(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 9/12 20060101AFI20241030BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B05C9/12
B05C5/02
(21)【出願番号】P 2022111343
(22)【出願日】2022-07-11
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊文
(72)【発明者】
【氏名】筏 敏晃
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-311206(JP,A)
【文献】特開2004-128214(JP,A)
【文献】特開平10-082583(JP,A)
【文献】特開平08-321449(JP,A)
【文献】特開2009-279511(JP,A)
【文献】特開2009-000620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 9/12
B05C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつつ、ノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布器と、
基板上の塗布膜を乾燥させる乾燥器と、
を備える塗布装置であって、
前記乾燥器は、基板上の塗布膜の乾燥分布情報から乾燥を促進させる乾燥促進力が塗布膜の部位に応じて調節され
、
前記乾燥分布情報は、形成された塗布膜の乾燥状態から定期的に更新されることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつつ、ノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布器と、
基板上の塗布膜を乾燥させる乾燥器と、
を備える塗布装置であって、
前記乾燥器は、基板上の塗布膜の乾燥分布情報から乾燥を促進させる乾燥促進力が塗布膜の部位に応じて調節され
、
前記乾燥分布情報は、塗布された直後の塗布膜の乾燥状態から取得され、その基板の塗布膜に対し、取得された前記乾燥分布情報で調節された乾燥促進力で乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
基板を載置するステージと、
前記ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつつ、ノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布器と、
基板上の塗布膜を乾燥させる乾燥器と、
を備える塗布装置であって、
前記乾燥器は、基板上の塗布膜の乾燥分布情報から乾燥を促進させる乾燥促進力が塗布膜の部位に応じて調節され
、
前記乾燥器は、前記塗布器に設けられており、塗布膜が形成された直後から前記乾燥分布情報に基づいて乾燥促進力が調節されつつ乾燥が行われることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記乾燥器は、塗布膜にエアを供給して乾燥させるものであり、前記乾燥促進力は、エアが吐出される前記乾燥器の供給口と、塗布膜との距離が調節されることにより行われることを特徴とする請求項
1に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記乾燥器は、前記塗布器が塗布膜を形成するために一方向に移動する塗布方向と直交する幅方向に延びる形状を有しており、前記乾燥器の前記供給口は、幅方向に分割された区画部を有しており、前記区画部毎にエア供給量が調節されることを特徴とする請求項
4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記乾燥器の前記供給口は、前記区画部毎に開口面積が設定されることによりエア供給量が調節されていることを特徴とする請求項
5に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に塗布膜を形成する塗布装置に関するものであり、特に、塗布膜の結晶状態が不均一になるのを抑えて乾燥させることができる塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、様々な用途に基板W上に均一な薄膜が形成されたもの(塗布基板という)が使用される。例えば、基板上に一様な膜厚の塗布膜を形成する場合には、スリット状のノズルを有する塗布装置によって形成されている。この塗布装置は、例えば、
