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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ガススプリング
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/00 20060101AFI20241030BHJP
【FI】
F16F9/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022504558
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 IT2020050183
(87)【国際公開番号】W WO2021014478
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】102019000012786
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】522029833
【氏名又は名称】カペレル フトゥラ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ カペレル
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04702463(US,A)
【文献】国際公開第1999/042741(WO,A1)
【文献】実開昭63-177335(JP,U)
【文献】特開2011-007282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の要素(2)、
第2の要素(1)、および
リミット(3)、
を含むガススプリング(100)において、
前記第2の要素(1)が、
第1のチャンバ(11)、前記第1のチャンバ(11)にアクセスするための第1の開口部(14)、および第1の内部表面(12)、
を含み、
前記第1の要素(2)が、基準平面に対し固定可能であり、かつ
第2のチャンバ(21)、前記第2のチャンバ(21)にアクセスするための第2の開口部(23)、および外部壁(22)を含み、しかも前記第1の開口部(14)を通って前記第2の要素(1)の前記第1のチャンバ(11)内に挿入されており、
前記第1および第2の要素(2、1)が可動であり、軸(X)に沿って往復摺動し、
前記リミット(3)が、
前記第2の要素(1)の最大行程を前記第1の要素(2)の前記外部壁(22)の延長に制限するべく、前記軸(X)に対して平行に前記第2のチャンバ(21)内へ前記第2の開口部(23)を通って摺動するように適応されたステム(32)およびヘッド(31)、
を含むガススプリングであって、
前記第1および第2のチャンバ(11、21)が前記ステム(32)と前記第2の開口部(23)の間の既存のあそびを通って連通し、前記第2の要素(1)が、前記第1の開口部(14)を介して、前記第1の要素(2)の前記外部壁(22)に沿って摺動し、
前記第2の要素(1)は、ガスが正の力を及ぼす第1の表面(10)を含み、ガスの圧力が力を及ぼす前記第1の表面(10)の面積は、前記第2の要素(1)自体の内部面積から前記ステム(32)の面積を減算したものに等しく、
前記リミット(3)の前記ヘッド(31)に含まれ、前記第1の表面(10)と同じ方向に面する第2の表面(20)をさらに含み、ガスが同様に正の力を及ぼす前記第2の表面(20)において前記ガスが利用できる面積は、前記リミット(3)の頂部の面積に等しい、ことを特徴とする、ガススプリング(100)。
【請求項2】
前記第1の要素(2)の前記外部壁(22)と前記第2の要素(1)の前記第1の内部表面(12)との間に配置された、第1の封止手段又は第1のシール(5)をさらに備える、請求項1に記載のガススプリング(100)。
【請求項3】
前記第1の要素(2)の第2の内部表面(211)内に設置された、前記ガススプリング(100)内にガスを充填するための第1のガス充填用バルブ(6)を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のガススプリング(100)。
【請求項4】
前記リミット(3)が前記第2の要素(1)と一体になっていることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載のガススプリング(100)。
【請求項5】
前記リミット(3)の前記ステム(32)と前記第1の要素(2)の前記第2の開口部(23)との間に設置された、前記リミット(3)を誘導するための第1の誘導用手段(24)、および前記第1の開口部(14)に設置された、前記第2の要素(1)を誘導するための第2の誘導用手段を含むことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか一項に記載のガススプリング(100)。
