(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】磁気式エンコーダおよび測距装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
G01D5/245 110M
(21)【出願番号】P 2022061915
(22)【出願日】2022-04-01
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔡 永福
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-303537(JP,A)
【文献】特開2012-112897(JP,A)
【文献】特開2019-191037(JP,A)
【文献】特開2021-177164(JP,A)
【文献】特開2021-173542(JP,A)
【文献】特開2023-127413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 ~ 5/38
G01B 7/00 ~ 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向の磁界成分を含む対象磁界を発生する磁界発生器と、
前記対象磁界を検出するように構成された磁気センサとを備え、
前記磁気センサと前記磁界発生器は、前記磁気センサと前記磁界発生器の少なくとも一方が動作すると、基準位置における前記磁界成分の強度が変化するように構成され、
前記磁界発生器は、複数組のN極とS極が交互に配列された磁気スケールであり、
前記磁気センサは、それぞれ前記磁界成分の強度の変化に応じて抵抗値が変化するように構成された複数の抵抗体を含むと共に、それぞれ前記磁界成分の強度の変化に対応する第1の検出信号および第2の検出信号を生成するように構成され、
前記複数の抵抗体は、2つの抵抗体を含み、
前記2つの抵抗体のうちの一方の抵抗体の抵抗値は、前記第1の検出信号と対応関係を有し、
前記2つの抵抗体のうちの他方の抵抗体の抵抗値は、前記第2の検出信号と対応関係を有し、
前記一方の抵抗体と前記他方の抵抗体は、前記第1の検出信号の位相と前記第2の検出信号の位相が互いに異なるように、前記第1の方向において互いに異なる位置に配置され、
前記磁気スケールにおいて1つのS極を介して隣接する2つのN極の中心間距離を磁極ピッチとし、前記一方の抵抗体内における所定の位置と前記他方の抵抗体内における所定の位置の前記第1の方向における間隔の4倍を設計ピッチとしたときに、前記磁極ピッチは、前記設計ピッチよりも大きく、
前記第1および第2の検出信号の各々は、理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する理想成分と、それぞれ前記理想成分の高次の高調波に相当する複数の高調波成分とを含み、
前記複数の抵抗体は、前記複数の高調波成分のうち、少なくとも2次の高調波に相当する高調波成分が低減されるように構成され、
前記磁気センサは、更に、複数の磁気抵抗効果素子を備え、
前記複数の磁気抵抗効果素子の各々は、磁化固定層と、自由層と、前記磁化固定層と前記自由層の間に配置されたギャップ層とを含み、
前記磁化固定層は、方向が固定された第1の磁化を有し、
前記自由層は、前記第1の方向および前記第1の方向に直交する第2の方向の両方に平行な平面内において方向が変化可能な第2の磁化を有し、
前記磁化固定層、前記自由層および前記ギャップ層は、前記第1の方向および前記第2の方向に直交する第3の方向に積層され、
前記複数の抵抗体は、前記複数の磁気抵抗効果素子を用いて構成され、
前記複数の抵抗体のうちのいくつかにおける前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第1の方向に平行な一方向である第1の磁化方向の成分を含み、
前記複数の抵抗体のうちの他のいくつかにおける前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第1の磁化方向とは反対の第2の磁化方向の成分を含み、
前記磁気センサは、更に、電源ポートと、
グランドポートと、
第1の出力ポートと、
第2の出力ポートとを備え、
前記複数の抵抗体は、第1の抵抗体と、第2の抵抗体と、第3の抵抗体と、第4の抵抗体と、第5の抵抗体と、第6の抵抗体と、第7の抵抗体と、第8の抵抗体とを含み、
前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体は、前記電源ポートと前記第1の出力ポートとを接続する第1の経路に、前記電源ポート側からこの順に設けられ、
前記第3の抵抗体と前記第4の抵抗体は、前記グランドポートと前記第1の出力ポートとを接続する第2の経路に、前記グランドポート側からこの順に設けられ、
前記第5の抵抗体と前記第6の抵抗体は、前記グランドポートと前記第2の出力ポートとを接続する第3の経路に、前記グランドポート側からこの順に設けられ、
前記第7の抵抗体と前記第8の抵抗体は、前記電源ポートと前記第2の出力ポートとを接続する第4の経路に、前記電源ポート側からこの順に設けられ、
前記第1の方向における前記第1の抵抗体内の第1の位置と前記第2の抵抗体内の第2の位置との間隔と、前記第1の方向における前記第3の抵抗体内の第3の位置と前記第4の抵抗体内の第4の位置との間隔と、前記第1の方向における前記第5の抵抗体内の第5の位置と前記第6の抵抗体内の第6の位置との間隔と、前記第1の方向における前記第7の抵抗体内の第7の位置と前記第8の抵抗体内の第8の位置との間隔は、それぞれ、前記設計ピッチの1/2の奇数倍と等しく、
前記第1の方向における前記第1の位置と前記第3の位置との間隔と、前記第1の方向における前記第5の位置と前記第7の位置との間隔は、それぞれ、ゼロまたは前記設計ピッチの整数倍と等しく、
前記第1の方向における前記第1の位置と前記第5の位置との間隔は、前記設計ピッチの1/4と等しく、
前記第1、第4、第6および第7の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第1の磁化方向の成分を含み、
前記第2、第3、第5および第8の抵抗体における前記磁化固定層の前記第1の磁化は、前記第2の磁化方向の成分を含むことを特徴
とする磁気式エンコーダ。
【請求項2】
前記第1の位置は、前記第3の方向に平行な一方向から見たときの前記第1の抵抗体の重心であり、
前記第2の位置は、前記第3の方向に平行な一方向から見たときの前記第2の抵抗体の重心であり、
前記第3の位置は、前記第3の方向に平行な一方向から見たときの前記第3の抵抗体の重心であり、
前記第4の位置は、前記第3の方向に平行な一方向から見たときの前記第4の抵抗体の重心であり、
前記第5の位置は、前記第3の方向に平行な一方向から見たときの前記第5の抵抗体の重心であり、
前記第6の位置は、前記第3の方向に平行な一方向から見たときの前記第6の抵抗体の重心であり、
前記第7の位置は、前記第3の方向に平行な一方向から見たときの前記第7の抵抗体の重心であり、
前記第8の位置は、前記第3の方向に平行な一方向から見たときの前記第8の抵抗体の重心であることを特徴とする請求項
1記載の磁気式エンコーダ。
【請求項3】
前記第1の抵抗体と前記第3の抵抗体は、前記第2の方向において隣接し、
前記第2の抵抗体と前記第4の抵抗体は、前記第2の方向において隣接し、
前記第5の抵抗体と前記第7の抵抗体は、前記第2の方向において隣接し、
前記第6の抵抗体と前記第8の抵抗体は、前記第2の方向において隣接することを特徴とする請求項
1記載の磁気式エンコーダ。
【請求項4】
前記第1の抵抗体は、前記第7の抵抗体とは隣接するが、前記第8の抵抗体とは隣接せず、
前記第8の抵抗体は、前記第2の抵抗体とは隣接するが、前記第1の抵抗体とは隣接しないことを特徴とする請求項
1記載の磁気式エンコーダ。
【請求項5】
前記第3の抵抗体は、前記第7の抵抗体との間に前記第1の抵抗体を挟む位置に配置され、
前記第4の抵抗体は、前記第8の抵抗体との間に前記第2の抵抗体を挟む位置に配置され、
前記第5の抵抗体は、前記第1の抵抗体との間に前記第7の抵抗体を挟む位置に配置され、
前記第6の抵抗体は、前記第2の抵抗体との間に前記第8の抵抗体を挟む位置に配置されていることを特徴とする請求項
4記載の磁気式エンコーダ。
【請求項6】
前記複数の磁気抵抗効果素子の各々は、前記第1の方向と交差する方向のバイアス磁界が前記自由層に印加されるように構成されていることを特徴とする請求項
1記載の磁気式エンコーダ。
【請求項7】
前記ギャップ層は、トンネルバリア層であることを特徴とする請求項
1記載の磁気式エンコーダ。
【請求項8】
照射した光を検出することによって対象物までの距離を測定する測距装置であって、
前記光の進行方向を変化させると共に回転するように構成された光学素子と、
請求項1ないし
7のいずれかに記載の磁気式エンコーダとを備え、
前記磁界発生器は、前記光学素子と連動して回転軸を中心として回転するように構成され、
前記複数組のN極とS極は、前記回転軸の周りに交互に配列され、
前記基準位置における前記磁界成分の強度は、前記磁界発生器の回転に伴って変化することを特徴とする測距装置。
【請求項9】
前記磁界発生器は、前記回転軸に平行な一方向の端に位置する端面を有し、
前記複数組のN極とS極は、前記端面に設けられ、
前記磁気センサは、前記端面に対向するように配置されていることを特徴とする請求項
8記載の測距装置。
【請求項10】
前記磁界発生器は、前記回転軸から離れる方向に向いた外周面を有し、
前記複数組のN極とS極は、前記外周面に設けられ、
前記磁気センサは、前記外周面に対向するように配置されていることを特徴とする請求項