図8に示すように、基板Wを載置するステージ100と、塗布液を吐出するスリット状のノズルを有する塗布器101とを有しており、ノズルのスリットから塗布液を吐出させながら、基板Wと塗布器101とを相対的に移動させることにより、所定厚さの塗布膜Cが基板W上に形成されるようになっている。
【0003】
そして、形成された塗布基板Wは、塗布装置から搬出された後、塗布装置とは別の乾燥装置102によって乾燥させられる(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記塗布装置では、形成された塗布膜Cの機能性が十分に発揮できないという問題があった。すなわち、塗布膜Cの材料の中には、例えば、ペロブスカイト太陽電池の材料のように、機能性が結晶状態に依存するものがある。ところが、塗布装置で形成した塗布膜Cを乾燥装置102のように乾燥環境を均一にして乾燥させても、塗布膜Cの結晶状態が部位によって異なってしまい、塗布膜Cの結晶状態の不均一性から、その機能性が損なわれてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、形成された塗布膜の結晶状態が不均一になるのを抑えることができる塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を載置するステージと、前記ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつつ、ノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布器と、基板上の塗布膜を乾燥させる乾燥器と、を備える塗布装置であって、前記乾燥器は、基板上の塗布膜の乾燥分布情報から乾燥を促進させる乾燥促進力が塗布膜の部位に応じて調節され、前記乾燥分布情報は、形成された塗布膜の乾燥状態から定期的に更新されることを特徴としている。
【0008】
上記塗布装置によれば、塗布膜の乾燥分布情報から塗布膜の部位に応じて乾燥促進力が調節されるため、塗布膜の結晶状態の不均一性を抑えつつ乾燥させることができる。すなわち、乾燥分布情報から基板の塗布膜の部位に対する乾燥状態が把握することができるため、この乾燥分布情報から塗布膜の部位に応じて乾燥器の乾燥促進力、すなわち、乾燥させるための出力を調節する。具体的には、乾燥が相対的に進んでいる部位には、乾燥促進力を弱め、乾燥が相対的に遅れている部位には、乾燥促進力を強めて乾燥させるように調節する。これにより、塗布膜全体として、乾燥状態の不均一性を抑えることにより、塗布膜の結晶が大きく成長しやすくなり、塗布膜の結晶状態が不均一になるのを抑えることができる。そして、塗布膜の乾燥状態が生産と共に変化する場合でも、乾燥分布情報が更新されることにより、乾燥状態の変化に対応し、乾燥状態の不均一性を抑えることができる。なお、乾燥分布情報の更新の頻度は、基板複数枚毎でも、1枚ごとであってもよい。
【0011】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を載置するステージと、前記ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつつ、ノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布器と、基板上の塗布膜を乾燥させる乾燥器と、を備える塗布装置であって、前記乾燥器は、基板上の塗布膜の乾燥分布情報から乾燥を促進させる乾燥促進力が塗布膜の部位に応じて調節され、前記乾燥分布情報は、塗布された直後の塗布膜の乾燥状態から取得され、その基板の塗布膜に対し、取得された前記乾燥分布情報で調節された乾燥促進力で乾燥させることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、乾燥分布情報が塗布直後の塗布膜の乾燥状態から取得されるため、塗布膜形成直後の塗布膜の乾燥状態に応じて乾燥促進力を調節することができる。したがって、形成された塗布膜に応じて、乾燥状態の不均一性を抑えて乾燥させることができる。
【0013】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を載置するステージと、前記ステージに載置された基板に対し相対的に移動しつつ、ノズルから塗布液を吐出して基板に塗布膜を形成する塗布器と、基板上の塗布膜を乾燥させる乾燥器と、を備える塗布装置であって、前記乾燥器は、基板上の塗布膜の乾燥分布情報から乾燥を促進させる乾燥促進力が塗布膜の部位に応じて調節され、前記乾燥器は、前記塗布器に設けられており、塗布膜が形成された直後から前記乾燥分布情報に基づいて乾燥促進力が調節されつつ乾燥が行われることを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、基板に塗布液が着液した直後から乾燥分布情報に基づいて乾燥させることができるため、着液直後に自然乾燥により乾燥状態が不均一になる状態を回避することができる。
