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特許7579330アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20241030BHJP
   C08G 77/38 20060101ALI20241030BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
C07F7/18 M
C08G77/38
C07F7/18 S
C07B61/00 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022514660
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 US2020049817
(87)【国際公開番号】W WO2021050463
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】62/897,705
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クルトマンシュ、マーク-アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】フェリット、マイケル サルバトーレ
(72)【発明者】
【氏名】スチワンチャロエン、ニサラポーン
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070606(JP,A)
【文献】特表2019-517554(JP,A)
【文献】米国特許第04551541(US,A)
【文献】中国特許出願公開第105418669(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102994004(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106543734(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0154473(US,A1)
【文献】国際公開第2007/061846(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第106634409(CN,A)
【文献】特開2013-082819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
C08G 77/38
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法であって、前記方法が、
(A)少なくとも1つのアルコキシシリル基、及びエポキシド基、エステル基、無水物基、又はアクリルオキシ基を有する初期有機ケイ素化合物と、(B)有機アルコールを含むアルコール成分とを、(C1)カルボン酸アンモニウム化合物を含む(C)の触媒の存在下でトランスアルコキシル化反応により反応させて、それにより前記アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製することを含む、方法。
【請求項2】
前記初期有機ケイ素化合物(A)が、一般式:
【化1】
[式中、各Rは、1~18個の炭素原子を有する独立して選択されるヒドロカルビル基であり、
各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、Rは、エポキシド基、エステル基、無水物基、又はアクリルオキシ基を含み、Dは、二価の連結基であり、下付き文字aは、1、2、又は3である]を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記カルボン酸アンモニウム化合物(C1)が、アミン化合物とカルボン酸との反応生成物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記初期有機ケイ素化合物(A)と前記アルコール成分(B)とを、前記触媒(C)の存在下で反応させることが、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を生成するものであり、前記方法が、前記中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を(D)アミノ官能性オルガノシロキサン化合物と反応させて、それにより前記アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製することを更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物が、一般式:
【化2】
[式中、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、Rは、エポキシド基、エステル基、無水物基、又はアクリルオキシ基を含み、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、Dは、二価の連結基であり、下付き文字aは、1、2、又は3である]を有する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)が、一般式:
【化3】
[式中、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して、R又は式-D-NHのアミノ基であり、式中Dは、独立して選択される二価の連結基であり、但し、少なくとも1つのRは、前記アミノ基であり、下付き文字mは、0~1000であり、下付き文字nは、1~100である]を有する、請求項又はに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月9日に出願された米国仮特許出願第62/897,705号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、全般的に、有機ケイ素化合物に関し、より具体的には、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法及びそれによって調製されたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
有機ケイ素材料は当該技術分野において既知であり、無数の最終用途及び環境で利用される。例えば、オルガノポリシロキサンは、多くの工業、ホームケア、及びパーソナルケア用配合物で使用される。シリコーン官能性及び有機官能性の両方を有するハイブリッド材料が、そのような配合物において使用され、そのようなハイブリッド材料は、シリコーン材料又は有機材料のみに従来から関連する利点を組み合わせて発揮することができる。
【0004】
残念ながら、ハイブリッド材料を調製する多くの方法は、官能性有機ケイ素化合物を必要とし、多くの場合、合成及び/又は使用が困難かつ高価である。具体的には、ある特定の官能性有機ケイ素化合物を調製する従来の方法は、多くの場合、多くのシリコーン材料及び同様に有機材料と(例えば、シリコーン再配列の促進、非選択的反応、分解、官能基の加水分解及び/又は不必要な変換などにより)不適合であり、結果として、収率及び純度が低下し、そのような方法の全般的な適用性を制限する。これらの欠点は、部分的には、環状シロキサンを生成することが知られている(例えば、シロキサン主鎖の解重合を介して)強酸及び塩基などの多くの従来の合成方法で用いられる特定の触媒に起因する。貴金属系化合物も代替触媒として探求されてきたが、これらの化合物も適正適用において制限され、それらが利用される方法に関連するコストを増加させる。
【発明の概要】
【0005】
アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法が提供される。この方法は、(A)初期有機ケイ素化合物と、(B)アルコール成分とを、(C)触媒の存在下で反応させて、それによってアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製することを含む。初期有機ケイ素化合物(A)は、少なくとも1つのアルコキシシリル基を含む。アルコール成分(B)は、有機アルコールを含む。触媒(C)は、(C1)カルボン酸アンモニウム化合物又は(C2)チタン酸塩化合物を含む。
【0006】
この方法に従って調製されたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物も提供される。
【0007】
アルコキシ官能性有機ケイ素化合物又はそれを含む反応生成物を含む組成物も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する方法が開示される。調製されたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、多様な最終用途で利用することができる。例えば、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、例えば、共重合、グラフト化などを介して、シリコーン-有機ハイブリッド材料を調製するときに出発成分及び/又は前駆体として利用され得る。アルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、本明細書で提供されるように、組成物又は配合物にも利用され得る。
【0009】
この方法は、(A)少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する初期有機ケイ素化合物と、(B)有機アルコールを含むアルコール成分とを、(C1)カルボン酸アンモニウム化合物又は(C2)チタン酸塩化合物を含む(C)触媒の存在下で、反応させることを含む。概して、初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)とを反応させることは、初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)とを触媒(C)の存在下で組み合わせることを含む。別の言い方をすれば、初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)とを触媒(C)の存在下で組み合わせることを超えて、反応に必要とされる事前の工程は全般的に存在しない。当業者には理解されるように、この反応は、概して、トランスアルコキシル化反応又はより単純には「トランスアルコキシル化又はアルコキシル化」、例えば、選択的アルコキシル化反応、触媒アルコキシル化反応、アルコキシル変換反応などとして定義されるか、又は別様に特徴付けられ得る。
【0010】
初期有機ケイ素化合物(A)は、少なくとも1つのアルコキシシリル基を有する有機ケイ素化合物であり、それ以外は特に限定されない。
【0011】
概して、初期有機ケイ素化合物(A)のアルコキシシリル基は、以下の式:
【化1】
[式中、各R及びRは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり、下付き文字aは1、2、又は3である]を有する。
【0012】
各R及びRは、ヒドロカルビル基から独立して選択される。しかしながら、本明細書の説明から理解されるように、各R及び各Rは、例えば、互いの置換基として、そのようなヒドロカルビル基の組み合わせを含んでもよい。したがって、好適なヒドロカルビル基は、置換であっても非置換であってもよい。このようなヒドロカルビル基に関して、「置換」という用語は、1個以上の水素原子が水素以外の原子(例えば、塩素、フッ素、臭素などのハロゲン原子)で置き換えられている、炭化水素の鎖内の炭素原子が炭素以外の原子で置き換えられている(すなわち、R及び/又はRが炭素鎖内に1個以上のヘテロ原子(酸素、硫黄、窒素など)を含み得る、又はその両方である炭化水素部分を表す。したがって、R及び/又はRが、エーテル、エステルなどを含んでもよく、又はエーテル、エステルなどであってもよいように、R及び/又はRは、その炭素鎖/主鎖内及び/又は上に(すなわち、その炭素鎖/主鎖に付加される及び/又は一体である)置換基を有する炭化水素部分を含み得ることが理解されるであろう。
【0013】
及び/又はRに好適なヒドロカルビル基は、独立して、直鎖状、分岐状、環状、又はそれらの組み合わせであり得る。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、及び飽和又は非共役環状基を包含する。環状ヒドロカルビル基は、独立して、単環式又は多環式であってもよい。直鎖状及び分岐状ヒドロカルビル基は独立して、飽和であっても不飽和であってもよい。直鎖状及び環状ヒドロカルビル基の組み合わせの一例は、アラルキル基である。ヒドロカルビル基の全般的な例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロカーボン基等、並びに誘導体、変形体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、並びに6~18個の炭素原子を有する分岐状飽和炭化水素基が挙げられる。好適なアリール基の例としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及びジメチルフェニルが挙げられる。好適なアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、及びシクロヘキセニル基が挙げられる。好適な一価ハロゲン化炭化水素基(即ち、ハロ炭素基)の例としては、ハロゲン化アルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ハロゲン化アルキル基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアルキル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基の具体例としては、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、及び8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、クロロメチル、クロロプロピル、2-ジクロロシクロプロピル、及び2,3-ジクロロシクロペンチル基、並びにそれらの誘導体が挙げられる。ハロゲン化アリール基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアリール基が挙げられる。ハロゲン化アリール基の具体例としては、クロロベンジル基及びフルオロベンジル基が挙げられる。典型的には、各R及びRは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基である。
【0014】
各Rは、初期有機ケイ素化合物(A)中の任意の他のRと同じであっても異なっていてもよい。ある特定の実施形態では、各Rは同じである。他の実施形態では、少なくとも1つのRは、初期有機ケイ素化合物(A)の少なくとも1つの他のRとは異なる。いくつかの実施形態では、各Rは、1~18個、あるいは1~12個、あるいは1~6個、あるいは1~4個の炭素原子を有する独立して選択されるヒドロカルビル基である。典型的には、各Rは、独立して、メチル基、エチル基などのアルキル基から選択される。ある特定の実施形態では、各Rはメチルである。
【0015】
各Rは、初期有機ケイ素化合物(A)中の任意の他のRと同じであっても異なっていてもよい。ある特定の実施形態では、各Rは同じである。他の実施形態では、少なくとも1つのRは、初期有機ケイ素化合物(A)の少なくとも1つの他のRとは異なる。いくつかの実施形態では、Rは、典型的には、1~20個、あるいは1~18個、あるいは1~16個の炭素原子を有する独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基である。
【0016】
下付き文字aは、1、2、又は3であり、それにより初期有機ケイ素化合物(A)は、それぞれモノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基を含む。特定の実施形態では、下付き文字aは3であり、それにより、初期有機ケイ素化合物(A)は、少なくとも1つのトリアルコキシシリル基を含む。
【0017】
上で記載したように、初期有機ケイ素化合物(A)は、アルコキシシリル基以外には特に限定されない。しかしながら、いくつかの実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)は、一般式:
【化2】
[式中、R、R、及び下付き文字aは、上で定義されたとおりであり、Dは、二価の連結基であり、Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基である]を有する。