8記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界発生器と磁気センサとを備えた磁気式エンコーダ、および磁気式エンコーダを備えた測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサを用いた磁気式エンコーダは、所定の方向に位置が変化する可動物体の位置を検出するために用いられている。所定の方向は、直線的な方向または回転方向である。可動物体の位置を検出するために用いられる磁気式エンコーダは、可動物体の位置の変化に対応して、磁気スケール等の磁界発生器と磁気センサの少なくとも一方が動作するように構成されている。
【0003】
磁気センサと磁界発生器の少なくとも一方が動作すると、磁界発生器によって発生されて磁気センサに印加される対象磁界の一方向の成分の強度が変化する。磁気センサは、例えば、対象磁界の一方向の成分の強度を検出して、この一方向の成分の強度に対応し且つ互いに位相の異なる2つの検出信号を生成する。磁気式エンコーダは、2つの検出信号に基づいて、可動物体の位置と対応関係を有する検出値を生成する。
【0004】
磁気式エンコーダ用の磁気センサとしては、複数の磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサが用いられている。例えば、特許文献1,2には、磁気抵抗効果素子として、磁石および磁気センサの相対移動方向とこの相対移動方向に直交する方向に、複数のGMR(巨大磁気抵抗効果)素子を配置した磁気センサが開示されている。
【0005】
磁気式エンコーダ用の磁気センサでは、一般的に、互いに位相の異なる2つの検出信号を生成するために、一方の検出信号を生成するための第1の磁気抵抗効果素子群と、他方の検出信号を生成するための第2の磁気抵抗効果素子群を、一方向にずらして配置している。例えば、特許文献2に開示された磁気センサでは、複数のGMR素子によってA相のブリッジ回路とB相のブリッジ回路を構成している。この磁気センサでは、磁石のN極とS極との中心間距離(ピッチ)をλとしたときに、複数のGMR素子を、相対移動方向にλ、λ/2またはλ/4の中心間距離で配置している。A相のブリッジ回路とB相のブリッジ回路からは、位相がλ/2分だけずれた出力波形が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2009/031558号
【文献】国際公開第2009/119471号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示された磁気センサのように、第1の磁気抵抗効果素子群と第2の磁気抵抗効果素子群のずれ量は、使用する磁界発生器の磁極ピッチ(例えば、隣接する2つのN極の中心間距離)と対応関係を有している。磁極ピッチが上記のずれ量の4倍と等しいかほぼ等しい場合、検出信号に含まれる2次の高調波に相当する高調波成分が最も小さくなる。そのため、通常は、磁気式エンコーダの磁界発生器を、磁極のピッチが異なる磁界発生器に変更することは想定されていない。
【0008】
しかし、比較的大きな振動が発生する装置に適用される磁気式エンコーダでは、磁気センサと磁界発生器との衝突を防止するために、磁気センサと磁界発生器との間隔を大きくすることが求められる場合がある。磁界発生器の磁極ピッチを変えずに上記の間隔を大きくすると、磁気センサに印加される磁界が弱くなり、磁気センサの検出信号が小さくなることが懸念される。そのため、上記の場合には、磁極ピッチが大きい磁界発生器を用いることが望ましい。しかし、上記のずれ量すなわち磁気抵抗効果素子のピッチは簡単に変更することができないため、磁気抵抗効果素子のピッチを維持したまま、磁極ピッチが大きい磁界発生器と組み合わせて磁気センサを使用すると、磁気式エンコーダの検出値の誤差が大きくなる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、磁界発生器の磁極ピッチの違いに起因する誤差を低減できるようにした磁気式エンコーダ、およびこの磁気式エンコーダを備えた測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の磁気式エンコーダは、第1の方向の磁界成分を含む対象磁界を発生する磁界発生器と、対象磁界を検出するように構成された磁気センサとを備えている。磁気センサと磁界発生器は、磁気センサと磁界発生器の少なくとも一方が動作すると、基準位置における磁界成分の強度が変化するように構成されている。磁界発生器は、複数組のN極とS極が交互に配列された磁気スケールである。磁気センサは、それぞれ磁界成分の強度の変化に応じて抵抗値が変化するように構成された複数の抵抗体を含むと共に、それぞれ磁界成分の強度の変化に対応する第1の検出信号および第2の検出信号を生成するように構成されている。
【0011】
複数の抵抗体は、2つの抵抗体を含んでいる。2つの抵抗体のうちの一方の抵抗体の抵抗値は、第1の検出信号と対応関係を有している。2つの抵抗体のうちの他方の抵抗体の抵抗値は、第2の検出信号と対応関係を有している。一方の抵抗体と他方の抵抗体は、第1の検出信号の位相と第2の検出信号の位相が互いに異なるように、第1の方向において互いに異なる位置に配置されている。磁気スケールにおいて1つのS極を介して隣接する2つのN極の中心間距離を磁極ピッチとし、一方の抵抗体内における所定の位置と他方の抵抗体内における所定の位置の第1の方向における間隔の4倍を設計ピッチとしたときに、磁極ピッチは、設計ピッチよりも大きい。
【0012】
第1および第2の検出信号の各々は、理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する理想成分と、それぞれ理想成分の高次の高調波に相当する複数の高調波成分とを含んでいる。複数の抵抗体は、複数の高調波成分のうち、少なくとも2次の高調波に相当する高調波成分が低減されるように構成されている。
【0013】
本発明の磁気式エンコーダにおいて、磁極ピッチは、設計ピッチの1.1倍よりも大きくてもよい。また、磁極ピッチは、設計ピッチの1.25倍よりも大きく、設計ピッチの1.75倍よりも小さくてもよい。
【0014】
また、本発明の磁気式エンコーダにおいて、磁気センサは、更に、電源ポートと、グランドポートと、第1の出力ポートと、第2の出力ポートとを備えていてもよい。複数の抵抗体は、第1の抵抗体と、第2の抵抗体と、第3の抵抗体と、第4の抵抗体と、第5の抵抗体と、第6の抵抗体と、第7の抵抗体と、第8の抵抗体とを含んでいてもよい。第1の抵抗体と第2の抵抗体は、電源ポートと第1の出力ポートとを接続する第1の経路に、電源ポート側からこの順に設けられていてもよい。第3の抵抗体と第4の抵抗体は、グランドポートと第1の出力ポートとを接続する第2の経路に、グランドポート側からこの順に設けられていてもよい。第5の抵抗体と第6の抵抗体は、グランドポートと第2の出力ポートとを接続する第3の経路に、グランドポート側からこの順に設けられていてもよい。第7の抵抗体と第8の抵抗体は、電源ポートと第2の出力ポートとを接続する第4の経路に、電源ポート側からこの順に設けられていてもよい。
【0015】
第1の方向における第1の抵抗体内の第1の位置と第2の抵抗体内の第2の位置との間隔と、第1の方向における第3の抵抗体内の第3の位置と第4の抵抗体内の第4の位置との間隔と、第1の方向における第5の抵抗体内の第5の位置と第6の抵抗体内の第6の位置との間隔と、第1の方向における第7の抵抗体内の第7の位置と第8の抵抗体内の第8の位置との間隔は、それぞれ、設計ピッチの1/2の奇数倍と等しくてもよい。第1の方向における第1の位置と第3の位置との間隔と、第1の方向における第5の位置と第7の位置との間隔は、それぞれ、ゼロまたは設計ピッチの整数倍と等しくてもよい。第1の方向における第1の位置と第5の位置との間隔は、設計ピッチの1/4と等しくてもよい。
【0016】
磁気センサは、更に、複数の磁気抵抗効果素子を備えていてもよい。複数の磁気抵抗効果素子の各々は、磁化固定層と、自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置されたギャップ層とを含んでいてもよい。磁化固定層は、方向が固定された第1の磁化を有していてもよい。自由層は、第1の方向および第1の方向に直交する第2の方向の両方に平行な平面内において方向が変化可能な第2の磁化を有していてもよい。磁化固定層、自由層およびギャップ層は、第1の方向および第2の方向に直交する第3の方向に積層されていてもよい。第1ないし第8の抵抗体は、複数の磁気抵抗効果素子を用いて構成されていてもよい。第1、第4、第6および第7の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第1の方向に平行な一方向である第1の磁化方向の成分を含んでいてもよい。第2、第3、第5および第8の抵抗体における磁化固定層の第1の磁化は、第1の磁化方向とは反対の第2の磁化方向の成分を含んでいてもよい。
【0017】
複数の抵抗体が第1ないし第8の抵抗体を含む場合、第1の位置は、第3の方向に平行な一方向から見たときの第1の抵抗体の重心であってもよい。第2の位置は、第3の方向に平行な一方向から見たときの第2の抵抗体の重心であってもよい。第3の位置は、第3の方向に平行な一方向から見たときの第3の抵抗体の重心であってもよい。第4の位置は、第3の方向に平行な一方向から見たときの第4の抵抗体の重心であってもよい。第5の位置は、第3の方向に平行な一方向から見たときの第5の抵抗体の重心であってもよい。第6の位置は、第3の方向に平行な一方向から見たときの第6の抵抗体の重心であってもよい。第7の位置は、第3の方向に平行な一方向から見たときの第7の抵抗体の重心であってもよい。第8の位置は、第3の方向に平行な一方向から見たときの第8の抵抗体の重心であってもよい。
【0018】
また、複数の抵抗体が第1ないし第8の抵抗体を含む場合、第1の抵抗体と第3の抵抗体は、第2の方向において隣接してもよい。第2の抵抗体と第4の抵抗体は、第2の方向において隣接してもよい。第5の抵抗体と第7の抵抗体は、第2の方向において隣接してもよい。第6の抵抗体と第8の抵抗体は、第2の方向において隣接してもよい。
【0019】