【請求項6】
前記第2の要素(1)が、第2の充填用バルブ(61)を含むことを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のガススプリング(100)。
【請求項7】
前記第2の要素(1)が、前記第2の充填用バルブ(61)を前記第1のチャンバ(11)と連結するためのチャネル(62)を含むことを特徴とする、請求項6に記載のガススプリング(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガススプリングに関する。
【0002】
本発明は、多くの場合特別製の工具および金型の製作を必要とする、例えば金属またはプラスチックの鋳造構成要素などの鋳造構成要素の生産という広い分野の一部を成すものである。
【背景技術】
【0003】
このような金型の製造においては、標準化された要素、例えばガイド、ねじ、特殊な角線スプリング、およびガススプリング(一般に窒素シリンダとも呼ばれる)を使用するのが慣習となっている。
【0004】
詳細には、ガススプリングは通常、以下のものを含む:
- 例えばシリンダまたはジャケットと呼ばれる固定された外部本体;
- ステムとも呼ばれる可動構成要素;
- ステム用のガイドブッシング;
- シール;
- 充填用バルブとも呼ばれる、シリンダ内にガスを充填するための要素。
【0005】
現在、スラスト要素全般の効率を改善するために多大な努力が払われつつある。その目的は、スプリングによって加えられる力を最大化すると同時にそのサイズ(ひいては可動部品のサイズおよび行程)を制限しようと試みることにある。
【0006】
従来の角線スプリングとは異なり、有意な力を及ぼすために非常に長い行程を必要とせず、ガスが作用する有効表面および圧力に正比例する力で、その応答がほぼ即時であることから、多くの利用分野において、ガススプリングが従来の角線スプリングに取って代わってきている。
【0007】
今日まで、広く使用されている大部分のガススプリングは、2つの異なる形で動作する。図5Aに示されている第1のガススプリングは、シール1とステム2の外部表面の間の封止を利用している。図5Bに示されている第2のガススプリングは、シール3とジャケット4の内部表面の間の封止を利用している。
【0008】
より詳細には、両方の変形形態共、概して、チャンバ4の内側を摺動するように拘束されたピストン50を含む。ここで「ステムシール」として定義されている第1のガススプリングでは、拘束された表面、すなわちシール1と接触している表面は、ピストン50のステム2の外部表面である。専門用語では「ピストンシール」として知られているもののここでは「ジャケットシール」として定義されている第2のガススプリングでは、シール3は、ジャケット4内を摺動するピストン50自体の外部直径上に設置されている。
【0009】
2つの変形形態の利点および不利点は、当該部門において周知である。すなわち、ステムシールスプリングにおいては、ガス圧が力を加えることのできる有効表面が、ステム2自体の断面に正比例する。換言すると、チャンバ4の壁は、スプリングの動作中固定した状態にとどまり、ピストン50自体が、チャンバ4内に入るにつれてガスのために利用可能な容積10を削減し、こうして及ぼされる圧力を増大させる。
【0010】
一方、ジャケットシールスプリングにおいては、チャンバ4の壁は、内燃機関内のピストンの動作と同様、ピストン50の頂部30で構成される。ピストン50自体の摺動によってひき起こされるチャンバ4の容積10の削減は、この場合ピストン50の頂部30の全面積に作用するガス圧の増大を発生させる。
【0011】
全体の寸法が等しい場合、ジャケットシールスプリングは、ガスが作用できる有効表面積がより大きいためにステムシールスプリングに比べて大きな力を加えることができるということは明白である。しかしながら、このタイプのスプリングに典型的な欠点は、封止構成要素の耐用年数およびチャンバ内に発生する圧力がより高いことに関係するものである。
【0012】
シールおよび摺動表面の優れた機能および低い摩耗を保証するためには、シール自体と接することが意図されたこれらの摺動表面に高度の表面仕上げおよび硬度を備える必要がある。
【0013】
表面処理の分野で周知の通り、内部表面上よりも外部表面上で高度の仕上げを得ることの方がはるかに容易である。同じ基準は、例えば窒化などの硬化処理の実施においても適用される。
【0014】