【0018】
概して、Dは、二価の連結基であり、直鎖状であっても分岐状であってよく、置換であっても非置換であってもよい。分岐した場合、Dは、任意に、シロキサンセグメント又はシラン部分(すなわち、上記の全般的な初期有機ケイ素化合物の式中のアルコキシシリル基以外)に結合(例えば、架橋)され得る。典型的には、Dは、二価の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、これは任意に、例えば、エーテル、エステル、シロキシ、及び/又はシリル基で修飾若しくは置換され得る。例えば、いくつかの実施形態では、Dは、式-(CH-を有する炭化水素部分を含み、式中、下付き文字cは1~16である。これらの又は他の実施形態では、Dは、置換炭化水素、すなわち、少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、O、N、Sなど)を有する主鎖を含む炭化水素基を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、Dは、エーテル部分を含む主鎖を有する炭化水素である。
【0019】
は、独立して選択されるヒドロカルビル基、例えば上述のもののいずれかである。典型的には、Rは、独立して選択される置換ヒドロカルビル基である。例えば、特定の実施形態では、Rは、少なくとも1つの官能基を含み、したがって、官能性部分(すなわち、官能性部分R)と称され得る。いくつかのそのような実施形態では、官能基は、エポキシド基、エステル基、無水物基、及びアクリルオキシ基から選択される。したがって、これらの実施形態では、Rは、エポキシド基、エステル基、無水物基、及び/又はアクリルオキシ基を含む。ある特定の実施形態では、Rは、エポキシド基、エステル基、無水物基、又はアクリルオキシ基を含むか、あるいはこれらである。
【0020】
例えば、ある特定の実施形態では、Rは、以下の式のエポキシエチル基を含むか、あるいはエポキシエチル基である:
【化3】
【0021】
いくつかの実施形態では、Rは、以下の式を有するエポキシシクロヘキシル基を含むか、あるいはエポキシシクロヘキシルである:
【化4】
【0022】
特定の実施形態では、Rは、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、又は同様のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基、又は同様のエポキシシクロヘキシルアルキル基;及び4-オキシラニルブチル基、8-オキシラニルオクチル基を含み得るか、あるいはそれであり得る。
【0023】
ある特定の実施形態では、Rは、メチルグリシジルエーテル基、エチルグリシジルエーテル基、プロピルグリシジルエーテル基などのアルキルグリシジルエーテル基を含むか、あるいはそれらである。いくつかの実施形態では、Rは、エポキシシクロヘキシルメチル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、エポキシシクロヘキシルプロピル基などのエポキシシクロヘキシルアルキル基を含むか、あるいはそれらである。
【0024】
いくつかの実施形態では、Rは、式;
【化5】
[式中、R12は独立して、ヒドロカルビル基及びHから選択される]のアクリルオキシ基を含むか、あるいはアクリルオキシ基である。R12に好適なヒドロカルビル基の例としては、上に記載したもののいずれかが挙げられる。ある特定の実施形態では、R12は、Hであり、その結果、Rは、アクリレート基として定義され得るアクリルオキシ基を含む。他の実施形態では、R12は、置換又は非置換ヒドロカルビル基から選択される。いくつかのそのような実施形態では、R12は、アルキル基であり、その結果、Rは、アルキルアクリレート基を含むか、あるいはアルキルアクリレート基である。具体的な実施形態では、R12はメチルであり、Rはメタクリレート基を含むか。メタクリレート基である。
【0025】
いくつかの実施形態では、Rは、エステル基を含むか、あるいはエステル基である。例えば、いくつかのそのような実施形態では、Rは、式:
【化6】
[式中R13は、独立して選択されるヒドロカルビル基である]のエステル基を含むか、あるいはエステル基である。R13に好適なヒドロカルビル基の例としては、上で記載したもののいずれかが挙げられる。いくつかの実施形態では、R13は、置換又は非置換ヒドロカルビル基から選択される。いくつかのそのような実施形態では、R13は、アルキル基であり、その結果Rはアルキルエステル基を含むか、あるいはアルキルエステル基である。具体的な実施形態では、R13は、メチル、エチル、又はプロピルであり、その結果Rは、それぞれメチルエステル基、エチルエステル基、又はプロピルエステル基を含むか、あるいはそれらである。
【0026】
ある特定の実施形態では、Rは、無水物基を含むか、あるいは無水物基である。無水物基は、飽和又は不飽和置換基を含んでもよく、直鎖状であっても環状であってもよい。
【0027】
ある特定の実施形態では、方法は、2、3、4、又はそれ以上の初期有機ケイ素化合物(A)などの2つ以上の初期有機ケイ素化合物(A)を利用することを含む。そのような実施形態では、各初期有機ケイ素化合物(A)は、独立して選択され、任意の他の初期有機ケイ素化合物(A)と同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
初期有機ケイ素化合物(A)は、任意の形態、例えば、未希釈(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などが存在しない)で利用されてもよく、又は溶媒若しくは分散剤などの担体ビヒクル中に配置されてもよい。担体ビヒクルは、存在する場合、有機溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;など;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル)、シリコーン流体、又はこれらの組み合わせ、を含み得る。利用される場合、担体ビヒクルは、選択された特定の初期有機ケイ素化合物(A)などの反応の特定の成分に基づいて選択される。例えば、ある特定の実施形態では、方法は、エーテル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなど、又はそれらの組み合わせなどの極性成分を含む担体ビヒクル若しくは溶媒の存在下で実施される。いくつかの実施形態では、担体ビヒクルは、上記のものなどのハロゲン化炭化水素を含み得る。そのような実施形態では、全般的に担体ビヒクルは、及び/又は特にハロゲン化炭化水素は、典型的には、そこからの任意の塩酸(HCl)を低減するか、あるいは除去するために精製及び/又は処理される。初期有機ケイ素化合物(A)は、成分(B)及び(C)と組み合わせる前、際、又は後に、利用される場合、担体ビヒクルと組み合わせてもよいことが理解されるであろう。
【0029】
ある特定の実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)は、担体ビヒクルを含まないか、あるいは実質的に含まない。いくつかのそのような実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)は、初期有機ケイ素化合物(A)、アルコール成分(B)(例えば、その有機アルコール)、及び/又は触媒(C)と反応性である水及び担体ビヒクル/揮発性物質を含まないか、あるいは実質的に含まない。いくつかの実施形態では、方法は、初期有機ケイ素化合物(A)、アルコール成分(B)、及び/又は触媒(C)と反応性である担体ビヒクル/揮発性物質の非存在下で実施される。例えば、ある特定の実施形態では、方法は、初期有機ケイ素化合物(A)を成分(B)及び/又は(C)と組み合わせる前に、初期有機ケイ素化合物(A)の混合物から、揮発性物質及び/又は溶媒をストリッピングすることを含み得る。初期有機ケイ素化合物(A)からストリッピングする技術は、当該技術分野において既知であり、加熱、乾燥、減圧/真空の適用、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの使用、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0030】
初期有機ケイ素化合物(A)は、当業者によって選択される任意の量で利用されてもよく、例えば、選択される特定の触媒(C)、採用される反応パラメータ、反応の規模(例えば、反応させられる成分(A)及び/又は調製されるアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の総量)などに応じたものとなる。
【0031】
アルコール成分(B)は、有機アルコールを含み、それ以外は特に限定されない。当業者によって理解されるように、有機アルコールも特に限定されないが、アルコール成分(B)の有機アルコールでトランスアルコキシル化されるアルコキシシリル基の個々のアルコキシドの共役酸の沸点及び/又は他の特性を含む、利用される特定の初期有機ケイ素化合物(A)を考慮して選択される。
【0032】
典型的には、アルコール成分(B)の有機アルコールは、式ROH[式中、Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基である]を有する。Rに好適なヒドロカルビル基の例としては、上で記載したもののいずれかが挙げられる。例えば、ある特定の実施形態では、Rは、置換及び非置換ヒドロカルビル基から選択される。いくつかのそのような実施形態では、Rは、少なくとも3個、あるいは少なくとも4個、あるいは少なくとも5個、あるいは少なくとも6個、あるいは6個超の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基である。特定の実施形態では、Rは、3~30個、あるいは3~28個、あるいは3~26個、あるいは3~24個、あるいは3~22個、あるいは4~22個、あるいは5~22個、あるいは6~22個、あるいは6~20個の炭素原子を有する独立して選択されるヒドロカルビル基である。
【0033】
概して、当業者によって理解されるように、トランスアルコキシル化反応を容易にするために、Rは、初期有機ケイ素化合物(A)のアルコキシシリル基のRとは異なる。RとRとの間の差は、例えば、以下に記載されるように、調製されるアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の精製の容易さ(すなわち、蒸留、蒸発などによる、反応中に生成される式ROHのアルコールの除去に関して)を向上させるように、選択され得る。例えば、ある特定の実施形態では、Rは、初期有機ケイ素化合物(A)のアルコキシシリル基のRよりも少なくとも1個、あるいは少なくとも2個、あるいは少なくとも3個、あるいは少なくとも4個多い炭素原子を有するように選択される。これら又は他の実施形態では、R及びRは、有機アルコールが、トランスアルコキシル化反応中に生成される式ROHのアルコールよりも高い沸点及び/又は低い蒸気圧を有するように協調的に選択される。
【0034】
好適な有機アルコールの例としては、2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)-1-プロパノール、2,2-ジメチル-3-フェニル-1-プロパノール、3-(2-ボルニルオキシ)2-メチル-1-プロパノール、2-tert-ブチルシクロヘキサノール、4-tert-ブチルシクロヘキサノール、ジヒドロテルピネオール、2,4-ジメチル-4-シクロヘキセン-1-イルメタノール、2,4-ジメチルシクロヘキシルメタノール、2,6-ジメチル-2-ヘプタノール、2,6-ジメチル-4-ヘクタノール、2,6-ジメチル-2,7-オクタジエン-6-オール(リナロール)、シス-3、7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール(ネロール)、トランス-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-オール(ゲラニオール)、1-オクタノール、2-オクタノール、3,7-ジメチル-1,7-オクタンジオール、3,7-ジメチル-1-オクタノール(テトラヒドロゲラニオール)、2,6-ジメチル-2-オクタノール(テトラヒドロミルセノール)、3,7-ジメチル-3-オクタノール(テトラヒドロリナロール)、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール(ジヒドロミルセノール)、3,7-ジメチル-6-オクテン-1-オール(シトロネロール)、3,7-ジメチル-1,6-ノナジエン-3-オール、1-デカノール、9-デセン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクトペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、シス-3-ヘキセン-1-オール、4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-ブタノン、3-(ヒドロキシメチル)-2-ノナノン、3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-2,4-ジメチル-4,7-メタノ[H]インデン-5-オール,1-ヒドロキシ-2-(1-メチル-1-ヒドロキシエチル)-5-メチルシクロヘキサン、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、イソボルネオール、3-イソカンフィルシクロヘキサノール、2-イソプロペニル-5-メチルシクロヘキサノール(イソプレゴール)、1-イソプロピル-4-メチルシクロヘキサ-3-エノール(テルピネノール)、4-イソプロピルシクロヘキサノール、1-(4-イソプロピルシクロヘキシル)エタノール、4-イソプロピルシクロヘキシルメタノール、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール(メントール)、2-イソプロピル-5-メチルフェノール(チモール)、5-イソプロピル-2-メチルフェノール(カルバクロール)、2-(4-メチル-3-シクロヘキセニル)-2-プロパノール(テルピネオール)、2-(4-メチルシクロヘキシル)-2-プロパノール(ジヒドロテルピネオール)、ベンジルアルコール、4-メトキシベンジルアルコール、2-メトキシ-4-メチルフェノール、3-メトキシ-5-メチルフェノール、2-エトキシ-4-メトキシメチルフェノール、4-アリル-2-メトキシフェノール(オイゲノール)、2-メトキシ-4-プロペニルフェノール(イソオイゲノール)、1-メトキシ-4-プロペニルベンゼン(アネトール)、4-メチル-3-デセン-5-オール、2-メチル-6-メチレン-7-オクテン-2-オール(ミルセノール)、2-メチル-2-ブタノール(2M2B、tert-アミルアルコール、TAA)、3-メチル-4-フェニル-2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール(イソアミルアルコール、イソペンチルアルコール)、2-(2-メチルフェニルエタノール)エタノール、2-メチル-4-フェニル-1-ペンタノール、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノール、2-メチル-1-フェニル-2-プロパノール、(1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル)メタノール、3-メチル-4-(2,2,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-2-ブタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、(3-メチル-1-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-イル)メタノール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、2-メチル-2-ビニル-5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)テトラヒドロフラン、(2E,6Z)-ノナ-2,6-ジエン-1-オール、1-ノナノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール(イソノナノール)、ノポール、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-2-ナフトール、3,4,5,6,6-ペンタメチル-2-ヘプタノール、2-フェニルエタノール、2-フェニルプロパノール、3-フェニルプロパノール(ヒドロシンナミックアルコール)、3-フェニル-2-プロペン-1-オール(シンナミックアルコール)、4-(5,5,6-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)シクロヘキサン-1-オール、3,5,5-トリメチルシクロヘキサノール、2,4,6-トリメチル-4-シクロヘキセン-1-イルメタノール、5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-3-メチルペンタン-2-オール、3,7,11-トリメチル-2,6,10-ドデカトリエン-1-オール(ファルネソール)、3,7,11-トリメチル-1,6,10-ドデカトリエン-3-オール(ネロリドール)、1-ウンデカノール、10-ウンデセン-1-オール、ベチベロールなど、並びにそれらの誘導体、変形体、及び組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、有機アルコールは、ゲラニオール、2E、6Z)-ノナ-2,6-ジエン-1-オール、イソアミルアルコール、ベンジルアルコール、2-オクタノール、及び2-メチル-2-ブタノールから選択される。
