(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/34 20140101AFI20241030BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20241030BHJP
E05C 19/02 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
E05B83/34
B60K15/05 B
E05C19/02 A
(21)【出願番号】P 2022014274
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000192914
【氏名又は名称】株式会社神菱
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】西澤 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】清原 敦
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173422(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0135105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
E05C 19/02
B60K 15/00-15/10
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-15/42
B60L 50/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リッド(1)に使用される開閉装置(100)であり、
プッシュロッド(5)と、前記プッシュロッド(5)に回転可能に連結された回転摺動子(9)と、前記プッシュロッド(5)及び前記回転摺動子(9)を収容する筐体部(11)と、前記筐体部(11)に固定された底部支持部(12)とを有し、
前記底部支持部(12)は前記プッシュロッド(5)を回転可能に支持し、
前記プッシュロッド(5)は一端に前記リッド(1)に係止可能な係止部(6)と他端に連結部(51)とを有し、
前記連結部(51)は、連結溝(52)、第1の側壁部(53)及び第2の側壁部(54)を有し、
前記第2の側壁部(54)は前記プッシュロッド(5)の回転軸に対して傾斜した外壁面(54W)を有し、
前記第1の側壁部(53)と前記第2の側壁部(54)とは前記プッシュロッド(5)の周方向に連続して配置され、
前記回転摺動子(9)は、前記第1の側壁部(53)の外周に配置された支持壁(93)及び前記第2の側壁部(54)の外周に配置された連結壁(92)を有し、
前記連結壁(92)は、前記連結溝(52)と係合することを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記支持壁(93)の内壁面(93W)及び前記第1の側壁部(53)の外壁面(53W)は、前記プッシュロッド(5)の回転軸に平行であり、互いに接することを特徴とする請求項1記載の開閉装置。
【請求項3】
前記連結壁(92
)は、前記プッシュロッド(5)の回転軸に対して傾斜した傾斜面(95
)を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の開閉装置。
【請求項4】
前記連結壁(92)と前記支持壁(93)とは、互いに径方向に対向することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項5】
前記支持壁(93)は、突起部(91)を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の開閉装置。
【請求項6】
前記支持壁(93)の前記突起部(91)の少なくとも1つは、凹部(911)を有することを特徴とする請求項
5記載の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフューエルリッドや給電用ポート用リッド等に使用する開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の給油口の蓋であるリッド(フューエルリッド)に使用されるプッシュロッド式の開閉装置が知られている。このような開閉装置は、リッドに対応して車体内部側に設けられている。