また、複数の抵抗体が第1ないし第8の抵抗体を含む場合、第1の抵抗体は、第7の抵抗体とは隣接するが、第8の抵抗体とは隣接しなくてもよい。第8の抵抗体は、第2の抵抗体とは隣接するが、第1の抵抗体とは隣接しなくてもよい。また、第3の抵抗体は、第7の抵抗体との間に第1の抵抗体を挟む位置に配置されていてもよい。第4の抵抗体は、第8の抵抗体との間に第2の抵抗体を挟む位置に配置されていてもよい。第5の抵抗体は、第1の抵抗体との間に第7の抵抗体を挟む位置に配置されていてもよい。第6の抵抗体は、第2の抵抗体との間に第8の抵抗体を挟む位置に配置されていてもよい。
【0020】
磁気センサが複数の磁気抵抗効果素子を備えている場合、複数の磁気抵抗効果素子の各々は、第1の方向と交差する方向のバイアス磁界が自由層に印加されるように構成されていてもよい。ギャップ層は、トンネルバリア層であってもよい。
【0021】
また、本発明の磁気式エンコーダにおいて、磁界発生器は、回転軸を中心として回転するように構成されると共に、回転軸に平行な一方向の端に位置する端面を有していてもよい。複数組のN極とS極は、回転軸の周りに交互に配列されると共に端面に設けられていてもよい。基準位置における磁界成分の強度は、磁界発生器の回転に伴って変化してもよい。磁気センサは、端面に対向するように配置されていてもよい。磁界発生器は、対象物までの距離を測定するための光の進行方向を変化させる光学素子と連動して回転するように構成されていてもよい。
【0022】
また、本発明の磁気式エンコーダにおいて、磁界発生器は、回転軸を中心として回転するように構成されると共に、回転軸から離れる方向に向いた外周面を有していてもよい。複数組のN極とS極は、回転軸の周りに交互に配列されると共に外周面に設けられていてもよい。基準位置における磁界成分の強度は、磁界発生器の回転に伴って変化してもよい。磁気センサは、外周面に対向するように配置されていてもよい。また、磁界発生器は、対象物までの距離を測定するための光の進行方向を変化させる光学素子と連動して回転するように構成されていてもよい。
【0023】
本発明の測距装置は、照射した光を検出することによって対象物までの距離を測定する測距装置である。測距装置は、光の進行方向を変化させると共に回転するように構成された光学素子と、本発明の磁気式エンコーダとを備えている。磁界発生器は、光学素子と連動して回転軸を中心として回転するように構成されている。複数組のN極とS極は、回転軸の周りに交互に配列されている。基準位置における磁界成分の強度は、磁界発生器の回転に伴って変化する。
【0024】
本発明の測距装置において、磁界発生器は、回転軸に平行な一方向の端に位置する端面を有していてもよい。この場合、複数組のN極とS極は、端面に設けられていてもよい。磁気センサは、端面に対向するように配置されていてもよい。あるいは、磁界発生器は、回転軸から離れる方向に向いた外周面を有していてもよい。この場合、複数組のN極とS極は、外周面に設けられていてもよい。磁気センサは、外周面に対向するように配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の磁気式エンコーダおよび測距装置では、複数の抵抗体は、複数の高調波成分のうち、少なくとも2次の高調波に相当する高調波成分が低減されるように構成されている。これにより、本発明によれば、磁界発生器の磁極ピッチの違いに起因する誤差を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る測距装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る磁気式エンコーダを示す正面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る磁気センサを示す平面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態に係る磁気センサの構成を示す回路図である。
【
図7】本発明の一実施の形態における第1ないし第8の抵抗体の配置を説明するための説明図である。
【
図8】本発明の一実施の形態における第1の抵抗体を示す平面図である。
【
図9】本発明の一実施の形態における磁気抵抗効果素子の第1の例を示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施の形態における磁気抵抗効果素子の第2の例を示す斜視図である。
【
図12】比較例の磁気センサの構成を示す回路図である。
【
図13】シミュレーションによって求めた比較例のモデルの振幅比を示す特性図である。
【
図14】シミュレーションによって求めた実施例のモデルの振幅比を示す特性図である。
【
図15】シミュレーションによって求めた比較例のモデルと実施例のモデルの各々の検出値の誤差を示す特性図である。
【
図16】本発明の一実施の形態に係る磁気式エンコーダの変形例における磁界発生器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1を参照して、本実施の形態に係る測距装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る測距装置401を示す斜視図である。
【0028】
図1に示した測距装置401は、照射した光を検出することによって対象物までの距離を測定する装置であり、例えば車載用のLIDAR(Light Detection And Ranging)の一部を構成する。
図1に示した例では、測距装置401は、光電ユニット411と、光学素子412と、図示しない駆動装置とを備えている。
【0029】
光電ユニット411は、光411aを照射する光学素子と、対象物からの反射光411bを検出する検出素子とを含んでいる。光学素子412は、例えば、支持体413によって支持されたミラーであってもよい。光学素子412は、光411aおよび反射光411bの各々の進行方向を変化させるように、光学素子の出射面に対して傾斜している。また、光学素子412は、図示しない駆動装置によって、所定の回転軸を中心として回転するように構成されている。
【0030】
本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1は、光学素子412の回転位置を検出するための位置検出装置として用いられる。以下、
図2ないし
図4を参照して、磁気式エンコーダ1の概略の構成について説明する。
図2は、磁気式エンコーダ1を示す斜視図である。
図3は、磁気式エンコーダ1を示す平面図である。
図4は、磁気式エンコーダ1を示す正面図である。
【0031】
本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1は、磁気センサ2と、磁界発生器3とを備えている。磁界発生器3は、回転軸Cを中心として、
図1に示した光学素子412と連動して回転するように構成されている。
【0032】
磁界発生器3は、位置検出用の磁界であって、磁気センサ2が検出すべき磁界(検出対象磁界)である対象磁界MFを発生する。対象磁界MFは、仮想の直線に平行な方向の磁界成分を含んでいる。磁気センサ2と磁界発生器3は、磁気センサ2と磁界発生器3の少なくとも一方が動作すると、基準位置における磁界成分の強度が変化するように構成されている。基準位置は、磁気センサ2が配置された位置であってもよい。磁気センサ2は、上記の磁界成分を含む対象磁界MFを検出して、それぞれ磁界成分の強度に対応する第1および第2の検出信号を生成する。
【0033】
本実施の形態では特に、磁界発生器3は、複数組のN極とS極が回転軸Cの周りに交互に配列された磁気スケール(回転スケール)である。磁界発生器3は、回転軸Cに平行な一方向の端に位置する端面3aを有している。複数組のN極とS極は、端面3aに設けられている。
図2および
図3では、理解を容易にするために、N極にハッチングを付している。
図4では、理解を容易にするために、複数組のN極とS極で磁界発生器3を模式的に示している。磁気センサ2は、端面3aに対向するように配置されている。基準位置、例えば磁気センサ2が配置された位置における磁界成分MFxの強度は、磁界発生器3の回転に伴って変化する。
【0034】
図4に示したように、磁界発生器3の回転方向に隣接する2つのN極の間隔、すなわち1つのS極を介して隣接する2つのN極の中心間距離を磁極ピッチと言い、磁極ピッチの大きさを記号λmで表す。1つのN極を介して隣接する2つのS極の中心間距離は、磁極ピッチλmと等しい。
【0035】
ここで、
図4に示したように、X方向、Y方向およびZ方向を定義する。本実施の形態では、回転軸Cに直交する2つの方向をX方向とY方向とし、回転軸Cに平行な一方向であって磁気センサ2から磁界発生器3に向かう方向をZ方向とする。また、Y方向を、磁気センサ2から回転軸Cに向かう方向とする。
図4では、Y方向を
図4における手前から奥に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。
【0036】
磁気センサ2は、磁界発生器3に対して-Z方向に離れた位置に配置されている。磁気センサ2は、対象磁界MFのX方向に平行な方向の磁界成分MFxの強度を検出することができるように構成されている。磁界成分MFxの強度は、例えば、磁界成分MFxの方向がX方向のときに正の値で表され、磁界成分MFxの方向が-X方向のときに負の値で表される。磁界発生器3が回転すると、磁界成分MFxの強度は、周期的に変化する。X方向に平行な方向は、本発明における「第1の方向」に対応する。
【0037】
次に、
図5および
図6を参照して、磁気センサ2について詳しく説明する。
図5は、磁気センサ2を示す平面図である。
図6は、磁気センサ2の構成を示す回路図である。
図6に示したように、磁気式エンコーダ1は、更に、検出値生成回路4を備えている。検出値生成回路4は、磁気センサ2が生成する、磁界成分MFxの強度に対応する第1の検出信号S1および第2の検出信号S2に基づいて、磁界発生器3の回転位置すなわち光学素子412の回転位置と対応関係を有する検出値Vsを生成する。検出値生成回路4は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはマイクロコンピュータによって実現することができる。