中空シリンダすなわちジャケットの内部表面よりもピストンのステムの外部表面の方が機械加工または表面処理の適用がはるかに容易であることから、結果として耐久性の観点から見たステムシールスプリングの性能は、ジャケットシールスプリングの性能よりもはるかに高い。
【0015】
さらに、公知のタイプのジャケットシールスプリングの場合、初期圧縮段階におけるチャンバの容積と最終段階におけるチャンバの容積の間の比率は、ステムシールで得られる値に比べて非常に高いものである。結果として、最終圧力および温度は、シールの無欠性ひいてはシリンダの封止を損なう臨界値に達する。
【0016】
現在、圧力は2つの方法、すなわちチャンバ内に導入されるガスの量を制限することによるかまたは2つの結合された要素の行程の延長を制限することによって、低下させることができる。
【0017】
しかしながら、これによりメーカは、第1の場合では、より低い圧力で同じ力を発生させることができるようにスプリングのサイズを過剰に大きくせざるを得なくなり、一方第2の場合では、利用可能なより短い行程を補償するようにスプリングを設計せざるを得なくなる。
【0018】
ガススプリングの劣化および性能損失のさらなる原因は、潤滑油などの液体が作業環境内に存在することにある。したがって、環境に曝露されたあらゆる表面がこれらの物質で覆われる可能性があると考えられる。
【0019】
これは重要な問題であり、実際、ステムシールスプリングおよびジャケットシールスプリングの両方において、ピストンステムは通常、ガイドバンドまたはステムスクレーパなどの構成要素または実際のシールと接触状態にある。その結果、ピストンに荷重が加わりチャンバの容積を削減し始めた時点で、その摺動はステムと接触構成要素の間の界面に減圧を作り出し、これが近くに被着したあらゆる油粒子または液体の進入に有利に作用する。
【0020】
この問題は、ジャケットシールスプリングにおいてより明白であるが、それはピストンの移動時に、チャンバの反対側でピストン自体とガイドバンドの間に追加の容積が作り出され、結果としてこの空間内に減圧が生成され、これが油または他の物質を呼込み、これらが、有効容積を減じることでスプリングの効率を低下させさらには経時的にスプリングを損傷させることになると考えられるからである。
【0021】
油が低減させた容積は同様に、チャンバ内部のガス圧の増大を生み出し、これは動作中非常に危険であり得る。
【0022】
さらに、両方の変形形態の典型的な問題は、ステムとチャンバ間の封止にある。ステムは、外部環境に曝露されていることから、油または他の物質は、塵埃または他の材料などの固体粒子のための担体として作用する可能性があり、このときこれらは、チャンバの界面または内部に進入し、繊細な摺動表面に傷をつけるかまたは他の形でこれらの表面に影響を及ぼし得る。
【0023】
この不都合を制限する能力を有する装置が市販されているものの、それらは追加の構成要素であり、スプリング自体とは別個の、例えば摺動界面を保護するべく頂部に適用可能なケーシングまたは保護装置である。
【0024】
要約すると、サイズが等しい場合、一方でジャケットシールスプリングはステムシールスプリングよりも大きい力を発生する能力を有するものの、はるかに摩耗を受け易いものでもあり、これがそれらの平均耐用年数を著しく短縮する。
【0025】
したがって、現在達成可能な規格よりも大きな力を及ぼすことができると同時に、改善された耐久性を備えたガススプリングに対するニーズがなおも存在する。
【0026】
公知の技術に典型的な上述の欠点を有するガススプリングのいくつかの例は、特許文献1から3に見い出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【文献】米国特許第4550899号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0826898号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3098474号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
したがって、本発明の主な目的は、説明された2つの実施形態のそれぞれの利点を組み合わせることによって上述の欠点を解決するガススプリングを提供することにある。
【0029】
本発明の別の目的は、生産が簡単であると同時に経済的でもある、改善された特性を有するガススプリングを作ることにある。
【0030】
さらに、本発明の目的は、安全性に利するように、及ぼされる力が同等である場合により低い平均動作圧力で作動する能力を有するより信頼性の高いガススプリングを提供することにある。
【0031】
有利には、これは、圧縮に起因する圧力増加により容易に対応できるように2つの往復摺動要素内に2つの連通する圧力チャンバを提供するように設計されたスプリングを用いて達成される。