【0035】
ある特定の実施形態では、アルコール成分(B)の有機アルコールは、芳香(フレグランス)アルコール又は非芳香アルコールを含み得るか、あるいはそれであり得る。典型的には、特定の有機アルコールが芳香アルコール又は非芳香アルコールと見なされるかどうかに関する区別は、特定の有機アルコールが、ヒトの鼻によって検知可能な臭気作用を示すかどうかに基づく。しかしながら、有機アルコールは、芳香アルコール及び/又は非芳香アルコールのいずれかと見なすことができるため、そのような区別はあったとしても、最終使用用途に基づく当業者によるアルコール成分(B)の有機アルコールの選択にのみ関連する。いくつかの実施形態では、アルコール成分(B)は、芳香アルコールを実質的に含まないか、あるいは含まない。これら又は他の実施形態では、アルコール成分(B)の有機アルコールは、プロフレグランス及び/又はプロフレグランス前駆体基を実質的に含まないか、あるいは含まない。
【0036】
ある特定の実施形態では、アルコール成分(B)は、2、3、4つ、又はそれ以上の有機アルコールなどの2つ以上の有機アルコールを含む。そのような実施形態では、各有機アルコールは独立して選択され、例えば、炭素原子の数、構造(例えば、立体化学など)、沸点、気化点、蒸気圧などに関して、任意の他の有機アルコールと同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
アルコール成分(B)の有機アルコールは、任意の形態、例えば、未希釈(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などが存在しない)で利用されてもよく、又は溶媒若しくは分散剤などの担体ビヒクル中に配置されてもよい。したがって、アルコール成分(B)それ自体は、有機アルコール及び担体ビヒクルなどの他の成分を含んでもよいか、又は有機アルコールから本質的になるか、あるいはそれからなってもよい。担体ビヒクルは、存在する場合、有機溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素;など;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル)、シリコーン流体、又はこれらの組み合わせを含み得る。アルコール成分(B)は、利用される場合、成分(A)及び(C)と組み合わされる前に、際に、又は後にそのような担体ビヒクルと組み合わされ得ることが理解されよう。ある特定の実施形態では、アルコール成分(B)それ自体は、例えば、有機アルコールが使用される反応条件下で液体である場合、反応のための担体ビヒクルとして利用される。
【0038】
ある特定の実施形態では、アルコール成分(B)は、担体ビヒクルを含まないか、あるいは実質的に含まない。いくつかのそのような実施形態では、アルコール成分(B)は、アルコール成分(B)(例えば、その有機アルコール)、初期有機ケイ素化合物化合物(A)、及び/又は触媒(C)と反応性の水及び担体ビヒクル/揮発性物質を含まないか、あるいは実質的に含まない。例えば、ある特定の実施形態では、方法は、アルコール成分(B)を成分(A)及び/又は(C)と組み合わせる前に、アルコール成分(B)から揮発性物質(すなわち、揮発性の場合有機アルコール以外の)及び/又は溶媒(例えば、水、反応性溶媒など)をストリッピングすることを含み得る。アルコール成分(B)からストリッピングする技術は、当該技術分野において既知であり、加熱、乾燥、減圧/真空の適用、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの使用、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0039】
アルコール成分(B)は、当業者によって選択される任意の量で使用されてもよく、例えば、選択される特定の初期有機ケイ素化合物(A)、選択される特定の触媒(C)、採用される反応パラメータ、反応の規模(例えば、変換させられる成分(A)及び/又は調製されるアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の総量)などに応じたものとなる。
【0040】
利用される初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)との相対量は、例えば、選択される特定の初期有機ケイ素化合物(A)、選択される成分(B)の特定の有機アルコール、採用される反応パラメータなどに基づいて変化し得る。当業者によって理解されるように、初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)の有機アルコールとのトランスアルコキシル化は、初期有機ケイ素化合物(A)内に存在するアルコキシシリル官能基の数に基づいて、理論上の最大値で起こる。特に、上記の全般的なアルコキシシリル基を参照すると、下付き文字aで表される各アルコキシ基は、トランスアルコキシル化することができ、その結果、アルコール成分(B)の有機アルコールの1モル当量が、初期有機ケイ素化合物(A)のアルコキシシリル基ごとに必要とされる。このようにして、初期有機ケイ素化合物(A)が、下付き文字aが3である単一のアルコキシシリル基を含む場合、初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)の有機アルコールとのトランスアルコキシル化は、1:3の(A):(B)の理論上の最大モル比で起こり、式中、(B)は、アルコール成分(B)の有機アルコールである。同様に、初期有機ケイ素化合物(A)が、各下付き文字aが2である2つのアルコキシシリル基を含む場合、初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)の有機アルコールとのトランスアルコキシル化は、1:4の(A):(B)の理論上の最大モル比で起こり、式中、(B)は、アルコール成分(B)の有機アルコールである。
【0041】
しかしながら、典型的には、成分のうちの1つの過剰量(例えば、モル及び/又は化学量論的に)が、例えば、形成された反応生成物の精製を簡素化するために、初期有機ケイ素化合物(A)又はアルコール成分(B)の有機アルコールを完全に消費するために利用される。例えば、ある特定の実施形態では、アルコール成分(B)は、相対過剰量で利用され(例えば、有機アルコールが初期有機ケイ素化合物(A)のケイ素結合アルコキシ基の数のモル過剰で存在する)、初期有機ケイ素化合物(A)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物への変換率を最大化する。いくつかのそのような実施形態では、アルコール成分(B)はまた、反応における担体ビヒクルとして利用されてもよく、又は別様に機能してもよい。有機アルコールの最大消費が望まれる場合など、初期有機ケイ素化合物(A)は、アルコール成分(B)の有機アルコールの過剰で使用され得ることが理解されよう。
【0042】
概して、初期有機ケイ素化合物とアルコール成分(B)の有機アルコールとは、典型的には、10:1~1:10の(A):(B)のモル比で反応する。ある特定の実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)の有機アルコールとは、1:1~1:9のモル比で、例えば、1:2~1:9、あるいは1:2~1:8、あるいは1:2~1:7、あるいは1:3~1:7、あるいは1:3.1~1:6.1の、(A):(B)のモル比で反応する。これらの範囲外の比率も同様に利用され得ることが理解されよう。例えば、ある特定の実施形態では、アルコール成分(B)の有機アルコールは、例えば、反応中にアルコール成分(B)の有機アルコールが担体(すなわち、溶媒、希釈剤など)として利用される場合など、総過剰量で(例えば、初期有機ケイ素化合物(A)のモル量の≧10倍、あるいは≧15倍、あるいは≧20倍の量で)利用される。しかしながら、当業者は、本方法による特定のトランスアルコキシル化のための(A):(B)の理論上の最大比、任意の担体ビヒクルの存在、利用される特定の初期有機ケイ素化合物(A)(例えば、それから形成されるアルコールROHの性質)などに関するものを含む、上記の説明を考慮して反応させる初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)の有機アルコールとの特定の比率を容易に選択するであろう。
【0043】
触媒(C)は、(C1)カルボン酸アンモニウム化合物又は(C2)チタン酸塩化合物を含む。利用される特定の触媒(C)は、トランスアルコキシル化される特定の初期有機ケイ素化合物(A)を考慮して選択される。特に、Rの官能基の選択(例えば、初期有機ケイ素化合物が官能性部分Rを含む場合)は、どの特定の触媒(C)が利用され得るかを制御するものである。概して、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)の使用は、限定されず、上で記載した初期有機ケイ素化合物(A)のいずれかと共に利用され得る。したがって、ある特定の実施形態では、触媒(C)は、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)を含むか、あるいはカルボン酸アンモニウム化合物(C1)である。特定の実施形態では、触媒(C)は、チタン酸塩化合物(C2)を含むか、あるいはチタン酸塩化合物(C2)である。カルボン酸アンモニウム化合物(C1)
【0044】
ある特定の実施形態では、触媒(C)は、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)を含む。カルボン酸アンモニウム化合物(C1)は、特に限定されず、概して、アミン化合物とカルボン酸との反応生成物を含む。当業者は、アミン化合物とカルボン酸との反応が概して酸塩基反応であり、アミン化合物(すなわち、塩基)がカルボン酸によってプロトン化されてアンモニウムカチオン及びカルボキシレートアニオンを得て、これは、そのようなイオンが密接又は一時的に結合形成されているかどうかに関係なく、集合的にカルボン酸アンモニウム化合物と呼ばれることを理解するであろう。
【0045】
概して、好適なアミン化合物としては、アミノ官能性有機化合物(例えば、アミン置換炭化水素化合物)が挙げられる。特に、アミン化合物は、典型的には、一般式:
【化7】
[式中、各Rは、1~18個の炭素原子を有する独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、下付き文字bは、0、1、又は2である]を有する部分を含む。Rに好適なヒドロカルビル基の例としては、上記のもののいずれかが挙げられる。例えば、ある特定の実施形態では、各Rは、1~16個、あるいは1~14個、あるいは1~12個、あるいは1~10個、あるいは1~9個、あるいは1個~8個、あるいは1~7個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基である。いくつかのそのような実施形態では、各Rは、直鎖状、分岐状、及び/又は環状アルキル基である。いくつかの実施形態では、下付き文字bは0であり、その結果、アミン化合物は第一級アミンである。他の実施形態では、下付き文字bは1であり、その結果、アミン化合物は第二級アミンである。追加の実施形態では、下付き文字bは2であり、その結果、アミン化合物は第三級アミンである。
【0046】
いくつかの実施形態では、アミン化合物は、一般式:
【化8】
[式中、各R及び下付き文字bは、上記で定義されたとおりであり、R14は、1~22個の炭素原子を有する独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基である]を有する有機アミンである。R14に好適なヒドロカルビル基の例としては、上で記載したもののいずれかが挙げられ、それによりR14は存在する場合、アミン化合物のいずれかのRと同一であっても異なってもよい。例えば、ある特定の実施形態では、R14は、1~20個、あるいは2~20個、あるいは2~18個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基である。いくつかのそのような実施形態では、各R14は、直鎖状、分岐状、及び/又は環状アルキル基である。
【0047】
特定の実施形態では、アミン化合物は、下付き文字bが、0又は1である上記の一般式を有する有機アミンであり、その結果、アミン化合物は、それぞれ第一級又は第二級有機アミンとして定義され得る。いくつかのそのような実施形態では、下付き文字b、各R、及びR14は、アミン化合物が、合計で3~20個、あるいは4~20個、あるいは5~20個、あるいは5~18個の炭素原子を含むように選択される。アミン化合物が、環構造において互いに結合している、少なくとも2つの窒素結合置換基を有する第二級又は第三級アミンなどの環状アミンであってもよい(すなわち、アミン化合物は、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、チアゾール、ピリジン、ピペリジン、モルホリンなどのヘテロ環式アミンであり得る)ことを理解されたい。
【0048】
典型的には、アミン化合物は、揮発性有機アミンから選択される。例えば、ある特定の実施形態では、有機アミンは、大気圧で300℃未満、あるいは250℃未満、あるいは240℃未満、あるいは230℃未満、あるいは220℃未満、あるいは210℃未満、あるいは200℃未満の気化点を有する。気化点という用語は、本明細書で使用される場合、固相又は液相中の化合物が蒸気/気相に変換される(例えば、蒸発、昇華などによって)温度を指すことを理解されたい。この意味では、気化点は、そのような化合物(例えば、化合物が液体である)の沸点に対応し得る。特定の実施形態では、アミン化合物は、大気圧で、50~250℃、あるいは60~250℃、あるいは60~235℃、あるいは70~235℃、あるいは70~220℃の気化点を有する。
【0049】
カルボン酸アンモニウム化合物(C1)の調製において使用するのに好適な特定のアミン化合物の例としては、アルキルアミン、例えば、脂肪族第一級アルキルアミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン(例えば、n-プロピルアミン、イソプロピルアミンなど)、ブチルアミン(例えばn-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、イソブチルアミン、t-ブチルアミンなど)、ペンチルアミン(例えば、ペンチルアミン、2-アミノペンタン、3-アミノペンタン、1-アミノ-2-メチルブタン、2-アミノ-2-メチルブタン、3-アミノ-2-メチルブタン、4-アミノ-2-メチルブタンなど)、ヘキシルアミン(例えば、ヘキシルアミン、5-アミノ-2-メチルペンタンなど)、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミンなどをはじめとするもの;脂肪族第二級アルキルアミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-tert-ブチルブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルイソプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルイソブチルアミン、メチル-sec-ブチルアミン、メチル-tert-ブチルアミン、メチルアミルアミン、メチルイソアミルアミン、エチルプロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルイソブチルアミン、エチル-sec-ブチルアミン、エチル-tert-ブチルアミン、エチルイソアミルアミン、プロピルブチルアミン、プロピルイソブチルアミンなど;並びにそれらの誘導体、変形体、及び組み合わせが挙げられる。例えば、上記の例に列挙されたアルキル基の組み合わせを含むもののいずれかなどの混合第二級アルキルアミン(例えば、N-エチルイソプロピルアミンなど)も利用され得る。特定の実施形態では、アミン化合物は、オクタデシルアミン及び/又はジエチルアミンを含むか、あるいはそれである。