【0038】
磁気センサ2は、それぞれ磁界成分MFxの強度に応じて抵抗値が変化するように構成された第1の抵抗体R11、第2の抵抗体R12、第3の抵抗体R13、第4の抵抗体R14、第5の抵抗体R21、第6の抵抗体R22、第7の抵抗体R23および第8の抵抗体R24を備えている。また、磁気センサ2は、複数の磁気抵抗効果素子(以下、MR素子と記す。)50を備えている。第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24の各々は、複数のMR素子50を用いて構成されている。
【0039】
磁気センサ2は、更に、電源ポートV1と、グランドポートG1と、第1の出力ポートE1と、第2の出力ポートE2とを備えている。グランドポートG1はグランドに接続される。第1および第2の出力ポートE1,E2は、検出値生成回路4に接続されている。磁気センサ2は、定電圧駆動であってもよいし、定電流駆動であってもよい。磁気センサ2が定電圧駆動である場合、電源ポートV1には、所定の大きさの電圧が印加される。磁気センサ2が定電流駆動である場合、電源ポートV1には、所定の大きさの電流が供給される。
【0040】
磁気センサ2は、第1の出力ポートE1の電位と対応関係を有する信号を、第1の検出信号S1として生成し、第2の出力ポートE2の電位と対応関係を有する信号を、第2の検出信号S2として生成する。検出値生成回路4は、第1および第2の検出信号S1,S2に基づいて、検出値Vsを生成する。なお、磁気センサ2および検出値生成回路4の少なくとも一方は、第1および第2の検出信号S1,S2の各々の振幅、位相およびオフセットを補正することができるように構成されていてもよい。
【0041】
第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24は、回路構成上の配置に関する以下の要件を満たしている。第1の抵抗体R11と第2の抵抗体R12は、電源ポートV1と第1の出力ポートE1とを接続する第1の経路5に、電源ポートV1側からこの順に設けられている。第3の抵抗体R13と第4の抵抗体R14は、グランドポートG1と第1の出力ポートE1とを接続する第2の経路6に、グランドポートG1側からこの順に設けられている。第5の抵抗体R21と第6の抵抗体R22は、グランドポートG1と第2の出力ポートE2とを接続する第3の経路7に、グランドポートG1側からこの順に設けられている。第7の抵抗体R23と第8の抵抗体R24は、電源ポートV1と第2の出力ポートE2とを接続する第4の経路8に、電源ポートV1側からこの順に設けられている。
【0042】
図5に示したように、磁気センサ2は、更に、基板10と、この基板10の上に配置された電源端子11、グランド端子12、第1の出力端子13および第2の出力端子14とを備えている。電源端子11は、電源ポートV1を構成する。グランド端子12は、グランドポートG1を構成する。第1および第2の出力端子13,14は、それぞれ第1および第2の出力ポートE1,E2を構成する。
【0043】
次に、
図7を参照して、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24の配置について説明する。
図7は、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24の配置を説明するための説明図である。第1ないし第4の抵抗体R11~R14の各々の抵抗値は、第1の検出信号S1と対応関係を有している。第5ないし第8の抵抗体R21~R24の各々の抵抗値は、第2の検出信号S2と対応関係を有している。第1ないし第4の抵抗体R11~R14の組と第5ないし第8の抵抗体R21~R24の組は、第1の検出信号S1の位相と第2の検出信号S2の位相が互いに異なるように、X方向に平行な方向において互いに異なる位置に配置されている。
【0044】
図7において、符号C11は、第1の抵抗体R11内の第1の位置を示し、符号C12は、第2の抵抗体R12内の第2の位置を示し、符号C13は、第3の抵抗体R13内の第3の位置を示し、符号C14は、第4の抵抗体R14内の第4の位置を示している。第1ないし第4の位置C11~C14は、それぞれ第1ないし第4の抵抗体R11~R14の物理的な位置を特定するための位置である。本実施の形態では特に、第1の位置C11は、Z方向から見たとき、すなわち磁気センサ2に対してZ方向の先にある位置から磁気センサ2を見たときの第1の抵抗体R11の重心である。また、第2の位置C12は、Z方向から見たときの第2の抵抗体R12の重心であり、第3の位置C13は、Z方向から見たときの第3の抵抗体R13の重心であり、第4の位置C14は、Z方向から見たときの第4の抵抗体R14の重心である。
【0045】
また、
図7において、符号C21は、第5の抵抗体R21内の第5の位置を示し、符号C22は、第6の抵抗体R22内の第6の位置を示し、符号C23は、第7の抵抗体R23内の第7の位置を示し、符号C24は、第8の抵抗体R24内の第8の位置を示している。第5ないし第8の位置C21~C24は、それぞれ第5ないし第8の抵抗体R21~R24の物理的な位置を特定するための位置である。本実施の形態では特に、第5の位置C21は、Z方向から見たときの第5の抵抗体R21の重心であり、第6の位置C22は、Z方向から見たときの第6の抵抗体R22の重心であり、第7の位置C23は、Z方向から見たときの第7の抵抗体R23の重心であり、第8の位置C24は、Z方向から見たときの第8の抵抗体R24の重心である。
【0046】
ここで、設計ピッチλsを以下のように定義する。設計ピッチλsは、第1の抵抗体R11内における所定の位置と第5の抵抗体R21内における所定の位置の、X方向に平行な方向における間隔の4倍である。本実施の形態では特に、第1の抵抗体R11内における所定の位置は第1の位置C11であり、第5の抵抗体R21内における所定の位置は第5の位置C21である。
【0047】
また、本実施の形態では特に、X方向に平行な方向における第1の位置C11と第5の位置C21との間隔と、X方向に平行な方向における第2の位置C12と第6の位置C22との間隔と、X方向に平行な方向における第3の位置C13と第7の位置C23との間隔と、X方向に平行な方向における第4の位置C14と第8の位置C24との間隔は、互いに等しい。従って、第1および第5の抵抗体R11,R21の組の代わりに、第2および第6の抵抗体R12,R22の組、第3および第7の抵抗体R13,R23の組、または第4および第8の抵抗体R14,R24の組を用いて、設計ピッチλsを定義することもできる。
【0048】
図4に示した磁極ピッチλmは、設計ピッチλsよりも大きい。磁極ピッチλmは、設計ピッチλsの1.1倍よりも大きいことが好ましく、設計ピッチλsの1.25倍よりも大きく、設計ピッチλsの1.75倍よりも小さいことが好ましい。
【0049】
ここで、本実施の形態における磁界発生器3とは異なる仮想の磁界発生器を想定する。仮想の磁界発生器の構成は、その磁極ピッチが磁界発生器3の磁極ピッチλmと異なる点を除いて、磁界発生器3の構成と同じである。仮想の磁界発生器の磁極ピッチは、設計ピッチλsと等しい。従って、磁極ピッチλmは、仮想の磁界発生器の磁極ピッチよりも大きい。磁界発生器3を仮想の磁界発生器に置き換えた場合、第1の検出信号S1と第2の検出信号S2の位相差は、90°になる。第1ないし第4の抵抗体R11~R14の組と第5ないし第8の抵抗体R21~R24の組は、磁界発生器3を仮想の磁界発生器に置き換えた場合に、第1の検出信号S1と第2の検出信号S2の位相差が90°になるように、X方向に平行な方向において互いに異なる位置に配置されている。
【0050】
第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24は、物理的な配置に関する以下の要件を満たしている。X方向に平行な方向における第1の位置C11と第2の位置C12との間隔と、X方向に平行な方向における第3の位置C13と第4の位置C14との間隔と、X方向に平行な方向における第5の位置C21と第6の位置C22との間隔と、X方向に平行な方向における第7の位置C23と第8の位置C24との間隔は、それぞれ、設計ピッチλsの1/2の奇数倍と等しい。X方向に平行な方向における第1の位置C11と第3の位置C13との間隔と、X方向に平行な方向における第5の位置C21と第7の位置C23との間隔は、それぞれ、ゼロまたは設計ピッチλsの整数倍と等しい。X方向に平行な方向における第1の位置C11と第5の位置C21との間隔は、設計ピッチλsの1/4と等しい。
【0051】
本実施の形態では、第2の位置C12は、第1の位置C11に対して、X方向にλs/2だけ離れた位置であり、第4の位置C14は、第3の位置C13に対して、X方向にλs/2だけ離れた位置である。また、X方向に平行な方向における第1の位置C11と第3の位置C13との間隔はゼロである。すなわち、X方向に平行な方向における第3の位置C13は、同方向における第1の位置C11と同じである。第3の位置C13は、第1の位置C11に対して-Y方向の先にある。また、X方向に平行な方向における第4の位置C14は、同方向における第2の位置C12と同じである。第4の位置C14は、第2の位置C12に対して-Y方向の先にある。
【0052】
第5ないし第8の抵抗体R21~R24は、第1ないし第4の抵抗体R11~R14に対して、Y方向の先に配置されている。第5ないし第8の抵抗体R21~R24の物理的な配置は、第1ないし第4の抵抗体R11~R14の物理的な配置と同様である。第1ないし第4の抵抗体R11~R14の物理的な配置の説明中の第1ないし第4の抵抗体R11~R14および第1ないし第4の位置C11~C14を、それぞれ第5ないし第8の抵抗体R21~R24および第5ないし第8の位置C21~C24に置き換えれば、第5ないし第8の抵抗体R21~R24の物理的な配置の説明になる。