【0032】
本発明の別の目的は、締結用外部付属備品を用いることなく、ガススプリングのチャンバ内への汚染物質の進入を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
したがって本発明の目的は、第1の要素、第2の要素、およびリミットを含むガススプリングにあり;第2の要素は、第1のチャンバおよび第1のチャンバにアクセスするための第1の開口部を含み;第1の要素は基準平面に対し固定可能であり、かつ第2のチャンバ、第2のチャンバにアクセスするための第2の開口部、および外側壁を含み、第1の開口部を通って第1の要素の第1のチャンバ内に挿入されており;第1および第2の要素は可動であり、軸に沿って往復摺動しており;リミットは、第2の要素の最大行程を第1の要素の外部壁の延長に制限するべく、軸に対して平行に第2のチャンバ内へ第2の開口部を通って摺動するように適応されたステムおよびヘッド、を含み:第1および第2のチャンバは、ステムと前記第2の開口部の間の既存のあそびを通って連通し、第2の要素は、第1の要素の外部壁に沿って第1の開口部を通って摺動する。
【0034】
このようにして、ガス圧が2つの連通するチャンバ内に分配され、一方封止は外部壁のより高度な仕上げと圧力自体のより優れた分配に起因して改善することから、より効率が良くより安全なガススプリングを得ることが可能である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、ガススプリングは、第1の要素の外部壁と第2の要素の第1の内部表面との間に設置された第1の封止手段またはシールを含む。
【0036】
さらに、スプリングは、第1の要素の第2の内部表面内に設置された、スプリング内にガスを充填するための第1のガス充填用バルブを含み得る。
【0037】
さらなる好ましい実施形態において、リミットは、第2の要素と一体になっている。
【0038】
さらに、スプリングは、リミットのステムと第1の要素の第2の開口部との間に設置された、リミットを誘導するための第1の誘導用手段、および第1の開口部に設置された、第2の要素を誘導するための第2の誘導用手段を含み得る。
【0039】
ガススプリングのさらなる好ましい実施形態は、第2の要素内に、第2の充填用バルブを含み得る。
【0040】
この場合、第2の要素は、第2の充填用バルブを第1のチャンバと連結するためのチャネルを含み得る。
【0041】
ここで、本発明について、一例としてかつその範囲を限定することなく、その好ましい実施形態を例示する添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は本発明に係るガススプリングの第1の実施形態の断面図である。
図2図2図1中のガススプリングの概略的横断面図である。
図3図3は本発明に係るガススプリングの第2の実施形態の断面図を示す。
図4図4は本発明に係るガススプリングの第3の実施形態の断面図を示す。
図5A図5Aは公知の技術に属するガススプリングを示す。
図5B図5Bは公知の技術に属するガススプリングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1および2を参照すると、全体として100という番号で示されている本発明に係るガススプリングは、第1のチャンバ11に面する第1の開口部14が備わった中空摺動要素1を含み、その内側には同じく中空であるガイド2が位置付けされている。第1のシールまたは封止用手段5は、ガイド2の外部表面22に面する摺動要素1の内部表面12上に設置されている。
【0044】
摺動要素1-ガイド2システムが滑り抜けるのを防ぐ目的でリミットとして作用するピストン3が、摺動要素1の第1のチャンバ11内に設置されている。このピストン3にはヘッド31とステム32が具備されている。ステムは、第1の開口部14とは反対側の位置で第1のチャンバ11の第1の壁13と一体になっている。
【0045】
ガイド2は、ガイド2の頂部で得られる、チャンバ11に向かって配向された第2の開口部23を通したステム32の摺動を拘束するものとして役立つ。
【0046】
ヘッド31はむしろ、ガイド2の第2のチャンバ21内で摺動するように拘束されており、その直径は、ステム32の直径よりも大きい。したがって作動的には、ガイド2がひとたび摺動要素1内に挿入された時点で、ピストン3は第1の壁13の中に挿入され固定されることになる。
【0047】
いかなる場合でも、第1の開口部14は第1の壁13に実質的に対応する寸法を有しており、こうして摺動要素1にはベースが無く、ガイドの外部壁22とスライダ1自体の間のシール5が直接このスライダの内部壁12上にくるようになっている。
【0048】
