読出しにおいては、シフト・レジスタの長さが制限されているので、プロセッサの読出しには0(m)の時間がかかる場合がある。単一キュービットの読出しには、0(m)の時間がかかる場合がある。単一のタイルでの複数のキュービットを並列に読み出すことができるので、単一のタイルでの複数のキュービットの読出しには、0(m)の時間がかかる場合がある。さらに、複数のタイルでのキュービットを並列に読み出すことができるので、複数のタイルでの複数のキュービットの読出しにも、0(m)の時間がかかる場合がある。
【0105】
実装によっては、シフト・レジスタは、プロセッサ・グリッド内の隣接タイル間で通信可能なように結合されて、冗長度を改善して、たとえば、動作不能な装置を有するリスクを軽減することができる。
【0106】
例示的な読出しシステム
図3には、少なくとも1つの例示的な実装による、超伝導回路302用の読出しシステム300が示してある。図3の例示された実装では、超伝導回路302は、1つ又は複数の超伝導共振器を備える。一実装では、超伝導回路302は、超伝導量子プロセッサを備える。別の実装では、超伝導回路302は、古典的な超伝導プロセッサを備える。他の実装では、超伝導回路302は、超伝導装置を備える。
【0107】
読出しシステム300は、デジタル・ボード304及びマイクロ波ボード306を備える。デジタル・ボード304は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)308、2つのデジタル・アナログ変換器(DAC)310a及び310b、並びに2つのアナログ・デジタル変換器(ADC)312a及び312bを備える。実装によっては、デジタル・ボード304は、2つのFPGAを備え、一方は、DAC310a及び310bに出力を供給し、もう一方は、ADC312a及び312bに出力を供給する。一実装では、DAC310a及び310bのそれぞれは、最高約5.6Gsps(毎秒ギガ・サンプル)で動作するデュアルチャネル14ビットDACを備えることができる。ADC312a及び312bは、マルチチャネル装置、たとえば、最高約2.5Gspsのデュアルチャネル・モードで動作することのできる、クワッドチャネル10ビットADCを使用して実装することができる。
【0108】
読出しシステム300は、有利には、周波数多重化読出し(FMR)スペクトルの、2つの側波帯の独立したアドレス指定を使用可能にする。複雑な受信信号を、以下のように表すことができる。
x(n)=I(n)+jQ(n)
上式で、I(n)は、ADC312aの出力であり、Q(n)は、ADC312bの出力である。
【0109】
FMRスペクトルは、以下のように計算することができる。
【数3】
ここで、k∈0、1、2、3...N-1である。FMRスペクトルについての上式でのサイン関数の引き数における第2項はτに依存し、2つのミキサ・チャネル間のフェーズ不均衡を補償するのに使用することができる。フェーズ不均衡は、ミキサのアナログ的な性質の結果として生じることがある。
【0110】
デジタル・ボード304はさらに、2つのループバック・ライン314a及び314b、並びに同期/クロック接続部316aを備える。ループバック・ライン314aは、DAC310aの出力をADC312aの入力に通信可能なように結合する。ループバック・ライン314bは、DAC310bの出力をADC312bの入力に通信可能なように結合する。
【0111】
マイクロ波ボード306(本出願においては、マイクロ波サブシステム306とも呼ばれる)は、ループバック・ライン317をさらに備える。
【0112】
デジタル・ボード304上のループバック・ライン314a及び314b、並びにマイクロ波ボード306上のループバック・ライン317は、任意選択であり、読出しシステム300の他の要素をバイパスするのに使用することができる。
【0113】
読出しシステム300はさらに、2つの再構成フィルタ318a及び318b、並びに2つのアンチエイリアシング・フィルタ320a及び320bを備える。再構成フィルタ318a及び318bは、デジタル入力から帯域制限されたアナログ信号を生成するのに使用することのできる低域通過アナログ・フィルタである。アンチエイリアシング・フィルタ320a及び320bは、対象となる帯域にわたってサンプリング定理を少なくともほぼ満たすために、受信信号を帯域制限するのに使用することのできる低域通過アナログ・フィルタである。
【0114】