【0053】
また、本実施の形態では、第5の位置C21(第7の位置C23)は、第1の位置C11(第3の位置C13)に対して、λs/4だけX方向の先にある。第6の位置C22(第8の位置C24)は、第2の位置C12(第4の位置C14)に対して、λs/4だけX方向の先にある。
【0054】
第1の抵抗体R11は、第7の抵抗体R23とは隣接するが、第8の抵抗体R24とは隣接しない。第8の抵抗体R24は、第2の抵抗体R12とは隣接するが、第1の抵抗体R11とは隣接しない。
【0055】
第3の抵抗体R13は、第7の抵抗体R23との間に第1の抵抗体R11を挟む位置に配置されている。第4の抵抗体R14は、第8の抵抗体R24との間に第2の抵抗体R12を挟む位置に配置されている。第5の抵抗体R21は、第1の抵抗体R11との間に第7の抵抗体R23を挟む位置に配置されている。第6の抵抗体R22は、第2の抵抗体R12との間に第8の抵抗体R24を挟む位置に配置されている。
【0056】
次に、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24の構成について説明する。第1および第2の検出信号S1,S2の各々は、理想的な正弦曲線(サイン(Sine)波形とコサイン(Cosine)波形を含む)を描くように所定の信号周期で周期的に変化する理想成分を含んでいる。本実施の形態では、第1の検出信号S1の理想成分の位相と第2の検出信号S2の理想成分の位相が、互いに異なるように、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24が構成されている。
図7に示した設計ピッチλsは、前述の仮想の磁界発生器を使用したときの理想成分における1周期すなわち電気角の360°に相当する。本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1では、磁極ピッチがλmの磁界発生器3が使用される。この磁界発生器3を使用した場合、磁極ピッチλmが、理想成分における1周期(電気角の360°)に相当する。すなわち、理想成分の周期はλmとなる。
【0057】
また、第1および第2の検出信号S1,S2の各々は、理想成分の他に、それぞれ理想成分の高次の高調波に相当する複数の高調波成分を含んでいる。本実施の形態では、複数の高調波成分が低減されるように、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24が構成されている。
【0058】
以下、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24の構成について具体的に説明する。始めに、MR素子50の構成について説明する。本実施の形態では、MR素子50は、スピンバルブ型のMR素子である。このスピンバルブ型のMR素子は、磁化固定層と、自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置されたギャップ層とを含んでいる。磁化固定層は、方向が固定された第1の磁化を有している。自由層は、X方向に平行な方向およびY方向に平行な方向の両方に平行な平面内(XY平面内)において方向が変化可能な第2の磁化を有している。磁化固定層、自由層およびギャップ層は、Z方向に平行な方向に積層されている。Y方向に平行な方向は、本発明における「第2の方向」に対応する。Z方向に平行な方向は、本発明における「第3の方向」に対応する。
【0059】
スピンバルブ型のMR素子は、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよい。本実施の形態では特に、磁気センサ2の寸法を小さくするために、MR素子50は、TMR素子であることが好ましい。TMR素子では、ギャップ層はトンネルバリア層である。GMR素子では、ギャップ層は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。
【0060】
図5および
図6において、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24内に描かれた矢印は、その抵抗体に含まれる複数のMR素子50の各々の磁化固定層の第1の磁化の方向を表している。
【0061】
第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24は、磁化固定層の磁化に関する以下の要件を満たしている。第1および第4の抵抗体R11,R14における磁化固定層の第1の磁化は、前述の第1の方向(X方向に平行な方向)に平行な一方向である第1の磁化方向の成分を含んでいる。第2および第3の抵抗体R12,R13における磁化固定層の第1の磁化は、第1の磁化方向とは反対の第2の磁化方向の成分を含んでいる。第5および第8の抵抗体R21,R24における磁化固定層の第1の磁化は、第2の磁化方向の成分を含んでいる。第6および第7の抵抗体R22,R23における磁化固定層の第1の磁化は、第1の磁化方向の成分を含んでいる。本実施の形態では特に、第1の磁化方向は-X方向であり、第2の磁化方向はX方向である。
【0062】
なお、第1の磁化が特定の磁化方向の成分を含んでいる場合、特定の磁化方向の成分は、第1の磁化の主成分であってもよい。あるいは、第1の磁化は、特定の磁化方向に直交する方向の成分を含んでいなくてもよい。本実施の形態では、第1の磁化が特定の磁化方向の成分を含んでいる場合、第1の磁化の方向は、特定の磁化方向またはほぼ特定の磁化方向になる。
【0063】
複数のMR素子50の各々の自由層の第2の磁化の方向は、磁界成分MFxの強度に応じて、XY平面内で変化する。これにより、第1および第2の出力ポートE1,E2の各々の電位は、磁界成分MFxの強度に応じて変化する。
【0064】
次に、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24の各々における複数のMR素子50の配置について説明する。ここで、1つ以上のMR素子50の集合を、素子群という。第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24の各々は、複数の素子群を含んでいる。複数の素子群は、誤差成分が低減されるように、設計ピッチλsに基づいて、所定の間隔を開けて配置されている。なお、以下の説明において、複数の素子群の配置について説明する場合、素子群の所定の位置を基準にして説明するものとする。所定の位置は、例えば、Z方向から見たときの素子群の重心である。
【0065】
図8は、第1の抵抗体R11を示す平面図である。
図8に示したように、第1の抵抗体R11は、8つの素子群31,32,33,34,35,36,37,38を含んでいる。素子群31~38の各々は、4つの区画に区分けされている。各区画には、1つ以上のMR素子50が配置される。従って、各素子群は、4つ以上のMR素子50を含んでいる。複数のMR素子50は、素子群内において直列に接続されていてもよい。この場合、複数の素子群は、直列に接続されていてもよい。あるいは、複数のMR素子50は、素子群に関わらずに直列に接続されていてもよい。
【0066】
図8では、前述の仮想の磁界発生器を使用した場合に、理想成分の第3高調波(3次の高調波)に相当する高調波成分と、理想成分の第5高調波(5次の高調波)に相当する高調波成分と、理想成分の第7高調波(7次の高調波)に相当する高調波成分が低減されるように、素子群31~38が配置されている。
図8に示したように、素子群31~34は、X方向に沿って配置されている。素子群32は、素子群31に対して、X方向にλs/10だけ離れた位置に配置されている。素子群33は、素子群31に対して、X方向にλs/6だけ離れた位置に配置されている。素子群34は、素子群31に対して、X方向にλs/10+λs/6だけ離れた位置(素子群32に対して、X方向にλs/6だけ離れた位置)に配置されている。
【0067】
また、
図8に示したように、素子群35~38は、素子群31~34の-Y方向の先において、X方向に沿って配置されている。素子群35は、素子群31に対して、X方向にλs/14だけ離れた位置に配置されている。素子群36は、素子群31に対して、X方向にλs/14+λs/10だけ離れた位置(素子群32に対して、X方向にλs/14だけ離れた位置)に配置されている。素子群37は、素子群31に対して、X方向にλs/14+λs/6だけ離れた位置(素子群33に対して、X方向にλs/14だけ離れた位置)に配置されている。素子群38は、素子群31に対して、X方向にλs/14+λs/10+λs/6だけ離れた位置(素子群34に対して、X方向にλs/14だけ離れた位置)に配置されている。
【0068】
複数の高調波成分を低減するための複数の素子群の配置は、
図8に示した例に限られない。ここで、k,mをそれぞれ1以上且つ互いに異なる整数とする。例えば、2k+1次の高調波に相当する高調波成分を低減する場合、第1の素子群を第2の素子群に対してX方向にλs/(4k+2)だけ離れた位置に配置する。更に、2m+1次の高調波に相当する誤差成分を低減する場合、第3の素子群を第1の素子群に対してX方向にλs/(4m+2)だけ離れた位置に配置し、第4の素子群を第2の素子群に対してX方向にλs/(4m+2)だけ離れた位置に配置する。このように、複数の高調波に相当する高調波成分を低減する場合、ある1つの高調波に相当する誤差成分を低減するための複数の素子群の各々は、他の高調波に相当する誤差成分を低減するための複数の素子群の各々に対して、X方向に、設計ピッチλsに基づく所定の間隔だけ離れた位置に配置される。
【0069】
本実施の形態では、第2ないし第8の抵抗体R12~R14,R21~R24の各々における複数の素子群の構成および配置は、第1の抵抗体R11における複数の素子群の構成および配置と同じである。すなわち、第2ないし第8の抵抗体R12~R14,R21~R24の各々も、