換言すると、第1の開口部14は、スライダ1に全く底が無いような形で作られる。ここで底無しとは、垂直壁12が(何らかのシールまたは誘導用手段は別として)そこから突出する要素を全く有していないことを意味している。
【0049】
こうして有利にも、動作が滑らかで公知の技術の欠点の多くを無くする、極めてコンパクトな構成を有するスプリングが、結果として得られる。
【0050】
まず第1に、1つの要素が別の要素の上方に設置されその外部表面上を摺動するという事実は、同時にスプリングの設計を簡略化しその耐久性および安全性を増大させることができる。
【0051】
実際、このように設計されたスプリングは、ピストンの外部壁およびチャンバの内部壁に通常固定されるシールの間の複雑な封止相互作用を無くすることから、製造および組立てが容易である。
【0052】
さらに、他の要素(ガイド2)の外部表面上における上部要素(この場合はスライダ1)の位置および摺動様式は、スプリングと一体化されたチャンバ内に汚染物質が侵入することに対する保護を作り出し、公知の技術において採用される他の解決法に比べてはるかに効率が良く実装が容易である。
【0053】
さらなる実施形態においては、ヘッド31の機能は、いかなる場合でもガススプリングの拡張中に、ステム32がチャンバ21から外に完全に脱出するのを防ぐことのできる、ステム32および/またはチャンバ21の表面上で得られる輪郭および/または縁部などの異なる要素によって果たすことが可能である。
【0054】
このようにして、摺動要素1は、ガイド2の軸Xに沿ってこのガイドとの関係において移動するように拘束される。
【0055】
ピストン3の存在を提供している図面中に示された実施形態の場合、行程は、詳細にはガイド2の上部表面内に具備されたチャンバ21の第1のアバットメント210とピストン3のヘッド31との間、またはこのような第1のアバットメント210とは反対側の第2の壁211とヘッド31自体との間の距離によって決定される。
【0056】
換言すると、壁211とアバットメント210の間におけるチャンバ21内のヘッド31の可動域が、ガイド2の外部表面22に沿った摺動要素1の行程を決定することができる。
【0057】
ピストン3が不在であるか、またはその延長が軸Xに沿ったガイド2のものよりもあらゆる場合において短い(図4)変形実施形態においては、摺動要素の壁13は、その行程をガイド2の上部表面のアバットメント210で停止させる下位リミットとして作用できる。
【0058】
その上、壁211の上には、係止リング51によって所定の位置に保持された、チャンバ21および11内にガスを注入するための充填用バルブ6が挿入されている。
【0059】
チャンバ21の内部でバルブ6の封止表面上には、第2のシールまたは封止用手段53が存在していてよい。
【0060】
したがって、ガスが利用できる総容積は、ピストン3のステム32と第2の開口部23との間の既存のあそびによって連通状態に置かれている両方のチャンバ11および21によって形成される。
【0061】
ガススプリング100の動作は、摺動要素1とガイド2の間およびステム32と第2の開口部23の間の往復摺動に基づいている。図2は、チャンバ11および21内に格納されたガス圧がその力を及ぼす表面を、その理解度を増すために概略的に示す。
【0062】
具体的には、これらの表面は以下の通りである:
- ガスが正の力(「+」という参照記号で標示)を加える、摺動要素1に属する第1の表面10;ガス圧が力を加える面積は、摺動要素1自体の内部面積からステム32の面積を減算したものに等しい。
- ガスが同様に正の力を加える、第1の表面10と同じ方向に面する、ピストン3のヘッド31に属する第2の表面20;ガスが利用できる面積はピストン3の頂部の面積に等しい。
- 同じくヘッド31に属するものの表面10および20とは反対方向に面する第3の表面30;その結果、ガスが加える力が提供する効果(-という参照記号で標示)は、最初の2つの効果とは反対の方向を有することになり、ピストン3の頂部の面積からステム32の面積を減算したものに基づいて計算される。
【0063】
したがって、3つの表面10、20および30の効果の総和は、摺動要素1の内部面積と等しい面積に対しガスが加える力と等価となる。こうして、有利にも、ジャケットシールタイプのガススプリングが担持できるものに匹敵する荷重値を得ることが可能になる。
【0064】
さらに、このように設計された解決法は、同様に、ステムシール構成の長所を利用することも可能にする。実際、摺動要素1の内部壁12およびガイド2の外部壁22が唯一の摺動表面であることから、ステムシール変形形態で使用されるものと同じ便利な方法でこれらを結合させることが可能であり、これにより、2つの間の界面におけるシール5の使用が得られる。
