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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】端子接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/48 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
H01R4/48 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022148371
(22)【出願日】2022-09-16
(65)【公開番号】P2024043275
(43)【公開日】2024-03-29
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松平 直忠
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-035528(JP,A)
【文献】特開2016-199351(JP,A)
【文献】特開2006-084374(JP,A)
【文献】特開2017-111876(JP,A)
【文献】特開2001-313120(JP,A)
【文献】実開昭63-063978(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48
H01R 13/187
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端子(20)と、
前記第一端子(20)と離間する方向に移動可能に固定され、前記第一端子(20)に向けて押さえつけ可能に構成された板バネ部材(30)と、
前記第一端子(20)と前記板バネ部材(30)との間に配置され、前記第一端子(20)と電気的に接続可能となる第二端子(40)と、を有し、
前記板バネ部材(30)には、前記第一端子(20)に対向する面と反対側の面に被係合部(34)が設けられ、
前記被係合部(34)に係合する係合部材(50)を前記第一端子(20)と離間する方向に移動させることにより前記板バネ部材(30)が前記第一端子(20)と離間する方向に移動可能となり、
前記板バネ部材(30)の両側には、前記板バネ部材(30)の移動方向に沿う壁部材(15、16)が設けられ、
両側の前記壁部材(15、16)には、前記板バネ部材(30)が前記第一端子(20)から離間した位置において前記係合部材(50)が係合可能な段差(15a、16a)が設けられている、
端子接続構造。
【請求項2】
前記板バネ部材(30)の移動方向に沿う壁部材(15、16)が設けられ、
前記壁部材(15、16)には、前記板バネ部材(30)の移動量に応じた目印(16c)が設けられている、
請求項1に記載の端子接続構造。
【請求項3】
前記被係合部(34)は爪形状であり、前記被係合部(34)の開口部(34a)は前記板バネ部材(30)の移動方向と直交する方向に設けられ、
前記段差(15a、16a)に前記係合部材(50)が係合している時に、前記係合部材(50)と前記被係合部(34)の係合を解除可能である、
請求項1または2に記載の端子接続構造。
【請求項4】
前記板バネ部材(30)の移動方向に沿う壁部材(15、16)が設けられ、
前記壁部材(15、16)を挟んで一対の端子接続スペース(14)が設けられ、
両面に前記端子接続スペース(14)が設けられた前記壁部材(15、16)の少なくとも一方の面には、前記端子接続スペース(14)の内側に向かって突出する厚肉部(15c)が設けられる、
請求項1または2に記載の端子接続構造。
【請求項5】
前記第二端子(40)には、略円形の孔(42a)が設けられ、
前記第一端子(20)には、前記孔(42a)に嵌合する嵌合用凸部(23)が設けられ、
前記嵌合用凸部(23)の突出量は前記第二端子(40)の厚みよりも小さい、
請求項1または2に記載の端子接続構造。
【請求項6】
前記第一端子(20)には、前記第二端子(40)の外周側に前記第二端子(40)の位置決めを行う位置決め用凸部(24)が設けられ、
前記板バネ部材(30)が固定位置に移動しているときには、前記位置決め用凸部(24)と前記板バネ部材(30)とが接触しない、
請求項に記載の端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、CO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。
