(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】物体のモデル形状を変更するためのコンピュータ実装方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20241030BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20241030BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/20
(21)【出願番号】P 2022508538
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2020071798
(87)【国際公開番号】W WO2021028248
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】102019121806.3
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516211617
【氏名又は名称】ボリュームグラフィックス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VOLUME GRAPHICS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】シュワダラー, ガード
(72)【発明者】
【氏名】フィエール, ヨハンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ライン,マーカス
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020000(JP,A)
【文献】特表2015-516314(JP,A)
【文献】特開2013-186088(JP,A)
【文献】特開2010-120104(JP,A)
【文献】特表2009-524149(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0285487(US,A1)
【文献】松林 毅ほか,"次世代造型支援システムDynavista",UNISYS TECHNOLOGY REVIEW,日本ユニシス株式会社,2004年02月29日,80号,pp.65-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06F 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体のモデル形状を修正するためのコンピュータ実装方
法であって、前記モデル形状が前記物体を製造するために使用され、
前記物体の目標形状を提供するステッ
プと、
前記物体のモデル形状を提供するステッ
プと、
前記モデル形状を使用して前記物体の実際の形状を提供するステッ
プと、
前記目標形状と前記実際の形状の間に少なくとも一つの偏差があるかどうかを決定するステッ
プと、
少なくとも一つの偏差が存在する場合、決定された前記少なくとも一つの偏差に基づいて、前記モデル形状を修正モデル形状に変更するステッ
プと、
を含み、
少なくとも前記決定するステッ
プが、少なくとも一つの偏差が存在する場合、第1の非剛体マッピングをもたらし、該第1の非剛体マッピングが、パラメータセットによって2つの形状を互いに関連付け、決定された前記少なくとも一つの偏差を記述し、または、少なくとも前記変更するステッ
プが、第2の非剛体マッピングによって実行され、該第2の非剛体マッピングが、パラメータセットによって2つの形状を互いに関連付け
、
前記パラメータセットが、大域的な情報を含み、
該大域的な情報が、対象となる三次元空間全体を記述するコンピュータ実装方法。
【請求項2】
提供された前記モデル形状が、修正された目標形状である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
決定された前記少なくとも一つの偏差が、決定された前記少なくとも一つの偏差に対して所定の許容範囲外である限り、少なくとも前記使用するステッ
プ、前記決定するステッ
プおよび前記変更するステッ
プを繰り返すステッ
プを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つの偏差が、前記モデル形状の領域に割り当てられ、前記少なくとも一つの偏差が、決定された前記少なくとも一つの偏差に対して所定の許容範囲外である場合にのみ、前記領域に対して前記変更するステップが実行される請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記変更するステッ
プが、
決定された前記少なくとも一つの偏差を前記第2の非剛体マッピングによって前記モデル形状に変換するサブステッ
プであって、前記第2の非剛体マッピングが、前記目標形状と前記モデル形状の間、および/または、前記実際の形状と前記モデル形状の間の関連性を有するサブステップを含む請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の非剛体マッピングが、前記モデル形状を前記目標形状に、および/または、前記モデル形状を前記実際の形状にマッピングする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記変更するステッ
プが、
前記モデル形状を、前記第1の非剛体マッピングを使用して前記修正モデル形状に変更するサブステッ
プを含む請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記目標形状と前記実際の形状との間に少なくとも一つの偏差が存在するかどうかを決定するステッ
プの前に、
前記実際の形状と前記目標形状とを位置合わせするために、前記実際の形状と前記目標形状との間の剛体マッピングを決定するステッ
プであって、前記剛体マッピングが、前記目標形状の異なる領域に対して所定の局所的な許容範囲を考慮し、該局所的な許容範囲の外側で、前記実際の形状と前記目標形状との間の偏差を最小化するステップを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記モデル形状を使用して前記物体の実際の形状を提供するステッ
プが、
前記物体のコンピュータ断層撮影測定の測定データから前記実際の形状を提供するサブステッ
プを含む請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記変更するステッ
プが、
前記モデル形状の少なくとも一つの部分領域を提供するサブステッ
プであって、該少なくとも一つの部分領域が、決定された前記少なくとも一つの偏差に関連付けられるサブステップと、
決定された少なくとも一つの偏差を有する前記少なくとも一つの部分領域を、少なくとも一つの修正された部分領域に変更するサブステッ
プと、
前記少なくとも一つの部分領域を提供して前記モデル形状を修正するサブステッ