このような開閉装置は、ノック式のボールペンと同様のプッシュロッド機構を備えており、外部からリッド(蓋)を押圧する毎に、リッドが閉状態の押込位置と開状態の突出位置とが交互に切り替わるように構成されている。プッシュロッドの先端部には係止部が設けられ、押込位置でリッドはプッシュロッドの係止部に係止され、閉状態となる。突出位置においては、リッドはプッシュロッドの係止部から解放され、開状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-214766号公報
【文献】特開2019-148160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に開示されている開閉装置は、係合ピンとハート形状のカムとの協働により、プッシュロッドの開位置と閉位置とを交互に維持する。プッシュロッドの側部にカム機構が設けられ、係合ピンをプッシュロッドの位置に応じて変位させる構成であり、構成が複雑であり、製造は容易ではない。
【0005】
本発明は、製造が容易なリッドの開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる開閉装置は、
リッド1に使用される開閉装置100であり、
プッシュロッド5と、前記プッシュロッド5に回転可能に連結された回転摺動子9と、前記プッシュロッド5及び前記回転摺動子9を収容する筐体部11と、前記筐体部11に固定された底部支持部12とを有し、
前記底部支持部12は前記プッシュロッド5を回転可能に支持し、
前記プッシュロッド5は一端に前記リッド1に係止可能な係止部6と他端に連結部51とを有し、
前記連結部51は、連結溝52、第1の側壁部53及び第2の側壁部54を有し、
前記第1の側壁部53と前記第2の側壁部54とは前記プッシュロッド5の周方向に連続して配置され、
前記回転摺動子9は、前記第1の側壁部53の外周に配置された支持壁93及び前記第2の側壁部54の外周に配置された連結壁92を有し、
前記連結壁92は、前記連結溝52と係合することを特徴とする。
【0007】
上記構成において、
前記支持壁93の内壁面93W及び前記第1の側壁部53の外壁面53Wは、前記プッシュロッド5の回転軸に平行であり、互いに接するように構成してもよい。
【0008】
上記構成において、
前記連結壁92及び前記第2の側壁部54は、前記プッシュロッド5の回転軸に対して傾斜した傾斜面95及び外壁面54Wをそれぞれ有していてもよい。
【0009】
このような開閉装置とすることで、開閉装置の製造の容易化に寄与することができる。
また、開閉装置の主要部品であるプッシュロッドの製造も容易となる。
また、プッシュロッドと回転摺動子との組立を容易化することができる。
【0010】
上記構成において、
前記連結壁92と前記支持壁93とは、互いに径方向に対向するように構成してもよい。
【0011】
このような開閉装置とすることで、プッシュロッドと回転摺動子と係合がさらに安定する。
【0012】
上記構成において、
前記支持壁93は、突起部91を有するように構成してもよい。
【0013】
上記構成において、
前記支持壁93の前記突起部91の少なくとも1つは、凹部911を有することを特徴とする。
【0014】
このような開閉装置とすることで、回転摺動子の強度の向上に寄与することができる。
また、回転摺動子の製造を容易化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造が容易なリッドの開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(A)は給油口に適用したフューエルリッド1を車外から見た斜視図、
図1(B)は車体に組み込まれたフューエルリッド1を背面(車内)側から見た斜視図であり、
図1(C)は閉じた状態のフューエルリッド1近傍の部分断面図、
図1(D)は開いた状態のフューエルリッド1近傍の部分断面図、
図1(E)はプッシュロッド5の係止部6と被係止部7との関係を示す平面図である。
【
図2】
図2(A)は開閉装置100の主要な構成要素であるプッシュロッド5近傍の分解斜視図、
図2(B)はプッシュロッド5の斜視図である。
【
図3】
図3(A)はプッシュロッド5の先端部と、プッシュロッド5の先端部に嵌め込まれる回転摺動子9とを示す斜視図であり、
図3(B)はプッシュロッド5に嵌め込まれた回転摺動子9近傍の断面図である。
【
図4】
図4はプッシュロッド5及び回転摺動子9の変形例を示す図であり、
図4(A)はプッシュロッド5及び回転摺動子9の斜視図、
図4(B)はプッシュロッド5と回転摺動子9との連結状態を示す断面図である。
【
図5】