マイクロ波ボード306は、基準マイクロ波信号を供給する電圧制御発振器(VCO)/フェーズ・ロック・ループ(PLL)322、ミキサ324及び326、並びにプログラマブル減衰器328を備える。マイクロ波ボード306はさらに、増幅器330、332、334、及び336を備える。増幅器330、332、334、及び336を使用して、超伝導回路302から受信した信号のレベル制御を実現することができる。マイクロ波ボード306はさらに、デジタル・ボード304上のFPGA308からの信号によって制御可能なマイクロ波スイッチ338を備える。一実装では、ミキサ324及び326は複素ミキサである。
【0115】
読出しシステム300はさらに、増幅器340、減衰器342及び344、サーキュレータ346及び348、並びにDCブロック350及び352を備える。DCブロック350及び352は、超伝導回路302との間の入力ライン及び出力ラインのそれぞれでの断熱層として使用することができる。
【0116】
一実装では、増幅器340及び減衰器342は、4Kで動作することができる。減衰器344は、0.6Kで動作することができる。サーキュレータ346及び348、並びにDCブロック350及び352は、8mKで動作することができる。
【0117】
例示的な一実装では、60個の共振器及び2.5GHzの帯域幅を使用して、ほぼ600Mbpsのデータ転送速度を、シフト・レジスタ段の動作時間25nsで実現することができる。
【0118】
図3の読出しシステム300の動作方法は、PCT特許出願第国際公開第2016US31885号(国際特許出願公報第国際公開第2016183213A1号として公開)に記載されている。
【0119】
低温サブシステム(図3には図示せず)を使用して、超伝導回路302を数mK(ミリケルビン)ほどの低温にまで冷却してもよい。
【0120】
超伝導キュービット用の周波数多重化読出し(FMR)技術
図4には、前述のようなFMR技術を組み込んでもよいデジタル・コンピュータ402及び量子コンピュータ404を含む、少なくとも1つの例示的な実装によるハイブリッド・コンピューティング・システム400が示してある。デジタル・コンピュータ402は、本出願においてデジタル・プロセッサとも呼ばれる。
【0121】
デジタル・コンピュータ402は、CPU406、ユーザインターフェース要素408、410、412、及び414、ディスク416、制御装置418、バス420、並びにメモリ422を備える。メモリ422は、BIOS424、オペレーティングシステム426、サーバモジュール428、計算モジュール430、量子プロセッサモジュール432、読出しモジュール434、及びハイブリッド・コンピューティング・システム400を動作させるのに使用できる他のモジュールを含む。
【0122】
デジタル・コンピュータ402は、時として、本明細書においては単数形で言及することになるが、このことは、その用途を単一のデジタル・コンピュータに限定するものではない。このシステム及び方法は、分散コンピューティング環境で実施することもでき、この環境では、タスク又は命令のセットが、通信ネットワークを介してリンクされた遠隔の処理装置によって実施又は実行される。分散コンピューティング環境においては、コンピュータ読取り可能及び/又はプロセッサ読取り可能な命令(時として、プログラム・モジュールとして知られている)、アプリケーションのプログラム及び/又はデータは、局所及び/又は遠隔のメモリ記憶装置(たとえば、コンピュータ読取り可能及び/又はプロセッサ読取り可能で持続的な媒体)に記憶されてもよい。
【0123】
量子コンピュータ404は、量子プロセッサ436、読出し制御システム438、キュービット制御システム440、及びカプラ制御システム442を備える。量子コンピュータ404は、1つ又は複数の超伝導共振器を含むFMR技術を組み込むことができる。コンピューティング・システム400は、図3の読出しシステム300などの読出しシステムを備えることができる。
【0124】
図5は、ハイブリッド・コンピューティング・システム、たとえば図4のコンピューティング・システム400をプログラムする例示的な方法500の流れ図である。方法500は、動作502~516を含むが、代替実装においては、ある特定の動作が省略されてもよく、及び/又は追加の動作が追加されてもよいことが当業者には理解されよう。各動作の順序は、もっぱら例示的な目的で示したものであって、代替実装では変更してよいことが当業者には理解されよう。
【0125】