【0016】
さらに、具体的な前記乾燥促進力の態様としては、前記乾燥器は、塗布膜にエアを供給して乾燥させるものであり、前記乾燥促進力は、エアが吐出される前記乾燥器の供給口と、塗布膜との距離が調節されることにより行われる構成にしてもよい。
【0017】
また、前記乾燥器は、前記塗布器が塗布膜を形成するために一方向に移動する塗布方向と直交する幅方向に延びる形状を有しており、前記乾燥器の前記供給口は、幅方向に分割された区画部を有しており、前記区画部毎にエア供給量が調節される構成にしてもよい。
【0018】
この構成によれば、乾燥器の供給口が幅方向に分割される区画部を有しているため、各区画部から供給されるエア供給量を調節することにより乾燥促進力を調節することができる。
【0019】
また、前記乾燥器の前記供給口は、前記区画部毎に開口面積が設定されることによりエア供給量が調節されている構成にしてもよい。
【0020】
この構成によれば、各区画部毎に開口面積を適宜に設定することにより、区画部から供給されるエア供給量を調節することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の塗布装置によれば、塗布膜の乾燥状態が不均一になるのを抑えることにより、形成された塗布膜の結晶状態が不均一になるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る塗布装置を示す斜視図である。
【
図2】塗布ユニットの脚部付近を示す概略図である。
【
図5】塗布膜の部位毎に乾燥状態が示された乾燥分布情報を模式化した図である。
【
図6】乾燥器の位置と乾燥促進力の調節状態を示す図であり、(a)は塗布開始端部を示す図、(b)は中央部を示す図、(c)は塗布終了端部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態における塗布装置を概略的に示す斜視図であり、
図2は、塗布ユニットの脚部付近を示す図であり、
図3は、乾燥器が設けられた塗布器を示す図である。
【0025】
図1~
図3に示すように、塗布装置は、基板W上に薬液やレジスト液等の液状物(以下、塗布液と称す)の塗布膜を形成するものであり、基台2と、基板Wを載置するためのステージ21と、このステージ21に対し特定方向に移動可能に構成される塗布ユニット30とを備えている。
【0026】
なお、以下の説明では、塗布ユニット30が移動する方向をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0027】
前記基台2には、その中央部分にステージ21が配置されている。このステージ21は、搬入された基板Wを載置するものである。このステージ21には、基板Wを載置する基板載置面21aと、図示しない基板保持手段が設けられており、この基板保持手段により基板Wが保持されるようになっている。具体的には、ステージ21の基板載置面21aに形成された複数の吸引孔が形成されており、この吸引孔に吸引力を発生させることにより基板Wを基板載置面21aに吸着させて保持できるようになっている。
【0028】
また、ステージ21には、基板Wを昇降動作させる基板昇降機構が設けられている。具体的には、ステージ21の表面には複数のピン孔が形成されており、このピン孔にはZ軸方向に昇降動作可能なリフトピン(不図示)が埋設されている。すなわち、ステージ21の表面からリフトピンを突出させた状態で基板Wが搬入されるとリフトピンの先端部分が基板Wに当接して基板Wを保持することができる。そして、その状態からリフトピンを下降させてピン孔に収容させることにより、基板Wを基板載置面21aに載置することができるようになっている。
【0029】
また、塗布ユニット30は、基板W上に塗布液を吐出して塗布膜Cを形成するものである。この塗布ユニット30は、
図1、
図2に示すように、基台2と連結される脚部31とY軸方向に延びる塗布器34とを有しており、基台2上をY軸方向に跨いだ状態でX軸方向に移動可能に取り付けられている。具体的には、基台2のY軸方向両端部分にはそれぞれX軸方向に延びるレール22が設置されており、脚部31がこのレール22にスライド自在に取り付けられている。そして、脚部31にはリニアモータが取り付けられており、このリニアモータを駆動制御することにより、塗布ユニット30がX軸方向に移動し、任意の位置で停止できるようになっている。