【0050】
ある特定の実施形態では、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)は、2、3、4つ又はそれ以上のアミン化合物などの2つ以上のアミン化合物を含む(すなわち、それから形成される)。そのような実施形態では、各アミン化合物は独立して選択され、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)の任意のアミン化合物と同じであっても異なっていてもよい。
【0051】
ある特定の実施形態では、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)は、2、3、4つ又はそれ以上のアミン化合物などの2つ以上のアミン化合物を含む(すなわち、それから形成される)。そのような実施形態では、各アミン化合物は独立して選択され、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)の任意のアミン化合物と同じであっても異なっていてもよい。同様に、触媒(C)は、2、3、4つ又はそれ以上のカルボン酸アンモニウム化合物(C1)などの2つ以上のカルボン酸アンモニウム化合物(C1)を含み得る。そのような実施形態では、各カルボン酸アンモニウム化合物(C1)のアミン化合物は独立して選択され、独立して、触媒(C)の任意のカルボン酸と錯化し、結合形成し、イオン対形成し、又は別様に会合することができる(すなわち、アミン化合物が対応するアンモニウムカチオンにプロトン化され、カルボン酸が対応するカルボキシレートアニオンに脱プロトン化される)。
【0052】
概して、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)の調製に使用するための好適なカルボン酸化合物は、一般式:
【化9】
[式中各Rは、1~18個の炭素原子を有する独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基である]を有する。Rに好適なヒドロカルビル基の例としては、上で記載したもののいずれかが挙げられる。例えば、ある特定の実施形態では、Rは、1~16個、あるいは1~14個、あるいは1~12個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基である。特定の実施形態では、Rは、直鎖状、分岐状、及び/又は環状アルキル基である。いくつかの実施形態では、Rは、プロピル又はメチルである。
【0053】
典型的には、カルボン酸は、揮発性カルボン酸から選択される。例えば、ある特定の実施形態では、カルボン酸は、大気圧で、300℃未満、あるいは255℃未満、あるいは240℃未満、あるいは230℃未満、あるいは220℃未満、あるいは220℃未満、あるいは200℃未満、あるいは190℃未満、あるいは180℃未満の気化点を有する。特定の実施形態では、カルボン酸は、大気圧で、100~250℃、あるいは100~225℃、あるいは100~200℃、あるいは100~175℃、あるいは100~150℃の気化点を有する。
【0054】
カルボン酸アンモニウム化合物(C1)の調製における使用に好適な特定のカルボン酸の例としては、エタン酸(例えば、酢酸)、プロパン酸(例えば、プロピオン酸)、ブタン酸(例えば、酪酸)、ペンタン酸(例えば、吉草酸)、ヘキサン酸(例えば、カプロン酸)、ヘプタン酸(例えば、エナント酸)、オクタン酸(例えば、カプリル酸)、ノナン酸(例えば、ペラルゴン酸)、デカン酸(例えば、カプリン酸)など、並びにそれらの誘導体、変形体、及び組み合わせが挙げられる。ある特定の実施形態では、カルボン酸は、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)が、アセテート及び/又はプロピオネートを含むように、酢酸及び/又はプロピオン酸である。直鎖状カルボン酸が上記に例示されているが、環状及び/又は分岐状カルボン酸も利用され得ることが理解されよう。
【0055】
ある特定の実施形態では、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)は、2、3、4つ又はそれ以上のアミン化合物などの2つ以上のアミン化合物を含む(すなわち、それから形成される)。そのような実施形態では、各カルボン酸は独立して選択され、カルボン酸アンモニウム化合物(C1)の任意のカルボン酸と同じであっても異なっていてもよい。同様に、触媒(C)は、2、3、4つ又はそれ以上のカルボン酸アンモニウム化合物(C1)などの2つ以上のカルボン酸アンモニウム化合物(C1)を含み得る。そのような実施形態では、各カルボン酸アンモニウム化合物(C1)のカルボン酸は独立して選択され、独立して、触媒(C)の任意のアミン化合物と錯化し、結合形成し、イオン対形成し、又は別様に会合することができる(すなわち、アミン化合物が対応するアンモニウムカチオンにプロトン化され、カルボン酸が対応するカルボキシレートアニオンに脱プロトン化される)。
【0056】
ある特定の実施形態では、触媒(C)は、チタン酸塩化合物(C2)を含む。典型的には、チタン酸塩化合物(C2)は、アルコキシド及び/又はエノレート型配位子(すなわち、チタンキレート触媒)を含むチタン(IV)錯体などの有機チタン化合物である。
【0057】
チタン酸塩化合物(C2)は、以下に更に詳細に記載されるアルコキシド及びエノレート型配位子の任意の組み合わせを含んでもよく、チタン酸塩化合物(C2)を得るために、選択される特定の配位子及びチタンと配位するための特定の配位子の能力によってのみ限定される。例えば、チタン酸塩化合物(C2)は、例えば配位子のタイプ、構造などに関して、1つ、2つ、又はそれぞれの他の配位子と同じである1つの配位子を含むことができる。同様にチタン酸塩化合物(C2)は、あらゆる他の配位子とは異なる1つ以上の配位子であり得る。ある特定の実施形態では、チタン酸塩化合物(C2)は、少なくとも1つのアルコキシド配位子を含む。そのような実施形態では、チタン酸塩化合物(C2)は、1つ、2つ、3つ、又は4つのそのようなアルコキシド配位子を含むことができ、それによって、チタン酸塩化合物(C2)は、それぞれ、チタンモノ-、ジ-、トリ-、又はテトラアルコキシドである。チタン酸塩化合物(C2)は、二座アルコキシド配位子(例えば、ジアルコキシド配位子)、並びに本明細書で詳細に記載されるモノアルコキシドを含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、チタン酸塩化合物(C2)は、少なくとも1つのエノレート型配位子を含む。好適なエノレート型配位子は、ベータ-ジケトン(すなわち、ジオン)、ベータ-ケトエステル、及び/又はベータ-ジエステルなどの親ベータ-ジカルボニル化合物から形成されたエノレートによって例示され、ベータ-ジカルボニルエノレートと称され得る。そのような実施形態では、チタン酸塩化合物(C2)は、2つ、3つ、又は4つのそのようなエノレート型配位子を含むことができ、それによって、チタン酸塩化合物(C2)は、チタンビス-、トリス-、又はテトラアルキス(ベータ-カルボニルエノレート)である。特定の実施形態では、チタン酸塩化合物(C2)は、少なくとも1つのアルコキシド配位子と、少なくとも1つのベータ-カルボニルエノレートとを含む。チタン酸塩化合物(C2)が、(例えば、配位子交換、調製などのために)複数のチタン錯体を含むことができ、したがって、チタンテトラキス(ベータ-カルボニルエノレート)、チタンアルコキシドトリス(ベータ-カルボニルエノレート)、チタンジアルコキシドビス(ベータ-カルボニルエノレート)、チタントリアルコキシド(ベータ-カルボニルエノレート)、チタンテトラアルコキシド、又はそれらの組み合わせを含み得るか、あるいはそれらであり得る。
【0059】
特定の実施形態では、チタン酸塩化合物(C2)は、一般式TiX[式中、各Xは独立して式Y-CH-Y又は-ORのものであり、各Yは独立して、式RC(O)-又はROC(O)-のものであり、各Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基である]を有する。本明細書に記載の実施形態を考慮して、当業者には理解されるように、式-ORの各Xは、アルコキシド配位子として定義することができ、式Y-CH-Yの各Xは、ベータ-ジカルボニルエノレート配位子として定義することができる。特に上で述べた、ベータ-ジカルボニルエノレート配位子に関して、各Yは独立して、式RC(O)-又はROC(O)-のものである。したがって、ある特定の実施形態では、チタン酸塩化合物(C2)は、式RC(O)-CH-C(O)Rのベータ-ジケトエノレート、式ROC(O)-CH-C(O)Rのベータ-ケトエステルエノレート、及び式ROC(O)-CH-C(O)Rのベータ-ジエステルエノレートから選択される配位子Xを含み得る。
【0060】
概して、上記の配位子Xのいずれかについて、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基である。Rに好適なヒドロカルビル基は、上記のもののいずれか、並びにメチル、エチル、トリフルオロメチル、4-メトキシフェニル、4-クロロフェニル、tert-ブチル、2-ピリジル、ヘプタフルオロプロピル、イソ-ブチル、2-メセチレニル、フェニル、ベンジル、2-チエニル、及び2-ナフチル基によって例示されるものであり、これらを挙げ得る。典型的には、各Rは、1~18個、あるいは1~10個、あるいは1~8個、あるいは1~6個の炭素原子を有する置換又は非置換ヒドロカルビル基から独立して選択される。例えば、ある特定の実施形態では、各Rは、置換、非置換、直鎖状、及び/又は分岐状のメチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル基から独立して選択される。
【0061】
チタン酸塩化合物(C2)に、又はチタン酸塩化合物(C2)として使用するのに好適なチタンキレート触媒の例としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド(例えば、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシドなど)、チタンブトキシド(例えば、チタンブトキシド、チタンイソブトキシド、チタンtertブトキシドなど)、チタンメチルアセトアセテート、チタンイソプロピルアセトアセテート(titanium isopropylacetoatates)、チタンブチルアセトアセテート、チタンアセチルアセトネートなど、並びにそれらの誘導体、変形体、及び組み合わせ(例えば、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)、チタンジブトキシドビス(メチルアセトアセテート)など)が挙げられる。
【0062】
触媒(C1)及び(C2)の調製方法は、当該技術分野において既知であり、触媒自体及び/又はその調製に使用される化合物は、様々な供給元から市販されている。したがって、触媒(C)は、方法の一部として調製されてもよく、又は他の方法で(即ち、調製された化合物として)得られてもよい。触媒(C)の調製は、成分(A)と(B)との反応の前に、又はin situで(すなわち、成分(A)と(B)との反応中に、例えば、触媒(C)の成分を成分(A)及び/又は(B)と組み合わせることによって)実施され得る。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、アミン化合物及びカルボン酸化合物を初期有機ケイ素化合物(A)及び/又はアルコール成分(B)と組み合わせ、それにより、in situでカルボン酸アンモニウム化合物(C1)(すなわち、触媒(C))を形成することを含む。
【0063】
触媒(C)は、任意の形態、例えば、未希釈(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などが存在しない)で利用されてもよく、又は溶媒若しくは分散剤(例えば、初期有機ケイ素化合物(A)及び/又はアルコール成分(B)に関して上に列挙したもののうちのいずれかなど)などの担体ビヒクル中に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、触媒(C)は、初期有機ケイ素化合物(A)、アルコール成分(B)、及び/又は触媒(C)それ自体と反応性である水及び/又は担体ビヒクル/揮発性物質の非存在下で利用される(すなわち、成分(A)及び成分(B)と組み合わされるまで)。例えば、ある特定の実施形態では、本方法は、触媒(C)から揮発性物質及び/又は溶媒(例えば、水、有機溶媒など)をストリッピングすることを含んでもよい。触媒(C)からストリッピングする技術は、当該技術分野において公知であり、加熱、乾燥、減圧/真空の適用、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの利用、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0064】
触媒(C)は、当業者によって選択される任意の量で利用されてもよく、これは、例えば、選択される特定の触媒(C)(すなわち、(C1)又は(C2)のどちらかであるか、利用される特定の種など)、採用される反応パラメータ、反応の規模(例えば、成分(A)及び成分(B)の総量)などに応じたものとなる。反応に利用される触媒(C)の成分(A)及び/又は(B)に対するモル比は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するためのトランスアルコキシル化の速度及び/又は量に影響し得る。したがって、成分(A)及び/又は(B)に対する触媒(C)の量、並びに両者間のモル比は変化し得る。典型的には、これらの相対量及びモル比は、(例えば、反応の経済的効率の向上、形成される反応生成物の精製の簡易化などのために)触媒(C)の担持量を最小化しつつ、成分(A)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物へのトランスアルコキシル化を最大化するように選択される。
【0065】
ある特定の実施形態では、触媒(C)は、利用される成分(A)の総量に基づいて、0.001~30mol%の量で反応に利用される。例えば、触媒(C)は、使用される成分(A)の総量に基づいて、0.005~25mol%、又は0.005~20mol%、又は0.01~20mol%の量で使用されてもよい。
【0066】
典型的には、成分(A)及び(B)は、容器又は反応器内で反応させて、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する。以下に記載されるように、反応が高温又は低温で実施されるとき、容器又は反応器は、例えば被覆物、覆い、交換器、槽、コイルなどを介して、任意の好適な方法で加熱又は冷却されてもよい。
【0067】
成分(A)、(B)、(C)は、容器に一緒に若しくは別々に供給されてもよく、又は任意の添加の順序で、及び任意の組み合わせで容器内に配置されてもよい。例えば、ある特定の実施形態では、成分(B)、及び(C)は、成分(A)を入れた容器に添加される。このような実施形態では、成分(B)及び成分(C)は、添加前に最初に組み合わされてもよく、又は容器に順次添加されてもよい(例えば、(C)の後に(B))。他の実施形態では、成分(C)は、成分(A)及び(B)を入れた容器に添加される。概して、本明細書における「反応混合物」の言及は、全般的に、(例えば、上記のような成分を組み合わせることによって得られるような)成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含む混合物を指す。
【0068】