プと、
を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記変更するステッ
プが、
前記第2の非剛体マッピングを使用して、決定された前記少なくとも一つの偏差から生じる局所的な修正を考慮して、決定された前記少なくとも一つの偏差に基づいて、前記モデル形状を修正モデル形状に変更するサブステッ
プを含む請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の非剛体マッピングおよび/または前記第2の非剛体マッピングが、制御点を用いて定義される請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記制御点が、前記物体の少なくとも一つの所定領域において、前記少なくとも一つの所定領域の外側よりも大きい密度を有し、前記所定領域が、前記物体の表面の環境、および/または、決定された前記少なくとも一つの偏差が所定の閾値を超える場合には、決定された前記少なくとも一つの偏差の周囲の環境を備え、および/または、決定された前記少なくとも一つの偏差が所定の勾配閾値を超える勾配を有する場合には、決定された前記少なくとも一つの偏差の周囲の環境を備える請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の非剛体マッピングが、所定の修正範囲内でのみ前記モデル形状のトポロジーを変更する請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ上で実行可能な命令を有するコンピュータプログラム製品であって、コンピュータ上で実行されると、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体のモデル形状を変更するためのコンピュータ実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を製造する際、特に鋳造法や積層造形法では、部品の目標形状からの様々な幾何学的偏差が生じる。これは、例えば、膨張/収縮プロセスや材料の変位に起因する。そのため、部品を製造する前に、まずモデル形状の最適化を行い、その後に製造される部品が許容範囲内で目標形状と一致するようにする。
【0003】
これらの偏差を最小化するための既知の方法では、まずモデル形状を使用してプロトタイプを作成し、そのプロトタイプを偏差に関して検査または測定する。その後、他のプロトタイプを製造する際に偏差が発生しないように、これらの偏差を考慮したり、製造中に、修正されたモデル形状で修正したりすることが試みられる。これらのステップは、定義された許容範囲外の偏差が発生しなくなるような部品の製造が可能になるまで繰り返される。この作業には多大な労力とコストがかかる。
【0004】
さらに、第1の近似に対する補正を提供するために、CADモデルに従った目標表面の対応する点からの決定された偏差に応じて、表面モデルまたは場合によっては修正された表面モデルによって定義された元の成形工具の表面に、3次元点群の取得された3次元点を反映させることが特許文献1から知られている。これを行うために、サーチビームを用いて、部品のCADモデルの表面点と元の成形工具の表面モデルとの間で、補正ベクトル及びマッピングを生成している。しかし、大きな偏差や変形があった場合に、正しい値が得られるようなマッピングや補正を行う手段は未だ存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の目的は、偏差や変形があっても正しい値が得られ、物体を製造するためのモデル形状を探る手間を省くことができるコンピュータ実装方法を提供することであると考えられる。
【0007】
本発明の主な特徴は、請求項1および請求項15に規定されている。本発明の実施形態は、請求項2から請求項14の事項である。
【0008】
本発明の一態様は、物体のモデル形状を修正するためのコンピュータ実装方法であって、前記モデル形状が前記物体を製造するために使用することができ、前記物体の目標形状を提供するステップと、前記物体のモデル形状を提供するステップと、前記モデル形状を使用して前記物体の実際の形状を提供するステップと、前記目標形状と前記実際の形状の間に少なくとも一つの偏差があるかどうかを決定するステップと、少なくとも一つの偏差が存在する場合、決定された前記少なくとも一つの偏差に基づいて、前記モデル形状を修正モデル形状に変更するステップと、を含み、少なくとも前記決定するステップが、少なくとも一つの偏差が存在する場合、第1の非剛体(non-rigid)マッピングをもたらし、該第1の非剛体マッピングが、パラメータセットによって2つの形状を互いに関連付け、決定された前記少なくとも一つの偏差を記述し、または、少なくとも前記変更するステップが、第2の非剛体マッピングによって実行され、該第2の非剛体マッピングが、パラメータセットによって2つの形状を互いに関連付けるコンピュータ実装方法に関する。
【0009】
本発明の核心は、対応する領域間の関連付けを行うために、目標形状と実際の形状との間に少なくとも1つの偏差が存在するかどうかを決定するステップ、および/または、少なくとも1つの偏差が存在する場合には、決定された少なくとも1つの偏差に基づいてモデル形状を修正モデル形状に変更するステップにおいて、2つのステップのうちの少なくとも1つにおいて、局所的な情報だけでなく、より広範な情報または大域的な情報を使用することである。第1および/または第2の非剛体マッピングを使用して、大域的な情報が使用され、例えば、それぞれの非剛体マッピングに関与する2つの形状の表面全体を最良の方法で互いに変換できるマッピングを求めることができ、第1の非剛体マッピングの決定は、目標形状および実際の形状を含み、第2の非剛体マッピングの決定は、モデル形状および/または修正モデル形状を含むことになる。第1および/または第2の非剛体マッピングは、非剛体レジストレーションとすることができる。大きな偏差がある場合でも、このアプローチにより、形状領域間の正しい関連性を決定することができる。決定するステップおよび/または変更するステップで、第1および/または第2の非剛体マッピングを使用すると、目標形状と実際の形状との間の偏差、またはモデル形状と修正モデル形状との間の補正が、物体に関する大域的な情報を用いて調整される。大域的な情報は、パラメータセットで表される。例えば、パラメータセットのパラメータの数は、非剛体マッピングに関わる形状の1つの点数よりも少なくすることができる。目的は、2つの形状の表面全体をできるだけ正確に相互に変換することができるマッピングを見つけることである。これにより、大きな偏差がある場合でも、2つの形状の形状領域間の正しい関連性を判断することができる。さらに、第1および第2の非剛体マッピングは、それぞれ、一方の形状から他方の形状へのマッピング全体を定義している。これにより、各表面点の形状間の不精確な関連付けを避けることができる。
【0010】