【0030】
また、塗布ユニット30の脚部31には、
図2に示すように、塗布液を塗布する塗布器34が取り付けられている。具体的には、この脚部31にはZ軸方向に延びるレール37と、このレール37に沿ってスライドするスライダ35が設けられており、これらのスライダ35と塗布器34とが連結されている。そして、スライダ35にはサーボモータにより駆動されるボールねじ機構が取り付けられており、このサーボモータを駆動制御することにより、スライダ35がZ軸方向に移動するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。すなわち、塗布器34が、ステージ21に保持された基板Wに対して接離可能に支持されている。
【0031】
また、
図1~3に示すように、塗布器34は、塗布液を吐出して基板W上に塗布膜Cを形成するものである。この塗布器34は、一方向に延びる形状を有する柱状部材であり、塗布ユニット30の走行方向とほぼ直交する方向に延びるように設けられている。具体的には、塗布器34は、鉛直方向に延びる側面部34bと、この側面部34bから傾斜状に形成される斜面部34cを経て基板Wと対向する基板対向面34dを有している。そして、基板対向面34dには、スリットノズル34aが形成されており、スリットノズル34aから塗布液が吐出されるようになっている。すなわち、塗布器34の基板対向面34dには、スリットノズル34aが長手方向に延びるように形成されており、塗布器34に供給された塗布液がスリットノズル34aから長手方向に亘って一様に吐出されるようになっている。したがって、このスリットノズル34aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30をX軸方向に走行させることにより、スリットノズル34aの長手方向に亘って基板W上に一定厚さの塗布膜Cが形成されるようになっている。なお、塗布液を塗布するために、スリットノズル34aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30を移動させる方向を本実施形態では塗布方向(本実施形態ではX軸方向)と呼び、塗布方向側を塗布進行側と呼ぶことにする。また、塗布方向と直行する方向を幅方向(本実施形態ではY軸方向)と呼ぶことにする。
【0032】
また、塗布器34には、乾燥器40が設けられている。この乾燥器40は、基板W上に形成された塗布膜Cを乾燥させるものである。ここで、乾燥とは、完全乾燥の意味だけでなく、半乾き状態の乾燥、及び、大気に放置して乾燥させる場合よりも材料の結晶化が促進される程度の乾燥も含まれるものとする。
【0033】
乾燥器40は、本実施形態では、塗布器34において、塗布進行側と反対側に隣接するように一体的に取り付けられている。すなわち、塗布器34が塗布液を吐出しつつ塗布進行方向に移動すると、乾燥器40が塗布器34と一体的に移動しつつ、基板W上に塗布膜Cが形成された直後から、乾燥器40により塗布膜Cが乾燥されるようになっている。
【0034】
乾燥器40は、塗布器34の長手方向に沿って設けられており、エアを供給する送風部41を有している。本実施形態では、塗布器34に隣接するように送風部41が配置され構成されている。
【0035】
送風部41は、基板W上に形成された塗布膜Cにエアを供給するものである。本実施形態では、送風本体部411と、エア吐出部42とを有しており、送風本体部411で貯留されたエアがエア吐出部42を通じてエアが吹き出されるようになっている。
【0036】
送風本体部411は、ボックス形状を有しており、塗布器34の側面部34bに沿って長手方向に延びる形状に形成されている。本実施形態では、スリットノズル34aの長手方向寸法よりも長い寸法を有するように形成されている。また、送風本体部411には、塗布膜Cに供給するためのエアを溜めるキャビティ41bが形成されており、図示しないエア供給源から供給されたエアがキャビティ41bで一時的に貯留できるようになっている。キャビティ41bは、本実施形態では、長手方向に3つに分割されて形成されており、これらの分割部それぞれが、分割部より狭く形成された連通流路を通じてエア吐出部42と接続されている。したがって、エアがキャビティ41bに供給されると各分割部内に広がってそれぞれの分割部で一時的に貯留され、分割部よりも狭く形成された連通流路43を通過することにより、エア吐出部42に対してエアが安定して供給されるようになっている。そして、本実施形態では、3つの分割部に対してエア供給源が独立して接続されており、それぞれの分割部に対してエアの供給量を調節できるようになっている。