例えば、特許文献1には、電動化技術に関する発明として、タブ端子をバスバー端子と締結クリップで挟み込んでタブ端子とバスバー端子とを接続する端子接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-109039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動化技術に関する特許文献1に記載の技術においては、タブ端子をバスバー端子と締結クリップで挟み込んだ後に、それらをコネクタハウジングに挿入する作業などが必要となり、組立てが複雑になり易いという課題がある。また、そのために、作業時間を費やし易く作業設備の利用時間が長くなり易いという課題もある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、より作業性の良い端子接続構造を提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
端子接続構造は、第一端子と、前記第一端子と離間する方向に移動可能に固定され、前記第一端子に向けて押さえつけ可能に構成された板バネ部材と、前記第一端子と前記板バネ部材との間に配置され、前記第一端子と電気的に接続可能となる第二端子と、を有し、前記板バネ部材には、前記第一端子に対向する面と反対側の面に被係合部が設けられ、前記被係合部に係合する係合部材を前記第一端子と離間する方向に移動させることにより前記板バネ部材が前記第一端子と離間する方向に移動可能となり、前記板バネ部材の両側には、前記板バネ部材の移動方向に沿う壁部材が設けられ、両側の前記壁部材には、前記板バネ部材が前記第一端子から離間した位置において前記係合部材が係合可能な段差が設けられている。
【発明の効果】
【0006】
より作業性の良い端子接続構造を提供することができる。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態に係る電装部材の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る端子接続構造の斜視図である。
図3】端子接続構造部の斜視図である。
図4】端子接続構造部の縦断面図である。
図5】板バネ部材の図示を省略した端子接続構造部の斜視図である。
図6】板バネ部材が固定位置に移動した場合の板バネ部材とマーカーラインとの位置関係を示す図である。
図7】板バネ部材が固定位置に移動していない場合の板バネ部材とマーカーラインとの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る電装部材1の斜視図である。
電装部材1は、図示しない基板を有する。基板は、ケーシング2で覆われる。ケーシング2には、放熱フィン(不図示)などが設けられる。ケーシング2には、端子接続構造3が固定される。なお、以下の説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ図1に示す電装部材1を基準にして用いる。また、各図に示す符号FRは前方を示し、符号UPは上方を示し、符号LHは左方を示す。
【0010】
図2は、本発明の実施の形態に係る端子接続構造3の斜視図である。図2には、端子接続構造3の組み付け途中の状態を示す。
端子接続構造3は、ケーシング2に固定される端子台10と、端子台10に設けられ基板に電気的に接続されるバスバー(第一端子)20と、バスバー20に沿って配置され、バスバー20と離間する方向に移動可能に固定された板バネ部材30と、バスバー20と板バネ部材30との間に配置され、バスバー20と電気的に接続可能となるリングターミナル(第二端子)40と、を有する。
【0011】
リングターミナル40は、高圧ケーブル(電気ケーブル)45(図1参照)の先端に設けられた端子である。リングターミナル40は高圧ケーブル45に固定される円筒状の固定部41と、固定部41の先端に形成された円環板状の接続部42(図3参照)とを有する。接続部42は、所定の厚さを有し、径方向中央部に所定の径を有する略円形の丸孔42a(図3参照)が形成されている。なお、略円形の略とは設計誤差を許容する意味で用いており、略円形とは実質的には円形を意味する。
本実施の形態の電装部材1は、PCU(Power Control Unit)である。電装部材1には、三相線に対応する三本の高圧ケーブル45が電気的に接続される。
【0012】
図3は、端子接続構造部3aの斜視図である。図4は、端子接続構造部3aの縦断面図である。