図8に示した構成および位置関係の8つの素子群31~38を含んでいる。なお、第3の抵抗体R13の素子群31は、X方向について第1の抵抗体R11の素子群31と同じ位置に配置されている。第4の抵抗体R14の素子群31は、X方向について第2の抵抗体R12の素子群31と同じ位置に配置されている。第2の抵抗体R12の素子群31は、第1の抵抗体R11の素子群31に対して、X方向にλs/2だけ離れた位置に配置されている。第4の抵抗体R14の素子群31は、第3の抵抗体R13の素子群31に対して、X方向にλs/2だけ離れた位置に配置されている。
【0070】
第7の抵抗体R23の素子群31は、X方向について第5の抵抗体R21の素子群31と同じ位置に配置されている。第8の抵抗体R24の素子群31は、X方向について第6の抵抗体R22の素子群31と同じ位置に配置されている。第5の抵抗体R21の素子群31は、第1の抵抗体R11の素子群31に対して、X方向にλs/4だけ離れた位置に配置されている。第6の抵抗体R22の素子群31は、第5の抵抗体R21の素子群31に対して、X方向にλs/2だけ離れた位置に配置されている。第8の抵抗体R24の素子群31は、第7の抵抗体R23の素子群31に対して、X方向にλs/2だけ離れた位置に配置されている。
【0071】
以上説明した第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24の構成により、第1の検出信号S1の理想成分に対する第2の検出信号S2の理想成分の位相差が、所定の信号周期(理想成分の信号周期)の1/4の奇数倍になると共に、第1および第2の検出信号S1,S2の各々の複数の高調波成分が低減される。
【0072】
なお、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24の位置と、素子群31~38の位置は、MR素子50の作製の精度等の観点から、上述の位置からわずかにずれていてもよい。
【0073】
次に、
図9および
図10を参照して、MR素子50の第1および第2の例について説明する。
図9は、MR素子50の第1の例を示す斜視図である。第1の例では、MR素子50は、Z方向にこの順に積層された磁化固定層51、ギャップ層52および自由層53を含む積層膜50Aを含んでいる。Z方向から見た積層膜50Aの平面形状は、円形であってもよいし、
図9に示したように正方形またはほぼ正方形であってもよい。
【0074】
MR素子50の積層膜50Aの下面は、図示しない下部電極によって、他のMR素子50の積層膜50Aの下面に電気的に接続され、MR素子50の積層膜50Aの上面は、図示しない上部電極によって、更に他のMR素子50の積層膜50Aの上面に電気的に接続されている。これにより、複数のMR素子50は、直列に接続されている。なお、積層膜50Aにおける層51~53の配置は、
図9に示した配置とは上下が反対でもよい。
【0075】
MR素子50は、更に、自由層53に対して印加されるバイアス磁界を発生するバイアス磁界発生器50Bを含んでいる。バイアス磁界の方向は、X方向に平行な方向と交差する方向である。第1の例では、バイアス磁界発生器50Bは、2つの磁石54,55を含んでいる。磁石54は、積層膜50Aに対して、-Y方向の先に配置されている。磁石55は、積層膜50Aに対して、Y方向の先に配置されている。第1の例では特に、積層膜50Aと磁石54,55は、XY平面に平行な1つの仮想の平面と交差する位置に配置されている。また、
図9において、磁石54,55内の矢印は、磁石54,55の磁化の方向を表している。第1の例では、バイアス磁界の方向は、Y方向である。
【0076】
図10は、MR素子50の第2の例を示す斜視図である。MR素子50の第2の例の構成は、積層膜50Aの平面形状および磁石54,55の位置を除いて、MR素子50の第1の例の構成と同じである。第2の例では、磁石54,55は、Z方向について積層膜50Aとは異なる位置に配置されている。
図10に示した例では特に、磁石54,55は、積層膜50Aに対して、Z方向の先に配置されている。また、Z方向から見た積層膜50Aの平面形状は、Y方向に長い長方形である。Z方向から見たときに、磁石54,55は、積層膜50Aと重なる位置に配置されている。
【0077】
なお、バイアス磁界の方向および磁石54,55の配置は、
図9および
図10に示した例に限られない。例えば、バイアス磁界の方向は、X方向に平行な方向およびZ方向に平行な方向と交差する方向であればよく、Y方向に対して傾いた方向であってもよい。また、磁石54,55は、X方向に平行な方向において互いにずれていてもよい。
【0078】
また、バイアス磁界発生器50Bの代わりに、形状磁気異方性や結晶磁気異方性等の一軸磁気異方性によって、自由層53にバイアス磁界を印加してもよい。
【0079】
次に、本実施の形態における検出値Vsの生成方法について説明する。検出値生成回路4は、例えば、以下のようにして検出値Vsを生成する。検出値生成回路4は、まず、第1および第2の検出信号S1,S2の各々に対して所定の補正処理を実行する。補正処理は、少なくとも、第1の検出信号S1と第2の検出信号S2の位相差を90°にする処理を含んでいる。補正処理は、更に、第1および第2の検出信号S1,S2の各々の振幅を補正する処理と、第1および第2の検出信号S1,S2の各々のオフセットを補正する処理の、少なくとも一方を含んでいてもよい。検出値生成回路4は、次に、第1の検出信号S1に対する第2の検出信号S2の比のアークタンジェントすなわちatan(S2/S1)を計算することによって、0°以上360°未満の範囲内で初期検出値を求める。初期検出値は、上記のアークタンジェントの値そのものであってもよいし、アークタンジェントの値に所定の角度を加えたものであってもよい。
【0080】
上記のアークタンジェントの値が0°のときには、Z方向から見たときに、磁界発生器3のS極の位置と、第1および第3の抵抗体R11,R13の各々の素子群31の位置が一致する。また、上記のアークタンジェントの値が180°のときには、Z方向から見たときに、磁界発生器3のN極の位置と、第1および第3の抵抗体R11,R13の各々の素子群31の位置が一致する。従って、初期検出値は、1つのS極から1つのN極を介して隣接する他の1つのS極までの範囲内での磁界発生器3の回転位置と対応関係を有している。
【0081】
また、検出値生成回路4は、初期検出値の1周期分を電気角の360°とし、基準位置からの電気角の回転数をカウントする。電気角は、磁界発生器3の回転位置と対応関係を有し、電気角の1回転は、1つのS極から1つのN極を介して隣接する他の1つのS極までの移動量に相当する。検出値生成回路4は、初期検出値と、電気角の回転数に基づいて、磁界発生器3の回転位置と対応関係を有する検出値Vsを生成する。
【0082】
次に、本実施の形態に係る磁気センサ2の製造方法について簡単に説明する。磁気センサ2の製造方法は、基板10の上に複数のMR素子50を形成する工程と、基板10の上に端子11~14を形成する工程と、複数のMR素子50および端子11~14に接続される複数の配線を形成する工程とを含んでいる。
【0083】
複数のMR素子50を形成する工程では、まず、後に複数のMR素子50となる複数の初期MR素子を形成する。複数の初期MR素子の各々は、後に磁化固定層51となる初期磁化固定層と、自由層53と、ギャップ層52とを含んでいる。
【0084】
次に、レーザ光と、所定の方向の外部磁界とを用いて、初期磁化固定層の磁化の方向を、上記の所定の方向に固定する。例えば、後に第1、第4、第6および第7の抵抗体R11,R14,R22,R23を構成する複数のMR素子50になる複数の初期MR素子では、第1の磁化方向(-X方向)の外部磁界を印加しながら、複数の初期MR素子に対してレーザ光を照射する。レーザ光の照射が完了すると、初期磁化固定層の磁化の方向は、第1の磁化方向に固定される。これにより、初期磁化固定層は磁化固定層51になり、複数の初期MR素子は、第1、第4、第6および第7の抵抗体R11,R14,R22,R23を構成する複数のMR素子50になる。
【0085】
また、後に第2、第3、第5および第8の抵抗体R12,R13,R21,R24を構成する複数のMR素子50になる他の複数の初期MR素子では、外部磁界の方向を第2の磁化方向(X方向)とすることにより、他の複数の初期MR素子の各々の初期磁化固定層の磁化の方向を、第2の磁化方向に固定することができる。このようにして、複数のMR素子50が形成される。
【0086】
次に、本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24は、複数の高調波成分のうち、少なくとも2次の高調波に相当する高調波成分が低減されるように構成されている。具体的には、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24が、前述のように、回路構成上の配置に関する要件と、物理的な配置に関する要件と、磁化固定層の磁化に関する要件を満たすように配置されている。これにより、本実施の形態によれば、磁界発生器3の磁極ピッチλmと磁気センサ2の設計ピッチλsとの相違に起因する誤差を低減することができる。
【0087】
以下、比較例の磁気式エンコーダと比較しながら、本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1の効果について説明する。始めに、比較例の磁気式エンコーダの構成について説明する。比較例の磁気式エンコーダの構成は、本実施の形態における磁気センサ2の代わりに、比較例の磁気センサ102を備えている点で、本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1の構成と異なっている。
【0088】
図11は、比較例の磁気センサ102を示す平面図である。
図12は、比較例の磁気センサ102の構成を示す回路図である。磁気センサ102は、それぞれ磁界成分MFxの強度に応じて抵抗値が変化するように構成された第1の抵抗体R1、第2の抵抗体R2、第3の抵抗体R3および第4の抵抗体R4を備えている。また、磁気センサ102は、複数のMR素子50を備えている。第1ないし第4の抵抗体R1~R4の各々は、複数のMR素子50を用いて構成されている。