図5(A)は回転摺動子9の上面図、
図5(B)は回転摺動子9の側面図であり、
図5(C)はメインボディー11の収容空間13の内壁面を模式的に示す断面図であり、
図5(D)は、収容空間13の内壁面の展開図であり、
図5(E)は内壁面の部分拡大図である。
【
図6】
図6は回転摺動子9とメインボディー11及び底部支持部12との関係を示す模式図である。
【
図7】
図7(A)は固定機構によりプッシュロッド5が固定されていない状態の開閉装置100を示す断面図であり、
図7(B)は固定機構によりプッシュロッド5が固定されている状態の開閉装置100を示す断面図である。
【
図8】
図8は、樹脂の射出成形により成形されたプッシュロッド5を金型から取り外す際に、プッシュロッド5の先端面に加わる応力を模式的に説明する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0018】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0019】
(構成)
以下、開閉装置100について、燃料給油口のフューエルリッド1(燃料補給口の蓋)への適用例を説明するが、給電用ポート等の動力源供給口のリッド(蓋)への適用も可能である。
図1(A)は給油口に適用したフューエルリッド1を車外から見た斜視図、
図1(B)は車体に組み込まれたフューエルリッド1を背面(車内)側から見た斜視図であり、
図1(C)は閉じた状態のフューエルリッド1近傍の部分断面図、
図1(D)は開いた状態のフューエルリッド1近傍の部分断面図、
図1(E)はプッシュロッド5の係止部6と被係止部7との関係を示す平面図である。
【0020】
図1(A)に示すように、フューエルリッド1(以下、単にリッド1と称す。)はヒンジ2により回動可能に支持され、閉じた状態では車体3に設けられたパネル開口部4(動力源供給口)を覆い液体の侵入を防ぐ。パネル開口部4の縁には、液密に封止するため、例えば樹脂製のパッキンが設けられている。
【0021】
開閉装置100は、ヒンジ2の反対側に設けられている。
開閉装置100は、延展及び縮退可能なプッシュロッド5を備え、プッシュロッド5は突出位置及び押込位置を交互に切替可能である。プッシュロッド5のリッド1側の先端部には、リッド1と係止可能な断面がT字形状の係止部6が設けられ、リッド1には、係止部6と協働する被係止部7が設けられている。被係止部7は被係止孔8(係合孔8)を備えている。
プッシュロッド5は、リッド1を固定し、閉状態の維持を可能とするとともに、リッド1の固定を解除し、リッド1の開放を可能とする。従って、プッシュロッド5はリッド1のロック機構を有する。
図1(C)はプッシュロッド5が縮退し、押込位置に位置する状態を示し、
図1(D)はプッシュロッド5が延展し、突出位置に位置する状態を示す。
【0022】
図1(C)に示すようにプッシュロッド5が押込位置に位置するとき、係止部6は
図1(E)の点線に示すように、係止部6の頭部6Hの長手方向と被係止孔8の長手方向とは互いに直交する。係止部6の頭部6Hは被係止孔8を通過することができず、係止部6はリッド1を係止する。そのため、リッド1は閉状態を維持する。
図1(D)に示すようにプッシュロッド5が突出位置に位置するとき、プッシュロッド5が90°回転する。
図1(E)の実線に示すように、係止部6の頭部6Hの長手方向と被係止孔8の長手方向とは平行になる。係止部6の頭部6Hの長手方向の長さ及びその垂直方向の長さは、それぞれ被係止孔8の長手方向及びその垂直方向の長さより短く、係止部6の頭部6Hは被係止孔8を通過可能となる。そのため、リッド1は開放可能な状態となる。
【0023】
図2(A)は開閉装置100の主要な構成要素であるプッシュロッド5近傍の分解斜視図、
図2(B)はプッシュロッド5の斜視図である。
開閉装置100は、プッシュロッド5、プッシュロッド5の端部に回転可能に連結される回転摺動子9、プッシュロッド5を延展し突出位置に位置するよう付勢力を与えるスプリング10、プッシュロッド5を収容し支持するメインボディー11(筐体部11)、メインボディー11に固定され、スプリング10の端部を支持する底部支持部12を備える。
メインボディー11は、プッシュロッド5を収容する断面が円形の収容空間13を有している。収容空間13は、液密に固定するためのシール部材14により封止されている。
シール部材14は、例えば樹脂製のパッキンと、ネジ山を有する円筒状の栓により構成し、メインボディー11にネジ固定すればよい。
プッシュロッド5及び回転摺動子9は、収容空間13内で回転可能であるとともに、収容空間13の長手方向に沿って進退可能である。