非剛体マッピングでは、この情報が非剛体マッピングに暗黙的に含まれているため、任意の点について関連付けや補正を計算することができる。さらに、第1または第2の非剛体マッピングは、2つの形状における個々の対応点に基づいてのみ決定され、それらの間のマッピングまたは偏差フィールドによって補間される。このようにして、大きな偏差の場合など、対応する形状が特定できなかった領域でも割り当てが可能となる。これにより、目標形状と実際の形状との乖離をより精確に分析したり、修正モデル形状に対してモデル形状をより精確に調整することができる。これにより、製作する必要のある試作品の数や、実行する必要のあるシミュレーションの数を減らすことができる。このように、本発明は、物体を製造するためのモデル形状を見つけることにかかる労力を軽減するコンピュータ実装方法を提供する。
【0011】
コンピュータ実装方法は、まず対象物の目標形状を提供するために使用される。目標形状は、製造後に達成されるべき物体の状態を表している。さらに、さらなるステップにおいて、コンピュータ実装方法は、対象物のモデル形状を提供し、そして、そのモデル形状を対象物の製造に使用する。例えば、モデル形状は、目標形状から逸脱し、物体の製造プロセス中に発生する既知の変化を考慮に入れることができる。また、モデル形状は、目標形状から構成され、本方法によってのみ変更されてもよい。その後、モデル形状は、物体の実際の形状を提供するために使用される。モデル形状を使って物体を製造してもよく、シミュレーションプログラムを使って物体をシミュレートしてもよい。いずれの場合も、結果として物体の実際の形状が得られる。
【0012】
そのため、実際の形状は必ずしも物理的な物体に基づく必要はなく、仮想的な物体に基づくものであってもよい。次に、目標形状と実際の形状を互いに比較し、偏差を決定する。このステップでは、第1の非剛体マッピングを使用して、少なくとも1つの偏差を決定することができる。次のステップでは、モデル形状が修正モデル形状に変更され、修正モデル形状は、決定された少なくとも1つの偏差を考慮に入れている。このステップでは、第2の非剛体マッピングを使用して、少なくとも1つの偏差を決定することができる。一例では、目標形状と実際の形状との間の決定された少なくとも1つの偏差は、モデル形状を修正して修正モデル形状を形成する際に、他方の側に直接転送することができる。すなわち、目標形状と実際の形状の間に偏差がある位置では、修正モデル形状は、目標形状の虚数面に反映された変化を持つことになる。これは、1倍の補正または-1倍の移動に相当する。また、経験に基づいて補正が小さすぎると判断した場合には、より大きな係数を選択することもできるし、過剰な調整が行われていることが判明した場合や、反復手順の不安定性を回避するために、より小さい係数を選択することもできる。このような係数は、例えば、対応するマッピングベクトルに係数を乗じることで、非剛体マッピングに簡単に実装することができる。モデル形状が利用できない場合は、目標形状に直接補正を加えることができる。そうでない場合は、モデル形状または修正モデル形状が修正され、実際の形状または目標形状との関連付けが必要となる。必要であれば、この目的のためにあらかじめ座標系の位置合わせ(registration)を行うが、通常はモデル形状または修正モデル形状は目標形状と同じ座標系になる。別の例では、製造を可能にするために、形状を手動で後処理することもできる。
【0013】
本発明によれば、決定または変更の2つのステップのうち少なくとも1つで非剛体マッピングが使用される。第1の非剛体マッピングが決定ステップで使用されない場合は、例えばサーチビームを使用するなど、従来の方法を使用することができる。変更ステップで第2の非剛体マッピングを使用しない場合、ここでも従来の方法を使用することができる。
【0014】
目標形状とは、製造される物体の望ましい形状のことである。これは、CADモデルとして、または技術図面によって定義することができる。また、製品製造情報(PMI)などを用いて、製造公差を指定することもできる。積層造形では、例えば、STLフォーマットのメッシュとして形状を指定することができる。また、数学的な記述も含め、他の記述も考えられる。
【0015】
実際の形状とは、製造された物体の測定された形状のことである。実際の形状は、CTスキャンによるボリュームデータ、点群、STLなどのサーフェスファイル、距離フィールドに基づいて暗黙的に定義されたサーフェス、触覚センサなどで測定された個々の測定点または測定ライン、規則的な幾何学要素または非一様有理Bスプライン(いわゆるURBS)などの数学的に定義されたサーフェスを使用した表現など、さまざまな形式または表現で存在することができる。さらに、実際の形状は、製造プロセスのシミュレーションから得ることができるため、完全に測定なしで得られる。このようにして、シミュレートされた製造の補正を行うことができる。
【0016】
モデルの形状は、例えば、工具を使用して物体を製造するために使用される形状とすることができる。したがって、モデル形状は、物体を製造する際に工具が基にする物体の形状を決定する。例えば、対象物は、鋳造金型、打ち抜き金型、または付加製造装置を用いて製造することができる。シミュレーションプログラムは、モデル形状を使用して仮想物体を作成することができる。モデル形状は、物体の製造に使用される目標形状に基づいたバリエーションである。その目的は、製造された部品が目標形状にできるだけ近くなるように、モデル形状に製造プロセスで発生する偏差を考慮できるようにすることである。
【0017】
修正モデル形状は、本発明による方法が少なくとも1回実施された後に得られる。方法が2回以上繰り返される場合、前の繰り返しで修正されたモデル形状は、次の繰り返しでモデル形状として使用され、実際の形状を提供する。ただし、最初の反復実行で目標形状にできるだけ近づけるために、例えば鋳造プロセスのシミュレーションやユーザの経験に基づいて、この方法を実行する前に修正を導入することができる。この修正された形状は物体の製造に使用されるため、特定の製造方法、例えばプロトタイププロセスや成形プロセスでは、この形状は物体の製造に使用される工具、例えば射出成形プロセスで使用される金型も表すことができる。この工具は、通常、この場合、目標形状の略負のものとなる。
【0018】
代替的または追加的に、モデル形状を目標形状と同一にしてもよい。但し、これは必須ではない。物体は、モデル形状を使用して製造された試作品であってもよい。さらに、物体は、使用中の工具によってモデル形状を使用して製造されたコンポーネントであってもよく、したがって、製造上の偏差がある可能性がある。したがって、物体は、進行中の製造プロセスから抽出することもできる。
【0019】
全ての場合において、形状は基本的に物体の表面によって定義される。
【0020】
非剛体マッピングとは,ある空間の座標を別の空間の対応する座標に割り当てる数学的変換のことである。平行移動及び回転のみで構成されて6つの自由度を有する剛体マッピングとは対照的に、非剛体マッピングでは、大域的および局所的な大きさの変形を考慮することができる。ここでの自由度の数は剛体マッピングよりも格段に多く、実際にはマッピングの解像度によって制限される。