端子台10は樹脂製である。本実施の形態の端子台10は、左右方向(幅方向)に一対の固定部10aを有する。固定部10aには、固定具4(図1参照)が挿通されて、固定具4がケーシング2に固定される。固定具4は、例えば、ボルトである。
【0013】
本実施の形態の端子台10には、3つの端子接続構造部3aが形成される。各端子接続構造部3aは、端子が配置される配置面11を有する。配置面11の後部には、左右方向に延びる基部壁12が形成される。基部壁12は、配置面11に対して上方に突出する。基部壁12の前面には、前方に延びる延出壁13が形成される。延出壁13は、左右方向に等間隔に形成される。本実施の形態では、延出壁13は、3つの端子接続構造部3aに対応して4つ形成される。
配置面11と、基部壁12と、左右の隣接する延出壁13とによって囲まれた空間により、端子接続スペース14が形成される。端子接続スペース14は3つ形成される。
【0014】
各端子接続スペース14には、バスバー20が配置される。バスバー20は上下方向に厚みを有する金属板である。バスバー20は、インサート成形により端子台10に一体に固定される。バスバー20の上面21は端子接続スペース14で上方に露出する。バスバー20は、基部壁12を前後方向に跨いで固定される。
【0015】
バスバー20の後端部には、バスバー20の厚み方向に延びる筒状の接続部22が形成される。接続部22を介してバスバー20は基板の回路に電気的に接続される。ここで、バスバー20と基板の回路との接続構造に関しては、本実施の形態のような筒状の接続部22を用いる構成に代えて、バスバー20に穴を形成するのみの構成や、ナット溶接等、一般的な接続構造を採用することができる。
【0016】
図5は、板バネ部材30の図示を省略した端子接続構造部3aの斜視図である。
図4図5に示すように、バスバー20には、リングターミナル40の丸孔42aに嵌合する嵌合用凸部23が設けられる。嵌合用凸部23は、上面21に対して上方に突出する円柱状である。嵌合用凸部23は、バスバー20の左右中央部に形成される。嵌合用凸部23は、リングターミナル40の丸孔42aの内径と同様の外径に形成される。本実施の形態の嵌合用凸部23は、リングターミナル40の厚さよりも小さい高さ(上面21に対する突出量)に形成される。
【0017】
バスバー20において、嵌合用凸部23よりも基部壁12側には、バスバー20の上面21に対して上方に突出する端子ストッパー(位置決め用凸部)24が設けられる。端子ストッパー24は、円柱状である。端子ストッパー24は、左右に一対形成される。端子ストッパー24は、嵌合用凸部23からリングターミナル40の接続部42の幅W42(図3参照)だけ離間した位置に形成される。すなわち、嵌合用凸部23にリングターミナル40が嵌合した場合に、左右の端子ストッパー24のそれぞれにリングターミナル40の外周部が当接する位置に、左右の端子ストッパー24が形成される。これにより、リングターミナル40の外周部が端子ストッパー24に当接すると、リングターミナル40の丸孔42aが嵌合用凸部23に嵌合可能な位置に位置決めされる。
【0018】
端子ストッパー24は、リングターミナル40の厚さよりも高く形成される。すなわち、端子ストッパー24は嵌合用凸部23よりも高く(上面21に対する突出量が大きく)形成される。よって、リングターミナル40が、嵌合用凸部23の上方を越えて前方から後方に向けて挿入される場合であっても、リングターミナル40を端子ストッパー24に当接させて、位置決めし易くなっている。
【0019】
バスバー20の上面21には、上面21に沿って配置される板バネ部材30が設けられる。板バネ部材30は前後方向に延びる金属製の板状部材である。板バネ部材30は後端部(第一端部)31が溶接されてバスバー20に固定される。板バネ部材30は、溶接に代えてリベットカシメなどによってバスバー20に固定されてもよい。板バネ部材30は、バスバー20と共に端子台10にインサート成形される。板バネ部材30は、基部壁12に後端部31がインサート成形される。よって、板バネ部材30は、前端部(第二端部)32が固定されない。
【0020】
板バネ部材30は、前端部32をバスバー20から上方に離間させて弾性変形させることにより、前端部32とバスバー20との間を前方に開放させことができる。本実施の形態では、リングターミナル40は端子接続スペース14に対して前方から後方に向けて挿入させることにより、リングターミナル40を、バスバー20と板バネ部材30との間に配置可能である。
また、板バネ部材30は、弾性復元させることにより、リングターミナル40に当接してリングターミナル40をバスバー20に向けて押さえ付け可能に構成されている。
【0021】