底部支持部12は、収容空間13の底部に配置され、メインボディー11に固定されている。底部支持部12は、プッシュロッド5を回転可能に支持し、さらにプッシュロッド5を介して回転摺動子9を回転可能に支持する。
プッシュロッド5は、一端に係止部6、他端に連結部51を有し、係止部6と連結部51との間に本体部16を有している。
【0024】
なお、後述するように、開閉装置100は、リッド1の閉状態を維持するために、プッシュロッド5を縮退した位置で固定し、移動を規制する固定部材15(ストッパ)、及び固定部材15を駆動するモータMを備えている(
図7参照)。
【0025】
プッシュロッド5は、係止部6の先端部にクッション20(緩衝部材20)を備える。クッション20は、リッド1の内壁面とプッシュロッド5との直接的な衝突を防止し、リッド1及びプッシュロッド5の損傷を防止する。
【0026】
プッシュロッド5は、その外壁面に螺旋状の回転ガイド部18(ガイド溝18)を備えている。
後述するように、回転ガイド部18は、収容空間13の内壁面に設けられたガイドピン30(回転ガイド突起30)との協働により、プッシュロッド5の延展及び縮退運動を回転運動に変換し、プッシュロッド5を回転させる。
【0027】
底部支持部12は、スプリング10を支持する円柱状のシャフト121(支持軸121)を備えるとともに、シャフト121の周りに回転摺動子9を回転させるための底部斜面122を備えている。底部支持部12、特に底部斜面122は、プッシュロッド5の上下運動を、回転摺動子9の回転運動に変換するカム機構を構成する。
シャフト121はプッシュロッド5に設けられた断面が円形の挿入孔50に挿入される。挿入孔50の中心軸とシャフト121の中心軸とは一致する。
挿入孔50の内壁はシャフト121の外壁と接触し、プッシュロッド5はシャフト121の周りに回転可能に支持されている。シャフト121の中心軸とプッシュロッド5の回転軸とは一致する。
【0028】
図2(A)に示すように、メインボディー11へのプッシュロッド5の組み付けは、メインボディー11に底部支持部12を固定し、収容空間13にスプリング10、回転摺動子9を連結したプッシュロッド5を挿入し、シール部材14で封止し、固定すればよく、組立作業は容易であり、作業者の負担は軽減される。
また、クッション20は、メインボディー11へのプッシュロッド5の組み付け後に係止部6に嵌め込んでもよく、またメインボディー11へのプッシュロッド5の組み付け前に係止部6に嵌め込んでもよい。
また、予めプッシュロッド5に回転摺動子9を連結した状態で、部品を保管管理してもよい。
【0029】
図3(A)は、プッシュロッド5の先端部と、プッシュロッド5の先端部に嵌め込まれる回転摺動子9とを示す斜視図であり、
図3(B)はプッシュロッド5に嵌め込まれた回転摺動子9近傍の断面図である。
図3(B)は、
図3(A)のA-A線断面に相当する。
【0030】
回転摺動子9は、中心に断面が円形の挿入部90(中空部90)を有し、周囲に突起部91(側部摺動ガイド部91)を有している。
【0031】
また、突起部91の1つには凹部911が設けられている。
回転摺動子9は、樹脂の射出成形により製造することができる。特に、複数の回転摺動子9を樹脂の射出成形により形成後に、個々の(1つ1つの)回転摺動子9に分割する場合、樹脂を注入する金型のゲートに対応する回転摺動子9の外側壁面に、不要な凸状部が発生することがある。この場合、収容空間13の内壁面と、回転摺動子9の外側壁面の不要な凸状部とが干渉することとなるため、不要な凸状部を研磨等により除去する必要がある。
しかし、射出成形の金型のゲートを回転摺動子9の外側壁面から突出している突起部91の側壁面に配置し、さらに、突起部91に設けられた凹部911の凹んだ壁面に金型のゲートを設けることで、ゲートに対応する箇所において不要な凸状部が発生しても、凸状部を凹部911内に収め、突起部91の外周壁面から突出しないように構成することができる。従って、凹部911は、樹脂成形後の金型のゲートに対応する箇所の研磨等の表面処理工程を不要とし、回転摺動子9の生産性を大きく向上させることができる。
【0032】
プッシュロッド5は先端に連結部51を有し、連結部51は回転摺動子9の挿入部90に挿入される。シャフト121は回転摺動子9の挿入部90及び連結部51の挿入孔50に挿入される。
回転摺動子9はフック部92(連結壁92)を有し、さらにフック部92の直径方向に対向する壁面部93(支持壁93)を有している。フック部92と壁面部93とはスリット94により分離されている。複数のフック部92及び複数の壁面部93は、それぞれ円周方向に等間隔に設けられている。