【0021】
非剛体マッピングを計算するには、2つのステップを要する。まず、マッピングを記述する数学的モデルが提供される。このモデルは、決定しなければならない特定のパラメータセットを有する。さらに、特定のケースに適したマッピングが決定され、したがって、見つかった数学的モデルのパラメータセットは、対象となる形状の最適な割り当てを可能にするものである。
【0022】
本発明による非剛体マッピングの場合、画像空間と値空間は1つの多様体、例えば表面に限定されない。その代わりに、マッピングは、少なくとも表面周辺の領域、あるいは体積全体についても定義され、または計算可能である。
【0023】
さらに、非剛体マッピングは、通常、少なくとも区分的連続であり、すなわち、直接隣接する2つの点のマッピングは、大きなジャンプをしない。
【0024】
非剛体マッピングは、異なる形状において論理的に対応する物体の特徴を表している。つまり、マッピングを決定する際には、トポロジーや近隣の環境が考慮される。そのため、非剛体マッピングは位置合わせとしても使用することができる。
【0025】
さらに、提供された前記モデル形状が、例えば、修正された目標形状であってもよい。
【0026】
修正された目標形状は、特に工具の形状であってもよく、修正された目標形状に基づく修正されたモデル形状であってもよい。中間ステップでは、最初の製造工程における公称形状にできるだけ近い結果を得るために、予想される偏差を補正することができる。さらに、一部の製造工程では、公称形状を使用して工具の形状を決定する必要があるが、これはここでは修正された目標形状と解釈してもよい。
【0027】
また、本方法は、決定された前記少なくとも一つの偏差が、決定された前記少なくとも一つの偏差に対して所定の許容範囲外である限り、少なくとも前記使用するステップ、前記決定するステップおよび前記変更するステップを繰り返すステップを含んでいてもよい。
【0028】
この繰り返しは、修正されたモデル形状を使って製造された物体の実際の形状と、目標形状との間に、有意な偏差がなくなるまで行われる。偏差の重要性は、所定の許容範囲によって定義することができ、許容範囲は局所的に定義することができる。
【0029】
前記少なくとも一つの偏差が、前記モデル形状の領域に割り当てられてもよく、前記少なくとも一つの偏差が、決定された前記少なくとも一つの偏差に対して所定の許容範囲外である場合にのみ、前記領域に対して前記変更するステップが実行されてもよい。
【0030】
この場合、不連続性を避けるために、補正する領域から補正しない領域への遷移領域では、徐々に弱い補正を行うことができる。そのため、補正を行う強さや係数は、補正を行う領域を超えて徐々に0になるようにしてもよい。
【0031】
例えば、前記変更するステップが、決定された前記少なくとも一つの偏差を前記第2の非剛体マッピングによってモデル形状に変換するサブステップであって、前記第2の非剛体マッピングが、前記目標形状と前記モデル形状の間、および/または、前記実際の形状と前記モデル形状の間の関連性を有するサブステップを含んでいてもよい。
【0032】
偏差は、目標形状からモデル形状へのマッピングの際、または実際の形状とモデル形状とのマッピングの際にモデル形状に転送され、修正モデル形状を得ることができる。あるいは、それぞれの前または後に偏差を転送することもできる。
【0033】
さらに、前記第2の非剛体マッピングが、前記モデル形状を前記目標形状に、および/または、前記モデル形状を前記実際の形状にマッピングしてもよい。
【0034】
モデル形状を目標形状にマッピングする際には、まず目標形状で偏差を修正し、その後、例えば、第2の非剛体マッピングに逆マッピングを適用することでモデル形状に移行し、修正モデル形状を得ることができる。モデル形状を実際の形状にマッピングする際には、例えば、実際の形状で偏差を修正した後、逆マッピングによって修正したモデル形状を得ることができる。
【0035】
別の例では、前記変更するステップが、前記モデル形状を、前記第1の非剛体マッピングを使用して前記修正モデル形状に変更するサブステップを含んでいてもよい。
【0036】
この例では、モデル形状と実際の形状または目標形状との間のマッピングを表す第2の非剛体マッピングと、目標形状と実際の形状との間の少なくとも1つの偏差を記述する第1の非剛体マッピングとの組み合わせを使用して、修正モデル形状を得ることができる。例えば、第1の非剛体マッピングの逆マッピングを使用して、モデル形状の偏差を補正することができる。
【0037】
前記目標形状と前記実際の形状との間に少なくとも一つの偏差が存在するかどうかを決定するステップの前に、本方法は、前記実際の形状と前記目標形状とを位置合わせするために、前記実際の形状と前記目標形状との間の剛体マッピングを決定するステップであって、前記剛体マップピングが、前記目標形状の異なる領域に対して所定の局所的な許容範囲を考慮し、該局所的な許容範囲の外側で、前記実際の形状と前記目標形状との間の偏差を最小化するステップを含んでいてもよい。
【0038】
実際の形状と目標形状を位置合わせするための剛体マッピングは、実際の形状と目標形状の間の第1の粗い関連付けを達成するために実施することができる。この出発点から、最初の、場合によっては非剛体マッピングをより速く、またはより精確に決定することができる。例えば、公差が大きい領域では、ここでは補正が必要ないため、より大きな偏差を許容することができる。代わりに、公差の小さい重要な領域に関しては、アライメントを最適化することができる。これにより、補正すべき領域の数を最小限に抑えることができる。
【0039】
別の例では、前記モデル形状を使用して前記物体の実際の形状を提供するステップが、有利には、前記物体のコンピュータ断層撮影測定の測定データから前記実際の形状を提供するサブステップを含んでいてもよい。
【0040】
この場合、物体の全体的な形状がわかる。これにより、非剛体マッピングの決定が容易になる。
【0041】
例えば、前記変更するステップが、 モデル形状の少なくとも一つの部分領域を提供するサブステップであって、該少なくとも一つの部分領域が、決定された前記少なくとも一つの偏差に関連付けられるサブステップと、決定された少なくとも一つの偏差を有する前記少なくとも一つの部分領域を、少なくとも一つの修正された部分領域に変更するサブステップと、前記少なくとも一つの部分領域を提供してモデル形状を修正するサブステップと、を含んでいてもよい。
【0042】
したがって、モデル形状のうち、少なくとも1つの偏差がある領域のみが修正される。これらの部分領域は、偏差が修正されるべき修正部分領域で変更される。コンピュータ実装方法では、変更されるのはモデル形状全体ではなく、偏差のある部分領域の個々の点のみであるため、それによって必要な演算能力が低減される。例えば、CADモデル全体の自動編集や補正の複雑さを軽減するために、個々のパッチ、すなわちCADモデルの領域のみを編集することができる。これに基づいて、モデル全体の形状を編集することができる。