板バネ部材30は、前端部32とバスバー20との間が前方に開放する開放位置(図4の実線参照)と、リングターミナル40をバスバー20に向けて押さえ付ける固定位置(図4の二点鎖線参照)との間を移動可能に構成されている。
【0022】
固定位置では、板バネ部材30は、リングターミナル40が配置されている場合に、リングターミナル40の厚みよりも高さが低い嵌合用凸部23には接触しない。すなわち、板バネ部材30が、リングターミナル40の厚みにより、嵌合用凸部23に接触しない状態でリングターミナル40を押さえ付けることが可能である。よって、リングターミナル40はバスバー20に適切な接触圧で押さえ付けられ易くなっており、良好な電気的接続が確保され易くなっている。また、リングターミナル40がバスバー20に適切な接触圧で押さえ付けられることにより、リングターミナル40が嵌合用凸部23に引っ掛かった状態が保持され、嵌合用凸部23から抜けることを防止し易くできる。
【0023】
板バネ部材30の前後方向中央部には、断面視で、上方に略弧状に湾曲するストッパー回避部33が形成される。ストッパー回避部33は、板バネ部材30が固定位置に移動しているときに、端子ストッパー24から離間するように上方に湾曲している。これにより、板バネ部材30と端子ストッパー24とでリングターミナル40を挟み難くなっており、リングターミナル40が端子ストッパー24に誤って接続されることが抑制される。
【0024】
よって、本実施の形態では、固定位置において、板バネ部材30と端子ストッパー24とを接触させないことにより、リングターミナル40が端子ストッパー24に誤って接続されることを抑制しながら、リングターミナル40の位置決めができる。
【0025】
また、固定位置では、板バネ部材30が、端子ストッパー24や嵌合用凸部23から離間した状態で、リングターミナル40をバスバー20に押さえ付けることができるため、リングターミナル40を適切な接触圧で押さえ付け易く、リングターミナル40とバスバー20との良好な電気的接続を得易くなっている。
【0026】
板バネ部材30の前端部32には、被係合部の一例としての爪形状34が設けられる。爪形状34は、バスバー20と反対側の方向、すなわち、前端部32に対して上方に形成される。本実施の形態の爪形状34は、いわゆる、切り起こし形状である。爪形状34は、断面視(側面視)で前方が開放された略弧状に形成される。爪形状34は、断面視において、前端部32との間に前方側に開放される開口部34aを形成する。本実施の形態では、前方が、板バネ部材30の移動方向と直交する方向となる。
【0027】
爪形状34には、係合部材の一例としてのフックリング50が係合される。本実施の形態のフックリング50は、丸棒が略矩形のリング状に曲げられた形状の部材である。フックリング50は、隣接する延出壁13の左右幅W12(図3参照)に応じた左右幅を有する。フックリング50をリング状であるため、爪形状34に下部を係合させながら上部を把持可能である。フックリング50を上方に持ち上げることにより、板バネ部材30を上方に弾性変形させることができる。これにより、板バネ部材30とバスバー20との間が前方に開放され、リングターミナル40を板バネ部材30とバスバー20との間に挿入させることができる。
【0028】
端子接続スペース14には、板バネ部材30の移動方向に沿う方向、すなわち、本実施の形態では上下方向に沿う方向の壁部材15、16が設けられる。壁部材15、16は、嵌合用凸部23よりも前側に形成される。壁部材15、16は、板バネ部材30の前端部32が固定位置と開放位置との間を移動する範囲と平面視(板バネ部材30の移動方向に沿う方向視)で重複する位置に形成される。本実施の形態では、壁部材15、16は、端子接続スペース14の左右に一対設けられる。すなわち、左側の壁部材15と右側の壁部材16とが設けられる。壁部材15、16は、バスバー20に対して上方に突出する壁形状である。換言すれば、壁部材15、16は、延出壁13の内面から、端子接続スペース14の内側に向かって突出する部位である。
【0029】
左右両側の壁部材15、16の後部上方には、段差部15a、16aが形成される。段差部15a、16aは、バスバー20の上面21に対して段差を構成する。左側の段差部15aと右側の段差部16aとの間隔は、フックリング50の左右幅よりも小さく形成される。これにより、段差部15a、16aには、フックリング50の左右端を引っ掛けることができる。すなわち、バスバー20から離間した位置においてフックリング50が係合可能である。よって、フックリング50を段差部15a、16aに係合させることにより、板バネ部材30とバスバー20との間を開放する状態に保持することができ、リングターミナル40の設置が行い易くできる。また、板バネ部材30の爪形状34は前方側に開放される開口部34aを有するため、段差部15a、16aにフックリング50が係合している時に、フックリング50を前方に引き出すことにより、フックリング50と爪形状34との係合を解除可能である。