502において、方法500が開始する。504において、プロセッサベースのシステム、たとえば、デジタル・プロセッサベースのシステムは、量子プロセッサ(たとえば、図4の量子プロセッサ436)をプログラムする。量子プロセッサをプログラムすることは、量子プロセッサの複数のタイルを並列にプログラムすることを含んでもよい。たとえば、図5に示すように、量子プロセッサをプログラムすることは、506において第1のタイルをプログラムすることと、それと並列に508において第2のタイルをプログラムすることとを含むことができる。第1のタイルをプログラムすることの持続時間は、第2のタイルをプログラムすることの持続時間と、少なくともほぼ同じでもよい。これに関連して、「ほぼ」という用語は、第1のタイルのプログラミングの持続時間が、第2のタイルのプログラミングの持続時間の10%以内であることを指す。量子プロセッサをプログラムすることは、量子プロセッサによる計算(たとえば、量子アニーリング)に備えて、及び/又は量子プロセッサの較正中に生じてもよい。
【0126】
510において、プロセッサベースのシステムは、たとえば、量子プロセッサベースのシステムの構成要素を介して、量子プロセッサのキュービットを読み出す。読出しは、たとえば、量子プロセッサによる計算の後に(たとえば、量子アニーリングの後に)、及び/又は量子プロセッサの較正中に生じてもよい。量子プロセッサのキュービットを読み出すことは、単一のタイルでの複数のキュービットを並列に読み出すこと、及び/又は複数のタイルでの複数のキュービットを並列に読み出すことを含むことができる。たとえば、図5に示すように、キュービットを読み出すことは、512において第1のタイルでのキュービットを読み出すことと、それと並列に514において第2のタイルでのキュービットを読み出すこととを含むことができる。516において、方法500は終了する。
【0127】
第1のタイルでのキュービットを読み出すことの持続時間は、第2のタイルでのキュービットを読み出すことの持続時間と、少なくともほぼ同じでもよい。これに関連して、「ほぼ」という用語は、第1のタイルでのキュービットを読み出すことの持続時間が、第2のタイルでのキュービットを読み出すことの持続時間の10%以内であることを指す。
【0128】
本出願に記載されるシステム及び方法は、FMRR技術を量子プロセッサの構造にスケーラブルに統合することができる。FMRR技術の従来の用途では、FASTR検出器は通常、量子プロセッサの周囲に配置される。プロセッサ内の量子デバイス(たとえば、キュービット)から、量子プロセスの周囲にあるFASTR検出器にデータを移動するのに必要な時間は、固有の読出し待ち時間を生成することができる。この待ち時間は、量子デバイスとFASTR検出器の間のシフト・レジスタ段の数に比例することができる。最長待ち時間を有する量子デバイスは、量子プロセッサの読出し時間全体に下界を設定する。FMRR技術が量子プロセッサの周囲に配置されると、量子プロセッサの寸法(たとえば、幅)は、量子プロセッサの読出し時間に下界を確定することができる。
【0129】
本出願に記載される技術は、FASTR検出器を量子プロセッサ内の量子デバイス(たとえば、キュービット)と、従来の構成よりも緊密に統合することを含む。
【0130】
本出願において、この技術は(本出願ではユニット・タイルとも呼ばれる)タイルと呼ばれる構築物を含む。このタイルは、実質的に一定の待ち時間、及び実質的に一定の読出し時間を有することができる。各タイルのグリッドは、個々のタイルと同じ総待ち時間及び同じ総読出し時間を有することができる。
【0131】
この技術の利点は、この技術がスケーラブルな読出しシステムを提供することである。実装によっては、読出しシステムは、読み出される装置の数によって変化する実行時のコストを発生させることなく変化することができる。一実装では、読出しシステムを変化させることは、単一のマイクロ波ラインに取り付けられることがあるFASTR検出器の数、及び読出しシステム内のマイクロ波ラインの数によって制限される。
【0132】
本出願に記載されるシステム及び方法は、シフト・レジスタから状態をロードすることができるDACとFASTR検出器を統合する。従来の方法では、量子プロセッサをプログラムすることは、多数のアナログ・ラインを使用して、DACのグリッドを制御することができる。たとえば、米国特許出願第15/726,239号(米国特許出願公報第20180101786A1号としても公開されている)を参照のこと。実際には、利用可能なアナログ・ラインの数が制約されることもある。例示的な一実装では、量子プロセッサ内のDACをプログラムするのに185本のアナログ・ラインを使用することができる。相対的に少ないアナログ・ラインを使用することによって、プログラミング時間を増やすことができる。
【0133】
従来の技術を変化させることは、極めて複雑になることがあり(たとえば、アナログ・ラインを相対的に多く追加する必要がある場合)、又は極めて時間がかかることがある(たとえば、変化させることによってプログラミング時間が増える場合)。