【0089】
磁気センサ102は、更に、電源ポートV101と、グランドポートG101と、第1の出力ポートE101と、第2の出力ポートE102とを備えている。グランドポートG101はグランドに接続される。第1および第2の出力ポートE101,E102は、検出値生成回路4に接続される。
【0090】
磁気センサ102は、第1の出力ポートE101の電位と対応関係を有する信号を、第1の検出信号S101として生成し、第2の出力ポートE102の電位と対応関係を有する信号を、第2の検出信号S102として生成する。磁気センサ102が接続された検出値生成回路4は、第1および第2の検出信号S101,S102に基づいて、検出値Vsを生成する。
【0091】
第1の抵抗体R1は、電源ポートV101と第1の出力ポートE101とを接続する経路に設けられている。第2の抵抗体R2は、グランドポートG101と第1の出力ポートE101とを接続する経路に設けられている。第3の抵抗体R3は、グランドポートG101と第2の出力ポートE102とを接続する経路に設けられている。第4の抵抗体R4は、電源ポートV101と第2の出力ポートE102とを接続する経路に設けられている。
【0092】
Z方向から見たときの第2の抵抗体R2の重心は、Z方向から見たときの第1の抵抗体R1の重心に対して、X方向にλs/2だけ離れた位置に配置されている。Z方向から見たときの第3の抵抗体R3の重心は、Z方向から見たときの第4の抵抗体R4の重心に対して、X方向にλs/2だけ離れた位置に配置されている。Z方向から見たときの第4の抵抗体R4の重心は、Z方向から見たときの第1の抵抗体R1の重心に対して、X方向にλs/4だけ離れた位置に配置されている。
【0093】
図11および
図12において、第1ないし第4の抵抗体R1~R4内に描かれた矢印は、その抵抗体に含まれる複数のMR素子50の各々の磁化固定層の第1の磁化の方向を表している。比較例では、第1ないし第4の抵抗体R1~R4の全てにおいて、第1の磁化の方向は、-X方向である。
【0094】
第1ないし第4の抵抗体R1~R4の各々は、複数の素子群を含んでいる。第1ないし第4の抵抗体R1~R4の各々における複数の素子群の構成および配置は、本実施の形態に係る磁気センサ2の第1の抵抗体R11における複数の素子群の構成および配置と同じである。
【0095】
次に、比較例における第1の検出信号S101について説明する。比較例では、第1の抵抗体R1の抵抗値R1と、第2の抵抗体R2の抵抗値R2は、それぞれ下記の式(1)、(2)で表される。なお、式(1)、(2)において、R0,ΔRはそれぞれ所定の定数であり、θは電気角を表す。
【0096】
R1=R0+ΔRcos(θ) …(1)
R2=R0+ΔRcos(θ+λs/λm×π) …(2)
【0097】
また、第1の検出信号S101は、下記の式(3)で表される。
【0098】
S101=R2/(R1+R2) …(3)
【0099】
磁極ピッチλmが設計ピッチλsと等しい場合、式(1)~(3)から、第1の検出信号S101は、下記の式(4)で表される。
【0100】
S101=R2/(2R0+ΔRcos(θ)-ΔRcos(θ))
=R2/2R0 …(4)
【0101】
磁極ピッチλmが設計ピッチλsとは異なる場合、式(1)~(3)から、第1の検出信号S101は、下記の式(5)で表される。
【0102】
S101=R2/(2R0+ΔRcos(θ)+ΔRcos(θ+λs/λm×π))
…(5)
【0103】
式(4)から理解されるように、磁極ピッチλmが設計ピッチλsと等しい場合には、第1の検出信号S101は、R2の定数倍と等しくなる。この場合、第1の検出信号S101は、理想的には、電気角θに応じて理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する(式(2)参照)。一方、式(5)から理解されるように、磁極ピッチλmが設計ピッチλsとは異なる場合には、式(5)の分母に電気角θに応じて変化する成分が含まれる。この成分は、第1の検出信号S101に、2次の高調波に相当する高調波成分を生じさせる。
【0104】
第1の検出信号S101についての説明は、第2の検出信号S102にも当てはまる。第3の抵抗体R3の抵抗値R3、第4の抵抗体R4の抵抗値R4および第2の検出信号S102は、それぞれ、電気角θに応じて変化するsin関数を用いて表すことができる。磁極ピッチλmが設計ピッチλsとは異なる場合には、第2の検出信号S102にも、2次の高調波に相当する高調波成分が生じる。第1および第2の検出信号S101,S102の各々の高調波成分は、検出値Vsに誤差を生じさせる。
【0105】
次に、本実施の形態における第1の検出信号S1について説明する。本実施の形態ではでは、第1の抵抗体R11の抵抗値R11と、第2の抵抗体R12の抵抗値R12と、第3の抵抗体R13の抵抗値R13と、第4の抵抗体R14の抵抗値R14は、それぞれ下記の式(6)~(9)で表される。
【0106】
R11=R0+ΔRcos(θ) …(6)
R12=R0+ΔRcos(θ+λs/λm×π+π)
=R0-ΔRcos(θ+λs/λm×π) …(7)
R13=R0+ΔRcos(θ+π)
=R0-ΔRcos(θ+π) …(8)
R14=R0+ΔRcos(θ+λs/λm×π) …(9)
【0107】
第1の検出信号S1は、下記の式(10)で表される。
【0108】
S1=(R13+R14)/(R11+R12+R13+R14)
=(R13+R14)/4R0 …(10)
【0109】
式(10)から理解されるように、本実施の形態では、磁極ピッチλmが設計ピッチλsと等しいか否かに関わらず、式(10)の分母は定数になり、第1の検出信号S1は、抵抗値R13と抵抗値R14との和の定数倍と等しくなる。従って、本実施の形態では、第1の検出信号S1は、磁極ピッチλmが設計ピッチλsと等しいか否かに関わらず、理想的には、電気角θに応じて理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する(式(8)、(9)参照)。
【0110】
第1の検出信号S1ついての説明は、第2の検出信号S2にも当てはまる。第2の検出信号S2は、式(10)におけるR11,R12,R13,R14を、それぞれ第5の抵抗体R21の抵抗値R21、第6の抵抗体R22の抵抗値R22と、第7の抵抗体R23の抵抗値R23および第8の抵抗体R24の抵抗値R24で置き換えた式で表される。第1の検出信号S1と同様に、第2の検出信号S2は、磁極ピッチλmが設計ピッチλsと等しいか否かに関わらず、理想的には、電気角θに応じて理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する。
【0111】
以上説明したように、本実施の形態では、複数の高調波成分のうち、2次の高調波に相当する高調波成分が低減されるように構成されている。これにより、本実施の形態によれば、検出値Vsに誤差が生じることを防止することができる。以下、この効果について、シミュレーションの結果を参照して説明する。
【0112】
シミュレーションでは、比較例のモデルと実施例のモデルを用いた。比較例のモデルは、比較例の磁気式エンコーダのモデルである。実施例のモデルは、本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1のモデルである。
【0113】
シミュレーションでは、設計ピッチλsを800μmとした。比較例のモデルでは、第2の抵抗体R2の重心が第1の抵抗体R1の重心に対してX方向に400μmだけ離れた位置に配置され、第3の抵抗体R3の重心が第4の抵抗体R4の重心に対してX方向に400μmだけ離れた位置に配置され、第4の抵抗体R4の重心が第1の抵抗体R1の重心に対してX方向に200μmだけ離れた位置に配置されるように、第1ないし第4の抵抗体R1~R4を配置した。
【0114】
実施例のモデルでは、第2の位置C12が第1の位置C11に対してX方向に400μmだけ離れた位置になり、第4の位置C14が第3の位置C13に対してX方向に400μmだけ離れた位置になり、第6の位置C22が第5の位置C21に対してX方向に400μmだけ離れた位置になり、第8の位置C24が第7の位置C23に対してX方向に400μmだけ離れた位置になり、第5の位置C21が第1の位置C11に対してX方向に200μmだけ離れた位置になるように、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24を配置した。
【0115】
また、シミュレーションでは、Z方向に平行な方向における磁気センサ2と磁界発生器3との間隔と、Z方向に平行な方向における磁気センサ102と磁界発生器3との間隔を、いずれも0.4mmとした。また、電源ポートV1に印加する電圧と、電源ポートV101に印加する電圧を、いずれも1Vとした。
【0116】
ここで、信号周期が理想成分の信号周期と一致する成分を1次成分と言い、第2高調波に相当する高調波成分を2次成分と言い、第3高調波に相当する高調波成分を3次成分と言い、第4高調波に相当する高調波成分を4次成分と言い、第5高調波に相当する高調波成分を5次成分と言い、第6高調波に相当する高調波成分を6次成分と言う。また、1次成分の振幅に対するある1つの高調波成分の振幅の比を、その高調波成分の振幅比と言う。また、検出信号S1,S2,S101,S102の各々が理想成分のみを含む場合に想定される初期検出値と、シミュレーションによって得られた初期検出値との差を、検出値Vsの誤差と言う。なお、初期検出値は、計算によって求めた電気角に相当する値であり、0°以上360°未満の値で表される。従って、検出値Vsの誤差の単位は、角度で表される。
【0117】