本方法は、反応混合物を撹拌することを更に含むことができる。撹拌は、例えば、反応混合物において組み合わされたときに、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の混合及び接触を増強することができる。このような接触は独立して、撹拌を伴って(例えば、並行して又は順次)、又は撹拌を伴わずに(即ち、独立して、あるいはその代わりに)、他の条件を使用することもできる。他の条件は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を形成するために、初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)との接触、ひいては反応(すなわち、トランスアルコキシル化)を向上させるように調整され得る。他の条件は、反応収率を増大させるための、又はアルコキシ官能性有機ケイ素化合物に伴って反応生成物中に含まれる特定の反応副生成物の量を最小限に抑えるための有効な条件であってもよい。
【0069】
ある特定の実施形態では、成分(A)及び成分(B)の反応は、担体ビヒクル又は溶媒、例えば上記のもののうちの1つ以上の存在下で実施される。例えば、担体ビヒクル又は溶媒の部分は、初期有機ケイ素化合物(A)、アルコール成分(B)、及び/又は触媒(C)に個々に添加されてもよく、成分(A)、(B)、及び/又は(C)の混合物にまとめて添加されてもよく、又は反応混合物に一体として(as a whole)添加されてもよく、あるいは別の方法で組み合わされてもよい。反応混合物中に存在する担体ビヒクル/溶媒の総量は、例えば、選択される特定の成分(A)、(B)、及び/又は(C)、採用される反応パラメータなどに基づいて、当業者によって選択される。
【0070】
ある特定の実施形態では、成分(A)及び(B)の反応は、任意の担体ビヒクル又は溶媒の非存在下で実施される。例えば、担体ビヒクル又は溶媒は、初期有機ケイ素化合物(A)、アルコール成分(B)、及び/又は触媒(C)とは個々に組み合わされ得ない。これら又は他の実施形態では、成分(A)、(B)、及び(C)のいずれも任意の担体ビヒクル又は溶媒中に配置されず、それによってエステル交換反応中、反応混合物中には存在しない(すなわち、反応混合物は、溶媒を含まず、あるいは実質的に含まない)。上記にかかわらず、ある特定の実施形態では、成分(A)、(B)、及び/又は(C)のうちの1つは、担体であり得、その場合、例えば、反応混合物の任意の他の成分を担持、溶解、又は分散するのに十分な量で流体として利用され得る。特定の実施形態では、アルコール成分(B)は、担体として利用される。更に、初期有機ケイ素化合物(A)のアルコール成分(B)とのエステル交換反応は、式R-OH[式中Rは、初期有機ケイ素化合物(A)に関して上で定義されたとおりである]のアルコール(以下、「アルコール副生成物」)の生成をもたらすことが理解されよう。アルコール副生成物は、それ自体が担体として(すなわち、生成されると)利用され得る。
【0071】
ある特定の実施形態では、アルコール副生成物は、生成されると反応混合物から除去される。当該技術分野において理解されるように、エステル交換反応は、可逆反応であり、それによってアルコール副生成物を反応混合物から除去することが、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の選択性に関して好ましく及び/又は全体的な収率に関して影響を及ぼす(例えば、反応の平衡を選択的にすることによって)。典型的には、アルコール副生成物は、揮発性であり、又は少なくとも、反応混合物中の成分(A)、(B)、及び/又は(C)よりも揮発性が高い。アルコール副生成物の除去は、蒸留、加熱、減圧/真空の適用、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの使用など、及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0072】
ある特定の実施形態では、アルコール副生成物は、反応中に反応混合物から蒸留され、その結果、反応は蒸留条件下で行われる。蒸留条件としては、典型的には以下が含まれる(i)高温;(ii)減圧;又は(iii)高温及び減圧の両方。高温又は減圧とは、室温及び大気圧と比較して意味付けされる。当該技術分野において理解されるように、任意の蒸留で利用されるトレイの数が最適化されてもよく、生成される留出物に対するアルコール副生成物の比及び/又は回収に影響を及ぼし得る。蒸留は、連続式であってもバッチ式であってもよく、蒸留が共沸蒸留であり得るように、溶媒(例えば、ヘキサン、トルエンなど)の使用を含んでもよい。利用される共沸溶媒を含む留出物は、そこからアルコール副生成物を除去した後(例えば、溶媒相抽出によって)再使用及び/又は再循環され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、反応は、高温で実施される。高温は、選択される特定の初期有機ケイ素化合物(A)、選択される特定のアルコール成分(B)、生成される特定のアルコール副生成物(例えば、成分(A)の置換基RO-の因子として)、選択される反応容器(例えば、周囲圧力に対して開いているか、減圧下で密封されるかなど)に応じて選択及び制御される。したがって、当業者であれば、選択される反応条件及びパラメータ、並びに本明細書での説明を考慮して、高温を容易に選択する。高温は、典型的には、周囲温度より高い温度から140℃まで、例えば30~130℃、あるいは40~130℃、あるいは40~120℃、あるいは50~120℃、あるいは50~110℃、あるいは50~100℃、あるいは60~100℃である。
【0074】
ある特定の実施形態では、反応は、減圧で実施される。減圧は、選択される特定の初期有機ケイ素化合物(A)、選択される特定のアルコール成分(B)、生成される特定のアルコール副生成物(例えば、成分(A)の置換基RO-の因子として)、及びそれらの組み合わせに応じて選択及び制御される。したがって、当業者であれば、選択される反応条件及びパラメータ、並びに本明細書での説明を考慮して、減圧を容易に選択する。減圧は、典型的には真空として動作されるが、真空と大気圧との間の任意の減圧(すなわち、101.325kPa)が利用されてもよい。例えば、減圧は、0超~30kPa、あるいは0超~20kPa、あるいは0超~15kPa、あるいは0超~10kPa、あるいは0超~8kPa、あるいは0超~6kPa、あるいは0超~5kPa、あるいは0超~4kPa、あるいは0超~3kPa、あるいは0超~2kPa(例えば、mmHgによって測定される)であり得る。
【0075】
高温及び/又は減圧はまた、特に高温及び減圧の両方が利用される場合、上記の範囲とは異なり得ることを理解されたい。例えば、ある特定の実施形態では、減圧は、より低い反応温度を利用しながら反応の進行を維持するために利用され、これは、望ましくない副生成物(例えば、初期有機ケイ素化合物(A)のRがアクリルオキシ基を含むか、あるいはアクリルオキシ基である場合、重合副生成物)の形成の減少をもたらし得る。同様に、反応パラメータは、成分(A)及び成分(B)の反応中に修正され得ることも理解されたい。例えば、温度、圧力、及び他のパラメータは、反応中に独立して選択又は修正されてもよい。これらのパラメータはいずれも、独立して、周囲パラメータ(例えば、室温及び/又は大気圧)及び/又は非周囲パラメータ(例えば、低温若しくは高温及び/又は減圧若しくは高圧)であってもよい。任意のパラメータはまた、動的に修正されてもよく、リアルタイムで、即ち、方法中に変更されてもよく、又は静的(例えば、反応の持続時間中又はその任意の部分にわたって)であってもよい。
【0076】
アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するための成分(A)及び(B)の反応が実施される時間は、スケール、反応パラメータ及び条件、特定の成分の選択などの関数である。比較的大きなスケール(例えば、1kg超、あるいは5kg、あるいは10kg、あるいは50kg、あるいは100kg)では、当業者によって容易に決定されるように(例えば、初期有機ケイ素化合物(A)の変換、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の生成などを、例えば、クロマトグラフィー及び/又は分光法により監視することによって)反応は数時間、例えば、1~48時間、あるいは2~36時間、あるいは4~24時間、あるいは6、12、18、24、36、又は48時間実施することができる。ある特定の実施形態では、反応が実施される時間は、成分(A)及び(B)が成分(C)の存在下で組み合わされた後、0超~48時間、あるいは1~36時間、あるいは1~24時間、あるいは1~12時間、あるいは2~12時間、あるいは2~8時間である。
【0077】
概して、成分(A)及び(B)との反応は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を調製するものである。特に、反応の過程で、成分(A)、(B)、及び(C)を含む反応混合物は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の量を増加させることと、成分(A)及び(B)の量を減少させることとを含む。反応が完了すると(例えば、成分(A)及び(B)のうちの1つが消費され、追加のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物が調製されないなど)、反応混合物は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物と称され得る。このように、反応生成物は、典型的には、任意の残りの量の成分(A)、(B)、及び(C)、並びにその分解及び/又は反応生成物(例えば、蒸留、ストリッピングなどによって以前に除去されなかった材料)を含む。反応が任意の担体ビヒクル又は溶媒中で実施される場合、反応生成物はまた、このような担体ビヒクル又は溶媒も含んでもよい。しかしながら、この方法は、典型的には、未希釈(すなわち、添加溶媒の不在下)で行われ、蒸留及び/又は他の加熱条件下で実施されるため、これは、典型的には、その事例ではない。
【0078】
ある特定の実施形態では、方法は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を反応生成物から単離及び/又は精製することを更に含む。本明細書で使用される場合、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を単離することは、典型的には、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の相対濃度を、(例えば、反応生成物又はそれを精製したものにおいて)それと組み合わせた他の化合物と比較して高めることと定義される。したがって、当該技術分野において理解されるように、単離/精製は、他の化合物をそのような組み合わせから除去すること(すなわち、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物と組み合わされた不純物の量を、例えば反応生成物中で減少させる)、及び/又はアルコキシ官能性有機ケイ素化合物自体を組み合わせから除去することを含んでもよい。単離のための任意の好適な技術及び/又はプロトコルが利用されてもよい。好適な単離技術の例としては、蒸留、ストリッピング/蒸発、抽出、濾過、洗浄、分配、相分離、クロマトグラフィーなどが挙げられる。当業者には理解されるように、これらの技術のいずれも、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を単離するために、任意の別の技術と組み合わせて(すなわち、順次)使用することができる。単離することは、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を精製することを含んでもよく、したがってアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を精製すること、と称されてもよいことを理解されたい。しかしながら、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を精製することは、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の単離に利用される技術と代替の及び/又は追加の技術を含み得る。選択された特定の技術に関係なく、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の単離及び/又は精製は、反応自体と順に(すなわち、ライン内で)実施されてもよく、したがって自動化されてもよい。他の例では、精製は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物が供される独立型手順であってもよい。
【0079】
特定の実施形態では、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を単離することは、反応生成物から揮発性物質を蒸留及び/又はストリッピングすることを含む。例えば、成分(B)が成分(A)の過剰量で使用されるなどのある特定の実施形態では、成分(B)の残りの量は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応混合物から蒸留及び/又はストリッピングされる。これら又は他の実施形態では、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を単離することは、触媒(C)及び/又はそれから形成された固体の残りの量を除去するために、反応生成物を濾過することを含む。両方又はいずれかの場合(例えば、成分(B)及び/又は(C)をストリッピング/蒸留及び/又は濾過によって除去した後)、反応生成物は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む精製反応生成物と称され得る。
【0080】
特定の実施形態では、方法は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を精製することを更に含む。精製のための任意の好適な手法を使用することができる。ある特定の実施形態では、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を精製することは、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物(例えば、留出物として)を除去するための、又は他の化合物/成分をそこからストリッピングする(すなわち、反応混合物又は精製反応混合物の高沸点成分としてポット内にアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を残す)ためのいずれかの蒸留を含む。当業者には理解されるように、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を精製及び/又は単離するために反応生成物又は精製反応生成物を蒸留することは、典型的には、高温及び減圧で実施される。高温及び減圧は、例えば、反応の特定の成分、調製される特定のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物、利用される他の単離/精製技術に基づいて、独立して選択される。例えば、本明細書に記載される高温及び減圧のいずれかは、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を精製する際に利用され得る。
【0081】
上記の説明を考慮して当業者には理解されるように、本方法に従って調製された特定のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、利用される特定の初期有機ケイ素化合物(A)、及びアルコール成分(B)の関数である。したがって、いくつかの実施形態では、成分(A)及び(B)を触媒(C)の存在下で反応させることは、一般式(I):
【化10】
[式中、R、R、D、及び下付き文字aのそれぞれは、初期有機ケイ素化合物(A)に関して上で定義され、Rは、アルコール成分(B)に関して上で定義されている]を有するアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するものである。例えば、ある特定の実施形態では、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、Rは、エポキシド基、エステル基、無水物基、又はアクリルオキシ基を含み、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、Dは、二価の連結基であり、下付き文字aは、1、2、又は3である。
【0082】