【0030】
段差部15a、16aの前部には、前方に進むに連れて上方に傾斜する(引き出し方向に進むに連れてバスバー20から離間する方向に傾斜する)フックガイド面15b、16bが形成される。これにより、フックリング50が前方に引き出されると、フックガイド面15b、16bによりフックリング50が上方に移動しながら引き出される。よって、フックリング50の取り外し時に、フックリング50を、リングターミナル40の固定部41よりも上方に向けて移動させ易くできる。
【0031】
左側の壁部材15には、段差部15aよりも前方に厚肉部15cが形成される。厚肉部15cは、段差部15aの壁部材15の部分よりも端子接続スペース14の内側に向かって突出する。厚肉部15cは、リングターミナル40がバスバー20に接続された際に、リングターミナル40の固定部41の位置となるような位置に形成される。厚肉部15cがあることにより、リングターミナル40が丸孔42aを中心に揺動して左側の延出壁13に近寄ることを抑制することができる。
【0032】
3つの端子接続スペース14にはそれぞれ厚肉部15cが形成されるため、隣接する端子接続スペース14のリングターミナル40同士が近接することを抑制できる。なお、3つの端子接続スペース14のうち、中央の端子接続スペース14に関しては、左右の壁部材15、16のいずれについても、壁部材15、16を挟んで一対の端子接続スペース14が設けられている。
【0033】
図6は、板バネ部材30が固定位置に移動した場合の板バネ部材30とマーカーライン16cとの位置関係を示す図である。図7は、板バネ部材30が固定位置に移動していない場合の板バネ部材30とマーカーライン16cとの位置関係を示す図である。
本実施の形態では、右側の壁部材16には、板バネ部材30の移動量に応じたマーカーライン(目印)16cが設けられている。マーカーライン16cは、前後方向に延びるライン状の段差形状である。マーカーライン16cは、板バネ部材30の移動量として、開放位置から固定位置への移動量に応じて形成される。すなわち、固定位置に移動した板バネ部材30の前端部32の上面よりも、やや上方の位置に形成される。これにより、板バネ部材30が固定位置に移動仕切らない場合には、板バネ部材30によりマーカーライン16cの一部が左上方から隠される。このため、板バネ部材30が固定位置に移動したか否かを目視可能になり、バスバー20とリングターミナル40との接続状態を確認できる。
【0034】
右側の壁部材16の前端部には、前端から後方に進むに連れて左側(接続スペース144の内側)に傾斜するターミナルガイド面16dが形成されている。リングターミナル40を挿入する際に、右側の壁部材16は、左側の厚肉部15cよりも奥側の出っ張りとなり易いが、ターミナルガイド面16dがあることにより、右側の壁部材16に、より引っ掛かり難くできる。なお、左側の壁部材15には、右側のターミナルガイド面16dに対応して左側のターミナルガイド面15dが形成される。よって、右側のターミナルガイド面16dに沿ってリングターミナル40が移動し易いと共に、リングターミナル40の抜き出し時には、左側の壁部材15に引っ掛かることが、より抑制される。
【0035】
端子接続構造部3aは、各端子接続スペース14において、ケーシング2に固定される端子台10と、端子台10に設けられ基板に電気的に接続されるバスバー(第一端子)20と、バスバー20と離間する方向に移動可能に固定された板バネ部材30と、バスバー20と板バネ部材30との間に配置され、バスバー20と電気的に接続可能となるリングターミナル(第二端子)40と、を有する。端子接続構造3は、3つの端子接続構造部3aを有する。
【0036】
次に、端子接続構造3における組み付け作業を説明する。
端子接続構造3の各端子接続構造部3aでは、作業者が端子20、40の接続作業を行う前に、予めフックリング50が段差部15a、16aに係合されて板バネ部材30が開放位置に保持されている。すなわち、端子台10などの部品の製造段階で予めフックリング50が段差部15a、16aに係合されて板バネ部材30が開放位置に保持された状態にされる。
【0037】