【0043】
部分領域は、例えば平面や円柱などの規則的な幾何学要素であってもよい。これは、偏差が、例えば平面や円柱などの規則的な幾何学要素の中に配置されていることを意味する。
【0044】
別の例では、前記変更するステップが、前記第2の非剛体マッピングを使用して、決定された前記少なくとも一つの偏差から生じる局所的な修正を考慮して、決定された前記少なくとも一つの偏差に基づいて、前記モデル形状を修正モデル形状に変更するサブステップを含んでいてもよい。
【0045】
一例として、第1の非剛体マッピングを修正のために適用することができる。修正は、回転、スケーリング、および/または、剪断によって行われる。第1の非剛体マッピングを用いて、回転、スケーリング、および/または剪断によって、局所的な修正を行うことができる。
【0046】
さらに、前記第1の非剛体マッピングおよび/または前記第2の非剛体マッピングが、制御点を用いて定義されてもよい。
【0047】
制御点は、対象物を含む空間に均等に配置されてもよい。あるいは、制御点は、物体上でのみ定義されてもよい。さらに、前記制御点が、前記物体の少なくとも一つの所定領域において、前記少なくとも一つの所定領域の外側よりも大きい密度を有していてもよく、前記所定領域が、前記物体の表面の環境、および/または、決定された前記少なくとも一つの偏差が所定の閾値を超える場合には、決定された前記少なくとも一つの偏差の周囲の環境を備え、および/または、決定された前記少なくとも一つの偏差が所定の勾配閾値を超える勾配を有する場合には、決定された前記少なくとも一つの偏差の周囲の環境を備えていてもよい。
【0048】
さらに、前記第1の非剛体マッピングが、所定の修正範囲内でのみ前記モデル形状のトポロジーを変更してもよい。
【0049】
このように、第1の非剛体マッピングでは、所定の範囲内でのみ、モデル形状のトポロジーが変更される。これにより、大きな変更を避けることができ、反復プロセスにおけるモデル形状の大きな変動を抑えることができる。これにより、目標形状に対応する修正モデル形状へのモデルの収束が容易になる。この文脈では、トポロジーという用語は、表面の表現も含む。例えば、STLフォーマットで保存された表面の接続性や、NURBSで定義されたフリーフォームの表面の制御点の接続性などが挙げられる。
【0050】
本発明のさらなる態様は、コンピュータ上で実行可能な命令を有するコンピュータプログラム製品であって、コンピュータ上で実行されると、前述の方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム製品に関する。
【0051】
コンピュータプログラム製品の利点および効果ならびに拡張性は、上述の方法の利点および効果ならびに拡張性から生じる。したがって、この点については、上記記載を参照する。
【0052】
例えば、コンピュータプログラム製品とは、コンピュータで実行可能な命令を含む、コンピュータプログラム要素が格納されたデータキャリアを意味する。代替的にまたは追加的に、コンピュータプログラムは、例えば、コンピュータプログラム要素を含む、フラッシュメモリやメモリなどの永久的または揮発性のデータストアを意味することもできる。但し、コンピュータプログラム要素を含む他のタイプのデータストアも除外されない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本発明のさらなる特徴、詳細および利点は、特許請求の範囲の文言および図面に基づいた以下の実施形態の説明から得られるものである。
【
図1】物体のモデル形状を修正するためのコンピュータ実装方法のフローチャートを示す図である。
【
図2】本方法のステップの一実施形態を示す図である。
【
図3】本方法のステップの一実施形態を示す図である。
【
図4】実際の形状における偏差を示す模式図である。
【
図5a】異なる形状および互いの関係を示す模式図である。
【
図5b】異なる形状および互いの関係を示す模式図である。
【
図6a】形状間のマッピングの異なる定義を示す概略図である。
【
図6b】形状間のマッピングの異なる定義を示す概略図である。
【
図7】修正モデル形状を得るための2つの例示的な手順を示す模式図である。
【
図8】本方法のさらなる実施形態を示す模式図である。
【
図9】非剛体マッピングをフィールド状にした実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下では、
図1を参照して、物体のモデル形状を修正するためのコンピュータ実装方法100をより詳細に説明する。
【0055】
最初のステップ102では、物体の目標形状が提供される。これは、物体の所望の形状を定義するために使用される、いわゆる公称形状とすることができる。目標形状は、例えば、CADモデルとして提供されることができる。
【0056】
さらなるステップ104では、物体のモデル形状が提供される。モデル形状は、物体を製造するために使用することができる。提供されるモデル形状は、実際の形状と目標形状との間の偏差につながる可能性のある、物体の製造中の既存の既知の変形を考慮した修正目標形状とすることができる。
【0057】
さらなるステップ106では、モデル形状を、物体を製造するための鋳造プロセスや射出成形プロセスの元の型の形状として使用して、実際の形状を得ることができる。代替的または追加的に、モデル形状は、付加的な製造工程に使用することができる。さらに、モデル形状は、代替的または追加的に、物体の実際の形状を計算するためにシミュレーションプログラムで使用することができる。
【0058】
次に、ステップ118では、実際の形状と目標形状との間の剛体マッピングを決定することができる。剛体マッピングは、実際の形状と目標形状を位置合わせするために使用することができる。剛体マッピングは、目標形状の異なる領域に対して局所的な所定の許容範囲を考慮している。局所的な許容範囲は、物体の形状上で局所的に定義された許容範囲である。例えば、他の要素やコンポーネントとの相互作用がない物体上の領域は、大きな許容範囲を有することができる。対照的に、他の要素やコンポーネントと相互作用する物体の領域は、より精確に製造する必要があるため、小さな許容範囲を有する。さらに、剛体マッピングは、局所的な許容範囲外の実際の形状と目標形状の間の偏差を最小限に抑えることができる。
【0059】
次に、更なるステップ108において、目標形状と実際の形状の間に少なくとも1つの偏差が存在するかどうかが決定される。これを行うために、目標形状が実際の形状と比較される。これは、第1の非剛体マッピングで実現できる。第1の非剛体マッピングは、非剛体マッピングが全座標系にわたって目標形状と実際の形状とを互いにマッピングすることを可能にするパラメータセットを有することができる。したがって、第1の非剛体マッピングは、実際の形状と目標形状との間の少なくとも1つの偏差も記述する。
【0060】