【0065】
公知の技術の「ジャケットシール」スプリングにおいては、封止用手段は、ピストンの側方表面上に収容され、チャンバの内部壁上を摺動する比較的小さい要素のように見える。
【0066】
その上、ひとたび圧縮されると、ピストンはつねに、チャンバの内側に面する1つの面と、中間真空環境に面する1つの面を有する。
【0067】
本発明に係るスプリングにおいて、ピストンの削減された表面積は、ガイド2のより大きな表面積によって置換され、往復摺動を容易にし、故障または機能不全の確率を最小限に抑えている。
【0068】
さらに、本発明に係るガススプリングにおいては、封止用手段における界面は常に、一方ではチャンバの圧力に、そして他方では外部環境の圧力に曝露されている。
【0069】
したがって、界面における合計圧力差はより小さいものであり、これは、より優れた封止、より大きな安全性を保証し、かつ設置すべきシールのサイズを削減することも可能にする。
【0070】
ガイド2の外側を摺動する摺動要素1は、説明されている実施形態においてはガイド2の外部表面22によって表わされている摺動表面を保護する。
【0071】
このようにして、ジャケットスプリングに典型的である減圧現象は無くなり、チャンバ11および21内へ粒子および/または望ましくない物質が紛れ込む可能性は最小限に抑えられる。
【0072】
その上、この解決法は、内部壁の機械加工に比べてより容易な方法でガイド2の外部表面22上で機械的表面仕上げを実施することを可能にし、しかもより高度の仕上げを得ることが可能になる。
【0073】
説明されたタイプのガススプリングには、チャンバの封止を増大させるためにシリンダの外部表面も活用するという付加的な利点もある。その結果、発生した力が等しい場合に、平均作動圧力および相対的発生温度は、公知のスプリングに比べて低いものとなる。
【0074】
こうして、一方では、スプリングの動作中の安全性は増大し、他方では、よりコンパクトなスプリングが可能となる。
【0075】
さらに、ガイド2は、ガイド2の外部表面22とスライダ1自体の内部表面12の間の間隙をさらに保護する目的で、スライダ1の第2のリミットとして作用させるために外部表面22よりも大きいベース25を有し得る。実際、このようにして、スライダの摺動は、支持表面から一定の距離(ガイドのベースの高さに等しい)のところで中断され、何らかの油または他の要素が表面上に存在する場合でさえ、間隙内へそれらが直ちに進入することはなくなる。
【0076】
作動的には、ガスは、第1の充填用バルブ6および/または第2の充填用バルブ61を介してチャンバ11内に充填される。
【0077】
第2のバルブ61は、外部環境に隣接してチャンバ11の壁に沿って設置される。
【0078】
図示された変形形態において、第2の充填用バルブ61は、壁13の中に設置されている。ガスがチャンバ11に到達できるようにするために、壁13自体の内側にチャネル62が設けられ、同じく壁13に固定されているステム32の全体的容積を迂回させている。
【0079】
さらに、第2の開口部23は、それを通るステム32の摺動を改善するために誘導手段24を有していてよい(図3)。同様にして、第1の開口部14は、ガイド2上の摺動要素1の摺動のための誘導用手段205も有することができる。この場合、ガイド2の軸に沿って摺動要素1の2つの明確に異なる摺動制御位置を提供し、2つの要素間のオフセットに起因する摺動要素1とガイド2自体の間の危険なジャミング現象を回避することが可能である。実際これとは反対に、スプリングがジャミング状態になると、チャンバ内部のガス圧の増大に起因する摺動要素の危険な無制御解除が結果としてひき起こされることになる。
【0080】
スプリングのこの変形形態には2つの連通するチャンバ11および21があるという事実は、スプリングのサイズが等しいものとして、より大きな効率および耐久性を達成するという前述の目的に寄与する。実際、同じくこの仕掛けによって、水密性を保ち続けるためにさまざまな区画を提供し、したがってこれらがより大きな応力に耐えなければならない公知の技術とは異なり、内部圧力は両方のチャンバの壁上に分配されるために、内部圧力を減少させることが可能である。
【0081】
同様に、図1を参照すると、スライダ1の内部壁12上のシール5に対して誘導用手段105、詳細にはステムガイドを付加することも可能である。
【0082】
さらに、ガイド2のチャンバ21とスライダのチャンバ11の間の連通を保証するべく、アバットメント210内に削孔することも可能である。
【0083】
これらの措置は、スプリングの内部の圧力を著しく削減する結果となるより大きな面積にわたる力の分配と併せて、安全性の観点から見て極めて有利であり、事故のリスクを最小限に抑える。
【0084】