よって、作業者は、端子20、40の接続作業の際には、板バネ部材30を弾性変形させて開放位置に移動させることなく、リングターミナル40を端子接続スペース14の前方から後方に挿入して、リングターミナル40を板バネ部材30とバスバー20との間に簡易に配置可能である。そして、リングターミナル40が端子ストッパー24に当接して挿入が規制された後に、作業者は、フックリング50を前方に引き出すことにより、フックリング50と爪形状34との係合が解除され、板バネ部材30が、弾性復元してリングターミナル40に当接してリングターミナル40を抑え込む。よって、リングターミナル40の丸孔42aには嵌合用凸部23が嵌合してリングターミナル40が板バネ部材30に押さえつけられた状態で、リングターミナル40がバスバー20に電気的に接続されて固定される。
【0038】
したがって、作業者は、フックリング50を板バネ部材30の弾性力が強まる上方ではなくて、手前に抜き出すことにより爪形状34との係合を解除可能であり、板バネ部材30を弾性変形させる作業が抑制されている。また、板バネ部材30を弾性変形させる作業が抑制された状態で、フックリング50を取り外すことができるため、作業者の指等が板バネ部材30に挟まれることを防止できる。
なお、このフックリング50は再利用することもできる。
【0039】
以上説明したように、本発明を適用した本実施の形態によれば、端子接続構造3は、バスバー20と、バスバー20と離間する方向に移動可能に固定された板バネ部材30と、バスバー20と板バネ部材30との間に配置され、バスバー20と電気的に接続可能となるリングターミナル40と、を有し、板バネ部材30には、バスバー20と反対側の面に爪形状34が設けられ、爪形状34に係合するフックリング50により板バネ部材30が移動可能となる。
この構成によれば、爪形状34にフックリング50を係合させることで板バネ部材30が移動可能になるため、板バネ部材30の弾性を利用してバスバー20とリングターミナル40を簡易に接続できて、より作業性を良くすることができる。また、この構成によれば、作業時間を抑制し易く作業設備の利用時間を短くして、作業設備のエネルギー効率の改善に寄与できる。
【0040】
本実施の形態では、板バネ部材30の移動方向に沿う壁部材15、16が設けられ、壁部材15、16には、板バネ部材30の移動量に応じたマーカーライン16cが設けられている。
この構成によれば、板バネ部材30の移動した位置を目視可能になり、端子20、40の接続状態を確認できる。具体的には、マーカーライン16cが目視できれば固定位置まで板バネ部材30が移動し、リングターミナル40とバスバー20との電気的な接続が完了していることがわかる。一方で、マーカーライン16cが目視できない場合には、板バネ部材30が固定位置まで移動しておらず、リングターミナル40とバスバー20との電気的な接続状態が完全ではないことがわかる。
【0041】
また、本実施の形態では、板バネ部材30の両側には、板バネ部材30の移動方向に沿う壁部材15、16が設けられ、両側の壁部材15、16には、板バネ部材30がバスバー20から離間した位置においてフックリング50が係合可能な段差部15a、16aが設けられている。
この構成によれば、フックリング50を段差部15a、16aに係合させることにより、板バネ部材30とバスバー20との間を開放する状態に保持することができ、リングターミナル40の設置を行い易くできる。
【0042】
また、本実施の形態では、爪形状34の開口部34aは板バネ部材30の移動方向と直交する方向に設けられ、段差部15a、16aにフックリング50が係合している時に、フックリング50と爪形状34の係合を解除可能である。
この構成によれば、板バネ部材30の被係合部が爪形状34である場合において、フックリング50を爪形状34から取り外す際に板バネ部材30を持ち上げる方向に力を掛けなくてよいので、簡単にフックリング50と爪形状34の係合を解除することができる。また、フックリング50が段差部15a、16aに係合しているときに、フックリング50を取り外すことができるため、作業者の指等が板バネ部材30に挟まれることを防止できる。
【0043】
また、本実施の形態では、板バネ部材30の移動方向に沿う壁部材15、16が設けられ、壁部材15、16を挟んで一対の端子接続スペース14が設けられ、両面に端子接続スペース14が設けられた壁部材15、16の少なくとも一方の面には、端子接続スペース14の内側に向かって突出する厚肉部15cが設けられる。
この構成によれば、隣り合う端子20、40同士の距離が近づきすぎることを防止できる。
【0044】