ステップ108について、第1の例示的な実施形態では、実際の形状と目標形状との間の第1の非剛体マッピングを決定することができる。別の例示的な実施形態では、ステップ108において、非剛体マッピングを含まない局所的な偏差を決定するための方法が使用される。
【0061】
ステップ110では、ステップ108で決定された少なくとも1つの偏差を用いて、モデル形状を修正する。偏差が存在しない場合、ステップ110において、本方法は終了する。偏差が存在する場合、ステップ110において、第2の非剛体マッピングを使用して、モデル形状から修正モデル形状を提供することができる。第2の非剛体マッピングは、この目的のための一連のパラメータを有しており、これにより、第2の非剛体マッピングは、モデル形状と修正モデル形状とを互いに関連付けることができる。第2の非剛体マッピングは、モデル形状と修正モデル形状との間の変化を記述し、その変化は、実際の形状と目標形状との間の少なくとも1つの偏差を修正する。その目的は、修正モデル形状を用いて生成された物体の実際の形状が、モデル形状を用いて生成された物体の実際の形状よりも、目標形状からの逸脱を少なくすることにある。
【0062】
したがって、ステップ110の第1の例示的な実施形態では、目標形状とモデル形状との間の第2の非剛体マッピングを決定することができる。ステップ110の第2の例示的な実施形態では、実際の形状とモデル形状との間の第2の非剛体マッピングが決定される。ステップ110の別の例示的な実施形態では、ステップ108に基づいて、前のモデル形状に対する場合によっては局所的な補正値を直接決定することによって、偏差の転送を実行することができる。さらなる例示的な実施形態では、非剛体マッピングを構成していない目標形状または実際の形状と修正モデル形状との間の関連性を決定するための方法が使用される。
【0063】
ステップ108と110の両方が非剛体マッピングを使用しない組み合わせは、本発明の対象ではない。すなわち、本発明によれば、ステップ108で少なくとも第1の非剛体マッピングを使用するか、ステップ110で少なくとも第2の非剛体マッピングを使用する。さらに、第1の非剛体マッピングと第2の非剛体マッピングとを同時に使用することもできる。
【0064】
少なくともステップ106、108、110は、ステップ112で繰り返すことができる。この繰り返しは、繰り返しの間に決定された少なくとも1つの偏差が、決定された少なくとも1つの偏差に対して所定の許容範囲内に入るまで行われる。これは、修正モデル形状に基づいて生成された対象物の実際の形状の目標形状からの偏差が、許容範囲内で目標形状に対応することを意味する。
【0065】
少なくとも1つの偏差は、モデル形状の領域と関連付けることができ、モデル形状は異なる領域に分割することができる。ステップ110では、少なくとも1つの偏差を有するモデル形状の領域のみが変更され、修正モデル形状が得られる。偏差を含まない領域は、修正モデル形状を得るために変更されない。さらに、異なる領域の許容範囲は、主に許容範囲が小さい領域の補正に使用される。許容範囲が大きい領域は、偏差が大きい場合にのみ補正される。これらの領域では、許容範囲内にある小さな偏差は許容される。
【0066】
ステップ110は、追加のサブステップを構成することができる。これらは、
図2にともに示されており、それぞれの場合において任意であり、互いに組み合わせることができる。修正ステップは、決定された少なくとも1つの偏差が、第2の非剛体マッピングによってモデル形状に転送されるサブステップ114を含んでもよい。第2の非剛体マッピングは、第1の代替手段における目標形状とモデル形状との間の関連付けを含む。これは、第2の非剛体マッピングが、目標形状をモデル形状にマッピングすることができること、またはその逆を行うことができることを意味する。別の代替案では、第2の非剛体マッピングは、実際の形状とモデル形状との間の関連付けを含む。つまり、第2の非剛体マッピングは、実際の形状を目標形状に、またはその逆にマッピングすることができる。いずれの場合も、第2の非剛体マッピングは、モデル形状を使用する。
【0067】
さらに、ステップ110は、サブステップ118を含むことができ、このサブステップでは、実際の形状と目標形状との間の剛体マッピングが得られる。この剛体マッピングは、実際の形状と目標形状を位置合わせするために使用することができる。位置合わせの際には、目標形状の異なる領域に対する局所的な所定の許容範囲が、剛体マッピングによって考慮される。さらに、局所的な許容範囲外の実際の形状と目標形状の間との偏差は最小化される。
【0068】
別のサブステップでは、ステップ110は、ステップ122、124および126を含むことができる。サブステップ122では、少なくとも1つの偏差に割り当てられたモデル形状の少なくとも1つの部分領域が提供される。これは、偏差の周りのモデル形状の部分領域が、少なくとも1つの偏差を決定した後にのみ決定され、提供されることを意味する。この少なくとも1つの部分領域は、ステップ124において、決定された少なくとも1つの偏差で修正される。これにより、部分領域の決定された偏差が修正される。部分領域は、モデル形状が修正されることができるように、ステップ126で提供され、その結果、修正モデル形状が得られる。
【0069】
ステップ110の別のサブステップ128は、モデル形状を修正モデル形状に変更することに関する。ステップ128は、決定された少なくとも1つの偏差に基づいて、局所的な修正を考慮して実施される。局所的な修正は、決定された少なくとも1つの偏差に起因し、偏差は、例えば、物体の局所的な変形に起因する。局所的な修正は、第2の非剛体マッピングを用いて考慮される。第2の非剛体マッピングは、修正モデル形状において、局所的な修正および偏差自体を補正する。局所的な変形の修正は、回転、スケーリング、および/または剪断によって行われる。
【0070】
図3によれば、モデル形状を使用して物体の実際の形状を提供するステップ106は、サブステップ120を含むことができる。ステップ120では、実際の形状は、物体のコンピュータ断層撮影測定の測定データから提供される。この目的のために、モデル形状によって生成された物体は、コンピュータトモグラフによって測定される。物体の実際の形状は、測定データから決定される。別の代替的または追加的な場合では、モデル形状を使用して、CNCフライスなどの減法製造工程で物体を製造することができる。この場合、CNCフライス工具のプログラミングに使用される形状が補正される。
【0071】
代替的または追加的に、光学センサでも、外表面に関する高解像度の情報を得ることができる。さらに、触覚センサは、表面の個々の測定点を記録することができる。
【0072】
図4は、物体の実際の形状12上での偏差を示す模式図である。
図4および以下の図における偏差は、手順をよりよく視覚化できるように誇張されている。実際には、距離46および目標形状10とモデル形状14との間の差は、通常、寸法44よりもかなり小さい。したがって、比較的低いエッジ角を有する大面積の偏差が修正される。
【0073】