【0037】
エア吐出部42は、送風本体部411に供給されたエアを塗布膜Cに導くためのものである。エア吐出部42は、開口部41c(本発明の乾燥器40の供給口)が形成されており、この開口部41cを通じて塗布膜Cにエアが供給されるようになっている。
【0038】
エア吐出部42は、本実施形態では、開口部41cを構成するブロック部材51(
図4(b)参照)により形成されている。すなわち、送風本体部411の先端部分には、ブロック部材51を収容するブロック収容部44が形成されており、このブロック部材51を通じてエアが供給されるようになっている。すなわち、このブロック部材51には、エアを導く供給流路51aが形成されており、基板W側には開口部41cが形成されている。そして、ブロック部材51がブロック収容部44に収容された状態では供給流路51aが連通流路43に連通するように構成されている。これにより、キャビティ41bに供給されたエアは、連通流路43、供給流路51a、開口部41cを通じて塗布膜に供給されるようになっている。
【0039】
また、エア吐出部42は、長手方向に風量が調節されるように形成されている。具体的には、エア吐出部42は、長手方向に複数の区画部60が形成されており、本実施形態では、
図4(a)に示すように、3つの区画部60が形成されている。そして、この区画部60毎に風量が調節できるように構成されている。
【0040】
ここで、
図4(a)は、乾燥器40をエア吐出部42側から見た図であり、エア吐出部42は、3つの区画部60で形成されている。
図4(a)に示すように、本実施形態では、区画部60は、ブロック部材51で形成されており、ブロック収容部44の長手方向に3つのブロック部材51が配列されて収容されることにより形成されている。すなわち、3つのブロック部材51は、キャビティ41bの分割部と連通流路43を通じて接続されている。これにより、キャビティ41bの分割部から供給されるエアは、連通流路43、ブロック部材51の開口部41cを通じて供給され、キャビティ41bの分割部毎に供給源のエア量を調節することにより、区画部60毎にエアの風量(エア供給量)が調節できるようになっている。
【0041】
また、
図4(a)に示すように、ブロック部材51に形成される開口部41cは、区画部60毎に開口面積が設定されている。本実施形態では、例えば、
図4(a)に示すように、長手方向両端に位置する開口部41cは、中央に位置する開口部41cに比べて開口面積が小さく設定されている。これにより、エア吐出部42の長手方向においてエア供給量を調節することができる。すなわち、長手方向両端部位置でエア供給量を少なくし、中央位置で長手方向両端部位置に比べてエア供給量を多くすることができる。
【0042】
このように、塗布膜に対するエア供給量を調節することで、塗布膜に対して乾燥状態を促進させる乾燥促進力を調節することができる。この乾燥促進力は、塗布膜の乾燥状態を促進させる度合いであり、塗布膜から水分、揮発成分を飛ばして乾燥状態を進ませるものである。本実施形態では、エア供給量に差を付けることにより乾燥促進力が調節され、エアの供給源からの供給量、開口部41cの開口面積を変えることにより調節することができる。例えば、エアの供給源からの供給量が同じであれば、開口部41cの開口面積が大きい区画部60では、エアの風量が多くなることにより相対的に乾燥が促進し、開口部41cの開口面積が小さい区画では、エアの風量が少なくなることにより相対的に乾燥の促進が抑えられるように調節される。また、エアの供給源のエア量を調節することにより、エア吐出部42全体のエア供給量を調節して乾燥促進力を調節することができ、さらに、区画部60毎のエア供給量を調節することにより、ブロック部材51の開口面積による調節よりも、さらに細かく区画部60毎に乾燥促進力を調節することができるようになっている。
【0043】
また、これらのブロック部材51は、
図4(b)に示すように単体で形成されているため、取り替え可能に構成されている。例えば、長手方向両端に位置するブロック部材51を中央に位置するブロックと交換することができる。また、ブロック部材51は、開口面積の異なる複数種類のブロック部材51が用意されており、ブロック部材51の配置を自由に組み替えることにより、塗布膜に対するエアの風量を調節し、予め乾燥促進力を自由に調節できるようになっている。
【0044】