本明細書の説明を考慮して当業者には理解されるように、本方法で利用される特定の初期有機ケイ素化合物(A)は、利用されるアルコール成分(B)によって形成される式(RO-)のアルコキシ基を除いて、一般式(I)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の全てを形成する。したがって、式、構造、部分、基、又は他のそのようなモチーフが、式(I)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物と成分(A)及び/又は(B)との間で共有される場合、そのような共有モチーフに関する上記の説明は、調製されたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を同等に説明し得る。しかしながら、本方法に従って調製されたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、以下に記載されるように、上記の一般式(I)に限定されない。
【0083】
ある特定の実施形態では、初期有機ケイ素化合物(A)とアルコール成分(B)とを、触媒(C)の存在下で反応させることは、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物(すなわち、「初期反応」を介して)を生成するものであり、この方法は、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を(D)アミノ官能性オルガノシロキサン化合物と反応させ、それにより(すなわち、「第2の反応」を介して)アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製することを更に含む。言い換えれば、そのような実施形態では、上記の一般式(I)を有するアルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、代替的に、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物として定義され得、その後、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)と反応して、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製する。そのような実施形態では、成分(A)と(B)とを反応させることに関する上記の説明、それによって調製された反応生成物、及びそれからのアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の単離及び/又は精製は、したがって、初期反応に従って調製された中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の調製、単離、及び/又は精製を説明することができるものであることを理解されたい。しかしながら、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、調製後の任意の時点で利用されてもよく、その結果、単離及び/又は精製手順は利用される必要がない。例えば、初期反応及び第2の反応は、並行して(例えば、ワンポット反応など)実施されてもよい。
【0084】
アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)
アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、特に限定されず、本明細書の説明を考慮して当業者によって理解されるように、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物に関して上記のRの官能基にオルガノシロキサン化合物を結合するのに(例えば、置換反応、置き換え反応(displacement reaction)、アルキル化反応などを介して)好適なアミン官能基(すなわち、アミノ基)を含む任意のオルガノシロキサン化合物であり得る。
【0085】
概して、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、以下の一般式:
【化11】
[式中、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して、R又は式-D-NHのアミノ基であり、式中Dは、独立して選択される二価の連結基であり、但し、少なくとも1つのRは、アミノ基であり、下付き文字mは、0~1000であり、下付き文字nは、1~100である]を有する。
【0086】
概して、Rに好適なヒドロカルビル基としては、特に初期有機ケイ素化合物(A)のR及び/又はRを参照して上述したものなどの上で記載したものが挙げられる。具体的な実施形態では、各Rは、独立して、1~10個、あるいは1~8個、あるいは1~6個、あるいは1~4個、あるいは1~3個、あるいは1個~2個、あるいは1個の炭素原子を有するアルキル基である。例えば、いくつかのそのような実施形態では、各Rはメチルである。
【0087】
各Rは、R及び式-D-NHのアミノ基から独立して選択される。概して、各Dは、独立して二価の連結基であり、直鎖状であっても分岐状であってもよく、置換であっても非置換であってもよい。典型的には、Dは、二価の置換又は非置換の炭化水素基から選択され、これは任意に、例えば、エーテル、エステル、アミノ、及び/又はシリル基で修飾若しくは置換され得る。例えば、いくつかの実施形態では、Dは、一般式-(CH-[式中、下付き文字cは≧1であり、例えば1~18、あるいは1~16、あるいは1~12、あるいは1~10、あるいは1~8、あるいは1~6、あるいは2~6である]を有する、炭化水素部分を含む。これら又は他の実施形態では、Dは、置換炭化水素、すなわち、(例えば、炭素鎖中及び/又は炭素鎖上で)少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、O、N、Sなど)で置換された主鎖を含む炭化水素基を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、Dは、主鎖中の、又は主鎖の炭素原子のうちの1つに結合した1つ以上のN原子を含む炭化水素である。いくつかのそのような実施形態では、Dは、アミノアルキル部分を含んでもよく、あるいはアミノアルキル部分であってもよく、そのようなアミノ基はジアミノ基である(すなわち、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)の少なくとも1つのRは、ジアミンである)。
【0088】
当業者には理解されるように、下付き文字m及びnは、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)中のシロキシ単位の数、したがって、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)の重合度(DP)を表す。下付き文字m及びnによって示されるシロキシ単位は、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)中の任意の順序(例えば、ランダム化及び/又はブロックなど)であり得ることが理解されよう。概して、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、1~1100のDPを有する。特定の実施形態では、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、400超、あるいは500超、あるいは600超、あるいは700超、あるいは800超のDPを有する。いくつかの実施形態では、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、400未満、あるいは350未満、あるいは300未満、あるいは250未満、あるいは200未満、あるいは150未満、あるいは100未満のDPを有する。
【0089】
下付き文字mは、0~1000である。いくつかのの実施形態では、下付き文字mは、1~1000、あるいは100~1000、あるいは200~1000、あるいは300~1000、あるいは400~1000、あるいは500~1000である。ある特定の実施形態では、下付き文字mは、0~100、あるいは0~80、あるいは0~60、あるいは0~40、あるいは0~20、あるいは1~20である。特定の実施形態では、下付き文字mは0である。
【0090】
下付き文字nは、1~100である。いくつかの実施形態では、下付き文字nは、1~90、あるいは1~80、あるいは1~70、あるいは1~60、あるいは1~50、あるいは1~40、あるいは1~30、あるいは1~20、あるいは2~20、あるいは3~20、あるいは4~20、あるいは5~20である。
【0091】
概して、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、少なくとも1つのアミノ基を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つ、あるいは少なくとも4つ、あるいは少なくとも5つのアミノ基を含む。当業者には理解されるように、各Rは、下付き文字nによって示される各部分において独立して選択され、その結果、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、合計1~n+2の数のアミノ基を含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、1~102個のアミノ基を含み、例えば1~100個、あるいは1~90個、あるいは1~80個、あるいは1~70個、あるいは1~60個のアミノ基を含む。これら又は他の実施形態では、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、1~20個のアミノ基を含み、例えば1~18個、あるいは1~16個、あるいは1~14個、あるいは1~12個、あるいは1~10個のアミノ基を含む。
【0092】
アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、任意の形態、例えば、未希釈で利用されてもよく(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などが存在しない)、又は溶媒若しくは分散剤(例えば、上記で列挙したもののいずれかなど)などの担体ビヒクル中に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(Dは、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)それ自体、及び/又は第2の反応で利用される任意の他の成分と反応性である水及び担体ビヒクル/揮発性物質の非存在下で利用される。例えば、ある特定の実施形態では、この方法は、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)を中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物と反応させる前に、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)から揮発性物質及び/又は溶媒(例えば、水、有機溶媒など)をストリッピングすることを含み得る。アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)からストリッピングする技術は、当該技術分野において既知であり、加熱、乾燥、減圧/真空の適用、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの使用、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0093】
ある特定の実施形態では、本方法は、2、3、4、又はそれ以上のアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)などの、2つ以上のアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)を利用することを含む。そのような実施形態では、各アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、独立して選択され、任意の他のアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)と同じであっても異なっていてもよい。
【0094】
アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、例えば、利用される特定の中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及び/又はアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)、採用される反応パラメータ、反応の規模(例えば、反応する中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及び/若しくは成分(D)並びに/又は調製されるアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の総量)などに応じて、当業者により選択される任意の量で利用され得る。本明細書の説明を考慮して、当業者によって理解されるように、第2の反応は、典型的には、1:1の[AG]:Rの最大比で起こり、この[AG]は式-D-NHのアミノ基を表し、Rは上記の中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の官能基である。したがって、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)とは、典型的には、1.5:1~1:1.5、あるいは1.4:1~1:1.4、あるいは1.3:1~1:1.3、あるいは1.2:1~1:1.2、あるいは1.1:1~1:1.1、あるいは1.1:1~1:1[AG]:Rの化学量論比で反応する。概して、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、典型的には、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の量と等しいモル量で(例えば、成分(D)が1個だけのアミノ基を含む場合)又はそれよりも少ない量で(例えば、成分(D)が1個よりも多いアミノ基を含む場合)利用される。しかしながら、成分のうちの1つの過剰量が、典型的には、例えば形成される反応生成物の精製を簡素化するために、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物又はアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)を完全に消費するために利用される。例えば、ある特定の実施形態では、成分(D)は、相対過剰(例えば、1:>1の[AG]:Rの化学量論比で)で利用され、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物への変換率を最大化する。
【0095】
ある特定の実施形態では、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)とは、(E)触媒の存在下で反応する(本明細書では、明確にするために「第2の触媒」(E)と称される)。第2の触媒(E)は限定されず、本明細書の説明を考慮して当業者によって理解されるように、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物のアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)のオルガノシロキサンへの結合(すなわち、成分(D)のアミノ基と、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の官能基Rとの反応を介して、例えば置換反応、置き換え、アルキル化などを介して)を容易にするために、好適な任意の触媒であり得る。
【0096】
ある特定の実施形態では、第2の触媒(E)は、炭酸塩塩基(例えば、NaCO、CaCO、MgCOなど)、水酸化物塩基(例えば、Mg(OH)など)、金属酸化物塩基(例えば、ZnO、MgOなど)、アミン塩基(例えば、ピリジンなど)、及びこれらの組み合わせなどの塩基である。ある特定の実施形態では、本方法は、2つの異なる第2の触媒(E)など、2つ以上の第2の触媒(E)を利用することを含む。そのような実施形態では、各第2の触媒(E)は独立して選択され、利用される任意の他の第2の触媒(E)と同じであっても異なっていてもよい。
【0097】