シミュレーションでは、磁極ピッチλmを600μmから2600μmまでの範囲内で200μmずつ変化させた。比較例のモデルでは、各磁極ピッチλm毎に、磁界発生器3を回転させたときの第1および第2の検出信号S101,S102と検出値Vsを求めた。また、第1の検出信号S101をフーリエ変換することによって、第1の検出信号S101の1次成分ないし6次成分を求め、第1の検出信号S101について、2次成分ないし6次成分の各々の振幅比を求めた。また、検出値Vsの誤差を求めた。
【0118】
同様に、実施例のモデルでは、各磁極ピッチλm毎に、磁界発生器3を回転させたときの第1および第2の検出信号S1,S2と検出値Vsを求めた。また、第1の検出信号S1をフーリエ変換することによって、第1の検出信号S1の1次成分ないし6次成分を求め、第1の検出信号S1について、2次成分ないし6次成分の各々の振幅比を求めた。また、検出値Vsの誤差を求めた。
【0119】
図13は、シミュレーションによって求めた比較例のモデルの振幅比を示す特性図である。
図14は、シミュレーションによって求めた実施例のモデルの振幅比を示す特性図である。
図13および
図14において、
横軸は磁極ピッチλmを示し、縦軸は振幅比を示している。また、
図13において、符号71は2次成分の振幅比を示し、符号72は3次成分の振幅比を示し、符号73は4次成分の振幅比を示し、符号74は5次成分の振幅比を示し、符号75は6次成分の振幅比を示している。また、
図14において、符号81は2次成分の振幅比を示し、符号82は3次成分の振幅比を示し、符号83は4次成分の振幅比を示し、符号84は5次成分の振幅比を示し、符号85は6次成分の振幅比を示している。
【0120】
図13に示したように、比較例のモデルでは、4次成分の振幅比(符号73)、5次成分の振幅比(符号74)および6次成分の振幅比(符号75)は、ゼロまたはほぼゼロであった。また、比較例のモデルでは、磁極ピッチλmが800μmの場合を除き、2次成分の振幅比(符号71)が最も大きいことが分かる。また、2次成分の振幅比(符号71)は、磁極ピッチλmが800μmの場合に最小になり、磁極ピッチλmが800μmから大きくなるに従って大きくなることが分かる。なお、磁極ピッチλmが800μmの場合とは、磁極ピッチλmが設計ピッチλsと等しくなる場合である。
【0121】
図14に示したように、実施例のモデルでは、比較例のモデルと同様に、4次成分の振幅比(符号83)、5次成分の振幅比(符号84)および6次成分の振幅比(符号85)は、ゼロまたはほぼゼロであった。また、実施例のモデルでは、更に、2次成分の振幅比(符号81)がゼロであった。
【0122】
図13および
図14に示した結果は、第2の検出信号S2,S102にも当てはまる。シミュレーションの結果から、本実施の形態では、複数の高調波成分のうち、2次の高調波に相当する高調波成分(2次成分)が低減されるように構成されていることが分かる。
【0123】
図15は、シミュレーションによって求めた比較例のモデルと実施例のモデルの各々の検出値Vsの誤差を示す特性図である。
図15において、
横軸は磁極ピッチλmを示し、縦軸は検出値Vsの誤差を示している。また、
図15において、符号91は比較例のモデルの誤差を示し、符号92は実施例のモデルの誤差を示している。
【0124】
前述のように、シミュレーションでは、検出値Vsの誤差は、初期検出値を用いて算出され、初期検出値は、検出信号S1,S2,S101,S102を用いて算出される。検出信号S1,S2,S101,S102の各々の波形は、高調波成分の振幅比に依存して正弦曲線から歪む。従って、検出値Vsの誤差は、高調波成分の振幅比に依存する。
図13および
図15から理解されるように、比較例のモデルでは、検出値Vsの誤差(
図15における符号91)は、2次成分の振幅比(
図13における符号71)に大きく依存する。検出値Vsの誤差は、2次成分の振幅比と同様に、磁極ピッチλmが設計ピッチλs(800μm)と等しくなる場合に最小になり、磁極ピッチλmが800μmから大きくなるに従って、すなわち磁極ピッチλmの設計ピッチλsからの乖離が大きくなるに従って大きくなる。
【0125】
また、
図14および
図15から理解されるように、実施例のモデルでは、2次成分の振幅比(
図14における符号81)がゼロになるため、検出値Vsの誤差(
図15における符号92)は、3次成分の振幅比(
図14における符号82)に大きく依存する。しかし、実施例のモデルの3次成分の振幅比(
図14における符号82)は、比較例のモデルの2次成分の振幅比(
図13における符号71)に比べて十分に小さい。そのため、
図15に示したように、実施例のモデルの誤差(符号92)は、比較例のモデルの誤差(符号91)に比べて十分に小さくなる。
【0126】
シミュレーションの結果から理解されるように、本実施の形態によれば、複数の高調波成分のうち、2次の高調波に相当する高調波成分(2次成分)が低減されるように構成するという手段によって、磁極ピッチλmと設計ピッチλsとの相違に起因する検出値Vsに誤差が生じることを防止することができる。
【0127】
また、前述のように、本実施の形態では、3次の高調波に相当する高調波成分と、5次の高調波に相当する高調波成分と、7次の高調波に相当する高調波成分が低減されるように、素子群31~38が配置されている。すなわち、本実施の形態では、第1ないし第8の抵抗体R11~R14,R21~R24は、2次の高調波に相当する高調波成分に加えて、3次、5次、7次の高調波に相当する高調波成分が低減されるように構成されている。これにより、本実施の形態によれば、検出値Vsの誤差をより低減することができる。
【0128】
ところで、磁気式エンコーダ1を比較的大きな振動が発生する装置に適用する場合、磁気センサ2と磁界発生器3との衝突を防止するために、磁気センサ2と磁界発生器3との間隔を大きくすることが求められる場合がある。この場合、磁気センサ2が配置された位置における磁界成分MFx(
図4参照)の強度を望ましい大きさにするために、磁極ピッチλmを設計ピッチλsよりも大きくすることが好ましい。具体的には、磁極ピッチλmは、設計ピッチλsの1.1倍よりも大きいことが好ましく、設計ピッチλsの1.25倍よりも大きいことが好ましい。一方、
図15から理解されるように、磁極ピッチλmが1400μm以上、すなわち磁極ピッチλmが設計ピッチλsの1.75倍以上になると、磁極ピッチλmが大きくなるに従って、検出値Vsの誤差が大きくなる。そのため、磁極ピッチλmは、設計ピッチλsの1.75倍よりも小さいことが好ましい。
【0129】
[変形例]
次に、
図16を参照して、本実施の形態に係る磁気式エンコーダ1の変形例について説明する。
図16は、磁気式エンコーダ1の変形例を示す斜視図である。変形例では、磁気式エンコーダ1は、
図2および
図3に示した磁界発生器3の代わりに、磁界発生器103を備えている。磁界発生器103は、それぞれ回転軸Cから離れる方向に向いた外周面103a,103bを有している。外周面103a,103bは、回転軸Cに平行な方向において互いに異なる位置に配置されている。外周面103aは、外周面103bよりも回転軸Cから離れた位置に配置されている。
【0130】
複数組のN極とS極は、外周面103aに設けられている。
図16では、理解を容易にするために、N極にハッチングを付している。磁気センサ2は、外周面103aに対向するように配置されている。基準位置、例えば磁気センサ2が配置された位置における磁界成分MFx(
図4参照)の強度は、磁界発生器103の回転に伴って変化する。
【0131】
変形例では、回転軸Cに平行な方向をY方向とし、回転軸Cに直交する方向であって、磁気センサ2から回転軸Cに向かう方向をZ方向としてもよい。
【0132】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、MR素子50の数および配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。
【0133】
また、第1ないし第8の位置C11~C14,C21~C24は、それぞれ、対応する抵抗体の-X方向の端部等の重心以外の位置であってもよい。
【0134】
また、第3、第4、第7および第8の抵抗体R13,R14,R23,R24は、それぞれ、第1、第2、第5および第6の抵抗体R11,R12,R21,R22に対して、X方向または-X方向に設計ピッチλsの整数倍だけ離れた位置に配置されていてもよい。
【0135】
また、本発明の磁界発生器は、直線的な方向に複数組のN極とS極を着磁したリニアスケールであってもよい。この場合、本発明の磁気式エンコーダは、位置が変化可能な対象物の位置を検出するための位置検出装置に適用されてもよい。磁気センサと磁界発生器は、対象物の位置が変化すると、磁界成分の強度が変化するように構成されていてもよい。
【0136】
また、本発明の磁気センサは、第1の検出信号を出力するように構成された第1のフルブリッジ回路と、第2の検出信号を出力するように構成された第2のフルブリッジ回路とを備えていてもよい。第1および第2のフルブリッジ回路の各々は、複数の抵抗体によって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1…磁気式エンコーダ、2…磁気センサ、3…磁界発生器、4…検出値生成回路、5…第1の経路、6…第2の経路、7…第3の経路、8…第4の経路、10…基板、11…電源端子、12…グランド端子、13…第1の出力端子、14…第2の出力端子、31~38…素子群、50…MR素子、50A…積層膜、50B…バイアス磁界発生器、51…磁化固定層、52…ギャップ層、53…自由層、54,55…磁石、401…測距装置、411…光電ユニット、412…光学素子、413…支持体、C…回転軸、E1…第1の出力ポート、E2…第2の出力ポート、G1…グランドポート、R11…第1の抵抗体、R12…第2の抵抗体、R13…第3の抵抗体、R14…第4の抵抗体、R21…第5の抵抗体、R22…第6の抵抗体、R23…第7の抵抗体、R24…第8の抵抗体、S1…第1の検出信号、S2…第2の検出信号、V1…電源ポート、Vs…検出値、λm…磁極ピッチ、λs…設計ピッチ。