また、乾燥器40は、塗布膜に対して高さ位置を調節できるように形成されている。本実施形態では、塗布器34の側面部34bには、Z方向に延びるレールと、レールに沿って移動するスライダで構成される昇降機構が設けられており、この昇降機構を駆動制御することにより、乾燥器40が塗布器34に対してZ方向に変位し、乾燥器40の高さ位置が調節されるように構成されている。これにより、乾燥器40の高さ位置を調節することによりエア吐出部42から供給されたエアが塗布膜に供給される量を調節することができる。すなわち、この乾燥器40の高さ位置を調節することによって、塗布膜に到達する風量が調節されることによりエア供給量が調節され、結果として乾燥促進力を調節することができるようになっている。
【0045】
また、上記塗布装置は、制御装置を有している。制御装置は、上述した各種駆動装置の駆動を制御するものであり、予め記憶されたプログラムに従って一連の処理動作を実行すべく、各ユニットの駆動装置を駆動制御するとともに、塗布動作に必要な各種演算を行うものである。
【0046】
この制御装置には、乾燥器40の乾燥促進力を制御するための乾燥分布情報が記憶されている。乾燥分布情報は、塗布器34により形成された基板W上の塗布膜Cの乾燥分布を示す情報であり、基板W上の塗布膜Cの部位(位置)と乾燥状態とが関連づけられたデータである。制御装置は、この乾燥分布情報から塗布膜Cの部位に対する乾燥促進力を調節する。
【0047】
具体的には、乾燥分布情報は、塗布膜Cの領域(部位)に対する乾燥状態が紐付けられており、
図5に示す例では、塗布方向(X軸方向)に5領域、幅方向(Y軸方向)に3領域に分けられて形成されており、それぞれの領域の乾燥状態の度合いが把握されている。
図5では、乾燥の度合いが相対的にA~Cで示されており、Aが相対的に最も乾燥が進んでおり、B、Cになるほど、相対的に乾燥が進んでいない状態を示している。例えば、塗布方向において、最初に塗布される部分(
図5の塗布膜Cにおいて右端側)は、Aで示され、乾燥が進んでいることを示している。また、塗布膜Cの中央部分は、Cで表されており、周囲が塗布膜Cで囲まれていることから乾燥が相対的に進んでいないことを示している。同様にして、幅方向についても、A~Cで乾燥の度合いが示されており、塗布膜Cの15個の領域それぞれが塗布方向、幅方向の順に、AB、CC等のように乾燥状態が示されている。例えば、最初に塗布される部分(
図5の塗布膜Cにおいて右端側)の幅方向両端部は、乾燥状態はABであり、中央位置の乾燥状態はCCであり、塗布方向最終端(
図5の塗布膜Cにおいて左端側)の幅方向両端部は、BCである。
【0048】
このような乾燥分布情報は、予め、形成された塗布膜Cから乾燥状態のデータが取得される。すなわち、事前に設定された塗布条件で塗布器34により塗布膜Cを形成し、その塗布膜Cを表面観察することにより各領域における乾燥状態が把握され、この乾燥状態がその塗布条件における乾燥分布情報とされる。なお、乾燥分布情報は、予め取得された1つの乾燥分布情報を常に用いるものでもよく、予め、定期的に取得された乾燥分布情報を用いて、塗布装置の稼働時間、ロット等に応じて乾燥分布情報を適宜更新して用いるものであってもよい。
【0049】
そして、制御装置は、この乾燥分布情報に基づいて乾燥器40の乾燥促進力を調節する。すなわち、塗布膜Cの各領域のAA~CCの乾燥状態に応じて、乾燥器40に取り付けられたブロック部材51の開口面積に応じて、塗布器40から吐出されるエア量、開口部41cの高さ位置が設定されることにより乾燥促進力が調節される。本実施形態では、幅方向において、中央位置のブロック部材51が両端部位置のブロック部材51に比べて開口面積が大きく設定されている点が考慮され、エア量、開口部高さ位置が調節される。
【0050】
ここで、
図6は、(a)塗布開始端部、(b)中央部、(c)塗布終了端部における乾燥器40の乾燥促進力の調節状態を示すものであり、左側図は、Y軸方向から見た図、右側図は、X軸方向から見た図である。
図6において、矢印の大きさ、太さは、模式的にエア供給量を示すものとして表したものである。
【0051】
図6(a)に示すように、塗布開始端部では、乾燥状態が幅方向両端部でAB、中央部でBCであるため、幅方向両端部よりも中央部を乾燥促進力が大きくなるように調節される。具体的には、
図6(a)右側図に示すように、エア供給源からのエアの供給量は同じに設定されることで、ブロック部材51の開口面積の違いにより、エア吐出部42の両端位置のブロック部材51よりも中央位置のブロック部材51から供給されるエア量が多く調節され、塗布膜Cの幅方向両端部よりも中央部の塗布膜Cに対して乾燥状態が促進されるように調節される。
【0052】