また、本実施の形態では、リングターミナル40には、略円形の丸孔42aが設けられ、バスバー20には、丸孔42aに嵌合する嵌合用凸部23が設けられ、嵌合用凸部23の高さはリングターミナル40の厚みよりも小さい。
この構成によれば、板バネ部材30と嵌合用凸部23は離間し、板バネ部材30とリングターミナル40が接触した状態で固定されるので、板バネ部材30がリングターミナル40をバスバー20に押さえつける接触圧を確保して良好な電気的接続を確保し易くしながら、リングターミナル40が嵌合用凸部23から抜けることを防止し易くできる。
【0045】
また、本実施の形態では、バスバー20には、リングターミナル40の外周側にリングターミナル40の位置決めを行う端子ストッパー24が設けられ、板バネ部材30が固定位置に移動しているときには、端子ストッパー24と板バネ部材30とが接触しない。
この構成によれば、固定位置において、板バネ部材30と端子ストッパー24とを接触させないことによりリングターミナル40が端子ストッパー24に誤って接続されることを抑制しながらリングターミナル40の位置決めができるとともに、板バネ部材30がリングターミナル40をバスバー20に押さえつける接触圧を確保して良好な電気的接続を確保し易くしながら、リングターミナル40が嵌合用凸部23から抜けること防止できる。
【0046】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0047】
上記実施の形態では、電装部材1としてのPCUに設けられた端子接続構造3の構成を説明したが、電装部材1としてはPCUに限定されず、端子と端子が接続される任意の電装部材に端子接続構造を設けてもよい。
【0048】
上記実施の形態では、第一端子としてのバスバー20を例示し、第二端子としてリングターミナル40を例示した。本発明の構成は、バスバー20とリングターミナル40との接続構造に適用されるのが好適ではあるが、第一端子や第二端子はバスバー20やリングターミナル40に限定されず、任意の端子の接続構造に本発明の構成を適用可能である。
【0049】
上記実施の形態では、端子接続構造3が端子接続構造部3aを3つ有する構成を説明したが、端子接続構造部3aの数は限定されない。すなわち、端子接続構造部3aは1つでもよいし、2つや、4つなど、任意の数の端子接続構造部3aが設けられてもよい。
【0050】
上記実施の形態では、開放位置では、バスバー20と板バネ部材30との間が前方に開放され、爪形状34が前方に開口する開口部34aを有する構成を例示し、リングターミナル40が前後方向(水平方向)に挿抜される構成を説明したが、これに限定されない。例えば、開放位置では、バスバー20と板バネ部材30との間が上方に開放され、爪形状34は上方に開口する開口部を備えてもよく、リングターミナル40が上下方向(鉛直方向)に挿抜される構成でもよい。換言すれば、リングターミナル40の挿抜方向は前後方向に限定されず、上下方向でもよい。
【0051】
上記実施の形態では、係合部材の一例としてリング状のフックリング50を例示した。しかしながら、係合部材はリング状の部材に限定されない。係合部材としては、壁部材15、16の部位と爪形状34を仮係止できればよいため、例えば、細長い板の先端に穴を開けた形状などでもよい。このとき、マーカーライン16cを阻害しないように係合部材の形状を工夫すればよい。
【0052】
上記実施の形態では、係合部材の一例としてリング状のフックリング50を例示し、被係合部の一例としての爪形状34を例示した。しかしながら、係合部材は、例えば、細長い板の先端が爪形状であり、被係合部が、係合部材の爪形状に係合されるリング状でもよい。このとき、マーカーライン16cを阻害しないように係合部材の形状を工夫すればよい。
【0053】
上記実施の形態では、被係合部の一例としての爪形状34は、板バネ部材30に一体に形成される構成を説明したが、例えば、別体の爪形状34の部材を、板バネ部材30に取り付けて板バネ部材30と一体にしてもよい。
【0054】
上記実施の形態では、板バネ部材30が、第一端子の一例としてのバスバー20に沿って配置される構成を説明し、板バネ部材30は前後方向に長手形状を有する構成を例示した。しかしながら、板バネ部材30の形状はこれに限定されない。すなわち、板バネ部材は、第一端子に沿った長手形状を有する構成に限定されず、例えば、板バネ部材が側断面視で屈曲していてもよい。また、板バネ部材が、第一端子に対して上面視で斜めに配置されてもよい。すなわち、板バネ部材は、第一端子に第二端子を押さえつけて第一端子と第二端子との電気的接続を適切に得られる形状であれば、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、任意の形状、配置が可能である。