特定の実施形態では、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)とは、例えば、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)が中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の過剰で利用され、それ自体が第2の反応において塩基(すなわち、塩基性触媒)として作用する場合など、任意の別個の第2の触媒(E)の非存在下で反応する。
【0098】
第2の触媒(E)に、又は第2の触媒(E)として使用するのに好適な化合物を調製する方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書に列挙される化合物の多くは、様々な供給元から市販されている。したがって、第2の触媒(E)は、方法の一部として調製されてもよく、又は他の方法で(即ち、調製された化合物として)得られてもよい。
【0099】
第2の触媒(E)は、任意の形態、例えば、未希釈で利用されてもよく(すなわち、溶媒、担体ビヒクル、希釈剤などが存在しない)、又は溶媒若しくは分散剤(例えば、上記で列挙したもののいずれかなど)などの担体ビヒクル中に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、第2の触媒(E)は、第2の反応の成分のいずれかと反応性である水及び担体ビヒクル/揮発性物質の非存在下で利用される。例えば、ある特定の実施形態では、本方法は、第2の触媒(E)から揮発性物質及び/又は溶媒(例えば、水、有機溶媒など)をストリッピングすることを含んでもよい。第2の触媒(E)からストリッピングする技術は、当該技術分野において公知であり、加熱、乾燥、減圧/真空の適用、溶媒との共沸、モレキュラーシーブの利用、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0100】
第2の触媒(E)は、当業者によって選択される任意の量で、例えば、選択される特定の第2の触媒(E)、採用される反応パラメータ、第2の反応の規模などに応じて利用され得る。第2の触媒(E)の第2の反応で利用される中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及びアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)に対するモル比は、それらを用いてアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するための、これらの成分の反応の速度及び/又は量に影響を及ぼし得る。したがって、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及びアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)と比較した第2の触媒(E)の量、並びにそれらの間のモル比は変化し得る。典型的には、これらの相対量及びモル比は、(例えば、反応の経済的効率の向上、形成される反応生成物の精製の簡易化などのために)、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)の結合を最大化して、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するように選択される。
【0101】
ある特定の実施形態では、第2の触媒(E)は、0.1~2の(D):(E)のモル比で利用される。例えば、ある特定の実施形態では、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)と第2の触媒(E)とは、1:1~1:10、例えば、1:1.1~1:10、あるいは1:1.2~1:10、あるいは1:1.2~1:8、あるいは1:1.2~1:6、あるいは1:1.2~1:4、あるいは1:1.1~1:2の、(D):(E)のモル比で利用される。これらの範囲外の比率も同様に利用され得ることが理解されよう。例えば、ある特定の実施形態では、例えば、反応中に第2の触媒(E)が、担体(即ち、溶媒、希釈剤など)として使用されるとき、第2の触媒(E)は、総過剰量で(例えば、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)のモル量の10倍以上、あるいは15倍以上、あるいは20倍以上の量で)利用される。
【0102】
典型的には、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)とは、容器又は反応器内で反応する。したがって、いくつかの実施形態では、第2の反応は、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するために利用された、同じ又は同じタイプの容器/反応器である容器内で実施される。他の実施形態では、第2の反応は、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するために利用された容器/反応器とは異なる容器内で実施される。いくつかの実施形態では、第2の反応は、初期反応に利用された同じ容器で実施され、その結果、方法は、連続、インライン、又はワンポット反応として定義又は別様に説明され得る。初期反応と同じように、第2の反応は、以下に記載される高温又は低温で実施されてもよく、したがって、容器又は反応器は、例えば被覆物、覆い、交換器、槽、コイルなどを介して、任意の好適な方法で加熱又は冷却されてもよい。
【0103】
中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及びアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)、並びに任意に第2の触媒(E)は、容器に一緒に又は別々に供給されてもよく、又は任意の添加の順序で、及び任意の組み合わせで容器内に配置されてもよい。例えば、ある特定の実施形態では、成分(D)は、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を入れた容器に添加される。いくつかの実施形態では、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、成分(D)を入れた容器に添加される。そのような実施形態のいずれかにおいて、第2の触媒(E)は、任意に、個別に容器に添加されてもよく、又は第2の反応の別の成分と組み合わされてもよい。概して、本明細書における「第2の反応混合物」への言及は、全般的に、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及びアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)、並びに任意に第2の触媒(E)(例えば、上記のようにそのような成分を組み合わせることによって得られるような)を含む混合物を指す。
【0104】
本方法は、第2の反応混合物を撹拌することを更に含むことができる。撹拌は、例えばその反応混合物中で組み合わされるとき、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及びアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)、並びに任意に第2の触媒(E)の混合及び一緒に接触させることを増強させ得る。このような接触は独立して、撹拌を伴って(例えば、並行して又は順次)、又は撹拌を伴わずに(即ち、独立して、又はその代わりに)、他の条件を使用することもできる。他の条件は、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)との接触、したがって第2の反応を増強させ、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を形成するように調整され得る。他の条件は、反応収率を増大させるための、又はアルコキシ官能性有機ケイ素化合物に伴って第2の反応生成物中に含まれる特定の反応副生成物の量を最小限に抑えるための有効な条件であってもよい。
【0105】
ある特定の実施形態では、第2の反応は、担体ビヒクル又は溶媒、例えば上記のもののうちの1つ以上の存在下で実施される。例えば、担体ビヒクル又は溶媒の部分を、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及び/又はアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)に個々に添加されてもよく、利用される成分の混合物にまとめて添加されてもよく、又は第2の反応混合物に一体として(as a whole)添加されてもよい。第2の反応混合物中に存在する担体ビヒクル/溶媒の総量は、例えば、選択される特定の成分、採用される反応パラメータなどに基づいて、当業者によって選択される。
【0106】
いくつかの実施形態では、第2の反応は、高温で実施される。高温は、調製及び利用される特定の中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物、選択される特定のアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)、存在する場合、利用される特定の担体及び/又は溶媒などに応じて選択及び制御される。したがって、高温は、選択される第2の反応条件及びパラメータ、並びに本明細書の説明を考慮して、当業者によって容易に選択される。高温は、典型的には、周囲温度より高い温度~200℃、例えば30~180℃、あるいは60~180℃、あるいは90~180℃、あるいは120~180℃である。
【0107】
高温はまた、上記の範囲とは異なる場合があり、又はそのより具体的な部分集合である場合があることを理解されたい。例えば、特定の実施形態では、第2の反応は、110~120℃、あるいは120~130℃、あるいは130~140℃、あるいは140~150℃、あるいは150~160℃の高温で実施される。反応パラメータが、第2の反応中に同様に修正され得ることも理解されたい。例えば、温度、圧力、及び他のパラメータは、第2の反応中に独立して選択又は修正されてもよい。これらのパラメータはいずれも、独立して、周囲パラメータ(例えば、室温及び/又は大気圧)及び/又は非周囲パラメータ(例えば、低温若しくは高温及び/又は減圧若しくは高圧)であってもよい。任意のパラメータはまた、動的に修正されてもよく、リアルタイムで、即ち、方法中に変更されてもよく、又は静的(例えば、反応の持続時間中又はその任意の部分にわたって)であってもよい。ある特定の実施形態では、第2の反応は、周囲温度(例えば、以下に記載されるように、第2の反応が長時間スケールで実施される場合)で実施される。
【0108】
アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するための第2の反応が実施される時間は、規模、反応パラメータ及び条件、特定の成分の選択などの関数である。ある特定の実施形態では、第2の反応が実施される時間は、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)とが組み合わされた(例えば、利用される場合、成分(E)の存在下で)後、0超~48時間、あるいは1~36時間、あるいは6~36時間、あるいは12~24時間である。特定の実施形態では、第2の反応が実施される時間は、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)とが組み合わされた(例えば、利用される場合、成分(E)の存在下で)後、0.5~24時間、あるいは0.5~12時間、あるいは1~12時間、あるいは2~8時間である。当業者によって理解されるように、これらの範囲外の時間も利用され得ることが理解されるべきである。例えば、ある特定の実施形態では、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)とは、2~60日、あるいは2~30日、あるいは4~21日、あるいは7~21日、あるいは7~14日などの、48時間(すなわち、2日)周辺又はそれよりも長い時間スケールにわたって反応する。
【0109】
概して、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)とを反応させることは、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む第2の反応生成物を調製するものである。特に、第2の反応の過程で、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及び成分(D)を含む第2の反応混合物は、増加量のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物と、減少量の中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及び成分(D)とを含む。第2の反応が完了すると(例えば、中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及び成分(D)のうちの1つが消費され、追加のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物が調製されないなど)、第2の反応混合物は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物(すなわち、「第2の反応生成物」)と称され得る。このようにして、第2の反応生成物は、典型的には、任意の残りの量の中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物及び成分(D)、並びに持ち越された場合の任意の残りの量の成分(A)、(B)、及び/又は(C)、並びにそれらの分解及び/若しくは反応生成物(例えば、任意の蒸留、ストリッピングなどによって以前に除去されなかった材料)を含む。第2の反応が任意の担体ビヒクル又は溶媒中で実施される場合、第2の反応生成物はまた、このような担体ビヒクル又は溶媒を含んでもよい。
【0110】
ある特定の実施形態では、方法は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を第2の反応生成物から単離及び/又は精製することを更に含む。上記に列挙したもののいずれかを含む、単離のための任意の好適な技術及び/又はプロトコルを利用することができる。例えば、担体ビヒクルが使用される場合などのある特定の実施形態では、揮発性物質は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む第2の反応混合物から蒸留及び/又はストリッピングされる。第2の反応生成物から精製及び/又は単離されると、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、単離アルコキシ官能性有機ケイ素化合物と称され得る。
【0111】
上記の説明を考慮して、当業者には理解されるように、本方法に従って調製された特定のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、反応する特定の初期有機ケイ素化合物(A)及びアルコール成分(B)、並びにそれにより調製されたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物が第2の反応において中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物として利用されるかどうか、及び利用される場合、利用される特定のアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)の関数である。したがって、上記の一般式(I)を有するアルコキシ官能性有機ケイ素化合物に加えて、特定の実施形態では、方法は、以下の一般式(II):
【化12】
[式中、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、下付き文字mは0~1000であり、下付き文字nは、1~100であり、各R10は、独立してR、式-D-NHのアミノ基、式-D-N(H)Yのアミノ基であり、但し、少なくとも1つのR10が、式-D-N(H)Yのアミノ基であり、式中、各Dは、独立して選択される二価の連結基であり、各Yは、下記式を有する独立して選択されるアルコキシシリル部分を含み、
【化13】
式中、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、各Rは、独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、Dは、二価の連結基であり、下付き文字aは、1、2、又は3である]を有するアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を調製するものである。