図5aおよび5bは、実際の形状12、目標形状10、モデル形状14および修正モデル形状16が、原理的にどのように互いに関連し得るかを概略的に示している。以下に説明するすべての例示的な実施形態では、
図5aに従って元の向きまたは方向で新しい場所に補正を適用すること、または
図5bに従って補正の向きまたは方向を変更または回転させることが原理的に可能である。
【0074】
実際の形状12と目標形状10との間の少なくとも1つの偏差18は、第1の非剛体マッピングによって記述することができる。また、
図5aは、目標形状10と、実際の形状12が基づく物体を生成するために使用されたモデル形状14との間の遷移20を示している。この例では、モデル形状14の修正モデル形状16への補正または変更22は、偏差18と同じ方向に向けられている。
【0075】
図5bによれば、実際の形状12と目標形状10との間の少なくとも1つの偏差18は、モデル形状14と修正モデル形状16との間の補正または修正24に変換され、目標形状10とモデル形状14との間の遷移20内に含まれる方向の変化を考慮している。
図5aからの修正22とは対照的に、
図5bからの修正24は、モデル形状14と修正モデル形状16との間の相対的な向きが、実際の形状12と目標形状10との間の相対的な少なくとも1つの偏差と同じであることを示している。非剛体マッピングでは、点と点の関連付けが可能なだけでなく、局所的な方向転換などの局所的な修正を暗黙的または明示的に決定することができる。
【0076】
図6aおよび
図6bは、実際の形状と目標形状との間のマッピングの例を用いて、このマッピングが異なる形で定義できることを示している。
図6aに示すように、実際の形状12から目標形状10へのマッピング26を定義したり、逆に目標形状10から実際の形状12へのマッピング32を定義したりすることができる。モデル形状14と修正モデル形状16との間の変更22,24が偏差18を補正し、それを補強しないように、それぞれのマッピング26,32が後続の補正で正しく使用されるように注意しなければならない。場合によっては、正しい修正22,24を得るためにマッピング26,32の逆数を使用することが必要な場合もある。例えば、
図6bのマッピング32は、モデル形状14と修正モデル形状16との間で変換するための正しいマッピング30を得るために、まず反転させる必要がある。
図6aのマッピング26は、モデル形状14と修正モデル形状16との間で変換するためのマッピング30として、反転せずに使用することができる。
【0077】
目標形状10とモデル形状14との間のマッピング28や、その他のすべてのマッピングについても同様である。
【0078】
別の例では、マッピング26または反転マッピング32の二重適用とマッピング28の単一適用とにより、実際の形状12から修正モデル形状16を得ることができる。マッピング26または反転マッピング32の2回目の適用は、マッピング30の適用に対応する。
【0079】
好ましい例では、モデル形状から始めて、マッピング30としてマッピング26または反転したマッピング32の単一の適用で十分であり、マッピング28によって、個々の点について関連するマッピング26または反転したマッピング32を識別することができる。
【0080】
別の例によれば、目標形状10から始めて、マッピング30としてマッピング26または反転マッピング32を単一適用することにより、
図7に示すように、マッピング28を単一適用した場合と同じ目標を達成することができる。
【0081】
図7は、2つの例示的な手順を示している。また、
図7によれば、マッピング28を用いて、まず実際の形状12を異なるモデル形状34に変換することもできる。この場合、実際の形状12が目標形状10から持っている偏差は、モデル形状14に関してマッピングの後も維持される。そして、逸脱したモデル形状34は、マッピング26または反転マッピング32の結果であるマッピング30によって直ちに修正することができる。
【0082】
回転に加えて、局所的なスケーリングや剪断の操作も、非剛体マッピング、より正確には、非剛体マッピングのそれぞれのデリバティブ(derivative)によって定義することができる。これらはここでは示されていないが、補正を適用する際に考慮することができる。
【0083】
図8は、原則的にマッピング36による実際の形状12からモデル形状14への割り当てを利用する場合を示している。
図4の場合のように、ここでも複数の例示的な実施形態が可能である。
【0084】
一例では、実際の形状12から始めて、マッピング36の単一の適用と、マッピング26または反転マッピング32から得られるマッピング30の単一の適用によって、これを修正モデル形状に変換することができる。
【0085】
別の例では、モデル形状14から始めて、マッピング30の単一の適用で十分であり、マッピング36によって、個々の点について、関連するマッピング26または反転したマッピング32を識別することができる。
【0086】
図9は、各点の補正ベクトルを表す矢印が描かれたフィールドから計算されたものである。非剛体マッピングのこの実装では、マッピングの値は、任意の選択された座標に対して決定または補間/外挿されることができる。
【0087】
ここでは、距離46または必要な補正の大きさが、補正される距離46の横方向の範囲44よりも著しく小さい場合に有利である。モデル形状と目標形状との間の距離が比較的小さく、マッピング26のフィールドがこの距離にわたってほとんど変化しない場合、フィールドの使用はさらに有利になり得る。非剛体マッピングの基礎となるモデルを決定するために、制御点または支持点を定義することができ、これらの間の変形またはマッピングを補間または外挿することができる。
【0088】
この例では、モデル形状の位置に第1の非剛体マッピングが適用されているため、第2の非剛体マッピングは必要としない。モデル形状から目標または実際の形状までの距離が、第1の非剛体マッピングの空間上での変化に比べて小さいと仮定すると、望ましい結果が修正モデル形状として良好な近似値で得られる。
【0089】
制御点は、規則的なグリッドであっても、不規則なグリッドであってもよい。例えば、不規則なグリッドは、表面の近傍、大きな変形がある領域、マッピングが目標形状への良好な近似を達成しない領域などの重要な領域において、より高い解像度を持つことができる。これにより、制御点の総数を減らすことができるため、必要とされる計算時間を短縮することができる。制御点の解像度が可変であっても、原理的には規則正しいグリッドを維持することができる。
【0090】
さらに、いくつかのセクションでは、通常の剛性調整を決定することができ、必要であれば、それらの間で補間を使用することができる。
【0091】
さらに、場所に依存する可能性のあるマッピングは、フーリエ級数などを用いて、対象となる3次元空間全体に対して大域的に、したがって分析的に記述することができる。
【0092】
また、データの異常値、幾何学的形状、変形などに対応するために、マッピングの正則化を行ってもよい。
【0093】