【0055】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0056】
(構成1)第一端子と、前記第一端子と離間する方向に移動可能に固定された板バネ部材と、前記第一端子と前記板バネ部材との間に配置され、前記第一端子と電気的に接続可能となる第二端子と、を有し、前記板バネ部材には、前記第一端子と反対側の面に被係合部が設けられ、前記被係合部に係合する係合部材により前記板バネ部材が移動可能となる、端子接続構造。
この構成によれば、被係合部に係合部材を係合させることで板バネ部材が移動可能になるため、板バネ部材の弾性を利用して第一端子と第二端子を簡易に接続できて、より端子の接続作業の作業性を良くすることができる。また、この構成によれば、作業時間を抑制し易く作業設備の利用時間を短くして、作業設備のエネルギー効率の改善に寄与できる。
【0057】
(構成2)前記板バネ部材の移動方向に沿う壁部材が設けられ、前記壁部材には、前記板バネ部材の移動量に応じた目印が設けられている、構成1に記載の端子接続構造。
この構成によれば、板バネ部材の移動した位置を目視可能になり、端子の接続状態を確認できる。
【0058】
(構成3)前記板バネ部材の両側には、前記板バネ部材の移動方向に沿う壁部材が設けられ、両側の前記壁部材には、前記板バネ部材が前記第一端子から離間した位置において前記係合部材が係合可能な段差が設けられている、構成1に記載の端子接続構造。
この構成によれば、係合部材を段差に係合させることにより、板バネ部材と第一端子との間を開放する状態に保持することができ、第二端子の設置が行い易くできる。
【0059】
(構成4)前記被係合部は爪形状であり、前記被係合部の開口部は前記板バネ部材の移動方向と直交する方向に設けられ、前記段差に前記係合部材が係合している時に、前記係合部材と前記被係合部の係合を解除可能である、構成3に記載の端子接続構造。
この構成によれば、被係合部が爪形状である場合に、係合部材を被係合部から取り外す際に板バネ部材を持ち上げる方向に力を掛けなくてよいので、簡単に係合部材と被係合部の係合を解除することができる。また、係合部材が段差に係合しているときに、係合部材を取り外すことができるため、作業者の指等が板バネ部材に挟まれることを防止できる。
【0060】
(構成5)前記板バネ部材の移動方向に沿う壁部材が設けられ、前記壁部材を挟んで一対の端子接続スペースが設けられ、両面に前記端子接続スペースが設けられた前記壁部材の少なくとも一方の面には、前記端子接続スペースの内側に向かって突出する厚肉部が設けられる、構成1に記載の端子接続構造。
この構成によれば、隣り合う端子同士の距離が近づきすぎることを防止できる。
【0061】
(構成6)前記第二端子には、略円形の孔が設けられ、前記第一端子には、前記孔に嵌合する嵌合用凸部が設けられ、前記嵌合用凸部の突出量は前記第二端子の厚みよりも小さい、構成1に記載の端子接続構造。 この構成によれば、板バネ部材と嵌合用凸部は離間し、板バネ部材と第二端子が接触した状態で固定されるので、板バネ部材が第二端子を押さえつける接触圧を確保して良好な電気的接続を確保し易くしながら、第二端子が嵌合用凸部から抜けることを防止し易くできる。
【0062】
(構成7)前記第一端子には、前記第二端子の外周側に前記第二端子の位置決めを行う位置決め用凸部が設けられ、前記板バネ部材が固定位置に移動しているときには、前記位置決め用凸部と前記板バネ部材とが接触しない、構成6に記載の端子接続構造。
この構成によれば、固定位置において、板バネ部材と位置決め用凸部とを接触させないことにより第二端子が位置決め用凸部に誤って接続されることを抑制しながら第二端子の位置決めができるとともに、板バネ部材が第二端子を押さえつける接触圧を確保して良好な電気的接続を確保し易くしながら、第二端子が嵌合用凸部から抜けること防止できる。
【符号の説明】
【0063】
3 端子接続構造
14 端子接続スペース
15 壁部材
15a 段差部(段差)
15c 厚肉部
16 壁部材
16a 段差部(段差)
16c マーカーライン(目印)
20 バスバー(端子、第一端子)
23 嵌合用凸部
24 端子ストッパー(位置決め用凸部)
30 板バネ部材
34 爪形状(被係合部)
34a 開口部
40 リングターミナル(端子、第二端子)
42a 丸孔(孔)
50 フックリング(係合部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7