【0134】
本出願に記載されるシステム及び方法は、使用するアナログ・ラインの数を減らして、従来の入力/出力技術と比べて大規模のプロセッサをプログラム及び制御することができる。例示的な一実装では、10本~30本のアナログ・ラインを使用して、量子プロセッサ内のDACをプログラムすることができる。一実装は、複数のタイルからなる集合体を備え、各タイルは、アナログ・ラインの単一のセットによってまとめて制御することができるシフト・レジスタのそれぞれのセットを備える。タイルのプログラミング時間は、実質的に固定することができ、複数のタイルからなる集合体のプログラミング時間は、単一のタイルのプログラミング時間と実質的に同じとすることができる。量子プロセッサを備えるシステムの拡張性は、単一のマイクロ波ラインに取り付けられることがあるFASTR検出器の数によって、及びシステム内のマイクロ波ラインの数によって少なくとも部分的に決定することができる。
【0135】
前述の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を実現することができる。本明細書の具体的な教示及び定義と矛盾しない範囲で、本明細書において言及され、及び/又は出願データ・シートに一覧表示されるすべての米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許公報は次の、2018年2月20日出願の「SYSTEMS AND METHODS FOR COUPLING A SUPERCONDUCTING TRANSMISSION LINE TO AN ARRAY OF RESONATORS」と題するPCT特許出願第PCT/US2019/18792号、2016年5月11日出願の「FREQUENCY MULTIPLEXED RESONATOR INPUT AND/OR OUTPUT FOR A SUPERCONDUCTING DEVICE」と題するPCT特許出願第PCT/US2016/031885号(国際特許出願公報第国際公開第2016183213A1号としても公開されている)、2014年10月7日に特許権が付与された「SYSTEMS AND METHODS FOR SUPERCONDUCTING FLUX QUBIT READOUT」と題する米国特許第8,854,074号、2012年5月1日に特許権が付与された「SYSTEMS, METHODS, AND APPARATUS FOR QUBIT STATE READOUT」と題する米国特許第8,169,231号、双方とも「QUANTUM FLUX PARAMETRON BASED STRUCTURES (E.G. MUXES, DEMUXES, SHIFT REGISTERS), ADDRESSING LINES AND RELATED METHODS」と題する、2017年10月5日出願の米国特許出願第15/726,239号(米国特許出願公報第US20180101786A1号としても公開されている)及び2018年10月4日出願の国際PCT出願公報第国際公開第2019/070935A2号、2019年5月22日出願の「SYSTEMS AND METHODS FOR EFFICIENT INPUT AND OUTPUT TO QUANTUM PROCESSORS」と題する米国仮特許出願第62/851,377号、並びに2019年6月11日出願の「INPUT/OUTPUT SYSTEMS AND METHODS FOR SUPERCONDUCTING DEVICE」と題する米国仮特許出願第62/860,098号を含むが、これらに限定されず、これらすべてを参照によって本明細書に援用する。必要ならば、様々な特許、出願、及び文献の、システム、回路、及び考え方を利用するよう各実施形態の態様を修正して、さらに別の実施形態を実現することができる。
【0136】
上記詳細な説明に照らして、実施形態に上記その他の変更を加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲においては、使用される用語は、本明細書及び特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に特許請求の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、こうした特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲に加えて、実現可能なすべての実施形態を含むと解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5