フック部92及び壁面部93は、回転摺動子9に設けられた円環状のベース部98に接続されている。ベース部98は、スリットがない円環であり、断面は連続して繋がった円環形状を有する。ベース部98の先端には、鋸波状部97(底部摺動ガイド部97)が設けられている。
フック部92、壁面部93及びベース部98の外壁面(外側表面)は、プッシュロッド5の本体部16の外側表面の直径と同一の直径の円に接するように構成されている。
なお、ベース部98は、連続して接触するフック部92及び壁面部93により構成されるとも解釈できる。
【0033】
突起部91は回転摺動子9の外壁面に設けられ、好適には、壁面部93とベース部98との境界の少なくとも一部を覆うように、すなわち壁面部93の外壁面の一部及び壁面部93に連続するベース部98の外壁面の一部と接するように設けられる(
図3(A)、
図5(B)参照)。突起部91は壁面部93の更なる高強度化に寄与することができる。
【0034】
図3(B)に示すようにフック部92は連結部51の連結溝52(凹部52)と係合する。
連結部51は、連結溝52のさらに先端に、第1の側壁部53と第2の側壁部54とを有している。第1の側壁部53と第2の側壁部54とは、プッシュロッド5の周方向に交互に配置されている。第1の側壁部53と第2の側壁部54とは互いに連続して配置されている。なお、「互いに連続して」とは、互いに隙間無く、すなわち接触していることを意味する。例えば、樹脂の射出成形等により第1の側壁部53と第2の側壁部54とを一体で形成することができる。
第1の側壁部53の外壁面53W(外側表面)は、プッシュロッド5の長手方向の回転軸φに平行であり、第2の側壁部54の外壁面54W(外側表面)は回転軸φに対して所定の角度θ1で傾斜し、プッシュロッド5の先端に向かうほど回転軸φに近づくように構成されている。
回転摺動子9のフック部92の先端の鉤状部921は、回転軸φに対して所定の角度θ2で傾斜する傾斜面95(連結ガイド面95)を有し、回転摺動子9の先端に向かうほど回転軸φから遠ざかるように構成されている。θ1、θ2は例えば20度~50度に設定され、好適にはθ1=θ2である。
第1の側壁部53の外周には壁面部93が配置され、第2の側壁部54の外周にはフック部92が配置されている。第1の側壁部53、第2の側壁部54、壁面部93及びフック部92の数は、限定するものではないが、好適には3である。壁面部93及びフック部92の数を3とすることで、シャフト121の周囲に均等に配置されるとともに、製造が容易となる。
【0035】
回転摺動子9をプッシュロッド5の連結部51に組み付ける工程において、第2の側壁部54の傾斜を有する外壁面54Wと鉤状部921の傾斜面95により、連結部51と回転摺動子9との係合がガイドされる。
図3(A)の矢印方向に連結部51を移動させると、鉤状部921の傾斜面95が第2の側壁部54の表面に接して移動するため、フック部92の先端の鉤状部921は回転軸から遠ざかる方向に弾性的に変位しながら連結部51の連結溝52へと進む。鉤状部921が連結溝52に到達すると、鉤状部921の変位は解消され、連結部51の外周から中心の回転軸へ向かう方向に移動する。フック部92の鉤状部921が連結溝52に嵌まり、フック部92の鉤状部921の車内側(図中下側)底面96Sと連結溝52の車内側側面56Sとが接触し、回転摺動子9が連結部51から抜け出ることを防止する。
一方、フック部92と異なり、壁面部93は組立工程において変位することがない。
【0036】
上述のように、連結部51において、回転摺動子9が外周からプッシュロッド5に係止する構成となり、回転摺動子9がプッシュロッド5と回転可能に連結する。
また、フック部92の末端壁92Sと壁面部93の末端壁93Sとは、連結溝52の側壁面55Sと対向する。リッド1が押圧されプッシュロッド5が車内側に移動すると、側壁面55Sが末端壁92S及び末端壁93Sを押圧し、プッシュロッド5とともに回転摺動子9が車内側に移動する。
【0037】
フック部92と直径方向に対向する壁面部93の内壁面93W(内側表面)は、第1の側壁部53の外壁面53Wと接触し、互いに面で接触することができる。なお、ここで、壁面部93の内壁面93Wは、壁面部93と連続するベース部98の内壁面を含む。
また、フック部92は、連結部51の(回転軸φと一致する)中心軸に近づく方向に凹んだ連結溝52の壁面と接するが、壁面部93及び連結部51の第1の側壁部53は、連結部51の中心軸から遠い位置で、互いに接触する。そのため、壁面部93と第1の側壁部53とは互いに安定して、広い面積で接触することができる。