【0112】
本明細書の説明を考慮して当業者には理解されるように、本方法で利用される(例えば、第2の反応で)アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)は、一般式(II)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物のオルガノシロキサン主鎖を形成し、利用される中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物はアルコキシシリル部分Yを形成する。したがって、式、構造、部分、基、又は他のそのようなモチーフは、式(II)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物とアミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)と中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物との間で共有され、そのような共有されたモチーフに関する上記説明は、調製されるアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を同等に説明し得る。
【0113】
アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む組成物も提供される。組成物は、概して、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物と少なくとも1つの他の成分、例えば、非反応性成分(例えば、担体ビヒクル、溶媒など)、反応性成分(例えば、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物と反応性であるか、若しくはアルコキシ官能性有機ケイ素化合物と反応性とすることが可能な化合物)、又はそれらの組み合わせとを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、上記一般式(I)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む。これら又は他の実施形態では、組成物は、上記一般式(II)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む。ある特定の実施形態では、組成物は、その中の成分の総量に基づいて、0.1%未満(例えば、組成物の総重量に基づく重量%)の環状ポリジオルガノシロキサンを含む。
【0114】
概して、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む組成物は、上記の実施形態に従って調製された反応生成物を(又は第2の反応生成物)含み得るか、又はそれであり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、方法は、反応生成物からアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を精製及び/又は単離することを含み、したがって、この組成物は、単離及び/又は精製アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む。
【0115】
特定の実施形態では、本方法は、触媒(C1)を用いて中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物(すなわち、一般式(I))を含む反応生成物を調製することと、触媒(C1)を反応生成物から除去することと、そのように精製された中間体アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を反応させて、一般式(II)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む第2の反応生成物を調製することと、を含む。そのような実施形態では、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む第2の反応生成物は、その中の成分の総重量に基づいて、1%未満、あるいは0.8%未満、あるいは0.6%未満、あるいは0.4%未満、あるいは0.2%未満、あるいは0.1%未満(例えば、組成物の総重量に基づく重量%)の環状ポリジオルガノシロキサン含有量を含む。いくつかのそのような実施形態では、方法は、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む第2の反応生成物と、少なくとも1つの他の成分とを組み合わせることによって、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む組成物を調製することを更に含む。これらの実施形態では、組成物は、その中の成分の総量に基づいて、0.1%未満、あるいは0.05%未満、あるいは0.01%未満(例えば、組成物の総重量に基づく重量%)の環状ポリジオルガノシロキサンを含む。
【0116】
本開示の実施形態を示す以下の実施例は、本発明を説明することを意図するものであり、本発明を限定するものではない。以下の簡潔な概要により、ある特定の略語、略記、及び実施例に利用される成分に関する情報が得られる。
【0117】
実施例で利用される様々な成分を以下の表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
以下の実施例の各々において、粘度は、試料をカップに充填して、カップを1分間放置して室温に到達させ、次いで試料の粘度をBrookfield DV-III粘度計で25℃にて、45~55%の応力に達するようにrpmを調整して測定することによって決定する。
【0120】
実施例1:カルボン酸アンモニウム触媒を用いたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の調製
【0121】
磁気撹拌棒を備えたガラスバイアルに、初期有機ケイ素化合物(A1)(2.5g、10mmol、1当量)及びアルコール成分(B1)(4.9g、30mmol、3当量)を充填する。次いで、アミン化合物(C1-a1)(150mg、0.56mmol、2重量%)及びカルボン酸(C1-b1)(42μL、0.56mmol)を、バイアルに添加して反応混合物を形成し、次いで、それを80℃に加熱し16時間保持する。次いで、反応混合物の試料をH NMRによって分析し、約40%のアルコール成分(B1)が初期有機ケイ素化合物(A1)に結合し、エポキシド官能基がインタクトであることを示す。次いで、反応混合物を、完全な真空下でロータリーエバポレーター上に置き、80℃で1時間、次いで100℃で1時間加熱保持する。次いで、反応混合物の別の試料をH NMRによって分析し、全てのメタノールが蒸発したが、さらなる変換転換が起こらなかったことを示す(約44%アルコール成分(B1)が初期有機ケイ素化合物(A1)に結合)。次いで、反応混合物を80℃の加熱ブロックに置き、周囲空気にさらして7時間放置すると、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を得る(H NMRにより、インタクトなエポキシド官能基を伴い、約70%アルコール成分(B1)が初期有機ケイ素化合物(A1)に結合した)。
【0122】
実施例2:カルボン酸アンモニウム触媒を用いたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の調製
【0123】
磁気撹拌棒を備えたガラスバイアルに、初期有機ケイ素化合物(A1)(2.5g、10mmol、1当量)及びアルコール成分(B1)(3.2g、20mmol、2当量)を充填する。次いで、アミン化合物(C1-a1)(75mg、0.28mmol、1 重量%)及びカルボン酸(C1-b1)(21μL、0.28mmol)を、バイアルに添加して、反応混合物を形成する。バイアルを密閉し、反応混合物を加熱して、80℃で1時間保持する。次いで、反応混合物の試料をH NMRによって分析して、約26%のアルコール成分(B1)が初期有機ケイ素化合物(A1)に結合していることを示す。次いで、反応混合物を80℃で更に1時間保持して、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を得る(H NMRにより、約28%アルコール成分(B1)が初期有機ケイ素化合物(A1)に結合し、エポキシド官能基がインタクトである)。
【0124】
実施例3:カルボン酸アンモニウム触媒を用いたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の調製
【0125】
磁気撹拌棒及び窒素投入口を備えたガラスバイアルに、初期有機ケイ素化合物(A1)(2.5g、10mmol、1当量)及びアルコール成分(B1)(4.9g、30mmol、3当量)を充填する。次いで、アミン化合物(C1-a2)(40mg、0.56mmol)及びカルボン酸(C1-b1)(41μL、0.56mmol)を、バイアルに添加して、反応混合物を形成する。反応混合物を窒素下に置き加熱して、100℃で2時間保持する。次いで、反応混合物の試料をH NMRによって分析して、約36%のアルコール成分(B1)が初期有機ケイ素化合物(A1)に結合していることを示す。次いで、反応混合物を100℃で更に18時間保持し、反応混合物の別の試料をH NMRによって分析して、約63%アルコール成分(B1)が、初期有機ケイ素化合物(A1)に結合していることを示す。次いで、反応混合物を加熱して、120℃で16時間保持し、橙色の反応混合物を得て、次いで、これを真空下(ロータリーエバポレーター)で、130℃にて2時間ストリッピングして、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を得る(H NMRにより、約75%アルコール成分(B1)が初期有機ケイ素化合物(A1)に結合し、エポキシド官能基がインタクトである)。
【0126】
実施例4:チタン酸塩触媒を用いたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の調製
【0127】
磁気撹拌棒及び窒素投入口を備えたガラスバイアルに、初期有機ケイ素化合物(A1)(2.5g、10mmol、1当量)及びアルコール成分(B1)(4.8g、30mmol、3当量)を充填する。次いで、チタン酸塩化合物(C2-1)(70mg)をバイアルに添加して、反応混合物を形成し、次いで、ロータリーエバポレーター上で加熱して、60℃で4時間保持し、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を得る(H NMRにより、約97%アルコール成分(B1)が初期有機ケイ素化合物(A1)に結合し、エポキシド官能基がインタクトである)。
【0128】
実施例5~16:チタン酸塩触媒を用いたアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の調製
【化14】
【0129】
実施例5~16の各々について、磁気撹拌棒及び窒素入口を備えたガラスバイアルに、初期有機ケイ素化合物(A1)(1.5g、6.3mmol、1当量)及びアルコール成分(B)を充填する。次いで、チタン酸塩化合物(C2)(25mg、7.3mmol、1.1mol%)をバイアルに添加して反応混合物を形成し、次いで、これをロータリーエバポレーター上で加熱して、80℃で4時間保持し、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を得て、次いでこれをH NMRによって分析して、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物への変換中に初期有機ケイ素化合物のエポキシド官能基が、インタクトのままであることを確認する。
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
実施例17:アルコキシ官能性有機ケイ素化合物の調製
【0133】
混合カップに、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)(5g)、水(脱イオン化、0.5g)、及び乳化成分(ポリオキシエチレン(12)トリデカノール;100%活性;0.4g)を高速ミキサー(SpeedMixer;DAC 150)内に充填した。次いで、カップを回転させ(2×30秒のサイクル;最大速度)、水(分けて添加;4.1g)を充填して、Dv(50)=0.39μm及びDv(90)=0.885μmの粒径(レーザー回折粒径分析装置;Malvern Mastersizer 3000によって)を有する、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)を含むエマルジョン(アミノ官能性オルガノシロキサン含有量=50%、pH9.5)を得る。
【0134】
次いで、アミノ官能性オルガノシロキサン化合物(D)(10g;4.9mmolN;1当量)を含むエマルジョンを、実施例8で調製したアルコキシ官能性有機ケイ素化合物と組み合わせて、得られた組み合わせを混合(歯科ミキサー)して、混合物をオーブン乾燥させ(45℃;8日間)、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む組成物(エマルジョン;粒径:Dv(50)=0.246μm及びDv(90)=0.602μm)を得て、これを室温まで放冷し、次いでCaCl2(1.5g;ペレット)を含有する栓をしたガラスボトルに移す。次いで、ボトルを激しく撹拌する。次いで、組成物をペンタン(25mL)及びメタノール(20mL)をボトルに充填し、各希釈の間に、通気(栓を少し開けることによる)しながら撹拌することによって4倍希釈し、希釈組成物を不透明な混合物として得る。次いで、不透明な混合物を遠心管(50mL)に移し、遠心分離し(6000rpm;15分間)、激しく振盪し、再度遠心分離し(6000rpm;15分間)、相分離した混合物を得る。次いで、相分離した混合物の非極性相(上層)を単離し、溶媒ストリッピング(ロータリーエバポレーター)して、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物を含む反応生成物を得る(自由流動性;わずかに黄色;粘度=728mPa・s(25℃))。次いで、反応生成物の試料を1H NMRによって分析して、エポキシド官能基の開環を示す。
【0135】
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という観念を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0136】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又は波線「~」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0137】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。本明細書で様々な実施形態の具体的な特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0138】
更に、本発明の様々な実施形態を説明する際に依拠とされる任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の整数又は分数の値が明記されていない場合であっても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、そして添付の特許請求の範囲内の具体的な実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、そして各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。最終的に、開示した範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、これは、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。
【0139】
本発明は、例示的な様式で説明されており、使用されている用語は限定目的よりも、むしろ説明のための言葉としての性質が意図されているものと理解されるべきである。明らかに、本発明の多くの修正及び変更が上記教示から可能である。本発明は、具体的に記載した方法のとおり以外の方法でも実施され得る。