次に、塗布方向中央部では、乾燥状態がすべてCCであるため、塗布開始端部の設定に比べて乾燥促進力を大きくするように調節される。具体的には、乾燥器40の高さ位置が塗布開始端部よりも塗布膜Cに近接する位置に調節される。そして、エア供給源からのエア量が大きくなるように調節され、エア吐出部42のすべてのブロック部材51からほぼ同じ風量のエアが供給されるように調節される。これにより、塗布方向中央部における塗布膜Cは、幅方向に亘って塗布膜Cに供給されるエア量が増大し、塗布開始端部に比べて乾燥状態が促進される。
【0053】
次に、塗布方向終了端部では、乾燥状態が幅方向中央部でCC、幅方向両端部でBCであるため、幅方向両端部よりも幅方向中央部の方が乾燥促進力が大きくなるように調節される。また、塗布方向終了端部では、塗布方向開始端部よりも乾燥状態が進んでいないため、塗布方向開始端部よりも乾燥促進力が大きくなるように調節される。具体的には、乾燥器40の高さ位置を塗布開始端部と同じ高さ位置に戻し、エア供給源からのエアの供給量が塗布開始端部に比べて大きくなるように調節される。これにより、塗布開始端部に比べて乾燥促進力が大きくなった状態に調節される。なお、このような調節でも、エア供給源からのエアの供給量が一定であってもブロック部材51の開口面積の違いにより、幅方向中央位置における乾燥促進力が大きくなるが、エア供給源からのエアの供給量が幅方向中央位置で大きくなるように調節することで、幅方向中央位置の塗布膜Cに対して乾燥促進力をさらに大きくなるように調節してもよい。
【0054】
このように、上記実施形態における塗布装置によれば、塗布膜Cの乾燥分布情報から塗布膜Cの部位に応じて乾燥促進力が調節されるため、塗布膜Cの結晶状態の不均一性を抑えつつ乾燥させることができる。すなわち、乾燥分布情報から基板Wの塗布膜Cの部位に対する乾燥状態が把握することができるため、この乾燥分布情報から塗布膜Cの部位に応じて乾燥器40の乾燥促進力、すなわち、乾燥させるための出力を調節する。具体的には、乾燥が相対的に進んでいる部位には、乾燥促進力を弱め、乾燥が相対的に遅れている部位には、乾燥促進力を強めて乾燥させるように調節する。これにより、塗布膜C全体として、乾燥状態の不均一性を抑えることにより、塗布膜Cの結晶が大きく成長しやすくなり、塗布膜Cの結晶状態が不均一になるのを抑えることができる。
【0055】
また、上記実施形態では、乾燥分布情報が予め実験などにより取得されたものを使用する例について説明したが、塗布膜形成直後の塗布膜Cの乾燥状態から取得されたものを使用するものであってもよい。例えば、
図7のように、塗布器34の塗布進行側と逆側に塗布膜Cの表面を観察できるカメラ7が設けられており、このカメラ7から取得された乾燥情報を基に乾燥分布情報が形成され、この乾燥分布情報から乾燥器40が制御されるものであってもよい。具体的には、ステージ21には、基板W上に形成された塗布膜Cを乾燥させるヒータ21aが設けられており、塗布器34から塗布液が吐出されて着液された直後から塗布液の乾燥が開始され、塗布膜Cが形成される。この塗布膜Cをカメラ7で撮像した画像情報から制御装置により乾燥状態が把握され、乾燥分布情報が形成される。そして、乾燥分布情報を基に、塗布器34の後に続く乾燥器40の乾燥促進力が調節されるものであってもよい。
【0056】
また、上記実施形態によれば、乾燥器40が塗布器34と一体化された例について説明したが、乾燥器40と塗布器34とが別のユニットに設けられるものであってもよい。一体化されている方が、塗布直後から乾燥状態が制御される点で好ましいが、乾燥状態をリアルタイムにフィードバックする構成などでは、乾燥状態を把握する時間を稼げるため、制御装置に高性能なPCを用いなくてもよい点で装置全体のコストを抑えることができる。
【0057】
また、上記実施形態では、エア吐出部42の区画部60が3つである場合について説明したが、区画は、2つでも、3つ以上でもよく、区画部60の数が多い方が、塗布膜Cの乾燥分布情報に細かく対応することができる。また、エア吐出部42の区画部60は、1つのみであってもよい。区画部60をなくすことで乾燥分布情報に対する対応力は低下するが、構成が簡素化されるため、装置コストを抑えることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、乾燥促進力の調節がエア供給量、乾燥器40の高さ位置、ブロック部材51の開口面積により調節される例について説明したが、これらをすべて備えるものでなくてもよく、任意に選択して調節されるものであってもよい。また、ヒータ、吸引手段など、エア供給手段以外の手段で乾燥促進力が調節されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
21 ステージ
30 塗布ユニット
34 塗布器
40 乾燥器
41C 開口部
42 エア吐出部
51 ブロック部材
60 区画部
C 塗布膜
W 基板