このような壁面部93の内壁面93Wと第1の側壁部53の外壁面53Wとの接触は、回転摺動子9のプッシュロッド5との連結が一層安定する。
フック部92が直径方向の反対側に押圧する力は、壁面部93と第1の側壁部53とにより受け止められ、連結部51と回転摺動子9との間のがたつきも抑制される。
【0038】
また、壁面部93の内壁面93Wと第1の側壁部53の外壁面53Wは、回転軸φに平行であるため、連結部51を回転摺動子9に挿入する際において、壁面部93の内壁面93Wと第1の側壁部53の外壁面53Wとが接触することにより、連結部51と回転摺動子9との回転軸に平行な移動をガイドすることが可能である。
上記構成は、プッシュロッド5と回転摺動子9との組立を容易にする。
【0039】
図4はプッシュロッド5及び回転摺動子9の変形例を示す図であり、
図4(A)はプッシュロッド5及び回転摺動子9の斜視図、
図4(B)はプッシュロッド5と回転摺動子9との連結状態を示す断面図である。
図4(B)は、
図4(A)のA-A線断面に対応する。
プッシュロッド5の連結部51’は、スリット59で分離された連結爪57が設けられている。連結爪57の先端部58は鉤状に構成され、先端部58の外周壁には傾斜面が設けられている。
回転摺動子9は円筒形状の壁面99を有し、壁面99の内壁に連結爪57と係合する凸部991を有している。凸部991の内周壁のプッシュロッド5側には傾斜面が設けられている。
先端部58の傾斜面と凸部991の傾斜面とにより、連結部51’と回転摺動子9の凸部991との係合がガイドされる。
【0040】
図4に示される連結部51’と、
図2及び
図3に示される連結部51とを比較すると、連結部51’はスリットで分離された連結爪57で構成されているのに対し、連結部51は第1の側壁部53と第2の側壁部54とは分離されることなく連続して設けられている。そのため、連結部51の場合、シャフト121の全周囲は、第1の側壁部53と第2の側壁部54の内壁面により均等に囲まれている。例えば、リッド1の開閉操作時等において、非常に強い衝撃が加えられた場合でも、連結部51はシャフト121を均等に囲むため、連結部51’を有するプッシュロッド5と比較すると、連結部51を有するプッシュロッド5はシャフト121の周りをより安定にスムーズに回転しながら前後(図中上下)に移動することができる。その結果、連結部51の構成は、リッド1の開閉操作において、プッシュロッド5の負担が軽減される。
【0041】
(動作機構)
図5はプッシュロッド5の位置を、押込位置と突出位置とで交互に切り替える機構について説明する図である。
図5(A)は回転摺動子9の上面図、
図5(B)は回転摺動子9の側面図であり、
図5(C)はメインボディー11の収容空間13の内壁面を模式的に示す断面図であり、
図5(D)は、収容空間13の内壁面の展開図であり、
図5(E)は内壁面の部分拡大図である。
【0042】
図5(A)に示すように、プッシュロッド5の端部に連結されている
回転摺動子9は、円環形状であり外周壁に突起部91が設けられている。
図5(B)に示すように、突起部91は、上面側(プッシュロッド5側)に第1の側部摺動面S91a(上部摺動面)と突起部91の円周方向の両側に第2の側部摺動面S91bを備えている。
一方、
回転摺動子9は底部に鋸波状部97(底部摺動ガイド部97)を備え、鋸波状部97は底部摺動面S97(下部摺動面S97)を備えている。第1の側部摺動面S91aと底部摺動面S97とは、傾斜角が同じで互いに逆向きのテーパーを有する。
【0043】
図5(C)に示すようにメインボディー11の収容空間13の内壁面には、突起部91をガイドし、プッシュロッド5の位置の切替を可能にする溝状の切替ガイド21を備えている。
回転摺動子9の突起部91は、収容空間13の内部において切替ガイド21の壁面にガイドされて摺動し、プッシュロッド5は
回転摺動子9にガイドされて、回転軸に平行に移動する。
【0044】
図5(D)に示すように、切替ガイド21は押込ガイド部25と突出ガイド部26とを備える。
図5(D)、
図5(E)に示すように押込ガイド部25は、第1の押込ガイド摺動面S25aと第2の押込ガイド摺動面S25bとを有する二段の摺動面を備えている。第1の押込ガイド摺動面S25aと第2の押込ガイド摺動面S25bとは、
回転摺動子9の第1の側部摺動面S91aと同じ傾斜角を有している。第1の押込ガイド摺動面S25aと第2の押込ガイド摺動面S25bの境界には段差部STが存在し、段差部STの側壁面は突起部91の第2の側部摺動面S91bと平行である。