図4は、本発明の第2の変形形態を示す。概して、ガススプリング300は、実際同じ参照番号で標示されている、先の実施形態についてこれまで言及されてきたものと実質的に同じ要素を有する。
【0085】
しかしながら、詳細には、シール5およびステムガイド305は、スライダ1のチャンバ11の内部壁12内の陥凹部に完全に納められることによって油または塵埃の浸入に対してさらに保護されている。
【0086】
これにより、壁12自体の厚みを含むシール5およびステムガイド305のための保護301をより低くする一方でシリンダ表面を最大限に活用することが可能になる。
【0087】
摺動要素1は、共にガイド2の上部壁のアバットメント210によって拘束されている、スライダ1自体の壁13を含む第1の端部とピストン3のヘッド31を含む第2の端部との間で、軸Xに沿って摺動するように拘束されている。
【0088】
この場合のベース25は、ガイドの外部壁22よりも広いものの、摺動要素1の全体的寸法よりも狭く、本質的に壁12の下端部からなる下部保護301がベース25自体からわずかに張り出すようになっている。
【0089】
ベース25は同様に、ピストン3がひとたびチャンバ21内に挿入された時点でベース25自体の中に嵌合するように適応された閉鎖要素326を収容するように底部において完全に開放している。
【0090】
詳細には、実際この場合、ピストン3は単体で作られている。その上、ピストン3は軸Xに沿って展開するキャビティ33を有する。
【0091】
閉鎖要素326に関する上述の同じ技術的解決法を、例えば図3中の実施形態において、第1のチャンバ11の壁13上で実装することが可能である。
【0092】
このようにして、ガススプリングは、製造の簡易さおよび部品の組立てに有利なように、その部品の配設においてほぼ完全に対称となる。
【0093】
本発明は、その好ましい実施形態にしたがって、応用範囲を限定することなく、単なる一例として説明されているが、本発明は、当業者によって発明力ある概念の範囲から逸脱することなく修正および/または適応され得るものである、ということを理解すべきである。
態様(1)によれば、第1の要素(2)、第2の要素(1)、およびリミット(3)、
を含むガススプリング(100)において、
前記第2の要素(1)が、
第1のチャンバ(11)および前記第1のチャンバ(11)にアクセスするための第1の開口部(14)、
を含み、
前記第1の要素(2)が、基準平面に対し固定可能であり、かつ
第2のチャンバ(21)、前記第2のチャンバ(21)にアクセスするための第2の開口部(23)、および外部壁(22)を含み、しかも前記第1の開口部(14)を通って前記第1の要素(2)の前記第1のチャンバ(11)内に挿入されており、
前記第1および第2の要素(2、1)が可動であり、軸(X)に沿って往復摺動し、
前記リミット(3)が、
前記第2の要素(1)の最大行程を前記第1の要素(2)の前記外部壁(22)の延長に制限するべく、前記軸(X)に対して平行に前記第2のチャンバ(21)内へ前記第2の開口部(23)を通って摺動するように適応されたステム(32)およびヘッド(31)、
を含むガススプリングであって、
前記第1および第2のチャンバ(11、21)が前記ステム(32)と前記第2の開口部(23)の間の既存のあそびを通って連通し、前記第2の要素(1)が、前記第1の要素(2)の前記外部壁(22)に沿って前記第1の開口部(14)を通って摺動することを特徴とする、ガススプリング(100)である。
態様(2)によれば、前記第1の要素(2)の前記外部壁(22)と前記第2の要素(1)の第1の内部表面(12)との間に設置された第1の封止手段またはシール(5)を含むことを特徴とする。
態様(3)によれば、前記第1の要素(2)の第2の内部表面(211)内に設置された、前記スプリング(100)内にガスを充填するための第1のガス充填用バルブ(6)を含むことを特徴とする。
態様(4)によれば、前記リミット(3)が前記第2の要素(1)と一体になっていることを特徴とする。
態様(5)によれば、前記リミット(3)の前記ステム(32)と前記第1の要素(2)の前記第2の開口部(23)との間に設置された、前記リミット(3)を誘導するための第1の誘導用手段(24)、および前記第1の開口部(14)に設置された、前記第2の要素(1)を誘導するための第2の誘導用手段を含むことを特徴とする。
態様(6)によれば、前記第2の要素(1)が、第2の充填用バルブ(61)を含むことを特徴とする。
態様(7)によれば、前記第2の要素(1)が、前記第2の充填用バルブ(61)を前記第1のチャンバ(11)と連結するためのチャネル(62)を含むことを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5