非剛体マッピングを決定するために、誤差測定とオプティマイザを使用してもよい。
【0094】
誤差測定は、マッピングの適用後に、互いにマッピングされる形状がどれだけ緊密に一致するかを示す。この目的のために、両方の形状の対応する特徴を使用することができ、例えば、表面、エッジ、コーナー、容易に認識できる形状、いわゆるランドマーク、評価マップで定義された形状または形状領域、または手動で定義された形状またはランドマークなどが挙げられる。形状の対応する特徴は、人工知能ツールによって識別することもできる。ハウズドルフ・メトリックは、誤差測定を計算する1つの方法を提供する。
【0095】
方法100のマッピングを使用して、検討中の形状への表面領域の最適な割り当てを実現することを目的とする場合、問題の形状の表面を分析することが好ましい。オプティマイザを使用して、数学的モデルをパラメータ化して最適な一致を見つけ、これは通常、誤差測定が最小化されることを意味する。しかし、同時に、過剰適応を防ぐために境界条件を適用することができ、これは正則化と呼ばれることがある。
【0096】
コンポーネントの大局的スケーリングは、形状間の良好な一致を可能にするが、場合によっては現実的ではない。そのため、大局的スケーリングを制限したり、拘束を加えたりしてもよい。
【0097】
オプティマイザは、粗い解像度から細かい解像度まで作業することができる。例えば、最初は数個のサポートポイントを使用して、対応する形状を粗く割り当てることができる。徐々にサポートポイントの数を増やしていき、より小さな形状の物体もマッピングで考慮できるようにする。これにより、マッピングが最適解に収束することが保証される。解析的な記述では、例えばフーリエ級数で考慮する項の数を徐々に増やしていくなど、同様の手順を用いることができる。
【0098】
同様に、マッピングの偏差を補正するために、マッピングによって求められる最小の大きさのオーダーや最大の局所的周波数を操作することもできる。この最小の大きさのオーダーは、例えば、まだ補正可能な偏差の最小の横方向の延長として解釈することができる。これは、例えば、ある周波数範囲が形状の偏差として保持されるべきであり、したがって補正すべきではない、または補正できない場合に有用である。
【0099】
通常、この目的のためにカットオフ周波数が定義される。これにより、局所的な過剰調整によって方向ベクトルが誤ってマッピングされることを防ぐこともできる。この場合も、制御点のみを使用するか、モデルの対応する解像度までのフーリエ級数を考慮することで実装することができる。
【0100】
どのようなアプローチをとるにしても、マッピングを決定する前に、実際の形状と目標形状の剛体位置合わせを行い、第1の粗いマッピングを得ることが有効である。これにより、第1または第2の非剛体マッピングが、この出発点からより速く、より精確に決定されることが期待される。
【0101】
上述の方法は、上記説明したように、物体のモデル形状を補正正するために使用することができ、そのモデル形状は物体の製造に使用することができる。代替的または追加的に、例えばCADモデルとして利用可能な目標形状の実際の形状へのマッピングを検索することが可能である。その後m、CADモデルの形で存在する目標形状は、実際の形状に変形される。その結果、実際の形状を持ちながらも、CADモデルの形状要素やエッジなどの表現や基本的な形状構造を持つCADモデルが得られる。
【0102】
さらに、表面のトポロジーや、CADモデルの構造やメッシュの表面要素の接続性などによって定義された修正された形状を保持するように、補正を適用することができる。
【0103】
修正が反復的に実施される場合、目標形状と修正モデル形状との間の関連性を記憶することができる。したがって、次の反復のためのマッピング28を単純に決定することができる。保存された修正モデル形状は、補正の基礎として使用することができる。
【0104】
さらに、具体的には、大規模で大局的な変形と補正が必要な小規模で局所的な偏差を有する柔軟な物体の場合は、ステップ108を2つのサブステップで実行することができる。第1のサブステップでは、大域的な変形を補償する低解像度のマッピングが決定される。次に、局所的な偏差をカバーする、さらなる高解像度マッピングが決定される。これはセクションで定義することもできる。つまり、高解像度マッピングは、補正が行われる特定の領域、または重要な偏差が検出された領域でのみ決定することができるということである。高解像度は関連する領域でのみ使用されるため、自由度の数は管理可能なままであるが、偏差は高解像度でマッピングされ、結果として補正される。
【0105】
さらに、高解像度のマッピングだけで補正を行うこともできる。これにより、局所的な偏差は補正できるが、場合によっては問題にならない大域的な変形については、補正のための努力は不要である。
【0106】
形状のエッジやコーナーをランドマークとして使用し、マッピングを決定してもよい。さらに、実際の形状や測定データの内部にある欠陥は、公称形状では発生しないため、決定の際に無視してもよい。
【0107】
さらに、評価マップやCADモデル、ユーザの入力などにより、補正を一切行わない領域を定義することも可能である。この場合、残りの領域では補正が行われない。補正は、偏差が定義された許容範囲を超えていると決定された領域でのみ実施され、対応する領域では大きな許容範囲が選択される。
【0108】
補正を行う領域と補正を行わない領域の境界から不連続にならないように、補正を行う領域を超えて、補正を行う強さや係数をゆっくりと0にしてもよい。
【0109】
さらに、実際の形状と目標形状のアライメントは、特に関連する領域(例えば、許容範囲の小さい領域)での偏差を最小化するように実施することができる。これにより、補正を最小限に抑えることができる。
【0110】
さらに、マッピング28、26または32、および30の解像度は、実際の形状と目標形状の間の局所的な偏差に基づいて、例えば制御点の密度によって決定され、変化させることができる。偏差が大きい領域では、補正のより良いモデル化がここで必要な場合があるため、解像度が高くなる。解像度はマッピング26と32の間の偏差によってのみ決定されるが、解像度はマッピング28にも転送される。
【0111】
また、この手順では、例えば、マッピングや補正の制御点を移動させるなど、非剛体マッピングを手動で編集する機能をユーザに提供してもよい。
【0112】
本発明は、上述したいずれかの実施形態に限定されるものではなく、多種多様な変更が可能である。
【0113】
構造上の詳細、空間的な配置、および方法ステップを含む、請求項、説明および図面から得られる特定の特徴および利点のすべては、それ自体または最も多様な組み合わせのいずれかで、本発明に不可欠なものとなり得る。
【符号の説明】
【0114】
10 目標形状
12 実際の形状
14 モデル形状
16 修正モデル形状
18 偏差
20 移行
22 修正
24 修正
26 マッピング
28 マッピング
30 マッピング
32 マッピング
34 逸脱したモデル形状
36 マッピング