突出ガイド部26は、プッシュロッド5の長手方向(プッシュロッド5の移動方向)と平行な突出ガイド面S26aと停止面S26bを有している。突起部91の第2の側部摺動面S91bは突出ガイド面S26aに平行であり、第1の側部摺動面S91aは停止面S26bに平行である。
【0045】
図6は、回転摺動子9とメインボディー11及び底部支持部12との関係を示す模式図である。押込ガイド部25と底部支持部12とは互いに離隔している。
以下、
図6を参照し、プッシュロッド5に回転自在に連結された
回転摺動子9の動きについて説明する。図中S1-S10は、それぞれ
回転摺動子9の状態を示す。
以下では、S1からS10へと順に移行する各状態について説明する。
なお、視認性のため、符号は省略することがある。
【0046】
S1の状態:
プッシュロッド5は押込位置に位置し、回転摺動子9の突起部91の第1の側部摺動面S91aは第1の押込ガイド摺動面S25aに接している。
S2の状態:
操作者の手によってリッド1が押されると、プッシュロッド5及び回転摺動子9が移動する。回転摺動子9の底部摺動面S97は、底部支持部12の底部斜面122に接触する。
S3の状態:
底部摺動面S97と底部斜面122とは同じ傾斜角を有する。そのため、底部摺動面S97は底部斜面122に沿って摺動し、回転摺動子9は回転する。
S4の状態:
操作者がリッド1から手を離すと、スプリング10の付勢力により、プッシュロッド5が図中Y方向(突出方向)に移動し、回転摺動子9の第1の側部摺動面S91aが第2の押込ガイド摺動面S25bに当接する。
S5の状態:
第1の側部摺動面S91aと第2の押込ガイド摺動面S25bとは同じ傾斜角を有する。そのため、第1の側部摺動面S91aは第2の押込ガイド摺動面S25bに沿って摺動し、回転摺動子9が回転する。
S6の状態:
スプリング10の付勢力が回転摺動子9に付加され、第2の側部摺動面S91bが突出ガイド面S26aに沿って摺動し、回転摺動子9は図中Y方向(突出方向)に移動する。第1の側部摺動面S91aが停止面S26bに当接し、停止する。この状態で、プッシュロッド5は突出位置に位置する。
S7の状態:
操作者の手によってリッド1が押されると、プッシュロッド5及び回転摺動子9が移動する。回転摺動子9の底部摺動面S97は、底部支持部12の底部斜面122に当接する。
S8の状態:
S3と同様に、底部摺動面S97は底部斜面122に沿って摺動し、回転摺動子9は回転する。
S9の状態:
操作者がリッド1から手を離すと、スプリング10の付勢力によりプッシュロッド5が図中Y方向(突出方向)に移動し、回転摺動子9の第1の側部摺動面S91aが第1の押込ガイド摺動面S25aに当接する。
S10の状態:
回転摺動子9の第1の側部摺動面S91aと第1の押込ガイド摺動面S25aとは同じ傾斜角を有する。そのため、第1の側部摺動面S91aは第1の押込ガイド摺動面S25aに沿って摺動し、回転摺動子9が回転する。そして段差部STと突起部91の第2の側部摺動面S91bとが当接し、回転摺動子9の回転が停止する。S1の状態に戻る。
【0047】
このように、プッシュロッド5が図中Y方向に上下に移動すると、回転摺動子9は回転することになる。後述するように、プッシュロッド5の回転ガイド部18と収容空間13のガイドピン30との協働により、プッシュロッド5は図中Y方向に上下に移動するとともに回転する。
【0048】
(固定機構)
開閉装置100は、リッド1の閉状態を維持するため、プッシュロッド5の押込位置を維持、固定するための固定機構を備えている。
以下、
図7を参照し、固定機構について説明する。
図7はプッシュロッド5が押込位置に位置する状態の開閉装置100の断面図である。
図7(A)は固定機構によりプッシュロッド5が固定されていない状態を示す断面図であり、
図7(B)は固定機構によりプッシュロッド5が固定されている状態を示す断面図である。
【0049】
プッシュロッド5の固定機構は、主要構成要素として、固定部材15、モータMを含み、固定部材15は、プッシュロッド5の嵌合孔17に挿入される留め具151(固定ピン151)を有する。
プッシュロッド5の押込位置において、嵌合孔17は留め具51と対向し、留め具151と嵌合孔17は一直線上に配置される。
プッシュロッド5と留め具151との間のメインボディー11には貫通孔28が設けられている。
【0050】
メインボディー11の収容空間13の内壁面には、プッシュロッド5の回転ガイド部18と接触するガイドピン30が設けられている。
螺旋状の回転ガイド部18はガイドピン30に接しているため、プッシュロッド5が延展縮退(進退)すると、回転ガイド部18にガイドされて回転する。回転ガイド部18の形状は、押込位置において嵌合孔17が留め具151と対向するように調整されている。
【0051】
留め具151はモータMにより駆動され、嵌合孔17に挿脱可能である。
押込位置において嵌合孔17に留め具151が挿入されるとプッシュロッド5の回転及び移動(進退)が防止され、固定(ロック)される。留め具151が嵌合孔17から抜き出されるとプッシュロッド5の固定が解除され、プッシュロッド5の回転及び移動が可能となる。
このように、モータMを制御し、貫通孔28を介して留め具151を嵌合孔17に挿入及び抜き出しすることにより、プッシュロッド5の固定及び解除が可能となる。
【0052】
なお、固定部材15には操作レバー31を設け、操作者により手動で固定部材15を操作し、プッシュロッド5の固定又は解除を可能なように構成してもよい。
【0053】
なお、
図2、3で示されるような連結部51は、
図4に示す連結部51’と比較し、プッシュロッド5の射出成形を容易にする効果がある。
図8は、樹脂の射出成形により成形されたプッシュロッド5を金型から取り外す際に、プッシュロッド5の先端面に加わる応力を模式的に説明する拡大図である。
【0054】
射出成形によりプッシュロッド5を成形する場合、溶融された樹脂は、金型に注入後、冷却され固化される。この状態では、本体部16の外壁面は、金型の内壁面に密着した状態となる。プッシュロッド5を金型から取り外す場合、プッシュロッド5に対して長手方向の応力を加える必要がある。そのため、連結部51の先端面の受圧面22には、
図8中の矢印αに示される方向の応力が直接加わることになる。
さらに、本体部16は、螺旋状の回転ガイド部18を有するように構成されているため、受圧面22には、
図8中の矢印βに示されるような回転応力も加えられる。
【0055】
図4に示すように、プッシュロッド5の連結部51’がスリット59で分離された連結爪57で構成されている場合、α方向の応力に対する強度は低下し、破損するリスクが高くなる。さらに、連結部51’の先端の受圧面は周方向に完全に分離した不連続な構成であるため、β方向のねじれを発生させるような応力に対しても強度が低下し、破損するリスクが高くなる。このようなリスクは、プッシュロッド5の製造を困難にする。
【0056】
しかし、
図2、3で示されるような連結部51の場合には、このようなリスクを防止する効果があり、プッシュロッド5の製造を容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、開閉装置100の製造段階であるプッシュロッド5と回転摺動子9との組立工程が容易となり、さらに、プッシュロッド5の射出成形を容易とするため、開閉装置100の製造の容易化に寄与することができる。また、本開閉装置100は、給油口だけでなく充電ポートへの適用が可能である。そのため、本発明の産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0058】
100 開閉装置
1 フューエルリッド(リッド)
2 ヒンジ
3 車体
4 パネル開口部(動力源供給口)
5 プッシュロッド
51 連結部
50 挿入孔
52 凹部(連結溝)
53 第1の側壁部
53W 外壁面(外側表面)
54 第2の側壁部
54W 外壁面(外側表面)
56S 側面
6 係止部
6H 頭部
7 被係止部
8 被係止孔(係合孔)
9 回転摺動子
90 挿入部(中空部)
91 突起部(側部摺動ガイド部)
911 凹部
92 フック部(連結壁)
921 鉤状部
93 壁面部(支持壁)
93W内壁面(内側表面)
94 スリット
95 傾斜面(連結ガイド面)
96S 底面
S91a 第1の側部摺動面(上部摺動面)
S91b 第2の側部摺動面
97 鋸波状部(底部摺動ガイド部)
S97 底部摺動面(下部摺動面)
98 ベース部
99 壁面
991 凸部
10 スプリング
11 メインボディー(筐体部)
12 底部支持部
121 シャフト(支持軸)
122 底部斜面
13 収容空間
14 シール部材
15 固定部材
151 留め具(固定ピン)
16 本体部
17 嵌合孔
18 回転ガイド部(ガイド溝)
20 クッション20(緩衝部材)
21 切替ガイド
22 受圧面
25 押込ガイド部
S25a 第1の押込ガイド摺動面
S25b 第2の押込ガイド摺動面
26 突出ガイド部
S26a 突出ガイド面
S26b 停止面
28 貫通孔
30 ガイドピン(回転ガイド突起)
31 操作レバー
M モータ
ST 段差部